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特開2024-19907硬化性組成物、液晶セル及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024019907
(43)【公開日】2024-02-14
(54)【発明の名称】硬化性組成物、液晶セル及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08F 290/04 20060101AFI20240206BHJP
   G02F 1/1339 20060101ALI20240206BHJP
   G02F 1/13 20060101ALI20240206BHJP
【FI】
C08F290/04
G02F1/1339 505
G02F1/13 505
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022122673
(22)【出願日】2022-08-01
(71)【出願人】
【識別番号】000162434
【氏名又は名称】協立化学産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】成清 善孝
【テーマコード(参考)】
2H088
2H189
4J127
【Fターム(参考)】
2H088EA34
2H088EA35
2H189CA13
2H189EA04Y
2H189EA11Y
2H189FA23
2H189FA45
2H189FA52
2H189FA53
2H189MA15
4J127AA03
4J127BB031
4J127BB111
4J127BB221
4J127BC021
4J127BC151
4J127BD031
4J127BE341
4J127BE34Y
4J127BF141
4J127BF14Y
4J127BG171
4J127BG17Z
4J127CB151
4J127CB282
4J127CC021
4J127CC022
4J127DA41
4J127DA46
4J127DA66
4J127EA13
4J127FA15
(57)【要約】
【課題】耐液晶性を維持しながら、光照射のみで硬化が可能で、基材への密着性に優れた硬化性組成物、当該硬化性組成物を液晶封止材として備える液晶セル、及び、当該液晶セルの生産性に優れる液晶セルの製造方法を提供すること。
【解決手段】炭素-炭素二重結合を有するポリイソブチレン(A)と、モノマー(B)と、光開始剤(C)とを含有し、
前記モノマー(B)が、脂環を有するモノマー(B1)と、複素環を有するモノマー(B2)とを含む、硬化性組成物。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素-炭素二重結合を有するポリイソブチレン(A)と、モノマー(B)と、光開始剤(C)とを含有し、
前記モノマー(B)が、脂環を有するモノマー(B1)と、複素環を有するモノマー(B2)とを含む、硬化性組成物。
【請求項2】
前記脂環を有するモノマー(B1)が、単独重合体のガラス転移温度が140℃以上のモノマーを含む、請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項3】
前記複素環を有するモノマー(B2)が、単独重合体のガラス転移温度が140℃以上のモノマーを含む、請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項4】
前記ポリイソブチレン(A)100質量部に対し、前記モノマー(B)が15~50質量部である、請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項5】
前記モノマー(B)100質量部中、前記脂環を有するモノマー(B1)が65~95質量部である、請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項6】
前記モノマー(B)100質量部中、前記複素環を有するモノマー(B2)が5~35質量部である、請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項7】
更に可塑剤(D)を含有する、請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項8】
更にフィラー(E)を含有する、請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項9】
液晶封止用である、請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項10】
対向して配置された2つの基材と、
前記2つの基材の間に枠状に配置された封止部材と、
前記2つの基材と前記封止部材により形成された空間内に充填された液晶と、を備え、
前記封止部材が、請求項1~9のいずれか一項に記載の硬化性組成物の硬化物である、液晶セル。
【請求項11】
前記基材が樹脂基材である、請求項10に記載の液晶セル。
【請求項12】
第1基材上に、請求項1~9のいずれか一項に記載の硬化性組成物を枠状のパターンに塗布し、
前記硬化性組成物の枠内に液晶を滴下し、
前記第1基材の前記硬化性組成物の枠が形成された面側に、第2基材を貼り合わせ、
前記硬化性組成物に光照射する、液晶セルの製造方法。
【請求項13】
前記第1基材が長尺状樹脂基材であり、ロールツーシート方式又はロールツーロール方式により実施する、請求項12に記載の液晶セルの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化性組成物、液晶セル及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶セルの製造方法のひとつとして、液晶滴下工法が知られている。液晶滴下工法は、例えば、基材上にシール剤を塗布して枠を形成し、当該枠内に液晶を滴下し、対向する基材を貼り合わせた後、シール剤に光照射して仮硬化した後、加熱することで本硬化させて、液晶セルを製造する方法である。
【0003】
例えば特許文献1には、接着性及び耐湿信頼性に優れた液晶滴下工法用シール剤として、硬化性樹脂と、粒径の異なるフィラーと、熱硬化剤と、ラジカル重合開始剤とを含有する、特定の液晶滴下工法用シール剤が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013-015769号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
液晶セルは、液晶表示装置の他、透明・不透明を切り替える液晶調光フィルムとして、例えば車載(サイドガラス、サンルーフなど)、建材(窓ガラス、パーテーション)、サングラス、ゴーグル等にも使用されはじめている。液晶調光フィルムの基材はガラス基材だけでなく、樹脂基材が用いられることもある。液晶調光フィルムの製造においても液晶滴下工法が検討されているが、従来のシール剤は硬化の際に十分な加熱が必要とされるため、耐熱性の低い基材は選択できないという課題があった。
また、液晶セルの生産性の向上の観点から、シール剤の硬化工程の簡略化も求められている。
【0006】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、耐液晶性を維持しながら、光照射のみで硬化が可能で、基材への密着性に優れた硬化性組成物、当該硬化性組成物を液晶封止材として備える液晶セル、及び、当該液晶セルの生産性に優れる液晶セルの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
[1] 炭素-炭素二重結合を有するポリイソブチレン(A)と、モノマー(B)と、光開始剤(C)とを含有し、
前記モノマー(B)が、脂環を有するモノマー(B1)と、複素環を有するモノマー(B2)とを含む、硬化性組成物。
[2] 前記脂環を有するモノマー(B1)が、単独重合体のガラス転移温度が140℃以上のモノマーを含む、[1]の硬化性組成物。
[3] 前記複素環を有するモノマー(B2)が、単独重合体のガラス転移温度が140℃以上のモノマーを含む、[1]又は[2]の硬化性組成物。
[4] 前記ポリイソブチレン(A)100質量部に対し、前記モノマー(B)が15~50質量部である、[1]~[3]のいずれかの硬化性組成物。
[5] 前記モノマー(B)100質量部中、前記脂環を有するモノマー(B1)が65~95質量部である、[1]~[4]のいずれかの硬化性組成物。
[6] 前記モノマー(B)100質量部中、前記複素環を有するモノマー(B2)が5~35質量部である、[1]~[5]のいずれかの硬化性組成物。
[7] 更に可塑剤(D)を含有する、[1]~[6]のいずれかの硬化性組成物。
[8] 更にフィラー(E)を含有する、[1]~[7]のいずれかの硬化性組成物。
[9] 液晶封止用である、[1]~[8]のいずれかの硬化性組成物。
[10] 対向して配置された2つの基材と、
前記2つの基材の間に枠状に配置された封止部材と、
前記2つの基材と前記封止部材により形成された空間内に充填された液晶と、を備え、
前記封止部材が、[1]~[9]のいずれかの硬化性組成物の硬化物である、液晶セル。
[11] 前記基材が樹脂基材である、[10]の液晶セル。
[12] 第1基材上に、[1]~[9]のいずれかの硬化性組成物を枠状のパターンに塗布し、
前記硬化性組成物の枠内に液晶を滴下し、
前記第1基材の前記硬化性組成物の枠が形成された面側に、第2基材を貼り合わせ、
前記硬化性組成物に光照射する、液晶セルの製造方法。
[13] 前記第1基材が長尺状樹脂基材であり、ロールツーシート方式又はロールツーロール方式により実施する、[12]の液晶セルの製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、耐液晶性を維持しながら、光照射のみで硬化が可能で、基材への密着性に優れた硬化性組成物、当該硬化性組成物を液晶封止材として備える液晶セル、及び、当該液晶セルの生産性に優れる液晶セルの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】液晶セルの一例を示す平面図である。
図2】液晶セルの製造方法の一例を示す模式的な工程図である。
図3】液晶セルの製造方法の一例を示す模式図である。
図4】ピール強度試験方法を説明するための模式図である。
図5】配向試験方法を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係る硬化性組成物、液晶セル及びその製造方法について説明する。
なお、本発明において、(メタ)アクリルモノマーとは、アクリルモノマー及びメタクリルモノマーのうち少なくとも一方を表し、(メタ)アクリルオリゴマーや(メタ)アクリロイル基などもこれに準ずる。
炭素-炭素二重結合を有するポリイソブチレン(A)を「ポリイソブチレン(A)」、脂環を有するモノマー(B1)を「モノマー(B1)」、複素環を有するモノマー(B2)を「モノマー(B2)」ということがある。他の成分についてもこれらに準ずる。
また、数値範囲を示す「~」は特に断りがない限り、その下限値及び上限値を含むものとする。
【0011】
本発明に係る硬化性組成物は、炭素-炭素二重結合を有するポリイソブチレン(A)と、モノマー(B)と、光開始剤(C)とを含有し、前記モノマー(B)が、脂環を有するモノマー(B1)と、複素環を有するモノマー(B2)とを含むことを特徴とする。
【0012】
本硬化性組成物は、モノマー(B)として、脂環を有するモノマー(B1)と、複素環を有するモノマー(B2)とを含むことで、上記ポリイソブチレン(A)との相溶性が格段に向上し、白濁せず透明な液状の組成物が得られる。また、ポリイソブチレン(A)、脂環を有するモノマー(B1)、複素環を有するモノマー(B2)の各々が嵩高い構造を有するため、未硬化の状態でも液晶による汚染が抑制される。また、脂環を有するモノマー(B1)と、複素環を有するモノマー(B2)が有する環構造が、樹脂基材との密着性を向上するため、光硬化のみで十分な機械強度を備える液晶封止部材となる。
【0013】
本硬化性組成物は、少なくともポリイソブチレン(A)と、脂環を有するモノマー(B1)と、複素環を有するモノマー(B2)と、光開始剤(C)とを含有するものであり、本発明の効果を奏する範囲で更に他の成分を含有してもよいものである。以下、本硬化性組成物に含まれ得る各成分について説明する。
【0014】
<炭素-炭素二重結合を有するポリイソブチレン(A)>
ポリイソブチレン(A)はイソブテンを重合して得られるポリイソブチレン骨格([-CHC(CH-、ただしnは2以上の整数である。)を有する。ポリイソブチレン骨格は多数のメチル基を有する直鎖状のポリマー(オリゴマー)であり、本組成物の塗膜は液晶による汚染が抑制され、本組成物の硬化物は液晶の封止性に優れている。
ポリソブチレン(A)は炭素-炭素二重結合を有する。当該二重結合を有することで、光照射時に、モノマー(B)と、又はポリイソブチレン(A)同士で架橋反応して本組成物の硬化物が形成される。炭素-炭素二重結合は、ポリイソブチレン(A)の側鎖及び/又は末端に有することが好ましく、末端に有することが好ましい。炭素-炭素二重結合は、ビニル基であってもよく、アリル基又は(メタ)アクリロイル基として有していてもよい。本発明において、ポリイソブチレン(A)は中でも末端に(メタ)アクリロイル基を有するポリイソブチレンが好ましい。
ポリイソブチレン(A)は、例えば特開2013-035901号公報などを参考に合成してもよく、市販品を用いてもよい。市販品としては、例えば、カネカ社製、EPION EP400V等が挙げられる。
【0015】
<モノマー(B)>
本硬化性組成物は、モノマー(B)として、脂環を有するモノマー(B1)と、複素環を有するモノマー(B2)とを組み合わせて用いる。モノマー(B1)とモノマー(B2)とを組み合わせることで、前記ポリイソブチレン(A)との相溶性が向上し、基材への密着性及び耐液晶性に優れた組成物を得ることができる。また、本発明の効果を奏する範囲で他のモノマー(B3)を含んでいてもよい。
【0016】
モノマー(B)は、1分子中に1個以上の炭素-炭素二重結合を有する化合物の中から適宜選択すればよい。炭素-炭素二重結合を含む構造としては、ビニル基、アリル基、(メタ)アクリロイル基の他、後述する脂環又は複素環中に炭素-炭素二重結合を有していてもよい。耐液晶性や硬化性などの点からは、(メタ)アクリロイル基が好ましい。また、1分子中の炭素-炭素二重結合の数は、硬化性や密着性等の点から1~6個であることが好ましく、硬化収縮を抑制する点から1~3個がより好ましく、1~2個が更に好ましい。また、硬化性、基材との密着性、及び硬化収縮を抑制する点からは、炭素-炭素二重結合を1個有する単官能モノマーと、炭素-炭素二重結合を2個有する2官能モノマーとを組み合わせることが好ましい。単官能モノマーと2官能モノマーの組み合わせ方は特に限定されず、例えば、単官能のモノマー(B1)と2官能のモノマー(B2)を組み合わせてもよく、単官能のモノマー(B1)と2官能のモノマー(B1)と、単官能のモノマー(B2)とを組み合わせてもよい。また、組成物の粘度を抑える点から、モノマー(B)は、室温(25℃)で粘度が10mPa・s以下、好ましくは8mPa・s以下の液状であることが好ましい。
【0017】
(脂環を有するモノマー(B1))
モノマー(B1)において脂環は、芳香性を有しない飽和又は不飽和の炭化水素環を表し、当該炭化水素環が有する水素原子は置換されていてもよい。脂環の具体例としては、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、シクロプロペン等の飽和炭素環;シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオプテン等の不飽和炭素環;パーヒドロナフタレン(ビシクロ[4.4.0]デカン)、ビシクロ[5.3.0]デカン、トリシクロ[8.4.0.03,8]テトラデカン等の多環縮合環;ノルボルナン(ビシクロ[2.2.2]オクタン)、アダマンタン(トリシクロ[3.3.1.13,7]デカン)、ジメチロールトリシクロデカン(トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン)、ノルボルネン(ビシクロ[2.2.1]ヘプタ-2-エン)等の架橋縮合環(多環縮合環にも属する)などが挙げられる。なお、架橋縮合環とは、オルト縮合以外の縮合を含む縮合環をいう。
【0018】
前記脂環が有していてもよい置換基としては、ビニル基、アリル基、(メタ)アクリロイル基(-C(=O)CR=CH)、オキシ(メタ)アクリロイル基(-O-C(=O)CR=CH)、アルキルオキシ(メタ)アクリロイル基(-R-O-C(=O)CR=CH)などの炭素-炭素二重結合を有する基の他、アルキル基(-R)、オキシアルキル基(-OR)、オキソ基(=O)、ハロゲン原子などが挙げられる。但し、Rは水素原子またはメチル基、Rは炭素数1~6の直鎖アルキレン基、Rは分岐を有していてもよい炭素数1~6のアルキル基である。Rの具体例としてはメチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ベンチレン基、ヘキシレン基が挙げられる。Rの具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、n-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基などが挙げられる。またハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子などが挙げられる。
【0019】
モノマー(B1)は、耐液晶性の点から嵩高い構造が好ましく、具体的には、置換基としてアルキル基(-R)、オキシアルキル基(-OR)、又はオキソ基(=O)を有する脂環、若しくは置換基を有してもよい架橋縮合環が好ましく、架橋縮合環がより好ましい。
【0020】
モノマー(B1)の具体例としては、シクロプロピル(メタ)アクリレート、シクロペンチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ノルボルニル(メタ)アクリレート等の2環式(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート等の3環式(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0021】
また、モノマー(B1)は、耐液晶性や硬化性の点から、単独重合体のガラス転移温度は140℃以上が好ましく、150℃以上がより好ましい。単独重合体のガラス転移温度は、1種類のモノマー(B1)を重合して得られた重合体のガラス転移温度であり、測定して求めてもよく、文献値を参照してもよい。
【0022】
モノマー(B1)の好適な具体例としては下記(B1-1)~(B1-5)で表される化合物などが挙げられる。但し、Rは各々独立に炭素-炭素二重結合を有する基である。
【0023】
【化1】
【0024】
(複素環を有するモノマー(B2))
モノマー(B2)において複素環は、環の骨格を構成する原子として炭素原子とヘテロ原子とを含む環を表す。ヘテロ原子としては、O、N、S、Si等が挙げられる。複素環は芳香族性を有していてもよく、有していなくてもよい。複素環が有する水素原子は置換されていてもよい。また複素環が炭素-炭素二重結合を有していてもよい。複素環の具体例としては、ピロール、オキサゾール、イミダゾール、ピリジン、インドール、キノリン、ベンゾフラン、トリアジンなどの芳香族性を有する複素環骨格;テトラヒドロフラン、ピロリジン、テトラヒドロチオフェン、イミダゾリジン、オキサゾリジン、チアゾリン、ジオキソラン、テトラヒドロピラン、ピペリジン、チアン、ピペラジン、モルフォリン、チオモルフォリン、ジオキサン、ジチアン、フラン、チオフェン、イミダゾール、オキサゾール、チアゾール、トリアゾール、ジアゾン、オキサジン、ジオキシン、オクタヒドロインドール、オクタヒドロイソインドール(ヘキサヒドロフタルイミド)、ヘプタヒドロベンゾイミダゾール等の芳香族性を有しない複素環骨格が挙げられる。ポリイソブチレン(A)及びモノマー(B1)との相溶性の点からは、複素環が芳香族性を有しないことが好ましい。
【0025】
前記複素環が有していてもよい置換基としては、ビニル基、アリル基、(メタ)アクリロイル基(-C(=O)CR=CH)、オキシ(メタ)アクリロイル基(-O-C(=O)CR=CH)、アルキルオキシ(メタ)アクリロイル基(-R-O-C(=O)CR=CH)などの炭素-炭素二重結合を有する基の他、アルキル基(-R)、オキシアルキル基(-OR)、オキソ基(=O)、ハロゲン原子などが挙げられる。但し、R~Rは前記脂環が有していてもよい置換基と同様である。
【0026】
また、モノマー(B2)は、耐液晶性や硬化性の点から、単独重合体のガラス転移温度は140℃以上が好ましく、145℃以上がより好ましい。
【0027】
モノマー(B2)の好適な具体例としては下記(B2-1)~(B2-8)で表される化合物などが挙げられる。但し、Rは各々独立に炭素-炭素二重結合を有する基である。
【0028】
【化2】
【0029】
(他のモノマー(B3))
モノマー(B)は、本発明の効果を奏する範囲で他のモノマー(B3)を含んでいてもよいモノマー(B3)は、モノマー(B1)、モノマー(B2)以外のモノマーが挙げられ、環構造を有しないモノマー、芳香族炭素環を有するモノマーなどが挙げられる。
【0030】
モノマー(B3)の具体例としては、スチレン、ビニルトルエン、2-メチルスチレン、t-ブチルスチレン、クロルスチレン、酢酸ビニルなどのビニル系モノマー; メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート等の直鎖又は分岐を有するアルキル(メタ)アクリレート; 2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、及び、N-ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、2-(メタ)アクリロイロキシエチル-2-ヒドロキシプロピルフタレート、2-ヒドロキシ-3-(メタ)アクリロイルオキシプロピル(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレート等のモノマーを含むヒドロキシ基を有するモノマー; ベンジル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレートなどの芳香環を有する(メタ)アクリレート; メチル(メタ)アクリルアミド、N-ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-メトキシエチル(メタ)アクリルアミド、N-エトキシエチル(メタ)アクリルアミド、等の(メタ)アクリルアミド; (メタ)アクリル酸、カルボキシエチル(メタ)アクリレートなどのカルボキシ基を有するモノマー; ジメチルアミノメチル(メタ)アクリレート等のアミノ基を有するモノマー; アリル(メタ)アクリレート;等が挙げられる。モノマー(B3)としては、中でも、ビニル系モノマー、直鎖又は分岐を有するアルキル(メタ)アクリレート、芳香環を有する(メタ)アクリレートが好ましい。
【0031】
モノマー(B1)、モノマー(B2)、及びモノマー(B3)は、いずれも合成して用いてもよく、市販品を用いてもよい。また、モノマー(B1)、モノマー(B2)、及びモノマー(B3)は、各々1種単独で用いてもよく2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0032】
<ポリイソブチレン(A)とモノマー(B)の配合比率>
本硬化性組成物において、オリゴマー(A)とモノマー(B)の比率は、各成分の相溶性や、耐液晶性を考慮して適宜調整すればよい。
本組成物中、ポリイソブチレン(A)100質量部に対し、前記モノマー(B)の合計の割合は、15~50質量部が好ましく、20~45質量部がより好ましい。
モノマー(B)の全量100質量部中、前記脂環を有するモノマー(B1)は、65~95質量部が好ましく、70~90質量部がより好ましい。モノマー(B)の全量100質量部中、前記複素環を有するモノマー(B2)は5~35質量部が好ましく、10~30質量部がより好ましい。また、モノマー(B)の全量100質量部中、モノマー(B3)は20質量部以下が好ましく、10質量部以下がより好ましく、1質量部以下が更に好ましい。
【0033】
<光開始剤(C)>
光開始剤(C)は、ポリイソブチレン(A)及びモノマー(B)の光硬化を促進させるために用いられる成分であり、光ラジカル重合開始剤、光カチオン重合開始剤等が挙げられる。本硬化性組成物は光硬化性などの点から光ラジカル重合開始剤を含むことが好ましく、実質的に光ラジカル重合開始剤からなることが好ましい。なお光ラジカル重合開始剤は、光の作用により開始剤自身が開裂してラジカルを発生する開裂型開始剤が好ましい。開裂型開始剤は一度ラジカルを発生すると分解して開始剤の機能を失い反応性が低下する。そのため、例えば液晶などと予期せぬ反応を生じる恐れが抑制される。またこのような開裂型開始剤は、硬化性に優れるとともに、分解後には光吸収性が低下して硬化物の着色が抑えられ透明性が向上する。
【0034】
(光ラジカル重合開始剤)
光ラジカル重合開始剤は、光の照射によりラジカルを発生する化合物であればよく、適宜選択して用いることができる。光ラジカル重合開始剤の具体例としては、ベンゾフェノン、ジアセチル、ベンジル、ベンゾイン、ω-ブロモアセトフェノン、クロロアセトン、アセトフェノン、2,2-ジエトキシアセトフェノン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセフェノン、p-ジメチルアミノアセトフェノン、p-ジメチルアミノプロピオフェノン、2-クロロベンゾフェノン、p,p’-ビスジエチルアミノベンゾフェノン、ミヒラーケトン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾイン-n-ブチルエーテル、ベンジルジメチルケタール、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-オン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパノン多量体、1-(4-イソプロピルフェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン、メチルベンゾイルホルメート、2,2-ジエトキシアセトフェノン及び4-N,N’-ジメチルアセトフェノン類等のカルボニル系光重合開始剤;ジフェニルジスルフィド及びジベンジルジスルフィド等のスルフィド系光重合開始剤;ベンゾキノン及びアントラキノン等のキノン系光重合開始剤;アゾビスイソブチロニトリル及び2,2’-アゾビスプロパン等のアゾ系光重合開始剤などの紫外光開始剤;2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタン-1-オン、2-ベンジル-2-(ジメチルアミノ)-4’-モルフォリノブチルフェノン、2-ジメチルアミノ-2-(4-メチル-ベンジル)-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタン-1-オン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノプロパン-1-オン、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニルフォスフィンオキサイドなどの可視光開始剤が挙げられる。
【0035】
光ラジカル重合開始剤は、感度、硬化速度などの点から、カルボニル系光重合開始剤又は可視光開始剤が好ましい。
カルボニル系光重合開始剤としては中でも、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセフェノンが好ましい。
また、可視光開始剤としては、2-ベンジル-2-(ジメチルアミノ)-4’-モルフォリノブチルフェノン、又は、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノプロパン-1-オンが好ましい。
【0036】
光開始剤(C)は市販品を用いることができ、1種類を単独で又は2種類以上を併用して用いることができる。
光開始剤(C)は、硬化性及び硬化後の接着強度の観点から、ポリイソブチレン(A)100質量部に対し、0.1~3質量部が好ましく、0.2~2.5質量部がより好ましい。
【0037】
<任意添加成分>
本硬化性組成物は、本発明の効果を奏する範囲で更に他の成分を含有してもよい。このような成分としては、例えば、フィラー、可塑剤、重合禁止剤、シランカップリング剤、遮光性材料、チキソ付与剤、エラストマー、反応性希釈剤、連鎖移動剤、硬化促進剤、イオントラップ剤、イオン交換剤、レベリング剤、顔料、染料、消泡剤等が挙げられる。
【0038】
(可塑剤(D))
本組成物は更に可塑剤(D)を含んでいてもよい。可塑剤を含むことにより、弾性率と収縮率を制御することができる。
本組成物において可塑剤(D)としては、ポリイソブチレン(A)及びモノマー(B)との相溶性の点から、炭化水素樹脂が好ましい。炭化水素系樹脂としては、中でも、ジシクロペンタジエン(DCPD)系モノマーの重合体に水素添加した水添脂環族系炭化水素樹脂、DCPD系モノマーと芳香族(C9)系モノマーとの重合体に水素添加した水添脂環族/芳香族共重合系炭化水素樹脂が好ましい。
可塑剤(D)を使用する場合、その含有割合は、ポリイソブチレン(A)100質量部に対し、1~20質量部が好ましく、5~18質量部がより好ましい。
【0039】
(フィラー(E))
本組成物は、粘度の調整、硬化後の強度向上、線膨張性の抑制等の観点から、フィラー(E)を含有してもよい。フィラー(E)は、無機フィラー及び有機フィラーの中から適宜選択して用いることができる。無機フィラーは、例えば、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、硫酸マグネシウム、珪酸アルミニウム、酸化チタン、アルミナ、酸化亜鉛、二酸化ケイ素、カオリン、タルク、ガラスビーズ、セリサイト活性白土、ベントナイト、窒化アルミニウム、及び窒化ケイ素が挙げられる。有機フィラーは、例えば、ポリメタクリル酸メチル、ポリスチレン、これらを構成するモノマーと他のモノマーとを共重合させて得られる共重合体、ポリエステル微粒子、ポリウレタン微粒子、ゴム微粒子や、高いガラス転移温度を有する共重合体を含むシェルと低いガラス転移温度を有する共重合体のコアとから構成されるコアシェル粒子等が挙げられる。
フィラー(E)は1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
フィラー(E)を使用する場合、その含有割合は、硬化性組成物の全量100質量部に対して、1~30質量部が好ましく、5~25質量部が好ましい。
【0040】
(重合禁止剤)
本組成物は保存安定性や洗浄性を向上する点から、重合禁止剤を含有してもよい。重合禁止剤は硬化反応を抑制するものの中から適宜選択して用いることができる。重合禁止剤としては、例えば、ヒンダードアミン系、ヒンダードフェノール系、キノン系、フェノチアジン系、ニトロソアミン系の重合禁止剤などが挙げられ、中でもヒンダードフェノール系化合物が好ましい。
ヒンダードフェノール系化合物は、フェノールの2位と6位にかさ高い構造を有する化合物であり、例えば、2,6-t-ブチルフェノール、2,6-t-ブチル-4-メチルフェノール、2,4,6-t-ブチルフェノールなどが挙げられる。
重合禁止剤は1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。本硬化性組成物において重合禁止剤を用いる場合、その含有割合は、保存安定性と使用時の硬化性を両立する点から、ポリイソブチレン(A)100質量部に対し、0.0001~0.5質量部が好ましく、0.0005~0.3質量部がより好ましい。
【0041】
(シランカップリング剤)
本組成物は、基材との接着性をより向上させる点からシランカップリング剤を含有してもよい。シランカップリング剤としては、例えば、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ-イソシアネートプロピルトリメトキシシラン及び3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。これらのシランカップリング剤は、1種単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
シランカップリング剤を用いる場合、その含有割合は、ポリイソブチレン(A)100質量部に対し、0.1~10質量部が好ましく、0.5~3質量部がより好ましい。
【0042】
(遮光性材料)
本組成物は、液晶素子のシール近傍における光漏れやコントラスト向上のため、遮光性材料を含有してもよい。ここで遮光性とは、遮光性材料を含有する本組成物の硬化物が2~5のOD(光学濃度)値を有するものをいう。遮光性材料は、液晶に対する汚染性が小さいものを使用することが好ましい。例えば、カーボンブラック、チタンブラック等が挙げられる。
遮光性材料は、ポリイソブチレン(A)100質量部に対し、50質量部以下で使用することができ、5~40質量部が好ましく、10~30質量部がより好ましい。
【0043】
(チキソ付与剤)
本組成物は、塗工性改善等を目的として、チキソ付与剤を含有してもよい。チキソ付与剤は、例えば、ヒュームドシリカ等の微粒子シリカ、微粒子アルミナ、脂肪族アマイド等の非球状の粒子が挙げられる。チキソ付与剤は、貼り合わせ後のシール剤界面の凹凸を抑制する点から、ポリイソブチレン(A)100質量部に対して、10質量部以下が好ましく、塗工性改善の点から、0.1~5質量部が好ましく、0.5~3質量部がより好ましい。
【0044】
<本硬化性組成物の用途>
本硬化性組成物は、光照射のみで硬化が可能で、耐液晶性に優れていることから、液晶と接触する液晶封止用のシール剤として好適に用いることができ、特に、未硬化の状態で液晶と接触する液晶滴下工法用シール剤として好適に用いることができる。また、光照射のみで硬化が可能であることから、基材として比較的耐熱性の低い樹脂基材であっても好適に用いることができ、例えばフレキシブル性を有する液晶セルなども好適に製造することができる。
【0045】
[液晶セル]
本発明に係る液晶セルは、上記本硬化性組成物の硬化物を備えることを特徴とする。本液晶セルは、当該硬化物が耐液晶性に優れ、液晶の乱れ等が抑制される。
【0046】
本液晶セルの一例について、図1を参照して説明する。図1は本液晶セル100の一例を示す平面図である。
図1に示すように、本液晶セル100は、対向して配置された2つの基材(第1基材10及び第2基材40)と、2つの基材の間に枠状に配置された封止部材21と、2つの基材と前記封止部材21により形成された空間内に充填された液晶30とを備える。
本液晶セルは前記封止部材21が、前記本硬化性組成物の硬化物であるため耐液晶性に優れている。
【0047】
第1基材10及び第2基材40は、通常、可視光に対して透明な基材が用いられる。当該基材としては、石英ガラス、無アルカリガラス、合成石英板などのガラス基材の他、樹脂基材を用いてもよい。前記本硬化性組成物は熱効果が不要なため樹脂基材のダメージを抑えながら液晶セルを製造することができる。樹脂基材の材質としては、例えば、トリアセチルセルロース等のアセチルセルロース系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリエチレンやポリメチルペンテン等のオレフィン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリエーテルサルホンやポリカーボネート、ポリスルホン、ポリエーテル、ポリエーテルケトン、アクロニトリル、メタクリロニトリル、シクロオレフィンコポリマー(COP)等の透明樹脂が挙げられる。
基材の厚みは特に限定されないが、例えば、50μm以上1mm以下程度のものを用いることができる。
基材の液晶と接する面には、液晶セルの駆動方式に応じて、液晶を配向させるための配向膜を有していてもよい。配向膜を有する場合、当該配向膜は、ラビング処理された配向膜、光配向膜、賦形された配向膜のいずれであってもよい。
基材はさらに、透明電極層やカラーフィルタ等、液晶セルに用いられ得る公知の構成を適宜備えていてもよい。
また液晶30は、特に限定されず、液晶セルに用いられる公知の液晶の中から、液晶の駆動方式などに応じて適宜選択すればよい。
【0048】
<液晶セルの製造方法>
液晶セルの製造方法について、図2を参照して説明する。図2は、液晶セル100の製造方法の一例を示す模式的な工程図であり、図2の(a)~(d)は、後述する各工程(a)~(d)における液晶セル100の断面図である。図2の(e)は、図1の切断線IIE-IIEにおける断面図に相当する。
図2の例に示すように、第1基材10上に、前記硬化性組成物20を枠状のパターンに塗布する工程(a)と、当該枠内に液晶30を滴下する工程(b)と、前記第1基材10の前記硬化性組成物20の枠が形成された面側に、第2基材40を貼り合わせる工程(c)と、前記硬化性組成物20に光照射する工程(d)を有する。
【0049】
工程(a)における硬化性組成物20の塗布方法は特に限定されず、公知の印刷法や、塗布方法の中から適宜選択すればよい。なお、図1の例では、第1基材10の淵に硬化性組成物20を塗布しているが、用途等に応じて、第1基材10の内側に形成してもよく、複数の枠状パターンを形成した後、第1基材を切断してもよい。
【0050】
工程(b)における液晶30の滴下方法は特に限定されず、公知の方法の中から適宜選択すればよい。未硬化の硬化性組成物20と液晶30が接触するが、本硬化性組成物を用いた場合には、当該硬化性組成物の液晶等への溶出が抑制され、液晶の配向乱れが抑制される。
【0051】
次いで、工程(c)において第1基材10と第2基材40を、硬化性組成物を介して貼り合わせ、液晶30を封入する。
その後、工程(d)において光照射を行い、未硬化の硬化性組成物20を硬化し、封止部材21を得る。
工程(d)における硬化条件は、硬化性組成物の組成に応じて適宜調整すればよい。例えば、紫外光を1,000mJ/cm照射し、次いで100~120℃程度で1時間ほど加熱することにより、硬化性組成物20の硬化物である封止部材21が形成される。
前記硬化性組成物を用いているため、光照射により十分に硬化した封止部材が得られる。一方、熱による応力緩和や、液晶のエージング(再配向処理)などを目的として、必要に応じて加熱処理を行ってもよい。
本発明の液晶セルは前記封止部材21が、前記本発明の硬化性組成物の硬化物であるため、液晶の配向乱れが抑制されている。
【0052】
本製造方法においては、熱硬化工程が不要なため、第1基材10及び第2基材40として、フィルム上の透明樹脂基材を好適に用いることができる。この場合、少なくとも第1基材として長尺状の樹脂基材を用いることにより、上記各工程をロールツーシート方式又はロールツーロール方式により一連の工程として実施することができる。
図3は、液晶セルのロールツーシート方式又はロールツーロール方式による製造方法の一例を示す模式図である。図3の例に示されるとおり、長尺の第1基材10をローラーにより搬送し、印刷ロール51を用いて硬化性組成物20を所定の枠状パターンに塗布し、次いで当該枠内に滴下手段52を用いて液晶30を滴下し、長尺状の第2基材を重ね合わせ、光照射手段53を用いて光照射することにより硬化性組成物20を硬化して封止部材21を形成することで液晶セルが製造できる。当該長尺状の液晶セルは、一旦ロール状に巻き取って搬送し(不図示)、別の場所で裁断してもよく(ロールツーロール方式)、光照射後の後工程として、切断手段(不図示)により枚葉の液晶セルを製造してもよい(ロールツーシート方式)。
【実施例0053】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0054】
[原料]
<ポリイソブチレン(A)>
(A-1):カネカ社製、EPION EP400V(両末端にアクリロイル基を有するポリイソブチレン)
<他のオリゴマー(A’)>
(A’-2):ウレタンアクリル変性ポリブタジエン
【0055】
<モノマー(B1)>
(B1-1):イソボルニルメタクリレート(単官能、単独重合体のガラス転移温度(Tg)は180℃)
(B1-2):ジメチロール-トリシクロデカンジアクリレート(2官能、単独重合体のTgは187℃)
(B1-3):3,3,5-トリメチルシクロヘキシルアクリレート(単官能、単独重合体のTgは52℃)
【0056】
<モノマー(B2)>
(B2-1):モルフォリンアクリルアミド(単官能、単独重合体のTgは145℃)
【0057】
<光開始剤(C)>
(C-1):2-ベンジル-2-(ジメチルアミノ)-4’-モルフォリノブチルフェノン(Omnirad 369E)
(C-2):2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセフェノン(Omnirad 651)
(C-3):2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノプロパン-1-オン(Omnirad 907)
【0058】
<可塑剤(D)>
(D-1):水添炭化水素樹脂(DCPD)(ENEOS株式会社製、HA-105)
(D-2):水添炭化水素樹脂(DCPD/C9)(ENEOS社製、HB-125)
【0059】
<フィラー(E)>
(E-1):アクリル系粒子(平均粒子径2μm;日本触媒社製、MV1002)
(E-2):アクリル系粒子(平均粒子径2.2μm;根上工業社製、J-4PY)
【0060】
[実施例1:硬化性組成物の製造]
ポリイソブチレン(A-1)の3.5質量部と、モノマー(B1-1)の0.95質量部と、モノマー(B1-2)の0.1質量部と、モノマー(B2-1)の0.25質量部と、光開始剤(C-1)の0.02質量部と、可塑剤(D-1)の0.5質量部を配合し、60℃に加温しながら、十分に混練して組成物を得た。当該組成物について後述する相溶性の評価を行った。
次いで、当該組成物にフィラー(E-1)の1.6質量部を配合し、十分に混練、分散して硬化性組成物を得た。
【0061】
[実施例2~14、比較例1~7:硬化性組成物の製造]
前記実施例1において、各成分及び配合量を表1のように変更した以外は、実施例1と同様にして、各硬化性組成物を得た。
【0062】
[評価]
<相溶性評価>
前記ポリイソブチレン(A)と、モノマー(B)と、光開始剤(C)とを配合した組成物について、当該組成物の透明度により相溶性を評価した。結果を表1に示す。
(評価基準)
〇(優):白濁が確認されなかった(透明な液状であった)。
△(可):若干の白濁が確認された。
×(不可):白濁が確認された。
【0063】
<接合強度評価>
下記180度ピール強度試験により、接合強度を評価した。具体的にはまず、ポリイミド(PI)/ITO/ポリエチレンテレフタレート(PET)積層基材のPI側の面に上記硬化性組成物を塗布し、硬化性組成物の厚みが20μmとなるようにPET/ITO/PI/硬化性組成物/PI/ITO/PETとなるように貼り合わせた。なお、PIは日産化学社製SE-5291、ITO/PET基材はグンゼ社製ITO-PETフィルムを用いた。
次いで、基材上からメタルハライドランプ(340nm~440nmのバンドパスフィルター有り)を使用し、照射量:3,000mJ/cm(100mW×30s)でUV照射を行い、前記組成物を硬化させた。得られた積層体を切断して5cm×10mm幅の試験片とした。図4に示すとおり、試験片60の一部を剥がし、当該試験片の剥離部の各基材をチャック(治具)61にセットし、上下チャック間を3cmとし、引張速度:10mm/minの条件でピール強度を測定した。結果を表1に示す。
【0064】
<配向性評価>
図6を参照して配向性評価方法を説明する。図6中の(a)は上面図、(b)は側面図である。PI/ガラス積層基材71のPI側の面をラビング処理して、TN方式用の配向膜を形成した。当該配向膜面に12μmのスペーサーを散布した。当該配向膜面に、前記硬化性組成物72を図5のように中央部(試験用)と、4隅(固定用)の5カ所に塗布し、中央の硬化性組成物72上にTN用液晶73(メルク社製MLC-11900)を滴下し、別のPI/ガラス積層基材74のPI側の面を液晶上から貼り合せた後、固定し、照射量3,000mJ/cmでUV照射を行い、100℃で1時間エージングした後、クロスニコルの配置で偏光板によりセルを挟み、透過により中央部シール剤の周辺の配向不良を観察した。なお、PIは日産化学社製SE-7492を用いた。結果を表1に示す。なお表1中の-は未測定であることを示す。
(評価基準)
〇(優):配向不良が見られなかった。
△(可):配向不良が0.5mm未満であった。
×(不可):配向不良が0.5mm以上であった。
【0065】
【表1】
【0066】
表1に示されるとおり、炭素-炭素二重結合を有するポリイソブチレン(A)と、脂環を有するモノマー(B1)と、複素環を有するモノマー(B2)と、開始剤(C)とを組み合わせた、実施例1~14の硬化性組成物は相溶性に優れ、耐液晶性、及び基材への密着性に優れていることが明らかとなった。
このように、本発明によれば、熱硬化を行うことなく、耐液晶性及び密着性に優れた封止部材が形成可能な硬化性組成物が得られる。
【符号の説明】
【0067】
10:第1基材、 20:硬化性組成物、 21:封止部材、
30:液晶、 40:第2基材、 51:印刷ロール、 52:滴下手段、53:光照射手段、 60:試験片、 61:チャック、 71:ガラス積層基材、 72:硬化性組成物、 73:液晶、 74:ガラス積層基材、 100:液晶セル
図1
図2
図3
図4
図5