(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024001998
(43)【公開日】2024-01-11
(54)【発明の名称】液体吐出装置
(51)【国際特許分類】
B41J 2/165 20060101AFI20231228BHJP
【FI】
B41J2/165 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022100901
(22)【出願日】2022-06-23
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【弁理士】
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】田中 拓人
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EA17
2C056FA13
2C056JA04
2C056JA08
2C056JB04
(57)【要約】
【課題】キャップユニットをラックピニオン機構で駆動する構成において、ラック部とピニオンとが縦方向に並んで配置された構成では振動が大きくなる。
【解決手段】液体吐出装置は、媒体に液体を吐出する液体吐出ヘッドと、液体吐出ヘッドの液体吐出面を覆うキャップを有するユニットであって、キャップが液体吐出面と対向する対向位置と、キャップが液体吐出面から退避する退避位置とに移動可能なキャップユニットと、キャップユニットにおいてキャップユニットの移動方向に沿って設けられたラック部及びラック部と噛み合うピニオンを含む駆動機構と、ピニオンを回転させる駆動源と、を備え、キャップユニットの移動方向は、水平方向と交差する方向であり、ピニオンとラック部は、キャップユニットの移動方向から見て横並びであることを特徴とする。
【選択図】
図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
媒体に液体を吐出する液体吐出ヘッドと、
前記液体吐出ヘッドの液体吐出面を覆うキャップを有するユニットであって、前記キャップが前記液体吐出面と対向する対向位置と、前記キャップが前記液体吐出面から退避する退避位置とに移動可能なキャップユニットと、
前記キャップユニットにおいて前記キャップユニットの移動方向に沿って設けられたラック部及び前記ラック部と噛み合うピニオンを含む駆動機構と、
前記ピニオンを回転させる駆動源と、を備え、
前記キャップユニットの移動方向は、水平方向と交差する方向であり、
前記ピニオンと前記ラック部は、前記キャップユニットの移動方向から見て横並びである、
ことを特徴とする液体吐出装置。
【請求項2】
請求項1に記載の液体吐出装置において、前記駆動機構は、前記ラック部である第1ラック部と前記ピニオンである第1ピニオンを含む第1ラックピニオンと、
前記ラック部である第2ラック部と前記ピニオンである第2ピニオンを含む第2ラックピニオンと、を有し、
前記第1ピニオンが前記第1ラック部に付与する外力であって前記移動方向と交差する方向の第1外力と、前記第2ピニオンが前記第2ラック部に付与する外力であって前記移動方向と交差する方向の第2外力とが打ち消し合う様に配置されている、
ことを特徴とする液体吐出装置。
【請求項3】
請求項2に記載の液体吐出装置において、前記第1ラックピニオンと前記第2ラックピニオンとが同期して動作する、
ことを特徴とする液体吐出装置。
【請求項4】
請求項3に記載の液体吐出装置において、前記第1ピニオンと同軸で回転する傘歯車であって前記第1ピニオンに動力を伝達する第1伝達傘歯車と、
前記第1伝達傘歯車と噛み合う傘歯車であって前記第1伝達傘歯車を駆動する第1駆動傘歯車と、
前記第2ピニオンと同軸で回転する傘歯車であって前記第2ピニオンに動力を伝達する第2伝達傘歯車と、
前記第2伝達傘歯車と噛み合う傘歯車であって前記第2伝達傘歯車を駆動する第2駆動傘歯車と、を備え、
前記第1駆動傘歯車と前記第2駆動傘歯車とが、共通の回転軸に設けられている、
ことを特徴とする液体吐出装置。
【請求項5】
請求項4に記載の液体吐出装置において、前記第1伝達傘歯車と前記第2伝達傘歯車は、それぞれ回転軸方向に沿って変位可能である、
ことを特徴とする液体吐出装置。
【請求項6】
請求項2に記載の液体吐出装置において、前記キャップユニットの移動方向に沿って延びるガイド溝と、
前記キャップユニットに設けられた被ガイド部であって前記ガイド溝によって前記移動方向に案内される被ガイド部と、を備える、
ことを特徴とする液体吐出装置。
【請求項7】
請求項2に記載の液体吐出装置において、前記キャップユニットは、
ユニット本体と、
前記キャップを備えるユニットであって前記ユニット本体に対し前記キャップユニットの移動方向を含む平面に沿って変位可能な変位ユニットと、を備え、
前記液体吐出ヘッドは、前記対向位置にある前記キャップユニットに対し進退する方向に変位可能なヘッドユニットに設けられ、
前記ヘッドユニットは、前記キャップユニットが前記退避位置から前記対向位置へ移動した際に前記変位ユニットの一部と当接して前記変位ユニットの位置を規定する位置決め部を備える、
ことを特徴とする液体吐出装置。
【請求項8】
請求項2に記載の液体吐出装置において、前記キャップユニットは、前記第1ラック部を備える部材であって前記キャップユニットの移動方向と交差する幅方向において前記キャップユニットの一方側端部に位置する第1サイドフレームと、
前記第2ラック部を備える部材であって前記幅方向において前記キャップユニットの他方側端部に位置する第2サイドフレームと、を備え、
前記第1ラック部と前記第1ピニオンは、前記第1サイドフレームに対し、前記幅方向において前記第2サイドフレーム側である内側に設けられ、
前記第2ラック部と前記第2ピニオンは、前記第2サイドフレームに対し、前記幅方向において前記第1サイドフレーム側である内側に設けられる、
ことを特徴とする液体吐出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、媒体に液体を吐出する液体吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、インク吐出ヘッドのノズルを覆うキャップを有するキャップユニットが、ラックピニオンで構成された駆動機構によって水平方向に対し交差する方向に移動する構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1記載の構成において、上記ラックピニオンを構成するラックの歯部はキャップユニットの下面に形成されており、キャップユニットの移動方向から見てラックとピニオンとが縦並びで配置された状態となっている。
以下、この様な構成における課題について
図11を参照して説明する。
図11においてキャップユニット100はラックピニオン108によってF軸方向に駆動される。F軸方向は水平方向に対して例えば60°傾いている。G軸方向はF軸方向と直交する方向である。ラックピニオン108はラック部109とピニオン110とを備えている。
【0005】
キャップユニット100は第1被ガイド部101、第2被ガイド部102、及び第3被ガイド部103を備えている。第1被ガイド部101、第2被ガイド部102、及び第3被ガイド部103は、下ガイド部105と上ガイド部106との間に形成されたガイド溝107によってF軸方向にガイドされる。
【0006】
ラック部109はキャップユニット100の下面に形成されており、キャップユニット100の移動方向から見て、即ち矢視Aにおいて、ラック部109とピニオン110とが縦並びで配置された状態となっている。
ピニオン110とラック部109との噛み合い部においてピニオン110の歯はラック部109の歯に対して外力Tを付与する。外力Tの作用方向はF軸方向即ちキャップユニット100の移動方向に対し非平行であり、F軸方向に対して交差する方向の成分を含んでいる。そしてこの成分の力がラック部109を鉛直上方に持ち上げる様に作用する為、ピニオン110とラック部109との噛み合いに伴いキャップユニット100には振動が生じる。
【0007】
ここで仮にF軸方向が水平方向に沿っている場合、第1被ガイド部101、第2被ガイド部102、及び第3被ガイド部103は間隔d1の間で振動するが、F軸方向が水平方向に対して傾いていると第1被ガイド部101、第2被ガイド部102、及び第3被ガイド部103は間隔d1より大きい間隔d2の間で振動可能な為、キャップユニット100の振動は大きくなる。
また仮にF軸方向が水平方向に沿っている場合、キャップユニット100の自重は殆ど下ガイド部105に掛かり、ピニオン110には僅かしか掛からない。しかしながらF軸方向が水平方向に対して傾いているとピニオン110に掛かるキャップユニット100の自重が増え、これにより歯飛びが生じる虞がある。
この様にキャップユニット100の移動方向から見て、即ち矢視Aにおいて、ラック部109とピニオン110とが縦並びで配置された構成では、ラックピニオン108に起因するキャップユニット100の振動が大きくなる。
この様な振動は、インク漏れや異音発生の原因となるほか、歯飛びの発生を招き、キャップユニット100の位置が狂う虞もある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決する為の、本発明の液体吐出装置は、媒体に液体を吐出する液体吐出ヘッドと、前記液体吐出ヘッドの液体吐出面を覆うキャップを有するユニットであって、前記キャップが前記液体吐出面と対向する対向位置と、前記キャップが前記液体吐出面から退避する退避位置とに移動可能なキャップユニットと、前記キャップユニットにおいて前記キャップユニットの移動方向に沿って設けられたラック部及び前記ラック部と噛み合うピニオンを含む駆動機構と、前記ピニオンを回転させる駆動源と、を備え、前記キャップユニットの移動方向は、水平方向と交差する方向であり、前記ピニオンと前記ラック部は、前記キャップユニットの移動方向から見て横並びであることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図2】ヘッドユニットがインク吐出位置にある際の他のユニットの位置を示す図。
【
図3】ヘッドユニットがキャップ位置にある際の他のユニットの位置を示す図。
【
図4】ヘッドユニットがワイピング位置にある際の他のユニットの位置を示す図。
【
図10】他の実施形態に係るヘッドユニットを移動方向から見た図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を概略的に説明する。
第1の態様に係る液体吐出装置は、媒体に液体を吐出する液体吐出ヘッドと、前記液体吐出ヘッドの液体吐出面を覆うキャップを有するユニットであって、前記キャップが前記液体吐出面と対向する対向位置と、前記キャップが前記液体吐出面から退避する退避位置とに移動可能なキャップユニットと、前記キャップユニットにおいて前記キャップユニットの移動方向に沿って設けられたラック部及び前記ラック部と噛み合うピニオンを含む駆動機構と、前記ピニオンを回転させる駆動源と、を備え、前記キャップユニットの移動方向は、水平方向と交差する方向であり、前記ピニオンと前記ラック部は、前記キャップユニットの移動方向から見て横並びであることを特徴とする。
【0011】
本態様によれば、前記ピニオンと前記ラック部は、前記キャップユニットの移動方向から見て横並びに配置されているので、前記ピニオンと前記ラック部が前記キャップユニットの移動方向から見て縦並びに配置された構成に比べて前記ピニオンが前記ラック部を鉛直上方に押し上げる力を抑制でき、これにより前記駆動機構に起因して前記キャップユニットに生じる振動を抑制することができ、また歯飛びの発生も抑制できる。
【0012】
第2の態様は、第1の態様において、前記駆動機構は、前記ラック部である第1ラック部と前記ピニオンである第1ピニオンを含む第1ラックピニオンと、前記ラック部である第2ラック部と前記ピニオンである第2ピニオンを含む第2ラックピニオンと、を有し、前記第1ピニオンが前記第1ラック部に付与する外力であって前記移動方向と交差する方向の第1外力と、前記第2ピニオンが前記第2ラック部に付与する外力であって前記移動方向と交差する方向の第2外力とが打ち消し合う様に配置されていることを特徴とする。
【0013】
本態様によれば、前記駆動機構は前記第1ラックピニオンと前記第2ラックピニオンとを有するので、前記キャップユニットをより確実に駆動することができる。そして前記第1外力と前記第2外力とが打ち消し合う様に配置されているので、前記第1外力と前記第2外力のそれぞれが前記キャップユニットに与える悪影響、例えば振動を抑制できる。また前記キャップユニットの前記移動方向と交差する方向の位置ばらつきも抑制できる。
尚、「打ち消し合う」とは完全に打ち消し合う形態に限られず、少なくとも一部が打ち消し合う形態も含む意味である。
【0014】
第3の態様は、第2の態様において、前記第1ラックピニオンと前記第2ラックピニオンとが同期して動作することを特徴とする。
前記第1ラックピニオン及び前記第2ラックピニオンのうち一方のみが動作する期間があると、その期間において上述した振動や歯飛びが生じる虞があるが、本態様によれば、前記第1ラックピニオンと前記第2ラックピニオンとが同期して動作する為、上述した振動や歯飛びの発生をより確実に抑制できる。
【0015】
第4の態様は、第3の態様において、前記第1ピニオンと同軸で回転する傘歯車であって前記第1ピニオンに動力を伝達する第1伝達傘歯車と、前記第1伝達傘歯車と噛み合う傘歯車であって前記第1伝達傘歯車を駆動する第1駆動傘歯車と、前記第2ピニオンと同軸で回転する傘歯車であって前記第2ピニオンに動力を伝達する第2伝達傘歯車と、前記第2伝達傘歯車と噛み合う傘歯車であって前記第2伝達傘歯車を駆動する第2駆動傘歯車と、を備え、前記第1駆動傘歯車と前記第2駆動傘歯車とが、共通の回転軸に設けられていることを特徴とする。
【0016】
本態様によれば、前記第1ラックピニオンと前記第2ラックピニオンとを前記共通の回転軸で駆動できる為、前記第1ラックピニオンと前記第2ラックピニオンのそれぞれに対しモーターを設ける構成に比べて装置の小型化と低コスト化を図ることができる。
【0017】
第5の態様は、第4の態様において、前記第1伝達傘歯車と前記第2伝達傘歯車は、それぞれ回転軸方向に沿って変位可能であることを特徴とする。
本態様によれば、前記第1伝達傘歯車と前記第2伝達傘歯車は、それぞれ回転軸方向に沿って変位可能であることから、前記第1伝達傘歯車であれば前記第1駆動傘歯車との間のバックラッシが小さくなり過ぎたり或いは大きくなり過ぎたりすることがなく、円滑な噛み合いを実現でき、また前記バックラッシを管理する為の厳しい工程管理が不要となる。前記第2伝達傘歯車と前記第2駆動傘歯車との関係についても、同様である。
【0018】
第6の態様は、第2の態様において、前記キャップユニットの移動方向に沿って延びるガイド溝と、前記キャップユニットに設けられた被ガイド部であって前記ガイド溝によって前記移動方向に案内される被ガイド部と、を備えることを特徴とする。
本態様によれば、前記ガイド溝と前記被ガイド部とを備える構成であり、しかも前記移動方向は水平方向に対して交差している為、上述した振動や歯飛びが生じ易いが、上述した第1の態様の作用効果により、上述した振動や歯飛びを抑制できる。
尚、本態様は上記第2の態様に限らず、上記第1の態様或いは上記第3~第5のいずれかの態様に適用しても良い。
【0019】
第7の態様は、第2の態様において、前記キャップユニットは、ユニット本体と、前記キャップを備えるユニットであって前記ユニット本体に対し前記キャップユニットの移動方向を含む平面に沿って変位可能な変位ユニットと、を備え、前記液体吐出ヘッドは、前記対向位置にある前記キャップユニットに対し進退する方向に変位可能なヘッドユニットに設けられ、前記ヘッドユニットは、前記キャップユニットが前記退避位置から前記対向位置へ移動した際に前記変位ユニットの一部と当接して前記変位ユニットの位置を規定する位置決め部を備えることを特徴とする。
【0020】
本態様によれば、前記ユニット本体において前記変位ユニットが変位可能な所謂フローティング構造となっている。そして前記キャップユニットが前記退避位置から前記対向位置へ移動した際に前記変位ユニットが前記位置決め部に当接することで前記変位ユニットの位置(前記平面内における位置)が規定される構成である。この為、前記キャップユニットの位置がばらつくと、前記キャップが前記液体吐出面に接触しながら移動する量が増え、前記キャップの摩耗が進み易い。しかしながら上記第2の態様の作用効果により、前記キャップユニットの前記移動方向と交差する方向の位置ばらつきも抑制できる為、前記キャップが前記液体吐出面に接触しながら移動する量を抑制でき、前記キャップの摩耗を抑制できる。
尚、本態様は上記第2の態様に限らず、上記第1の態様或いは上記第3~第6のいずれかの態様に適用しても良い。
【0021】
第8の態様は、第2の態様において、前記キャップユニットは、前記第1ラック部を備える部材であって前記キャップユニットの移動方向と交差する幅方向において前記キャップユニットの一方側端部に位置する第1サイドフレームと、前記第2ラック部を備える部材であって前記幅方向において前記キャップユニットの他方側端部に位置する第2サイドフレームと、を備え、前記第1ラック部と前記第1ピニオンは、前記第1サイドフレームに対し、前記幅方向において前記第2サイドフレーム側である内側に設けられ、前記第2ラック部と前記第2ピニオンは、前記第2サイドフレームに対し、前記幅方向において前記第1サイドフレーム側である内側に設けられることを特徴とする。
【0022】
本態様によれば、前記第1ラック部と前記第1ピニオンは、前記第1サイドフレームに対し、前記幅方向において前記第2サイドフレーム側である内側に設けられ、前記第2ラック部と前記第2ピニオンは、前記第2サイドフレームに対し、前記幅方向において前記第1サイドフレーム側である内側に設けられる為、前記幅方向における装置の小型化を図ることができる。
尚、本態様は上記第2の態様に限らず、上記第1の態様或いは上記第3~第7のいずれかの態様に適用しても良い。
【0023】
以下、本発明を具体的に説明する。
以下では記録用紙に代表される媒体に対し、液体の一例であるインクを吐出することで記録を行うインクジェットプリンター1を、液体吐出装置の一例として説明する。以下においてインクジェットプリンター1は、プリンター1と略称する。
尚、各図において示すX-Y-Z座標系は直交座標系であって、Y軸方向が媒体の搬送方向と交差する媒体幅方向であり、また装置奥行き方向であり、また後述するキャップユニット60の幅方向となる。Y軸方向のうち矢印の向く方向である+Y方向は装置前面から装置背面に向かう方向となり、またY軸方向のうち+Y方向とは反対の-Y方向は装置背面から装置前面に向かう方向である。
またX軸方向は装置幅方向であり、プリンター1の操作者から見て矢印の向く方向である+X方向が左側、その反対の-X方向が右側となる。Z軸方向は鉛直方向即ち装置高さ方向であり、矢印の向く方向である+Z方向が上方向、その反対の-Z方向が下方向となる。以下、特に言及しない限り、「上」とは+Z方向を指し、また「下」とは-Z方向を指す。
【0024】
またG軸方向は後述するラインヘッド46のインク吐出面47に対する法線方向であって、矢印の向く方向である+G方向は後述するヘッドユニット45が、後述する対向位置にあるキャップユニット60から離間する方向であり、その反対の-G方向はヘッドユニット45が、後述する対向位置にあるキャップユニット60に進出する方向である。
またF軸方向はインク吐出面47に平行な方向であって、インク吐出面47と対向する位置における媒体搬送方向であり、矢印の向く方向である+F方向が搬送方向下流となり、その反対の-F方向が搬送方向上流となる。尚、以下では媒体が送られていく方向を「下流」と言い、またその反対方向を「上流」と言う場合がある。またF軸方向は後述するキャップユニット60の移動方向である。
また、一部の図面では便宜上、X-Y-Z座標系に代えてF-G-Y座標系を示している。
【0025】
図1において媒体搬送経路は破線で示されている。プリンター1において媒体は、破線で示す媒体搬送経路を通って搬送される。
プリンター1は、装置本体2の下部に、鉛直方向に沿って複数の媒体カセットを備えている。本実施形態では、最も上の第1媒体カセット3から下方向に向かって順に、第2媒体カセット4、第3媒体カセット5、第4媒体カセット6、のこれら媒体カセットを備えている。符号Pは、各媒体カセットに収容される媒体を示している。
各媒体カセットに対しては、収容された媒体を送り出すピックローラーが設けられている。このピックローラーは、符号21、22、23、24で示されている。
【0026】
また各媒体カセットに対しては、送り出された媒体を斜め上方向に給送する給送ローラー対が設けられている。この給送ローラー対は、符号25、26、27、28で示されている。また第2媒体カセット4、第3媒体カセット5、及び第4媒体カセット6に対しては、媒体を上方向に搬送する搬送ローラー対が設けられている。この搬送ローラー対は、符号16、17、18で示されている。
尚、以下では「ローラー対」とは、特に説明しない限り不図示のモーターによって駆動される駆動ローラーと、この駆動ローラーに接して従動回転する従動ローラーとで構成されるものとする。
【0027】
各媒体カセットから送り出された媒体は搬送ローラー対29に達し、搬送ローラー対29から送り力を受けて+X方向成分と+Z方向成分を含む斜め上方向に送られる。搬送ローラー対29から下流の媒体搬送経路は、上に凸となる様に湾曲しており、媒体はこの湾曲経路部分を通って搬送ローラー対30に到達する。搬送ローラー対30から送り力を受ける媒体は+X方向に送られ、下に凸となる様に湾曲した湾曲経路を通って搬送ローラー対31に達する。
【0028】
搬送ローラー対31から送り力を受ける媒体は、記録部の一例であるラインヘッド46と、搬送ベルト13との間、つまりラインヘッド46と対向する位置に送られる。ラインヘッド46は、媒体の面に液体の一例であるインクを吐出して記録を実行する。ラインヘッド46は、インクを吐出するノズル(不図示)が媒体幅方向の全域をカバーする様に構成されたインク吐出ヘッドであり、媒体幅方向への移動を伴わないで媒体幅全域に記録が可能なインク吐出ヘッドとして構成されている。
【0029】
符号10はインクを収容するインク収容部である。ラインヘッド46から吐出されるインクは、インク収容部10から、図示を省略するチューブを介してラインヘッド46へと供給される。インク収容部10は、X軸方向に沿って配置される複数のインクタンクによって構成される。
【0030】
搬送ベルト13は、プーリー14及びプーリー15に掛け回される無端ベルトであって、プーリー14及びプーリー15のうち少なくとも一方が不図示のモーターにより駆動されることで回転する。媒体は、搬送ベルト13のベルト面に吸着されつつラインヘッド46と対向する位置を搬送される。搬送ベルト13に対する媒体の吸着は、エアー吸引方式や静電吸着方式などの公知の吸着方式を採用できる。
【0031】
ここでラインヘッド46と対向する位置を通る媒体搬送経路は、水平方向及び鉛直方向の双方に対して交差しており、斜め上方向に媒体を搬送する構成である。この斜め上向きの搬送方向は、
図1において-X方向成分と+Z方向成分とを含む方向であり、このような構成により、プリンター1の水平方向寸法を抑制できる。
尚本実施形態では、ラインヘッド46と対向する位置を通る媒体搬送経路(F軸方向)は水平方向に対して50°~70°の範囲の傾斜角に設定され、より具体的には60°の傾斜角に設定されている。但しラインヘッド46と対向する位置を通る媒体搬送経路(F軸方向)は水平方向に対して90°の角度を成していても良い。
【0032】
ラインヘッド46により第1面に記録が行われた媒体は、搬送ベルト13の下流に位置する搬送ローラー対32により、更に斜め上方向に送られる。
搬送ローラー対32の下流にはフラップ41が設けられており、このフラップ41によって媒体の搬送方向が切り換えられる。媒体をそのまま排出する場合は、媒体の搬送経路はフラップ41によって上方の搬送ローラー対37に向かう様に切り換えられる。搬送ローラー対37の下流には更にフラップ42が設けられ、このフラップ42によって排出位置A1からの排出、及び更に鉛直上方に位置する搬送ローラー対38への搬送のいずれかに搬送経路が切り換えられる。媒体は搬送ローラー対38に向けて送られた場合、排出位置A2から排出される。
排出位置A1から排出された媒体は、+X方向成分と+Z方向成分とを含む斜め上方向に傾斜する排出トレイ8によって受けられる。排出トレイ8は、ヘッドユニット45に対し鉛直上方に位置している。排出位置A2から排出された媒体は、不図示のオプショントレイによって受けられる。
【0033】
媒体の第1面に加えて更に第2面に記録を行う場合、媒体は、フラップ41によって-X方向成分と+Z方向成分とを含む斜め上方向に送られ、分岐位置K1を通り、分岐位置K1から上方のスイッチバック経路に送られる。このスイッチバック経路には搬送ローラー対39が設けられており、スイッチバック経路に入った媒体は、搬送ローラー対39によって上方向に搬送され、そして媒体の後端が分岐位置K1を通過したら、搬送ローラー対39の回転方向が切り換えられ、これにより媒体は下方向に搬送される。
【0034】
搬送ローラー対39によって下方向に搬送された媒体は搬送ローラー対33、及び搬送ローラー対34から送り力を受けて搬送ローラー対30に到達し、搬送ローラー対30によって再びラインヘッド46と対向する位置に送られる。
再びラインヘッド46と対向する位置に送られた媒体は、既に記録が行われた第1面に対し反対側の第2面がラインヘッド46と対向する。これにより、媒体の第2面に対しラインヘッド46による記録が可能となる。第2面に記録が行われた媒体は、上述した排出位置A1または排出位置A2から排出される。
【0035】
続いて
図2、
図3、
図4を参照してヘッドユニット45、キャップユニット60、及びワイパーキャリッジ48の動作について説明する。
ヘッドユニット45はラインヘッド46を含むユニットであって、不図示のモーターの動力を受けてG軸方向に移動可能に設けられている。尚、本実施形態ではヘッドユニット45はG軸方向に沿って移動可能な構成であるが、これに限られず、固定的に設けられていても良い。この場合、例えば搬送ベルト13がラインヘッド46と対向する位置から退避し、代わりに後述するキャップユニット60やワイパーキャリッジ48がラインヘッド46と対向する位置に移動する構成であっても良い。
【0036】
キャップユニット60はラインヘッド46を覆うキャップ71を含むユニットであって、ラインヘッド46のメンテナンスを行うメンテナンス部の一例である。キャップユニット60は後述するキャップ駆動モーター90(
図9参照)の動力を受けてF軸方向に移動可能に設けられている。詳しくは後述するが、キャップユニット60の移動経路には退避位置と対向位置とが含まれ、F軸方向のうち+F方向は退避位置から対向位置に向かう方向であり、-F方向は対向位置から退避位置に向かう方向である。
キャップ駆動モーター90の動力は、後述する駆動機構73(
図9参照)を介してキャップユニット60に伝達される。
【0037】
ワイパーキャリッジ48はラインヘッド46のインク吐出面47をワイピングするワイパー49が設けられるユニットであって、不図示のモーターの動力を受けてY軸方向に移動可能に設けられている。
以上により、ヘッドユニット45、キャップユニット60、及びワイパーキャリッジ48は、互いに直交する方向に移動可能に設けられている。
【0038】
図2はラインヘッド46により媒体に記録を行う際の各ユニットの位置を示している。以下ではこの状態でのヘッドユニット45の位置をインク吐出位置と称する。ヘッドユニット45がインク吐出位置にある場合、キャップユニット60はヘッドユニット45に対し-F方向に退避した退避位置にあり、ワイパーキャリッジ48は+Y方向に設定されたホームポジションに位置している。
【0039】
図3はキャップ71によりインク吐出面47をキャップする際の各ユニットの位置を示している。尚、
図3では図の煩雑化を避けるためワイパーキャリッジ48は図示を省略しているが、この状態では
図2と同様にワイパーキャリッジ48は+Y方向に設定されたホームポジションに位置している。
以下では
図3に示すヘッドユニット45の位置をキャップ位置と称し、キャップユニット60の位置を対向位置と称する。
【0040】
ヘッドユニット45が
図2のインク吐出位置から
図3のキャップ位置に移動する場合、ヘッドユニット45は
図2のインク吐出位置から、
図3のキャップ位置よりも更に+G方向の位置まで移動する。このときのヘッドユニット45の位置をキャップ待機位置と称する。ヘッドユニット45がキャップ待機位置にある状態でキャップユニット60が退避位置から対向位置に移動し、これによりインク吐出面47とキャップ71とが対向する。その後、ヘッドユニット45が僅かに-G方向に移動して
図3に示すキャップ位置となり、インク吐出面47がキャップ71によってキャップされた状態となる。
図3において符号60-1は、対向位置に移動する前のキャップユニット60、即ち退避位置にあるキャップユニット60を示している。
【0041】
尚、ラインヘッド46がフラッシング動作を行う場合、ヘッドユニット45は
図3に示す状態から僅かに+G方向に位置し、インク吐出面47とキャップ71とが僅かに離間した状態とされる。この時のヘッドユニット45の位置をフラッシング位置と称する。フラッシング位置は、キャップ位置とキャップ待機位置との間にある。
【0042】
図4はワイパー49によりインク吐出面47をワイピングする際の各ユニットの位置を示している。以下ではこの状態でのヘッドユニット45の位置をワイピング位置と称する。ヘッドユニット45がワイピング位置にある場合、キャップユニット60はヘッドユニット45に対し-F方向に退避した位置にある。
ヘッドユニット45が
図2のインク吐出位置から
図4のワイピング位置に移動する場合、つまりインク吐出面47をワイピングする場合、ヘッドユニット45は
図2のインク吐出位置から、
図4のワイピング位置よりも更に+G方向の位置まで移動する。このときのヘッドユニット45の位置をワイピング待機位置と称する。ヘッドユニット45がワイピング待機位置にある状態でワイパーキャリッジ48が+Y方向のホームポジションから-Y方向の端部位置まで移動する。その後、ヘッドユニット45が僅かに-G方向に移動して
図4に示すワイピング位置となり、この状態でワイパーキャリッジ48が+Y方向に向かって移動することで、ワイパー49によりインク吐出面47がワイピングされる。
【0043】
尚、ヘッドユニット45はワイピング位置から更に+G方向に移動することができる。ヘッドユニット45がワイピング位置から更に+G方向に移動することで、ヘッドユニット45を交換することができる。即ちヘッドユニット45は、最も+G方向の交換位置と、最も-G方向のインク吐出位置との間で移動可能である。
【0044】
以下、
図5以降を参照してキャップユニット60について更に説明する。
装置本体2は、
図7に示す様にF軸方向に延びる下ガイド部85と上ガイド部86とを備え、下ガイド部85と上ガイド部86との間に、F軸方向に沿って延びるガイド溝87が形成されている。尚、図示は省略するが下ガイド部85、上ガイド部86、及びガイド溝87は、Y軸方向においてキャップユニット60の両側に設けられている。
キャップユニット60はY軸方向の両側に被ガイド部70をF軸方向に沿って複数備え、複数の被ガイド部70がガイド溝87に入り込むことでキャップユニット60がF軸方向にガイドされる。
被ガイド部70は、本実施形態では従動回転可能なローラーにより構成され、ガイド溝87内を移動する際の摩擦抵抗の軽減が図られている。
【0045】
図5において、キャップユニット60はユニット本体61により基体が構成される。ユニット本体61はセンターフレーム62と、センターフレーム62に対し-Y方向に位置する第1サイドフレーム63と、センターフレーム62に対し+Y方向に位置する第2サイドフレーム64とを備えて構成される。
【0046】
ユニット本体61には、変位ユニット65が設けられる。変位ユニット65は、+Y方向の端部と-Y方向の端部にそれぞれF軸方向に沿って延びる凹部65aを有している。-Y方向端部に形成された凹部65aには、第1サイドフレーム63に形成された、F軸方向に沿って延びるガイド部63bが入り込んでいる。また+Y方向端部に形成された凹部65aには、第2サイドフレーム64に形成された、F軸方向に沿って延びるガイド部64bが入り込んでいる。これにより変位ユニット65は、ユニット本体61に対してF軸方向に沿って変位可能となっている。そして変位ユニット65は、不図示の押圧部材、例えばばねによって+F方向に押圧されている。
【0047】
また-Y方向の凹部65aとガイド部63bとの嵌合構造、及び+Y方向の凹部65aとガイド部64bとの嵌合構造は、Y軸方向に所定の遊びを有する様に構成されており、これにより変位ユニット65はユニット本体61に対してY軸方向に所定量変位可能となっている。そして変位ユニット65は、不図示の押圧部材、例えばばねによって+Y方向と-Y方向とに押圧され、これにより変位ユニット65がY軸方向においてセンタリングされた状態となっている。
以上の様に変位ユニット65はユニット本体61に対してF-Y平面に沿って変位可能であり、所謂フローティング構造が採用されている。
【0048】
変位ユニット65には、Y軸方向に沿ってキャップ71a、71b、71c、71d、71eが設けられる。本明細書においてこれら複数のキャップを特に区別しない場合には、キャップ71と称する。
【0049】
変位ユニット65は、-Y方向の端部に第1位置決め部68を備え、+Y方向の端部に第2位置決め部69を備えている。第1位置決め部68と第2位置決め部69は、それぞれヘッドユニット45に設けられた位置決め部としての位置決めピン50、51(
図6参照)と当接することで、ヘッドユニット45に対する変位ユニット65即ちキャップ71の位置を規定する。ヘッドユニット45が上述したキャップ待機位置にある際にキャップユニット60が退避位置から対向位置へと移動すると、第1位置決め部68と第2位置決め部69がそれぞれ位置決めピン50、51に当接する。
【0050】
続いてキャップユニット60を駆動する為の構成について説明する。キャップユニット60は、
図9に示す駆動機構73によってF軸方向に駆動される。
図9はキャップユニット60をF軸方向即ちキャップユニット60の移動方向から見た図であって、図の表裏方向がキャップユニット60の移動方向であり、図の左右方向が水平方向である。
図9は、-F方向からキャップユニット60を見ている。
より詳しくは、第1サイドフレーム63の-Y方向の面、即ち側面にはF軸方向に沿って第1ラック部63aが形成されている(
図5も参照)。また第2サイドフレーム64の+Y方向の面、即ち側面にはF軸方向に沿って第2ラック部64aが形成されている(
図8も参照)。
【0051】
駆動機構73は、Y軸方向において-Y方向に設けられた第1ラックピニオン74と+Y方向に設けられた第2ラックピニオン75とで構成される。上述した第1ラック部63aは第1ラックピニオン74を構成し、第2ラック部64aは第2ラックピニオン75を構成する。
図9に示す様に第1ラック部63aには第1ラックピニオン74を構成する第1ピニオン76が噛み合っている。また第2ラック部64aには第2ラックピニオン75を構成する第2ピニオン79が噛み合っている。
【0052】
第1ピニオン76は第1ピニオン軸76aを回転軸とし、第1ピニオン軸76aには第1伝達傘歯車77が設けられている。第1伝達傘歯車77は第1ピニオン軸76aに動力を伝達し、これにより第1ピニオン76が回転する。第1伝達傘歯車77には第1駆動傘歯車78が噛み合っており、第1駆動傘歯車78が第1伝達傘歯車77に動力を伝達する。第1駆動傘歯車78は駆動軸82に設けられ、駆動軸82の回転によって第1駆動傘歯車78が回転する。
【0053】
同様に第2ピニオン79は第2ピニオン軸79aを回転軸とし、第2ピニオン軸79aには第2伝達傘歯車80が設けられている。第2伝達傘歯車80は第2ピニオン軸79aに動力を伝達し、これにより第2ピニオン79が回転する。第2伝達傘歯車80には第2駆動傘歯車81が噛み合っており、第2駆動傘歯車81が第2伝達傘歯車80に動力を伝達する。第2駆動傘歯車81は駆動軸82に設けられ、駆動軸82の回転によって第2駆動傘歯車81が回転する。
【0054】
駆動軸82の+Y方向端部にはウォームホイール92が取り付けられ、ウォームホイール92にはキャップ駆動モーター90の出力軸に設けられたウォームギア91が噛み合っており、これにより駆動軸82がキャップ駆動モーター90から動力を得る。
キャップ駆動モーター90は、不図示の制御部により制御される。尚、キャップユニット60のF軸方向における位置は、不図示の検出手段の情報をもとに把握できる。この検出手段は、例えばリニアエンコーダーにより構成しても良いし、或いはキャップユニット60の退避位置と対向位置のそれぞれにセンサーを設けてキャップユニット60が退避位置と対向位置のいずれにあるかを検出する構成であっても良い。
【0055】
上述の様にプリンター1は、キャップユニット60においてキャップユニット60の移動方向に沿って設けられた第1ラック部63a、第2ラック部64a及びこれらと噛み合う第1ピニオン76、第2ピニオン79を含む駆動機構73と、各ピニオンを回転させる駆動源であるキャップ駆動モーター93と、を備え、キャップユニット60の移動方向であるF軸方向は、水平方向と交差する方向であり、第1ピニオン76と第1ラック部63aは、
図9に示す様にキャップユニット60の移動方向から見て横並びであり、第2ピニオン79と第2ラック部64aも同様に横並びである。以下、第1ラック部63aと第2ラック部64aとを区別せずにラック部と称する場合があり、第1ピニオン76と第2ピニオン79とを区別せずにピニオンと称する場合がある。
【0056】
以上の様な構成により、ピニオンとラック部がキャップユニット60の移動方向から見て縦並びに配置された構成に比べてピニオンがラック部を鉛直上方に押し上げる力を抑制でき、これにより駆動機構73に起因してキャップユニット60に生じる振動を抑制することができる。その結果、インク漏れや異音発生を抑制でき、また歯飛びの発生を抑制できる。
またピニオンとラック部がキャップユニット60の移動方向から見て縦並びに配置された構成に比べて、前記縦並び方向の装置寸法、具体的には高さ方向の装置寸法を抑制できる。
尚、キャップユニット60を移動方向から見た場合、左右方向は水平方向となる。またピニオンとラック部が移動方向から見て横並びである場合、本実施形態ではピニオンのピッチ円を含む平面は、ラインヘッド46のインク吐出面47と平行になる。
【0057】
また本実施形態において第1ピニオン76が第1ラック部63aに付与する外力であってF軸方向と交差するY軸方向の第1外力Q1と、第2ピニオン79が第2ラック部64aに付与する外力であってY軸方向の第2外力Q2とが打ち消し合う様に配置されている。
このことにより第1外力Q1と第2外力Q2のそれぞれがキャップユニット60に与える悪影響、例えば振動を抑制できる。またキャップユニット60のY軸方向の位置ばらつきも抑制できる。
尚、「打ち消し合う」とは完全に打ち消し合う形態に限られず、少なくとも一部が打ち消し合う形態も含む意味である。
但し第1外力Q1の作用方向と第2外力Q2の作用方向とが同じ方向であっても良い。
また駆動機構73は第1ラックピニオン74と第2ラックピニオン75のいずれか一方のみを備えていても良い。
【0058】
また本実施形態では駆動軸82の回転によって第1ラックピニオン74と第2ラックピニオン75とが同期して動作する。第1ラックピニオン74及び第2ラックピニオン75のうち一方のみが動作する期間があると、その期間において上述した振動や歯飛びが生じる虞があるが、本実施形態は第1ラックピニオン74と第2ラックピニオン75とが同期して動作する為、上述した振動や歯飛びの発生をより確実に抑制できる。
【0059】
また本実施形態では第1駆動傘歯車78と第2駆動傘歯車81とが、共通の回転軸である駆動軸82に設けられている。これにより第1ラックピニオン74と第2ラックピニオン75とを共通の回転軸で駆動できる為、第1ラックピニオン74と第2ラックピニオン75のそれぞれに対しモーターを設ける構成に比べて装置の小型化と低コスト化を図ることができる。
但しこの様な構成に限らず、第1ラックピニオン74と第2ラックピニオン75のそれぞれに対しモーターを設けて駆動する構成としても良い。この場合、
図9の第1伝達傘歯車77、第1駆動傘歯車78、第2伝達傘歯車80、第2駆動傘歯車81、駆動軸82、のこれらは省略することができる。
【0060】
尚、第1伝達傘歯車77を第1ピニオン軸76aの回転軸方向(F軸方向)に沿って変位可能に設けても良く、同様に第2伝達傘歯車80を第2ピニオン軸79aの回転軸方向(F軸方向)に沿って変位可能に設けても良い。
この様に構成することで、第1伝達傘歯車77であれば第1駆動傘歯車78との間のバックラッシが小さくなり過ぎたり或いは大きくなり過ぎたりすることがなく、円滑な噛み合いを実現でき、またバックラッシを管理する為の厳しい工程管理が不要となる。第2伝達傘歯車80と第2駆動傘歯車81との関係についても、同様である。
但し第1伝達傘歯車77を第1ピニオン軸76aの回転軸方向(F軸方向)に沿って変位しない様に設けることもでき、同様に第2伝達傘歯車80を第2ピニオン軸79aの回転軸方向(F軸方向)に沿って変位しない様に設けることもできる。
【0061】
尚、本実施形態において第1ピニオン76と第1伝達傘歯車77は、第1ピニオン軸76aにおいて別体で設けられているが、第1ピニオン76と第1伝達傘歯車77を複合歯車として一体に設けても良い。その場合、複合歯車を第1ピニオン軸76aの回転軸方向(F軸方向)に沿って変位可能に設けても良い。第2ピニオン79と第2伝達傘歯車80についても同様に、複合歯車として一体に設けても良く、またその場合に複合歯車を第2ピニオン軸79aの回転軸方向(F軸方向)に沿って変位可能に設けても良い。
【0062】
また本実施形態ではユニット本体61において変位ユニット65が変位可能な所謂フローティング構造となっている。そしてキャップユニット60が退避位置から対向位置へ移動した際に変位ユニット65が位置決めピン50、51に当接することで変位ユニット65の位置(F-Y平面内における位置)が規定される構成である。この為、キャップユニット60の位置がばらつくと、キャップ71がインク吐出面47に接触しながら移動する量が増え、キャップ71の摩耗が進み易い。しかしながら上述した様に第1ピニオン76が第1ラック部63aに付与する第1外力Q1と、第2ピニオン79が第2ラック部64aに付与する第2外力Q2とが打ち消し合う様に配置されている為、キャップユニット60の移動方向と交差する方向の位置ばらつきも抑制できる為、キャップ71がインク吐出面47に接触しながら移動する量を抑制でき、キャップ71の摩耗を抑制できる。
【0063】
続いて
図10を参照して他の実施形態について説明する。
図10において既に説明した構成には同一符号を付しており、以下において重複する説明は避けるものとする。
図10はキャップユニット60をF軸方向即ちキャップユニット60の移動方向から見た図であって、図の表裏方向がキャップユニット60の移動方向であり、図の左右方向が水平方向である。
図10は、-F方向からキャップユニット60を見ている。
図10に示す駆動機構73Aは、第1ラックピニオン74Aと第2ラックピニオン75Aとを備えている。本実施形態では、上述した実施形態とは異なり、第1ラック部63aと第1ピニオン76は、第1サイドフレーム63に対し、Y軸方向において第2サイドフレーム64側である内側に設けられ、第2ラック部64aと第2ピニオン79は、第2サイドフレーム64に対し、Y軸方向において第1サイドフレーム63側である内側に設けられている。
この様な構成によれば、Y軸方向における装置の小型化を図ることができる。
尚本実施形態では第1ラックピニオン74Aと第2ラックピニオン75Aのうち双方をキャップユニット60の内側に配置したが、いずれか一方のみをキャップユニット60の内側に配置しても良い。
【0064】
本発明は上記において説明した各実施形態に限定されることなく、特許請求の範囲に記載した発明の範囲内で、種々の変形が可能であり、それらも本発明の範囲内に含まれるものであることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0065】
1…インクジェットプリンター、2…装置本体、3…第1媒体カセット、4…第2媒体カセット、5…第3媒体カセット、6…第4媒体カセット、8…排出トレイ、10…インク収容部、11…廃液収容部、13…搬送ベルト、14、15…プーリー、21、22、23、24…ピックローラー、25、26、27、28…給送ローラー対、29、30、31、32、33、34、37、38、39…搬送ローラー対、41、42…フラップ、
45…ヘッドユニット、46…ラインヘッド、47…インク吐出面、48…ワイパーキャリッジ、49…ワイパー、50、51…位置決めピン、60…キャップユニット、61…ユニット本体、62…センターフレーム、63…第1サイドフレーム、63a…第1ラック部、64…第2サイドフレーム、64a…第2ラック部、65…変位ユニット、68…第1位置決め部、69…第2位置決め部、70…被ガイド部、71、71a、71b、71c、71d、71e…キャップ、73…駆動機構、74…第1ラックピニオン、75…第2ラックピニオン、76…第1ピニオン、76a…第1ピニオン軸、77…第1伝達傘歯車、78…第1駆動傘歯車、79…第2ピニオン、79a…第2ピニオン軸、80…第2伝達傘歯車、81…第2駆動傘歯車、82…駆動軸、85…下ガイド部、86…上ガイド部、87…ガイド溝、90…キャップ駆動モーター、91…ウォームギア、92…ウォームホイール