(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024019944
(43)【公開日】2024-02-14
(54)【発明の名称】物体の体積を見積もるための方法とプログラム、当該プログラムが記憶されたコンピュータ可読記憶媒体、および当該プログラムが搭載されたコンピュータ
(51)【国際特許分類】
G06T 7/62 20170101AFI20240206BHJP
G01B 11/28 20060101ALN20240206BHJP
【FI】
G06T7/62
G01B11/28 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022122737
(22)【出願日】2022-08-01
(71)【出願人】
【識別番号】302060926
【氏名又は名称】株式会社フジタ
(74)【代理人】
【識別番号】110000408
【氏名又は名称】弁理士法人高橋・林アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】仲沢 武志
(72)【発明者】
【氏名】小島 秋
【テーマコード(参考)】
2F065
5L096
【Fターム(参考)】
2F065AA59
2F065BB05
2F065FF04
2F065FF61
2F065JJ03
2F065JJ26
2F065MM06
2F065QQ21
2F065QQ31
5L096CA05
5L096FA05
5L096FA12
5L096FA69
5L096FA70
(57)【要約】
【課題】三か所から取得された物体の画像に基づいて物体の体積を効率良く見積もるための方法を提供すること。
【解決手段】この方法は、この方法は、物体とスケール基準を含む第1から第3の画像をそれぞれ第1から第3の地点で取得すること、スケール基準を利用して第1から第3の画像の縮尺を統一すること、第1から第3の画像において、物体の面積の80%以上120%以下を占める四角形の第1から第3の占有領域をそれぞれ設定すること、第1から第3の画像のそれぞれにおいて、第1の占有領域の頂点のx座標とy座標、第2の占有領域のy座標とz座標、および第3の占有領域のy座標とz座標を決定すること、第1から第3の占有領域を用い、物体を近似する6面体を、x座標、y座標、およびz座標から独立したXYZ全体座標系に構築すること、ならびに6面体の体積を計算することを含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の地点から取得した物体とスケール基準を含む第1の画像、第2の地点から取得した前記物体と前記スケール基準を含む第2の画像、および第3の地点から取得した前記物体と前記スケール基準を含む第3の画像を用意すること、
前記スケール基準を利用して前記第1の画像、前記第2の画像、および前記第3の画像の縮尺を統一すること、
前記第1の画像、前記第2の画像、および前記第3の画像において、前記物体の面積の80%以上120%以下を占める四角形の第1の占有領域、第2の占有領域、および第3の占有領域をそれぞれ設定すること、
前記第1の画像、前記第2の画像、および前記第3の画像のそれぞれにおいて、前記第1の占有領域の頂点のx座標とy座標、前記第2の占有領域のy座標とz座標、および前記第3の占有領域のy座標とz座標を決定すること、
前記第1の占有領域、前記第2の占有領域、および前記第3の占有領域を用い、前記物体を近似する6面体を、前記x座標、前記y座標、および前記z座標から独立したXYZ全体座標系に構築すること、ならびに
前記6面体の体積を計算することを含み、
前記XYZ全体座標系のX軸、Y軸、Z軸は、それぞれ前記x座標の軸、前記y座標の軸、前記z座標の軸と平行である、物体の体積を見積もる方法。
【請求項2】
前記第1の地点は、前記物体に対して第1の方向上に位置し、
前記第2の地点は、前記第1の方向に対して20°から170°の第2の方向上に位置し、
前記第3の地点は、前記第1の方向に対して-20°から-170°の第3の方向上に位置する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1の占有領域の設定は、前記第1の占有領域の互いに対向する頂点の前記x座標または前記z座標が相違するように行われ、
前記第2の占有領域の設定は、前記第2の占有領域の互いに対向する頂点の前記y座標または前記z座標が相違するように行われ、
前記第3の占有領域の設定は、前記第3の占有領域の互いに対向する頂点の前記y座標または前記z座標が相違するように行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
処理装置に、
それぞれ第1の地点、第2の地点、第3の地点で取得された物体とスケール基準を含む第1の画像、第2の画像、第3の画像の縮尺を前記スケール基準を利用して統一すること、
前記第1の画像、前記第2の画像、および前記第3の画像のそれぞれにおいて設定された前記物体の面積の80%以上120%以下を占める四角形の第1の占有領域、第2の占有領域、および第3の占有領域について、前記第1の占有領域の頂点のx座標とy座標、前記第2の占有領域のy座標とz座標、および前記第3の占有領域のy座標とz座標を決定すること、
前記第1の占有領域、前記第2の占有領域、および前記第3の占有領域を用い、前記物体を近似する6面体を、前記x座標、前記y座標、および前記z座標から独立したXYZ全体座標系に構築すること、ならびに
前記6面体の体積を計算することを実行させることを含み、
前記XYZ全体座標系のX軸、Y軸、Z軸は、それぞれ前記x座標の軸、前記y座標の軸、前記z座標の軸と平行である、物体の体積を見積もるためのプログラム。
【請求項5】
請求項4に記載の前記プログラムが記録された、コンピュータ可読記憶媒体。
【請求項6】
請求項4に記載の前記プログラムが搭載された、コンピュータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態の一つは、物体の体積を見積もるための方法に関する。例えば、物体の画像を利用して物体の体積を見積もるための方法とプログラム、当該プログラムが記憶されたコンピュータ可読記憶媒体、および当該プログラムが搭載されたコンピュータに関する。
【背景技術】
【0002】
物体の画像を利用してその体積を見積もる方法が知られている。例えば、特許文献1では、球状農作物の水平面に平行な端面の形状が円であると仮定し、側面画像から決定される球状農作物の幅の1/2である端面の半径と画素の高さから球状農作物の体積を見積もる方法が開示されている。特許文献2では、マーカーが設けられた物体に固有パターンを投影し、この状態で二か所から取得した画像を処理することで物体の体積を見積もる方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-135275号公報
【特許文献2】特開2011-191131号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の実施形態の一つは、物体の体積を見積もるための新規な方法を提供することを課題の一つとする。あるいは、本発明の実施形態の一つは、物体の画像に基づいて物体の体積を効率良く見積もるための方法を提供することを課題の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の実施形態の一つは、物体の体積を見積もる方法である。この方法は、物体とスケール基準を含む第1の画像、第2の画像、および第3の画像をそれぞれ第1の地点、第2の地点、第3の地点で取得すること、スケール基準を利用して第1の画像、第2の画像、および第3の画像の縮尺を統一すること、第1の画像、第2の画像、および第3の画像において、物体の面積の80%以上120%以下を占める四角形の第1の占有領域、第2の占有領域、および第3の占有領域をそれぞれ設定すること、第1の画像、第2の画像、および第3の画像のそれぞれにおいて、第1の占有領域の頂点のx座標とy座標、第2の占有領域のy座標とz座標、および第3の占有領域のy座標とz座標を決定すること、第1の占有領域、第2の占有領域、および第3の占有領域を用い、物体を近似する6面体を、x座標、y座標、およびz座標から独立したXYZ全体座標系に構築すること、ならびに6面体の体積を計算することを含む。XYZ全体座標系のX軸、Y軸、Z軸は、それぞれx座標の軸、y座標の軸、z座標の軸と平行である。
【0006】
本発明の実施形態の一つは、物体の体積を見積もるためのプログラムである。このプログラムは、処理装置に、それぞれ第1の地点、第2の地点、第3の地点で取得された物体とスケール基準を含む第1の画像、第2の画像、第3の画像の縮尺をスケール基準を利用して統一すること、第1の画像、第2の画像、および第3の画像のそれぞれにおいて設定された物体の面積の80%以上120%以下を占める四角形の第1の占有領域、第2の占有領域、および第3の占有領域について、第1の占有領域の頂点のx座標とy座標、第2の占有領域のy座標とz座標、および第3の占有領域のy座標とz座標を決定すること、第1の占有領域、第2の占有領域、および第3の占有領域を用い、物体を近似する6面体を、x座標、y座標、およびz座標から独立したXYZ全体座標系に構築すること、および6面体の体積を計算することを実行させるように構成される。
【0007】
本発明の実施形態の一つは、上記プログラムが記録された、コンピュータ可読記憶媒体である。
【0008】
本発明の実施形態の一つは、上記プログラムが搭載された、コンピュータである。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の実施形態の一つに係る、物体の体積を見積もるための方法を示すフローチャート。
【
図2】本発明の実施形態の一つ係る、物体の体積を見積もるための方法を説明する模式的上面図。
【
図3】本発明の実施形態の一つ係る、物体の体積を見積もるための方法を説明する模式的側面図。
【
図4】本発明の実施形態の一つ係る、物体の体積を見積もるための方法を説明する模式図。
【
図5】本発明の実施形態の一つ係る、物体の体積を見積もるための方法を説明する模式図。
【
図6】本発明の実施形態の一つ係る、物体の体積を見積もるための方法を説明する模式図。
【
図7】本発明の実施形態の一つ係る、物体の体積を見積もるための方法を説明する模式図。
【
図8】本発明の実施形態の一つ係る、物体の体積を見積もるための方法を説明する模式図。
【
図9】本発明の実施形態の一つ係る、物体の体積を見積もるための方法を説明する模式図。
【
図10】本発明の実施形態の一つ係る、物体の体積を見積もるための方法を説明する模式図。
【
図11】本発明の実施形態の一つ係るコンピュータのブロック図の一例。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の各実施形態について、図面などを参照しつつ説明する。ただし、本発明は、その要旨を逸脱しない範囲において様々な態様で実施することができ、以下に例示する実施形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。
【0011】
1.物体の体積を見積もる方法
本発明の実施形態の一つは、物体の体積を見積もるための方法である。本方法が適用可能な物体に制約はなく、三次元形状を有する様々な物体に本方法を適用することができる。物体の一例としては、山腹や河原などに点在する石や岩石、すなわち、転石が挙げられる。転石は、場所によっては作業員が近づいて測量することが困難であることが多く、測量には危険を伴うことがある。しかしながら、以下に詳述する様に、本方法では、異なる三方向から取得した物体の画像を用いることで効率よく体積を見積もることができる。また、本方法は、転石の姿全体が露出した画像を取得して体積を見積もることもできるし、転石の一部が地中に埋まり、姿全体が露出していない状態であっても、異なる三方向から取得した物体の画像を用いることで、物体の体積のおおよそを見積もることができる。また、物体の画像は必ずしも作業員が撮像装置を携帯して取得する必要は無く、撮像装置が搭載された無人車両や無人航空機を利用してもよい。したがって、作業員の安全を確保しつつ、転石の体積を速やかに見積もることができる。以下、物体として転石を例にとり、本方法を詳細に説明する。
【0012】
(1)画像の取得
図1に本方法のフローチャートを示す。本方法では、まず、転石の画像を異なる三つの地点から取得する。三つの地点は、転石の画像を三方向から取得するように適宜設定すればよい。より具体的には、三つの地点は互いに鉛直方向の高さ(高度)が同じでも良く、異なってもよい。同様に、三つの地点は、転石からの距離が互いに同一でもよく、異なってもよい。また、転石を上面から見た模式図である
図2に示すように、第1の地点が転石(または、転石の中心若しくは転石上の一点)から第1の方向に位置するとした場合、第2の地点は、第1の方向から水平面内で10°から170°、30°から150°、または45°から135°の角度θ
1ずれた第2の方向上にあればよい。一方、第3の地点は、第1の方向から水平面内で-10°から-170°、-30°から-150°、または-45°から-135°の角度θ
2ずれた第3の方向上にあればよい。θ
1とθ
2は同一でもよく、異なってもよい。このように三つの地点から転石の画像を取得することで、第1の地点から取得される第1の画像(正面画像)、第2の地点から取得される第2の画像(左側面画像)、および第3の地点から取得される第3の画像(右側面画像)が得られる。なお、画像の数は3に限られることはなく、4以上でもよい。例えば、上記第1の画像から第3の画像に加え、転石に対して第1の地点の反対側の地点(例えば、第1の方向から水平面内で135°から225°の角度ずれた方向上の地点)から取得される第4の画像を用いてもよい。
【0013】
撮像は、デジタルカメラなどの、画像をデジタルデータとして取得できる撮像装置を用いればよい。あるいは、アナログ式のカメラを用い、その出力をデジタル変換したデータを画像として用いてもよい。したがって、各画像は、それぞれ複数の階調(例えば256階調)で表現される、複数行と複数列のマトリクス状に配置される複数のデータポイントとして表現される。画像がディスプレイ上で表現される場合には、データポイントは画素に対応する。
【0014】
ここで、
図3の模式的側面図に示すように、第1の画像から第3の画像を取得する際には、体積見積対象である転石とともに、縮尺の基準となるスケール基準も同時に撮影する。スケール基準は、測量ポールでもよく、あるいは大きさが既知の任意の物体を用いてもよい。あるいは、大きさが既知でなくても、第1の画像から第3の画像のいずれにもその全容が収まる共通の物体をスケール基準として用いてもよい。共通の物体としては、例えば転石の付近に存在する樹木や草木、他の転石でもよい。
【0015】
(2)縮尺の調整
上述したように、画像を取得する三つの地点は、転石からの距離、高度が互いに異なることがある。また、角度θ1とθ2も異なることがある。このため画像間で縮尺が異なることがある。そこで、第1の画像から第3の画像で縮尺を統一するため、スケール基準を利用して縮尺を調整する。これにより、全ての画像において、同一の長さが同一数のデータポイントまたは画素で表現され、転石を同じ縮尺で表現することができる。
【0016】
また、各画像は、データポイントを構成する行と列が必ずしも水平方向または鉛直方向であるとは限られず、画像の取得時に撮像装置が傾いている場合には、データポイントを構成する行と列は水平方向または鉛直方向からずれる。このずれが顕著に表れる場合には、例えばスケール基準を利用して第1の画像から第3の画像の傾きを修正してもよい。
【0017】
(3)占有領域の設定
引き続き、各画像において、転石が占める領域をトリミングする。トリミングは、各画像において占有領域を設定することで行われる。占有領域は、転石と重なり、かつ、転石の面積の80%以上120%以下、85%以上115%以下、または90%以上110%以下の面積を占める四角形の領域として設定される。
図3に示すように、占有領域の頂点は、転石の輪郭上に位置してもよく、あるいは輪郭と重ならなくてもよい。あるいは、占有領域は、その4辺が転石が占める領域を内接するように設定してもよく、外接するように設定してもよい。これにより、各画像において、転石を近似する占有領域を二次元情報として取得することができる。なお、各画像において、占有領域は、対向する一対の頂点が上下方向または左右方向で重ならないように設定することが好ましい。
【0018】
第1の画像から第3の画像において設定される占有領域(以下、それぞれ第1の占有領域、第2の占有領域、第3の占有領域とも呼ぶ。)の模式図を
図4に示す。
図4に示すように、これらの占有領域の頂点は、画像間で独立した局所座標系を用いて表現される。この局所座標系は、第1の画像では便宜上xz座標とする。一方、第2の画像と第3の画像では、局所座標系はyz座標とする。局所座標系は、x軸とy軸が互いに直交して水平面を形成し、z軸は鉛直方向となるように設定してもよい。あるいは、画素またはデータポイントがマトリクス状に配置される場合には、マトリクスの配列方向をx軸、y軸、またはz軸としてもよい。
【0019】
例えば第1の占有領域は、左下、右下、右上、左上の頂点V1LL、V1RL、V1RU、V1LUによって定義される。第1の画像はx座標とz座標の情報を含み、頂点V1LL、V1RL、V1RU、V1LUの局所座標は、それぞれ(xLL
(1),zLL
(1))、(xRL
(1),zRL
(1))、(xRU
(1),zRU
(1))、(xLU
(1),zLU
(1))で表すことができる。頂点V1LL、V1RL、V1RU、V1LUの局所座標は、原点をV1LLとし、第1の画素を構成するデータポイントまたは画素の数を利用して決定すればよい。
【0020】
同様に、第2の占有領域は、右下、右上、左上、左下の頂点V2RL、V2RU、V2LU、V2LLによって定義される。第2の画像中はy座標とz座標の情報を含み、頂点V2RL、V2RU、V2LU、V2LLの局所座標は、それぞれ(yRL
(2),zRL
(2))、(yRU
(2),zRU
(2))、(yLU
(2),zLU
(2))、(yLL
(2),zLL
(2))で表すことができる。頂点V2RL、V2RU、V2LU、V2LLの局所座標は、原点をV2RLとし、第2の画素を構成するデータポイントまたは画素の数を利用して決定すればよい。
【0021】
同様に、第3の占有領域は、左下、右下、右上、左上の頂点V3LL、V3RL、V3RU、V3LUによって定義される。第3の画像はy座標とz座標の情報を含み、頂点V3LL、V3RL、V3RU、V3LUの局所座標は、それぞれ(yLL
(3),zLL
(3))、(yRL
(3),zRL
(3))、(yRU
(3),zRU
(3))、(yLU
(3),zLU
(3))で表すことができる。頂点V3LL、V3RL、V3RU、V3LUの局所座標は、原点をV3LLとし、第3の画素を構成するデータポイントまたは画素の数を利用して決定すればよい。
【0022】
上記占有領域とその頂点の座標は以下の表1のように纏められる。上述したように、各画像において、占有領域は、対向する一対の頂点が上下方向または左右方向で重ならないように設定することが好ましい。より具体的には、第1の占有領域は、互いに対向する頂点のx座標またはz座標が一致しないように設定することが好ましい。第2の占有領域と第3の占有領域は、互いに対向する頂点のy座標またはz座標が一致しないように設定することが好ましい。このように占有領域を設定することで、各占有領域の左下、右下、右上、左上の頂点が一意的に決まる。
【表1】
【0023】
(4)近似6面体の構築
引き続き、各画像で設定された占有領域を用い、転石を近似する6面体を構築する。この近似6面体は、
図5に示すように、局所座標系から独立したXYZ全体座標系に配置され、8つの頂点によって定義される。XYZ全体座標系は、互いに直交するX軸、Y軸、およびZ軸によって構成され、X軸、Y軸、およびZ軸は、局所座標のx軸、y軸、およびz軸にそれぞれ平行である。近似6面体は、XYZ全体座標系に三つの占有面積の頂点を仮想的に配置し、融合することで構築される。しかしながら、第1の画像、第2の画像、および第3の画像から得られる転石の形の情報は、転石の全ての形状情報を含むわけでは無く、第1の地点、第2の地点、および第3の地点から死角となった部分の転石の形状情報に欠ける。そこで、以下に述べるように幾つかの仮定を置いて近似6面体を構築する。なお、以下、第1から第3の占有領域の頂点と区別するため、近似6面体の頂点を節点と呼ぶ。したがって、近似六面体は節点N
1からN
8で定義される。また、局所座標系における座標は小文字のx、y、zを用い、全体座標系における座標は大文字のX、Y、Zを用いて表記する。
【0024】
仮定の一として、第1の占有領域と第2の占有領域を融合して、節点N1を配置する。この時、頂点V1LLの局所座標と頂点V2RLの局所座標は、全体座標において同一座標の原点と仮定する。近似6面体の構築では全体座標の原点を節点N1とせず、節点N2を全体座標の原点として各占有領域を融合してもよい。以下の説明では、節点N1を全体座標の原点として近似6面体を構築する方法について述べる。
【0025】
仮定の一として、第2の占有領域の頂点V2
RLのx座標と頂点V2
LLのx座標は、第1占有領域の頂点V1
LLのx座標と同一とし、第2の占有領域の頂点V2
RUのx座標と頂点V2
LUのx座標は、第1占有領域の頂点V1
LUのx座標と同一とする。同様に、第3の占有領域の頂点V3
LLのx座標と頂点V3
RLのx座標は、第1の占有領域の頂点V1
RLのx座標と同一とし、第3の占有領域の頂点V3
LUのx座標と頂点V3
RUのx座標は、第1の占有領域の頂点V1
RUのx座標と同一とする。したがって、表1の各頂点の局所座標は、上記仮定のもとに表2で示される。以下、この仮定に基づいて近似6面体を構築する手法を具体的に説明する。
【表2】
【0026】
まず、第1の占有領域と第2の占有領域とを融合する。具体的には、
図6に示すように、XYZ全体座標系に第1の占有領域の頂点V1
LLと第2の占有領域の頂点V2
RLを配置し、これらの頂点を節点N
1として定義する。また、節点N
1を全体座標の原点とする。
【0027】
次に、第2の占有領域の頂点V2LLを全体座標系に節点N4として配置する。この時、節点N4のX座標は、節点N1のX座標と同一とする。同様に、第2の占有領域の頂点V2LUを全体座標系に節点N8として配置する。この時、節点N5とN8のX座標は、第1の占有領域の頂点V1LUのx座標と同一とする。以上により、XYZ全体座標系における節点N1のXYZ座標は(X,Y,Z)=(0,0,0)で表され、節点N4のXYZ座標は(X,Y,Z)=(xLL
(1),yLL
(2),zLL
(2))で表され、節点N8のXYZ座標は(X,Y,Z)=(xLU
(1),yLU
(2),zLU
(2))で表される。
【0028】
次に、全体座標系に節点N
5を配置する。具体的には、第1の占有領域の左上の頂点V1
LUと第2の占有領域の右上の頂点V2
RUを融合して一つの節点N
5を定義する。頂点V1
LUのx座標と頂点V2
RUのy座標はそれぞれ第1の占有領域と第2の占有領域から取得される。したがって、節点N
5のX座標とY座標は、頂点V1
LUのx座標と頂点V2
RUのy座標に対応し、それぞれx
LU
(1)、y
RU
(2)で表される。一方、節点N
5のZ座標は、頂点V1
LUと頂点V2
RUのz座標に対応する。しかしながら、頂点V1
LUと頂点V2
RUのz座標は必ずしも一致しない(
図6(A))。これは、第1の画像と第2の画像を取得する地点の高度が異なることがあること、占有領域の設定において選択された頂点V1
LUと頂点V2
RUが必ずしも転石の同一箇所ではない可能性があること、縮尺の調整に誤差が含まれ得ること、などが理由である。したがって、節点N
5のZ座標として頂点V1
LUと頂点V2
RUのz座標の平均値(z
LU
(1)+z
RU
(2))/2を採用する。以上の操作により、
図6(B)のように節点N
5の全体座標が定義され、節点N
5のXYZ座標は、(X,Y,Z)=(x
LU
(1),y
RU
(2),(z
LU
(1)+z
RU
(2))/2)で表される。
【0029】
以上により、第1の占有領域と第2の占有領域とを融合し、節点N
1、節点N
4、節点N
8、節点N
5の全体座標を得る(
図6(B))。
【0030】
次に、第1の占有領域と第3の占有領域とを融合する(
図7)。第1の占有領域と第2の占有領域とを融合した際は、節点N
1を原点とし、かつ第1の占有領域の左下の頂点V1
LLと第2の占有領域の右下の頂点V2
RLとが同一座標と仮定したため、節点N
4、節点N
8、節点N
5のZ座標は、各節点に対応する頂点のz座標を利用できた。しかし、第1の占有領域と第3の占有領域との融合の際は、第1の占有領域の右下の頂点V1
RLと、第3の占有領域の左下の頂点V3
LLとが同一座標とは仮定しないため、節点N
2、節点N
3、節点N
7、節点N
6のZ座標は、各節点に対応する頂点のz座標を利用して計算することで、各節点のz座標を得る。
【0031】
全体座標系に節点N
2を配置する(
図7)。具体的には、第1の占有領域の右下の頂点V1
RLと第3の占有領域の左下の頂点V3
LLを融合して節点N
2を定義する。頂点V1
RLのx座標と頂点V3
LLのy座標より、節点N
2のX座標とY座標が取得される。一方、節点N
2のZ座標は、頂点V1
RLのz座標と、頂点V3
LLのz座標が考えられる。しかし、頂点V1
RLのz座標は、原点である節点N
1に対応する頂点V1
LLと同一の局所座標系を有し、頂点V3
LLのz座標は、原点である節点N1に対応する頂点V1
LLと同一の局所座標系を有さないため、頂点V1
RLのz座標より節点N
2のZ座標を取得する。以上により、節点N
2の全体座標が定義され、節点N
2のXYZ座標は、(X,Y,Z)=(x
RL
(1),y
LL
(3),z
RL
(1))で表される。
【0032】
次に、全体座標系に節点N
6を配置する。具体的には、第1の占有領域の右上の頂点V1
RUと第3の占有領域の左上の頂点V3
LUを融合して一つの節点N
6を定義する。頂点V1
RUのx座標と頂点V3
LUのy座標より、節点N
6のX座標とY座標は取得される。したがって、節点N
6のX座標とY座標は、頂点V1
RUのx座標と頂点V3
LUのy座標に対応し、それぞれx
RU
(1)、y
LU
(3)で表される。一方、節点N
6のZ座標は、頂点V1
RUと頂点V3
LUのz座標に対応する。しかしながら、節点N
5の定義と同様、頂点V1
RUと頂点V3
LUのz座標も必ずしも一致するとは限らない。したがって、節点N
6のXYZ全体座標系におけるZ座標は、頂点V1
RUと頂点V3
LUのz座標の平均値を採用する。前者はz
RU
(1)である。ただし、
図4の第3の画像の局所座標において原点とした頂点V3
LLの座標は全体座標において原点ではないため、頂点V3
LUのZ座標を、頂点V3
LUのz座標に頂点V3
LLのz座標を加えた(z
LU
(3)+z
LL
(3))とする。そして、節点N
6のZ座標として頂点V1
RUと頂点V3
LUのz座標の平均値を採用するため、(z
RU
(1)+(z
LU
(3)+z
LL
(3)))/2を採用する。以上により、節点N
6の全体座標が定義され、節点N
6のXYZ座標は、(X,Y,Z)=(x
RU
(1),y
LU
(3),(z
RU
(1)+(z
LU
(3)+z
LL
(3)))/2)で表される。
【0033】
近似6面体の残り二つの節点の一方である節点N7の定義では、節点N7のX座標は節点N6のX座標と同一であると仮定する。したがって、節点N7のX座標は、xRU
(1)で表される。節点N7は頂点V3RUに対応し、そのY座標は第3の占有領域から取得されるため、頂点V3RUのy座標はyRU
(3)で表される。一方、Z座標も第3の占有領域の頂点V3RUのz座標から取得されるが、第3の占有領域の局所座標の原点は、節点N1の原点ではないことから、第3の占有領域の頂点V3RUのz座標(zRU
(3))に頂点V3LLのz座標(zLL
(3))が加算される。したがって、節点N7のZ座標はzRU
(3))+zLL
(3)で表される。以上の操作により、節点N7の全体座標が定義され、節点N7のXYZ座標は、(X,Y,Z)=(xRU
(1),yRU
(3),(zRU
(1)+(zRU
(3)+zLL
(3)))/2)で表される。
【0034】
節点N7の定義と同様、残りの節点N3の定義においても、節点N3のX座標は節点N2のX座標と同一であると仮定する。したがって、節点N3のX座標は、xRL
(1)で表される。節点N3は頂点V3RLに対応し、そのY座標とZ座標は第3の占有領域から取得される。そして、第3の占有領域の局所座標の原点は、節点N1の原点ではないことから、第3の占有領域の頂点V3RLのz座標(zRL
(3))に頂点V3LLのz座標(zLL
(3))が加算される。よって、節点N3のZ座標は、zRL
(3)+zLL
(3)で表される。以上の操作により、節点N8の全体座標が定義され、節点N3のXYZ座標は、(X,Y,Z)=(xRL
(1),yRL
(3),(zRL
(3)+zLL
(3)))で表される。
【0035】
以上の操作を行うことで、近似6面体がXYZ全体座標系に構築される(
図6(B))。節点N
1からN
8のXYZ座標を表3に纏める。
【表3】
【0036】
(5)近似6面体の体積の計算
得られた近似6面体の体積は、近似6面体をその内部の任意の点Pcを頂点とする6つの四角錘に分割し、全ての四角錘の体積の総和として求めることができる。内部の点Pcは以下のように定義される。
【数1】
ここで、Pk(k=1,2,,,,8)は、それぞれ始点をPc、終点を節点N
1からN
8とするベクトルである。
【0037】
例えば、節点N
1、N
4、N
5、N
8で形成される面を底面、点Pcを頂点とする四角錘の体積V(
図8参照。)は、以下の式で表される。
【数2】
ここで、・は内積であり、×は外積である。
【0038】
本方法では、各画像で設定される占有領域の形状は、必ずしも四角形に限られない。例えば、
図9に示すように、第1の画像、第2の画像、第3の画像のそれぞれにおいて、左下、右下、右上、左上の頂点に加え、頂点V1
T、V2
T、V3
Tで定義される5角形の占有領域を設定してもよい。あるいは、図示しないが、6角形以上の多角形の占有領域を形成してもい。なお、占有領域の頂点の数は、第1の画像、第2の画像、第3の画像の間で同一であることが好ましい。
【0039】
5角形の占有領域を設定する場合には、近似多面体は節点N
1からN
9で定義される近似9面体となる(
図10参照)。節点N
9のX座標は、第1の占有領域の頂点V1
Tのx座標で表せばよい。節点N
9のY座標は、第2の占有領域の頂点V2
Tのy座標と第3の占有領域の頂点V3
Tのy座標の平均を採用すればよい。節点N
9のZ座標は、(1)第1の占有領域の頂点V1
Tのz座標、(2)第2の占有領域の頂点V2
Tのz座標、(3)第3の占有領域の頂点V3
Tのz座標、および、(4)第1の画像の占有領域の頂点V1
RLのz座標の総和を3で除した値を採用すればよい。
【0040】
近似9面体の体積の算出方法も任意である。例えば、節点N1からN8で定義される6面体の体積を上述した方法で算出する。節点N5からN9で定義される四面体の体積については、その内部の点P´cを頂点とする四つの三角錘に分割し、全ての三角錘の体積の総和として求めることができる。これらの6面体と4面体の体積の総和が近似9面体の体積となる。
【0041】
2.プログラム、コンピュータ可読記憶媒体、およびコンピュータ
本発明の実施形態の他の一つは、上述した物体の体積を見積もるためのプログラム(体積見積プログラム)である。体積見積プログラムは、コンパイラによって生成されるもののような機械語コードだけではなく、インタプリタなどを使用してサーバによって実行される高級言語コードを含んでもよい。
【0042】
また、この体積見積プログラムが記録されたコンピュータ可読記録媒体も本発明に係る実施形態の一つである。コンピュータ可読記録媒体の例としては、ハードディスク、フレキシブルディスク、および磁気テープのような磁気媒体、CD-ROM、DVDのような光媒体、フロプティカルディスク(floptical disk)のような光磁気媒体、およびROM、RAM、フラッシュメモリなどのような、体積見積プログラムを格納して実行するように構成されたハードウェア装置が含まれる。
【0043】
本発明の実施形態の他の一つは、上記体積見積プログラムが搭載されたコンピュータである。当該コンピュータは通信機能と計算機能を有する装置であり、ノート型、または据え置き型の情報処理装置でもよく、あるいはタブレットコンピュータなどの携帯通信端末でもよい。
【0044】
図11のブロック図に示すように、コンピュータ100には、コンピュータ100の動作を制御する制御部102に加え、制御部102によって制御される入力部104、出力部106、送受信部108、記憶部110、音声出力部112、入力ポート114などが設けられる。記憶部110には、コンピュータ100を動作させるための基本アプリケーションプログラムとともに、体積見積プログラムなどが格納される。制御部102は中央演算ユニット(CPU)などのプロセッサを備え、記憶部110に格納される基本アプリケーションプログラムや体積見積プログラムを動作させてコンピュータ100で実行される各種処理を制御する。これにより、本方法に従って物体の体積見積を実行することができる。入力部104はコンピュータ100に命令や情報を入力する際に用いられるユーザインターフェースであり、典型的にはキーボードやタッチパネル、マウス、またはこれらの組み合わせが挙げられる。出力部106は記憶部110に格納された各種データを画像や印刷物として提供するものであり、液晶表示装置や有機電界発光表示装置などの表示装置、あるいはプリンタなどの出力デバイスである。入力部104としてタッチパネルが利用される場合、表示装置上にタッチパネルを配置すればよい。送受信部108は、ネットワークを介し、撮像装置などの外部機器と通信を行う機能を有する。音声出力部112は種々の音を発生する機能を有するスピーカーである。入力ポート114は、メモリカードなどの記憶媒体と物理的に接続されることができる有線インターフェースであり、これにより、撮像装置において画像が格納された記憶媒体をコンピュータ100に接続することが可能となる。
【0045】
体積見積プログラムは、コンピュータ可読媒体から記憶部110にインストールされる。あるいは、体積見積プログラムは、ネットワークから記憶部110にダウンロードされてもよい。
【0046】
上述した本方法により、三つまたはそれ以上の地点から取得した転石の画像から転石の体積を見積もることができる。本方法では、転石の厳密な体積や、地面に埋没した部分の体積を取得することはできない。しかしながら、一般的な土木工事施工管理の手引きでは、転石が地面から露出した部分の体積(仮体積)を算出し、その後、露出順位ごとに側面および断面形をほぼ平均断面形と想定される高さ、長さ、幅の寸法を測定して実体積を算出する。このため、本方法では、転石の仮体積を求めるための簡便な方法であると言える。また、本方法では、一般的な測量機器を用いること無く、単に三地点から取得する画像を用いることで、極めて短時間で転石の体積を見積もることが可能である。このため、作業員に大きな負荷がかからず、実地測量に伴う危険に晒されること無く、大量の転石の体積(仮体積)を短時間で見積もることができる。
【0047】
本発明の実施形態として上述した各実施形態は、相互に矛盾しない限りにおいて、適宜組み合わせて実施することができる。各実施形態を基にして、当業者が適宜構成要素の追加、削除もしくは設計変更を行ったものも、本発明の要旨を備えている限り、本発明の範囲に含まれる。
【0048】
上述した各実施形態によりもたらされる作用効果とは異なる他の作用効果であっても、本明細書の記載から明らかなもの、または、当業者において容易に予測し得るものについては、当然に本発明によりもたらされるものと理解される。
【符号の説明】
【0049】
100:コンピュータ、102:制御部、104:入力部、106:出力部、108:送受信部、110:記憶部、112:音声出力部、114:入力ポート