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▶ 株式会社 日立パワーデバイスの特許一覧

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  • 特開-半導体モジュール 図1
  • 特開-半導体モジュール 図2
  • 特開-半導体モジュール 図3
  • 特開-半導体モジュール 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024019841
(43)【公開日】2024-02-14
(54)【発明の名称】半導体モジュール
(51)【国際特許分類】
   H01L 25/07 20060101AFI20240206BHJP
【FI】
H01L25/04 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022122569
(22)【出願日】2022-08-01
(71)【出願人】
【識別番号】000233273
【氏名又は名称】株式会社 日立パワーデバイス
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】大塚 翼
(72)【発明者】
【氏名】高柳 雄治
(72)【発明者】
【氏名】安田 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】千崎 泰
(57)【要約】
【課題】
1つのゲート抵抗体で複数の抵抗値を設定可能な半導体モジュールを提供する。
【解決手段】
本発明の半導体モジュール10aは、ゲート電極7を有する半導体チップ2と、ゲート電極7へゲート信号を供給するゲート制御端子6と、ゲート電極7とゲート制御端子6との間に接続されたゲート抵抗8とを有する半導体モジュールにおいて、ゲート抵抗8は、チップ抵抗3と、チップ抵抗3の表面に設けられた複数の電極4a,4b,4cを有し、ゲート電極7またはゲート制御端子6と、複数の電極4a,4b,4cのうちの1つとを接続したときに、それぞれの電極間で異なる抵抗値を示すことを特徴とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゲート電極を有する半導体チップと、前記ゲート電極へゲート信号を供給するゲート制御端子と、前記ゲート電極と前記ゲート制御端子との間に接続されたゲート抵抗とを有する半導体モジュールにおいて、
前記ゲート抵抗は、チップ抵抗と、前記チップ抵抗の表面に設けられた複数の電極を有し、前記ゲート電極または前記ゲート制御端子と、前記複数の電極のうちの1つとを接続したときに、それぞれの電極間で異なる抵抗値を示すことを特徴とする半導体モジュール。
【請求項2】
請求項1に記載の半導体モジュールにおいて、
前記ゲート電極または前記ゲート制御端子の接続先の前記電極を変更することで前記ゲート抵抗の抵抗値を変更することを特徴とする半導体モジュール。
【請求項3】
請求項1に記載の半導体モジュールにおいて、
前記ゲート抵抗の前記電極のうちの少なくとも1つが、前記チップ抵抗の一方の主面に設けられ、前記ゲート抵抗の前記電極のうちの残りの電極が、前記チップ抵抗の他方の主面に設けられていることを特徴とする半導体モジュール。
【請求項4】
請求項1に記載の半導体モジュールにおいて、
前記ゲート抵抗のそれぞれの前記電極間の抵抗値が0より大きいことを特徴とする半導体モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
電力用半導体装置は、多くの場合、スイッチング素子としての半導体素子を有する。例えば、MOSFET(金属・酸化物・半導体・電界効果トランジスタ:Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)またはIGBT(絶縁ゲートバイポーラトランジスタ:Insulated Gate Bipolar Transistor)のような、ゲート電極を有する半導体素子が用いられる。特に、大容量(High Power)向けの半導体装置は、互いに並列に接続されたスイッチング素子を有することが多い。
【0003】
半導体装置において、半導体素子の寄生容量および浮遊インダクタンスから正帰還回路が形成されてその結果として寄生発振が生じることがあり、この寄生発振は半導体素子の並列数に比例して深刻となりやすい。そこで、この寄生発振を抑制するためにゲート抵抗がしばしば設けられる。
【0004】
ゲート抵抗を設けた半導体モジュールの例として、特許文献1がある。特許文献1には、MOSFET120およびドライバ回路130の間にダンピング調整素子140を設けて電気的に接続し、ダンピング調整素子140のゲート抵抗Rgの抵抗値を適宜調整することにより、ドライバ回路130の出力電圧に対するダンピング電圧(戻り電圧)Vgs1の減衰率を制御するスイッチングモジュール100が開示されている。ダンピング調整素子140を構成する金属部材142の厚さH1および幅W1を変更することにより、各素子との間隔及びボンディングワイヤ150、152の長さを一定とした上で、ダンピング調整素子140のゲート抵抗Rgを調整することができることが開示されている。さらに、ゲート抵抗RgにゲートインダクタンスLgやゲートキャパシタCgを接続し、ゲートインダクタンスLgの巻数を調整してインダクタンス値を変化させたり、ゲートキャパシタCgを構成する電極板の面積や間隔を変更することにより静電容量値を変化させることで接続回路の共振周波数を調整し、ドライバ回路130からMOSFET120に至る接続回路が構成するRLC直列回路における直列共振を抑制する構成が開示されている。特許文献1によれば、MOSFETの交換、あるいは使用周波数の変更等のスイッチングモジュールの仕様変更に伴って生じるダンピング電圧による誤作動の発生を抑制することができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2021-064889号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1では、ダンピング調整素子140を構成するゲート抵抗Rgを変更するためには、厚さH1および幅W1を変えた金属部材142を新たに用意しなければならない。すなわち、MOSFETの交換、あるいは使用周波数の変更等の半導体モジュールの仕様変更に伴って、ゲート抵抗値の変更があった場合、それまで使用していたゲート抵抗とは別のゲート抵抗を新たに用意して交換しなければならず、コストの面で課題があった。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑み、1つのゲート抵抗体で複数の抵抗値を設定可能な半導体モジュールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための本発明の一態様は、ゲート電極を有する半導体チップと、ゲート電極へゲート信号を供給するゲート制御端子と、ゲート電極とゲート制御端子との間に接続されたゲート抵抗とを有する半導体モジュールにおいて、ゲート抵抗は、チップ抵抗と、チップ抵抗の表面に設けられた複数の電極を有し、ゲート電極またはゲート制御端子と、複数の電極のうちの1つとを接続したときに、それぞれの電極間で異なる抵抗値を示すことを特徴とする半導体モジュールである。
【0009】
本発明のより具体的な構成は、特許請求の範囲に記載される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、1つのゲート抵抗体で複数の抵抗値を設定可能な半導体モジュールを提供することができる。これによって、ゲート抵抗を交換することなくゲート抵抗値を変更でき、仕様の変更が容易になる。
【0011】
上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施例1の半導体モジュールを模式的に示す上面図
図2図1のA部分を拡大する斜視図
図3】実施例2の半導体モジュールを模式的に示す斜視図
図4】実施例3の半導体モジュールを模式的に示す斜視図
【発明を実施するための形態】
【0013】
【実施例0014】
図1は実施例1の半導体モジュールを模式的に示す上面図である。図1に示すように、実施例1の半導体モジュール10aの大まかな構成は、放熱器11の表面に配線パターン9a,9bと金属パターン1a,1bとが積層され、金属パターン1a,1bの表面に半導体チップ2およびゲート抵抗8が配置される。金属パターン1aの一部には主端子12が設けられる。また、半導体チップ2と金属パターン1aの一部はワイヤ13によって接続されている。
【0015】
次に、半導体モジュールの構成の一部について詳述する。図2図1のA部分を拡大する斜視図である。図2に示すように、本発明の半導体モジュール10aは、ゲート電極7を有する半導体チップ2と、ゲート電極7へゲート信号を供給するゲート制御端子6と、ゲート電極7とゲート制御端子6との間に接続されたゲート抵抗8とを有する。
【0016】
より詳細な構成を説明すると、金属パターン1a,1bが図示しない絶縁基板の表面に形成されている。金属パターン1aの表面には、スイッチング素子などの半導体チップ2が図示しない接合材により接合され、金属パターン1bの上にチップ抵抗3が図示しない接合材により接合されている。
【0017】
半導体チップ2のゲート電極7は、ボンディングワイヤ5aによって、チップ抵抗3の表面に設けられた電極4aと電気的に接合されている。電極4cは金属パターン1bとボンディングワイヤ5bによって接合されており、ゲート制御端子6と電気的に接続されている。
【0018】
ここで、ボンディングワイヤ5a、5bと接合するチップ抵抗3表面の電極4は電極4a、4cでなくともよく、例えばボンディングワイヤ5aは電極4bに接続されていてもよい。また、電極4は4a、4b、4cの3つである必要はなく、チップ抵抗3の表面に少なくとも2つ以上あればく、4つ以上備えてもよい。さらに、図2では電極4a、4b、4cが紙面の左右方向に沿って配列されているが、紙面の奥から手前方向に沿って配列されていても良い。
【0019】
チップ抵抗3表面の電極4は、チップ抵抗3の内部で各々電気的に接続されており、それぞれの電極間では少なくとも0より大きい抵抗値を示し、異なる2電極間では違う抵抗値を示す。例えば、電極4aと電極4cとの間の抵抗値は、電極4bと電極4cとの間の抵抗値とは異なるように設定されている。
【0020】
これにより、ボンディングワイヤ5a、5bと接合する、チップ抵抗3表面の電極4を変えるだけで、チップ抵抗3を交換することなく、半導体チップ2とゲート制御端子6との間のゲート抵抗値を容易に変更することが可能となる。
【実施例0021】
図3は実施例2の半導体モジュールを模式的に示す斜視図である。実施例1のチップ抵抗3は、電極4a,4b,4cをチップ抵抗3の1つの面(主面)に設けていたが、は必ずしも1つの面に全てを設ける必要はなく、両面にあってもよい。その実施例を図3に示す。
【0022】
図3ではチップ抵抗3の下面に電極4dを設け、図示しない接合材にて金属パターン1bと接合している。また、電極4dとゲート制御端子6は金属パターン1bを介し、電気的に接合している。電極4a,4b,4cは抵抗チップ内部で各々4dと電気的に接合しており、それぞれ違う抵抗値を示す。
【0023】
これにより、同じチップ抵抗面積を有する実施例1の構成と比較して、複数の抵抗値を実現することができる。
【実施例0024】
図4は実施例3の半導体モジュールを模式的に示す斜視図である。本実施では、実施例2に述べたチップ抵抗3の両主面に電極がある実施例について、表面側の電極4a,4b,4cをゲート制御端子6と接続した実施例を図4に示す。
【0025】
図3において、チップ抵抗3の下面に電極4dを設け、図示しない接合材にて金属パターン1bと接合している。また、電極4dとゲート電極7は金属パターン1b、ボンディングワイヤ5aを介し電気的に接合している。
【0026】
ゲート制御端子6は、金属パターンとボンディングワイヤ5bを介し、電極4cと電気的に接合されている。電極4a,4b,4cは抵抗チップ内部で各々4dと電気的に接合しており、それぞれ違う抵抗値を示す。
【0027】
上述した本構成によっても、実施例2と同様の効果を得ることができる。
【0028】
以上、説明した通り、本発明によれば、1つのゲート抵抗体で複数の抵抗値を設定可能な半導体モジュールを提供することができることが示された。
【0029】
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【符号の説明】
【0030】
1a,1b,1c…金属パターン、2…半導体チップ、3…チップ抵抗、4,4a,4b,4c,4d…電極、5a,5b…ボンディングワイヤ、6…ゲート制御端子、7…ゲート電極、8…ゲート抵抗、9a,9b…配線パターン、10a,10b,10c…半導体モジュール、11…放熱器、12…主端子、13…ワイヤ。
図1
図2
図3
図4