(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024019956
(43)【公開日】2024-02-14
(54)【発明の名称】皮膚生理指標推定方法
(51)【国際特許分類】
G01N 33/50 20060101AFI20240206BHJP
A61B 5/00 20060101ALI20240206BHJP
G01N 33/48 20060101ALI20240206BHJP
G01N 33/483 20060101ALI20240206BHJP
G06T 7/00 20170101ALI20240206BHJP
G06V 10/766 20220101ALI20240206BHJP
【FI】
G01N33/50 Q
A61B5/00 M
G01N33/48 Z
G01N33/483 C
G06T7/00 630
G06T7/00 350B
G06V10/766
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022122759
(22)【出願日】2022-08-01
(71)【出願人】
【識別番号】593106918
【氏名又は名称】株式会社ファンケル
(74)【代理人】
【識別番号】100162396
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 泰之
(74)【代理人】
【識別番号】100194803
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 理弘
(72)【発明者】
【氏名】東ヶ崎 健
(72)【発明者】
【氏名】石渡 潮路
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 千尋
(72)【発明者】
【氏名】富岡 里佳子
(72)【発明者】
【氏名】我妻 未来
(72)【発明者】
【氏名】谷澤 佳奈
【テーマコード(参考)】
2G045
4C117
5L096
【Fターム(参考)】
2G045CB09
2G045FA13
2G045FA14
2G045FA16
2G045FA19
2G045JA03
4C117XA02
4C117XB13
4C117XD05
4C117XE03
4C117XJ01
5L096BA06
5L096BA13
5L096FA32
5L096FA33
5L096FA59
5L096FA65
5L096KA04
5L096KA15
(57)【要約】
【課題】皮膚生理指標を推定する推定方法を提供すること。
【解決手段】角層画像の1細胞領域を特定し、
これから算出される角層パラメータ値の1以上と、顔の皮膚画像解析カウンセリングシステムによる解析結果との相関関係に基づいて、皮膚生理指標を推定する皮膚生理指標推定方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
角層画像の1細胞領域を特定し、
これから算出される角層パラメータ値の1以上と、顔の皮膚画像解析カウンセリングシステムによる解析結果との下記(1)~(8)から選ばれる1以上の相関関係に基づいて、皮膚生理指標を推定することを特徴とする皮膚生理指標推定方法。
(1)1細胞輝度標準偏差を説明変数、Visia Texture Countを目的変数とする相関関係
(2)1細胞面積、1細胞に外接する長方形面積、1細胞輝度標準偏差、1細胞輝度最大値、
画像内の真円度の標準偏差からなる群から選択される1以上の角層パラメータを説明変数、Visia UV Spot Countを目的変数とする相関関係
(3)長方形の長短辺比を説明変数、Visia Wrinkle Countを目的変数とする相関関係
(4)真円度、1細胞面積、1細胞周囲長、1細胞に外接する長方形面積、画像内の1細胞面積の標準偏差、画像内の1細胞周囲長の標準偏差からなる群から選択される1以上の角層パラメータを説明変数、Brown Spot Count_Visiaを目的変数とする相関関係
(5)真円度、画像内の真円度の標準偏差、1細胞輝度標準偏差からなる群から選択される1以上の角層パラメータを説明変数、Pore Count_Visiaを目的変数とする相関関係
(6)1細胞面積、1細胞周囲長、1細胞に外接する長方形面積、近似する4-6角形、画像内の1細胞面積の標準偏差からなる群から選択される1以上の角層パラメータを説明変数、Visia UV Spotsを目的変数とする相関関係
(7)長方形の長短辺比を説明変数、Visia Wrinklesを目的変数とする相関関係
(8)1細胞面積、1細胞周囲長、長方形の長短辺比、1細胞輝度平均値、近似する4-6角形、1細胞輝度標準偏差、画像内の1細胞面積の標準偏差、画像内の1細胞周囲長の標準偏差、画像内の1細胞輝度最小値の標準偏差、画像内の1細胞輝度平均値の標準偏差からなる群から選択される1以上の角層パラメータを説明変数、Spot Count_Visiaを目的変数とする相関関係
【請求項2】
前記1細胞領域が、予め複数枚の学習用角層画像と各学習用角層画像における目視評価による1細胞領域とを機械学習させた機械学習モデルを用いて特定されることを特徴とする請求項1に記載の皮膚生理指標推定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膚生理指標の推定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
皮膚表面の拡大画像や、顔の画像から、キメ、小じわ、シミ、シワ、毛穴等の皮膚生理指標を数値化できる装置が知られている(非特許文献1、2)。
これらの装置により、皮膚生理指標を数値化して評価することができるが、装置は高価であり、また、画像の測定や装置の操作には専門家が必要である。そのため、測定可能な施設は専門的なサロンや医療機関等に限られ、安価、簡便、迅速に皮膚生理指標を知ることは困難である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】株式会社インテグラル、「皮膚官能特性評価のための測定機器」、FRAGRANCE JOURNAL、5(2):67-69、2007
【非特許文献2】高橋和宏、「画像解析装置VISIAの有用性-使える!UV写真」、日本美容皮膚科学会雑誌、Vol.16、No.3、199、2006
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、皮膚生理指標を推定する推定方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、角層の観察画像から得られる角層構造を指標として、皮膚生理指標を推定できることを見出してなされたものである。
【0006】
具体的には、本発明の課題を解決するための手段は以下の通りである。
1.角層画像の1細胞領域を特定し、
これから算出される角層パラメータ値の1以上と、顔の皮膚画像解析カウンセリングシステムによる解析結果との下記(1)~(8)から選ばれる1以上の相関関係に基づいて、皮膚生理指標を推定することを特徴とする皮膚生理指標推定方法。
(1)1細胞輝度標準偏差を説明変数、Visia Texture Countを目的変数とする相関関係
(2)1細胞面積、1細胞に外接する長方形面積、1細胞輝度標準偏差、1細胞輝度最大値、画像内の真円度の標準偏差からなる群から選択される1以上の角層パラメータを説明変数、Visia UV Spot Countを目的変数とする相関関係
(3)長方形の長短辺比を説明変数、Visia Wrinkle Countを目的変数とする相関関係
(4)真円度、1細胞面積、1細胞周囲長、1細胞に外接する長方形面積、画像内の1細胞面積の標準偏差、画像内の1細胞周囲長の標準偏差からなる群から選択される1以上の角層パラメータを説明変数、Brown Spot Count_Visiaを目的変数とする相関関係
(5)真円度、画像内の真円度の標準偏差、1細胞輝度標準偏差からなる群から選択される1以上の角層パラメータを説明変数、Pore Count_Visiaを目的変数とする相関関係
(6)1細胞面積、1細胞周囲長、1細胞に外接する長方形面積、近似する4-6角形、画像内の1細胞面積の標準偏差からなる群から選択される1以上の角層パラメータを説明変数、Visia UV Spotsを目的変数とする相関関係
(7)長方形の長短辺比を説明変数、Visia Wrinklesを目的変数とする相関関係
(8)1細胞面積、1細胞周囲長、長方形の長短辺比、1細胞輝度平均値、近似する4-6角形、1細胞輝度標準偏差、画像内の1細胞面積の標準偏差、画像内の1細胞周囲長の標準偏差、画像内の1細胞輝度最小値の標準偏差、画像内の1細胞輝度平均値の標準偏差からなる群から選択される1以上の角層パラメータを説明変数、Spot Count_Visiaを目的変数とする相関関係
2.前記1細胞領域が、予め複数枚の学習用角層画像と各学習用角層画像における目視評価による1細胞領域とを機械学習させた機械学習モデルを用いて特定されることを特徴とする1.に記載の皮膚生理指標推定方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明の皮膚生理指標推定方法は、角層構造から得られる数値を指標とするものであり、非常に容易に、かつ精度良く、皮膚生理指標を推定することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明は、角層画像の1細胞領域を特定し、
これから算出される角層パラメータ値の1以上と、顔の皮膚画像解析カウンセリングシステムによる解析結果との間に存在する相関関係に基づいて、皮膚生理指標を推定する皮膚生理指標推定方法に関する。
【0009】
本発明の皮膚生理指標推定方法により、以下に示す皮膚生理指標を推定することができる。
Visia Texture Count:肌の滑らかさの指標。皮膚表面の変化(隆起や陥)の面積。
Spot Count_Visia:茶色または赤色のシミ。背景の肌色とコントラストが異なる一定範囲内の面積を持つスポット。
Pore Count_Visia:毛穴の数。周囲の肌色よりも暗くて円形で比較的小さい形状のものを識別。
Brown Spot Count_Visia:肌の表面または表面化の色素沈着の指標。背景の肌色とコントラストが異なる一定範囲内の面積を持つ茶色いスポット。
Visia UV Spots:表皮メラニン量の指標。皮膚表面直下の紫外線を吸収するスポット。
Visia UV Spot Count:将来的に皮膚表面に出てくる可能性がある、皮膚内部の色素沈着。
Visia Wrinkles:シワ部分の面積。背景の肌色とコントラストと線状形状で判定される。
Visia Wrinkle Count:シワの数。背景の肌色とコントラストと線状形状で判定される。
【0010】
画像を得るための角層の採取方法は、バイオプシー、テープストリッピング法のいずれであってもよいが、被験者の負担が少ないため、テープストリッピング法が好ましい。テープストリッピング法は、粘着性テープを皮膚に貼り付けた後、剥がして皮膚の表層を回収する方法である。
【0011】
テープストリッピング法で採取した角層細胞は、透過光観察(微分干渉法、位相差法、暗視野観察法などを含む)または反射光観察により撮像し、細胞の形態を観察する。角層細胞は、無染色の状態で観察することが好ましいが、必要に応じて染色することもできる。
細胞の観察は、細胞観察が可能な顕微鏡を用いて行うことができ、例えば、キーエンス株式会社製のデジタルマイクロスコープVHX-500、AnMo Electronics Corporation社製のデジタルマイクロスコープDino-Lite等を用いることができる。
観察条件は、細胞の詳細が確認できるものであれば制限されないが、例えば、1.0μm/pixel以上の解像度で約20万画素以上の条件等が挙げられる。
【0012】
撮像した角層画像を、画像処理システムを用いて画像処理し、角層画像の1細胞領域を特定する。この際、細胞領域面積、重層剥離領域、重層剥離率等を特定することもできる。
1細胞領域とは、角層画像内の個々の角層細胞の領域である。
細胞領域面積とは、角層画像中の角層細胞領域の面積の総和である。
重層剥離面積とは、角層が2層以上重なって剥離した領域の面積である。
重層剥離率とは、「細胞領域面積」に対する「重層剥離面積」の割合(重層剥離面積/細胞領域面積)である。
【0013】
そして、この特定した1細胞領域等に基づいて、推定する皮膚生理指標の種類等に応じて、細胞領域面積、1細胞面積、画像内の1細胞面積の標準偏差、1細胞周囲長、画像内の1細胞周囲長の標準偏差、1細胞に外接する長方形面積、長方形の長短辺比、真円度、画像内の真円度の標準偏差、近似する4-6角形、1細胞輝度平均値、1細胞輝度平均値の標準偏差、1細胞輝度標準偏差、1細胞輝度最大値からなる群から選択される1以上を数値化する。角層画像は、カラー画像を用いてもよく、画像処理によりグレースケールにした画像を用いてもよく、両方を用いることもできる。
【0014】
1細胞面積とは、角層画像内の個々の角層細胞の面積を全細胞で平均した値である。
1細胞周囲長とは、角層画像内の個々の角層細胞の周囲長を全細胞で平均した値である。
1細胞に外接する長方形面積とは、角層画像内の個々の角層細胞全体を覆う最小面積の長方形の面積を全細胞で平均した値である。
長方形の長短辺比とは、角層画像内の個々の角層細胞全体を覆う最小面積の長方形の長辺と短辺の比(長辺/短辺)を全細胞で平均した値である。
真円度とは、個々の角層細胞の領域の正円度合い(4π×(面積)/(周長の2乗)により算出される。)の1画像における全細胞で平均した値である。
近似する4-6角形とは、個々の角層細胞形状の重心を中心として、角層細胞領域内に正4-6角形を配置し、正4-6角形からはみ出した領域の面積が最小となるように角度と大きさを調整し、はみ出した領域の面積が最小となった際の、はみ出した領域の面積を角層細胞面積で割り返し、正n角形(nは4~6)の中でこの値が最小となるnを近似するn角形とし、角層画像内の個々の角層細胞のnを全細胞で平均した値である。
【0015】
1細胞輝度平均値とは、角層画像内の個々の角層細胞の細胞領域内の平均輝度値を全細胞で平均した値である。
1細胞輝度標準偏差とは、角層画像内の個々の角層細胞の細胞領域内の輝度の標準偏差を求めた値である。
1細胞輝度最大値とは、角層画像内の個々の角層細胞の細胞領域内の輝度の最大値を全細胞で平均した値である。
以下、細胞領域面積、1細胞面積、画像内の1細胞面積の標準偏差、1細胞周囲長、画像内の1細胞周囲長の標準偏差、1細胞に外接する長方形面積、長方形の長短辺比、真円度、画像内の真円度の標準偏差、近似する4-6角形、1細胞輝度平均値、1細胞輝度平均値の標準偏差、1細胞輝度標準偏差、1細胞輝度最大値からなる群から選択される1以上を数値化したものを角層パラメータ値ともいう。
【0016】
画像処理システムによる数値化は、公知の画像処理システムを用いて行うことができ、例えば、上記したデジタルマイクロスコープに付属の画像処理ソフトウェアや、市販の画像処理ソフトウェア等を用いることができる。また、予め複数枚の学習用角層画像と、各学習用角層画像における、目視評価による1細胞領域(1つ1つの細胞の領域)を機械学習させた機械学習モデルを備える画像処理システムを用いることもできる。この機械学習モデルには、目視評価による細胞領域(細胞が存在している領域)、目視評価による重層剥離領域(角層が2層以上重なって剥離した領域)等を学習させることもできる。この機械学習モデルに数値化したい角層画像を入力し、この角層画像の1細胞領域を出力し、機械学習モデルが出力した1細胞領域に基づいて角層パラメータ値(細胞領域面積、1細胞面積、画像内の1細胞面積の標準偏差、1細胞周囲長、画像内の1細胞周囲長の標準偏差、1細胞に外接する長方形面積、長方形の長短辺比、真円度、画像内の真円度の標準偏差、近似する4-6角形、1細胞輝度平均値、1細胞輝度平均値の標準偏差、1細胞輝度標準偏差、1細胞輝度最大値)を算出することで、目視評価に基づく角層パラメータ値と同等の角層パラメータ値を迅速に算出することができる。さらに、機械学習モデルを備える画像処理システムが出力した1細胞領域を、人が目視で修正して角層パラメータ値を求めることもできる。
【0017】
この数値化した角層パラメータ値を指標として皮膚生理指標を推定する方法は特に制限されず、公知の方法を用いることができる。例えば、角層パラメータ値を単回帰分析してもよく、重回帰分析してもよい。重回帰分析は、線形重回帰分析でもよく非線形重回帰分析でもよい。また、細胞領域面積、1細胞面積、画像内の1細胞面積の標準偏差、1細胞周囲長、画像内の1細胞周囲長の標準偏差、1細胞に外接する長方形面積、長方形の長短辺比、真円度、画像内の真円度の標準偏差、近似する4-6角形、1細胞輝度平均値、1細胞輝度平均値の標準偏差、1細胞輝度標準偏差、1細胞輝度最大値以外の他のパラメータを重回帰分析の説明変数に含めてもよい。
【実施例0018】
<機械学習用サンプル>
女性412名(18~87才、平均46.8才)について、テープストリッピング法により、顔から角層細胞を採取した。
採取した角層細胞は、無染色の状態で、デジタルマイクロスコープ(キーエンス株式会社、VHX-5000)を用いて、8bit(RGBカラー)、0.41μm/pixelの解像度、1600×1200pixelの画素数で、透過光による撮影を行った。撮影は各サンプル2~3視野ずつ撮影を行い機械学習として用いた。
【0019】
画像アノテーション用ソフトウェア Labelmeを用いて、細胞領域、重層剥離領域、1細胞領域を目視により特定し、学習用角層画像を得た。
各学習用角層画像と、目視評価による細胞領域、重層剥離領域、1細胞領域を機械学習させ、細胞領域、重層剥離領域、1細胞領域を出力可能な機械学習モデルを得た。
<サンプル>
女性227名(28~87才、平均47.2才)について、テープストリッピング法により、顔から角層細胞を採取した。一人当たり、3~5枚のサンプルを採取し、合計966枚のサンプルを得た。
試料調製方法は、機械学習用サンプルと同じである。
サンプル画像を、機械学習モデルを備えた画像処理装置により解析し、各角層画像の細胞領域面積、1細胞面積、画像内の1細胞面積の標準偏差、1細胞周囲長、画像内の1細胞周囲長の標準偏差、1細胞に外接する長方形面積、長方形の長短辺比、真円度、画像内の1細胞真円度の標準偏差、近似する4-6角形、1細胞輝度平均値、画像内の1細胞輝度平均値の標準偏差、1細胞輝度標準偏差、1細胞輝度最大値を数値化し、角層パラメータ値を求めた。
さらに、1細胞輝度中央値、1細胞輝度最小値、画像内の1細胞輝度標準偏差の標準偏差、画像内の1細胞輝度中央値の標準偏差、画像内の1細胞輝度最大値の標準偏差、画像内の1細胞輝度最小値の標準偏差、画像内の近似する4-6角形の標準偏差についても数値化し、角層パラメータ値を求めた。
1細胞輝度中央値とは、角層画像内の個々の角層細胞の細胞領域内の輝度値中央値を全細胞で平均した値である。
1細胞輝度最小値とは、角層画像内の個々の角層細胞の細胞領域内の輝度の最小値を全細胞で平均した値である。
【0020】
なお、966枚のサンプルについて、目視評価による1細胞領域、細胞領域、重層剥離領域を、それぞれ機械学習モデルを備えた画像処理装置により解析した1細胞領域、細胞領域、重層剥離領域と比較した。
結果、目視評価による1細胞領域面積/機械学習モデルを備えた画像処理装置により解析した1細胞領域面積=117%、目視評価による細胞領域面積/機械学習モデルを備えた画像処理装置により解析した細胞領域面積=95%、目視評価による重層剥離領域面積/機械学習モデルを備えた画像処理装置により解析した重層剥離領域面積=86%であり、目視評価による1細胞領域、細胞領域、重層剥離領域と、機械学習モデルを備えた画像処理装置により解析した1細胞領域、細胞領域、重層剥離領域は、同等であった。
【0021】
<皮膚生理指標の機械学習モデルを備えた画像処理装置により解析した角層構造による回帰分析>
皮膚生理指標測定装置名:VISIA evolution(Canfield Scientific社(New York, USA)製)
被験者:335名(20~92才、平均44.3才)
測定部位、手順
被験者は、洗顔後10分間安静にした後、VISIA evolutionにより全顔撮影され、頬部の角層がテープストリッピング法により採取された。
採取された角層は、デジタルマイクロスコープDino-Lite(AnMo Electronics Corporation社)を用いて8bit RGB,0.41μm/pixel,1600×1200pixelの条件で撮像され、AIおよび2値化による細胞形状の認識を行い、各角層パラメータ値を算出した。各角層パラメータ値を説明変数、皮膚生理指標である各VISIAからの出力値を目的変数として、回帰分析を行った。解析にはJMP(登録商標)16.2.0(SAS Institute Inc.,NC,USA)を用いた。
皮膚生理指標である各VISIAからの出力値は、Visia Texture Count、Spot Count_Visia、Pore Count_Visia、Brown Spot Count_Visia、Visia UV Spots、Visia UV Spot Count、 Visia Wrinkles、Visia Wrinkle Countである。
【0022】
「単回帰分析」
各角層パラメータ値と、皮膚生理指標とを単回帰分析した。相関が認められたものについて、相関係数r、p値、単回帰直線の式(Y=aX+b、Xが各角層パラメータ値、Yが皮膚生理指標)を表1、2に示す。
【表1】
【0023】
【0024】
表1、2に示すように、本発明の(1)~(8)に記載された各角層パラメータ値は、(1)~(8)のそれぞれに記載された皮膚生理指標と相関(|r|≧0.2)を有していた。
【0025】
「重回帰分析」
各皮膚生理指標として、相関が認めらなかった角層パラメータを含めた20個の角層パラメータ値を説明変数として、重回帰分析した。重回帰直線の式(Y=a1X1+a2X2+・・・+a14X14+b、Xnが各角層パラメータ値、Yがマーカータンパク量)を表3、4に示す。
【0026】
【0027】
【0028】
表3、4に示す通り、本発明の(1)~(8)に記載の各角層パラメータ値と、他のパラメータ値を組み合わせることにより、皮膚生理指標とより高い相関が認められた。