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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024019997
(43)【公開日】2024-02-14
(54)【発明の名称】自律走行ロボット、プログラム
(51)【国際特許分類】
   G05D 1/43 20240101AFI20240206BHJP
【FI】
G05D1/02 S
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022122830
(22)【出願日】2022-08-01
(71)【出願人】
【識別番号】000002059
【氏名又は名称】シンフォニアテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000992
【氏名又は名称】弁理士法人ネクスト
(72)【発明者】
【氏名】濱口 雄一
(72)【発明者】
【氏名】宮田 萌
【テーマコード(参考)】
5H301
【Fターム(参考)】
5H301AA02
5H301AA10
5H301BB14
5H301CC03
5H301CC06
5H301CC10
5H301GG08
5H301GG09
5H301GG12
5H301LL02
5H301LL03
5H301LL06
5H301LL07
5H301LL08
5H301LL14
5H301LL15
5H301LL16
5H301LL17
(57)【要約】
【課題】前方から近づいてくる移動体との衝突を適正に回避することができる自律走行ロ
ボットを提供することを目的とする。
【解決手段】自律走行ロボット100は、走行経路に従って、自装置を自律走行させる。
自律走行中に、撮像データに基づいて、自装置前方に位置する特定移動体を検出した場合
に、自装置から特定移動体までの相対距離を追従検出し、検出された特定移動体に対して
、特定移動体の種別に応じた動作態様ですれ違い動作を行う。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自装置周囲に位置する物体を検出するセンサと、
自装置前方を撮像した撮像データを取得する撮像部と、
走行駆動部と、
前記センサにより検出された物体の位置に基づいて、自装置周囲の経路算出領域におけ
る走行経路を算出し、算出された走行経路に従って、前記走行駆動部を駆動させることで
、自装置を自律走行させる自律走行制御部と、
前記自律走行中に、前記撮像データに基づいて、自装置を基準として前記経路算出領域
よりも前方に位置する特定移動体を検出し、検出された前記特定移動体の種別を判別する
物体検出部と、を備え、
前記自律走行制御部は、検出された前記特定移動体に対して、判別された前記特定移動
体の種別に応じた動作態様で、自装置と前記特定移動体とをすれ違わせるすれ違い動作を
行わせるために、前記走行駆動部を制御する、自律走行ロボット。
【請求項2】
前記物体検出部は、前記撮像データに含まれる前記特定移動体として、歩行介助器具を
保持しておらず、かつ車椅子に乗っていない人を、健常者として判別し、
前記自律走行制御部は、前記特定移動体が前記健常者である場合に、前記すれ違い動作
として、自装置の移動速度を徐行速度まで低下させる徐行動作を行うように、前記走行駆
動部を制御する、請求項1に記載の自律走行ロボット。
【請求項3】
前記物体検出部は、前記撮像データに含まれる前記特定移動体として、歩行介助器具を
保持している人、又は車椅子に乗った人を、歩行介助対象者として判別し、
前記自律走行制御部は、前記特定移動体が前記歩行介助対象者である場合に、前記すれ
違い動作として、前記歩行介助対象者の進路を避けた走行経路を走行させる回避動作を行
うように、前記走行駆動部を制御する、請求項1に記載の自律走行ロボット。
【請求項4】
前記物体検出部は、前記撮像データに含まれる前記特定移動体として、搬送者を伴う搬
送器具を判別し、
前記自律走行制御部は、前記特定移動体が前記搬送者を伴う搬送器具である場合に、前
記すれ違い動作として、前記搬送者を伴う搬送器具の進路を妨害しないように退避させる
退避動作を行うように、前記走行駆動部を制御する、請求項1に記載の自律走行ロボット
【請求項5】
前記自律走行制御部は、
前記特定移動体が自装置に対して近づく方向に移動している場合に、前記すれ違い動作
を行わせるために、前記走行駆動部を制御する、請求項1~4のいずれか一項に記載の自
律走行ロボット。
【請求項6】
自装置周囲に位置する物体を検出するセンサと、
自装置前方を撮像した撮像データを取得する撮像部と、
走行駆動部と、を備える自律走行ロボットのコントローラにより実行されるプログラム
であって、
前記コントローラに、
前記センサにより検出された物体の位置に基づいて、自装置周囲の経路算出領域におけ
る走行経路を算出させ、算出された走行経路に従って、前記走行駆動部を駆動させること
で、自装置を自律走行させる自律走行制御処理と、
前記自律走行中に、前記撮像データに基づいて、自装置を基準として前記経路算出領域
よりも前方に位置する特定移動体を検出し、検出された前記特定移動体の種別を判別する
物体検出部と、
を実行させ、
前記自律走行制御処理では、検出された特定移動体に対して、判別された前記特定移動
体の種別に応じた動作態様で、自装置と前記特定移動体とをすれ違わせるすれ違い動作を
行わせるために、前記走行駆動部を制御する、プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自律走行可能な装置の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、自装置周囲の障害物をセンサにより検出し、検出結果を用いて、自律
走行を行う自律走行ロボットが記載されている。また、自律走行ロボットにおいて、自装
置周囲の障害物に対する検出結果を用いて、目的地までの走行経路を算出し、算出された
走行経路に従って走行する自律走行ロボットも知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-70952号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
自律走行ロボットが屋内の通路等を走行中に、移動体が自律走行ロボットに近づいてく
る場面を想定する。自律走行ロボットが、算出された走行経路に従って通路等を走行する
構成では、近づいてくる移動体との衝突を避けるように走行経路が算出され、算出された
走行経路に従って走行することになる。しかし、自律走行ロボットの走行中に、移動体が
自律走行ロボットとの衝突を避けるように進路を変更する場合があり、両者が同じ方向に
進むことで、両者がすれ違うことなく近接してしまう場合がある。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みたものであり、前方から近づいてくる移動体との衝突を適正
に回避することができる自律走行ロボット、及びプログラムを提供することを目的とする
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために本実施形態に開示された自律走行ロボットでは、自装置周囲
に位置する物体を検出するセンサと、自装置前方を撮像した撮像データを取得する撮像部
と、走行駆動部と、センサにより検出された物体の位置に基づいて、自装置周囲の経路算
出領域における走行経路を算出し、算出された走行経路に従って、走行駆動部を駆動させ
ることで、自装置を自律走行させる自律走行制御部と、自律走行中に、撮像データに基づ
いて、自装置を基準として経路算出領域よりも前方に位置する特定移動体を検出し、検出
された特定移動体の種別を判別する物体検出部と、を備える。物体検出部は、特定移動体
の種別を判別可能であり、自律走行制御部は、検出された特定移動体に対して、判別され
た特定移動体の種別に応じた動作態様で、自装置と前記特定移動体とをすれ違わせるすれ
違い動作を行わせるために、走行駆動部を制御する。
【0007】
上記構成の自律走行ロボットでは、センサにより検出された周囲の物体の位置に基づい
て、自装置よりも前方の経路算出領域における走行経路を算出し、算出された走行経路に
従って、走行駆動部を駆動させることで、自装置を自律走行させる。自律走行中に、撮像
部により取得された撮像データに基づいて、自装置前方に位置する特定移動体を検出した
場合に、この特定移動体に対して、判別された特定移動体の種別に応じた動作態様で、自
装置と前記特定移動体とをすれ違わせるすれ違い動作を行わせるために、走行駆動部を制
御する。これにより、前方から、自装置に近づいてくる特定移動体が存在する場合に、自
律走行ロボットは、特定移動体が自装置周囲に設定された経路算出領域に侵入するよりも
以前のタイミングで、特定移動体の種別に応じた動作態様で、すれ違い動作を行う。この
ため、特定移動体が経路算出領域に侵入した後に、自律走行ロボットと特定移動体とが同
じ方向に回避することで両者が、すれ違うことなく近接してしまうのを抑制することがで
きる。
【0008】
物体検出部は、撮像データに含まれる特定移動体として、歩行介助器具を保持しておら
ず、かつ車椅子に乗っていない人を、健常者として判別し、自律走行制御部は、特定移動
体が健常者である場合に、すれ違い動作として、自装置の移動速度を徐行速度まで低下さ
せる徐行動作を行うように、走行駆動部を制御する。健常者が自律走行ロボットに対して
近づいてくる場面では、健常者は、自律走行ロボットよりも自由に進路を変更できるため
、健常者に自律走行ロボットの脇をすれ違わせた方がよい。これにより、前方から近づい
てくる健常者に対して、適正なすれ違い動作を実行することができる。なお、歩行介助器
具は、杖、歩行器、歩行車、シルバーカーを含む。杖には、白杖、T字型杖、多脚杖、松
葉杖、ロフストランドクラッチ杖を含む。
【0009】
物体検出部は、撮像データに含まれる特定移動体として、歩行介助器具を保持している
人、又は車椅子に乗った人を、歩行介助対象者として判別し、自律走行制御部は、特定移
動体が歩行介助対象者である場合に、すれ違い動作として、歩行介助対象者の進路を避け
た経路を走行させる回避動作を行うように、走行駆動部を制御する。歩行介助対象者が自
律走行ロボットに対して近づいている場面では、歩行介助対象者は、自律走行ロボットよ
りも移動速度が遅く、かつ、進路の変更が不自由であるため、自律走行ロボットが進路を
変更することで、歩行介助対象者の脇をすれ違わせた方がよい。これにより、前方から近
づいてくる歩行介助対象者に対して、適正なすれ違い動作を実行することができる。
【0010】
物体検出部は、撮像データに含まれる特定移動体として、搬送者を伴う搬送器具を判別
し、自律走行制御部は、特定移動体が搬送者を伴う搬送器具である場合に、すれ違い動作
として、搬送者を伴う搬送器具の進路を妨害しないように退避させる退避動作を行うよう
に、走行駆動部を制御する。搬送者を伴う搬送器具が自律走行ロボットに対して近づいて
いる場面では、搬送者を伴う搬送器具は、自律走行ロボットよりも進路の変更が不自由で
あるため、自律走行ロボットが搬送者を伴う搬送器具の進路を妨害しないように通路の脇
に停止することで、搬送者を伴う搬送器具に自律走行ロボットをすれ違わせた方がよい。
これにより、前方から近づいてくる搬送者を伴う搬送器具に対して、適正なすれ違い動作
を実行することができる。
【0011】
自律走行制御部は、特定移動体が自装置に対して近づく方向に移動している場合に、す
れ違い動作を行わせるように走行駆動部を制御する。上記構成では、自装置に対して近づ
く方向に移動している特定移動体に限って、この特定移動体が経路算出領域に侵入する前
に、すれ違い動作が開始される。これにより、不要に、特定移動体とすれ違うための制御
が実行されるのを抑制することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、自律走行ロボットと特定移動体とがすれ違うことなく近接してしまう
のを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】自律走行ロボットの斜視図である。
図2】自律走行ロボットの構成図である。
図3】自律走行の手順を説明するフローチャートである。
図4】コストマップを説明する図である。
図5】移動体の検出に係る処理の手順を説明するフローチャートである。
図6】撮像データから検出される特定移動体を説明する図である。
図7】特定移動体を追従する範囲を説明する図である。
図8図3のS15の処理を説明するフローチャートである。
図9】徐行動作を説明する図である。
図10】比較例を説明する図である。
図11】回避動作を説明する図である。
図12】退避動作を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(第1実施形態)
本実施形態係に係る自律走行ロボットを、図面を参照しつつ説明する。自律走行ロボッ
トは、病院等の屋内において走行することを目的とした装置である。図1図2に示され
るように、自律走行ロボット100は、筐体90と、コントローラ10と、測距センサ1
1と、撮像部12と、メモリ13と、走行駆動部14と、ディスプレイ15と、内界セン
サ16とを主に備えている。
【0015】
筐体90は、自律走行ロボット100における外観を構成する部位であり、上側筐体9
1と、下側筐体92とにより構成されている。上側筐体91の上部前側には、ディスプレ
イ15が取り付けられている。ディスプレイ15は、周知のタッチパネルであり、コント
ローラ10からの指示に応じて、テキストや、アイコンを表示させる。本実施形態では、
ディスプレイ15は、上側筐体91の上部前側において、表示面が前方に向くように取り
付けられている。
【0016】
上側筐体91の天頂部には、不図示の停止ボタンが取り付けられている。停止ボタンは
、コントローラ10に接続されており、周囲の者が停止ボタンを操作することで、コント
ローラ10に自律走行ロボット100を停止させる命令を入力することが可能になる。上
側筐体91の上部後側には、手押しハンドル94が設けられている。自律走行ロボット1
00が停止した場合に、周囲の者が手押しハンドル94を操作して、自律走行ロボット1
00を手動で移動させることが可能である。
【0017】
筐体90の内部には、コントローラ10と、測距センサ11と、撮像部12と、メモリ
13と、走行駆動部14とを収容されている。測距センサ11は、例えば、LiDAR(
Light Detection and Ranging/Laser Imaging Detection and Ranging)であり、周囲に
近赤外光や可視光を出射し、反射光を光センサで捉えることで、自装置周囲の物体に対応
する計測点を含むスキャンデータを取得する。コントローラ10は、スキャンデータに含
まれる各計測点により自装置から周囲の物体までの相対距離や、複数の計測点の位置関係
により物体の形状を判断することが可能である。以下では、測距センサ11が相対距離を
測定することで出力する情報を、スキャンデータとも記載する。スキャンデータには、周
囲の物体における2次元での計測点と、測距センサ11の出射方向を示す情報とが関連づ
けて含まれている。これ以外にも、測距センサ11が、3次元方向に光を出射する構成で
あれば、スキャンデータには、3次元での計測点が含まれていてもよい。
【0018】
スキャンデータに基づく相対距離を示す情報は、自律走行ロボット100の位置を基準
としたロボット座標系の値であるため、後述する絶対座標系とは異なる値である。ロボッ
ト座標系は、自律走行ロボット100の進行方向を「x」とし、進行方向と直交する横方
向を「y」とする座標系である。また、ロボット座標系には、自律走行ロボット100の
姿勢(向き)を示す情報が含まれる場合がある。
【0019】
撮像部12は、自装置前方を撮像することで得られる撮像データを取得する。具体的に
は、撮像部12は、撮像方向を、自装置前方に向けた状態で、上側筐体91の内部に収容
されている。本実施形態では、撮像部12は、単眼カメラを用いているが、複眼カメラで
あってもよい。
【0020】
下側筐体92の内部には、走行駆動部14が収容されている。走行駆動部14は、自律
走行ロボット100の走行を可能にする部位であり、一組の車輪141A,141Bと、
モータ142A,142Bと、モータドライバ143とを備えている。本実施形態では、
走行駆動部14による駆動方式として、差動二輪駆動を用いる。差動二輪駆動では、後述
するように、コントローラから入力された指令速度により、モータドライバ143を駆動
し、モータ142A,142Bに駆動力を配分することで,車輪141A,141Bによ
る直進動作や旋回動作を行うことが可能である。なお、走行駆動部14は、2つの車輪を
有することに限定されず、2つ以上の車輪を有していてもよい。更には、走行駆動部14
は、車輪に代えて、クローラ等を備えていてもよい。
【0021】
内界センサ16は、走行駆動部14による走行に伴い、自律走行ロボット100の姿勢
(向き)や、走行駆動部14が備える車輪141A,141Bの移動量を示すオドメトリ
を検出するセンサにより構成されている。
【0022】
メモリ13には、自律走行ロボット100が走行する屋内に応じた環境地図30や、コ
ントローラ10が実行するプログラム20が記憶されている。環境地図30には、屋内に
位置する、通路、壁、階段、その他の障害物の位置が絶対座標系Wにより記憶されている
。また、環境地図30には、屋内の障害物に関連づけて、各障害物の種別を識別するため
のタグ情報や、自律走行ロボット100が守るべき走行速度が記憶されていてもよい。
【0023】
次にコントローラ10の構成を説明する。コントローラ10は、不図示のCPU、揮発
性メモリ、揮発性メモリを含んでいる。コントローラ10では、CPUが、メモリ13に
記憶されたプログラム20を実行することにより、計測データ処理部21、経路計算部2
2、座標変換部23、自己位置推定部24、状態管理部25、駆動制御部26、物体検出
部27、すれ違い動作判定部28、表示制御部29として機能する。これ以外にも、上述
する各部の一部が、コントローラ10が備えるハードウェアにより実現されていてもよい
。本実施形態では、経路計算部22と、状態管理部25と、駆動制御部26とが自律走行
制御部の一例である。
【0024】
次に、図3を用いて、コントローラ10により実行される自律走行のための制御を説明
する。図3に示す各処理は、図2に示すコントローラ10の各機能により実行される処理
である。なお、図3に示す処理とは、別に、測距センサ11から出力されたスキャンデー
タは、所定周期で、計測データ処理部21に入力されており、計測データ処理部21は、
入力されたスキャンデータをフィルタリング処理して出力しているものとする。
【0025】
ステップ10(以下、ステップを、「S」とも記載する。)では、経路計算部22は、
メモリ13から環境地図30を読み出し、セットする。
【0026】
S11では、自己位置推定部24は、環境地図30上での自己位置Pを推定する。まず
、自己位置推定部24は、過去の走行経路に応じておおまかな自己位置Pを推定する。次
に、自己位置推定部24は、スキャンデータに含まれる計測点に対応する環境地図30
での物体の位置を探索する。このとき、座標変換部23は、スキャンデータに含まれる計
測点の座標を、ロボット座標系から絶対座標系の値に変換し、環境地図30上での物体の
位置と比較する。そして、探索された計測点に対応する環境地図30上での物体の位置を
用いて、自己位置Pを推定する。なお、自己位置Pには、環境地図30上での座標(絶対
座標)に加え、自律走行ロボット100の姿勢を示す情報を含んでいる。自己位置推定部
24は、上記手法に加えて、内界センサ16から出力される自律走行ロボット100の姿
勢を示す情報や、駆動制御部26により検出された走行駆動部14の速度を示す情報を考
慮して、自己位置Pを推定してもよい。
【0027】
S12では、環境地図30上での目的地をセットする。例えば、ユーザがディスプレイ
15を操作して目的地を入力すると、経路計算部22は入力された目的地をセットする。
S13では、自律走行を開始する。S13で実行される自律走行の開始では、自律走行処
理の開始に際し、必要になる各値が設定される。
【0028】
S14では、状態管理部25は、すれ違い動作の開始の有無を判断する。ここでは、す
れ違い動作を開始していないとして(S14:NO)、S17に進む。S17では、経路
計算部22は、自律走行ロボット100が走行すべき、走行経路を算出する。S17での
走行経路の算出では、自装置の周囲に、後述するコストマップを規定することにより、こ
のコストマップ上で周囲の障害物の把握と、走行経路と走行速度の算出とを行う。
【0029】
図4は、S17での走行経路の算出を説明する図である。コストマップCMは、推定さ
れた自己位置Pの周囲を均等に分割したグリッドg(m,n)により、障害物の配置を表
現した地図である。本実施形態では、コストマップCMは、現在の自己位置Pを中心のグ
リッドg(0,0)として、自律走行ロボット100の進行方向xに所定長さwだけ延び
、進行方向xと交差する横方向yに所定長さhだけ延びた矩形の領域である。コストマッ
プCMにおいて、各グリッドの位置は、進行方向xでの長さwを等間隔に分割した座標を
示す「m」と、横方向yでの長さhを等間隔に分割した座標を示す「n」とで定められて
いる。例えば、コストマップCMは、自己位置Pよりも前方に3[m]程伸びている。
【0030】
なお、コストマップCMにおけるグリッドg(m,n)は、ロボット座標系に対応して
いる。図4では、説明を容易にするため、時刻t1で算出されるコストマップCM(t1
)と、時刻t2で算出されるコストマップCM(t2)とを示しているが、実際には、コ
ストマップCMの更新周期に合わせて、逐次、コストマップCMが自己位置Pに応じた位
置に作成されていく。
【0031】
具体的には、経路計算部22は、スキャンデータに含まれる計測点群により判断される
障害物の位置を、コストマップCM上でのグリッドg(m,n)の位置に変換する。なお
図4では、各コストマップCM(t1),CM(t2)において、黒色に塗りつぶされ
たグリッドg(m,n)が、障害物が位置するグリッドである。
【0032】
経路計算部22は、スキャンデータを用いて、コストマップCMの各グリッドg(m,
n)に対して、障害物の有無を判定する。そして、探索されたグリッドg(m,n)のう
ち、障害物のないグリッドg(m,n)を繋ぐことで、走行経路を算出していく。このと
き、経路計算部22は、自装置の姿勢も考慮して、コストマップCMでの最適な走行経路
を逐次探索していく。本実施形態では、自己位置Pの周囲においてコストマップCMで規
定される領域が、経路算出領域の一例である。
【0033】
S18では、経路計算部22は、自律走行ロボット100が、S17で算出された走行
経路に従って走行を行うように、駆動制御部26に指令速度を算出する。指令速度は、走
行駆動部14が有する左右のモータ142A,142Bの回転速度を示す情報である。駆
動制御部26は入力された指令速度を走行駆動部14のモータドライバ143に出力し、
各モータ142A,142Bを駆動させる。
【0034】
なお、S18に示す制御に応じて、自律走行ロボット100の位置も変化するため、自
己位置推定部24は、変化後の自律走行ロボット100の位置に応じて自己位置Pを更新
する。なお、自己位置推定部24は、自己位置Pを更新するに際し、内界センサ16の検
出結果により得られたオドメトリを用いて、自己位置Pを推定するものであってもよい。
【0035】
S19では、経路計算部22は、現在の自己位置Pが目的地に到達しているか否かを判
断する。自己位置Pが、目的地に到着していなければ(S19:NO)、S14に戻る。
経路計算部22によるS17での走行経路の算出と、S18での制御とが繰り返されること
で、自律走行ロボット100は、目的地に向けて自律走行を継続していく。
【0036】
次に、図4で示した自律走行中に、自装置前方に移動体を検出した場合の処理を説明す
る。コントローラ10は、図4に示す処理と並列に、図5に示す移動体の検出に係る処理
を実行している。
【0037】
S30で、物体検出部27は、撮像部12により取得された撮像データを解析し、撮像
データに含まれる特定移動体Obを検出する。S30の撮像データの解析により検出され
る特定移動体Obの種別は、「健常者」、「歩行介助対象者」、「搬送者を伴う搬送器具」
のいずれかである。図6は、一例として、撮像データに含まれ、種別を「健常者」とする
特定移動体Obを説明する図である。「健常者」は、撮像データに含まれる人であって、
歩行介助対象者に該当しない移動体である。「歩行介助対象者」は、杖等の歩行介助器具
を保持した人、又は車椅子に乗って移動する人である。「搬送者を伴う搬送器具」は、ス
トレッチャーや担架等の搬送器具と、これらを搬送する人とを合わせた移動体Obである
。以下では、特定移動体Obの種別を区別するときは、健常者の末尾に「Ob1」を付け、
歩行介助対象者の末尾に「Ob2」を付け、搬送者を伴う搬送器具の末尾に「Ob3」を
付ける。
【0038】
本実施形態では、「歩行介助器具」は、杖、歩行器、歩行車、シルバーカーを含んでい
る。「杖」には、白杖、T字型杖、多脚杖、松葉杖、ロフストランドクラッチ杖を含んで
いる。
【0039】
撮像データから移動体Obを検出する手法は、例えば、図6に示される撮像データから
「健常者」を検出する場合、人(健常者)の特徴を予め学習させた学習モデルを用いて、
撮像データ内の特定移動体の特徴量の一致度合いにより、撮像データ内に健常者を示す領
域が含まれているか否かを判断する。一方、前述の学習モデルを用いて撮像データから、
人の領域と杖の領域とを共に検出できた場合や、人の領域と車椅子などの領域とを共に検
出できた場合は、撮像データに「歩行介助対象者」が含まれていると判定することができ
る。また、前述の学習モデルを用いて撮像データから人の領域と、ストレッチャーの領域
とを共に検出できた場合は、撮像データから「搬送者を伴う搬送器具」が含まれていると
判定することができる。
【0040】
撮像データから特定移動体Obを検出できなければ(S31:NO)、S30に戻り、
撮像データの解析を継続する。一方、特定移動体Obを検出できた場合(S31:YES
)、S32に進む。物体検出部27は、S32で、撮像データから検出された特定移動体
Obに対して追従処理を実行する。物体検出部27は、追従処理において、撮像データに
含まれる特定移動体Obに対して、種別を識別するための種別IDと、追従対象であること
を示す追従IDとを付与する。そして、物体検出部27は、種別ID及び追従IDを付与
した特定移動体Obに対して、自装置からこの特定移動体までの相対距離Lsと、相対速
度Vsとを算出する。
【0041】
図7は、追従処理の対象となる特定移動体Obの位置を説明する図である。物体検出部
27は、自装置前方に特定移動体Obを検出した場合に、追従処理を行う。図7では、特
定移動体Obに対して追従処理が行われる領域Aとして、現在の自己位置P(即ち、コス
トマップCM(tn)の中心であるg(0,0))から、この自己位置Pよりも前方の第
2距離L2までの範囲で規定される領域として示している。第2距離L2は、撮像部12
が自装置前方を撮像することで、撮像データから特定移動体Obを検出することが可能に
なる距離であり、自己位置Pを基準として、後述する第1距離L1よりも前方の位置であ
る。第2距離L2は、例えば、10[m]である。第1距離L1は、後述するS34で相
対距離Lsの判断に用いられる所定距離であり、現在の自己位置Pを基準として、コスト
マップCM(tn)よりも前方の位置である。第1距離L1は、例えば、5[m]である
図7において、自己位置PからコストマップCM(tn)の先端までの長さをL3と記
載している。言い換えると、特定移動体に対して追従処理が開始される領域Aは、現在、
コストマップCM(tn)が規定されている領域よりも前方の位置を含んでいる。なお、
本実施形態では、領域Aは、自律走行ロボット100の周囲において、現在のコストマッ
プCM(tn)と重なるように規定しているが、これに限らない。例えば、領域Aにおけ
る自律走行ロボット100側の端を、現在のコストマップCM(tn)と重ならないよう
に規定してもよい。
【0042】
図5に戻り、S33では、物体検出部27は、追従対象となった特定移動体Obに対す
る追従処理を終了するか否かを判断する。具体的には、物体検出部27は、撮像データか
ら追従対象となった特定移動体Obを検出できなくなった場合に、物体検出部27は、追
従処理を終了し(S33:YES)、S30に戻る。例えば、特定移動体Obが、自律走
行ロボット100の脇をすれ違った場合や、進路を変更することで自律走行ロボット10
0から相対距離L2以上離れた場合に、物体検出部27は特定移動体Obの追従処理を終了
する。
【0043】
一方、物体検出部27は、特定移動体Obに対する追従処理を終了しなければ(S33
:NO)、S34に進む。S34では、物体検出部27は、追従対象となった特定移動体
Obに対して、自律走行ロボット100までの相対距離Lsが第1距離L1以下になった
か否かを判断する。物体検出部27は、追従対象となった特定移動体Obの相対距離Ls
が第1距離L1よりも大きければ(S34:NO)、S32に戻り、追従対象となった特
定移動体Obに対して追従処理を継続する。
【0044】
物体検出部27は、特定移動体Obの相対距離Lsが第1距離L1以下となったことを
判断すると(S34:YES)、S35に進む。すれ違い動作判定部28は、以下、S3
5~S41の処理により、特定移動体Obの種別、及びこの特定移動体Obが近づいてく
る際の移動速度Vaに応じて、特定移動体Obに対するすれ違い動作の態様を設定する。
【0045】
まず、S35では、すれ違い動作判定部28は、S30で判定された特定移動体の種別
が「搬送者を伴う搬送器具」であり、特定移動体Obの移動速度Vaが第1速度V1以下
であるか否かを判断する。特定移動体Obの移動速度Vaは、特定移動体Obが自律走行
ロボット100に近づく際に、自律走行ロボット100が移動する方向をプラス側とした
場合の速度であり、マイナス側(即ち、自律走行ロボット100に対して近づいてくる側
)の速度である。ここで、「第1速度V1」は、特定移動体Obが自律走行ロボット10
0に近づく際に、自律走行ロボット100が特定移動体Obとの間で、すれ違い動作を適
正に行うために想定される移動速度の基準値である。即ち、搬送者を伴う搬送器具が、自
律走行ロボット100よりも速い速度で近づいているか否かを判断する。
【0046】
搬送者を伴う搬送器具は、「健常者」と同じ移動速度で移動している場合や、緊急搬送
時には「健常者」よりも速い移動速度で移動していると想定される。そのため、第1速度
V1は、後述するS39での判断に用いる第3速度V3と同じ値か、第3速度V3に対し
てマイナス側に速い速度になる。本実施形態では、第1速度V1は、例えば、-3[km
/h]以上とすることができる。すれ違い動作判定部28は、S35を肯定判断すると(
S35:YES)、S36に進み、すれ違い動作の動作態様を示す動作フラグを、「退避
」に設定する。
【0047】
S35での判定に用いる移動速度Vaは、S32での追従処理で検出された特定移動体
Obの相対速度Vsと、自律走行ロボット100の現在の移動速度Vrとを用いて算出す
ることができる。上述のように、自律走行ロボット100の移動方向をプラスとすれば、
移動速度「Va=Vr+Vs」として算出することができる。なお、S37,S39にお
いても同様である。
【0048】
一方、すれ違い動作判定部28は、S35を否定判断(S35:NO)すると、S37
に進み、S30で判定された特定移動体Obの種別は、「歩行介助対象者」であり、移動
速度Vaが0より小さく、かつ第2速度V2よりも大きいか否かを判断する。即ち、歩行
介助対象者が、自律走行ロボット100よりもゆっくりとした移動速度で近づいているか
否かを判断する。この場合、歩行介助対象者は、「健常者」よりも移動速度が遅くなると
想定されるので、第2速度V2は、S35及び後述するS39での判断に用いる第1,第3
速度V1,V3よりも、マイナス側に遅い速度を用いることができる。例えば、S37での
判断に用いる第2速度V2は、-1[km/h]とすることができる。すれ違い動作判定
部28は、S37を肯定判断(S37:YES)すると、S38に進み、すれ違い動作の
動作態様を示す動作フラグを、「回避」に設定する。
【0049】
一方、すれ違い動作判定部28は、S37を否定判断(S37:NO)すると、S39
に進み、S30で判定された特定移動体Obの種別が「健常者」であり、特定移動体Obの
移動速度Vaが第3速度V3以下であるか否かを判断する。例えば、第3速度V3は、-
3[km/h]とすることができる。即ち、S39では、健常者Ob1が、自律走行ロボ
ット100よりも速い速度で近づいているか否かを判断する。S39を肯定判断(S39
:YES)すると、すれ違い動作判定部28は、S40に進み、すれ違い動作の動作態様
を示す動作フラグを、「徐行」に設定する。
【0050】
本実施形態では、物体検出部27は、S35,S37,S39の順に特定移動体Obの種
別を判断することで、「搬送者を伴う搬送器具」に含まれる搬送者を、「健常者」として
認識してしまうのを防止することができる。
【0051】
本実施形態では、物体検出部27は、S30で特定移動体Obの種別を判定した後、S
35,S37,S39の判断により動作フラグの設定を行っている。これに代えて、物体
検出部27は、S30で、撮像データから種別を判定することなく移動体を検出した後、
S35,S37,S39で移動体の種別を判断してもよい。この場合においても、S35
で種別が「搬送者を伴う搬送器具」であるか否かを判定し、S37で種別が「歩行介助対
象者」であるか否かを判定し、S39で種別が「健常者」であるか否かを判定するとよい
【0052】
すれ違い動作判定部28は、S36,S38,S40のいずれかの処理により動作フラ
グを設定すると、S41に進み、すれ違い動作の開始を通知する。S41で行われる通知
では、状態管理部25に対して動作フラグが示す値を通知する。S41の処理を終了する
と、S32に戻り、追従処理を継続する。一方、S39を否定判断(S39:NO)する
場合、すれ違い動作判定部28は、動作フラグの値を通知することなく、S32に戻る。
【0053】
図3に戻り、状態管理部25は、通知により動作フラグの値を取得すると、すれ違い動
作の開始を判断し(S14:YES)、S15に進み、特定移動体Obの種別に応じた、
すれ違い動作を実行する。図8は、S15で実行される処理の手順を説明するフローチャ
ートである。
【0054】
S50では、状態管理部25は、通知された動作フラグの値を判定する。S50で判定
した動作フラグで示されるすれ違い動作が「徐行」であれば(S51:YES)、S52
に進み、すれ違い動作として「徐行動作」を行う。徐行動作は、自律走行ロボット100
の移動速度を徐行速度まで低下させる動作である。
【0055】
図9に示されるように、動作フラグが「徐行」に設定された場面では、健常者Ob1が
、自律走行ロボット100よりも速い速度で近づいてくる場面である。健常者Ob1は、
移動速度が自律走行ロボット100よりも速く移動でき、かつ自由に進路を変更できるた
め、自律走行ロボット100が健常者Ob1を回避するよりも、あえて健常者Ob1に自
律走行ロボット100の脇をすれ違わせた方がよい。そのため、自律走行ロボット100
の移動速度を徐行速度まで低下させることで、健常者に進路の変更を促す。
【0056】
状態管理部25は、S52での徐行動作において、物体検出部27により、撮像データ
から種別ID及び追従IDが付された健常者Ob1を追従できなくなるまで、直進を保っ
たまま徐行動作を継続すればよい。言い換えると、健常者Ob1が、自律走行ロボット1
00の脇を通り過ぎることで、健常者Ob1が撮像部12の撮像範囲外に位置し、物体検
出部27は健常者Ob1に対する追従処理を終了する。表示制御部29は、徐行動作中に
、健常者Ob1に対して徐行を行うことを示すテキスト又はアイコン等の画像をディスプ
レイ15に表示させるものであってもよい。
【0057】
図10は、比較例として、自律走行ロボット100が徐行動作を行うことなく、現在の
コストマップCM(tn+1)内に、健常者Ob1が侵入した場合の自律走行を説明する
図である。なお、コストマップCM(tn+1)は、図9で示すコストマップCM(tn
)の生成よりも後に作成されたコストマップである。この例では、健常者Ob1がコスト
マップCM(tn+1)に侵入したタイミングで、経路計算部22は、健常者Ob1とす
れ違うべく、測距センサ11から出力されたスキャンデータを用いて走行経路の算出を行
う。このタイミングで健常者Ob1が自律走行ロボット100の脇をすれ違うように進路
を変更した場合、自律走行ロボット100の移動速度が通常のままであり、かつ両者の相
対距離が近ければ、健常者Ob1が自律走行ロボット100との衝突を避けきれなくなる
おそれがある。また、走行経路の算出方法によっては、健常者Ob1が変更した進路に、
自律走行ロボット100が近づくように走行経路を算出してしまう場合もある。このよう
な状態を避けるために、コストマップCM(tn)の範囲を、大きくすることも考えられ
る。しかし、コストマップCMを大きくすることで、かえって、経路計算部22による走
行経路の算出が複雑になり、処理に伴う負荷も高くなるおそれがある。
【0058】
本実施形態では、自装置前方においてコストマップCMを用いて走行経路を算出する領
域よりも前方の領域Aで特定移動体Obを検出し、徐行動作を開始する。これにより、健
常者Ob1が進路を大きく変更するまでの時間を稼ぐことができ、両者が衝突する可能性
を低くすることができる。
【0059】
図8に戻り、動作フラグで示されるすれ違い動作が、徐行でなく「回避」であれば(S
53:YES)、状態管理部25は、S54に進み、すれ違い動作として回避動作を行う
。回避動作は、自律走行ロボット100が、S17で算出された走行経路を、歩行介助対
象者Ob2の進路を妨げない走行経路に変更する動作である。
【0060】
図11に示されるように、動作フラグが「回避」に設定された場面では、歩行介助対象
者Ob2が自律走行ロボット100に対してゆっくりとした速度で近づいている場面であ
る。この場面では、歩行介助対象者Ob2は、移動速度が自律走行ロボット100の移動
速度よりも遅い速度でしか移動できず、かつ、進路の変更が不自由であるため、自律走行
ロボット100が進路を変更することで、歩行介助対象者Obの脇をすれ違わせた方がよ
い。そのため、自律走行ロボット100の移動速度を維持した状態で、S17で算出され
た走行経路を、歩行介助対象者Ob2の進路を妨げない走行経路に変更する。これにより
、自装置前方においてコストマップCMを用いて走行経路を算出する領域よりも前方の領
域で、歩行介助対象者Ob2を検出し、回避動作を開始するため、自律走行ロボット10
0が進路を大きく変更するまでの時間を稼ぐことができ、両者が衝突する可能性を低くす
ることができる。
【0061】
本実施形態では、状態管理部25は、S54で用いられる歩行介助対象者Ob2を回避
するための走行経路を、物体検出部27が行う追従処理により種別ID及び追従IDが付
された健常者Ob1の位置や、経路計算部22による走行経路の計算を用いて決定する。
また、状態管理部25は、物体検出部27が、撮像データから歩行介助対象者Ob2を検
出できなくなると、S54での回避動作を終了すればよい。表示制御部29は、回避動作
中に、歩行介助対象者Ob2を回避する走行経路を走行することを示すテキスト又はアイ
コン等の画像をディスプレイ15に表示させるものであってもよい。
【0062】
図8に戻り、S50で判定した動作フラグにより示されるすれ違い動作が、退避であれ
ば(S53:NO)、S55に進み、すれ違い動作として「退避動作」を行う。退避動作
は、自律走行ロボット100を、特定移動体Obの進路を妨害しないように、通路の脇に
移動させた状態で、特定移動体Obが通過するまで停止している動作である。
【0063】
図12に示されるように、動作フラグが「退避」に設定された場面では、搬送者を伴う
搬送器具Ob3が自律走行ロボット100に対して速い速度で近づいている場面である。
この場面では、搬送者を伴う搬送器具Ob3は、自律走行ロボット100よりも速い速度
で移動可能であり、かつ進路の変更が不自由である。そのため、自律走行ロボット100
が、搬送者を伴う搬送器具Ob3の進路を妨害しないように通路の脇に停止することで、
搬送者を伴う搬送器具Ob3に自律走行ロボット100をすれ違わせた方がよい。
【0064】
本実施形態では、状態管理部25は、S55で用いられる搬送者を伴う搬送器具Ob3
の進路から退避するための走行経路を、物体検出部27が行う追従処理により種別ID及
び追従IDが付された健常者Ob1の位置や、経路計算部22による走行経路の算出を用
いて決定する。また、状態管理部25は、物体検出部27が、撮像データから搬送者を伴
う搬送器具Ob3を検出できなくなると、S55での退避動作を終了すればよい。このと
き、自律走行ロボット100の変更後の走行経路において、通路の脇に障害物(例えば、
待合用のベンチや開放されているドアなど)がある場合、自律走行ロボット100を通路
の障害物が存在する脇側に退避させて、障害物の手前で停止させるものであってもよい。
また、表示制御部29は、搬送者を伴う搬送器具Ob3を搬送する歩行者に対して退避を
行うことを示すテキスト又はアイコン等の画像をディスプレイ15に表示させるものであ
ってもよい。この場合において、退避動作を完了して停止する際に、ディスプレイ15の
表示面が、ストレッチャーを搬送する搬送者に向くように、自律走行ロボット100の姿
勢を変化させた状態で停止するとよい。そうすることで、ストレッチャーや、このストレ
ッチャーを搬送する歩行者を退避している状態であることを示しつつ、ストレッチャーが
通り過ぎた後に、自立走行にスムーズに復帰できる。
【0065】
S52,S54,S55の処理を実行すると、図3のS16に進む。S16では、すれ違
い動作が終了したか否か判断し、すれ違い動作が終了していなければ(S16:NO)、
S15に戻り、すれ違い動作を継続する。一方、すれ違い動作が終了すると(S16:Y
ES)、S17に進む。上述のように、S52,S54,S55の処理において、自律走
行ロボット100がすれ違う対象である特定移動体(健常者Ob1、歩行介助対象者Ob
2、搬送者を伴う搬送器具Ob3)が撮像データから検出できなくなった場合に、すれ違
い動作が終了する。
【0066】
S17では、経路計算部22は、自己位置推定部24により推定された現在の自己位置
Pと、スキャンデータとを用いて、走行経路を算出する。S18では、経路計算部22は
、S17で算出された走行経路に従って走行を行うように、駆動制御部26に指令速度を
算出する。これにより、自律走行ロボット100は、すれ違い動作による走行から、S1
7で算出された走行経路に従った走行に復帰する。状態管理部25は、現在の自己位置P
が目的地に到達したと判断すると(S19:YES)、S20に進み、駆動制御部26に
、自律走行を停止させる。
【0067】
以上説明した実施形態では、以下の効果を奏することができる。
自律走行ロボット100は、前方から自装置に近づいてくる特定移動体Obが存在する
場合に、特定移動体Obが自装置の周囲に規定された現在のコストマップCM(tn)の
領域に侵入するよりも以前のタイミングで、特定移動体Obの種別に応じた動作態様です
れ違い動作を実行する。これにより、両者がすれ違うことなく近接してしまうのを抑制す
ることができる。
【0068】
健常者として判定された特定移動体Obが自律走行ロボットに対して近づいてくる場面
では、自律走行ロボット100が徐行動作を行うことで、健常者に対して、適正なすれ違
い動作を実行することができる。
【0069】
歩行介助対象者として判定された特定移動体Obが自律走行ロボット100に対して近
づいている場面では、自律走行ロボットが回避動作を行うことで、歩行介助対象者に対し
て、適正なすれ違い動作を実行することができる。
【0070】
搬送者を伴う搬送器具として判定された特定移動体Obが自律走行ロボットに対して近
づいている場面では、自律走行ロボット100が搬送者を伴う搬送器具の進路を妨害しな
いように退避動作を行うことで、搬送者を伴う搬送器具に対して、適正なすれ違い動作を
実行することができる。
【0071】
自装置に対して近づく方向に移動してくる特定移動体Obに限って、この特定移動体が
コストマップCM(tn)の領域に侵入する前に、すれ違い動作を開始させる。これによ
り、不要に、特定移動体とすれ違うための制御が実行されるのを抑制することができる。
【0072】
(第1実施形態の変形例)
上述の第1実施形態では、図5に示されるように、物体検出部27は、S30で特定移
動体Obの種別を判定し、すれ違い動作判定部28は、S35,S37,S39で、判定
済みの特定移動体Obの種別に応じて、動作フラグの値を設定した。これに限らず、物体
検出部27は、S30では特定移動体Obの種別を判定せず、相対距離Lsが第1距離L
1以下であることを判断すると(S34:YES)、特定移動体Obの種別を、「搬送者
付の搬送器具」、「歩行介助者」、「健常者」のいずれかであるか否か一度に判断しても
よい。そして、状態管理部25は、特定移動体Obの種別の判断結果に応じて、動作フラ
グを、「退避」、「回避」、「徐行」のいずれかに設定すればよい。
【0073】
上述の第1実施形態では、特定移動体Obの移動速度を考慮して、すれ違い動作の実行
の有無を切換えた。これに代えて、特定移動体Obの移動速度を考慮することなく、すれ
違い動作の実行の有無を切換えてもよい。この場合において、歩行介助対象者Ob2や、
搬送者を伴う搬送器具Ob3は、進路の変更が自律走行ロボット100よりも不自由であ
る。そのため、図5において、特定移動体Obの種別が搬送者を伴う搬送器具であれば(
S35:YES)、移動速度Vaに関わらず、S36に進み、動作フラグを退避に設定す
ればよい。同様に、特定移動体Obの種別が歩行介助対象者であれば(S37:YES)
、移動速度Vaに関わらず、S38に進み、動作フラグを回避に設定すればよい。
【0074】
上述の第1実施形態では、特定移動体Obの種別に応じて、すれ違い動作の動作態様を
変更した。これに代えて、特定移動体Obを検出した場合に、同じ態様のすれ違い動作を
行ってもよい。この場合において、図5のS35で、特定移動体Obが、「健常者」、「
歩行介助対象者」、「搬送者を伴う搬送器具」のいずれかであれば、動作フラグを、徐行
、回避及び退避のいずれかに設定すればよい。また、S37~S40の処理を省略すれば
よい。
【0075】
図5のS32での追従処理において、複数の特定移動体Obを追従している場合、追従
対象となった特定移動体Obのうち、最初に相対距離Lsが第1距離L1以下になった特
定移動体Obに対して、S36~S40の処理を実行すればよい。この場合において、状
態管理部25が実行するすれ違い動作として、最初に相対距離が第1距離L1以下になっ
た特定移動体Obの種別に応じて、すれ違い動作を実行すればよい。
【0076】
(その他の実施形態)
本明細書で開示される技術は、上述の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸
脱しない範囲において種々の形態に変形することができ、例えば次のような変形も可能で
ある。
上述の実施形態では、屋内として病院を例に説明をした。これに代えて、自律走行ロボ
ット100が走行する屋内は、「歩行者」、「歩行介助対象者」、「搬送者付の搬送器具
」の往来がある屋内であればどのような場所でも適用することが可能であり、公共の建物
、ホテル、集合住宅であってもよい。この場合において、「搬送者付の搬送器具」は、搬
送器具であるキャスター付きワゴン、キャスター付きカーゴ、折り畳み台車、ベビーカー
、大型キャリアバックのいずれかと、この搬送器具を搬送する搬送者とにより構成されて
いてもよい。
【0077】
自律走行ロボット100の形状は、図1に示す外観形状に限定されない。更に、自律走
行ロボット100は、ディスプレイ15を備えていなくともよい。
【0078】
上述の実施形態では、自律走行ロボット100は、一つのコントローラ10のみを備え
る構成であった。これに限らず、自律走行ロボット100は、複数のコントローラを備え
、各コントローラにより各機能を分担して実行するものであってもよい。
【符号の説明】
【0079】
10…コントローラ、11…測距センサ、12…撮像部、13…メモリ、14…走行駆
動部、15…ディスプレイ、16…内界センサ、21…計測データ処理部、22…経路計
算部、23…座標変換部、24…自己位置推定部、25…状態管理部、26…駆動制御部
、27…物体検出部、28…すれ違い動作判定部、100…自律走行ロボット、CM…コ
ストマップ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12