(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024019877
(43)【公開日】2024-02-14
(54)【発明の名称】プレキャストコンクリートブロックの製作方法
(51)【国際特許分類】
E02D 27/12 20060101AFI20240206BHJP
E02D 27/32 20060101ALI20240206BHJP
【FI】
E02D27/12 Z
E02D27/32 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022122622
(22)【出願日】2022-08-01
(71)【出願人】
【識別番号】000166627
【氏名又は名称】五洋建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100172096
【弁理士】
【氏名又は名称】石井 理太
(74)【代理人】
【識別番号】100088719
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 博史
(72)【発明者】
【氏名】大本 武
(72)【発明者】
【氏名】北山 浩二
(72)【発明者】
【氏名】高見 諒
【テーマコード(参考)】
2D046
【Fターム(参考)】
2D046CA01
2D046DA03
(57)【要約】
【課題】製作ヤードにおける作業を簡略化し、効率よく製作可能なプレキャストコンクリートブロックの製作方法の提供。
【解決手段】このプレキャストコンクリートブロックの製作方法は、鉄筋取付板7,7に複数の鉄筋8,8…の先端部が予め固定されてなる鉄筋組立体20を形成しておき、鞘管6を型枠底面部40に所定の位置及び姿勢で設置した後、鉄筋取付板20を鞘管6の外周面に溶接して固着し、しかる後、型枠42内にコンクリートを打設して鞘管6に複数の鉄筋8,8…が固着されたコンクリートブロック5を形成する。
【選択図】
図11
【特許請求の範囲】
【請求項1】
杭頭部が挿入される鞘管を備え、該鞘管に互いに間隔をおいて平行配置された複数の鉄筋が固着されてなるプレキャストコンクリートブロックの製作方法において、
鉄筋取付板に前記複数の鉄筋の先端部が予め固定されてなる鉄筋組立体を形成しておき、
前記鞘管を型枠底面部に所定の位置及び姿勢で設置した後、前記鉄筋取付板を前記鞘管の外周面に溶接し、前記鉄筋組立体を前記鞘管に固着し、
しかる後、前記鞘管及び前記鉄筋組立体を囲むように設置された型枠内にコンクリートを打設して前記鞘管に前記複数の鉄筋が固着されたコンクリートブロックを形成することを特徴とするプレキャストコンクリートブロックの製作方法。
【請求項2】
互いに所定の間隔をおいて配置した複数の鞘管を所定の姿勢に調整して前記型枠底面部に設置した固定具を介して固定した後、
前記複数の鉄筋の両端がそれぞれ前記鉄筋取付板に固定された鉄筋組立体を隣り合う前記鞘管間に配置し、前記鉄筋取付板をそれぞれ前記鞘管の所定の位置に溶接して隣り合う前記鞘管間に前記鉄筋組立体を架設する請求項1に記載のプレキャストコンクリートブロックの製作方法。
【請求項3】
前記鞘管の底部内周面に周方向に間隔をおいて複数の高さ調整部材を設置し、
該複数の高さ調整部材をそれぞれ調節して前記鞘管を所定の姿勢に調節する請求項1又は2に記載のプレキャストコンクリートブロックの製作方法。
【請求項4】
前記鉄筋組立体を前記鞘管の上下複数段に配置して固着する請求項1又は2に記載のプレキャストコンクリートブロックの製作方法。
【請求項5】
前記鉄筋組立体を前記鞘管の上下複数段に配置して固着する請求項3に記載のプレキャストコンクリートブロックの製作方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、桟橋等の杭支持構造物の上部工を構成するプレキャストコンクリートブロックの製作方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ドルフィンや桟橋等の杭支持構造物1は、
図13、
図14に示すように、水底地盤2に打設された複数の鋼管杭3,3と、鋼管杭3,3に支持されたコンクリート製の上部工とを備えている。尚、図中符号4は水面である。
【0003】
この種の杭支持構造物1の構築は、人手不足の解消、海上作業の安全性向上、上部コンクリートの品質向上等を目的として、上部工を構成するプレキャストコンクリート部材(以下、PCa部材5という)を別途陸上ヤード等で製作しておき、このPCa部材5を鋼管杭3,3の杭頭部に接合させる工法が広く用いられている(例えば、特許文献1を参照)。
【0004】
この種のPCa部材5は、杭頭部が挿入される鞘管6と、鞘管6の外周面に溶接によって固定された鉄筋取付板7と、鉄筋取付板7に先端部が溶接によって固着された鉄筋8,8…とを備え、鉄筋コンクリート造のブロック状に形成されている。
【0005】
従来、このPCa部材5は、製作ヤードの型枠底面部に鋼管杭3,3の間隔に合わせて鞘管6を配置し、位置調整をした後、鞘管6に固着された鉄筋取付板7間に各鉄筋8,8…の先端部を溶接によって固着させるようになっている。
【0006】
その際、各鞘管6の位置は、実際に打設された鋼管杭3,3間の距離に合わせて配置されるため、鉄筋8,8…を鞘管6が配置された後に鉄筋取付板7に固着させる際の溶接長によって、水平方向の位置ズレを調整するようになっている。
【0007】
そして、鉄筋8,8…の配置が完了したら、鞘管6及び鉄筋8,8…の周囲に型枠を設置し、型枠内にコンクリートを打設する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上述の如き従来の技術では、製作ヤードにおいて、複数の鞘管が配置された状態で鞘管に固着された鉄筋取付板に各鉄筋の先端部を一本ずつ位置を調整しながら溶接しなければならないため、溶接作業の回数が多く、作業が煩雑であるという問題があった。
【0010】
また、鉄筋が上下方向に複数段に亘って配置される場合には、鉄筋を鉄筋取付板に溶接する際、他の段の鉄筋が既に溶接されている場合、当該既に固着された鉄筋が邪魔となり、作業効率が悪いという問題があった。
【0011】
さらに、エポキシ樹脂によって被覆された鉄筋を使用する場合、製作ヤードでの溶接作業によって樹脂が剥がれ、再度被覆することが困難なことから、品質の低下を招くおそれがあった。
【0012】
そこで、本発明は、このような従来の問題に鑑み、製作ヤードにおける作業を簡略化し、効率よく製作可能なプレキャストコンクリートブロックの製作方法の提供を目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上述の如き従来の問題を解決するための請求項1に記載の発明の特徴は、 杭頭部が挿入される鞘管を備え、該鞘管に互いに間隔をおいて平行配置された複数の鉄筋が固着されてなるプレキャストコンクリートブロックの製作方法において、鉄筋取付板に前記複数の鉄筋の先端部が予め固定されてなる鉄筋組立体を形成しておき、前記鞘管を型枠底面部に所定の位置及び姿勢で設置した後、前記鉄筋取付板を前記鞘管の外周面に溶接し、前記鉄筋組立体を前記鞘管に固着し、しかる後、前記鞘管及び前記鉄筋組立体を囲むように設置された型枠内にコンクリートを打設して前記鞘管に前記複数の鉄筋が固着されたコンクリートブロックを形成することにある。
【0014】
請求項2に記載の発明の特徴は、請求項1の構成に加え、互いに所定の間隔をおいて配置した複数の鞘管を所定の姿勢に調整して前記型枠底面部に設置した固定具を介して固定した後、前記複数の鉄筋の両端がそれぞれ前記鉄筋取付板に固定された鉄筋組立体を隣り合う前記鞘管間に配置し、前記鉄筋取付板をそれぞれ前記鞘管の所定の位置に溶接して隣り合う前記鞘管間に前記鉄筋組立体を架設することにある。
【0015】
請求項3に記載の発明の特徴は、請求項1又は2の構成に加え、前記鞘管の底部内周面に周方向に間隔をおいて複数の高さ調整部材を設置し、該複数の高さ調整部材をそれぞれ調節して前記鞘管を所定の姿勢に調節することにある。
【0016】
請求項4に記載の発明の特徴は、請求項1又は2の構成に加え、前記鉄筋組立体を前記鞘管の上下複数段に配置して固着することにある。
【0017】
請求項5に記載の発明の特徴は、請求項3の構成に加え、前記鉄筋組立体を前記鞘管の上下複数段に配置して固着することにある。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係るプレキャストコンクリートブロックの製作方法は、請求項1に記載の構成を具備することによって、プレキャストコンクリートブロックを製作する製作ヤードでの作業における工数低減及び簡略化を実現し、プレキャストコンクリートブロックを効率よく製作することができる。
【0019】
また、本発明において、請求項2に記載の構成を具備することによって、固定具によって鉄板取付板を鞘管に溶接した際に生じる熱ひずみに対抗することができ、鉄筋組立体を用いた場合であっても当該熱ひずみによる鞘管の移動を防止することができる。
【0020】
また、本発明において、請求項3に記載の構成を具備することによって、打設された鋼管杭の状態に合わせて各鞘管の姿勢(高さ、傾斜)をミリ単位で精密に調節することができ、高品質のプレキャストコンクリートブロックを製作することができる。また、通常、鞘管の鉄筋取付板が溶接される位置の内周面には、裏当て鋼材が設置されており、各鞘管の姿勢を精密に調節することができることによって、鉄筋組立体の鉄筋取付板の位置を当該裏当て鋼材の位置に的確に合わせることができる。
【0021】
また、本発明において、請求項4乃至5に記載の構成を具備することによって、アッセンブリ化された鉄筋組立体を鞘管に固着させればよいので、既に固着された鉄筋が邪魔にならず、好適に取り付け作用を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明に係るプレキャストコンクリートブロックの製作方法により製作されたプラキャストコンクリートブロックの一例を示す平面図である。
【
図3】(a)同上のプレキャストコンクリートブロックの製作方法に使用する鉄筋組立体を示す平面図、(b)は同縦断面図である。
【
図4】同上の高さ調節部材の一例を示す正面図である。
【
図5】プレキャストコンクリートブロックの製作方法における鞘管設置作業前段の状況を説明するための平面図、(b)は同鞘管部の縦断面図である。
【
図6】(a)同上の鞘管を固定した状態を示す平面図、(b)は同鞘管部の縦断面図である。
【
図8】(a)同上の鉄筋組立体の設置作業の状態を示す平面図、(b)は同鞘管部の縦断面図である。
【
図9】(a)同上の鉄筋組立体の設置した状態を示す平面図、(b)は同鞘管部の縦断面図である。
【
図10】(a)同上の型枠を設置した状態を示す平面図、(b)は同鞘管部の縦断面図である。
【
図11】(a)同上のコンクリート打設作業の状態を示す平面図、(b)は同鞘管部の縦断面図である。
【
図12】同上のプレキャストコンクリートブロックの移送作業の状態を示す鞘管部の縦断面図である。
【
図13】従来の杭支持構造物の一例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
次に、本発明に係るプレキャストコンクリートブロックの製作方法の実施態様を
図1~
図12に示した実施例に基づいて説明する。尚、上述の従来例と同様の構成には同一符号を付して説明し、図中符号5は本製作方法により製作されたプレキャストコンクリートブロック(以下、PCaブロックという)である。
【0024】
このPCaブロック5は、
図1、
図2に示すように、水底地盤2に打設された鋼管杭3,3の杭頭部が挿入される鞘管6,6を備え、鞘管6,6に互いに間隔をおいて平行配置された複数の鉄筋8,8…が鉄筋取付板7を介して固着された鉄筋コンクリート構造を成している。
【0025】
尚、本実施例では、互いに間隔をおいて平行配置された複数の鉄筋8,8…が鞘管6,6に対し複数段に配置されている。
【0026】
このPCaブロック5を製作するには、先ず、打設された鋼管杭3,3の杭間距離や鋼管杭3,3の傾き、打設高さ等の状態を計測し、その計測結果を基に製作するPCaブロック5を設計する。
【0027】
一方、製作ヤードとは別の工場では、
図3に示すように、PCaブロック5の設計に合わせて、鉄筋取付板7に複数の鉄筋8,8…の先端部が予め固着されてなる鉄筋組立体20をそれぞれ製作しておく。
【0028】
鉄筋取付板7は、矩形状の鉄筋固着部21と、鉄筋固着部21と一体に台形状の鞘管固着部22とを備え、鋼板等によって板状に形成されている。
【0029】
鞘管固着部22は、鉄筋固着部21とは反対側の一端側に鞘管6,6の外径に合わせて円弧状の切り欠き部23が形成され、この切り欠き部23を鞘管6,6の外周面に嵌め込み、その周縁を溶接によって固着させるようになっている。
【0030】
また、鞘管固着部22の両側部には、切り欠き部23側に向けて互い間隔が狭まるように傾いたテーパ部24,24が形成され、鞘管6の周方向に隣り合う鉄筋取付板7同士が互いに干渉しないようになっている。
【0031】
鉄筋8,8…は、表面がエポキシ樹脂等の樹脂や塗料等によって被覆された被覆鉄筋によって構成され、両端が鉄筋取付板7の表面に溶接によって固着されている。尚、溶接時に被覆が剥がれた場合には、必要に応じて当該剥がれた部分の被覆を補修する。
【0032】
鉄筋組立体20の組立て作業は、一対の鉄筋取付板7,7を同じ高さに調節した状態で設計上の鞘管6,6間の距離と同じ間隔を空けて配置し、その表面部に各鉄筋8,8…の両端部を支持させた状態で等間隔に仮架設し、その状態で各鉄筋8,8…の端部を鉄筋取付板7に溶接によって固着させるようになっている。
【0033】
鞘管6,6は、鋼管等によって円筒状に形成され、底部内周面、即ち、上下方向(管軸方向)の下端部内周面に周方向に間隔をおいて複数の高さ調節部材25,25…を設置する。尚、高さ調節部材25,25…は、少なくとも周方向に3カ所以上設置し、4カ所以上設置することが望ましい。
【0034】
高さ調節部材25,25…は、
図4に示すように、取付片26を介して鞘管6,6の内周面に固定された平板状の基板27と、基板27に設けられたボルト挿通孔29に挿通させたボルト28と、ボルト挿通孔29に合わせて基板27に固定されたナット30と、ボルト28の下端が当接する製作ヤード型枠底面部40上に設置されるベース金物31とを備え、ベース金物31上にボルト28の下端を当接させた状態でナット30に螺合させたボルト28を回転させることにより鞘管6,6を上下方向に移動させるようになっている。ボルト28を回転させることによってミリ単位で上下方向の高さを調節することができる。
【0035】
また、鞘管6,6には、その外周面に鉄筋取付板7が溶接される位置に合わせて裏当て部材32,32が固定されている。
【0036】
そして、工場で製作された鞘管6,6及び鉄筋組立体20は、製作ヤードに運搬され、製作ヤードでの実際のPCaブロック5の製作に供される。
【0037】
実際の製作工程は、先ず、製作ヤードにおいて、地面上にコンクリートを打設し、該コンクリートの表面を均し、養生・固化させることによって型枠底面部40を形成する。
【0038】
そして、型枠底面部40が形成されたら、PCaブロック5の製作位置に合わせてその表面に縁切りシート(図示せず)を敷設する。
【0039】
次に、設計に合わせて一つの鞘管6,6の中心位置を型枠底面部40上に定め、当該鞘管6,6の中心位置を通る互いに直交する基準線を基に各鞘管6,6の外縁位置の墨出しを行い、当該設置位置に合わせて高さ調節部材25,25…のベース金物31を型枠底面部40上に設置する。
【0040】
そして、各ベース金物31のレベルを測定し、この測定結果に基づき鞘管6,6に取り付けた高さ調節部材25,25…のボルト28を回転させ、予め鞘管6,6が所定の姿勢となるよう調節する。
【0041】
次に、
図5に示すように、設置したベース金物31と鞘管6,6に取り付けた平板状の基板27,27…の位置を合わせて、鞘管6,6を型枠底面部40上に仮設置し、鞘管6,6のレベルと姿勢を測定し、位置と高さを微調整する。
【0042】
鞘管6,6の位置及び姿勢の調整が完了したら、
図6に示すように、固定具41,41…の上部を鞘管6,6の内周面に溶接するとともに、固定具41,41…の下端部をアンカーボルト48によって型枠底面部40に固定する。
【0043】
固定具41,41…は、鞘管6が安定した状態で固定されるように、鞘管6に対し周方向に間隔をおいて少なくとも3カ所以上に設置し、4カ所以上設置することが望ましい。また、固定具41,41…は、高さ調節部材25,25…と干渉しないように、周方向で隣り合う高さ調節部材25,25の略中間位置に設置することが望ましい。
【0044】
固定具41は、
図7に示すように、平板状の基板部44と、基板部44上に立設された縦板材45と、縦板材45の上端より水平方向に延出した鞘管固着部46とを備え、基板部44がアンカーボルト48で型枠底面部40に固定されるとともに、鞘管固着部46の先端が鞘管6の内周面に溶接して固着されるようになっている。
【0045】
そして、各鞘管6,6について、所定の位置及び姿勢への調節と固定具41,41…による型枠底面部40への固定とを行い、各鞘管6,6を所定の位置に固定具41,41…を介して固定する。
【0046】
尚、鞘管6,6は、高さ調節部材25,25…及び固定具41,41…によって下端が型枠底面部40より所定の高さだけ浮いた状態となっており、当該浮いた部分の内周縁に配置した型枠部材47で浮いた部分の間隙を閉鎖する。尚、高さ調節部材25,25は、内周縁に配置した型枠部材47の押さえ部材としても利用できる。
【0047】
次に、特に図示しないが、鉄筋組立体20以外の必要な鉄筋8,8…を配筋するとともに、
図8(b)に示すように、鉄筋組立体20をクレーンで吊り上げ、所定の位置に移動させ、裏当て部材32,32に鉄筋取付板7を支持させ、鞘管6,6間に配置される鉄筋組立体20が裏当て部材32,32を介して鞘管6,6間に架設する。
【0048】
尚、鞘管6,6間に下段の鉄筋組立体20を設置する際には、
図8(b)に示すように、鉄筋組立体20を傾けた状態で鞘管6,6間に降下させ、鉄筋取付板7が上段の裏当て部材32,32と干渉しないようにする。
【0049】
そして、鉄筋組立体20の鉄筋取付板7を溶接によって鞘管6,6の外周面に固着させる。その際、鉄筋取付板7は、溶接による熱によって熱ひずみが生じ、即ち、熱によって鉄筋取付板7が膨張し、その後、収縮して元の状態に復帰する。
【0050】
その場合、鉄筋組立体20は、両鉄筋取付板7が鉄筋8,8…によって連結されているため、当該熱ひずみによって鉄筋組立体20の両端間距離が変動し、それに伴い鞘管6,6に引張力が作用する。
【0051】
よって、各鞘管6,6は、鉄筋取付板7の膨張・収縮に際し、鉄筋組立体20から引張力が作用し、各鞘管6,6が鉄筋組立体20の方向に移動しようとするが、各鞘管6,6が固定具41,41…を介して型枠底面部40に固定されているので、鞘管6,6の位置が維持され、鞘管6,6間の距離が一定に保たれる。尚、個々の鉄筋取付板7の溶接によるひずみは、ミリ単位であるが、複数の鞘管6,6…を連結する場合、固定具41を用いないと、最後に取り付ける鞘管6における位置ズレが各鉄筋取付板7の溶接によるひずみが蓄積され、センチ単位で生じることになる。
【0052】
図9に示すように、必要な鉄筋及び各鉄筋組立体20の設置が完了したら、
図10に示すように、PCaブロック5の外周に合わせて周面を形成する型枠42を鞘管6,6及び鉄筋組立体20を囲むように設置し、
図11に示すように、型枠42内にコンクリートを打設する。
【0053】
そして、コンクリートを養生・固化させ、鞘管6,6に複数の鉄筋8,8…が固着された鞘管6,6付きPCaブロック5が形成される。
【0054】
そして、型枠42を撤去するとともに、鞘管6,6から高さ調節部材25,25…、固定具41,41…を取り外し、その後、鋼管杭3,3の上端に仮支持させるための支承部材43を鞘管6,6の上端部に固定し、PCaブロック5が完成する。尚、支承部材43は、工場において予め鞘管6,6内に溶接して取り付けておくようにしてもよい。
【0055】
完成したPCaブロック5は、
図12に示すように、クレーンによって吊り上げ、運搬船又は鋼管杭3,3上に移動させる。
【0056】
このように構成されたPCaブロック5の製作方法では、予め鉄筋取付板7に複数の鉄筋8,8…の先端部が予め固定されてなる鉄筋組立体20を形成しておくことにより、製作ヤードでの作業が鉄筋組立体20と鞘管6,6との溶接・固着作業のみとなり、各鉄筋8,8…を鉄筋取付板7に溶接する手間を省き、少ない工数で効率よく作業を行うことができる。
【0057】
また、鉄筋組立体20を工場で製作することによって、エポキシ樹脂等によって被覆された鉄筋8,8…を使用する場合、溶接によって被覆が剥がれた場合であっても、工場で再塗装することができ、品質が向上する。
【0058】
本製作方法では、複数の高さ調節部材25,25…によって鞘管6,6の位置及び姿勢を精密に調節することができ、且つ、鞘管6,6を固定具41,41…を介して型枠底面部40に固定することで、鉄筋組立体20を鞘管6,6間に配置し、鉄筋取付板7を鞘管6,6に溶接する場合であっても、溶接時の熱によって鉄筋取付板7に生じる引張力に対抗し、鞘管6,6の移動を防止し、設計に合わせて配置された鞘管6,6間の距離の変動を防止し、計画通りの位置及び姿勢を維持した状態で製作することができる。
【0059】
尚、上述の実施例では、コンクリートを一段階で打設する場合について説明したが、上下方向に複数段階に分けて打設するようにしてもよい。
【0060】
また、PCaブロック5の態様は、上述の実施例に限定されず、鞘管6,6を具備する鉄筋コンクリート造のブロックであれば、任意の態様に対応することができる。
【符号の説明】
【0061】
5 PCaブロック
6 鞘管
7 鉄筋取付板
8 鉄筋
20 鉄筋組立体
21 鉄筋固着部
22 鞘管固着部
23 切り欠き部
24 テーパ部
25 高さ調節部材
26 取付片
27 基板
28 ボルト
29 ボルト挿通孔
30 ナット
31 ベース金物
32 裏当て部材
40 型枠底面部
41 固定具
42 型枠
43 支承部材
44 基板部
45 縦板材
46 鞘管固着部
47 型枠部材
48 アンカーボルト