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特開2024-19968柱梁接合方法及び柱梁接合の際に用いられる位置調整用治具
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024019968
(43)【公開日】2024-02-14
(54)【発明の名称】柱梁接合方法及び柱梁接合の際に用いられる位置調整用治具
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/58 20060101AFI20240206BHJP
   E04B 1/24 20060101ALI20240206BHJP
   E04G 21/18 20060101ALI20240206BHJP
【FI】
E04B1/58 508S
E04B1/24 L
E04B1/58 505S
E04G21/18 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022122776
(22)【出願日】2022-08-01
(71)【出願人】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088580
【弁理士】
【氏名又は名称】秋山 敦
(74)【代理人】
【識別番号】100195453
【弁理士】
【氏名又は名称】福士 智恵子
(74)【代理人】
【識別番号】100205501
【弁理士】
【氏名又は名称】角渕 由英
(72)【発明者】
【氏名】島袋 孝博
【テーマコード(参考)】
2E125
2E174
【Fターム(参考)】
2E125AA03
2E125AA13
2E125AB01
2E125AB16
2E125AE12
2E125AG04
2E125AG12
2E125AG14
2E125AG43
2E125BB02
2E125CA03
2E125EB12
2E174AA01
2E174BA03
2E174DA13
2E174DA37
2E174DA38
2E174DA58
2E174DA63
(57)【要約】
【課題】柱の接合部と梁の端部の位置を合わせることができ、作業員の負担を軽減することが可能な柱梁接合方法と、柱梁接合の際に用いられる位置調整用治具を提供する。
【解決手段】柱PLと梁BMを接合する柱梁接合方法は、柱PLの間に梁BMを配置する工程と、一方の柱PLの接合プレートPL1に梁BMの一方の端部を仮固定する工程と、他方の柱PLの接合プレートPL1と梁BMの他方の端部を位置合わせする位置合わせ工程と、他方の柱PLに梁BMを仮固定する工程と、本固定する工程と、を含んでいる。位置合わせ工程は、柱PLの側面から離隔した位置に位置調整用治具10を固定する工程と、柱PLの側面と位置調整用治具10との間にバールBRを挿入する工程と、バールBRを操作して、柱PLの側面及び位置調整用治具10を互いに離隔する方向に押圧し、柱PLを、梁の端部から離隔する方向に変位させる工程と、を有している。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
柱の側面に設けられた接合部と梁の長手方向の端部との位置を合わせるために用いられる位置調整用治具と、長尺の押圧工具と、を用いて前記柱と前記梁の位置合わせを行い、前記柱と前記梁を接合する方法であって、
所定の間隔を隔てて立設された一対の柱の間に前記梁を配置する配置工程と、
一方の柱の前記接合部に対して、前記梁の長手方向の一方の端部を仮固定する第一の仮固定工程と、
他方の柱の前記接合部と前記梁の他方の端部を、前記位置調整用治具及び前記押圧工具を用いて位置合わせする位置合わせ工程と、
前記他方の柱の前記接合部に対して、前記他方の端部を仮固定する第二の仮固定工程と、
前記梁を、前記一対の柱に対して本固定する本固定工程と、を含み、
前記位置合わせ工程は、
前記他方の端部側において、前記他方の柱の前記側面から離隔した位置に前記位置調整用治具を固定する治具固定工程と、
前記他方の柱の前記側面と前記位置調整用治具との間に前記押圧工具を挿入する挿入工程と、
前記押圧工具を操作して、前記側面及び前記位置調整用治具を、互いに離隔する方向に押圧し、前記柱を、前記他方の端部から離隔する方向に変位させる押圧工程と、を有していることを特徴とする、柱梁接合方法。
【請求項2】
前記位置調整用治具は、H型鋼からなる前記梁のフランジ部に固定される固定板部と、前記側面から離隔した位置で前記固定板部から垂直に延びる垂直板部と、を備え、
前記押圧工程では、前記押圧工具の長手方向の一端側を操作し、前記押圧工具の他端側によって前記側面及び前記垂直板部を、互いに離隔する方向に押圧することを特徴とする請求項1に記載の柱梁接合方法。
【請求項3】
前記押圧工程では、前記押圧工具によって前記位置調整用治具を水平な方向に変位させることによって、前記梁の前記他方の端部を水平な方向に変位させることを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載の柱梁接合方法。
【請求項4】
前記位置合わせ工程は、前記押圧工具を、前記位置調整用治具の上下方向の端部に当接させて押圧することによって、前記梁の前記他方の端部を上下方向に変位させる昇降工程を有していることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の柱梁接合方法。
【請求項5】
前記治具固定工程では、前記位置調整用治具を、前記梁の短手方向において、前記梁のフランジ部の前記接合部に近接する側に固定することを特徴とする請求項2に記載の柱梁接合方法。
【請求項6】
柱の側面に設けられた接合部に、H型鋼からなる梁を接合する際に、前記接合部と前記梁の長手方向の端部の位置を合わせるために、長尺の押圧工具とともに用いられる位置調整用治具であって、
前記梁の前記端部側において、前記梁のフランジ部に固定される固定板部と、
前記側面から離隔した位置で前記固定板部から垂直に延びる垂直板部と、を備え、
前記側面と前記垂直板部の間に挿入される前記押圧工具によって、前記側面及び前記垂直板部が、互いに離隔する方向に押圧された際に、前記柱を、前記梁の前記端部から離隔する方向に変位させることを特徴とする位置調整用治具。
【請求項7】
前記位置調整用治具は、前記固定板部及び前記垂直板部に接続する複数の補強板を有し、前記補強板は、前記垂直板部の上下方向の全長に亘って延びていることを特徴とする請求項6に記載の位置調整用治具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、柱梁接合方法及び柱梁接合の際に用いられる位置調整用治具に係り、特にエンドプレート方式による柱梁接合方法及びエンドプレート方式による柱梁接合の際に用いられる位置調整用治具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、鉄骨造建物における柱梁接合方式として、エンドプレート方式が採用されている。エンドプレート方式とは、柱の接合部(パネルゾーン)に固定された接合プレートと、梁の端部に固定されたエンドプレートと、を互いにボルトで締結して固定することによって柱と梁を接合する方式である。
エンドプレート方式の柱梁接合によれば、柱と梁を溶接することなく、十分な強度で、かつ容易に接合することが可能となる。
【0003】
エンドプレート方式の柱梁接合では、最初に、梁を吊り上げて、所定の間隔を隔てて立設された一対の柱の間に介在させる。続いて、柱と梁の接合部の位置合わせを行った後に、柱に対して梁を仮固定し、最後に本固定する作業が行われる。
特許文献1には、エンドプレート方式の柱梁接合において、柱と梁の間の位置合わせを容易に行うことが可能な仮ボルトが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-100979号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載された仮ボルトによって、柱梁接合における位置合わせと仮固定の作業効率を向上し、作業負担の軽減を図ることができる。しかしながら、柱梁接合における更なる作業負担の軽減が望まれていた。具体的に説明すると、所定の間隔を隔てて立設された一対の柱の間に梁を吊り上げた際に、梁の端部が柱の接合部と干渉してしまうことにより、一対の柱の間に梁を介在させ、接合部の位置を合わせることが困難な場合があった。このとき、作業員は、ハンマー等を用いて柱又は梁に対して大きな力を与えて接合部の位置を合わせなければならず、作業員の負担が大きかった。
【0006】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、柱の接合部と梁の端部の位置を合わせることができ、作業員の負担を軽減することが可能な柱梁接合方法と、柱梁接合の際に用いられる位置調整用治具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題は、本発明の柱梁接合方法によれば、柱の側面に設けられた接合部と梁の長手方向の端部との位置を合わせるために用いられる位置調整用治具と、長尺の押圧工具と、を用いて前記柱と前記梁の位置合わせを行い、前記柱と前記梁を接合する方法であって、所定の間隔を隔てて立設された一対の柱の間に前記梁を配置する配置工程と、一方の柱の前記接合部に対して、前記梁の長手方向の一方の端部を仮固定する第一の仮固定工程と、他方の柱の前記接合部と前記梁の他方の端部を、前記位置調整用治具及び前記押圧工具を用いて位置合わせする位置合わせ工程と、前記他方の柱の前記接合部に対して、前記他方の端部を仮固定する第二の仮固定工程と、前記梁を、前記一対の柱に対して本固定する本固定工程と、を含み、前記位置合わせ工程は、前記他方の端部側において、前記他方の柱の前記側面から離隔した位置に前記位置調整用治具を固定する治具固定工程と、前記他方の柱の前記側面と前記位置調整用治具との間に前記押圧工具を挿入する挿入工程と、前記押圧工具を操作して、前記側面及び前記位置調整用治具を、互いに離隔する方向に押圧し、前記柱を、前記他方の端部から離隔する方向に変位させる押圧工程と、を有していることにより解決される。
【0008】
上記構成によれば、梁に対して位置調整用治具を固定し、柱の側面と位置調整用治具の間に押圧工具を挿入した状態で押圧工具を操作することによって、柱と位置調整用治具を、互いに離隔する方向に押圧し、柱を梁の端部から離隔する方向に変位させることができる。そのため、柱の接合部と梁の端部が干渉することが抑制され、これにより、ハンマー等を用いて柱又は梁に対して大きな力を与えることなく、柱の接合部と梁の端部の位置を合わせることができ、作業員の負担を軽減することが可能となる。
【0009】
また、前記位置調整用治具は、H型鋼からなる前記梁のフランジ部に固定される固定板部と、前記側面から離隔した位置で前記固定板部から垂直に延びる垂直板部と、を備え、
前記押圧工程では、前記押圧工具の長手方向の一端側を操作し、前記押圧工具の他端側によって前記側面及び前記垂直板部を、互いに離隔する方向に押圧すると好適である。
上記構成によれば、長尺形状を有する押圧工具の一端側を操作すると、梃子の原理によって、柱と位置調整用治具を互いに離隔する方向に押圧することができる。そのため、より少ない力で柱の接合部と梁の端部の位置を合わせることができ、作業員の負担を軽減することが可能となる。
【0010】
また、前記押圧工程では、前記押圧工具によって前記位置調整用治具を水平な方向に変位させることによって、前記梁の前記他方の端部を水平な方向に変位させると好適である。
上記構成によれば、ハンマー等を用いて梁に対して大きな力を与えることなく、梁の端部を水平な方向に変位させることができる。そのため、作業員の負担を軽減することが可能となる。
【0011】
また、前記位置合わせ工程は、前記押圧工具を、前記位置調整用治具の上下方向の端部に当接させて押圧することによって、前記梁の前記他方の端部を上下方向に変位させる昇降工程を有していると好適である。
上記構成によれば、ハンマー等を用いて梁に対して大きな力を与えることなく、梁の端部を上下方向に変位させることができる。そのため、作業員の負担を軽減することが可能となる。
【0012】
また、前記治具固定工程では、前記位置調整用治具を、前記梁の短手方向において、前記梁のフランジ部の前記接合部に近接する側に固定すると好適である。
上記構成によれば、位置調整用治具を短手方向の一方側に固定することによって、位置調整用治具の大型化を抑制しつつ、位置調整用治具を柱の側面と対向するように配置することができ、押圧工具を操作することによって柱の接合部と梁の端部の位置を合わせることが可能となる。
【0013】
前記課題は、本発明の位置調整用治具によれば、柱の側面に設けられた接合部に、H型鋼からなる梁を接合する際に、前記接合部と前記梁の長手方向の端部の位置を合わせるために、長尺の押圧工具とともに用いられる位置調整用治具であって、前記梁の前記端部側において、前記梁のフランジ部に固定される固定板部と、前記側面から離隔した位置で前記固定板部から垂直に延びる垂直板部と、を備え、前記側面と前記垂直板部の間に挿入される前記押圧工具によって、前記側面及び前記垂直板部が、互いに離隔する方向に押圧された際に、前記柱を、前記梁の前記端部から離隔する方向に変位させることにより解決される。
【0014】
上記構成によれば、梁に対して位置調整用治具を固定し、柱の側面と位置調整用治具の間に押圧工具を挿入した状態で押圧工具を操作することによって、柱と位置調整用治具を、互いに離隔する方向に押圧し、柱を梁の端部から離隔する方向に変位させることができる。そのため、柱の接合部と梁の端部が干渉することが抑制され、これにより、ハンマー等を用いて柱又は梁に対して大きな力を与えることなく、柱の接合部と梁の端部の位置を合わせることができ、作業員の負担を軽減することが可能となる。
【0015】
また、前記位置調整用治具は、前記固定板部及び前記垂直板部に接続する複数の補強板を有し、前記補強板は、前記垂直板部の上下方向の全長に亘って延びていると好適である。
上記構成によれば、補強板が固定板部及び直立部に接続しているため、押圧工具によって直立部に対して大きな力が作用したとしても、垂直板部の変形又は損傷等を抑制することが可能となる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の柱梁接合方法及び柱梁接合する際に用いられる位置調整用治具によれば、大きな力を与えることなく柱の接合部と梁の端部の位置を合わせることができ、作業員の負担を軽減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本実施形態における柱梁接合の基本構造を示す分解斜視図である。
図2】柱梁接合の基本構造を示す平面断面図である。
図3】位置調整用治具の斜視図である。
図4】位置調整用治具の正面図である。
図5】位置調整用治具の平面図である。
図6】梁を柱に接合する手順を示す図である。
図7】位置合わせ前の柱と梁の位置関係を示す平面図である。
図8】柱と位置調整用治具の間にバールを挿入した状態を示す平面図である。
図9】水平方向に位置を合わせた後の柱と梁の位置関係を示す平面図である。
図10A】柱と梁の上下方向の位置合わせを説明するための正面図である。
図10B】柱と梁の上下方向の位置合わせを説明するための平面図である。
図11】変形例に係る位置調整用治具の斜視図である。
図12】位置調整用治具の正面図である。
図13】位置調整用治具の平面図である。
図14】可動部材の先端部を柱に当接させた状態を示す平面図である。
図15】位置合わせ前の柱脚と布基礎を示す斜視図である。
図16】柱脚と布基礎の位置合わせを説明するための斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図1から図10Bを参照しながら、本発明の一実施形態(以下、本実施形態)に係る柱梁接合方法及び柱梁接合する際に用いられる位置調整用治具10について説明する。ただし、以下に説明する実施形態は、本発明の理解を容易にするための一例に過ぎず、本発明を限定するものではない。つまり、本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに、本発明にはその等価物が含まれることはもちろんである。
【0019】
本発明の柱梁接合方法は、所定の間隔を隔てて立設された一対の柱の間に梁を架設して柱梁接合するために用いられる。また、本発明の位置調整用治具は、柱の側面に設けられた接合部と梁の端部の位置合わせを行うために用いられる。
【0020】
<<柱梁接合構造>>
図1及び図2は、柱梁接合の基本構造を示す図である。図1は、柱PLと梁BMが分離した状態の斜視図を示している。図2は、柱PLと梁BMが接合した状態の平面断面図を示している。図1及び図2に示すように、エンドプレート方式の柱梁接合構造において、柱PLの側面に固定された柱プレートPL1と、梁BMの端部に固定されたエンドプレートBM1が、高力ボルトHBによってボルト結合される。これにより、柱PLと梁BMが接合される。図1及び図2において、1本の柱PLのみが図示されているが、所定の間隔を隔てて一対の柱PLが立設され、一対の柱PLの間に梁BMが架設されるように接合される。
【0021】
柱PLは、鋼製の角型柱である柱本体PL3と、柱本体PL3の側面に溶接された柱プレートPL1と、を主な構成として有している。柱プレートPL1は、梁BMが接合される接合部であって、柱本体PL3に溶接によって固定されている。柱プレートPL1は、鋼板であって、高力ボルトHBと螺合可能なねじ孔PL2が形成されている。
【0022】
梁BMは、H型鋼であって、上フランジBM4と、下フランジBM5と、上フランジBM4及び下フランジBM5を上下に連結するウェブBM3と、を主な構成として有している。上フランジBM4には、後述する位置調整用治具10を固定する治具固定孔BM6が形成されている。図1において、治具固定孔BM6は、上フランジBM4に形成されているが、さらに下フランジBM5に形成されていてもよい。位置調整用治具10については後述する。上フランジBM4及び下フランジBM5は、フランジ部に相当する。
梁BMの端部には、エンドプレートBM1が溶接によって固定されている。エンドプレートBM1は、鋼板であって、高力ボルトHBを挿通可能な貫通孔BM2が形成されている。
【0023】
図1において、柱プレートPL1には、左右に3つずつ、合計6つのねじ孔PL2が形成され、エンドプレートBM1には、6つの貫通孔BM2が形成されているように図示されているが、これに限定されない。8つ以上のねじ孔PL2及び貫通孔BM2が形成されていてもよい。
【0024】
<<位置調整用治具10>>
次に、柱梁接合する際に用いられる位置調整用治具10について説明する。図3から図5は、位置調整用治具10の外観図である。すなわち、図3は、位置調整用治具10の斜視図であり、図4は、位置調整用治具10の正面図であり、図5は、位置調整用治具10の平面図である。
【0025】
図3から図5に示すように、位置調整用治具10は、固定プレート11と、固定プレート11に連結された起立部材12と、を主な構成として有している。
【0026】
固定プレート11は、鋼製の板状体である。固定プレート11には、4つの固定孔11cが形成されている。固定孔11cは、固定プレート11を上下に貫通している。固定プレート11は、図8を参照して後述するように、治具固定ボルトBTを固定孔11cに挿通することによって梁BMの上フランジBM4に固定される。
【0027】
起立部材12は、固定プレート11よりも広い幅寸法を有するアングル材である。起立部材12は、接合壁12aと、接合壁12aから垂直に延びる起立壁12bと、を主な構成として有している。接合壁12aは、平坦な下面を有し、溶接によって固定プレート11の上面11aに接合される。固定プレート11と接合壁12aとが接合した状態において、起立壁12bは、固定プレート11から垂直に延びる。固定プレート11及び接合壁12aは固定板部に相当し、起立壁12bは、垂直板部に相当する。
【0028】
起立壁12bの上端、すなわち位置調整用治具10の上端には、平坦な上端面12cが形成されている。上端面12cは、起立壁12bの板厚と等しい厚み寸法を有し、水平方向に延びている。後述するように、上端面12cは、バールBRによる押圧力を受けて、梁BMを柱PLに対して上下方向に変位させるための受け部として機能する。
【0029】
図3から図5において、固定プレート11と起立部材12を別個の部材で構成することとして説明したが、固定プレート11と起立部材12を一体に構成してもよい。換言すると、位置調整用治具10は単一のアングル材によって構成されていてもよい。これにより、位置調整用治具10の部品点数を削減することが可能となる。
【0030】
接合壁12aと起立壁12bの間には、複数の補強プレート12dが配設されている。補強プレート12dは、略直角三角形の形状を有し、接合壁12aと起立壁12bとに接続している。補強プレート12dは、起立壁12bの上下方向の全長に亘って延びている。補強プレート12dによって、起立壁12bの強度が向上し、起立壁12bが変形、又は損傷することを抑制することができる。補強プレート12dは、補強板に相当する。
【0031】
<<柱梁接合方法>>
次に、柱梁接合方法について説明する。
図6は、建築現場における柱梁接合の作業手順を示している。図6に示すように、最初に、クレーン車等の揚重装置を用いて、所定の間隔を隔てて立設された一対の柱PLの間に梁BMが吊り下げられて配置される(ステップS10、配置工程)。
【0032】
次に、一対の柱PLのうち、一方の柱PLに対して、梁BMの一方の端部が仮固定される(ステップS12、第一の仮固定工程)。より詳細には、一方の柱PLの側面に設けられた柱プレートPL1と、梁BMの一方の端部に接合されたエンドプレートBM1を、仮ボルトを用いてボルト結合する。
【0033】
続いて、他方の柱PLの柱プレートPL1(接合部)と、梁BMの他方のエンドプレートBM1(端部)の位置合わせが行われる(ステップS14、位置合わせ工程)。ここで、位置合わせ工程について、図7から図10Bを参照して詳細に説明する。
【0034】
図7は、位置合わせ前の柱PLと梁BMの位置関係を示している。図7に示すように、位置合わせが行われる前では、柱プレートPL1とエンドプレートBM1が、互いに正対するように位置していない。そのため、柱プレートPL1とエンドプレートBM1を仮ボルトで結合して仮固定することができない。そのため、柱プレートPL1とエンドプレートBM1の位置合わせが必要となる。
【0035】
図8は、梁BMの上フランジBM4に位置調整用治具10を取り付けて、柱PLと位置調整用治具10との間にバールBRを挿入した状態を示している。
図8に示すように、位置調整用治具10は、上フランジBM4の上面であって、梁BMの短手方向における一方側(図8の右側であって、柱プレートPL1に近接する側)に固定される(治具固定工程)。換言すると、位置調整用治具10は、柱PLの側面と起立壁12bが互いに対向する位置関係となるように上フランジBM4の上面に取り付けられる。位置調整用治具10は、治具固定ボルトBTを用いて梁BMの短手方向の一方側に対してボルト結合される。これにより、位置調整用治具10の大型化を抑制しつつ柱PLの側面と起立壁12bとを対向させることができる。
【0036】
また、位置調整用治具10は、柱PLの側面と離隔した位置に固定される。換言すると、柱PLの側面と起立壁12bの間には、所定の空隙GPが形成される。空隙GPは、少なくとも柱プレートPL1の厚み寸法とエンドプレートBM1の厚み寸法の合計よりも大きな寸法を有している。また、空隙GPは、建築現場において一般工具として用いられるバールBRを挿入可能な寸法を有している。バールBRは、長手方向の所定の位置に屈曲部BR2を有する長尺体であって、釘抜き、又は金梃子用の工具として用いられる。バールBRは、押圧工具に相当する。
【0037】
作業者は、バールBRを柱PLの側面と起立壁12bの間の空隙GPに挿入する(挿入工程)。次に、作業者は、バールBRを操作することによって、柱PLの側面と位置調整用治具10を、互いに離隔する方向(図8の矢印A1が示す方向)に押圧し、柱PLを、エンドプレートBM1から離隔する方向に変位させることができる(押圧工程)。より詳細に説明すると、作業者は、まずバールBRの先端部BR1を起立壁12bに当接させるとともに、屈曲部BR2を柱PLの側面に当接させる。次に作業者は、先端部BR1とは反対側の端部を柱PLに近づけるように押圧することによって、柱PLの側面と起立壁12bを、互いに離隔する方向に押圧する。以上により、柱プレートPL1とエンドプレートBM1が互いに干渉しないように位置させることができ、これにより、一対の柱PLの間の距離が広がり、柱PLの間に梁BMを介在させ、柱PLと梁BMの位置合わせを行うことが可能となる。 また、バールBRの先端部BR1を作用点、屈曲部BR2を支点、先端部BR1とは反対側の端部を力点とした梃子の原理を利用することができるため、小さな力で柱PLと梁BMの位置合わせを行うことが可能となる。
【0038】
また作業者は、バールBRを操作することによって、位置調整用治具10を柱PLの側面に水平な方向であって、梁BMの短手方向(図8の矢印A2が示す方向)に変位させることによって、梁BMの端部を柱PLの側面と水平な方向に変位させることができる。より詳細に説明すると、作業車は、まずバールBRの先端部BR1を起立壁12bに当接させるとともに、屈曲部BR2を柱PLの側面に当接させる。次に作業者は、先端部BR1とは反対側の端部を柱PLに近づけるように押圧すると同時に、バールBRを矢印A2が示す方向に引き抜くように操作する。これにより、バールBRとともに位置調整用治具10及び梁BMを矢印A2が示す方向に変位させる。結果として、柱プレートPL1とエンドプレートBM1を、互いに正対するように位置させることが可能となる。
【0039】
図9は、柱PLと梁BMの位置合わせが行われて、柱プレートPL1とエンドプレートBM1が正対している状態を示している。このように、柱プレートPL1とエンドプレートBM1を正対させることによって、柱プレートPL1とエンドプレートBM1を仮ボルトで結合して仮固定することが可能となる。
【0040】
次に、柱PLと梁BMの上下方向の位置合わせについて説明する。
図10A及び図10Bは、柱PLと梁BMの上下方向の位置合わせを行う状態を示している。すなわち、図10Aは柱PL及び梁BMの正面図であって、図10Bは平面断面図である。
【0041】
図10A及び図10Bに示すように、位置調整用治具10は、上フランジBM4の上面であって、梁BMの短手方向の一方側(図10A及び図10Bの右側)に取り付けられる。上述したように、位置調整用治具10は、治具固定ボルトBTを用いて梁BMの上フランジBM4にボルト結合される。
【0042】
作業者は、バールBRを操作することによって、位置調整用治具10を柱プレートPL1に対して下方向(図10Aの矢印A3が示す方向)に力を加え、梁BMを下方に変位させることができる(昇降工程)。より詳細に説明すると、作業者は、まずバールBRの先端部BR1を、梁BMとは直交する方向において柱PLに接合された梁bmの上フランジbm4の下面に当接させる。次に作業者は、先端部BR1から延びる延伸部BR3を、位置調整用治具10の上端面12cに当接させる。続いて作業者は、バールBRを下方に向けて操作し、梁BMを下方に変位させる。これにより、柱プレートPL1とエンドプレートBM1が正対するように位置合わせすることが可能となる。
【0043】
以上のように、他方の柱PLに対して、梁BMの他方の端部を位置調整した後に、他方の柱PLに対して、梁BMの他方の端部が仮固定される(図6のステップS16、第二の仮固定工程)。より詳細には、他方の柱PLの側面に接合された柱プレートPL1と、梁BMの端部に固定されたエンドプレートBM1が、仮ボルトを用いてボルト結合される。
【0044】
最後に、一対の柱PLに対して梁BMが本固定される(ステップS18、本固定工程)。より詳細には、エンドプレートBM1及び柱プレートPL1に挿通された仮ボルトを取り外し、高力ボルトHBを締結する作業を順番に繰り返すことによって、梁BMは柱PLに対して本固定される。
以上の流れによって、柱PLに対して梁BMを接合することができる。
【0045】
<<変形例>>
以上、本発明の一実施形態に係る柱梁接合方法及び柱梁接合する際に用いられる位置調整用治具10について説明したが、上述した実施形態は、本発明の理解を容易にするための一例に過ぎず、本発明を限定するものではない。
上述した実施形態では、位置調整用治具10は、固定プレート11と起立部材12によって構成されていることとして説明したが、これに限定されない。位置調整用治具10は、固定プレート11、起立部材12とともに、可動部材13を備え、可動部材13によって柱PLと梁BMの位置調整を行うこととしてもよい。
【0046】
図11から図13は、変形例に係る位置調整用治具110の外観図である。すなわち、図11は、位置調整用治具110の斜視図であり、図12は、位置調整用治具110の正面図であり、図13は、位置調整用治具110の平面図である。
【0047】
図11から図13に示すように、変形例に係る位置調整用治具110は、固定プレート11と、固定プレート11に連結された起立部材12と、可動部材13と、を主な構成として有している。
【0048】
変形例に係る位置調整用治具110の起立壁12bには、起立壁12bを貫通するねじ挿通孔12eが形成されている。また、図13に示すように、起立壁12bの、ねじ挿通孔12eに対応する位置には、ナット12fが固定されている。ナット12fは、後述する可動部材113の位置調整ねじ13aと螺合するねじ溝が形成されている。図11から図13において、ねじ挿通孔12eが一つのみ形成されているが、複数のねじ挿通孔12eが起立壁12bに形成されていてもよい。また、ねじ挿通孔12eの位置は、図11から図13に示す位置に限定されない。
【0049】
可動部材13は、回転操作部13cが操作されることによって回転し、起立壁12bに直交する方向に変位する。後述するように、先端部13bを柱PLの側面に当接させた状態で回転操作部13cを操作することによって先端部13bを介して柱PLを梁BMから離隔する方向に押圧し、柱PLの位置を変位させることができる。
【0050】
図14は、梁BMの上フランジBM4に位置調整用治具110を取り付けるとともに、可動部材13の先端部13bを柱PLの側面に当接させた状態を示している。図14に示すように、位置調整用治具110は、上フランジBM4の上面であって、梁BMの短手方向の一方側(図14の右側)に取り付けられている。
【0051】
可動部材113の先端部13bは、柱PLの側面に当接している。そのため、回転操作部13cを操作することによって、柱PLの側面と位置調整用治具110を、互いに離間する方向(図14の矢印A1が示す方向)に押圧し、柱PLを、梁BMから離隔するように変位させることができる。これにより、柱プレートPL1とエンドプレートBM1が互いに干渉しないように位置させることができ、一対の柱PLの間の距離が広がり、柱PLの間に梁BMを介在させ、柱PLと梁BMの位置合わせを行うことが可能となる。
【0052】
このように、位置調整ねじ13aが形成された可動部材13によって柱PLの位置を変位させることによって、上述した実施形態と比べて、作業者の負担をより軽減することが可能となる。また、位置調整ねじ13aが形成された可動部材13によって柱PLの位置を変位させることによって、上述した実施形態と比べて、柱PLの位置を、より正確に位置合わせすることが可能となる。
【0053】
また作業者は、柱PLと起立壁12bの間に形成された空隙GPにバールBRを挿入することができる。そのため、作業者は、上述した実施形態と同様に、バールBRを操作して位置調整用治具10を柱PLの側面と平行な方向に変位させることによって、梁BMの端部を柱PLの側面と水平な方向に変位させることができる。これにより、柱プレートPL1とエンドプレートBM1を、互いに正対するように位置させることが可能となる。
【0054】
上述した実施形態において、位置調整用治具10は位置合わせ工程で梁BMに固定されることとして説明したが、これに限定されない。位置合わせ工程の前の例えば配置工程において、梁BMの上フランジBM4の上に位置調整用治具10が固定されてもよい。
【0055】
また、上述した実施形態において、位置調整用治具10は、上フランジBM4の上面に取り付けて、柱PLに対して梁BMの端部を下方に位置合わせすることとして説明したが、これに限定されない。位置調整用治具10は下フランジBM5の下面に取り付けられて、梁BMの端部を上方に変位させてもよい。これにより、梁BMを柱PLに対して上方に位置合わせすることができる。
【0056】
また、上述した実施形態において、柱PLと梁BMの位置合わせについて説明したが、柱PLを建物の基礎部に対して立設する際に、柱PLの柱脚PL4と、布基礎BSの位置合わせを行うために位置調整用治具10が用いられてもよい。
図15及び図16を参照して、柱脚PL4と布基礎BSの位置合わせ工程について説明する。
【0057】
図15は、位置合わせ前の柱脚PL4と布基礎BSを示している。図15において、柱PLは、クレーン車等の揚重装置(不図示)によって上方から吊り上げられている。柱脚PL4は、アンカーボルトABで固定されたベースプレートBPの下方に位置する柱脚基礎(不図示)に対して仮固定されている。
【0058】
図16は、布基礎BSの上面に、位置調整用治具10を固定した状態を示している。上述したように、位置調整用治具10は、固定プレート11を有し、固定プレート11に形成された固定孔11cを介して布基礎BSの上面に設けられた被固定部材に対して固定されている。
作業者は、可動部材13の回転操作部13cを回転操作することによって、柱脚PL4を、布基礎BSに対して適切な位置に位置合わせすることができる。
【符号の説明】
【0059】
10、110 位置調整用治具
11 固定プレート(固定板部)
11a 上面
11b 下面
11c 固定孔
12 起立部材
12a 接合壁
12b 起立壁(垂直板部)
12c 上端面
12d 補強プレート(補強版)
12e ねじ挿通孔
12f ナット
13 可動部材
13a 位置調整ねじ
13b 先端部
13c 回転操作部
PL 柱
PL1 柱プレート(接合部)
PL2 ねじ孔
PL3 柱本体
PL4 柱脚
BM、bm 梁
BM1 エンドプレート
BM2 貫通孔
BM3 ウェブ
BM4 上フランジ(フランジ部)
BM5 下フランジ(フランジ部)
BM6 治具固定孔
HB 高力ボルト
BR バール(押圧工具)
BR1 先端部
BR2 屈曲部
BR3 延伸部
BT 治具固定ボルト
GP 空隙
BS 布基礎
AB アンカーボルト
BP ベースプレート
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10A
図10B
図11
図12
図13
図14
図15
図16