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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024020017
(43)【公開日】2024-02-14
(54)【発明の名称】CO2回収システム
(51)【国際特許分類】
   B01D 53/62 20060101AFI20240206BHJP
   B01D 53/78 20060101ALI20240206BHJP
   C01B 32/50 20170101ALI20240206BHJP
【FI】
B01D53/62 ZAB
B01D53/78
C01B32/50
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022122864
(22)【出願日】2022-08-01
(71)【出願人】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】弁理士法人あいち国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 久高
(72)【発明者】
【氏名】南里 浩太
(72)【発明者】
【氏名】松山 純也
【テーマコード(参考)】
4D002
4G146
【Fターム(参考)】
4D002AA09
4D002AC10
4D002BA02
4D002BA13
4D002CA06
4D002DA02
4D002DA12
4D002EA02
4D002FA04
4D002GA02
4D002GA03
4D002GB01
4D002GB09
4D002GB11
4G146JA02
4G146JB09
4G146JC18
4G146JC29
4G146JC37
(57)【要約】
【課題】CO排出抑制効果に優れたCO回収システムを提供する。
【解決手段】CO回収システム1は、CO回収装置10、反応液温度取得部としての温度センサ12、第1ガス流路21、第2ガス流路22、流量調整部としての電磁弁30を備える。CO回収装置10は、反応槽11に貯留された反応液にCO含有ガスを接触させてCO含有ガスからCOを回収する。温度センサ12は反応槽11に貯留された反応液の温度を取得する。第1ガス流路21は第1のCO含有ガスG1を流通させる。第2ガス流路22は第1のCO含有ガスG1よりも高温である第2のCO含有ガスG2を流通させる。電磁弁30は温度センサ12により取得される反応液の温度が所定温度となるように、第1ガス流路21における第1のCO含有ガスG1の流量と、第2ガス流路22における第2のCO含有ガスG2の流量とを調整する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応槽に貯留された反応液にCO含有ガスを接触させて上記CO含有ガスからCOを回収するCO回収装置と、
上記反応槽に貯留された上記反応液の温度を取得する反応液温度取得部と、
第1のCO含有ガスを流通させる第1ガス流路と、
上記第1のCO含有ガスよりも高温である第2のCO含有ガスを流通させる第2ガス流路と、
上記反応液温度取得部により取得される上記反応液の温度が所定温度となるように、上記第1ガス流路から上記CO回収装置に供給される上記第1のCO含有ガスの流量と、上記第2ガス流路から上記CO回収装置に供給される上記第2のCO含有ガスの流量とを調整する流量調整部と、
を備える、CO回収システム。
【請求項2】
上記反応液はNaOH水溶液であって、上記CO回収装置は上記COを回収することによりNaHCO、NaCO、及びNaHCOとNaCOとの混合物の少なくとも一つを生成する、請求項1に記載のCO回収システム。
【請求項3】
上記流量調整部は、上記反応液温度取得部により取得される上記反応液の温度が予め設定された第1の基準温度以上となるように、上記第1のCO含有ガス及び上記第2のCO含有ガスの流量を調整して、上記CO回収装置においてNaCOを生成するように構成されている、請求項2に記載のCO回収システム。
【請求項4】
上記流量調整部は、上記反応液温度取得部により取得される上記温度が予め設定された第1の基準温度より小さくなるように、上記第1のCO含有ガス及び上記第2のCO含有ガスの流量を調整して、上記CO回収装置においてNaHCOとNaCOとの混合物を生成するように構成されている、請求項2に記載のCO回収システム。
【請求項5】
上記第1のCO含有ガスは、CO排出設備から排出された高温の排ガスの一部を冷却してなる低温の排ガスであり、
上記第2のCO含有ガスは、上記CO排出設備から排出された上記高温の排ガスの他の一部であり、
上記第1のCO含有ガスと上記第2のCO含有ガスとを混合して上記CO回収装置に供給するガス混合部をさらに有する、請求項1~4のいずれか一項に記載のCO回収システム。
【請求項6】
上記第1ガス流路を形成する配管は、上記第2ガス流路を形成する配管よりも低い断熱性を有しており、上記高温の排ガスの一部は上記第1ガス流路を流通するのに伴って冷却されて上記第2のCO含有ガスよりも低温である上記第1のCO含有ガスとなる、請求項5に記載のCO回収システム。
【請求項7】
上記反応槽内の上記反応液のpHを取得するpH取得部をさらに備え、
上記pH取得部により取得されたpHが予め設定された目標値に到達したときに、上記第1のCO含有ガス及び上記第2のCO含有ガスの供給を停止するように構成されている、請求項1~4のいずれか一項に記載のCO回収システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、CO回収システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、温室効果ガスとしてのCOガスの排出を抑制することが求められており、COガスを回収するシステムが種々検討されている。例えば、特許文献1には、CO回収システムとして、発電用ボイラなどのCOを含有する排ガスをNaOH水溶液と反応させて、NaHCO又はNaCOを生成して当該排ガスからCOを回収する構成が開示されている。当該CO回収システムによれば、生成されたNaHCO又はNaCOは資源として利用することが予定されている。また、排ガスの利用形態として、特許文献2には、排ガスにおける微粒子化を目的として高温の排ガスと低温の排ガスとを混合する構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005-288313号公報
【特許文献2】特公平3-76964号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示の構成において、NaHCOの生成反応は発熱反応であるため、反応液の温度が急上昇することにより、NaHCOが分解して固定化されたCOが放出されるおそれがある。この場合には、COの回収率が低下し、COの排出抑制効果が低下することとなる。また、特許文献1に開示の構成では、反応槽に供給される排ガスは反応槽に接続された配管を流通する過程で配管周囲の外環境と熱交換されて温度が変化するため、反応槽に供給された排ガスの温度は、配管周囲の温度の影響を受けることとなる。例えば、反応槽に供給された排ガスの温度は、外気温の低い冬季や夜間などでは低温となりやすく、外気温の高い夏季や日中では高温となりやすい。このように時期や時間帯によって排ガスの温度が変化することから、反応槽における反応効率が不安定となってCOの排出抑制効果が低下することとなる。一方、特許文献2には、反応液の温度変化によるCOの排出抑制効果の低下については何ら言及されていない。
【0005】
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたもので、CO排出抑制効果に優れたCO回収システムを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、反応槽に貯留された反応液にCO含有ガスを接触させて上記CO含有ガスからCOを回収するCO回収装置と、
上記反応槽に貯留された上記反応液の温度を取得する反応液温度取得部と、
第1のCO含有ガスを流通させる第1ガス流路と、
上記第1のCO含有ガスよりも高温である第2のCO含有ガスを流通させる第2ガス流路と、
上記反応液温度取得部により取得される上記反応液の温度が所定温度となるように、上記第1ガス流路から上記CO回収装置に供給される上記第1のCO含有ガスの流量と、上記第2ガス流路から上記CO回収装置に供給される上記第2のCO含有ガスの流量とを調整する流量調整部と、
を備える、CO回収システムにある。
【発明の効果】
【0007】
上記CO回収システムにおいては、反応液の温度が所定温度となるように、CO回収装置に供給される第1のCO含有ガスの流量と第1のCO含有ガスよりも高温である第2のCO含有ガスの流量とが調整されている。これにより、反応液の温度が過剰に高くなることが防止されるとともに、時期や時間帯によって外気温の変化による反応液の温度変化を抑制することができる。そのため、CO回収装置におけるCO固定化反応の安定化が図られ、COの排出抑制効果の低下を防止することができる。また、CO固定化反応の安定化が図られることにより、CO回収システムの駆動時間を短縮化することができ、省エネルギー化を図ることができる。
【0008】
以上のごとく、上記態様によれば、CO排出抑制効果に優れたCO回収システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態1における、CO回収システムの構成を示す概念図。
図2】実施形態1における、反応液温度、反応液pH及び生成物の対応関係を示す概念図。
図3】実施形態1における、CO回収システムの第1の使用態様を示すフロー図。
図4】実施形態1における、CO回収システムの第2の使用態様を示すフロー図。
図5】実施形態2における、CO回収システムの構成を示す概念図。
図6】実施形態2における、CO回収システムの第1の使用態様を示すフロー図。
図7】実施形態2における、CO回収システムの第2の使用態様を示すフロー図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(実施形態1)
CO回収システムの実施形態1について、図1図5を用いて説明する。
本実施形態のCO回収システム1は、図1に示すように、CO排出設備100から排出されるCO含有ガスである排ガスからCO2を回収するように構成されている。本明細書では、「CO含有ガス」とは、構成成分としてCOを含有するガスを指すものとする。当該CO含有ガスは、構成成分としてCOのみを含むガスであってもよいし、さらに不可避的不純物を含むガスであってもよい。また、CO含有ガスは、構成成分としてCOとその他の物質とが混在する混合ガスであってよい。混合ガスにおいてCOが占める割合は限定されず、混合ガスにおいて占める割合が最も多い主成分はCOであってもよいし、CO以外の物質であってもよい。
【0011】
1.CO排出設備100
図1に示すCO排出設備100はCO含有ガスを排出する設備であれば特に限定されず、ボイラを有する設備、燃料電池、焼却炉、熱処理設備などを例示することができる。CO排出設備100には排気ダクト20が接続されており、排気ダクト20を介してCO含有ガスである排ガスG0が排出される。CO排出設備100から排出される排ガスG0の温度は特に限定されないが、高温であることが好ましく、例えば、100℃~300℃の範囲内の温度を有するものとすることができ、本実施形態では、CO排出設備100か排出される排ガスG0は140℃の温度を有するものとした。
【0012】
2.CO回収システム1
本実施形態のCO回収システム1は、主として、CO回収装置10、第1ガス流路21、第2ガス流路22、流量調整部(電磁弁30)、水分除去フィルタ40、エアポンプ50、フィルタ60を有する。以下、各構成について説明する。
【0013】
3.第1ガス流路21
第1ガス流路21はCO含有ガスを流通させる。本実施形態1では、第1ガス流路21は、CO排出設備100に接続された排気ダクト20に接続された配管により形成されている。第1ガス流路21には、排気ダクト20を流通するCO含有ガスである排ガスG0の一部が流通する。当該第1ガス流路21を流通するガスを第1のCO含有ガスG1というものとする。第1のCO含有ガスG1は、後述の第2のCO含有ガスG2よりも低温となっている。本実施形態1では、第1ガス流路21を形成する配管は熱伝導性の高い材料で形成されており、後述の第2ガス流路22を形成する配管よりも断熱性が低くなっている。そのため、上述の通りCO排出設備100から排出された排ガスG0は140℃程度の高温であるが、第1ガス流路21を流通する第1のCO含有ガスG1は、第1ガス流路21を流通する過程で配管周囲の外環境と熱交換されて冷却され、低温の状態となるように構成されている。
【0014】
なお、第1のCO含有ガスG1を低温の状態とする方法は上述の方法に限らず、別途設けた冷却装置等により第1ガス流路21を流通する排ガスを冷却することで、第1のCO含有ガスG1を低温の状態としてもよい。この場合には、冷却により消費されるエネルギー量に相当するCO量とCO回収システム1により回収できるCO量とを比較して前者が後者よりも小さくなるようにしてシステム全体で省電力化が図られるようにすることが好ましい。
【0015】
4.第2ガス流路22
第2ガス流路22はCO含有ガスを流通させる。本実施形態1では、第2ガス流路22は、CO排出設備100に接続された排気ダクト20に接続された配管からなる。第2ガス流路22には、排気ダクト20を流通するCO含有ガスである排ガスの一部が流通する。当該第2ガス流路22を流通するガスを第2のCO含有ガスG2というものとする。第2のCO含有ガスG2は、上述の第1のCO含有ガスG1よりも高温となっている。本実施形態1では、排ガスG0は140℃程度の高温となっており、第2ガス流路22を形成する配管の外周面を断熱材22aで覆うことにより、第2ガス流路22を形成する配管は、上述の第1ガス流路21を形成する配管よりも断熱性が高くなっている。これにより、第2のCO含有ガスG2は高温の状態が維持されるように構成されている。
【0016】
第2のCO含有ガスG2を高温の状態とする方法は上述の方法に限らず、別途設けた加熱装置等により第2ガス流路22を流通する排ガスを加熱することで、第2のCO含有ガスG2を高温の状態としてもよい。この場合には、加熱により消費されるエネルギー量に相当するCO量とCO回収システム1により回収できるCO量とを比較して前者が後者よりも小さくなるようにしてシステム全体で省電力化が図られるようにすることが好ましい。
【0017】
なお、本実施形態1では、後述する反応槽11においてバブリングするCO含有ガスの量が多すぎると反応液内でバブルサイズが十分に小さいマイクロバブルの状態とすることが困難となることを考慮して、CO排出設備100から排出される排ガスG0の一部のみを第1ガス流路21及び第2ガス流路22に流通させ、両者を流通させないその他の排ガスは、排気ダクト20を介して外部に放出する構成としている。
【0018】
5.電磁弁30
電磁弁30は、第1ガス流路21と第2ガス流路22と後述する水分除去フィルタ40に連通する配管31に接続されており、第1ガス流路21と第2ガス流路22から配管31へ流れる第1のCO含有ガスG1及び第2のCO含有ガスG2のそれぞれの流量を変更可能な流量調整部を構成している。電磁弁30の形態は限定されないが、本実施形態1では、第1ガス流路21を開放して第1のCO含有ガスG1が配管31に流れる流量を最大とするとともに第2ガス流路22を閉塞して第2のCO含有ガスG2が配管31に流れる流量をゼロとする第1状態と、第1ガス流路21を閉塞して第1のCO含有ガスG1が配管31に流れる流量をゼロとするとともに第2ガス流路22を開放して第2のCO含有ガスG2が配管31に流れる流量を最大とする第2状態とを切り替え可能に構成されている。
【0019】
電磁弁30の動作制御は、電磁弁制御部35により行われる。電磁弁制御部35は、後述する反応槽11内の反応液の温度を検出する温度センサ12による検出結果に基づいて、電磁弁30における開閉状態を変更する。
【0020】
電磁弁制御部35により、例えば、流量調整部としての電磁弁30は、後述の温度センサ12により取得される反応液の温度が予め設定された第1の基準温度よりも高くなるように、第1のCO含有ガスG1及び第2のCO含有ガスG2の流量を調整したり、第1の基準温度より小さくなるように第1のCO含有ガスG1及び第2のCO含有ガスG2の流量を調整したりすることができる。
【0021】
第1の基準温度は、CO回収装置における目的の生成物に応じて適宜設定することができる。例えば、反応液としてNaOH水溶液を用いる場合は、図2に示す反応液のpH、反応液温度及び生成物との対応関係を示すマップに基づいて設定することができる。
【0022】
例えば、CO回収装置においてNaCOを生成させることを目的とする場合には、第1の基準温度を45~65℃の範囲内の値とし、当該第1の基準温度以上となるように、第1のCO含有ガスG1及び第2のCO含有ガスG2の流量を調整することができる。反応液の温度が65℃を超えると、後述する式2の逆反応が優位となってNaHCOが消失してNaCOが生成されるため、反応液を第1の基準温度以上にすることでNaCOを積極的に生成して純度を向上することができる。そして、反応液のpHが10程度となったタイミングで後述するCO含有ガスのバブリングを停止することで、目的生成物の水溶液を取得することができる。なお、本実施形態1では、第1の基準温度を50℃に設定している。
【0023】
また、例えば、CO回収装置においてNaHCOとNaCOとの混合物を生成させることを目的とする場合には、第1の基準温度を45~65℃の範囲内の値とし、当該第1の基準温度より小さくなるように、第1のCO含有ガスG1及び第2のCO含有ガスG2の流量を調整することができる。上述の通り反応液の温度が65℃を超えると、後述する式2の逆反応が優位となってNaHCOが消失するため、反応液を第1の基準温度より小さくすることでNaHCOが消失するのを抑制できる。なお、この場合は反応液のpHが8程度となったタイミングで後述するCO含有ガスのバブリングを停止することで、目的生成物の水溶液を取得することができる。
【0024】
また、例えば、CO回収装置においてNaHCOを生成させることを目的とする場合には、第1の基準温度を45~65℃の範囲内の値とし、当該第1の基準温度より小さくなるように、第1のCO含有ガスG1及び第2のCO含有ガスG2の流量を調整することができる。なお、この場合は反応液のpHが7.5程度となったタイミングで後述するCO含有ガスのバブリングを停止することで、目的生成物の水溶液を取得することができる。
【0025】
また、電磁弁制御部35により、例えば、流量調整部としての電磁弁30は、後述の温度センサ12により取得される反応液の温度が予め設定された第2の基準温度よりも高くなるように、第1のCO含有ガスG1及び第2のCO含有ガスG2の流量を調整することができる。第2の基準温度としては、室温程度の値を設定することができ、本実施形態1では、第2の基準温度を25℃に設定している。反応液の温度が第2の基準温度以上となるように制御することで、後述する式1及び式2で示す反応における反応速度を適正な範囲に保つことができ、CO固定化反応の安定化を図ることができる。
【0026】
6.水分除去フィルタ40
水分除去フィルタ40は、配管31に設けられており、配管31を流通するCO含有ガスから水分を除去する。水分除去フィルタ40は、図示しないが、当該CO含有ガスに含まれた水蒸気を液体として分離する水分分離部と、水蒸気が分離されて除去されたCO含有ガスが通過するガス通過部とを備えるウォーターセパレータにより構成される。分離された水分は図示しないタンクに貯留されて適宜排出される。ガス通過部を通過した排ガスは、後述するエアポンプ50に連通する配管41に吐出される。水分除去フィルタ40により水を除去することで、後段のエアポンプ50に水が溜まることが防止される。
【0027】
7.エアポンプ50
エアポンプ50は、配管41を介して水分除去フィルタ40に接続されてCO含有ガスを吸引するように構成されている。当該エアポンプ50の吸引により、排気ダクト20から排ガスの一部が第1ガス流路21及び第2ガス流路22に流通することとなる。吸引したCO含有ガスは配管51を介して後述する反応槽11に供給される。エアポンプ50の構成は限定されないが、エアポンプ50の駆動部にガスが直接接触しないダイヤフラム式ポンプとすることが好ましい。
【0028】
エアポンプ50の駆動制御は、ポンプ制御部55により行われる。ポンプ制御部55は、後述する反応槽11内の反応液のpHを検出するpHセンサ13による検出結果に基づいて、エアポンプ50における吸引動作のオンオフを変更する。エアポンプ50における吸引動作をオンにすると後述する反応槽11におけるCO含有ガスのバブリングが開始され、エアポンプ50における吸引動作をオフにすると当該バブリングが停止される。
【0029】
8.CO回収装置10
CO回収装置10は、反応槽11内に貯留された反応液にCO含有ガスを接触させてCO含有ガスからCOを回収する。反応液は、アルカリ金属水酸化物水溶液又はアルカリ土類金属水酸化物水溶液とすることができ、本実施形態1では、NaOH水溶液を用いた。NaOH水溶液の濃度は限定されないが、本実施形態1では、劇物に該当しないため取り扱いが容易な5.0%NaOH水溶液とした。
【0030】
反応槽11には配管51を介してCO含有ガスが供給される。配管51の先端は、反応槽11の内側底部近傍に位置しており、CO含有ガスを反応液内に吐出してバブリングするように構成されている。なお、反応槽11には、反応液Pの温度を検出する温度センサ12と、反応液PのpHを検出するpHセンサ13が設けられている。
【0031】
そして、反応槽11内でCO含有ガスをNaOH水溶液に接触させることにより、反応槽11内では下記の式1の反応が行われた後、式2の反応が行われる。なお、本明細書では、下記の式1、式2をCO固定化反応ともいう。
2NaOH+CO → NaCO+HO (式1)
NaCO+CO+HO → 2NaHCO (式2)
【0032】
図1に示す反応槽11内では、上記反応の開始前は、NaHCO及びNaCOは存在していない状態であるが、上記反応の進行状態に応じて、NaCOが生成されてNaHCOが存在しない状態と、一部のNaCOがさらにCOと反応してNaHCOが生成されて両者がともに存在する状態と、すべてのNaCOがNaHCOに変換されてNaCOがなくなりNaHCOが存在する状態とのいずれかとなる。上記反応により生じるNaHCO及びNaCOはいずれも、反応槽11内の水に溶解して水溶液の状態となっている。本明細書ではNaHCO、NaCO及び両者の混合物を総称して「生成物」とい、これらの水溶液を総称して「生成物水溶液」というものとする。
【0033】
本実施形態1では、配管51から供給されたCO含有ガスを反応槽11内のNaOH水溶液にバブリングして接触させることにより、上記反応が開始させることができる。なお、CO含有ガスとNaOH水溶液との接触頻度を向上するために、バブリングはCO含有ガスをマイクロバブルの状態で吐出することが好ましい。マイクロバブルの形成は、配管51の先端に設けたマイクロバブル形成器(図示せず)により行うことができる。
【0034】
CO排出設備100から排出された排ガスが、反応槽11における上記反応を阻害する物質を含む場合は、反応槽11よりも上流の位置、例えば、電磁弁30と水分除去フィルタ40との間、水分除去フィルタ40とエアポンプ50との間やエアポンプ50と反応槽11との間などに上記反応を阻害する物質を除去するフィルタ(図示せず)を設けることが好ましい。なお、CO排出設備100から排出される排ガスがCO以外の成分を含まない場合や、反応槽11における上記反応を阻害する物質を含まないことが明らかな場合は、当該フィルタを設ける必要はない。
【0035】
図1に示す排気部14は、反応槽11内においてCOが除去されたCO除去ガスを反応槽11からフィルタ60に排出する。フィルタ60は、CO除去ガス中の有害成分を捕集するものである。フィルタ60の構成は限定されないが、本実施形態1では、フィルタ60に貯留された水WにCO除去ガスをバブリングして通過させることにより、CO除去ガスを水溶性の物質(例えば、反応槽11におけるバブリングにより飛沫となって排気部14に到達した反応液のNaOHや、排ガスに含まれる窒素酸化物NOなど)を除去するように構成されている。フィルタ60を通過したCO除去ガスは、CO回収システム1の外部に放出される。
【0036】
一方、上記式1及び式2の反応により生成された生成物水溶液は、反応槽11に設けられたドレンコック70を介して外部排出される。ドレンコック70は開閉可能に構成されている。ドレンコック70は通常状態では閉塞状態となっているが、生成物水溶液を回収する場合に開放状態にすることで反応槽11内の生成物水溶液を反応槽11から排出して回収容器75に回収することができる。回収された生成物水溶液は、資源として利用することができ、例えば、洗浄剤、防腐剤、除草剤などとして利用することができる。なお、反応槽11から生成物水溶液を排出した後は、ドレンコック70を閉塞状態にし、次回の反応に用いられる反応液であるNaOH水溶液を図示しない反応液供給部から反応槽11内に供給する。
【0037】
9-1.実施形態1のCO回収システム1における第1の使用態様
次に、本実施形態1のCO回収システム1における第1の使用態様を、図3に示すフロー図を用いて以下に説明する。第1の使用態様では、CO回収装置10における目的生成物をNaCOとNaHCOとの混合物(セスキ炭酸ソーダ)とする。
【0038】
まず、図3に示すステップS1において、準備工程として、反応槽11に反応液であるNaOH水溶液を投入する。その後、ステップS2において、エアポンプ50を駆動し、ステップS3において、電磁弁30により、第1ガス流路21及び第2ガス流路22の一方を開放し、他方を閉塞する。
【0039】
そして、ステップS4において、温度センサ12により反応液の温度を取得し、pHセンサ13により反応液のpHを取得する。なお、反応開始直後では、反応液にはNaOHが多量に存在する状態であるため、取得されるpHは高い値となっており、反応が進むにつれてNaOHが消費されることにより、反応液のpHは低下していく。
【0040】
次いで、ステップS5において、電磁弁制御部35により、取得した温度と第1の基準温度である50℃とを比較する。ステップS5において、取得した温度が第1の基準温度以上であると判定された場合は、ステップS5のYesに進む。そして、ステップS6において、電磁弁30により、第1ガス流路21を開放し、第2ガス流路22を閉塞し、電磁弁30を第1状態に設定する。これにより、反応槽11に低温の排ガスが供給され、反応液の温度が50℃よりも低くなるように制御される。
【0041】
その後、ステップS7において、ポンプ制御部55により、取得したpHが第1の目標値に到達したか否かを判定する。第1の目標値は目的生成物に応じて適宜設定され、当該第1の使用態様では、目的生成物がNaHCOとNaCOとの混合物であるため、第1の目標値はpH=8程度とした。
【0042】
ステップS7において、取得したpHが目標値に到達したと判断された場合は、ステップS8において、ポンプ制御部55によりエアポンプ50の駆動を停止して反応槽11におけるバブリングを停止する。その後、ステップS9において、ドレンコック70を開放して生成物水溶液であるNaHCOとNaCOとの混合物水溶液を回収容器75に回収する。そして、このフローを終了する。
【0043】
一方、ステップS7において、取得したpHが第1の目標値に到達していないと判定された場合は、再度ステップS4に戻り、以降のステップを実施する。
【0044】
また、ステップS5において、取得した反応液の温度が第1の基準温度(50℃)以上でないと判断された場合は、ステップS5のNoに進む。そして、ステップS10において、電磁弁制御部35により、取得された反応液の温度が第2の基準温度である25℃以下であるか否かを判定する。ステップS10において、反応液の温度が25℃以下であると判定された場合は、ステップS11において、電磁弁30により、第1ガス流路21を閉塞し、第2ガス流路22を開放し、電磁弁30を第2状態に設定する。これにより、反応槽11に高温である第2のCO含有ガスが供給され、反応液の温度が25℃よりも高くなるように制御される。その後、ステップS7に進み、以降のステップを実施する。一方、ステップS10において、反応液の温度が25℃以下でないと判定された場合は、上述のステップS7に進み、以降のステップを実施する。
【0045】
9-2.実施形態1のCO回収システム1における第2の使用態様
次に、本実施形態1のCO回収システム1における第2の使用態様を、図4に示すフロー図を用いて以下に説明する。第2の使用態様では、CO回収装置10における目的生成物をNaCOとする。なお、上述の第1の使用態様と同一のステップには同一の符号を付してその説明を省略する。
【0046】
図4に示す第2の使用態様では、ステップS1~S5までは第1の使用態様と同様とする。そして、ステップS5において、取得した反応液の温度が第1の基準温度以上でないと判定された場合は、ステップS11に進み、電磁弁30は、第1ガス流路21を閉塞し、第2ガス流路22を開放する。これにより、高温である第2のCO含有ガスG2が反応槽11に供給され、反応液の温度が50℃以上となるように制御される。
【0047】
その後、ステップS70に進み、取得した反応液のpHが第2の目標値に到達したか否かを判定する。第2の使用態様では、目的生成物がNaCOであるため、第2の目標値はpH=10程度である。なお、目的生成物がNaHCOである場合は、目標値としてpH=7.5程度を設定することができる。
【0048】
ステップS70において、取得した反応液のpHが第2の目標値に到達したと判定された場合は、第1の使用態様と同様にステップS8及びステップS9を実施する。これにより、ステップS9において、生成物水溶液として、NaCO水溶液が回収され、当該フローを終了する。
【0049】
また、ステップS70において、取得した反応液のpHが第2の目標値に到達していないと判定された場合は、ステップS4に戻り、以降のステップを実施する。
【0050】
一方、ステップS5において、取得した反応液の温度が第1の基準温度以上であると判定された場合は、ステップS5のYesからステップS70に進み、以降のステップを実施する。
【0051】
10.実施形態1のCO回収システム1における作用効果
次に、本実施形態のCO回収システム1における作用効果について詳述する。CO回収システム1によれば、反応液の温度が所定温度となるように、CO回収装置10に供給される第1のCO含有ガスG1の流量と第1のCO含有ガスG1よりも高温である第2のCO含有ガスG2の流量とが調整されている。これにより、反応液の温度が過剰に高くなることが防止されるとともに、時期や時間帯によって外気温の変化による反応液の温度変化を抑制することができる。そのため、CO回収装置10におけるCO固定化反応の安定化が図られ、COの排出抑制効果の低下を防止することができる。また、CO固定化反応の安定化が図られることにより、CO回収システム1の駆動時間を短縮化することができ、省エネルギー化を図ることができる。
【0052】
また、本実施形態1では、反応液はNaOH水溶液であって、CO回収装置10はCOを回収することによりNaHCO、NaCO、及びNaHCOとNaCOとの混合物の少なくともいずれか一つを生成する。これらの生成物はいずれも資源として有用であるため、回収したCOを有効に再利用することができる。
【0053】
また、本実施形態1では、流量調整部としての電磁弁30は、反応液温度取得部を構成する温度センサ12により取得される反応液の温度が予め設定された第1の基準温度以上となるように、第1のCO含有ガスG1及び第2のCO含有ガスG2の流量を調整して、CO回収装置10においてNaCOを生成するように構成されている。これにより、目的生成物をNaCOとする場合にその生成効率を向上することができる。
【0054】
また、本実施形態1では、流量調整部としての電磁弁30は、反応液温度取得部を構成する温度センサ12により取得される温度が予め設定された第1の基準温度より小さくなるように、第1のCO含有ガス及び第2のCO含有ガスの流量を調整して、CO回収装置10においてNaHCOとNaCOとの混合物を生成するように構成されている。これにより、目的生成物をNaHCOとNaCOとの混合物であるセスキ炭酸ソーダとする場合にその生成効率を向上することができる。
【0055】
また、本実施形態1では、第1ガス流路21を形成する配管は、第2ガス流路22を形成する配管よりも低い断熱性を有しており、高温の排ガスの一部は第1ガス流路21を流通するのに伴って冷却されて第2のCO含有ガスG2よりも低温である第1のCO含有ガスG1となる。これにより、高温の排ガスから低温の第1のCO含有ガスG1と高温の第2のCO含有ガスG2を生成するために消費される電力は、実質的にエアポンプ50の消費電力のみとなるため、消費電力を抑制することができ、全体としてのCO回収効率を向上することができる。また、低温の第1のCO含有ガスG1と高温の第2のCO含有ガスG2を生成するために排ガスを冷却する冷却装置や加熱する加熱装置を要しないため、装置構成をシンプルにすることができるとともに低コスト化を図ることができる。
【0056】
また、本実施形態1では、反応槽11内の反応液のpHを取得するpH取得部としてのpHセンサ13をさらに備え、CO回収システム1は、pHセンサ13により取得されたpHが予め設定された目標値に到達したときに、第1のCO含有ガスG1及び第2のCO含有ガスG2の供給を停止するように構成されている。これにより、上記目標値を目的生成物に応じて設定することで、目的生成物の生成効率を向上することができる。
【0057】
以上のごとく、上記態様によれば、CO排出抑制効果に優れたCO回収システム1を提供することができる。
【0058】
(実施形態2)
CO回収システムの実施形態2について、図5図7を用いて説明する。上述の実施形態1では、流量調整部を一つの電磁弁30により構成して第1状態と第2状態を切り替え可能としたが、本実施形態2では、これに替えて、図5に示すように、流量調整部としての電磁弁30が低温側電磁弁301と高温側電磁弁302とを含む。低温側電磁弁301は第1ガス流路21に接続され、第1ガス流路21における第1のCO含有ガスG1の流量を調整可能に構成されている。また、高温側電磁弁302は第2ガス流路22に接続され、第2ガス流路22における第2のCO含有ガスG2の流量を調整可能に構成されている。
【0059】
そして、図6に示すように、低温側電磁弁301及び高温側電磁弁302の下流側には、低温側電磁弁301を通過した第1のCO含有ガスG1と、高温側電磁弁302を通過した第2のCO含有ガスG2とを混合してCO回収装置10側に供給するガス混合部32を備える。ガス混合部32により混合されたガスは配管31に供給される。なお、低温側電磁弁301及び高温側電磁弁302の一方を閉塞して、他方のみを開放した状態では、ガス混合部32は低温側電磁弁301及び高温側電磁弁302のうち開放された方を通過したCO含有ガスのみを配管31に供給することができる。
【0060】
本実施形態2におけるその他の構成は、実施形態1の場合と同等であって、実施形態1の場合と同一の符号を付してその説明を省略する。
【0061】
11-1.実施形態2のCO回収システム1における第1の使用態様
次に、本実施形態2のCO回収システム1における第1の使用態様を、図6に示すフロー図を用いて以下に説明する。なお、上述の実施形態1における図3に示すフロー図の場合と同等のステップについては、実施形態1の場合と同一の符号を付してその説明を省略する。
【0062】
本実施形態2のCO回収システム1における第1の使用態様では、CO回収装置10における目的生成物をNaCOとNaHCOとの混合物(セスキ炭酸ソーダ)とする。
【0063】
まず、図6に示すステップS1及びステップS2は、実施形態1の場合と同様とする。その後、ステップS30に進み、低温側電磁弁301及び高温側電磁弁302により、第1ガス流路21と第2ガス流路22の両方を開放する。これにより、ガス混合部32において、第1のCO含有ガスG1と第2のCO含有ガスG2とが混合されて水分除去フィルタ40に供給されることとなる。
【0064】
次いで、図6に示すステップS4~ステップS11は、実施形態1の場合と同様とする。なお、ステップS10において、取得温度が第2の基準温度である25℃以下でないと判定された場合は、実施形態1の場合のようにステップS4に戻らず、本実施形態2では、ステップS12に進む。ステップS12では、低温側電磁弁301及び高温側電磁弁302により、第1ガス流路21と第2ガス流路22の両方を開放して、電磁弁30を第3状態とする。これにより、ガス混合部32において、第1のCO含有ガスG1と第2のCO含有ガスG2とが混合されて水分除去フィルタ40に供給され、反応液の温度が25℃~50℃の範囲内に維持されるように制御される。ステップS12の後はステップS7に進み、実施形態1の場合と同様に以降のステップを実施する。
【0065】
11-2.実施形態2のCO回収システム1における第2の使用態様
次に、本実施形態2のCO回収システム1における第2の使用態様を、図7に示すフロー図を用いて説明する。第2の使用態様では、CO回収装置10における目的生成物をNaCOとする。図7に示す本実施形態2の第2の使用態様では、上述の実施形態1における図4に示すフロー図におけるステップS3に替えて上述のステップS30を行い。その他のステップは図4に示す実施形態1の場合と同一であり、実施形態1の場合と同一の符号を付してその説明を省略する。
【0066】
12.実施形態2のCO回収システム1における作用効果
本実施形態2では、第1のCO含有ガスG1は、CO排出設備100から排出された高温の排ガスの一部を冷却してなる低温の排ガスであり、第2のCO含有ガスG2は、CO排出設備100から排出された高温の排ガスの他の一部であり、第1のCO含有ガスG1と第2のCO含有ガスG2とを混合してCO回収装置10に供給するガス混合部32をさらに有する。これにより、CO回収装置10に供給されるガスの温度を所望の温度としやすくなり、反応槽11における反応の安定化を一層図ることができる。なお、本実施形態2においても実施形態1における作用効果と同等の作用効果を奏することができる。
【0067】
本発明は上記実施形態及び変形形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の実施形態に適用することが可能である。
【符号の説明】
【0068】
1:CO回収システム、10:CO回収装置、11:反応槽、12:温度センサ(反応液温度取得部)、13:pHセンサ(pH取得部)、21:第1ガス流路、22:第2ガス流路、22a:断熱材、30:電磁弁、301:低温側電磁弁、302:高温側電磁弁、32:ガス混合部、35:電磁弁制御部、40:水分除去フィルタ、50:エアポンプ、55:ポンプ制御部、60:フィルタ、70:ドレンコック、75:回収容器、
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7