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特開2024-20030生産設備における二酸化炭素排出量測定装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024020030
(43)【公開日】2024-02-14
(54)【発明の名称】生産設備における二酸化炭素排出量測定装置
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/04 20120101AFI20240206BHJP
【FI】
G06Q50/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022122885
(22)【出願日】2022-08-01
(71)【出願人】
【識別番号】000223193
【氏名又は名称】東罐興業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000419
【氏名又は名称】弁理士法人太田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】青木 一真
(72)【発明者】
【氏名】中山 健
【テーマコード(参考)】
5L049
【Fターム(参考)】
5L049CC03
(57)【要約】
【課題】より詳細な二酸化炭素の排出量分析を可能としつつ、さらには任意の時点における長期的傾向と短期的傾向とを容易に把握することが可能な生産設備における二酸化炭素(CO)排出量測定装置を提供する。
【解決手段】本発明のCO排出量測定装置は、所望の測定期間における生産設備の稼働に基づく二酸化炭素の排出量を測定するCO排出量測定装置であって、前記生産設備における稼働量を計測する稼働量計測センサから稼働量データを受信する稼働量データ受信装置と、前記稼働量計測センサから前記稼働量データの積算値に対応したパルス信号と前記稼働量データの瞬時値に対応したアナログ信号とを受信し、予め取得したCO係数と少なくとも前記パルス信号とに基づいて前記生産設備におけるCO排出量を算出する演算装置と、を備えた。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所望の測定期間における生産設備の稼働に基づく二酸化炭素の排出量を測定するCO排出量測定装置であって、
前記生産設備における稼働量を計測する稼働量計測センサから稼働量データを受信する稼働量データ受信装置と、
前記稼働量データの積算値に対応したパルス信号と前記稼働量データの瞬時値に対応したアナログ信号とを受信し、予め取得したCO係数と少なくとも前記パルス信号とに基づいて前記生産設備におけるCO排出量を算出する演算装置と、
を備えたことを特徴とするCO排出量測定装置。
【請求項2】
前記生産設備は、容器を成形する容器成形装置である、請求項1に記載のCO排出量測定装置。
【請求項3】
前記稼働量計測センサは、
前記生産設備に供給される電力量を測定する電力センサと、
前記生産設備に供給されるエアー流量を測定するエアー流量センサと、
前記生産設備で生産される成形品の成形数をカウントする成形数カウンタと、のうち少なくとも1つを含み、
前記演算装置は、前記電力センサ、前記エアー流量センサ、及び前記成形数カウンタからの計測信号を受信して前記CO係数に基づいてそれぞれCO排出量を算出する、請求項2に記載のCO排出量測定装置。
【請求項4】
前記生産設備に供給される工業用水の水量を計測する水量センサと、
前記生産設備に供給されるガス量を計測するガス量センサと、をさらに含み、
前記演算装置は、前記水量センサおよび前記ガス量センサからの計測信号をさらに受信して前記CO係数に基づいてそれぞれ前記CO排出量を算出する、請求項3に記載のCO排出量測定装置。
【請求項5】
前記電力センサを前記生産設備の電力供給ラインにクランプすること、前記エアー流量センサを前記生産設備のエア供給ラインにクランプすること、及び、前記水量センサを前記生産設備の水供給ラインにクランプすること、の少なくとも1つを行うクランプ接続手段、をさらに含むことを特徴とする請求項4に記載のCO排出量測定装置。
【請求項6】
前記演算装置は、前記生産設備で用いられる前記電力量、前記エアー流量、前記水量、および前記ガス量の所定期間内における相関を検出する、請求項4に記載のCO排出量測定装置。
【請求項7】
前記演算装置は、測定した前記電力量、前記エアー流量、前記水量、および前記ガス量に基づく各CO排出量を、互いに異なる複数の表示形態で選択可能に表示画面に表示する、請求項4~6のいずれか一項に記載のCO排出量測定装置。
【請求項8】
前記異なる複数の表示形態は、
(a)前記電力量、前記エアー流量、前記水量および前記ガス量に基づく、各CO排出量をそれぞれ積算したCO排出量の一覧画面、
(b)前記電力量、前記エアー流量、前記水量および前記ガス量に基づく、所定期間におけるパラメータ毎のCO排出量の積算値を示す積算値グラフ、
(c)前記エアー流量、前記水量および前記ガス量の少なくとも1つにおける瞬時値を示す瞬時値グラフ、および、
(d)測定時間内における前記各パラメータの積算値およびそのCO排出量を算出したデータ抽出画面、
を含むことを特徴とする、請求項7に記載のCO排出量測定装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工場などで製品を製造する過程で排出される二酸化炭素の量を可視化可能な生産設備における二酸化炭素排出量測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、産業分野では日常生活に必要な物資が日々生産されている。かような物資の一例として例えば紙コップの製造では、公知の打ち抜き機により扇形状に打ち抜いたシート状の紙片を紙コップ成形機へ移送して成形することで行われている。
【0003】
一般的に物資の製造では、水や電気を利用して機械を稼働することによって原材料を目的の製品に加工することが行われる。従って、ある製品を製造する過程で多くのエネルギーが消費されると共に、この製造の過程で二酸化炭素も排出されることになる。
【0004】
ところで近年では特に、大気中の二酸化炭素やメタンなどのいわゆる温室効果ガスの増大が顕著であり、これによって地球全体が温暖化して自然環境や生活環境などへの悪影響が懸念されている。従って、下記特許文献に例示されるように、工場内あるいは家庭内で温室効果ガスとしての二酸化炭素の排出量を把握し得るシステムが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001-183186号公報
【特許文献2】特開2011-186570号公報
【特許文献3】特開2013-25487号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
たしかに上記した特許文献によれば、電気機器ごとの消費電力を把握して機器ごとに二酸化炭素の排出量を把握したり、生産設備で消費されたエネルギーに由来する二酸化炭素排出量と用役設備で生産されたエネルギーに由来する二酸化炭素排出量と算出して比較したりできる点で、ユーザーの利便性向上に一定の寄与はある。
【0007】
一方で上記した特許文献を含む従来技術では、単独の電気機器や生産設備におけるエネルギーの要素ごとで二酸化炭素の排出量を把握するには至っておらず詳細な排出量分析を実施できてはいない。さらに上記した従来技術の構成では、任意の時点における二酸化炭素の排出に係る長期的傾向と短期的傾向とを把握するといった視点を確立するまでには至っておらず、少なくともこの点において二酸化炭素の排出量分析には未だ向上の余地は大きいと言える。
【0008】
本発明は、上記した課題を一例に鑑みて為されたものであり、より詳細な二酸化炭素の排出量分析を可能としつつ、さらには任意の時点における長期的傾向と短期的傾向とを容易に把握することが可能な生産設備における二酸化炭素(CO)排出量測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一実施形態におけるCO排出量測定装置は、(1)所望の測定期間における生産設備の稼働に基づく二酸化炭素の排出量を測定するCO排出量測定装置であって、前記生産設備における稼働量を計測する稼働量計測センサから稼働量データを受信する稼働量データ受信装置と、前記稼働量計測センサから前記稼働量データの積算値に対応したパルス信号と前記稼働量データの瞬時値に対応したアナログ信号とを受信し、予め取得したCO係数と少なくとも前記パルス信号とに基づいて前記生産設備におけるCO排出量を算出する演算装置と、を備えたことを特徴とする。
【0010】
また、上記した(1)に記載のCO排出量測定装置においては、(2)前記生産設備は、容器を成形する容器成形装置であることが好ましい。
【0011】
また、上記した(2)に記載のCO排出量測定装置においては、(3)前記稼働量計測センサは、前記生産設備に供給される電力量を測定する電力センサと、前記生産設備に供給されるエアー流量を測定するエアー流量センサと、前記生産設備で生産される成形品の成形数をカウントする成形数カウンタと、と少なくとも1つを含み、前記演算装置は、前記電力センサ、前記エアー流量センサ、及び前記成形数カウンタからの計測信号を受信して前記CO係数に基づいてそれぞれCO排出量を算出することが好ましい。
【0012】
また、上記した(3)に記載のCO排出量測定装置においては、(4)前記生産設備に供給される工業用水の水量を計測する水量センサと、前記生産設備に供給されるガス量を計測するガス量センサと、をさらに含み、前記演算装置は、前記水量センサおよび前記ガス量センサからの計測信号をさらに受信して前記CO係数に基づいてそれぞれ前記CO排出量を算出することが好ましい。
【0013】
また、上記した(4)に記載のCO排出量測定装置においては、(5)前記電力センサを前記生産設備の電力供給ラインにクランプすること、前記エアー流量センサを前記生産設備のエア供給ラインにクランプすること、及び、前記水量センサを前記生産設備の水供給ラインにクランプすること、の少なくとも1つを行うクランプ接続手段、をさらに含むことことが好ましい。
【0014】
また、上記した(4)に記載のCO排出量測定装置においては、(6)前記演算装置は、前記生産設備で用いられる前記電力量、前記エアー流量、前記水量、および前記ガス量の所定期間内における相関を検出することが好ましい。
【0015】
また、上記した(4)~(6)のいずれかに記載のCO排出量測定装置においては、(7)前記演算装置は、測定した前記電力量、前記エアー流量、前記水量、および前記ガス量に基づく各CO排出量を、互いに異なる複数の表示形態で選択可能に表示画面に表示することが好ましい。
【0016】
また、上記(7)に記載のCO排出量測定装置においては、(8)前記異なる複数の表示形態は、(a)前記電力量、前記エアー流量、前記水量および前記ガス量に基づく、各CO排出量をそれぞれ積算したCO排出量の一覧画面、(b)前記電力量、前記エアー流量、前記水量および前記ガス量に基づく、所定期間におけるパラメータ毎のCO排出量の積算値を示す積算値グラフ、(c)前記エアー流量、前記水量および前記ガス量の少なくとも1つにおける瞬時値を示す瞬時値グラフ、および、(d)測定時間内における前記各パラメータの積算値およびそのCO排出量を算出したデータ抽出画面、を含むことが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、単体の生産設備における詳細な二酸化炭素の排出量分析を実行しつつ、製品の製造やサービスの提供の過程における任意の時点での二酸化炭素排出の長期的傾向と短期的傾向とを容易に把握することが可能となり、ユーザに対する装置の利便性を大幅に向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本実施形態のCO排出量測定装置の模式図である。
図2】本実施形態のCO排出量測定装置における演算装置の一部を示す模式図である。
図3】本実施形態のCO排出量測定装置を含む生産システムの模式図である。
図4】本実施形態の生産設備とCO排出量測定装置のセンサ部とを接続するクランプ接続手段の一例を示す模式図である。
図5】本実施形態の生産設備とCO排出量測定装置のセンサ部とを接続するクランプ接続手段の他の一例を示す模式図である。
図6】本実施形態のCO排出量測定装置によるCO排出量結果の一覧画面(DP-1)の一例を示す図である。
図7】本実施形態のCO排出量測定装置による各種の表示形態を選択する選択画面の一例を示す図である。
図8】本実施形態のCO排出量測定装置によるパラメータ毎の積算値確認画面(DP-2)の一例を示す図である。
図9】本実施形態のCO排出量測定装置による個別パラメータ瞬時値確認画面(DP-3)の一例を示す図である。
図10】本実施形態のCO排出量測定装置による特定期間におけるパラメータ毎のCO排出量抽出画面(DP-4)の一例を示す図である。
図11】本実施形態におけるCO排出量測定方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、適宜図面を参照しつつ、本発明のCO排出量測定装置およびCO排出量測定方法について具体的に説明する。なお、以下の実施形態は本発明の一例を説明するものであり、本発明を意図せず限定するものではなく、他の公知の構成を適宜補完してもよい。例えば以下で詳述する構成以外の装置構成については公知の機構を本発明の要旨を阻害しない限りにおいて援用してもよい。また、以下ではCO排出量測定装置を搭載する生産設備として容器成形装置を例示するが、容器成形装置の細部構成については、例えば特開2004-154959号公報などを含む公知の容器成形装置の構成を適宜援用してもよい。
【0020】
[CO排出量測定装置]
図1および図2に、本実施形態におけるCO排出量測定装置100を示す。CO排出量測定装置100は、所望の測定期間における生産設備の稼働に基づく二酸化炭素の排出量を測定する機能を有して構成されている。
【0021】
ここで本実施形態における「生産設備」とは、水や空気などの資源を用いて日常生活に必要な物資並びに機械及びその部品などを生産する各種の設備を言う。かような生産設備としては、例えば、容器を成形する容器成形装置、車両やその構成部品を生産するプレス加工機や成型機などが例示できる。
【0022】
また、容器成形装置が成形する容器としては、例えば紙コップや樹脂製容器皿など公知の容器形態が例示できる。以下では、本実施形態における生産設備の好適な一例として、図3図5などに例示するごとき、紙コップを成形する容器成形装置200を例にして説明を継続する。
【0023】
同図に示すとおり、本実施形態のCO排出量測定装置100は、一例として、金属や樹脂で形成された装置収容枠体としてのフレームFM内に収容される。なお図1に示すように、フレームFMの底面には公知のローラー機構などで構成されたキャスターCTが設けられていることが好ましい。これにより、図3に示すように、容器成形装置200にフレームFMを移動して横付けするなど、CO排出量測定装置100を容器成形装置200に併設することができる。
【0024】
図1及び図2から理解されるとおり、本実施形態におけるCO排出量測定装置100は、稼働量データ受信制御ユニット30を備えている。
稼働量データ受信制御ユニット30は、前記した生産設備における稼働量を計測する稼働量計測センサ10から稼働量データを受信可能な「稼働量データ受信装置」として機能する。具体的に稼働量データ受信制御ユニット30は、図2及び図3に示すように、後述する各種の稼働量計測センサ10と電気的に接続されて、これらセンサからの稼働量データを受信可能な公知の受信機が適用できる。
【0025】
上述のとおり生産設備として本例では容器成形装置200が例示できることから、稼働量計測センサ10は、電力センサ10A、エアー流量センサ10B、および、成形数カウンタ10C、のうち少なくとも1つを含んでいてもよい。
【0026】
電力センサ10Aは、生産設備としての容器成形装置200に供給される電力量を測定する機能を有する。かような電力センサ10Aとしては、電力を計測可能な公知のセンサが適用できる。
【0027】
エアー流量センサ10Bは、生産設備としての容器成形装置200に供給されるエアーの流量を測定する機能を有する。エアー流量センサ10Bとしては、例えば熱式流量計や超音波式流量計など気体の流量を計測可能な公知の流量計が適用できる。
【0028】
成形数カウンタ10Cは、生産設備としての容器成形装置200で生産される成形品(本例では紙コップ)の成形数をカウントする機能を有する。成形数カウンタ10Cとしては、例えば赤外線などを用いた光学式カウンタなど公知の計数機器が適用できる。
【0029】
なお図2などに示すように、本実施形態の稼働量計測センサ10は、上記の各センサに加え、水量センサ10Dとガス量センサ10Eの少なくとも1つをさらに含んで構成されていてもよい。
【0030】
水量センサ10Dは、前記した生産設備に供給される工業用水の水量を計測する機能を有する。かような水量センサ10Dとしては、例えばコリオリ式流量計など流体の流量を計測可能な公知の流量計が適用できる。
【0031】
ガス量センサ10Eは、この生産設備に供給されるガス量を計測する機能を有する。かようなガス量センサ10Eとしては、例えばコリオリ式流量計など流体の流量を計測可能な公知の流量計が適用できる。
【0032】
なお本実施形態のCO排出量測定装置100は、稼働量計測センサ10を生産設備の供給ラインや取出しラインにクランプするクランプ接続手段20をさらに含むことが好ましい。
【0033】
一例として、例えば図4に例示するように、電力センサ10Aを生産設備(本例では容器成形装置200)の電力供給ラインECに対してクランプ接続手段20を介して接続できる。より具体的には、同図に示すように、電力供給ラインECに予め取り付けた取付部(例えば公知の嵌合凹部)に対し、ワンタッチ接続可能なクランプ接続手段20を有する電力センサ10Aをドッキングすることができる。一例として、本実施形態では、クランプ接続可能なオムロン株式会社製小型電力量モニタKM-N1-FLKを用いている。
【0034】
なお、かような電力供給ラインECに対する取付部やドッキングの構造などは公知の取付部品を適用できる。また、クランプ接続手段20としては、上記に限られず、他の公知のラインセパレータ(クランプアダプター)を適用してもよい。
【0035】
なお成形数カウンタ10Cは、図5に例示するように、公知のマグネットスタンドMSに上記した成形数カウンタ10Cを取り付けて用いることができる。なお成形数カウンタ10Cの取付態様は、上記のマグネットスタンドMSに計測センサを取り付ける態様に限られず、例えば後述するクランプ接続手段20を適用する手法の他にも、公知の種々の設置方法を適用することができる。一例として、本実施形態では、株式会社キーエンス製成形数カウントセンサLR-ZB100Nを用いている。
【0036】
なお成形品取出しラインRPに対する取付部やドッキングの構造などは公知の取付部品を適用できる。また、この図5の場合においても、必要に応じてクランプ接続手段20を適用してもよい。かようなクランプ接続手段20の一例として、成形品取出しラインRPの一部を把持可能な公知のクランプ機構を適用できる。
【0037】
図4を用いてクランプ接続手段20の例示を説明したが、本実施形態の稼働量計測センサ10とクランプ接続手段20は、例えば公知のクランプオン式流量センサに例示されるようなクランプ構造とセンサ機構とが一体構造となって構成されていてもよい。
【0038】
また、図4では電力センサ10Aの例を説明したが、クランプ接続手段20と接続される稼働量計測センサ10としてエアー流量センサ10B、及び水量センサ10Dについても同様にクランプ接続手段20を適用してもよい。
【0039】
すなわち、本実施形態では生産設備にエアーを供給するエアー供給ライン(不図示)に対して冶具を介してエアー流量センサ10Bを取り付けて測定しているが、この態様には限られない。すなわちエアー流量センサ10Bの他の取付態様として、例えば上記エア供給ラインに予め取り付けた取付部に対し、ワンタッチ接続可能なクランプ接続手段20を有するエアー流量センサ10Bをドッキングしてもよい。
【0040】
同様に、例えば本実施形態では生産設備に水(工業用水)を供給する水供給ライン(不図示)に対して治具を介して水量センサ10Dを取り付けて測定しているが、この態様には限られない。すなわち水量センサ10Dの他の取付態様として、例えば上記水供給ラインに予め取り付けた取付部に対し、ワンタッチ接続可能なクランプ接続手段20を有する水量センサ10Dをドッキングしてもよい。
【0041】
同様に、例えば本実施形態では生産設備にガスを供給する既存のガス機器に配線を追加することでガス量センサ10Eを構成してガス量を検出しているが、この態様に限られない。例えば公知のガス供給ライン(不図示)に対してワンタッチ接続可能なクランプ接続手段20を適用してガス量センサ10Eを取り付けしてもよい。
【0042】
なおクランプ接続手段20は、上記したセンサ(電力センサ10Aやエアー流量センサ10Bなど上記したパラメータを計測可能な各種のセンサ)のすべてに対して適用される必要は必ずしもない。すなわち、本実施形態のクランプ接続手段20は、上記した各センサのうち少なくとも1つに対して具備される形態であってもよい。
【0043】
稼働量データ受信制御ユニット30は、図2及び図3に示すように、上記した稼働量計測センサ10から、稼働量データの積算値に対応したパルス信号と稼働量データの瞬時値に対応したアナログ信号とを受信し、予め取得したCO係数を用いて生産設備におけるCO排出量を算出する「演算装置」としても機能する。
【0044】
具体的に稼働量データ受信制御ユニット30は、例えば公知のCPU(Central Processing Unit)等の一つ又は複数のプロセッサと、当該プロセッサと通信可能に接続されたそれぞれ公知のRAM(Random Access Memory)又はROM(Read Only Memory)等の一つ又は複数のメモリを備えて構成される。このように稼働量データ受信制御ユニット30においては、一つ又は複数のプロセッサが、上記したCO係数を用いた公知の二酸化炭素排出量演算プログラムを実行することで、上記生産設備におけるCO排出量を算出することが可能となっている。
【0045】
すなわち稼働量データ受信制御ユニット30は、電力センサ10A、エアー流量センサ10B、及び成形数カウンタ10Cからの計測信号(稼働量データ)を受信してCO係数に基づいてそれぞれCO排出量を算出する。また、稼働量計測センサ10に上記した水量センサ10Dおよびガス量センサ10Eが含まれている場合には、稼働量データ受信制御ユニット30は、水量センサ10Dおよびガス量センサ10Eからの計測信号(稼働量データ)をさらに受信してCO係数に基づいてそれぞれCO排出量を算出することができる。
【0046】
なお上記したCO係数を用いた二酸化炭素の排出量算出方法については、例えば特開2011-186570号公報、特開2013-025487号公報などに開示されるように、環境省が定めた公知の二酸化炭素排出係数を用いた算出手法を適用することができる。すなわち本実施形態における稼働量データ受信制御ユニット30の上記ROMにこの公知の二酸化炭素排出係数を含む公知の算出プログラムが格納されていてもよいし、クラウドなど外部サーバーから上記算出プログラムをダウンロードしてRAMに格納する態様であってもよい。
【0047】
より具体的には図3及び図6などに示すように、稼働量データ受信制御ユニット30は、液晶ディスプレイなど公知のタブレット端末TTと情報通信可能に構成されてなり、生産設備(本例では容器成形装置200)が成形品(本例では紙コップ)を所定数だけ成形する期間内における、前記した電力量、エアー流量、水量、およびガス量を当該タブレット端末TTを介してユーザーに提示する機能を有していてもよい。
【0048】
すなわち図6には、上記期間内におけるCO排出量確認画面DP-1が例示されている。このCO排出量確認画面DP-1では、成形品のカウントを開始した計測開始日時と、カウントを終了した計測終了日時が示されている。
【0049】
また、図6に示すCO排出量確認画面DP-1では、この期間内に使用された電力量、水量、エアー流量およびガス量について、それぞれCO排出量(単位:Kg・CO)が列挙して提示されている。
【0050】
さらに図6に示すCO排出量確認画面DP-1では、上記した電力量、水量、エアー流量およびガス量についてのCO排出量が合算されて、成型機1台あたりのCO排出量(単位:Kg・CO)も提示される。
このようにCO排出量確認画面DP-1では、前記した電力量、エアー流量、水量およびガス量に基づく、各CO排出量をそれぞれ積算した値が並列的に表示された一覧画面が表示される。これにより、生産設備における各パラメータが長期的にどのような変化をしているのか(長期的な傾向)が可視化される。
【0051】
また、図7~10に例示するように、本実施形態の稼働量データ受信制御ユニット30は、測定した電力量、エアー流量、水量、およびガス量に基づく各CO排出量を、互いに異なる複数の表示形態で選択可能に表示画面に表示する制御を行ってもよい。これによりユーザーは、図7に示す表示画面から、それぞれ後述する画面のうちのいずれかを拡大して視認することが可能となっている。なお図7に示す各画面の位置は、あくまでも一例であって、他の順序で複数の表示形態を選択可能に表示画面に表示してもよい。
【0052】
まず図7の表示画面のうち左上枠には、図6で例示したCO排出量確認画面DP-1が配置されている。従って、ユーザーは、不図示のカーソルなど公知の指示手段によってこの左上枠を選択することで、例えば次画面にてCO排出量確認画面DP-1が表示されることになる。
【0053】
図7の表示画面のうち右上枠には、図8で例示するパラメータ毎の積算値確認画面DP-2が配置されている。すなわち、図8に例示するように、パラメータ毎の積算値確認画面DP-2では、例えば上記した電力量、エアー流量、水量、およびガス量が、個別(パラメータ毎)にグラフ化されて表示画面に表示される。このとき、図示されるように、各パラメータにおける所定期間毎(図示では1分間毎)の積算値が時系列に沿って表示される。これにより、各パラメータがどのような時間経過に伴う変化をしているのかが可視化される。
【0054】
このようにパラメータ毎の積算値確認画面DP-2では、前記した電力量、エアー流量、水量およびガス量に基づく、所定期間におけるそれぞれの値の積算値を示す積算値グラフが表示される。これにより、生産設備における各パラメータが短期的にどのような変化をしているのかが可視化される。
なお、本例では所定期間「1分間毎」を例示したが、所定期間としては他の基準でもよく、例えば成形装置の場合には成形数など「生産数」を所定期間の基準としてもよい。
【0055】
また本実施形態の稼働量データ受信制御ユニット30は、このパラメータ毎の積算値確認画面DP-2において、生産設備(本例では容器成形装置200)で用いられる電力量、エアー流量、水量、およびガス量の所定期間内における相関を検出してもよい。
【0056】
より具体的に、図8に示すように、例えば電力量、エアー流量、水量およびガス量の所定期間(本例では1分間毎)におけるそれぞれの増減割合を比較し、例えばエア―流量の増減が他のパラメータの増減と一致していないとする。このとき稼働量データ受信制御ユニット30は、エアー流量が他のパラメータに対して相関が取れていないと検出することができる。
【0057】
なおパラメータ毎の相関検出については、上記した手法に限られず、例えばAIを用いたディープラーニングなどの機械学習を用いて上記相関の判定および検出を行ってもよい。また、相関の判定を行うための「所定期間」としては、本例に限られず、例えば5分毎の積算値であってもよいし、ある任意の区間であってもよいし、ある任意の生産が完了するまでの期間であってもよい。
【0058】
次に、図7の表示画面のうち左下枠には、図9で例示する個別パラメータ瞬時値確認画面DP-3が配置されている。上述したとおり、本実施形態の稼働量データ受信制御ユニット30は、上記した稼働量計測センサ10から、稼働量データの瞬時値に対応したアナログ信号も受信している。従って図9に例示するように、個別パラメータ瞬時値確認画面DP-3では、例えば上記したエアー流量に関する瞬時値(その時刻における稼働量としての流量値)がグラフ化されて表示画面に表示される。
【0059】
なお図9に示す個別パラメータ瞬時値確認画面DP-3ではエアー流量に関する瞬時値が例示されているが、稼働量データ受信制御ユニット30が上記したアナログ信号を受信可能な限りにおいて、例えば電力量や水量など他のパラメータにおける稼働量の瞬時値を表示してもよい。また、個別パラメータ瞬時値確認画面DP-3では、ユーザーの選択に応じて、上記した各パラメータの瞬時値グラフが表示可能となっていてもよい。
このように個別パラメータ瞬時値確認画面DP-3では、生産設備の稼働で用いられる各パラメータの瞬時値グラフが表示される。これにより、生産設備における各パラメータが短期的にどのような変化をしているのか(短期的な傾向)が可視化される。
【0060】
次に、図7の表示画面のうち右下枠には、図10で例示する特定期間(任意の測定時間内)におけるパラメータ毎のCO排出量抽出画面DP-4が配置されている。すなわち、図10に例示するように、特定期間におけるパラメータ毎のCO排出量抽出画面DP-4では、任意に選択した特定の期間における電力量、エアー流量、水量、およびガス量が、個別(パラメータ毎)に数値化されて表示画面に表示される。このとき、図示されるように、ユーザーは、AポイントとBポイントといった任意の期間を入力することで、上記した特定期間を設定することが可能となっている。そしてユーザーが上記した特定期間を入力した後に表示画面上で「読出開始」を選択することで、稼働量データ受信制御ユニット30は、この任意の測定時間内における各パラメータの積算値とCO排出量を数値表示する。
【0061】
また、図10に例示されるように、稼働量データ受信制御ユニット30は、ユーザーが同表示画面上で「グラフ」ボタンを選択した場合には、この特定期間における各パラメータの積算値をグラフ化(一例として棒グラフや折れ線グラフによる表示など)してもよい。
同様に、図10に例示されるように、稼働量データ受信制御ユニット30は、ユーザーが同表示画面上で「データ取出」ボタンを選択した場合には、この特定期間における各パラメータの積算値を外部機器へインポートする制御を行ってもよい。
【0062】
このようにパラメータ毎のCO排出量抽出画面DP-4では、前記した特定期間における電力量、エアー流量、水量およびガス量の積算値とそのCO排出量が数値化されたデータ抽出画面が表示される。これにより、特定期間を長期に設定すれば生産設備における各パラメータの長期的な変化と傾向が可視化されると共に、特定期間を短期に設定すれば各パラメータの短期的な変化と傾向が可視化されることになる。
【0063】
[CO排出量測定方法]
次に図11を参照しつつ、上記した生産設備に対してCO排出量測定装置100を用いて行うCO排出量測定方法について説明する。
【0064】
まずステップ1-1では、CO排出量測定装置100で測定するパラメータの変更が必要か否かを確認画面などを介して決定する。すなわち、例えば生産設備が上記した容器成形装置200の場合には、この容器成形装置200の稼働量は電力やエア流量などが該当する。一方で生産設備が容器成形装置200以外の装置である場合には、上記したエア流量は稼働量として適切でない場合もある。
【0065】
そこでステップ1-1で上記したパラメータの変更が必要であると決定された場合、ユーザーは、続くステップ1-2において、パラメータの設定画面(不図示)などを介してその生産設備に適した1又は複数のパラメータを設定する。これにより、CO排出量測定装置100は、その生産設備に適したパラメータに基づいて稼働量計測センサ10から稼働量データを受信することが可能となる。
【0066】
続くステップ2では、設定された各パラメータに基づいて、上記した手法によって稼働量データの計測がCO排出量測定装置100によって開始される。そしてステップ2で稼働量データの受信が開始された後、続くステップ3では、CO排出量測定装置100は、上述した手法によってこの生産設備におけるCO排出量が計測される。
そしてステップ3で生産設備におけるCO排出量の計測が開始された後は、ステップ4において測定が終了したか否かが判定される。ステップ4で測定が未だ終了していない場合には、ステップ2に戻って稼働量データの受信を継続する。一方で、ステップ4で測定が終了した場合には、続くステップ5に移行する。
【0067】
続くステップ5では、上記したステップ2及びステップ3で実施した計測結果の提示処理が実行される。より具体的に稼働量データ受信制御ユニット30は、図7で例示したCO排出量測定装置による各種の表示形態を選択する選択画面を表示してもよい。これによりユーザーは、さらに所望の画面(例えば図6に示したCO排出量結果の一覧画面など)を引き続き確認することが可能となっている。
【0068】
このときユーザーは、例えば図8図9で示した確認画面を選択することで、生産設備における各パラメータが短期的に(例えば一時的な比較的短い期間において)どのような変化をしているのか把握できる。さらにユーザは、例えば図6で示した確認画面を選択することで、上記した各パラメータが長期的に(例えば1回の測定の全区間など比較的長い期間において)どのような変化をしているのか把握できる。
【0069】
以上説明した本実施形態のCO排出量測定装置およびCO排出量測定方法によれば、製品の製造やサービスの提供の過程における任意の時点での二酸化炭素排出の長期的傾向と短期的傾向とを容易に把握することが可能となり、ユーザに対する装置の利便性を大幅に向上できる。
【0070】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、上述した実施形態に対して更なる修正を試みることは明らかであり、これらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0071】
例えば上記したCO排出量測定装置100を用いて行うCO排出量測定方法においては、ステップ2におけるデータ計測の前段階として、予め定まった期間だけデータ計測を行う固定期間の設定を更に実行してもよい。一例として、ユーザーは、データ計測を行う前に、例えば「1時間」や「1日」あるいは「1月」など固定された期間の入力を行い得る。かような固定期間が設定された後は、上述したとおりステップ3に移行して稼働量データの計測がCO排出量測定装置100によって開始される。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明は、長期的な傾向および短期的な傾向といった複数の観点から二酸化炭素の排出量を視認可能な装置および方法を実現するのに適している。
【符号の説明】
【0073】
100 CO排出量測定装置
10 稼働量計測センサ
20 クランプ接続手段
30 稼働量データ受信制御ユニット
200 容器成形装置(生産設備)
TT タブレット端末(提示手段)

図1
図2
図3
図4
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図11