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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024002003
(43)【公開日】2024-01-11
(54)【発明の名称】メモリデバイス及びメモリシステム
(51)【国際特許分類】
   G11C 13/00 20060101AFI20231228BHJP
   G11C 11/16 20060101ALI20231228BHJP
【FI】
G11C13/00 400H
G11C11/16 230
【審査請求】未請求
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022100915
(22)【出願日】2022-06-23
(71)【出願人】
【識別番号】318010018
【氏名又は名称】キオクシア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】穂谷 克彦
(57)【要約】
【課題】メモリデバイスの動作特性を向上する。
【解決手段】実施形態のメモリデバイスは、第1のメモリセルを含む第1のバンクBK<i>と、第2のメモリセルを含む第2のバンクBK<j>と、データを一時的に記憶するバッファ回路と、を含み、第1のメモリセルに対する読み出しシーケンス時において、第1のバンクBK<i>は、第1のメモリセルから第1の信号をセンスし、第1の信号がセンスされた後、第1のメモリセルをリセット状態に設定し、リセット状態の前記第1のメモリセルから第2の信号をセンスし、第1の信号と前記第2の信号とに基づいて、第1のメモリセルが記憶する第1のデータを確定し、第1のデータを、バッファ回路に格納し、第2のバンクBK<j>は、バッファ回路内の第1のデータを、第2のメモリセルに書き込む。
【選択図】 図11
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のメモリセルを含む第1のバンクと、
第2のメモリセルを含む第2のバンクと、
データを一時的に記憶するバッファ回路と、
を具備し、
前記第1のメモリセルに対する読み出しシーケンス時において、
前記第1のバンクは、
前記第1のメモリセルから第1の信号をセンスし、
前記第1の信号がセンスされた後、前記第1のメモリセルをリセット状態に設定し、
前記リセット状態の前記第1のメモリセルから第2の信号をセンスし、
前記第1の信号と前記第2の信号とに基づいて、前記第1のメモリセルが記憶する第1のデータを確定し、
前記第1のデータを、前記バッファ回路に格納し、
前記第2のバンクは、
前記バッファ回路内の前記第1のデータを、前記第2のメモリセルに書き込む、
メモリデバイス。
【請求項2】
前記第1のデータをコントローラに出力するインターフェイス回路を、
さらに具備し、
前記第2のバンクは、前記インターフェイス回路が前記バッファ回路内の前記第1のデータを前記コントローラへ出力する前に、前記第1のデータを前記第2のメモリセルに書き込む、
請求項1に記載のメモリデバイス。
【請求項3】
前記第1のバンクに関する第1のアドレスと、前記読み出しシーケンスの実行を示す第1のコマンドと、前記第2のバンクに関する第2のアドレスと、を受けるインターフェイス回路を、
さらに具備する請求項1に記載のメモリデバイス。
【請求項4】
前記インターフェイス回路は、前記第2のアドレスの受信の後、前記第1のデータの出力を示す第2のコマンドを受け、
前記インターフェイス回路は、前記第2のコマンドに応じて、前記バッファ回路内の前記第1のデータをコントローラに出力する、
請求項3に記載のメモリデバイス。
【請求項5】
前記インターフェイス回路は、前記第1のアドレスを受ける前に、ウェアレベリング処理の実行を示す第2のコマンドを受ける、
請求項3に記載のメモリデバイス。
【請求項6】
前記第2のバンクは、前記第1のバンクが前記第1のメモリセルを前記リセット状態に設定するのと並行して、前記第2のメモリセルを前記リセット状態に設定する、
請求項1に記載のメモリデバイス。
【請求項7】
前記第2のメモリセルに対する前記第1のデータの書き込みは、ウェアレベリング処理及びライトバック動作である、
請求項1に記載のメモリデバイス。
【請求項8】
前記第1のメモリセルは、前記読み出しシーケンスの完了の後、前記リセット状態を維持する、
請求項1に記載のメモリデバイス。
【請求項9】
前記第1のメモリセルは、磁気抵抗効果素子と、前記磁気抵抗効果素子に接続されたスイッチング素子と、を含む、
請求項1に記載のメモリデバイス。
【請求項10】
複数の第1のメモリセルを含む第1のバンクと、複数の第2のメモリセルを含む第2のバンクと、データを一時的に記憶するバッファ回路と、を含むメモリデバイスと、
前記メモリデバイスに対して読み出しシーケンスを命令するコントローラと、
を具備し、
前記コントローラは、前記第1のバンクに対する前記読み出しシーケンスを前記メモリデバイスに命令する時、前記第1のバンクに関する第1のアドレスと、前記読み出しシーケンスを命令する第1のコマンドと、前記第2のバンクに関する第2のアドレスと、を前記メモリデバイスに送り、
前記メモリデバイスは、
前記第1のコマンドに応じて、第1のデータを、前記複数の第1のメモリセルのうち前記第1のアドレスに対応する1つ以上のメモリセルから前記バッファ回路に送り、
前記第1のデータを前記バッファ回路から前記コントローラに送る前に、前記バッファ回路内の前記第1のデータを、前記複数の第2のメモリセルのうち前記第2のアドレスに対応する1つ以上のメモリセルに書き込む、
メモリシステム。
【請求項11】
前記第1のバンクは、前記読み出しシーケンス時において、
前記第1のメモリセルから第1の信号をセンスし、
前記第1の信号がセンスされた後、前記第1のメモリセルをリセット状態に設定し、
前記リセット状態の前記第1のメモリセルから第2の信号をセンスし、
前記第1の信号と前記第2の信号とに基づいて、前記第1のメモリセルの前記第1のデータを判別し、
前記第1のデータを、前記バッファ回路に格納する、
請求項10に記載のメモリシステム。
【請求項12】
前記第2のバンクは、前記第1のバンクが前記第1のメモリセルを前記リセット状態に設定するのと並行して、前記第2のメモリセルを前記リセット状態に設定する、
請求項11に記載のメモリシステム。
【請求項13】
前記コントローラは、前記第2のアドレスを前記メモリデバイスに送った後、前記第1のデータの転送を命令する第2のコマンドを前記メモリデバイスに送り、
前記メモリデバイスは、前記第2のコマンドに応じて、前記バッファ回路内の前記第1のデータを、前記コントローラに送る、
請求項10に記載のメモリシステム。
【請求項14】
前記コントローラは、前記第1のアドレスを送る前に、ウェアレベリング処理の実行を命令する第3のコマンドを前記メモリデバイスに送り、
前記メモリデバイスは、前記第3のコマンドに応じて、前記第1のデータを、前記第2のアドレスに対応する前記1つ以上のメモリセルに書き込む、
請求項10に記載のメモリシステム。
【請求項15】
前記第2のアドレスに対応する前記1つ以上のメモリセルに対する前記第1のデータの書き込みは、ウェアレベリング処理及び自己参照読み出しにおけるライトバック動作である、
請求項10に記載のメモリシステム。
【請求項16】
前記第1のアドレスに対する前記1つ以上のメモリセルは、前記読み出しシーケンスの完了の後、前記第1のデータと異なる第2のデータを記憶する、
請求項10に記載のメモリシステム。
【請求項17】
前記コントローラは、ウェアレベリングのための第1の情報を記憶するメモリを、さらに具備し、
前記コントローラは、前記第1の情報に基づいて、前記第2のアドレスを生成する、
請求項10に記載のメモリシステム。
【請求項18】
前記コントローラは、前記第1のコマンドに応じて、データの転送の準備が完了したことを示す第1の信号を、前記コントローラと通信するホストデバイスに送る、
請求項10に記載のメモリシステム。
【請求項19】
前記複数の第1のメモリセルのそれぞれは、磁気抵抗効果素子と、前記磁気抵抗効果素子に接続されたスイッチング素子と、を含む、
請求項10に記載のメモリシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、メモリデバイス及びメモリシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
磁気抵抗効果素子のような可変抵抗素子をメモリ素子に用いたメモリデバイスが、知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-51902号公報
【特許文献2】特開2022-50016号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
メモリデバイスの動作特性を向上する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態のメモリデバイスは、第1のメモリセルを含む第1のバンクと、第2のメモリセルを含む第2のバンクと、データを一時的に記憶するバッファ回路と、を含み、前記第1のメモリセルに対する読み出しシーケンス時において、前記第1のバンクは、前記第1のメモリセルから第1の信号をセンスし、前記第1の信号がセンスされた後、前記第1のメモリセルをリセット状態に設定し、前記リセット状態の前記第1のメモリセルから第2の信号をセンスし、前記第1の信号と前記第2の信号とに基づいて、前記第1のメモリセルが記憶する第1のデータを確定し、前記第1のデータを、前記バッファ回路に格納し、前記第2のバンクは、前記バッファ回路内の前記第1のデータを、前記第2のメモリセルに書き込む。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】実施形態のメモリシステムの構成例を示すブロック図。
図2】実施形態のメモリデバイスの構成例を示すレイアウト図。
図3】実施形態のメモリデバイスの構成例を示すブロック図。
図4】実施形態のメモリデバイスの構成例を示す回路図。
図5】実施形態のメモリデバイスの構造例を示す鳥瞰図。
図6】実施形態のメモリデバイスの構造例を示す断面図。
図7】実施形態のメモリデバイスの構造例を示す断面図。
図8】実施形態のメモリデバイスの動作例を示すフローチャート。
図9】実施形態のメモリデバイスの動作例を示す図。
図10】実施形態のメモリシステム及びメモリデバイスの動作例を示すシーケンス図。
図11】実施形態のメモリデバイスの動作例を示すタイミングチャート。
図12】実施形態のメモリデバイスの動作例を示す図。
図13】実施形態のメモリデバイスの変形例を示す図。
図14】実施形態のメモリデバイスの比較例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、図面を参照しながら、本実施形態について詳細に説明する。以下の説明において、同一の機能及び構成を有する要素については、同一符号を付す。
また、以下の各実施形態において、末尾に区別化のための数字/英字を伴った参照符号を付された構成要素(例えば、回路、配線、各種の電圧及び信号など)が、相互に区別されなくとも良い場合、末尾の数字/英字が省略された記載(参照符号)が用いられる。
【0008】
[実施形態]
図1乃至図14を参照して、実施形態のメモリデバイス及びメモリシステムについて、説明する。
【0009】
(1)構成例
図1乃至図7を参照して、実施形態のメモリデバイス及びメモリシステムの構成例について、説明する。
【0010】
(1-1)全体構成
図1は、本実施形態のメモリシステムを説明するための模式図である。
【0011】
図1に示されるように、本実施形態のメモリシステム(以下では、メモリモジュールともよばれる)MMは、ホストデバイス9に電気的に接続される。
【0012】
本実施形態のメモリデバイス1は、メモリモジュールMM内において、コントローラ(メモリコントローラ又は単にコントローラともよばれる)2に電気的に接続される。
メモリデバイス1は、データを記憶する。
【0013】
コントローラ2は、データの書き込み、データの読み出し、及びデータの消去を、メモリデバイス1に命令できる。コントローラ2は、メモリデバイス1内のメモリ空間(アドレス空間)を管理する。例えば、コントローラ2は、メモリデバイス1のメモリ空間内の複数のアドレスを管理するための情報(以下では、管理テーブルとよばれる)TBLを保持する。例えば、コントローラ2は、管理テーブルTBLを記憶するメモリ200を含む。
【0014】
例えば、コントローラ2は、メモリデバイス1は、コマンドに応じた各アドレスの書き込み回数(及び読み出し回数)を、モニタしている。コントローラ2は、モニタの結果を、管理テーブルTBLに反映する。
【0015】
ホストデバイス9は、メモリモジュールMMに、メモリデバイス1に対するデータの書き込み、メモリデバイス1からのデータの読み出し、及びメモリデバイス1内のデータの消去などを、要求及び命令できる。
【0016】
例えば、メモリモジュールMMは、ホストデバイス9との間でデータ等の通信を行う。
【0017】
ホストデバイス9は、メモリモジュールMMに要求する動作に応じて、コマンドアドレス信号CAをコントローラ2に送る。
コントローラ2は、コマンドアドレス信号CAに応じて、ホストデバイス9から要求された動作(実行すべき動作)及び動作の対象(アドレス)を認識できる。
【0018】
メディアコントローラ2は、レスポンス信号RSPを、ホストデバイス9に送る。レスポンス信号RSPは、メモリモジュールMM及びメモリデバイス1の動作の状態を示す。例えば、読み出しシーケンスにおいて、ホストデバイス9は、レスポンス信号RSPに応じて、メモリモジュールMMからのデータの読み出しを要求できる。
【0019】
データDQ1が、コントローラ2とホストデバイス9との間において、転送される。データDQ1は、1ビットの信号の集合である。
【0020】
例えば、誤り検出及び訂正に関する各種の信号(情報)が、データDQ1と共に、コントローラ2とホストデバイス9との間において、転送される。
【0021】
コントローラ2は、ホストデバイス9からのコマンドアドレス信号CAに基づいて、コマンドCMD及びアドレスADRを生成する。コントローラ2は、コマンドCMD及びアドレスADRを、メモリデバイス1に送る。
【0022】
メモリデバイス1は、コマンドCMDに基づく動作を、アドレスADRに示される動作対象に対して実行する。
【0023】
データDQ2が、メモリデバイス1とコントローラ2との間において、転送される。データDQ2は、1ビットの信号の集合である。
【0024】
本実施形態のメモリデバイス1は、不揮発性ランダムアクセスメモリである。例えば、本実施形態のメモリデバイス1は、MRAM(Magnetoresistive RAM)である。
【0025】
(1-2)メモリデバイス1の構成例
図2及び図3を参照して、本実施形態のメモリデバイス1の内部構成について、説明する。
【0026】
図2は、本実施形態のメモリデバイス1のチップの内部レイアウトを示す平面図である。
【0027】
図2に示されるように、本実施形態のメモリデバイス1は、複数のバンクBK(BK<0>,BK<1>,・・・,BK<15>)、周辺回路PERI及び入出力領域IOを含む。
【0028】
各バンクBKは、データを記憶する。複数のバンクBKのそれぞれは、各バンクBKが互いに独立に動作を実行可能なように、構成される。
各バンクBKは、配線領域IAを挟む2つの領域R1,R2に分割されて、チップ内に設けられている。各バンクBKの2つの領域R1,R2は、配線領域IA内の配線を介して、電気的に接続されている。
【0029】
以下において、各バンクBKは、コア回路ともよばれる。複数のバンクBKの集合は、メモリコアともよばれる。
【0030】
配線領域IAは、複数のバンクBKと周辺回路PERIとを接続する複数の配線を含む。
【0031】
周辺回路PERIは、バンクBKの動作を制御するための複数の回路を含む。例えば、周辺回路PERIは、バンクバッファ回路17を含む。
【0032】
バンクバッファ回路17は、バンクBKに入力されるデータ、及び、バンクBKから出力されるデータを、一時的に記憶する。バンクバッファ回路17は、バンクBKの近傍に設けられている。バンクバッファ回路17は、複数のバンクBKに共通に接続されている。バンクバッファ回路17は、バンクBKに対応するように分割された2つの回路領域Ra,Rbを含む。
【0033】
入出力領域IOは、メモリデバイス1がコントローラ2と通信するための複数の端子P1,P2,P3,P4,P5,P6を含む。
【0034】
複数の端子P1,P2,P3,P4,P5,P6のそれぞれに、対応する信号CMD,ADR,DQ2,CLK及び電圧VDD,VSSが、供給される。
【0035】
図3は、本実施形態のメモリデバイス1の内部構成の一例を示すブロック図である。
【0036】
図3に示されるように、メモリデバイス1は、複数のバンクBKの動作を制御するための周辺回路(CMOS回路)PERIとして、インターフェイス回路11、ロウデコーダ12、カラムデコーダ13、電圧生成回路15、クロック生成回路16、バンクバッファ回路17、及び制御回路19などを含む。
【0037】
複数のバンクBK(BK<0>,BK<1>,・・・,BK<m-1>)のそれぞれは、メモリセルアレイ100を少なくとも含む。mは、2以上の整数である。例えば、mは、16である。メモリセルアレイ100は、複数のメモリセルMC、複数のワード線WL及び複数のビット線BLを含む。メモリセルMCは、ワード線WL及びビット線BLに接続されている。メモリセルMCは、1ビット以上のデータを記憶できる。
バンク10及びメモリセルアレイ100の内部構成の詳細は、後述される。
【0038】
インターフェイス回路11は、メモリデバイス1とコントローラ2との間のインターフェイスとして機能する。
【0039】
インターフェイス回路11は、コマンドCMD及びアドレスADRを、コントローラ2から受ける。インターフェイス回路11は、コマンドCMDを制御回路19に送る。インターフェイス回路11は、アドレスADRを、ロウデコーダ12及びカラムデコーダ13に送る。
【0040】
インターフェイス回路11は、メモリセルアレイ100に書き込まれるデータを、コントローラ2から受ける。インターフェイス回路11は、メモリセルアレイ100から読み出されたデータを、コントローラ2に送る。
以下において、メモリセルアレイ100に書き込まれるデータは、書き込みデータとよばれる。メモリセルアレイ100から読み出されたデータは、読み出しデータとよばれる。
【0041】
ロウデコーダ12は、インターフェイス回路11からのアドレスADRを受ける。ロウデコーダ12は、アドレスADRに含まれるロウアドレスを、デコードする。ロウデコーダ12は、ロウアドレスのデコード結果を示すデコード信号を、バンクBKに送る。
【0042】
カラムデコーダ13は、インターフェイス回路11からのアドレスADRを受ける。カラムデコーダ13は、アドレスADRに含まれるカラムアドレスを、デコードする。カラムデコーダ13は、カラムアドレスのデコード結果を示すデコード信号を、バンクBKに送る。
【0043】
電圧生成回路15は、メモリデバイス1の動作シーケンスの実行のために用いられる各種の電圧を、生成する。電圧生成回路15は、生成した電圧を、対応するバンクBK及び各回路11,12,13,16,17,19に供給する。
【0044】
クロック生成回路16は、コントローラ2(又は、ホストデバイス9)からの外部クロックCLKを受ける。
【0045】
クロック生成回路16は、外部クロックCLKに基づいて、メモリデバイス1の内部で用いられる内部クロックCLKiを生成する。クロック生成回路16は、生成された内部クロックCLKiを、制御回路19及び/又は各回路11,12,13,17に送る。
【0046】
バンクバッファ回路17は、各バンクBKから読み出されたデータ及び各バンクBKに書き込まれるデータを、一時的に記憶できる。例えば、バンクバッファ回路17は、少なくとも1ページ分のデータサイズのデータを記憶できる。例えば、バンクバッファ回路17は、複数のバッファ171を含む。各バッファ171は、1ビットのデータを記憶できる。バンクバッファ回路17は、バッファ回路、又は、ページバッファ回路ともよばれる。
【0047】
制御回路(シーケンサ、ステートマシン又は内部コントローラともよばれる)19は、メモリデバイス1内の各回路BK,11,12,13,15,16,17の動作を制御する。制御回路19は、インターフェイス回路11からのコマンドCMDをデコードできる。制御回路19は、コマンドCMDに示される動作シーケンスを実行するために、内部クロックCLKiに同期して、各回路BK,11,12,13,15,16,17を動作させる。
【0048】
(1-3)バンクの構成例
図4乃至図7を参照して、本実施形態のメモリデバイス1のバンクBKの構成例について、説明する。
【0049】
図4は、本実施形態のメモリデバイス1における、或るバンクBKの内部構成を示すブロック図である。
【0050】
図4に示されるように、バンクBKは、メモリセルアレイ100、ロウ制御回路110、カラム制御回路120、ドライバ回路130、及びセンスアンプ回路140などを含む。
【0051】
複数のメモリセルMCは、メモリセルアレイ100内においてマトリクス状に配置されている。各メモリセルMCは、1つのビット線BLと1つのワード線WLとの間に設けられている。各メモリセルMCは、複数のビット線BL(BL<0>,BL<1>,・・・,BL<p-1>)のうち対応する1つ、及び、複数のワード線WL(WL<0>、WL<1>,・・・,WL<q-1>)のうち対応する1つ、に接続されている。p及びqは、2以上の整数である。
【0052】
各メモリセルMCは、メモリ素子20及びセレクタ30を含む。
【0053】
メモリ素子20は、例えば、可変抵抗素子である。メモリ素子20の抵抗状態は、供給された電圧(又は電流)によって、複数の抵抗状態(例えば、低抵抗状態及び高抵抗状態)のうちいずれか1つの抵抗状態に変わる。メモリ素子20は、その素子20の抵抗状態とデータ(例えば、“0”データ及び“1”データ)との関連付けによって、データを記憶できる。
【0054】
セレクタ30は、メモリセルMCの選択素子(スイチッング素子)として機能する。セレクタ30は、対応するメモリ素子20に対するデータの書き込み時及び対応するメモリ素子20からのデータの読み出し時において、メモリ素子20に対する電流(又は電圧)の供給を制御する機能を有する。例えば、セレクタ30は、メモリ素子20に対して、ビット線BLからワード線WLに向かう方向、及び、ワード線WLからビット線BLに向かう方向に、電流を流すことができる。
【0055】
例えば、セレクタ30は、2端子型のスイッチング素子である。以下において、セレクタ30は、スイッチング素子30とよばれる。スイッチング素子30の2端子間に印加される電圧がスイッチング素子30の閾値電圧未満である場合、スイッチング素子30は、オフ状態(高抵抗状態、電気的に非導通状態)に設定される。スイッチング素子30の2端子間に印加される電圧がスイッチング素子30の閾値電圧以上である場合、スイッチング素子30は、オン状態(低抵抗状態、電気的に導通状態)に設定される。2端子型のスイッチング素子30は、印加される電圧がどちらの極性(例えば、正の極性及び負の極性)を有していても、上述の機能を有していてもよい。
【0056】
スイッチング素子30は、メモリセルMC内に印加される電圧の極性(メモリセルMC内を流れる電流の方向)に依らずに、メモリセルMCに印加される電圧の大きさに応じて、メモリセルMC内に電流を流すか流さないかを切り替えることが可能である。
【0057】
メモリセルアレイ100の構造は、後述される。
【0058】
ロウ制御回路110は、メモリセルアレイ100のロウを制御する。ロウ制御回路110は、ロウデコーダ12からのデコード信号に基づいて、メモリセルアレイ100内のロウ(ワード線WL)を選択する。ロウ制御回路110は、選択されたワード線WL及び非選択のワード線WLを制御できる。
例えば、ロウ制御回路110は、ロウスイッチ回路(ワード線スイッチ回路)を含む。
【0059】
カラム制御回路120は、メモリセルアレイ100のカラムを制御する。カラム制御回路120は、カラムデコーダ13からのデコード信号に基づいて、メモリセルアレイ100内のカラム(ビット線BL)を選択する。カラム制御回路120は、選択されたビット線BL及び非選択のビット線BLを制御できる。
例えば、カラム制御回路120は、カラムスイッチ回路(ビット線スイッチ回路)を含む。
【0060】
ドライバ回路130は、電圧生成回路15から供給された電圧又は供給された電圧を用いて生成された電流を、ロウ制御回路110及びカラム制御回路120を介して、メモリセルアレイ100に供給する。
【0061】
書き込みシーケンス時、ドライバ回路130は、データの書き込みのための書き込み電流(又は書き込み電圧)を、ロウ制御回路110及びカラム制御回路120を介して、メモリセルアレイ100内の選択されたアドレスADRに対応する1つ以上のメモリセルMCに供給する。
例えば、ドライバ回路130は、書き込み電流(又は書き込み電圧)を生成するための書き込みドライバ(図示せず)を含む。書き込みドライバは、電流源(又は電圧源)及び電流シンク(又はグランド端子)を有する。
【0062】
読み出しシーケンス時、ドライバ回路130は、データの読み出しのための読み出し電流(又は読み出し電圧)を、ロウ制御回路110及びカラム制御回路120を介して、メモリセルアレイ100内の選択されたアドレスADRに対応する1つ以上のメモリセルMCに、供給する。
例えば、ドライバ回路130は、読み出し電流(又は読み出し電圧)を生成するための読み出しドライバ(図示せず)を含む。読み出しドライバは、電流源(又は電圧源)及び電流シンク(又はグランド端子)を有する。
【0063】
ドライバ回路130は、非選択電圧を、ロウ制御回路110及びカラム制御回路120を介して、メモリセルアレイ100内の非選択のワード線WL及び非選択のビット線BLに対して、供給する。
【0064】
以下において、選択されたアドレスADRに対応するメモリセル(選択されたワード線WL及び選択されたビット線BLに接続されたメモリセル)MCは、選択セルとよばれる。
以下において、非選択のワード線WLに接続されたメモリセルMC、及び、非選択のビット線に接続されたメモリセル(選択セル以外のメモリセル)MCは、非選択セルとよばれる。
【0065】
センスアンプ回路140は、読み出しシーケンス時において、メモリセルアレイ100から出力された信号を、センス及び増幅する。
例えば、センスアンプ回路140は、読み出しシーケンス時において、ビット線BLの電位又はビット線BLを流れる電流を、センスする。センスアンプ回路140は、センス結果に応じた信号を増幅する。センスアンプ回路140は、増幅された信号に基づいて、メモリセルMC内に記憶されるデータを、判別する。判別された結果が、読み出しデータとして、メモリデバイス1から読み出される。
【0066】
尚、センスアンプ回路140は、書き込みデータを一時的に保持する機能(ラッチ回路)を有していてもよい。
【0067】
バンクBKは、制御回路19の制御によって、上述の各回路100,110,120,130,140を動作させる。
【0068】
<メモリセルアレイの構造例>
図5乃至図7を参照して、本実施形態のメモリデバイス1における、メモリセルアレイ100の構造例について、説明する。
【0069】
図5乃至図7は、本実施形態のメモリデバイス1のメモリセルアレイ100の構造例を説明するための図である。図5は、メモリセルアレイ100の構造例を説明するための鳥瞰図である。図6は、メモリセルアレイ100のX方向(X軸)に沿う断面構造を示す模式的な断面図である。図7は、メモリセルアレイ100のY方向(Y軸)に沿う断面構造を示す模式的な断面図である。
【0070】
図5乃至図7に示されるように、メモリセルアレイ100は、基板80の上面の上方に設けられている。
【0071】
X方向は、基板80の上面に対して平行な方向である。Y方向は、基板80の上面に対して平行で、X方向に交差する方向である。以下において、基板80の上面に対して平行な面は、X-Y平面とよばれる。X-Y平面に垂直な方向(軸)は、Z方向(Z軸)とする。X方向とZ方向とからなる面に平行な面は、X-Z平面とよばれる。Y方向とZ方向とからなる面に平行な面は、Y-Z平面とよばれる。
【0072】
メモリセルアレイ100は、例えば、Z方向に複数の層が積層されている構造を有する。
【0073】
複数の配線(導電層)50は、Z方向において、基板80上の絶縁層81を介して、基板80の上面の上方に設けられる。複数の配線50は、Y方向に沿って並ぶ。各配線50は、X方向に沿って延びる。複数の配線50のそれぞれは、例えば、ワード線WLとして機能する。
【0074】
複数の配線(導電層)51は、Z方向において、複数の配線50の上方に設けられている。複数の配線51は、X方向に沿って並ぶ。各配線51は、Y方向に沿って延びる。複数の配線51のそれぞれは、例えば、ビット線BLとして機能する。
【0075】
複数のメモリセルMCが、複数の配線50と複数の配線51との間に、設けられている。複数のメモリセルMCは、X-Y平面内において、マトリクス状に配列されている。
【0076】
X方向に並ぶ複数のメモリセルMCは、Z方向において1つの配線50上に設けられている。X方向に並ぶ複数のメモリセルMCは、共通のワード線WLに接続される。
Y方向に並ぶ複数のメモリセルMCは、Z方向において1つの配線51下に設けられている。Y方向に並ぶ複数のメモリセルMCは、共通のビット線BLに接続される。
【0077】
メモリセルアレイ100は、絶縁層(図示せず)に覆われる。例えば、絶縁層が、メモリセルMC間のスペース内、配線50間のスペース内、及び配線51間のスペース内に設けられている。
【0078】
メモリセルアレイ100が図4の回路構成を有する場合、スイッチング素子30は、Z方向においてメモリ素子20の下方に設けられている。スイッチング素子30は、メモリ素子20と配線50との間に設けられている。メモリ素子20は、配線51とスイッチング素子30との間に設けられている。
【0079】
このように、積層型のメモリセルアレイ100において、各メモリセルMCは、メモリ素子20とスイッチング素子30との積層体である。
【0080】
図6及び図7において、絶縁層81が、複数の配線50と基板80との間に設けられた例が示されている。基板80が半導体基板である場合、1つ以上の電界効果トランジスタ(図示せず)が、基板80の上面の半導体領域上に設けられてもよい。電界効果トランジスタは、絶縁層81に覆われる。基板80上の電界効果トランジスタは、メモリデバイス1内の周辺回路PERIの構成素子である。このように、Z方向におけるメモリセルアレイ100の下方に、メモリセルアレイ100の動作の制御のための回路が設けられてもよい。尚、基板80が絶縁性基板であれば、複数の配線50は、絶縁層81無しに、基板80の上面上に直接設けられてもよい。
【0081】
積層型のメモリセルアレイ100の回路構成及び構造は、図4乃至図7に示された例に限定されない。ビット線BL及びワード線WLに対するメモリ素子20及びスイッチング素子30の接続関係に応じて、メモリセルアレイ100の回路構成及び構造は、適宜変形され得る。
【0082】
<メモリセルの構造例>
図6及び図7を参照して、メモリセルMCの内部構造について、説明する。
【0083】
スイッチング素子30は、以下のような構成を有する。
【0084】
図6及び図7に示されるように、スイッチング素子30は、少なくとも、可変抵抗層(セレクタ層又はスイッチ層ともよばれる)301と2つの電極302(302A,302B)とを含む。可変抵抗層301は、Z方向において2つの電極(導電層)302A,302Bの間に設けられている。
【0085】
図6及び図7の例において、電極(以下では、下部電極ともよばれる)302Aは、Z方向において可変抵抗層301の下方に設けられ、電極(以下では、上部電極ともよばれる)302Bは、Z方向において可変抵抗層301の上方に設けられている。例えば、電極302Aは、配線50と可変抵抗層301との間に設けられている。電極302Bは、可変抵抗層301とメモリ素子20との間に設けられている。
【0086】
スイッチング素子30は、電極302Aを介して、配線50に接続されている。スイッチング素子30は、電極302Bを介して、メモリ素子20に接続されている。
【0087】
可変抵抗層301の抵抗状態(抵抗値)は、変化する。可変抵抗層301は、複数の抵抗状態を有し得る。
スイッチング素子30(メモリセルMC)に印加される電圧に応じて、可変抵抗層300の抵抗状態は、高抵抗状態(非導通状態)又は低抵抗状態(導通状態)になる。可変抵抗層301の抵抗状態が高抵抗状態である場合、スイッチング素子30は、オフしている。可変抵抗層301の抵抗状態が低抵抗状態である場合、スイッチング素子30は、オンしている。
【0088】
メモリセルMCが選択状態に設定される場合、スイッチング素子30がオンするため、可変抵抗層301の抵抗状態は、低抵抗状態となっている。この場合において、スイッチング素子30は、電流(又は電圧)を、メモリ素子20に供給する。メモリセルMCが非選択状態に設定される場合、スイッチング素子30がオフするため、可変抵抗層301の抵抗状態は、高抵抗状態となっている。この場合において、スイッチング素子30は、メモリ素子20に対する電流(又は電圧)の供給を、遮断する。
【0089】
尚、可変抵抗層301の材料に応じて、可変抵抗層301の抵抗状態の変化は、スイッチング素子30内を流れる電流(例えば、電流の大きさ)に依存する場合もある。
【0090】
スイッチング素子30の可変抵抗層301は、ボロン(B)、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、炭素(C)、シリコン(Si)、ゲルマニウム(Ge)、錫(Sn)、ヒ素(As)、リン(P)及びアンチモン(Sb)からなる群から選択された少なくとも1種以上の元素を含む。
【0091】
スイッチング素子30は、例えば、ドーパント(不純物)を含む絶縁体を、可変抵抗層301内に含んでもよい。絶縁体に添加されるドーパントは、絶縁体内における電気伝導に寄与する不純物である。このスイッチング素子30の可変抵抗層301に用いられる絶縁体の一例は、酸化シリコンである。可変抵抗層301の材料が酸化シリコンである場合、酸化シリコンに添加されるドーパントに、例えば、リン又はヒ素が用いられる。但し、可変抵抗層301の酸化シリコンに添加されるドーパントの種類は、上述の例に限定されない。また、スイッチング素子30は、スナップバック特性を有する材料から構成されていてもよい。
【0092】
メモリ素子20は、以下のような構成を有する。
メモリデバイス1がMRAMである場合、メモリ素子20は、磁気抵抗効果素子20である。
【0093】
図6及び図7に示されるように、磁気抵抗効果素子20は、2つの磁性層201,203と非磁性層202とを含む。非磁性層202は、Z方向において2つの磁性層201,203の間に設けられている。図5及び図6の例において、配線(例えばワード線WL)50側から配線(例えばビット線BL)51側に向かって、磁性層201、非磁性層202、及び磁性層203の順に、複数の層201,202,203がZ方向に並んでいる。
【0094】
2つの磁性層201,203及び非磁性層202は、磁気トンネル接合を成す。以下において、磁気トンネル接合を含む磁気抵抗効果素子20は、MTJ素子20とよばれる。MTJ素子20における非磁性層202は、トンネルバリア層とよばれる。
【0095】
各磁性層201,203は、例えば、コバルト(Co)、鉄(Fe)、及びニッケル(Ni)のうちの少なくとも1つの元素を含む強磁性層である。また、磁性層201,203は、ボロン(B)を更に含んでいてもよい。より具体的には、例えば、磁性層201,203は、コバルト鉄ボロン(CoFeB)又はホウ化鉄(FeB)を含む。磁性層201,203は、単層膜(例えば、合金膜)でもよいし、多層膜(例えば、人工格子膜)でもよい。
【0096】
トンネルバリア層202は、例えば、酸素(O)及びマグネシウム(Mg)を含む絶縁層(例えば、酸化マグネシウム層)である。トンネルバリア層202は、単層膜でもよいし、多層膜でもよい。尚、トンネルバリア層202は、酸素及びマグネシウム以外の元素をさらに含んでもよい。
【0097】
本実施形態において、MTJ素子20は、垂直磁化型の磁気抵抗効果素子である。
【0098】
例えば、各磁性層201,203は、垂直磁気異方性を有する。各磁性層201,203は、磁性層201,203の層面に対して垂直な磁化を有する。
【0099】
2つの磁性層201,203のうち、一方の磁性層は、磁化の向きが可変であり、他方の磁性層は、磁化の向きが不変である。MTJ素子20は、一方の磁性層の磁化の向きと他方の磁性層の磁化の向きとの相対的な関係(磁化配列)に応じて、複数の抵抗状態(抵抗値)を有し得る。
【0100】
図6及び図7の例において、磁性層203の磁化の向きは、可変である。磁性層201の磁化の向きは、不変(固定状態)である。以下において、磁化の向きが可変な磁性層203は、記憶層とよばれる。以下において、磁化の向きが不変な磁性層201は、参照層とよばれる。尚、記憶層203は、自由層、磁化自由層、又は、磁化可変層とよばれる場合もある。参照層201は、ピン層、ピンド層、磁化不変層、又は、磁化固定層とよばれる場合もある。
【0101】
本実施形態において、「参照層(磁性層)の磁化の向きが不変である」、又は、「参照層(磁性層)の磁化の向きが固定状態である」とは、記憶層203の磁化の向きを変えるための電流(又は電圧)がMTJ素子20に供給された場合において、参照層201の磁化の向きが、電流(又は電圧)の供給の前後で変化しないことを、意味する。
【0102】
記憶層203の磁化の向きが、参照層201の磁化の向きと同じである場合(MTJ素子20の磁化配列状態が平行配列状態である場合)、MTJ素子20の抵抗状態は、第1の抵抗状態である。記憶層203の磁化の向きが、参照層201の磁化の向きと異なる場合(MTJ素子20の磁化配列状態が反平行配列状態である場合)、MTJ素子20の抵抗状態は、第1の抵抗状態と異なる第2の抵抗状態である。例えば、第2の抵抗状態(反平行配列状態)のMTJ素子20の抵抗値は、第1の抵抗状態(平行配列状態)のMTJ素子20の抵抗値より高い。
【0103】
以下において、MTJ素子20の磁化配列状態に関して、平行配列状態はP(Parallel)状態とも表記され、反平行配列状態はAP(Anti-Parallel)状態とも表記される。
【0104】
尚、メモリセルアレイ100の回路構成に応じて、参照層がZ方向においてトンネルバリア層202の上方に設けられ、記憶層がZ方向においてトンネルバリア層202の下方に設けられる場合もある。
【0105】
例えば、MTJ素子20は、導電層(電極)207A,207Bを含む。磁性層201,203及びトンネルバリア層202は、Z方向において、2つの導電層207A,207B間に設けられている。尚、導電層207A及び電極302Bは、連続する1つの導電体であってもよい。
【0106】
例えば、シフトキャンセル層204が、MTJ素子20内に設けられてもよい。この場合において、シフトキャンセル層204は、参照層201と導電層207Aとの間に設けられる。シフトキャンセル層204は、参照層201の漏れ磁場の影響を緩和するための磁性層である。MTJ素子20がシフトキャンセル層204を含む場合、非磁性層205が、シフトキャンセル層204と参照層201との間に設けられる。非磁性層205は、例えば、ルテニウム層などの金属層である。シフトキャンセル層204は、非磁性層205を介して参照層201と反強磁性的に結合する。これによって、参照層201及びシフトキャンセル層204を含む積層体は、SAF(Synthetic antiferromagnetic)構造を形成する。SAF構造において、シフトキャンセル層204の磁化の向きは、参照層201の磁化の向きと反対になる。SAF構造によって、参照層201の磁化の向きは、より安定的に固定状態となり得る。尚、SAF構造を形成する2つの磁性層201,204及び非磁性層205の集合が、参照層とよばれる場合もある。
【0107】
例えば、下地層とよばれる非磁性層(図示せず)が、シフトキャンセル層204と導電層207Aとの間に、設けられてもよい。下地層は、下地層に接する磁性層(ここでは、シフトキャンセル層204)の特性(例えば、結晶性及び磁気特性)を改善するための層である。例えば、キャップ層とよばれる非磁性層(図示せず)が、記憶層203と導電層207Bとの間に、設けられてもよい。キャップ層は、キャップ層に接する磁性層(ここでは、記憶層203)の特性(例えば、結晶性及び磁気特性)を改善するための層である。
【0108】
本実施形態のメモリデバイス1及びメモリモジュールMMは、後述の動作(制御方法)によって、読み出しシーケンス中に、ウェアレベリング処理のための書き込み動作を実行する。
例えば、コントローラ2は、ウェアレベリング処理のための管理テーブルTBLを保持する。
【0109】
ウェアレベリング処理は、データの書き込みが特定のアドレスに集中しないように、データの書き込み対象となるアドレスを可能な限り均等に分散させる技術である。これによって、メモリ空間内における複数のメモリセルMCのデータの書き込み回数が、平滑化され得る。この結果として、メモリデバイス1及びメモリモジュールMMの寿命が、延びる。
【0110】
読み出しシーケンス中におけるウェアレベリング処理の実行によって、本実施形態のメモリデバイス1及びメモリモジュールMMの動作期間は、短縮され得る。
これによって、本実施形態のメモリデバイス1及びメモリモジュールMMは、メモリデバイスの動作特性を改善できる。
【0111】
(2)動作例
図8乃至図12を参照して、本実施形態のメモリデバイス1及びメモリモジュールMMの動作例について、説明する。本実施形態のメモリデバイス1の動作例は、メモリデバイスの制御方法を含む。本実施形態のメモリモジュール(メモリシステム)MMの動作例は、メモリモジュールの制御方法を含む。
【0112】
以下において、本実施形態のメモリデバイス1及びメモリモジュールMMの読み出しシーケンスについて、説明する。
【0113】
本実施形態において、MRAMを含むメモリデバイス1の読み出しシーケンスは、自己参照読み出しを用いて、実行される。
【0114】
尚、本実施形態のメモリデバイス1及びメモリモジュールMMの書き込みシーケンスは、周知の技術によって、実行される。それゆえ、本実施形態において、メモリデバイス1の書き込みシーケンスの説明は省略される。
例えば、本実施形態のメモリデバイス1がMRAMである場合、書き込みシーケンスは、SST(Spin torque transfer)方式によって、実行される。
【0115】
(2-1)自己参照読み出し
図8及び図9を参照して、本実施形態のメモリデバイス1の読み出しシーケンスにおける、自己参照読み出しについて説明する。
【0116】
図8は、本実施形態のメモリデバイス1の読み出しシーケンスにおける、自己参照読み出しのフローチャートである。図9は、本実施形態のメモリデバイスの読み出しシーケンスにおける、自己参照読み出しを説明するための模式図である。
【0117】
<S1>
自己参照読み出しを用いた読み出しシーケンスにおいて、メモリデバイス1は、供給された読み出しコマンドCMD及びアドレスADRに基づいて、第1の読み出し動作を実行する。第1の読み出し動作は、第1のデータ読み出し、セルデータ読み出し、又は、第1のセンス動作ともよばれる。
【0118】
アドレスADRに基づいて、バンクBK内の或るデータ(セルデータ)を記憶するメモリセルMC-Sが、データの読み出しの対象(選択セル)として選択される。
【0119】
読み出しシーケンスの第1の読み出し動作において、ドライバ回路130は、選択セルMC-Sに選択電圧を印加する。例えば、ドライバ回路130は、選択ビット線BLに或る正の電圧を印加し、選択ワード線WLに0Vの電圧(グランド電圧)を印加する。
【0120】
選択電圧によって、選択セルMC-S内のスイッチング素子30は、オンする。
これによって、図9の(a)に示されるように、読み出し電流IRD1が、選択ビット線BLから選択ワード線WLへ向かって、選択セルMC-S内を流れる。読み出し電流IRD1は、MTJ素子20内において、例えば、記憶層203から参照層201へ流れる。
【0121】
センスアンプ回路140は、ある時点におけるビット線BLの電位(又は、ビット線BLを流れる電流の電流値)をセンスする。これによって、センスアンプ回路140は、第1の読み出し動作において選択セルMC-Sから出力されるセンス信号を取得する。
【0122】
MTJ素子20の抵抗状態が低抵抗状態である場合(MTJ素子20がP状態である場合)における或る時点のビット線BLの電位は、MTJ素子20の抵抗状態が高抵抗状態である場合(MTJ素子20がAP状態である場合)における或る時点のビット線BLの電位と異なる。それゆえ、MTJ素子20に記憶されているデータに応じて、センスアンプ回路140がセンスするビット線BLの電位(センス信号)は、異なる。
【0123】
尚、第1の読み出し動作時において、非選択電圧が、非選択のワード線又は非選択のビット線に接続された非選択セルに、印加される。
【0124】
<S2>
自己参照読み出しを用いた読み出しシーケンスにおいて、メモリデバイス1は、第1の読み出し動作の後、リセット動作を、選択セルに対して実行する。リセット動作は、参照データを選択セルに書き込む動作である。リセット動作は、参照データ書き込み、又はリセット書き込みともよばれる。
【0125】
図9の(b)に示されるように、参照データの書き込み動作において、ドライバ回路130は、書き込み電流IWR1を、選択セルMC-Sに流す。
【0126】
例えば、参照データが“0”データである場合、書き込み電流IWR1は、選択ビット線BL(MTJ素子20の記憶層203)から選択ワード線WL(MTJ素子20の参照層201)へ向かって、選択セルMC-S内を流れる。
【0127】
尚、メモリセルアレイ100内の回路構成に応じて、“0”データの書き込み時における書き込み電流IWR1が流れる向きは、変わる。
【0128】
書き込み電流IWR1の供給によって、“0”データが、選択セルMC-Sに書き込まれる。選択セルMC-Sは、自己参照読み出しにおけるリセット状態(“0”データ保持状態)に設定される。
【0129】
尚、リセット動作時において、非選択電圧が、非選択のワード線又は非選択のビット線に接続された非選択セルに、印加される。
【0130】
<S3>
自己参照読み出しを用いた読み出しシーケンスにおいて、メモリデバイス1は、参照データが選択セルMC-Sに書き込まれた後、第2の読み出し動作を、リセット状態の選択セルMC-Sに対して実行する。第2の読み出し動作は、第2のデータ読み出し、参照データ読み出し、又は、第2のセンス動作ともよばれる。
【0131】
第2の読み出し動作において、第1の読み出し動作と実質的に同様に、ドライバ回路130は、選択電圧を、選択セルMC-Sに印加する。
これによって、図9の(c)に示されるように、読み出し電流IRD2は、選択セルMC-Sを介してビット線BLからワード線WLへ流れる。このように、読み出し電流IRD2(及び読み出し電流IRD1)が選択セルMC-S内を流れる方向は、書き込み電流IWR1が選択セルMC-S内を流れる方向と同じである。
【0132】
センスアンプ回路140は、ある時点におけるビット線BLの電位をセンスする。これによって、センスアンプ回路140は、第2の読み出し動作におけるリセット状態の選択セルMC-Sから出力されるセンス信号(以下では、参照信号ともよばれる)を、取得する。
【0133】
尚、第2の読み出し動作時において、非選択電圧が、非選択のワード線又は非選択のビット線に接続された非選択セルに、印加される。
【0134】
<S4>
メモリデバイス1は、第1の読み出し動作のセンス結果(センス信号)と第2の読み出し動作のセンス結果(センス信号)とに基づいて、選択セルMC-Sのデータを判別する。
【0135】
例えば、メモリデバイス1は、第1の読み出し動作のセンス信号と第2の読み出し動作のセンス信号とを比較する。
【0136】
例えば、2つのセンス信号の差が、或る閾値以下である場合、センスアンプ回路140は、選択セルMC-S内のデータが、第1のデータ(例えば、“0”データ)であると判定する。センスアンプ回路140は、第1のデータを示す信号を出力する。
【0137】
これに対して、2つのセンス信号の差が、或る閾値より大きい場合、センスアンプ回路140は、選択セルMC-S内のデータが、第1のデータと異なる第2のデータ(例えば、“1”データ)であると判定する。センスアンプ回路140は、第2のデータを示す信号を出力する。
【0138】
このように、第1及び第2の読み出し動作の2つのセンス信号に基づいて、選択セルMC-S内のデータが、確定される。
【0139】
確定されたデータが、選択セルMC-Sからの読み出しデータとして、バンクバッファ回路17に出力される。
【0140】
<S5>
自己参照読み出しにおいて、メモリセルMC内のセルデータは、第1の読み出し動作後の参照データの書き込みによって破壊される。
それゆえ、破壊されたセルデータの復元のために、データのライトバック動作が、実行される。
【0141】
自己参照読み出しを用いた読み出しシーケンスにおいて、メモリデバイス1は、読み出しデータを破壊される前のセルデータとして、ライトバック動作によって、メモリセルMC-Wに書き込む。
【0142】
ドライバ回路130は、ビット線BL及びワード線WLの電位を制御する。
これによって、図9の(d)に示されるように、ライトバック動作のための書き込み電流IWR(IWR1,IWR2)が、ライトバック動作の対象のメモリセルMC-Wを流れる。
【0143】
書き込み電流IWRがメモリセルMC-W内を流れる方向は、メモリセルMC-Wに書き込まれるデータに応じる。例えば、“0”データがメモリセルMCに書き込まれる場合、図9の(c)の例と同様に、ビット線BL(MTJ素子20の記憶層203)からワード線WL(MTJ素子20の参照層201)へ流れる書き込み電流IWR1が、メモリセルMC-Wに供給される。例えば、“1”データがメモリセルMCに書き込まれる場合、ワード線WL(MTJ素子20の参照層201)からビット線BL(MTJ素子20の記憶層203)へ流れる書き込み電流IWR2が、メモリセルMC-Wに供給される。
【0144】
尚、セルデータの値が参照データの値と同じである場合、ライトバック動作における“0”データを書き込むための書き込み電流IWR1は、メモリセルMC-Wに供給されない場合もある。
【0145】
本実施形態において、ライトバック動作は、データの読み出しの対象のメモリセルMC-Sとは異なるメモリセルMC-Wに対して、実行される。例えば、ライトバック動作の対象のメモリセルMC-Wを含むバンクBKは、データの読み出しの対象のメモリセルMC-Sを含むバンクBKと異なる。
以下において、データの読み出しの対象のメモリセルMC-Sを含むバンクは、読み出しバンクともよばれる。以下において、ライトバック動作の対象のメモリセルMC-Wを含むバンクは、書き込みバンク又はライトバックバンクともよばれる。
【0146】
これによって、本実施形態のメモリデバイス1は、自己参照読み出しにおけるライトバック動作によって、ウェアレベリング処理のデータのコピーを実行できる。
【0147】
このように、本実施形態のメモリデバイス1において、ウェアレベリング処理は、ライトバック動作との共通化によって、読み出しシーケンス内に含まれる。
尚、本実施形態のメモリデバイス1において、ウェアレベリング処理は、自己参照読み出し(読み出しシーケンス)に連続する又は並行するとも言うことができる。
【0148】
(2-2)読み出しシーケンス
図10乃至図12を参照して、本実施形態のメモリデバイス1及びメモリモジュールMMの読み出しシーケンスについて、説明する。
【0149】
図10は、本実施形態のメモリデバイス1の読み出しシーケンスを説明するためのシーケンス図である。図11は、本実施形態のメモリデバイス1の読み出しシーケンスを説明するためのタイミングチャートである。図11において、読み出しシーケンスにおける、メモリデバイス1内の動作対象のバンクBK<i>,BK<j>のアクティブ状態(及び非アクティブ状態)の時間変化が示されている。図12は、本実施形態のメモリデバイス1の読み出しシーケンスを説明するための模式図である。図12において、読み出しシーケンスにおける、メモリデバイス1内におけるデータの移動が模式的に示されている。
【0150】
<時刻t0>
図10に示されるように、ホストデバイス9は、本実施形態のメモリデバイス1を含むメモリモジュールMMにデータの読み出しを命令する。ホストデバイス9は、時刻t0において、コマンドアドレス信号CAとして、コマンドXREAD及びアドレスXADRを、クロック信号CLKに同期したタイミングにおいて、メモリモジュールMM内のコントローラ2に送る。
【0151】
コントローラ2は、クロック信号CLKに同期したタイミングにおいて、ホストデバイス9からの読み出しコマンドXREADを、受ける。
コントローラ2は、コマンドXREADを受けた後、アドレスXADRを受ける。
【0152】
コントローラ2は、アドレスXADRに基づいて、メモリデバイス1に対する読み出しアドレス(以下において、選択アドレスともよばれる)ADR1を生成する。
【0153】
読み出しアドレスADR1は、データの読み出し対象のバンクBK<i>に関するアドレス情報である。読み出しアドレスADR1は、バンクアドレス、ロウアドレス、及びカラムアドレスを含む。
【0154】
コントローラ2は、コマンドXREADに基づいて、メモリデバイス1に対する読み出しコマンド(RD)CMD1を生成する。
読み出しコマンドCMD1は、メモリデバイス1に読み出しシーケンスの実行を命令する信号セットである。
【0155】
<時刻t1>
コントローラ2は、時刻t1において、生成された読み出しアドレスADR1及び読み出しコマンドCMD1を、メモリデバイス1に送る。
【0156】
本実施形態において、コントローラ2は、メモリデバイス1に対して、アドレスADR1とは異なるアドレスADR2を発行する。
【0157】
コントローラ2は、読み出しアドレスADR1及び読み出しコマンドCMD1の送信に連続して、アドレスADR2を、メモリデバイス1に送る。以下において、コマンドCMD1及びアドレスADR1(及びアドレスADR2)の集合は、コマンドセットともよばれる。
【0158】
アドレスADR2は、ライトバックされるデータが書き込まれるバンクBKに関するアドレス情報である。アドレスADR2は、ウェアレベリング処理におけるライトバックされるデータの書き込み先のアドレスを示す。以下において、区別化のために、アドレスADR2は、ライトバックアドレス(又はウェアレベリングアドレス)ADR2ともよばれる。
【0159】
コントローラ2は、ウェアレベリングに関する管理情報を含むテーブルTBLに基づいて、ライトバックアドレスADR2を生成する。例えば、テーブルTBLは、バンクアドレス毎、ロウアドレス毎、又はカラムアドレス毎の、データの書き込み回数に関する情報を含む。
【0160】
本実施形態において、ライトバックアドレスADR2に含まれるバンクアドレスの値は、読み出しアドレスADR1に含まれるバンクアドレスの値と異なる。
例えば、ライトバックアドレスADR2に含まれるロウアドレス及びカラムアドレスは、読み出しアドレスADR1に含まれるロウアドレス及びカラムアドレスと同じあってもよい。ライトバックアドレスADR2に含まれるロウアドレス及びカラムアドレスは、読み出しアドレスADR1に含まれるロウアドレス及びカラムアドレスと異なってもよい。
【0161】
コントローラ2は、テーブルTBL内の各アドレスの書き込み回数に基づいて、比較的書き込み回数の少ないバンクBK<j>内のアドレスを、ウェアレベリング処理を伴うライトバック動作におけるデータの書き込み先(データのコピー先)のアドレスに指定する。
【0162】
コマンドCMD1の送信後に送信(及び受信)されるアドレスADR2は、メモリデバイス1においてウェアレベリング処理を含むライトバック動作の実行のためのトリガ信号として機能する。
【0163】
メモリデバイス1は、インターフェイス回路11によって、読み出しアドレスADR1及び読み出しコマンドCMD1を受ける。これによって、メモリデバイス1は、自己参照読み出しSRRによる動作シーケンスを開始する。
【0164】
メモリデバイス1は、読み出しコマンドCMD1に基づく読み出しシーケンスを、読み出しアドレスADR1に示される複数のメモリセルMCに対して、実行する。例えば、1ページ(例えば、128ビット)分のデータに対応する複数のメモリセルMCが、読み出しシーケンスの対象として選択される。
【0165】
ロウデコーダ12及びカラムデコーダ13のそれぞれは、読み出しアドレスADR1をデコードする。ロウデコーダ12及びカラムデコーダ13のそれぞれは、読み出しアドレスADR1に示されるバンク(以下では、選択バンクとよばれる)BK<i>に、ロウアドレスのデコード結果、カラムアドレスのデコード結果を送る。選択バンクBK<i>内において、ロウ制御回路110及びカラム制御回路120は、アドレスARD1のデコード結果に基づいて、メモリセルアレイ100のロウ及びカラムを、それぞれ制御する。
【0166】
これによって、バンクBK、メモリセルアレイ100のロウ(1つ以上のワード線WL)、及び、メモリセルアレイ100のカラム(1つ以上のビット線BL)が、選択される。
【0167】
<時刻t10>
図11に示されるように、時刻t10において、読み出しアドレスADR1に対応する選択バンクBK<i>は、アクティブ状態に設定される。
【0168】
メモリデバイス1は、アクティブ状態の選択バンクBK<i>に対して、第1の読み出し動作(セルデータ読み出し)を実行する。上述の図9の(a)のように、読み出し電流IRD1が、ドライバ回路130によって、各選択セルMC-Sに供給される。
【0169】
これによって、複数のセンス信号が、センスアンプ回路140によって、アクティブ状態の選択バンクBK<i>内の複数の選択セルMC-Sから、それぞれ取得される。
【0170】
<時刻t11a>
第1の読み出し動作の完了の後、時刻t11aにおいて、メモリデバイス1は、アクティブ状態のバンクBK<i>に対して、リセット動作を実行する。上述の図9の(b)のように、書き込み電流IWD1が、ドライバ回路130によって、各選択セルMC-Sに供給される。
【0171】
これによって、参照データが、各選択セルMC-Sに書き込まれる。この結果として、アクティブ状態の選択バンクBK<i>内の複数の選択セルMC-Sのそれぞれは、リセット状態に設定される。
【0172】
<時刻t12>
リセット動作の完了の後、時刻t12において、メモリデバイス1は、アクティブ状態の選択バンクBK<i>に対して、第2の読み出し動作(参照データ読み出し)を実行する。上述の図9の(c)のように、読み出し電流IRD2が、ドライバ回路130によって、各選択セルMC-Sに供給される。
【0173】
これによって、複数のセンス信号(参照信号)が、センスアンプ回路140によって、アクティブ状態の選択バンクBK<i>内の複数の選択セルMC-Sから、それぞれ取得される。
【0174】
第2の読み出し動作(時刻t)の後、選択バンクBK<i>内において、センスアンプ回路140は、各選択セルMCの2つのセンス信号に基づいて、選択セルMC-Sの記憶しているデータを、判別する。
【0175】
図12に示されるように、判別されたデータが、選択バンクBK<i>からバンクバッファ回路17に転送される。バンクバッファ回路17内の各バッファ171は、各選択セルMCから転送された1ビットのデータを、一時的に記憶する。
これによって、1ページ分のデータDTが、バンクバッファ回路17内に格納される。
【0176】
<時刻t11b>
上述のように、本実施形態において、メモリデバイス1は、読み出しコマンドCMD1の後に、インターフェイス回路11によって、ライトバックアドレス(ウェアレベリングアドレス)ADR2を受ける。
この場合において、メモリデバイス1は、ライトバックアドレスADR2に基づいて、ウェアレベリング処理を含むライトバック動作が、ライトバックアドレスARD2に示されるバンクBK<j>に対して実行されることを、認知する。
【0177】
それゆえ、メモリデバイス1が、読み出しコマンドCMD1の後にライトバックアドレスADR2を受けた場合、メモリデバイス1は、ライトバックアドレスADR2に示されるバンクBK<j>内の複数のメモリセルMCに対して、リセット処理を実行する。
【0178】
例えば、図11に示されるように、メモリデバイス1は、時刻t11bにおいて、読み出しアドレスADR1の選択セルMCに対するリセット処理の後に、ライトバックアドレスADR2のメモリセルMCに対して、リセット処理を実行する。
【0179】
上述のように、各バンクBKは、互いに独立に動作できる。
それゆえ、バンク(書き込みバンク)BK<j>に対するリセット処理が、バンク(読み出しバンク)BK<i>に対する第2のデータ読み出しと、部分的に並行に実行され得る。
【0180】
<時刻t2>
図10に示されるように、コントローラ2は、時刻t2において、データの転送の準備の完了が見込まれるタイミングにおいて、データの読み出しに関するレスポンス信号RSPrを、NVDIMM規格に基づくレスポンスピンを介して、ホストデバイス9に送る。
【0181】
コントローラ2は、メモリデバイス1内におけるデータの転送の準備の状態(例えば、バンクバッファ回路17内におけるデータの格納)に応じて、レスポンス信号RSPrを、“H”レベルから“L”レベルに変える。
コントローラ2は、“L”レベルのレスポンス信号RSPrによって、データの転送が可能であることを、ホストデバイス9に通知する。尚、“L”レベルのレスポンス信号RSPrは、レディ信号ともよばれる。
【0182】
ホストデバイス9は、“L”レベルのレスポンス信号RSPrを受ける。
【0183】
図10の例において、ライトバックアドレスADR2は、レスポンス信号RSPrの信号レベルが“H”レベルである期間中に、コントローラ2からメモリデバイス1へ転送される。但し、ライトバックアドレスADR2は、レスポンス信号RSPrの信号レベルが“L”レベルである期間中に、コントローラ2からメモリデバイス1へ転送されてもよい。
【0184】
<時刻t3>
ホストデバイス9は、“L”レベルのレスポンス信号RSPrに応じて、コマンドSENDを、コントローラ2に送る。コマンドSENDは、ホストデバイス9に対するデータの転送を、メモリモジュールMMに命令するコマンドである。
【0185】
<時刻t4>
コントローラ2は、コマンドSENDを受ける。コントローラ2は、コマンドSENDに基づいて、コマンド(BRD)CMD2を、メモリデバイス1に対して発行する。コマンドCMD2は、バンクバッファ回路17内のデータの転送をメモリデバイス1に命令する信号セットである。
【0186】
メモリデバイス1は、インターフェイス回路11によって、コマンドCMD2を受ける。メモリデバイス1は、コマンドCMD2に応じて、データ転送のための内部処理を実行する。例えば、コマンドCMD2は、選択バンクBK<i>内において第2の読み出し動作の実行中又は実行後のタイミングで、メモリデバイス1に供給される。
【0187】
<時刻t5>
メモリデバイス1は、時刻t5において、コマンドCMD2に応じたデータ転送を開始する。
図12に示されるように、メモリデバイス1は、コマンドCMD2に基づいて、バンクバッファ回路17内のデータDTを、読み出しデータDQ2として、インターフェイス回路11を介してコントローラ2に転送する。
【0188】
例えば、1ページのデータのデータサイズが、128ビットである場合、データDQは、1サイクル当たり8ビット(1バイト)ずつ、16サイクルにわたって、メモリデバイス1からコントローラ2に転送される。
【0189】
<時刻t13>
メモリデバイス1は、コマンドCMD2の受信(時刻t4)とデータDQ2の転送の開始(時刻t5)との間の期間において、バンクバッファ回路17内のデータを用いたライトバック動作WBを実行する。本実施形態において、自己参照読み出しSRRのライトバック動作WBは、ウェアレベリング処理LVを含む。
【0190】
図11に示されるように、メモリデバイス1は、時刻t13において、ライトバックアドレスADR2に対応するバンクBK<j>をアクティブ状態に設定する。
【0191】
図12に示されるように、コマンドCMD2の受信の後、メモリデバイス1は、バンクバッファ回路17内のデータDTを、アドレスADR2に示されるバンクBK<j>内の複数のメモリセルMCに、書き込む。書き込み電流IWRが、バンクBK<j>内の複数のメモリセルMC-Wに供給される。アドレスADR2に示されるバンクBK<j>は、ウェアレベリング処理LVにおけるデータのコピー先のバンク(書き込みバンク)である。
【0192】
上述のように、バンクBK<j>内のアドレスADR2に対応する複数のメモリセルMCは、リセット状態(“0”データ保持状態)である。それゆえ、例えば、書き込み電流IWR1をバンクBK<j>に供給すること無しに、書き込み電流IWR2のみが、バンクBK<j>内の“1”データが書き込まれるメモリセルMCに、供給されてもよい。
【0193】
このように、或るバンクBK<i>内の選択セルMCから取得されたデータDTが、ライトバック動作WBによって別のバンクBK<j>内の複数のメモリセルMCに書き戻されるとともに、2つのバンクBK<i>,BK<j>間におけるウェアレベリング処理LVによって、バンクBK<i>からバンクBK<j>にコピーされる。
【0194】
例えば、ライトバック動作WBによるバンクBK<j>に対するデータDTの書き込みは、時刻t5の後において、コントローラ2に対するデータDQ2の転送と実質的に同時に(並行に)、実行されてもよい。
【0195】
読み出しアドレスADR1に対応する選択バンクBK<i>内の選択セルMC-Sは、バンクBK<j>に対するライトバック動作の後において、読み出しコマンドCMD1に応じたデータの書き戻し無しに、リセット状態を維持する。それゆえ、読み出しシーケンスの完了後において、読み出しアドレスADR1に対応する全ての選択セルMC-Sは、参照データ(例えば、“0”データ)を記憶する。
【0196】
尚、ウェアレベリング処理LVを含むライトバック動作WBは、コマンドSENDに対する応答、及び/又は、コマンドCMD2の送受信の前に、メモリデバイス1内で実行されてもよい。
【0197】
<時刻t6>
コントローラ2は、メモリデバイス1から転送されたデータDQ2を受ける。コントローラ2は、データDQ2に対して、エラーの検出及び訂正のような各種の処理を施す。
コントローラ2は、時刻t6において、データDQ2に対応したデータDQ1をホストデバイス9に転送する。エラーの検出及び訂正に関する情報(ECC情報)が、データDQ1と共に、ホストデバイス9に転送されてもよい。
【0198】
ホストデバイス9は、データDQ1(及びECC情報)を、コントローラ2から受ける。例えば、ホストデバイス9に対するデータDQ1の転送は、1サイクル当たり8ビットずつ16サイクルにわたって、実行される。
【0199】
以上のように、本実施形態のメモリデバイス1及びメモリモジュール(メモリシステム)MMの読み出しシーケンスが、終了する。
【0200】
上述のように、実施形態のメモリデバイス1は、読み出しコマンドCMD1の受信後に、アドレス(ライトバックアドレス)ADR2を受けた場合に、読み出しシーケンスにおけるウェアレベリング処理LVを実行する。読み出しコマンドCMD1の受信後にアドレスADR2の受信(及び送信)が無い場合、実施形態のメモリデバイス1は、ウェアレベリング処理LVなしに、読み出しアドレスADR1から取得されたデータを、通常のライトバック動作WBによって、読み出しアドレスADR1に書き戻してもよい。この場合において、ライトバック動作WBは、バンクバッファ回路17内のデータDTを用いずに、センスアンプ回路140内に保持されたデータを用いて実行されてもよい。
【0201】
(3)変形例
図13を参照して、実施形態のメモリデバイス1の変形例について、説明する。
図13は、本実施形態のメモリデバイス1の変形例を示すタイミングチャートである。
【0202】
図13に示されるように、読み出しシーケンス中におけるウェアレベリング処理LVが実行される場合、コントローラ2は、プリフィックスコマンドCMDxを、本実施形態のメモリデバイス1に供給してもよい。
【0203】
プリフィックスコマンドCMDxは、読み出しアドレスADR1の前に、コントローラ2からメモリデバイス1に送られる。
【0204】
プリフィックスコマンドCMDxは、ライトバック動作WBの対象のデータに対するウェアレベリング処理LVの実行(データのコピーの実行)を、メモリデバイス1に通知する。
【0205】
メモリデバイス1は、プリフィックスコマンドCMDxの受信によって、読み出しアドレスADR1及び読み出しコマンドCMD1の後に、ライトバックアドレスADR2が送信されることを、認識できる。
【0206】
図13に示されるように、ライトバックアドレスADR2のメモリセルMCに対するリセット動作は、読み出しアドレスADRのメモリセルに対するリセット動作と実質的に同時に実行されてもよい。
尚、ライトバックアドレスADR2において、ライトバック動作WBの前のリセット動作は、実行されなくともよい。
【0207】
本実施形態において、読み出しシーケンスにおけるウェアレベリング処理時、バンクBK<i>の或るアドレスから取得されたデータが、別のバンクBK<j>に書き戻される例が示されている。但し、本実施形態において、バンクBK<i>の或るアドレスから読み出されたデータが、ウェアレベリング処理によって、同じバンクBK<i>内の別のアドレスに書き戻されてもよい。この場合において、バンクBK<j>内におけるライトバック動作の対象のロウアドレス及びカラムアドレスの少なくとも一方は、バンクBK<i>内における読み出し動作の対象のロウアドレス及びカラムアドレスと異なる。
【0208】
(4)まとめ
自己参照読み出しを含む読み出しシーケンスが、MRAMのようなメモリデバイスに用いられた場合、メモリセル内のデータが、参照データの書き込み動作によって破壊される。さらに、自己参照読み出しにおいて、破壊されたデータの復元のために、データの書き戻し(ライトバック動作)が、メモリセルに対して実行される。
【0209】
このように、読み出しシーケンスにおいてもデータの書き込みが発生する場合、メモリデバイスのメモリ空間内における書き込み回数は、より増加する。
【0210】
書き込み動作によって、メモリセル内のMTJ素子は、劣化する可能性がある。それゆえ、或るメモリセルに書き込み動作が集中した場合、メモリデバイスの使用の寿命が、短くなる。
【0211】
したがって、メモリセルの摩耗の平滑化のために、ウェアレベリング処理が、書き込み動作を含む読み出しシーケンスを実行するメモリデバイスに対して適用されることが好ましい。
【0212】
書き込み動作を含む読み出しシーケンスに対してウェアレベリング処理が適用される場合、一般的なメモリデバイスは、ウェアレベリング処理を、ユーザーからのコマンドに応じた読み出しシーケンスに連続して実行する。
【0213】
このため、一般的なメモリデバイスにおいて、或るコマンドに応じた読み出しシーケンス及びウェアレベリング処理が完了するまでの期間が、長期化する。
【0214】
また、読み出しシーケンスにウェアレベリング処理が適用された場合、一般的なメモリデバイスは、ユーザーからの読み出しコマンドに応じた読み出しシーケンスの実行回数と同じ回数のウェアレベリング処理を実行することになる。このため、一般的なメモリデバイスは、消費電力が増大する。
【0215】
さらに、一般的なメモリデバイスにおいて、ウェアレベリング処理の頻度が高くなると、メモリデバイスがビジー状態になる頻度が高くなる。ウェアレベリング処理の実行時、ユーザーからのコマンドに応じた動作シーケンスとは別途に、ウェアレベリング処理のためのデータの読み出し、及び、データの書き込みが、実行される。このため、一般的なメモリデバイスにおいて、ユーザーからのコマンドに対する応答性が、劣化する。
【0216】
本実施形態のメモリデバイス1及びメモリシステムMMは、読み出しシーケンス中に、データの書き戻し(ライトバック動作)と共通化されたウェアレベリング処理を、実行する。
【0217】
図14は、実施形態のメモリデバイス1の比較例を説明するための模式図である。
図14の(a)は、一般的なメモリデバイスの読み出しシーケンス及びウェアレベリングシーケンスを示している。
図14の(b)は、本実施形態のメモリデバイス1のウェアレベリング処理を含む読み出しシーケンスを示している。
【0218】
図14の(a)に示されるように、一般的なメモリデバイスは、時刻taにおいて、読み出しシーケンスを開始する。
一般的なメモリデバイスは、或る期間内において、読み出しコマンド及び読み出しアドレスを受ける。
【0219】
一般的なメモリデバイスは、コマンド及びアドレスに基づいて、自己参照読み出しによるデータのセンス及び確定のための動作を、実行する。この後、一般的なメモリデバイスは、読み出しアドレスに対してライトバック動作を実行する。
【0220】
一般的なメモリデバイスは、得られた読み出しデータを、コントローラに送る。
これによって、時刻tbにおいて、読み出しシーケンスが、終了する。
【0221】
このように、時刻taから時刻tbまでの期間T1において、一般的なメモリデバイスにおける読み出しシーケンスが、実行される。
【0222】
一般的なメモリデバイスは、読み出しシーケンスが完了した後(例えば、時刻tb)において、ウェアレベリングシーケンスを、開始する。
【0223】
一般的なウェアレベリングシーケンスにおいて、一般的なメモリデバイスは、書き込みアドレス(ウェアレベリングアドレス)、書き込みコマンド及び書き込みデータを、或る期間に受ける。
【0224】
一般的なメモリデバイスは、書き込みコマンドに応じて、書き込みデータを、書き込みアドレスに指定されたメモリセル内に書き込む。ウェアレベリングシーケンスによって、データが、読み出しアドレスとは別の書き込みアドレスに書き込まれる。
これによって、ウェアレベリングシーケンスは、時刻tcにおいて、終了する。
【0225】
このように、時刻tbから時刻tcまでの期間T2において、一般的なウェアレベリングが、実行される。
【0226】
一般的なメモリデバイスは、読み出しシーケンスの開始からウェアレベリングの終了まで、期間T1と期間T2との合計の期間Taを要する。
【0227】
図14の(b)に示されるように、本実施形態のメモリシステムMMにおいて、本実施形態のメモリデバイス1は、読み出しシーケンス時において、読み出しコマンドCMD1及び読み出しアドレスADR1と共に、読み出しアドレスADR1とは異なるライトバックアドレスADR2を、コントローラ2から受ける。
【0228】
本実施形態のメモリデバイス1は、読み出しコマンドCMD1及び読み出しアドレスADR1に基づいて、自己参照読み出しにおけるデータのセンス及び確定のための動作を実行する。
【0229】
例えば、ライトバックアドレスADR2は、自己参照読み出しの実行と並行して、メモリデバイス1に送られる。それゆえ、本実施形態において、ライトバックアドレスADR2の受信のために追加される期間は、読み出しシーケンス中に発生しない。
【0230】
データの確定後において、本実施形態のメモリデバイス1は、ウェアレベリング処理を含むライトバック動作を、読み出しアドレスADR1とは異なるライトバックアドレスADR2に対して実行する。
それゆえ、本実施形態において、ウェアレベリング処理(ウェアレベリングシーケンス)のための期間が、読み出しシーケンスの期間とは別途に発生しない。
【0231】
また、本実施形態のメモリデバイス1は、自己参照読み出しによって読み出され且つバンクバッファ回路17に保持されたデータを、ウェアレベリング処理の書き込みデータに用いる。
それゆえ、本実施形態において、ウェアレベリング処理の書き込みデータの転送のための期間は、発生しない。
【0232】
このように、本実施形態のメモリデバイス1は、ライトバック動作を実行しつつ、ウェアレベリング処理を実行する。
【0233】
例えば、ウェアレベリング処理を含むライトバック動作の実行後、メモリデバイス1は、データの送信を実行する。データの送信は、ライトバック動作と並行して実行されてもよい。
ある時刻において、データの送信は、終了する。
【0234】
本実施形態のメモリデバイス1は、ウェアレベリング処理及び読み出しシーケンスを、期間Ta(=T1+T2)より短い期間Tbにおいて、実行及び終了する。例えば、期間Tbは、一般的なメモリデバイスの読み出しシーケンスの実行期間T1と実質的に同じ長さである。
【0235】
以上のように、本実施形態のメモリデバイス1及びメモリシステムMMは、読み出しシーケンス及びウェアレベリング処理を含む動作の長期化を、回避できる。
【0236】
また、一般的なメモリデバイスは、読み出しシーケンスとウェアレベリングシーケンスとを互い異なるシーケンスとして実行する。それゆえ、一般的なメモリデバイスにおいて、ライトバック動作とウェアレベリング処理のデータの書き込みとのそれぞれで、書き込み動作に起因する消費電力が発生する。このため、一般的なメモリデバイスにおいて、読み出しシーケンスとウェアレベリングシーケンスとを含む動作シーケンスの消費電力は、比較的大きくなる。
【0237】
本実施形態のメモリデバイス1は、ウェアレベリング処理のデータの書き込み(データのコピー)を、読み出しシーケンスにおけるライトバック動作を用いて実行する。
それゆえ、本実施形態において、ウェアレベリング処理の書き込み動作(データのコピー)は、ライトバック動作に包含される。したがって、本実施形態において、ウェアレベリング処理のための書き込み動作が、読み出しシーケンス中に行われる書き込み動作から独立に発生することはない。
【0238】
この結果として、本実施形態のメモリデバイス1及びメモリシステムMMは、ライトバック動作とウェアレベリング処理との併用によって、書き込み回数の増加、及び、消費電力の増加を、抑制できる。
【0239】
以上のように、本実施形態のメモリデバイス及びメモリシステムは、動作特性を改善できる。
【0240】
(5)その他
実施形態において、メモリデバイス1が、MRAMである場合について、例示されている。但し、実施形態のメモリデバイス1は、MRAM以外のメモリデバイスでもよい。例えば、実施形態のメモリデバイス1は、遷移金属酸化物素子をメモリ素子に用いた抵抗変化メモリ(例えば、ReRAM)、相変化素子をメモリ素子に用いた相変化メモリ(例えば、PCRAM)、強誘電体素子をメモリ素子に用いた強誘電体メモリ(例えば、FeRAM)でもよい。
【0241】
実施形態のメモリデバイス1において、ウェアレベリング処理を含むライトバック動作が実行されるバンクBKを含む半導体チップが、データが読み出されるバンクBKを含む半導体チップと異なってもよい。また、ウェアレベリング処理を含むライトバック動作が実行されるバンクBKが、データが読み出されるバンクBKを含むメモリデバイスと異なるメモリデバイス内に、設けられてもよい。
【0242】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0243】
1:メモリデバイス、2:コントローラ、9:ホストデバイス、BK:バンク、17:バンクバッファ回路、100:メモリセルアレイ、MC:メモリセル。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14