(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024020021
(43)【公開日】2024-02-14
(54)【発明の名称】機器状態報知装置、機器状態報知方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G05B 23/02 20060101AFI20240206BHJP
【FI】
G05B23/02 302R
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022122872
(22)【出願日】2022-08-01
(71)【出願人】
【識別番号】517091447
【氏名又は名称】株式会社ハイテックシステム
(71)【出願人】
【識別番号】000241957
【氏名又は名称】北海道電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100134706
【弁理士】
【氏名又は名称】中山 俊彦
(74)【代理人】
【識別番号】100151161
【弁理士】
【氏名又は名称】熊野 彩
(72)【発明者】
【氏名】山口 晃昌
(72)【発明者】
【氏名】金田 龍貴
(72)【発明者】
【氏名】高峰 尚
(72)【発明者】
【氏名】宮森 直樹
【テーマコード(参考)】
3C223
【Fターム(参考)】
3C223AA01
3C223AA04
3C223AA05
3C223AA06
3C223BA03
3C223CC02
3C223DD03
3C223FF02
3C223FF12
3C223FF13
3C223FF22
3C223FF26
3C223FF33
3C223FF34
3C223FF35
3C223HH03
3C223HH08
3C223HH29
(57)【要約】
【課題】設備を構成する機器のうち、第1ステータスと第2ステータスとの状態を繰り返し、いずれかの状態を一定時間保持するように動作する機器について、その機器の状態を簡易に把握して報知する機器状態報知装置、機器状態報知方法及びプログラムを提供する。
【解決手段】機器状態報知装置21の取得部41は、複数の機器19の各第1ステータスの第1継続時間を取得する。第1抽出部44は、履歴第1継続時間の標準偏差が第1閾値以下である機器19を第1対象機器として抽出する。相関データ記憶部49は、履歴第1継続時間と機器19の異常確率との関係を示す第1相関データを記憶する。異常演算部52は、第1対象機器の第1相関データに基づいて、新たに取得された第1継続時間に対応する異常確率を求める。画像生成部53は、異常確率を示す画像を生成して表示部54に表示させる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1ステータスと第2ステータスとのいずれかの状態をとる複数の機器の前記状態を示すステータス情報を取得するとともに、第1ステータスの第1継続時間を取得する取得部と、
過去に取得された前記第1継続時間である履歴第1継続時間の標準偏差が予め設定された第1閾値以下である機器を、第1対象機器として抽出する第1抽出部と、
前記履歴第1継続時間に基づいて生成され、前記履歴第1継続時間と前記機器の異常の程度である異常確率との関係を示す第1相関データを記憶する相関データ記憶部と、
前記第1対象機器として抽出された機器の第1継続時間が前記取得部により新たに取得された場合に、前記相関データ記憶部から前記第1対象機器について生成された前記第1相関データを特定し、特定した前記第1相関データに基づいて、新たに取得された前記第1継続時間に対応する前記異常確率を求める異常演算部と、
前記異常演算部で求められた前記異常確率を示す画像を生成して表示部に表示させる画像生成部と
を備える機器状態報知装置。
【請求項2】
前記第1相関データは、前記複数の機器で構成される設備の稼働状況を分けたフェーズ毎に生成され、
前記第1抽出部は、フェーズ毎に、前記第1対象機器の抽出を行う請求項1に記載の機器状態報知装置。
【請求項3】
前記取得部は、前記第2ステータスの第2継続時間を取得し、
過去に取得された前記第2継続時間である履歴第2継続時間の標準偏差が予め設定された第2閾値以下である機器を、第2対象機器として抽出する第2抽出部をさらに備え、
前記相関データ記憶部は、前記履歴第2継続時間に基づいて生成され、前記履歴第2継続時間と前記機器の異常の程度である異常確率との関係を示す第2相関データを記憶し、
前記異常演算部は、前記第2対象機器として抽出された機器の第2継続時間が前記取得部により新たに取得された場合に、前記相関データ記憶部から前記第2対象機器について生成された前記第2相関データを特定し、特定した前記第2相関データに基づいて、新たに取得された前記第2継続時間に対応する前記異常確率を求める請求項1または2に記載の機器状態報知装置。
【請求項4】
前記第2相関データは、前記複数の機器で構成される設備の少なくとも一部の稼働状況を分けたフェーズ毎に生成され、
前記第2抽出部は、フェーズ毎に、前記第2対象機器の抽出を行う請求項3に記載の機器状態報知装置。
【請求項5】
第1ステータスと第2ステータスとのいずれかの状態をとる複数の機器の前記状態を示すステータス情報を取得するとともに、第1ステータスの第1継続時間を取得する取得ステップと、
過去に取得された前記第1継続時間である履歴第1継続時間の標準偏差が予め設定した第1閾値以下である機器を、第1対象機器として抽出する第1抽出ステップと、
前記履歴第1継続時間に基づいて生成され、前記履歴第1継続時間と前記機器の異常の程度である異常確率との関係を示す第1相関データを記憶する相関データ記憶ステップと、
前記第1対象機器として抽出された機器の第1継続時間が前記取得ステップにより新たに取得された場合に、前記第1対象機器について生成された前記第1相関データを特定し、特定した前記第1相関データに基づいて、新たに取得された前記第1継続時間に対応する前記異常確率を求める異常演算ステップと、
前記異常演算ステップで求められた前記異常確率を示す画像を生成して表示部に表示させる画像生成ステップと
を有する機器状態報知方法。
【請求項6】
第1ステータスと第2ステータスとのいずれかの状態をとる複数の機器の前記状態を示すステータス情報を取得するとともに、第1ステータスの第1継続時間を取得する取得ステップと、
過去に取得された前記第1継続時間である履歴第1継続時間の標準偏差が予め設定された第1閾値以下である機器を、第1対象機器として抽出する第1抽出ステップと、
前記履歴第1継続時間に基づいて生成され、前記履歴第1継続時間と前記機器の異常の程度である異常確率との関係を示す第1相関データを記憶する相関データ記憶ステップと、
前記第1対象機器として抽出された機器の第1継続時間が前記取得ステップにより新たに取得された場合に、前記第1対象機器について生成された前記第1相関データを特定し、特定した前記第1相関データに基づいて、新たに取得された前記第1継続時間に対応する前記異常確率を求める異常演算ステップと、
前記異常演算ステップで求められた前記異常確率を示す画像を生成して表示部に表示させる画像生成ステップと
をコンピュータに実行させる機器状態報知プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機器状態報知装置、機器状態報知方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
水力発電設備をはじめとする各種発電設備や、石油化学製品の製造設備等の多くの設備は、機器類で構成されており、これら機器の動作によって稼働し、また、稼働条件が変えられる。したがって、機器に異常が発生すると、設備全体の稼働に影響する。
【0003】
そこで、例えば特許文献1には、パターン認識手法を用いて機械システムに係る異常診断を行う異常診断装置が開示されている。この異常診断装置は、診断対象データ取得手段、データセット記憶手段、学習データ抽出手段、学習情報作成手段、及び診断手段を備える。診断対象データ取得手段は、複数項目のパラメータ値を含むデータセットである診断対象データを機械システムから取得する。データセット記憶手段は、診断対象データに対応した複数項目のパラメータ値を有する複数のデータセットを保持する。学習データ抽出手段は、データセット記憶手段に保持された複数のデータセットから、診断対象データに含まれる外部状況に係るパラメータ値と、予め保持されている抽出条件を決定するための情報であって診断対象データに含まれる特定のパラメータ値を用いて抽出方法が指定される情報である抽出条件情報とに基づいて、パターン認識手法に用いられる学習情報の作成に用いるデータセットである学習データを抽出する。学習情報作成手段は、学習データから学習情報を作成し、診断手段は学習情報に基づいて診断対象データが異常であるか否かを判断する。外部状況によって変化するパラメータ値とは、外部の装置等によって指定された値や外部環境に係る情報を示す値であり、特許文献1には、機械システムの周辺の温度や、特定の機器の出力設定値等が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の異常診断装置は、上記の通り、外部状況によって変化するパラメータ値を予め特定しておかねばならず、さらに、それらパラメータ値を取得しておく必要がある。ところが、システムあるいは設備全体について異常を診断するまでもなく、システムあるいは設備を構成する機器に関する異常を診断すれば足りる場合もある。また、機器によっては、例えばオンオフの切り替えを繰り返すのみの動作で、かつ、第1ステータスとしてのオンまたは第2ステータスとしてのオフの状態を一定時間保持するという単純な動作を行う機器もある。このように動作する機器について、機器毎に、外部状況によって変化するパラメータ値を特定し、パラメータ値を取得しておくことは、簡易とは言えない。
【0006】
そこで、本発明は、設備を構成する機器のうち、第1ステータスと第2ステータスとの状態を繰り返し、いずれかの状態を一定時間保持するように動作する機器について、その機器の状態を簡易に把握して報知する機器状態報知装置、機器状態報知方法及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の機器状態報知装置は、取得部と、第1抽出部と、相関データ記憶部と、異常演算部と、画像生成部とを備える。取得部は、第1ステータスと第2ステータスとのいずれかの状態をとる複数の機器の上記状態を示すステータス情報を取得するとともに、第1ステータスの第1継続時間を取得する。第1抽出部は、過去に取得された第1継続時間である履歴第1継続時間の標準偏差が予め設定された第1閾値以下である機器を、第1対象機器として抽出する。相関データ記憶部は、履歴第1継続時間に基づいて生成され、履歴第1継続時間と機器の異常の程度である異常確率との関係を示す第1相関データを記憶する。異常演算部は、第1対象機器として抽出された機器の第1継続時間が取得部により新たに取得された場合に、相関データ記憶部から第1対象機器について生成された第1相関データを特定し、特定した第1相関データに基づいて、新たに取得された第1継続時間に対応する異常確率を求める。画像生成部は、異常演算部で求められた異常確率を示す画像を生成して表示部に表示させる。
【0008】
第1相関データは、複数の機器で構成される設備の稼働状況を分けたフェーズ毎に生成され、第1抽出部は、フェーズ毎に、第1対象機器の抽出を行うことが好ましい。
【0009】
取得部は、第2ステータスの第2継続時間を取得し、機器状態報知装置は、過去に取得された第2継続時間である履歴第2継続時間の標準偏差が予め設定された第2閾値以下である機器を、第2対象機器として抽出する第2抽出部をさらに備えることが好ましい。相関データ記憶部は、履歴第2継続時間に基づいて生成され、履歴第2継続時間と機器の異常の程度である異常確率との関係を示す第2相関データを記憶する。異常演算部は、第2対象機器として抽出された機器の第2継続時間が取得部により新たに取得された場合に、相関データ記憶部から第2対象機器について生成された第2相関データを特定し、特定した第2相関データに基づいて、新たに取得された第2継続時間に対応する異常確率を求める。
【0010】
第2相関データは、複数の機器で構成される設備の少なくとも一部の稼働状況を分けたフェーズ毎に生成され、第2抽出部は、フェーズ毎に、第2対象機器の抽出を行うことが好ましい。
【0011】
本発明の機器状態報知方法は、取得ステップと、第1抽出ステップと、相関データ記憶ステップと、異常演算ステップと、画像生成ステップとを有する。取得ステップは、第1ステータスと第2ステータスとのいずれかの状態をとる複数の機器の上記状態を示すステータス情報を取得するとともに、第1ステータスの第1継続時間を取得する。第1抽出ステップは、過去に取得された第1継続時間である履歴第1継続時間の標準偏差が予め設定された第1閾値以下である機器を、第1対象機器として抽出する。相関データ記憶ステップは、履歴第1継続時間に基づいて生成され、履歴第1継続時間と機器の異常の程度である異常確率との関係を示す第1相関データを記憶する。異常演算ステップは、第1対象機器として抽出された機器の第1継続時間が取得ステップにより新たに取得された場合に、第1対象機器について生成された第1相関データを特定し、特定した第1相関データに基づいて、新たに取得された第1継続時間に対応する異常確率を求める。画像生成ステップは、異常演算ステップで求められた異常確率を示す画像を生成して表示部に表示させる。
【0012】
本発明の機器状態報知プログラムは、上記の取得ステップと第1抽出ステップと相関データ記憶ステップと異常演算ステップと画像生成ステップとを、コンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、第1ステータスと第2ステータスとの状態を繰り返し、いずれかの状態を一定時間保持するように動作する機器の状態を簡易に把握して報知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図3】各機器について第1継続時間及び第2継続時間を示す時系列データの説明図である。
【
図4】履歴第1継続時間の分布についての説明図である。
【
図5】履歴第2継続時間の分布についての説明図である。
【
図6】履歴記憶部の記憶態様の一例を示す説明図である。
【
図7】相関データの生成処理及び異常確率を求める処理の説明図である。
【
図8】表示部に表示される画像の一例の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1に示す発電プラント10は、本発明の一実施形態である。発電プラント10は、例えば、発電及び送電を行う発電システム11と、発電システム11に接続された機器状態報知システム(以下、単に「報知システム」と称する)12とを備える。発電システム11は、設備の一例である発電設備15と、発電設備15の各部を統括的に制御するコントローラ16とを備える。コントローラ16は、発電設備15のシーケンス制御を行う。すなわち、コントローラ16はシーケンスを発電設備15に実行させて、発電設備15の運転及び停止を含む稼働を制御する。
【0016】
発電設備15は、この例では水力発電を行う設備となっており、発電機18A、給水装置18B、排水装置18C、水車18D、送電装置18E等の複数の装置で構成されている。発電機18Aは水車18Dに接続されて発電を行い、送電装置18Eは発電機18Aの発電により得られた電力を発電プラント10の外部へ送り出す。給水装置18Bは、発電機18Aの例えば固定子巻線や各種軸受等、高温となる各所を冷却するための冷却水を供給する。排水装置18Cは、発電機18Aや水車18D等の他装置からの水(漏水等)を集め、発電設備15の外部へ排出する。
【0017】
発電設備15は、上記の各装置内の各部や、装置と装置との接続部等に、各種の機器を有する。例えば、発電機18Aは給気ダンパや排気ダンパ等、給水装置18Bは給水ポンプ等の機器を有する。排水装置18Cは排水ポンプ等、水車18Dはランナーやガイドベーン、回転軸の軸受が浸漬されている潤滑油の油面高さを検出する油面高さ検出器、潤滑油の温度を検出する温度検出器等の機器を有する。送電装置18Eは並列用遮断器等の機器を有する。また、発電機18Aと給水装置18Bとの接続部にはバルブや冷却水の流量を検出する流量計等、発電機18Aと排水装置18Cとの接続部にはバルブや水の汚染の有無を検出する汚染検出器等の機器が設けられている。このように、発電設備15には、多くの機器が備えられているが、
図1においては、図の煩雑化を避けるために、発電設備15及び上記の各装置を構成する機器群のうち、発電機18Aと給水装置18Bと排水装置18Cとにのみ機器19を図示している。
【0018】
コントローラ16は、発電設備15の各部を統括的に制御することで、発電設備15にシーケンスを実行させる等して、発電設備15の一部である発電機18Aの運転及び停止を含む稼働を制御する。コントローラ16は、発電設備15の各機器19の状態を示すステータス情報を各機器19から取得し、取得したステータス情報に基づき発電設備15に対してフィードバック制御を行う場合もある。
【0019】
ステータス情報としては、機器19の状態を二値化した二値化情報であるステータス情報と、二値化情報ではないステータス情報とがあり、ステータス情報は対応する機器19と関連付けて生成される。二値化情報は、第1ステータスと第2ステータスとの2つの状態(ステータス)が切り替わる機器19の第1ステータスと第2ステータスとのいずれかを示すものである。二値化情報としては、オンとオフとを示す情報、開閉の開状態と閉状態とを示す情報等がある。例えば、給気口に設けられ風量調節する給気ダンパのオン(動作中)とオフ(停止中)とを示す情報、開閉するバルブの開状態と閉状態とを示す情報、排気口に設けられて開閉する排気ダンパの開状態と閉状態とを示す情報等である。二値化情報ではないステータス情報は、バルブの開度や、前述の潤滑油の油面の高さ、潤滑油の温度等のように取り得る値が連続し、状態に応じた値を示すものである。これらのステータス情報は、機器19の状態が切り替わる動作毎、または、潤滑油の油面の高さや温度等の検出を機器が行った検出毎に生成され、コントローラ16に出力される。例えば、排水ポンプがオフからオンへ状態が切り替わるように動作した場合には、排水ポンプがオンへ切り替わったことを示す動作信号がステータス情報として生成され、コントローラ16に出力される。また、油面高さ検出器が潤滑油の油面の高さを検出した場合には、検出した油面高さを示す高さ情報がステータス情報として生成され、コントローラ16に出力される。
【0020】
コントローラ16は、ステータス情報を取得すると、取得したステータス情報から二値化情報であるステータス情報を特定し、特定したステータス情報を報知システム12の機器状態報知装置(以下、報知装置と称する)21に出力する。
【0021】
コントローラ16は、さらに、発電設備15のシーケンス制御の中で、発電機18Aに運転フェーズから停止フェーズへの切り替え、停止フェーズから運転フェーズへの切り替えを指示する指示情報を出力する。コントローラ16は、これらの指示情報の発電機18Aへの出力とともに、発電機18Aが運転フェーズから停止フェーズへ、または停止フェーズから運転フェーズへフェーズが切り替わったことを示すフェーズ情報を、報知装置21に出力することがより好ましく、本例でもそのようにしている。フェーズは、発電機18Aの稼働状況を分けることで設定したものである。本例では稼働状況を運転フェーズと停止フェーズとの2フェーズに分けているが、フェーズの数は3以上でもよい。例えば、運転フェーズを、発電機18Aにおける発電が安定した状態である運転安定フェーズと、発電しているものの停止フェーズから切り替わった初期(発電初期)または停止フェーズに切り替わる終期(発電終期)の不安定な状態である運転不安定フェーズとにし、稼働状況を3フェーズに分けてもよい。なお、コントローラ16は、発電設備15から取得したステータス情報のうち、二値化情報である特定のステータス情報をフェーズ情報とみなして報知装置21に出力してもよい。
【0022】
この例では、二値化情報であるステータス情報は、コントローラ16を介して発電設備15から報知装置21へ出力されるが、発電設備15の各機器から、コントローラ16を介さずに、報知装置21へ直接出力されてもよい。
【0023】
この例では、フェーズ情報は、コントローラ16から報知装置21へ出力されるが、この態様に限られない。例えば、コントローラ16は、ステータス情報を取得すると、過去の直近のフェーズ情報を当該ステータス情報に関連付けて報知装置21に出力してもよい。
【0024】
この例の発電プラント10は、報知装置21と複数の端末22a~22cとで構成された報知システム12を備えるが、複数の端末22a~22cは報知装置21の一部とされてもよい。すなわち、発電プラント10は、発電システム11と、端末22a~22cを有する報知装置とで構成されていてもよい。なお、以下の説明において端末22a~22cを区別しない場合には、端末22と記載する。
【0025】
報知装置21は、発電システム11から入力されたステータス情報に基づき、発電設備15の機器19の状態を報知するためのものである。報知装置21は、ステータス情報とフェーズ情報との両方に基づいて機器19の状態を報知することがより好ましく、本例でもそのようにしている。
【0026】
この例の報知装置21と複数の端末22a~22cの各々とは通信可能に構成されており、報知装置21は異常確率を端末22に送信することで、端末22において報知するようになっている。報知装置21から端末22への送信は、例えば、端末22から報知装置21に対する送信指示を報知装置21が取得した場合に、その取得に応答して行う。この例の端末22は、液晶ディスプレイなどの表示部(図示無し)を備える例えばパーソナルコンピュータ(以下、PCと称する)であり、PCとしては、デスクトップ型PC,モバイルPC(タブレット端末,スマートフォン等を含む)などが挙げられる。なお、報知システム12が備える端末22の数は本例の3個に限られない。
【0027】
報知装置21は、第1ステータスと第2ステータスとのいずれかの状態をとる機器19のうち、第1ステータスの継続時間が一定である機器19の異常の程度である異常確率、すなわち、当該機器19において異常が起きている可能性の確率を報知する。例えば、第1ステータスと第2ステータスとを繰り返す機器19が複数ある場合に、これらの機器19の中から、第1ステータスの継続時間が一定である機器19を特定して抽出し、抽出した機器19の異常確率を求めて報知する。報知装置21は、さらに、第2ステータスの継続時間が一定である機器19の異常確率を報知することが好ましく、本例でもそのようにしている。
【0028】
図2において報知装置21は、入力部40と、取得部41と、履歴記憶部43と、第1抽出部44及び第2抽出部45と、相関データ生成部48と、相関データ記憶部49と、異常演算部52と、画像生成部53と、表示部54とを備える。第1抽出部44と第2抽出部45とは抽出モジュール57を構成しているが、抽出モジュール57を必ずしも構成しなくてもよい。
【0029】
入力部40は、相関データ生成部48、抽出モジュール57の第1抽出部44及び第2抽出部45に所定の処理を実行させる実行指示の入力操作のためのものである。入力部40は、例えばキーボードやマウスなどの入力機器であり、この例では報知装置21の一部としているが、報知装置21の外部機器として報知装置21に接続するものであってもよい。なお、第1抽出部44、第2抽出部45、相関データ生成部48の各処理条件及びその処理のタイミングをプログラムにおいて設定してもよく、その場合には入力部40は無くてもよい。
【0030】
取得部41はコントローラ16に接続され、コントローラ16から、フェーズ情報と、複数の機器19のそれぞれについてのステータス情報とを取得する。前述の通り、コントローラ16からは第1ステータスと第2ステータスとを繰り返す複数の機器19のそれぞれについてステータスが切り替わる毎にステータス情報が入力される。そのため、取得部41は、各機器19について第1ステータスを示すステータス情報と第2ステータス情報を示すステータス情報とを繰り返し取得する。
【0031】
取得部41は、ステータス情報に示されているステータスの継続時間をカウントするタイマ41aを有する。取得部41は、コントローラ16から第1ステータスを示すステータス情報の取得に応答して、タイマ41aによるカウントをオンにする。取得部41は、コントローラ16から、同じ機器19についての第2ステータスを示すステータス情報を取得すると、この取得に応答して、タイマ41aによりカウントされたタイマ値を第1ステータスの継続時間(以下、第1継続時間と称する)として取得する。このように、取得部41は、第1ステータスを示すステータス情報の後に第2ステータスを示すステータス情報を取得すると、ステータス情報に示される機器19についての第1継続時間を取得する。取得部41は、取得した第1継続時間を、過去の第1継続時間である履歴第1継続時間として、機器19と関連付けて履歴記憶部43に記憶させる。本例では、過去の直近に取得したフェーズ情報をさらに関連付けて履歴記憶部43に記憶させている。
【0032】
本例の報知装置21は、さらに、第2ステータスの継続時間(以下、第2継続時間と称する)が一定である機器19の異常確率を報知する。そのために、取得部41は、第2ステータスを示すステータス情報を取得した場合も同様に、タイマ41aのカウントにより、第2継続時間を取得して、第2継続時間を、過去の第2継続時間である履歴第2継続時間として、機器及びフェーズ情報と関連付けて履歴記憶部43に記憶させる。したがって、第2継続時間が一定である機器19の異常確率を報知しない場合には、第2継続時間を取得する必要はなく、履歴記憶部43への履歴第2継続時間の記憶も不要である。以上のように、取得部41は、複数の機器19のそれぞれについてのステータス情報を繰り返し取得し、各機器19についての履歴第1継続時間と履歴第2継続時間とを繰り返し取得して履歴記憶部43に記憶させる。
【0033】
取得部41は、取得した第1継続時間を、この第1継続時間を示した機器19と関連付けて異常演算部52に出力する。本例のように第2継続時間が一定の機器19について異常確率を報知する場合には、取得部41はさらに、取得した第2継続時間を異常演算部52に出力する。
【0034】
履歴記憶部43は、履歴第1継続時間を機器及びフェーズ情報と関連付けて記憶する。第1ステータスと第2ステータスとを繰り返すひとつの機器19について、履歴第1継続時間は取得部41により複数回繰り返して取得されるので、履歴記憶部43は、複数の履歴第1継続時間を機器19毎に記憶する。本例の報知装置21は、さらに、第2ステータスの継続時間が一定である機器19の異常確率を報知する。そのため、履歴記憶部43は、履歴第2継続時間も同様に、機器19及びフェーズ情報と関連付けて記憶する。このように、履歴記憶部43は、機器19毎に、複数の履歴第1継続時間と、複数の履歴第2継続時間とを記憶する。
【0035】
第1抽出部44は、第1継続時間に関連した異常確率を報知する第1対象機器を抽出するためのものである。第1抽出部44には、入力部40での入力操作に基づく処理の実行指示が入力され、第1抽出部44はこの入力に応答して、履歴記憶部43に記憶されている機器19毎に、複数の履歴第1継続時間を読み出し、それらの標準偏差を求める。
【0036】
本例のようにフェーズ毎に後述の第1相関データを生成する場合には、第1抽出部44は、一の機器19においてフェーズ毎に標準偏差を求める。すなわち、互いに同じ機器19及びフェーズに関連付けられている複数の履歴第1継続時間を読み出し、標準偏差を求める。このように、本例においては、運転フェーズと停止フェーズとの各標準偏差を、機器19毎に求めている。後述の第1相関データをフェーズ毎に生成しない場合には、運転フェーズの標準偏差と停止フェーズの標準偏差とを別個に求める必要はない。
【0037】
第1抽出部44は、求めた標準偏差と予め設定された第1閾値とを比較して、標準偏差が第1閾値以下であるか否かを判定し、第1閾値以下である場合には、当該機器19を第1継続時間が一定である機器19として特定し、第1対象機器として抽出する。このように、第1抽出部44は、履歴第1継続時間の標準偏差が第1閾値以下である機器19を、第1対象機器として抽出する。第1抽出部44は、第1対象機器として抽出した機器19に、第1対象機器であることを示す情報を関連付けて履歴記憶部43に記憶させる。本例のように、標準偏差をフェーズ毎に求める場合には、さらに、フェーズも関連付けて履歴記憶部43に記憶させる。第1閾値は、目的とする抽出の精度と許容度合とのバランス等に応じて設定されれば特に限定されず、本例では500としている。
【0038】
第2抽出部45は、第2継続時間に関連した異常確率を報知する第2対象機器を抽出するためのものである。第2抽出部45には、第1抽出部44と同様に、入力部40から処理の実行指示が入力され、第2抽出部45はこの入力に応答して、履歴記憶部43から機器19毎に複数の履歴第2継続時間を読み出し、それらの標準偏差を求める。
【0039】
本例のようにフェーズ毎に後述の第2相関データを生成する場合には、第2抽出部45は、第1抽出部44と同様に、一の機器19においてフェーズ毎に標準偏差を求める。すなわち、互いに同じ機器19及びフェーズに関連付けられている複数の履歴第2継続時間を読み出し、標準偏差を求める。このように、本例においては、運転フェーズと停止フェーズとの各標準偏差を、機器19毎に求めている。後述の第2相関データをフェーズ毎に生成しない場合には、運転フェーズの標準偏差と停止フェーズの標準偏差とを別個に求める必要はない。
【0040】
第2抽出部45は、求めた標準偏差と予め設定された第2閾値とを比較して標準偏差が第2閾値以下であるか否かを判定する。第2閾値以下である場合には、当該機器19を第2継続時間が一定である機器19として特定し、第2対象機器として抽出する。このように、第2抽出部45は、履歴第2継続時間の標準偏差が第2閾値以下である機器19を、第2対象機器として抽出する。第2抽出部45は、第2対象機器として抽出した機器19に、第2対象機器であることを示す情報を関連付けて履歴記憶部43に記憶させる。本例のように、標準偏差をフェーズ毎に求める場合には、さらに、フェーズも関連付けて履歴記憶部43に記憶させる。第2閾値は、目的とする抽出の精度と許容度合とのバランス等に応じて設定されれば特に限定されず、本例では500としている。第1閾値と第2閾値とは本例のように互いに同じでもよいが、互いに異なっていてもよい。
【0041】
相関データ生成部48は、第1対象機器として抽出された機器19の履歴第1継続時間と当該機器19の異常の程度である異常確率との関係を示す第1相関データを生成するためのものである。相関データ生成部48は、入力部40からの処理の実行指示が入力されると、この入力に応答して、第1対象機器として抽出された機器19の履歴第1継続時間を履歴記憶部43から読み出し、当該機器19の異常の程度である異常確率との関係を示す第1相関データを生成する。第1相関データは、複数の機器19の機器19毎に生成する。
【0042】
本例では機器19の異常確率をフェーズ毎に求めるので、第1相関データをフェーズ毎に生成する。そこで、相関データ生成部48は、履歴記憶部43から履歴第1継続時間を読み出す際には、互いに同じフェーズに関連付けられている複数の履歴第1継続時間を読み出して第1相関データを生成する。したがって、本例の相関データ生成部48は、一の機器19について、運転フェーズと停止フェーズとの各第1相関データを生成する。フェーズを考慮することなく異常確率を求める場合には、フェーズ毎の第1相関データをそれぞれ生成する必要はない。
【0043】
この例では、さらに、第2継続時間が一定である機器19の異常確率を報知する。そのため、相関データ生成部48は、第2対象機器として抽出された機器19の履歴第2継続時間と当該機器19の異常の程度である異常確率との関係を示す第2相関データを生成するためのものでもある。相関データ生成部48は、入力部40からの処理の実行指示が入力されると、この入力に応答して、第2対象機器として抽出された機器19の履歴第2継続時間を履歴記憶部43から読み出し、当該機器19の異常の程度である異常確率との関係を示す第2相関データを生成する。第2相関データは、複数の機器19の機器19毎に生成する。このように、相関データ生成部48は、第1対象機器として抽出された機器19の複数の履歴第1継続時間に基づいて第1相関データを、第2対象機器として抽出された機器19の複数の履歴第2継続時間に基づいて第2相関データを、それぞれ機器19毎に生成する。相関データ生成部48は、生成した第1相関データを対応する機器19と関連付けて、また生成した第2相関データについても同様に、対応する機器19と関連付けて、相関データ記憶部49に記憶させる。相関データ生成部48の処理の詳細は、別の図面を用いて後述する。
【0044】
相関データ記憶部49は、第1対象機器として抽出された機器19と、フェーズと、当該機器19の第1相関データとを関連付けて記憶する。この例の相関データ記憶部49は、さらに、第2対象機器として抽出された機器19と、フェーズと、当該機器19の第2相関データとを関連付けて記憶する。フェーズ毎に異常確率を求めない場合には、フェーズとの関連付けは必要ではない。
【0045】
異常演算部52には、取得部41から、第1継続時間と、この第1継続時間を示した機器19と、フェーズとが情報として入力される。異常演算部52はこの入力に応答して、相関データ記憶部49を読み込み、当該機器19及び当該フェーズに関連付けられた第1相関データを特定する。特定した場合には、その第1相関データに基づいて、取得部41から入力された第1継続時間に対応する異常確率を求めて、画像生成部53に出力する。特定しなかった場合には、当該機器19の当該第1継続時間についての処理を終了する。
【0046】
この例の異常演算部52には、取得部41から第2継続時間とこの第2継続時間を示した機器19及びフェーズとが情報として入力される。異常演算部52はこの入力に応答して、相関データ記憶部49を読み込み、当該機器19及び当該フェーズに関連付けられた第2相関データを特定する。特定した場合には、その第2相関データに基づいて、取得部41から入力された第2継続時間に対応する異常確率を求め、画像生成部53に出力する。特定しなかった場合には、当該機器19の当該第2継続時間についての処理を終了する。
【0047】
なお、異常演算部52は、上記のように取得部41からの入力に応答して処理を行ってもよいが、この態様に限られない。例えば、入力部40からの処理の実行開始の入力に応答して処理を行う、入力部40での入力操作により処理の実行開始タイミングを入力して当該実行開始タイミングに基づいて処理を行う、プログラムにおいて設定された実行開始タイミングで処理を行うなど、いずれのタイミングで処理を行ってもよい。異常演算部52の処理の詳細は、別の図面を用いて後述する。
【0048】
画像生成部53は、異常演算部52で求めた異常確率を表す画像を生成し、その画像を示す画像データを表示部54に出力することで表示部54に画像を表示させる。表示部54は、例えば液晶ディスプレイなどの公知の表示機器である。
【0049】
第1抽出部44及び第2抽出部45で行う抽出処理について、
図3~
図5を参照しながら説明する。
図3に示す例においては、横軸が時間(time)であり、第1ステータスを「オン」、「開」とし、第2ステータスを「オフ」、「閉」とし、機器19(
図1、
図2参照)である機器A~機器Eの各時系列データは運転フェーズのものとする。機器Aは取得された複数の履歴第1継続時間taとしてのオンの継続時間が互いに概ね等しく、機器B及び機器Cも同様であるが、これに対して、機器Dと機器Eとの各々は、取得された複数の履歴第1継続時間taに大きなばらつきを有する。第2継続時間tbについては、機器Cは取得された複数の第2継続時間tbが互いに概ね等しく、機器Eも同様であるが、これに対して、機器Aと機器Bと機器Dとの各々は、取得された複数の第2継続時間tbが互いに大きく異なる。このように、時系列データを示す履歴第1継続時間ta及び履歴第2継続時間tbは機器19毎に異なる。
【0050】
オンの継続時間が互いに概ね等しく、オフの継続時間にばらつきが大きい機器Aについて第1継続時間ta及び第2継続時間tbの各分布は以下のようになる。すなわち、履歴第1継続時間taは
図4に示すように狭い分布を示すが、履歴第2継続時間tbは
図5に示すように広い分布を示す。第1抽出部44(
図2参照)は、
図4に示す複数の履歴第1継続時間taの標準偏差を求める。ここで、標準偏差が第1閾値以下であるとする。このときに、第1抽出部44は、機器Aを、運転フェーズにおける第1対象機器として抽出する。また、第2抽出部45(
図2参照)は、
図5に示す複数の履歴第2継続時間tbの標準偏差を求める。ここで、この標準偏差が第2閾値よりも大きいとする。このときに、第2抽出部45は、運転フェーズにおける第2対象機器として機器Aを抽出しない。機器B~Eについても第1抽出部44及び第2抽出部45は同様に運転フェーズにおける抽出処理を行う。
【0051】
このように抽出処理が行われた場合の履歴記憶部43(
図2参照)は、
図6に示すように、機器19(
図1、
図2参照)と、フェーズと、履歴第1継続時間taと、履歴第2継続時間tbと、第1対象機器及び第2対象機器の該当性とを関連付けて記憶する。例えば機器Aは、運転フェーズにおいて、履歴第1継続時間ta1、ta2、ta3、・・・を示し、第1対象機器に該当することが
図6においては「〇」として示されている。機器Aは、運転フェーズにおいて履歴第2継続時間tb1、tb2、tb3、・・・を示し、第2対象機器に該当することを示す「〇」が
図6においては示されていないので第2対象機器として抽出されず、該当しない。
【0052】
相関データ生成部48(
図2参照)の処理について、
図7を参照しながら説明する。第1相関データと第2相関データとの生成処理は同様であるので、ここでは第1相関データの生成処理について説明し、第2相関データの生成処理については説明を略す。相関データ生成部48は、第1対象機器に抽出された機器19(
図1、
図2参照)と、その機器19の特定のフェーズにおける履歴第1継続時間とを特定し、それらの履歴第1継続時間に基づいて基準値を算出する。このようにして、相関データ生成部48は、機器19の各々について、特定のフェーズについて履歴記憶部43に記憶されている履歴第1継続時間に基づいて基準値を算出する。基準値は、履歴第1継続時間から例えば統計的に導出した値であれば、算出の手法は限定されない。基準値は、機器19の状態が異常である確率を示す異常確率に対応付けた値である。
【0053】
相関データ生成部48は、取得した履歴第1継続時間を学習して、基準値を算出する学習演算部であることが好ましい。本例でも学習演算部を相関データ生成部48に用いている。本例の相関データ生成部48は、外れ値を除去した履歴第1継続時間から、ノンパラメトリックな手法を用いて履歴第1継続時間の分布を作成し、データの統計的な情報から基準値を算出している。外れ値は取り除かなくてもよいが、取り除くことにより機器19に異常が起きる可能性の確率をより正確なものとして報知することができるので好ましい。外れ値の除去では、One-Class SVMを2回用いて外れ値を取り除いている。履歴第1継続時間の過度に大きな外れ値を、One-Class SVMの1度目の適用で取り除き、小さくて見分けにくい外れ値を、One-Class SVMの2度目の適用で取り除くことが好ましい。
【0054】
外れ値を取り除いた履歴第1継続時間taを学習データとし、履歴第1継続時間taから、ノンパラメトリックな密度推定の手法であるカーネル密度推定を用いて履歴第1継続時間taの分布を求める(
図7の(A)参照)。この求めた分布は、正常に動作している状態の履歴第1継続時間の分布である。この分布から正常な履歴第1継続時間で頻繁に観測される可能性の高い経過時間α
1と、α
1から少し外れた経過時間α
2を求める。例えば、α
1は履歴第1継続時間の分布が65%所属する履歴第1継続時間とし、α
2は、履歴第1継続時間の分布の標準偏差sに予め設定した係数を乗じた値を、α
1に加算することにより求めることが好ましく、本例でも、α
1に120×(履歴第1継続時間の分布の標準偏差s)を加えた値として求めている。α
1は履歴第1継続時間の分布が所定の割合で所属する継続時間とすればよく、本例のような上述の65%に限定されないが、小さくとも50%で設定することが、求められる異常確率の妥当性を確保する上でより好ましい。
【0055】
本例では、上記の履歴第1継続時間の分布から得られた継続時間α
1、α
2と分布の標準偏差sから、異常確率モデルの生成に用いる基準値として、第1基準値VA(
図7(A)及び(B)参照)と、第1基準値VAよりも高い異常確率に対応付けた第2基準値VB(
図7(A)及び(B)参照)とをそれぞれ下記式(1),(2)で算出している。そして、第1基準値VAでとる異常確率y
1を例えば2%とし、第2基準値VBでとる異常確率y
2を例えば80%と設定する。第1基準値VAでとる異常確率y
1、第2基準値でとる異常確率y
2は、本例に限定されない。各基準値でとる異常確率は、生成したい確率モデルの性能に基づいて適宜設定してよい。例えば、基準値付近において余裕を持って確率算出をさせたい場合には、異常確率を低めに設定し、また、基準値付近で厳しく確率算出をさせたい場合には、異常確率を高めに設定するとよい。
VA=α
1 ・・・(1)
VB={(α
2-α
1)/s}+α
1 ・・・(2)
【0056】
相関データ記憶部49は、基準値と機器19とフェーズと第1対象機器及び第2対象機器とを関連付けて、基準値情報として記憶する。
【0057】
異常演算部52は、取得部41から第1継続時間とともに入力された機器19及びフェーズと同じ機器及びフェーズを相関データ記憶部49の中から特定し、その機器19及びフェーズと関連付けられ、第1対象機器に該当するか否かを判定して、該当する場合にはその基準値を特定する。異常演算部52は、取得した第1継続時間と、相関データ記憶部49から特定した基準値との相違度を算出し、画像生成部53に出力する。
【0058】
相違度は、下記の手法を用いて求めている。まず、第1基準値VAと第1基準値VAでとる異常確率y1、第2基準値VBと第2基準値VBでとる異常確率y2のそれぞれを以下の式(3)のシグモイド関数に対応させることにより、定数A,Bを算出する。そして、算出定数A,Bにより以下の式(3)のシグモイド関数から生成された異常確率モデルPMに対し、異常値(動作タイミング時間)xから異常確率y(ただし、0.0≦y≦1.0)を算出する。すなわち定数A,Bを求めることにより確率モデルが生成される。
y=1/(1+eAx+B) ・・・・(3)
【0059】
求めた確率モデルをグラフ化し(
図7の(B)参照)、このグラフ(
図7の(B))の横軸に、取得された機器19の当該フェーズにおける第1継続時間Taを上記式(3)のx値として採る(
図7の(C)参照)ことで、取得された機器19の異常確率Pnを上記式(3)のyとして縦軸に表すことができる。なお、
図7(C)においては、取得された第1継続時間TaをTnとして示してある。表された異常確率Pnは、基準値における異常確率との差異が現れたものであるから、この異常確率を相違度とすることができる。なお、本例では異常確率を、単位を%とする百分率で示しているが、下限を0(ゼロ)、上限を1とする等、百分率以外の数値で表してもよい。
【0060】
報知装置21は、コンピュータで構成されており、コンピュータに所定のプログラムを実行させることにより、コンピュータは上記の各部として機能する。プログラムは、機器状態報知プログラムであり、取得ステップと、第1抽出ステップと、記憶ステップと、相関データ記憶ステップと、異常演算ステップと、画像生成ステップとをコンピュータに実行させる。取得ステップは、第1ステータスと第2ステータスとのいずれかの状態をとる複数の機器19の状態を示すステータス情報を取得するとともに、第1ステータスの第1継続時間を取得する。第1抽出ステップは、過去に取得された第1継続時間である履歴第1継続時間の標準偏差が予め設定した第1閾値以下である機器19を、第1対象機器として抽出する。相関データ記憶ステップは、履歴第1継続時間に基づいて生成され、履歴第1継続時間と機器の異常の程度である異常確率との関係を示す第1相関データを記憶する。異常演算ステップは、第1対象機器として抽出された機器19の第1継続時間が取得部41により新たに取得された場合に、相関データ記憶部から第1対象機器について生成された第1相関データを特定し、特定した第1相関データに基づいて、新たに取得された第1継続時間に対応する異常確率を求める。画像生成ステップは、異常演算部で求められた異常確率を示す画像を生成して表示部に表示させる。
【0061】
上記構成の作用を説明する。発電プラント10の発電システム11は、コントローラ16の制御により発電設備15の運転及び停止が繰り返し行われる。発電設備15は、コントローラ16によりシーケンスを実行して起動し、運転フェーズにおいて発電及び送電を行う。また、同様にコントローラ16によりシーケンスを実行して停止フェーズとなり、発電及び送電を停止する。コントローラ16は、フェーズ情報と、発電設備15で動作している機器19の状態について、ステータス情報を、報知装置21の取得部41に出力する。
【0062】
取得部41は、コントローラ16を介して発電設備15から特定の機器19についてのステータス情報を取得すると、ステータス情報に第1ステータスが示されている場合には、当該機器19についてその後(次回)、第2ステータスを示すステータス情報を取得したときに、当該機器19の第1継続時間を取得する。そして、取得部41は、第1継続時間を履歴第1継続時間として、当該機器19及びフェーズ情報と関連付けて履歴記憶部43に記憶させる。取得部41は、取得したステータス情報に第2ステータス情報が示されている場合には、同様に、当該機器19についてその後(次回)、第1ステータスを示すステータス情報を取得したときに、当該機器19の第2継続時間を取得する。そして、取得部41は、第2継続時間を履歴第2継続時間として、当該機器19及びフェーズ情報と関連付けて履歴記憶部43に記憶させる。取得部41は、また、取得した第1継続時間と第2継続時間とをそれぞれ異常演算部52に出力する。
【0063】
履歴記憶部43には、機器19毎に、複数の履歴第1継続時間と、複数の履歴第2継続時間とがフェーズ情報と関連付けて記憶される。
【0064】
第1抽出部44は、入力部40からの実行指示の入力に応答して、履歴記憶部43から、機器19毎に複数の第1継続時間を読み出して標準偏差を求め、この標準偏差が第1閾値以下である機器19を第1対象機器として抽出する。そして、履歴記憶部43において当該機器19に第1対象機器である情報とフェーズとを関連付けて記憶させる。第2抽出部45も同様に、入力部40からの実行指示の入力に応答して、履歴記憶部43から、機器19毎に複数の第2継続時間を読み出して標準偏差を求め、この標準偏差が第2閾値以下である機器19を第2対象機器として抽出する。そして、履歴記憶部43において当該機器19に第2対象機器である情報とフェーズとを関連付けて記憶させる。第1対象機器及び第2対象機器は、第1閾値及び第2閾値を基準として標準偏差に許容幅をもって抽出されるから、第1継続時間、第2継続時間に多少のずれを示した機器19であっても、一定の継続時間で第1ステータス、第2ステータスが継続したものとされる。このため、第1相関データ、第2相関データが生成される機器19にもれが抑えられるので、異常確率を求められない機器19が生じることが防止される。
【0065】
相関データ生成部48は、入力部40からの実行指示の入力に応答して、第1対象機器として抽出された機器19毎に第1相関データを生成し、相関データ記憶部49に記憶する。生成する第1相関データは、運転フェーズにおける第1相関データと、停止フェーズにおける第1相関データとの2つである。相関データ生成部48は、同様に、入力部40からの実行指示の入力に応答して、第2対象機器として抽出された機器19毎に、履歴第2継続時間と当該機器19の異常確率との関係を示す第2相関データを生成し、相関データ記憶部49に記憶する。生成する第2相関データは、運転フェーズにおける第2相関データと、停止フェーズにおける第2相関データとの2つである。以上のように、第1相関データ及び第2相関データは、設備の稼働状況を分けたフェーズ毎にそれぞれ生成される。このため、フェーズによって異なる動作をすることにより、示す状態が変化する機器19であっても、フェーズに応じた相関データが生成され、異常確率の精度がより高いものとして得られる。また、第1相関データ及び第2相関データの生成に取得する情報は、第1継続時間及び第2継続時間のみでよく、これら各継続時間を求めるために機器19から取得する情報は第1ステータスと第2ステータスとの切り替わりのタイミングを示すステータス情報だけでよい。このように、報知に関わる情報の収集作業を含めて、機器19の状態の把握が簡易である。
【0066】
異常演算部52は、機器19の第1継続時間が取得部41により取得された場合に、相関データ記憶部49において、当該機器19について生成された第1相関データを特定し、特定した第1相関データに基づいて、入力された第1継続時間に対応する異常確率を求め、画像生成部53に出力する。異常演算部52は、機器19の第2継続時間が取得部41により取得された場合にも同様に、相関データ記憶部49において、当該機器19について生成された第2相関データを特定し、特定した第2相関データに基づいて、入力された第2継続時間に対応する異常確率を求め、画像生成部53に出力する。第1継続時間及び第2継続時間は時間情報なので正確性に優れ、そのため、第1相関データ及び第2相関データも精度が高いものとして生成される。異常演算部52は、このような第1相関データ及び第2相関データを用いて異常確率を求めるので、機器19の状態が正確に把握される。
【0067】
画像生成部53は、異常演算部52から異常確率が入力されると、その異常確率を表す画像を生成して表示部54に出力する。表示部54は入力された画像データに基づく画像を表示する。これにより異常確率が報知される。例えば
図8に示すように、機器19の所定のフェーズ、ここでは一例として運転フェーズにおける第1継続時間Taの相違度である異常確率Pnを含む画像G1を生成し、表示部54に表示させる。これにより、取得された第1継続時間Tnを示した機器19の運転フェーズにおける異常確率Pnが報知される。
図8に示す例では、
図7に示す異常確率モデルPMのグラフ上に、取得された第1継続時間Tnのプロットを重ね、求めた異常確率PnをグラフPMとともに表示する画像G1を表示部54に表示させる例であるが、表示させる画像はこの例に限られない。例えば、求めた異常確率Pnの数値のみを画像G1として表示させてもよいし、数値に加えて、または代わりに、色の明暗や色彩で異常確率Pnを示してもよい。以上のように、第1ステータスと第2ステータスとの状態を繰り返し、いずれかの状態を一定時間保持するように動作する機器19の状態が、簡易に把握され報知される。
【0068】
本実施形態では、機器19を備える設備として発電設備15を用いている。しかし、設備はこれに限らず、第1ステータスと第2ステータスとを切り替えて繰り返し採りうる機器を備える設備であれば、他の設備であってもよい。
【符号の説明】
【0069】
15 発電設備
19 機器
21 報知装置
41 取得部
43 履歴記憶部
44 第1抽出部
45 第2抽出部
48 相関データ生成部
49 相関データ記憶部
52 異常演算部
53 画像生成部
54 表示部