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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024019952
(43)【公開日】2024-02-14
(54)【発明の名称】ノイズフィルタ及び冷凍サイクル装置
(51)【国際特許分類】
   H03H 7/09 20060101AFI20240206BHJP
   H03H 7/06 20060101ALI20240206BHJP
   F25B 49/02 20060101ALI20240206BHJP
【FI】
H03H7/09 A
H03H7/06
F25B49/02 D
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022122753
(22)【出願日】2022-08-01
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2024-01-24
(71)【出願人】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】弁理士法人新樹グローバル・アイピー
(72)【発明者】
【氏名】植田 成重
(72)【発明者】
【氏名】福島 輝久
(72)【発明者】
【氏名】中谷 和寛
【テーマコード(参考)】
5J024
【Fターム(参考)】
5J024AA01
5J024BA01
5J024CA06
5J024CA14
5J024EA09
5J024FA04
(57)【要約】
【課題】コモンモードチョークコイルを用いるπ型のノイズフィルタにおいて、接地されるコンデンサによる電磁障害の悪化を簡単な構成で抑制する。
【解決手段】ノイズフィルタ50の抵抗器54は、コモンモードチョークコイル51の第1入力端子51aと接地線ECの間及び第2入力端子51bと接地線ECの間に配置されている。抵抗器54は、第1前段コンデンサ52または第2前段コンデンサ53を通って、コモンモードチョークコイル51の第1入力端子51a及び第2入力端子51bと第1出力端子51x及び第2出力端子51yとの間に流れる電流が、抵抗器54を介して流れるように設けられている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
接地線(EC)と、
電圧が印加される第1電源端子(PT1)と第2電源端子(PT2)に接続された第1入力端子(51a)と第2入力端子(51b)、及び第1出力端子(51x)と第2出力端子(51y)を有するコモンモードチョークコイル(51)と、
前記コモンモードチョークコイルの前記第1入力端子と前記接地線との間に接続された第1前段コンデンサ(52)と、
前記コモンモードチョークコイルの前記第2入力端子と前記接地線との間に接続された第2前段コンデンサ(53)と、
前記コモンモードチョークコイルの前記第1出力端子と前記接地線との間に接続された第1後段コンデンサ(55)と、
前記コモンモードチョークコイルの前記第2出力端子と前記接地線との間に接続された第2後段コンデンサ(56)と、
前記第1入力端子と前記接地線の間及び前記第2入力端子と前記接地線の間に配置され、または前記第1出力端子と前記接地線の間及び前記第2出力端子と前記接地線の間に配置されている抵抗器(54)と
を備え、
前記抵抗器は、前記第1前段コンデンサまたは前記第2前段コンデンサを通って、前記第1入力端子及び前記第2入力端子と前記第1出力端子及び前記第2出力端子との間に流れる電流が、前記抵抗器を介して流れるように設けられている、ノイズフィルタ(50)。
【請求項2】
前記抵抗器は、前記第1入力端子と前記接地線の間及び前記第2入力端子と前記接地線の間に配置されている、
請求項1に記載のノイズフィルタ(50)。
【請求項3】
前記抵抗器は、厚膜チップ抵抗器、金属板チップ抵抗器またはセラミック抵抗器である、
請求項1または請求項2に記載のノイズフィルタ(50)。
【請求項4】
前記第1前段コンデンサと並列に接続されているサージアブソーバ(58)を備え、
前記第1電源端子から前記サージアブソーバを経由して前記接地線に至る経路が、前記第1電源端子から前記第1前段コンデンサを経由して前記接地線に至る経路よりも短い、
請求項1または請求項2に記載のノイズフィルタ(50)。
【請求項5】
前記サージアブソーバと接地の間の前記接地線の抵抗が、前記第1前段コンデンサと接地の間の前記接地線の抵抗よりも小さい、
請求項4に記載のノイズフィルタ(50)。
【請求項6】
前記抵抗器に直列に接続されるチップフェライトビーズ(FB)を備える、
請求項1または請求項2に記載のノイズフィルタ(50)。
【請求項7】
請求項1または請求項2のノイズフィルタ(50)と、
前記ノイズフィルタの前記第1出力端子及び前記第2出力端子に接続されている電源モジュール(90)と、
前記電源モジュールから電力の供給を受けて動作するアクチュエータ(21m、28m)と、
を備える、冷凍サイクル装置(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ノイズフィルタ及び、ノイズフィルタを備える冷凍サイクル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
コモンモードノイズを低減する従来のノイズフィルタには、コモンモードチョークコイルを用いたものがある。コモンモードノイズを低減するために、例えば特許文献1(特開2017-118387号公報)に記載されているように、コモンモードチョークコイル用いてπ型のノイズフィルタが形成される場合がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献1に記載のノイズフィルタでは、接地コンデンサの容量が大きい場合、ノイズ電流が接地コンデンサを経由して電源に戻る経路ができてしまい、ノイズ対策のための部品であるコモンモードチョークコイルによるノイズ電流を削減する働きが低下して電磁障害が悪化する。
【0004】
コモンモードチョークコイルを用いるπ型のノイズフィルタにおいては、接地されるコンデンサによる電磁障害の悪化を簡単な構成で抑制するという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1観点のノイズフィルタは、接地線と、コモンモードチョークコイルと、第1前段コンデンサと、第2前段コンデンサと、第1後段コンデンサと、第2後段コンデンサと、抵抗器とを備える。コモンモードチョークコイルは、電圧が印加される第1電源端子と第2電源端子に接続された第1入力端子と第2入力端子、及び第1出力端子と第2出力端子を有する。第1前段コンデンサは、コモンモードチョークコイルの第1入力端子と接地線との間に接続されている。第2前段コンデンサは、コモンモードチョークコイルの第2入力端子と接地線との間に接続されている。第1後段コンデンサは、コモンモードチョークコイルの第1出力端子と接地線との間に接続されている。第2後段コンデンサは、コモンモードチョークコイルの第2出力端子と接地線との間に接続されている。抵抗器は、第1入力端子と接地線の間及び第2入力端子と接地線の間に配置され、または第1出力端子と接地線の間及び第2出力端子と接地線の間に配置されている。抵抗器は、第1前段コンデンサまたは第2前段コンデンサを通って、第1入力端子及び第2入力端子と第1出力端子及び第2出力端子との間に流れる電流が、抵抗器を介して流れるように設けられている。
【0006】
第1観点のノイズフィルタでは、第1前段コンデンサまたは第2前段コンデンサを通って第1入力端子及び第2入力端子と第1出力端子及び第2出力端子との間に流れる電流が抵抗器を介して流れるように、抵抗器が設けられている。それにより、第1入力端子及び第2入力端子と第1出力端子及び第2出力端子との間に流れるコモンモードノイズに係る電流を、抵抗器によって低減することができる。
【0007】
第2観点のノイズフィルタは、第1観点のノイズフィルタであって、抵抗器は、第1入力端子と接地線の間及び第2入力端子と接地線の間に配置されている。
【0008】
第2観点のノイズフィルタでは、抵抗器が第1入力端子と接地線の間及び第2入力端子と接地線の間に配置されることで、第1出力端子と接地線の間及び第2出力端子と接地線の間に抵抗器が配置される場合に比べて、第1後段コンデンサと第2後段コンデンサによるノイズ低減の効果が、抵抗器によって弱まるのを防げる。
【0009】
第3観点のノイズフィルタは、第1観点又は第2観点のノイズフィルタであって、抵抗器は、厚膜チップ抵抗器、金属板チップ抵抗器またはセラミック抵抗器である。
【0010】
第3観点のノイズフィルタでは、抵抗器自身が、サージ耐圧が高い厚膜チップ抵抗器、金属板チップ抵抗器またはセラミック抵抗器であるため、サージ耐圧が高くない薄膜チップ抵抗などを用いる場合に比べて、故障が生じ難くなる。
【0011】
第4観点のノイズフィルタは、第1観点から第3観点のいずれかのノイズフィルタであって、第1前段コンデンサ及び第2前段コンデンサと並列に接続されているサージアブソーバを備え、第1電源端子からサージアブソーバを経由して接地線に至る経路が、第1電源端子から第1前段コンデンサを経由して接地線に至る経路よりも短い。
【0012】
第4観点のノイズフィルタでは、サージアブソーバを通してサージ電流を逃がすことができ、抵抗器へ掛かるサージ電圧を減らすことができる。
【0013】
第5観点のノイズフィルタは、第4観点のノイズフィルタであって、サージアブソーバと接地の間の接地線の抵抗が、第1前段コンデンサと接地の間の接地線の抵抗よりも小さい。
【0014】
第5観点のノイズフィルタでは、第1前段コンデンサを経由する経路よりも、主にサージアブソーバを通して速くサージ電流をノイズフィルタから逃がすことができる。その結果、サージ電圧から抵抗器を保護する効果を高めることができる。
【0015】
第6観点のノイズフィルタは、第1観点から第5観点のノイズフィルタであって、抵抗器に直列に接続されるチップフェライトビーズを備える。
【0016】
第6観点のノイズフィルタでは、チップフェライトビーズにより、前段コンデンサと後段コンデンサを経由して伝わる高周波ノイズの低減が見込める。
【0017】
第7観点の冷凍サイクル装置は、第1観点から第6観点のいずれかのノイズフィルタと、ノイズフィルタの第1出力端子及び第2出力端子に接続されている電源モジュールと、電源モジュールから電力の供給を受けて動作するアクチュエータと、を備える。
【0018】
第7観点の冷凍サイクル装置では、第1入力端子及び第2入力端子と第1出力端子及び第2出力端子との間に流れるコモンモードノイズに係る電流を、抵抗器によって低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】冷凍サイクル装置の構成の一例を示す模式的な回路図である。
図2】第1実施形態に係るノイズフィルタの構成の一例を示す回路図である。
図3】ノイズフィルタの機能を説明するための模式的な回路図である。
図4】変形例1Aに係るノイズフィルタの構成の一例を示す回路図である。
図5】変形例1Bに係るノイズフィルタの構成の一例を示す回路図である。
図6】変形例1Cに係るノイズフィルタの構成の一例を示す回路図である。
図7】変形例1Dに係るノイズフィルタの構成の一例を示す回路図である。
図8】第2実施形態に係るノイズフィルタの構成の一例を示す回路図である。
図9】変形例2Aに係るノイズフィルタの構成の一例を示す回路図である。
図10】変形例2Bに係るノイズフィルタの構成の一例を示す回路図である。
図11】変形例2Cに係るノイズフィルタの構成の一例を示す回路図である。
図12】変形例2Dに係るノイズフィルタの構成の一例を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
<第1実施形態>
(1)全体構成
図1には、冷凍サイクル装置の一例としての空気調和機10が示されている。空気調和機10は、室内機30と室外機20を備えている。空気調和機10では、室内機30と室外機20とが冷媒配管12,13で接続されて冷媒回路11が形成されている。冷媒回路11には、圧縮機21と四方弁22と室外熱交換ユニット23と膨張弁24とアキュムレータ25と室内機30の室内熱交換器31が接続されている。室外機20は、圧縮機21と四方弁22と室外熱交換ユニット23と膨張弁24とアキュムレータ25と室外ファン28を有している。室内機30は、室内熱交換器31と室内ファン32を有している。空気調和機10は、冷媒回路11で実施される蒸気圧縮式冷凍サイクルにより、冷房運転及び暖房運転を選択的に行うことができる。
【0021】
四方弁22は、冷房運転モードでは、実線で示された接続状態に切り換わり、圧縮機21と室外熱交換ユニット23を接続するとともに室内熱交換器31とアキュムレータ25を接続する。四方弁22は、暖房運転モードでは、破線で示された接続状態に切り換わり、圧縮機21と室内熱交換器31を接続するとともに室外熱交換ユニット23とアキュムレータ25を接続する。
【0022】
室外機20が室外ファン28を備え、室内機30が室内ファン32を備えている。室外ファン28は、冷房運転モード及び暖房運転モードにおいて、室外熱交換ユニット23での空気と冷媒との熱交換を促進するために、室外の空気を室外熱交換ユニット23に供給する。また、室内ファン32は、冷房運転モード及び暖房運転モードにおいて、室内熱交換器31での空気と冷媒との熱交換を促進するために、室内の空気を室内熱交換器31に供給する。
【0023】
空気調和機10は、アクチュエータとして、例えば、圧縮機21を駆動する圧縮機モータ21m、室外ファン28を駆動するファンモータ28m、室内ファン32を駆動するファンモータ32mを備えている。
【0024】
空気調和機10は、図2に示されているπ型のノイズフィルタ50を備えている。図2のノイズフィルタ50は、ファンモータ28mに対して設けられている。図2には、冷凍サイクル装置のアクチュエータに対するノイズフィルタの例として、ファンモータ28mに対するノイズフィルタ50が示されている。しかし、冷凍サイクル装置のノイズフィルタのためのアクチュエータとしては、例えば、圧縮機モータ21m及びファンモータ32mがある。従って、圧縮機モータ21m及びファンモータ32mに対しても、図2に示されているπ型のノイズフィルタ50を適用することができる。圧縮機モータ21m及びファンモータ32mに対するノイズフィルタ50の適用は、ファンモータ28mに対するπ型のノイズフィルタの適用と同様に適用することもできるため、以下では前者の説明を行って後者の説明は省略する。
【0025】
(2)詳細構成
空気調和機10は、交流電源200から二相交流電力の供給を受けて圧縮機モータ21mを駆動する。図2には、圧縮機モータ21mに電力を供給するためのπ型のノイズフィルタ50と電源モジュール90が示されている。交流電源200にノイズフィルタ50が接続され、ノイズフィルタ50に電源モジュール90が接続され、電源モジュール90に圧縮機モータ21mが接続されている。電源モジュール90は、コンバータ91とインバータ92を含んでいる。交流電源200から供給された交流電圧がコンバータ91で直流電圧に変換されて、コンバータ91が出力する直流電圧がコンバータ91で交流電圧に変換される。インバータ92は、圧縮機モータ21mに供給する電力の周波数を変化させて圧縮機モータ21mの回転数を変化させる。コンバータ91は、例えば、ダイオードブリッジを用いる整流回路である。
【0026】
ノイズフィルタ50は、例えば電源モジュール90の動作に起因して発生するコモンモードノイズを抑制する機能を有している。さらに詳細には、ノイズフィルタ50は、例えばインバータ92の動作に起因して発生するコモンモードノイズを抑制する機能を有している。ノイズフィルタ50によってコモンモードノイズが抑制されることによって、EMI(電磁障害)が抑制される。
【0027】
接地されている接地電線202と、接地されていない非接地電線201とが交流電源200からノイズフィルタ50に延びている。接地電線202と非接地電線201の間に交流電圧が交流電源200から印加されている。
【0028】
(2-1)ノイズフィルタ
ノイズフィルタ50は、コモンモードチョークコイル51、第1前段コンデンサ52、第2前段コンデンサ53、抵抗器54、第1後段コンデンサ55、及び第2後段コンデンサ56を備えている。コモンモードチョークコイルは、以下の説明では,CMCCと省略して記載することがある。
【0029】
ノイズフィルタ50は、非接地電線201に接続されている第1電源端子PT1と、接地電線202に接続されている第2電源端子PT2を備えている。これらノイズフィルタ50の第1電源端子PT1と第2電源端子PT2に交流電源200が出力する交流電圧が印加される。
【0030】
第1電源端子PT1には、CMCC51の第1入力端子51aが接続されている。第2電源端子PT2には、CMCC51の第2入力端子51bが接続されている。CMCC51の第1出力端子51xと第2出力端子51yは、電源モジュール90に接続されている。さらに詳細には、CMCC51の第1出力端子51xと第2出力端子51yは、コンバータ91を介してインバータ92に接続されている。従って、第1電源端子PT1及び第2電源端子PT2と電源モジュール90を通るノイズ及び、ノイズフィルタ50と電源モジュール90を通るノイズを、ノイズフィルタ50が低減する。
【0031】
接地線ECは、プリント配線基板60の上に配置されているアース配線ELと、プリント配線基板60の外付けされているワイヤである1本のアースハーネスEHとを含んでいる。接地線ECのプリント配線基板60上の端部は、接続点CP2である。ノイズフィルタ50は、アースハーネスEHが取り付けられるアース端子ETを備えている。第1電源端子PT1と第2電源端子PT2とアース端子ETは、ノイズフィルタ50のプリント配線基板60の内部とプリント配線基板60の外部とを分ける境界に設けられている。ノイズフィルタ50のプリント配線基板60の内部には、CMCC51、第1前段コンデンサ52、第2前段コンデンサ53、抵抗器54、第1後段コンデンサ55、第2後段コンデンサ56、及びそれらを接続するアース配線ELなどの配線が配置されている。ノイズフィルタ50のプリント配線基板60の外部には、アースハーネスEHが配置されている。
【0032】
第1前段コンデンサ52は、CMCC51の第1入力端子51aとアース配線ELとの間に接続されている。第2前段コンデンサ53は、CMCC51の第2入力端子51bとアース配線ELとの間に接続されている。第1後段コンデンサ55は、CMCC51の第1出力端子51xとアース配線ELとの間に接続されている。第2後段コンデンサ56は、CMCC51の第2出力端子51yとアース配線ELとの間に接続されている。
【0033】
第1前段コンデンサ52または第2前段コンデンサ53を通って、第1入力端子51a及び第2入力端子51bと第1出力端子51x及び第2出力端子51yとの間に流れる電流が、抵抗器54を介して流れるように設けられている。図2の空気調和機1の構成において、具体的には、第1前段コンデンサ52の一方端子と第2前段コンデンサ53の一方端子が第1接続点CP1で接続され、第1接続点CP1とアース配線ELとの間に抵抗器54が設けられている。抵抗器54とアース配線ELの接続点が接続点CP2である。接続点CP2が接地線ECの端部になる。第1入力端子51aに第1前段コンデンサ52の他方端子が接続され、第2入力端子51bに第2前段コンデンサ53の他方端子が接続されている。
【0034】
ノイズフィルタ50は、印加される電圧が低い場合には電気抵抗が高いが、所定電圧以上になると急激に電気抵抗が低くなるバリスタ57と、過渡的な異常高電圧及び異常大電流からノイズフィルタ50及び電源モジュール90を保護するサージアブソーバ58とを備えている。バリスタ57の一方電極は、第1電源端子PT1とCMCC51の第1入力端子51aを結ぶ配線に接続されている。バリスタ57の他方電極は、サージアブソーバ58の一端に接続されている。サージアブソーバ58の他端は、アース配線ELのうちのアース端子ETと抵抗器54の接続点CP2との間の部分に接続されている。なお、ここでは、第1電源端子PT1に対してサージアブソーバ58が設けられている場合が示されているが、第2電源端子PT2に対してもサージアブソーバ58を設けることができる。
【0035】
ノイズフィルタ50は、その機能の一つとして、コモンモードノイズの低減機能を有している。ノイズフィルタ50のCMCC51によるフィルタ機能では、インダクタとして働くのは、ディファレンシャルモードに対してではなく、コモンモードに対してである。
【0036】
図3には、コモンモードモデルが記載されている。図3では、接地電線202及び非接地電線201を合わせて一本のラインで示されている。コモンモードモデルでは、疑似電源回路網210が用いられている。ここでは、疑似電源回路網は、略してLISN(Line Impedance Stabilization Network)と記載する場合がある。
【0037】
図3のコモンモードモデルでは、接地電線202及び非接地電線201と接地線ECの間に流れるバイパス電流cc1,cc2が破線で示されている。疑似電源回路網210(交流電源200)が接地され、ノイズフィルタ50がアースハーネスEHで接地され、接地電線202及び非接地電線201と接地線ECの間に生じる浮遊容量sc(または寄生容量)を通して電流が流れることで、接地電線202及び非接地電線201と接地線ECの間にループが形成される。バイパス電流cc1は、LISN210(交流電源200)、ノイズフィルタ50(アースハーネスEHを除く)、電源モジュール90、圧縮機モータ21m、浮遊容量sc、接地線ECを含むループを流れる。バイパス電流cc2は、電源モジュール90、圧縮機モータ21m、浮遊容量sc、接地線EC、及びノイズフィルタ50のアースハーネスEHと第1後段コンデンサ55と第2後段コンデンサ56を含むループを流れる。バイパス電流cc1は、非接地電線201と接地線ECのループ及び、接地電線202と接地線ECのループについて流れる電流の両方を含んでいる。
【0038】
もし抵抗器54が無く、ノイズフィルタ50の第1前段コンデンサ52、第2前段コンデンサ53、第1後段コンデンサ55、及び第2後段コンデンサ56の容量が大きいと、これらコンデンサをバイパスしてバイパス電流cc1が流れてしまう。バイパス電流cc1が流れることで、CMCC51によるノイズの高い低減効果が見込めなくなる。ノイズフィルタ50が抵抗器54を有することにより、バイパス電流cc1を低減でき、CMCC51によるコモンモードノイズの高い低減効果が見込めなくなるのを防ぐことができる。
【0039】
第1後段コンデンサ55と第2後段コンデンサ56に抵抗器54を直列に接続すると、第1前段コンデンサ52と第2前段コンデンサ53に抵抗器54を直列に接続する場合のように第1電源端子PT1及び第2電源端子PT2から入ってくるノイズを抵抗器54がブロックしてしまって外来ノイズの吸収が弱まるのを防げる。第1後段コンデンサ55と第2後段コンデンサ56に直列に抵抗器54を接続した場合には、第1後段コンデンサ55と第2後段コンデンサ56によるノイズ低減効果が弱まる。それに対し、第1前段コンデンサ52と第2前段コンデンサ53に抵抗器54を直列に接続すると、第1後段コンデンサ55と第2後段コンデンサ56によるノイズ低減の効果が、抵抗器54によって弱まるのを防げる。
【0040】
コモンモードノイズを低減させるためには、例えば、抵抗器54の代わりに、2本のアースハーネスを設けて、2本のうちの1本にフェライトコアを配置する構成を有するノイズフィルタを構成することも考えられる。このようなノイズフィルタの構成の一例について、図3の構成を変更するものとして説明する。アースハーネスEHが2本設けられ、2本のアースハーネスEHの一端がいずれも接地線ECに接続され、抵抗器54が設けられないように、図3のノイズフィルタの構成を変更する。変更後のノイズフィルタの構成では、一方のアースハーネスEHの他端は第1前段コンデンサ52及び第2前段コンデンサ53の一方端子に接続され、他方のアースハーネスEHの他端は第1後段コンデンサ55及び第2後段コンデンサ56の一方端子に接続される。このとき、ノイズフィルタ50の配線は、第1前段コンデンサ52及び第2前段コンデンサ53の一方端子と第1後段コンデンサ55及び第2後段コンデンサ56の一方端子との間で電流が流れる経路については、一方のアースハーネスEHと他方のアースハーネスEHを介して電流が流れるように結線される。言い換えると、第1前段コンデンサ52及び第2前段コンデンサ53の一方端子と、第1後段コンデンサ55及び第2後段コンデンサ56の一方端子とが直接接続されないように結線される。変更後のノイズフィルタの構成では、フェライトコアが、例えば、他方のアースハーネスEHに配置される。このように2本のアースハーネスとフェライトコアを有するπ型のノイズフィルタに比べると、上述のノイズフィルタ50は、アースハーネスEHが1本で済み且つフェライトコアを削減できるので、構成が簡単になりコストの削減が図れる。
【0041】
(2-1-1)抵抗器
抵抗器54は、例えば、厚膜チップ抵抗器、金属板チップ抵抗器またはセラミック抵抗器である。言い換えると、抵抗器54は、少なくとも薄膜チップ抵抗ではない。抵抗器54として、厚膜チップ抵抗器、金属板チップ抵抗器またはセラミック抵抗器を用いることで、サージ耐圧を高めることができる。
【0042】
(2-1-2)サージアブソーバ
サージアブソーバ58は、第1前段コンデンサ52と並列に接続されている。第1電源端子PT1からサージアブソーバ58を経由して接地線ECに至る経路が、第1電源端子PT1から第1前段コンデンサを経由して接地線ECに至る経路よりも短い。このような構成により、第1電源端子PT1から入ってくるサージ電圧が、サージアブソーバ58で吸収されるので、第1前段コンデンサ52を通るサージ電流を減少させることができる。ノイズフィルタ50は、サージアブソーバ58を通してサージ電流を逃がすことができ、抵抗器54へ掛かるサージ電圧を減らすことができる。
【0043】
サージアブソーバ58と接地の間にあるアース配線ELの長さが、第1前段コンデンサ52と接地の間にあるアース配線ELの長さよりも短い。そのため、サージアブソーバ58と接地の間の接地線ECの抵抗が、第1前段コンデンサ52と接地の間の接地線ECの抵抗よりも小さい。同様に、サージアブソーバ58と接地の間の接地線ECの抵抗が、第2前段コンデンサ53と接地の間の接地線ECの抵抗よりも小さい。その結果、第1前段コンデンサ52を経由する経路よりも、サージアブソーバ58を通して速くサージ電流を回路から逃がすことができる。また、サージアブソーバ58とアース配線ELの接続点CP3からアース端子ETまでのアース配線ELの長さは、接続点CP2からアース端子ETまでのアース配線ELの長さよりも短い。このように接続点CP3からアース端子ETまでのアース配線ELの長さが短いことは、サージ電流を逃がすには有利に作用する。
【0044】
(3)変形例
(3-1)変形例1A
図4に示されているように、抵抗器54に直列にチップフェライトビーズFBを接続することもできる。チップフェライトビーズFBは、ノイズフィルタ50の部品の一部が実装されているプリント配線基板60の上に実装されている。図4では、第2入力端子51bと接続点CP2の間にチップフェライトビーズFBが設けられている例が示されている。図4のノイズフィルタ50は、チップフェライトビーズFBにより、第1前段コンデンサ52と第2前段コンデンサ53と第1後段コンデンサ55と第2後段コンデンサ56を経由して伝わる高周波ノイズの低減が見込める。
【0045】
(3-2)変形例1B
上記第1実施形態では、第1前段コンデンサ52と第2前段コンデンサ53に対して、1個の抵抗器54が設けられている。しかし、図5に示されているように、抵抗器54を第1前段コンデンサ52と第2前段コンデンサ53に対して、1個ずつ抵抗器54を設けることもできる。なお、この場合、第1入力端子51aと第1前段コンデンサ52の間に抵抗器54を配置し、第2入力端子51bと第2前段コンデンサ53の間に抵抗器54を配置することもできる。また、図5の場合、各抵抗器54に対してチップフェライトビーズFBを設けることができる。
【0046】
(3-3)変形例1C
上記第1実施形態、変形例1A及び変形例1Bでは、第1前段コンデンサ52と第2前段コンデンサ53に対して、1個または2個の抵抗器54が設けられている。しかし、抵抗器54は、図6に示されているように、第1後段コンデンサ55と第2後段コンデンサ56に対して設けることもできる。なお、この場合、第1出力端子51xと第1後段コンデンサ55の間に抵抗器54を配置し、第2出力端子51yと第2後段コンデンサ56の間に抵抗器54を配置することもできる。この場合、第1後段コンデンサ55と第2後段コンデンサ56に対してチップフェライトビーズFBを設けている。
【0047】
(3-4)変形例1D
上記第1実施形態、変形例1Cでは、第1後段コンデンサ55と第2後段コンデンサ56に対して、2個の抵抗器54が設けられる。しかし、抵抗器54は、図7に示されているように、第1後段コンデンサ55と第2後段コンデンサ56に対して1個設けることもできる。この場合、第1後段コンデンサ55及び第2後段コンデンサ56とアース配線ELとの間に抵抗器54が配置される。また、図7に示されている例では、抵抗器54に直列にチップフェライトビーズFBも設けている。
【0048】
<第2実施形態>
(4)全体構成
図8には、冷凍サイクル装置の他の例としての空気調和機10が示されている。第1実施形態の空気調和機10は、2相交流の交流電源200から電力の供給を受けている。それに対して、第2実施形態の空気調和機10は、3相交流の交流電源300から電力の供給を受けている。交流電源300は、接地されている。
【0049】
(5)ノイズフィルタ
図8のノイズフィルタ50は、コモンモードチョークコイル51、第1前段コンデンサ52、第2前段コンデンサ53、第3前段コンデンサ71、抵抗器54、第1後段コンデンサ55、第2後段コンデンサ56、及び第3後段コンデンサ72を備えている。三相交流の交流電源300に接続されている第1電源端子PT1、第2電源端子PT2及び第3電源端子PT3を備えている。これらノイズフィルタ50の第1電源端子PT1、第2電源端子PT2及び第3電源端子PT3に交流電源300から交流電圧が印加される。第1電源端子PT1、第2電源端子PT2及び第3電源端子PT3には、CMCC51の第1入力端子51a、第2入力端子51b及び第3入力端子51cが接続されている。CMCC51の第1出力端子51xと第2出力端子51yと第3出力端子51zは、コンバータ91及びインバータ92を含む電源モジュール90に接続されている。電源モジュール90に、三相交流で駆動される圧縮機モータ21mが接続されている。
【0050】
第1前段コンデンサ52は、CMCC51の第1入力端子51aとアース配線ELとの間に接続されている。第2前段コンデンサ53は、CMCC51の第2入力端子51bとアース配線ELとの間に接続されている。第3前段コンデンサ71は、CMCC51の第3入力端子51cとアース配線ELとの間に接続されている。第1後段コンデンサ55は、CMCC51の第1出力端子51xとアース配線ELとの間に接続されている。第2後段コンデンサ56は、CMCC51の第2出力端子51yとアース配線ELとの間に接続されている。第3後段コンデンサ72は、CMCC51の第3出力端子51zとアース配線ELとの間に接続されている。
【0051】
抵抗器54は、第1前段コンデンサ52、第2前段コンデンサ53及び第3前段コンデンサ71を通って、第1入力端子51a、第2入力端子51b及び第3入力端子51cと第1出力端子51x、第2出力端子51y及び第3出力端子51zとの間に流れる電流が、抵抗器54を介して流れるように設けられている。図8の空気調和機1の構成において、具体的には、第1前段コンデンサ52の一方端子と第2前段コンデンサ53の一方端子と第3前段コンデンサ71の一方端子が第1接続点CP1で接続され、第1接続点CP1とアース配線ELとの間に抵抗器54が設けられている。抵抗器54とアース配線ELの接続点が接続点CP2である。第1入力端子51aに第1前段コンデンサ52の他方端子が接続され、第2入力端子51bに第2前段コンデンサ53の他方端子が接続され、第3入力端子51cに第3前段コンデンサ71の他方端子が接続されている。
【0052】
ノイズフィルタ50は、第1電源端子PT1、第2電源端子PT2及び第3電源端子PT3に対して設けられた3つのバリスタ57と、3つのバリスタ57に接続された1つのサージアブソーバ58とを備えている。3つのバリスタ57の一方電極がそれぞれ第1電源端子PT1、第2電源端子PT2及び第3電源端子PT3に接続され、3つのバリスタ57の他方電極が全てサージアブソーバ58の一端に接続されている。サージアブソーバ58の他端は、アース配線ELのうちのアース端子ETと抵抗器54の接続点CP2との間の部分に接続されている。
【0053】
第2実施形態における抵抗器54に用いられる抵抗器の種類及びサージアブソーバ58の配置については、第1実施形態と同様であるため、ここでは説明を省略する。また、第2実施形態における浮遊容量scによるコモンモードについても、第1実施形態と同様であるので、説明を省略する。
【0054】
(6)変形例
(6-1)変形例2A
図9に示されているように、抵抗器54に直列にチップフェライトビーズFBを接続することもできる。チップフェライトビーズFBは、ノイズフィルタ50の部品の一部が実装されているプリント配線基板60の上に実装されている。図9では、第2入力端子51bと接続点CP2の間にチップフェライトビーズFBが設けられている例が示されている。図9のノイズフィルタ50は、チップフェライトビーズFBにより、第1前段コンデンサ52と第2前段コンデンサ53と第3前段コンデンサ71と第1後段コンデンサ55と第2後段コンデンサ56と第3後段コンデンサ72を経由して伝わる高周波ノイズの低減が見込める。
【0055】
(6-2)変形例2B
上記第2実施形態では、第1前段コンデンサ52と第2前段コンデンサ53と第3前段コンデンサ71に対して、1個の抵抗器54が設けられている。しかし、図10に示されているように、抵抗器54を第1前段コンデンサ52と第2前段コンデンサ53と第3前段コンデンサ71に対して、1個ずつ抵抗器54を設けることもできる。なお、この場合、第1入力端子51aと第1前段コンデンサ52の間に抵抗器54を配置し、第2入力端子51bと第2前段コンデンサ53の間に抵抗器54を配置し、第3入力端子51cと第3前段コンデンサ71の間に抵抗器54を配置することもできる。また、各抵抗器54に対してチップフェライトビーズFBを設けることもできる。
【0056】
(6-3)変形例2C
上記第2実施形態、変形例2A及び変形例2Bでは、第1前段コンデンサ52と第2前段コンデンサ53と第3前段コンデンサ71に対して、1個または2個の抵抗器54が設けられている。しかし、抵抗器54は、図11に示されているように、第1後段コンデンサ55と第2後段コンデンサ56と第3後段コンデンサ72に対して設けることもできる。なお、この場合、第1出力端子51xと第1後段コンデンサ55の間に抵抗器54を配置し、第2出力端子51yと第2後段コンデンサ56の間に抵抗器54を配置し、第3出力端子51zと第3後段コンデンサ72の間に抵抗器54を配置することもできる。この場合、第1後段コンデンサ55と第2後段コンデンサ56と第3後段コンデンサ72に対してチップフェライトビーズFBを設けることもできる。
【0057】
(6-4)変形例2D
上記第2実施形態、変形例2Cでは、第1後段コンデンサ55と第2後段コンデンサ56と第3後段コンデンサ72に対して、3個の抵抗器54が設けられている。しかし、抵抗器54は、図12に示されているように、第1後段コンデンサ55と第2後段コンデンサ56と第3後段コンデンサ72に対して、1個設けることもできる。この場合、第1後段コンデンサ55、第2後段コンデンサ56及び第3後段コンデンサ72とアース配線ELとの間に抵抗器54が配置される。また、図12に示されている例では、抵抗器54に直列にチップフェライトビーズFBも設けている。
【0058】
(7)特徴
(7-1)
上述のノイズフィルタ50では、第1前段コンデンサ52若しくは第2前段コンデンサ53を通って、第1入力端子51a及び第2入力端子51bと第1出力端子51x及び第2出力端子51yとの間に電流が流れる。または、上述のノイズフィルタ50では、第1前段コンデンサ52、第2前段コンデンサ53または第3前段コンデンサ71を通って、第1入力端子51a、第2入力端子51b及び第3入力端子51cと第1出力端子51x、第2出力端子51y及び第3出力端子51zとの間に電流が流れる。前述の電流が、抵抗器54を介して流れるように抵抗器54が設けられている。それにより、前述の電流を、抵抗器54によって低減することができる。その結果、CMCC51によるコモンモードノイズの高い低減効果が見込めなくなるのを防ぐことができる。従って、上述のノイズフィルタ50では、接地されるコンデンサによる電磁障害の悪化を簡単な構成で抑制することができる。
【0059】
(7-2)
上述のノイズフィルタ50では、抵抗器54が第1入力端子51aと接地線ECの間及び第2入力端子51bと接地線ECの間に配置されることで、第1出力端子51xと接地線ECの間及び第2出力端子51yと接地線ECの間に抵抗器54が配置される場合に比べて、第1後段コンデンサ55と第2後段コンデンサ56によるノイズ低減の効果が、抵抗器54によって弱まるのを防げる。
【0060】
(7-3)
上述のノイズフィルタ50の抵抗器54は、厚膜チップ抵抗器、金属板チップ抵抗器またはセラミック抵抗器である。このような抵抗器54は、抵抗器自体がサージ耐圧が高いため、サージ耐圧が高くない薄膜チップ抵抗などを用いる場合に比べて、故障が生じ難くなる。
【0061】
(7-4)
上述のノイズフィルタ50は、第1電源端子PT1からサージアブソーバ58を経由して接地線ECに至る経路が、第1電源端子PT1から第1前段コンデンサ52を経由して接地線ECに至る経路よりも短い。そのため、第1前段コンデンサ52を経由する経路よりも、主にサージアブソーバ58を通して速くサージ電流をノイズフィルタ50から逃がすことができる。
【0062】
(7-5)
上述のノイズフィルタ50は、サージアブソーバ58と接地の間の接地線ECの抵抗が、第1前段コンデンサ52と接地の間の接地線ECの抵抗よりも小さくなるように構成されている。このように構成された場合、第1前段コンデンサ52を経由する経路よりも、主にサージアブソーバ58を通して速くサージ電流をノイズフィルタ50から逃がすことができる。
【0063】
(7-6)
上述のノイズフィルタ50は、抵抗器54に直列に接続されるチップフェライトビーズFBを備える場合、チップフェライトビーズFBにより、第1前段コンデンサ52と第2前段コンデンサ53と第3前段コンデンサ71と第1後段コンデンサ55と第2後段コンデンサ56と第3後段コンデンサ72を経由して伝わる高周波ノイズの低減が見込める。
【0064】
(7-7)
冷凍サイクル装置の一例である空気調和機10は、上述のノイズフィルタ50と、ノイズフィルタ50の第1出力端子51x及び第2出力端子51yに接続されている電源モジュール90と、電源モジュール90から電力の供給を受けて動作するアクチュエータである圧縮機モータ21mまたはファンモータ28mとを備える。冷凍サイクル装置は、冷媒を用いて冷凍サイクルを実施する装置である。冷凍サイクル装置としては、空気調和機10以外に、例えば、冷蔵庫、冷凍庫、給湯器、床暖房装置、ヒートポンプ装置がある。また、アクチュエータは、モータ以外にソレノイドがある。
【0065】
空気調和機10のノイズフィルタ50は、第1前段コンデンサ52または第2前段コンデンサ53を通って第1入力端子51a及び第2入力端子51bと第1出力端子51x及び第2出力端子51yとの間に流れるコモンモードノイズに係る電流を、抵抗器54によって低減することができる。それにより、電源モジュール90またはアクチュエータである圧縮機モータ21mまたはファンモータ28mで生じるコモンモードノイズの抑制効果の低下を防ぐことができる。
【0066】
以上、本開示の実施形態を説明したが、特許請求の範囲に記載された本開示の趣旨及び範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様な変更が可能なことが理解されるであろう。
【符号の説明】
【0067】
10 空気調和機(冷凍サイクル装置の例)
21m 圧縮機モータ(アクチュエータの例)
28m,32m ファンモータ(アクチュエータの例)
50 ノイズフィルタ
51 コモンモードチョークコイル
51a 第1入力端子
51b 第2入力端子
51x 第1出力端子
51y 第2出力端子
52 第1前段コンデンサ
53 第2前段コンデンサ
54 抵抗器
55 第1後段コンデンサ
56 第2後段コンデンサ
58 サージアブソーバ
90 電源モジュール
EC 接地線
FB チップフェライトビーズ
PT1 第1電源端子
PT2 第2電源端子
【先行技術文献】
【特許文献】
【0068】
【特許文献1】特開2017-118387号公報
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
【手続補正書】
【提出日】2023-10-19
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
接地線(EC)と、
電圧が印加される第1電源端子(PT1)と第2電源端子(PT2)に接続された第1入力端子(51a)と第2入力端子(51b)、及び第1出力端子(51x)と第2出力端子(51y)を有するコモンモードチョークコイル(51)と、
前記コモンモードチョークコイルの前記第1入力端子と前記接地線との間に接続された第1前段コンデンサ(52)と、
前記コモンモードチョークコイルの前記第2入力端子と前記接地線との間に接続された第2前段コンデンサ(53)と、
前記コモンモードチョークコイルの前記第1出力端子と前記接地線との間に接続された第1後段コンデンサ(55)と、
前記コモンモードチョークコイルの前記第2出力端子と前記接地線との間に接続された第2後段コンデンサ(56)と、
前記第1入力端子と前記接地線の間及び前記第2入力端子と前記接地線の間に配置され、または前記第1出力端子と前記接地線の間及び前記第2出力端子と前記接地線の間に配置されている抵抗器(54)と
前記第1前段コンデンサと並列に接続されているサージアブソーバ(58)と
を備え、
前記抵抗器は、前記第1前段コンデンサまたは前記第2前段コンデンサを通って、前記第1入力端子及び前記第2入力端子と前記第1出力端子及び前記第2出力端子との間に流れる電流が、前記抵抗器を介して流れるように設けられ
前記第1電源端子から前記サージアブソーバを経由して前記接地線に至る経路が、前記第1電源端子から前記第1前段コンデンサを経由して前記接地線に至る経路よりも短く、
前記サージアブソーバと接地の間の前記接地線の抵抗が、前記第1前段コンデンサと接地の間の前記接地線の抵抗よりも小さい、ノイズフィルタ(50)。
【請求項2】
前記抵抗器は、前記第1入力端子と前記接地線の間及び前記第2入力端子と前記接地線の間に配置されている、
請求項1に記載のノイズフィルタ(50)。
【請求項3】
前記抵抗器は、前記第1入力端子と前記接地線の間及び前記第2入力端子と前記接地線の間に配置され、
前記第1電源端子から前記サージアブソーバを経由して前記接地線に至る経路が、前記第1電源端子から前記第1前段コンデンサ及び前記抵抗器を経由して前記接地線に至る経路よりも短い、
請求項1または2に記載のノイズフィルタ(50)。
【請求項4】
前記接地線は、プリント配線基板(60)の上に配置されていてアース端子(ET)を有するアース配線(EL)と、前記アース端子に取り付けられているワイヤであるアースハーネス(EH)とを含み、
前記第1電源端子から前記サージアブソーバを経由して前記接地線に至る経路と前記アース配線の第1接続点(CP3)から前記アース端子までの前記アース配線の長さは、前記第1電源端子から前記第1前段コンデンサを経由して前記接地線に至る経路と前記アース配線の第2接続点(CP2)から前記アース端子までの前記アース配線の長さよりも短い、
請求項1または2に記載のノイズフィルタ(50)。
【請求項5】
前記抵抗器は、厚膜チップ抵抗器、金属板チップ抵抗器またはセラミック抵抗器である、
請求項1または請求項2に記載のノイズフィルタ(50)。
【請求項6】
前記抵抗器に直列に接続されるチップフェライトビーズ(FB)を備える、
請求項1または請求項2に記載のノイズフィルタ(50)。
【請求項7】
請求項1または請求項2のノイズフィルタ(50)と、
前記ノイズフィルタの前記第1出力端子及び前記第2出力端子に接続されている電源モジュール(90)と、
前記電源モジュールから電力の供給を受けて動作するアクチュエータ(21m、28m)と、
を備える、冷凍サイクル装置(10)。