(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024019846
(43)【公開日】2024-02-14
(54)【発明の名称】水膨張性止水組成物
(51)【国際特許分類】
C09K 3/10 20060101AFI20240206BHJP
F16J 15/10 20060101ALI20240206BHJP
【FI】
C09K3/10 J
F16J15/10 Y
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022122577
(22)【出願日】2022-08-01
(71)【出願人】
【識別番号】000003296
【氏名又は名称】デンカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】高津 知道
【テーマコード(参考)】
3J040
4H017
【Fターム(参考)】
3J040FA09
3J040FA20
3J040HA01
4H017AA03
4H017AA04
4H017AA12
4H017AA15
4H017AA17
4H017AA20
4H017AA27
4H017AB01
4H017AB08
4H017AB17
4H017AC06
4H017AD03
4H017AE03
(57)【要約】
【課題】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、優先的に厚み方向に膨張することに加えて、水膨張性、水膨張後の形状保持性、及び可撓性に優れたシール材を製造可能な水膨張性止水組成物を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明によれば、ゴム及び/又はエラストマーを含み、前記ゴム及び/又はエラストマー100質量部に対し、吸水性樹脂1~300質量部、繊維状化合物を1~300質量部を含む、水膨張性止水組成物が提供される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴム及び/又はエラストマーを含み、前記ゴム及び/又はエラストマー100質量部に対し、吸水性樹脂1~300質量部、繊維状化合物を1~300質量部を含む、水膨張性止水組成物。
【請求項2】
シリカ及び/または粘土鉱物を含む、請求項1に記載の水膨張性止水組成物。
【請求項3】
前記吸水性樹脂が、アクリル系重合体、アルキレンオキサイド系重合体、及びセルロース系化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種以上を含む、請求項1に記載の水膨張性止水組成物。
【請求項4】
前記繊維状化合物の平均長さが、0.5~10mmである、請求項1に記載の水膨張性止水組成物。
【請求項5】
前記繊維状化合物が、繊維状有機化合物を含む、請求項1に記載の水膨張性止水組成物。
【請求項6】
前記水膨張性止水組成物を厚さ2mm、幅30mm、長さ30mmの平板状に成形して得られる試験片を23℃で3日間水に浸漬して膨張させた後の膨張後試験片のアスペクト比である水膨張後アスペクト比が6未満である、請求項1に記載の水膨張性止水組成物。
【請求項7】
シール材として用いられる、請求項1~請求項6のうち何れか1項に記載の水膨張性止水組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シール材を製造可能な水膨張性止水組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
土木・建築分野では、トンネル内セグメントや地下ヒューム管あるいは上下水道用U字溝など様々な管の接続部に、漏水防止や止水の目的でテープ状やフィルム状等に成形された水膨張性止水材が用いられる。
【0003】
例えば、特許文献1には、水、および海水等のイオン水に対して良好な膨張性を示し、かつ、水中への溶出量が少なく、軽量で施工作業が容易な水膨張性発泡シール材を提供することを目的として、加硫可能なゴムにポリアクリル酸ソーダ架橋体を含む高吸水性樹脂、シリカ、ノニオン系界面活性剤、加硫剤および加硫促進剤、熱分解性発泡剤を含有させ、加硫および発泡処理して得られる水膨張性発泡シール材が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
水膨張性止水組成物を用いて製造されたシール材は、水に接すると水を吸収して体積が膨張することによって止水性を発揮する。このようなシール材は長さ方向、幅方向、厚み方向にほぼ均等に膨張する特性があるため、長尺品を使用した場合に長さ方向への膨張が絶対値として大きくなることになり、その影響でシール材が部分的に浮き上がる現象(蛇行現象)が発生することがあった。この現象を防止するために、シール材に芯材やステンレスメッシュを挿入したり、接着剤でシール材と部材とを強固に固定したりする必要があった。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、優先的に厚み方向に膨張することに加えて、水膨張性、水膨張後の形状保持性、及び可撓性に優れたシール材を製造可能な水膨張性止水組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意検討した。その結果、所定量の繊維状化合物を用いることにより、上記課題を解決しうることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明によれば、以下の発明が提供される。
[1]ゴム及び/又はエラストマーを含み、前記ゴム及び/又はエラストマー100質量部に対し、吸水性樹脂1~300質量部、繊維状化合物を1~300質量部を含む、水膨張性止水組成物。
[2]シリカ及び/または粘土鉱物を含む、[1]に記載の水膨張性止水組成物。
[3]前記吸水性樹脂が、アクリル系重合体、アルキレンオキサイド系重合体、及びセルロース系化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種以上を含む、[1]又は[2]に記載の水膨張性止水組成物。
[4]前記繊維状化合物の平均長さが、0.5~10mmである、[1]~[3]のうち何れか1項に記載の水膨張性止水組成物。
[5]前記繊維状化合物が、繊維状有機化合物を含む、[1]~[4]のうち何れか1項に記載の水膨張性止水組成物。
[6]前記水膨張性止水組成物を厚さ2mm、幅30mm、長さ30mmの平板状に成形して得られる試験片を23℃で3日間水に浸漬して膨張させた後の膨張後試験片のアスペクト比である水膨張後アスペクト比が6未満である、[1]~[5]のうち何れか1項に記載の水膨張性止水組成物。
[7]シール材として用いられる、[1]~[6]のうち何れか1項に記載の水膨張性止水組成物。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、優先的に厚み方向に膨張することに加えて、水膨張性、水膨張後の形状保持性、及び可撓性に優れたシール材を製造可能な水膨張性止水組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」という。)について詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。
【0011】
1.1.水膨張性止水組成物
<ゴム及び/又はエラストマー>
ゴム及び/又はエラストマーとしては、公知のものを広く使用できる。
【0012】
ゴムとしては、天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、1,2-ポリブタジエンゴム、スチレン-ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ニトリルゴム、ブチルゴム、塩素化ブチルゴム、塩素化ポリエチレンゴム、エチレン-プロピレンゴム、エチレン・プロピレン・ジエンゴム(EPDM)、エチレン・酢ビゴム、クロロプレンゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、アクリルゴム、エピクロルヒドリンゴム、再生ゴムなどの架橋可能なゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム、ウレタンゴム等が挙げられる。
【0013】
エラストマーとしては、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー、ポリウレタン系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマー、ポリブタジエン系熱可塑性エラストマー、スチレン系熱可塑性エラストマー等が挙げられる。
【0014】
スチレン系熱可塑性エラストマーは、ビニル芳香族炭化水素を主体とする重合体ブロック及び共役ジエンを主体とする重合体ブロックとからなるブロック共重合体が好ましく、ビニル芳香族炭化水素としては、例えば、スチレン、p-メチルスチレン、α-メチルスチレン、ビニルキシレン、モノクロルスチレン、ジクロロスチレン、モノブロモスチレン等があり、これらは単体だけでなく2種以上を組み合わせて使用しても良い。共役ジエンとしては1,3-ブタジエン、イソプレン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、1,3-ペンタジエン等があり、これらは単体だけでなく2種以上を組み合わせて使用しても良い。
【0015】
スチレン系熱可塑性エラストマーの具体的な例としては、スチレン・ブタジエン・スチレン(SBS)共重合体、スチレン・イソプレン・スチレン(SIS)共重合体、スチレン・エチレン・ブチレン・スチレン(SEBS)共重合体、スチレン・イソプレン・水添スチレン・イソプレン・スチレン(SEPS)共重合体、スチレン・エチレンプロピレン(SEP)共重合体、スチレン・エチレンプロピレン・スチレン(SEPS)共重合体、スチレン・エチレン‐エチレンプロピレン・スチレン(SEEPS)共重合体、等が挙げられる。
【0016】
これらのゴム及び/又はエラストマーは、一種もしくは二種以上を使用することができる。
【0017】
<吸水性樹脂>
吸水性樹脂とは、SAP(Super Absorbent Polymer)とも呼ばれ、自重の300倍から2000倍の水を吸収する吸水性能と、その水を非常に安定した状態で保持する保水性能とを持った高分子重合体である。吸水性樹脂としては、特に限定されないが、例えば、アクリル酸重合体部分ナトリウム塩やその架橋体、アクリル酸グラフト重合体部分ナトリウム塩やその架橋体、澱粉-アクリル酸グラフト重合体塩やその架橋体、酢酸ビニル-アクリル酸エステル共重合体のケン化物やその架橋体、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸-アクリル酸共重合体塩やその架橋体などのアクリル系重合体;カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチルセルロースアンモニウムなどのセルロース系化合物;ポリアルキレンオキサイドや、変性ポリアルキレンオキサイド等のアルキレンオキサイド系重合体;澱粉-アクリロニトリルグラフト重合体の加水分解物、アクリロニトリル共重合体若しくはアクリルアミド共重合体の加水分解物またはこれらの架橋体、カチオン性モノマーの架橋体、架橋イソブチレンーマレイン酸共重合体等が挙げられる。吸水性樹脂は1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0018】
このなかでも、アクリル系重合体、アルキレンオキサイド系重合体、及びセルロース系化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種以上を含むことが好ましく、アクリル酸重合体部分ナトリウム塩やその架橋体、アクリル酸グラフト重合体部分ナトリウム塩やその架橋体、カルボキシメチルセルロースナトリウム、変性ポリアルキレンオキサイドがより好ましい。このような吸水性樹脂を用いることにより、水膨張性がより向上する傾向にある。
【0019】
吸水性樹脂の含有量は、ゴム及び/又はエラストマー100質量部に対して、1~300質量部であり、好ましくは20~230質量部であり、より好ましくは45~150質量部である。吸水性樹脂の含有量が1質量部以上であることにより、水膨張性がより向上する傾向にある。また、吸水性樹脂の含有量が300質量部以下であることにより、亀裂の発生がより抑制され、形状保持性がより向上する傾向にある。吸水性樹脂の含有量は、ゴム及び/又はエラストマー100質量部に対して、例えば、1、5、10、20、30、40、45、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、210、220、230、240、250、260、270、280、290、300質量部であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0020】
<繊維状化合物>
繊維状化合物の形状は、繊維状であればよく、繊維の断面形状として例えば円形、楕円形、多角形などが挙げられる。繊維のL/Dは、例えば10超であり、50以上が好ましく、100以上がさらに好ましい。上限は、特に規定されないが、例えば10000である。繊維の直径は、例えば1~100μmであり、2~50μmが好ましく、5~20μmがさらに好ましい。
【0021】
繊維状化合物の平均長さは、例えば、0.1~20mmであり、0.25~15mmが好ましく、0.5~10mmがさらに好ましい。この平均繊維長は、例えば、0.1、0.2、0.25、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20mmであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0022】
繊維状化合物の平均長さは、十分大きな数、すなわち20本以上の繊維状化合物につき長さを測定し、その平均値を平均長さとすることによって算出することができる。各繊維状化合物の長さは、例えば電界放出形走査電子顕微鏡(FE-SEM)を用いて測定することができる。
【0023】
繊維状化合物は、繊維状有機化合物と繊維状無機化合物の少なくとも一方を含み、繊維状有機化合物を含むことが好ましい。この場合、後述の水膨張後アスペクト比が特に小さくなりやすいからである。
【0024】
繊維状有機化合物としては、例えば、メタ系アラミド繊維、パラ系アラミド繊維、アミド系繊維、セルロース繊維(例:パルプ繊維)、ポリパラフェニレンベンズビスオキサゾール繊維、ポリアリレート繊維、ポリエステル繊維、アクリル繊維、アクリロニトリル繊維、レーヨン、絹、綿、麻、羊毛、等を挙げることができる。
【0025】
繊維状無機化合物としては、例えば、ガラス繊維(Eガラス繊維、Cガラス繊維、Sガラス繊維、Dガラス繊維)、岩綿、セラミック繊維(シリカアルミナ繊維、アルミナ繊維、シリカ繊維)、ジルコニア繊維、カーボン繊維、セピオライト、パリゴルスカイト、ウォラストナイト、バルクアルカリアースシリケート繊維、石膏繊維、炭素繊維、金属繊維、スラグ繊維、バサルト繊維等を挙げることができる。
【0026】
繊維状化合物の含有量は、ゴム及び/又はエラストマー100質量部に対して1~300質量部であり、6~200質量部が好ましく、12~110質量部がさらに好ましい。繊維状化合物の含有量が1質量部未満であると、後述の水膨張後アスペクト比が大きくなりすぎる。一方で、繊維状化合物の含有量が300質量部を超えると、柔軟性が損なわれ可撓性が悪い。繊維状化合物の含有量は、ゴム及び/又はエラストマー100質量部に対して、例えば、1、3、6、9、12、20、30、40、45、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、210、220、230、240、250、260、270、280、290、300質量部であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0027】
<シリカ及び/又は粘土鉱物>
本実施形態の水膨張性止水組成物は、シリカ及び/または粘土鉱物を含むことが好ましい。シリカ及び/または粘土鉱物を配合することによって、本実施形態の組成物の水膨張性を高めることができる。
【0028】
シリカには、結晶性シリカ、非晶質無水シリカおよび含水非晶質シリカ等がある。粘土鉱物としては、天然もしくは合成の無機系粘土鉱物から選ばれた少なくとも1種が用いられる。粘土鉱物としては、ベントナイト、モンモリロナイト、ヘクトライト等のスメクタイト系粘土、セピオライト、パリゴルスカイト等の繊維状粘土、絹雲母(セリサイト)、イライト、海緑石(グローコナイト)、緑泥石(クロライト)、滑石(タルク)、沸石(ゼオライト)、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ヘクトライト、ソーコナイト、スチーブンサイト、クリストパライト、スメクタイト、カオリンなどが挙げられる。これら無機化合物は、1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0029】
シリカ及び/又は粘土鉱物の含有量は、ゴム及び/又はエラストマー100質量部に対して、例えば、0.5~310質量部であり、1~300質量部が好ましく、20~220質量部がさらに好ましく、40~140質量部がさらに好ましい。シリカ及び/又は粘土鉱物が少なすぎると水膨張性が不十分になりやすく、シリカ及び/又は粘土鉱物が多すぎると可撓性が悪くなりやすい。シリカ及び/又は粘土鉱物の含有量は、ゴム及び/又はエラストマー100質量部に対して、例えば、0.5、1、3、6、9、12、20、30、40、45、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、210、220、230、240、250、260、270、280、290、300、310質量部であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0030】
<その他の無機化合物>
本実施形態の水膨張性止水組成物は、その他の無機化合物を含んでもよい。その他の無機化合物は、繊維状化合物、シリカ、及び粘土鉱物以外の無機化合物である。その他の無機化合物を配合することによって、水膨張性を高めることができる。
【0031】
その他の無機化合物としては、例えば、アルミナ、アルミノシリケート、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化鉄、酸化錫、酸化アンチモン、水酸化アルミニウム、フェライト類等の金属酸化物;水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、ハイドロタルサイト等の含水無機物;塩基性炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛、炭酸ストロンチウム、炭酸バリウム等の金属炭酸塩;硫酸カルシウム、けい酸カルシウム等のカルシウム塩、ガラスビーズ、シリカ系バルン、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化けい素、カーボンブラック、グラファイト、炭素バルン、木炭粉末、各種金属粉、チタン酸カリウム、硫酸マグネシウム、チタン酸ジルコン酸鉛、アルミニウムボレート、硫化モリブデン、炭化けい素、ホウ酸亜鉛、各種磁性粉、フライアッシュ、無機中空フィラー、パーライト、黒曜岩、真珠岩、松脂岩、珪藻土、脱水汚泥、ホウ素、四ホウ酸ナトリウム水和物(ホウ砂)、無機リン系化合物などが挙げられる。
【0032】
その他の無機化合物の含有量は、例えば、ゴム及び/又はエラストマー100質量部に対して1~300質量部であり、20~220質量部が好ましく、40~140質量部がさらに好ましい。その他の無機化合物の含有量が300質量部を超えると、柔軟性が損なわれ可撓性が悪い。
【0033】
<その他添加剤>
本実施形態の水膨張性止水組成物は、上記成分の他に必要に応じて、通常のゴムに使用される酸化防止剤、紫外線防止剤、粘着付与樹脂、滑剤、分散剤、軟化剤などの各種の添加剤も併用することができる。
【0034】
1.2.物性
本実施形態の水膨張性止水組成物は、水膨張性が優れていることが好ましい。水膨張性は、試験片の浸漬前後の体積変化率に基づいて評価することができる。また、本実施形態の水膨張性止水組成物は、試験片の水膨張後アスペクト比が小さいことが好ましい。
【0035】
試験片は、水膨張性止水組成物を厚さ2mm、幅30mm、長さ30mmの平板状に成形して得ることができる。
【0036】
試験片の浸漬前後の体積変化率は、JIS K-6258に準じ、試験片を23℃にて水に3日間浸漬後、以下の式にて算出することができる。
体積変化率(%)={((c-d)-(a-b))/(a-b)}×100
a:水浸漬前の空中重量、b:水浸漬前の水中重量
c:水浸漬後の空中重量、d:水浸漬後の水中重量
【0037】
試験片の浸漬前後の体積変化率は、例えば、100~1000%であり、例えば、100、150、200、250、300、350,400、450、500、550、600、700、800、900、1000%であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内又は何れか以上若しくは以下であってもよい。
【0038】
水膨張後アスペクト比は、試験片を23℃で3日間水に浸漬して膨張させた後の膨張後試験片のアスペクト比を意味する。アスペクト比とは、鉛直方向の厚さに対する水平方向の幅の割合であり、平板状の試験片又は膨張後試験片の場合は、鉛直方向が厚み方向、水平方向が幅方向に一致すると見ることができる。このため、試験片又は膨張後試験片の水平方向の4辺の平均寸法を鉛直方向の最大寸法で除することによって、試験片又は膨張後試験片のアスペクト比を算出することができる。
【0039】
平板状の試験片のアスペクト比は、15であり、膨張後試験片のアスペクト比(つまり、水膨張後アスペクト比)は、10未満が好ましく、8未満がさらに好ましく、6未満がさらに好ましい。膨張後試験片のアスペクト比が小さいほど、本発明の水膨張性止水組成物を用いて製造したシール材が優先的に厚み方向に膨張すると言えるからである。膨張後試験片のアスペクト比は、例えば、0.5、1.0、1.5、2.0、2.5、3.0、3.5、4.0、4.5、5.0、5.5、6.0、6.5、7.0、7.5、8.0、8.5、9.0、9.5、10.0であり、ここで例示した数値の何れか以上で何れか未満であってもよい。
【0040】
1.3.用途
本実施形態の水膨張性止水組成物は、シール材として用いられることが好ましい。本実施形態の水膨張性止水組成物を用いて製造されたシール材は、シールド工法セグメント、ボックスカルバート、フリューム(鉄骨・ベンチ)、ヒューム管、マンホールの継手、貯水池、水路、プール等の目地、コンクリート打ち継ぎの止水板などの土木関係の止水部材としての用途;各種水槽、H鋼廻り、各種打ち継ぎなどの建築関係の止水部材としての用途;浄水槽、受水槽、ユニットバスなどの住宅機器関係の止水部材としての用途に好適に用いることができる。また、本実施形態の水膨張性止水組成物を用いて製造されたシール材は、淡水のみならず海水などの通水路に使用されるコンクリート製品等の接続部分に使用される場合においても、十分な止水効果を発揮することができる。
【0041】
2.水膨張性止水組成物及び成形体の製造方法
本実施形態の水膨張性止水組成物は、必要な成分を混練することにより製造することができる。また、水膨張性止水組成物を用いた成形体は、水膨張性止水組成物をプレス等によって成形することによって製造することができる。この成形体は、シール材として利用することができる。
【0042】
配合物を混練する装置としては、従来公知のミキサー、バンバリーミキサー、ニーダーミキサー、二本ロール等の混練装置がある。混練した配合物を成形する装置としては、従来公知のプレス成形、押出成形、カレンダー成形等の成形装置がある。また、成形体の形状は、シート状やテープ状など適宜用途に合わせて設計すればよい。
【実施例0043】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。なお、以下、各物質の使用量の単位は質量部である。
【0044】
1.水膨張性止水組成物の調整
表1~表5に記載の各成分を、3L加圧ニーダー(モリヤマ社製、型式:DS3-10MWB-S)を用いて、100℃で10分間混練することによって、実施例及び比較例の水膨張性止水組成物を得た。なお、表に記載する各物質の使用量の単位は特に断りがない限り質量部である。
【0045】
【0046】
【0047】
【0048】
【0049】
【0050】
表中の各成分の詳細は、以下のとおりである。なお、表中の繊維状有機又は無機化合物の名称の後の括弧内に記載の数値は、繊維の平均長さを示す。
<ゴム及び/またはエラストマー>
・EPDMゴム (住友化学株式会社製、「エスプレン505」)
・ブチルゴム (JSR株式会社製、「ブチル268」)
<熱可塑性樹脂>
・LDPE:宇部丸善ポリエチレン株式会社製「J5019」
<吸水性樹脂>
・アクリル酸重合体部分ナトリウム塩架橋物:株式会社日本触媒製、「アクアリックCS-6S」
・カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC-Na):林純薬工業株式会社製
<繊維状有機化合物>
・パルプ繊維、平均長さ2mm:王子製袋株式会社製「ネオファイバーNS-10」
・ポリアリレート繊維、平均長さ2mm:株式会社クラレ製「ベクトランUM1580」
・パラ系アラミド繊維、平均長さ0.25、0.5、3、10、12mm:帝人株式会社製「トワロンショートカットファイバー」
<繊維状無機化合物>
・アルミナ繊維、平均長さ0.5、7、10、11mm:株式会社ニチビ「ニチビアルフ」
<シリカ・粘土鉱物>
・シリカ:東ソー・シリカ株式会社製、「Nipsil VN3」
・セピオライト:近江鉱業株式会社製、「ミラクレーP150」
・ベントナイト:株式会社ホージュン製、「ベンゲル」
<その他の無機化合物>
・炭酸カルシウム:秩父石灰工業株式会社製、「TA-044」
【0051】
2.評価
実施例及び比較例により得られた水膨張性止水組成物をプレス機(温度:80℃、時間:1分)で厚さ2mmのシート状の成形体に加工し、得られた成形体を用いて、以下に示す各種評価を行った。
【0052】
2.1.水膨張性
JIS K-6258に準じ、厚さ2mm、幅30mm、長さ30mmの試験片を23℃にて水に3日間浸漬後、以下の式にて浸漬前後における体積変化率を算出した。浸漬前後における体積変化率が、試験片の吸水量、すなわち体積変化量を示しているものとして、水膨張性を以下の評価基準で評価した。
体積変化率(%)={((c-d)-(a-b))/(a-b)}×100
a:水浸漬前の空中重量、b:水浸漬前の水中重量
c:水浸漬後の空中重量、d:水浸漬後の水中重量
【0053】
(評価基準)
◎:体積変化率が300%以上
○:体積変化率が200%以上300%未満
△:体積変化率が100%以上200%未満
×:体積変化率が100%未満
【0054】
2.2.水膨張後形状保持性
厚さ2mm、幅30mm、長さ30mmの試験片を23℃にて水に3日間浸漬後、試験片の形状保持性を目視にて観察し、以下の評価基準で評価した。
(評価基準)
◎:水膨張後の試験片に亀裂の発生は認められない
○:水膨張後の試験片に亀裂の発生は認められるが水中から取り出しても崩れない
×:水膨張後の試験片を水中から取り出すと崩れる
【0055】
2.3.厚み方向の水膨張性
厚さ2mm、幅30mm、長さ30mmの試験片を、23℃で3日間水に浸漬して膨張させた後の膨張後試験片のアスペクト比を測定した。具体的には、膨張後試験片の水平方向の4辺の平均寸法を、鉛直方向の最大寸法で除した値を水膨張後アスペクト比とした。
◎:水膨張後アスペクト比が6未満
○:水膨張後アスペクト比が6以上8未満
△:水膨張後アスペクト比が8以上10未満
×:水膨張後アスペクト比が10以上
【0056】
2.4.可撓性
厚さ1mm、幅25mm、長さ100mmのSUS304板に両面テープを貼ったものを2枚用意し、長さ方向に3mmの間隔をあけて横並びにする。そこに、2枚のSUS304板をまたぐように、厚さ2mm、幅10mm、長さ100mmの試験片を貼り、試料片を貼った面とは逆方向に折り曲げ、試験片に亀裂が入った時点での角度を測定し、以下の基準で可撓性を判定した。なお、亀裂が入ったときの角度が大きいほど、可撓性が良好であることを示す。
◎:180度の角度でも亀裂なし
○:160度以上180度未満の角度で亀裂が発生
△:140度以上160度未満の角度で亀裂が発生
×:140度未満の角度で亀裂が発生
前記水膨張性止水組成物を厚さ2mm、幅30mm、長さ30mmの平板状に成形して得られる試験片を23℃で3日間水に浸漬して膨張させた後の膨張後試験片のアスペクト比である水膨張後アスペクト比が6未満である、請求項1に記載の水膨張性止水組成物。