(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024019981
(43)【公開日】2024-02-14
(54)【発明の名称】足場
(51)【国際特許分類】
E04G 1/36 20060101AFI20240206BHJP
E04G 3/24 20060101ALI20240206BHJP
F03D 80/00 20160101ALN20240206BHJP
【FI】
E04G1/36 302D
E04G3/24 302D
F03D80/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022122802
(22)【出願日】2022-08-01
(71)【出願人】
【識別番号】000004123
【氏名又は名称】JFEエンジニアリング株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】592131674
【氏名又は名称】櫻井技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002963
【氏名又は名称】弁理士法人MTS国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100080458
【弁理士】
【氏名又は名称】高矢 諭
(74)【代理人】
【識別番号】100144299
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 崇
(72)【発明者】
【氏名】橋本 洋一
(72)【発明者】
【氏名】正田 憲昭
(72)【発明者】
【氏名】安藤 峰之
【テーマコード(参考)】
2E003
3H178
【Fターム(参考)】
2E003DA06
2E003EB04
3H178AA20
3H178AA40
3H178AA43
3H178CC23
3H178DD70X
(57)【要約】
【課題】筒状の外周面を有する直立したタワーの該外周面に磁力を介して取付可能な足場の水平方向の振止めを、地上エリアの大小に関わらず行えるようにする。
【解決手段】タワー60の筒状の外周面に磁力を介して取り付け可能な基端部12Aを有する長尺な足場本体12と、タワー60の前記外周面に磁力を介して取り付け可能な一端部を有し、足場本体12の両側に夫々設けられる支持部材16と、足場本体12の長手方向に対して自身の長手方向が所定の角度を有するように、足場本体12の基端部12Aに一端部が取り付けられているとともに、他端部14Bが支持部材16に連結されていて、足場本体12の両側に夫々設けられた振止め部材14と、足場本体12の部位のうち、タワー60の前記外周面から所定の距離以上離れた部位12Dと、振止め部材14の他端部14Bとの間に張られていて、足場本体12の両側に夫々設けられた張りワイヤー18と、を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状の外周面を有する直立したタワーに取付可能な足場であって、
前記タワーの前記外周面に磁力を介して取り付け可能な基端部を有する長尺な足場本体と、
前記タワーの前記外周面に磁力を介して取り付け可能な一端部を有し、前記足場本体の両側にそれぞれ設けられる支持部材と、
前記足場本体の長手方向に対して自身の長手方向が所定の角度を有するように、前記足場本体の前記基端部に一端部が取り付けられているとともに、他端部が前記支持部材に連結されていて、前記足場本体の両側にそれぞれ設けられた振止め部材と、
前記足場本体の部位のうち、前記タワーの前記外周面から所定の距離以上離れた部位と、前記振止め部材の前記他端部との間に張られていて、前記足場本体の両側にそれぞれ設けられた張りワイヤーと、
を備えることを特徴とする足場。
【請求項2】
前記振止め部材の前記一端部はヒンジ機構になっており、該ヒンジ機構によって前記振止め部材は水平状態から直立状態まで開閉可能であることを特徴とする請求項1に記載の足場。
【請求項3】
前記振止め部材は、作業時の足場として利用可能な長方形状の板状体であることを特徴とする請求項1に記載の足場。
【請求項4】
前記支持部材は棒状の部材であり、その前記一端部に磁石を備えていて、該磁石の磁力を介して前記タワーの前記外周面に着脱自在であることを特徴とする請求項1に記載の足場。
【請求項5】
前記足場本体は、前記タワーの前記外周面から所定の距離だけ離れた部位にヒンジ機構を有し、該ヒンジ機構よりも先端側の部位が該ヒンジ機構によって水平状態から直立状態まで開閉可能であることを特徴とする請求項1に記載の足場。
【請求項6】
前記タワーの前記外周面に上下方向に所定の間隔を空けて磁力を介して取り付け可能に構成された複数のブラケットと、
上下方向に沿う方向に前記複数のブラケットに取り付けられたラックレールと、
前記ラックレールに沿って移動可能な駆動装置と、
を備え、
前記足場本体の前記基端部は、前記駆動装置に取り付けられていることを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載の足場。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は足場に関し、特に、筒状の外周面を有する直立したタワーを備えた風力発電設備に好適に適用可能な足場に関する。
【背景技術】
【0002】
再生可能エネルギーの1つとして、風力に対する注目度が高くなってきている。
【0003】
風力発電に用いる風力発電設備のタワーは、鋼材を主に用いて構成されており、清掃や塗装を定期的に行ってメンテナンスを行う必要がある。また、風力発電設備の風車羽根(ブレード)についても、定期的に点検や落雷等による突発的な損傷に対する補修のメンテナンスを行う必要がある。これらのメンテナンスは風力発電設備のタワーの外側からアクセスする必要があるが、構造上の観点から、風力発電設備のタワーを筒状の塔で構成することが多くなってきている。
【0004】
このような筒状のタワーは、外周面に手掛かりがないため、メンテナンス時には大型クレーンが必要となり、多大な労力を要することとなる。
【0005】
この問題に対応するべく、既設の風力発電設備の風車羽根(ブレード)及びその機能部品等が、経年劣化や落雷等によって傷んだ時の補修・交換作業を、大型クレーンを使わないで、極力、少ない工費と工期で行うための風力発電設備の風車羽根のメンテナンス工法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
特許文献1に記載されているメンテナンス工法を、
図8を参照して簡単に説明する。
【0007】
上部作業台72に乗り込んだ作業員が、駆動装置70(ラックレール52に沿って上下方向に移動することができる駆動装置)で上方に移動しながら、両端部に磁石50Aが取り付けられているブラケット50を筒状タワー60の外周面に上方向に順次取り付けるとともにラックレール52を上方に延ばし、風力発電設備100の筒状タワー60の頂端までラックレール52を順次継ぎ足していき、上部作業台72に積み込んだ吊り上げ用の滑車84を有する滑車付バンド82を、筒状タワー60の頂端に吊り上げ、巻き付け固定する。
【0008】
筒状タワー60の頂端までラックレール52を架設したら、上部作業台72を一旦降ろし、上部作業台72と作業用足場104(風車羽根(ブレード)102の点検および補修等をするための足場)とを、駆動装置70を介して連結する。作業用足場104は、連結された基端から筒状タワー60に対して直角方向に張り出す形状をしており、作業用足場104の足場プレートの上部には安全柵が取り付けられている。
【0009】
作業用足場104の先端の左右両端には吊りワイヤー106が取り付けられ、筒状タワー60の頂端に滑車付バンド82によって取り付けられた滑車84と地上に設置したウインチ86により作業用足場104を所定位置まで移動させることができる。なお、移動させるにあたり、上下移動のための駆動装置70と同期を取って移動するようにされているので、作業用足場104が傾くことなく移動することができるように構成されている。
【0010】
しかしながら、特許文献1に記載の技術においては、風力、風向等の変動によって作業用足場104が水平方向に振れることに対しては、
図8に示されるように、風力発電設備100の周囲の地上に配置した作業員200が支線ワイヤー108を引っ張ることによって対応を行っていた。
【0011】
一方、風力発電設備100が海域にある場合には、作業員200が支線ワイヤー108を引っ張ることによって、作業用足場104の振れを止めることは困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】WO2011/161740A1号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、筒状の外周面を有する直立したタワーの該外周面に磁力を介して取付可能な足場の水平方向の振止めを、地上エリアの大小に関わらず行える足場を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は前記課題を解決する発明であり、以下のような足場である。
【0015】
即ち、本発明に係る足場の第1の態様は、筒状の外周面を有する直立したタワーに取付可能な足場であって、前記タワーの前記外周面に磁力を介して取り付け可能な基端部を有する長尺な足場本体と、前記タワーの前記外周面に磁力を介して取り付け可能な一端部を有し、前記足場本体の両側にそれぞれ設けられる支持部材と、前記足場本体の長手方向に対して自身の長手方向が所定の角度を有するように、前記足場本体の前記基端部に一端部が取り付けられているとともに、他端部が前記支持部材に連結されていて、前記足場本体の両側にそれぞれ設けられた振止め部材と、前記足場本体の部位のうち、前記タワーの前記外周面から所定の距離以上離れた部位と、前記振止め部材の前記他端部との間に張られていて、前記足場本体の両側にそれぞれ設けられた張りワイヤーと、を備えることを特徴とする足場である。
【0016】
ここで、筒状とは、円筒状の形状だけでなく、角筒状の形状も含むものとする。
【0017】
また、前記足場本体の前記基端部は、その基端だけでなく、当該基端の近傍の部位も含むものとする。また、前記支持部材の前記一端部は、その一端だけでなく、当該一端の近傍の部位も含むものとする。また、前記振止め部材の前記一端部は、その一端だけでなく、当該一端の近傍の部位も含むものとし、前記振止め部材の前記他端部は、その他端だけでなく、当該他端の近傍の部位も含むものとする。本願の他の箇所の同様の記載も、同様に解釈するものとする。
【0018】
また、本願において、前記タワーの前記外周面に「磁力を介して取り付け可能」とは、取り付けられる対象物が前記タワーの前記外周面に直接接して磁力を介して取り付け可能な場合だけでなく、他の部材を介して、前記タワーの前記外周面に磁力を介して取り付け可能な場合も含む。
【0019】
本発明に係る足場の第2の態様は、前記第1の態様において、前記振止め部材の前記一端部はヒンジ機構になっており、該ヒンジ機構によって前記振止め部材は水平状態から直立状態まで開閉可能である、ように構成されている態様である。
【0020】
本発明に係る足場の第3の態様は、前記第1または前記第2の態様において、前記振止め部材は、作業時の足場として利用可能な長方形状の板状体である、ように構成されている態様である。
【0021】
本発明に係る足場の第4の態様は、前記第1~前記第3の態様のいずれかの態様において、前記支持部材は棒状の部材であり、その前記一端部に磁石を備えていて、該磁石の磁力を介して前記タワーの前記外周面に着脱自在である、ように構成されている態様である。
【0022】
本発明に係る足場の第5の態様は、前記第1~前記第4の態様のいずれかの態様において、前記足場本体は、前記タワーの前記外周面から所定の距離だけ離れた部位にヒンジ機構を有し、該ヒンジ機構よりも先端側の部位が該ヒンジ機構によって水平状態から直立状態まで開閉可能である、ように構成されている態様である。
【0023】
本発明に係る足場の第6の態様は、前記第1~前記第5の態様のいずれかの態様において、前記タワーの前記外周面に上下方向に所定の間隔を空けて磁力を介して取り付け可能に構成された複数のブラケットと、上下方向に沿う方向に前記複数のブラケットに取り付けられたラックレールと、前記ラックレールに沿って移動可能な駆動装置と、を備え、前記足場本体の前記基端部は、前記駆動装置に取り付けられている、ように構成されている態様である。
【0024】
ここで、前記駆動装置には、駆動に直接的に関係する駆動機構部位だけでなく、該駆動機構部位に取り付けられていて、該駆動機構部位とともに移動して、前記駆動装置の一部であるとみなせる部材や部位も含まれる。
【0025】
また、「前記駆動装置に取り付けられ」とは、取り付けられる対象物が前記駆動装置に直接接して取り付けられている場合だけでなく、他の部材を介して、前記駆動装置に取り付けられている場合も含む。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、筒状の外周面を有する直立したタワーの該外周面に磁力を介して取付可能な足場の水平方向の振止めを、地上エリアの大小に関わらず行える足場を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】本発明の実施形態に係る振止め機能付き足場10が風力発電設備100に適用された状態を示す斜視図
【
図2】本発明の実施形態に係る振止め機能付き足場10を上方から見た平面図
【
図3】本発明の実施形態に係る振止め機能付き足場10の足場本体12の基端部12Aおよびその近傍部位を上方から見た拡大平面図
【
図4】本発明の実施形態に係る振止め機能付き足場10の足場本体12の基端部12Aおよびその近傍部位を側方から見た拡大側面図
【
図5】本発明の実施形態に係る振止め機能付き足場10を側方から見た側面図
【
図6】本発明の実施形態に係る振止め機能付き足場10の足場本体12の基端部12Aおよびその周辺部位を側方から見た拡大側面図
【
図7】振止め部材14の他端部14Bの上面における連結部14B2(張りワイヤー18との連結部)を模式的に示す拡大断面図(ピン14B2cと直交する面を切断面とする拡大断面図)
【
図8】従来技術(特許文献1に記載の技術)が風力発電設備100に適用された状態を示す斜視図
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、図面を参照して、本発明に係る足場の実施形態を詳細に説明する。ここでは、筒状タワー(筒状の外周面を有する直立したタワー)が風力発電設備の一部であることを念頭に置いて、本発明に係る足場の実施形態を説明するが、本発明の適用対象が風力発電設備の筒状タワーに限定されるわけではなく、本発明は、磁石が固着可能な筒状タワーであれば適用可能である。なお、本発明に係る足場は振止め機能を有しており、本発明の実施形態に係る足場も振止め機能を有しているので、本発明の実施形態の説明においては、本発明の実施形態に係る足場を振止め機能付き足場10と記して説明を行う。
【0029】
図1は、本発明の実施形態に係る振止め機能付き足場10が風力発電設備100に適用された状態を示す斜視図であり、
図2は、本発明の実施形態に係る振止め機能付き足場10を上方から見た平面図であり、
図3は、本発明の実施形態に係る振止め機能付き足場10の足場本体12の基端部12Aおよびその近傍部位を上方から見た拡大平面図であり、
図4は、本発明の実施形態に係る振止め機能付き足場10の足場本体12の基端部12Aおよびその近傍部位を側方から見た拡大側面図であり、
図5は、本発明の実施形態に係る振止め機能付き足場10を側方から見た側面図であり、
図6は、本発明の実施形態に係る振止め機能付き足場10の足場本体12の基端部12Aおよびその周辺部位を側方から見た拡大側面図であり、
図7は、振止め部材14の他端部14Bの上面における連結部14B2(張りワイヤー18との連結部)を模式的に示す拡大断面図(ピン14B2cと直交する面を切断面とする拡大断面図)であり、
図8は、従来技術(特許文献1に記載の技術)が風力発電設備100に適用された状態を示す斜視図である。なお、
図2においては、振止め部材14の一端部のヒンジ機構14Aおよび駆動装置70の記載は省略しており、
図3においては、筒状タワー60の記載は省略している。また、
図6の拡大側面図において、ラックレール52と補助レール50Bとは側方から見て重なった位置にあり、同じ位置に描かれている。
【0030】
本発明の実施形態に係る振止め機能付き足場10は、筒状タワー60の外周面に磁石50Aの磁力を介して取り付けられた足場であり、
図1~
図6に示すように、足場本体12と、振止め部材14と、支持部材16と、張りワイヤー18と、ブラケット50と、磁石50Aと、ラックレール52と、駆動装置70と、を有してなる。筒状タワー60は、外周面に磁石が固着可能な材質で構成されている。
【0031】
本発明の実施形態に係る振止め機能付き足場10において、ブラケット50は両端部に磁石50Aを備えており、
図1に示すように、多数のブラケット50が、筒状タワー60の外表面に上下方向に所定の間隔を空けて、磁石50Aの磁力を介して取り付けられており、ブラケット50の中央部には、ラックレール52が筒状タワー60の外表面に沿って上下方向に延びるように取り付けられている。
【0032】
具体的には、上部作業台72に乗り込んだ作業員が、駆動装置70(ラックレール52に沿って上下方向に移動することができる駆動装置)で上方に移動しながら、両端部に磁石50Aが取り付けられているブラケット50を筒状タワー60の外周面に上方向に順次取り付けるとともに、ラックレール52をブラケット50の中央部に取り付けて上方に延ばしていく。そして、ラックレール52は、風力発電設備100の筒状タワー60の頂端まで順次継ぎ足されて取り付けられている。
【0033】
駆動装置70がピニオン52A(
図3参照)を回転させることで、駆動装置70はラックレール52から上下方向の力を受け、連結鋼材70A(
図3および
図6参照)を介してその力が足場本体12の基端部12Aに伝達されて、足場本体12全体が上下方向に移動できるように構成されている。また、
図4に示すように、足場本体12の基端部12Aの基端(筒状タワー60側の基端)には垂直連結鋼材12A1が取り付けられており、
図3および
図4に示すように、垂直連結鋼材12A1の上端部および下端部には、補助輪連結鋼材50C1および補助輪組立鋼材50C2を介して補助輪50Cが取り付けられており、ブラケット50には補助レール50Bが両端部にそれぞれ取り付けられている。補助輪50Cは補助レール50Bを挟み込むように対向して複数設けられていて、補助レール50Bに沿って移動できるように構成されており、足場本体12全体が上下方向にスムーズに移動できるように構成されている。
【0034】
足場本体12は、
図2に示すように、基端部12Aと、長尺部12Bと、ヒンジ機構12Cと、を有してなり、基端部12Aと長尺部12Bとの間にヒンジ機構12Cが設けられている。足場本体12は、磁石50Aが固着可能な筒状タワー60の外周面に、長尺な全体形状が突出するように、基端部12Aが磁石50Aの磁力を介して取り付けられている。ヒンジ機構12Cにより、長尺部12B(足場本体12の部位のうち、ヒンジ機構12Cよりも先端側の部位)は基端部12Aに対して回動することができるように構成されており、
図5に示すように、長尺部12Bは、水平状態から直立状態にまで開閉することができるように構成されている。
【0035】
足場本体12の基端部12Aおよび長尺部12Bは、どちらも作業用の足場(風車羽根(ブレード)102の点検および補修等をするための足場)として用いることができ、転落防止用の手摺が設けられている。作業用の足場として用いるときは長尺部12Bを水平状態に開いた状態(
図1および
図2に示す状態)にする。駆動装置70により、足場本体12全体を上下方向に移動させるときは、長尺部12Bを直立状態に閉じた状態にして移動させる。直立状態に閉じた状態にして移動させることで、上下移動時の安定性を向上させることができる。
図1に示すように、足場本体12の先端部には、滑車付バンド82によって筒状タワー60の頂端に取り付けられた滑車84を経由する先端引上げワイヤー80が連結されており、足場本体12の長尺部12Bを、水平状態から直立状態に変更する際には、
図5に示すように、先端引上げワイヤー80をウインチ86(
図1参照)で巻き上げ、直立状態から水平状態に変更する際には、先端引上げワイヤー80をウインチ86で巻き下げる。
【0036】
振止め部材14は、足場本体12の長尺部12Bを水平状態にしたときの風や地震による水平方向の振れを止める役割を担う部材であり、具体的には、張りワイヤー18が足場本体12(長尺部12Bを水平状態にしたときの足場本体12)となす角度を大きくする役割を有する。
図2に示すように、振止め部材14は、足場本体12の両側にそれぞれ設けられている。また、
図3に示すように、一端部がヒンジ機構14Aを介して基端部12Aの両側にそれぞれ連結していて、水平状態から直立状態にまで開閉することができるように構成されている。また、振止め部材14は、細長い長方形状の板状体であり、水平状態において作業時の足場として利用可能に構成されている。
【0037】
振止め部材14は、水平状態の足場本体12の水平方向の振れを止める役割を担うときは、
図2および
図3に示すように水平状態に開いた状態にし、かつ、他端部14Bの上面の連結部14B1に支持部材16を連結し、さらに、振止め部材14の他端部14Bの上面の連結部14B2と足場本体12の全長の中央部付近の連結部位12Dとを張りワイヤー18で連結する。
図2および
図3に示すように、振止め部材14は、水平状態に開いた状態において、足場本体12の長手方向に対して、自身の長手方向が所定の角度を有するように、足場本体12の基端部12Aに一端部がヒンジ機構14Aを介して取り付けられている。振止め部材14は、水平状態に開いた状態において、足場本体12の長手方向に対して、自身の長手方向がなす角度が小さくなりすぎると(足場本体12の長手方向と振止め部材14の長手方向とが平行に近くなると)、長尺部12Bが水平状態のときの足場本体12(以下、水平状態の足場本体12と記載することがある。)と張りワイヤー18とがなす角度が小さくなり、水平状態の足場本体12の水平方向の振れを止める効果が小さくなってしまうので、水平状態の足場本体12の長手方向と水平状態の振止め部材14の長手方向とがなす角度を、所定の角度以上にすることが好ましく、具体的には例えば45°以上にすることが好ましい。
【0038】
支持部材16は棒状の部材であり、
図2に示すように、足場本体12の両側にそれぞれ設けられており、また、それぞれ一端部に磁石16Aを備えていて、該磁石16Aの磁力を介して筒状タワー60の外周面に着脱自在に前記一端部が固着されており、支持部材16は、筒状タワー60の外周面に、長尺な全体形状が突出するように、一端部が磁石16Aの磁力を介して取り付けられている。支持部材16の他端部は振止め部材14の他端部14Bの上面に設けられた連結部14B1に連結している。振止め部材14の連結部14B1としては、棒状の支持部材16を把持できるような機構を用いることができ、具体的には例えば筒状タワー60の径中心に向かってセットでき、かつ、棒状の支持部材16の把持位置を変更することができるセンターホール型のクランプを用いることができる。
【0039】
張りワイヤー18は、振止め部材14の他端部14Bの連結部14B2と足場本体12の全長の中央部付近の連結部位12D(筒状タワー60の外周面から所定の距離以上離れた部位)との間に張られたワイヤー部材であり、
図2に示すように、足場本体12の両側にそれぞれ配置されていて、合計2本配置されており、水平状態の足場本体12に生じた水平方向の振れによる力を張力として振止め部材14の他端部14Bに伝達する。張りワイヤー18と水平状態の足場本体12の長手方向とのなす角度が小さくなると、水平状態の足場本体12に対する水平方向の振止め効果が小さくなるので、張りワイヤー18と水平状態の足場本体12の長手方向とのなす角度は、所定の角度以上にすることが好ましく、具体的には例えば20°以上にすることが好ましい。また、連結部位12Dの位置が筒状タワー60の外周面から近すぎると、水平状態の足場本体12に対する水平方向の振止め効果が小さくなるので、連結部位12Dは、筒状タワー60の外周面から所定の距離以上離れた位置にするが、張りワイヤー18と水平状態の足場本体12の長手方向とのなす角度が小さくなりすぎないようにする観点、メンテナンスの作業範囲やメンテナンスの効率性の観点から、連結部位12Dは、足場本体12の全長の中央部付近の位置とすることが好ましい。
【0040】
振止め部材14の連結部14B2は、
図7に示すように、2枚の対向鋼材14B2aと、組立鋼材14B2bと、ピン14B2cと、連結鋼材14b2dと、ねじ付き鋼棒14B2eと、ナット14B2fと、を有して構成されている(
図7は断面図(ピン14B2cと直交する面を切断面とする断面図)であるため、対向鋼材14B2aは1枚しか描かれていない。)。2枚の対向鋼材14B2aは、所定の間隔を空けて組立鋼材14B2bに溶接されて固定されている。2枚の対向鋼材14B2aには対応する位置にそれぞれ貫通孔が設けられており、それらの貫通孔をピン14B2cが挿通している。張りワイヤー18は、留め具18Aで先端部がリング状に留められており、そのリング状の接続部をピン14B2cが挿通している。組立鋼材14B2bの反対側の面(対向鋼材14B2aが溶接されている側とは反対側の面)にはねじ付き鋼棒14B2eが溶接されている。連結鋼材14B2dには、ねじ付き鋼棒14B2eが挿通する貫通孔が設けられており、連結鋼材14B2dは、振止め部材14の他端部14Bの上面に取り付けられている。連結鋼材14B2dの貫通孔を挿通したねじ付き鋼棒14B2eの先端部にはナット14B2fが取り付けられており、ナット14B2fを回転させることで、組立鋼材14B2bと連結鋼材14B2dとの間の距離xを調整できるようになっており、距離xを調整することで、張りワイヤー18の張力を調整できるように構成されている。なお、
図7では、張りワイヤー18の先端の接続部は、留め具18Aでリング状に留められた形状に描いているが、張りワイヤー18に加わる張力に応じて、シンブルを用いる等、張りワイヤー18に加わる張力等の条件に応じて適切に張りワイヤー18の接続部を設計する。また、張りワイヤー18の材質や径等も、加わる張力等の条件に応じて適切なものにする。
【0041】
また、張りワイヤー18の連結部位12D側の先端部は、
図7に示すリング状の態様と同様の態様(留め具18Aで先端部がリング状に留められた態様)であり、そのリング状の接続部を連結部位12Dのピン(図示せず)が挿通していて、連結部位12Dにおける張りワイヤー18の連結がなされている。
【0042】
本発明の実施形態に係る振止め機能付き足場10は、以上説明したように構成されているので、水平状態の足場本体12に生じた水平方向の振れによる力は、2つのルートで筒状タワー60に伝達される。1つ目のルートでは、
(水平状態の足場本体12) → (張りワイヤー18) → (振止め部材14) → (基端部12A) → (垂直連結鋼材12A1および連結鋼材70A) → (ブラケット50) → (筒状タワー60)
の順に水平方向の振れによる力が伝達され、また、2つ目のルートでは、
(水平状態の足場本体12) → (張りワイヤー18) → (振止め部材14) → (支持部材16) → (筒状タワー60)
の順に水平方向の振れによる力が伝達され、水平状態の足場本体12の水平方向の振れが低減する。
【0043】
前述したように、従来技術(特許文献1に記載の技術)においては、
図8に示されるように、風力、風向等の変動によって作業用足場104が水平方向に振れることに対して、風力発電設備100の周囲の地上に配置した作業員200が支線ワイヤー108を引っ張ることによって対応を行っていたが、本発明の実施形態に係る振止め機能付き足場10は、水平状態の足場本体12に生じた水平方向の振れによる力を、前記した2つのルートで、人手を介さずに、筒状タワー60に伝達することができ、人手を介さずに、水平状態の足場本体12に生じた水平方向の振れを低減させることができ、地上エリアの大小に関わらず、水平状態の足場本体12に生じた水平方向の振れを低減させることができる。
【0044】
また、前述したように、振止め部材14は、一端部がヒンジ機構14Aを介して基端部12Aに連結しており、水平状態から直立状態にまで開閉することができるように構成されており、水平状態の足場本体12に生じた水平方向の振れを低減させる際には水平状態にするが、直立状態にすることもできる。駆動装置70により、足場本体12全体を上下方向に移動させるときは、足場本体12の長尺部12Bを直立状態に閉じた状態にするだけでなく、振止め部材14も直立状態に閉じた状態にすることにより、移動時の安定性を向上させることができる。
【符号の説明】
【0045】
10…振止め機能付き足場
12…足場本体
12A…基端部
12A1…垂直連結鋼材
12B…長尺部
12C…ヒンジ機構
12D…連結部位
14…振止め部材
14A…ヒンジ機構
14B…他端部
14B1、14B2…連結部
14B2a…対向鋼材
14B2b…組立鋼材
14B2c…ピン
14B2d…連結鋼材
14B2e…ねじ付き鋼棒
14B2f…ナット
16…支持部材
16A…磁石
18…張りワイヤー
18A…留め具
50…ブラケット
50A…磁石
50B…補助レール
50C…補助輪
50C1…補助輪連結鋼材
50C2…補助輪組立鋼材
52…ラックレール
52A…ピニオン
60…筒状タワー
70…駆動装置
70A…連結鋼材
72…上部作業台
80…先端引上げワイヤー
82…滑車付バンド
84…滑車
86…ウインチ
100…風力発電設備
102…風車羽根
104…作業用足場
106…吊りワイヤー
108…支線ワイヤー
200…作業員
x…距離