(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024019969
(43)【公開日】2024-02-14
(54)【発明の名称】柱梁接合方法及び柱梁接合の際に用いられる位置調整用治具
(51)【国際特許分類】
E04B 1/58 20060101AFI20240206BHJP
E04B 1/24 20060101ALI20240206BHJP
E04G 21/18 20060101ALI20240206BHJP
【FI】
E04B1/58 508S
E04B1/24 L
E04B1/58 505S
E04G21/18 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022122777
(22)【出願日】2022-08-01
(71)【出願人】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088580
【弁理士】
【氏名又は名称】秋山 敦
(74)【代理人】
【識別番号】100195453
【弁理士】
【氏名又は名称】福士 智恵子
(74)【代理人】
【識別番号】100205501
【弁理士】
【氏名又は名称】角渕 由英
(72)【発明者】
【氏名】島袋 孝博
【テーマコード(参考)】
2E125
2E174
【Fターム(参考)】
2E125AA03
2E125AA13
2E125AB01
2E125AB16
2E125AE12
2E125AG04
2E125AG12
2E125AG14
2E125AG43
2E125BB02
2E125CA03
2E125EB12
2E174AA01
2E174BA03
2E174DA13
2E174DA37
2E174DA38
2E174DA58
2E174DA63
(57)【要約】
【課題】柱の接合部と梁の端部の位置を合わせることができ、作業員の負担を軽減することが可能な柱梁接合方法と、柱梁接合の際に用いられる位置調整用治具を提供する。
【解決手段】
柱PLと梁BMを接合する柱梁接合方法は、柱PLの間に梁BMを配置する工程と、一方の柱PLの接合プレートPL1に梁BMの一方の端部を仮固定する工程と、他方の柱PLの接合プレートPL1と梁BMの他方の端部を位置合わせする工程と、他方の柱PLに梁BMの他方の端部を仮固定する工程と、本固定する工程とを含んでいる。位置合わせ工程は、第一の方向における柱PLと梁BMとの間の距離を変更する第一の距離変更工程と、第一の方向と直交する第二の方向における柱PLと梁BMとの間の距離を変更する第二の距離変更工程と、を有している。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
角型柱の側面に設けられた接合部と梁の長手方向の端部の位置を合わせるために用いられる位置調整用治具を用いて前記角型柱と前記梁の位置合わせを行い、前記角型柱と前記梁を接合する方法であって、
所定の間隔を隔てて立設された一対の角型柱の間に前記梁を配置する配置工程と、
一方の角型柱の前記接合部に対して、前記梁の長手方向の一方の端部を仮固定する第一の仮固定工程と、
他方の角型柱の前記接合部と前記梁の他方の端部を、前記位置調整用治具を用いて位置合わせする位置合わせ工程と、
前記他方の角型柱の前記接合部に対して、前記梁の他方の端部を仮固定する第二の仮固定工程と、
前記梁を、前記一対の角型柱に対して本固定する本固定工程と、を含み、
前記位置調整用治具は、第一の方向における前記角型柱と前記梁との間の距離を変更する第一の距離変更部材と、
前記第一の距離変更部材と連結されて、前記第一の方向と直交する第二の方向における前記角型柱と前記梁との間の距離を変更する第二の距離変更部材と、を備え、
前記位置合わせ工程は、
前記梁の他方の端部側に前記位置調整用治具を固定する治具固定工程と、
前記第一の距離変更部材を、前記角型柱の前記接合部が設けられた側面と当接させ、前記第一の方向における前記角型柱と前記梁との間の距離を変更する第一の距離変更工程と、
前記第二の距離変更部材を、前記角型柱の前記接合部が設けられた側面と直交する側面と当接させ、前記第二の方向における前記角型柱と前記梁との間の距離を変更する第二の距離変更工程と、を有することを特徴とする柱梁接合方法。
【請求項2】
前記第一の距離変更部材は、
前記第一の方向に貫通する第一の挿通孔が形成され、H型鋼からなる前記梁のフランジ部に固定される第一の固定部材と、
前記第一の挿通孔と螺合し、前記第一の方向に変位する第一の可動部材と、を有し、
前記第二の距離変更部材は、
前記第二の方向に貫通する第二の挿通孔が形成され、前記第一の固定部材に固定された第二の固定部材と、
前記第二の挿通孔と螺合し、前記第二の方向に変位する第二の可動部材と、を有し、
前記第一の距離変更工程では、前記第一の可動部材を前記第一の挿通孔に対して回転させ、
前記第二の距離変更工程では、前記第二の可動部材を前記第二の挿通孔に対して回転させることを特徴とする請求項1に記載の柱梁接合方法。
【請求項3】
前記第一の方向は、前記梁の長手方向であって、
前記第一の距離変更工程では、前記角型柱を前記梁の長手方向の端部から離隔する方向に変位させ、
前記第二の方向は、前記梁の短手方向であって、
前記第二の距離変更工程は、前記第一の距離変更工程の後に行われ、前記第一の前記梁を該梁の短手方向に変位させることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の柱梁接合方法。
【請求項4】
角型柱の側面に設けられた接合部に、H型鋼からなる梁を接合する際に、前記接合部と前記梁の長手方向の端部の位置を合わせるために用いられる位置調整用治具であって、
第一の方向における前記角型柱と前記梁の間の距離を変更する第一の距離変更部材と、
前記第一の距離変更部材と連結されて、前記第一の方向と直交する第二の方向における前記角型柱と前記梁との間の距離を変更する第二の距離変更部材と、を備え、
前記第一の距離変更部材は、
前記梁のフランジ部に固定される第一の固定部材と、
長尺形状を有し、前記第一の固定部材に取り付けられて、前記角型柱の前記接合部が設けられた側面と当接し、前記第一の固定部材に対して前記第一の方向に変位する第一の可動部材と、を有し、
前記第二の距離変更部材は、
前記第一の固定部材に固定された第二の固定部材と、
長尺形状を有し、前記第二の固定部材に取り付けられて、前記角型柱の前記接合部が設けられた側面と直交する側面と当接し、前記第二の固定部材に対して前記第二の方向に変位する第二の可動部材と、を有することを特徴とする位置調整用治具。
【請求項5】
前記第一の固定部材には、前記第一の方向に貫通する第一の挿通孔が形成され、
前記第一の可動部材は、前記第一の挿通孔と螺合して前記第一の方向に変位し、
前記第二の固定部材には、前記第二の方向に貫通する第二の挿通孔が形成され、
前記第二の可動部材は、前記第二の挿通孔と螺合して前記第二の方向に変位することを特徴とする請求項4に記載の位置調整用治具。
【請求項6】
前記第一の固定部材は、前記梁のフランジ部に固定され、前記第一の可動部材は、前記接合部が設けられた側面と直交する方向に変位することを特徴とする請求項4又は請求項5に記載の位置調整用治具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、柱梁接合方法及び柱梁接合の際に用いられる位置調整用治具に係り、特にエンドプレート方式による柱梁接合方法及びエンドプレート方式による柱梁接合の際に用いられる位置調整用治具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、鉄骨造建物における柱梁接合方式として、エンドプレート方式が採用されている。エンドプレート方式とは、柱の接合部(パネルゾーン)に固定された接合プレートと、梁の端部に固定されたエンドプレートと、を互いにボルトで締結して固定することによって柱と梁を接合する方式である。
エンドプレート方式の柱梁接合によれば、柱と梁を溶接することなく、十分な強度で、かつ容易に接合することが可能となる。
【0003】
エンドプレート方式の柱梁接合では、最初に、梁を吊り上げて、所定の間隔を隔てて立設された一対の柱の間に介在させる。続いて、柱と梁の接合部の位置合わせを行った後に、柱に対して梁を仮固定し、最後に本固定する作業が行われる。
特許文献1には、エンドプレート方式の柱梁接合において、柱と梁の間の位置合わせを容易に行うことが可能な仮ボルトが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載された仮ボルトによって、柱梁接合における位置合わせと仮固定の作業効率を向上し、作業負担の軽減を図ることができる。しかしながら、柱梁接合における更なる作業負担の軽減が望まれていた。具体的に説明すると、所定の間隔を隔てて立設された一対の柱の間に梁を吊り上げた際に、梁の端部が柱の接合部と干渉してしまうことにより、一対の柱の間に梁を介在させ、接合部の位置を合わせることが困難な場合があった。このとき、作業員は、ハンマー等を用いて柱又は梁に対して大きな力を与えて接合部の位置合わせをしなければならず、作業員の負担が大きかった。
【0006】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、柱の接合部と梁の端部の位置を合わせることができ、作業員の負担を軽減することが可能な柱梁接合方法と、柱梁接合の際に用いられる位置調整用治具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題は、本発明の柱梁接合方法によれば、角型柱の側面に設けられた接合部と梁の長手方向の端部の位置を合わせるために用いられる位置調整用治具を用いて前記角型柱と前記梁の位置合わせを行い、前記角型柱と前記梁を接合する方法であって、所定の間隔を隔てて立設された一対の角型柱の間に前記梁を配置する配置工程と、一方の角型柱の前記接合部に対して、前記梁の長手方向の一方の端部を仮固定する第一の仮固定工程と、他方の角型柱の前記接合部と前記梁の他方の端部を、前記位置調整用治具を用いて位置合わせする位置合わせ工程と、前記他方の角型柱の前記接合部に対して、前記梁の他方の端部を仮固定する第二の仮固定工程と、前記梁を、前記一対の角型柱に対して本固定する本固定工程と、を含み、前記位置調整用治具は、第一の方向における前記角型柱と前記梁との間の距離を変更する第一の距離変更部材と、前記第一の距離変更部材と連結されて、前記第一の方向と直交する第二の方向における前記角型柱と前記梁との間の距離を変更する第二の距離変更部材と、を備え、前記位置合わせ工程は、前記梁の他方の端部側に前記位置調整用治具を固定する治具固定工程と、前記第一の距離変更部材を、前記角型柱の前記接合部が設けられた側面と当接させ、前記第一の方向における前記角型柱と前記梁との間の距離を変更する第一の距離変更工程と、前記第二の距離変更部材を、前記角型柱の前記接合部が設けられた側面と直交する側面と当接させ、前記第二の方向における前記角型柱と前記梁との間の距離を変更する第二の距離変更工程と、を有することにより解決される。
【0008】
上記構成によれば、梁に対して位置調整用治具を固定し、第一の距離変更部材、及び第二の距離変更部材を操作して、それぞれ第一の方向、及び第二の方向における角形柱と梁の間の距離を変更し、柱と梁の位置合わせを行うことができる。そのため、柱の接合部と梁の端部が干渉することが抑制され、ハンマー等を用いて柱又は梁に対して大きな力を与えることなく、柱の接合部と梁の端部の位置を合わせることができ、作業員の負担を軽減することが可能となる。
【0009】
また、前記第一の距離変更部材は、前記第一の方向に貫通する第一の挿通孔が形成され、H型鋼からなる前記梁のフランジ部に固定される第一の固定部材と、前記第一の挿通孔と螺合し、前記第一の方向に変位する第一の可動部材と、を有し、前記第二の距離変更部材は、前記第二の方向に貫通する第二の挿通孔が形成され、前記第一の固定部材に固定された第二の固定部材と、前記第二の挿通孔と螺合し、前記第二の方向に変位する第二の可動部材と、を有し、前記第一の距離変更工程では、前記第一の可動部材を前記第一の挿通孔に対して回転させ、前記第二の距離変更工程では、前記第二の可動部材を前記第二の挿通孔に対して回転させると好適である。
上記構成によれば、ねじ構造によって第一可動部材及び第二の可動部材をそれぞれ第一の方向、及び第二の方向に変位させることができる。これにより、ハンマー等を用いて柱又は梁に対して大きな力を与えることなく、高い精度で柱と梁の位置を合わせることが可能となる。
【0010】
また、前記第一の方向は、前記梁の長手方向であって、前記第一の距離変更工程では、前記角型柱を前記梁の長手方向の端部から離隔する方向に変位させ、前記第二の方向は、前記梁の短手方向であって、前記第二の距離変更工程は、前記第一の距離変更工程の後に行われ、前記第一の前記梁を該梁の短手方向に変位させると好適である。
上記構成によれば、第一の距離変更工程によって柱の接合部と梁の端部の間の距離が変更されて、柱の接合部が梁の端部と干渉することが抑制される。そのため、第一の距離変更工程の後に行われる第二の距離変更工程で、ハンマー等を用いて柱又は梁に対して大きな力を与えることなく、梁の短手方向における柱と梁の位置を合わせることが可能となり、作業員の負担を軽減することが可能となる。
【0011】
前記課題は、本発明の位置調整用治具によれば、角型柱の側面に設けられた接合部に、H型鋼からなる梁を接合する際に、前記接合部と前記梁の長手方向の端部の位置を合わせるために用いられる位置調整用治具であって、第一の方向における前記角型柱と前記梁の間の距離を変更する第一の距離変更部材と、前記第一の距離変更部材と連結されて、前記第一の方向と直交する第二の方向における前記角型柱と前記梁との間の距離を変更する第二の距離変更部材と、を備え、前記第一の距離変更部材は、前記梁のフランジ部に固定される第一の固定部材と、長尺形状を有し、前記第一の固定部材に取り付けられて、前記角型柱の前記接合部が設けられた側面と当接し、前記第一の固定部材に対して前記第一の方向に変位する第一の可動部材と、を有し、前記第二の距離変更部材は、前記第一の固定部材に固定された第二の固定部材と、長尺形状を有し、前記第二の固定部材に取り付けられて、前記角型柱の前記接合部が設けられた側面と直交する側面と当接し、前記第二の固定部材に対して前記第二の方向に変位する第二の可動部材と、を有することにより解決される。
【0012】
上記構成によれば、梁に対して位置調整用治具を固定し、第一の距離変更部材、及び第二の距離変更部材を操作して、それぞれ第一の方向、及び第二の方向における角形柱と梁の間の距離を変更し、これにより角形柱と梁の位置合わせを行うことができる。そのため、柱の接合部と梁の端部が干渉することが抑制され、これにより、ハンマー等を用いて柱又は梁に対して大きな力を与えることなく、柱の接合部と梁の端部の位置を合わせることができ、作業員の負担を軽減することが可能となる。
【0013】
また、前記第一の固定部材には、前記第一の方向に貫通する第一の挿通孔が形成され、前記第一の可動部材は、前記第一の挿通孔と螺合して前記第一の方向に変位し、前記第二の固定部材には、前記第二の方向に貫通する第二の挿通孔が形成され、前記第二の可動部材は、前記第二の挿通孔と螺合して前記第二の方向に変位すると好適である。
上記構成によれば、ねじ構造によって第一の可動部材及び第二の可動部材をそれぞれ第一の方向、及び第二の方向に変位させることができる。これにより、ハンマー等を用いて柱又は梁に対して大きな力を与えることなく、高い精度で柱と梁の位置を合わせることが可能となる。
【0014】
また、前記第一の固定部材は、前記梁のフランジ部に固定され、前記第一の可動部材は、前記接合部が設けられた側面と直交する方向に変位すると好適である。
上記構成によれば、第一可動部材は接合部が設けられた側面と直交する方向に変位するため、第一可動部材を変位させることによって、柱を梁の端部から離隔する方向に効果的に力を加えることが可能となる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の柱梁接合方法及び柱梁接合する際に用いられる位置調整用治具によれば、大きな力を与えることなく柱の接合部と梁の端部の位置を合わせることができ、作業員の負担を軽減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本実施形態における柱梁接合の基本構造を示す分解斜視図である。
【
図2】柱梁接合の基本構造を示す平面断面図である。
【
図6】位置合わせ前の柱と梁の位置関係を示す図である。
【
図7】梁の長手方向における柱と梁の位置合わせを説明するための平面図である。
【
図8】梁の短手方向における柱と梁の位置合わせを説明するための平面図である。
【
図9】位置を合わせた後の柱と梁の位置関係を説明するための平面図である。
【
図10A】柱と梁の上下方向の位置合わせを説明するための正面図である。
【
図10B】柱と梁の上下方向の位置合わせを説明するための平面図である。
【
図11】位置合わせ前の柱脚と布基礎を示す斜視図である。
【
図12】柱脚と布基礎の位置合わせを説明するための斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、
図1から
図10Bを参照しながら、本発明の一実施形態(以下、本実施形態)に係る柱梁接合方法及び柱梁接合する際に用いられる位置調整用治具10について説明する。ただし、以下に説明する実施形態は、本発明の理解を容易にするための一例に過ぎず、本発明を限定するものではない。つまり、本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに、本発明にはその等価物が含まれることはもちろんである。
【0018】
本発明の柱梁接合方法は、所定の間隔を隔てて立設された一対の角型柱の間に梁を架設して柱梁接合するために用いられる。また、本発明の位置調整用治具は、角型柱の側面に設けられた接合部(第一施工部材)と梁(第二施工部材)の端部の位置合わせを行うために用いられる。
【0019】
<<柱梁接合構造>>
図1及び
図2は、柱梁接合の基本構造を示す図である。
図1は、柱PLと梁BMが分離した状態の斜視図を示している。
図2は、柱PLと梁BMが接合した状態の平面断面図を示している。
図1及び
図2に示すように、エンドプレート方式の柱梁接合構造において、柱PLの側面に固定された柱プレートPL1と、梁BMの端部に固定されたエンドプレートBM1が、高力ボルトHBによってボルト結合される。これにより、柱PLと梁BMが接合される。
図1及び
図2において、1本の柱PLのみが図示されているが、所定の間隔を隔てて一対の柱PLが立設され、一対の柱PLの間に梁BMが架設されるように接合される。
【0020】
柱PLは、鋼製の角型柱である柱本体PL3と、柱本体PL3の側面に溶接された柱プレートPL1と、を主な構成として有している。柱プレートPL1は、梁BMが接合される接合部であって、柱本体PL3に溶接によって固定されている。柱プレートPL1は、鋼板であって、高力ボルトHBと螺合可能なねじ孔PL2が形成されている。
【0021】
梁BMは、H型鋼であって、上フランジBM4と、下フランジBM5と、上フランジBM4及び下フランジBM5を上下に連結するウェブBM3と、を主な構成として有している。上フランジBM4には、後述する位置調整用治具10を固定する治具固定孔BM6が形成されている。
図1において、治具固定孔BM6は、上フランジBM4に形成されているが、さらに下フランジBM5に形成されていてもよい。位置調整用治具10については後述する。上フランジBM4及び下フランジBM5は、フランジ部に相当する。
梁BMの端部には、エンドプレートBM1が溶接によって固定されている。エンドプレートBM1は、鋼板であって、高力ボルトHBを挿通可能な貫通孔BM2が形成されている。
【0022】
図1において、柱プレートPL1には、左右に3つずつ、合計6つのねじ孔PL2が形成され、エンドプレートBM1には、6つの貫通孔BM2が形成されているように図示されているが、これに限定されない。8つ以上のねじ孔PL2及び貫通孔BM2が形成されていてもよい。
【0023】
<<位置調整用治具10>>
次に、柱梁接合する際に用いられる位置調整用治具10について説明する。
図3及び
図4は、位置調整用治具10の外観を示す図である。すなわち、
図3は、位置調整用治具10の斜視図であり、
図4は、位置調整用治具10の平面図である。
【0024】
図3及び
図4に示すように、位置調整用治具10は、第一の距離変更部材11と、第二の距離変更部材14と、を主な構成として有している。
【0025】
第一の距離変更部材11は、梁BMに固定されて、梁BMの長手方向(第一の方向に相当する)における柱PLと梁BMの間の距離を変更する役割を担う。
第一の距離変更部材11は、梁BMの上フランジBM4に対して取り付けられる第一の固定部材12と、第一の固定部材12に対して変位する第一の可動部材13と、を主な構成として有している。
【0026】
第一の固定部材12は、断面が略L字形状を有する長尺体であって、梁BMの上フランジBM4に対して接合される第一の固定プレート12aと、第一の固定プレート12aから垂直に延びる第一の起立プレート12bとを有する鋼製のアングル材である。
第一の固定プレート12aには、3つの固定孔12dが形成されている。固定孔12dは、第一の固定プレート12aを貫通している。第一の固定プレート12aは、
図7を参照して後述するように、治具固定ボルトBTを挿通することによって梁BMの上フランジBM4に固定される。
図3及び
図4には、3つの固定孔12dが形成されているが、固定孔12dの数は、3つに限定されない。治具固定ボルトBTを挿通する固定孔12dを変更することによって、梁BMに対する位置調整用治具10の取り付け位置を変更することができる。
【0027】
第一の起立プレート12bには、2つの可動部材挿通孔12eが形成されている。可動部材挿通孔12eは、第一の起立プレート12bを貫通している。
図4に示すように、第一の起立プレート12bの可動部材挿通孔12eに対応する位置には、ナット12fが溶接によって固定されている。ナット12fは、その内周にねじ溝加工が施されたねじ孔を有し、後述する第一の可動部材13の位置調整ねじ13aと螺合する。ここで、2つ形成された可動部材挿通孔12eのいずれに第一の可動部材13が挿通される。また、可動部材挿通孔12eの数は2つに限定されない。3つ以上の可動部材挿通孔12eが形成されてもよいことは勿論である。可動部材挿通孔12eは、第一の挿通孔に相当する。
【0028】
第一の可動部材13は、長尺形状を有し、位置調整ねじ13a及び回転操作部13cを有している。第一の可動部材13は、可動部材挿通孔12eに挿通されて、ナット12fに螺合する。第一の可動部材13は、回転操作部13cが回転操作されることによって第一の起立プレート12bに対して変位する。そして、後述するように先端部13bを柱PLの側面に当接させた状態で回転操作部13cを回転操作することによって、柱PLを、梁BMから離隔する方向に押圧し、柱PLを梁BMから離隔するように変位させることができる。換言すると、第一の可動部材13を回転操作することによって、梁BMの長手方向における柱PLと梁BMの間の距離を変更することができる。
【0029】
第二の距離変更部材14は、第一の距離変更部材11の端部に溶接によって連結固定されている。第二の距離変更部材14は、梁BMの短手方向(第二の方向に相当する)における柱PLと梁BMの間の距離を変更する役割を担う。
第二の距離変更部材14は、第一の距離変更部材11の端部に固定される第二の固定部材15と、第二の固定部材15に対して変位する第二の可動部材16と、を主な構成として有している。
【0030】
第二の固定部材15は、断面が略L字形状を有する長尺体であって、水平面を有する第二の固定プレート115aと、第二の固定プレート15aから垂直に延びる第二の起立プレート15bとを有する鋼製アングル材である。
【0031】
第二の起立プレート15bには、2つの可動部材挿通孔15eが形成されている。可動部材挿通孔15eは、第二の起立プレート15bを貫通している。
図4に示すように、第二の起立プレート15bの可動部材挿通孔15eに対応する位置には、ナット15fが溶接によって固定されている。ナット15fは、その内周にねじ溝加工が施されたねじ孔を有し、後述する第二の可動部材16の位置調整ねじ16aと螺合する。可動部材挿通孔15eの数は2つに限定されない。3つ以上の可動部材挿通孔15eが形成されてもよいことは勿論である。可動部材挿通孔15eは、第二の挿通孔に相当する。
【0032】
第二の可動部材16は、長尺形状を有し、位置調整ねじ16a及び回転操作部16cを有している。第二の可動部材16は、可動部材挿通孔15eに挿通されて、ナット15fに螺合する。第二の可動部材16は、回転操作部16cが回転操作されることによって第二の起立プレート15bに対して変位する。そして、後述するように先端部16bを柱PLの側面に当接させた状態で回転操作部13cを回転操作することによって、梁BMを、梁BMの短手方向に変位させることができる。換言すると、第二の可動部材16を操作することによって、梁BMの短手方向における柱PLと梁BMの間の距離を変更することができる。
【0033】
<<柱梁接合方法>>
次に、柱梁接合方法について説明する。
図5は、建築現場における柱梁接合の作業手順を示している。
図5に示すように、最初に、クレーン車等の揚重装置を用いて、所定の間隔を隔てて立設された一対の柱PLの間に梁BMが吊り下げられて配置される(ステップS10、配置工程)。
【0034】
次に、一対の柱PLのうち、一方の柱PLに対して、梁BMの一方の端部が仮固定される(ステップS12、第一の仮固定工程)。より詳細には、一方の柱PLの側面に設けられた柱プレートPL1と、梁BMの一方の端部に接合されたエンドプレートBM1は、仮ボルトを用いてボルト結合される。
【0035】
続いて、他方の柱PLの柱プレートPL1(接合部)と、梁BMの他方のエンドプレートBM1(端部)の位置合わせが行われる(ステップS14、位置合わせ工程)。ここで、位置合わせ工程について、
図6から
図10Bを参照して詳細に説明する。
【0036】
図6は、位置合わせ前の柱PLと梁BMの位置関係を示している。
図6に示すように、位置合わせが行われる前では、柱プレートPL1とエンドプレートBM1が、互いに正対するように位置していない。そのため、柱プレートPL1とエンドプレートBM1を仮ボルトで結合して仮固定することができない。そのため、柱プレートPL1とエンドプレートBM1の位置合わせが必要となる。
【0037】
図7は、梁BMの上フランジBM4に位置調整用治具10を取り付けた状態を示している。
図7に示すように、位置調整用治具10は、梁BMの長手方向の端部側であって、上フランジBM4に固定される(治具固定工程)。位置調整用治具10は、治具固定ボルトBTを用いて梁BMの短手方向の一方側(
図7の右側)に固定される。これにより、柱PLと第二の距離変更部材14が干渉することなく、位置調整用治具10を梁BMに対して取り付けることができる。
【0038】
次に作業者は、第一の可動部材13の先端部13bを、柱PLの、柱プレートPL1が設けられた側面に当接させる。次に作業者は、第一の可動部材13を操作して、梁BMの長手方向における柱PLと梁BMの間の距離を変更する(第一の距離変更工程)。具体的には、作業者は、第一の可動部材13を回転操作することによって第一の可動部材13を梁BMの長手方向に変位させることができる。これにより、柱PLは、梁BMの端部から離隔する方向(
図7の矢印A1が示す方向)に変位し、柱プレートPL1とエンドプレートBM1が互いに干渉しないように位置させることができる。そのため、一対の柱PLの間の距離が広がり、柱PLの間に梁BMを介在させ、柱PLと梁BMの位置合わせを行うことが可能となる。
【0039】
続いて作業者は、
図8に示すように、第二の可動部材16の先端部16bを、柱PLの、柱プレートPL1が設けられた側面と直交する側面(
図8の右側に示される側面)に当接させる。次に作業者は、第二の可動部材16を変位させて、梁BMの短手方向における柱PLと梁BMの間の距離を変更する(第二の距離変更工程)。具体的には、作業者は、第二の可動部材16を回転操作することによって第二の可動部材16を梁BMの短手方向に変位させる。これにより、柱プレートPL1とエンドプレートBM1が互いに正対するように位置させることができる。
【0040】
図9は、柱PLと梁BMの位置合わせが行われて、柱プレートPL1とエンドプレートBM1が正対している状態を示している。このように、柱プレートPL1とエンドプレートBM1を正対させることによって、柱プレートPL1とエンドプレートBM1を仮ボルトで結合して仮固定することが可能となる。
【0041】
次に、柱PLと梁BMの上下方向の位置合わせについて説明する。
図10A及び
図10Bは、柱PLと梁BMの上下方向の位置合わせを行う状態を示している。すなわち、
図10Aは柱PL及び梁BMの正面図であって、
図10Bは平面断面図である。
【0042】
図10A及び
図10Bに示すように、位置調整用治具10は、上フランジBM4の上面であって、梁BMの短手方向の一方側(
図10A及び
図10Bの右側)に取り付けられる。上述したように、位置調整用治具10は、治具固定ボルトBTを用いて梁BMの上フランジBM4にボルト結合される。
【0043】
作業者は、バールBRを操作することによって、位置調整用治具10を柱プレートPL1に対して下方向(
図10Aの矢印A3が示す方向)に力を加え、梁BMを下方に変位させることができる。より詳細に説明すると、作業者は、まずバールBRの先端部BR1を、梁BMとは直交する方向において柱PLに接合された梁bmの上フランジbm4の下面に当接させる。次に作業者は、先端部BR1から延びる延伸部BR3を、位置調整用治具10の上端面12cに当接させる。続いて作業者は、バールBRを下方に向けて操作し、梁BMを下方に変位させる。これにより、柱プレートPL1とエンドプレートBM1が正対するように位置合わせすることが可能となる。
【0044】
以上のように、他方の柱PLに対して、梁BMの他方の端部を位置調整した後に、他方の柱PLに対して、梁BMの他方の端部が仮固定される(
図6のステップS16、第二の仮固定工程)。より詳細には、他方の柱PLの側面に接合された柱プレートPL1と、梁BMの端部に固定されたエンドプレートBM1が、仮ボルトを用いてボルト結合される。
【0045】
最後に、一対の柱PLに対して梁BMが本固定される(ステップS18、本固定工程)。より詳細には、エンドプレートBM1及び柱プレートPL1に挿通された仮ボルトを取り外し、高力ボルトHBを締結する作業を順番に繰り返すことによって、梁BMは柱PLに対して本固定される。
以上の流れによって、柱PLに対して梁BMを接合することができる。
【0046】
以上、本発明の一実施形態に係る柱梁接合方法及び柱梁接合する際に用いられる位置調整用治具10について説明したが、上述した実施形態は、本発明の理解を容易にするための一例に過ぎず、本発明を限定するものではない。
上述した実施形態において、位置調整用治具10は位置合わせ工程で梁BMに固定されることとして説明したが、これに限定されない。位置合わせ工程の前の例えば配置工程において、梁BMの上フランジBM4の上に位置調整用治具10が固定されてもよい。
【0047】
また、上述した実施形態において、位置調整用治具10は、上フランジBM4の上面に取り付けて、柱PLに対して梁BMの端部を下方に位置合わせすることとして説明したが、これに限定されない。位置調整用治具10は下フランジBM5の下面に取り付けられて、梁BMの端部を上方に変位させてもよい。これにより、梁BMを柱PLに対して上方に位置合わせすることができる。
【0048】
また、上述した実施形態において、柱PLと梁BMの位置合わせについて説明したが、柱PLを建物の基礎部に対して立設する際に、柱PLの柱脚(第一施工部材)PL4を、布基礎(第二施工部材)BSに対して位置合わせするために位置調整用治具10が用いられてもよい。
図11及び
図12を参照して、柱脚PL4と布基礎BSの位置合わせ工程について説明する。
【0049】
図11は、位置合わせ前の柱脚PL4と布基礎BSを示している。
図11において、柱PLは、クレーン車等の揚重装置(不図示)によって上方から吊り上げられている。柱脚PL4は、アンカーボルトABで固定されたベースプレートBPの下方に位置する柱脚基礎(不図示)に対して仮固定されている。
【0050】
図12は、互いに直交する方向に延びる2つの布基礎BSのコーナー部に、位置調整用治具10を載置した状態を示している。上述したように、位置調整用治具10は、第一の距離変更部材11と第二の距離変更部材14を有し、第一の起立プレート12b及び第二の起立プレート15bが布基礎BSの先端面に当接するように載置されている。
作業者は、第一の可動部材13及び第二の可動部材16を回転操作することによって、柱脚PL4と布基礎BSの間の距離を変更することができる。これにより、仮固定された状態の柱脚PL4を適切な位置に変位させた後に本固定することができる。また、柱脚PL4の下方には、保護プレート17が配設されている。そのため、第一の可動部材13及び第二の可動部材16によって、柱脚4が変形等の損傷を受けることを抑制することができる。
【符号の説明】
【0051】
10 位置調整用治具
11 第一の距離変更部材
12 第一の固定部材
12a 第一の固定プレート
12b 第一の起立プレート
12c 上端面
12d 固定孔
12e 可動部材挿通孔(第一の挿通孔)
12f ナット
13 第一の可動部材
13a 位置調整ねじ
13b 先端部
13c 回転操作部
14 第二の距離変更部材
15 第二の固定部材
15a 第二の固定プレート
15b 第二の起立プレート
15e 可動部材挿通孔(第二の挿通孔)
15f ナット
16 第二の可動部材
16a 位置調整ねじ
16b 先端部
16c 回転操作部
17 保護プレート
PL 柱
PL1 柱プレート
PL2 ねじ孔
PL3 柱本体
PL4 柱脚
BM、bm 梁
BM1 エンドプレート
BM2 貫通孔
BM3 ウェブ
BM4 上フランジ(フランジ部)
BM5 下フランジ(フランジ部)
BM6 治具固定孔
HB 高力ボルト
BR バール(挿入具)
BR1 先端部
BR3 延伸部
BT 治具固定ボルト
BS 布基礎
AB アンカーボルト
BP ベースプレート