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<図1>
  • 特開-車両の走行制御装置 図1
  • 特開-車両の走行制御装置 図2
  • 特開-車両の走行制御装置 図3
  • 特開-車両の走行制御装置 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024019849
(43)【公開日】2024-02-14
(54)【発明の名称】車両の走行制御装置
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/16 20060101AFI20240206BHJP
   B60W 40/04 20060101ALI20240206BHJP
【FI】
G08G1/16 C
B60W40/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022122580
(22)【出願日】2022-08-01
(71)【出願人】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110002907
【氏名又は名称】弁理士法人イトーシン国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】原田 玲央
(72)【発明者】
【氏名】倉持 拓明
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 聖也
(72)【発明者】
【氏名】間庭 宏貴
(72)【発明者】
【氏名】宗村 亘
(72)【発明者】
【氏名】向井 成樹
(72)【発明者】
【氏名】高橋 和志
【テーマコード(参考)】
3D241
5H181
【Fターム(参考)】
3D241BA49
3D241BB37
3D241CE04
3D241CE05
3D241CE08
3D241DA39Z
3D241DA52Z
3D241DA58Z
3D241DB01Z
3D241DB02Z
3D241DB05Z
3D241DB12Z
3D241DC01Z
3D241DC18Z
3D241DC21Z
3D241DC25Z
3D241DC33Z
3D241DC35Z
3D241DC50Z
5H181AA01
5H181CC04
5H181CC11
5H181CC12
5H181CC14
5H181LL01
5H181LL04
5H181LL09
(57)【要約】
【課題】車両前方に障害物等を認識した際の不要な或いは過剰な緊急回避制御を抑止し障害物等への衝突可能性を軽減し得る車両の走行制御装置を提供する。
【解決手段】車両の周囲環境を認識し周囲環境情報を取得する周囲環境認識装置10と、周囲環境情報に基づいて車両の走行制御を行う走行制御ユニット14とを具備し、周囲環境認識装置は、車両の前方に障害物を認識しかつ車両前方で隣接車線に複数の他車両を認識した場合に、複数の他車両のうち障害物に近い位置を走行中の第1他車両の影響を受けて移動する障害物の移動量を検出する障害物移動量検出部と、検出移動量に基づき第1他車両に後続する第2他車両の影響を受けて障害物が移動する際の推定移動量を算出する障害物移動量推定部とを備え、走行制御ユニットは推定移動量に応じて車両の走行制御を行う。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の周囲環境を認識し周囲環境情報を取得する周囲環境認識装置と、
前記周囲環境認識装置によって取得された周囲環境情報に基づいて前記車両の走行制御を行う走行制御ユニットと、
を具備し、
前記周囲環境認識装置は、
前記車両の前方に前記車両の走行を阻害する可能性のある障害物を認識し、かつ前記車両の前方であって前記車両が走行中の走行車線に隣接する隣接車線を走行中の複数の他車両を認識した場合に、
前記複数の他車両のうち前記障害物に近い位置を走行中の第1他車両の影響を受けて移動する前記障害物の移動量を検出する障害物移動量検出部と、
前記検出された移動量に基づいて、前記複数の他車両のうち前記第1他車両に後続する第2他車両の影響を受けて前記障害物が移動する際の推定移動量を算出する障害物移動量推定部と、
を備え、
前記走行制御ユニットは、前記推定移動量に応じて前記車両の走行制御を行うことを特徴とする車両の走行制御装置。
【請求項2】
前記障害物移動量推定部は、
前記周囲環境認識装置により取得された周囲環境情報に基づいて、前記推定移動量の補正演算を行うことを特徴とする請求項1に記載の車両の走行制御装置。
【請求項3】
前記障害物移動量推定部が行う前記推定移動量の補正演算は、
前記第1他車両の車両速度と、前記第2他車両の車両速度との差と、
前記第1他車両と前記障害物との離間距離と、前記第2他車両と前記障害物との離間距離との差と、
前記第1他車両のボディサイズと、前記第2他車両のボディサイズとの差と、
のうち少なくとも一つの条件に基づいて行われる演算であることを特徴とする請求項2に記載の車両の走行制御装置。
【請求項4】
前記複数の他車両は、前記車両の前方を、前記車両と同一方向に走行していることを特徴とする請求項1に記載の車両の走行制御装置。
【請求項5】
前記複数の他車両は、前記車両の前方を、前記車両の進行方向に対して反対方向に走行していることを特徴とする請求項1に記載の車両の走行制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車載カメラ装置等の周囲環境認識装置を用いて取得した周囲環境情報に基づいて前方障害物を回避するための走行制御を行う車両の走行制御装置に関する発明である。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車等の車両においては、運転者の運転操作を必要とせずに車両を自動的に走行させる自動運転制御技術の開発が進められている。また、この種の自動運転制御技術を利用して運転者の運転操作を支援するための各種の走行制御を実行し得る走行制御装置が、種々提案されており、一般に実用化されつつある。
【0003】
従来の車両の走行制御装置は、車両の周囲環境を認識し周囲環境情報として取得するための周囲環境認識装置として、例えば車載カメラ装置や車載レーダ装置等のセンシングデバイスが用いられている。このうち、車載カメラ装置は、取得した画像データに基づいて車両の周囲環境を認識する。また、車載レーダ装置は、車両の周囲に向けて電波を出力し、物体からの反射波を受信し、その受信波を解析することにより、車両の周囲環境を認識する。
【0004】
従来の車両の走行制御装置は、これらのセンシングデバイスを用いて車両の周囲環境を認識しながら車両を走行させる。このとき、車両の走行している前方の走行路上或いは当該走行路近傍に、例えば車両の走行を阻害する可能性のある障害物等(例えば落下物や浮遊物等)が認識された場合には、当該障害物等に車両が衝突するのを抑止するために、制動制御や操舵制御、スロットル制御等を含む緊急回避制御を行う走行制御がなされる。これにより、車両の走行を安全に継続させることができるようにしている。
【0005】
この種の走行制御技術、即ち障害物等を回避するための緊急回避制御を実現するための技術として、例えば車両の前方の走行路上或いは当該走行路近傍に認識された障害物等が、車両の前方において隣接車線上を走行する他車両(例えば併走他車両や対向他車両等)からの空力影響を受けて移動する際の移動状態を予測する技術が、例えば特開2021-11152号公報等によって種々提案されている。
【0006】
上記特開2021-11152号公報等によって開示されている車両の走行制御装置は、周囲環境情報に含まれる外乱要因(周囲風況や周囲車両の挙動等)によって移動する可能性のある物体を認識し、認識された物体の外乱要因による移動状態を認識すると共に、認識された外乱要因に基づいて当該物体の将来の移動状態を予測し、それらの認識結果または予測結果に応じて車両の走行制御を行うというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2021-11152号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
一般に移動可能性のある物体の挙動は、当該物体の素性(例えば形態、大きさ、重量等)と、そのときどきの外乱要因の状況等によって、さまざまに変化することが知られている。
【0009】
ところが、上記特開2021-11152号公報等によって開示されている従来の車両の走行制御装置においては、認識された移動可能性のある物体の移動状態を高精度に予測することが困難であるという問題点がある。したがって、物体の移動状態を高精度に予測することができなければ、不要な緊急回避制御が実行されてしまう可能性がある。この場合、運転者に不快感や違和感を与えてしまうことになる。
【0010】
また、上記特開2021-11152号公報等によって開示されている従来の車両の走行制御装置は、認識された物体の移動状態を認識した後に、以降の移動状態を予測するようにしている。このように、認識された物体の移動状態を認識してから、その後の移動状態の予測を行う場合、緊急回避制御を実行するための時間的余裕が少なくなってしまうという問題点がある。このような場合、過剰な緊急回避制御が実行されてしまう可能性がある。その結果、運転者に不快感や違和感を与えてしまうことになる。
【0011】
本発明の目的とするところは、走行中の車両の前方に認識された障害物等の移動量(移動距離や移動方向等)を高精度に予測して、より早期に障害物回避制御の実行を開始することができ、よって不要な或いは過剰な緊急回避制御を抑止することができると共に、車両が障害物等に衝突する可能性を軽減し得る車両の走行制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明の一態様の車両の走行制御装置は、車両の周囲環境を認識し周囲環境情報を取得する周囲環境認識装置と、前記周囲環境認識装置によって取得された周囲環境情報に基づいて前記車両の走行制御を行う走行制御ユニットと、を具備し、前記周囲環境認識装置は、前記車両の前方に前記車両の走行を阻害する可能性のある障害物を認識し、かつ前記車両の前方であって前記車両が走行中の走行車線に隣接する隣接車線を走行中の複数の他車両を認識した場合に、前記複数の他車両のうち前記障害物に近い位置を走行中の第1他車両の影響を受けて移動する前記障害物の移動量を検出する障害物移動量検出部と、前記検出された移動量に基づいて、前記複数の他車両のうち前記第1他車両に後続する第2他車両の影響を受けて前記障害物が移動する際の推定移動量を算出する障害物移動量推定部と、を備え、前記走行制御ユニットは、前記推定移動量に応じて前記車両の走行制御を行う。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、走行中の車両の前方に認識された障害物等の移動量(移動距離や移動方向等)を高精度に予測して、より早期に障害物回避制御の実行を開始することができ、よって不要な或いは過剰な緊急回避制御を抑止することができると共に、車両が障害物等に衝突する可能性を軽減し得る車両の走行制御装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態の走行制御装置の概略構成を示すブロック構成図
図2】本発明の一実施形態の走行制御装置による障害物回避制御が実行される場合の第1の状況を例示する概念図
図3】本発明の一実施形態の走行制御装置による障害物回避制御の流れを示すフローチャート
図4】本発明の一実施形態の走行制御装置による障害物回避制御が実行される場合の図2の状況とは異なる第2の状況を例示する概念図
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図示の実施の形態によって本発明を説明する。以下の説明に用いる各図面は模式的に示すものであり、各構成要素を図面上で認識できる程度の大きさで示すために、各部材の寸法関係や縮尺等を構成要素毎に異ならせて示している場合がある。したがって、本発明は、各図面に記載された各構成要素の数量や各構成要素の形状や各構成要素の大きさの比率や各構成要素の相対的な位置関係等に関して、図示の形態のみに限定されるものではない。
【0016】
なお、本実施形態の構成及び作用を説明するのに際しては、車両の通行区分を進行方向に向かって左側とする左側通行を基本とした道路システムであるものとして例示している。しかしながら、本実施形態の構成及び作用については、左右を入れ替えて考慮することにより、右側通行を基本とする道路システムに対しても、全く同様に応用することができる。
【0017】
まず、本発明の一実施形態の車両の走行制御装置の概略構成を、図1を用いて以下に説明する。図1は、本発明の一実施形態の走行制御装置の概略構成を示すブロック構成図である。
【0018】
図1に示すように、本実施形態の走行制御装置1の基本的な構成は、従来のこの種の車両の走行制御装置と略同様の構成を有する。したがって、以下に示す説明は、本実施形態の車両の走行制御装置1の概略的な説明のみに留め、詳細説明は省略している。
【0019】
本実施形態の走行制御装置1は、当該走行制御装置1を搭載する車両(以下、自車両という)の車室内の前寄り上部中央部分に固定された車載カメラ装置であるカメラユニット10を有する。
【0020】
カメラユニット10は、ステレオカメラ11と、画像処理ユニット(IPU)12と、画像認識ユニット(画像認識_ECU)13と、走行制御ユニット(走行_ECU)14とを有して構成されている。
【0021】
ステレオカメラ11は、車両の周囲環境を認識し周囲環境情報として取得するセンシングデバイスである。ステレオカメラ11は、メインカメラ11aと、サブカメラ11bとを有している。メインカメラ11a及びサブカメラ11bは、例えば、自車両の車室内において車幅方向の中央を挟んで左右対称な位置に、前方(進行方向)に向けて配置されている。
【0022】
メインカメラ11a及びサブカメラ11bは、例えば、CMOSイメージセンサ等によって構成され、互いに同期された所定の撮像周期にて、車外前方の所定の範囲の領域の周囲環境を異なる視点からの二つの画像を取得してステレオ画像を生成する。こうして生成されたステレオ画像データは、周囲環境画像データ(自車両の走行中の周囲環境を表す画像データ)としてIPU12へと出力される。
【0023】
IPU12は、ステレオカメラ11によって撮像された周囲環境画像データを受信し、受信した画像データに対して所定の画像処理を施し、画像上に表される物体(移動物体、静止物体)のほか、道路面上に標示される区画線等(以下、単に区画線等という)などの各種対象物のエッジを検出する。これにより、IPU12は、車両周囲の物体や区画線等を認識する。そして、IPU12は、左右の画像上において対応するエッジの位置ズレ量から距離情報を取得し、距離情報を含む画像情報(距離画像情報)を生成する。こうして生成された距離画像情報は、画像認識_ECU13へと出力される。
【0024】
画像認識_ECU13は、IPU12から受信した距離画像情報などに基づき、自車両が走行する走行路(自車走行路)の左右を区画する区画線の道路曲率〔1/m〕及び左右区画線間の幅(車線幅)を求める。この道路曲率及び車線幅の求め方は種々知られている。例えば、画像認識_ECU13は、道路曲率を周囲環境情報に基づき輝度差による二値化処理にて、左右の区画線を認識し、最小自乗法による曲線近似式などにて左右区画線の曲率を所定区間毎に求める。さらに、画像認識_ECU13は、左右両区画線の曲率の差分から車線幅を算出する。
【0025】
そして、画像認識_ECU13は、左右区画線の曲率と車線幅とに基づき、車線中央から自車両の車幅方向中央までの距離である自車横位置偏差等を算出する。
【0026】
また、画像認識_ECU13は、距離画像情報に対して所定のパターンマッチングなどを行い、道路に沿って延在するガードレール、縁石等の静止物体や、周囲を移動する移動物体(例えば周囲他車両や自転車、歩行者等を含む移動体)等の立体物の認識を行う。移動物体としての他車両としては、例えば、隣接車線を走行する他車両(併走他車両や対向他車両)や先行他車両、後続他車両等がある。
【0027】
ここで、画像認識_ECU13における立体物の認識では、例えば、立体物の種別、立体物の高さ、立体物までの距離、立体物の速度、立体物と自車両との相対速度、立体物同士の相対的な距離(例えば、道路端の縁石等と、その近傍にある区画線等との間の横方向距離など)などの認識が行われる。さらに、立体物が他車両である場合には、その大まかな車両タイプ(大型車、中型車、普通車、軽自動車或いは二輪車等のタイプ)或いは車両サイズ等も認識する。
【0028】
また、この場合において、画像認識_ECU13は、認識された立体物のうち、特に自車両の前方の走行路上或いは当該走行路近傍の道路上等において一時的に存在している物体(例えば落下物や浮遊物等)を、車両の走行を阻害する可能性のある障害物等として認識する。この場合において、画像認識_ECU13は、認識された障害物等と、周囲の立体物(例えば周囲他車両或いは自車両)との相対的な距離等も認識する。
【0029】
さらに、当該障害物等が移動している場合には、その移動量(例えば移動距離や移動方向等)についても認識する。この場合において、画像認識_ECU13は、障害物等の移動量(移動距離や移動方向等)を検出する障害物移動量検出部として機能する。
【0030】
なお、詳細は後述するが、画像認識_ECU13は、さらに、障害物移動量検出部により検出された移動量に基づいて、他車両等の外因の影響を受けて障害物等Fが移動する際の推定移動量を算出する障害物移動量推定部としても機能する。
【0031】
画像認識_ECU13において認識されたこれらの各種情報は、第1の周囲環境情報として走行_ECU14に出力される。
【0032】
このように、本実施形態の走行制御装置1において、画像認識_ECU13は、ステレオカメラ11及びIPU12と共に、車両周囲の第1の周囲環境を認識する周囲環境認識装置としての機能を実現する。
【0033】
走行_ECU14は、走行制御装置1を統括的に制御するためのメイン制御ユニットである。この走行_ECU14には、各種のサブ制御ユニットとして、コックピット制御ユニット(CP_ECU)21と、エンジン制御ユニット(E/G_ECU)22と、トランスミッション制御ユニット(T/M_ECU)23と、ブレーキ制御ユニット(BK_ECU)24と、パワーステアリング制御ユニット(PS_ECU)25等がCAN(Controller Area Network)等の車内通信回線を通して接続されている。
【0034】
さらに、走行_ECU14には、各種のセンサ類として、ロケータユニット36と、車載レーダ装置37、後方センサ38等が接続されている。
【0035】
CP_ECU21には、運転席の周辺に配設されたヒューマン・マシーン・インターフェース(HMI)31が接続されている。HMI31は、例えば、各種の運転支援制御の実行を指示するためのスイッチ、運転モードの切り換えを行うためのモード切換スイッチ、運転者の保舵状態を検出するステアリングタッチセンサ、運転者の顔認証や視線等を検出するドライバモニタリングシステム(DMS)、タッチパネル式のディスプレイ(表示パネル)、コンビネーションメータ、スピーカ等を有して構成されている。
【0036】
CP_ECU21は、走行_ECU14からの制御信号を受信すると、先行車等に対する各種警報や運転支援制御の実施状況及び自車両の周囲環境等に関する各種情報等を、HMI31を通じた表示や音声等により、運転者に適宜報知する。また、CP_ECU21は、HMI31を通じて運転者により入力された各種運転支援制御に対するオン/オフ操作状態等の各種入力情報を、走行_ECU14に出力する。
【0037】
E/G_ECU22の出力側には、電子制御スロットルのスロットルアクチュエータ32等が接続されている。また、E/G_ECU22の入力側には、図示しないアクセルセンサ等の各種センサ類が接続されている。
【0038】
E/G_ECU22は、走行_ECU14からの制御信号或いは各種センサ類からの検出信号等に基づき、スロットルアクチュエータ32に対する駆動制御を行う。これにより、E/G_ECU22は、エンジンの吸入空気量を調整し、所望のエンジン出力を発生させる。また、E/G_ECU22は、各種センサ類において検出されたアクセル開度等の信号を、走行_ECU14に出力する。
【0039】
T/M_ECU23の出力側には、油圧制御回路33が接続されている。また、T/M_ECU23の入力側には、図示しないシフトポジションセンサ等の各種センサ類が接続されている。T/M_ECU23は、E/G_ECU22において推定されたエンジントルク信号や各種センサ類からの検出信号等に基づき、油圧制御回路33に対する油圧制御を行う。これにより、T/M_ECU23は、自動変速機に設けられている摩擦係合要素やプーリ等を動作させ、エンジン出力を所望の変速比にて変速する。また、T/M_ECU23は、各種センサ類において検出されたシフトポジション等の信号を、走行_ECU14に出力する。
【0040】
BK_ECU24の出力側には、各車輪に設けられているブレーキホイールシリンダに出力するブレーキ液圧を各々調整するためのブレーキアクチュエータ34が接続されている。また、BK_ECU24の入力側には、図示しないブレーキペダルセンサ、ヨーレートセンサ、前後加速度センサ及び車速センサ等の各種センサ類が接続されている。
【0041】
BK_ECU24は、走行_ECU14からの制御信号或いは各種センサ類からの検出信号に基づき、ブレーキアクチュエータ34に対する駆動制御を行う。これにより、BK_ECU24は、自車両に対する強制的な制動制御やヨーレート制御等を行うためのブレーキ力を各車輪に適宜発生させる。また、BK_ECU24は、各種センサにおいて検出されたブレーキ操作状態や、ヨーレート、前後加速度、車速(自車速)等の信号を走行_ECU14に出力する。
【0042】
PS_ECU25の出力側には、ステアリング機構にモータの回転力による操舵トルクを付与する電動パワステモータ35が接続されている。また、PS_ECU25の入力側には、操舵トルクセンサや舵角センサ等の各種センサ類が接続されている。
【0043】
PS_ECU25は、走行_ECU14からの制御信号或いは各種センサ類からの検出信号に基づき、電動パワステモータ35に対する駆動制御を行う。これにより、PS_ECU25は、ステアリング機構に対する操舵トルクを発生させる。また、PS_ECU25は、各種センサ類において検出された操舵トルク及び舵角等の信号を、走行_ECU14に出力する。
【0044】
ロケータユニット36は、GNSSセンサ36aと、高精度道路地図データベース(道路地図DB)36b等を有して構成されている。
【0045】
GNSSセンサ36aは、複数の測位衛星から発信される測位信号を受信することにより、自車両の位置(緯度、経度、高度等)を測位する。
【0046】
道路地図DB36bは、HDD、SSDなどの大容量記憶媒体であり、高精度な道路地図情報(ダイナミックマップ)が記憶されている。この道路地図DB36bは、自動運転を行う際に必要とする車線データとして、車線幅データ、車線中央位置座標データ、車線の進行方位角データ、制限速度などを保有している。この車線データは、道路地図上の各車線に、数メートル間隔で格納されている。また、道路地図DBは、各種施設や駐車場等の情報を保有している。道路地図DB36bは、例えば、走行_ECU14からの要求信号に基づき、GNSSセンサ36aにおいて測位された自車位置を基準とする設定範囲の道路地図情報を、第3の周囲環境情報として走行_ECU14に出力する。
【0047】
このように、本実施形態の走行制御装置1において、道路地図DB36bは、GNSSセンサ36aと共に、車両周囲の第3の周囲環境を認識する周囲環境認識装置としての機能を実現する。
【0048】
車載レーダ装置37は、複数のセンサ(左前側方センサ37lf、右前側方センサ37rf、左後側方センサ37lr、右後側方センサ37rr)などによって構成されている。車載レーダ装置37を構成するこれら複数のセンサとしては、例えば、ミリ波レーダ等が適用されている。
【0049】
ここで、各ミリ波レーダは、出力した電波に対し、物体からの反射波を受けて解析することにより、主として歩行者や周囲他車両等の立体物のほか、道路端(例えば、路肩側の端部)に設けられる構造物等(例えば、縁石、ガードレール、建物等の壁、植栽等の立体物等)を検出する。さらに、各ミリ波レーダは、道路上に存在する立体的な障害物等をも検出する。この場合において、各ミリ波レーダは、立体物に関する具体的な情報として、立体物の横幅、立体物の代表点の位置(自車両との相対位置、相対距離)及び相対速度等を検出する。さらに、各ミリ波レーダは、道路上に存在する立体的な障害物等が移動した場合の移動量(移動距離や移動方向等)や、当該障害物等と他の立体物(周囲他車両等)との離間距離等を検出する。
【0050】
なお、左前側方センサ37lf及び右前側方センサ37rfは、例えば、フロントバンパの左右側部にそれぞれ配設されている。左前側方センサ37lf及び右前側方センサ37rfは、ステレオカメラ11の画像では認識することが困難な自車両の左右斜め前方及び側方の領域に存在する立体物を第2の周囲環境情報として検出する。
【0051】
また、左後側方センサ37lr及び右後側方センサ37rrは、例えば、リアバンパの左右側部にそれぞれ配設されている。左後側方センサ37lr及び右後側方センサ37rrは、左前側方センサ37lf及び右前側方センサ37rfでは認識することが困難な自車両の左右斜め側方及び後方の領域に存在する立体物を第2の周囲環境情報として検出する。
【0052】
このように、本実施形態の走行制御装置1において、車載レーダ装置37(前側方センサ37lf、右前側方センサ37rf、左後側方センサ37lr、右後側方センサ37rr)は、車両周囲の第2の周囲環境を認識する周囲環境認識装置としての機能を実現する。そして、これらセンサ37lf、37rf、37lr、37rrによる取得情報は、画像認識_ECU13へと送られる。
【0053】
後方センサ38は、例えば、ソナー装置等によって構成されている。この後方センサ38は、例えば、リアバンパに配設されている。後方センサ38は、左後側方センサ37lr及び右後側方センサ37rrでは認識することが困難な自車両の後方の領域に存在する立体物を第4の周囲環境情報として検出する。
【0054】
このように、本実施形態の走行制御装置1において、後方センサ38は、車両周囲の第4の周囲環境を認識する周囲環境認識装置としての機能を実現する。
【0055】
なお、画像認識_ECU13を含むカメラユニット10において認識された第1の周囲環境情報、ロケータユニット36において認識された第3の周囲環境情報、車載レーダ装置37(左前側方センサ37lf、右前側方センサ37rf、左後側方センサ37lr、右後側方センサ37rr)において認識された第2の周囲環境情報、後方センサ38において認識された第4の周囲環境情報にそれぞれ含まれる車外の各対象の座標は、何れも、走行_ECU14において、自車両の中心を原点とする三次元座標系の座標に変換される。
【0056】
走行_ECU14には、運転モードとして、手動運転モードと、走行制御のためのモードである第1の走行制御モード及び第2の走行制御モードと、退避モードと、が設定されている。これらの各運転モードは、例えば、HMI31に設けられているモード切換スイッチに対する操作状況等に基づき、走行_ECU14において選択的に切換可能となっている。
【0057】
ここで、手動運転モードとは、運転者による保舵を必要とする運転モードであり、例えば、運転者によるステアリング操作、アクセル操作およびブレーキ操作などの運転操作に従って、自車両を走行させる運転モードである。
【0058】
また、第1の走行制御モードも同様に、運転者による保舵を必要とする運転モードである。すなわち、第1の走行制御モードは、運転者による運転操作を反映しつつ、例えば、E/G_ECU22、BK_ECU24、PS_ECU25などの制御を通じて、主として、先行車追従制御(ACC:Adaptive Cruise Control)と、車線中央維持(ALKC:Active Lane Keep Centering)制御および車線逸脱抑制(Active Lane Keep Bouncing)制御と、を適宜組み合わせて行うことにより、目標走行経路に沿って自車両を走行させる、いわば半自動運転モードであり、或いは運転支援モードと呼ばれる運転モードである。
【0059】
ここで、先行車追従制御(ACC)は、基本的には、画像認識_ECU13から入力される第1の周囲環境情報に基づいて行われる。すなわち、先行車追従制御(ACC)は、例えば、画像認識_ECU13からの第1の周囲環境情報に含まれる先行車情報等に基づいて行われる。
【0060】
また、車線中央維持制御および車線逸脱抑制制御は、基本的には、画像認識_ECU13或いはロケータユニット36のうちの少なくとも何れか一方から入力される第1、第3の周囲環境情報に基づいて行われる。すなわち、車線中央維持制御および車線逸脱抑制制御は、例えば、画像認識_ECU13或いはロケータユニット36からの第3の周囲環境情報に含まれる車線区画線情報等に基づいて行われる。
【0061】
また、第2の走行制御モードとは、運転者による保舵、アクセル操作、ブレーキ操作を必要とすることなく、例えば、E/G_ECU22、BK_ECU24、PS_ECU25などの制御を通じて、主として先行車追従制御と、車線中央維持制御、車線逸脱抑制制御とを適宜組み合わせて行うことにより、目標ルート(ルート地図情報)に従って自車両を走行させるいわゆるハンズオフ機能を実現する自動運転モードである。
【0062】
退避モードは、例えば、第2の走行制御モードによる走行中に、当該モードによる走行が継続不能となり、且つ、運転者に運転操作を引き継ぐことができなかった場合(すなわち、手動運転モード、または、第1の走行制御モードに遷移できなかった場合)に、自車両を路側帯などに自動的に停止させるためのモードである。
【0063】
また、走行_ECU14は、上述の各運転モードにおいて、自車両の走行を阻害する可能性の高い障害物等(自車走行路上の先行車等や落下物等)が認識された場合には、緊急ブレーキ(AEB(Autonomous Emergency Braking):衝突被害軽減ブレーキ)制御や緊急操舵制御を伴う障害物回避制御を実行するか否かの判断を行い、適宜必要に応じて、所定の制御を実行する。
【0064】
なお、ロケータユニット36、画像認識_ECU13、走行_ECU14、CP_ECU21、E/G_ECU22、T/M_ECU23、BK_ECU24、PS_ECU25等の全部又は一部は、ハードウエアを含むプロセッサにより構成されている。
【0065】
ここで、プロセッサは、例えば、中央処理装置(CPU;Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)や、不揮発性メモリ(Non-volatile memory)、不揮発性記憶装置(Non-volatile storage)等のほか、非一過性の記録媒体(non-transitory computer readable medium)等を備える周知の構成及びその周辺機器等によって構成されている。
【0066】
ROMや不揮発性メモリ、不揮発性記憶装置等には、CPUが実行するソフトウエアプログラムやデータテーブル等の固定データ等が予め記憶されている。そして、CPUがROM等に格納されたソフトウエアプログラムを読み出してRAMに展開して実行し、また、当該ソフトウエアプログラムが各種データ等を適宜参照等することによって、上記各構成部や構成ユニット(13、14、21~25、36)等の各機能が実現される。
【0067】
また、プロセッサは、FPGA(Field Programmable Gate Array)などの半導体チップなどにより構成されていてもよい。また、上記各構成部や構成ユニット(13、14、21~25、36)等は電子回路によって構成してもよい。
【0068】
さらに、ソフトウエアプログラムは、コンピュータプログラム製品として、フレキシブルディスク、CD-ROM、DVD-ROM等の可搬型板媒体や、カード型メモリ、HDD(Hard Disk Drive)装置、SSD(Solid State Drive)装置等の非一過性の記憶媒体(non-transitory computer readable medium)等に、全体あるいは一部が記録されている形態としてもよい。
【0069】
なお、周囲環境認識装置としては、カメラユニット10に含まれるステレオカメラ11に代えて(若しくは加えて)、例えば単眼カメラを適用してもよい。また、車載レーダ装置37に代えて(若しくは加えて)、例えばLiDAR(Light Detection and Ranging)等を適用することもできる。
【0070】
このように構成された本実施形態の走行制御装置1の作用を、以下に説明する。図2図3は、本発明の一実施形態の走行制御装置の作用を説明する図である。このうち図2は、本実施形態の走行制御装置による障害物回避制御が実行される場合の第1の状況を例示する概念図である。また、図3は、本実施形態の走行制御装置による障害物回避制御の流れを示すフローチャートである。
【0071】
まず、本実施形態の走行制御装置1による障害物回避制御が実行される場合の第1の状況の一例を、図2を用いて簡単に説明する。
【0072】
図2に示す状況は、片側二車線を有する道路100において、自車両M及び複数の先行他車両(T1、T2)が同一方向(矢印S方向)に走行している状況を概念的に示している。
【0073】
ここで、図2の符号[2A]は、ある時点における各車両(M、T1、T2)の走行状況及び周囲状況を示している。また、同図2の符号[2B]は符号[2A]で示す状況から所定の時間が経過した後(t秒後)の各車両(M、T1、T2)の走行状況及び周囲状況を示している。
【0074】
図2において、符号100は、自車両M及び複数の先行他車両(T1、T2)が走行している道路を示している。道路100は、自車両M及び複数の先行他車両(T1、T2)が走行中の2つの車線(101、102)と、対向車線103とを有している。なお、図2においては、対向車線103の詳細な図示は省略している。
【0075】
また、道路100には、2つの車線(101、102)の境界線である区画線104と、2つの車線(101、102)と対向車線103との境界となる中央分離帯若しくは中央線105が設けられている。
【0076】
ここで、2つの車線のうち符号101で示す車線を第1車線というものとする。また、2つの車線のうち符号102で示す車線を第2車線というものとする。これら第1車線101と第2車線102とは隣接して延設されているものとしている。
【0077】
自車両Mは、本実施形態の走行制御装置1が搭載された車両である。図2に示す状況は、自車両Mが第1車線101を矢印S方向に走行中である状況を示している。なお、図2の[2B]に示す符号Mtは、同図2の[2A]の状況から所定の時間が経過した後(t秒後)の自車両を示している。
【0078】
また、図2において、符号Vは、自車両Mの走行制御装置1における周囲環境認識装置としてのカメラユニット10に含まれるステレオカメラ11の視野範囲(認識範囲)を概念的に示している。
【0079】
一方、図2において、複数の先行他車両(T1、T2)は、自車両Mの前方を走行している状況にある。この場合において、複数の先行他車両(T1、T2)は、自車両Mの走行中の第1車線101に隣接する第2車線102を走行しているものとしている。
【0080】
ここで、複数の先行他車両(T1、T2)のうち、符号T1で示す先行他車両は、自車両Mの前方を走行しており、かつ後述する障害物等Fに近い位置にある第1他車両である(以下、第1先行他車両T1と呼称する)。
【0081】
また、複数の先行他車両のうち(T1、T2)、符号T2で示す先行他車両は、自車両Mの前方を走行しており、かつ第1先行他車両T1の後方を走行し、自車両Mに近い位置にある第2他車両である(以下、第2先行他車両T2と呼称する)。
【0082】
これら第1先行他車両T1及び第2先行他車両T2の進行方向は、自車両Mと同方向(矢印S方向)である。なお、図2の[2B]に示す符号T1t、T2tは、同図2の[2A]の状況から所定の時間が経過した後(t秒後)の第1先行他車両及び第2先行他車両を示している。
【0083】
ここで、図2においては、自車両M及び第1先行他車両T1、第2先行他車両T2の前方であって道路100上に、自車両M及び第1先行他車両T1、第2先行他車両T2の走行を阻害する可能性のある物体、例えば落下物又は浮遊物等の障害物(以下、単に障害物等と略記する)Fが存在している状況を示している。
【0084】
このような状況下にあるとき、本実施形態の走行制御装置1は、図3に示すフローチャート(障害物回避制御)を実行する。
【0085】
まず、本実施形態の走行制御装置1が搭載された自車両Mが、図2の[2A]で示すように、道路100の第1車線101を走行している。このとき、図3のステップS1において、自車両Mの走行制御装置1の走行_ECU14は、周囲環境認識装置(例えばカメラユニット10等)を制御して周囲環境の認識処理を継続して行っている。
【0086】
ステップS2において、走行_ECU14は、自車両Mの前方の道路100上に障害物等Fを検出したか否かの確認を行う。ここで、自車両Mの前方の道路100上に障害物等Fを検出した場合には、次のステップS3の処理に進む。また、自車両Mの前方の道路100上に障害物等Fを検出しない場合は、上述のステップS1の処理に戻る。
【0087】
ステップS3において、走行_ECU14は、自車両Mの前方であって、自車両Mが走行中の第1車線101に隣接する第2車線102を自車両Mと同方向に先行して走行する複数の先行他車両(T1、T2)を検出したか否かの確認を行う。ここで、自車両Mの前方であって、隣接車線(第2車線102)に複数の先行他車両(T1、T2)を検出した場合には、次のステップS4の処理に進む。また、自車両Mの前方であって、隣接車線(第2車線102)に複数の先行他車両(T1、T2)を検出しない場合は、ステップS8の処理に進む。
【0088】
つまり、上述のステップS3の処理にて、ステップS8の処理に進む場合は、隣接車線(第2車線102)に先行他車両が単独で存在するか、または先行他車両が存在しない場合が想定される。このような場合には、ステップS8において、走行_ECU14は、通常の障害物回避制御を実行する。
【0089】
ここで、通常の障害物回避制御とは、検出されている障害物等Fを、自車両Mの走行を阻害する可能性のある障害物等として認識し、当該障害物等Fとの衝突を回避するための周知の走行制御である。この通常の障害物回避制御は、例えば制動制御、操舵制御、スロットル制御等を含む周知の走行制御、或いは運転者への警告表示や通知を行う制御等が行われる。この通常の障害物回避制御は、周知の技術が適用されるものであるので、その詳細説明は省略する。
【0090】
そして、ステップS8の処理(通常の障害物回避制御)が終了したら、元の処理(ステップS1の処理)に戻り、以降の処理を繰り返す。
【0091】
一方、上述のステップS3の処理にて、自車両Mの前方であって、隣接車線(第2車線102)に複数の先行他車両(T1、T2)を検出した場合に、ステップS4の処理に進むと、このステップS4において、走行_ECU14は、検出されている障害物等Fの移動量(移動距離、移動方向等)を検出する。その後、ステップS5の処理に進む。
【0092】
ここで、図2の[2A]で示すような状況下においては、複数の先行他車両(T1、T2)のうち先行している第1先行他車両T1が、障害物等Fを回避しつつ、当該障害物等Fの側方近傍を通過することが予想される。このとき、障害物等Fは、第1先行他車両T1の影響、例えば側方近傍通過時の風圧等の影響を受けて移動する可能性がある。
【0093】
具体的には、例えば図2の[2A]に示す障害物等Fは、第1先行他車両T1の影響を受けて同図2の[2A]に示す矢印P方向に所定の距離だけ移動するものとしている。ここで、図2の[2B]は、[2A]で示す状況から所定時間(t秒)が経過した後の状況を示している。
【0094】
つまり、図2の[2B]に示す(所定時間t秒後の)状況は、障害物等Fが、初期位置([2A]の符号Fで示す位置)から位置Faに移動した状況である。
【0095】
このように、障害物等Fが第1先行他車両T1の影響を受けて所定の移動量(移動距離、移動方向等)だけ移動すると、自車両Mの走行制御装置1は、障害物等Fの移動量(移動距離、移動方向等)を検出する(ステップS4)。
【0096】
ここで、障害物等Fの移動量とは、例えば移動方向(矢印Pの向き)や移動距離(矢印Pの長さ)等で表される。この障害物等Fの移動量は、周囲環境認識装置(例えばカメラユニット10等)による認識結果に基づいて検出することができる。検出された障害物等Fの移動量は、走行_ECU14の不図示の記憶部に記憶される。
【0097】
なお、図2の[2A]から[2B]の状況に変化する所定時間(t秒)の間には、自車両Mは、図2の矢印Dtで示す距離だけ矢印S方向に走行し、移動している。同様に、複数の先行他車両(T1、T2)も所定の距離だけ同方向(矢印S方向)に移動する。
【0098】
このとき、上述したように隣接車線(第2車線102)には、第1先行他車両T1に続いて第2先行他車両T2が走行している。したがって、第2先行他車両T2は、移動後の障害物等F(位置Fa)に接近している。
【0099】
ここで、第2先行他車両T2もまた、移動後の位置Faに存在する障害物等Fを回避しつつ、当該障害物等Fの側方近傍を通過することが予想される。このときにも、障害物等Fは、第2先行他車両T2の影響を受けて移動する可能性がある。
【0100】
そこで、本発明の一実施形態の走行制御装置1においては、図3のステップS4において、第1先行他車両T1の影響による障害物等Fの移動量を検出し、次のステップS5の処理において、その検出情報に基づいて第2先行他車両T2の影響による障害物等Fの推定移動量を算出するようにしている。
【0101】
即ち、図3のステップS5において、走行_ECU14は、上述のステップS4の処理にて検出された移動量に基づいて、第2先行他車両T2の影響による障害物等Fの推定移動量を算出する。その後、ステップS6の処理に進む。
【0102】
ここで、推定移動量を算出するのに際しては、第1先行他車両T1の影響による障害物等Fの検出移動量を、そのまま第2先行他車両T2の影響による障害物等Fの推定移動量として当てはめて算出してもよい。
【0103】
しかしながら、例えば、上述のステップS4の処理にて検出される移動量(検出結果)は、各種の周囲環境条件によって異なるものになることは容易に推測できる。
【0104】
この場合において、障害物等Fの移動量を変化させる各種の周囲環境条件としては、具体的には、例えば対象とする障害物等Fの近傍を車両が通過する際の車両速度や、障害物等Fと当該通過車両との離間距離や、同車両のボディタイプ(例えば軽自動車、普通乗用車、中型車、大型車等の各種のタイプ)等、さまざまな条件がある。
【0105】
そこで、本実施形態の走行制御装置1においては、次のステップS6において、走行_ECU14は、各種周囲環境条件に基づいて障害物等Fの推定移動量を補正する演算処理を行う。ここで、各種の周囲環境条件は、周囲環境認識装置(例えばカメラユニット10等)によって取得されている周囲環境情報(認識結果)を参照する。
【0106】
このステップS6の処理にて行われる補正演算処理は、例えば、
(1)第1先行他車両T1と第2先行他車両T2との車両速度差、
(2)第1先行他車両T1と障害物等Fとの離間距離と、第2先行他車両T2と障害物等Fとの離間距離との差、
(3)第1先行他車両T1と第2先行他車両T2とのボディタイプの差、
等のうちの少なくとも一つの条件を考慮して行われる。
【0107】
このようにして、補正演算を含む推定移動量が算出されると、例えば、図2の[2B]に示す矢印P1方向(点線)に所定の距離だけ移動した後の推定位置(符号Fb)が推定できる。
【0108】
続いて、ステップS7において、走行_ECU14は、算出された補正推定移動量に応じて、障害物等Fの推定位置Fbを対象として、障害物回避制御を実行する。ここで、障害物回避制御は、例えば制動制御、操舵制御、スロットル制御等を含む周知の走行制御であり、或いは運転者への警告表示又は警告通知等を行う制御等が含まれる。
【0109】
以上説明したように上記一実施形態によれば、第1先行他車両T1の影響を受けて障害物等Fが移動する移動量を検出し、その検出結果に基づいて、第2先行他車両T2の影響を受けた場合の障害物等Fの移動量を推定する。そして、第2先行他車両T2の影響を受けて障害物等Fが実際に移動する前に、算出された推定移動量に基づいて、自車両Mによる障害物回避制御や警告表示又は警告通知等を実行する。
【0110】
なお、本実施形態の走行制御装置1による障害物回避制御は、本実施形態の走行制御装置1を搭載した自車両Mが道路100の第1車線101上を走行中であって、走行制御装置1によって、当該道路100上の前方に障害物等Fが検出され、かつ隣接車線(第2車線102)上において、自車両Mよりも前方に複数の先行他車両(T1、T2)を検出している場合に実行される。
【0111】
したがって、本実施形態によれば、第1先行他車両T1の影響による障害物等Fの実際の移動量を検出して、その検出結果を記憶保持するようにしているので、後続の第2先行他車両T2の影響による障害物等Fの移動量の推定精度を、より一層向上させることができる。
【0112】
これにより、不要な回避制御若しくは過剰な回避制御等、運転者に不快感や違和感を与える可能性のある走行制御を抑止することができると同時に、前方の障害物等Fと衝突する可能性をより軽減することができる。
【0113】
上述の一実施形態においては、図2に示すように、第1車線101を走行中の自車両Mと、隣接車線(第2車線102)を走行する複数の先行他車両(T1、T2)とが同方向(矢印S方向)に走行している状況を想定して説明している。しかしながら、本発明の一実施形態の走行制御装置1による障害物回避制御は、上述の状況(図2の状況)に限られることはない。
【0114】
例えば、図2に示す道路100において、自車両Mが第2車線102を走行し、複数の先行他車両(T1、T2)が隣接車線である第1車線101を走行する状況で、自車両Mと複数の先行他車両(T1、T2)とが、同方向(矢印S方向)に走行している状況であっても、全く同様に適用できる。
【0115】
さらに、図2に示す状況とは異なる図4に示すような第2の状況下においても、本実施形態の走行制御装置1による障害物回避制御は、上述の図2に示す状況下の場合と略同様に実行され得る。ここで、図4に示す第2の状況について、以下に簡単に説明する。
【0116】
図4に示す第2の状況は、往復二車線の一般的な形態の道路100Aにおいて、自車両M及び複数の対向他車両(T3、T4)が互いに対向する方向(矢印S、S1方向)に走行している状況を概念的に示している。
【0117】
ここで、図4の符号[4A]は、ある時点における各車両(M、T3、T4)の走行状況及び周囲状況を示している。また、同図4の符号[4B]は符号[4A]で示す状況から所定の時間が経過した後(t秒後)の各車両(M、T3、T4)の走行状況及び周囲状況を示している。
【0118】
図4において、符号100Aは、自車両M及び複数の対向他車両(T3、T4)が走行している道路を示している。道路100Aは、自車両Mが走行中の自車線101と、複数の対向他車両(T3、T4)が走行中の対向車線102Aとを有している。2つの車線(101、102A)は、中央区画線104Aで区切られている。
【0119】
ここで、自車線101を第1車線というものとする。また、対向車線102Aを第2車線というものとする。これら第1車線101と第2車線102Aとは隣接して延設されている。
【0120】
自車両Mは、本実施形態の走行制御装置1が搭載された車両である。図4に示す状況は、自車両Mが第1車線101を矢印S方向に走行中である状況を示している。なお、図4の[4B]に示す符号Mtは、同図4の[4A]の状況から所定の時間が経過した後(t秒後)の自車両を示している。
【0121】
ここで、図4の[4A]から[4B]の状況に変化する所定時間(t秒)の間には、自車両Mは、図4の矢印Dtで示す距離だけ矢印S方向に走行し、移動している。同様に、複数の対向他車両(T3、T4)も当該t秒間に所定の距離だけ矢印S1方向に移動する。
【0122】
また、図4において、符号Vは、自車両Mの走行制御装置1における周囲環境認識装置としてのカメラユニット10に含まれるステレオカメラ11の視野範囲(認識範囲)を概念的に示している。
【0123】
一方、図4において、複数の対向他車両(T3、T4)は、自車両Mの前方から自車両Mに向かって走行してくる状況として示している。この場合において、複数の対向他車両(T3、T4)は、自車両Mの走行中の第1車線101に隣接する第2車線102を走行している状況にある。
【0124】
ここで、複数の対向他車両(T3、T4)のうち、符号T3で示す対向他車両は、自車両Mの前方を走行しており、かつ後述する障害物等Fに近い位置にある第1他車両である(以下、第1対向他車両T3と呼称する)。
【0125】
また、複数の対向他車両(T3、T4)のうち、符号T4で示す対向他車両は、自車両Mの前方を走行しており、かつ第1対向他車両T3の後方を走行する第2他車両である(以下、第2対向他車両T4と呼称する)。
【0126】
これら第1対向他車両T3及び第2対向他車両T4の進行方向は、自車両Mの進行方向(矢印S方向)とは反対方向(矢印S1方向)である。なお、図4の[4B]に示す符号T3t、T4tは、同図4の[4A]の状況から所定の時間が経過した後(t秒後)の第1対向他車両及び第2対向他車両を示している。
【0127】
ここで、自車両M及び第1対向他車両T3、第2対向他車両T4のそれぞれの前方であって、道路100上には、自車両M及び第1対向他車両T3、第2対向他車両T4の走行を阻害する可能性のある物体(障害物等F)が存在しているものとする。
【0128】
図4の[4A]で示す状況下において、複数の対向他車両(T3、T4)のうち先行する第1対向他車両T3は、障害物等Fを回避しつつ、当該障害物等Fの側方近傍を通過する。すると、このとき障害物等Fは、第1対向他車両T3の影響(例えば側方近傍通過時の風圧等の影響)を受けて移動する。
【0129】
例えば、図4の[4B]に示す(所定時間t秒後の)状況では、障害物等Fが、初期位置([4A]の符号Fで示す位置)から矢印P方向に位置Faまで移動した状況を想定し、図示している。
【0130】
このようにして、障害物等Fが第1対向他車両T3の影響を受けて所定の移動量だけ移動するとき、自車両Mの走行制御装置1は、障害物等Fの移動量を検出する(図3のステップS4参照)。
【0131】
このとき、上述したように隣接車線(第2車線102A)には、第1対向他車両T3に続いて第2対向他車両T4が走行している。したがって、第2対向他車両T4は、移動後の障害物等F(位置Fa)に接近しつつある。
【0132】
ここで、第2対向他車両T4もまた、移動後の位置Faに存在する障害物等Fを回避しつつ、当該障害物等Fの側方近傍を通過することになると予想される。このときにも、障害物等Fは、第2対向他車両T4の影響を受けて移動することが予測できる。
【0133】
例えば、障害物等Fは、第2対向他車両T4の影響を受けて、図4の[4B]に示す位置Faから矢印P1方向に所定の距離だけ移動した推定位置(符号Fb)に移動するものと予測される。
【0134】
この場合において、第2対向他車両T4の影響による障害物等Fの推定移動量は、第1対向他車両T3の影響による障害物等Fの検出移動量に基づいて算出できる。
【0135】
このようにして算出された推定移動量に対しては、さらに、周囲環境条件に応じて補正演算を行って、より高精度な補正推定移動量が算出される。
【0136】
そして、算出された補正推定移動量に応じて、障害物等Fの推定位置Fbを対象として障害物回避制御が実行される。これにより、図4に示す状況であっても、図2に示す状況の場合と同様に、図3のフローチャートに示す制御を適用することができる。そして、その場合においても同様の効果を得ることができる。
【0137】
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、発明の主旨を逸脱しない範囲内において種々の変形や応用を実施することができることは勿論である。さらに、上記実施形態には、種々の段階の発明が含まれており、開示される複数の構成要件における適宜な組み合わせによって、種々の発明が抽出され得る。例えば、上記一実施形態に示される全構成要件から幾つかの構成要件が削除されても、発明が解決しようとする課題が解決でき、発明の効果が得られる場合には、この構成要件が削除された構成が発明として抽出され得る。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。この発明は、添付のクレームによって限定される以外にはそれの特定の実施態様によって制約されない。
【符号の説明】
【0138】
1…走行制御装置
10…カメラユニット
11…ステレオカメラ
11a…メインカメラ
11b…サブカメラ
13…画像認識ユニット(画像認識_ECU)
14…走行制御ユニット(走行_ECU)
21…コックピット制御ユニット(CP_ECU)
22…エンジン制御ユニット(E/G_ECU)
23…トランスミッション制御ユニット(T/M_ECU)
24…ブレーキ制御ユニット(BK_ECU)
25…パワーステアリング制御ユニット(PS_ECU)
31…ヒューマン・マシーン・インターフェース(HMI)
32…スロットルアクチュエータ
33…油圧制御回路
34…ブレーキアクチュエータ
35…電動パワステモータ
36…ロケータユニット
36a…GNSSセンサ
36b…高精度道路地図データベース(道路地図DB
37…車載レーダ装置
37lf…左前側方センサ
37lr…左後側方センサ
37rf…右前側方センサ
37rr…右後側方センサ
38…後方センサ
100,100A…道路
101…自車線(第1車線)
102…第2車線(隣接車線)
102A…第2車線(隣接車線、対向車線)
103…対向車線
104…区画線
104A…中央区画線
105…中央分離帯若しくは中央線
F…障害物等
M…自車両
T1…第1先行他車両(第1他車両)
T2…第2先行他車両(第2他車両)
T3…第1対向他車両(第1他車両)
T4…第2対向他車両(第2他車両)
図1
図2
図3
図4