(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024019974
(43)【公開日】2024-02-14
(54)【発明の名称】電動モータ
(51)【国際特許分類】
H02K 5/16 20060101AFI20240206BHJP
H02K 9/19 20060101ALI20240206BHJP
【FI】
H02K5/16 A
H02K9/19 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022122787
(22)【出願日】2022-08-01
(71)【出願人】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110000419
【氏名又は名称】弁理士法人太田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】生方 瑞城
(72)【発明者】
【氏名】勝目 彬人
【テーマコード(参考)】
5H605
5H609
【Fターム(参考)】
5H605AA12
5H605BB05
5H605CC04
5H605CC05
5H605DD13
5H605EB10
5H605EB21
5H609BB03
5H609PP02
5H609QQ05
5H609QQ08
5H609RR28
5H609RR36
(57)【要約】
【課題】集中巻線型の電動モータにおいて、構成部品の大幅な変更を伴わずにロータシャフトに発生する軸方向電位に起因した軸受の電食を抑制する。
【解決手段】集中巻線型の電動モータにおいて、ロータの回転軸は、回転軸の内部に形成された軸方向油路と、軸方向油路と回転軸の外周部とを連通して軸受に潤滑油を供給する連通油路と、を有し、連通油路の外周部側の開口部は、回転軸にスラスト荷重が発生していない状態では開放される一方、回転軸にスラスト荷重が発生したときに回転軸がスラスト移動して軸受により閉じられる。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸受に軸支された回転軸を有するロータと、前記ロータの外周に設けられたステータと、を備え、前記ステータに設けられた複数のティースのうち周方向に隣り合うティース同士で異なる相の巻線が巻き付けられた集中巻線型の電動モータであって、
前記回転軸は、
前記回転軸の内部に形成された軸方向油路と、
前記軸方向油路と前記回転軸の外周部とを連通して前記軸受に潤滑油を供給する連通油路と、を有し、
前記連通油路の前記外周部側の開口部は、
前記回転軸にスラスト荷重が発生していない状態では開放される一方、前記回転軸にスラスト荷重が発生したときに前記回転軸がスラスト移動して前記軸受により閉じられる、
電動モータ。
【請求項2】
前記連通油路の前記外周部側の開口部は、前記回転軸の外周面に開口し、
前記スラスト荷重が発生していない状態で前記連通油路の前記外周部側の開口部の位置と前記軸受の位置とが前記回転軸の軸方向にずれていることで前記連通油路が開放され、前記回転軸にスラスト荷重が発生したときに前記回転軸がスラスト移動して前記連通油路の前記外周部側の開口部が前記軸受の内周面に対向することで前記連通油路が閉じられる、
請求項1に記載の電動モータ。
【請求項3】
前記回転軸は、前記軸受に軸支される小径部と、前記小径部よりも直径が大きい大径部と、を有し、
前記連通油路の前記外周部側の開口部は、前記小径部と前記大径部との境界に形成される段差部の、前記軸受に対向する対向面に開口し、
前記回転軸に前記スラスト荷重が発生していない状態で前記対向面が前記軸受と離間していることで前記連通油路が開放され、前記回転軸にスラスト荷重が発生したときに前記回転軸がスラスト移動して前記対向面が前記軸受に当接することで前記連通油路が閉じられる、
請求項1に記載の電動モータ。
【請求項4】
前記回転軸は、軸方向の端部にヘリカルギヤが設けられた回転軸である、
請求項1に記載の電動モータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、集中巻線型の電動モータに関する。
【背景技術】
【0002】
ステータ及びロータを備えた電動モータでは、ロータシャフトを回動可能に支持する軸受に対しても潤滑油が供給されるように構成され、軸受の潤滑性や冷却性能が確保されている(例えば特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電動モータにおいて、ロータシャフトに対して軸方向の荷重が加えられることがある。例えばロータシャフトがヘリカルギヤを介して出力軸に接続されている場合、電動モータから出力される回転トルクが出力軸に伝達される際に、ロータシャフトに対して軸方向の荷重が加えられる場合がある。上記のとおり、軸受には潤滑油が供給され、軸受を構成する転動体と、内輪及び外輪二つの軌道輪との間には油膜が形成されるが、軸方向の荷重によりロータシャフトが軸方向にスラスト移動して軸受に対しても荷重が加えられると、転動体と軌道輪との間に形成された油膜が薄くなることがある。
【0005】
ここで、電動モータのステータに備えられる巻線の構成を、分布巻線型又は集中巻線型とすることが知られている。このうち、集中巻線型は、周方向に隣り合うティースで異なる相の巻線を巻き付けて構成され、分布巻線型に比べて巻線が単純になり、コイルエンドを小さくすることができる等の利点がある。しかしながら、集中巻線型の構成とした場合、それぞれの巻線で生じる磁界の変化によりステータ全体として周方向の磁束変動が生じるため、ロータシャフトに軸方向電位が発生する。
【0006】
軸受の転動体と軌道輪との間の油膜の膜厚が所定以上であり、軸受の耐電圧が軸方向電位を上回っている間は軸受において電気的絶縁性が確保されるものの、軸受の転動体と軌道輪との間の油膜が薄くなると、軸方向電位が軸受の耐電圧を上回り、軸受の転動体と軌道輪との間に電流が流れてスパークが発生するおそれがある。このようなスパークが発生すると、転動体あるいは軌道輪の表面が溶融する電食により、軸受の耐久性が低下したり、電動モータの振騒が悪化したりするおそれがある。
【0007】
軸受を電流が流れないようにするには、例えば通電経路の一部を絶縁材料を用いて構成したり、ブラシアースを追加して軸受以外に電流が流れるようにしたりすることも考えられる。しかしながら、いずれも電動モータの構成部品の変更あるいは追加を伴うため、生産コストが増加するおそれがある。
【0008】
本開示は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本開示の目的とするところは、集中巻線型の電動モータにおいて、構成部品の大幅な変更を伴わずにロータシャフトに発生する軸方向電位に起因した軸受の電食を抑制可能な電動モータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本開示のある観点によれば、
軸受に軸支された回転軸を有するロータと、前記ロータの外周に設けられたステータと、を備え、前記ステータに設けられた複数のティースのうち周方向に隣り合うティース同士で異なる相の巻線が巻き付けられた集中巻線型の電動モータであって、
前記回転軸は、
前記回転軸の内部に形成された軸方向油路と、
前記軸方向油路と前記回転軸の外周部とを連通して前記軸受に潤滑油を供給する連通油路と、を有し、
前記連通油路の前記外周部側の開口部は、
前記回転軸にスラスト荷重が発生していない状態では開放される一方、前記回転軸にスラスト荷重が発生したときに前記回転軸がスラスト移動して前記軸受により閉じられる、
電動モータが提供される。
【発明の効果】
【0010】
以上説明したように本開示によれば、集中巻線型の電動モータにおいて、構成部品の大幅な変更を伴わずにロータシャフトに発生する軸方向電位に起因した軸受の電食を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本開示の一実施形態に係る電動モータの基本構成を示す断面図である。
【
図3】同実施形態に係る電動モータの構成を示す断面図である。
【
図4】同実施形態に係る電動モータの作用を示す断面図である。
【
図5】同実施形態に係る電動モータの連通油路が開放された状態での転動体と内輪側軌道輪との接触部を示す説明図である。
【
図6】同実施形態に係る電動モータの連通油路が閉じられた状態での転動体と内輪側軌道輪との接触部を示す説明図である。
【
図7】比較例に係る電動モータの構成を示す断面図である。
【
図8】比較例に係る電動モータの作用を示す断面図である。
【
図9】比較例に係る電動モータのロータシャフトにスラスト荷重が発生した状態での転動体と内輪側軌道輪との接触部を示す説明図である。
【
図10】本実施形態に係る電動モータの第1の変形例を示す説明図である。
【
図11】第1の変形例に係る電動モータの連通油路が閉じられた状態での転動体と内輪側軌道輪との接触部を示す説明図である。
【
図12】本実施形態に係る電動モータの第2の変形例を示す説明図である。
【
図13】第2の変形例に係る電動モータの連通油路が閉じられた状態での転動体と内輪側軌道輪との接触部を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照しながら、本開示の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0013】
<1.電動モータの基本構成>
図1は本開示の一実施形態に係る電動モータの基本構成を示す断面図であり、
図2は
図1のI-I断面におけるステータ及びロータシャフトの矢視図である。図示されるように、電動モータ1は、ステータ3及びロータ5を有する。ロータ5はロータシャフト(回転軸)7に取り付けられて回転する部分であり、ステータ3はロータ5の周りを囲むように、ハウジング等に固定された部分である。ロータシャフト7の両端側は、軸受11,13を介してハウジング等に回転可能に支持されている。なお、ステータ3、ロータ5及びロータシャフト7の以下で説明する構成以外の部分については公知の構成を利用可能であるため、詳細な説明は省略する。
【0014】
ロータ5は、積層鉄心で形成される本体に、図示しない複数の永久磁石が組み込まれて構成されている。永久磁石は、ロータ5の軸方向に沿った長手方向を有している。複数の永久磁石は、N極及びS極の磁石を含み、N極及びS極の磁石が周方向に交互に配置されている。ロータ5は、ロータシャフト7に同心状に固定されている。ロータシャフト7は、ロータ5が固定された大径部7aと、それぞれ大径部7aの両側に位置し、大径部7aよりも小さい直径の小径部7b,7cとを有する。ロータシャフト7は、それぞれの小径部7b,7cにおいて軸受11,13を介してハウジング等に支持されている。
【0015】
ステータ3は、周方向に等間隔で設けられた複数のステータティース3aを備えている。本実施形態に係る電動モータ1は、例えば車両の駆動力を生成する駆動モータとして利用される三相交流式のモータであり、図示しないu相、v相及びw相の三相の巻線がステータティース3aに巻き付けられる。本開示の実施の形態に係る電動モータ1は、隣り合うステータティース3a同士で異なる相の巻線が巻き付けられた集中巻線型のステータ3として構成されている。なお、
図2に示した例では、ステータ3は9つのステータティース3aを有し、u相、v相及びw相の三相の巻線が巻き付けられたステータティース3aが周方向に沿って順に配置されるが、ステータティース3aの数は、3の倍数であれば特に限定されない。
【0016】
かかる集中巻線型の電動モータ1において、それぞれの巻線に三相交流の電流を供給すると、それぞれ周方向に隣り合うステータティース3aの間の巻線が配置された領域の周りに磁界mが発生する。集中巻線型の場合、それぞれ発生する磁界mは、ステータ3の外周側で周方向の同じ方向を向く磁界mとなり、ステータ3全体として周方向の磁束Mが発生する。このため、ロータシャフト7には軸方向電位Vaが発生する。このため、ロータシャフト7、軸受11,13、ハウジングが電気的に接続された状態になる場合、
図1に示した循環電流Cが流れる回路が形成され得る。
【0017】
<2.潤滑油路の構成>
続いて、電動モータの潤滑油路について説明する。
【0018】
図3は、本実施形態に係る電動モータの構成を簡略化して示した模式図である。
上述したように、ロータシャフト7は、軸方向の中央部に位置する大径部7aと、大径部7aの両端側の小径部7b,7cとを有している。また、ロータシャフト7の軸方向の一端側にはヘリカルギヤ9が設けられている。ロータシャフト7の内部には、軸方向に沿った軸方向油路8aが設けられている。また、ロータシャフト7のそれぞれの小径部7b,7cには、軸方向油路8aと小径部7b,7cの外周部とを連通する連通油路8b,8cがそれぞれ設けられている。軸方向油路8aには、図示の左側端部から潤滑油Lが導入され、当該潤滑油Lは、さらに連通油路8b,8cを介してロータシャフト7の外周部へ導入される。
【0019】
潤滑油Lは、電動モータ1の摺動部の潤滑性を確保する機能と、電動モータ1の発熱を抑制する冷却性能を確保する機能を有する。当該潤滑油Lは、軸受11,13に対しても供給され、軸受11,13の潤滑性を確保する機能も有している。具体的に、軸受11は、内輪側軌道輪21aと、外輪側軌道輪21bと、内輪側軌道輪21a及び外輪側軌道輪21bに挟持された複数の転動体23とを備えて構成されており、転動体23と内輪側軌道輪21aとの間、及び、転動体23と外輪側軌道輪21bとの間に潤滑油の油膜が形成される。これにより、内輪側軌道輪21a又は外輪側軌道輪21bと転動体23との摩擦による焼き付きが抑制される。
【0020】
ロータシャフト7に設けられたヘリカルギヤ9は、出力軸33に設けられたヘリカルギヤ31に噛み合っている。これにより、電動モータ1のロータシャフト7の回転トルクが出力軸33に伝達される。ロータシャフト7と出力軸33とがヘリカルギヤ9,31を介して接続されていることから、電動モータ1がロータシャフト7を介してトルクを出力すると、出力軸33のヘリカルギヤ31から反力を受け、ロータシャフト7に対して図示の左方向へのスラスト荷重が生じる。電動モータ1が回生可能なシステムに適用されている場合、出力軸33側からロータシャフト7へ回転トルクが入力される場合においても、ロータシャフト7に対して図示の左方向へスラスト荷重が生じる。
【0021】
図4は、ロータシャフト7にスラスト方向の荷重が生じた状態を示している。
図3及び
図4に示したように、本実施形態に係る電動モータ1では、連通油路8b,8cのロータシャフト7の外周部側の開口部は、ロータシャフト7にスラスト荷重が発生していない状態では開放される一方、ロータシャフト7にスラスト荷重が発生したときにロータシャフト7がスラスト移動して軸受11,13により閉じられる位置に形成されている。
【0022】
具体的に、連通油路8b,8cの外周部側の開口部は、ロータシャフト7の外周面に開口し、スラスト荷重が発生していない状態で連通油路8b,8cの外周部側の開口部の位置と軸受11,13の位置とがロータシャフト7の軸方向にずれていることで連通油路8b,8cが開放されている(
図3を参照)。また、ロータシャフト7にスラスト荷重が発生したときにロータシャフト7がスラスト移動して連通油路8b,8cの外周部側の開口部が軸受11,13の内周面に対向することで連通油路8b,8cが閉じられている(
図4を参照)。このため、電動モータ1に三相交流電流が供給されて電動モータ1がトルクを出力する際に、連通油路8b,8cを介して軸受11,13に供給される潤滑油の流れが遮断される。
【0023】
図5及び
図6は、軸受11,13の一部を拡大して示した模式図である。
図5は、連通油路8b,8cが開放された状態での転動体23と内輪側軌道輪21aとの接触部を示し、
図6は、連通油路8b,8cが閉じられた状態での転動体23と内輪側軌道輪21aとの接触部を示している。図示したように、連通油路8b,8cが開放された状態では、軸受11,13に潤滑油Lが供給され、転動体23と内輪側軌道輪21aとの接触部には所定の膜厚D1以上の潤滑油の油膜が形成される一方、連通油路8b,8cが閉じられた状態では、潤滑油Lの供給が停止されて内輪側軌道輪21aの軌道面の油膜の膜厚が薄くなる。このため、ロータシャフト7にスラスト荷重が発生していることも相俟って、転動体23と内輪側軌道輪21aとが直接接触する。
【0024】
図示しないが、転動体23と外輪側軌道輪21bとの接触部でも同様に、連通油路8b,8cが開放された状態では所定の膜厚以上の潤滑油の油膜が形成される一方、連通油路8b,8cが閉じられた状態では、当該油膜の膜厚が薄くなって、転動体23と外輪側軌道輪21bとが直接接触する。
【0025】
図7及び
図8は、本実施形態の比較例に係る電動モータの構成を示す説明図である。
図示したように、比較例に係る電動モータでは、連通油路8b,8cのロータシャフト7の外周部側の開口部は、ロータシャフト7にスラスト荷重が発生しているかいなかにかかわらず開放される位置に形成されている。このため、軸受11,13には常時潤滑油Lが供給される。ただし、ロータシャフト7にスラスト荷重が発生すると、内輪側軌道輪21aがロータシャフト7に押され、内輪側軌道輪21aと転動体23との接触部の油膜が圧縮されて油膜の膜厚D2が薄くなる(
図9を参照)。
【0026】
したがって、軸受11,13の耐電圧が低下し、軸方向電位Vaが軸受11,13の耐電圧を超えたときに、転動体23と内輪側軌道輪21a又は外輪側軌道輪21bとの間に電流が流れ、スパークが発生し得る。なお、「軸受の耐電圧」は、潤滑油の油膜により電気的に絶縁された転動体23と内輪側軌道輪21a又は外輪側軌道輪21bとが通電状態となる電圧を示す。
【0027】
一方、本実施形態に係る電動モータ1では、電動モータ1がトルクを発生し、ロータシャフト7がスラスト移動することで軸受11,13への潤滑油の流れが遮断される。このため、ロータシャフト7に発生する軸方向電位Vaが所定以上に大きくなる前に転動体23と内輪側軌道輪21a又は外輪側軌道輪21bとが直接接触し、通電状態となる。したがって、軸方向電位Vaが大きくなる前に通電状態となるため、スパークが発生するおそれが低減される。したがって、転動体23あるいは内輪側軌道輪21a又は外輪側軌道輪21bの表面の電食により、軸受11,13の耐久性が低下したり、電動モータ1の振騒が悪化したりすることを防ぐことができる。
【0028】
また、本実施形態に係る電動モータ1は、軸方向油路8aとロータシャフト7の外周部とを連通する連通油路8bの位置を変更するだけで容易に構成することができる。したがって、電動モータ1の構成部品の大幅な変更を伴わずに、転動体23あるいは内輪側軌道輪21a又は外輪側軌道輪21bの表面の電食を抑制することができる。
【0029】
<3.変形例>
以下、上記で説明した一実施形態の変形例について説明する。
【0030】
【0031】
図10及び
図12に示した変形例においては、いずれもロータシャフト7の外周部側に形成された連通油路8d,8eの開口部は、ロータシャフト7の小径部7bと大径部7aとの境界に形成される段差部の、軸受11に対向する対向面に開口している。そして、ロータシャフト7にスラスト荷重が発生していない状態で対向面が軸受11と離間していることで連通油路8d,8eが開放され、ロータシャフト7にスラスト荷重が発生したときにロータシャフト7がスラスト移動して対向面が軸受11に当接することで連通油路8d,8eが閉じられる(
図11及び
図13を参照)。
【0032】
潤滑油Lが効率的に流れるようにするために、連通油路8b,8cの直径は、例えば2mm程度に設計されるため、上述した一実施形態の場合、ロータシャフト7の軸方向の位置によって連通油路8b,8cの開放又は閉塞が切り替わるにはロータシャフト7の軸方向のがたつきを連通油路8b,8cの直径以上にすることが必要となる。これに対して、変形例に係る電動モータの構成では、ロータシャフト7の軸方向のがたつきを連通油路8b,8cの直径よりも小さくした場合であっても潤滑油Lを効率的に流すことができる。
【0033】
以上、添付図面を参照しながら本開示の好適な実施形態について詳細に説明したが、本開示はかかる例に限定されない。本開示の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本開示の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0034】
1:電動モータ、3:ステータ、3a:ステータティース、5:ロータ、7:ロータシャフト(回転軸)、7a:大径部、7b・7c:小径部、8a:軸方向油路、8b・8c・8d・8e:連通油路、9:ヘリカルギヤ、11・13:軸受、21a:内輪側軌道輪、21b:外輪側軌道輪、23:転動体、31:ヘリカルギヤ、33:出力軸、C:循環電流、L:潤滑油、Va:軸方向電位