(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024019986
(43)【公開日】2024-02-14
(54)【発明の名称】コンクリートコアの落下防止治具と、床版の貫通孔の形成方法
(51)【国際特許分類】
B28D 1/14 20060101AFI20240206BHJP
B28D 7/04 20060101ALI20240206BHJP
B23B 51/05 20060101ALI20240206BHJP
【FI】
B28D1/14
B28D7/04
B23B51/05 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022122808
(22)【出願日】2022-08-01
(71)【出願人】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000149206
【氏名又は名称】株式会社大阪防水建設社
(71)【出願人】
【識別番号】502406328
【氏名又は名称】株式会社薬材開発センター
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】谷地 宣之
(72)【発明者】
【氏名】藤田 充彦
(72)【発明者】
【氏名】森 伸也
(72)【発明者】
【氏名】出張 大祐
【テーマコード(参考)】
3C037
3C069
【Fターム(参考)】
3C037AA05
3C037DD00
3C037FF09
3C069AA04
3C069BA09
3C069BB01
3C069CA07
3C069CB01
3C069DA07
3C069EA01
(57)【要約】
【課題】既設構造物の床版に貫通孔を閉塞するに当たり、貫通孔の形成の際に生じるコンクリートコアの落下を効率的な措置にて防止することのできる、コンクリートコアの落下防止治具と、床版の貫通孔の形成方法を提供する。
【解決手段】コンクリート製の既設構造物Cを形成する床版S1を、削孔ロッドR2にて削孔貫通して貫通孔H1を形成した際に生じるコンクリートコアCOを、下方から支持して回収する、コンクリートコアの落下防止治具10であり、棒材11と、棒材11に回動自在に取り付けられ、縮径姿勢と拡径姿勢との間で姿勢変更する、拡径材15とを有し、貫通孔H1の形成に先行して床版S1に形成されている、相対的に小径の先行導孔Haに落下防止治具10が挿通される際は、拡径材15は縮径姿勢であり、床版S1の下方に拡径材15が張り出した際に拡径姿勢へ姿勢変更し、形成されたコンクリートコアCOを、拡径姿勢の拡径材15が支持する。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリート製の既設構造物を形成する床版を、削孔ロッドにて削孔貫通して貫通孔を形成した際に生じるコンクリートコアを、下方から支持して回収する、コンクリートコアの落下防止治具であって、
棒材と、
前記棒材に回動自在に取り付けられ、縮径姿勢と拡径姿勢との間で姿勢変更する、拡径材とを有し、
前記貫通孔の形成に先行して前記床版に形成されている、相対的に小径の先行導孔に前記落下防止治具が挿通される際は、前記拡径材は縮径姿勢であり、前記床版の下方に前記拡径材が張り出した際に拡径姿勢へ姿勢変更し、
形成された前記コンクリートコアを、拡径姿勢の前記拡径材が支持することを特徴とする、コンクリートコアの落下防止治具。
【請求項2】
前記拡径材が、前記棒材から弾性材を介して拡径姿勢となるように付勢されていることを特徴とする、請求項1に記載のコンクリートコアの落下防止治具。
【請求項3】
前記棒材の同じ高さ位置に、複数の前記拡径材が回動自在に取り付けられていることを特徴とする、請求項1又は2に記載のコンクリートコアの落下防止治具。
【請求項4】
前記棒材の複数の高さ位置において、それぞれ複数の前記拡径材が回動自在に取り付けられていることを特徴とする、請求項3に記載のコンクリートコアの落下防止治具。
【請求項5】
コンクリート製の既設構造物を形成する床版を、削孔ロッドにて削孔貫通して貫通孔を形成する、床版の貫通孔の形成方法であって、
棒材と、
前記棒材に回動自在に取り付けられ、縮径姿勢と拡径姿勢との間で姿勢変更する、拡径材とを有する、落下防止治具を用意する、準備工程と、
前記床版のうち、前記貫通孔を形成する位置に、後工程で形成される前記貫通孔に比べて相対的に小径の先行導孔を形成する、先行導孔形成工程と、
前記先行導孔に対して、前記拡径材を縮径姿勢として前記落下防止治具を挿通し、前記床版の下方に前記拡径材が張り出した際に拡径姿勢に姿勢変更させ、前記削孔ロッドにて該床版を削孔貫通して貫通孔を形成した際に生じるコンクリートコアを下方にある該拡径材が支持し、該貫通孔を介して該コンクリートコアを引き上げて回収する、貫通孔形成工程とを有することを特徴とする、床版の貫通孔の形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリートコアの落下防止治具と、床版の貫通孔の形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
河川や海域、地下水位下の地盤内等(本明細書では、これらの領域をまとめて、「水域」と称する)に存在する、既設構造物の下方に地盤改良を行うケースがある。例えば、既設構造物が雨水や下水を取り込んで流通させる幹線を形成するボックスカルバートにおいて、ボックスカルバートの上方に新設構造物が施工される等の場合には、ボックスカルバート下の地盤強度を増強させる必要が生じることから、雨水や下水の幹線を供用しながらボックスカルバート下に地盤改良を施工することになる。
このように水域にある既設構造物下に地盤改良を施工するに当たり、当該既設構造物の幅が長い場合は、既設構造物の側方から斜めに改良ロッドを挿入する方法には限界があり、改良できない領域が生じる恐れがある。そこで、既設構造物を構成する上床版や下床版に貫通孔を形成し、各貫通孔を介して改良ロッドを既設構造物下の地盤内に挿入して地盤改良を行う施工が実施され得る。
【0003】
この施工方法では、水域における既設構造物下の地盤改良であることから、既設構造物の上床版や下床版に貫通孔を形成した際に、地下水が幹線内に浸入することを防止したり、逆に下水等が地盤内に漏洩することを防止するための止水対策が肝要になる。
しかしながら、既設構造物に例えば下水や雨水等を流す空間があり、貫通孔が形成された床版の下方にこの空間があって、人の入れない狭い空間である場合には、貫通孔を形成した際に生じるコンクリートコアがこの狭い空間に落下した際に、この落下したコンクリートコアを回収することができず、雨水幹線や下水幹線等に落下したコンクリートコアが残存するといった課題がある。
【0004】
ここで、特許文献1には、円筒状コアビットによってコンクリートを削孔するコアドリルにおいて、コンクリートを削孔した際に、削孔されたコンクリートが落下しないようにする、コアドリルのコンクリート落下防止装置が提案されている。具体的には、コンクリートの適所に埋め込まれ、コアビットによってコンクリートが削孔される際にコアビット内に配置されるコンクリートアンカーと、コアビット内に配置され、コアビットの上壁とコンクリートアンカーとを連結する連結手段とを備え、コンクリートの削孔後、連結手段とコンクリートアンカーによってコンクリートを吊り、その落下を防止するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載のコアドリルのコンクリート落下防止装置によれば、コンクリートの削孔後にその落下を防止できるとしている。しかしながら、この装置は、コアビットによる削孔に先行して、コンクリートアンカーをコンクリートの適所に埋め込んでおく工程を要し、さらに、コアビット内に配置される連結手段にてコアビットの上壁とコンクリートアンカーとを連結する工程を要することから、手間のかかる落下防止措置となって好ましくない。
【0007】
本発明は、既設構造物の床版に貫通孔を閉塞するに当たり、貫通孔の形成の際に生じるコンクリートコアの落下を効率的な措置にて防止することのできる、コンクリートコアの落下防止治具と、床版の貫通孔の形成方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成すべく、本発明によるコンクリートコアの落下防止治具の一態様は、
コンクリート製の既設構造物を形成する床版を、削孔ロッドにて削孔貫通して貫通孔を形成した際に生じるコンクリートコアを、下方から支持して回収する、コンクリートコアの落下防止治具であって、
棒材と、
前記棒材に回動自在に取り付けられ、縮径姿勢と拡径姿勢との間で姿勢変更する、拡径材とを有し、
前記貫通孔の形成に先行して前記床版に形成されている、相対的に小径の先行導孔に前記落下防止治具が挿通される際は、前記拡径材は縮径姿勢であり、前記床版の下方に前記拡径材が張り出した際に拡径姿勢へ姿勢変更し、
形成された前記コンクリートコアを、拡径姿勢の前記拡径材が支持することを特徴とする。
【0009】
本態様によれば、床版に貫通孔を形成した際に生じるコンクリートコアを落下防止治具にて支持させ、落下防止治具を引き上げてコンクリートコアを既設構造物の上方に回収することにより、既設構造物の内部にコンクリートコアを落下させることを効率的な措置にて防止できる。そのため、床版の下方に人の入れない狭い空間がある場合でも、貫通孔を形成した際に生じるコンクリートコアをこの狭い空間に落下させることなく、回収することが可能になる。
ここで、落下防止治具は、棒材に対して拡径材が回動自在に取り付けられ、拡径材が縮径姿勢と拡径姿勢との間で姿勢変更するようになっており、貫通孔の形成に先行して床版に形成されている、相対的に小径の先行導孔に落下防止治具が挿通される際は拡径材が縮径姿勢であり、床版の下方に拡径材が張り出した際に拡径材が拡径姿勢へ姿勢変更するようになっている。このことにより、可及的に小さな先行導孔に落下防止治具を挿通させながら、先行導孔の中空に比べて大きなコンクリートコアを落下防止治具にて支持することが可能になる。
【0010】
また、本発明による床版の貫通孔を閉塞する底蓋の他の態様において、
前記拡径材が、前記棒材から弾性材を介して拡径姿勢となるように付勢されていることを特徴とする。
【0011】
本態様によれば、拡径材が棒材から弾性材を介して拡径姿勢となるように付勢されていることにより、床版の下方に拡径材が張り出した際に、拡径材を速やかに拡径姿勢へ姿勢変更することができる。
【0012】
また、本発明による床版の貫通孔を閉塞する底蓋の他の態様は、
前記棒材の同じ高さ位置に、複数の前記拡径材が回動自在に取り付けられていることを特徴とする。
【0013】
本態様によれば、棒材の同じ高さ位置に複数の拡径材が回動自在に取り付けられていることにより、複数の拡径材にて落下しているコンクリートコアを安定的に支持することが可能になる。例えば、2つの拡径材が棒材の対角位置(180度離れた位置)に設けられている形態、3つの拡径材が120度間隔で設けられている形態、4つの拡径材が90度間隔で設けられている形態等が挙げられる。
【0014】
また、本発明による床版の貫通孔を閉塞する底蓋の他の態様は、
前記棒材の複数の高さ位置において、それぞれ複数の前記拡径材が回動自在に取り付けられていることを特徴とする。
【0015】
本態様によれば、棒材の複数の高さ位置においてそれぞれ複数の拡径材が回動自在に取り付けられていることにより、例えば上段にある複数の拡径材が故障して広がらない場合に、下段にある複数の拡径材が広がり、落下しているコンクリートコアを支持することが可能になる。
【0016】
また、本発明による床版の貫通孔の形成方法の一態様は、
コンクリート製の既設構造物を形成する床版を、削孔ロッドにて削孔貫通して貫通孔を形成する、床版の貫通孔の形成方法であって、
棒材と、
前記棒材に回動自在に取り付けられ、縮径姿勢と拡径姿勢との間で姿勢変更する、拡径材とを有する、落下防止治具を用意する、準備工程と、
前記床版のうち、前記貫通孔を形成する位置に、後工程で形成される前記貫通孔に比べて相対的に小径の先行導孔を形成する、先行導孔形成工程と、
前記先行導孔に対して、前記拡径材を縮径姿勢として前記落下防止治具を挿通し、前記床版の下方に前記拡径材が張り出した際に拡径姿勢に姿勢変更させ、前記削孔ロッドにて該床版を削孔貫通して貫通孔を形成した際に生じるコンクリートコアを下方にある該拡径材が支持し、該貫通孔を介して該コンクリートコアを引き上げて回収する、貫通孔形成工程とを有することを特徴とする。
【0017】
本態様によれば、床版に貫通孔を形成した際に生じるコンクリートコアを落下防止治具にて支持させ、落下防止治具を引き上げてコンクリートコアを既設構造物の上方に回収することにより、既設構造物の内部にコンクリートコアを落下させることを効率的な措置にて防止できる。そのため、床版の下方に人の入れない狭い空間がある場合でも、貫通孔を形成した際に生じるコンクリートコアをこの狭い空間に落下させることなく、回収することが可能になる。
【発明の効果】
【0018】
本発明のコンクリートコアの落下防止治具と、床版の貫通孔の形成方法によれば、既設構造物の床版に貫通孔を閉塞するに当たり、貫通孔の形成の際に生じるコンクリートコアの落下を効率的な措置にて防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】既設構造物下の地盤改良方法が適用される、水域にある既設構造物の一例を示す図である。
【
図2】既設構造物下の地盤改良方法の一例の工程図である。
【
図3】
図2に続いて、既設構造物下の地盤改良方法の一例の工程図である。
【
図4】
図3に続いて、既設構造物下の地盤改良方法の一例の工程図である。
【
図5】
図4に続いて、既設構造物下の地盤改良方法の一例の工程図である。
【
図6】実施形態に係る落下防止治具と、床版の貫通孔の形成方法の一例を説明する図であって、落下防止治具が貫通孔を通過する状態と、貫通孔から張り出した状態をともに示す図である。
【
図7】
図5に続いて、既設構造物下の地盤改良方法の一例の工程図である。
【
図8】
図7に続いて、既設構造物下の地盤改良方法の一例の工程図である。
【
図9】
図8に続いて、既設構造物下の地盤改良方法の一例の工程図である。
【
図10】
図9に続いて、既設構造物下の地盤改良方法の一例の工程図である。
【
図11】
図10に続いて、既設構造物下の地盤改良方法の一例の工程図である。
【
図12】
図11に続いて、既設構造物下の地盤改良方法の一例の工程図である。
【
図13】
図12に続いて、既設構造物下の地盤改良方法の一例の工程図である。
【
図14】
図13に続いて、既設構造物下の地盤改良方法の一例の工程図である。
【
図15】
図14に続いて、既設構造物下の地盤改良方法の一例の工程図である。
【
図16】
図15に続いて、既設構造物下の地盤改良方法の一例の工程図である。
【
図17】
図16に続いて、既設構造物下の地盤改良方法の一例の工程図である。
【
図18】
図17に続いて、既設構造物下の地盤改良方法の一例の工程図である。
【
図19A】床版の貫通孔を閉塞する底蓋の一例の斜視図である。
【
図19B】底蓋が貫通孔を通過する状態と、床版の下面に密着している状態をともに示す図である。
【
図20】
図18に続いて、既設構造物下の地盤改良方法の一例の工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、実施形態に係る、コンクリートコアの落下防止治具と、床版の貫通孔の形成方法について、添付の図面を参照しながら説明する。尚、本明細書及び図面において、実質的に同一の構成要素については、同一の符号を付することにより重複した説明を省く場合がある。
【0021】
[既設構造物下の地盤改良方法と、実施形態に係るコンクリートコアの落下防止治具と、床版の貫通孔の形成方法]
図1乃至
図20を参照して、既設構造物下の地盤改良方法の一例を説明し、この中で、
図6を参照して、実施形態に係るコンクリートコアの落下防止治具と、床版の貫通孔の形成方法の一例について説明する。
ここで、
図1は、既設構造物下の地盤改良方法が適用される、水域にある既設構造物の一例を示す図であり、
図2乃至
図5,
図7乃至
図18,及び
図20は順に、既設構造物下の地盤改良方法の一例の工程図である。また、
図6は、実施形態に係る落下防止治具と、床版の貫通孔の形成方法の一例を説明する図であって、落下防止治具が貫通孔を通過する状態と、貫通孔から張り出した状態をともに示す図である。さらに、
図19Aは、床版の貫通孔を閉塞する底蓋の一例の斜視図であり、
図19Bは、底蓋が貫通孔を通過する状態と、床版の下面に密着している状態をともに示す図である。
【0022】
図1に示す地盤改良が施工される対象の既設構造物Cは、河川の川床下の地盤G内に埋設されている、線状で鉄筋コンクリート製のボックスカルバートである。このボックスカルバートCは、上床版S1(床版の一例)と下床版S3と左右の側壁W1を備え、内部に隔壁W2を備え、隔壁W2の右側領域には、中床版S2をさらに備えている。
【0023】
上床版S1と中床版S2で挟まれた空間(中空)が下水幹線空間C1であり、中床版S2と下床版S3で挟まれた空間が管理用空間C2であり、隔壁W2の左側領域にある空間は雨水幹線空間C3となっている。
【0024】
そして、下水幹線空間C1は人の入れない狭い空間であり、常時下水が流通している。一方、管理用空間C2は管理者が通行でき、下水幹線や雨水幹線の管理を行う空間となっている。このボックスカルバートCの下の下方地盤G1に地盤改良を行う方法を以下説明する。
【0025】
詳細には、雨水幹線空間C3の下と管理用空間C2の下の下方地盤G1がそれぞれ個別に地盤改良されるが、以下の説明では、管理用空間C2の下の下方地盤G1を地盤改良する方法について説明する。雨水幹線空間C3の下の下方地盤G1の地盤改良も、実質的に同様の方法により行われることになる。尚、下方地盤が地盤改良対象である既設構造物は、図示例のボックスカルバートに限定されるものでなく、様々なコンクリート製の構造物が対象である。また、施工対象の地盤がある水域は、図示例のような河川の他に、海域であってもよい。また、既設構造物が水中に突出した水中構造物であって、その下方の地盤が地盤改良されるケースであってもよい。
【0026】
図2以降の各図では、施工対象の隔壁W2の右側領域のみを取り出して示している。また、図面を理解し易くするために、下水幹線空間C1にある下水の図示を省略している。さらに、ボックスカルバートCの河川の上方には作業床があり、作業床に据え付けられているボーリングマシン等の削孔機器により第1貫入ロッドR1等の回転圧入が実行され、同様に、作業床に据え付けられている地盤改良機器を利用して地盤改良が行われるが、これら作業床や削孔機器、地盤改良機器の図示は省略している。
【0027】
図2に示すように、上床版S1の上方から、上床版S1の厚みの途中位置まで第1貫入ロッドR1をX1方向に回転させながら、X2方向に貫入させる。一例として、φ406mmのケーシングを第1貫入ロッドR1に適用できる。
【0028】
第1貫入ロッドR1を上床版S1の途中位置まで無水状態で回転圧入して焼付けることにより、第1貫入ロッドR1と上床版S1との間に止水構造(一次止水構造)が形成される。例えば、上床版S1の厚みが500mm程度の場合に、第1貫入ロッドR1を50mm程度貫入させる。
【0029】
次に、
図3に示すように、第1貫入ロッドR1の内部に無収縮モルタルM1(止水材の一例)を充填する。無収縮モルタルM1を充填した後、第1貫入ロッドR1を僅かに引き上げることにより、無収縮モルタルM1が第1貫入ロッドR1にて形成された貫入溝を介して外側に広がる。その後、第1貫入ロッドR1を下げてその先端を貫入溝に戻すことにより、
図3に示すように、第1貫入ロッドR1の内外の領域が無収縮モルタルM1にて止水された止水構造(二次止水構造)が形成される。
【0030】
このように、無収縮モルタルM1による止水構造(二次止水構造)を形成することにより、上記する一次止水構造と相俟って、第1貫入ロッドR1の内部への地下水の浸入を抑止することができる(以上、上床版貫入工程)。
【0031】
次に、
図4に示すように、第1貫入ロッドR1の内部に相対的に小径の単管PをX3方向に挿入し、上床版S1を削孔貫通させることにより先行導孔Haを形成する。
【0032】
図5に示すように、先行導孔Haの内部にX4方向に落下防止治具10を挿入し、先行導孔Haを介してその下方を下水幹線空間C1に張り出させる。
【0033】
ここで、
図6を参照して、落下防止治具10の構成と作用について説明する。落下防止治具10は、上床版S1に貫通孔H1(
図7に示す第1貫通孔H1)を形成する際に生じるコンクリートコアCOが、中床版S2の上面に落下するのを防止する治具である。
【0034】
落下防止治具10は、例えば金属製の棒材11と、棒材11に回動自在に取り付けられている複数の金属製の拡径材15とを有する。
【0035】
棒材11は中空のパイプにより形成され、その長手方向の3箇所の左右位置に収容溝11aが開設されている。そして、棒材11の内部にある回動軸13に対して2つの拡径材15の下端が回動自在に装着され、各拡径材15は、棒材11に対してコイルバネ等の弾性材16を介して常時広がる方向に付勢されている。
【0036】
図示例の落下防止治具10は、棒材11の長手方向の3箇所において、それぞれ一対の拡径材15が回動自在に装着されている。
【0037】
落下防止治具10が単管Pによる先行導孔Ha内を通過する際は、
図6に示すように、各拡径材15の少なくとも一部が棒材11の収容溝11aに収容されて、縮径姿勢の落下防止治具10Aとなり、単管Pの内部を下方のX4方向に挿通される。
【0038】
一方、落下防止治具10の下方が単管Pの下方(上床版S1の下方)に張り出した際に、弾性材16にて常時広がる方向へ付勢されている拡径材15が回動軸13を介してX5方向に回動して外側へ広がり、一対の拡径材15が先行導孔Haよりも大径に広がることにより、拡径姿勢の落下防止治具10Bとなる。
【0039】
このように、落下防止治具10は、先行導孔Ha内を挿通される際は、縮径姿勢の落下防止治具10Aであり、上床版S1の下方に張り出した際は拡径姿勢の落下防止治具10Bへと姿勢変更する。
【0040】
ここで、棒材11の長手方向(高さ方向)の異なる複数位置(図示例は3箇所)に、それぞれ一対の拡径材15が回動自在に設けられていることにより、例えば上方にある一対の拡径材15が故障して広がらない場合に、中央にある一対の拡径材15が広がって落下してくるコンクリートコアCOを支持できる。また、使用過程で中央の一対の拡径材15が破損等して広がらない場合に、下方の一対の拡径材15が広がって落下してくるコンクリートコアCOを支持できる。
【0041】
このように、棒材11の異なる高さ位置に複数組の拡径材15が回動自在に設けられていることにより、一部の拡径材15が故障や破損した場合でも、他の組の拡径材15にてコンクリートコアCOを確実に支持することが可能になる。
【0042】
尚、この落下防止治具10を用意する工程は準備工程(落下防止治具準備工程)であり、上床版S1に先行導孔Haを形成する工程は先行導孔形成工程となる。
【0043】
図5は、下水幹線空間C1に落下防止治具10の下方が張り出し、拡径姿勢の落下防止治具10Bとなっている状態を示している。
【0044】
次に、
図7に示すように、上床版S1における第1貫入ロッドR1の内側に第1削孔ロッドR2(削孔ロッドの一例)を配設し、第1削孔ロッドR2をX6方向に回転させながら、X7方向に削孔貫通させる。一例として、φ355mmのケーシングを第1削孔ロッドR2に適用できる。
【0045】
上床版S1に対して第1削孔ロッドR2を削孔貫通させることにより、上床版S1に第1貫通孔H1が形成され、第1貫通孔H1の形成の際にコンクリートコアCOが生じる。生じたコンクリートコアCOを拡径姿勢の落下防止治具10Bにて支持することにより、コンクリートコアCOが中床版S2の上面に落下することを防止できる。このように、第1貫通孔H1の形成と、コンクリートコアCOを拡径姿勢の落下防止治具10Bにて支持して回収する工程は、貫通孔形成工程となる。
【0046】
既述するように、下水幹線空間C1は人の入れない狭い空間であることから、コンクリートコアCOが中床版S2の上面に落下した際にその回収が不可能である。このように、人の入れない狭い空間の上方の床版(上床版S1)に貫通孔を形成する際に、落下防止治具10が奏功する。
【0047】
また、先行導孔Haを可及的に小径に形成することで、先行導孔Haを形成する単管Pと第1貫入ロッドR1との間に第1削孔ロッドR2を配設して第1貫通孔H1を形成できる。このように小径の先行導孔Haを形成する単管Pが適用される場合でも、落下防止治具10が縮径姿勢の落下防止治具10Aへ姿勢変更することにより、小径の単管Pの内部を通過することができる(以上、上床版貫通工程)。
【0048】
次に、
図8に示すように、第1削孔ロッドR2を第2貫入ロッドとして使用し、中床版S2の上方から中床版S2の厚みの途中位置まで、第2貫入ロッドR2をX8方向に回転させながら、X9方向に貫入させる。ここで、図示例のように、第1削孔ロッドR2を第2貫入ロッドとして使用する代わりに、第1削孔ロッドR2とは異なる第2貫入ロッドを使用してもよい。
【0049】
第2貫入ロッドR2を中床版S2の途中位置まで無水状態で回転圧入して焼付けることにより、第2貫入ロッドR2と中床版S2との間に止水構造(一次止水構造)が形成される。例えば、中床版S2の厚みが500mm程度の場合に、第2貫入ロッドR2を50mm程度貫入させる。
【0050】
次に、
図9に示すように、第2貫入ロッドR2の内部に無収縮モルタルM2(止水材の一例)を充填する。無収縮モルタルM2を充填した後、第2貫入ロッドR2を僅かに引き上げることにより、無収縮モルタルM2が第2貫入ロッドR2にて形成された貫入溝を介して外側に広がる。その後、第2貫入ロッドR2を下げてその先端を貫入溝に戻すことにより、
図9に示すように、第2貫入ロッドR2の内外の領域が無収縮モルタルM2にて止水された止水構造(二次止水構造)が形成される。尚、下水幹線空間C1には下水が存在することから、このように第2貫入ロッドR2のわずかな引き上げができない場合は、第2貫入ロッドR2の引き上げは行わなくてよい。
【0051】
このように、無収縮モルタルM2による止水構造(二次止水構造)を形成することにより、上記する一次止水構造と相俟って、第2貫入ロッドR2の内部への下水の浸入を抑止することができる(以上、中床版貫入工程)。
【0052】
次に、
図10に示すように、中床版S2における第2貫入ロッドR2の内側に第2削孔ロッドR3を配設し、第2削孔ロッドR3をX10方向に回転させながら、X11方向に削孔貫通させる。一例として、φ318mmのケーシングを第2削孔ロッドR3に適用できる。
【0053】
中床版S2に対して第2削孔ロッドR3を削孔貫通させることにより、中床版S2に第2貫通孔H2が形成され、第2貫通孔H2の形成の際にコンクリートコアCOが生じる。生じたコンクリートコアCOは、下床版S3の上面に落下する。しかしながら、管理用空間C2は人が入ることのできる広さを有していることから、落下したコンクリートコアCOを作業員が回収することができる。
【0054】
ここで、コンクリートコアCOの落下を防止したい場合は、
図4及び
図5と同様の方法により、第2削孔ロッドR3を削孔貫通させる前に中床版S2に先行導孔を形成し、落下防止治具10を適用することができる(以上、中床版貫通工程)。
【0055】
次に、
図11に示すように、第2削孔ロッドR3を第3貫入ロッドとして使用し、下床版S3の上方から下床版S3の厚みの途中位置まで、第3貫入ロッドR3をX12方向に回転させながら、X13方向に貫入させる。ここで、図示例のように、第2削孔ロッドR3を第3貫入ロッドとして使用する代わりに、第2削孔ロッドR3とは異なる第3貫入ロッドを使用してもよい。
【0056】
第3貫入ロッドR3を下床版S3の途中位置まで無水状態で回転圧入して焼付けることにより、第3貫入ロッドR3と下床版S3との間に止水構造(一次止水構造)が形成される。例えば、第3貫入ロッドR3を50mm程度貫入させる。
【0057】
次に、
図12に示すように、第3貫入ロッドR3の内部に無収縮モルタルM3(止水材の一例)を充填する。無収縮モルタルM3を充填した後、第3貫入ロッドR3を僅かに引き上げることにより、無収縮モルタルM3が第3貫入ロッドR3にて形成された貫入溝を介して外側に広がる。その後、第3貫入ロッドR3を下げてその先端を貫入溝に戻すことにより、
図12に示すように、第3貫入ロッドR3の内外の領域が無収縮モルタルM3にて止水された止水構造(二次止水構造)が形成される。
【0058】
このように、無収縮モルタルM3による止水構造(二次止水構造)を形成することにより、上記する一次止水構造と相俟って、下床版S3に貫通孔(第3貫通孔)が形成された際に、下床版S3の下方から浸入した地下水が管理用空間C2内に入り込むことを抑止できる(以上、下床版貫入工程)。
【0059】
次に、
図13に示すように、下床版S3における第3貫入ロッドR3の内側に第3削孔ロッドR4を配設し、第3削孔ロッドR4をX14方向に回転させながら、X15方向に削孔貫通させる。一例として、φ267mmのケーシングを第3削孔ロッドR4に適用できる。
【0060】
下床版S3に対して第3削孔ロッドR4を削孔貫通させることにより、下床版S3に第3貫通孔H3が形成される。ここで、第3貫通孔H3の形成の際に生じるコンクリートコアを回収したい場合は、
図4及び
図5と同様の方法により、第3削孔ロッドR4を削孔貫通させる前に下床版S3に先行導孔を形成し、落下防止治具10を下方地盤G1内に挿入することができる(以上、下床版貫通工程)。
【0061】
以上の各工程をシーケンシャルに実行することにより、上床版S1と中床版S2と下床版S3における鉛直方向に対応する位置に、第1貫通孔H1と第2貫通孔H2と第3貫通孔H3が形成される。
【0062】
次に、上方から第1貫通孔H1と第2貫通孔H2と第3貫通孔H3を介して、ボックスカルバートCの下方地盤G1に例えばφ250mmのウィングビット等を挿入し、地盤改良深度まで掘削することにより、
図14に示すように、改良ロッドRaを設置するための設置孔Hgを造成する。
【0063】
次に、
図14に示すように、第3削孔ロッドR4を引き上げ撤去しながら、改良ロッドRaを設置孔HgまでX16方向に挿通し、地盤改良深度位置に改良ロッドRaを設置する。その後、改良ロッドRaを回転させながら、その先端から(超)高圧で(大)流量のスラリーを側方へX17方向に噴射する、(超大口径)高圧噴射撹拌工法(地盤改良の一例)を実施する。
【0064】
この高圧噴射撹拌工法により、
図15に示すように、ボックスカルバートCの隔壁W2の右側領域において、下床版S3の下方地盤G1に例えば大径パイルの地盤改良体GIを造成する。
【0065】
ここで、地盤改良工法は、図示例以外にも、改良ロッドRaを適用して地盤改良を実行できる、薬液注入工法等の他の工法が適用されてもよい(以上、地盤改良工程)。
【0066】
地盤改良体GIを施工した後、φ250mmのウィングビット等を第3貫通孔H3の内部に再挿入し、第3貫通孔H3の内部に入り込んでいる地盤改良体を再削孔して孔内清掃を行う。
【0067】
次に、第3貫通孔H1にファイバースコープを挿入して地盤改良体GIの施工状況を確認する。その後、
図16に示すように、第2削孔ロッドR3を引き抜いて撤去しながら、下床版S3の第3貫通孔H3に無収縮モルタルM4(閉塞材の一例)を充填し、下床版3の上面に上蓋L1を配設して無収縮モルタルM4を閉塞してアンカーボルトAにて上蓋L1を下床版S3に固定する。ここで、図示を省略するが、下床版S3の上面と上蓋L1との間にパッキンを介在させることにより、止水性を確保するのが望ましい。
【0068】
次に、中床版S2の下面のうち、第2貫通孔H2を下蓋L2で閉塞し、アンカーボルトAにて下蓋L2を中床版S2に固定する。中床版S2の下面への下蓋L2の取り付けは、管理用空間C2の内部から作業員が行うことができる。ここで、図示を省略するが、中床版S3の下面と下蓋L2との間にパッキンを介在させることにより、止水性を確保するのが望ましい。
【0069】
次に、
図17に示すように、第1削孔ロッドR2を引き抜いて撤去しながら、下蓋L2に設けられている充填孔を介して第2貫通孔H2に無収縮モルタルM5(閉塞材の一例)を充填し、第2貫通孔H2を閉塞する。
【0070】
次に、上床版S1の第1貫通孔H1の閉塞に際し、下水幹線空間C1に作業員が入って下蓋(底蓋)を上床版S1の下面に取り付けることができない。そこで、
図19Aと
図19Bに示す底蓋20を適用することにより、
図18に示すように、上床版S1の第1貫通孔H1の下方を閉塞する。
【0071】
図19Aに示すように、底蓋20は、相互に折り畳み自在に接続されている、複数(図示例は3つ)の分割板21A,21Bと、中央の分割板21Aの上面に固定される固定治具23と、固定治具23に対して中間部材31を介して取り付けられる吊り部材33とを有する。ここで、分割板の個数は、2つであってもよいし、4つ以上であってもよい。
【0072】
固定治具23は、中央の分割板21Aに固定される固定部23aと、固定部23aに対して回動する回動部23bとを備え、回動部23bの一端に中間部材31の一端が固定される。固定部23aと回動部23bは、ナックルジョイントにより形成できる。
【0073】
例えば、回動部23bの上端に螺合溝があり、この螺合溝に対して、例えば棒鋼からなる所定長さ(例えば、第1貫通孔H1の長さ)の中間部材31の一端が螺合される。中間部材31の他端は、高ナット32の一端に螺合し、高ナット32の他端に対して、例えば棒鋼からなる吊り部材33の一端が螺合される。この吊り部材33は、ボックスカルバートCの上方の作業床等から吊り下げられている。
【0074】
分割板21A,21B同士は、複数(図示例は2つ)の蝶番22により接続され、中央の分割板21Aに対して、左右の分割板21Bが中央の分割板21Aの上方へY1方向に回動するようになっている。
【0075】
また、3つの分割板21A,21Bの平面視形状は円形であり、固定部23aは、3つの分割板21A,21Bの重心位置Tに固定されている。平面視形状が円形であることから、図示例では円形の中心に固定部23aが固定されている。
【0076】
一方、図示例の底蓋20では、分割板21Aの裏面の一方に偏位した位置にカウンターウェイト27が取り付けられている。
図19Bに示すように、底蓋20が第1貫通孔H1を挿通される際に、左右の分割板21Bが第1貫通孔H1の壁面に当接して回動し、中央の分割板21A側に立ち上がりながら、さらには、カウンターウェイト27によって3つの分割板21A,21Bの全体を回動部23bを中心にY2方向に回動させて、斜め姿勢とされる。
【0077】
これらのことにより、3つの分割板21A,21Bが第1貫通孔H1を通過する際の平面視面積を可及的に小さくして、第1貫通孔H1内を通過し易くできる。
【0078】
また、3つの分割板21A,21Bの上面には、
図19Aに示すように、第1貫通孔H1の下方開口を閉塞もしくは包囲して、上床版S1の下面に密着する、シール材25が設けられている。ここで、シール材25は、止水ゴムシート等により形成される。
【0079】
さらに、3つの分割板21A,21Bの上面には、第1貫通孔H1の下方開口に対応する複数箇所(第1貫通孔H1の下方開口を模擬した仮想円VC上の4箇所)に、上方に突出する4つの位置合わせピン26が設けられている。
【0080】
図19Bに示すように、第1貫通孔H1を下方へY5方向に挿通し、上床版S1の下面の下方に3つの分割板21A,21Bが張り出した際に、2つの分割板21Bは側方に広がる。その後、3つの分割板21A,21Bが吊り部材33にて吊り上げられた際に、上方に突出する4つの位置合わせピン26が第1貫通孔H1の下方開口に嵌まり込むことにより、3つの分割板21A,21Bを上床版S1の下面の所定位置に配設することができる。
【0081】
このことにより、上床版S1の下面にシール材25を密着させながら、第1貫通孔H1の下方開口を3つの分割板21A,21Bにて閉塞することができる。上床版S1の下面にシール材25が密着することにより、止水性が確保される。
【0082】
尚、この底蓋20を用意する工程は準備工程(底蓋準備工程)であり、3つの分割板21A,21Bにて第1貫通孔H1の下方開口を閉塞する工程は開口閉塞工程となる。
【0083】
開口閉塞工程に次いで、第1貫入ロッドを介して、第1貫通孔H1に上方から無収縮モルタルM6(閉塞材の一例)を充填して閉塞する。
図20は、第1貫通孔H1を無収縮モルタルM6で閉塞し、第1貫入ロッドR1を引き上げて撤去した状態を示している。
【0084】
無収縮モルタルM6が所定の強度を発現するまでは、作業床から吊り部材33にて3つの分割板21A,21Bを吊った状態を維持する。また、
図20に示すように、無収縮モルタルM6の上方にはオーバーカット部M6aを設けておき、オーバーカット部M6aが硬化することでこれが上床版S1の上面に係止される。中間部材31と高ナット32は無収縮モルタルM6に埋設されており、これらの摩擦力やオーバーカット部M6aの係止構造により、上床版S1の下面に対する3つの分割板21A,21Bの密着姿勢が保持され、底蓋20の抜け落ちが防止される。
【0085】
高ナット32は無収縮モルタルM6の上端に位置しており、無収縮モルタルM6が強度発現した後に、吊り部材33を回して高ナット32から取り外し、回収することができる。ここで、高ナット32を無収縮モルタルM6の外側に位置合わせしておき、吊り部材33と高ナット32を一体で回して、中間部材31からこれらを取り外し、回収してもよい(以上、貫通孔閉塞工程)。
【0086】
このように、図示する一連の工程により、ボックスカルバートCを構成する複数の床版にそれぞれ貫通孔を形成しながらボックスカルバートの下方地盤G1に地盤改良を施工する方法において、ボックスカルバートC内にある下水等の地盤G内への漏洩と、地下水のボックスカルバートC内への浸入の双方を防止しながら、地盤改良を行うことが可能になる。
【0087】
【0088】
まず、
図21Aに示すように、コンクリート床版を製作する。製作したコンクリート版は、2つのH形鋼にて支持させ、0.3m嵩上げする。コンクリート版の上面には、試験用加圧ボックスをパッキンを介して設置し、アンカーボルトにて固定した。
【0089】
次に、
図21Bに示すように、コンクリート版の周囲に作業架台を設置し、ボーリングマシンを設置した。この作業架台は、実際の作業床を模擬している。
【0090】
次に、
図21Cに示すように、ボーリングマシンのφ90mmのボーリングロッドに対して、φ400mmのケーシングを装着し、コンクリート版を削孔した。
【0091】
次に、
図21Dに示すように、厚み500mmのコンクリート版の上方の10乃至15mm程度の範囲を、φ400mmのケーシングを無水で貫入して焼付けを行い、ケーシングの内部に無収縮モルタルを充填した。
【0092】
次に、
図21Eに示すように、試験用加圧ボックスと蓋、蓋とφ400mmのケーシングを固定して閉塞処理を行い、ボールバルブ部から0.2MPaの加圧水を給水した。これは、施工計画エリアにおける実際の地下水位に基づく水圧を模擬している。
【0093】
次に、
図21Fに示すように、φ400mmのケーシングの内部に、φ350mmのケーシングを挿入し、コンクリート版を削孔貫通させた。そして、その際の漏水状況を観察した。観察の結果、0.2MPaの加圧水が作用している条件下における漏水は確認されなかった。
【0094】
図21Gに示すように、φ350mmのケーシングの内部下端には、コンクリートコア回収用(落下防止用)の回収用ヒンジが取り付けられており、ケーシングを引き上げた際にコンクリートコアを同時回収した。この回収用ヒンジは、落下防止治具を模擬している。
【0095】
次に、
図21Hに示すように、コンクリート版の下面に貫通孔を閉塞する鉄板を取り付け、φ400mmのケーシング内に無収縮モルタルを充填し、φ400mmのケーシングを引き抜いて貫通孔の閉塞を行った。
【0096】
この一連の試験施工により、所定の水圧が作用している条件下において、コンクリート版に貫通孔を形成した際の漏水を防止しながら、無収縮モルタルにて貫通孔を完全に閉塞する一連の施工を実現できることが検証された。
【0097】
尚、上記実施形態に挙げた構成等に対し、その他の構成要素が組み合わされるなどした他の実施形態であってもよく、ここで示した構成に本発明が何等限定されるものではない。この点に関しては、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更することが可能であり、その応用形態に応じて適切に定めることができる。
【符号の説明】
【0098】
10:落下防止治具
10A:縮径姿勢の落下防止治具
10B:拡径姿勢の落下防止治具
11:棒材
11a:収容溝
13:回動軸
15:拡径材
16:弾性材
20:底蓋
21,21A,21B:分割板
22:蝶番
23:固定治具
23a:固定部
23b:回動部
25:シール材
26:位置合わせピン
31:中間部材(棒鋼)
32:高ナット
33:吊り部材(棒鋼)
C:既設構造物(ボックスカルバート)
C1:下水幹線空間
C2:管理用空間
C3:雨水幹線空間
S1:上床版(床版)
S2:中床版
S3:下床版
W1:外壁
W2:隔壁
G:地盤
G1:下方地盤(既設構造物下地盤)
R1:第1貫入ロッド
R2:第1削孔ロッド(第2貫入ロッド、削孔ロッド)
R3:第2削孔ロッド(第3貫入ロッド)
R4:第3削孔ロッド
Ra:改良ロッド
P:単管
M1,M2,M3:止水材(無収縮モルタル)
M4,M5,M6:閉塞材(無収縮モルタル)
M6a:オーバーカット部
H1:第1貫通孔(貫通孔)
H2:第2貫通孔
H3:第3貫通孔
Ha:先行導孔
Hg:設置孔
CO:コンクリートコア
GI:地盤改良体
L1:上蓋
L2:下蓋
A:アンカーボルト
T:重心位置
VC:仮想円