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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024001995
(43)【公開日】2024-01-11
(54)【発明の名称】液体噴射装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/14 20060101AFI20231228BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20231228BHJP
【FI】
B41J2/14 611
B41J2/01 307
B41J2/01 451
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022100898
(22)【出願日】2022-06-23
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【弁理士】
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】工藤 靖之
【テーマコード(参考)】
2C056
2C057
【Fターム(参考)】
2C056EA20
2C056EA22
2C056EB02
2C056EB07
2C056EB39
2C056EC02
2C056EC07
2C056FA02
2C056FA10
2C056HA06
2C056HA09
2C056HA52
2C057AG44
2C057AL02
2C057AL13
2C057AM02
2C057AM40
2C057BA04
2C057BA14
(57)【要約】
【課題】電気的な経路に残留する電荷を減少させた後に液体噴射ヘッドと配線部材との接続を解除することができ、電気部品の破損を抑制した液体噴射装置を提供する。
【解決手段】液体を噴射する液体噴射ヘッド2と、前記液体噴射ヘッド2を制御するための配線基板4aと、前記液体噴射ヘッド2と前記配線基板4aとを電気的に接続する配線部材9と、前記配線基板4aおよび前記液体噴射ヘッド2へ外部電源からの電力供給が遮断された後、前記配線基板4aおよび前記液体噴射ヘッド2を含む電気的な経路に残留する電荷の残留量が所定値に減少するまで、前記配線部材9と前記液体噴射ヘッド2との接続を解除することを規制する規制部であるソレノイドアクチュエーター11と、を備える。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を噴射する液体噴射ヘッドと、
前記液体噴射ヘッドを制御するための配線基板と、
前記液体噴射ヘッドと前記配線基板とを電気的に接続する配線部材と、
前記配線基板および前記液体噴射ヘッドへ外部電源からの電力供給が遮断された後、前記配線基板および前記液体噴射ヘッドを含む電気的な経路に残留する電荷の残留量が所定値に減少するまで、前記配線部材と前記液体噴射ヘッドとの接続を解除することを規制する規制部と、
を備えることを特徴とする液体噴射装置。
【請求項2】
前記規制部は、前記遮断後に前記経路に残留する電荷の残留量が前記所定値に減少するまで前記配線部材と前記液体噴射ヘッドとの接続位置へのアクセスを規制する、
ことを特徴とする請求項1に記載の液体噴射装置。
【請求項3】
前記規制部は、前記遮断後に前記経路に残留する電荷を消費しながら駆動することで、前記規制部の一部が前記接続位置へのアクセスを規制する位置へ変位する、
ことを特徴とする請求項2に記載の液体噴射装置。
【請求項4】
前記規制部は、前記経路に電気的に接続され、前記遮断後に前記経路に残留する電荷によって駆動するソレノイドアクチュエーターを含む、
ことを特徴とする請求項3に記載の液体噴射装置。
【請求項5】
前記液体噴射ヘッドを支持する支持部材をさらに備え、
前記液体噴射ヘッドを前記支持部材から取り外す方向に見て、前記液体噴射ヘッドは、駆動した状態の前記規制部の前記一部と重なり、前記所定値となるまで前記遮断後に前記経路に残留する電荷が消費されたことで駆動していない状態の前記規制部の前記一部と重ならない、
ことを特徴とする請求項3に記載の液体噴射装置。
【請求項6】
前記液体噴射ヘッドを支持する支持部材と、
前記液体噴射ヘッドと前記支持部材とを固定するために、前記液体噴射ヘッドおよび前記支持部材のそれぞれに形成された開口に挿入される固定部材と、
をさらに備え、
前記固定部材を前記支持部材から取り外す方向に見て、前記固定部材は、駆動した状態の前記規制部の前記一部と重なり、前記所定値となるまで前記遮断後に前記経路に残留する電荷が消費されたことで駆動していない状態の前記規制部の前記一部と重ならない、
ことを特徴とする請求項3に記載の液体噴射装置。
【請求項7】
前記接続位置へのアクセスを規制する閉位置と前記接続位置へのアクセスを許可する開位置との間を変位可能なカバーを有し、前記液体噴射ヘッドを収容する支持部材をさらに備え、
駆動した状態の前記規制部の前記一部は、前記カバーの前記閉位置から前記開位置への変位を規制する、
ことを特徴とする請求項3に記載の液体噴射装置。
【請求項8】
前記液体噴射ヘッドに対する前記配線部材の挿抜方向に見て、前記接続位置は、駆動した状態の前記規制部の前記一部と重なり、前記所定値となるまで前記遮断後に前記経路に残留する電荷が消費されたことで駆動していない状態の前記規制部の前記一部と重ならない、
ことを特徴とする請求項3に記載の液体噴射装置。
【請求項9】
前記液体噴射ヘッドは、前記配線部材が接続されるコネクターを有し、
前記配線部材は、フレキシブルフラットケーブルであり、
前記配線部材の一端であり前記コネクターに接続される部分は、前記フレキシブルフラットケーブルの端子である、
ことを特徴とする請求項1に記載の液体噴射装置。
【請求項10】
前記液体噴射ヘッドは、液体を噴射するための駆動素子と、前記配線部材と電気的に接続されるとともに前記駆動素子の駆動を制御するための駆動回路と、を有する、
ことを特徴とする請求項1に記載の液体噴射装置。
【請求項11】
前記液体噴射ヘッドを支持する支持部材を移動させる移動機構を備え、
前記配線基板は、前記移動機構を制御する、
ことを特徴とする請求項1に記載の液体噴射装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体を噴射する液体噴射ヘッドを具備する液体噴射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プリンターやプロッターなどのインクジェット式記録装置に代表される液体噴射装置は、インクを噴射するインクジェット式記録ヘッドなどの液体噴射ヘッドを備える。
【0003】
液体噴射装置では、商用電源から供給された電源を用いて、液体噴射ヘッドを駆動させて液体を噴射させて、媒体に印刷を実行する(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-49935号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、液体噴射ヘッドの交換は、液体噴射装置の主電源を切るか、コンセントからプラグを引き抜くことで商用電源から液体噴射ヘッドへの電気供給を遮断してから行われる。しかしながら、商用電源から液体噴射ヘッドへの電気供給を遮断しても、配線基板や液体噴射ヘッドに設けられたコンデンサーに電化が残留している虞がある。このようなコンデンサーに電化が残留している状態、すなわち、配線部材が通電状態で液体噴射ヘッドと配線部材との電気的な接続を解除すると、接続部分において配線同士が短絡して意図せぬ部分に電流が流れることや、液体噴射ヘッドの駆動回路にラッチアップ電流が流れ込むことで液体噴射装置が備える電気部品が破損する虞がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する本発明の態様は、液体を噴射する液体噴射ヘッドと、前記液体噴射ヘッドを制御するための配線基板と、前記液体噴射ヘッドと前記配線基板とを電気的に接続する配線部材と、前記配線基板および前記液体噴射ヘッドへ外部電源からの電力供給が遮断された後、前記配線基板および前記液体噴射ヘッドを含む電気的な経路に残留する電荷の残留量が所定値に減少するまで、前記配線部材と前記液体噴射ヘッドとの接続を解除することを規制する規制部と、を備えることを特徴とする液体噴射装置にある。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施形態1に係る液体噴射装置1の概略構成を示す図。
図2】実施形態1に係る液体噴射ヘッドおよび支持部材の平面図。
図3】実施形態1に係る液体噴射ヘッドおよび支持部材等の要部断面図。
図4】実施形態1に係る液体噴射ヘッドおよび支持部材の要部断面図。
図5】実施形態1に係るヘッド本体の断面図。
図6】実施形態1に係るヘッド本体の要部断面図。
図7】実施形態1に係る中継基板の要部を切り欠いた斜視図。
図8】実施形態1に係るアクチュエーターソレノイドの断面図。
図9】実施形態1に係るアクチュエーターソレノイドの断面図。
図10】実施形態1に係る液体噴射ヘッドと配線部材との解除方法を説明する図。
図11】実施形態1に係る液体噴射ヘッドと配線部材との解除方法を説明する図。
図12】実施形態1に係る液体噴射ヘッドおよび支持部材の変形例の平面図。
図13】実施形態2に係る液体噴射ヘッドおよび支持部材の平面図。
図14】実施形態2に係る液体噴射ヘッドおよび支持部材等の要部断面図。
図15】実施形態2に係る液体噴射ヘッドおよび支持部材等の要部断面図。
図16】実施形態3に係る液体噴射ヘッドおよび支持部材棟の要部断面図。
図17】実施形態3に係る液体噴射ヘッドおよび支持部材棟の要部断面図。
図18】他の実施形態に係る液体噴射装置の要部断面図。
図19】他の実施形態に係る液体噴射装置の要部断面図。
図20】他の実施形態に係る液体噴射装置の要部断面図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に本発明を実施形態に基づいて詳細に説明する。ただし、以下の説明は、本発明の一態様を示すものであって、本発明の範囲内で任意に変更可能である。各図において同じ符号を付したものは、同一の部材を示しており、適宜説明が省略されている。また、各図においてX、Y、Zは、互いに直交する3つの空間軸を表している。本明細書では、これらの軸に沿った方向をX方向、Y方向、およびZ方向とする。各図の矢印が向かう方向を正(+)方向、矢印の反対方向を負(-)方向として説明する。また、正方向および負方向を限定しない3つの空間軸の方向については、X軸方向、Y軸方向、Z軸方向として説明する。
【0009】
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1に係る液体噴射装置1の概略構成を示す図である。
【0010】
図1に示すように、液体噴射装置1は、液体の一種であるインクを印刷用の媒体Sに噴射・着弾させて、当該媒体Sに形成されるドットの配列により画像等の印刷を行うインクジェット式記録装置である。なお、媒体Sとしては、記録用紙の他、樹脂フィルムや布等の任意の材質を用いることができる。
【0011】
液体噴射装置1は、液体噴射ヘッド2と、液体貯留部3と、制御部である制御ユニット4と、媒体Sを送り出す搬送機構5と、移動機構6と、を具備する。
【0012】
液体噴射ヘッド2については詳しくは後述するが、インクを貯留する液体貯留部3から供給されるインクをインク滴として+Z方向に噴射する。
【0013】
液体貯留部3は、液体噴射ヘッド2から噴射される複数種類、例えば、複数色のインクを個別に貯留する。液体貯留部3としては、例えば、液体噴射装置1に着脱可能なカートリッジ、可撓性のフィルムで形成された袋状のインクパック、インクを補充可能なインクタンクなどが挙げられる。なお、液体貯留部3には、例えば、色や成分等が異なる複数種類のインクが貯留されている。また、液体貯留部3は、メインタンクとサブタンクとで分かれていてもよい。サブタンクが液体噴射ヘッド2に接続され、液体噴射ヘッド2からインク滴を噴射することで消費したインクをメインタンクからサブタンクに補充する構成であってもよい。
【0014】
制御ユニット4は、例えば、CPU(Central Processing Unit)またはFPGA(Field Programmable Gate Array)等の制御装置と、半導体メモリー等の記憶装置と、を備えている。また、制御ユニット4は、商用電源などの外部電源から供給される電力を液体噴射装置1の各要素に供給する電源装置も備える。これら制御ユニット4の制御装置、記憶装置および電源装置等は、図3に示す配線基板4aに実装されている。配線基板4aは、例えば、プリント回路基板で構成されている。制御ユニット4は、記憶装置に記憶されたプログラムを制御装置が実行することで液体噴射装置1の各要素、すなわち、液体噴射ヘッド2、搬送機構5、移動機構6等を統括的に制御する。
【0015】
搬送機構5は、媒体SをX軸方向に搬送するものであり、搬送ローラー5aを有する。すなわち搬送機構5は、搬送ローラー5aが回転することで媒体SをX軸方向に搬送する。搬送ローラー5aは、図示しない搬送モーターの駆動により回転する。制御ユニット4は、媒体搬送モーターの駆動を制御することで、媒体Sの搬送を制御する。なお、媒体Sを搬送する搬送機構5は、搬送ローラー5aを備えるものに限られず、例えば、ベルトやドラムによって媒体Sを搬送するものであってもよい。
【0016】
移動機構6は、液体噴射ヘッド2をY軸方向に往復させるための機構であり、支持部材7と搬送ベルト8とを具備する。支持部材7は、液体噴射ヘッド2を支持する所謂、キャリッジであり、搬送ベルト8に固定される。搬送ベルト8は、Y軸方向に沿って架設された無端ベルトである。搬送ベルト8は、図示しない搬送モーターの駆動によって回転する。制御ユニット4は、搬送モーターの駆動を制御することで搬送ベルト8を回転させて、液体噴射ヘッド2を支持部材7と共にY軸方向で往復移動させる。なお、支持部材7は、液体噴射ヘッド2と共に液体貯留部3を搭載する構成であってもよい。
【0017】
液体噴射ヘッド2は、制御ユニット4による制御のもとで、液体貯留部3から供給されたインクを複数のノズル334(図5参照)のそれぞれからインク滴として+Z方向に噴射する噴射動作を実行する。この液体噴射ヘッド2による噴射動作が、搬送機構5による媒体Sの搬送や移動機構6による液体噴射ヘッド2の往復移動と並行して行われることにより、媒体Sの表面にインクによる画像が形成される、いわゆる印刷が行われる。
【0018】
図2は、本発明の実施形態1に係る液体噴射ヘッド2および支持部材7を+Z方向に見た平面図である。図3は、図2のA-A′線の要部断面図と、配線基板4aおよび配線部材9とを示す図である。図4は、図2のB-B′線の要部断面図である。図5は、ヘッド本体30を+X方向に見た断面図である。図6は、ヘッド本体30を-Y方向に見た要部断面図である。図7は、中継基板34の要部を切り欠いた斜視図である。なお、液体噴射ヘッド2および支持部材7の各方向は、液体噴射装置1に搭載された際の方向、すなわち、X軸方向、Y軸方向およびZ軸方向に基づいて説明する。
【0019】
図3に示すように、液体噴射ヘッド2は、ヘッド本体30と流路部材40とを具備する。
【0020】
図5および図6に示すように、ヘッド本体30は、アクチュエーターユニット31と、アクチュエーターユニット31を内部に収容可能なケース32と、ケース32の+Z方向を向く面に接合された流路ユニット33と、ケース32の-Z方向を向く面に固定された中継基板34と、を具備する。
【0021】
アクチュエーターユニット31は、複数の圧電アクチュエーター310がX軸方向に並設された圧電アクチュエーター形成部材311と、圧電アクチュエーター形成部材311の先端部側が自由端となるようにその基端部側が固定端として接合される固定板312と、を有する。
【0022】
圧電アクチュエーター形成部材311は、圧電材料313と、電極形成材料314および315とを交互に挟んで積層することにより形成されている。各圧電アクチュエーター310は、相互に対向する電極形成材料の間に圧電材料313を介在させた「駆動素子」である。このような圧電アクチュエーター310は、圧電素子とも言い、2つの電極形成材料と圧電アクチュエーター形成部材311とを含む部分を言う。
【0023】
この圧電アクチュエーター形成部材311には、例えば、ワイヤーソー等によって複数のスリット316が形成され、その先端部側が櫛歯状に切り分けられて圧電アクチュエーター310が並設されている。本実施形態では、圧電アクチュエーター310の並設方向は、ノズル334の並設方向であって、液体噴射装置1に搭載された際にX軸方向と一致するように配置される。もちろん、ヘッド本体30は、液体噴射装置1に搭載された際にノズル334の並設方向がX軸方向と一致する方向ではなくてもよく、特に限定されるものではない。
【0024】
ここで、圧電アクチュエーター310の固定板312に接合される領域は、振動に寄与しない不活性領域となっており、圧電アクチュエーター310を構成する電極形成材料314および315間に電圧を印加すると、固定板312に接合されていない先端部側の領域のみが振動する。そして、圧電アクチュエーター310の先端面が、後述する振動板331に固定される。
【0025】
また、アクチュエーターユニット31の各圧電アクチュエーター310には、当該圧電アクチュエーター310を駆動するためのスイッチング素子を有する駆動回路317が実装されたフレキシブル配線であるCOF(Chip On Film)等の回路基板318が接続されている。
【0026】
流路ユニット33は、流路形成基板330、振動板331およびノズルプレート332を具備する。
【0027】
流路形成基板330には、複数の圧力発生室333がX軸方向に沿って並設され、流路形成基板330のZ軸方向の両側は、それぞれ各圧力発生室333に対応してノズル334を有するノズルプレート332と振動板331とにより封止されている。また、流路形成基板330には、圧力発生室333毎にそれぞれインク供給路335を介して連通されて複数の圧力発生室333の共通のインク室となるマニホールド336が形成されている。そして、流路形成基板330の振動板の各圧力発生室333に対向する領域にそれぞれ圧電アクチュエーター310の先端が固定されている。また、本実施形態では、ノズル334が開口するノズルプレート332の+Z方向の面を噴射面と称する。
【0028】
また、振動板331のマニホールド336に対応する領域は、コンプライアンス部337が設けられている。なお、このコンプライアンス部337は、マニホールド336内に圧力変化が生じた時に、このコンプライアンス部337が変形することによって圧力変化を吸収し、マニホールド336内の圧力を常に一定に保持する役割を果たす。
【0029】
ケース32は、流路ユニット33に接合されて、液体貯留部3(図1参照)から流路部材40を介して供給されたインクをマニホールド336に供給するインク導入路321が設けられている。そして、インク導入路321に供給されたインクは、マニホールド336に供給され、インク供給路335を介して各圧力発生室333に分配される。
【0030】
また、ケース32には、圧力発生室333に対応して、収容室322が設けられている。収容室322内にアクチュエーターユニット31が固定されている。
【0031】
さらに、ケース32の流路ユニット33とは反対側には、中継基板34が設けられており、アクチュエーターユニット31に一端が接続された回路基板318の他端部が中継基板34に接続されている。中継基板34は、例えば、プリント回路基板で構成されている。中継基板34には、Z軸方向に貫通する接続口341が設けられており、接続口341を-Z方向に挿通された回路基板318が中継基板34の-Z方向を向く面に接続されている。
【0032】
また、図3に示すように、中継基板34は、+Z方向を向く面に、配線部材9が着脱可能に接続されるコネクター342を具備する。ここで、配線部材9は、例えば、フレキシブルフラットケーブル(FFC;Flexible Flat Cable)や、フレキシブルプリントサーキット(FPC;Flexible Printed Circuit)などの可撓性を有するフレキシブル基板が用いられる。また、配線部材9は、可撓性を有するフレキシブル基板とリジット基板とを組み合わせたものであってもよい。本実施形態では、配線部材9は、FFCを用いた。
【0033】
このような配線部材9が着脱可能なコネクター342は、図7に示すように、配線部材9の各配線9aの端子が接続される複数の電極343と、電極343が収容されるハウジング344と、を具備する。
【0034】
ハウジング344は、-X方向に向かって開口する中空の箱形状を有する。電極343は、一端部がハウジング344の+Z方向の側壁に固定された固定端となっており、他端が自由端となるようにハウジング344内で内壁面に沿って且つハウジング344の開口の縁部の一方から他方に向かって+Z方向に沿って突出するように折り曲げられている。電極343の一端は、ハウジング344の+Z方向の外部に突出して中継基板34に実装されている。配線部材9がハウジング344の開口に+X方向に向かって挿入されると、電極343の他端部が+Z方向に向かって弾性変形し、電極343が-Z方向に向かって配線部材9に押しつける。これにより、電極343と配線部材9の配線9aとが電気的に接続されると共に配線部材9がハウジング344内で保持される。また、配線部材9は、電極343の付勢力によって保持された状態であるため、配線部材9を電極343の付勢力に抗して-X方向に向かって引き抜くことでコネクター342から取り外すことができる。もちろん、特に図示してないが、配線部材9がコネクター342から容易に外れなくするロック機構等を設けるようにしてもよい。また、本実施形態のコネクター342に対する配線部材9の挿抜方向は、X軸方向である。
【0035】
このようなヘッド本体30は、圧電アクチュエーター310および振動板331の変形によって各圧力発生室333の容積を変化させて所定のノズル334からインク滴を噴射させる。
【0036】
流路部材40の図示しない内部には、液体貯留部3からのインクをヘッド本体30に供給するための流路が設けられている。また、流路部材40の流路には、インクに含まれるゴミや気泡などの異物を捕捉するフィルターや、下流側の流路の圧力に応じて開閉して下流側に供給するインクの圧力を調整する圧力調整弁等が設けられている。また、流路部材40の内部には流路内のインクを加熱する加熱手段等が設けられていてもよい。さらに、流路部材40には、液体貯留部3からのインクをヘッド本体30に供給する流路だけではなく、ヘッド本体30から噴射されなかったインクを外部に排出する排出路が設けられていてもよい。
【0037】
図2図4に示すように、このような液体噴射ヘッド2を保持する支持部材7は、液体噴射ヘッド2を収容する収容部71を有する箱形状を有し、+Z方向を向く面には、収容部71に連通して液体噴射ヘッド2の噴射面を+Z方向に露出する開口部72を有する。また、収容部71は、-Z方向に開口して設けられており、液体噴射ヘッド2は-Z方向の開口から収容部71内に収容される。
【0038】
このような支持部材7と液体噴射ヘッド2とは、固定部材である固定ネジ10によって固定される。具体的には、液体噴射ヘッド2のケース32には、X軸方向の両端部のそれぞれにフランジ部323が設けられており、各フランジ部323のY軸方向の両端部には、Z軸方向に貫通する貫通孔324がそれぞれ設けられている。すなわち、液体噴射ヘッド2には、4個の貫通孔324が設けられている。液体噴射ヘッド2は、雄ネジである固定ネジ10を貫通孔324に+Z方向に向かって挿入し、固定ネジ10の先端を支持部材7に設けられた雌ネジである固定孔73に螺合させることで支持部材7に固定される。つまり、固定ネジ10は、液体噴射ヘッド2と支持部材7とを固定するために、液体噴射ヘッド2の貫通孔324の開口および支持部材7の固定孔73の開口に挿入される。また、固定ネジ10の固定孔73への螺合を解除することで、液体噴射ヘッド2は、支持部材7から取り外すことができる。このときの固定ネジ10を支持部材7から取り外す方向は-Z方向である。つまり、液体噴射ヘッド2は、支持部材7に対してZ軸方向に沿って着脱可能となっている。本実施形形態の液体噴射ヘッド2の支持部材7に対する固定方向は+Z方向であり、取り外す方向は-Z方向である。
【0039】
また、支持部材7に固定された液体噴射ヘッド2に接続された配線部材9は、図3に示すように液体噴射ヘッド2と支持部材7の収容部71の内側面との間をZ軸方向に沿って延在して、収容部71の外部に引き出されている。この配線部材9が通るコネクター342と支持部材7との間の寸法は比較的狭く、コネクター342に対する配線部材9の抜き出し方向は、-X方向であるため、液体噴射ヘッド2を支持部材7から取り外さなければ、コネクター342から配線部材9を抜き出すことが困難になっている。
【0040】
また、支持部材7の収容部71が開口する-Z方向の面には、ソレノイドアクチュエーター11が設けられている。図8および図9は、ソレノイドアクチュエーター11の断面図である。図10および図11は、液体噴射ヘッド2と配線部材9との接続の解除方法を説明する要部断面図である。なお、ソレノイドアクチュエーター11の各方向は、支持部材7に固定された際の方向、つまり、X軸方向、Y軸方向およびZ軸方向に基づいて説明する。
【0041】
図8および図9に示すように、ソレノイドアクチュエーター11は、可動鉄心110と、フレーム111と、コイル112と、固定鉄心113と、を有する。
【0042】
可動鉄心110は、フレーム111に対してX軸方向に往復移動可能に設けられている。可動鉄心110は基端部のフランジ部114とフレーム111の外周面との間に圧縮バネ115を有する。圧縮バネ115によって可動鉄心110は、フレーム111に対して+X方向に付勢されている。また、可動鉄心110の-X方向には、非磁性体のロッド116が固定されており、ロッド116の-X方向の先端は、フレーム111の-X方向から突出して設けられている。
【0043】
コイル112は、固定鉄心113に巻かれた銅線を含む。コイル112は電流を流すことで磁界を発生する。
【0044】
固定鉄心113は、コイル112に磁界が発生すると磁束が通り磁化する。つまり、コイル112と固定鉄心113とが電磁石を構成する。固定鉄心113の磁力によって可動鉄心110を-X方向に引き寄せる。
【0045】
このようなソレノイドアクチュエーター11は、コイル112に電流を流すことで、図9に示すように可動鉄心110を圧縮バネ115の付勢力に抗して-X方向に引き寄せ、ロッド116をフレーム111に対して-X方向に突出させる。また、コイル112の電流を遮断することで、図8に示すように可動鉄心110を引き寄せていた固定鉄心113の磁力がなくなり、可動鉄心110は圧縮バネ115の付勢力によって+X方向に移動する。これにより、ロッド116はフレーム111に対して+X方向に移動し、ロッド116のフレーム111からの-X方向の突出量が通電時よりも小さくなる。つまり、本実施形態のソレノイドアクチュエーター11は、プッシュソレノイドアクチュエーターである。また、ソレノイドアクチュエーター11は、配線基板4aに接続配線12を介して接続されており、配線基板4aから供給される電流によって駆動する。
【0046】
このようなソレノイドアクチュエーター11は、図2図3図10および図11に示すように支持部材7の収容部71の-Z方向の開口縁部に固定されている。ソレノイドアクチュエーター11の支持部材7に対する固定位置は、図3に示すように駆動した状態では+Z方向に見てロッド116の先端が液体噴射ヘッド2に重なる位置に変位する位置であり、図10に示すように駆動していない状態では+Z方向に見てロッド116の先端が液体噴射ヘッド2に重ならない位置に変位する位置である。つまり、ソレノイドアクチュエーター11が駆動した状態では、図3に示すようにロッド116が液体噴射ヘッド2の支持部材7に対する-Z方向への移動を規制する。このため、液体噴射ヘッド2は、支持部材7から-Z方向に移動して取り外すことができず、コネクター342と配線部材9との接続位置にアクセスすることができず、コネクター342と配線部材9との接続を解除することができない。これに対して、ソレノイドアクチュエーター11が駆動していない状態では、図10に示すように、ロッド116が液体噴射ヘッド2の支持部材7に対する-Z方向の移動を規制することがなく、液体噴射ヘッド2を支持部材7から-Z方向に移動して取り外すことができる。この結果、図11に示すように、支持部材7から取り外した液体噴射ヘッド2のコネクター342と配線部材9との接続位置へアクセスし、コネクター342に対して配線部材9を-X方向に移動して、液体噴射ヘッド2と配線部材9との接続を解除することができる。つまり、本実施形態のソレノイドアクチュエーター11が、配線部材9と液体噴射ヘッド2との接続を解除することを規制する「規制部」となっている。ここで、規制部が、配線部材9と液体噴射ヘッド2との接続の解除を規制するとは、本実施形態のように液体噴射ヘッド2が支持部材7から取り外されるのを規制して、配線部材9と液体噴射ヘッド2との接続を解除するのを間接的に規制することも含む。また、本実施形態のソレノイドアクチュエーター11は、配線部材9と液体噴射ヘッド2との接続位置へのアクセスを規制する。すなわち、規制部が配線部材9と液体噴射ヘッド2との接続位置へのアクセスを規制するとは、液体噴射ヘッド2が支持部材7から取り外されるのを規制して、配線部材9と液体噴射ヘッド2との接続位置へのアクセスを間接的に規制することも含む。
【0047】
なお、ソレノイドアクチュエーター11が駆動していない状態とは、コイルに電流が全く流れていない状態も、また、コイル112に流れる電流が可動鉄心110を圧縮バネ115の付勢力に抗して引き寄せることができなくなる程度の微小な電流が流れている状態も含む。
【0048】
ここで、液体噴射ヘッド2および配線基板4aを含む電気的な経路には、電荷を蓄え、蓄えた電荷を放出するコンデンサーが設けられている。コンデンサーは、例えば、外部電源から供給される交流電源を直流電源に変換する際に使用されるコンデンサーが挙げられる。また、コンデンサーは、液体噴射ヘッド2の近傍で圧電アクチュエーター310を駆動するための電荷を蓄えておくためのコンデンサーが挙げられる。また、圧電アクチュエーター310は、電荷を蓄え、蓄えた電荷を放出するため、圧電アクチュエーター310自体もコンデンサーと見做すことができる。本実施形態では、一例として図3図10および図11に示すように、配線基板4aにコンデンサー4bが設けられている。
【0049】
ここで、配線基板4aとソレノイドアクチュエーター11とは上述のように接続配線12を介して接続されており、配線基板4aに外部電源が供給されている間は、ソレノイドアクチュエーター11に電気が供給されて駆動した状態となる。つまり、外部電源が供給されている間は、ソレノイドアクチュエーター11に電流が供給され続け、ソレノイドアクチュエーター11のロッド116の先端は、図3に示すように液体噴射ヘッド2が支持部材7から取り外されるのを規制する。このため、外部電源が供給されている間は、液体噴射ヘッド2と配線部材9との接続が解除されるのが規制される。
【0050】
また、液体噴射装置1の主電源を切るか、配線基板4aに接続されたプラグをコンセントから引き抜くことで外部電源の供給が停止されても、配線基板4aに設けられたコンデンサー4bにはしばらく電荷が蓄えられた状態となる。このコンデンサー4bに蓄えられた電荷によって、ソレノイドアクチュエーター11は駆動した状態となる。つまり、ソレノイドアクチュエーター11は電気的な経路に残留する電荷を消費しながら駆動することで、ソレノイドアクチュエーター11のロッド116は液体噴射ヘッド2が支持部材7から取り外されるのを規制、つまり、液体噴射ヘッド2のコネクター342と配線部材9との接続位置へのアクセスを規制し続ける。
【0051】
外部電源の供給が停止してから、配線基板4aのコンデンサー4bに残留する電荷が所定値まで減少すると、すなわち、電気的な経路に設けられたコンデンサー4bに蓄えられた電荷がソレノイドアクチュエーター11で消費されて、ソレノイドアクチュエーター11が駆動していない状態となると、図10に示すように、ロッド116は+Z方向に見て液体噴射ヘッド2に重ならない位置に変位する。これにより、図11に示すように、液体噴射ヘッド2を支持部材7から取り外して、液体噴射ヘッド2のコネクター342と配線部材9との接続を解除することができる。このように液体噴射ヘッド2のコネクター342と配線部材9との接続を解除する際に、電気的な経路に残留する電荷が所定値まで減少した状態、すなわち、配線部材9にほとんど電荷が蓄えられていない非通電状態となる。このため、コネクター342と配線部材9との接続を解除する際に配線部材9の配線9a同士がコネクター342の同じ電極343に接触しても電流が流れず、また、コネクター342の電極343同士が同じ配線9aに接触しても電流が流れず、配線同士の短絡による電気部品の破損を抑制することができる。また、電気的な経路に残留する電荷をソレノイドアクチュエーター11で消費することで、配線部材9と液体噴射ヘッド2との接続を解除する際に、液体噴射ヘッド2の駆動回路317にラッチアップ電流が流れ込むのを抑制して駆動回路317の破損を抑制することができる。
【0052】
なお、上述のように、ソレノイドアクチュエーター11が駆動していない状態とは、ソレノイドアクチュエーター11に電流が全く流れない状態も、可動鉄心110が動作しない程度の微弱な電流が流れている状態も含む。このため、電気的な経路に残留する電荷の「所定値」とは、電荷が完全の0(ゼロ)の状態も、ソレノイドアクチュエーター11が駆動しない程度の微弱な電荷が残留している状態も含む。電気的経路にソレノイドアクチュエーター11が駆動しない程度の微弱な電荷が残留していても、微弱な電荷はすぐに放電されると共に、配線の短絡やラッチアップ電流によって電子部品は破損され難い。
【0053】
以上説明したように、本実施形態の液体噴射装置1は、液体であるインクを噴射する液体噴射ヘッド2と、液体噴射ヘッド2を制御するための配線基板4aと、液体噴射ヘッド2と配線基板4aとを電気的に接続する配線部材9と、を備える。また、液体噴射装置1は、配線基板4aおよび液体噴射ヘッド2へ外部電源からの電力供給が遮断された後、配線基板4aおよび液体噴射ヘッド2を含む電気的な経路に残留する電荷の残留量が所定値に減少するまで、配線部材9と液体噴射ヘッド2との接続を解除することを規制する規制部であるソレノイドアクチュエーター11を備える。
【0054】
このように電気的な経路に電荷が残った状態で、ソレノイドアクチュエーター11によって配線部材9と液体噴射ヘッド2との接続を解除するのが規制されるため、配線部材9と液体噴射ヘッド2との接続を解除する際に、電気的な経路に残留する電荷を低減し、短絡やラッチアップ電流が流れるのを抑制して、駆動回路317や電気的な経路の電子部品が破損するのを抑制することができる。
【0055】
また、本実施形態の液体噴射装置1では、規制部であるソレノイドアクチュエーター11は、遮断後に経路に残留する電荷の残留量が所定値に減少するまで配線部材9と液体噴射ヘッド2との接続位置へのアクセスを規制することが好ましい。このようにソレノイドアクチュエーター11は、配線部材9と液体噴射ヘッド2との接続位置へのアクセスを規制することによっても、配線部材9と液体噴射ヘッド2との接続を解除する際に、電気的な経路に残留する電荷を低減し、短絡やラッチアップ電流が流れるのを抑制して、駆動回路317や配線部材9等の電子部品が破損するのを抑制することができる。
【0056】
また、本実施形態の液体噴射装置1では、規制部であるソレノイドアクチュエーター11は、遮断後に経路に残留する電荷を消費しながら駆動することで、ソレノイドアクチュエーター11の一部であるロッド116が接続位置へのアクセスを規制する位置へ変位することが好ましい。これにより、電気的な経路に残留する電荷をソレノイドアクチュエーター11で消費することができると共に、ソレノイドアクチュエーター11は、残留する電荷を消費した後、接続位置へのアクセスを規制しない位置に変位させることができる。
【0057】
また、本実施形態の液体噴射装置1では、規制部は、経路に電気的に接続され、外部電源からの電力供給が遮断された後に経路に残留する電荷によって駆動するソレノイドアクチュエーター11を含むことが好ましい。このように規制部としてソレノイドアクチュエーター11を用いることで、電気的な経路に残留する電荷を消費させると共に残留する電荷が所定値になるまで、液体噴射ヘッド2と配線部材9との接続の解除を容易に規制することができる。
【0058】
また、本実施形態の液体噴射装置1では、液体噴射ヘッド2を支持する支持部材7をさらに備える。また、液体噴射ヘッド2を支持部材7から取り外す方向である-Z方向に見て、液体噴射ヘッド2は、駆動した状態の規制部であるソレノイドアクチュエーター11の一部であるロッド116と重なり、所定値となるまで遮断後に経路に残留する電荷が消費されたことで駆動していない状態のソレノイドアクチュエーター11のロッド116と重ならないことが好ましい。このようにソレノイドアクチュエーター11を配置することで、ロッド116によって液体噴射ヘッド2の支持部材7からの取り外しの規制および規制の解除を容易に行うことができる。
【0059】
また、本実施形態の液体噴射装置1では、液体噴射ヘッド2は、配線部材9が接続されるコネクター342を有し、配線部材9は、フレキシブルフラットケーブルであり、前記配線部材9の一端でありコネクター342に接続される部分は、配線部材9の端子であることが好ましい。このように配線部材9としてフレキシブルフラットケーブルを用いることで、配線部材9の端子とコネクター342との接続を解除する際に短絡が生じ易いものの、電気的な経路に残留する電荷を減少させることで電子部品の破壊を抑制することができる。
【0060】
また、本実施形態の液体噴射装置1では、液体噴射ヘッド2は、液体であるインクを噴射するための駆動素子である圧電アクチュエーター310と、配線部材9と電気的に接続されるとともに圧電アクチュエーター310の駆動を制御するための駆動回路317と、を有することが好ましい。圧電アクチュエーター310自体も電荷を蓄え、蓄えた電荷を放出するコンデンサーとして機能する。また、駆動回路317にラッチ電流が流れるのを抑制して、駆動回路317の破壊を抑制することができる。
【0061】
また、本実施形態の液体噴射装置1では、液体噴射ヘッド2を支持する支持部材7を移動させる移動機構6を備え、配線基板4aは、移動機構6を制御することが好ましい。
【0062】
なお、本実施形態では、ソレノイドアクチュエーター11は、+Z方向に見て、駆動した状態でロッド116の先端が液体噴射ヘッド2に重なる位置に配置するようにしたが、特にこれに限定されない。ここで、本実施形態の液体噴射装置の変形例について、図12を参照して説明する。図12は、実施形態1に係る液体噴射装置1の変形例を示す液体噴射ヘッド2および支持部材7を+Z方向に見た平面図である。
【0063】
図12に示すように、ソレノイドアクチュエーター11は、駆動した状態では、実線で示すように+Z方向に見てロッド116が固定ネジ10に重なる。また、ソレノイドアクチュエーター11は、駆動していない状態では、破線で示すように+Z方向に見てロッド116が固定ネジ10に重ならない位置に変位する。このため、ソレノイドアクチュエーター11が駆動した状態では、ロッド116は、工具等による固定ネジ10へのアクセス、および、固定ネジ10の貫通孔324および固定孔73に対する-Z方向への移動、つまり、固定ネジ10の貫通孔324および固定孔からの抜き出し抜き出しを規制する。ソレノイドアクチュエーター11が駆動していない状態では、ロッド116は、工具等による固定ネジ10へのアクセス、および、固定ネジ10の貫通孔324および固定孔73からの抜き出しを規制しない。つまり、図12に示すソレノイドアクチュエーター11は、液体噴射ヘッド2と配線部材9との接続位置へのアクセスを間接的に規制している。
【0064】
以上説明したように図12に示す液体噴射装置1では、液体噴射ヘッド2を支持する支持部材7と、液体噴射ヘッド2と支持部材7とを固定するために、液体噴射ヘッド2および支持部材7のそれぞれに形成された開口である貫通孔324および固定孔73に挿入される固定部材である固定ネジ10と、をさらに備える。そして、固定ネジ10を支持部材7から取り外す-Z方向に見て、固定ネジ10は、駆動した状態の規制部であるソレノイドアクチュエーター11の一部であるロッド116と重なり、所定値となるまで遮断後に経路に残留する電荷が消費されたことで駆動していない状態のソレノイドアクチュエーター11のロッド116と重ならないことが好ましい。このような構成であっても、上述した本実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0065】
(実施形態2)
図13は、本発明の実施形態2に係る液体噴射ヘッド2、支持部材7およびソレノイドアクチュエーター11を+Z方向に見た平面図である。図14および図15は、図13のC-C′線断面図である。なお、上述した実施形態と同様の部材には同一の符号を付して重複する説明は省略する。
【0066】
図示するように、支持部材7は、収容部71の開口を塞ぐカバー74をさらに具備する。カバー74は、ヒンジ75を介して支持部材7に支持されており、収容部71の開口を開閉可能となっている。ヒンジ75は、支持部材7の-X方向の端部に設けられており、カバー74はヒンジ75によって-X方向の端部を基点として、+X方向の端部が回転する。また、カバー74には、配線部材9を収容部71の内部から外部に引き出すための切り欠き部74aが設けられている。配線部材9は、カバー74が収容部71の開口を塞いだ状態であっても切り欠き部74aを介して外部に引き出されている。
【0067】
このようなカバー74を有する支持部材7では、カバー74が収容部71の開口を開放することで、液体噴射ヘッド2を支持部材7から取り外すことができる。このようにカバー74が収容部71の開口を開放する位置を開位置と称する。また、カバー74が収容部71の開口を塞ぐことで、液体噴射ヘッド2を支持部材7から取り外すのを規制する。このようにカバー74が収容部71の開口を塞いだ位置を閉位置と称する。つまり、カバー74は、閉位置と開位置とに変位可能に設けられたものである。
【0068】
また、ソレノイドアクチュエーター11は、支持部材7のヒンジ75とは反対側、すなわち、+X方向の端部に設けられている。ソレノイドアクチュエーター11は、図14に示すように、+Z方向に見て、駆動した状態ではロッド116がカバー74に重なる位置に設けられている。また、ソレノイドアクチュエーター11は、図15に示すように、+Z方向に見て、駆動していない状態ではロッド116がカバー74に重ならない位置に変位可能に設けられている。
【0069】
このような構成では、図14に示すように、ソレノイドアクチュエーター11が駆動した状態では、カバー74が閉位置では、カバー74は収容部71の開口を塞ぎ、液体噴射ヘッド2を支持部材7から取り外すことができず、液体噴射ヘッド2と配線部材9との接続位置にアクセスするのを規制する。また、図15に示すように、ソレノイドアクチュエーター11が駆動していない状態では、ロッド116によるカバー74の開位置への移動が規制されないため、カバー74を開位置に回転移動させて収容部71の開口を開放することができる。したがって、液体噴射ヘッド2を支持部材7から取り外して、液体噴射ヘッド2と配線部材9との接続を解除することができる。つまり、カバー74が開位置では、液体噴射ヘッド2と配線部材9との接続位置へのアクセスの規制を解除することができる。
【0070】
なお、ソレノイドアクチュエーター11は、上述した実施形態1と同様に、電気的な経路に残留する電荷を消費して駆動し、カバー74の移動を規制し、ソレノイドアクチュエーター11の駆動によって電荷の残留量が所定値に減少することで、ソレノイドアクチュエーター11が駆動しない状態となり、カバー74の移動を規制するのを解除する。
【0071】
以上説明したように、本実施形態の液体噴射装置1では、液体噴射ヘッド2と配線部材9との接続位置へのアクセスを規制する閉位置と接続位置へのアクセスを許可する開位置との間を変位可能なカバー74を有し、液体噴射ヘッド2を収容する支持部材7をさらに備える。そして、駆動した状態の規制部であるソレノイドアクチュエーター11の一部であるロッド116は、カバー74の閉位置から開位置への変位を規制することが好ましい。このような構成であっても、上述した実施形態1と同様の効果を奏することができる。また、本実施形態では、カバー74を設けることで、収容部71内にインクやゴミなどの異物が入り込み難く、液体噴射ヘッド2を保護することができる。
【0072】
なお、本実施形態では、カバー74はY軸方向に沿った軸を中心に回転移動するようにしたが、特にこれに限定されず、例えば、XY平面に沿った水平移動するものであってもよく、カバー74の変位方向は、特に限定されない。
【0073】
(実施形態3)
図16は、本発明の実施形態3に係る液体噴射ヘッド2、支持部材7、配線基板4a、配線部材9等の要部断面図である。なお、上述した実施形態と同様の部材には同一の符号を付して重複する説明は省略する。
【0074】
図16に示すように、液体噴射ヘッド2の中継基板34には、-Z方向の面にコネクター342が実装されている。コネクター342の開口は-Z方向を向いて設けられており、配線部材9は、コネクター342に対する挿抜方向はZ軸に沿った方向となっている。つまり、配線部材9は、コネクター342に対して+Z方向に移動することで接続され、-Z方向に移動することで接続が解除される。
【0075】
図16に示すように、ソレノイドアクチュエーター11は、駆動した状態では、+Z方向に見てロッド116がコネクター342と配線部材9との接続位置に重なる位置に変位する。このため、ソレノイドアクチュエーター11が駆動した状態では、ロッド116が、配線部材9のコネクター342に対する-Z方向の移動を規制し、配線部材9とコネクター342との接続を解除することを規制する。つまり、本実施形態のソレノイドアクチュエーター11は、配線部材9と液体噴射ヘッド2との接続の解除を直接的に規制すると共に、配線部材9と液体噴射ヘッド2との接続位置へのアクセスを直接的に規制する。
【0076】
また、図17に示すように、ソレノイドアクチュエーター11は、駆動していない状態では、+Z方向に見てロッド116がコネクター342と配線部材9との接続位置に重ならない位置に変位する。つまり、ソレノイドアクチュエーター11が駆動していない状態では、ロッド116は、配線部材9のコネクター342に対する-Z方向の移動を規制せず、配線部材9とコネクター342との接続を解除することを規制しない。
【0077】
なお、ソレノイドアクチュエーター11は、電気的な経路に残留する電荷を消費して駆動し、液体噴射ヘッド2と配線部材9との接続を解除することを規制し、電荷の残留量が所定値に減少することで、駆動が解除される構成は上述した実施形態1と同様であるため重複する説明は省略する。
【0078】
なお、ソレノイドアクチュエーター11は、上述した実施形態1と同様に、電気的な経路に残留する電荷を消費して駆動し、液体噴射ヘッド2と配線部材9との接続を解除することを規制し、ソレノイドアクチュエーター11の駆動によって電荷の残留量が所定値に減少することで、液体噴射ヘッド2と配線部材9との接続を解除可能とする。
【0079】
以上説明したように、本発明の実施形態3の液体噴射装置1では、液体噴射ヘッド2に対する配線部材9の挿抜方向である+Z方向に見て、配線部材9と液体噴射ヘッド2との接続位置は、駆動した状態の規制部であるソレノイドアクチュエーター11の一部であるロッド116と重なり、所定値となるまで遮断後に経路に残留する電荷が消費されたことで駆動していない状態のソレノイドアクチュエーター11のロッド116と重ならない。このような構成であっても、上述した実施形態1と同様の効果を奏することができる。
【0080】
(他の実施形態)
以上、本発明の各実施形態について説明したが、本発明の基本的な構成は上述したものに限定されるものではない。
【0081】
上述した各実施形態では、規制部としてソレノイドアクチュエーター11を設けるようにしたが特にこれに限定されない。ここで、本発明の実施形態2の液体噴射装置1の変形例を図18図20に示す。なお、図18図20は、液体噴射ヘッド2、支持部材7、配線基板4a、配線部材9等の要部断面図である。
【0082】
図18図20に示すように、カバー74は、ヒンジ75Aによって支持部材7に回転可能に支持されている。ヒンジ75Aは、カバー74を開く方向に付勢するねじりコイルバネ76を有する。
【0083】
カバー74は、+X方向の端部に、+Z方向に向かって突出するラッチ77を有する。
【0084】
支持部材7は、ラッチ77が挿入される係合孔78と、支持部材7に軸部79によって回転可能に設けられたレバー80と、スイッチ82と、が設けられている。
【0085】
係合孔78は、収容部71に開口して設けられており、ラッチ77が係合孔78内に弾性変形しながら挿入されることでラッチ77に設けられた段差面と、係合孔78の-Z方向側の内面とが当接して係合し、カバー74の+X方向側の端部が-Z方向に向かって移動するのを規制する。
【0086】
レバー80は、XY平面に沿って設けられた板状部材からなり、Y軸方向に沿って設けられた軸部79によってY軸方向を中心として回転可能となっている。
【0087】
レバー80の軸部79よりも-Z方向には、係合孔78内に挿入される押圧部81が設けられている。押圧部81は、先端側が-X方向に屈曲しており、押圧部81の先端は、係合孔78内に挿入される。
【0088】
レバー80は、+X方向の端部を+Z方向に押圧することで軸部79を中心として回転する。このとき、押圧部81の先端は、係合孔78から収容部71内に突出するように移動する。このため、図19に示すようにレバー80を操作することで、係合孔78に係合するラッチ77を-X方向に押し込み、ラッチ77と係合孔78との係合を解除する。これにより、図20に示すように、カバー74は、ヒンジ75Aのねじりコイルバネ76によって付勢され、収容部71の開口を開放する開放位置に移動する。つまり、図18図20に示す構成のカバー74が「規制部」となっている。
【0089】
また、支持部材7には、押すことで回路を開き、離すことで回路を閉じるスイッチ82が設けられている。スイッチ82は、図19に示すように、ラッチ77と係合孔78との係合を解除するためにレバー80を操作した際に、レバー80の+Z方向を向く面に押圧されることで回路を開くように配置されている。このようなスイッチ82は、特に図示していないが、電気的な経路に残留する電荷を放電する放電回路に接続されており、レバー80によってカバー74を開放位置に動作させることで、スイッチ82は放電回路に接続される。放電回路は、例えば、電気的な経路に設けられたコンデンサー、例えば、コンデンサー4bを強制的に接地させる回路などが挙げられる。
【0090】
このように液体噴射ヘッド2を支持部材7から取り外すために、カバー74を開放位置に移動させるレバー80の操作と、電気的な経路に残留する電解の放電とを同時に行うことで、液体噴射ヘッド2と配線部材9との接続を解除する際には、電気的な経路に残留する電荷を減少させることができる。したがって、上述した実施形態1と同様の効果を奏することができる。
【0091】
なお、図18図20に示す構成では、スイッチ82は、レバー80の操作によって開閉するものとしたが、特にこれに限定されず、例えば、カバー74を開放位置に移動させることでカバー74によって開閉するものであってもよい。
【0092】
また、上述した各実施形態では、配線部材9をFFCで構成し、液体噴射ヘッド2にコネクター342を設けるようにしたが、特にこれに限定されない。例えば、配線部材9の先端と、液体噴射ヘッド2とのそれぞれに、対をなすオスおよびメスのコネクターを設けるようにしてもよい。
【0093】
また、上述した液体噴射装置1では、液体噴射ヘッド2が支持部材7に搭載されて媒体Sの搬送方向であるY軸方向と交差するX軸方向(別称、主走査方向とも言う)に移動するものを例示したが、特にこれに限定されず、例えば、液体噴射ヘッド2が固定されて、媒体SをY軸方向(別称、副走査方向とも言う)に移動させるだけで印刷を行う、所謂ライン式の液体噴射装置にも本発明を適用することができる。ライン式の液体噴射装置の場合、支持部材は、複数の液体噴射ヘッドが並べられたユニットベースであり、移動機構は、ユニットベースを液体噴射ヘッドと共に移動させるモーターを含む機構となる。
【0094】
さらに、本発明は、広く液体噴射ヘッドを具備する液体噴射装置全般を対象としたものである。液体噴射ヘッドは、例えば、プリンター等の画像記録装置に用いられる各種のインクジェット式記録ヘッド等の記録ヘッド、液晶ディスプレイ等のカラーフィルターの製造に用いられる色材噴射ヘッドが挙げられる。また、液体噴射ヘッドは、例えば、有機ELディスプレイ、FED(電界放出ディスプレイ)等の電極形成に用いられる電極材料噴射ヘッド、バイオchip製造に用いられる生体有機物噴射ヘッド等が挙げられ、これらの液体噴射ヘッドを備えた液体噴射装置にも適用することができる。
【符号の説明】
【0095】
1…液体噴射装置、3…液体貯留部、4…制御ユニット、4a…配線基板、4b…コンデンサー、5…搬送機構、5a…搬送ローラー、6…移動機構、7…支持部材、8…搬送ベルト、9…配線部材、9a…配線、10…固定ネジ、11…ソレノイドアクチュエーター、12…接続配線、30…ヘッド本体、31…アクチュエーターユニット、32…ケース、33…流路ユニット、34…中継基板、40…流路部材、71…収容部、72…開口部、73…固定孔、74…カバー、74a…切り欠き部、75,75A…ヒンジ、76…ねじりコイルバネ、77…ラッチ、78…係合孔、79…軸部、80…レバー、81…押圧部、82…スイッチ、110…可動鉄心、111…フレーム、112…コイル、113…固定鉄心、114…フランジ部、115…圧縮バネ、116…ロッド、310…圧電アクチュエーター(駆動素子)、311…圧電アクチュエーター形成部材、312…固定板、313…圧電材料、314…電極形成材料、316…スリット、317…駆動回路、318…回路基板、321…インク導入路、322…収容室、323…フランジ部、324…貫通孔、330…流路形成基板、331…振動板、332…ノズルプレート、333…圧力発生室、334…ノズル、335…インク供給路、336…マニホールド、337…コンプライアンス部、341…接続口、342…コネクター、343…電極、344…ハウジング
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