(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024001989
(43)【公開日】2024-01-11
(54)【発明の名称】出没式筆記具
(51)【国際特許分類】
B43K 24/02 20060101AFI20231228BHJP
【FI】
B43K24/02 110
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022100890
(22)【出願日】2022-06-23
(71)【出願人】
【識別番号】303022891
【氏名又は名称】株式会社パイロットコーポレーション
(72)【発明者】
【氏名】原田 耕輔
【テーマコード(参考)】
2C353
【Fターム(参考)】
2C353HA01
2C353HA09
2C353HC10
2C353HC17
2C353HJ02
2C353HL03
(57)【要約】
【課題】チップ出没作動不良の虞が小さく、且つ筆感の硬さを調節可能な出没式筆記具を提供する。
【解決手段】軸筒2から出没可能なチップ4と、軸筒2の内周に遊嵌され、当該軸筒2に対して当該軸筒2の軸方向に移動可能な環状部材5と、を備えた出没式筆記具。環状部材5の外周には当接面52が形成されており、当接面52において荷重を受ける時に当該環状部材5の内径が縮径するようになっており、軸筒2には操作体7が設けられており、操作体7の内面には締め付け部73が設けられており、当接面52は締め付け部73より荷重を受けるようになっており、操作体7を操作することによりチップ4のガタつき量を調節し、硬い筆感から柔らかい筆感まで調節することができる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
前端に開口を有する軸筒と、前記軸筒の内部に収容され、前記軸筒の軸方向に移動可能なチップホルダーと、前記チップホルダーの前端に固定され、前記チップホルダーの移動に伴って前記軸筒の前記開口から出没可能なチップと、前記軸筒の前記開口の内周に遊嵌され、当該軸筒に対して当該軸筒の軸方向に移動可能な環状部材と、前記チップホルダーと前記環状部材とを互いに相対移動可能に接続可能な弾性部材と、を備え、前記環状部材の外周の少なくとも一部には当接面が形成されており、前記環状部材の一部には、切欠きが形成されており、前記当接面において荷重を受ける時に前記環状部材の内径が縮径するようになっており、前記軸筒には操作体が設けられており、前記操作体の内面には締め付け部が設けられており、前記当接面は前記締め付け部より荷重を受けるようになっており、前記操作体を操作することにより、前記当接面に対する前記締め付け部の相対位置が変化し、前記環状部材の内径の縮径量が変化することを特徴とする出没式筆記具。
【請求項2】
前記締め付け部は径方向内方に突出する突起であり、前記チップホルダーの前端側への移動に伴って前記当接面が前記締め付け部から荷重を受けることにより、前記環状部材の内径が縮径するようになっていることを特徴とする請求項1に記載の出没式筆記具。
【請求項3】
前記操作体は円筒状であり、前記操作体は前記軸筒に対して周方向に回転可能に設けられ、前記操作体を回転させることにより、前記当接面に対する前記締め付け部の相対位置が変化することを特徴とする請求項2に記載の出没式筆記具。
【請求項4】
前記締め付け部の周方向の幅は、前記締め付け部と前記当接面とが当接していない状態における前記切欠きの周方向の幅より小さく設定され、前記締め付け部を前記切欠き内に収容可能に構成されることを特徴とする請求項2又は3に記載の出没式筆記具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、出没式筆記具に関する。詳細には、筆感の硬さを調節可能に構成された出没式筆記具に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、チップの振れ止め装置を備えた出没式筆記具が開示されている。当該装置の構成は、チップの外面に内径が縮径可能な環状部材を備えたものである。チップホルダーの前端側への移動に伴って、環状部材の内径が縮径することにより、チップがガタつきの無い状態で保持され、硬い筆感を得ることができ、且つチップ出没作動不良の虞が小さいことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
使用者によっては、筆記目的や、筆記による疲労状態、その時の気分等に応じて、筆記具の筆感を硬い状態や柔らかい状態に調節したくなる場合がある。しかし、特許文献1に開示された出没式筆記具では、常に硬い筆感であり、筆感を調節することができなかった。
【0005】
本発明は、前記従来の問題点を解決するためのものであって、チップ出没作動不良の虞が小さく、且つ筆感の硬さを調節可能な出没式筆記具を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願の第1の発明は、前端に開口を有する軸筒と、前記軸筒の内部に収容され、前記軸筒の軸方向に移動可能なチップホルダーと、前記チップホルダーの前端に固定され、前記チップホルダーの移動に伴って前記軸筒の前記開口から出没可能なチップと、前記軸筒の前記開口の内周に遊嵌され、当該軸筒に対して当該軸筒の軸方向に移動可能な環状部材と、前記チップホルダーと前記環状部材とを互いに相対移動可能に接続可能な弾性部材と、を備え、前記環状部材の外周の少なくとも一部には当接面が形成されており、前記環状部材の一部には、切欠きが形成されており、前記当接面において荷重を受ける時に当該環状部材の内径が縮径するようになっており、前記軸筒には操作体が設けられており、前記操作体の内面には締め付け部が設けられており、前記当接面は前記締め付け部より荷重を受けるようになっており、前記操作体を操作することにより、前記当接面に対する前記締め付け部の相対位置が変化し、前記環状部材の内径の縮径量が変化することを特徴とする。
【0007】
本願の第1の発明の出没式筆記具は、前記構成により、操作体を操作して環状部材の内径の縮径量を変化させることで、チップのガタつき量を調節し、硬い筆感から柔らかい筆感まで調節することができる。
【0008】
本願の第2の発明は、前記第1の発明において、前記締め付け部は径方向内方に突出する突起であり、前記チップホルダーの前端側への移動に伴って、前記当接面が前記締め付け部から荷重を受けることにより、前記環状部材の内径が縮径するようになっていることが好ましい。
【0009】
本願の第2の発明の出没式筆記具は、前記構成により、チップホルダーが前端側へ移動した際に環状部材の内径が縮径するため、チップ出没作動不良が起こりづらくなる。
【0010】
本願の第3の発明は、前記第2の発明において、前記操作体は円筒状であり、前記操作体は前記軸筒に対して周方向に回転可能に設けられ、前記操作体を回転させることにより、前記当接面に対する前記締め付け部の相対位置が変化することが好ましい。
【0011】
本願の第3の発明の出没式筆記具は、前記構成により、操作体を回転させることで、締め付け部が当接面に当たる位置を変化させ、環状部材の内径の縮径量を調節することができる。
【0012】
本願の第4の発明は、前記第2又は第3の発明において、前記締め付け部の周方向の幅は、前記締め付け部と前記当接面とが当接していない状態における前記切欠きの周方向の幅より小さく設定され、前記締め付け部を前記切欠き内に収容可能に構成されることが好ましい。
【0013】
本願の第4の発明の出没式筆記具は、前記構成により、締め付け部と切欠きとの周方向位置を一致させることで、締め付け部が当接面に当接せず、環状部材の内径が縮径しない状態にすることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、出没式筆記具において、チップ出没作動不良の虞が小さく、且つ筆感の硬さを調節することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の出没式筆記具を示す縦断面図である。
【
図2】(a)は本発明の第1状態(チップ没入状態)を示す要部拡大縦断面図である。(b)は(a)のA―A線断面矢視図である。
【
図3】(a)は本発明の第1状態(チップ突出状態)を示す要部拡大縦断面図である。(b)は(a)のA―A線断面矢視図である。
【
図4】(a)は本発明の第2状態(チップ没入状態)を示す要部拡大縦断面図である。(b)は(a)のA―A線断面矢視図である。
【
図5】(a)は本発明の第2状態(チップ突出状態)を示す要部拡大縦断面図である。(b)は(a)のA―A線断面矢視図である。
【
図6】(a)は本発明の第3状態(チップ突出状態)を示す要部拡大縦断面図である。(b)は(a)のA―A線断面矢視図である。
【
図7】(a)は環状部材の斜視図である。(b)は環状部材の側面図である。(c)は環状部材の縦断面図である。(d)は環状部材の正面図である。
【
図8】(a)は操作体の平面図である。(b)は操作体の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態について説明する。
【0017】
図1は、本発明の実施形態における出没式筆記具1の縦断面図であって、チップ4(筆記体)が突出していない状態を示す図である。
図2~
図6は、本実施形態の出没式筆記具1の先端部分の要部拡大縦断面図である。
【0018】
また、
図7(a)は、本実施形態の出没式筆記具1の環状部材5の斜視図であり、
図7(b)は環状部材5の側面図であり、
図7(c)は、環状部材5の縦断面図であり、
図7(d)環状部材5の正面図である。
【0019】
更に、
図8(a)は、操作体7の平面図であり、
図8(b)は操作体7の縦断面図である。
【0020】
本実施形態の出没式筆記具1は、軸筒2と、当該軸筒2内に収容されるチップ4(筆記体)を軸筒2の開口より出没自在にさせる出没機構と、を備えた出没式筆記具である。
【0021】
・軸筒
図1に示すように、出没式筆記具1は前端に開口を有する円筒形状の軸筒2を備えている。軸筒2は、前方部2aと、後方部2bと、を有している。前方部2aと後方部2bとは、ネジ結合(螺合)によって取り外し可能に固定されている。もっとも、前方部2aと後方部2bとは、嵌め合い結合によって固定されていてもよいし、一体に形成されていてもよい。
【0022】
軸筒2の前端外面には、操作体7の係合突起と係合する環状の係合溝21が設けられている。軸筒2の開口部には、環状部材5の径方向の回転を規制する2つの回り止め突起22が周方向に等間隔に(180°おきに)配置されている。
【0023】
・チップホルダー
軸筒2の内部には、軸筒2の軸方向に移動可能なチップホルダー3が収容されている。チップホルダー3の前端に、筆記体であるチップ4が固定されている。チップ4は、チップホルダー3の移動に伴って、
図2乃至
図6に示すように、軸筒2の開口から出没可能となっている。チップ4は筆記体であり、
【0024】
チップホルダー3は、
図2に示すように、基端側から先端側に向かって、基端部31、第1カラー部32及び第2カラー部33を当該順序で有している。基端部31及び第1カラー部32は、本実施形態ではいずれも円筒形状の部位であり、第2カラー部33は、本実施形態では切頭円錐形状の部位であり、それらの断面直径の相互関係は、基端部31>第1カラー部32>第2カラー部33となっている。
【0025】
・環状部材
本実施形態では、
図2乃至
図6に示すように、軸筒2の開口の内周に、当該軸筒2に対して当該軸筒2の軸方向に移動可能な環状部材5が遊嵌されている。環状部材5の前方端は、操作体7の前方端よりも前方側に位置している。環状部材5の後方側は、外径も内径も拡径されていて、チップ4(外径φ2.5mm)の周囲を非接触に覆っている。
【0026】
また、環状部材5は、コイルバネ6(弾性部材の一例)の前方端に固定されている。コイルバネ6は、チップホルダー3の第2カラー部33及びチップ4を遊嵌状態で(隙間を空けて)取り囲んでおり、コイルバネ6の後方端がチップホルダー3の基端部31によって常時押圧されている(固定はされていない)。これにより、コイルバネ6は、チップホルダー3と環状部材5とを互いに相対移動可能に接続している。そして、
図2乃至
図6に示すように、チップホルダー3の移動及びコイルバネ6の伸縮変形に伴って、環状部材5は、軸筒2に対して当該軸筒2の軸方向に移動可能となっている。
【0027】
環状部材5は、樹脂製(例えばポリアセタール、ポリプロピレン、ポリエチレン製)または金属製(例えば真鍮製)である。
【0028】
また、
図7(a)乃至
図7(d)に示すように、環状部材5の外周面は、前方側から、小外径円筒面51(外径φ3.6mm、軸方向長さ1.1mm)と、先細状の当接面としての第1切頭円錐外面52(軸方向長さ1.1mm)と、中外径円筒面53(外径φ4.85mm、軸方向長さ2.9mm)と、軸方向に垂直な平面を有する前方段部54と、が当該順序で設けられている。
【0029】
環状部材5の後端縁には、回り止め溝55が設けられている。回り止め溝55は回り止め突起22と同様に周方向に等間隔に(180°おきに)配置されている。回り止め溝55の幅は回り止め突起22の幅より僅かに大きい。回り止め溝55と回り止め突起22とが係合することにより、環状部材5の回転が規制され、且つ環状部材5の後方への移動限界が規定される。
【0030】
環状部材5には、前方に開放される3本の切欠き56が軸方向に設けられている。
図7(d)に示すように、3本の切欠き56は、環状部材5の周方向に等間隔に(120°おきに)配置されている。また、3本の切欠き56は、いずれも、幅0.8mmで、軸方向最大長さは4.8mmである。
【0031】
切欠き56により、第1切頭円錐外面52が3分割される。第1切頭円錐外面52(当接面)において荷重を受ける時、環状部材5の内径は柔軟に縮径するようになっており、且つ、当該荷重が解除される時、環状部材5の内径は弾性的に復帰するようになっている。
【0032】
また、本実施形態の出没式筆記具1によれば、切欠きとしての3本の切欠き56が環状部材5の周方向に等間隔に配置されており、各切欠き56が環状部材5の軸方向に延びているため、環状部材5の内径が周方向にバランス良く縮径することができる。
【0033】
また、切欠き56の数、サイズ、形状等を適宜に変更することによって、環状部材5の弾性(縮径のしやすさ)の程度を調整することができる。また、環状部材5の材料及び/または肉厚を変更することによっても、環状部材5の弾性(縮径のしやすさ)の程度を調整することができる。
【0034】
・操作体
軸筒2の前端には円筒状の操作体7が設けられている。環状の係合突起76が軸筒2の係合溝21に係合することで、操作体7が軸筒2に装着される。操作体7は軸筒2に対して周方向に回転可能である。
【0035】
図8(b)に示すように、操作体7の開口近傍の内周面は、前方側から、小内径円筒面71(内径φ3.7mm、軸方向長さ1.2mm)と、先細状の第1切頭円錐内面72(軸方向長さ1.1mm)と、中内径円筒面74(内径φ4.95mm、軸方向長さ3.0mm)と、軸方向に垂直な平面を有する後方段部75と、が当該順序で設けられている。
【0036】
図8(a)に示すように、第1切頭円錐内面72には締め付け部73が設けられている。締め付け部73は径方向内方に突出する突起である。締め付け部73の横断面形状は略半円形状に設定される。締め付け部73の内接平面は先細状である。締め付け部73は切欠き56と同様に周方向に等間隔に(120°おきに)配置されている。締め付け部73の幅は切欠き56の幅より小さく設定されている。
【0037】
後方段部75と前方段部54とが当接することにより、環状部材5の前方側への移動限界が規定される。後方段部75と前方段部54とが当接するため、第1切頭円錐内面72と第1切頭円錐外面52(当接面)とは当接不可能である。第1切頭円錐内面72より突出している締め付け部73のみが第1切頭円錐外面52(当接面)と当接可能に構成される。
【0038】
第1切頭円錐外面52(当接面)及び締め付け部73の内接平面が先細状であることにより、第1切頭円錐外面52(当接面)は、チップホルダー3の前端側への移動に伴って、締め付け部73から荷重を受けるようになっている。
【0039】
・バネ
本実施形態のコイルバネ6は、チップ4の没入操作(例えばチップ4の突出状態を維持するロック機構を解除するための筆記具側面に設けられた操作部のスライド操作)がなされた時に、チップホルダー3を自動的に没入させる機能を併せ持つ。すなわち、コイルバネ6は、いわゆるノックバネとして機能するようになっている。
【0040】
・操作方法
以上のような構成の出没式筆記具1は、以下のように作用する。
【0041】
非使用時においては、出没式筆記具1のチップ4(筆記体)は、
図2及び
図4に示すような没入状態にある。この時、コイルバネ6の軸方向長さは16mmであり、環状部材5は縮径しておらず、環状部材5の先端の内径はφ2.7mm(>チップ4の外径φ2.5mm)のままである。
【0042】
チップ4の出没操作(例えば筆記具側面に設けられた操作部のスライド操作)がなされると、操作体7の周方向の位置によって、環状部材5の動きは次の3形態のように変化する。尚、環状部材5は回り止め突起22によって周方向の回転が規制されているため、操作体7を周方向に回転させた場合でも、環状部材5が共に回ってしまうことはない。
【0043】
<第1状態>
図2(b)及び
図3(b)に示すように、各々の締め付け部73が各々の切欠き56の間に位置している場合、チップ没入状態(
図2)及びチップ突出状態(
図3)において前方段部54と後方段部75とが常に当接しており、環状部材5の軸方向位置は不変である。締め付け部73が切欠き56の幅より小さいため、チップ突出操作を行っても第1切頭円錐外面52(当接面)が締め付け部73より荷重を受けることがなく、環状部材5の内径が縮径しない。第1状態では、チップ4と環状部材5との間、及び小外径円筒面51と小内径円筒面71との間に隙間があるため、筆記時にチップ4が最大限ガタつく状態となり、柔らかい筆感を得ることができる。
【0044】
<第2状態>
図4(b)に示すように、チップ没入状態において操作体7を回転させ、各々の締め付け部73の周方向位置を各々の第1切頭円錐外面52(当接面)の中央に移動させた場合、締め付け部73が第1切頭円錐外面52(当接面)に乗り上げ、環状部材5が後方に押し上げられる。この時、
図4(a)に示すように、前方段部54と後方段部75との間に隙間Hが生じ、環状部材5の内径は僅かに縮径する。続いて、
図5(a)に示すようにチップ突出操作を行うと、チップホルダー3の前端側への移動に伴って、環状部材5の第1切頭円錐外面52(当接面)が締め付け部73から荷重を受ける。この時、
図5(b)に示すように、環状部材5の3本の切欠き56の存在によって、環状部材5の内径がさらに大きく縮径し、環状部材5によってチップ4が締め付けられる。
【0045】
チップ突出状態において操作体7を回転させ、各々の締め付け部73の周方向位置を各々の第1切頭円錐外面52(当接面)の中央に移動させた場合、環状部材5が後方に押し上げられず、環状部材5によって直接チップ4が締め付けられる。
【0046】
第2状態では、チップ突出状態での環状部材5の内径の縮径量が最大となる。これは、環状部材5が第1切頭円錐外面52(当接面)の中央より荷重を受けた際に最も変形しやすく、且つ均等に縮径させられるためである。即ち、第2状態では筆記時のチップ4のガタつきを最大限抑え、硬い筆感を得ることができる。この縮径時の先端の環状部材5の内径は、チップ4の外径より僅かに小さく設定され、例えば2.45mm程度に設定される。
【0047】
チップ突出状態からチップ没入操作を行う際は、チップホルダー3が後方側に移動されるため、第1切頭円錐外面52(当接面)が締め付け部73から受けていた荷重が消失する。これに伴って、縮径していた環状部材5の内径が元の状態に戻る。これにより、チップ4が環状部材5によって締め付けられたまま没入しないといったチップ4の出没作動不良が起こりづらくなる。
【0048】
<第3状態>
図6(b)に示すように、操作体7を回転させ、各々の締め付け部73の周方向位置を各々の第1切頭円錐外面52(当接面)の中央と切欠き56との間(領域R)に移動させる場合、締め付け部73が第1切頭円錐外面52(当接面)の中央側に近いほど、環状部材5の内径の縮径量が大きくなり、締め付け部73が切欠き56側に近いほど、環状部材5の内径の縮径量が小さくなる。即ち、第3状態では締め付け部73を領域R間で移動させることで、環状部材5の内径の縮径量を調節することができ、筆記時のチップ4のガタつき量を調節することができる。第3状態における環状部材5の内径は第1状態と第2状態の間の大きさとなる。尚、操作体7回転時及びチップ出没操作時の環状部材5の動きは第2状態と同様である。
【0049】
第1~第3状態にて説明したように、操作体7を周方向に回転させることで、環状部材5に対する締め付け部73の周方向の位置を変化させ、環状部材5の内径の縮径量を変化させることができる。即ち、操作体7を周方向に回転させることでチップ4のガタつき量を調節し、硬い筆感から柔らかい筆感まで多様な筆感を得ることができる。
【0050】
出没式筆記具1の外観から締め付け部73の位置が分かるように構成するのが好ましい。例えば、環状部材5の当接面の中央、切欠き56のそれぞれの径方向位置に対応する印を軸筒2の外面に設け、締め付け部73の径方向位置に対応する印を操作体7の外面に設ける構成が挙げられる。操作体7側の印を軸筒2側のそれぞれの印の位置と合わせることで、使用者が任意に環状部材5の縮径量を選択することができる。または、操作体7を透明な合成樹脂で成形し、締め付け部73の周方向位置を目視で確認できるように構成してもよい。
【0051】
本実施形態では、環状部材5の径方向の厚みは一定であるが、環状部材5の径方向の肉厚は一定でなくてもよい。環状部材5の径方向の肉厚を周方向に徐々に厚くなる構成とした場合、締め付け部73の周方向の位置によるチップ4のガタつき量の調節効果をより顕著に発揮することができる。
【0052】
本願の第1の発明の出没式筆記具1は、前端に開口を有する軸筒2と、軸筒2の内部に収容され、軸筒2の軸方向に移動可能なチップホルダー3と、チップホルダー3の前端に固定され、チップホルダー3の移動に伴って軸筒2の前記開口から出没可能なチップ4と、軸筒2の前記開口の内周に遊嵌され、当該軸筒2に対して当該軸筒2の軸方向に移動可能な環状部材5と、チップホルダー3と環状部材5とを互いに相対移動可能に接続可能な弾性部材(コイルバネ6)と、を備え、環状部材5の外周の少なくとも一部には当接面52が形成されており、環状部材5の一部には、切欠き56が形成されており、当接面52において荷重を受ける時に当該環状部材5の内径が縮径するようになっており、軸筒2には操作体7が設けられており、操作体7の内面には締め付け部73が設けられており、当接面52は締め付け部73より荷重を受けるようになっており、操作体7を操作することにより、当接面52に対する締め付け部73の相対位置が変化し、環状部材5の内径の縮径量が変化することにより、環状部材5の内径の縮径量を変化させることでチップ4のガタつき量を調節し、硬い筆感から柔らかい筆感まで調節することができる。
【0053】
本願の第2の発明の出没式筆記具は、前記第1の発明において、締め付け部73は径方向内方に突出する突起であり、チップホルダー3の前端側への移動に伴って、当接面52が締め付け部73から荷重を受けることにより、環状部材5の内径が縮径するようになっていることにより、チップホルダー3が前端側へ移動した際に環状部材5の内径が縮径するため、チップ4の出没作動不良が起こりづらくなる。
【0054】
本願の第3の発明の出没式筆記具は、前記第2の発明において、操作体7は円筒状であり、操作体7は軸筒2に対して周方向に回転可能に設けられ、操作体7を回転させることにより、当接面52に対する締め付け部73の相対位置が変化することにより、操作体7を回転させることで、締め付け部73が当接面52に当たる位置を変化させ、環状部材5の内径の縮径量を調節することができる。
【0055】
本願の第4の発明は、前記第2又は第3の発明において、締め付け部73の周方向の幅は切欠き56の周方向の幅より小さく設定され、締め付け部73を切欠き56内に収容可能に構成されることにより、締め付け部73と切欠き56との周方向位置を一致させることで、締め付け部73が当接面52に当接せず、環状部材5の内径が縮径しない状態にすることができる。
【0056】
1 出没式筆記具
2 軸筒
2a 前軸
2b 後軸
21 係合溝
22 回り止め突起
3 チップホルダー
31 基端部
32 第1カラー部
33 第2カラー部
4 チップ
5 環状部材
51 小外径円筒面
52 第1切頭円錐外面
53 中外径円筒面
54 前方段部
55 回り止め溝
56 切欠き
6 コイルバネ
7 操作体
71 小内径円筒面
72 第1切頭円錐内面
73 締め付け部
74 中内径円筒面
75 後方段部
76 係合突起