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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024019933
(43)【公開日】2024-02-14
(54)【発明の名称】筆記具
(51)【国際特許分類】
   B43K 24/14 20060101AFI20240206BHJP
   B43K 27/02 20060101ALI20240206BHJP
【FI】
B43K24/14 110
B43K27/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022122715
(22)【出願日】2022-08-01
(71)【出願人】
【識別番号】000156134
【氏名又は名称】株式会社壽
(74)【代理人】
【識別番号】110002022
【氏名又は名称】弁理士法人コスモ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲陰▼山 秀平
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 智昭
【テーマコード(参考)】
2C353
【Fターム(参考)】
2C353HA02
2C353HA06
2C353HA09
2C353HE01
2C353HE06
2C353HE12
2C353HG01
(57)【要約】
【課題】従来よりも軸筒の外径を細くした複数の筆記体を備える筆記具を提供する。
【解決手段】一実施形態に係る筆記具は、複数のリフィールと、該複数のリフィールの各々に組付けられた複数のカムフォロアと、軸線周りの周方向に回転して該複数のカムフォロアと軸線方向で接触可能な第1カム面を有する第1カムと、該第1カムと共に周方向に回転し、該第1カム面に対向する軸線方向で該複数のカムフォロアと接触可能な第2カム面を有する第2カムと、を備える。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のリフィールと、
前記複数のリフィールの各々に組付けられた複数のカムフォロアと、
軸線周りの周方向に回転して前記複数のカムフォロアと軸線方向で接触可能な第1カム面を有する第1カムと、
前記第1カムと共に周方向に回転し、前記第1カム面に対向する軸線方向で前記複数のカムフォロアと接触可能な第2カム面を有する第2カムと、
を備えることを特徴とする筆記具。
【請求項2】
前記第2カムは、該第2カムを前記第1カムと対向する方向に付勢して弾性支持する第2カム弾性支持部材により弾性支持された、請求項1に記載の筆記具。
【請求項3】
前記第1カムは前記複数のカムフォロアの一を周方向において係止する係止部を更に有し、前記第2カムは該第1カムの係止部が形成された第1カムの係止位置に対向する周方向の位置に該第2カムの間欠部を更に有し、該第2カムの間欠部に配置され、該第2カムとは別体に形成されて該複数のカムフォロアの一と係合する係止位置係合部材と、該係止位置係合部材を前記第1カムと対向する軸線方向に付勢して弾性支持する係止位置弾性支持部材とを更に備えた、請求項1に記載の筆記具。
【請求項4】
前記複数のリフィールの一は軸線上に配置され、該複数のリフィールの一に対応する前記複数のカムフォロアの一は軸線から径方向にオフセットして配置され、該複数のリフィールの一と該複数のカムフォロアの一とを接続する接続部材とを更に備えた、請求項1乃至請求項3の何れか一項に記載の筆記具。
【請求項5】
前記複数のリフィールの一はシャープペンシルリフィールであり、該シャープペンシルリフィールの芯タンクに後方より筆記芯を補充するガイド筒を更に備え、前記係止位置係合部材は略筒状に形成されて該ガイド筒の外周に配置され、前記係止位置弾性支持部材は該ガイド筒の外周に配置されたコイルバネである、請求項3に記載の筆記具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の筆記体の一を選択して使用することができる筆記具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の筆記体の一を選択して使用することができる筆記具として、特許文献1には、軸筒に収納される1本のシャープペンシルリフィールと2本のボールペンリフィールとされる複数の筆記体の後端に、夫々、圧縮コイルバネにより常時後方に付勢されるスライダが設けられ、該スライダが備えるカムフォロアは回転カムのカム面に押圧される筆記具が開示される。該圧縮コイルバネは、ガイド部材の保持筒の後面と、該スライダとの間において、該スライダの外周に巻回されるように配置される。該スライダは、該ガイド部材のスライドガイドにより前後動可能にガイドされる。該回転カムの回転により、該カム面に沿って該スライダが前後動して複数の筆記体の一が選択的に前後動され、軸筒の先端から突出させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】WO2019/026935公報 (例えば、段落0012、段落0013参照。)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
複数の筆記体を備える筆記具においては、一本の筆記体を備える筆記具に比べて軸筒が太くなるが、できるだけ軸筒を細くしたい要望がある。
【0005】
本発明は、従来よりも軸筒の外径を細くした複数の筆記体を備える筆記具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る筆記具の一態様では、複数のリフィールと、該複数のリフィールの各々に組付けられた複数のカムフォロアと、軸線周りの周方向に回転して該複数のカムフォロアと軸線方向で接触可能な第1カム面を有する第1カムと、該第1カムと共に周方向に回転し、該第1カム面に対向する軸線方向で該複数のカムフォロアと接触可能な第2カム面を有する第2カムと、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る複数の態様では、従来よりも軸筒の外径を細くした複数の筆記体を備える筆記具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の第1実施形態に係る筆記具の外観を示す正面図である。
図2】本発明の第1実施形態に係る筆記具の断面図である。
図3】本発明の第1実施形態に係る筆記具のガイド杆の一を省略し、後軸及び第2カムを二点鎖線で示したガイド部周辺を示す斜視図である。
図4】本発明の第1実施形態に係る筆記具の後軸を二点鎖線で示して第2カムの外側から見た第2カム周辺を示す斜視図である。
図5】本発明の第1実施形態に係る筆記具のカムフォロアが第1カムに係止する状態を示し、後軸及び作動するカムフォロアを二点鎖線で示し、一のスライダ、ボールペンリフィール及び連結ガイド部材の軸線方向の半分を省略して係止位置係合部材とスライダの係合が見えるように示した斜視図である。
図6】本発明の一実施形態に係る筆記具の接続部材と接続するリフィール、スライダ、ガイド筒、係止位置係合部材を示す斜視図である。
図7】本発明の第2実施形態に係る筆記具の断面図である。
図8】本発明の第2実施形態に係る筆記具のガイド杆の一を省略し、後軸及び第2カムを二点鎖線で示したガイド部周辺を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(第1実施形態)
以下、図1図6に基づいて、本発明に係る第1実施形態を説明する。図1に示すように、筆記具1は、先軸20及び後軸30を含む軸筒2と、軸筒2の後軸30に取り付けられるクリップ6とを備える。ここで、以下の説明においては、筆記具1の長手方向の軸線L方向に沿って先軸20側を筆記具1の前方とし、その反対の後軸30側を後方とする。
【0010】
図2に示すように、筆記具1は、複数の筆記体として、3本のボールペンリフィール3を備え、先軸20と後軸30を軸線L周りの周方向に相対的に回転させることにより、順次一の筆記体を先軸20の先細部分である先口の先端開口25から突出させて、所望の筆記体を選択して使用することができるように構成される。なお、ボールペンリフィール3は公知のボールペンチップ3aとインクタンク3bとを有するが、ここでの詳細な説明は省略する。また、詳細は後述するが、3本のボールペンリフィール3のうち、2本は径方向外側に配置され、1本は軸線Lに沿って配置される。
【0011】
先軸20は、略筒状に形成される。先軸20の先口は先細に形成され、先口の先端には先端開口25が形成される。軸筒2の内部には、先軸20の後方から後軸30に亘って連結ガイド部材50が配置される。連結ガイド部材50は、前方側の嵌合筒部51と、後方側のガイド部52と、嵌合筒部51とガイド部52の間の中間部53とを備える。
【0012】
嵌合筒部51は、略円筒状に形成され、外周面には軸線L方向に延在する複数の縦リブ51a及び軸線Lの周方向に延在する複数の横リブ51bが形成される。嵌合筒部51の縦リブ51a、横リブ51bは先軸20の内周面に所定の嵌合荷重で嵌合し、先軸20は嵌合筒部51に対して着脱自在に構成される。嵌合筒部51には、中間部53の近くにフランジ部51cが形成される。嵌合筒部51は、そのフランジ部51cが先軸20の後端の縁部と当接するように嵌合される。
【0013】
後軸30の前端部には、先軸20の後端部やフランジ部51cを覆うように装飾リング38が固定される。装飾リング38は、後軸30と共に軸線L周りに回転可能に構成される。
【0014】
中間部53は、嵌合筒部51とガイド部52の間の中間に位置する円板状に形成される。中間部53には、3本の後述のスライダ55の棒状部55dが挿通される3個の孔部53aが軸線L周りの周方向に形成される。また中間部53の中心には、後述のガイド筒61が挿通する孔部53bが形成される。
【0015】
中間部53の後方には、連結ガイド部材50のガイド部52が形成される。図3に示すように、ガイド部52には、中間部53から後方に延在する3本のガイド杆52aが軸線L周りの周方向に所定間隔を空けて形成される。3本のガイド杆52aの間で、各ボールペンリフィール3の後端部に組み付けられる後述のスライダ55が前後方向に移動自在にガイドされる。ガイド杆52aの中間部53側における径方向外側には、後軸30の内周面に倣って膨出し、外表面が中間部53の外表面と連続する当接部52bが形成される。当接部52bの後端は、後述の第2カム200の前端と摺接する。
【0016】
各ガイド杆52aの後端には、径方向外方に突出する鉤状部を備える係合突出部52a1が形成される。図2に示すように、各係合突出部52a1は、後軸30の後端側の内部に形成される環状リブ31の孔部に挿入されて、各係合突出部52a1の該鉤部が環状リブ31と係合する。各係合突出部52a1と環状リブ31の係合により、後軸30は、連結ガイド部材50(先軸20)に対して相対的に軸線L周りに回転自在に構成される。3つの係合突出部52a1の中心にはピン部材32の軸部32aが挿入され、係合突出部52a1の径方向内側への倒れ込みが規制されることにより、係合突出部52a1が環状リブ31から脱落しないように構成される。
【0017】
後軸30の内周面には、後軸30の内周面から連結ガイド部材50のガイド部52に向けて径方向内側に突出する回転カムとしての第1カム100が形成される。第1カム100は、後軸30と共に、軸線L周りの周方向に回転する。第1カム100は、概して円筒部材の先端を斜めに切断した円筒状に形成され、その前端面が第1カム面110として機能する。第1カム面110は、後述の複数のスライダ55の複数のカムフォロア55aと軸線L方向で接触可能に構成される。第1カム100は、複数のカムフォロア55aの一を軸線Lの周方向において係止する係止部111を有する。係止部111は、第1カム100の突出した前端に形成された略凹部として形成され、後述するスライダ55のカムフォロア55aの後部が係脱可能に係止される。
【0018】
図2図4に示すように、第1カム100の前方には、軸線L方向において第1カム100の第1カム面110と対向するように第2カム200が配置される。第2カム200は、概して円筒部材を斜めに切断した略円筒状に形成され、その後端面が第2カム面210として機能する。第2カム200の前端は、連結ガイド部材50の当接部52bの後端と当接し、これにより第2カム200の前方向への移動が規制される。また、第2カム200の外周面には前後方向に延在する縦リブ230が形成され、この縦リブ230が後軸30の溝部30aと嵌合することで、第2カム200の軸線L周りの回転が規制される。第2カム200は、後軸30と係合して軸線L周りに回転可能に構成され、第1カム100と共に軸線L周りの周方向に回転する。本実施形態では、第2カム200を第1カム100及び後軸30とは別体として構成することにより、従来よりも複雑なカム機構を実現可能としているが、他の実施形態では、第2カム200を第1カム100及び後軸30と一体に成形して筆記具1の生産性を向上させるものとしてもよい。
【0019】
図5に示すように、第2カム200は、第1カム100の係止部111が形成された第1カム100の係止位置に対向する周方向の位置に間欠部220を有する。間欠部220については後に詳述する。図2及び図3に示すように、第2カム200の第2カム面210は、第1カム100の第1カム面110に軸線L方向において対向するように配置される。第2カム面210は、第1カム面110に対向する軸線L方向で複数のカムフォロア55aと接触可能に構成される。ここで、「接触可能」とは、カムフォロアとカム面とが接触した「接触状態」と、カムフォロアとカム面とが接触しない「非接触状態」(換言すれば、「離間状態」)との両方を許容する状態であることをいう(換言すれば、「離間可能に接触する」、「接触可能に離間する」、あるいは「接触/離間自在に接触/離間する」状態であることをいう)。
【0020】
図2図5に示すように、後軸30の内部には、軸線L方向において対向して配置される第1カム100の第1カム面110と、第2カム200の第2カム面210との間に、カムフォロア55aが第1カム100及び第2カム200に対して相対的に移動可能な移動通路300が形成される。移動通路300は、カムフォロア55aが第1カム100及び第2カム200に対して相対的に前後方向に移動する2つの傾斜通路310,320と、その後方でカムフォロア55aが第1カム100及び第2カム200に対して軸線L周りに相対的に移動する平行通路330と、係止部111の前方に形成される係止部通路340とを有する。
【0021】
図2に示すように、径方向外側に位置する2本のボールペンリフィール3に組み付けられる各スライダ55は、その前端に挿入突起55bを備える。挿入突起55bは、ボールペンリフィール3のインクタンク3bの後端開口に着脱自在に嵌合する。軸線L上に配置されるボールペンリフィール3は、図2及び図6に示すように、中間部53よりも前方に配置される接続部材60を介してスライダ55に組み付けられる。接続部材60は、軸線L上に配置されるボールペンリフィール3のインクタンク3bが着脱自在に嵌合するように軸線L上に配置されるリフィール挿入部60aと、軸線Lから径方向外側にオフセットして配置され、スライダ55の先端部55cが嵌合して組み付けられるスライダ挿入部60bとを有する。
【0022】
軸線L上に配置される一のボールペンリフィール3が嵌合するスライダ55と、軸線Lから径方向外側に配置される2本のボールペンリフィール3が嵌合するスライダ55とは、先端部分(先端部55c、挿入突起55b)以外の形状は略同一に形成される。ここでは、図6に示すスライダ55について、その形態を説明する。スライダ55は、外側面に平坦部55d1を備えて前後方向に延在する略円柱状の棒状部55dを備える。棒状部55dの後端には、棒状部55dよりも径大のスライド体55eが形成される。棒状部55dとスライド体55eは、スライド体55eの軸心が棒状部55dの軸心よりも内側に位置するように各軸心を偏芯して配置される。スライド体55eと棒状部55dの接続部における内側(径方向内側)には、係合段部55fが形成される。スライド体55eの外側(径方向外側)の面上には、カムフォロア55aが形成される。カムフォロア55aは、略五角形状に形成されて、頂部を後方に向けて配置される。このようにして、複数のカムフォロア55aは、複数のリフィールとしてのボールペンリフィール3の各々に組み付けられる。
【0023】
また、接続部材60には、軸線L上におけるリフィール挿入部60aの反対側に、前後方向に延在する円筒状のガイド筒61が嵌合されるガイド筒挿入部60cが形成される。ガイド筒61は、軸線Lに沿って配置される。ガイド筒61の外周には、略円筒状の係止位置係合部材62が形成される。係止位置係合部材62は、ガイド筒61に沿って移動自在に構成される。図2に示すように、係止位置係合部材62は、係止位置係合部材62と中間部53との間のガイド筒61の外周に配置されるコイルバネである係止位置弾性支持部材63により、第1カム100に対向する軸線L方向(すなわち後方)に付勢され、弾性支持される。
【0024】
筆記具1は、軸線L周りに先軸20に対して後軸30を相対的に回転することによって、各スライダ55の各カムフォロア55aが移動通路300に沿って移動するように構成される。移動通路300における傾斜通路310,320及び平行通路330においては、カムフォロア55aは、第1カム面110と第2カム面210に接触しながら移動する。また、図5に示すように、カムフォロア55aは、移動通路300の係止部通路340では、第1カム100の係止部111に係止する。係止部通路340では、カムフォロア55aは第1カム100の第1カム面110及び第2カム200の第2カム面210から離間して非接触状態となることができるように構成される。このため、第2カム200は間欠部220を有するように構成される。
【0025】
スライダ55は、カムフォロア55aが係止部111に係止する係止位置に隣接する隣接位置(例えば、二点鎖線で示すカムフォロア55a-1で示す位置)で、係合段部55fが係止位置係合部材62の後端面と当接し、係合するように構成される。係止位置係合部材62は、第2カム200とは別体に形成され、係止位置及びその隣接位置において筆記に使用するリフィールに接続された複数のカムフォロア55aの一と係合し、係合したカムフォロア55aを後方の第1カム100の係止部111に向けて付勢する。係合段部55fが係止位置係合部材62と係合することで、第2カム面210と接触しない第2カム200の間欠部220に対応する領域である係止部通路340であっても、カムフォロア55aは第1カム面110上に押圧される。カムフォロア55aは、カムフォロア55aの頂部が係止部111に入り込んだ係止状態で係止部111に係止される。カムフォロア55aが係止部111に係止されて安定した係止状態で筆記具1の先端開口から突出したボールペンリフィール3のボールペンチップ3aによる筆記をおこなうことができる。スライド体55eが軸線Lから径方向外側にオフセットして配置されるため、係止位置弾性支持部材63で弾性支持された係止位置係合部材62には軸線Lからオフセットした偏荷重が負荷されることとなるが、係止位置係合部材62は軸線L上に配置されたガイド筒61により前後動可能にガイドされているため、好適に作動することができる。
【0026】
他の一のボールペンリフィール3に切り替えるときは、先ず、後軸30を先軸20に対して相対的に回転させて、カムフォロア55aを係止部111から脱出させる。カムフォロア55aが係止部111から脱出するとき、カムフォロア55aは、係止位置係合部材62の押圧力に抗して係止部111から若干前方に移動し、係止部111に隣接する第1カム面110の頂部に当接する(カムフォロア55a-2で示す位置)。カムフォロア55aは、この頂部を乗り越えた後、傾斜通路310,320(図5では傾斜通路320)に導入される。ここで、係止部111に隣接する第1カム100の頂部に位置するカムフォロア55a(カムフォロア55a-2で示す位置のカムフォロア55a)は、係止位置係合部材62により後方に付勢されているため、スムーズに傾斜通路310,320(図5では傾斜通路320)に導入される。
【0027】
このように、カムフォロア55aが係止部111に係止又は脱出する際には、係止部111における係止位置よりもカムフォロア55aは若干前方に移動する。第2カム200には、間欠部220が形成されることにより、間欠部220に対応する係止部通路340においては、カムフォロア55aの前方への移動が許容される。また、カムフォロア55aは、係止位置弾性支持部材63により後方に付勢されて支持されるため、前方に脱落することなく移動通路300に沿って移動することができる。上述のように構成することにより、従来よりも軸筒の外径を細くした複数の筆記体を備える筆記具1を提供することができる。
【0028】
(第2実施形態)
図7及び図8に基づいて、本発明の第2実施形態を説明する。本実施形態に係る筆記具1Aは、第1実施形態の筆記具1の軸線L上に配置されるボールペンリフィール3に換えて、グラファイト芯を用いた筆記体としてのシャープペンシルリフィール4を備える。シャープペンシルリフィール4の送り出し作動のストロークを確保するため、第2カム200は、後軸30に対して前後方向に移動可能に構成され、第1カム100と対向する方向(後方)に付勢して弾性支持する第2カム弾性支持部材250により弾性支持されるように構成される。また、筆記具1Aは、後軸30の後端に消し具35を備える。なお、第1実施形態の筆記具1と同じ部材や同じ部位は、同じ符号を付して、その説明は省略又は簡略化する。
【0029】
シャープペンシルリフィール4は、従来の製品を用いることができ、あるいは任意の公知の構成とすることができる。シャープペンシルリフィール4は、その後端が接続部材60のリフィール挿入部60aに組み付けられる円筒状の芯タンク4aを備える。芯タンク4aの前端部には、筆記芯繰出し機構40が取り付けられる。具体的には、芯タンク4aの前端開口内には、チャック継手41の後部が着脱可能に嵌合される。チャック継手41の前部には、チャック42が圧入して固定される。チャック継手41及びチャック42の外周には、チャック継手41に対して相対的に前後動可能に中筒部材43が配置される。中筒部材43の前方のチャック42の大径部の外周には、チャックリング44が配置される。チャックリング44は、チャック42の大径部により前方への移動が規制される。中筒部材43の内周面に形成される環状の段部43aとチャック継手41の前端との間のチャック42の外周には、チャックスプリング45が配置される。チャックスプリング45により中筒部材43及びチャックリング44が前方に付勢される。中筒部材43の所定量を超える後方への移動は、チャック継手41の外周に形成された環状突起41aにより規制される。中筒部材43の前部には、外周に環状の段部46aが形成された先金(チップ)46が螺着される。先金46の先端側内部には、筆記芯Wを把持する芯ブレーカ47が組み付けられる。
【0030】
後軸30の後端には、後端キャップ33が螺合して着脱自在に組み付けられる。後端キャップ33の内部における後軸30の後端には、消し具ホルダ34が着脱自在に組み付けられる。消し具ホルダ34には、字消しである消し具35が組み付けられる。ピン部材32の軸部32aは、円筒状に形成されて前後方向に貫通する孔部を有してガイド筒61と連通する。ガイド筒61は、接続部材60を介して芯タンク4aと連通する。接続部材60のリフィール挿入部60aとガイド筒挿入部60cは、互いに連通する。筆記具1Aでは、後端キャップ33及び消し具ホルダ34を取り外した状態で、ピン部材32、ガイド筒61、接続部材60を介して筆記芯Wを芯タンク4aに補充することができる。筆記具1Aは、複数のリフィールを備えるが、常時軸線L上に配置されたシャープペンシルリフィール4に後端から筆記芯Wを補充することができる。
【0031】
第2カム200の径方向の外側面には、前後方向に延在する縦リブ230が形成される。縦リブ230は、後軸30の内周面に形成された前後方向に延在する溝状の第2カムガイド部30bに係合する。第2カム200は、軸線L周りの回転が規制された状態で前後方向に移動可能に構成される。第2カム200と連結ガイド部材50の中間部53との間のガイド部52の外周には、第2カム200を後方に付勢して弾性支持する圧縮コイルバネである第2カム弾性支持部材250が配置される。第2カム200が弾性支持されることにより、カムフォロア55aは、第1カム面110及び第2カム面210に対して更に大きな自由度を持って接触可能に構成される。
【0032】
シャープペンシルリフィール4がグラファイト芯を繰り出す操作について説明する。シャープペンシルリフィール4に接続されたスライダ55のカムフォロア55aが、第1カム100の係止部111に係止された状態(図7の状態)で、後軸30を押圧操作(クリック操作)すると、後軸30と共に第1カム100が前方に移動する。第2カム200は、第1カム100が前方に移動することで、係止部111に係止していないカムフォロア55aを介して第2カム弾性支持部材250の付勢力(これに係止位置弾性支持部材63の付勢力も加わる)に抗して前方に移動する。第1カム100の前方への移動により、筆記芯繰出し機構40の先金46の段部46aが先軸20の先端開口25の内縁と当接する。チャックスプリング45の付勢力(これに第2カム弾性支持部材250の付勢力及び係止位置弾性支持部材63の付勢力も加わる)に抗して更に後軸30を押し込むことにより、先金46及び中筒部材43に対してチャック継手41を相対的に前方に移動させて、チャック42をチャックリング44から脱出させて、筆記芯Wを前方へ送り出すことができる。後軸30の押圧を緩めれば、チャックスプリング45の付勢力(これに第2カム弾性支持部材250の付勢力及び係止位置弾性支持部材63の付勢力も加わる)により、芯ブレーカ47で筆記芯Wを保持しつつ、先金46及び中筒部材43に対してチャック継手41を相対的に後方に移動させてチャック42をチャックリング44に嵌合させ、筆記芯Wをチャック42にチャッキングさせることができる。後軸30から手を離す等して後軸30を開放すると、第2カム弾性支持部材250の付勢力及び係止位置弾性支持部材63の付勢力により先金46の段部46aと先端開口25の内縁との当接が解除され、後軸30が筆記位置(図1の位置)に復帰して、筆記することができる。
【0033】
係止位置弾性支持部材63の付勢力を第2カム弾性支持部材250の付勢力よりも弱く構成すると、シャープペンシルリフィール4の繰り出し作動操作に対する影響を小さくすることができる。本実施形態においては、第2カム200に縦リブ230を形成して前後動移動自在としたが、第2カム200を後軸30と一体に形成する等して後軸30に固定しても良い。上述の実施形態では、第2カム200を別部材とすることで、上述したカム作動を実現している。筆記具1Aにおける複数のリフィールの切り換えは、第1実施形態における筆記具1と同様に、先軸20に対して後軸30を相対回転させることで行うことができる。上述のように構成することにより、従来よりも軸筒の外径を細くした複数の筆記体を備える筆記具1Aを提供することができる。
【0034】
以上の複数の実施形態の筆記具1,1Aでは、従来の複合筆記具において複数のカムフォロアの各々に対応して配置された複数のコイルバネが廃止されるので、軸筒2の径を細く形成することができる。第2カム200を後軸30に対して前後方向に固定して構成し、軸筒2の径を細くしたボールペンリフィール3を複数備えた筆記具1について説明した。また、第2カム200を弾性支持して後軸30に対して前後方向に移動可能に構成し、ノックストロークを確保したシャープペンシルリフィール4を備え、軸筒2の径を細くした筆記具1Aについて説明した。
【0035】
以上、本発明は本実施形態によって制限されることは無く、種々の形態で実施することができる。例えば、ボールペンリフィール3やシャープペンシルリフィール4の数は、2本以上であればよい。また、複数のリフィールは、ボールペンやシャープペンシルに限定されることはない。
【符号の説明】
【0036】
1,1A 筆記具
2 軸筒 3 ボールペンリフィール
3a ボールペンチップ 3b インクタンク
4 シャープペンシルリフィール
4a 芯タンク 6 クリップ
20 先軸 25 先端開口
30 後軸 30a 溝部
30b 第2カムガイド部 31 環状リブ
32 ピン部材 32a 軸部
33 後端キャップ 34 消し具ホルダ
35 消し具 38 装飾リング
40 筆記芯繰出し機構 41 チャック継手
41a 環状突起 42 チャック
43 中筒部材 43a 段部
44 チャックリング 45 チャックスプリング
46 先金 46a 段部
47 芯ブレーカ 50 連結ガイド部材
51 嵌合筒部 51a 縦リブ
51b 横リブ 51c フランジ部
52 ガイド部 52a ガイド杆
52a1 係合突出部 52b 当接部
53 中間部 53a 孔部
53b 孔部 55 スライダ
55a カムフォロア 55b 挿入突起
55c 先端部 55d 棒状部
55d1 平坦部 55e スライド体
55f 係合段部 60 接続部材
60a リフィール挿入部 60b スライダ挿入部
60c ガイド筒挿入部 61 ガイド筒
62 係止位置係合部材 63 係止位置弾性支持部材
100 第1カム 110 第1カム面
111 係止部 200 第2カム
210 第2カム面 220 間欠部
230 縦リブ 250 第2カム弾性支持部材
300 移動通路 310 傾斜通路
320 傾斜通路 330 平行通路
340 係止部通路
L 軸線 W 筆記芯
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8