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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024019990
(43)【公開日】2024-02-14
(54)【発明の名称】タイヤ加硫金型及びタイヤの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 33/02 20060101AFI20240206BHJP
   B29C 33/42 20060101ALI20240206BHJP
   B29C 35/02 20060101ALI20240206BHJP
【FI】
B29C33/02
B29C33/42
B29C35/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022122823
(22)【出願日】2022-08-01
(71)【出願人】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】TOYO TIRE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】祝迫 貞夫
【テーマコード(参考)】
4F202
4F203
【Fターム(参考)】
4F202AA45
4F202AH20
4F202CA21
4F202CB01
4F202CK28
4F202CK42
4F202CU02
4F202CU14
4F203AA45
4F203AH20
4F203DA11
4F203DB01
4F203DC01
4F203DL11
(57)【要約】
【課題】廃棄物の削減やコストの低減を図ることができるタイヤ加硫金型と、それを用いたタイヤの製造方法とを提供する。
【解決手段】タイヤの外表面に接するタイヤ成形面1と、タイヤ成形面1に設けられた装着溝2と、装着溝2の長手方向に並んだ複数の標識要素を含む標識形成部材3と、装着溝2に装着された標識形成部材3を固定する固定部材4と、を備え、標識形成部材3は、装着溝2の長手方向に分割された複数のブロック5で形成されている、タイヤ加硫金型。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤの外表面に接するタイヤ成形面と、
前記タイヤ成形面に設けられた装着溝と、
前記装着溝の長手方向に並んだ複数の標識要素を含む標識形成部材と、
前記装着溝に装着された前記標識形成部材を固定する固定部材と、を備え、
前記標識形成部材は、前記装着溝の長手方向に分割された複数のブロックで形成されている、タイヤ加硫金型。
【請求項2】
前記装着溝の長手方向における前記ブロックの一方側の側方部と他方側の側方部とが互いに嵌合可能な相補形状を有する、請求項1に記載のタイヤ加硫金型。
【請求項3】
前記ブロックの一方側の側方部と他方側の側方部のうち、片方は前記ブロックの背面側を突出させた段差形状を有し、もう片方は前記ブロックの正面側を突出させた段差形状を有する、請求項2に記載のタイヤ加硫金型。
【請求項4】
前記標識形成部材は、一つの前記ブロックが一つの前記標識要素を含むように分割されている、請求項1に記載のタイヤ加硫金型。
【請求項5】
前記固定部材は、前記標識形成部材の周囲を押さえる枠状体を有する、請求項1に記載のタイヤ加硫金型。
【請求項6】
前記装着溝の短手方向における前記ブロックの側方部に、前記ブロックの正面よりも窪んで前記枠状体が載置される載置面が形成されている、請求項5に記載のタイヤ加硫金型。
【請求項7】
前記装着溝は、長手方向の両端に形成された一対の浅底部と、その一対の浅底部の間に形成され、前記浅底部よりも深さが大きい深底部とを有し、
前記標識形成部材は前記深底部に嵌入されている、請求項1に記載のタイヤ加硫金型。
【請求項8】
請求項1~7いずれか1項に記載のタイヤ加硫金型を用いてタイヤを加硫成形する工程を含むタイヤの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤ成形面に標識形成部材が取り付けられたタイヤ加硫金型と、それを用いたタイヤの製造方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
空気入りタイヤの外表面には、タイヤサイズやメーカー名、製造年週などを表す文字や記号を含んだ標識が形成されている。そのような標識を形成するための標識形成部材として、厚みが0.4mm程度の薄板からなるステンシルプレート(セリアルプレートとも呼ばれる)が知られている。ステンシルプレートは、タイヤ加硫金型のタイヤ成形面に取り付けられる。加硫成形時に未加硫タイヤがステンシルプレートに押し当てられることで、転写により標識が形成される。かかるステンシルプレートは、例えば特許文献1,2に記載されている。
【0003】
ステンシルプレートは、複数の標識要素(例えば、文字)を並べて構成された標識を一枚の金属板に打刻することにより作製される。タイヤの標識を更新する際には、ステンシルプレートが入れ替えられ、使用済みのステンシルプレートは廃棄される。通常、標識には製造年週が含まれているので、少なくとも毎週の入れ替えが必要となり、その度にステンシルプレートを廃棄することになる。このため、廃棄物が増えるという問題があった。また、標識の更新頻度に応じた個数のステンシルプレートを作製しなければならず、コストが嵩む傾向にあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005-88517号
【特許文献2】特開2014-172360号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示は上記実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、廃棄物の削減やコストの低減を図ることができるタイヤ加硫金型と、それを用いたタイヤの製造方法とを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示のタイヤ加硫金型は、タイヤの外表面に接するタイヤ成形面と、前記タイヤ成形面に設けられた装着溝と、前記装着溝の長手方向に並んだ複数の標識要素を含む標識形成部材と、前記装着溝に装着された前記標識形成部材を固定する固定部材と、を備え、前記標識形成部材は、前記装着溝の長手方向に分割された複数のブロックで形成されている。
【0007】
本開示のタイヤの製造方法は、上述したタイヤ加硫金型を用いてタイヤを加硫成形する工程を含むものである。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本開示のタイヤ加硫金型の一例を概略的に示す縦断面図
図2図1のX矢視に沿って見た斜視図
図3図2のA-A矢視断面図
図4図2のB-B矢視断面図
図5】標識形成部材及び固定部材を分解して示した斜視図
図6】ブロックの斜視図
【発明を実施するための形態】
【0009】
本開示の実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0010】
図1は、タイヤ子午線断面に沿ったタイヤ加硫金型10(以下、単に「金型10」と呼ぶ場合がある)の断面を示す。この金型10は型閉め状態にある。タイヤTは、タイヤ軸方向を上下に向けてセットされる。図1において、左方向はタイヤ径方向外側、右方向はタイヤ径方向内側である。
【0011】
金型10は、タイヤTのトレッド部を成形するトレッド型部11と、タイヤTのサイドウォール部を成形する一対のサイド型部12,13と、タイヤTのビード部が嵌合される一対のビードリング14,15とを備える。金型10は、キャビティ16にセットされたタイヤTの外表面に接するタイヤ成形面1を備える。タイヤ成形面1は、トレッド型部11の内面、サイド型部12,13の内面、及び、ビードリング14,15の内面を含む。図示を省略しているが、トレッド型部11の内面には、トレッドパターンを形成するための凹凸部が設けられている。
【0012】
トレッド型部11の内面の材料としては、アルミニウム材が例示される。このアルミニウム材は、純アルミ系の材料のみならずアルミニウム合金を含む概念であり、例えばAl-Cu系、Al-Mg系、Al-Mg-Si系、Al-Zn-Mg系、Al-Mn系、Al-Si系が挙げられる。サイド型部12,13の内面及びビードリング14,15の内面の材料としては、一般構造用圧延鋼材(例えばSS400)などの鋼材が例示される。
【0013】
金型10は、タイヤTの外表面に接するタイヤ成形面1と、そのタイヤ成形面1に設けられた装着溝2と、タイヤTの外表面に標識を形成する標識形成部材3と、装着溝2に装着された標識形成部材3を固定する固定部材4(図1では図示せず)とを備える。装着溝2は、タイヤ成形面1の一部を局所的に窪ませて設けられており、そこに標識形成部材3が嵌め込まれている。本実施形態において、装着溝2は、サイド型部12の内面(タイヤ成形面1の一例)に設けられている。
【0014】
図2は、図1のX矢視に沿って見た斜視図であり、下側に位置するサイド型部12の内面の一部を示している。装着溝2には標識形成部材3が装着され、その標識形成部材3が固定部材4によって固定されている。装着溝2の長手方向LDはタイヤ周方向に対応し、装着溝2の短手方向SDはタイヤ径方向に対応している。また、短手方向SDの一方側SD1はタイヤ径方向外側に対応し、他方側SD2はタイヤ径方向内側に対応している。装着溝2は、タイヤ周方向の長さL2がタイヤ径方向の幅W2よりも大きい横長形状を有する。図3は、図2のA-A矢視断面図である。図4は、図2のB-B矢視断面図である。
【0015】
キャビティ16に対向する標識形成部材3の正面には凹部31(図3及び図5では図示せず)が設けられている。加硫成形時には、標識形成部材3の正面に未加硫タイヤの外表面が押し当てられ、転写によって凸状の標識が形成される。よって、凹部31は、正面から見て、タイヤTに形成される標識の鏡像となる。この例では、標識が「K6784539」という文字列により形成されている。即ち、この標識は、「K」、「6」、「7」、「8」、「4」、「5」、「3」及び「9」という八つの標識要素で構成されている。このように、標識形成部材3は、装着溝2の長手方向LDに並んだ複数(本実施形態では八つ)の標識要素を含む。尚、標識要素は、文字に限られず、記号や図形などでも構わない。
【0016】
図5は、標識形成部材3及び固定部材4を分解して示した斜視図である。この金型10では、標識形成部材3が、装着溝2の長手方向LDに分割された複数のブロック5で形成されている。本実施形態において、標識形成部材3は、標識要素の個数である八つに分割されている。標識形成部材3は、互いに独立した複数のブロック5を長手方向LDに連接することにより構成されている。図6は、単体のブロック5を示す斜視図である。ブロック5は、例えばステンレスやアルミニウムなどの金属材で形成されている。各ブロック5は、その正面51に設けられている凹部31を除いて、互いに同じ形状を有している。
【0017】
かかる構成によれば、タイヤTの標識を更新する際に、所要の標識要素を含むブロック5のみを入れ替えることで対応できる。例えば、製造年週を表す「0712」という4桁の数字が標識に含まれている場合に、これを「0713」に更新する際には、「2」のブロック5を「3」のブロック5に置き換えればよい。ブロック5は繰り返し使用することが可能なので、将来的に必要となったときは、取り外したブロック5を再使用でき、延いては廃棄物の削減を図ることができる。また、ブロック5の組み合わせに応じて標識を多様に変更できるため、標識の更新頻度に応じた個数の標識形成部材3を作製する必要がなく、コストの低減を図ることができる。
【0018】
本実施形態において、標識形成部材3は、一つのブロック5が一つの標識要素を含むように分割されている。即ち、標識形成部材3は、1文字ずつ(一つの標識要素ずつ)分割されている。これによりブロック5の組み合わせパターンが増えるため、標識のバリエーションに対して柔軟に対応しやすい。但し、これに限られず、一つのブロックに複数の標識要素が含まれていても構わない。例えば、更新頻度の高い製造年週の部分を1文字ずつ分割し、それ以外の部分を一体化してもよい。標識形成部材3の分割数は、三つ以上が好ましく、四つ以上がより好ましいが、本実施形態のように標識要素の個数であることが更に好ましい。
【0019】
図6に示すように、ブロック5は、全体として矩形板状に形成されている。ブロック5は、キャビティ16に対向する正面51と、装着溝2の底面21に対向する背面52(図3,4参照)と、長手方向LDにおける一方側LD1の側方部53と、他方側LD2の側方部54と、短手方向SDにおける一方側SD1の側方部55と、他方側SD2の側方部56とを有する。背面52は、装着溝2の底面21に接触している。ブロック5の厚みT5(図4参照)は、長手方向LDに沿ったブロック5の長さL5よりも小さく、且つ、短手方向SDに沿ったブロック5の幅W5よりも小さい。
【0020】
ブロック5の厚みT5は、例えば1.0mm以上であり、より具体的には1.0~2.0mmである。このような厚みT5を有することにより、例えばNCマシンを用いた切削加工によって、ブロック5の正面51に凹部31を設けることができる。そのため、凹部31の深さ寸法を高精度に制御することができ、凸状の標識を所要の突出高さで形成するうえで都合が良い。これに対して、従来の薄板で形成されたステンシルプレートでは、エンボス加工(浮き出し工法)によって凹部を打刻するので、凹部の摩滅や深さ寸法のバラつきを生じることがあり、凸状の標識を所要の突出高さで形成するうえで支障を来たす恐れがある。
【0021】
図3及び5に示すように、装着溝2は、長手方向LDの両端に形成された一対の浅底部2Sと、その一対の浅底部2Sの間に形成され、浅底部2Sよりも深さが大きい深底部2Dとを有する。浅底部2Sは相対的に深さが小さく、深底部2D相対的に深さが大きい。浅底部2Sには、後述するボルト7を取り付けるための雌ねじ孔23が設けられている。標識形成部材3は深底部2Dに嵌入されている。これにより、長手方向LDにおいて標識形成部材3(を構成する各ブロック5)を適切に位置決めすることができる。また、隣接し合うブロック5の隙間が過度に大きくなることを防いで、不要なゴムバリの発生を抑制できる。
【0022】
図3に示すように、この金型10では、装着溝2の長手方向LDにおけるブロック5の一方側の側方部53と他方側の側方部54とが互いに嵌合可能な相補形状を有している。かかる構成によれば、長手方向LDにブロック5を連接した際に、隣接し合うブロック5の相対位置が安定して都合が良い。本実施形態において、ブロック5の側方部53,54は、互いに嵌合可能な相補形状として後述の如き段差形状を有しているが、これに限られるものではない。
【0023】
本実施形態では、ブロック5の一方側の側方部53と他方側の側方部54のうち、片方(側方部53)がブロック5の背面側を突出させた段差形状を有し、もう片方(側方部54)がブロック5の正面側を突出させた段差形状を有している。このため、ブロック5の側方部53に対して、それに隣接するブロック5の側方部54が覆い被さるようにして嵌合し、隣接し合うブロック5の隙間がクランク状に形成される(図3参照)。かかる構成によれば、隣接し合うブロック5の隙間に侵入したゴムが途中で遮られるため、仮にゴムバリが発生したとしても目立ちにくい。また、ブロック5を上下逆さに嵌め込むことができないため、ポカよけ防止の効果も見込める。
【0024】
ブロック5の背面52を基準とした段差面の高さh5は、底面21を基準とした浅底部2Sの高さh2Sと実質的に同じ寸法に設定されている。このため、ブロック5の背面側を突出させた側方部53の段差面と浅底部2Sとが実質的に面一となり(図3左下図を参照)、後述する枠状体6の連結部63を側方部53に覆い被せることができる。また、ブロック5の正面側を突出させた側方部54の段差面と浅底部2Sとが実質的に面一となり(図3右下図を参照)、側方部54を浅底部2Sの縁に覆い被せることができる。その結果、装着溝2に対する標識形成部材3(を構成する各ブロック5)の相対位置をより良好に安定させることができる。
【0025】
ブロック5の厚みT5は、装着溝2の深さD2(図4参照)に対して 好ましくは80~100%、より好ましくは90~100%である。隣接し合うブロック5の隙間に侵入したゴムによるゴムバリを目立たせないようにする観点から、更にはブロック5の側方部53の突出部分の強度を確保する観点から、段差面の高さh5は厚みT5の40%以上であることが好ましい。また、ブロック5の側方部54の突出部分の強度を確保する観点から、段差面の高さh5は厚みT5の60%以下であることが好ましい。
【0026】
図2~5のように、固定部材4は、標識形成部材3の周囲を押さえる枠状体6と、留め具としてのボルト7とを有する。枠状体6は、例えばステンレスなどの金属材で形成されている。枠状体6は、ブロック5よりも厚みの小さい板材で形成されている。枠状体6は、装着溝2の側壁22に沿って延びる一対の延設部61,62と、それらを長手方向LDの両端にて連結する一対の連結部63,64とを有する。一対の延設部61,62の間は窓状に開口している。一対の連結部63,64には、ボルト7が挿通される貫通孔65が形成されている。ボルト7の頂面はタイヤ成形面1から突出しているが、タイヤ成形面1から窪んだ位置に配置されていてもよく、タイヤ成形面1と面一でもよい。
【0027】
図2及び4に示すように、装着溝2の短手方向SDにおけるブロック5の側方部55には、ブロック5の正面51よりも窪んで枠状体6(の延設部61)が載置される載置面55aが形成されている。側方部55は、ブロック5の背面側を突出させた段差形状を有しており、その側方部55と装着溝2の側壁22との間に形成された窪みに枠状体6(の延設部61)が嵌入されている。枠状体6の正面は、タイヤ成形面1から窪んだ位置に配置されているが、タイヤ成形面1と面一に配置されていてもよい。側方部55と同様に、側方部56にも枠状体6(の延設部62)が載置される載置面56aが形成されている。
【0028】
図3に示すように、一対の連結部63,64は、それぞれ浅底部2Sに載置される。長手方向LDの一方側LD1の連結部63は、底面21から立ち上がって浅底部2Sに到達する壁面24から深底部2Dに向けて突出し、浅底部2Sに隣接したブロック5の側方部53に覆い被さっている。また、長手方向LDの他方側LD2の連結部64は、ブロック5の側方部54が浅底部2Sの縁に覆い被さることを阻害しないよう、深底部2Dから離れる向きに壁面24から離隔している。不要なゴムバリを生じないよう、一対の延設部61,62の間隔、及び、一対の連結部63,64の間隔は、それぞれブロック5と枠状体6との間に過大な隙間が形成されないように設定されている。
【0029】
タイヤ加硫金型10を用いたタイヤの製造方法は、この金型10を用いてタイヤTを加硫成形する工程、より具体的には、キャビティ16に未加硫タイヤをセットし、その未加硫タイヤに加熱加圧を施して加硫成形を施す工程を含む。タイヤは、ブラダーの膨張によって拡張変形し、その外表面がタイヤ成形面1に押し当てられる。加硫成形後のタイヤの外表面には、標識形成部材3によって標識が形成される。
【0030】
本実施形態では、標識形成部材3が装着される装着溝2が、下側に位置するサイド型部12の内面に設けられた例を示したが、これに代えて、または加えて、上側に位置するサイド型部13の内面に設けられていてもよい。標識形成部材3が装着される装着溝2を、トレッド型部11の内面、またはビードリング14,15の内面に設けることも可能である。
【0031】
本実施形態では、トレッド型部11と一対のサイド型部12,13とを備えた金型構造を例示したが、これに限定されず、例えばトレッド型部の中央部で上下に二分割された金型構造であってもよい。
【0032】
本実施形態では、タイヤTの外表面に凸状の標識を形成するための凹部31が標識形成部材3(各ブロック5)に設けられている例を示したが、これに限られない。したがって、例えば、タイヤTの外表面に凹状の標識を形成するための凸部が標識形成部材3(各ブロック5)に設けられていてもよい。
【0033】
[1]
以上のように、本実施形態のタイヤ加硫金型10は、タイヤTの外表面に接するタイヤ成形面1と、タイヤ成形面1に設けられた装着溝2と、装着溝2の長手方向LDに並んだ複数の標識要素を含む標識形成部材3と、装着溝2に装着された標識形成部材3を固定する固定部材4と、を備え、標識形成部材3は、装着溝2の長手方向LDに分割された複数のブロック5で形成されているものである。
【0034】
かかる構成によれば、タイヤTの標識を更新する際に、所要の標識要素を含むブロック5のみを入れ替えることで対応できる。取り外したブロック5は再使用することができるため、廃棄物の削減を図ることができる。また、ブロック5の組み合わせに応じて標識を多様に変更できるため、標識の更新頻度に応じた個数の標識形成部材3を作製する必要がなく、コストの低減を図ることができる。
【0035】
[2]
上記[1]のタイヤ加硫金型10において、装着溝2の長手方向LDにおけるブロックの一方側の側方部53と他方側の側方部54とが互いに嵌合可能な相補形状を有することが好ましい。かかる構成によれば、長手方向LDにブロック5を連接した際に、隣接し合うブロック5の相対位置が安定して都合が良い。
【0036】
[3]
上記[1]または[2]のタイヤ加硫金型10において、ブロック5の一方側の側方部53と他方側の側方部54のうち、片方はブロック5の背面側を突出させた段差形状を有し、もう片方はブロック5の正面側を突出させた段差形状を有することが好ましい。かかる構成によれば、隣接し合うブロック5の隙間に侵入したゴムが途中で遮られるため、仮にゴムバリが発生したとしても目立ちにくい。
【0037】
[4]
上記[1]~[3]いずれか1つのタイヤ加硫金型10において、標識形成部材3は、一つのブロック5が一つの前記標識要素を含むように分割されていることが好ましい。これによりブロック5の組み合わせパターンが増えるため、標識のバリエーションに対して柔軟に対応しやすい。
【0038】
[5]
上記[1]~[4]いずれか1つのタイヤ加硫金型10において、固定部材4は、標識形成部材3の周囲を押さえる枠状体6を有することが好ましい。これにより、標識形成部材3による標識の形成を阻害せずに、標識形成部材3を押さえて装着溝2に固定することができる。
【0039】
[6]
上記[5]のタイヤ加硫金型10において、装着溝2の短手方向SDにおけるブロック5の側方部55(56)に、ブロック5の正面51よりも窪んで枠状体6が載置される載置面55a(56a)が形成されていることが好ましい。かかる構成は、枠状体6の正面をタイヤ成形面1から窪んだ位置に配置したり、タイヤ成形面1と面一に配置したりするうえで都合が良い。
【0040】
[7]
上記[1]~[6]いずれか1つのタイヤ加硫金型10において、装着溝2は、長手方向LDの両端に形成された一対の浅底部2Sと、その一対の浅底部2Sの間に形成され、浅底部2Sよりも深さが大きい深底部2Dとを有し、標識形成部材3は深底部2Dに嵌入されていることが好ましい。これにより、長手方向LDにおいて標識形成部材3(を構成する各ブロック5)を適切に位置決めすることができる。
【0041】
[8]
また、本実施形態のタイヤの製造方法は、上記[1]~[7]いずれか1つのタイヤ加硫金型10を用いてタイヤTを加硫成形する工程を含むものである。上記の如き金型10を用いることにより、廃棄物の削減やコストの低減を図ることができる。
【0042】
本開示のタイヤ加硫金型は、タイヤ成形面の装着溝に装着される標識形成部材を上記の如く構成したこと以外は、通常のタイヤ加硫金型と同等であり、従来公知の形状や材質、機構などはいずれも採用することができる。
【0043】
本開示のタイヤ加硫金型及びタイヤの製造方法は、いずれも上述した実施形態に何ら限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変更が可能である。
【符号の説明】
【0044】
1 タイヤ成形面
2 装着溝
2D 深底部
2S 浅底部
3 標識形成部材
4 固定部材
5 ブロック
6 枠状体
7 ボルト(留め具の一例)
10 タイヤ加硫金型
16 キャビティ
51 ブロックの正面
52 ブロックの背面
53 長手方向におけるブロックの側方部
54 長手方向におけるブロックの側方部
55 短手方向におけるブロックの側方部
55a 載置面
56 短手方向におけるブロックの側方部
56a 載置面
T タイヤ
図1
図2
図3
図4
図5
図6