(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024020002
(43)【公開日】2024-02-14
(54)【発明の名称】構造体の構築方法
(51)【国際特許分類】
E04B 2/86 20060101AFI20240206BHJP
E04G 9/10 20060101ALI20240206BHJP
【FI】
E04B2/86 601B
E04B2/86 601Q
E04G9/10 101A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022122844
(22)【出願日】2022-08-01
(71)【出願人】
【識別番号】000001373
【氏名又は名称】鹿島建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096091
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 誠一
(72)【発明者】
【氏名】デヴィン グナワン
(72)【発明者】
【氏名】曽我部 直樹
(72)【発明者】
【氏名】小林 聖
【テーマコード(参考)】
2E150
【Fターム(参考)】
2E150BA06
2E150BA14
2E150BA22
2E150MA02X
(57)【要約】
【課題】施工性を向上させることができる構造体の構築方法等を提供する。
【解決手段】構造体1の鉄筋2に対してラス網3を固定し、ラス網3の内側にコンクリートCを充填して構造体1の内部を形成する工程と、構造体1の内部の外面にセメント系材料による硬化材Hを吹き付けて塗布することで、構造体1の外殻部を形成する工程と、により構造体を構築する。鉄筋2は、主筋21、配力筋22、およびせん断補強筋23を含み、ラス網3は主筋21や配力筋22に固定され、コンクリートCの充填時の側圧がせん断補強筋23等によって支持される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造体の構築方法であって、
前記構造体に埋設される補強材に型枠を固定し、前記型枠の内側にコンクリートを充填して前記構造体の内部を形成する工程(a)と、
前記構造体の内部の外面にセメント系材料による硬化材を塗布することで、前記構造体の外殻部を形成する工程(b)と、
により構造体を構築することを特徴とする構造体の構築方法。
【請求項2】
前記型枠はラス網であり、前記構造体の内部の外面にラス網が残置されることを特徴とする請求項1記載の構造体の構築方法。
【請求項3】
前記構造体の内部にせん断補強筋が埋設され、
前記コンクリートの充填時の側圧が前記せん断補強筋によって支持されることを特徴とする請求項1記載の構造体の構築方法。
【請求項4】
前記型枠は、前記構造体の補強材である主筋および配力筋の内側に固定されることを特徴とする請求項1記載の構造体の構築方法。
【請求項5】
前記型枠は、固定治具を用いて固定されることを特徴とする請求項1記載の構造体の構築方法。
【請求項6】
前記構造体の内部にせん断補強筋が埋設され、
前記固定治具として、前記せん断補強筋の端部の定着治具が用いられることを特徴とする請求項5記載の構造体の構築方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、構造体の構築方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
壁体などのコンクリート構造体を構築する際、従来は鉄筋を組み上げ、型枠を組み立ててコンクリートを打設し、所定の材齢まで養生した後に脱型をするのが一般的である。
【0003】
このように、コンクリート構造体の構築時には複数の工種が混在しており、作業も煩雑である。また、近年は建設技能者が不足する傾向があり、特に大工作業員の減少が著しく、今後は大工の人員確保が困難となってくると予想される。
【0004】
そのため、近年ではより簡易な工法の開発が求められている。一例として、特許文献1では、モルタル等のセメント系材料の吹付工法により構造体の外殻部を形成した後、外殻部を型枠としてその内部にコンクリートを打設することで、構造体を構築することが開示されている。これにより、従来の木製型枠を吹付けによる外殻部で代替して構造体の施工を簡略化でき、作業員の不足に対応できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1には、モルタル等を吹き付ける際の芯材としてラス網を用いることも記載されており、芯材の施工が容易となり、またモルタル等の付着性も向上するため、汎用性の高い工法であるといえる。ただし、芯材としてラス網を用いる場合、吹付時にモルタル等がラス網の目を通り抜け、モルタル等のロスが生じて施工性が低下する。
【0007】
また、吹付圧によりラス網が内側にはらみ、その変形により出来形の問題やモルタル等のロスが生じる恐れもある。さらに、構造体の内部を鉄筋コンクリート造とする場合には、ラス網を通り抜けたモルタル等がラス網の内側に位置する内部の鉄筋に付着し、鉄筋とコンクリートの付着性能の低下が懸念される。
【0008】
本発明は上記の問題に鑑みてなされたものであり、施工性を向上させることができる構造体の構築方法等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前述した課題を解決するための本発明は、構造体の構築方法であって、前記構造体に埋設される補強材に型枠を固定し、前記型枠の内側にコンクリートを充填して前記構造体の内部を形成する工程(a)と、前記構造体の内部の外面にセメント系材料による硬化材を塗布することで、前記構造体の外殻部を形成する工程(b)と、により構造体を構築することを特徴とする構造体の構築方法である。
【0010】
本発明では、先行して打設した構造体の内部のコンクリートが、モルタル等のセメント系材料を塗布して外殻部を形成する際の芯材となるため、モルタル等の通り抜けによるロスを無くすことができ、施工性を向上させることができる。型枠は、構造体の補強材に固定することで、型枠固定用に別途の部材を設ける必要が無く、施工を省力化できる。
【0011】
また構造体の内部のコンクリートを先行打設するため、型枠の内側に補強材が位置する場合も、補強材とコンクリートの付着性能を自ずと確保できる。さらに、吹付け圧等による芯材の変形の恐れも無く、出来形の問題等が生じる懸念もない。
【0012】
前記型枠はラス網であり、前記構造体の内部の外面にラス網が残置されることが望ましい。
これにより、構造体の内部の外面にモルタル等の硬化材を塗布する際に、その付着性が向上する。
【0013】
前記構造体の内部にせん断補強筋が埋設され、前記コンクリートの充填時の側圧が前記せん断補強筋によって支持されることが望ましい。
本発明では、構造体のせん断補強筋をセパレータとして活用することで、従来の型枠工におけるセパレータの設置を省略でき、施工が簡略化される。ただし、主筋や配力筋の剛性だけで側圧に抵抗できる場合もある。
【0014】
前記型枠は、前記構造体の補強材である主筋および配力筋の内側に固定されることが望ましい。
これにより、簡易な方法で型枠を補強材に固定できる。
【0015】
また前記型枠は、固定治具を用いて固定されることも望ましい。
これにより、型枠を補強材に対して容易且つ確実に固定できる。
【0016】
前記構造体の内部にせん断補強筋が埋設され、前記固定治具として、前記せん断補強筋の端部の定着治具が用いられることが望ましい。
本発明では、せん断補強筋の定着治具を用いて型枠の固定を効率良く行うこともでき、施工の手間や材料の削減につながる。
【発明の効果】
【0017】
本発明により、施工性を向上させることができる構造体の構築方法等を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図4】ラス網3を主筋21および配力筋22の内側に固定する例。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面に基づいて本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0020】
図1は、本発明の実施形態に係る構造体1の構築方法の各工程を示す断面図である。本実施形態では壁状の構造体1を構築するものとし、
図1の各図は構造体1の厚さ方向の鉛直断面を示している。構造体1の厚さ方向は、各図の左右方向に対応する。
【0021】
本実施形態では、
図1(a)に示すように、まず、構造体1に埋設される補強材である鉄筋2を組み立てる。本実施形態では、構造体1の鉄筋2として、主筋21、配力筋22、およびせん断補強筋23が配置される。
【0022】
主筋21は鉛直方向の鉄筋であり、構造体1の厚さ方向の両側で、構造体1の平面における延伸方向(以下単に延伸方向という)に間隔を空けて複数本配置される。構造体1の延伸方向は、構造体1の厚さ方向と平面において直交し、
図1の紙面法線方向に対応する。
【0023】
配力筋22は水平方向の鉄筋であり、構造体1の厚さ方向の両側で、構造体1の延伸方向に沿って配置される。配力筋22は鉛直方向に間隔を空けて上下複数段に配置される。
【0024】
せん断補強筋23は水平方向の鉄筋であり、構造体1の厚さ方向に沿って配置される。せん断補強筋23は鉛直方向に間隔を空けて上下複数段に配置され、これら上下複数段のせん断補強筋23が、構造体1の延伸方向に間隔を空けて複数列配置される。
【0025】
本実施形態では、鉄筋2の配置後、
図1(b)に示すように、構造体1の厚さ方向の両側で、ラス網3を鉄筋2に対して固定する。ラス網3は、後述するコンクリートCの充填時の型枠として機能する。
【0026】
ラス網3は網状部材であり、開口(網目)を多数有する。ラス網3としては、例えば鋼製のブラインドメタル等を用いることができる。
図2(a)はブラインドメタルの立面を示す図であり、この例では六角形状の開口31が縦横に配列される。また
図2(b)に示すように、ブラインドメタルの開口31の向きを上側とすることで、コンクリートCの充填時の漏れ出しを抑制できる。
【0027】
ラス網3は、主筋21または配力筋22の外側に番線等で結わえて固定できる。一方、
図3に示すように、固定治具5を用いてラス網3を主筋21または配力筋22(
図3の例では配力筋22)の外側に固定することも可能であり、ラス網3の固定を容易且つ確実に行うことができる。なお「外側」とは構造体1の外部側を指し、構造体1の内部側は「内側」というものとする。
【0028】
図3の固定治具5は、断面C字状のクランプ51の壁面に設けた雌ネジ穴に雄ネジ52をねじ込んだ構成を有し、クランプ51の内部に挿入した配力筋22に雄ネジ52の先端を押し付けて配力筋22への取り付けを行う。雄ネジ52はラス網3を貫通し、その外側からナット53が螺合され、ナット53とクランプ51の間にラス網3を挟持することで、ラス網3が配力筋22に対して固定される。同様の方法で、ラス網3を主筋21に対して固定することも可能である。これは後述する他の例においても同様であり、固定対象を配力筋22としている例については、同様の方法で主筋21への固定も可能である。
【0029】
こうしてラス網3の固定を行った後、
図1(c)に示すように、ラス網3の内側にコンクリートCを打設し、充填する。コンクリートCの硬化により、構造体1の内部が形成される。またコンクリートCの充填時にラス網3に加わる側圧は、ラス網3を固定した主筋21または配力筋22を介してせん断補強筋23によって支持される。
【0030】
こうして構造体1の内部を形成した後、
図1(d)に示すように構造体1の内部の外面に硬化材Hを吹き付けて塗布する。本実施形態では当該外面にラス網3が残置され、当該外面には
図2(b)に例示されるように凹凸が形成されるため、硬化材Hの付着性が向上する。
【0031】
硬化材Hにはモルタルやコンクリートなどのセメント系材料が用いられ、鉄筋2に対するかぶりとなる。硬化材Hとしては、例えば高強度モルタルを用いることで構造体1の耐久性を高めることができる。また、硬化材Hとして超高強度繊維補強コンクリートを用いることもでき、高い引張強度の鋼繊維が混入されていることによる曲げじん性により、構造体1の鉄筋2の量を低減することができる。
【0032】
硬化材Hの吹付は、吹付機械を用いてラス網3の外側での作業により行うことができる。吹付後の硬化材Hの表面は例えば人力でコテ仕上げして平滑にし、構造体1の意匠性を向上させる。
【0033】
この後、養生を行って硬化材Hを硬化させることで、構造体1の外殻部が形成される。こうして構造体1の内部と外殻部を形成することで、構造体1が構築される。硬化材Hには、硬化を早めるために既知の硬化促進剤を添加することも可能である。
【0034】
以上説明したように、本実施形態では、先行して打設した構造体1の内部のコンクリートCが、モルタル等の硬化材Hを塗布して外殻部を形成する際の芯材となるため、前記したようなモルタル等の通り抜けによるロスを無くすことができ、構造体1の施工性を向上させることができる。ラス網3は、構造体1の鉄筋2に固定することで、型枠固定用に別途の部材を設ける必要が無く、施工を省力化できる。
【0035】
また構造体1の内部のコンクリートCを先行打設するため、鉄筋2とコンクリートCの付着性能も自ずと確保でき、構造体1の構造性能を損なう心配がない。さらに、吹付け圧による芯材の変形の恐れも無く、出来形の問題等が生じる懸念もない。
【0036】
また本実施形態では、コンクリートCの充填時の型枠工の大部分を軽量かつ容易に変形できるラス網3の設置で代替でき、施工が容易になり、脱型作業も省略できる。またラス網3を残置したコンクリートCの外面に硬化材Hを塗布することで、その凹凸により硬化材Hの付着性が向上し、硬化材Hの塗布により意匠性も向上する。
【0037】
また本実施形態では、構造体1のせん断補強筋23を利用してコンクリートCの充填時の側圧に抵抗させ、せん断補強筋23をセパレータとして活用することで、従来の型枠工におけるセパレータの設置を省略でき、施工が簡略化される。ただし、主筋21や配力筋22の剛性によってコンクリートCの充填時の側圧に抵抗できる場合もあり、その場合はせん断補強筋23によって側圧に抵抗させなくてもよい。
【0038】
しかしながら、本発明が以上の実施形態に限られることはない。例えば、本実施形態ではラス網3を主筋21および配力筋22の外側に固定しているが、
図4に示すように、ラス網3を主筋21および配力筋22の内側に固定しても良い。
【0039】
これにより、コンクリートのCの充填時にラス網3が主筋21や配力筋22から外側に剥がれることがなく、主筋21や配力筋22へのラス網3の固定は、簡易な方法で行えば十分である。ただし、ラス網3の施工はせん断補強筋23の存在する主筋21や配力筋22の内側の空間で行う必要があり、またラス網3にせん断補強筋23を貫通させることも必要なので、この点では、主筋21および配力筋22の外側にラス網3を固定する方が作業性は良い。
【0040】
また固定治具5の形状や構成も、ラス網3を鉄筋2に固定できるものであればよく、特に限定されない。例えばせん断補強筋23としてねじ節鉄筋を用いる場合、
図5(a)に示すように、せん断補強筋23の本設の定着治具をラス網3の固定治具5aとして利用してもよく、ラス網3の固定を効率良く行うことができ、施工の手間や材料の削減につながる。
【0041】
この定着治具(固定治具5a)は、雌ネジ穴が貫通する本体54の外側の端部に定着用の拡幅部541を設けたものであり、主筋21、配力筋22およびせん断補強筋23の配置とラス網3の設置を行った後、
図5(a)に示すように、ラス網3を貫通させた本体54の雌ネジ穴にせん断補強筋23の端部を螺合し、拡幅部541によりラス網3を配力筋22側に押さえることで、ラス網3を配力筋22に対して固定することができる。
【0042】
また
図5(b)に示すように、本体54から突出し、ラス網3を貫通するせん断補強筋23の先端にナット55を螺合し、このナット55と本体54の拡幅部541の間でラス網3を狭持することもでき、ラス網3をせん断補強筋23に対して効率良く固定できる。この場合、せん断補強筋23の軸方向における固定治具5aの位置を変えることで、せん断補強筋23の軸方向におけるラス網3の位置も調整できる。
【0043】
また
図6(a)に示すように、ラス網3の外側に補強用鉄筋4を配置し、配力筋22、ラス網3および補強用鉄筋4を番線Wで結わえて固定しても良い。ラス網3の外側に補強用鉄筋4を設けることで、コンクリートCの充填時の側圧に対してラス網3を補強することができる。
【0044】
補強用鉄筋4は、前記の固定治具5、5aを用いる場合でも適用可能であり、
図6(b)の例では、固定治具5のナット53(プレートナット)とクランプ51の間に補強用鉄筋4とラス網3を狭持することで、ラス網3の配力筋22への固定と補強用鉄筋4によるラス網3の補強が実現される。
図6(b)の例では、固定治具5aの本体54の拡幅部541により補強用鉄筋4とラス網3を配力筋22側に押さえることで、同様の効果が達成される。
【0045】
また本実施形態ではコンクリートCの充填時の型枠としてラス網3を用いているが、ラス網3に代えて、
図7(a)に示すように、メッシュ筋6とネット7を組み合わせて用いてもよい。
【0046】
メッシュ筋6はラス網3よりも開口(網目)の大きい鋼製の網状部材であり、縦横の鉄筋61、62を格子状に組み合わせて形成される。メッシュ筋6はラス網3より剛性があるため、コンクリートCの充填時の側圧への抵抗性が向上する。ネット7は繊維等により形成された網目の小さい網状部材であり、コンクリートCの外側への漏れ出しを抑制する。メッシュ筋6とネット7は予め一体化させても良く、施工が容易になる。
【0047】
また、ラス網3の代わりとして、網目の小さいメッシュ筋6を単独で用いてもよい。この場合、コンクリートCの配合やメッシュ筋6の網目の大きさを調整し、コンクリートCの充填時、コンクリートCが外側に漏れ出ないようにする。なお、メッシュ筋6は、前記の補強用鉄筋4の代わりとしてラス網3と併用して用いることも可能である。
【0048】
その他、ラス網3の代わりに、アラミド繊維のメッシュシート等の連続繊維補強材を用いても良い。剛性確保のため、主筋21、配力筋22、あるいはせん断補強筋23への固定箇所を増やす必要があるが、軽量であることからこれらの鉄筋2への固定作業が容易になる。
【0049】
またコンクリートCの充填時の型枠として用いるラス網3やメッシュ筋6、あるいは上記の連続繊維補強材の外側に、ビニールや土嚢シート等、開口を有しないシート材を貼り付けても良い。これにより、コンクリートCの漏れ出しや乾燥による強度低下を緩和でき、品質向上につながる。ただし、
図1(c)に示した工程において、構造体1の内部の外面の凹凸はやや緩やかになり、硬化材Hの付着性は若干低下する。なお、シート材は、コンクリートCの硬化後に撤去する。
【0050】
さらに、ラス網3の代わりに、
図8(a)に示すように、縦横の細径鉄筋8を現場で網状に溶接して用いてもよく、既知の自動溶接装置を用いて溶接を自動化することで、施工を省力化できる。
図8(b)に示すように、細径鉄筋8は配力筋22に取り付けたガッツ等の金物24に溶接を行って固定され、この溶接も自動溶接装置を用いて自動化できる。さらに、硬化材Hの吹付を自動で行う自動吹付装置を用いることで、外殻部の形成に係る工程全体を自動化することが可能である。
【0051】
ラス網3の代わりとしては、
図9に示すように、表面に凹凸を有する樹脂製のシート材9を、凹凸面を内側として配力筋22に固定することも可能であり、コンクリートCの充填時の簡易的な型枠とすることができる。シート材9は開口を有しないが、硬化材Hの塗布前に撤去され、その際に構造体1の内部のコンクリートCの外面に凹凸が形成されるため、硬化材Hの付着性を高めることができる。
【0052】
またラス網3等の型枠の固定方法も特に限定されず、
図10(a)に示すように、一般的な型枠工と同様、セパレータ10と単管11および端太12を配置し、これらを用いてラス網3の配力筋22への固定を行ってもよい。歩掛やコストが増加するが、確実にラス網3の固定およびコンクリートCの充填時の側圧への抵抗が可能である。
【0053】
図10(a)の符号101、102はそれぞれ、ラス網3を貫通するセパレータ10の端部に取り付けられたフォームタイ(登録商標)とナットであり、ラス網3の外側に配置された単管11および端太12を、配力筋22側に押さえる役割を有する。セパレータ10は構造体1に埋設するが、単管11、端太12、フォームタイ(登録商標)101およびナット102は、コンクリートCの充填後、硬化材Hの塗布前に撤去する。セパレータ10の端部は、後施工の硬化材H内に埋設でき、表面処理が簡単になる。
【0054】
セパレータ10は、
図10(b)、(c)に示すように、補強用鉄筋4やメッシュ筋6を用いる場合にも適用でき、単管11等の使用を省略でき、これらを撤去する手間も省ける。
図10(b)の例ではセパレータ10の端部に螺合したナット102(プレートナット)により補強用鉄筋4とラス網3を配力筋22側に押さえ付けて固定でき、
図10(c)の例では、ナット102によりメッシュ筋6とネット7を配力筋22側に押さえ付けて固定できる。
【0055】
また本実施形態の構造体1は壁状であるが、構造体1は壁状に限らない。例えばラス網3をロの字型の閉断面を有するように配置し、その内部にコンクリートCを充填した後、硬化材Hの吹付を行うことで、柱状の構造体1を構築することもできる。
【0056】
また本実施形態では、硬化材Hによる一対の外殻部が対向する位置に形成されるが、硬化材Hによる外殻部をどちらか一方だけに形成する場合もある。その場合、外殻部の反対側は、各種の構造部材や型枠およびその補強材、あるいは地盤等とすることができる。
【0057】
また、本実施形態では硬化材Hを吹付により塗布したが、硬化材Hの塗布方法は吹付に限らず、左官的方法により硬化材Hを塗り付けてもよい。さらに、構造体1の外殻部の出来形の3次元データに基づいて硬化材Hの塗布を自動で行う自動塗布装置(3Dプリンタ)を用いることも可能であり、作業員の数をより少なくできる。
【0058】
また本実施形態では構造体1の補強材として鉄筋2が構造体1に埋設されるが、補強材としてH形鋼などの形鋼や鋼板などの鋼材が埋設される場合もある。その場合も前記と同様、番線や固定治具、セパレータなどを利用してラス網3などの型枠を鋼材に固定することができる。
【0059】
以上、添付図面を参照して本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されない。当業者であれば、本願で開示した技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0060】
1:構造体
2:鉄筋
3:ラス網
4:補強用鉄筋
5、5a:固定治具
6:メッシュ筋
7:ネット
8:細径鉄筋
9:シート材
10:セパレータ
21:主筋
22:配力筋
23:せん断補強筋