(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024019994
(43)【公開日】2024-02-14
(54)【発明の名称】塗布栓
(51)【国際特許分類】
B65D 47/42 20060101AFI20240206BHJP
B65D 47/24 20060101ALI20240206BHJP
B65D 83/00 20060101ALI20240206BHJP
【FI】
B65D47/42
B65D47/24 100
B65D83/00 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022122827
(22)【出願日】2022-08-01
(71)【出願人】
【識別番号】510290991
【氏名又は名称】興和紡株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】若井 彰弘
【テーマコード(参考)】
3E014
3E084
【Fターム(参考)】
3E014PA01
3E014PA03
3E014PB03
3E014PC03
3E014PD23
3E014PE05
3E014PE09
3E014PE16
3E014PE25
3E014PF09
3E084AA04
3E084AA12
3E084AB01
3E084AB06
3E084BA02
3E084CA01
3E084CB02
3E084CC03
3E084DA01
3E084DB13
3E084DC03
3E084EA02
3E084EB02
3E084EB03
3E084EC03
3E084FA09
3E084FC01
3E084GA08
3E084GB12
3E084HB02
3E084HD01
3E084HD04
3E084KB02
3E084LB01
3E084LB07
3E084LD03
3E084LG00
3E084LG06
(57)【要約】
【課題】 塗布栓の耐久性を向上させることが可能な塗布栓の一例を開示する。
【解決手段】 被塗布部に接触するパッド14が軟質樹脂製とするこれにより、当該塗布栓では、塗布が繰り返されても、スポンジ製の液体保持部材が被塗布部に接触する構成に比べて耐久性が向上し得る。さらに、パッド14が予め決められた寸法を超えて開口11A側に弾性変位したときに、筒部11Dがパッド14の内壁に接触し、パッド14及び当該筒部11Dにより開口11Aを覆うことにより、当該開口11Aから貫通孔14Bに液体が流通することを禁止する。
【選択図】
図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器に収容された液体を被塗布部に塗布するための塗布栓において、
容器の開口部(以下、容器口という。)に挿入され、当該容器内と外部とを連通させる開口を有する弁座部と、
前記弁座部に対して離接変位することにより前記開口を開閉する弁体であって、前記弁座部に対して前記容器口側に変位したときに当該開口を開く弁体と、
前記開口に対して前記容器口側に配置されたバネ部であって、当該開口を閉塞するための弾性力を前記弁体に作用させるバネ部と、
前記バネ部と反対側から前記弁座部を覆うとともに、塗布時に表面が被塗布部に接触する軟質樹脂製のパッドであって、液体が流通可能な貫通孔を有するパッドと、
前記弁座部のうち前記パッドと対向する部位、及び前記パッドのうち前記弁座部と対向する部位のうちいずれか一方の部位に設けられ、前記開口の中心を通り、かつ、前記弁体の変位方向と平行な仮想線を中心線とする筒状の筒部であって、当該一方の部位から他方の部位に向けて突出した筒部とを備え、
前記弁体は、先端側が前記開口を貫通しているとともに、前記パッドが当該開口側に弾性変位したときに、当該パッドに作用する押圧力を直接的又は間接的に受けて前記容器口側に変位可能であり、
前記仮想線と直交する仮想面に投影された前記貫通孔は、当該仮想面に投影された前記筒部の外側に位置しており、
さらに、前記パッドが予め決められた寸法を超えて前記開口側に弾性変位したときに、前記筒部が前記他方の部位に接触することにより、前記パッド及び当該筒部により前記開口を覆うことにより、当該開口から前記貫通孔に液体が流通することを禁止する塗布栓。
【請求項2】
前記パッドは、前記開口側に弾性変位したときに前記弁体と直接し、
さらに、前記パッドのうち前記弁体と対向する部位には、当該パッドの内壁面から突出した突出部が設けられている請求項1に記載の塗布栓。
【請求項3】
前記筒部は、前記弁座部との一体成形品である請求項1又は2に記載の塗布栓。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、液体を被塗布部に塗布するための塗布栓に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1に記載の塗布栓は、パッドの内面に密接したスポンジ製の液体保持部材、及び液体流出孔を閉塞する弁体等を備え、当該弁体の頂部は、常に、液体保持部材に接触している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の塗布栓では、塗布時にパッドに作用する押圧力は、パッド及び液体保持部材を介して弁体に作用する。このため、塗布時に、スポンジ製の液体保持部材が大きく圧縮変形する。
【0005】
したがって、特許文献1に記載の塗布栓では、塗布が繰り返されると、スポンジ製の液体保持部材、つまり塗布栓が早期に損傷してしまうおそれがある。本開示は、当該点に鑑み、耐久性を向上させることが可能な塗布栓の一例を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
容器(2)に収容された液体を被塗布部に塗布するための塗布栓は、例えば、以下の構成要件のうち少なくとも1つを備えることが望ましい。
すなわち、容器(2)の開口部(以下、容器口(3)という。)に挿入され、当該容器(2)内と外部とを連通させる開口(11A)を有する弁座部(11)と、弁座部(11)に対して離接変位することにより開口(11A)を開閉する弁体(12)であって、弁座部(11)に対して容器口(3)側に変位したときに当該開口(11A)を開く弁体(12)と、開口(11A)に対して容器口(3)側に配置されたバネ部(13)であって、当該開口(11A)を閉塞するための弾性力を弁体(12)に作用させるバネ部(13)と、バネ部(13)と反対側から弁座部(11)を覆うとともに、塗布時に表面が被塗布部に接触する軟質樹脂製のパッド(14)であって、液体が流通可能な貫通孔(14B)を有するパッド(14)と、弁座部(11)のうちパッド(14)と対向する部位、及びパッド(14)のうち弁座部(11)と対向する部位のうちいずれか一方の部位(11)に設けられ、開口(11A)の中心を通り、かつ、弁体(12)の変位方向と平行な仮想線(Lo)を中心線とする筒状の筒部(11D)であって、当該一方の部位(11)から他方の部位(14)に向けて突出した筒部(11D)とを備えることである。なお、弁体(12)は、先端側が開口(11A)を貫通しているとともに、パッド(14)が当該開口(11A)側に弾性変位したときに、当該パッド(14)に作用する押圧力を直接的又は間接的に受けて容器口(3)側に変位可能である。
【0007】
これにより、当該塗布栓では、被塗布部に接触するパッド(14)が軟質樹脂製であるので、当該塗布栓では、塗布が繰り返されても、スポンジ製の液体保持部材が被塗布部に接触する構成、つまり特許文献1に記載の塗布栓に比べて耐久性が向上し得る。
【0008】
さらに、当該塗布栓では、仮想線(Lo)と直交する仮想面(So)に投影された貫通孔(14B)は、当該仮想面(So)に投影された筒部(11D)の外側に位置しており、かつ、パッド(14)が予め決められた寸法を超えて開口(11A)側に弾性変位したときに、筒部(11D)が他方の部位(14)に接触することにより、パッド(14)及び当該筒部(11D)により開口(11A)を覆うことにより、当該開口(11A)から貫通孔(14B)に液体が流通することを禁止する。
【0009】
これにより、開口(11A)が流出する流体量が過度に大きくなることが抑制される。つまり、パッド(14)が予め決められた寸法を超えて開口(11A)側に弾性変位すると、実質的に開口(11A)が閉塞された状態となるので、開口(11A)が流出する流体量が略定量となる。
【0010】
容器(2)に収容された液体を被塗布部に塗布するための塗布栓は、例えば、以下の構成要件のうち少なくとも1つを備えるものであってもよい。
すなわち、当該構成要件は、容器(2)の開口部に挿入され、当該容器(2)内と外部とを連通させる開口(11A)を有する弁座部(11)と、弁座部(11)に対して離接変位することにより開口(11A)を開閉する弁体(12)であって、弁座部(11)に対して開口部側に変位したときに当該開口(11A)を開く弁体(12)と、開口(11A)に対して開口部側に配置されたバネ部(13)であって、当該開口(11A)を閉塞するための弾性力を弁体(12)に作用させるバネ部(13)と、バネ部(13)と反対側から弁座部(11)を覆うとともに、塗布時に表面が被塗布部に接触する軟質樹脂製のパッド(14)であって、液体が流通可能な貫通孔(14B)を有するパッド(14)とを備えることである。
【0011】
これにより、当該塗布栓では、被塗布部に接触するパッド(14)が軟質樹脂製であるので、当該塗布栓では、塗布が繰り返されても、スポンジ製の液体保持部材が被塗布部に接触する構成、つまり特許文献1に記載の塗布栓に比べて耐久性が向上し得る。
【0012】
さらに、当該塗布栓では、貫通孔(14B)の内壁面のうち当該貫通孔(14B)の貫通方向と平行な部位の寸法を壁面寸法とし、内壁面のうちパッド(14)の外周側位置する部位の壁面寸法を外側壁面寸法(L1)とし、内壁面のうちパッド(14)の中心側に位置する部位の壁面寸法を内側壁面寸法(L2)としたとき、内側壁面寸法(L2)は、外側壁面寸法(L1)より小さくなっている。
【0013】
これにより、当該塗布栓では、貫通孔(14B)から流出した液体の多くは、パッド(14)の中心側に向けて流通する。このため、パッド(14)の表面に流出した液体が、塗布時に過度に外方側に拡散してしまうことが抑制され得る。
【0014】
因みに、上記各括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的構成等との対応関係を示す一例であり、本開示は上記括弧内の符号に示された具体的構成等に限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図7】開口が閉じた状態を示す塗布栓を示す図である。
【
図8】開口が開いた状態を示す塗布栓を示す図である。
【
図9】薬液の流出が停止した状態を示す塗布栓を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下の「発明の実施形態」は、本開示の技術的範囲に属する実施形態の一例を示すものである。つまり、特許請求の範囲に記載された発明特定事項等は、下記の実施形態に示された具体的構成や構造等に限定されない。
【0017】
なお、各図に付された方向を示す矢印及び斜線等は、各図相互の関係及び各部材又は部位の形状を理解し易くするために記載されたものである。したがって、本開示に示された発明は、各図に付された方向に限定されない。斜線が付された図は、必ずしも断面図を示すものではない。
【0018】
少なくとも符号が付されて説明された部材又は部位は、「1つの」等の断りがされた場合を除き、少なくとも1つ設けられている。つまり、「1つの」等の断りがない場合には、当該部材は2以上設けられていてもよい。本開示に示された塗布栓は、少なくとも符号が付されて説明された部材又は部位等の構成要素、並びに図示された構造部位を備える。
【0019】
(第1実施形態)
<1.塗布容器の概要>
本実施形態は、薬液を患部等に塗布するための塗布容器に、本開示に係る塗布栓の一例が適用されたものである。本実施形態に係る塗布容器1は、
図1に示されるように、容器2、塗布栓10及びキャップ(図示せず。)等を有して構成されている。
【0020】
容器2には薬液が収容される。当該容器2の上端には、
図2に示されるように、開口部(以下、容器口3という。)が設けられている。容器2の内外は、容器口3を通して連通している。
【0021】
塗布栓10は、容器2に収容された薬液を患部等の被塗布部に塗布するための塗布手段である。当該塗布栓10は、容器口3を閉塞するように当該容器口3に装着される。なお、キャップは、塗布栓10を外側から覆う覆い部材であって、容器2に着脱自在に装着される。
【0022】
<2.塗布栓>
<2.1 塗布栓の構成>
塗布栓10は、
図3に示されるように、弁座部11、弁体12、バネ部13及びパッド14等を少なくとも備える。
【0023】
<2.2 弁座部>
弁座部11は、容器口3に挿入される部材である。当該弁座部11には、
図4に示されるように、開口11A、受け部11B、保持部11C及び筒部11D等が設けられている。開口11Aは、容器2の内外を連通させる開口である。
【0024】
受け部11Bは、容器口3側に凹んだ凹面状の部位を構成する。そして、開口11Aは、当該受け部11Bの中央に設けられている。筒部11Dは、開口11Aを囲むように受け部11Bに設けられた円筒状の突起部である。
【0025】
すなわち、筒部11Dは、
図7に示されるように、仮想線Lo(以下、中心線Loともいう。)を中心軸線とする筒状の部位であって、受け部11Bからパッド14の内壁に向けて突出した円筒状の突起部である。中心線Loは、開口11Aの中心を通り、かつ、弁体12の変位方向(紙面上下方向)と平行な仮想線である。
【0026】
保持部11Cは、受け部11Bの容器口3側に設けられた筒状の部位である。なお、本実施形態では、受け部11B、保持部11C及び筒部11Dは、ポリエチレン等のパッド14に比べて硬質な樹脂にて一体成形された一体品である。
【0027】
なお、保持部11Cは、リテーナ15(
図3参照)内に挿入された状態で当該リテーナ15に固定される。具体的には、保持部11Cに設けられた係合部11E(
図3参照)とリテーナ15に設けられた被係合部15A(
図3参照)とが係合することにより、保持部11Cがリテーナ15に固定される。
【0028】
本実施形態に係る係合部11Eは、被係合部15Aが嵌り込む係合穴である。そして、係合部11E及び被係合部15Aのうち少なくとも一方(本実施形態では、主に係合部11E)が弾性変位することにより、被係合部15Aが係合部11Eに嵌り込む。
【0029】
リテーナ15は、容器口3に嵌め込まれた状態で容器2に固定される筒状の部位である。つまり、弁座部11は、リテーナ15に保持された状態で容器口3に挿入されて容器2に固定された状態となる。
【0030】
<2.3 弁体及びバネ部>
弁体12は、弁座部11に対して離接変位することにより開口11Aを開閉する。具体的には、
図8に示されるように、弁体12が受け部11Bに対して容器口3側(紙面下側)に変位したときには、開口11Aが開く。
【0031】
また、
図7に示されるように、弁体12の円錐面12Aが開口11Aの外縁に接触した状態では、開口11Aが閉じた状態となる。そして、バネ部13は、開口11Aを閉塞するための弾性力を弁体12に作用させる。
【0032】
バネ部13は、開口11Aに対して容器口3側(紙面下側)に配置されている。本実施形態に係るバネ部13は、
図5に示されるように、ピッチ角が比較的大きい螺旋状に構成された3つのバネにて構成されている。
【0033】
なお、本実施形態では、弁体12、バネ部13及びリテーナ15は、ポリエチレン等のパッド14に比べて硬質な樹脂にて一体成形された一体品である。このため、本実施形態に係る弁体12は、バネ部13を介してリテーナ15に保持される。
【0034】
<2.4 パッド>
パッド14は、
図7に示されるように、バネ部13と反対側から受け部11Bを覆う部材であって、弁体12等に比べて軟質な樹脂にて構成された部材である。当該パッド14の表面(
図7の上面)は、塗布時に被塗布部に接触する。軟質な樹脂、つまり軟質樹脂とは、例えば、熱可塑性エラストマー、天然ゴム、合成ゴム、シリコーンゴム及びシリコーン樹脂等である。
【0035】
パッド14の表面(以下、塗布面という。)には、塗布面から突出した複数の凸部14Aが設けられている。本実施形態に係る各凸部14Aは、略半球状である。そして、複数の凸部14Aは、パッド14の中心O1が図心となる図形を描くように設けられている。
【0036】
具体的には、
図6に示されるように、複数の凸部14Aは、開口11Aの中心、つまり中心線Loが図心O1となる多角形を描くように設けられている。なお、各凸部14Aは、パッド14と共に一体成形された一体品である。
【0037】
図7に示されるように、パッド14は、塗布面が凸状に湾曲したドーム状に構成されたものである。そして、パッド14のうち塗布面には、少なくとも1つ(本実施形態では、複数の)貫通孔14Bが設けられている。各貫通孔14Bは、薬液が流通可能な貫通孔である。
【0038】
各貫通孔14Bは、少なくとも一部が凸部14Aと重なる位置に設けられている。具体的には、
図6に示されるように、各貫通孔14Bは、当該凸部14Aの外縁のうち中心O1側に設けられている。
【0039】
なお、各貫通孔14Bは、上記多角形状の最外周に相当する位置に存在する凸部14Aに設けられている。さらに、パッド14の表面であって各貫通孔14Bより外周側には、環状の突条14Cが設けられている。
【0040】
<2.5 貫通孔の詳細>
図10に示されるように、各貫通孔14Bは、内側壁面寸法L2が外側壁面寸法L1より小さくなるように構成されている。そして、各貫通孔14Bは、一部が凸部14Aと重なる位置に設けられている。
【0041】
なお、壁面寸法とは、貫通孔14Bの内壁面のうち当該貫通孔14Bの貫通方向と平行な部位の寸法をいう。外側壁面寸法L1とは、貫通孔14Bの内壁面のうちパッド14の外周側位置する部位の壁面寸法をいう。
【0042】
内側壁面寸法L2とは、貫通孔14Bの内壁面のうちパッド14の中心O1側に位置する部位の壁面寸法をいう。したがって、本実施形態では、各貫通孔14Bの壁面寸法が最も小さくなる部位、つまり内側壁面は、凸部14Aからずれた部位に位置している。
【0043】
図11に示されるように、各貫通線L1は、中心線Loに対して傾いている。そして、中心線Loと各貫通線L1とは、パッド14を挟んでバネ部13と反対側(紙面上側)で交差する(
図12参照)。なお、貫通線L1とは、貫通孔14Bの貫通方向と平行な仮想線をいう。
【0044】
なお、各貫通孔14Bは、レーザ加工により形成されている。したがって、
図12に示された各貫通線L1は、レーザ加工時におけるレーザの光軸と一致する。つまり、中心線Loと各貫通線L1と交点からレーザ光が照射される。
【0045】
<3.塗布栓の作動>
パッド14の塗布面が押圧されて当該パッド14が弁体12側に変形すると、パッド14は、筒部11Dより先に弁体12に接触する。これを実現するために、本実施形態では、
図8に示されるように、パッド14のうち弁体12と対向する部位に突出部14Dが設けられている。突出部14Dは、パッド14の内壁から弁体12側に突出している。
【0046】
これにより、パッド14が弁体12側に変形すると、パッド14(突出部14D)を介して弁体12が容器口3側に変位するため、開口11Aが開く。開口11Aから流出した薬液は、筒部11Dの先端とパッド14との隙間から空間14E内に流入した後、当該空間14Eから貫通孔14Bを経由して塗布面に流出する。
【0047】
パッド14が弁体12側に更に変形し、予め決められた寸法を超えて開口11A側に弾性変位すると、
図9に示されるように、筒部11Dの先端がパッド14の内壁に接触する。このため、空間14Eと開口11Aとが分断された状態となる。
【0048】
各貫通孔14Bは、
図6に示されるように、仮想線Loと直交する仮想面に投影された各貫通孔14Bが、当該仮想面Soに投影された筒部11Dの外側に位置するように設けられている。
【0049】
このため、筒部11Dの先端がパッド14の内壁に接触して空間14Eと開口11Aとが分断された状態となると、空間14Eへの薬液の供給が停止するので、塗布面への薬液の流出が停止する。
【0050】
つまり、各貫通孔14Bから塗布面に流出する薬液量は、開口11Aが開いた時から筒部11Dの先端がパッド14の内壁に接触するまでに流出した薬液量となる。したがって、塗布面に流出する薬液量は、概ね定量となる。
【0051】
<4.本実施形態に係る塗布栓の特徴>
本実施形態に係る塗布栓10では、被塗布部に接触するパッド14が軟質樹脂製であるので、当該塗布栓10では、塗布が繰り返されても、スポンジ製の液体保持部材が被塗布部に接触する構成、つまり特許文献1に記載の塗布栓10に比べて耐久性が向上し得る。
【0052】
当該塗布栓10では、内側壁面寸法L2が外側壁面寸法L1より小さくなっている。これにより、当該塗布栓10では、各貫通孔14Bから流出した液体の多くは、パッド14の中心側に向けて流通する。
【0053】
つまり、貫通孔14Bを流通する薬液は、貫通孔14Bの内壁から当該流通する薬液の静圧相当の力を受けて貫通線L1に沿って流通している。そして、本実施形態では、貫通孔14Bの出口側において、内側壁面寸法L2が外側壁面寸法L1より小さくなっているため、出口側の薬液は、外側壁面からのみ静圧相当の力を受け、内側壁から静圧相当の力を受けない。
【0054】
したがって、貫通孔14Bから流出した薬液には、外側壁面側から内側壁側に向かう向きの速度成分、つまり塗布面の中心側に向かう向きの速度成分が発生する。このため、パッド14の塗布面に流出した薬液が、塗布時に過度に外方側に拡散してしまうことが抑制され得る。
【0055】
そして、各貫通孔14Bは、中心線Loと各貫通線L1とがパッド14を挟んでバネ部13と反対側で交差するように傾いている。したがって、貫通孔14Bから流出した薬液には、塗布面の中心側に向かう向きの速度成分が確実に発生する。延いては、パッド14の塗布面に流出した薬液が、塗布時に過度に外方側に拡散してしまうことが確実に抑制され得る。
【0056】
各貫通孔14Bの一部が凸部14Aと重なっているので、内側壁面寸法L2と外側壁面寸法L1との差を容易に大きくすることができる。したがって、塗布面の中心側に向かう向きの速度成分を大きくすることが可能となり得る。
【0057】
各貫通孔14Bのうち壁面寸法が最も小さい部位は、対応する凸部14Aからずれた部位に位置している。これにより、内側壁面寸法L2と外側壁面寸法L1との差を容易に大きくすることができる。したがって、塗布面の中心側に向かう向きの速度成分を大きくすることが可能となり得る。
【0058】
各貫通孔14Bより外周側には、環状の突条14Cが設けられている。これにより、突条14Cが堰のように機能するので、パッド14の塗布面に流出した薬液が、塗布時に過度に外方側に拡散してしまうことが確実に抑制され得る。
【0059】
当該塗布栓10は、パッド14が予め決められた寸法を超えて開口11A側に弾性変位したときに、筒部11Dがパッド14の内壁に接触する。このため、パッド14及び当該筒部11Dにより開口11Aが覆われる(
図9参照)ことにより、当該開口11Aから各貫通孔14Bに薬液が流通することが禁止される。
【0060】
これにより、開口11Aが流出する薬液量が過度に大きくなることが抑制される。つまり、パッド14が予め決められた寸法を超えて開口11A側に弾性変位すると、実質的に開口11Aが閉塞された状態となるので、開口11Aが流出する流体量が略定量となる。
【0061】
なお、本実施形態では、各貫通孔14Bのうち壁面寸法が最も小さい部位は、凸部14Aからずれていることにより、各貫通孔14Bの一部のみが凸部14Aと重なった構成となっている。
【0062】
そして、当該構成によれば、各貫通孔14B全体が凸部14Aと重なった構成(例えば、
図13参照)に比べて、貫通孔14Bをレーザ加工にて形成する際のレーザ加工装置の消費電力が小さくなる。
【0063】
(第2実施形態)
第1実施形態に係る各貫通孔14Bは、一部のみが凸部14Aと重なっているとともに、当該貫通孔14Bのうち壁面寸法が最も小さい部位が凸部14Aからずれた部位に位置した構成であった(
図10参照)。
【0064】
これに対して、本実施形態に係る各貫通孔14Bは、
図13に示されるように、各貫通孔14Bは、当該貫通孔14Bの全部が凸部14Aと重なっている。なお、本実施形態においても、内側壁面寸法L2は外側壁面寸法L1より小さく、かつ、各貫通孔14Bは中心線Loに対して傾いている。
【0065】
因みに、上述の実施形態と同一の構成要件等は、上述の実施形態と同一の符号が付されている。このため、本実施形態では、重複する説明は省略されている。
(第3実施形態)
第1実施形態に係る各貫通孔14Bは、中心線Loと各貫通線L1とがパッド14を挟んでバネ部13と反対側で交差するように傾いた構成であった(
図10参照)。これに対して、本実施形態に係る各貫通孔14Bは、
図14及び
図15に示されるように、中心線Loと各貫通線L1とがパッド14を挟んでバネ部13と反対側で交差しない。
【0066】
なお、本実施形態においても、内側壁面寸法L2は外側壁面寸法L1より小さくなっている。上述の実施形態と同一の構成要件等は、上述の実施形態と同一の符号が付されている。このため、本実施形態では、重複する説明は省略されている。
【0067】
(第4実施形態)
第1実施形態に係る各貫通孔14Bは、少なくとも一部が凸部14Aと重なっている構成であった。これに対して、本実施形態に係る各貫通孔14Bは、
図16及び
図17に示されるように、凸部14Aと重なっていない。
【0068】
なお、実施形態においても、各貫通孔14Bは中心線Loに対して傾いている。但し、
図16は、内側壁面寸法L2と外側壁面寸法L1とが同一寸法となる場合を示している。
図17は、内側壁面寸法L2は外側壁面寸法L1より小さい場合を示している。
【0069】
上述の実施形態と同一の構成要件等は、上述の実施形態と同一の符号が付されている。このため、本実施形態では、重複する説明は省略されている。
(第5実施形態)
上述の実施形態では、貫通孔14Bの出口側において、内側壁面寸法L2が外側壁面寸法L1より小さい構成であった。これに対して、本実施形態は、
図18に示されるように、貫通孔14Bの入口側において、内側壁面寸法L2が外側壁面寸法L1より小さい構成である。
【0070】
なお、
図18は、各貫通孔14Bが中心線Loに対して傾いた例である。しかし、本実施形態はこれに限定されない。すなわち、例えば、各貫通孔14Bが中心線Loに対して平行であってもよい。
【0071】
上述の実施形態と同一の構成要件等は、上述の実施形態と同一の符号が付されている。このため、本実施形態では、重複する説明は省略されている。
(第6実施形態)
上述の実施形態に係る凸部14Aは、半球状であった。これに対して、本実施形態に係る凸部14Aは、
図19に示されるように、半球状以外の凸部14A(例えば、矩形状ブロック状の凸部14A)にて構成された例である。
【0072】
なお、凸部14A以外の構成要件は、第1~第5実施形態のいずれかと同じである。このため、同一の構成要件等は、上述の実施形態と同一の符号が付されている。そして、本実施形態では、重複する説明は省略されている。
【0073】
(その他の実施形態)
上述の実施形態に係る筒部11Dは、受け部11B、つまり弁座部11に設けられた円筒状の部位であった。しかし、本開示はこれに限定されない。すなわち、当該開示は、例えば、パッド14の内壁面に筒部11Dが設けられた構成、又は角筒状の筒部11Dであってもよい。
【0074】
上述の実施形態では、環状の突条14Cが2つ設けられていた。しかし、本開示はこれに限定されない。すなわち、当該開示は、例えば、突条14Cが廃止された構成、又は突条14Cが1つ若しくは3つ以上である構成であってもよい。
【0075】
上述の実施形態に係る貫通孔14Bは、複数の貫通孔14Bにより描かれる図形の最外周に相当する位置に存在する凸部14Aに設けられていた。しかし、本開示はこれに限定されない。すなわち、当該開示は、例えば、当該図形の最外周より中心側に貫通孔14Bが設けられた構成であってもよい。
【0076】
上述の実施形態では、パッド14の塗布面に凸部14Aが設けられていた。しかし、本開示はこれに限定されない。すなわち、当該開示は、例えば、凸部14Aが廃止された塗布面を有するパッド14であってもよい。
【0077】
上述の実施形態では、受け部11Bに筒部11Dが設けられ、かつ、内側壁面寸法L2は外側壁面寸法L1より小さい構成であった。しかし、本開示はこれに限定されない。すなわち、当該開示は、例えば、筒部11Dが廃止された構成等であってもよい。
【0078】
上述の実施形態に係る各貫通孔14Bは、レーザ加工により形成されていた。しかし、本開示はこれに限定されない。すなわち、当該開示は、例えば、機械加工にて形成された貫通孔14、又はパッド14の成形型により形成された貫通孔14Bであってもよい。
【0079】
さらに、本開示は、上述の実施形態に記載された開示の趣旨に合致するものであればよく、上述の実施形態に限定されない。したがって、上述した複数の実施形態のうち少なくとも2つの実施形態が組み合わせられた構成、又は上述の実施形態において、図示された構成要件もしくは符号を付して説明された構成要件のうちいずれかが廃止された構成であってもよい。
【符号の説明】
【0080】
1… 塗布容器 2…容器 3… 容器口
10… 塗布栓 11…弁座部 11A… 開口
11B… 受け部 11C…保持部 11D… 筒部
11E… 係合部 12…弁体 12A… 円錐面
13… バネ部 14…パッド 14A… 凸部
14B… 貫通孔 14C…突条 14D… 突出部