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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024019951
(43)【公開日】2024-02-14
(54)【発明の名称】繊維製品処理剤組成物
(51)【国際特許分類】
   D06M 23/12 20060101AFI20240206BHJP
   D06M 11/79 20060101ALI20240206BHJP
   D06M 13/328 20060101ALI20240206BHJP
   D06M 13/463 20060101ALI20240206BHJP
   D06M 13/184 20060101ALI20240206BHJP
【FI】
D06M23/12
D06M11/79
D06M13/328
D06M13/463
D06M13/184
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022122745
(22)【出願日】2022-08-01
(71)【出願人】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087642
【弁理士】
【氏名又は名称】古谷 聡
(74)【代理人】
【氏名又は名称】義経 和昌
(72)【発明者】
【氏名】市村 真一
(72)【発明者】
【氏名】田中 達也
(72)【発明者】
【氏名】梶本 紗智美
(72)【発明者】
【氏名】宮島 あかね
【テーマコード(参考)】
4L031
4L033
【Fターム(参考)】
4L031AB31
4L031BA20
4L031DA13
4L033AB04
4L033AC10
4L033AC15
4L033BA21
4L033BA46
4L033BA86
(57)【要約】
【課題】繊維製品処理剤組成物の香りの実効感を向上させることが切望されている。
【解決手段】(a)シリカを含む第二シェルと該シェルの内部に香料化合物を含むコア及び該コアを内包するシリカを含む第一シェルとを有するマイクロカプセル、(b)フェノール構造又はヒドロキシ-4-ピロン構造を有する香料と、炭素数8以上18以下の脂肪族モノカルボン酸又は炭素数3以上20以下の脂肪族ジカルボン酸とのエステルからなる香料前駆体、(c)〔R1c-C(=O)-O-(C2pO)-C2qN(R2c3-mで表される第3級アミン化合物、その塩、4級化物から選ばれる1種以上を含有する繊維製品処理剤組成物を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(a)成分、(b)成分、(c)成分を含有する繊維製品処理剤組成物。
(a)シリカを含むシェルと該シェルの内部に香料化合物を含むコアとを有するマイクロカプセル。
(b)フェノール構造又はヒドロキシ-4-ピロン構造を有する香料と、炭素数8以上18以下の脂肪族モノカルボン酸又は炭素数3以上20以下の脂肪族ジカルボン酸とのエステルからなる香料前駆体。
(c)下記(c1)成分、及び(c2)成分から選ばれる1種以上を含む成分。
(c1)成分:下記一般式(1)で表される第3級アミン化合物、及びその酸塩。
(c2)成分:下記一般式(1)で表される第3級アミン化合物の4級化物。
〔R1c-C(=O)-O-(C2pO)-C2qN(R2c3-m (C1)
〔式中、R1cは炭素数11以上23以下の炭化水素基であり、R2cは炭素数1以上3以下の炭化水素基及びHO-(C2pO)-C2q基から選ばれる基であり、mは1以上3以下の整数であり、p及びqは2又は3の数であり、rは0以上5以下の整数である。同一分子内にR1c、R2c、p、q、rが複数存在する場合、それらは同一でも異なっていてもよい。〕
【請求項2】
(a)成分が、シリカを含むシェル(第二シェル)と該シェルの内部に香料化合物を含むコア及び該コアを内包するシリカを含むシェル(第一シェル)とを有するマイクロカプセルである、請求項1に記載の繊維製品処理剤組成物。
【請求項3】
前記(a)成分のマイクロカプセルのメジアン径D50が、0.1μm以上50μm以下である請求項1または2に記載の繊維製品処理剤組成物。
【請求項4】
(a)成分のマイクロカプセルの前記シェルが、アルコキシシランを前駆体とした重合反応により形成されてなるものである、請求項1から3のいずれかに記載の繊維製品処理剤組成物。
【請求項5】
(b)成分のフェノール構造を有する香料が、バニリン、エチルバニリン、iso-オイゲノール、サリチル酸ベンジル、サリチル酸シス-3-ヘキセニル、バニリンPGA、サリチル酸シクロヘキシル、オイゲノール、ジンゲロン、バニトロープ、ラズベリーケトン、サリチル酸メチル、サリチル酸ヘキシル、カルバクロール、及びチモールから選ばれる1種以上である請求項1から4のいずれかに記載の繊維製品処理剤組成物。
【請求項6】
(b)成分のヒドロキシ-4-ピロン構造を有する香料が、マルトール、エチルマルトールから選ばれる1種以上である請求項1から4の何れかに記載の繊維製品処理剤組成物。
【請求項7】
(d)成分として、(a)成分以外の香料化合物を含有する請求項1から6のいずれかに記載の繊維製品処理剤組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維製品処理剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
洗濯時や衣類乾燥時、及び衣類を着用する時の香りに対する消費者の関心は高まっており、香りに関連する内容を訴求した液体柔軟剤や香り付け剤の市場は著しく伸長している。
しかしながら、一般家庭で使用する繊維処理剤組成物は水を介して繊維製品に処理されるため、繊維への香料の付着が不十分であったり、乾燥時、または乾燥後に経時的に香料が布上から揮散したりすることで香りが弱くなる。
このような問題に対し、例えば特許文献1には特定の持続性香料組成物を含有し、布地上の香料の寿命を改善する布地軟化組成物が開示されている。
【0003】
特許文献2には、香気を長時間持続させることを目的として、二塩基酸モノエス
テル及び/又は二塩基酸ジエステルと、エチレングリコール又はプロピレングリコールと
の混合物等を用いる衣類にも使用できる徐放性香料組成物が開示されている。また、特許文献3には常圧における融点が30℃以上の油脂と香料組成物との混合物を水に乳化分散させることにより得られる乳化物粒子を含有する水性液体を用いることで香気を長時間持続できることが開示されている。
【0004】
一方、着用時の残香性の向上をもたらす従来技術として、香料のマイクロカプセル化して配合する試みがなされている。特許文献4には、芯物質として引火点が50~130℃の範囲内の香料組成物を含有するカプセル化香料が記載されている。また、特許文献5にはコアーシェル法で製造した香料を内包するマイクロカプセルを用いることで残香性が向上することが記載されている。また、特許文献6には香料を内包するマイクロカプセルと特定のアミンを含有するポリマーを併用することで複数の異なる表面に対して高濃度で均一に香料を付着できることを記載している。
【0005】
また特許文献7には、通常の香料持続性に加えて、衣類着用者の発汗時の優れたニオイ立ちの実現を目的として、特定の第3級アミン化合物及びその酸塩と、その4級化物とから選ばれる1種以上を含む(A)成分、logP値が2.0以上6.0以下である香料化合物を90質量%以上含有する香料を内包したマイクロカプセルからなる(B)成分、特定の香料と特定の脂肪酸エステル又は脂肪酸ジエステルとのエステルである香料前駆体からなる(C)成分、及び水を含有し、30℃におけるpHが2.5以上4.0以下である、液体柔軟剤組成物が開示されている。また、特許文献8には、香料化合物のケイ酸エステル化合物及び特定香料を含有し、布地上の香料の寿命を改善する繊維製品処理剤組成物が開示されている。特許文献9にはケイ酸エステル化合物と特定の高残香性香料を含有する柔軟剤用香料組成物が開示されている。ケイ酸エステル化合物は吸湿によりエステル結合が加水分解されて香料を放出する性質を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特表平11-504994号公報
【特許文献2】特開2003-313580号公報
【特許文献3】特開2012-72539号公報
【特許文献4】特開2006-249326号公報
【特許文献5】特表2011-517323号公報
【特許文献6】特開2018-172687号公報
【特許文献7】特開2017-008446号公報
【特許文献8】特開2009-256818号公報
【特許文献9】特開2011-063674号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
近年、持続的に繊維製品から芳香させるための技術はいくらか提案されているが、繊維製品処理剤に添加した香料の繊維製品への吸着は難しく、繊維製品表面に留まるため、匂いは直ぐに空気中に拡散してしまう。基剤によっては乾燥中になくなってしまう。香りの実効感を向上させる手段として香料のマイクロカプセル化が提案されているが、繊維製品からの香り立ちが非常に重要視される発汗時などの水分が関与する場面における香り立ちには依然として課題がある。また、水分が関与する場面における実効感を向上させる手段として香料の前駆体化が提案されているが香料種には制限があるため、より多くの嗜好性を満たすためには限界があることが課題である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、水分が関与する場面における香りの実効感を向上させる検討を行ったところ、水媒体中で繊維に付着したのち、乾燥時に崩壊する性質を持つ特定のカプセルと特定の脂肪酸エステル型香料前駆体を組み合わせることで、繊維製品の残香性を向上させるだけではなく、繊維製品が再湿潤した際に顕著に芳香することを発見し本発明に至った。
【0009】
本発明は(a)成分、(b)成分及び(c)成分を含有する繊維製品処理剤組成物に関する。
(a)シリカを含むシェルと該シェルの内部に香料化合物を含むコアとを有するマイクロカプセル。
(b)フェノール構造又はヒドロキシ-4-ピロン構造を有する香料と、炭素数8以上18以下の脂肪族モノカルボン酸又は炭素数3以上20以下の脂肪族ジカルボン酸とのエステルからなる香料前駆体。
(c)下記(c1)成分、及び(c2)成分から選ばれる1種以上を含む成分。
(c1)成分:下記一般式(1)で表される第3級アミン化合物、及びその酸塩。
(c2)成分:下記一般式(1)で表される第3級アミン化合物の4級化物。
〔R1c-C(=O)-O-(C2pO)-C2qN(R2c3-m (C1)
〔式中、R1cは炭素数11以上23以下の炭化水素基であり、R2cは炭素数1以上3以下の炭化水素基及びHO-(C2pO)-C2q基から選ばれる基であり、mは1以上3以下の整数であり、p及びqは2又は3の数であり、rは0以上5以下の整数である。同一分子内にR1c、R2c、p、q、rが複数存在する場合、それらは同一でも異なっていてもよい。〕
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、繊維製品を処理し、数日保存後に着用した際、繊維製品が発汗等で、水で湿潤した際に良好な香り立ちを示す繊維製品処理剤組成物が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<繊維製品処理剤組成物>
<(a)成分>
シリカを含むシェルと該シェルの内部に香料化合物を含むコアとを有するマイクロカプセル。
【0012】
<シェル>
本発明のシリカカプセルのシェルは、シリカを構成成分として含む。本発明のシリカカプセルのシェルは、シェルを構成している構造の一部または実質的全部がシリカを構成成分としてできていることを特徴とする。
本発明のシリカカプセルのシェルは、アルコキシシランを前駆体とした重合反応により形成されてなるものであり、例えばゾル-ゲル反応により形成されてなるものが好ましい。
本発明において「ゾル-ゲル反応」とは、アルコキシシランが加水分解及び重縮合反応により、ゾル及びゲル状態を経てシェルの構成成分であるシリカを形成する反応を意味する。具体的には、例えばテトラアルコキシシランが加水分解され、シラノール化合物が脱水縮合反応及び脱アルコール縮合反応によりシロキサンオリゴマーを生成し、更に脱水縮合反応が進行することによりシリカが形成される。
【0013】
また、本発明のシリカカプセルのシェルは、本発明の効果を阻害しない範囲で、シリカ以外の無機重合体を構成成分として含んでもよい。本発明において無機重合体とは、無機元素を含む重合体をいう。該無機重合体としては、無機元素のみからなる重合体、主鎖が無機元素のみから構成され側鎖又は置換基として有機基を有する重合体等が挙げられる。
前記無機重合体は、好ましくは金属元素又は半金属元素を含む金属酸化物であり、更に好ましくは金属アルコキシド〔M(OR)x〕を前駆体として、前述のシリカのゾル-ゲル反応と同様の反応により形成されてなる重合体である。ここで、Mは金属又は半金属元素であり、Rは炭化水素基である。
金属アルコキシドを構成する金属又は半金属元素としては、チタン、ジルコニウム、アルミニウム、亜鉛等が挙げられる。
【0014】
前記アルコキシシランは、香料の内包率を高める観点並びにデリバリー性能を良好に発現させる観点から、好ましくはテトラアルコキシシランである。
前記テトラアルコキシシランとしては、ゾル-ゲル反応を促進する観点から、好ましくは炭素数1以上4以下のアルコキシ基を有するものであり、より好ましくはテトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、及びテトライソプロポキシシランから選ばれる1種以上であり、更に好ましくはテトラメトキシシラン及びテトラエトキシシランから選ばれる1種以上であり、より更に好ましくはテトラエトキシシランである。
【0015】
(シリカカプセルの製造)
本発明のシリカカプセルのシェルは、香料化合物の内包率を高める観点、及び長期保持性を向上させる観点、並びに香料化合物のデリバリー性能を良好に発現させる観点から、ゾル-ゲル反応を2段階で行うことにより形成されてなるシリカを構成成分として含むことが好ましい。すなわち、本発明のシリカカプセルは、下記の工程1及び工程2を含む方法により製造することが好ましい。
工程1:カチオン性界面活性剤を含む水相成分と、香料化合物及びテトラアルコキシシランを含む油相成分とを乳化して得られる乳化液を、酸性条件下でゾル-ゲル反応に供し、コアと、シリカを構成成分とする第一シェルと、を有するシリカカプセル(1)を形成し、該シリカカプセル(1)を含有する水分散体を得る工程。
工程2:工程1で得られたシリカカプセル(1)を含有する水分散体に、更にテトラアルコキシシランを添加してゾル-ゲル反応を行い、第一シェルを包接する第二シェルを有するシリカカプセルを形成する工程。
【0016】
〔工程1〕
工程1は、カチオン性界面活性剤を含む水相成分と、香料化合物及びテトラアルコキシシランを含む油相成分とを乳化して得られる乳化液を、酸性条件下でゾル-ゲル反応に供し、コアと、シリカを構成成分とする第一シェルと、を有するシリカカプセル(1)を形成し、該シリカカプセル(1)を含有する水分散体を得る工程である。
【0017】
工程1におけるカチオン性界面活性剤として、アルキルアミン塩、アルキル第4級アンモニウム塩等が挙げられる。アルキルアミン塩は、好ましくは第2級アミン又は第3級アミンの塩であり、より好ましくは第3級アミンの塩である。アルキルアミン塩及びアルキル第4級アンモニウム塩は、少なくとも1つの長鎖アルキル基を有し、任意に、好ましくは少なくとも1つの長鎖アルキル基、短鎖アルキル基及びベンジル基から選ばれる基を有する化合物が好ましい。長鎖アルキル基の炭素数は、好ましくは10以上、より好ましくは12以上、更に好ましくは14以上であり、そして、好ましくは22以下、より好ましくは20以下、更に好ましくは18以下である。短鎖アルキル基の炭素数は、好ましくは1以上、そして、好ましくは4以下であり、より好ましくは1又は2であり、更に好ましくは1、すなわちメチル基である。
アルキルアミン塩としては、長鎖アルキル基が前記炭素数の範囲である、長鎖モノアルキルモノメチル2級アミン塩、長鎖モノアルキルジメチル3級アミン塩等のアルキルアミン塩が挙げられる。
第4級アンモニウム塩としては、長鎖アルキル基及び短鎖アルキル基がそれぞれ前記炭素数の範囲である、長鎖アルキルトリ短鎖アルキル4級アンモニウム塩、ジ長鎖アルキルジ短鎖アルキル4級アンモニウム塩、長鎖アルキルベンジルジ短鎖アルキル4級アンモニウム塩等が挙げられる。
【0018】
アルキルアミン塩としては、ラウリルジメチルアミンアセテート、ステアリルジメチルアミンアセテート等のアルキルアミン酢酸塩が挙げられる。
アルキルトリメチルアンモニウム塩としては、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド、セチルトリメチルアンモニウムクロライド、ステアリルトリメチルアンモニウムクロライド等のアルキルトリメチルアンモニウムクロライド;ラウリルトリメチルアンモニウムブロマイド、セチルトリメチルアンモニウムブロマイド、ステアリルトリメチルアンモニウムブロマイド等のアルキルトリメチルアンモニウムブロマイド等が挙げられる。
ジアルキルジメチルアンモニウム塩としては、ジステアリルジメチルアンモニウムクロライド等のジアルキルジメチルアンモニウムクロライド;ジステアリルジメチルアンモニウムブロマイド等のジアルキルジメチルアンモニウムブロマイド等が挙げられる。
アルキルベンジルジメチルアンモニウム塩としては、アルキルベンジルジメチルアンモニウムクロライド、アルキルベンジルジメチルアンモニウムブロマイド等が挙げられる。
カチオン性界面活性剤は、これらの中でも、好ましくは第4級アンモニウム塩であり、より好ましくは炭素数10以上22以下のアルキル基を有するアルキルトリメチルアンモニウム塩であり、更に好ましくは炭素数10以上22以下のアルキル基を有するアルキルトリメチルアンモニウムクロライドであり、より更に好ましくはラウリルトリメチルアンモニウムクロライド、ステアリルトリメチルアンモニウムクロライド、及びセチルトリメチルアンモニウムクロライドから選ばれる1種以上であり、より更に好ましくはセチルトリメチルアンモニウムクロライドである。
【0019】
工程1において、本発明の効果を阻害しない範囲で、カチオン性界面活性剤に加えて、更に他の乳化剤を含んでもよい。他の乳化剤としては、高分子分散剤、ノニオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、両性界面活性剤が挙げられる。
【0020】
工程1において水相成分中のカチオン性界面活性剤の含有量は、乳化滴の分散安定性の観点から、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.3質量%以上、更に好ましくは0.4質量%以上であり、そして、乳化液の分散安定性に寄与しない余剰の乳化剤による乳化剤ミセルの形成を抑制し、カプセル化効率を向上させる観点から、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下、更に好ましくは2質量%以下である。
【0021】
工程1で得られる乳化液の総量に対する油相成分の量は、製造効率の観点から、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは15%以上であり、そして、安定な乳化液を得る観点から、好ましくは50質量%以下、より好ましくは45質量%以下、更に好ましくは40質量%以下である。
【0022】
工程1におけるテトラアルコキシシランの添加量は、ゾル-ゲル反応を促進させ、十分に緻密なシェルを形成する観点から、工程1の香料化合物の総量に対して、好ましくは10質量%以上、より好ましくは12質量%以上、更に好ましくは14質量%以上であり、そして、過剰のテトラアルコキシシランが香料化合物中に残存することを抑制する観点から、好ましくは60質量%以下、より好ましくは50質量%以下、更に好ましくは40質量%以下、より更に好ましくは35質量%以下である。
【0023】
工程1は、好ましくは下記の工程1-1~1-4を含む。
工程1-1:カチオン活性剤を含む水相成分を調製する工程。
工程1-2:香料とテトラアルコキシシランを混合し、油相成分を調製する工程。
工程1-3:工程1-1で得られた水相成分と工程1-2で得られた油相成分とを混合及び乳化し、乳化液を得る工程。
工程1-4:工程1-3で得られた乳化液を、1段階目のゾル-ゲル反応に供し、コアと、シリカを構成成分とする第一シェルとを有するシリカカプセルを形成する工程。
【0024】
前記乳化液の調製に用いられる撹拌手段は特に限定されないが、強い剪断力を有するホモジナイザー、高圧分散機、超音波分散機等を使用することができる。また、ホモミキサー、「ディスパー」(商品名、プライミクス株式会社製)、「クレアミックス」(商品名、エムテクニック株式会社製)、「キャビトロン」(商品名、大平洋機工株式会社製)等を使用することもできる。
【0025】
工程1の乳化液における乳化滴のメジアン径D50は、シリカカプセル外環境に対する比表面積を少なくし、長期保持性を高める観点から、好ましくは0.1μm以上、より好ましくは0.2μm以上、更に好ましくは0.3μm以上であり、そして、シリカカプセルの物理的強度の観点から、好ましくは50μm以下、より好ましくは30μm以下、更に好ましくは10μm以下、より更に好ましくは5μm以下、より更に好ましくは3μm以下である。
乳化滴のメジアン径D50は、実施例に記載の方法により測定することができる。
【0026】
工程1におけるゾル-ゲル反応の初期pHは、テトラアルコキシシランの加水分解反応と縮合反応のバランスを保つ観点、及び親水性の高いゾルの生成を抑制し、カプセル化の進行を促進する観点から、好ましくは3.0以上、より好ましくは3.3以上であり、更に好ましくは3.5以上であり、そして、シリカシェルの形成と乳化滴の凝集の併発を抑制し、緻密なシェルを有するシリカカプセルを得る観点から、好ましくは4.5以下、より好ましくは4.3以下、更に好ましくは4.1以下である。
【0027】
香料組成物を含む油相成分の酸性、アルカリ性の強さに応じて、所望の初期pHに調整する観点から、任意の酸性又はアルカリ性のpH調整剤を用いてもよい。
前記乳化液のpHが所望の値以下となることもある。その場合には、後述するアルカリ性のpH調整剤を用いて調整することが好ましい。
すなわち、工程1-4は、好ましくは、下記の工程1-4’であってもよい。
工程1-4’:工程1-3で得られた乳化液のpHを、pH調整剤を用いて調整し、1段階目のゾル-ゲル反応を行い、コアと第一シェルとを有するシリカカプセル(1)を形成し、該シリカカプセル(1)を含有する水分散体を得る工程。
【0028】
酸性のpH調整剤として、塩酸、硝酸、硫酸等の無機酸、酢酸、クエン酸等の有機酸、陽イオン交換樹脂等を水やエタノール等に加えた液などが挙げられ、好ましくは塩酸、硫酸、硝酸、クエン酸である。
アルカリ性のpH調整剤として、水酸化ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリスヒドロキシメチルアミノメタンなどが挙げられ、好ましくは水酸化ナトリウム、水酸化アンモニウムである。
【0029】
工程1におけるゾル-ゲル反応の反応温度は、水相として含まれる水の融点以上、沸点以下であれば任意の値を選択することができるが、ゾル-ゲル反応における加水分解反応と縮合反応のバランスを制御し、緻密なシェルを形成する観点から、温度を一定範囲にするのが好ましい。該範囲としては、好ましくは5℃以上、より好ましくは10℃以上、更に好ましくは15℃以上、そして、好ましくは60℃以下、より好ましくは50℃以下、更に好ましくは40℃以下である。
【0030】
〔工程2〕
工程2は、工程1で得られたシリカカプセル(1)を含有する水分散体に、更にテトラアルコキシシランを添加してゾル-ゲル反応を行い、第一シェルを包接する第二シェルを有するシリカカプセルを形成する工程である。
【0031】
工程2におけるテトラアルコキシシランの添加量は、第一シェルを包接した第二シェルを形成する観点から、工程1の香料化合物に対して、好ましくは7質量%以上、より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは15質量%以上であり、そして、水相に分散するシリカゾルの生成を抑制し、シリカカプセルの分散安定性を向上させる観点から、好ましくは200質量%以下、より好ましくは170質量%以下、更に好ましくは150質量%以下である。
【0032】
工程2において、工程1で得られるシリカカプセル(1)を含有する水分散体に添加するテトラアルコキシシランは、全量を一括で添加してもよく、間欠的に分割して添加してもよく、連続的に添加してもよいが、緻密性の高い第二シェルを形成する観点から、連続的に滴下して添加することが好ましい。
テトラアルコキシシランを連続的に滴下して添加する場合、その滴下時間は製造の規模に応じて適宜設定することができるが、添加するテトラアルコキシシランと水分散体との分離を抑制する観点から、好ましくは5分以上、より好ましくは10分以上、更に好ましくは30分以上であり、そして、好ましくは1200分以下、より好ましくは1000分以下、更に好ましくは500分以下である。
【0033】
本発明において、テトラアルコキシシランの添加総量、すなわち工程1及び工程2で用いられるテトラアルコキシシランの合計添加量は、工程1の香料化合物に対して、好ましくは30質量%以上、より好ましくは35質量%以上、更に好ましくは40質量%以上であり、そして、好ましくは250質量%以下、より好ましくは200質量%以下、更に好ましくは150質量%以下である。テトラアルコキシシランの添加総量を上記範囲にすることにより、内包する香料化合物を長期間保持することができる。
【0034】
本発明において、工程2におけるテトラアルコキシシランの添加前の水分散体の総量に対して、工程1の香料化合物及びテトラアルコキシシランの合計量は、香料化合物の長期保持性を向上させる観点から、好ましくは20質量%以下、より好ましくは18質量%以下、更に好ましくは15質量%以下、より更に好ましくは10質量%以下であり、そして、生産効率の観点から、好ましくは2質量%以上、より好ましくは3質量%以上、更に好ましくは5質量%以上である。
工程2におけるテトラアルコキシシランの添加前の水分散体の総量に対する、工程1の香料化合物及びテトラアルコキシシランの合計量の調整は、工程1の香料化合物及びテトラアルコキシシランの量と工程1で得られる水分散体の総量とが上記範囲となるように工程1を行ってもよく、工程1で得られた水分散体に更に水を添加して希釈することにより行ってもよい。
【0035】
本発明は、生産効率の観点から、工程2において、テトラアルコキシシランの添加前に、工程1で得られた水分散体を水で希釈してもよい。工程1で得られた水分散体の希釈前の総量に対する、工程1の香料化合物及びテトラアルコキシシランの合計量は、好ましくは3質量%以上、より好ましくは5質量%以上、更に好ましくは10質量%以上、より更に好ましくは15質量%以上であり、そして、好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下、更に好ましくは30質量%以下である。
希釈倍率は、好ましくは2倍以上、より好ましくは2.5倍以上であり、そして、好ましくは20倍以下、より好ましくは10倍以下、より好ましくは7倍以下である。
【0036】
工程2におけるゾル-ゲル反応の反応温度は、分散媒として含まれる水の融点以上、沸点以下であれば任意に選択することができるが、ゾル-ゲル反応における加水分解反応と縮合反応のバランスを制御し、緻密なシェルを形成する観点から、好ましくは5℃以上、より好ましくは10℃以上、更に好ましくは15℃以上であり、そして、好ましくは60℃以下、より好ましくは50℃以下、更に好ましくは40℃である。工程1のゾル-ゲル反応と工程2のゾル-ゲル反応とで異なる反応温度で実施しても良い。
【0037】
本発明は、工程2において、工程1で得られた水分散体に、更に有機高分子化合物を水分散体を安定させ凝集を抑制する目的で添加してもよい。ここで、有機高分子化合物とは重量平均分子量5,000以上の化合物を意味する。
前記有機高分子化合物としては、ノニオン性ポリマー、カチオン性ポリマー、アニオン性ポリマーが挙げられる。
前記ノニオン性ポリマーは、水中で電荷を有しない水溶性ポリマーを意味する。ノニオン性ポリマーを用いることにより、シリカカプセルの用途に応じた機能を該シリカカプセルに付与させることができる。
前記有機高分子化合物としてノニオン性ポリマー、カチオン性ポリマー、又はアニオン性ポリマーを用いる場合、例えば本発明に係るシリカカプセルを柔軟剤組成物等の繊維処理剤組成物に用いる際には、シリカカプセルの繊維への吸着性の向上が期待できる。
本明細書において「水溶性ポリマー」とは、105℃で2時間乾燥させ、恒量に達したポリマーを25℃の水100gに溶解させたときに、その溶解量が1mg以上であるポリマーをいう。
【0038】
ノニオン性ポリマーとしては、ノニオン性モノマー由来の構成単位を有するポリマー、水溶性多糖類(セルロース系、ガム系、スターチ系等)及びその誘導体等が挙げられる。
ノニオン性モノマーとしては、炭素数1以上22以下の脂肪族アルコール由来の炭化水素基を有する(メタ)アクリレート;スチレン等のスチレン系モノマー;ベンジル(メタ)アクリレート等の芳香族基含有(メタ)アクリレート;酢酸ビニル;ビニルピロリドン;ビニルアルコール;ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート等のポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート;メトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、オクトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート等のアルコキシポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート;(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。なお、(メタ)アクリレートは、アクリレート又はメタクリレートの意味である。同様に、(メタ)アクリルは、アクリル又はメタクリルの意味である。
【0039】
カチオン性ポリマーとしては、四級アンモニウム塩基を含有するポリマーの他、窒素系のカチオン基を有するポリマー、pH調整によりカチオン性を帯びることがあるポリマー等が挙げられる。カチオン性ポリマーを用いることにより、工程1で得られるシリカカプセル(1)が水分散体中で凝集しやすい状況を緩和することができ、続く工程2において粗大粒子等の生成を抑制できる。
カチオン性ポリマーとしては、ポリ(ジアリルジメチルアンモニウムクロライド)、ポリ(アクリル酸-co-ジアリルジメチルアンモニウムクロライド)、ポリ(アクリルアミド-co-ジアリルジメチルアンモニウムクロライド)、ポリ(アクリルアミド-co-アクリル酸-co-ジアリルジメチルアンモニウムクロライド)等のポリジアリルジメチルアンモニウム塩及びその共重合体、ポリ(2-(メタクリロイルオキシ)エチルトリメチルアンモニウムクロライド)、ポリエチレンイミン、ポリアリルアミン、カチオン化セルロース、カチオン化グアーガム、カチオン化タラガム、カチオン化フェヌグリークガム、カチオン化ローカストビンガム等が挙げられる。これらの中でも、ポリジアリルジメチルアンモニウム塩及びその共重合体が好ましく、ポリ(ジアリルジメチルアンモニウムクロライド)、ポリ(アクリル酸-co-ジアリルジメチルアンモニウムクロライド)、及びポリ(アクリルアミド-co-アクリル酸-co-ジアリルジメチルアンモニウムクロライド)から選ばれる1種以上がより好ましく、ポリ(ジアリルジメチルアンモニウムクロライド)が更に好ましい。
【0040】
カチオン性ポリマーのカチオン基当量は、シリカカプセル(1)の分散性の観点及び粗大粒子の生成を抑制する観点、並びに長期保持性を向上させる観点から、好ましくは1meq/g以上、より好ましくは3meq/g以上、更に好ましくは4.5meq/g以上であり、そして、好ましくは10meq/g以下、より好ましくは8meq/g以下である。カチオン性ポリマーにアニオン基が含まれてもよいが、その場合、カチオン性ポリマーに含まれるアニオン基当量は、好ましくは3.5meq/g以下、より好ましくは2meq/g以下、更に好ましくは1meq/g以下である。なお、本発明において、カチオン性ポリマーのカチオン基当量は、モノマー組成に基づいた計算により算出したものを用いる。
【0041】
アニオン性ポリマーとしては、カルボキシル基を有するモノマー単位を含有するポリマーの他、スルホン酸基を有するモノマー単位を含有するポリマー、pH調整によりアニオン性を帯びるポリマー等が挙げられる。
アニオン性ポリマーとしては、ポリ(メタ)(アクリル酸)、ポリ(マレイン酸)、ポリ((メタ)アクリル酸-co-マレイン酸)、ポリ((メタ)アクリル酸-co-無水マレイン酸)、ポリ((メタ)アクリル酸-co-イソブチレン)、ポリ((メタ)アクリル酸-co-スチレン)、ポリ(イソブチレン-co-マレイン酸)、ポリ(スチレン-co-マレイン酸)、カルボキシメチルセルロース等が挙げられる。なお、(メタ)アクリル酸は、アクリル酸又はメタクリル酸の意味である。
【0042】
有機高分子化合物の添加量は、工程1で得られた水分散体に対して、好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、更に好ましくは0.2質量%以上であり、そして、好ましくは5質量%以下、より好ましくは3質量%以下、更に好ましくは2質量%以下である。
【0043】
工程2により得られるシリカカプセルは、水中に分散した状態で得られる。用途によってはこれをそのまま使用することもできるが、場合によっては、シリカカプセルを分離して使用する。分離方法としては、ろ過法、遠心分離法等を採用することができる。
【0044】
<コア>
本発明に係るシリカカプセルのコアは香料化合物を含む。
本発明では、繊維が発汗等の水分で湿潤した際の香り立ちの観点から、香料化合物の全量中、logPが2.0以上5.0以下、且つ25℃の蒸気圧が0.01Pa以上8.00Pa以下である香料化合物の割合が25質量%以上であることが好ましい。
【0045】
本発明において、logP値とは、有機化合物の水と1-オクタノールに対する親和性を示す係数である。1-オクタノール/水分配係数Pは、1-オクタノールと水の2液相からなる溶媒に微量の化合物が溶質として溶け込んで分配平衡に到達した際の、それぞれの溶媒中における化合物の平衡濃度の比であり、底10に対するそれらの対数logPの形で示すのが一般的である。今日では、化合物分子を構成する原子の数及び化学結合のタイプによって決められる原子団のフラグメント値を用いた計算プログラムによって算出される、“計算logP(ClogPという場合がある)”の値が広く用いられており、本発明においても、化合物の選択に際して、ClogPの値を用いる。
【0046】
本発明においては、ClogPの値として、米国環境保護庁とSyracuse社が共同開発したソフトウェアEPI Suite(登録商標;The EstimationsProgramsInterface for Windows version 4.11)を用いて算出された値を用いる。
【0047】
本発明において、25℃における蒸気圧とは、実測値又は沸点からの蒸気圧推定によって求めたものであり、化学物質が室温で固体である場合には融点から推定される。蒸気圧は、幾つかの公知の方法(Antoine法、Modified Grain法、Mackay法等)によって推定されるが、本発明においては、米国環境保護庁(EPA)から入手できる、EPI suiteに組み込まれているMPBPWINを用いて算出した値であって、Antoine法によって算出される値とGrain法によって算出される値の平均値が、「選択されている値(Selected VP)」として算出結果に表示されている場合は、その平均値を、特に「選択されている値(Selected VP)」としての表示がない場合は、Modified Grain法によって算出された値を用いる。
【0048】
logPが2.0以上5.0以下、且つ25℃の蒸気圧が0.01Pa以上8.00Pa以下である香料化合物として、例えば、γ-ウンデカラクトン、2-シクロヘキシリデン-2-フェニルアセトニトリル、ダマセノン、δ-ダマスコン、α-メチル-β-(p-t-ブチルフェニル)-プロピオンアルデヒド、β-イオノン、ミルラアルデヒド、エチルトリシクロ〔5.2.1.0-2,6〕デカン-2-カルボキシレート(フルーテート)、シトロネロール、ゲラニオール、α-イオノン、パチョリアルコール、6,7-ジヒドロ-1,1,2,3,3-ペンタメチル-4(5H)-インダノン、メチルジヒドロジャスモネート、ヘキシルシンナミックアルデヒド、アミルシンナミックアルデヒド、プロピオン酸アリルシクロヘキシル、酪酸ジメチルベンジルカルビニル、プロピオン酸トリシクロデセニル、サリチル酸アミル、γ-メチルイオノン、α-ダマスコン、β-ダマスコン、ネロリンヤラヤラ、2,4,6-トリメチル-4-フェニル-1,3-ジオキサン、フェニルヘキサノール、2-メチル-4-(2,2,3-トリメチル-3-シクロペンテン-1-イル)-2-ブテン-1-オール、ドデカヒドロ-3a,6,6,9a-テトラメチルナフト〔2,1-b〕フラン、γ-ノナラクトン、メチルβ-ナフチルケトン、オイゲノール、リラール、酢酸ジメチルベンジルカルビニル、イソ-ダマスコン、2-シクロヘキシリデン-2-フェニルアセトニトリル、γ-デカラクトン、α-メチル-3,4-メチレンジオキシヒドロシンナミックアルデヒド、7-メチル-3,5-ジヒドロ-2H-ベンゾジオキセピノン、トリシクロデシニルアセテート(酢酸トリシクロデセニル)、トリシクロデシニルプロピオネート、2-ペンチルオキシグリコール酸アリル、1-(2-tert-ブチルシクロヘキシロキシ)-2-ブタノール、シトロネリロキシアセトアルデヒド、インドール、4-メチル-3-デセン-5-オール、パラ-メンタン-8-チオール-3-オン、3-(パラ-tert-ブチルフェニル)-プロパナール、エチルシンナメート、5-メチル-3-ヘプタノンオキシム、メチルアンスラニレート、ターピネオール、β-カリオフィレン、酢酸シトロネリル、酢酸ゲラニル、酢酸ネリル、酢酸p-t-ブチルシクロヘキシル、テトラヒドロゲラニオール、2-イソブチル-4ヒドロキシ-4-メチルテトラヒドロピラノール(フロローサ)、α-ダイナスコン、シスジャスモン、ビシクロ〔3.2.1〕オクタン-8-オン-1,5-ジメチル-オキシム、2,4-ジメチル-4,4α,5,9β-テトラヒドロインデノ[1,2-d]-m-ジオキシン、3-(パラ-エチルフェニル)-2,2-ジメチルプロパナール、エチル-2-tert-ブチルシクロヘキシル-カーボネート、安息香酸ヘキシル、4-アセトキシ-3-アミルテトラヒドロピラン、ドデシルアルデヒド、ジヒドロ-β-イオノン、メチルシクロオクチルカーボネート、メチルフェニルグリシド酸エチル、イソオイゲノール、メチルイソオイゲノール、ジフェニルオキサイド、2,2,5-トリメチル-5-ペンチルシクロペンタノン、チモール、ネロリンブロメリア、5,6-ジメチル-8-イソプロペニル、ビシクロ「4,4,0]-1-デセン-3-オン、3-(4-イソプロピルフェニル)-プロパナール、4-イソプロピルシクロヘキサンメタノール、メチルアンスラニル酸メチル、ドデカンニトリル、3-ドデセナールが挙げられる。
【0049】
また、(a)成分の香料化合物としては、logP値が2.0よりも低い香料化合物を用いることもできる。logP値が2.0よりも低い香料化合物として、例えば、クマリン(1.5)、フェニルエチルアルコール(1.6)、cis-3-ヘキセノール(1.6)、ラズベリーケトン(1.5)、ヘリオトロピン(1.8)などが挙げられる。なお( )内の数字はlogP値である。
【0050】
また、(a)成分の香料化合物としては、logP値が5.0よりも高い香料化合物を用いることもできる。logP値が5.0よりも高い香料化合物として、例えば、2-[2-(4-メチル-3-シクロヘキセン-1-イル)プロピル]シクロペンタノン(5.1)、7-アセチル-1,2,3,4,5,6,7,8-オクタヒドロ-1,1,6,7-テトラメチルナフタレン(5.2)、アセチルセドレン(5.2)、ネロリドール(5.7)、ベンジルアルコール(7.1)、カリオフィレン(6.3)などが挙げられる。なお( )内の数字はlogP値である。
【0051】
また、(a)成分の香料化合物としては、蒸気圧が0.01Paよりも低い香料化合物を用いることもできる。蒸気圧が0.01Paよりも低い香料化合物として、例えば、1,4-ジオキサシクロヘプタデカン-5,17-ジオン(0.0000585)、エチレンブラッシレート(0.0000585)などが挙げられる。なお( )内の数字は蒸気圧である(単位はPa)。
【0052】
また、(a)成分の香料化合物としては、蒸気圧が8.00Paよりも高い香料化合物を用いることもできる。蒸気圧が8.00Paよりも高い香料化合物として、例えば、2-メチル酪酸エチル(1070)、エチル-2-メチルペンタノエート(384)、リモネン(193)、2-ペンチルオキシグリコール酸アリル(19.7)、2,4-ジメチル-3-シクロヘキセニルカルボキシアルデヒド(46.9)、リナロール(11.1)、リナリルアセテート(17.5)、テトラヒドロリナロール(9.51)、1,8-シネオール(208)、イソボルニルアセテート(14.3)、オシメン(358)、シス-3-ヘキセノール(125)、トリプラール(46.9)、スチラリルアセテート(14.9)などが挙げられる。なお( )内の数字は蒸気圧である(単位はPa)。
【0053】
なお、(a)成分のマイクロカプセルは香料化合物の他に希釈剤、溶剤、及び固化剤から選ばれる1種以上を内包してもよい。希釈剤ないし溶剤としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、及びグリセリンを挙げることができ、脂肪酸アルコール、脂肪酸の低級アルコールエステル、及び脂肪酸のグリセリンエステルを挙げることもできる。
【0054】
[シリカカプセル]
本発明のシリカカプセル、例えば前記の様に製造したシリカカプセルは、水媒体中で繊維製品に付着した後に繊維製品から水分が蒸発する過程の終盤で壊れ、内包物を繊維製品に浸透させることができる。
【0055】
本発明のシリカカプセルは、好ましくは、前記香料化合物を含むコアと、該コアを包接する第一シェルと、第一シェルを包接する第二シェルとを有するシリカカプセルである。
本発明のシリカカプセルの第一シェルは、コアを包接し、シリカを構成成分として含み、好ましくは5nm以上20nm以下の平均厚さを有し、第二シェルは、第一シェルを包接し、シリカを構成成分として含み、好ましくは10nm以上100nm以下の平均厚さを有する。
シリカカプセルの第一シェル及び第二シェルの平均厚さは、透過型電子顕微鏡(TEM)観察により測定することができる。具体的には、透過型電子顕微鏡観察下で、第一シェル及び第二シェルの厚さを写真上で実測する。この操作を、視野を5回変えて行う。得られたデータから第一シェル及び第二シェルの平均厚さの分布を求める。透過型電子顕微鏡の倍率の目安は1万倍以上10万倍以下であるが、シリカカプセルの大きさによって適宜調節される。ここで、透過型電子顕微鏡(TEM)として、例えば商品名「JEM-2100」(日本電子株式会社製)を用いることができる。
【0056】
本発明に係るシリカカプセルのメジアン径D50は、長期保持性を向上させ、シリカカプセルの分散安定性を向上させる観点から、好ましくは0.1μm以上、より好ましくは0.5μm以上、更に好ましくは1μm以上であり、そして、シリカカプセルの物理的強度を向上させ、長期保持性を向上させる観点から、好ましくは100μm以下、より好ましくは50μm以下、更に好ましくは30μm以下、より更に好ましくは10μm以下である。
シリカカプセルのメジアン径D50は、実施例に記載の方法により測定することができる。
【0057】
本発明に係るシリカカプセルは、繊維製品処理剤組成物を調製する際は、シリカカプセルスラリーとして配合することが好ましい。繊維製品処理剤組成物を調製するときに混合する成分へのシリカカプセルスラリーの分散性を向上させる観点から、シリカカプセルスラリーには、カチオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤及びアニオン性界面活性剤から選ばれる界面活性剤を添加してもよい。
【0058】
なお、(a)成分のシリカカプセルは香り立ちを損なわない程度に一部凝集していてもよい。
【0059】
本発明の繊維製品処理剤組成物は、(a)成分を、(a)成分が含む香料化合物として、好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.07質量%以上、更に好ましくは0.1質量%以上、そして、好ましくは1.0質量%以下、より好ましくは0.7質量%以下、更に好ましくは0.5質量%以下含有する。
【0060】
<(b)成分>
本発明における(b)成分は、フェノール構造又はヒドロキシ-4-ピロン構造を有する香料〔以下、「(b1)成分」ともいう〕と、炭素数8以上18以下の脂肪族モノカルボン酸〔以下、「(b2-1)成分」ともいう〕又は炭素数3以上20以下の脂肪族ジカルボン酸〔以下、「(b2-2)成分」ともいう〕とのエステル化合物からなる香料前駆体である。
【0061】
〔(b1)成分〕
前記(b1)成分は、フェノール構造又はヒドロキシ-4-ピロン構造を有する香料である。
本発明において「香料」とは、匂いを感じさせる物質のことをいい、「フレグランス(fragrance)」のことを指す。
フェノール構造又はヒドロキシ-4-ピロン構造を有する香料のpKaは、長期に亘って強い香りを発現させる観点から、好ましくは13以下であり、より好ましくは7以上12以下、更に好ましくは7.5以上11.5以下である。
本発明において、pKaとは酸解離定数のことであり、水素イオンが放出される解離反応における平衡定数Kaの負の常用対数pKaによって表される。pKaが小さいほど強い酸であることを示す。本発明におけるpKaの算出には、インターネット上に構築されている化学構造-物性計算サイトであるSPARC(SPARC Performs Automated Reasoning In Chemistry、ARChem社、http://www.archemcalc.com/sparc.html)を用いた。
【0062】
フェノール構造を有する香料としては、長期に亘って持続的に香料を徐放させる観点から、炭素数が好ましくは7以上、より好ましくは8以上、更に好ましくは9以上であり、そして、好ましくは14以下、より好ましくは10以下、更に好ましくは9以下であり、9であるものがより更に好ましい。
具体的には、バニリン(炭素数8、pKa7.8)、エチルバニリン(炭素数9、pKa7.8)、iso-オイゲノール(炭素数10、pKa9.8)、サリチル酸ベンジル(炭素数14、pKa9.8)、サリチル酸シス-3-ヘキセニル(炭素数13、pKa9.8)、バニリンPGA(炭素数11、pKa9.8)、サリチル酸シクロヘキシル(炭素数13、pKa10.0)、オイゲノール(炭素数10、pKa10.0)、ジンゲロン(炭素数11、pKa10.0)、バニトロープ(炭素数11、pKa10.0)、ラズベリーケトン(炭素数10、pKa10.1)、サリチル酸メチル(炭素数8、pKa10.1)、サリチル酸ヘキシル(炭素数13、pKa10.1)、カルバクロール(炭素数10、pKa10.5)、及びチモール(炭素数10、pKa10.9)が挙げられる。
【0063】
ヒドロキシ-4-ピロン構造を有する香料としては、炭素数が好ましくは6以上、より好ましくは7以上であり、そして、好ましくは10以下、より好ましくは7以下であり、7であるものが更に好ましい。炭素数が前記範囲内であると、長期に亘って香料を徐放することができる。
具体的には、マルトール(炭素数6、pKa11.2)、エチルマルトール(炭素数7、pKa11.3)を挙げることができる。
前記(b1)成分の中でも、保存安定性を向上させることができ、また、徐放性能を向上させる観点から、マルトール、エチルマルトール、バニリン、エチルバニリン、及びラズベリーケトンが好ましく、エチルマルトール及びエチルバニリンがより好ましい。
これらの香料は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0064】
〔脂肪族モノカルボン酸〕
〔(b2-1)成分〕
前記(b2-1)成分は、炭素数8以上18以下の脂肪族モノカルボン酸である。
炭素数が前記範囲内の脂肪族モノカルボン酸を用いることにより、繊維製品処理剤組成物中において、(b)成分のエステル結合部分が水と接触しにくくなり加水分解の進行が抑制され、繊維製品処理剤組成物の保存安定性が向上する。それにより、繊維製品処理剤組成物中製品の液色の変化を抑制することができる。
脂肪族モノカルボン酸の炭素数は、繊維製品処理剤組成物中の保存安定性を向上させる観点から、8以上、好ましくは10以上、より好ましくは11以上、更に好ましくは12以上であり、消費される香料の原子効率及び初期の発香の観点から、18以下、好ましくは16以下、より好ましくは14以下、更に好ましくは12以下であり、12であるものがより更に好ましい。
【0065】
脂肪族モノカルボン酸の具体例としては、エナント酸、カプリル酸、ベラルゴン酸、カプリン酸、ウンデシル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、ジメチルオクタン酸、オクテン酸、デセン酸、ドデセン酸、テトラデセン酸、ヘキサデセン酸、オレイン酸、バクセン酸、リノール酸、及びリノレン酸等の脂肪族モノカルボン酸が挙げられる。
本発明においては、消費される香料の原子効率及び初期の発香の観点から、これらの中でも、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、及びオレイン酸が好ましく、ラウリン酸、ステアリン酸、及びオレイン酸がより好ましい。
【0066】
〔(b2-2)成分〕
前記(b2-2)成分は、炭素数3以上20以下の脂肪族ジカルボン酸である。
炭素数が前記範囲内の脂肪族ジカルボン酸を用いることにより、繊維製品処理剤組成物中において、(b)成分のエステル結合部分が水と接触しにくくなり加水分解の進行が抑制され、繊維製品処理剤組成物の保存安定性が向上する。それにより、繊維製品処理剤組成物中製品の液色の変化を抑制することができる。
脂肪族ジカルボン酸の炭素数は、繊維製品処理剤組成物の保存安定性を向上させる観点から、3以上、好ましくは6以上、より好ましくは8以上、更に好ましくは9以上、より更に好ましくは10以上であり、消費される香料の原子効率及び初期の発香の観点から、20以下、好ましくは16以下、より好ましくは14以下、更に好ましくは12以下である。
脂肪族ジカルボン酸の具体例としては、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、及びテトラデカン二酸等の脂肪族ジカルボン酸が挙げられる。
本発明においては、消費される香料の原子効率及び初期の発香の観点から、これらの中でも、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、及びドデカン二酸が好ましく、アジピン酸、セバシン酸がより好ましく、及びセバシン酸が更に好ましい。
【0067】
〔(b)成分の製造方法〕
前記(b)成分を構成するエステルは、例えば下記(i)~(iv)の方法で製造することができる。
(i)前記香料と、前記脂肪族モノカルボン酸又は脂肪族ジカルボン酸とを直接エステル化反応させることにより製造する方法。
(ii)前記脂肪族モノカルボン酸又は脂肪族ジカルボン酸に対してメタノール等の低級アルコールを反応させたエステルと、前記香料とをエステル交換反応させることにより製造する方法。
(iii)前記香料と前記脂肪族モノカルボン酸又は脂肪族ジカルボン酸の酸ハロゲン化物とを反応させることにより製造する方法。
(iv)前記香料と前記脂肪族モノカルボン酸又は脂肪族ジカルボン酸の無水物とを反応させることにより製造する方法。
これらの中でも、製造効率の観点から、前記香料と前記脂肪族モノカルボン酸又は脂肪族ジカルボン酸の酸ハロゲン化物とを反応させて製造する方法が好ましい。
【0068】
(酸ハロゲン化物)
前記脂肪族モノカルボン酸又は脂肪族ジカルボン酸の酸ハロゲン化物は、例えば、前記脂肪族モノカルボン酸又は脂肪族ジカルボン酸と、塩化チオニル、三塩化リン、五塩化リン及び三臭化リン等の各種ハロゲン化試薬との反応で得ることができる。
これらの中でも、反応性の観点、試薬の入手容易性の観点から、脂肪族モノカルボン酸又は脂肪族ジカルボン酸と三塩化リンとの反応で得られる酸ハロゲン化物が好ましく、具体的には、脂肪族モノカルボン酸の酸クロリドが好ましい。
【0069】
(香料の仕込み量)
(b)成分を製造する際の前記香料の仕込み量は、反応を速やかに進行させると共に未反応の脂肪族モノカルボン酸又は脂肪族ジカルボン酸の量を低減させる観点から、脂肪族モノカルボン酸又は脂肪族ジカルボン酸の酸ハロゲン化物1モルに対し、好ましくは0.9モル以上、より好ましくは0.95モル以上、更に好ましくは0.98モル以上であり、未反応の香料の量を低減させる観点から、好ましくは1.1モル以下、より好ましくは1.05モル以下、更に好ましくは1.02モル以下である。
【0070】
(溶媒)
(b)成分の製造に用いる溶媒としては、特に制限はなく、例えば、クロロホルム及びジクロロメタン等のハロゲン化炭化水素、酢酸エチル、及び酢酸イソプロピル等の脂肪族エステル、ベンゼン、トルエン、キシレン及びエチルベンゼン等の芳香族炭化水素、シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、デカリン、及びテトラリン等の脂環式炭化水素、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン及びオクタン等の脂肪族炭化水素等が挙げられる。
これらの中でも、前記香料、前記脂肪族モノカルボン酸及び前記脂肪族ジカルボン酸の溶解性の観点から、ハロゲン化炭化水素、脂肪族エステル、及び芳香族炭化水素から選ばれる1種以上が好ましく、ジクロロメタン、酢酸エチル、及びトルエンから選ばれる1種以上がより好ましい。これらの溶媒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0071】
(反応温度)
(b)成分を製造する際の反応温度は、原料をロスすることなく反応を行う観点から、香料、脂肪族モノカルボン酸又は脂肪族ジカルボン酸の沸点以下が好ましい。具体的な反応温度は、反応速度を向上させる観点から、好ましくは-20℃以上、より好ましくは-18℃以上、更に好ましくは-15℃以上、より更に好ましくは-12℃以上である。また、反応を制御する観点から、好ましくは50℃以下、より好ましくは40℃以下、更に好ましくは30℃以下、より更に好ましくは20℃以下である。
本発明においては、前記温度範囲で反応を行った後、十分に反応を進行させる観点から、所定の温度、時間で撹拌を行うことが好ましい。撹拌する際の温度は、好ましくは10℃以上、より好ましくは15℃以上、更に好ましくは20℃以上であり、そして、好ましくは90℃以下、より好ましくは80℃以下、更に好ましくは70℃以下、より更に好ましくは60℃以下、より更に好ましく50℃以下である。
撹拌は、好ましくは0.5時間以上、より好ましくは0.8時間以上であり、そして、好ましくは4時間以下、より好ましくは3時間以下、更に好ましくは1.5時間以下行う。
【0072】
(反応圧力)
(b)成分の製造は、大気圧又は減圧下で行うことができ、簡易な設備で製造することができる観点から、大気圧下で製造することが好ましい。
(b)成分を製造する際の具体的な圧力は、好ましくは80kPa以上、より好ましくは90kPa以上、更に好ましくは95kPa以上であり、そして、好ましくは101kPa以下である。
また、(b)成分の製造は、副反応を抑制する観点、反応系中に水が混入するのを抑制する観点から、不活性ガスの存在下で行うことが好ましい。不活性ガスとしては、窒素、ヘリウム、アルゴン等が挙げられ、これらの中でも、コストを抑えて製造する観点から、窒素が好ましい。
【0073】
(塩基性物質)
前記(b)成分の製造方法においては、反応を効率的に行う観点から、塩基性物質を用いることが好ましい。
前記塩基性物質としては、トリエチルアミン、及びトリブチルアミン等の脂肪族アミン、ピリジン、及びピコリン等の芳香族アミンや、DBU(ジアザビシクロウンデセン)を挙げることができる。これらの中でも、入手容易性の観点、取り扱い性の観点から、脂肪族アミンが好ましく、トリエチルアミンがより好ましい。
前記塩基性化合物の使用量は、脂肪族モノカルボン酸又は脂肪族ジカルボン酸の酸ハロゲン化物1モルに対して、好ましくは1モル以上、より好ましくは1.01モル以上、更に好ましくは1.02モル以上、更に好ましくは1.04モル以上であり、そして、使用量とコストのバランスから、好ましくは1.2モル以下、より好ましくは1.15モル以下、更に好ましくは1.1モル以下、より更に好ましくは1.06モル以下である。
【0074】
本発明の繊維製品処理剤組成物は、(b)成分を、好ましくは0.001質量%以上、より好ましくは0.005質量%以上、更に好ましくは0.01質量%以上、そして、好ましくは0.5質量%以下、より好ましくは0.3質量%以下、更に好ましくは0.1質量%以下含有する。
【0075】
本発明の繊維製品処理剤組成物は、(a)成分中の香料化合物に対する(b)成分の質量比[(b)成分/(a)成分]が好ましくは0.5/99.5以上、より好ましくは1/99以上、更に好ましくは5/95以上、そして、好ましくは30/70以下、より好ましくは25/75以下、更に好ましくは20/80以下である。
【0076】
<(c)成分>
本発明の繊維製品処理剤組成物は、下記(c)成分を含有することができる。
(c)成分:下記(c1)成分及び(c2)成分から選ばれる1種以上の化合物
(c1)成分:下記一般式(C1)で表される第3級アミン化合物及びその酸塩から選ばれる1種以上の化合物
(c2)成分:下記一般式(C1)で表される第3級アミン化合物の4級化物から選ばれる1種以上の化合物
〔R1c-C(=O)-O-(C2pO)-C2qN(R2c3-m (C1)
〔式中、R1cは炭素数11以上23以下の炭化水素基であり、R2cは炭素数1以上3以下の炭化水素基及びHO-(C2pO)-C2q基から選ばれる基であり、mは1以上3以下の整数であり、p及びqはそれぞれ独立して2又は3の数であり、rは0以上5以下の整数である。同一分子内にR1c、R2c、p、q、rが複数存在する場合、それらは同一でも異なっていてもよい。〕
【0077】
〔(c1)成分〕
本発明における(c1)成分は、前記一般式(C1)で表される第3級アミン化合物及びその酸塩から選ばれる1種以上の化合物である。
【0078】
一般式(C1)中のR1cは炭素数11以上23以下の炭化水素基であり、繊維製品の柔軟化の観点から、炭素数13以上21以下の非環式の炭化水素基が好ましい。R1cの炭化水素基の具体例は、直鎖又は分岐鎖のアルキル基、アルケニル基が挙げられ、直鎖のアルキル基、アルケニル基がより好ましい。
1cのより具体的な例としては、炭素数13以上21以下の直鎖又は分岐鎖のアルキル基、炭素数13以上21以下の直鎖又は分岐鎖のアルケニル基が好ましく、炭素数13以上21以下の直鎖のアルキル基、及び炭素数13以上21以下の直鎖のアルケニル基から選ばれる基が挙げられる。
【0079】
乳濁型の組成物が望まれる場合においては、組成物の製造容易性の観点から、R1cは、炭素数11以上23以下のアルキル基、及び炭素数11以上23以下のアルケニル基から選ばれる基であることが好ましく、炭素数13以上21以下のアルキル基、及び炭素数13以上21以下のアルケニル基から選ばれる基であることがより好ましい。
本発明における(c1)成分は、前記一般式(C1)におけるR1cが異なる置換基で構成される化合物の混合物であることが好ましく、R1cが、アルキル基である化合物とアルケニル基である化合物との混合物であることがより好ましい。
1cがアルキル基である化合物とR1cがアルケニル基である化合物との割合は、原料となる脂肪酸又は脂肪酸エステルの組成によって決めることができる。アルキル基の量とアルケニル基の量の調整は、アルケニル基を有する原料の水素添加、又はR1cがアルケニル基である化合物の水素添加により行うことができる。
【0080】
前記アルケニル基に含まれる不飽和基はシス体とトランス体が存在する。トランス体に対するシス体のモル比[シス体/トランス体]は、好ましくは30/70以上99/1以下であり、アルケニル基の入手性の観点から、より好ましくは50/50以上97/3以下である。本発明において、シス体とトランス体の比はH-NMRの積分比で算出することができる。
【0081】
一般式(C1)中のp及びqは、それぞれ、2又は3の数である。処理した布吸水性保持の観点から、pは2が好ましい。(c1)成分の製造の容易性の観点から、qは2が好ましい。
一般式(C1)中のrは、繊維製品の柔軟化の点から、0以上2以下の数が好ましく、0がより好ましい。
2cは、吸水性の観点から、HO-(C2pO)-C2q基、更にHO-C基が好ましい。
mは、吸水性の観点から1または2が好ましい。
【0082】
本発明における(c1)成分は、前述のとおり一般式(C1)で表される第3級アミン化合物及びその酸塩から選ばれる1種以上の化合物であるが、本発明の繊維製品処理剤組成物のpHにより、(c1)成分のほぼ全てが酸塩の状態で繊維製品処理剤組成物中に存在していてもよい。
(c1)成分を構成する第3級アミン化合物が酸塩として存在する場合の酸としては、無機酸又は有機酸が挙げられる。
無機酸としては、塩酸、及び硫酸が挙げられる。
有機酸としては、炭素数1以上3以下のアルキル硫酸、炭素数1以上10以下の1価又は多価のカルボン酸、及び炭素数1以上20以下の1価又は多価のスルホン酸が挙げられる。有機酸の具体例としては、メチル硫酸、エチル硫酸、p-トルエンスルホン酸、(o-、m-、p-)キシレンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、グリコール酸、クエン酸、安息香酸、及びサリチル酸が挙げられる。
【0083】
(c1)成分である一般式(C1)で表されるアミン化合物の製造方法は特に制限されないが、例えば、下記一般式(C1-1)で表わされるアルカノールアミン化合物と脂肪酸とのエステル化反応、又は一般式(C1-1)で表わされるアルカノールアミン化合物と脂肪酸エステルとのエステル交換反応によって得ることができる。
前記脂肪酸としては、パーム核油由来、ヤシ油由来、牛脂、菜種油、ひまわり油由来の脂肪酸を用いることができ、脂肪酸比率を調製したものであってもよく、由来の違う脂肪酸を併用して用いてもよい。
〔HO-(C2pO)-C2qN(R3c3-n (C1-1)
〔式中、R3cは炭素数1以上3以下の炭化水素基から選ばれる基であり、nは1以上3以下の整数、p、q、rは、前記一般式(C1)と同じ意味を表す。〕
【0084】
エステル化反応の例としては、例えば、特表2000-510171号公報の8~9頁目に記載されている方法を適用することができる。
エステル交換反応の例としては、例えば、特開平7-138211号公報の段落〔0013〕~段落〔0016〕に記載の方法を適用することができる。
【0085】
〔(c2)成分〕
本発明における(c2)成分は、前記一般式(C1)で表される第3級アミン化合物の4級化物から選ばれる1種以上の化合物であり、一般式(C1)で表される第3級アミン化合物とアルキル化剤を用いた4級化反応により得ることができる。
【0086】
アルキル化剤としては、ジメチル硫酸、ジエチル硫酸、塩化メチル、臭化メチル、及びヨウ化メチル等が挙げられ、これらの中でも、塩化メチル、ジメチル硫酸及びジエチル硫酸から選ばれる1種以上が好ましい。すなわち、本発明における(c2)成分としては、一般式(C1)で表される第3級アミン化合物を、塩化メチル、ジメチル硫酸及びジエチル硫酸から選ばれる1種以上のアルキル化剤で4級化した4級化物が好ましい。
4級化反応としては、例えば、特開平7-138211号公報の段落〔0017〕~段落〔0023〕に記載の方法や、特開平11-106366号公報に記載の製造方法を適用することができる。
【0087】
(c)成分は、1種類の化合物でもよく、2種類以上の化合物の混合物であってもよい。
(c)成分が2種類以上の化合物の混合物である場合、mは、好ましくは1.2以上2.5以下の混合物を用いることができる。繊維製品の柔軟化の観点から、mは、好ましくは1.3以上、より好ましくは1.4以上であり、そして、好ましくは2.0以下、より好ましくは1.9以下である。
【0088】
前記を満たす混合物を得る上で、その原料となる一般式(C1-1)の化合物は異なる構造の化合物を混合したものを用いてもよい。また、一般式(C1-1)のnが3の化合物を脂肪酸や脂肪酸エステルと反応させてmが前記範囲の混合物を得ることも好ましい。
【0089】
〔(c2)成分に対する(c1)成分の質量比〕
本発明における(c)成分は、(c1)成分と(c2)成分との両方を含有することができる。この場合、(c)成分中の(c2)成分の含有量に対する(c1)成分の含有量の質量比[(c1)成分/(c2)成分]は、好ましくは1/99以上であり、そして、好ましくは40/60以下、より好ましくは35/65以下である。なお、混合物中の(c1)成分と(c2)成分との割合は混合物中のアミン価から求めることができる。
【0090】
〔本発明において好ましい(c)成分〕
本発明では、例えば次のようにして得られた(c)成分を用いることが好ましい。
すなわち、一般式(C1)で表される化合物として、メチルジエタノールアミン〔前記一般式(C1-1)中、R3cがメチル基であって、n=2、q=2、r=0で示される化合物である〕、及びトリエタノールアミン〔前記一般式(C1-1)中、n=3、q=2、r=0で示される化合物である〕から選ばれるアルカノールアミン(c0-1)を用い、このアルカノールアミン(c0-1)と、炭素数12以上24以下の脂肪酸又はその低級アルキルエステル(c0-2)とを、モル数の比〔(c0-1)中の水酸基のモル数/(c0-2)のモル数〕が、1/1以上1/0.5以下となるようにエステル化反応させることにより得られる第3級アミン化合物を、塩化メチル、ジメチル硫酸及びジエチル硫酸から選ばれるアルキル化剤によって4級化反応させることで得られる、(c1)成分と(c2)成分とを含む(c)成分が好ましい。なお、アルカノールアミン(c0-1)としてはトリエタノールアミンが好ましく、前記(c0-2)における低級アルキルエステルのアルキル基としては、好ましくは炭素数1以上3以下のアルキル基であり、より好ましくはメチル基である。更に、4級化に用いるアルキル化剤は、ジメチル硫酸が好ましい。さらにここで、トリアルカノールアミンを脂肪酸によりエステル化、アルキル化剤によりアルキル化することにより、4級化してアルキル化剤由来の対陰イオンと共に塩を生成する。一方、アルキル化剤による反応が進行しなかった未反応アミンは本願では(c1)成分として扱う。すなわち、アルキル化剤による4級化により、(c)成分として、(c1)、(c2)の両方の成分が生成することがある。
前述の方法により得られた(c)成分中の(c2)成分に対する(c1)成分の質量比[(c1)成分/(c2)成分]は、(c)成分の製造上の経済性の観点、及び本発明の効果と十分な柔軟性を得る観点から、好ましくは3/97以上、より好ましくは5/95以上であり、そして、好ましくは40/60以下、より好ましくは35/65以下である。また、前述の方法により得られた(c)成分においては、(c1)成分及び(c2)成分の合計が、固形分中の90質量%以上を占めることが好ましい。
【0091】
(c)成分は、その合成上、未反応の脂肪酸、未反応のアルカノールアミン、脂肪酸メチルエステル、及びその4級化物等の不純物を含んだ混合物として得ることができるが、製造方法を工夫することにより不純物を低減させることができ、本発明の効果や柔軟効果を損なわない限り、製造コストの観点から、それらの不純物を除かなくてもよい。
【0092】
また、(c)成分としては、一般式(C1)におけるmが1である化合物、mが2である化合物、及びmが3である化合物をそれぞれ含有する混合物を用いてもよい。
該混合物中のモル比[(m=1の化合物)/(m=1の化合物とm=2の化合物とm=3の化合物の合計)]は、柔軟効果の観点から、好ましくは10/100以上40/100以下である。
また、前記混合物中のモル比[(m=2の化合物)/(m=1の化合物とm=2の化合物とm=3の化合物との合計)]は、柔軟効果の観点から、好ましくは30/100以上90/100以下である。
更に、前記混合物中のモル比[(m=3の化合物)/(m=1の化合物とm=2の化合物とm=3の化合物の合計)]は、柔軟効果の観点から、好ましくは5/100以上40/100以下である。
ここで、一般式(C1)におけるmが1である化合物、mが2である化合物、及びmが3である化合物は、それぞれ、酸塩及び/又は4級化物を含む意味であってもよい。
本発明における(c)成分は、柔軟効果の観点から、前述の3つのモル比から選ばれる2つ以上のモル比を満たすことが好ましい。
【0093】
本発明の繊維製品処理剤組成物が(c)成分を含有する場合、その含有量は、組成物中、好ましくは3.0質量%以上、より好ましくは4.0質量%以上、更に好ましくは5.0質量%以上、そして、好ましくは25質量%以下、より好ましくは22質量%以下、更に好ましくは20質量%以下である。
【0094】
本発明の繊維製品処理剤組成物は、(a)成分中の香料化合物に対する(c)成分の含有量の質量比[(c)成分/(a)成分]が好ましくは80/20以上、より好ましくは85/15以上、更に好ましくは90/10以上、そして、好ましくは99.9/0.1以下、より好ましくは99.5/0.5以下、更に好ましくは99/1以下である。
【0095】
<(d)成分>
本発明の繊維製品処理剤組成物は、(d)成分として、(a)成分に内包されている香料化合物以外の香料化合物を含有することができる。
本発明においては、(a)成分のマイクロカプセル中に内包されている香料化合物と同じ香料化合物であっても、(a)成分のマイクロカプセルに内包されていない香料化合物は(d)成分として扱う。つまり、(d)成分の香料化合物は繊維製品処理剤組成物中に分散させた香料化合物であり、これらの香料化合物を外香料という場合がある。
【0096】
(d)成分として用いることができる香料化合物に特に制限はなく、(a)成分に用いられる香料化合物と同じ香料化合物を用いてもよい。(d)成分は、複数の香料化合物を含有する香料組成物として本発明の繊維製品処理剤組成物に配合することができる。
(d)成分として用いることができる香料化合物としては、例えば「香料と調香の基礎知識、中島基貴 編著、産業図書株式会社発行、2005年4月20日 第4刷」に記載の香料や特許文献等を通じて柔軟剤などに配合することが知られている香料化合物の他に、香料メーカーが独自に調製した香料成分又は調香した香料組成物そのものを使用することができる。
(d)成分としては、例えば、β-イオノン(4.4)、γ-ウンデカラクトン(3.1)、γ-ノナラクトン(2.1)、γ-メチルイオノン(4.8)、アンブロキサン(4.8)、イソEスーパー(5.2)、エチルバニリン(1.6)、エチレンブラッシレート(4.7)、オイゲノール(2.7)、カシュメラン(IFF社製)(4.5)、クマリン(1.5)、ゲラニオール(3.5)、酢酸o,t-ブチルシクロヘキシル(4.4)、酢酸シトロネリル(4.6)、酢酸ジメチルベンジルカルビニル(3.4)、サンダルマイソールコア(4.7)、ジヒドロジャスモン酸メチル(3.5)、ジヒドロミルセノール(3.5)、ジメチルテトラヒドロベンズアルデヒド(2.9)、ジャバノール(ジボダン製)(4.7)、ネロリンヤラヤラ(3.3)、ハバノライド(フィルメニッヒ製)(4.9)、フルーテート(花王株式会社)(3.6)、ペオニル(ジボダン製)(4.3)、ヘキシルシンナミックアルデヒド(4.8)、ヘリオトロピン(1.8)、メチルβ-ナフチルケトン(2.9)、メチルアンスラニレート(2.3)、ラズベリーケトン(1.5)、リモネン(4.8)、及びリリアール(4.4)を挙げることができる。なお( )内の数値はlogP値である。
【0097】
なお、本発明の繊維製品処理剤組成物は、香料化合物の希釈剤や保留剤を含有してもよい。希釈剤及び保留剤としては、ジプロピレングリコール、パルミチン酸イソプロピルエステル、ジエチルフタレート、ペンジルベンゾエート、流動パラフィン、イソパラフィン、及び油脂等を挙げることができる。
希釈剤及び保留剤を用いる場合、(d)成分と希釈剤及び保留剤との合計に対する希釈剤及び保留剤の量は、好ましくは0質量%以上20質量%以下である。なお、これら希釈剤及び保留剤は(a)成分のマイクロカプセルに内包された香料化合物にも用いることができる。
【0098】
(d)成分は、(a)成分と併用することで、従来よりも自由度の高い香料設計が可能となる。したがって(d)成分を併用した本発明の繊維製品処理剤組成物を繊維製品に処理を施した場合、例えば、フレッシュ且つリッチな香りを付与することができる。
【0099】
本発明の繊維製品処理剤組成物が(d)成分を含有する場合、その含有量は、組成物中、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.3質量%以上、更に好ましくは0.5質量%以上であり、繊維製品処理剤組成物の保存安定性(以下、保存安定性ともいう)及び他の賦香成分との香りのバランスの観点から、好ましくは2.5質量%以下、より好ましくは2.0質量%以下、更により好ましくは1.8質量%以下である。なお、繊維製品処理剤組成物中の(d)成分は、製品に合わせてその含有量を調整することができる。
【0100】
また、本発明の繊維製品処理剤組成物が(d)成分を含有する場合において、(a)成分及び(d)成分の合計の含有量は、繊維製品に対して十分に賦香する観点から、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.3質量%以上、更に好ましくは0.5質量%以上であり、保存安定性及び他の賦香成分との香りのバランスの観点から、好ましくは2.8質量%以下、より好ましくは2.5質量%以下、更に好ましくは2.0質量%以下である。
【0101】
また、本発明の繊維製品処理剤組成物(d)成分を含有する場合、(a)成分中の香料化合物に対する(d)成分の含有量の質量比[(d)成分/(a)成分]が好ましくは25/75以上、より好ましくは40/60以上、更に好ましくは50/50以上、そして、好ましくは99/1以下、より好ましくは95/5以下、更に好ましくは90/10以下である。
【0102】
<(e)成分>
本発明の繊維製品処理剤組成物は、(e)成分として、炭素数8以上24以下のアルキル基を有するポリオキシアルキレンアルキルエーテル及び、炭素数8以上24以下のアルケニル基を有するポリオキシアルキレンアルケニルエーテルから選ばれる1種以上のノニオン性界面活性剤を含有することができる。
【0103】
(e)成分としては、下記一般式(E1)で表されるノニオン性界面活性剤から選ばれる少なくとも1種が好ましい。
1e-A-〔(R2eO)p1-R3eq1 (E1)
〔式中、R1eは、炭素数8以上、好ましくは10以上、そして、24以下、好ましくは18以下、より好ましくは16以下の、アルキル基又はアルケニル基であり、R2eは、炭素数2又は3のアルキレン基、好ましくはエチレン基であり、R3eは、炭素数1以上3以下のアルキル基又は水素原子であり、p1は2以上、好ましくは5以上、より好ましくは10以上、そして、100以下、より好ましくは80以下、更に好ましくは60以下の整数であり、付加形態はランダム付加又はブロック付加のいずれでもよい。Aは-O-、-COO-、-CONH-、-NH-、-CON<又は-N<であり、Aが-O-、-COO-、-CONH-又は-NH-の場合q1は1であり、Aが-CON<又は-N<の場合q1は2である。〕
【0104】
一般式(e1)の化合物の具体例としては、以下の式(E1-1)~(E1-4)で表される化合物を挙げることができる。
1e-O-(CO)p11-H (E1-1)
〔式中、R1eは前記の意味を示す。p11は8以上、好ましくは10以上、そして、100以下、好ましくは60以下の整数である。〕
1e-O-(CO)/(CO)-H (E1-2)
〔式中、R1eは前記の意味を示す。s及びtはそれぞれ独立に2以上、好ましくは5以上、そして、40以下の整数であり、(CO)と(CO)はランダム又はブロック付加体であってもよい。〕
1e-O-(CO)x1-(CO)-(CO)x2-H (E1-3)
〔式中、R1eは前記の意味を示す。x1、y、及びx2は平均付加モル数であり、x1は1以上13以下、yは1以上4以下、x2は1以上13以下であり、(CO)と(CO)と(CO)はブロック付加体である。〕
【0105】
【化1】
【0106】
〔式中、R1eは前記の意味を示す。Bは-N<又は-CON<であり、u及びvはそれぞれ独立に0以上40以下の整数であり、u+vは5以上、そして、60以下、好ましくは40以下の整数である。R4e、R5eはそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1以上3以下のアルキル基である。〕
【0107】
本発明の繊維製品処理剤組成物が(e)成分を含有する場合、その含有量は、組成物中、好ましくは1.0質量%以上、より好ましくは1.5質量%以上、更に好ましくは2.0質量%以上、そして、好ましくは5.0質量%以下、より好ましくは4.5質量%以下、更に好ましくは4.0質量%以下である。
【0108】
また、本発明の繊維製品処理剤組成物(e)成分を含有する場合、(a)成分中の香料化合物に対する(e)成分の含有量の質量比[(e)成分/(a)成分]が好ましくは60/40以上、より好ましくは70/30以上、更に好ましくは80/20以上、そして、好ましくは99.9/0.1以下、より好ましくは99/1以下、更に好ましくは95/5以下である。
【0109】
<(f)成分>
本発明の繊維製品処理剤組成物は、保存安定性を改善する観点から(f)成分として、多価アルコールと脂肪酸とのエステルを含有してもよい。
多価アルコールと脂肪酸とのエステルとしては、炭素数3以上6以下であり、かつ3価以上6価以下の多価アルコールと、炭素数12以上22以下の脂肪酸とのエステル化合物が好ましい。
より具体的には、炭素数が好ましくは3以上、より好ましくは4以上、そして、好ましくは6以下であり、かつ、好ましくは3価以上、より好ましくは4価以上で、そして、好ましくは6価以下である多価アルコールと、炭素数が好ましくは12以上、より好ましくは14以上、更に好ましくは16以上、そして、好ましくは22以下、より好ましくは20以下の脂肪酸とのエステル化合物である。
(f)成分を構成する多価アルコールとしては、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,3,5-ペンタトリオール、エリスリトール、アラビトール、ペンタエリスリトール、ソルビタン、ソルビトール、キシリトール及びマンニトールから選ばれる1種以上が好ましく、ペンタエリスリトール及びソルビタンから選ばれる1種以上がより好ましい。
(f)成分を構成する脂肪酸としては、ラウリン酸、ミリスチン酸、ステアリン酸、及びパルミチン酸等の飽和脂肪酸、オレイン酸、エライジン酸、リノール酸、及びリノレン酸等の不飽和脂肪酸、パーム油脂肪酸、及び硬化パーム油脂肪酸の植物油由来の脂肪酸、牛脂脂肪酸及び硬化牛脂脂肪酸等の動物油由来の脂肪酸から選ばれる1種以上が好ましく、飽和脂肪酸、植物油由来の脂肪酸、及び動物油由来の脂肪酸から選ばれる1種以上がより好ましく、ステアリン酸、硬化パーム油脂肪酸、及び硬化牛脂脂肪酸から選ばれる1種以上が更に好ましい。
本発明における(f)成分としては、ペンタエリスリトールと炭素数16以上22以下の脂肪酸とのエステル化合物(以下、「ペンタエリスリトール脂肪酸エステル」ともいう)、及びソルビタンと炭素数16以上22以下の脂肪酸とのエステル化合物(以下、「ソルビタン脂肪酸エステル」ともいう)から選ばれる1種以上が好ましい。
【0110】
本発明の繊維製品処理剤組成物が(f)成分を含有する場合、(f)成分の含有量は、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.3質量%以上、更に好ましくは0.5質量%以上、より更に好ましくは0.7質量%以上、そして、好ましくは5.0質量%以下、より好ましくは4質量%以下、更に好ましくは3質量%以下である。
【0111】
<(g)成分>
本発明の繊維製品処理剤組成物は、(g)成分として、(b)成分以外の陽イオン性界面活性剤(以下、(g1)成分ともいう)、並びに両性界面活性剤(以下、(g2)成分ともいう)から選ばれる1種以上の界面活性剤を含有することができる。
【0112】
〔(g1)成分〕
本発明においては、液体繊維製品処理剤組成物の保存安定性を向上させる観点から、(g1)成分として、(b)成分以外の陽イオン性界面活性剤を用いることができる。
(g1)成分の具体例としては、窒素原子に結合する基のうち、1つ又は2つが炭素数10以上22以下のアルキル基又はアルケニル基であり、残りがヒドロキシ基を有していてもよい炭素数1以上4以下のアルキル基、ベンジル基、好ましくはメチル基である第3級アミン化合物及びその酸塩、並びに前記第3級アミン化合物の4級化物が挙げられる。これらの中でも、繊維製品処理剤組成物に殺菌効果を付与する観点から、炭素数10以上22以下のアルキル基又はアルケニル基を1つ有し、ベンジル基を1つ有する陽イオン性界面活性剤が好ましい。
前記化合物の4級化に用いるアルキル化剤としては、(b)成分において記載した化合物を用いることができる。
【0113】
(g1)成分としては、下記(I)~(IV)から選ばれる1種以上の陽イオン性界面活性剤が好ましく、更に(II)~(IV)から選ばれる陽イオン性界面活性剤が好ましい。
(I)アルキル基又はアルケニル基の炭素数が10以上22以下のジ長鎖アルキル又はアルケニルジメチルアンモニウム塩、
(II)アルキル基又はアルケニル基の炭素数が10以上22以下のモノ長鎖アルキル又はアルケニルトリメチルアンモニウム塩、
(III)アルキル基又はアルケニル基の炭素数が10以上22以下のモノ長鎖アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩
(IV)式(G1)で示されるアミン化合物の酸塩
【0114】
【化2】
【0115】
〔式中、R1gは炭素数13以上19以下のアルキル基又は炭素数13以上19以下のアルケニル基であり、R2gは炭素数1以上6以下のアルキレン基であり、R3g、R4gはそれぞれ独立して炭素数1以上3以下のアルキル基である。〕
【0116】
前記一般式(G1)で示されるアミン化合物の酸塩の酸としては、無機酸又は有機酸が挙げられる。無機酸としては、塩酸、及び硫酸が挙げられる。有機酸としては、炭素数1以上3以下のアルキル硫酸、炭素数1以上10以下の1価又は多価のカルボン酸、及び炭素数1以上20以下の1価又は多価のスルホン酸が挙げられる。有機酸の具体例としては、メチル硫酸、エチル硫酸、p-トルエンスルホン酸、(o-、m-、p-)キシレンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、グリコール酸、クエン酸、安息香酸、及びサリチル酸が挙げられる。
【0117】
(g1)成分としては、具体的には塩化ジデシルジメチルアンモニウム塩、塩化ラウリルトリメチルアンモニウム塩、塩化ミリスチルトリメチルアンモニウム塩、及び塩化ラウリルジメチルベンジルアンモニウム塩、ジメチルアミノプロピルステアリルアミド酸塩、ジメチルアミノプロピルパルミチルアミド酸塩を挙げることができる。
【0118】
〔(g2)成分〕
本発明においては、(g2)成分として、両性界面活性剤を用いることもできる。
(g2)成分としては、一般的に液体柔軟剤組成物に配合することができるものであれば特に制限はなく、例えば、アルキル(炭素数12以上22以下)アミドプロピルカルボベタイン、アルキル(炭素数12以上22以下)アミドプロピルスルホベタイン、アルキル(炭素数12以上22以下)カルボベタイン、アルキル(炭素数12以上22以下)スルホベタイン、アルキル(炭素数10以上18以下)ジメチルアミンオキシド等が挙げられる。
【0119】
本発明の繊維製品処理剤組成物が(g)成分を含有する場合、(g)成分の含有量は、繊維製品処理剤組成物の粘度を低下させる観点、及び殺菌性を向上させる観点から、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.05質量%以上、更に好ましくは0.1質量%以上、より更に好ましくは0.5質量%以上、そして、保存安定性や柔軟効果の低下を抑制する観点から、好ましくは4.0質量%以下、より好ましくは3.5質量%以下、更に好ましくは2.5質量%以下である。
【0120】
また、本発明の繊維製品処理剤組成物(g)成分を含有する場合、(a)成分中の香料化合物に対する(g)成分の含有量の質量比[(g)成分/(a)成分]が好ましくは50/50以上、より好ましくは60/40以上、更に好ましくは70/30以上、そして、好ましくは99/1以下、より好ましくは95/5以下、更に好ましくは93/7以下である。
【0121】
<(h)成分>
本発明の繊維製品処理剤組成物は、(h)成分として、水不溶性のシリコーン化合物を含有してもよい。本明細書における(h)成分の「水不溶性」とは、20℃のイオン交換水1Lに溶解するシリコーン化合物の量が1g以下であることをいう。
(h)成分の具体例としては、ジメチルポリシロキサン、4級アンモニウム変性ジメチルポリシロキサン、アミノ変性ジメチルポリシロキサン、アミド変性ジメチルポリシロキサン、エポキシ変性ジメチルポリシロキサン、カルボキシ変性ジメチルポリシロキサン、ポリオキシアルキレン変性ジメチルポリシロキサン、及びフッ素変性ジメチルポリシロキサン等のシリコーン化合物が挙げられる。
【0122】
(h)成分としては、重量平均分子量が好ましくは1,000以上、より好ましくは3,000以上、更に好ましくは5,000以上であり、そして、好ましくは1,000,000以下であり、25℃における粘度が好ましくは2mm/s以上、より好ましくは500mm/s以上、更に好ましくは1,000mm/s以上であり、そして、好ましくは1,000,000mm/s以下である、ジメチルポリシロキサン、アミノ変性ジメチルポリシロキサン、アミド変性ジメチルポリシロキサン、及びポリオキシアルキレン(ポリオキシエチレン及び/又はポリオキシプロピレン、好ましくはポリオキシエチレン)変性ジメチルポリシロキサンから選ばれる1種以上が好ましい。
なお、(h)成分における重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法により、ポリスチレンを標準物質として測定した値である。
【0123】
アミノ変性ジメチルポリシロキサンのアミノ当量(アミノ当量とは窒素原子1個当たりの分子量)は、好ましくは1,500g/mol以上、より好ましくは2,500g/mol以上、更に好ましくは3,000g/mol以上、そして、好ましくは40,000g/mol以下、より好ましくは20,000g/mol以下、更に好ましくは10,000g/mol以下である。
【0124】
本発明の繊維製品処理剤組成物が(h)成分を含有する場合、(h)成分の含有量は、繊維製品の仕上り感として、さっぱり感を与える観点から、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上であり、そして、分散性の観点から、好ましくは5質量%以下である。
また、本発明の繊維製品処理剤組成物が(h)成分を含有する場合、(h)成分の含有量は、泡立ち抑制の観点からは、好ましくは0.001質量%以上、より好ましくは0.005質量%以上、更に好ましくは0.01質量%以上、であり、そして、好ましくは1.0質量%以下、より好ましくは0.5質量%以下、更に好ましくは0.1質量%以下である。
【0125】
また、本発明の繊維製品処理剤組成物(h)成分を含有する場合、(a)成分中の香料化合物に対する(h)成分の含有量の質量比[(h)成分/(a)成分]が好ましくは80/20以上、より好ましくは85/15以上、更に好ましくは90/10以上、そして、好ましくは99.5/0.5以下、より好ましくは99/1以下、更に好ましくは95/5以下である。
【0126】
<(i)成分>
本発明の繊維製品処理剤組成物は、繊維製品処理剤組成物のpHを調整する観点から、酸剤を含有することができる。
酸剤としては、無機酸及び有機酸が挙げられ、無機酸の具体例としては、塩酸、及び硫酸が挙げられる。有機酸の具体例としては、炭素数1以上10以下の1価又は多価のカルボン酸、又は炭素数1以上20以下の1価又は多価のスルホン酸、炭素数1以上3以下のアルキル硫酸が挙げられる。より具体的には、メチル硫酸、エチル硫酸、p-トルエンスルホン酸、(o-、m-、p-)キシレンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、グリコール酸、エチレンジアミン4酢酸、クエン酸、安息香酸、及びサリチル酸が挙げられる。
これらの中でも、塩酸、及び炭素数1以上10以下の1価又は多価のカルボン酸から選ばれる酸剤が好ましく、塩酸、及びクエン酸から選ばれる酸剤がより好ましい。
本発明の繊維製品処理剤組成物が酸剤を含有する場合、その含有量は適宜調整することができ、pHが前記範囲になる範囲であって、保存安定性を損なわない程度が好ましい。
【0127】
<(j)成分>
本発明の繊維製品処理剤組成物は、柔軟効果を向上させる観点から、(c)成分の製造に用いた脂肪酸や(i)成分としての脂肪酸の他に、(j)成分として、脂肪酸を含有してもよい。
脂肪酸は、(c)成分の合成時の未反応物や、(c)成分の分解物として含有してもよい。
脂肪酸の具体例としては、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、パルミトレイン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、エルカ酸、及びベヘニン酸等の炭素数12以上22以下の飽和又は不飽和脂肪酸が好ましく、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸及びリノール酸から選ばれる脂肪酸がより好ましい。
【0128】
本発明の液体繊維製品処理剤組成物が(j)成分を含有する場合、(j)成分の含有量は、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.05質量%以上、更に好ましくは0.1質量%以上、そして、好ましくは0.3質量%以下、より好ましくは0.2質量%以下、更に好ましくは0.1質量%以下である。
【0129】
<(k)成分>
本発明の繊維製品処理剤組成物は、保存安定性や粘度の観点から(k)成分として、水溶性有機溶剤を含有することができる。
水溶性有機溶剤としては、繊維製品処理剤組成物に用いられる一般的な水溶性有機溶剤が挙げられる。なお、(k)成分における「水溶性有機溶剤」とは、20℃の脱イオン水100gに対して20g以上溶解する有機溶剤をいう。
水溶性有機溶剤の具体例としては、プロピレングリコール、エチレングリコール、グリセリン、ジエチレングリコール、モノエチレングリコールモノフェニルエーテル、ジエチレングリコールモノフェニルエーテル、トリエチレングリコールモノフェニルエーテル、イソプロパノール、及びエタノール等を挙げることができる。これらの中でも、エチレングリコール、エタノール、及びプロピレングリコールから選ばれる水溶性有機溶剤が好ましい。
【0130】
本発明の繊維製品処理剤組成物が他の成分によって、十分に安定化され粘度が低い場合は、(k)成分である水溶性有機溶剤を含有しなくてもよい。
本発明の繊維製品処理剤組成物が(k)成分を含有する場合、(k)成分の含有量は、好ましくは15質量%以下、より好ましくは10質量%以下、更に好ましくは5質量%以下、そして、好ましくは0.3質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、更に好ましくは1.0質量%以上である。
【0131】
また、本発明の繊維製品処理剤組成物(k)成分を含有する場合、(a)成分中の香料化合物に対する(k)成分の含有量の質量比[(k)成分/(a)成分]が好ましくは50/50以上、より好ましくは60/40以上、更に好ましくは70/30以上、そして、好ましくは99.9/0.1以下、より好ましくは99/1以下、更に好ましくは95/5以下である。
【0132】
<(l)成分>
本発明の繊維製品処理剤組成物は、繊維製品処理剤組成物の長期保存時の色相変化や染料の褪色及び香りの変質を抑制する観点から、(l)成分として、キレート剤を用いることが好ましい。なお、本発明における(l)成分は前記酸剤としての機能も有していてもよい。
【0133】
キレート剤の具体例としては、エタン-1-ヒドロキシ-1,1-ジホスホン酸、エチレンジアミン四酢酸、メチルグリシン二酢酸、ヒドロキシエチルイミノ二酢酸、エチレンジアミン二コハク酸、L-グルタミン酸-N,N-二酢酸、N-2-ヒドロキシエチルイミノ二酢酸、クエン酸、コハク酸、及びそれらの塩が挙げられる。塩としては、アルカリ金属塩、アンモニウム塩が好ましく、ナトリウム塩、カリウム塩がより好ましい。
【0134】
本発明の繊維製品処理剤組成物が(l)成分を含有する場合、(l)成分の含有量は、好ましくは0.001質量%以上、より好ましくは0.005質量%以上であり、そして、好ましくは2質量%以下、より好ましく1.5質量%以下、更に好ましくは1.0質量%以下、より更に好ましくは0.5質量%以下、より更に好ましくは0.1質量%以下である。
【0135】
また、本発明の繊維製品処理剤組成物(l)成分を含有する場合、(a)成分中の香料化合物に対する(l)成分の含有量の質量比[(l)成分/(a)成分]が好ましくは0.1/99.9以上、より好ましくは0.5/99.5以上、更に好ましくは1/99以上、そして、好ましくは5/95以下、より好ましくは10/90以下、更に好ましくは20/80以下である。
【0136】
なお、(i)成分の酸剤、(j)成分の脂肪酸、(l)成分のキレート剤として、同一の化合物を用いてもよいし、各々異なる化合物を用いてもよい。長期保存時の安定性の点で異なる化合物を用いることが好ましい。
【0137】
<(m)成分>
本発明の繊維製品処理剤組成物は、(m)成分として、(a)成分のマイクロカプセルに内包された香料化合物、又は(b)成分の香料前駆体以外の香料化合物を含有することができる。
(m)成分は、(a)成分、(b)成分及び(d)成分と併用することで、従来よりも自由度の高い香料設計が可能となる。(m)成分には特表平8-502522号公報記載のアルコール系香料化合物と、脂肪族モノカルボン酸又は脂肪族ジカルボン酸とのエステル化合物を用いることができる。
【0138】
本発明の繊維製品処理剤組成物が(m)成分を含有する場合、(m)成分の含有量は、好ましくは0.15質量%以上、より好ましくは0.3質量%以上、更に好ましくは0.45質量%以上、そして、好ましくは質量0.65%以下、より好ましくは0.6質量%以下、更に好ましくは0.55質量%以下である。なお、(m)成分が香料前駆体を含む場合、(m)成分の含有量は、(m)成分の香料前駆体を構成する香料化合物の質量にて計算する。
【0139】
本発明の繊維製品処理剤組成物が(m)成分を含有する場合、(b)成分、(d)成分及び(m)成分の合計含有量は、繊維製品に対して十分に賦香する観点から、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.3質量%以上、更に好ましくは0.5質量%以上、そして、保存安定性及び香りの強度の嗜好性のバランスの観点から、好ましくは3.0質量%以下、より好ましくは2.5質量%以下、更に好ましくは2.0質量%以下である。
なお、(m)成分を含む場合、前記合計の含有量における(m)成分の質量は、(m)成分の香料前駆体を構成する香料化合物の質量にて計算する。
【0140】
<(n)成分>
本発明の繊維製品処理剤組成物においては、基材の劣化を抑制する観点から、ブチルヒドロキシトルエン(BHT)等の酸化防止剤を用いることができ、また、審美や長期保存時の着色を防ぐ観点から、繊維製品処理剤組成物において一般的に用いられる染料及び顔料を用いることもできる。更に、プロキセルの商品名で市販されている防菌、防黴剤を用いることもできる。また、安息香酸及びその塩も防菌、防黴剤として用いることもできる。
【0141】
本発明の繊維製品処理剤組成物が(n)成分を含有する場合、(n)成分の含有量は、基材の劣化を抑制する観点から、好ましくは0.005質量%以上、より好ましくは0.01質量%以上、更に好ましくは0.02質量%以上、そして、好ましくは0.2質量%以下、より好ましくは0.1質量%以下、更に好ましくは0.05質量%以下である。
【0142】
また、本発明の繊維製品処理剤組成物(n)成分を含有する場合、(a)成分中の香料化合物に対するに対する(n)成分の含有量の質量比[(n)成分/(a)成分]が好ましくは0.1/99.9以上、より好ましくは0.5/99.5以上、更に好ましくは1/99以上、そして、好ましくは20/80以下、より好ましくは15/85以下、更に好ましくは10/90以下である。
【0143】
<(o)成分>
本発明の繊維製品処理剤組成物は、保存安定性を向上させる観点から(o)成分として、無機塩を含有することができる。
無機塩としては、保存安定性を向上させる観点から、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、及び塩化マグネシウムから選ばれる1種以上が好ましい。
本発明の繊維製品処理剤組成物が(o)成分を含有する場合、その含有量は、繊維製品処理剤組成物の分散性を向上させる観点から、組成物中、好ましくは0.005質量%以上、より好ましくは0.01質量%以上、更に好ましくは0.02質量%以上、そして、繊維製品処理剤組成物の保存安定性を向上する観点から、好ましくは1.0質量%以下、より好ましくは0.5質量%以下、更に好ましくは0.3質量%以下である。
【0144】
また、本発明の繊維製品処理剤組成物(o)成分を含有する場合、(a)成分中の香料化合物に対するに対する(o)成分の含有量の質量比[(o)成分/(a)成分]が好ましくは0.1/99.9以上、より好ましくは0.5/99.5以上、更に好ましくは1/99以上、そして、好ましくは50/50以下、より好ましくは40/60以下、更に好ましくは30/70以下である。
【0145】
<(p)成分>
本発明の繊維製品処理剤組成物においては、基材の劣化を抑制する観点から、ブチルヒドロキシトルエン(BHT)等の酸化防止剤を用いることができ、また、審美や長期保存時の着色を防ぐ観点から、繊維製品処理剤組成物において一般的に用いられる染料及び顔料を用いることもできる。更に、プロキセルの商品名で市販されている防菌、防黴剤を用いることもできる。また、安息香酸及びその塩も防菌、防黴剤として用いることもできる。
【0146】
本発明の繊維製品処理剤組成物が(p)成分を含有する場合、その含有量は、繊維製品処理剤組成物の分散性を向上させる観点から、組成物中、好ましくは0.001質量%以上、より好ましくは0.005質量%以上、更に好ましくは0.01質量%以上、そして、繊維製品処理剤組成物の保存安定性を向上する観点から、好ましくは3質量%以下、より好ましくは1質量%以下、更に好ましくは0.5質量%以下である。
【0147】
<その他の成分等>
本発明の繊維製品処理剤組成物は、水を含有することが好ましい。水を含有する液体組成物であることが好ましい。水は、通常、組成物の残部であり、成分の合計が100質量%となるように用いられる。本発明の繊維製品処理剤組成物は、水を、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、そして、好ましくは95質量%以下、より好ましくは90質量%以下含有する。
【0148】
本発明の繊維製品処理剤組成物は、30℃でのpHが、好ましくは2.0以上、より好ましくは2.2以上、そして、好ましくは4.0以下、より好ましくは3.8以下である。
【0149】
本発明の繊維製品処理剤組成物は、繊維製品用として好適であり、繊維製品としては、衣料、布帛、寝具、タオル等が挙げられる。
本発明の繊維製品処理剤組成物は、繊維製品の柔軟処理に用いることができる。例えば、本発明の繊維製品処理剤組成物は、繊維製品用柔軟剤組成物、更に繊維製品用液体柔軟剤組成物であってよい。
【0150】
本発明の繊維製品処理剤組成物は、(a)~(p)成分及び水を混合することで製造できる。
本発明の繊維製品処理剤組成物は、例えば、工程1及び工程2を含む方法により(a)成分を製造し、得られた(a)成分を、(b)~(p)成分及び水と混合して製造することができる。これらの製造方法では前記した任意成分を適宜混合することができる。
本発明の繊維製品処理剤組成物の製造方法では、本発明の繊維製品処理剤組成物で記載した態様を適宜適用することができる。
本発明の繊維製品処理剤組成物の製造方法では、本発明の繊維製品処理剤組成物で記載した各成分の含有量、及び各質量比の規定について、含有量を混合量に置き換えて、本発明の繊維製品処理剤組成物の製造方法に適用できる。
【0151】
<繊維製品の処理方法>
本発明は、(a)~(p)成分及び水を混合して得た処理液を繊維製品と接触させる、繊維製品の処理方法を提供する。
本発明の繊維製品の処理方法で用いられる(a)~(p)成分は、本発明の繊維製品処理剤組成物に記載の(a)~(p)成分を使用することができる。(a)~(p)成分などの好ましい態様も、本発明の繊維製品処理剤組成物と同じである。また前記処理液は、本発明の繊維製品処理剤組成物で記載した任意成分を適宜使用することができる。本発明の繊維の処理方法には、本発明の繊維製品処理剤組成物で述べた事項を適宜適用することができる。
【0152】
本発明の繊維製品の処理方法において、前記処理液は、前記本発明の繊維製品処理剤組成物と水とを混合して得られたものであることが好ましい
【0153】
本発明は、湿潤状態の繊維製品に機能性成分を付着させること、前記繊維製品を乾燥させること、前記繊維製品の乾燥に伴い機能性成分を繊維中に浸透させること、を含む繊維製品の処理方法であって、乾燥後の水との接触により繊維中の機能性成分を放出する繊維製品を得る、繊維製品の処理方法を提供する。
【0154】
例えば、本発明は、湿潤状態の繊維製品に香料化合物を付着させること、前記繊維製品を乾燥させること、前記繊維製品の乾燥に伴い香料化合物を繊維中に浸透させること、を含む繊維製品の処理方法であって、乾燥後の水との接触により繊維中の香料化合物を放出する繊維製品を得る、繊維製品の処理方法を提供する。
【0155】
例えば、本発明は、湿潤状態の繊維製品にシリカを構成成分として含むシェルと該シェルの内部に香料化合物を含む香料組成物を含むコアとを有するマイクロカプセル(すなわち、本発明の(a)成分)を付着させること、前記繊維製品を乾燥させること、前記繊維製品の乾燥に伴い香料化合物を繊維中に浸透させること、を含む繊維製品の処理方法であって、前記繊維製品の乾燥に伴い前記マイクロカプセルはシェルが崩壊して香料化合物を放出して香料化合物を繊維中に浸透させ、乾燥後の水との接触により繊維中の香料化合物を放出する繊維製品を得る、繊維製品の処理方法を提供する。
【実施例0156】
実施例及び比較例で使用した成分を以下に示す。
【0157】
<(a)成分>
香料組成物(A)として表1に記載した香料組成物を調製した。香料組成物(A)を包含するシリカカプセル(a1)、(a2)を下記合成例1に従って調製した。
【0158】
【表1】
【0159】
〔合成例1:シリカカプセル(a1)の合成〕
(工程1)
0.91gのコータミン60W(商品名、花王株式会社製、セチルトリメチルアンモニウムクロライド、有効分30質量%)を224.13gのイオン交換水で希釈して水相成分を得た。この水相成分に、60.03gの前記表1に示す配合割合の香料組成物(A1)又は香料組成物(A2)と15.10gのテトラエトキシシラン(以下、「TEOS」ともいう)を混合して調製した油相成分を加え、ホモミキサー(HsiangTai製、モデル:HM-310、以下同様)を用いて回転数9,000rpmで10分間混合液を乳化し、乳化液を得た。この時の乳化滴のメジアン径D50は1.3μmであった。
得られた乳化液のpHを1質量%硫酸水溶液を用いて3.7に調整した後、撹拌翼と冷却器を備えたセパラブルフラスコに移し、液温を30℃に保ちつつ、24時間撹拌し、表3の香料組成物(A1)又は香料組成物(A2)からなるコアとシリカからなる第一シェルとを有するそれぞれのシリカカプセルを含有する水分散体を得た。
【0160】
(工程2)
工程1で得られた水分散体280.0gに対し、8.4gのTEOSを420分かけて添加した。滴下後、更に17時間撹拌させて第1シェルを包接する第二シェルを形成し、表3の香料組成物(A1)又は香料組成物(A2)が非晶質シリカで内包されたシリカカプセル(a1)および(a2)を含有する水分散体を得た。各シリカカプセルのメジアン径D50は2.1μmであった。乳化滴及びシリカカプセルのメジアン径D50は、レーザ回折/散乱式粒子径分布測定装置「LA-960」(商品名、株式会社堀場製作所製)を用いて測定した。測定はフローセルを使用し、媒体は水、屈折率は1.40-0iに設定した。乳化液又はシリカカプセルを含む水分散体をフローセルに添加し、透過率が90%付近を示した濃度で測定を実施し、体積基準でメジアン径D50を求めた。なお、第一シェルの厚さは約5nmであり、第二シェルの厚さは5~30nmであった。
【0161】
<(b)成分>
〔合成例2:b-1の合成〕
ラウリン酸とエチルバニリンとのエステルの製造
窒素雰囲気下、300mLの四つ口フラスコに、ラウリン酸クロリド8.95g(0.041mol)、ジクロロメタン40mLを入れ、0℃に冷却した。一方、100mLの滴下ロートに、エチルバニリン6.80g(0.041mol)、トリエチルアミン4.35g(0.043mol)、ジクロロメタン40mLを入れた。滴下ロートより反応温度が-5℃~0℃に保たれるようフラスコに40分かけて滴下を行った。滴下終了後、室温(25℃)で2時間撹拌を行った。フラスコに飽和塩化アンモニウム水溶液10mLを添加し、反応を停止した。ジエチルエーテル150mLを添加し、生成した白色固体をろ過で除去し、ろ液を分液ロートに移した。分液ロートにイオン交換水100mLを添加し、ジエチルエーテル50mLで水層から3回抽出を行った。抽出溶液を集め、飽和食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで溶液を乾燥した。溶媒を減圧除去後、淡黄色固体のラウリン酸とエチルバニリンとのエステル14.20g(収率99%)を得た。
【0162】
以下にNMR及びIRの測定結果を示す。
NMR(H、400MHz)
0.88(t、J=7Hz、3H)、1.20~1.50(m、19H)、1.78(quint.、J=7Hz、2H)、2.59(t、J=7Hz、2H)、4.13(t、J=7Hz、2H)、7.20(d、J=8Hz、1H)、7.46(d、J=8Hz、2H)、9.93(s、1H)
IR(KBr):2918、2850、1763、1693、1273、1115、742cm-1
【0163】
〔合成例3:b-2の合成〕
ラウリン酸とエチルマルトールとのエステルの製造
窒素雰囲気下、300mLの四つ口フラスコに、ラウリン酸クロリド10.00g(0.046mol)、ジクロロメタン45mLを入れ、0℃に冷却した。一方、100mLの滴下ロートに、エチルマルトール6.41g(0.046mol)、トリエチルアミン4.86g(0.048mol)、ジクロロメタン45mLを入れた。滴下ロートより反応温度が-5℃~0℃に保たれるようフラスコに30分かけて滴下を行った。滴下終了後、室温(25℃)で1時間撹拌を行った。フラスコに飽和塩化アンモニウム水溶液10mLを添加し、反応を停止した。ジエチルエーテル150mLを添加し、生成した白色固体をろ過で除去し、ろ液を分液ロートに移した。分液ロートにイオン交換水100mLを添加し、ジエチルエーテル50mLで水層から3回抽出を行った。抽出溶液を集め、飽和食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで溶液を乾燥した。溶媒を減圧除去後、淡黄色固体のラウリン酸とエチルマルトールとのエステル14.74g(収率100%)を得た。
【0164】
以下にNMR及びIRの測定結果を示す。
NMR(H、400MHz)
0.88(t、J=7Hz、3H)、1.20~1.45(m、19H)、1.75(quint.、J=7Hz、2H)、2.59(m、4H)、6.39(d、J=6Hz、1H)、7.69(d、J=6Hz、1H)
IR(KBr):2923、2854、1768、1658、1160、1133、1106、825cm-1
【0165】
<(c)成分>
〔合成例4:(c)-Aの製造〕
(c)-A成分として、トリエタノールアミンと後述する組成のR1cCOOHで表される脂肪酸のエステルの4級化物を調製した。始めに一般式(C1)のR1cを下記組成の脂肪酸のアシル基とするエステルを合成した。すなわちトリエタノールアミンと、後述する組成のR1cCOOHで表される脂肪酸を、反応モル比(脂肪酸/トリエタノールアミン)が1.65/1で、エステル化反応させ、一般式(C1)で表されるアミン化合物を含むエステル化反応物を得た。
エステル化反応物中には、未反応の脂肪酸が5質量%含まれていた。エステル化反応物中のアミン化合物のアミンに対して、メチル基が0.96等量となるように、ジメチル硫酸で4級化反応を行った後、エタノールを添加した。以上の様にして4級化物((c)-A)を含有する反応物を調製した。
【0166】
得られた反応物をHPLC法で各成分の組成比を分析し、臭化テトラオクチルアンモニウムを内部標準物質として使用し定量した結果、得られた反応物は、一般式(C1)のメチル硫酸塩である(c1)成分を12質量%、4級化物である(c2)成分を75質量%、エタノール10質量%、未反応脂肪酸2%、微量のトリエタノールアミン4級化物及びその他微量成分を含んでいた。
(c1)成分は一般式(C1)においてmが1又は2又は3、rが0、qが2、R2cがCOHである化合物である。また、(c2)成分のうち一般式(C1)においてmが1,rが0、qが2、R2cがCOHである化合物がメチル化され対イオンがメチル硫酸イオンである化合物が(c2)成分中28質量%、(c2)成分のうち一般式(C1)においてmが2,rが0、qが2、R2cがCOHである化合物がメチル化され対イオンがメチル硫酸イオンである化合物が(c2)成分中56質量%、(c2)成分のうち一般式(C1)においてmが3,rが0、qが2、R2cがCOHである化合物がメチル化され対イオンがメチル硫酸イオンである化合物が(c2)成分中16質量%であった。また4級化率は80質量%であった。
【0167】
なおc-(A)成分を製造するための反応に用いた脂肪酸R1cCOOHの組成を以下に示す。
パルミチン酸:45質量%
ステアリン酸:25質量%
オレイン酸:27質量%
リノール酸:3質量%
前記組成は、原料に使用した脂肪酸をガスクロマトグラフィーで組成分析し、各脂肪酸の面積%を質量%とみなした。
なお表3中の組成物中の(c)-Aの配合量の数値は、上記の(c1)成分および(c2)成分の合計濃度に換算している。
【0168】
〔合成例5:(c)-Bの製造〕
(c)-B成分として、トリエタノールアミンと後述する組成のR1cCOOHで表される脂肪酸のエステルの4級化物を調製した。始めに一般式(C1)のR1cを下記組成の脂肪酸のアシル基とするエステルを合成した。すなわち、トリエタノールアミンと、後述する組成のR1cCOOHで表される脂肪酸を、反応モル比(脂肪酸/トリエタノールアミン)が1.87/1で、エステル化反応させ、一般式(C1)で表されるアミン化合物を含むエステル化反応物を得た。
エステル化反応物中には、未反応の脂肪酸が1質量%含まれていた。エステル化反応物中のアミン化合物のアミンに対して、メチル基が0.96等量となるように、ジメチル硫酸で4級化反応を行った後、エタノールを添加した。以上の様にして4級化物((c)-B)を含有する反応物を調製した。
【0169】
得られた反応物をHPLC法で各成分の組成比を分析し、臭化テトラオクチルアンモニウムを内部標準物質として使用し定量した結果、得られた反応物は、一般式(C1)のメチル硫酸塩である(c1)成分を17質量%、4級化物である(c2)成分を66質量%、エタノール15質量%、未反応脂肪酸1質量%、微量のトリエタノールアミン4級化物及びその他微量成分を含んでいた。
(c1)成分は一般式(C1)においてmが1又は2又は3、rが0、qが2、R2cがCOHである化合物である。またc2成分のうち一般式(C1)において、mが1,rが0、qが2、R2cがCOHである化合物がメチル化され対イオンがメチル硫酸イオンである化合物が(c2)成分中22質量%、一般式(C1)において、mが2,rが0、qが2、R2cがCOHである化合物がメチル化され対イオンがメチル硫酸イオンである化合物が(c2)成分中58質量%、mが3,rが0、qが2、R2cがCOHである化合物がメチル化され対イオンがメチル硫酸イオンである化合物が(c2)成分中20質量%であった。また4級化率は80質量%であった。
【0170】
なお(c)-B成分を製造するための反応に用いた脂肪酸R1cCOOHの組成を以下に示す。
オレイン酸:80質量%
リノール酸:10質量%
リノレン酸:2質量%
ステアリン酸:2質量%
パルミチン酸:6質量%
前記組成は、原料に使用した脂肪酸をガスクロマトグラフィーで組成分析し、各脂肪酸の面積%を質量%とみなした。
なお表3中の組成物中の(c)-Bの配合量の数値は、上記の(c1)成分および(c2)成分の合計濃度に換算している。
【0171】
<(d)成分>
表2に記載の香料(d1)を用いた。
【0172】
【表2】
【0173】
<(e)成分>
(e)成分として、ラウリルアルコールにエチレンオキサイドを平均30モル付加させた化合物、すなわち、一般式(e1-1)においてR1eが直鎖の炭素数12のアルキル基であって酸素原子と結合するR1eの炭素原子が第1級炭素原子であり、p11が30であるノニオン性界面活性剤(e1)を用いた。
【0174】
<(g)成分>
(g)成分として、ジメチルアミノプロピルステアリルアミド酸塩(g1)を用いた。
【0175】
<(h)成分>
下記合成例5で製造した、ジメチルポリシロキサンの水性エマルジョン(h1)を用いた。
〔合成例5:(h1)成分の合成〕
平均付加モル数5モルのポリオキシエチレンラウリルエーテル5gを、ジメチルポリシロキサン(25℃における粘度500,000mm/s)300gに高せん断力をかけながら添加し、さらに10分間、高せん断力で攪拌し続けた。その後、イオン交換水を30g添加し、次に平均付加モル数2モルのポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム2g、平均付加モル数40モルのポリオキシエチレンミリスチルエーテル15gを加え、さらに高せん断力下、攪拌を30分間続け、その後、水を248g加えて攪拌し、ジメチルポリシロキサンの水性エマルジョン〔(h1)〕を得た。(h1)中の乳化粒子の体積平均粒径は500nmであった。また、(h1)中のジメチルポリシロキサンの含有量は50質量%であった。体積平均粒径は水性エマルジョンをエタノール中に分散させ、電気泳動光散乱光度計(大塚電子(株)製、型式ELS-8000)を用いて、20℃で測定した。
【0176】
<(k)成分>
(k)成分として以下の2種類の化合物を用いた。
(k1):プロピレングリコール
(k2):エチレングリコール
【0177】
<(l)成分>
(l)成分としてメチルグリシン二酢酸3ナトリウム(l1)を用いた。
【0178】
<(n)成分>
(n)成分としてプロキセルBDN(アーチ・ケミカル・ジャパン社製、n1)を用いた。
【0179】
<(o)成分>
(o)成分として塩化カルシウム(o1)を用いた。
【0180】
<(i)成分>
塩酸を用いた。
【0181】
<実施例及び比較例>
〔繊維製品処理剤組成物の調製〕
表3に示す配合組成となるように各成分を混合することにより、繊維製品処理剤組成物を調製した。具体的には、以下の通りである。なお、表中の組成の質量%は、有効分の質量%である。
300mLビーカーに、繊維製品処理剤組成物のできあがり量が200gとなるのに必要な量の85質量%に相当する量のイオン交換水と、場合により(b)成分、(e)成分、(h)成分、(k)成分、(l)成分、(n)成分及び(i)成分として塩酸を入れ、ウォーターバスを用いてイオン交換水の温度を60±2℃に調温した。水層中に添加した成分がイオン交換水中に均一に溶解するように、必要に応じて撹拌羽根を用いて撹拌することにより混合液を得た。なお、撹拌羽根としては、直径が5mmの撹拌棒の回転中心軸を基準として、長辺が90度方向になるように配置された撹拌羽根であって、羽根の数3枚、羽根の長辺/短辺=3cm/1.5cm、回転面に対して45度の角度で羽根が設置されたものを用いた。
【0182】
60±2℃の温度に調温した混合液を、前記撹拌羽根で撹拌(300rpm)した。これに、65℃で加熱溶解させた(c)成分及び、場合により(g)成分を3分間掛けて投入し、投入終了後、15分間撹拌した。
次に、5℃のウォーターバスを用いて、混合液の温度が30±2℃になるまで冷却した。これに、(a)成分、場合により(d)成分及び(o)成分を順次投入し、5分間撹拌した。更に、できあがり質量(200g)となるようにイオン交換水を加え、5分間撹拌して繊維製品処理剤組成物を得た。なおpHは、適宜NaOH水溶液にて調整した。
液体繊維製品処理剤組成物のpHは以下のようにして測定した。
pHメーター(HORIBA製 pHメータ D-51)にpH測定用複合電極(HORIBA製 汎用スリーブ型)を接続し、電源を投入した。pH電極内部液としては、飽和塩化カリウム水溶液(3.33mol/L)を使用した。
次に、pH1.68標準液(しゅう酸塩標準液)、pH4.01標準液(フタル酸塩標準液)、pH6.86(中性リン酸塩標準液)、をそれぞれ100mlビーカーに充填し、30℃の恒温槽に30分間浸漬した。恒温に調整された標準液にpH測定用電極を3分間浸し、pH6.86→pH4.01→pH1.68の順に校正操作を行った。なおアルカリ領域を測定する場合はpH1.68の標準液の代わりに、pH9.18標準液(ホウ酸塩標準液)を使用して校正する。
試料を100mlビーカーに充填し、30℃の恒温槽内にて30℃に調整した。恒温に調整された試料にpH測定用電極を3分間浸し、pHを測定した。
【0183】
得られた繊維製品処理剤組成物について可視光透過率を測定した。具体的には、測定セルとして光路長10mmのガラスセルを使用し、対照セルにイオン交換水を入れ、紫外可視分光光度計(島津製作所製のUV-2500PC)を用いて測定した。実施例及び比較例で得られた繊維製品処理剤組成物の可視光線透過率(波長660nm)は、全て10%未満であり、乳濁型の繊維製品処理剤組成物であった。
【0184】
<香り評価>
あらかじめ、市販の弱アルカリ性洗剤(花王株式会社、アタック)を用いて、肌着(グンゼ株式会社、紳士用丸首半袖シャツ、Lサイズ)17枚を株式会社日立製作所製全自動洗濯機NW-6CYで5回洗浄を繰り返し、室内乾燥することによって過分の薬剤を除去した。1回ごとの洗浄条件は、洗剤濃度0.0667質量%、水道水47L、水温20℃、洗浄10分、ためすすぎ2回、脱水6分とした。
【0185】
パナソニック株式会社製電気バケツN-BK2-Aに、4Lの水道水に上記保存条件を経た繊維製品処理剤組成物を0.867g(10g/肌着1.5kg)投入し、さらに上述の方法で洗濯した肌着1枚を入れて、5分間撹拌した。その後、液体柔軟剤組成物で仕上げた肌着を株式会社日立製作所製二槽式洗濯機の脱水槽で3分脱水を行ってから、20℃、40%RHの部屋にハンガーで吊るして24時間乾燥した。1つの液体柔軟剤組成物につき、この操作を3回行い、液体柔軟剤組成物で仕上げた肌着を5枚ずつ用意した。
【0186】
香りの実効感の評価は以下の方法で行った。
用意した肌着のうち1枚を畳んで、20℃/60%RHの部屋に3日間保管した。保管した肌着から20cm×20cmの大きさの布を裁断し、香り評価に用いた。評価方法はまず乾燥状態で香りを嗅いで、その後スプレーを用いて布を水で10-20%o.w.f湿潤させた後に布を4つ折りにした。数秒静置した後に布を開いて折り目の交点の香りを嗅ぎ、乾燥時と湿潤時の香り強度の差異と香りの表現力を評価し、水分発香の実効感とした。評価は、香りを評価する専門のパネラー5人によって行った。
評価は表3に記載の比較例2の処方で処理したサンプルをリファレンス(点数1)とし、下記の基準で行い、5人の評価の平均値を評価結果とした。
<評価基準>
香り強度の差異
点数3:リファレンスと比較して、香り強度の差異を感じる。
点数2:リファレンスと比較して、やや香り強度の差異を感じる。
点数1:リファレンスと比較して、同等の香り強度の差異を感じる。
<評価基準>
香りの表現力
点数3:リファレンスと比較して、よりリッチ且つフレッシュな香りを感じる。
点数2:リファレンスと比較して、ややリッチ且つフレッシュな香りを感じる。
点数1:リファレンスと比較して、同等のリッチ且つフレッシュな香りを感じる。
【0187】
【表3】
【0188】
比較例2に示す(a)成分を含まない組成物は、実施例、比較例の中で最も香りの実効感が低く、これをリファレンス(点数1)とした。(a)成分を含むが、(b)成分を含まない比較例1は比較例2と比べて、実効感は高かった。
一方、(a)成分、(b)成分共に含む実施例1~8は、いずれも比較例1及び2より実行感が高かった。