(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024000002
(43)【公開日】2024-01-04
(54)【発明の名称】誘い水サイフォン管によるルーフドレン補助装置(II)
(51)【国際特許分類】
E04D 13/04 20060101AFI20231222BHJP
【FI】
E04D13/04 A
E04D13/04 J
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022098503
(22)【出願日】2022-06-19
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-10-25
(71)【出願人】
【識別番号】716004604
【氏名又は名称】合同会社物理工学研究社
(72)【発明者】
【氏名】黒田和明
(57)【要約】
【課題】特許第7079392号『誘い水サイフォン管によるルーフドレン補助装置』において、サイフォン管によるサイフォン動作の最中に誘い水を供給する貯水(水圧)塔から空気を吸い込む可能性があり、一旦空気が吸い込まれるとサイフォン管によるサイフォン動作が停止してしまう問題がある。
【解決手段】この可能性を排除するため、貯水塔から逆止弁を切り離し、貯水塔下部には誘い水を供給する際には開き、サイフォン管によるサイフォン動作が開始されると閉まる弁を新たに設ける事とする。貯水塔からの誘い水は給水パイプを経て逆止弁本体に供給され、逆止弁から排水パイプを建物ドレン縦配管内に導く。誘い水の供給は雨水が貯水塔にある程度溜まった状態から自動で開始され、サイフォン管によるサイフォン動作が始まるまで継続するようにする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘い水サイフォン管によるルーフドレン補助装置において、サイフォン動作時に吸い込まれる空気の可能性を排除するため、逆止弁を切り離し、サイフォン動作の誘い水供給後にその給水パイプを閉じる弁を設ける構造とする誘い水サイフォン管によるルーフドレイン補助装置(II)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
建物の陸屋根やベランダ、バルコニー等に滞る雨水を自動的にサイフォン管で排出する装置に関する技術分野
【背景技術】
【0002】
建物の陸屋根などに滞る雨水は毛細管現象により未防水の箇所を経由して天井への漏水や劣化した防水シートを通しての漏水を誘発する弊害をもたらすと同時に空中の塵埃を堆積させ、コケや草木の温床ともなるため、降雨中や雨上がり後の速やかな排水が望まれる。また、経年したバルコニー床の変形では雨水が排出されにくいことによる生活上の不便も起きることになり、雨上がり後の雨水の排出作業は欠かせないものである。このように滞った雨水を排出するためには、建築の立場からすれば、屋根の勾配を改修するとか、防水シートを張り替えるとかして雨水が滞りにくい状況に改善する方策がある。このような大掛かりな改修には費用がかさむため、水を吸い出して排水管へ吐き出す電動ポンプなどを設置する方法も考えられるが、雨水の全量はバケツ数杯にもならないことが多く、電気設備を設置して排水設備を設けるにはあまりに大袈裟すぎ、費用対効果が受容できるものではない。このため、従来陸屋根に溜まった雨水を自動で排出させる技術は本出願人が特許取得したもの以外には見当たらない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】本出願人が特許取得した「誘い水サイフォン管によるルーフドレン補助装置」特許第7079392号がある。
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】本技術に関連するものとして本出願人が出願した「ルーフドレン補助吸水キャップ」(特願2021-070048)がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本出願人が取得した特許第7079392号においては、滞留水の排水が進み水位が低下した際に、逆止弁の形状・仕様に依っては、逆止弁から流入する水量がサイフォン管から吸い出される水量よりも少なくなるという現象が発生する。そういう状況では水圧塔の上部から入る空気がサイフォン管に吸い込まれ、サイフォン動作が止まってしまう。一旦、サイフォン動作が止まってしまうと、水圧塔に雨水が貯められるまでサイフォン動作が再開することはないので、残っていた滞留雨水は排出されずに残り続ける事になる。逆止弁から流入する滞留水の水量を増加させるには、より大きい口径の逆止弁を使用すれば解決するが、ここでは別の解決法を考案した。
【課題を解決するための手段】
【0006】
逆止弁の水量を増やすためには、水圧塔からの空気の流れを止めれば良い。このために逆止弁を水圧塔から切り離し、水圧塔からの誘い水の給水が終了する時点でその給水パイプからの流れを閉じるための弁を新たに設ける事とした。
図1に全体の配置図を示す。逆止弁本体は滞留水の水深が最も深いところに設置され、集雨皿を備えた貯水塔(水圧塔)からの給水パイプ及び建物ドレンの縦配管内に挿入した排水パイプが接続される。逆止弁本体は
図2に示す構造をもち、給水口ニップル側の水圧が高まると逆止弁が締まり、給水が排出パイプを経てドレン縦配管へ導かれる。水の流れは
図5に示す通りである。排出パイプによるサイフォン動作の流れが開始されると逆止弁が開いて滞留水が排出管へ吸い出されて行く。この流れは
図6に示す通りである。集雨皿を備えた貯水塔(水圧塔)からの給水は
図3に示すように、降雨が集まって貯水塔内の水位が上がるとまずストッパー用浮きの付いたストッパーリンクがストッパーを溝付き重り弁の側面に押し付ける。水位が上昇する局面では、重り弁は、重り弁上昇用浮きの浮力が重り弁の重さと釣り合った時ではなく、浮力がストッパーの押し付け力による摩擦力及び出水口ニップル内断面にかかる水圧差を加えた重りの重さと釣り合った時に上昇し始める。この上昇の瞬間から誘い水の給水が開始されるが、給水が始まっても重り上昇用浮きは下降を始めずストッパーが溝を捉えて重り弁の動きが固定されるように上記の釣り合いの力を設計しておく。給水による貯水塔内の水位低下がストッパー用浮きの浮力をなくすところまで来るとストッパーが溝から外れて重り弁がガイド内を下がり、出水口ニップルの弁座を押し付けて水流を止める。重り弁上昇用浮きの移動の間に給水される誘い水の水量はドレン縦配管内に挿入される排水パイプでのサイフォン動作が開始できるために必要な水量となるように設計する必要がある。
【発明の効果】
【0007】
本発明により、「誘い水サイフォン管によるルーフドレン補助装置」における誘い水給水管側をサイフォン動作時に密閉空間とするができ、逆止弁の形状・仕様をより柔軟に設計してもサイフォン動作に途切れが起きないようにすることが可能となる。また、逆止弁が集雨部分と切り離されることにより、より柔軟に設置場所や設置状況に対応できることとなる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】誘い水サイフォン管によるルーフドレン補助装置(II)の配置図である。重り弁付き集雨具からの誘い水給水パイプと建物ルーフドレン縦配管内に挿入された排水パイプとが逆止弁本体に接続され、滞留水の最深部に設置されている。
【
図2】逆止弁本体の構造を示す側面図と下面図である。逆止弁は誘い水を供給する給水パイプ内の水圧が上がると逆止弁保持板側を弁座として閉じる構造で水流は排出口から流れ出るように起きる。排出パイプのサイフォン動作が始まると逆止弁は上に上がって開き、逆止弁本体の下側周囲に開けられた多数の小孔から流入する滞留水を吸い上げる動作をとる。
【
図3】重り弁付き集雨具の概要を示す図である。降雨は集雨皿でフィルターを通して貯水塔(水圧塔)に導かれる。貯水塔最下部に弁座があり密着度を高める目的で重さのある重り弁で閉じるようになっている。重り弁は重り弁ガイドで上下方向のみに動けるようになっており、重り上昇用浮きの浮力で浮き上がることができる。重り弁にはストッパーがはまる溝があり、閉まっている状態ではストッパーが溝の少し上の重り側面に当たるように設計されている。ストッパーを保持するストッパーリンクには水がなければ貯水塔の側壁に触れて止まるストッパー用浮きが付いており、水位が上がって浮力が出るとストッパーリンクを持ち上げて回転させストッパーを重り弁に押し付けるようになる。さらに水位が上がって重り弁上昇用浮きの浮力が、重り弁の重さ、ストッパー押し付け摩擦力、排水口ニップル内断面の水圧差、これらの合力に打ち勝てば、重りが上昇し始めて重り弁が開き直ちにストッパーリンクが重り弁の溝を捉えて重り弁の動きを止める。このストッパーリンクによる固定が解除されるのは、貯水塔内の水位がストッパー用浮きの下部まで下がってストッパーリンクがストッパー用浮きの自重で動き、ストッパーが外れる時である。このストッパーの働きがなければ、水位の上昇で重り弁が開いても直後に始まる排水で直ちに重り弁が閉まってしまうということが起こる。
【
図4】
図3において、貯水塔の水位が上がってストッパー用浮きがストッパーリンクを持ち上げストッパーが溝付き重り弁に押し付けられている状態(A)とさらに水位が上がって重り弁が上方に持ち上げられストッパーが溝にはまった状態(B)を示している。
【
図5】逆止弁本体において、貯水塔からサイフォンの誘い水の給水を受け、排出パイプへ流れ出す経路を示している。
【
図6】逆止弁本体において、逆止弁が開いて滞留水が吸い込まれて排出パイプへ流れる経路を示している。
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施に際しては、逆止弁本体の形状・仕様については、雨水に混じって入り込むゴミや塵埃により各種の弁が動作不良にならないようにするフィルター等を整備する必要があり、逆止弁本体が軽量になる場合には、給水パイプや排水パイプを適切に固定する必要がある。また、重り弁付き集雨具の設計では重り弁の1回の動作で排出される水量が給水パイプを経て逆止弁本体を通じて排水パイプの先端まで満たすことのできる水量であるようにし、その設置にあたっては、その出水口ニップルの高さを逆止弁よりも高くする必要があり、強風による傾きや損壊が起こらないように注意する必要がある。建物のドレン縦配管内に挿入する排水パイプは必要なサイフォン動作が起きるように十分な深さを取る必要がある。
【実施例0010】
図1に示すように滞留水の起こるところに逆止弁本体を設置し、重り弁付き集雨具を降雨を集められる位置に置き、排水パイプを建物のドレン縦配管内に挿入して設置する。降雨があり、重り弁付き集雨具の貯水塔内の水位が上がって重り弁が開けばサイフォン動作を誘う給水が始まり、それが排水パイプの先端に達する時点でサイフォン動作が始まる。サイフォン動作が一旦始まれば滞留水から逆止弁本体に供給される水量がなくなるまでサイフォン動作が続くことになる。降雨が継続すれば、重り弁付き集雨具内の重り弁は間欠的に動作を繰り返す。滞留水が発生しても集雨具内の重り弁が上昇しきらないで降雨が止んだ場合にはサイフォン動作は起きず、その滞留水は排出されないが、降雨自体が少ないので滞留水の水量は少ないと考えられる。この状態を改善するには、集雨具の集雨皿の面積を大きくすれば良い。
以上の実施例では、陸屋根に発生する滞留水の排除を目的としているが、バルコニーにも応用でき、降雨時の滞留水が問題となる場所、例えば、遊歩道や公園などにも応用可能である。交通量の多い道路であっても、側溝とくぼんだ道路に障壁があると滞留水が発生するが、そのくぼみの底に逆止弁本体を置き、排出パイプをその障壁を超えて側溝下部まで取り付け、道路端に設置した重り弁付き集雨具から給水パイプを排水パイプと並べて取り付ければ良い。道路のくぼみを直す予算がつくまでの臨時的措置として利用できる。
本装置は、塵埃の多さにも依るが、短期間で各種の弁動作が阻害されるようになることはなく、適切な掃除などで長期的に滞留水の自動排出ができる装置である。