(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024020035
(43)【公開日】2024-02-14
(54)【発明の名称】情報処理システム及び情報処理方法
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/22 20240101AFI20240206BHJP
【FI】
G06Q50/22
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022122896
(22)【出願日】2022-08-01
(71)【出願人】
【識別番号】390039985
【氏名又は名称】パラマウントベッド株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002848
【氏名又は名称】弁理士法人NIP&SBPJ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石川 隆史
(72)【発明者】
【氏名】中村 侑規
(72)【発明者】
【氏名】古家 和樹
【テーマコード(参考)】
5L099
【Fターム(参考)】
5L099AA13
(57)【要約】
【課題】介助者による被介助者の介助を適切にサポートする情報処理システム及び情報処理方法等の提供。
【解決手段】 情報処理システムは、介助における人及び物の少なくとも一方の位置に関する処理を行うポジショニングアプリケーションに従って動作する第1処理部と、介助を受ける被介助者の食事介助において、被介助者によって摂取される食べ物の量を判定する食事アプリケーションに従って動作する第2処理部と、を含み、ポジショニングアプリケーションは、前記食事アプリケーションが被介助者によって摂取される食べ物の量、及び栄養の少なくとも一方が不足していると判定した場合に、ポジショニングアプリケーションの動作モードを第1モードから処理負荷が高い第2モードに変更する。
【選択図】
図14
【特許請求の範囲】
【請求項1】
介助における人及び物の少なくとも一方の位置に関する処理を行うポジショニングアプリケーションに従って動作する第1処理部と、
前記介助を受ける被介助者の食事介助において、前記被介助者によって摂取される食べ物の量を判定する食事アプリケーションに従って動作する第2処理部と、
を含み、
前記ポジショニングアプリケーションは、
前記食事アプリケーションが前記被介助者によって摂取される前記食べ物の量、及び栄養の少なくとも一方が不足していると判定した場合に、前記ポジショニングアプリケーションの動作モードを第1モードから、前記第1モードに比べて前記ポジショニングアプリケーションの処理負荷が高い第2モードに変更する情報処理システム。
【請求項2】
請求項1において、
前記食事アプリケーションは、
器に盛られた前記食べ物を撮像した画像から円形領域をトリミングする処理を行い、
トリミング結果のうちの中心部に対応する第1領域の画素値である第1画素置、及び、前記トリミング結果のうちの周縁部に対応する第2領域の画素値である第2画素値に基づいて、前記食べ物の量を判定する情報処理システム。
【請求項3】
請求項1において、
前記被介助者のモーションの判定を行うモーション判定機器をさらに含み、
前記モーション判定機器は、
前記ポジショニングアプリケーションの前記動作モードが前記第2モードに移行した場合、又は、前記ポジショニングアプリケーションの処理結果に基づいて前記被介助者の異常が検出された場合に、前記モーション判定機器の動作モードを変更する情報処理システム。
【請求項4】
請求項3において、
前記ポジショニングアプリケーションは、
前記モーション判定機器において、前記被介助者のリスクが所定閾値以上であると判定された場合に、第1属性の前記被介助者に適した動作から、前記第1属性とは異なる第2属性の前記被介助者に適した動作に移行する情報処理システム。
【請求項5】
請求項3において、
前記被介助者の周辺に位置し、可動部を有する周辺機器をさらに含み、
前記モーション判定機器は、
前記被介助者の転倒に関する判定を行い、
前記周辺機器は、
前記モーション判定機器において、前記被介助者の転倒リスクが検出された場合に、前記可動部のロック及び所定位置への移動の少なくとも一方を実行する情報処理システム。
【請求項6】
請求項5において、
前記被介助者の衣類に装着され、前記被介助者が前記衣類を動かした場合に通信可能状態となる通信タグと、
前記モーション判定機器による転倒判定結果と、リーダによる前記通信タグの読取り結果が対応付けられた情報を記憶する記憶部と、
をさらに含む情報処理システム。
【請求項7】
請求項1乃至6の何れか一項において、
前記介助を受ける前記被介助者の不穏行動を判定する不穏アプリケーションに従って動作する第3処理部をさらに含み、
前記ポジショニングアプリケーションは、
前記不穏アプリケーションが前記被介助者の前記不穏行動を検出した場合に、前記被介助者の周辺に位置する物の配置をサポートする処理を実行する情報処理システム。
【請求項8】
請求項7において、
前記被介助者の周辺に位置し、可動部を有する周辺機器をさらに含み、
前記ポジショニングアプリケーションは、
前記物の配置をサポートする前記処理として、前記周辺機器の現在位置と、前記周辺機器の基準位置を比較する処理を行い、
前記周辺機器は、
前記ポジショニングアプリケーションによって、前記周辺機器の前記現在位置が前記基準位置と異なると判定された場合に、前記基準位置に移動する情報処理システム。
【請求項9】
ポジショニングアプリケーションに従って介助における人及び物の少なくとも一方の位置に関する処理を行うステップと、
食事アプリケーションに従って、前記介助を受ける被介助者の食事介助において、前記被介助者によって摂取される食べ物の量を判定する処理を行うステップと、
前記食事アプリケーションが前記被介助者によって摂取される前記食べ物の量、及び栄養の少なくとも一方が不足していると判定した場合に、前記ポジショニングアプリケーションの動作モードを、第1モードから、前記第1モードに比べて前記ポジショニングアプリケーションの処理負荷が高い第2モードに移行させるステップと、
を含む情報処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理システム及び情報処理方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、介助者が被介助者の介助を行う場面において利用されるシステムが知られている。特許文献1には、居住空間にセンサを配置し、当該センサにより取得された検知情報の時間変化に基づいて、居住空間に居住する居住者の状態に関する提供情報を生成する手法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
介助者による被介助者の介助を適切にサポートする情報処理システム及び情報処理方法等を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様は、介助における人及び物の少なくとも一方の位置に関する処理を行うポジショニングアプリケーションに従って動作する第1処理部と、前記介助を受ける被介助者の食事介助において、前記被介助者によって摂取される食べ物の量を判定する食事アプリケーションに従って動作する第2処理部と、を含み、前記ポジショニングアプリケーションは、前記食事アプリケーションが前記被介助者によって摂取される前記食べ物の量、及び栄養の少なくとも一方が不足していると判定した場合に、前記ポジショニングアプリケーションの動作モードを第1モードから、前記第1モードに比べて前記ポジショニングアプリケーションの処理負荷が高い第2モードに変更する情報処理システム。
情報処理システムに関係する。
【0006】
本開示の他の態様は、ポジショニングアプリケーションに従って介助における人及び物の少なくとも一方の位置に関する処理を行うステップと、食事アプリケーションに従って、前記介助を受ける被介助者の食事介助において、前記被介助者によって摂取される食べ物の量を判定する処理を行うステップと、前記食事アプリケーションが前記被介助者によって摂取される前記食べ物の量、及び栄養の少なくとも一方が不足していると判定した場合に、前記ポジショニングアプリケーションの動作モードを、第1モードから、前記第1モードに比べて前記ポジショニングアプリケーションの処理負荷が高い第2モードに移行させるステップと、を含む情報処理方法に関係する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図4A】ポジショニングアプリケーションの教師データの例である。
【
図4B】ポジショニングアプリケーションで重畳表示される教師データの例である。
【
図5】ベッド周辺に配置されるデバイスを例示する図である。
【
図6】ベッドポジション調整におけるアプリと装置の関係を例示する図である。
【
図7】設定モードにおいて教師データの取得に用いられる画面の例である。
【
図8】設定モードにおいて付加情報の取得に用いられる画面の例である。
【
図9】ベッドに配置されるデバイスを例示する図である。
【
図10】車椅子周辺に配置されるデバイスを例示する図である。
【
図11】車椅子ポジション調整におけるアプリと装置の関係を例示する図である。
【
図12】設定モードにおいて教師データの取得に用いられる画面の例である。
【
図13】車椅子に配置される圧力センサを例示する図である。
【
図14】褥瘡の観点におけるポジショニングアプリケーションの連携例である。
【
図16A】食事アプリケーションの表示画面例である。
【
図16B】食事アプリケーションの表示画面例である。
【
図17A】食事アプリケーションの処理を説明する図である。
【
図17B】食事アプリケーションの処理を説明する図である。
【
図18】転倒の観点におけるポジショニングアプリケーションの連携例である。
【
図19A】周辺機器であるテーブルを例示する図である。
【
図19B】テーブルの駆動機構を例示する図である。
【
図19C】周辺機器である歩行器を例示する図である。
【
図22】通信タグ等によって取得された情報の表示例である。
【
図23】不穏行動の観点におけるポジショニングアプリケーションの連携例である。
【
図24】本実施形態の情報処理システムの処理の流れを説明するシーケンス図である。
【
図25】本実施形態の情報処理システムの処理の流れを説明するシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本実施形態について図面を参照しつつ説明する。図面については、同一又は同等の要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。なお、以下に説明する本実施形態は、特許請求の範囲に記載された内容を不当に限定するものではない。また本実施形態で説明される構成の全てが、本開示の必須構成要件であるとは限らない。
【0009】
1.システム構成例
図1は、本実施形態に係る情報処理システム10の構成例である。本実施形態に係る情報処理システム10は、例えば医療施設や介護施設において、介助者の“勘”や“暗黙知”によって行われる作業について、当該“勘”や“暗黙知”をデジタル化することによって、熟練度によらず適切な介助を行えるように、介助者に指示を与えるものである。
【0010】
ここでの介助者は、介護施設の介護職員であってもよいし、病院等の医療施設における看護師や准看護師であってもよい。即ち、本実施形態における介助とは、被介助者をサポートする種々の行動を含むものであり、介護を含んでもよいし、注射等の医療に関する行為を含んでもよい。またここでの被介助者は、介助者による介助を受ける者であり、介護施設の入居者であってもよいし、病院に入院や通院を行う患者であってもよい。また、被介助者は、例えば認知症を患っている可能性のある被介助者であってもよい。
【0011】
また本実施形態における介助は、家庭において行われてもよい。例えば、本実施形態における被介助者は、在宅介護を受ける要介護者であってもよいし、在宅医療を受ける患者であってもよい。また介助者は、要介護者や患者等の家族であってもよいし、訪問ヘルパー等であってもよい。
【0012】
図1に示すように、情報処理システム10は、サーバシステム100、端末装置200、管理端末装置300、センシングデバイス400を含む。本実施形態の情報処理システム10は、少なくともポジショニングアプリケーションAP1が動作する機器を含む。ここでのポジショニングアプリケーションAP1とは、介助における人及び物の少なくとも一方の位置に関する処理を行うソフトウェアである。ポジショニングアプリケーションAP1は、例えば端末装置200で動作する。ただしポジショニングアプリケーションAP1が、サーバシステム100、センシングデバイス400等の他の機器で動作することも妨げられない。
【0013】
なお、情報処理システム10の構成は
図1に限定されず、一部の構成を省略する、他の構成を追加する等の変形実施が可能である。例えば
図1では、センシングデバイス400として、
図9を用いて後述するベッドサイドセンサ420、検出装置430、及び
図15を用いて後述する嚥下ムセ検出装置460を例示している。ただしセンシングデバイス400はこれらに限定されず、
図13を用いて後述する座面センサ440であってもよいし、
図14を用いて後述するモーション判定機器410のいずれかであってもよいし、
図18等を用いて後述する通信タグ470であってもよい。なお以下では、複数のセンシングデバイス400を互いに区別する必要が無い場合、単にセンシングデバイス400と表記する。
【0014】
サーバシステム100は、例えばネットワークを介して端末装置200、管理端末装置300、センシングデバイス400と接続される。ここでのネットワークは、例えば、インターネット等の公衆通信網である。ただし、ネットワークは公衆通信網に限定されず、LAN(Local Area Network)等であってもよい。例えばサーバシステム100は、IEEE802.11の規格に従った通信を行ってもよい。ただし、各機器の間の通信手法については種々の変形実施が可能である。
【0015】
サーバシステム100は、1つのサーバであってもよいし、複数のサーバを含んでもよい。例えばサーバシステム100は、データベースサーバとアプリケーションサーバを含んでもよい。データベースサーバは、端末装置200での処理結果、及び、センシングデバイス400での処理結果の少なくとも一方を記憶してもよい。アプリケーションサーバは、種々の処理を行う。例えば本実施形態の情報処理システム10は分散処理によって実現されてもよく、以下の説明において端末装置200又はセンシングデバイス400が実行する処理の少なくとも一部が、アプリケーションサーバによって実行されてもよい。なおここでの複数のサーバは、物理サーバであってもよいし仮想サーバであってもよい。また仮想サーバが用いられる場合、当該仮想サーバは1つの物理サーバに設けられてもよいし、複数の物理サーバに分散して配置されてもよい。以上のように、本実施形態におけるサーバシステム100の具体的な構成は種々の変形実施が可能である。
【0016】
端末装置200は、例えば被介助者の介助を行う介助者によって使用される装置である。ここでの端末装置200は、例えばスマートフォンやタブレット端末等の携帯端末装置である。ただし端末装置200は、PC(Personal Computer)、ヘッドセット、AR(Augmented Reality)グラスやMR(Mixed Reality)グラス等のウェアラブル装置等、他の装置であってもよい。また1人の介助者が複数の端末装置200を使用してもよい。例えば介助者は、スマートフォンとヘッドセットの両方を使用してもよい。また本実施形態の端末装置200は介助者が携帯する装置であってもよいし、介護施設の所定の場所に設けられる装置であってもよい。
【0017】
管理端末装置300は、例えば介護施設等において入居者である被介助者の情報を管理するために用いられる装置である。管理端末装置300は、例えばPCであるが、他の装置が用いられてもよい。管理端末装置300は、例えば介護ソフトウェアがインストールされており、被介助者の管理や、介助者(介護施設の職員)のスケジュール管理等を行う。例えば管理端末装置300は、被介助者の属性に関する情報を記憶する。ここでの属性は、年齢、性別、身長、体重、既往歴、投薬履歴等を含む。
【0018】
センシングデバイス400は、被介助者の介助のために使用される機器である。例えばセンシングデバイス400は種々のセンサを有し、当該センサに基づいてセンシングデータを取得する。ここでのセンシングデータは、センサ出力そのものであってもよいし、当該センサ出力に基づく演算処理によって求められた情報であってもよい。センシングデバイス400は、ポジショニングアプリケーションAP1の設定時や利用時に用いられる入力データを出力する機器であってもよい。またセンシングデバイス400は、ポジショニングアプリケーションAP1の処理結果に基づいて動作モードが変化する機器であってもよい。またセンシングデバイス400は、当該センシングデバイス400の処理結果に基づいて、ポジショニングアプリケーションAP1のアクティブ/非アクティブや、使用する機能を変化させる機器であってもよい。詳細については後述する。
【0019】
図2は、サーバシステム100の詳細な構成例を示すブロック図である。サーバシステム100は、例えば処理部110と、記憶部120と、通信部130を含む。
【0020】
本実施形態の処理部110は、下記のハードウェアによって構成される。ハードウェアは、デジタル信号を処理する回路及びアナログ信号を処理する回路の少なくとも一方を含むことができる。例えば、ハードウェアは、回路基板に実装された1又は複数の回路装置や、1又は複数の回路素子によって構成できる。1又は複数の回路装置は例えばIC(Integrated Circuit)、FPGA(field-programmable gate array)等である。1又は複数の回路素子は例えば抵抗、キャパシター等である。
【0021】
また処理部110は、下記のプロセッサによって実現されてもよい。本実施形態のサーバシステム100は、情報を記憶するメモリと、メモリに記憶された情報に基づいて動作するプロセッサと、を含む。情報は、例えばプログラムと各種のデータ等である。メモリは、記憶部120であってもよいし、他のメモリであってもよい。プロセッサは、ハードウェアを含む。プロセッサは、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)等、各種のプロセッサを用いることが可能である。メモリは、SRAM(Static Random Access Memory)、DRAM(Dynamic Random Access Memory)、フラッシュメモリなどの半導体メモリであってもよいし、レジスタであってもよいし、ハードディスク装置(HDD:Hard Disk Drive)等の磁気記憶装置であってもよいし、光学ディスク装置等の光学式記憶装置であってもよい。例えば、メモリはコンピュータによって読み取り可能な命令を格納しており、当該命令をプロセッサが実行することによって、処理部110の機能が処理として実現される。ここでの命令は、プログラムを構成する命令セットの命令でもよいし、プロセッサのハードウェア回路に対して動作を指示する命令であってもよい。
【0022】
記憶部120は、処理部110のワーク領域であって、種々の情報を記憶する。記憶部120は、種々のメモリによって実現が可能であり、メモリは、SRAM、DRAM、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリなどの半導体メモリであってもよいし、レジスタであってもよいし、磁気記憶装置であってもよいし、光学式記憶装置であってもよい。
【0023】
通信部130は、ネットワークを介した通信を行うためのインターフェイスであり、サーバシステム100が無線通信を行う場合、例えばアンテナ、RF(radio frequency)回路、及びベースバンド回路を含む。ただしサーバシステム100は有線通信を行ってもよく、その場合の通信部130は、イーサネットコネクタ等の通信インターフェイス及び、当該通信インターフェイスの制御回路等を含んでもよい。通信部130は、処理部110による制御に従って動作してもよいし、処理部110とは異なる通信制御用のプロセッサを含むことも妨げられない。通信部130は、例えばIEEE802.11やIEEE802.3に規定された方式に従った通信を行ってもよい。ただし具体的な通信方式は種々の変形実施が可能である。
【0024】
図3は、端末装置200の詳細な構成例を示すブロック図である。端末装置200は、例えば処理部210と、記憶部220と、通信部230と、表示部240と、操作部250と、撮像部260を含む。ただし端末装置200の構成は
図3に限定されず、一部の構成を省略する、他の構成を追加する等の変形実施が可能である。例えば端末装置200は、撮像部260に含まれるイメージセンサに加えて、加速度センサやジャイロセンサ等のモーションセンサ、圧力センサ、GPS(Global Positioning System)センサ等の種々のセンサを有してもよい。
【0025】
処理部210は、デジタル信号を処理する回路及びアナログ信号を処理する回路の少なくとも一方を含むハードウェアによって構成される。また処理部210は、プロセッサによって実現されてもよい。プロセッサは、CPU、GPU、DSP等、各種のプロセッサを用いることが可能である。端末装置200のメモリに格納された命令をプロセッサが実行することによって、処理部210の機能が処理として実現される。
【0026】
記憶部220は、処理部210のワーク領域であって、SRAM、DRAM、ROM等の種々のメモリによって実現される。記憶部220は、例えばポジショニングアプリケーションAP1を記憶する。ポジショニングアプリケーションAP1が実行する処理の詳細については後述する。
【0027】
通信部230は、ネットワークを介した通信を行うためのインターフェイスであり、例えばアンテナ、RF回路、及びベースバンド回路を含む。通信部230は、例えばネットワークを介して、サーバシステム100との通信を行う。通信部230は、例えばIEEE802.11の規格に準拠した無線通信をサーバシステム100との間で実行してもよい。
【0028】
表示部240は、種々の情報を表示するインターフェイスであり、液晶ディスプレイであってもよいし、有機ELディスプレイであってもよいし、他の方式のディスプレイであってもよい。操作部250は、ユーザ操作を受け付けるインターフェイスである。操作部250は、端末装置200に設けられるボタン等であってもよい。また表示部240と操作部250は、一体として構成されるタッチパネルであってもよい。
【0029】
撮像部260は、所定の撮像範囲を撮像することによって画像情報を出力するイメージセンサを含む。ここでの画像情報は、静止画像であってもよいし、動画像であってもよい。また画像情報は、カラーであってもよいし、モノクロであってもよい。また、撮像部260は、被写体までの距離を検出する深度センサを含んでもよいし、被写体の熱を検出するセンサ(例えば赤外線センサ)等を含んでもよい。
【0030】
また端末装置200は、発光部、振動部、音入力部、音出力部等、
図3には不図示の構成を含んでもよい。発光部は例えばLED(light emitting diode)であり、発光による報知を行う。振動部は例えばモータであり、振動による報知を行う。音入力部は例えばマイクである。音出力部は例えばスピーカであり、音による報知を行う。
【0031】
本実施形態に係る情報処理システム10は、介助における人及び物の少なくとも一方の位置に関する処理を行うポジショニングアプリケーションAP1に従って動作する第1処理部を含む。例えばポジショニングアプリケーションAP1は端末装置200において動作し、第1処理部は、端末装置200の処理部210に含まれる。ポジショニングアプリケーションAP1とは、例えば
図5~
図9を用いて後述するように、ベッド610における被介助者等の姿勢調整に用いられてもよいし、
図10~
図13を用いて後述するように、車椅子630における被介助者等の姿勢調整に用いられてもよい。ポジショニングアプリケーションAP1は、例えば望ましい姿勢を表す画像情報を教師データとして取得し(
図4Aを用いて後述)、当該教師データに透過処理を施した上でポジション調整時に取得された撮像画像に重畳表示するアプリケーションであってもよい(
図4Bを用いて後述)。
【0032】
ポジショニングアプリケーションAP1を用いることによって、ベッド610や車椅子630におけるポジション調整を容易に実現できるため、被介助者の褥瘡や転落を抑制することが可能であるし、ポジション調整に関する介助者の負担を軽減することも可能になる。
【0033】
また情報処理システム10は、介助を受ける被介助者の食事介助において、被介助者によって摂取される食べ物の量を検出する食事アプリケーションAP2に従って動作する第2処理部を含む。例えば食事アプリケーションAP2は、
図15を用いて後述する嚥下ムセ検出装置460の端末装置462で動作してもよい。この場合、第2処理部は、端末装置462の処理部(プロセッサ)に含まれる。ただし、食事アプリケーションAP2が端末装置200に含まれてもよい。この場合、第1処理部と第2処理部の両方が、端末装置200の処理部により実現される。なお食事アプリケーションAP2は、被介助者によって摂取される食べ物の種類を検出する処理を行ってもよい。また食事アプリケーションAP2は、被介助者によって摂取される食べ物の量と、食べ物の望ましい摂取量を比較することによって、食べ物の量の不足を検出してもよい。また食事アプリケーションAP2は、被介助者によって摂取される食べ物の種類(料理の種類)に基づいて、当該食べ物を摂取した場合の摂取カロリーや栄養素を検出してもよい。さらに食事アプリケーションAP2は、被介助者が摂取した栄養素の量と、必要な栄養素の量を比較することによって、被介助者の栄養素の不足を検出してもよい。詳細な処理については後述する。
【0034】
食事アプリケーションAP2を用いることによって、被介助者毎の食事内容(食べ物の種類及び摂取量)の管理を自動化できるため、食事内容に基づく適切な介助を実行することや、食事管理における介助者等の負担を軽減することが可能になる。
【0035】
以上のように、ポジショニングアプリケーションAP1及び食事アプリケーションAP2はそれぞれが介助において有用であるが、本実施形態の情報処理システム10ではさらに、ポジショニングアプリケーションAP1と食事アプリケーションAP2を連携して動作させてもよい。具体的には、ポジショニングアプリケーションAP1は、食事アプリケーションAP2によって被介助者が摂取する食べ物の量の不足、及び栄養不足の少なくとも一方が検出された場合に、当該ポジショニングアプリケーションAP1の動作モードを第1モードから、相対的にポジショニングアプリケーションAP1の処理負荷が高い第2モードに変更する。なお第1モードから第2モードへの変更は、非アクティブからアクティブへの変更であってもよい。あるいは、ポジショニングアプリケーションAP1がアクティブとなるトリガーは、車椅子630に人を検知したこと、ベッド610に人を検知したこと、オムツ交換が行われたこと等であり、第1モードから第2モードへの変更は、機能の追加等であってもよい。具体例については後述する。
【0036】
本実施形態の手法によれば、食事における状況変化に合わせて、ポジション調整における処理を切り替えることによって、介助者による被介助者の介助を適切にサポートすることが可能になる。例えば、食事量が不足する、栄養が不足する等の場合に、被介助者の蓐瘡リスクが高くなることが知られている。詳細についてはSSKIN等の考え方を用いて後述する。本実施形態の手法では、このような被介助者を対象とする場合に、ポジショニングアプリケーションAP1を積極的に動作させることが可能であるため、褥瘡リスクを低減できる。例えば、リスクが高い被介助者を対象とする場合、リスクが低い被介助者を対象とする場合に比べて、介助者がより手厚い介助を行えるように、ポジショニングアプリケーションAP1が実行する機能の数を増やす処理が行われてもよい。また、褥瘡リスクの高低に応じて、被介助者にとって好ましい姿勢が変化するため、食事量の不足等が検出された場合に、ポジショニングアプリケーションAP1が処理に使用する教師データが変化してもよい。
【0037】
また本実施形態の情報処理システム10は、介助を受ける被介助者の不穏行動を判定する不穏アプリケーションAP3に従って動作する第3処理部をさらに含んでもよい。不穏行動とは、行動が過剰で落ち着かない状態を表す。例えば不穏行動とは、不眠、興奮、徘徊、幻覚、不安、誤認、多動、不潔行為、暴言、暴力等、平常状態では見られない種々の症状を含む。例えば不穏アプリケーションAP3は、管理端末装置300で動作し、第3処理部は、当該管理端末装置300の処理部(プロセッサ)に含まれてもよい。ただし、不穏アプリケーションAP3が端末装置200に含まれてもよい。この場合、第1処理部と第3処理部の両方が、端末装置200の処理部210により実現される。また不穏アプリケーションAP3は、サーバシステム100等の他の装置で動作してもよい。
【0038】
そしてポジショニングアプリケーションAP1は、不穏アプリケーションAP3が被介助者の不穏行動を検出した場合に、被介助者の周辺に位置する物の配置をサポートする処理を実行してもよい。
【0039】
本実施形態の手法によれば、ポジショニングアプリケーションAP1と不穏アプリケーションAP3を連携動作させることが可能になる。そのため、状況の変化に合わせた適切な介助の実行をサポートすることが可能になる。具体的には後述するように、被介助者の周辺の物の配置が通常と異なることが不穏行動の要因となる可能性があるが、ポジショニングアプリケーションAP1を用いて適切な物の配置を提示することで当該要因による影響を抑制することが可能になる。具体的な連携や処理内容については
図23等を用いて後述する。
【0040】
またポジショニングアプリケーションAP1が連携する対象は、食事アプリケーションAP2、不穏アプリケーションAP3に限定されず、
図14を用いて後述するモーション判定機器410や、
図18を用いて後述する周辺機器500等を含んでもよい。即ち、本実施形態の手法は、ポジショニングアプリケーションAP1を介助で用いられる種々のアプリケーション、デバイスと連携させることによって、介助の質向上を実現するものである。具体的な連携については後述する。
【0041】
また、本実施形態の情報処理システム10が行う処理の一部又は全部は、プログラムによって実現されてもよい。情報処理システム10が行う処理とは、端末装置200の処理部210が実行する処理であってもよいし、サーバシステム100の処理部110が行う処理であってもよいし、管理端末装置300やセンシングデバイス400に含まれるプロセッサが実行する処理であってもよい。また情報処理システム10が行う処理とは、サーバシステム100、端末装置200及びセンシングデバイス400のうちの2以上の機器によって行われる処理であってもよい。
【0042】
本実施形態に係るプログラムは、例えばコンピュータによって読み取り可能な媒体である非一時的な情報記憶媒体(情報記憶装置)に格納できる。情報記憶媒体は、例えば光ディスク、メモリーカード、HDD、或いは半導体メモリなどによって実現できる。半導体メモリは例えばROMである。処理部110等は、情報記憶媒体に格納されるプログラムに基づいて本実施形態の種々の処理を行う。即ち情報記憶媒体は、処理部110等としてコンピュータを機能させるためのプログラムを記憶する。コンピュータは、入力装置、処理部、記憶部、出力部を備える装置である。具体的には本実施形態に係るプログラムは、
図24、
図25等を用いて後述する各ステップを、コンピュータに実行させるためのプログラムである。
【0043】
また本実施形態の手法は、以下の各ステップを含む情報処理方法に適用できる。情報処理方法は、ポジショニングアプリケーションAP1に従って介助における人及び物の少なくとも一方の位置に関する処理を行うステップと、食事アプリケーションAP2に従って、介助を受ける被介助者の食事介助において、被介助者によって摂取される食べ物の量を判定する処理を行うステップと、食事アプリケーションAP2が被介助者によって摂取される食べ物の量、及び栄養の少なくとも一方が不足していると判定した場合に、ポジショニングアプリケーションAP1の動作モードを、第1モードから、第1モードに比べてポジショニングアプリケーションAP1の処理負荷が高い第2モードに移行させるステップと、を含む。
【0044】
2.ポジショニングアプリケーション
次にポジショニングアプリケーションAP1の具体例について説明する。ポジショニングアプリケーションAP1とは、ベッド610や車椅子630等における人や物の望ましい位置を提示するアプリケーションソフトウェアである。ここでの人は例えば被介助者や介助者である。また物とは、クッションやオムツ等である。また後述するように、ポジショニングアプリケーションAP1は、被介助者の居室等における物の望ましい位置を提示してもよい。
【0045】
例えば、ポジショニングアプリケーションAP1は、設定を行う設定モードと、当該設定に従って実際のポジション調整をサポートする利用モードで動作してもよい。設定モードにおいて、例えばポジショニングアプリケーションAP1は、望ましい位置で人や物を撮像した教師データを取得する。そして動作モードにおいて、ポジショニングアプリケーションAP1は、調整対象である人や物を撮像した撮像画像に対して、透過処理を施した教師データを重畳表示する。
【0046】
図4Aは、設定モードにおいて取得される教師データの一例である。
図4Aの例では、「AAA」という氏名の被介助者がベッド610に横たわる際の望ましい姿勢を表す画像情報が教師データとして取得される。
図4Bは、利用モードにおいて撮像画像に重畳表示される画像であって、透過処理を施した教師データの例である。例えば端末装置200は、ポジション調整の対象である被介助者を撮像した撮像画像に、
図4Bの画像を重畳表示する。介助者は、撮像画像上の被介助者が、教師データに近づくように、当該被介助者の介助を行う。このようにすれば、介助者によるポジション調整を適切にサポートすることが可能になる。なおここでは画像情報である教師データの重畳表示を行う例を説明したが、ポジショニングアプリケーションAP1は、被介助者の姿勢が適切であるか否かの判定結果(OK/NG)を出力してもよい。詳細については後述する。
【0047】
以下、ベッド610における人物又は物のポジション(以下、ベッドポジションと表記)、車椅子630における人物又は物のポジション(以下、車椅子ポジションと表記)のそれぞれについて、設定モード及び利用モードの詳細について説明する。またベッド610及び車椅子630に限定されない物のポジション調整に適用される例についても説明する。
【0048】
2.1 ベッドポジション
図5は、ベッド610の周辺におけるデバイスの配置例を示す図である。
図5に示すように、本実施形態における端末装置200は、ベッド610のフットボード側に固定される端末装置200-1であってもよいし、ベッド610のサイドレールに固定される端末装置200-2であってもよいし、この両方であってもよい。ただし、端末装置200が固定される場所はこれに限定されず、ベッド610の他の位置に固定されてもよいし、ベッド610上の被介助者を撮像可能な他の場所(例えば居室の壁や家具等)に固定されてもよい。あるいは、端末装置200は介助者によって携帯され、当該介助者がベッド610のフットボード側あるいはサイドレール側に位置した状態で端末装置200を使用することによって、以下で説明する処理が実行されてもよい。
【0049】
またベッド610に対して、端末装置200-2の反対側にはディスプレイDPが配置されてもよい。なおディスプレイDPは、ベッド610に固定されてもよいし、ポジショニングアプリケーションAP1を用いてベッドポジション調整を行う介助者が自然に閲覧可能な他の位置に配置されてもよい。例えばディスプレイDPは壁面に固定されてもよいし、床面に自立するスタンド等に固定されてもよい。またディスプレイDPは省略が可能である。
【0050】
端末装置200は、
図3を用いて上述したように、例えば撮像部260(カメラ)を有するスマートフォン等の装置である。端末装置200はサーバシステム100に撮像画像を送信する。ディスプレイDPは、サーバシステム100から送信された画像を直接、または端末装置200等の他の装置を介して受信し、受信した画像を表示する。
【0051】
ポジショニングアプリケーションAP1は、ベッドポジションの調整をサポートするアプリケーションであってもよい。ベッドポジションの調整とは、例えば褥瘡抑制のための被介助者の姿勢制御や、クッションの配置制御であってもよい。またベッドポジションの調整とは、オムツ交換における被介助者の姿勢制御や、オムツの配置制御であってもよい。
【0052】
<設定モード>
ポジショニングアプリケーションAP1は、まずポジション調整に用いられるデータを設定する設定モードで動作する。ポジション調整に用いられるデータとは、例えば望ましい人物の位置又は物の位置を表す正解データである。
【0053】
図6は、設定モードにおいて用いられるデバイスの関係を例示する図である。例えばポジショニングアプリケーションAP1は、端末装置200に含まれる撮像部260の出力である画像情報と、ベッド610及びマットレス620の少なくとも一方からの情報を取得してもよい。ここでのベッド610及びマットレス620は、被介助者が使用している状態における圧力分布を可視化可能なデバイスである。例えば圧力分布を可視化する手法として、特開2019-039788号公報等に開示された公知の手法を広く適用可能である。
【0054】
図7は、設定モードにおいて表示される画面例である。
図7に示す画面は、端末装置200の表示部240に表示されてもよいし、ディスプレイDPに表示されてもよい。また
図7に示す画面は、ネットワークを介して接続される他の機器の表示部に表示されてもよい。
【0055】
図7に示す画面は、画像情報を表示する領域RE1と、圧力分布を表示する領域RE2を含む。
図7の例では、領域RE1には、ベッド610に横たわる被介助者を、当該被介助者の足の側から撮像した画像が表示される。当該画像は、例えば
図5の端末装置200-1の撮像部260を用いて撮像される。例えば設定モードでは、端末装置200-1の撮像部260を用いて撮像される動画像が、領域RE1にリアルタイムに表示されてもよい。
【0056】
また圧力分布は、上述したベッド610やマットレス620によって出力される情報であり、例えば被介助者が横になる面の各位置における圧力値を色の濃淡等を用いて表現した情報である。例えば設定モードでは、時系列的に取得される圧力分布がリアルタイムに表示されてもよい。
【0057】
また
図7に示す画面は、骨格トラッキングのオン/オフを切り替えるチェックボックスに対応するオブジェクトOB1、ベッド610と車椅子630の何れかを選択するラジオボタンに対応するオブジェクトOB2、回転ボタンに対応するオブジェクトOB3、及び写真撮影ボタンに対応するオブジェクトOB4を含んでもよい。
【0058】
オブジェクトOB1に対するユーザ操作に基づいて、ポジショニングアプリケーションAP1は、被介助者の骨格トラッキング処理を行うか否かを切り替える。例えばチェックが入った状態では、ポジショニングアプリケーションAP1は撮像画像に基づく骨格トラッキング処理を行い、チェックが入っていない状態では骨格トラッキング処理を省略する。なお画像に基づく骨格トラッキングの手法としては、“Realtime Multi-Person 2D Pose Estimation using Part Affinity Fields” (https://arxiv.org/pdf/1611.08050.pdf), Zhe Cao他に開示されたOpenPose等、種々の手法が知られており、本実施形態ではそれらを広く適用できる。
【0059】
オブジェクトOB2は、ベッドポジションの調整と、車椅子ポジションの調整の何れを行うかを表示するオブジェクトである。なお
図7の例では、ベッドポジション調整に対応するテキストとして「マットレス」が表示されている。また車椅子ポジション調整に対するテキストとして、「座面センサ」が表示されている。「座面センサ」とは、車椅子630の座面での圧力を検出するセンサであり、例えば
図13の座面センサ440に対応する。
【0060】
例えば、ユーザはオブジェクトOB2を用いてベッドポジションと車椅子ポジションのいずれの処理を行うかをポジショニングアプリケーションAP1に指示し、ポジショニングアプリケーションAP1は、当該指示に基づいて対象の機器との接続処理を実行してもよい。例えば、
図7に示すようにベッドポジションを選択するユーザ入力が行われた場合、端末装置200の通信部230は、ベッド610やマットレス620と接続する処理を行う。あるいは、ベッド610やマットレス620等、ポジション調整に用いられるデバイスとの接続はユーザが手動で行い、ポジショニングアプリケーションAP1は、接続結果に基づいてベッドポジションと車椅子ポジションの何れの処理を行うかを判定してもよい。この場合、ポジショニングアプリケーションAP1は、当該判定の結果に基づいて、オブジェクトOB2の表示態様を自動的に変更する。
【0061】
オブジェクトOB3は、領域RE1に表示される画像情報、及び領域RE2に表示される圧力分布の少なくとも一方を回転させるための操作インターフェイスである。
図7の例では、画像情報と圧力分布の両方において、画面左方が被介助者の頭側となっているため、
図7の画面を閲覧したユーザは画像情報と圧力分布の対応付けが容易である。しかし、ポジショニングアプリケーションAP1を利用する環境において、端末装置200が被介助者を撮像する方向が固定されているとは限らない。そのため、画像情報と圧力分布とで被介助者の方向が相違する可能性もある。その点、ポジショニングアプリケーションAP1は、回転ボタンに対する選択操作を受け付けた場合に、画像情報又は圧力分布を回転させる処理を行うことによって、被介助者の方向を揃えることが可能になる。
【0062】
ただし、画像情報の向きと圧力分布の向きはユーザが手動で変更されるものには限定されず、ポジショニングアプリケーションAP1が自動的に調整を行ってもよい。例えば、撮像部260が撮像対象とする範囲の所定位置に二次元バーコード(例えばQRコード、QRコードは登録商標)等のマーカが予め付与されてもよい。例えば、ベッドの枕元の位置にマーカが印刷されたシール等が貼られる。ポジショニングアプリケーションAP1は、端末装置200の撮像部260を用いて撮像された画像からマーカの位置や方向を検出する処理を行う。このようにすれば、画像情報における人の頭の方向等を適切に検出できるため、画像情報の向きと圧力分布の向きを自動的に調整することが可能になる。
【0063】
また回転ボタンに対応するオブジェクトOB3は、画像情報と圧力分布の両方を同じ角度だけ回転させる処理に用いられてもよい。例えば、領域RE1と領域RE2は上下に並べて配置されるが、画像情報及び圧力分布が時計回り又は反時計回りに90度回転することによって、領域RE1と領域RE2が左右に並べて配置される状態に移行してもよい。このようにすれば、回転ボタンを用いて各種情報をユーザの所望の位置関係で配置することが可能になる。
【0064】
以上で説明したように、
図7に示した画面を用いることで、ユーザは被介助者を撮像した画像、及び圧力分布を参照でき、必要に応じて骨格トラッキング処理の結果も閲覧できる。骨格トラッキング処理の結果は、例えば
図7に示すように、領域RE1において、画像情報に重畳して表示されてもよい。
【0065】
例えばここでのユーザは熟練の介助者であり、当該ユーザは、
図7の画面に表示される各種情報を参照することによって、被介助者が適切な姿勢を取っているか否かを判定する。ここでの適切な姿勢とは、褥瘡の抑制に適した姿勢であってもよいし、オムツ交換に適した姿勢であってもよいし、他の姿勢であってもよい。例えば、熟練の介助者であるユーザは、患者の属性、既往歴、投薬履歴等、種々の情報を考慮した上で、自身の暗黙知に従って当該患者に適した姿勢であるか否かの判定を行う。
【0066】
例えばユーザは、被介助者が適切な姿勢を取ったと判定した場合に、オブジェクトOB4に示す写真撮影ボタンの選択操作を行う。端末装置200は、写真撮影ボタンが操作された際に表示されていた画像を、教師データとして記憶部220に記憶する。また教師データは、サーバシステム100に送信されてもよい。このようにすれば、熟練者が好ましいと考えるポジションを教師データとして登録することが可能になる。なお教師データは画像情報に限定されず、圧力分布を含んでもよいし、骨格トラッキングの結果を含んでもよい。また以上では端末装置200-1を用いた例を説明したが、これには限定されず、画像情報の取得に端末装置200-2が用いられてもよい。即ち、画像情報は、被介助者を側面から撮像した画像であってもよい。
【0067】
また画像情報を含む教師データに対して、何らかの付加情報が付加されてもよい。
図8は、画像情報に付加情報を付加する際に用いられる画面例である。例えば画像情報を選択するユーザ入力が行われた場合に、
図8の画面には当該画像情報がファイル名とともに表示される。例えば上述したように、写真撮影ボタンの選択操作が行われた際の画像情報が端末装置200の記憶部220や、サーバシステム100の記憶部120に記憶されており、ポジショニングアプリケーションAP1は、当該画像情報のいずれかを選択するユーザ入力を受け付ける。
図8の例では、領域RE3に選択された画像情報が表示されるとともに、当該画像情報のファイル名を表すオブジェクトOB5が表示される。
【0068】
また
図8に示すように、付加情報の入力画面では、画像情報に対して、特定のマークを追加するためのボタンであるオブジェクトOB6が表示されてもよい。例えば特定のマークは、適切な姿勢を取らせるために用いられるクッションに付与されるマークであってもよい。ここでは三角形が所定サイズ以下のクッションに対応し、四角形が所定サイズより大きいクッションに対応する。例えば、上記対応関係が予めポジショニングアプリケーションAP1のマニュアル等を用いてユーザに提示されており、ユーザは適切な姿勢を取らせるためにクッションを配置した場合、オブジェクトOB6を用いて、画像中のクッションに三角形又は四角形のマークを付与する操作を実行する。このようにすれば、クッションの位置やサイズを特定する情報を教師データに含めることが可能になる。
【0069】
また付加情報は、熟練の介助者によって付加されるコメントであってもよい。例えば付加情報の入力画面では、コメントを入力するためのテキストボックスであるオブジェクトOB7が表示されてもよい。ここでのコメントは、テキストボックスであるオブジェクトOB7を用いて入力される何らかのテキストであってもよい。例えば熟練者は、特定の部位と他の部位との角度、枕やクッションとの位置関係、用いられるクッションの詳細(サイズ、形状、メーカ、品番等)等、適切なベッドポジションを取らせる上で重要となるポイントをテキスト入力する。
【0070】
また
図8に示す付加情報の入力画面において、熟練の介助者がポイントと考える被介助者の部位を指定する情報の入力を受け付けてもよい。例えば被介助者の肩の位置が適切な姿勢を取らせる上で重要である場合、熟練の介助者は被介助者の肩を指定する入力を行ってもよい。例えばポジショニングアプリケーションAP1は、
図8に示した三角形や四角形のマークを特定の部位に配置する入力を受け付けてもよい。また熟練の介助者がポイントと考える部位は複数であってもよい。この場合、ポジショニングアプリケーションAP1は、各位置の優先度の入力を受け付けてもよい。また付加情報は音声情報であってもよい。例えば付加情報の入力画面では、音声情報の入力可否を設定するためのチェックボックスであるオブジェクトOB8が表示されてもよい。例えば当該チェックボックスがチェックされた状態である場合、ユーザの音声を録音する処理が行われてもよい。
【0071】
また
図8に示す画面では利用時を想定したレビューが可能であってもよい。例えば、付加情報の入力画面では、プレビューを行うためのボタンであるオブジェクトOB9が表示されてもよい。ここでのプレビューとは、利用モードにおける表示画面に対応する画面を表示することを表す。なおプレビュー表示は
図8に示す付加情報の入力画面で行われてもよい。あるいは、オブジェクトOB9の選択操作に基づいて、
図8の入力画面とは異なるポップアップ画面が表示され、当該ポップアップ画面においてプレビュー表示が行われてもよい。
【0072】
例えば
図4A及び
図4Bを用いて上述したように、ポジショニングアプリケーションAP1の利用時には、透過処理を施した教師データと、被介助者を撮像しているリアルタイムの画像とを重畳表示することが考えられる。よって
図8のオブジェクトOB9に対する選択操作が行われた場合、ポジショニングアプリケーションAP1は、撮像部260を用いて撮像画像を取得するとともに、当該撮像画像に対して、設定中の教師データに透過処理を施した画像を重畳表示する。このようにすれば、設定中の教師データを実際に使用した場合の表示画面を予め確認することが可能になる。この際、ユーザは、
図8の画面を用いて、教師データの透過率を設定可能であってもよいし、撮像部260が内部カメラと外部カメラを含む場合、いずれのカメラを用いるかを選択可能であってもよい。例えば付加情報の入力画面では、
図8に示すように、透過率を入力するテキストボックスであるオブジェクトOB10、カメラを選択するラジオボタンであるオブジェクトOB11が表示されてもよい。
【0073】
またポジショニングアプリケーションAP1で用いられる教師データはこれに限定されない。例えば熟練の介助者が被介助者を適切な姿勢にするまでの動作を撮像した動画像が教師データとして用いられてもよい。また教師データは、当該動画像に基づいて検出された介助者の骨格トラッキング結果を含んでもよい。
【0074】
<利用モード>
また実際に被介助者のベッドポジション調整が行われる利用モードでは、ポジショニングアプリケーションAP1は、端末装置200の撮像部260を用いた撮像画像の取得を開始する。またポジショニングアプリケーションAP1は、ベッドポジションの調整に用いられる教師データを選択する。例えば利用モードにおいて、ポジショニングアプリケーションAP1は、
図4Bに示す透過表示を行う画面上に、複数のタブを表示し、当該タブの選択操作に基づいて教師データを切り替える処理を行ってもよい。例えば1つのタブが1つの教師データに対応し、ポジション調整を行う介助者によるタブの手動切り替えに基づいて教師データが選択されてもよい。なお、ベッドポジションの調整は、介助者が実行するものであってもよいし、被介助者がポジショニングアプリケーションAP1によって表示される画面を見ながら自身の姿勢を変更するものであってもよい。
【0075】
ポジショニングアプリケーションAP1は、介助者による教師データの選択処理に基づいて教師データを選択してもよい。あるいはポジショニングアプリケーションAP1は、被介助者の属性と、教師データに撮像された被介助者の属性の類似度判定に基づいて、教師データを自動的に選択する処理を行ってもよい。ここでの属性は、被介助者の年齢、性別、身長、体重、既往歴、投薬履歴等の情報を含む。
【0076】
あるいは、ポジショニングアプリケーションAP1は、ベッドポジションの調整対象である被介助者の属性と、教師データに含まれる付加情報の比較処理に基づいて、教師データを自動的に選択する処理を行ってもよい。例えば教師データの付加情報として「XXという傾向が見られる被介助者は、左肩がYYとなるように調整するとよい」といったテキストが含まれるとする。この場合、調整対象の被介助者がXXに該当する場合、当該教師データが選択されやすくなる。例えばベッドポジション調整を行う介助者は、端末装置200に被介助者を特定する情報を入力し、端末装置200は当該情報に基づいて被介助者の属性を特定してもよい。
【0077】
ポジショニングアプリケーションAP1は、例えば端末装置200によって撮像されているリアルタイムの撮像画像に対して、透過処理が施された教師データを重畳して表示する画像を出力してもよい。この際、教師データの付加情報が提示されてもよい。例えばテキストデータが重畳表示されてもよいし、音声データが端末装置200等のスピーカから出力されてもよい。
【0078】
またポジショニングアプリケーションAP1は、例えばポジション調整中に撮像されている画像と、教師データの類似度合いに基づいてOK,NGの何れかを判定し、判定結果を出力してもよい。例えばポジショニングアプリケーションAP1は、類似度合いを表す数値が所定閾値以上である場合、姿勢が適切である旨を表すOKを出力し、類似度合いを表す数値が所定閾値未満である場合、姿勢が不適切である旨を表すNGを出力する。判定結果は、端末装置200の表示部240に表示されてもよいし、直接またはサーバシステム100を介してディスプレイDPに表示されてもよい。またポジショニングアプリケーションAP1は、NGと判定された具体的な点を表示する処理を行ってもよい。例えばポジショニングアプリケーションAP1は、撮像された画像と教師データを比較し、差分が大きいと判定された箇所を強調表示する処理を行ってもよい。
【0079】
またポジショニングアプリケーションAP1が利用される場面において、設定時と同様に圧力分布や骨格トラッキングの結果が取得されてもよい。この場合、ポジショニングアプリケーションAP1は、利用時に取得された圧力分布と教師データに含まれる圧力分布の比較処理、利用時に取得された骨格トラッキング結果と教師データに含まれる骨格トラッキング結果の比較処理等に基づいて、OK,NGを判定してもよい。
【0080】
このようにすれば、被介助者のベッドポジションと、理想的なベッドポジションを比較して提示することや、理想的なベッドポジションを実現するための情報を提示することが可能になる。
【0081】
また上述したように、ポジショニングアプリケーションAP1で用いられる教師データは、熟練の介助者が被介助者を適切な姿勢にするまでの動作を撮像した動画像や、当該動画像に基づいて検出された介助者の骨格トラッキング結果を含んでもよい。この場合、ポジショニングアプリケーションAP1は、利用モードにおいて、介助者を撮像し、当該介助者に対する骨格トラッキングを行い、教師データである骨格トラッキング結果と比較することでOK/NGを判定してもよい。このようにすれば、介助者の熟練度によらず、熟練度の高い介助者と同様の動きを行わせることが可能になる。
【0082】
またポジショニングアプリケーションAP1は、オムツ交換の支援に用いられてもよい。例えばポジショニングアプリケーションAP1は、被介助者が側臥位になっているか、オムツの位置が適切か、オムツからパットがでていないか、オムツが適切に装着されたかを判定してもよい。これらは、適切な状態を撮像した教師データの重畳表示により実現されてもよいし、骨格トラッキングやオブジェクト検出処理等に基づいて実行されてもよい。
【0083】
このようにすれば、ベッド610に継続的に横たわる際の姿勢(寝姿勢)を適切に調整させることだけでなく、オムツ交換における暗黙知を適切に利用して、介助者に適切にオムツ交換を実行させることが可能になる。なお、オムツ交換の作業において被介助者の体を動かす必要がある。例えば、オムツを配置しやすいように一旦側臥位にする、オムツをはかせるために足を上げる等の作業が介助者によって行われる。そのため、オムツ交換完了時には、被介助者がベッドで横になる際に適した姿勢になっていない可能性もある。よってポジショニングアプリケーションAP1は、オムツ交換が完了したことが検出された場合、自動的に寝姿勢を調整するための処理を実行してもよい。
【0084】
なお上述したように、ポジショニングアプリケーションAP1は、重畳表示を行う機能と、OK/NGの判定を行う機能等の複数の機能を有し、各機能はアクティブ/非アクティブが切り替え可能であってもよい。例えばポジショニングアプリケーションAP1は、重畳表示のみを行う動作モードと、重畳表示とOK/NG判定の両方を行う動作モード等を含んでもよい。各機能のアクティブ/非アクティブは、介助者等のユーザが設定してもよいがこれに限定されず、ポジショニングアプリケーションAP1が自動的に判定してもよい。
【0085】
また本実施形態のポジショニングアプリケーションAP1の有する機能はこれに限定されず、被介助者が使用するベッド610を制御する機能が用いられてもよい。例えば端末装置200の記憶部220は、被介助者が使用するベッド610の設定情報を記憶する。ここでの設定情報は、複数の設定項目に対して、それぞれ設定値が対応付けられた情報であってもよい。複数の設定項目は、ベッド610の高さ、ボトムの角度を含む。ボトムとはマットレス620が載置される面を表す。なおベッド610が複数のボトムを含む場合、設定項目には各ボトムの角度が含まれてもよい。そしてポジショニングアプリケーションAP1は、教師データにおけるベッド610の高さやボトム角度と、利用時のベッド610の高さやボトム角度の差が所定以上と判定した場合、高さやボトム角度が教師データに近づくように、ベッド610に制御を指示する情報を出力する。
【0086】
例えば、ポジショニングアプリケーションAP1は、ベッド610と通信を行うことによって、ベッド610の設定情報を取得してもよい。例えば設定モードにおいて、ポジショニングアプリケーションAP1は、写真撮影ボタンの選択操作が行われた際の設定情報をベッド610から取得し、当該設定情報を教師データに含めてもよい。利用モードでは、ポジショニングアプリケーションAP1は、リアルタイムの設定情報をベッド610から取得し、当該設定情報と、教師データの設定情報を比較することによってベッド610を制御してもよい。あるいはポジショニングアプリケーションAP1は、画像情報である教師データと、リアルタイムに撮像された撮像画像とを比較することによって、ベッド610の高さやボトム角度の差異を求めてもよい。ポジショニングアプリケーションAP1は、当該差異を減少させるように、ベッド610を制御する。例えば、ポジショニングアプリケーションAP1は、
図4Bに示した教師データを重畳表示する処理とともに、音声やテキストを用いて「ベッド610を設定してもよいですか?」等の問い掛けを行ってもよい。ポジショニングアプリケーションAP1は、当該問い掛けに対して、音声やボタンの選択入力によってユーザの許可が得られた場合に、ベッド610の制御を開始する。
【0087】
なお以上ではポジション調整時にベッド610を制御する例を説明したが、制御対象となる機器はこれに限定されない。例えばエアー量を調整することで被介助者に姿勢変更を促すマットレス620が用いられる場合、ポジショニングアプリケーションAP1は、ポジション調整時に当該マットレス620を制御してもよい。例えば複数のエアセルを含み、エアセルごとに空気圧(硬さ)を調整可能なマットレス620を用いる場合、ポジショニングアプリケーションAP1は、各エアセルの硬さを調整する処理を行ってもよい。また後述する車椅子ポジションの調整が行われる場合、ポジショニングアプリケーションAP1は、ポジション調整時に当該車椅子630の座面の高さや背もたれの角度を制御してもよい。
【0088】
またポジション調整時にベッド610等を制御する機能についても、ユーザ設定や自動判定に基づいてアクティブ/非アクティブを変更可能である。
【0089】
<ポジショニングアプリケーションで用いられるデバイスの例>
また以上ではポジショニングアプリケーションAP1の設定及び利用に用いられるデバイスとして圧力検知が可能なベッド610やマットレス620を例示したがこれには限定されない。
【0090】
図9は、ポジショニングアプリケーションAP1に利用可能な他のデバイスの例であって、ベッド610のボトムに配置されるベッドサイドセンサ420及び検出装置430の例を説明する図である。ベッドサイドセンサ420及び検出装置430は、例えば
図9に示すように、ベッド610のボトムとマットレス620の間に設けられるシート状またはプレート状のデバイスである。
【0091】
なお、ベッドサイドセンサ420及び検出装置430は、ポジショニングアプリケーションAP1の設定や利用に用いられるデバイスであってもよいし、後述するように、ポジショニングアプリケーションAP1の処理結果に基づいて動作が変化するモーション判定機器410であってもよい。
【0092】
ベッドサイドセンサ420は、センシングデータとして圧力値を出力する圧力センサを含み、ボトムのうち、介助者がベッド610の上り下りに用いる側に配置される。
図9の例では、介助者の上り下りはベッド610の手前側を用いて行われる。この際、
図9に示すように、ベッド610の手前側には転落防止用の柵が配置され、ベッドサイドセンサ420は当該柵が設けられない位置に配置されてもよい。このようにすれば、ベッド610の上り下りを行うユーザは、一旦、ベッドサイドセンサ420上に座る動作を行う。ベッドサイドセンサ420は、時系列の圧力データをセンシングデータとしてサーバシステム100に出力してもよい。あるいは、ベッドサイドセンサ420は、以下で説明する処理を実行することによって動き出しの有無を判定し、判定結果をセンシングデータとしてサーバシステム100に出力してもよい。
【0093】
ベッドサイドセンサ420は、例えばベッドサイドセンサ420にインストールされるアプリケーションに従って動作することによって、圧力値を入力データとして取得し、当該圧力値からベッド610上での被介助者の動きを判定する処理を実行する。
【0094】
例えば被介助者がベッド610から立ち上がる際には、被介助者は、ベッド上で臥位を取っている状態から、ベッドサイドで座位を取った状態(以下、端座位と表記)に移行し、さらに膝やボトム面に手をついて力を加えることで立ち上がり動作を実行することが想定される。ベッドサイドセンサ420が検出する圧力値は、臥位、端座位、立ち上がり動作の順で大きくなる。例えばベッドサイドセンサ420は、圧力値と所与の閾値の比較処理に基づいて、端座位から立ち上がり動作への変化を検出した場合に動き出しが検出されたと判定してもよい。あるいは、立ち上がり動作をより速い段階で検出するという観点から、ベッドサイドセンサ420は、圧力値と所与の閾値の比較処理に基づいて、臥位から端座位への変化を検出した場合に動き出しが検出されたと判定してもよい。
【0095】
あるいは、立ち上がり動作が継続されると、被介助者の臀部がボトム面から浮き上がるため、圧力センサから出力される圧力値は大きく減少する。よってベッドサイドセンサ420は、圧力値の時系列変化に基づいて、圧力値が第1閾値以上に増加した後、第1閾値よりも小さい第2閾値以下に減少した場合に、立ち上がり動作が行われたと判定してもよい。その他、動き出し判定の具体的な処理内容については種々の変形実施が可能である。
【0096】
また
図9に示す検出装置430は、被介助者の睡眠に関する情報をセンシングするデバイスである。検出装置430は、圧力値を出力する圧力センサを含む。
【0097】
検出装置430は、ユーザが就床すると、マットレス620を介してユーザの体振動(体動、振動)を検知する。検出装置430が検知した体振動に基づいて、呼吸数、心拍数、活動量、姿勢、覚醒/睡眠、離床/在床に関する情報が求められる。また検出装置430は、ノンレム睡眠とレム睡眠の判定や、睡眠の深さの判定を行ってもよい。例えば体動の周期性を分析し、ピーク周波数から呼吸数、心拍数が算出されてもよい。周期性の分析は、例えばフーリエ変換等である。呼吸数は、単位時間あたりの呼吸の回数である。心拍数は、単位時間あたりの心拍の回数である。単位時間は、例えば1分である。また、サンプリング単位時間当たりに体振動を検出し、検出された体振動の回数が活動量として算出されてもよい。またユーザの離床時には、在床時に比べて検出される圧力値が減少するため、圧力値やその時系列的な変化に基づいて離床/在床の判定が可能である。
【0098】
例えば検出装置430は、圧力センサの出力をセンシングデータとしてサーバシステム100に出力してもよい。あるいは検出装置430は、上述した呼吸数、心拍数、活動量、姿勢、覚醒/睡眠、離床/在床に関する情報をセンシングデータとしてサーバシステム100に出力してもよい。
【0099】
また検出装置430は、被介助者の動き出しに関する判定を行ってもよい。例えば検出装置430は、被介助者が在床状態から離床状態に移行した場合に、動き出しがあったと判定する。またより早い段階で動き出しの兆候を検出するという観点から、検出装置430は、被介助者が睡眠状態から覚醒状態に移行した場合に、動き出しがあったと判定してもよい。検出装置430は、動き出しの検出結果をセンシングデータとしてサーバシステム100に出力してもよい。
【0100】
2.2 車椅子ポジション
図10は、車椅子ポジションの調整を行う際のシステム構成を例示する図である。
図10に示すように、車椅子ポジションの調整では、端末装置200は、車椅子630に座った被介助者の少なくとも上半身を撮像可能な高さに固定される。端末装置200は、例えば介護施設の所定位置に配置され、介助者は被介助者を車椅子630に移乗させた上で、端末装置200の正面まで移動させた後、車椅子ポジションの調整を行う。ただし、介助者が車椅子630の正面に立った状態で端末装置200を手に把持することによって、以下で説明する処理が実行されてもよい。
【0101】
端末装置200は、
図3を用いて上述したように、例えば撮像部260カメラを有するスマートフォン等の装置である。ポジショニングアプリケーションAP1は、車椅子ポジションの調整をサポートするアプリケーションであってもよい。車椅子ポジションの調整とは、褥瘡抑制のための被介助者の姿勢制御や、クッションの配置制御であってもよい。また車椅子ポジションの調整とは、車椅子に乗った状態で食事を行う際の被介助者の姿勢制御等であってもよい。
【0102】
<設定モード>
ポジショニングアプリケーションAP1は、ベッドポジションの場合と同様に、まずポジション調整に用いられるデータを設定する設定モードで動作する。
【0103】
図11は、設定モードにおいて用いられるデバイスの関係を例示する図である。例えばポジショニングアプリケーションAP1は、端末装置200に含まれる撮像部260の出力である画像情報と、車椅子630及び座面センサ440の少なくとも一方からの情報を取得してもよい。ここでの車椅子630は、被介助者が使用している状態における圧力分布を可視化可能なデバイスである。座面センサ440については
図13を用いて後述する。
【0104】
図12は、設定モードにおいて表示される画面例である。
図12に示す画面は、端末装置200の表示部240に表示されてもよいし、ネットワークを介して接続される他の機器の表示部に表示されてもよい。
【0105】
図12に示す画面の構成は、領域RE1に表示される画像情報が車椅子630に座った被介助者を撮像した画像となる点、領域RE2に表示される圧力分布が車椅子630の座面における圧力を表す情報となる点を除いて、
図7と同様である。そのため、
図12の画面に表示される情報の詳細についてはこれ以上の説明を省略する。
【0106】
図12に示した画面を用いることで、ユーザは被介助者を撮像した画像、及び圧力分布を参照でき、必要に応じて骨格トラッキング処理の結果も閲覧できる。そのため、例えば熟練の介助者であるユーザは、
図12の画面に表示される各種情報を参照することによって、被介助者が適切な姿勢を取っているか否かを判定する。ここでの適切な姿勢とは、褥瘡の抑制に適した姿勢であってもよいし、食事に適した姿勢であってもよいし、他の姿勢であってもよい。
【0107】
オブジェクトOB4に示す写真撮影ボタンの選択操作に基づいて、熟練者が好ましいと考えるポジションを教師データとして登録できる点もベッドポジションの例と同様である。教師データは画像情報に限定されず、圧力分布を含んでもよいし、骨格トラッキングの結果を含んでもよい。
【0108】
さらに、画像情報を含む教師データに対して、何らかの付加情報が付加されてもよい点もベッドポジションの例と同様である。付加情報の付加には、例えば
図8を用いて上述した画面が用いられる。
【0109】
<利用モード>
また実際に被介助者のベッドポジション調整が行われる利用モードでは、ポジショニングアプリケーションAP1は、端末装置200の撮像部260を用いた撮像画像の取得を開始する。またポジショニングアプリケーションAP1は、車椅子ポジションの調整に用いられる教師データを選択する。
【0110】
ポジショニングアプリケーションAP1による教師データの選択処理については、ベッドポジションの例と同様であり、教師データはユーザ入力に基づいて選択されてもよいし、被介助者の属性等に基づいて自動的に選択されてもよい。
【0111】
ポジショニングアプリケーションAP1は、例えば
図4Bを用いて上述したように撮像画像に対して、透過処理が施された教師データを重畳表示する。またポジショニングアプリケーションAP1は、例えばポジション調整中に撮像されている画像と、教師データの類似度合いに基づいてOK,NGの何れかを判定し、判定結果を出力してもよい。またポジショニングアプリケーションAP1が利用される場面において、設定時と同様に圧力分布や骨格トラッキングの結果が取得されてもよい点も同様である。
【0112】
このようにすれば、被介助者の車椅子ポジションと、理想的な車椅子ポジションを比較して提示することや、理想的な車椅子ポジションを実現するための情報を提示することが可能になる。
【0113】
なお
図10に示す配置を用いる場合、端末装置200の撮像部260は被介助者を正面から撮像できるため、
図5の端末装置200-1にようにベッド610に固定される機器を用いる場合に比べて、被介助者の顔を鮮明に撮像可能である。よって被介助者に応じて教師データを自動選択する場合、ポジショニングアプリケーションAP1は、顔認識処理の結果に基づいて調整対象の被介助者を自動的に特定してもよい。また顔認識処理の結果に基づいて、教師データの選択処理が行われてもよい。例えば、端末装置200に、それぞれが異なる教師データに対応する複数のポジショニングアプリケーションAP1がインストールされている場合、顔認識処理の結果に基づいて、どのポジショニングアプリケーションAP1を起動するかが決定されてもよい。あるいは、1つのポジショニングアプリケーションAP1に複数の教師データが対応付けられている場合、顔認識処理の結果に基づいて、当該複数の教師データから使用する教師データが選択されてもよい。
【0114】
<ポジショニングアプリケーションで用いられるデバイスの例>
また以上ではポジショニングアプリケーションAP1の設定及び利用に用いられるデバイスとして圧力検知が可能な車椅子630を例示したがこれには限定されない。
【0115】
図13は、ポジショニングアプリケーションAP1に利用可能な他のデバイスの例であって、例えば車椅子630の座面に配置される座面センサ440を示す図である。座面センサ440は圧力値を出力する圧力センサを含み、当該圧力値を出力する。例えば
図12の画面において、圧力分布に対応する情報として座面センサ440の出力が用いられてもよい。
【0116】
また座面センサ440は、ポジショニングアプリケーションAP1への圧力値の出力以外の処理が可能であってもよい。例えば座面センサ440は、圧力センサの圧力値に基づいて、被介助者が車椅子630に座った際の姿勢(以下、座姿勢とも記載する)が、正常、前ずれ、横ずれ等を含む複数の姿勢の何れであるかを判定してもよい。前ずれとは、ユーザの重心が通常よりも前方にずれた状態を表し、横ずれとは、ユーザの重心が通常よりも左右の何れか一方にずれた状態を表す。前ずれと横ずれのいずれも、座面からの転落リスクが相対的に高い状態に対応する。また座面センサ440は、被介助者が座面から転落する可能性の有無を判定する転落可能性の判定を行ってもよい。
【0117】
図13の例では、車椅子630の座面に配置されるクッション441の裏面側に4つの圧力センサSe1~Se4が配置される。圧力センサSe1は前方に配置されるセンサであり、圧力センサSe2は後方に配置されるセンサであり、圧力センサSe3は右方に配置されるセンサであり、圧力センサSe4は左方に配置されるセンサである。なおここでの前後左右は、車椅子630に被介助者が座った状態において、当該被介助者から見た方向を表す。
【0118】
図13に示すように、圧力センサSe1~Se4は、制御ボックス442に接続される。制御ボックス442は、内部に圧力センサSe1~Se4を制御するプロセッサと、プロセッサのワーク領域となるメモリを含む。プロセッサは、圧力センサSe1~Se4を動作させることによって圧力値を検出する。
【0119】
車椅子630に座っている被介助者は、臀部に痛みを感じ、臀部の位置をずらす可能性がある。例えば、臀部が通常よりも前にずれた状態が前ずれであり、左右にずれた状態が横ずれである。また、前ずれと横ずれが同時に発生し、重心が斜めにずれることもある。
図13に示すようにクッション441に配置した圧力センサを用いることによって、臀部の位置の変化を適切に検出できるため、前ずれや横ずれを精度よく検出することが可能になる。例えば、座面センサ440は、圧力センサSe1の値が初期状態に比べて所定以上増加した場合に前ずれと判定し、圧力センサSe3又はSe4が初期状態に比べて所定以上増加した場合に横ずれと判定する。
【0120】
座面センサ440は、圧力センサSe1~Se4の出力である圧力値をセンシングデータとしてサーバシステム100に出力してもよいし、前ずれや横ずれの判定結果、転落可能性の判定結果等をセンシングデータとしてサーバシステム100に出力してもよい。また制御ボックス442が発光部等を含み、当該発光部を用いて介助者への報知が行われてもよい。このようにすれば、車椅子630等における座姿勢の変化を分かりやすく介助者に通知できるため、被介助者の転落を抑制することが可能になる。
【0121】
2.3 被介助者の生活環境に配置される物のポジション
なお、以上では被介助者のポジションを調整する場合に、付加情報としてクッション等の物のポジションの調整を行う例について説明した。ただし本実施形態の手法では、被介助者のポジション調整は必須ではなく、被介助者の周辺に配置される物のポジション調整のみが行われてもよい。
【0122】
被介助者の周辺とは、被介助者が生活に用いる居室等の場所を表す。この場合、ポジショニングアプリケーションAP1が動作する装置は、
図5に示した端末装置200-1や端末装置200-2であってもよいし、
図10に示した端末装置200であってもよいし、居室等に配置される他の端末装置200であってもよいし、介助者が携帯する端末装置200であってもよい。
【0123】
被介助者の周辺に配置される物は、家具であってもよいし、電化製品であってもよいし、装飾品であってもよいし、その他の小物であってもよい。また被介助者の周辺に配置される物は、ボトムの高さや角度を調整可能なベッド610、背もたれの角度を調整可能な車椅子630、
図19A~
図19Dを用いて後述する周辺機器500等、医療や介護に用いられる機器を含んでもよい。
【0124】
設定モードで取得される教師データはベッドポジションや車椅子ポジションの例と同様であり、例えば、物が基準位置に配置された状態を撮像した画像情報である。利用モードでは、ポジショニングアプリケーションAP1は、教師データとリアルタイムの撮像画像を重畳表示する処理を行ってもよいし、基準位置からのずれ量が所定閾値以上の物が存在する場合にNGと判定する処理を実行してもよい。
【0125】
このようにすれば、被介助者の周辺の物の配置を基準位置に合わせることをサポートできる。この処理は、例えば不穏行動と関連した連携処理において有用である。不穏行動と関連した連携処理の詳細については
図23等を用いて後述する。
【0126】
ただし、介助者、被介助者、被介助者の家族等の安全を確保するための物の配置に関する暗黙知がある場合(例えば転倒や衝突の防止、高い位置からの物の落下の防止等)、ポジショニングアプリケーションAP1は当該暗黙知に従った設定が行われてもよい。このようにすれば、生活環境をより安全にすることが可能になる。例えば病院や介護施設での安全確保に、物のポジション調整を行うポジショニングアプリケーションAP1が用いられてもよい。また在宅介護等の場面では、病院や介護施設での物の配置を流用するという観点から、病院等で取得された教師データを家庭でも用いることが可能である。また、訪問ヘルパー等の熟練者によって、家庭での安全な物の配置を表す教師データが取得されてもよい。
【0127】
3.ポジショニングアプリケーションを含む連携
次に、ポジショニングアプリケーションAP1と、他のアプリケーション及び他の装置との具体的な連携処理について、いくつかの例を用いて説明する。
【0128】
3.1 褥瘡の観点に基づく連携
図14は、被介助者の褥瘡抑制の観点に基づく、ポジショニングアプリケーションAP1と、他のアプリや装置との連携処理を説明する図である。
図14に示すように、被介助者の褥瘡を抑制するために、食事アプリケーションAP2と、ポジショニングアプリケーションAP1と、モーション判定機器410と、上述したベッド610、マットレス620、車椅子630等が連携してもよい。
【0129】
3.1.1 食事アプリケーション
<食事アプリケーションの動作>
食事アプリケーションAP2は、介助を受ける被介助者の食事介助において、被介助者によって摂取される食べ物の種類及び量の少なくとも一方を検出する。つまり本実施形態の情報処理システム10は、食事アプリケーションAP2が動作する機器を含んでもよい。
【0130】
例えば褥瘡対策の基本的な思想としてSSKINが知られている。SSKINとは、Skin Inspection, Support Surface, Keep Moving, Incontinence Management, Nutrition & Hydrationを表す。即ち、褥瘡を抑制するためには、Support SurfaceやKeep Moving等、ポジショニングアプリケーションAP1を用いて管理可能な項目と、Nutrition & Hydrationという食事アプリケーションAP2を用いて管理可能な項目を総合的に用いることが有用である。そのため、ポジショニングアプリケーションAP1と食事アプリケーションAP2を連係して動作させることによって、褥瘡を効果的に抑制することが可能になる。
【0131】
図15は、食事アプリケーションAP2が動作する装置の一例であって、食事の場面において利用される嚥下ムセ検出装置460を例示する図である。
図15に示すように、嚥下ムセ検出装置460は、被介助者の首回りに装着されるスロートマイク461と、カメラを有する端末装置462を含む。ただし、食事アプリケーションAP2は端末装置200やサーバシステム100等、嚥下ムセ検出装置460以外の装置において動作してもよい。
【0132】
スロートマイク461は、被介助者の嚥下や咳込み等による音声データを出力する。端末装置462のカメラは、被介助者の食事の様子を撮像した撮像画像を出力する。端末装置462は、例えば被介助者が食事をする卓上に置かれるスマートフォンやタブレット型のPC等である。スロートマイク461は、Bluetooth(登録商標)等を用いて端末装置462に接続され、端末装置462はネットワークを介してサーバシステム100に接続される。ただし、スロートマイク461と端末装置462の両方がサーバシステム100に直接接続可能であってもよく、具体的な接続態様は種々の変形実施が可能である。
【0133】
例えば端末装置462は、食事アプリケーションAP2を記憶するメモリと、当該食事アプリケーションAP2に従って動作するプロセッサとを含んでもよい。そして端末装置462は、食事アプリケーションAP2に従って動作することによって、少なくとも被介助者によって摂取される食べ物の種類及び量を判定する処理を行う。
【0134】
図16A、
図16Bは、食事アプリケーションAP2の動作画面の例を説明する図である。この動作画面は、例えば端末装置462の表示部に表示される。
【0135】
図16Aは、被介助者を特定する情報、及び、食前又は食後を特定する情報を入力する画面である。例えば介護施設では、被介助者毎に食事管理を行うために、それぞれに提供される料理に対して、当該料理がどの被介助者に用意されたものであるかを表すタグ等が付与される。なお料理とは、器に盛り付けられた食べ物を表す。ここでのタグは、例えばバーコード等を含んでもよい。カメラ等のバーコードリーダを用いて当該バーコードを読み取ることによって、対象の被介助者を特定する情報が取得される。
図16Aに示す画面では、バーコードの読取りを指示するテキストを表示するとともに、端末装置462のカメラによって撮像された画像が表示される。バーコードが鮮明に撮像されるように、介助者がカメラとバーコードの位置関係を調整することによって、端末装置462の食事アプリケーションAP2は、被介助者を特定する情報を取得する。バーコードが読み取られた場合、食事アプリケーションAP2は、
図16Aに示す画面の「Name」の欄に、読取り結果である被介助者の氏名を表示してもよい。
【0136】
また
図16Aに示す画面は、beforeとafterの何れか一方を選択するラジオボタンを含んでもよい。beforeは食前を表し、afterは食後を表す。介助者が何れかを選択することによって、食事アプリケーションAP2は、
図16Bの画面を用いて取得される撮像画像が食前の画像であるか、食後の画像であるかを判定できる。
【0137】
図16Aにおいてnextボタンの選択操作が行われた場合、食事アプリケーションAP2は
図16Bの画面を表示する。
図16Bの画面は、
図16Aの画面を用いて取得された被介助者の氏名、及びbefore/afterの情報を表示する。また
図16Bの画面では、端末装置462のカメラによって撮像された画像が動画像として表示される。
図16Bでは、料理を真上から撮像している例を示すが、斜め方向から料理が撮像されてもよい。
図16Bの画面においてpictureボタンの選択操作が行われた場合、そのタイミングで表示されていた画像が静止画像として記憶される。これにより、食前及び食後の画像がそれぞれ取得される。
図16Bでは、3つの器に盛られた料理が撮像される例を示しているが、1回の献立における具体的な料理の数は種々の変形実施が可能である。
【0138】
図16Bにおいて、analysisボタンの選択操作が行われた場合、食事アプリケーションAP2は、記憶された静止画像に基づいて、被介助者によって摂取される食べ物の種類及び量を判定する。
図17A、
図17Bは、食事アプリケーションAP2が実行する処理を説明する図である。まず
図17Aに示すように、食事アプリケーションAP2は、静止画像から料理に対応する領域を検出する。例えば、食事アプリケーションAP2は、食べ物が盛り付けられた器を内包する矩形領域を検出する処理を行う。ここでは、検出処理によって3つの器のそれぞれを内包する領域が検出されるため、矩形領域R1~R3が検出される。この処理には、公知のオブジェクト検出手法を広く適用できるため、詳細な説明は省略する。
【0139】
食事アプリケーションAP2は、オブジェクト検出によって検出された矩形領域R1~R3に基づいて、食べ物の種類を求める処理を行う。例えばYanai等による”FOOD IMAGE RECOGNITION USING DEEP CONVOLUTIONAL NETWORK WITH PRE-TRAINING AND FINE-TUNING" (http://img.cs.uec.ac.jp/pub/conf15/150703yanai_0.pdf)には、DCNN(deep convolutional neural network)に基づいて、画像から食べ物を認識する手法が開示されている。本実施形態の食事アプリケーションAP2は、これらの手法のように、画像処理の結果に基づいて食べ物の種類を求めてもよい。例えば食事アプリケーションAP2は、DCNNに矩形領域R1~R3のそれぞれに対応する画像を入力することによって、食べ物の種類を特定する。
図17Aの例では、3つの料理がそれぞれ「ライス」、「豆腐とわかめの味噌汁」、「きのことレタスのソテー」であるとの特定結果が取得された例を示している。また食べ物の種類の特定結果に基づいて、各食べ物によって摂取されるカロリーや栄養素の種類が特定される。
図17Aに示したように、特定されたカロリーや栄養素が料理の種類と対応付けて表示されてもよい。
【0140】
また
図17Bに示すように、食事アプリケーションAP2は、器に盛られた食べ物を撮像した画像から円形領域をトリミングする処理を行ってもよい。なお以下では矩形領域R1を例に説明を行うが、矩形領域R2及びR3に対しても同様の処理が実行される。円形領域とは、円形状C1の内側の領域である。例えば食事アプリケーションAP2は、
図17Aに示す処理によって検出された矩形領域R1を正方形に変形する処理を行った後、当該正方形に内接する円形状C1を用いたトリミングを行ってもよい。これにより、トリミング結果に対して、食べ物、及び当該食べ物が盛り付けられる器の割合が高くなり、テーブル等の他の物体による影響を抑制できる。なお、ここでの円形状C1は真円に限定されず、楕円であってもよいし、円の一部に凹凸を有する形状であってもよく、円からの相違度が所定以下の形状を広く含む。
【0141】
さらに食事アプリケーションAP2は、トリミング結果のうちの中心部に対応する第1領域の画素値である第1画素値、及び、トリミング結果のうちの周縁部に対応する第2領域の画素値である第2画素値を求める。以下、説明の便宜上、第1領域を中心領域と表記し、第2領域を周縁領域と表記する。また第1画素値を中心画素値と表記し、第2画素値を周縁画素値と表記する。ここでの画素値は、グレースケール画像における画素値であってもよいし、カラー画像におけるRGBそれぞれの画素値のうちの1以上であってもよい。また中心領域及び周縁領域に複数の画素が含まれることに鑑みれば、中心画素値及び周縁画素値は単一の値ではなく、複数の画素値の集合(例えば分布)であってもよい。
【0142】
例えば、食事アプリケーションAP2は、2つの円形状C1及びC2を、矩形領域R1によるトリミング結果に設定することによって、中心領域と周縁領域を設定してもよい。中心領域とは、円形状C2の内側の領域である。周縁領域とは、円形状C2の外側且つ円形状C1の内側の領域である。円形状C2は、円形状C1よりも小さい領域であり、2つの円形領域のサイズ比は固定であってもよいし、ユーザ入力等に基づいて変更可能であってもよい。なお円形状C1及び円形状C2は例えば中心を共通とする同心円であるが、中心がずれて設定されてもよい。
【0143】
図17Bの例のように、食べ物は器の中心部分に盛り付けられる蓋然性が高い。よって食前の画像の中心領域では、食べ物が撮像される領域が相対的に広くなる。結果として、食前の中心画素値の分布は、食べ物に対応する画素値の頻度が高く、器に対応する画素値の頻度が低くなる。これに対して、食べ物が器の周縁領域まで盛り付けられる蓋然性は低い。よって食前の画像であっても、画像の周縁領域では、食べ物が撮像される領域が狭く、器が撮像される領域が広くなる。結果として、食前の周縁画素値の分布は、食べ物に対応する画素値の頻度が低く、器に対応する画素値の頻度が高くなる。
【0144】
例えば食事アプリケーションAP2は、食前の画像の中心画素値の分布と、食前の画像の周縁画素値の分布を比較することによって、食べ物に対応する画素値の範囲と、器に対応する画素値の範囲を決定する。具体的には、上述したように中心画素値と周縁画素値の両方で頻度が高い範囲が器に対応し、中心画素値では頻度が高いが周縁画素値では頻度が低くなる範囲が食べ物に対応する。例えば食事アプリケーションAP2は、画素値が取り得る範囲(一例としては0~255)において、食べ物に対応する画素値と、器に対応する画素値との境界となる閾値を設定してもよい。閾値設定には大津の二値化法、あるいはその他の公知の手法を広く適用可能であるため、詳細な説明は省略する。
【0145】
なお、食事アプリケーションAP2が食べ物の種類を特定する処理の例としてDCNNを用いる例を上述したが、これには限定されない。例えば食事アプリケーションAP2は、特定された食べ物に対応する画素値の範囲に基づいて、食べ物(料理)の種類を求めてもよい。例えば画素値範囲と食べ物の種類を対応付けたテーブルデータが予め保持されており、食事アプリケーションAP2は当該テーブルデータに基づいて食べ物の種類を特定する。また食事アプリケーションAP2は、対象の料理が主菜と副菜の何れであるかを表すユーザ入力を取得しておき、当該ユーザ入力を食べ物の種類の特定処理に用いてもよい。
【0146】
また食事において、被介助者が器に盛られた食べ物を摂取した場合、摂取量に応じて器に残される食べ物の量が変化する。つまり、食後の画像では摂取量に応じて食べ物が撮像される領域が食前に比べて狭くなるため、食後の中心画素値の分布を見た場合、食べ物に対応する画素値の頻度が食前に比べて低下する。そして、食べ物に対応する画素値の頻度の低下度合いは、被介助者の摂取量に関連する。
【0147】
よって食事アプリケーションAP2は、食前の中心画素値における食べ物に対応する画素値の頻度に対する、食後の中心画素値における食べ物に対応する画素値の頻度の低下量を、摂取量を表す指標値として求めてもよい。なお食事アプリケーションAP2は、被介助者を特定する情報と、静止画像が取得されたタイミングに基づいて、同じ料理の食前画像と食後画像を対応付ける処理を行う。例えば食事アプリケーションAP2は、対象の被介助者の食前の画像の撮像タイミングを基準とし、当該撮像タイミングより後であって、当該撮像タイミングに最も近いタイミングで撮像された同じ被介助者の食後の画像を特定する。そして食事アプリケーションAP2は、当該2枚の画像を、同じ被介助者に提供された同じ料理を撮像した画像の組として、上述の摂取量を表す指標値を求める処理を行う。
【0148】
例えば食事アプリケーションAP2は、予め実際の摂取量と指標値を対応付けたテーブルデータを記憶しておく。ここでの摂取量は、例えば1~10の10段階で評価される。そして食事アプリケーションAP2は、食前での食べ物に対応する画素の数と、食後での食べ物に対応する画素の数の差分や比率を指標値として求め、当該指標値と上記テーブルデータを比較することによって、摂取量を10段階で求める。なお以上ではテーブルデータを用いる例を説明したが、指標値から摂取量を求める関数が用いられてもよい。ここでの関数は線形関数であってもよいし、非線形関数であってもよい。また摂取量の判定段階は10段階よりも多くても少なくてもよく、具体的な処理は種々の変形実施が可能である。
【0149】
<食事アプリケーションとポジショニングアプリケーションの連携>
上述したように、褥瘡の抑制には食事が重要であり、食事に問題がある被介助者は褥瘡が発生するリスクが高くなると考えられる。よってポジショニングアプリケーションAP1は、食事アプリケーションAP2によって被介助者が摂取する食べ物の量の不足、及び栄養不足の少なくとも一方が検出された場合に、ポジショニングアプリケーションの動作モードを第1モードから、相対的に処理負荷の大きい第2モードに変更する。摂取された食べ物の量とは、例えば食べ物の種類によらず、所定期間において被介助者が摂取した食べ物の総量を表す情報である。以下では説明の便宜上、所定期間において被介助者が摂取した食べ物の総量を食事量とも表記する。栄養不足とは、炭水化物、脂質、タンパク質、ビタミン等、食べ物に含まれる各栄養素について、被介助者の摂取量が必要量に到達していないことを表す。
【0150】
このようにすれば、食事量がそもそも不足している場合や、食事量は足りているが特定の栄養素が不足している場合等、褥瘡のリスクが高い場面において、ポジショニングアプリケーションAP1を積極的に利用できる。結果として、褥瘡リスクを低減することが可能になる。
【0151】
例えば食事アプリケーションAP2は、対象の被介助者の属性によって決定される食事量の基準値と、実際の食事量とを比較することによって、食事量が不足しているか否かを判定する。また食事アプリケーションAP2は、食べ物の種類を特定することによって、対象の食べ物(料理)に含まれる単位量あたりの栄養素の量を求めてもよい。そして食事アプリケーションAP2は、当該単位量あたりの栄養素の量と、被介助者が摂取した食べ物の量とを乗算することによって、対象の食事によって摂取できる栄養素を求める。例えば食事アプリケーションAP2は、対象の被介助者の属性によって決定される栄養素の基準値と、実際に摂取された栄養素の量とを比較することによって、栄養不足か否かを判定する。
【0152】
ここでポジショニングアプリケーションAP1の動作モードのうち、第1モードとは、オフ状態やスタンバイ状態に対応する動作モードであり、例えばポジショニングアプリケーションAP1が動作していない状態であってもよい。なお、端末装置200はポジショニングアプリケーションAP1以外のアプリケーションを実行可能であり、端末装置200自体のオン/オフは問わない。また第2モードとは、ポジショニングアプリケーションAP1が動作している状態であり、例えば教師データの重畳表示や、骨格トラッキング等に基づくOK/NGを出力する動作モードである。このようにすれば、食事アプリケーションAP2に基づいて褥瘡リスクが高いと判定された場合に、適切にポジショニングアプリケーションAP1を起動させることが可能になる。例えば、ポジショニングアプリケーションAP1が非アクティブの状態において、先に食事アプリケーションAP2が動作しており、食事アプリケーションAP2において食事量や栄養の不足が検出されたことをトリガーとして、ポジショニングアプリケーションAP1が起動されてもよい。
【0153】
ただし、第1モード及び第2モードの例はこれに限定されない。例えば、第1モードは既にポジショニングアプリケーションAP1が起動済みの状態であってもよい。ポジショニングアプリケーションAP1は、ベッド610に人が居ることの検知、オムツ交換が行われたことの検知、車椅子630に人が乗ったことの検知、等をトリガーとして起動されてもよい。そして、ポジショニングアプリケーションAP1の起動中に食事アプリケーションAP2において食事量や栄養の不足が検出されたことをトリガーとして、ポジショニングアプリケーションAP1が第2モードに移行する。例えばここでの第2モードは、第1モードに比べてポジショニングアプリケーションAP1が使用する機能の数が多い状態であってもよい。ポジショニングアプリケーションAP1の機能とは、例えば教師データの重畳表示を行う機能、OK/NGを判定する機能、教師データを自動選択する機能、ベッド610等を自動制御する機能等、上述した種々の機能を含む。
【0154】
例えば、第1モードは、教師データの重畳表示と、OK/NG判定の何れか一方のみを実行する動作モードであり、第2モードは当該2つの処理の両方を実行する動作モードであってもよい。このようにすれば、食事アプリケーションAP2に基づいて褥瘡リスクが高いと判定された場合に、ポジショニングアプリケーションAP1が使用する機能を増やすことが可能になる。
【0155】
またポジショニングアプリケーションAP1は、被介助者がベッドにいる場合、オムツ交換をする場合、車椅子630で移動している場合、車椅子630で食事をしている場合等、種々の場面で動作が可能である。例えば第2モードは、第1モードに比べて動作する場面数が多くてもよい。例えば第1モードは上記複数の場面のうちの1つで動作するモードであり、第2モードは上記複数の場面の2以上で動作するモードであってもよい。
【0156】
その他、第2モードは第1モードに比べて処理負荷の高い動作モードであればよく、具体的な態様は種々の変形実施が可能である。
【0157】
<嚥下ムセ検出装置が実行する他の処理の例>
以上では嚥下ムセ検出装置460の端末装置462において食事アプリケーションAP2が動作する例を説明した。ただし、嚥下ムセ検出装置460は食べ物の種類や量を求める処理とは異なる処理を実行してもよい。例えば、嚥下ムセ検出装置460は、音声データや撮像画像に基づいて以下で説明する処理を実行することによって食事に関する各種情報を求めてもよい。なお以下で説明する処理は、例えば食事アプリケーションAP2とは異なるアプリケーションにより実現されてもよいし、食事アプリケーションAP2の一部として実現されてもよい。
【0158】
例えば嚥下ムセ検出装置460は、スロートマイク461の音声データに基づいて、被介助者のムセと、嚥下を判定する。首回りに装着したマイクを用いて嚥下を検出するデバイスは、例えば” Swallowing action measurement device and swallowing action support system”という2019年2月15日に出願された米国特許出願第16/276768号に記載されている。この特許出願は、その全体が本願明細書において参照により援用されている。プロセッサは、音声データに基づいて、ムセの回数、ムセの時間(発生時刻、継続時間等)、嚥下をしたか否かを検出できる。
【0159】
また端末装置462のカメラは、例えば
図15に示すように被介助者を正面方向から撮像することによって、被介助者の口、目、及び被介助者が使用する箸やスプーン等を検出できる。なお画像処理に基づいてこれらの顔のパーツや物体を検出する手法は種々知られており、本実施形態では公知の手法を広く適用可能である。
【0160】
例えば嚥下ムセ検出装置460は、カメラの撮像画像に基づいて、被介助者の口が開いているか否か、口から食べ物が出ているか否か、食べ物を噛んでいるか否かを判定できる。また嚥下ムセ検出装置460は、カメラの撮像画像に基づいて、被介助者の目が開いているか否かを判定できる。また嚥下ムセ検出装置460は、カメラの撮像画像に基づいて、箸やスプーン等が食器の近くにあるか否か、被介助者が持てているか否か、食べ物をこぼしているか否かを判定できる。
【0161】
本実施形態の手法では、これらの情報に基づいて、被介助者の嚥下やムセに関する状況を推定する。例えば嚥下ムセ検出装置460は、ムセ及び嚥下の検出結果、及び、被介助者の口の開閉判定結果に基づいて、食事に関する情報を求めてもよい。
【0162】
例えば嚥下ムセ検出装置460は、ムセの回数や時間に基づいて、ムセが頻発しているか否かを判定し、判定結果を出力してもよい。例えば嚥下ムセ検出装置460は、単位時間あたりのムセの回数が閾値を超えた場合に、ムセが頻発したと判定してもよい。このようにすれば、ムセに関する状況を自動的に判定できる。
【0163】
また嚥下ムセ検出装置460は、嚥下の検出結果、及び、被介助者の口の開閉判定結果に基づいて、被介助者が口を開けてから嚥下するまでの嚥下時間を求めてもよい。このようにすれば、例えば嚥下の回数が減っている場合において、食べ物を口に入れる動作自体が行われていないのか、食べ物を口に入れたのに嚥下が行われないのか等、具体的な状況を判定できる。例えば嚥下ムセ検出装置460は、端末装置462の撮像画像に基づいて口が閉じた状態から開いた状態に移行したときにタイマーのカウントアップを開始し、スロートマイク461によって嚥下が検出された場合にタイマーの計測を停止してもよい。停止時のタイムが、嚥下時間を表す。このようにすれば、食事において誤嚥リスクが高く、介助者が何らかのアクションを実行すべき状況であるかを精度よく判定できる。
【0164】
また嚥下ムセ検出装置460は、嚥下時間に基づいて食事のペースを判定してもよい。また嚥下ムセ検出装置460は、1回の食事の中での嚥下時間の変化(例えば最初の方の嚥下時間に対する増加量や比率等)に基づいて、嚥下時間が長いか否かを判定してもよい。あるいはプロセッサは、同じ被介助者について、複数回の食事のそれぞれでの平均嚥下時間等を求め、当該平均嚥下時間の変化に基づいて嚥下時間が長くなったか否かを判定してもよい。
【0165】
また端末装置462の撮像画像による口の開閉判定結果を用いることによって、介助者がスプーン等を近づけても開口しなくなった状況であるかを判定できる。このように、被介助者が開口を渋る状況において、嚥下時間が長くなった場合、口内に食べ物が残るため込みが発生した状況であると推定できる。また撮像画像を用いて口から食べ物が出ているか否か、食べ物を噛んでいるかの認識結果を用いることによって、被介助者が食べ物を噛み切れなくなった状況であるかを判定できる。例えば噛む回数は通常通りであるのに、嚥下時間が長い場合、噛み切れなくなった状況であると推定される。また撮像画像を用いて目が閉じていると判定された場合、被介助者が眠そうになった状況であるかを判定できる。
【0166】
また撮像画像を用いて箸やスプーン等の認識処理を行うことによって、食べ物で遊んでいる、器が持てない、何もしていない等の状況であるか否かが判定されてもよい。例えばスプーン等のオブジェクトが被介助者の手に重なっているが、当該オブジェクトを口に運ぶまでの時間が所定閾値以上である場合、食器が持てない、あるいは、食べ物で遊んでいると判定される。またスプーン等のオブジェクトが被介助者の手に重ならず、且つ、被介助者の視線が食べ物(料理)に向いている時間が所定閾値以上である場合、何もしないで食べ物を見ていると判定される。
【0167】
また本実施形態の手法では、嚥下ムセ検出装置460の処理結果に基づいて、ポジショニングアプリケーションAP1の動作が変更されてもよい。なお、ポジショニングアプリケーションAP1の制御は、食事アプリケーションAP2をトリガーとしてもよいし、嚥下ムセ検出装置460の他の処理結果をトリガーとしてもよいし、この両方をトリガーとしてもよい。
【0168】
例えば嚥下ムセ検出装置460は、上述した手法により求められるムセの回数や頻度、ムセの深刻度、嚥下時間の変化等に基づいて、被介助者の嚥下能力を求めてもよい。そして嚥下ムセ検出装置460において嚥下能力が所定以下に低下したと判定された場合に、ポジショニングアプリケーションAP1は、第1モードから第2モードに移行してもよい。例えば、嚥下能力の低下をトリガーとして、ポジショニングアプリケーションAP1が起動されてもよい。
【0169】
また被介助者の食事に関する能力が低下した場合に、嚥下ムセ検出装置460による食事のモニタリングが開始される場合も考えられる。よって嚥下ムセ検出装置460の動作が開始したことをトリガーとして、ポジショニングアプリケーションAP1が起動されてもよい。また嚥下ムセ検出装置460は、上述したようにそれぞれが異なる処理に対応する種々の機能を有しており、これらの機能はそれぞれアクティブ/非アクティブが制御されてもよい。例えば、被介助者の嚥下能力等が低下した場合に、嚥下ムセ検出装置460においてアクティブに設定される機能の数が増加する。この場合、嚥下ムセ検出装置460においてアクティブに設定される機能数が増えた場合や、特定の機能がアクティブになったことをトリガーとして、ポジショニングアプリケーションAP1が起動されてもよい。さらに言えば、嚥下ムセ検出装置460の処理結果やアクティブに設定される機能に加えて、被介助者のADLに基づいてポジショニングアプリケーションAP1の動作モードが制御されてもよい。
【0170】
また、嚥下ムセ検出装置460は、スロートマイク461が検出した音声データに基づいて嚥下の発生タイミングや嚥下量を求めるが、当該音声データの特徴量は、種々の状況に応じて変化することが知られている。ここでの特徴量は、音声データの波形における振幅であってもよいし、周波数であってもよいし、1回の嚥下に含まれる波数であってもよい。例えば、料理の固さやとろみの程度、食事のペース等の要因によって、嚥下の音が変化する。また固さ等が同等の場合であっても、被介助者の体調に応じて嚥下の音が変化することが分かってきた。
【0171】
よって嚥下ムセ検出装置460は、スロートマイク461の出力に基づいて嚥下の音を表す特徴量を求め、当該特徴量に基づいて、被介助者の体調を推定してもよい。例えば嚥下ムセ検出装置460は、過去の履歴に基づいて嚥下音の特徴量と、被介助者の体調を対応付けるデータを記憶しておく。そして、嚥下ムセ検出装置460は、実際に取得された特徴量と当該データを比較することによって、被介助者の体調を推定する。なお、嚥下音の特徴量と、被介助者の体調を対応付けるデータは機械学習によって作成される学習済モデルであってもよい。
【0172】
ポジショニングアプリケーションAP1は、嚥下ムセ検出装置460において被介助者の体調が基準よりも悪いと判定された場合、処理を切り替える。例えば、上述したようにポジショニングアプリケーションAP1が複数の機能を実行可能である場合、被介助者の体調が悪いと判定された場合、体調がよいと判定された場合に比べてアクティブに設定される機能の数が多くなってもよい。
【0173】
また本実施形態の手法では、食事イベントが発生したことを検出した場合に、服薬管理システムが連係して動作してもよい。例えば服薬時間の報知、ユーザ操作に基づく薬の排出、服薬履歴の管理等を行う服薬支援ロボットが知られており、当該服薬支援ロボットが服薬管理システムとして用いられてもよい。また服薬状況を把握させるための服薬支援アプリケーションや、服薬情報の分析、表示等を行うクラウドシステム等も知られており、これらを含む服薬支援システムが用いられてもよい。
【0174】
例えば上述した食事アプリケーションAP2を用いることによって、食事の開始や終了等のイベントを検出できる。これらの食事イベントをトリガーとして服薬支援システムが動作することによって、食事毎(狭義には毎食後)の服薬管理を正確に実行することが可能になる。例えばポジショニングアプリケーションAP1は、車椅子630やベッド610において被介助者が食事の体勢となったことを、食事開始イベントとして検出してもよい。また食事アプリケーションAP2は食後の画像を受け付けた場合に食事終了イベントを検出してもよいし、嚥下ムセ検出装置460は、嚥下が所定時間以上発生していない場合に食事終了イベントを検出してもよい。ただし、食事アプリケーションAP2が食前の画像を受け付けた場合に食事開始イベントを検出する等、食事イベントの検出手法は種々の変形実施が可能である。
【0175】
なお以上ではポジショニングアプリケーションAP1と食事アプリケーションAP2(または嚥下ムセ検出装置460)の両方を用いて食事イベントを検出する例を説明したがこれには限定されない。例えば食事アプリケーションAP2が非アクティブの状態において、ポジショニングアプリケーションAP1に基づいて食事イベントが検出され、検出結果に基づいて服薬支援システムとの連携が行われてもよい。
【0176】
また、服薬支援システムが別途設けられるのではなく、食事アプリケーションAP2及び嚥下ムセ検出装置460が服薬支援を行ってもよい。例えば食事アプリケーションAP2は、服用する薬を撮像した画像を受け付け、当該画像に基づいて、被介助者が服用しようとしている薬の種類や量を判定する処理を行ってもよい。また嚥下ムセ検出装置460は、カメラを用いて撮像された口周辺の画像、及び嚥下の音等に基づいて、薬が適切に飲み込まれたか否かを判定する処理を行ってもよい。このようにすれば、食事アプリケーションAP2及び嚥下ムセ検出装置460によって、服薬支援を適切なタイミングで実行することが可能になる。
【0177】
また以上では食事イベントに基づいてポジショニングアプリケーションAP1等と服薬支援システムが連携する例を説明したが、食事をトリガーとして動作する他のシステムがポジショニングアプリケーションAP1等と連携することも妨げられない。
【0178】
3.1.2 モーション判定機器
<ポジショニングアプリケーションを起点とする連携>
また
図14に示すように、本実施形態の情報処理システム10は、モーションの判定を行うモーション判定機器410を含んでもよい。なおここでのモーション判定は、狭義には褥瘡に関連するモーションの判定であるが、モーション判定機器410が他のモーション判定を行うことは妨げられない。
【0179】
そしてモーション判定機器410は、ポジショニングアプリケーションAP1の動作モードが第2モードに移行した場合、モーション判定機器410の動作モードを変更してもよい。これにより、ポジショニングアプリケーションAP1の起動や機能追加に合わせてモーション判定機器410を連係動作させることが可能になる。またモーション判定機器410は、ポジショニングアプリケーションAP1の処理結果に基づいて被介助者の異常が検出された場合に、モーション判定機器410の動作モードを変更してもよい。ここでの異常とは、例えばポジション調整の開始から所定時間が経過しても調整が完了しない場合や、OK/NGの判定結果がNGとなった場合等を含む。これにより、検出された異常に対応するための動作をモーション判定機器410に実行させることが可能になる。以下、詳細について説明する。
【0180】
図14に示すように、モーション判定機器410は、加速度センサ411、手元スイッチ413、検出装置430、座面センサ440を含んでもよい。ただし、ベッドサイドセンサ420、圧力検知が可能なベッド610やマットレス620等、他の機器がモーション判定機器410として用いられてもよい。
【0181】
加速度センサ411は、例えば被介助者の皮膚や衣類等に装着されるセンサである。加速度センサ411は、3軸の加速度センサであってもよいし、6軸のジャイロセンサ等であってもよいし、他の構成であってもよい。
【0182】
手元スイッチ413は、ベッド610や車椅子630に設けられるユーザインターフェイスであり、例えばベッド610のボトムの角度や、車椅子630の背もたれの角度を変更するためのボタン等を含む。また手元スイッチ413は、被介助者が異常を感じた場合に、介助者を呼ぶために用いられるボタン等を含んでもよい。例えば手元スイッチ413は、ベッド610や車椅子630に設けられる制御装置と接続されており、手元スイッチ413の操作結果に基づいて、ボトムや背もたれの角度が制御される。検出装置430、座面センサ440、マットレス620については上述したとおりである。
【0183】
本実施形態におけるモーション判定機器410の動作モードの変更とは、非アクティブからアクティブへの移行であってもよい。あるいは、モーション判定機器410が複数の機能を有し、使用する機能が少ない状態から多い状態への移行であってもよい。
【0184】
モーション判定機器410が実行する処理は種々考えられる。例えば加速度センサ411は、ベッド610における被介助者の姿勢(座位、右側臥位、左側臥位等)を判定してもよい。また手元スイッチ413が頻繁に操作される場合、被介助者は異なる姿勢への変更を意図していると考えられるが、その要因として現在の姿勢で痛みを感じている可能性がある。そのため、手元スイッチ413の出力に基づいて、被介助者が異常を感じる頻度や時間帯、異常を感じているときのボトムや背もたれの角度等の情報が求められる。検出装置430、座面センサ440及びマットレス620は、圧力分布の傾向を表す情報を求める。また検出装置430は、上述したように睡眠/覚醒や、在床/離床等の情報をもとめてもよい。また座面センサ440は、前ずれや横ずれ、転倒や転落の可能性(以下、転倒可能性と表記)の判定結果を被介助者の属性情報として出力してもよい。
【0185】
このようにすれば、ポジショニングアプリケーションAP1を用いたポジション調整により褥瘡リスクを低減するだけでなく、ポジション調整を実行していない場面においても被介助者の動きをモニタリングすることが可能になる。
【0186】
例えばモーション判定機器410によって求められる上記の各種情報に基づいて、被介助者のリスクが判定されてもよい。例えば、心拍数が平常時よりも高い、睡眠時間が不足している、中途覚醒の頻度が高い、深夜の離床が発生する、睡眠状態になっても体動が低下しない、前ずれ等の発生頻度が高い、転倒可能性が高い、等の条件が満たされた場合に被介助者のリスクが高いと判定される。
【0187】
またモーション判定機器410によって以下のような検出結果が取得された場合、褥瘡リスクが高いと判定されてもよい。
・加速度センサ411により、被介助者が同じ向きに所定時間いることが検出された
・検出装置430により、被介助者同じ向きに所定時間いることが検出された
・座面センサ440により、あるところに所定時間圧力がかかっていることが検出された
・手元スイッチ413により、被介助者が痛みを感じていると思われる挙動が検出された(例えば姿勢を頻繁に変えようとして手元スイッチ413の操作頻度が所定以上になった)
【0188】
モーション判定機器410は、これらのリスクが検出された場合、当該リスクに関する情報を介助者等に通知してもよい。例えばモーション判定機器410は、音声の出力やテキストの表示を行うことによって、リスクの高い被介助者の氏名等、リスクの内容、リスクの程度等を、介助者に提示する。またモーション判定機器410は、寝具の見直しや、皮膚への薬の塗布等、具体的な介入を介助者等に促す出力を行ってもよい。
【0189】
<モーション判定機器を起点とする連携>
以上で説明したように、ポジショニングアプリケーションAP1と連携してモーション判定機器410を動作させることによって、食事内容から褥瘡リスクが高いと推定された被介助者の動きをモニタリングできる。例えば上述したように、ポジション調整の実行中以外の場面においても、被介助者の具体的な動きに基づいて褥瘡リスクの評価を行うことが可能である。
【0190】
モーション判定機器410に基づいて検出されたリスクは、例えばポジショニングアプリケーションAP1に出力され、当該ポジショニングアプリケーションAP1の動作モードの変更に使用されてもよい。例えばポジショニングアプリケーションAP1は、モーション判定機器410において、被介助者のリスクが所定閾値以上であると判定された場合に、第1属性の被介助者に適した動作から、第1属性とは異なる第2属性の被介助者に適した動作に移行してもよい。ここでのリスクは狭義には褥瘡のリスクである。ただし、被介助者のリスクは、他のリスクであってもよい。またここでの属性は、年齢、性別、身長、体重、既往歴、投薬履歴等の情報であるが、リスクを表す情報を含んでもよい。リスクを表す情報とは、リスクの高低の度合いを示す数値であってもよいし、リスクの算出に用いられるモーション判定機器410の出力であってもよい。例えば加速度センサ411の加速度値、検出装置430や座面センサ440の圧力値、手元スイッチ413の操作履歴等がリスクに関する属性情報として用いられてもよい。
【0191】
本実施形態の手法によれば、モーション判定機器410によって高リスクと判定された被介助者に対して、当該リスクに合わせた教師データを選択することが可能になる。例えば本実施形態の教師データは、当該教師データに適した被介助者の属性を特定する属性情報が対応付けられており、上記第1属性は低リスクの被介助者に対応する属性であり、第2属性は高リスクの被介助者に対応する属性である。被介助者に適した教師データを選択できるため、被介助者のリスクを低減するようなポジション調整を実現することが可能になる。
【0192】
さらに言えば、褥瘡リスクが高い被介助者の中でも、認知症の程度、拘縮の有無、寝姿勢の傾向(仰臥位を好むか、側臥位を好むか)等、種々の要因により望ましい教師データが異なる。そして褥瘡リスクの高い被介助者はポジション調整の必要性も高く、教師データが作成されやすい。そのため、褥瘡リスクの高い被介助者に対して、適切な教師データを選択することは介助者にとっても容易なことでなかった。その点、本実施形態の手法では、褥瘡リスクが高いことが検出された際に属性の見直しが実行されるため、被介助者に合わせた教師データの選択を自動的に実現できる。結果として利便性の向上も可能になる。以下、いくつかの具体例について説明する。
【0193】
例えばベッドポジションの調整を行うことによって、被介助者は適切な姿勢を取ることができるため、質の高い睡眠を取ることが期待される。しかし上述の通り検出装置430によって心拍数が平常時よりも高い、睡眠時間が不足している、中途覚醒の頻度が高いといった状態が検出された場合、現状の姿勢は被介助者の姿勢として適していない可能性がある。このような場合、教師データを変更することによって、対象の被介助者により適した姿勢を取らせることが可能になる。例えば上述したように、被介助者の属性を表す情報を求めておくとともに、教師データについても当該教師データがどのような属性の被介助者に適しているかを表す属性の情報を対応付けておく。そして属性に基づいて教師データを切り替えることによって、被介助者に適した教師データを用いることが可能になる。なおポジショニングアプリケーションAP1は、教師データを変更するだけでなく、被介助者のリスクに関する通知を行ってもよい。例えばポジショニングアプリケーションAP1は、音声の出力やテキストの表示を行うことによって、リスクの内容、リスクの程度等を、介助者に提示する。またポジショニングアプリケーションAP1は、寝具の見直し等の具体的な介入を介助者等に促す出力を行ってもよい。
【0194】
車椅子ポジションの場合も同様であり、例えば座面センサ440によって前ずれや転倒可能性が検出された場合、現状の姿勢は被介助者の車椅子630での姿勢として適していない可能性がある。よって教師データを変更することによって、対象の被介助者により適した姿勢を取らせることが可能になる。また上述したように、ポジショニングアプリケーションAP1は、被介助者のリスクに関する通知を行ってもよい。
【0195】
なおモーション判定機器410によってリスクが検出された場合、被介助者の属性が、それまでの属性から変化してしまっている可能性も考えられる。例えば、被介助者の座位保持能力が低下した、被介助者の認知症が進行した等の要因により、属性(座位保持能力や既往歴)が変化しうる。よってモーション判定機器410によってリスクが検出された場合、ポジショニングアプリケーションAP1は、被介助者の属性を表す情報を更新する処理を行ってから、教師データを更新してもよい。
【0196】
また上述したように、手元スイッチ413に基づく褥瘡リスクの検出が可能である。例えば手元スイッチ413が頻繁に操作される場合、被介助者は異なる姿勢への変更を意図していると考えられるが、その要因として現在の姿勢で痛みを感じている可能性がある。そのため、手元スイッチ413の出力に基づいて、被介助者が異常を感じる頻度や時間帯、異常を感じているときのボトムや背もたれの角度等の情報が属性情報として求められてもよい。このように手元スイッチ413に基づいてリスクが検出された場合(被介助者の属性に、手元スイッチ413の操作頻度が高いことを示す情報が含まれる場合)、被介助者が姿勢変更を試みたにもかかわらず、状況が改善していない可能性がある。よってポジショニングアプリケーションAP1は、教師データのアップデートを提案してもよい。これにより、対象の被介助者に適した教師データを新たに作成することが可能になる。あるいは、ポジション調整とは異なる観点の暗黙知(例えば寝具の変更等)の利用が提案されてもよい。
【0197】
またモーション判定機器410の出力は教師データの自動選択に用いられるものには限定されない。例えばモーション判定機器410の出力は、教師データの設定(作成)の際に用いられてもよい。例えば加速度センサ411が非アクティブからアクティブに変更された場合に、
図7や
図12の画面において加速度センサ411の出力が表示されてもよい。このようにすれば、熟練の介助者による教師データの設定の場面において、提示される情報を増やすことが可能になる。またモーション判定機器410の出力は、ポジショニングアプリケーションAP1がOK/NGを判定する際に用いられてもよい。例えばポジショニングアプリケーションAP1は、加速度センサ411からの加速度値と、教師データに含まれる加速度値を比較することによって、現在の被介助者の姿勢がOK/NGの何れであるかを判定してもよい。
【0198】
また以上では被介助者のリスクについて判定したが、モーション判定機器410の判定はこれに限定されない。例えば検出装置430等のモーション判定機器410は、被介助者の睡眠/覚醒を判定してもよい。そしてポジショニングアプリケーションAP1は、被介助者が睡眠状態である場合と覚醒状態である場合とで動作モードを切り替えてもよい。
【0199】
例えば、被介助者が睡眠状態である場合、ポジショニングアプリケーションAP1は重畳表示を行う機能がアクティブであり、OK/NGを判定する機能が非アクティブである動作モードに移行する。被介助者が睡眠状態である場合、被介助者自身がユーザとなって自発的にポジション調整を行うことはないため、介助者が被介助者やクッションを動かすと考えられる。よってこの場合のユーザは被介助者よりも専門家であるため、重畳表示された画面を見ればOK/NGを自ら判定可能である蓋然性が高い。
【0200】
あるいは、被介助者が睡眠状態である場合、ポジショニングアプリケーションAP1は非アクティブとなり、加速度センサ411、検出装置430、圧力検知機能を有するマットレス620等を用いたトラッキングが実行されてもよい。その上で、トラッキング結果に基づいてアラートが検出された場合に、ポジショニングアプリケーションAP1がアクティブとなってもよいし、介助者への通知が行われてもよい。なおアラートは、例えば加速度センサ411に基づいて、被介助者が体の同じ側を下にした側臥位を所定時間以上継続していると判定された場合、検出装置430やマットレス620に基づいて、被介助者がベッド610の端部に位置していると判定された場合等に出力される。なおアラートが検出された場合、まずマットレス620等による自動体位変更が行われ、それでもアラートが継続する場合や複数種類のアラートが出力された場合に、ポジショニングアプリケーションAP1の起動や介助者への通知が行われてもよく、具体的な制御は種々の変形実施が可能である。
【0201】
一方、被介助者が覚醒状態である場合、ポジショニングアプリケーションAP1は重畳表示を行う機能がアクティブであり、且つ、OK/NGを判定する機能がアクティブである動作モードに移行する。被介助者が覚醒状態である場合、被介助者自身がユーザとなって自発的にポジション調整を行う蓋然性があり、専門家ではない被介助者はOK/NGの判定を行うことは難しいためである。
【0202】
また、睡眠/覚醒の判定結果と他の情報を組み合わせることによって各機能のアクティブ/非アクティブが制御されてもよい。例えば、ポジショニングアプリケーションAP1は被介助者の顔認識を行い、被介助者毎に機能のアクティブ/非アクティブを切り替えてもよい。あるいはポジショニングアプリケーションAP1は、被介助者のADL(Activities of Daily Living)の指標値に基づいて機能のアクティブ/非アクティブを制御してもよい。例えばポジショニングアプリケーションAP1は、被介助者のADLが低下した場合に、使用する機能を追加する処理を行ってもよい。なお被介助者のADLの判定に、検出装置430や座面センサ440が用いられてもよい。あるいはポジショニングアプリケーションAP1は、当該ポジショニングアプリケーションの起動時間が所定閾値以上である場合に、使用する機能を追加する処理を行ってもよい。起動時間が所定閾値以上の場合とは、ポジショニングアプリケーションAP1を使用しても適切な姿勢を取らせるのに時間がかかっている状態を表す。よって機能を追加することによって、ポジション調整をサポートすることが有用である。
【0203】
またポジショニングアプリケーションAP1は、いずれのモーション判定機器410と通信をしているかに応じて教師データを切り替える処理を行ってもよい。例えばポジショニングアプリケーションAP1が利用する教師データは、ベッドポジション調整用の教師データと、車椅子ポジション調整用の教師データを含む。ポジショニングアプリケーションAP1は、ベッド610、マットレス620、検出装置430等と通信する場合、ベッドポジション調整用の教師データを選択する。またポジショニングアプリケーションAP1は、車椅子630や座面センサ440と通信する場合、車椅子ポジション用の教師データを選択する。このようにすれば、状況に合わせた教師データの自動選択が可能になる。
【0204】
3.1.3 その他の機器
モーション判定機器410によって被介助者のリスクが検出された場合、上述したように、被介助者の姿勢が適切でないと考えられる。この場合、ポジショニングアプリケーションAP1の教師データを変更することが有効であるが、そもそもベッド610、マットレス620、車椅子630側の状態が被介助者に適していない可能性もある。
【0205】
よって
図14に示したように、モーション判定機器410は、ベッド610、マットレス620、車椅子630等と連携してもよい。例えば、モーション判定機器410において被介助者のリスクが高いと判定された場合、ベッド610は、ボトムの高さや角度を変化させる制御を実行する。またマットレス620として、自動体位変更が可能なマットレスが知られている。よってモーション判定機器410において被介助者のリスクが高いと判定された場合、マットレス620は、被介助者に自動体位変更を促す制御を実行する。例えばマットレス620は、一部のエアーを増やし、他の一部のエアーを減らす制御を複数回繰り返し実行してもよい。またモーション判定機器410において被介助者のリスクが高いと判定された場合、車椅子630は、座面の高さや、背もたれの角度等を変更する制御を実行する。
【0206】
なお、上述したようにポジショニングアプリケーションAP1がベッド610や車椅子630の設定情報を保持している場合、ベッド610等の制御はポジショニングアプリケーションAP1によって実行されてもよい。即ち、モーション判定機器410によってリスクが検出された場合、ベッド610等の制御はポジショニングアプリケーションAP1とは独立して実行されてもよいし、ポジショニングアプリケーションAP1がベッド610等の制御主体となってもよく、具体的な態様は種々の変形実施が可能である。
【0207】
またポジショニングアプリケーションAP1は、圧力センサを含むポジショニングピローと連携してもよい。例えばポジショニングピローは、被介助者の両足に挟まれた状態で使用され、この状態では両足に挟まれていない状態に比べて上記圧力センサが検出する圧力値が高くなる。例えばポジショニングアプリケーションAP1は、ポジショニングピローと通信したことをトリガーとして、当該ポジショニングピローが外れたか否かを判定する処理を開始してもよい。
【0208】
例えばポジショニングアプリケーションAP1は、ポジショニングピローと通信することによって、当該ポジショニングピローに含まれる圧力センサの出力である圧力値を取得する。そしてポジショニングアプリケーションAP1は、ポジショニングピローと通信したタイミングの圧力値を初期値とし、ポジショニングピローの圧力センサが出力する圧力値が当該初期値よりも小さくなった場合に、ポジショニングピローが外れたと判定する。このようにすれば、ポジショニングピローを用いたポジション調整を適切にサポートすることが可能になる。なお、ポジショニングピローが外れる頻度が所定閾値以上である場合、ポジショニングアプリケーションAP1は、異なるポジショニングピローをレコメンドする処理を実行してもよい。
【0209】
3.2 転倒の観点に基づく連携
図18は、被介助者の転倒抑制の観点に基づく、連携処理を説明する図である。
図18に示すように、被介助者の転倒を抑制するために、ポジショニングアプリケーションAP1と、モーション判定機器410と、周辺機器500が連携する。また、周辺機器500の動作履歴等はサーバシステム100に送信されるが、その際に通信タグ470、リーダ481、計量器付きゴミ箱483等の動作結果等が対応付けて記憶されてもよい。
【0210】
図18において、ポジショニングアプリケーションAP1と、モーション判定機器410が連携する点は、
図14等を用いて上述した褥瘡抑制の例と同様である。例えば上述したように、食事アプリケーションAP2とポジショニングアプリケーションAP1が連携し、その結果としてポジショニングアプリケーションAP1がモーション判定機器410と連携する。この場合、栄養不足である被介助者は転倒するリスクが高いため、モーション判定機器410との連携により転倒リスクを低減することが可能になる。ただし本実施形態の手法では食事アプリケーションAP2は省略されてもよい。例えば、栄養不足以外のリスクが高い被介助者による転倒や、高リスクと判定されていない被介助者の突発的な転倒等を抑制するために、ポジショニングアプリケーションAP1と、モーション判定機器410が連携することも妨げられない。また
図18ではモーション判定機器410として加速度センサ411を例示しているが、上述したとおり、モーション判定機器410は他の機器を含んでもよい。
【0211】
<周辺機器>
図18に示すように、本実施形態の情報処理システム10は、被介助者の周辺に位置し、可動部を有する周辺機器500をさらに含んでもよい。モーション判定機器410は、被介助者の転倒に関する判定を行う。そして周辺機器500は、モーション判定機器410において、被介助者が転倒するリスク(以下、転倒リスクと表記)が検出された場合に、可動部のロック及び所定位置への移動の少なくとも一方を実行する。
【0212】
ここでの周辺機器500は、被介助者によって使用される機器であって、被介助者の日常生活において当該被介助者の近傍に配置される機器を表す。このようにすれば、周辺機器500との連携によって、被介助者の転倒を抑制すること、あるいは転倒そのものを抑制できなかったとしても当該転倒による衝撃を和らげること等が可能になる。以下、処理の詳細について説明する。
【0213】
例えば加速度センサ411は、以下の処理を行うことによって転倒リスクを判定してもよい。加速度センサ411は、x軸、y軸、z軸における加速度と、3軸の加速度の二乗平均を求める。加速度センサ411を装着した被介助者が転倒した場合、当該転倒による衝撃に起因して、加速度の大きさが平常状態に比べて識別可能な程度に大きくなる。よって予め平常時の加速度値と、転倒発生時の加速度値を求めておき、当該2つの状態を識別する閾値が設定されてもよい。加速度センサ411は、x軸、y軸、z軸、二乗平均の少なくとも1つと閾値とを比較することによって転倒リスクを判定する。
【0214】
また、実際に転倒が発生する前には、例えば足がもつれる,バランスを崩す等、転倒の予兆が現れる。よって予め平常時の加速度値と、転倒の予兆発生時の加速度値を求めておき、当該2つの状態を識別する閾値が設定されてもよい。このようにすれば、転倒の予兆を検出できるため、実際の転倒発生前にリスクを検出できる。
【0215】
また転倒判定処理はこれに限定されず、例えば、機械学習を用いた転倒判定処理が行われてもよい。ここでの機械学習は、例えばニューラルネットワークを用いる学習である。以下、ニューラルネットワークをNNと表記する。ただし機械学習はNNに限定されず、SVM(support vector machine)、k-means法等の他の手法が用いられてもよいし、これらを発展させた手法が用いられてもよい。また以下では教師あり学習を例示するが、教師なし学習等の他の機械学習が用いられてもよい。
【0216】
ここでのNNは、例えばRNN(Recurrent neural network)である。RNNは、例えばLSTM(Long Short Term Memory)であってもよい。またNNとして畳み込みニューラルネットワーク(CNN:Convolutional neural network)が用いられてもよい。
【0217】
例えば、NNの入力データは、加速度センサ411のセンサ情報を含む。センサ情報は、上述したように、x軸、y軸及びz軸の加速度値と、3軸の加速度の二乗平均を含む。ただし、この4つの値の全てを用いることは必須ではなく、一部が省略されてもよい。また入力情報は、ベッド610,車椅子630、トイレ等、被介助者がいる場所の情報を含んでもよい。また、入力データは時系列のデータであってもよい。例えば、加速度センサ411が所定時間ごとに1回計測を行い、1回分の計測結果としてx、y、z及び二乗平均の4つの加速度値が求められる構成である場合に、入力データはN回の計測によって取得されるN×4の加速度値の集合である。Nは2以上の整数である。
【0218】
このように、入力データを時系列データとすることによって、入力データの時系列的な変化を考慮した処理が可能になる。例えば、転倒が発生する場所が異なれば、転倒までの経緯や、転倒の仕方等、時系列的な挙動が異なる可能性がある。その点、LSTM等を用いて時系列の入力データを処理することによって、時系列的な違いを転倒判定処理に反映させることが可能になる。
【0219】
また機械学習における出力データは、被介助者の転倒リスクの有無の確からしさを表す情報である。例えばNNの出力層は、0以上1以下の確率値を出力データとして出力してもよい。この値が大きいほど、転倒リスクがある蓋然性が高い、即ち、転倒リスクが高いことを表す。
【0220】
例えばあらかじめ0<Th<1である閾値Thが設定されている場合に、加速度センサ411は、出力データの値がTh以上である場合に転倒リスクありと判定してもよい。なお加速度値に基づく転倒判定は加速度センサ411が行うものには限定されない。例えば加速度センサ411は、直接、又は端末装置200等の他の機器を介してサーバシステム100と接続されており、サーバシステム100において加速度値に基づく転倒判定が行われてもよい。
【0221】
また以上では加速度センサ411を用いて被介助者の転倒を検出する例を説明した。しかし転倒判定はこれに限定されず、他のモーション判定機器410を用いた転倒判定が行われてもよい。例えば、ベッドサイドセンサ420や検出装置430の出力に基づいて、ベッド610での転倒(例えばマットレス620からの転落)が検出されてもよい。また座面センサ440の出力に基づいて、車椅子630での転倒(例えば座面からの転落)が検出されてもよい。
【0222】
図19A~
図19Bは、周辺機器500の一例であるテーブル530を例示する図である。例えばコンパクトな操作機構を有するテーブルが、「操作機構およびこれを備える移動式テーブル」という2015年11月24日に出願された特願2015/229220号に記載されている。この特許出願は、その全体が本願明細書において参照により援用されている。例えばテーブル530は、可動部であるキャスターCa11~Ca14を含む移動式テーブルである。テーブル530は、通常状態がブレーキ状態であり、操作レバー531を操作したときにブレーキが解除されるオフロック機能を有するテーブルである。また操作レバー531は、オフロック機能を解除した状態で固定可能であり、更なる操作により、当該固定が解除(オフロック機能がオン)になってもよい。
【0223】
図19C、
図19Dは、周辺機器500の一例である歩行器540を例示する図である。例えば軽量化、安定性、メインテナンス性の向上を図った歩行器が、「歩行補助器」という2005年6月30日に出願された特願2005/192860号に記載されている。この特許出願は、その全体が本願明細書において参照により援用されている。歩行器540は、例えば可動部であるキャスターCa21~Ca24を含み、被介助者の歩行を補助する機器である。テーブル530は、キャスターCa11~Ca14の少なくとも一部をロックすることによって移動を制限する機能を有する。
【0224】
よって本実施形態では、転倒リスクが検出された場合、キャスターによる移動が可能な周辺機器500のキャスターをロックする制御が行われてもよい。当該制御を指示する信号は、モーション判定機器410が出力してもよいし、サーバシステム100等の他の機器が出力してもよい。キャスターによる移動が可能な周辺機器500は、例えばテーブル530または歩行器540であるが、他の周辺機器500が用いられてもよい。
【0225】
例えば
図19A、
図19Bに示すように、テーブル530は一対の操作レバー531と、駆動機構をテーブル530に固定する固定部材532を含む。ここでの駆動機構とは、周辺機器500の可動部をロックするために動作する機構を表す。固定部材532は、相対的に面積の大きい主面532a、主面532aに交差しテーブル面に平行な面532b、及び主面532aに交差し支柱部の1つの面に平行な面532cを有し、これらの面を用いてテーブル530に固定される。また
図19Bに示すように、固定部材にはソレノイド534と、当該ソレノイド534を駆動する基板が収容される基板ボックス533が設けられる。ここでの基板は、例えばソレノイド534を制御するプロセッサやメモリが実装される基板である。
図19Aに示したように、固定部材532がテーブル530に固定された状態において、ソレノイド534は一対の操作レバー531のいずれか一方の下方に配置される。例えばモーション判定機器410がテーブル530のロックを指示する制御信号を出力した場合、基板は当該制御信号に基づいてソレノイド534を駆動する。このようにすれば、モーション判定機器410からの制御信号に基づいて操作レバー531の操作が行われる。そのため、操作レバー531がオフロック機能を解除する状態で固定されていたとしても、当該固定が解除され、テーブル530はオフロックが機能する状態へ移行する。
【0226】
また
図19C、
図19Dに示すように、歩行器540は、ベースフレームとベースフレームに立設した支柱と、支柱に伸縮調節可能に設けた調節支柱と、調節支柱頂部に設けた、使用者の上半身を支えるためのもたれ部とを備えている。ベースフレームは、直状の横脚パイプ541aと、横脚パイプ541aの両端近傍に一端部側を一体的に結合して、他端部側を前記一端部間の間隔に比較して大きく拡開する一対の縦脚パイプ541bと、一対の縦脚パイプ541b間を一体的に結合した、支柱を取り付けるための基部枠部材541cを含む。筐体542は、フック部543、544を含み、当該フック部543、544によって一対の縦脚パイプ541bの一方に吊り下げた状態で保持される。筐体内部には、
図19Dに示すように、モータ545が設けられ、当該モータ545はワイヤ546の巻き取り及び解放を行う。
図19Cに示すように、ワイヤ546は、ブレーキ547の板状部材と連結されている。よってモータ545がワイヤ546を巻き上げることによって板状部材が上方に移動し、キャスターCa23がロックされる。
【0227】
これにより、転倒リスク発生時に周辺機器500をロックできるため、被介助者がとっさに周辺機器500につかまった場合に怪我等の発生を抑制できる。
【0228】
また周辺機器500は、所定の位置まで移動した上で、可動部をロックする制御を実行してもよい。ここでの所定の位置は、転倒しそうになった被介助者がつかまりやすい位置であり、例えば被介助者の現在位置から所定距離だけ離れた位置である。このようにすれば、被介助者がつかまりやすい位置で周辺機器500をロックできるため、転倒による怪我等の発生をより抑制できる。
【0229】
あるいは周辺機器500は、高さ調整機能を有する機器であってもよい。高さ調整機能を有する周辺機器は、例えばベッド610であってもよい。ここでのベッド610とは、ボトムの高さを変更可能な可動ベッドである。高さ調整により、マットレス620やサイドレールがつかまりやすい高さに調整されるため、被介助者がマットレス620に倒れ込む、サイドレールに掴まる等の動作を行った場合に、怪我の発生等を抑制できる。ただし、高さ調整機能を有する周辺機器500として他の機器が用いられてもよい。
【0230】
また本実施形態に係るモーション判定機器410及び周辺機器500は、上記制御が行われた場合に、当該制御に関する情報を、サーバシステム100に送信してもよい。これにより、被介助者の転倒に関する情報を適切に記憶することが可能になる。
【0231】
例えばモーション判定機器410は、転倒リスクを検出した場合に、転倒リスクの程度を表す指標、予想される転倒の仕方、ロックを指示した周辺機器500の種類等の情報をサーバシステム100に送信する。また周辺機器500は、当該周辺機器500の識別情報、制御内容等の情報をサーバシステム100に送信する。またモーション判定機器410や周辺機器500は、対象の被介助者、及び、当該被介助者を担当する介助者等の情報を送信してもよい。また周辺機器500の位置が特定可能な場合、当該周辺機器500の位置が転倒リスクの高い位置に関する情報として用いられてもよい。例えば周辺機器500が施設内のアクセスポイントと通信する機能を有している場合、アクセスポイントの通信履歴に基づいて周辺機器500の位置を推定できる。
【0232】
<通信タグ等>
上記の通り、ポジショニングアプリケーションAP1、モーション判定機器410、周辺機器500の連携により、転倒状況に関する情報を収集できる。本実施形態の情報処理システム10は、他の装置を用いることによって、転倒に関する他の情報を収集してもよい。例えば
図18に示すように、情報処理システム10は通信タグ470を含み、当該通信タグ470を用いてより詳細な情報を収集してもよい。
【0233】
ここでの通信タグ470は、例えばRFID(radio frequency identifier)タグである。例えば対象の施設内の所定箇所にRFIDのリーダ481が配置され、当該リーダ481での読み取り結果に基づいて、通信タグ470の時系列的な位置が求められる。リーダ481は、例えば居室、トイレ、食堂等、種々の位置に配置することが可能である。通信タグ470にはそれぞれIDが割り振られているため、当該IDと被介助者を対応付けることによって、被介助者の位置を追跡することが可能になる。情報処理システム10は、リーダ481による通信タグ470の読取り結果を、モーション判定機器410による転倒判定結果と対応付けて、記憶部120等に記憶する。
【0234】
また通信タグ470は、オムツに装着可能な機器であってもよい。例えば
図18に示すように、本実施形態に係る情報処理システム10は、捨てられたゴミの重量を計測する機能を有する計量器付きゴミ箱483を含んでもよい。そして計量器付きゴミ箱483にリーダ481を設置することによって、計量器付きゴミ箱483に捨てられたオムツの重量を測定するとともに、当該オムツがどの被介助者のものであるかを容易に特定できる。そのため、被介助者の排泄の有無や排泄物の重量を容易に記録できる。つまり通信タグ470は、位置の追跡に加えて、被介助者の排泄に関する情報の記録に用いられてもよい。なお、この場合のリーダ481は、計量器付きゴミ箱483と別体として設けられてもよいし、計量器付きゴミ箱483に内蔵されてもよい。
【0235】
また以上では通信タグ470が常時通信可能な状態である例を想定していたが、本実施形態の通信タグ470はこれに限定されない。例えば本実施形態の通信タグ470は、被介助者の衣類に装着され、衣類を正常に装着した場合に通信不能状態であり、被介助者が衣類を動かした場合に通信可能状態となってもよい。この場合も同様に、情報処理システム10は記憶部を有し、リーダ481による通信タグ470の読取り結果と、モーション判定機器410による転倒判定結果が対応付けられた情報を、当該記憶部に記憶する。ここでの記憶部は例えばサーバシステム100の記憶部120であるが、端末装置200の記憶部220等が用いられてもよい。また上述したようにリーダ481による通信タグ470の読取り結果は、周辺機器500の制御結果を表す情報と対応付けて記憶されてもよい。
【0236】
図20A~
図20Cは、通信タグ470の構成例を示す図である。例えば通信タグ470は、タグ本体と、当該タグ本体の両端にそれぞれ設けられる2つのクリップ部CL1、CL2を含む。タグ本体は、内部にコイルが設けられる第1タグ部PA1と、内部に通信用のアンテナが設けられる第2タグ部PA2と、内部にコイルが設けられる第3タグ部PA3を含む。上記クリップ部CL1、CL2は、例えば第1タグ部PA1及び第3タグ部PA3の端部に設けられる。また第3タグ部PA3の表面には金属部材MTが設けられる。
【0237】
図20Aに示すように、第1タグ部PA1、第2タグ部PA2及び第3タグ部PA3は、それぞれがタグ本体の一部であり、所定の方向に沿ってこの順に配置される。第1タグ部PA1と第2タグ部PA2の間、及び第2タグ部PA2と第3タグ部PA3の間には折り曲げ可能な折り曲げ部が設けられる。2つの折り曲げ部がそれぞれ異なる方向に折り曲げられることによって、通信タグ470は、第2タグ部PA2を第1タグ部PA1と第3タグ部PA3によって挟み込むように折りたたまれる。
【0238】
図20Bは、折りたたまれた状態の通信タグ470を正面から観察した図であり、
図20Cは、折りたたまれた状態の通信タグ470を側面から(例えば
図20Bにおける上側から)観察した図である。
図20B及び
図20Cに示すように、折りたたまれた状態では第2タグ部PA2に設けられるアンテナに重なるように、第3タグ部PA3の表面に設けられる金属部材MTが配置される。この状態では、アンテナが金属部材MTによって遮蔽されるため、通信タグ470はリーダ481の通信圏内に入ったとしても、当該リーダ481によって読み取られない状態となる。一方、
図20Aのように、通信タグ470が開いた状態では、アンテナは金属部材MTによって遮蔽されないため、通信タグ470はリーダ481と通信可能である。
【0239】
図21A~
図21Cは、衣類に装着された状態の通信タグ470を例示する図である。
図21Aは、衣類に装着された通信タグ470を衣類の表面側から観察した図であり、
図21Bは、衣類に装着された通信タグ470を衣類の裏面側から観察した図である。
図21A、
図21Bに示すように、通信タグ470は、タグ本体(第1タグ部PA1~第3タグ部PA3)が衣類の内側に入るように、クリップ部CL1、CL2によって衣類に装着される。
図21Cは、装着された通信タグ470を上方から観察した図である。
【0240】
図21Bや
図21Cに示すように、通信タグ470に力が加わらない状態では、通信タグ470は、自然と開くように構成される。例えば
図21Cの例では第2タグ部PA2内部のアンテナと、第3タグ部PA3の表面の金属部材MTとが重複しないため、通信が可能な状態である。一方、衣類が被介助者によって正常に装着されている場合、装着部分(例えば衣類の腰部分)は、被介助者の皮膚や下着と密着する。この場合、通信タグ470は、被介助者の身体によって衣類側に押しつけられるため、
図20B、
図20Cを用いて上述したように、折りたたまれた状態となる。
【0241】
以上のように本実施形態の通信タグ470は、被介助者が衣類を正常に装着している場合に通信不能であり、衣類を正常状態に対して動かしている状態では通信可能となる。衣類を動かしている状態とは、被介助者が衣類の中に手を入れてゴム紐がある程度伸びた状態等を含む。
【0242】
例えば被介助者は便意を感じた場合に、衣類の中に手を入れる可能性がある。また既にオムツ等で排泄をしてしまった場合に、便をいじるために衣類の中に手を入れる可能性もある。よって本実施形態の通信タグ470を用いることによって、被介助者の便意に関する行動の有無や、当該行動があった場合の発生場所を特定することが可能になる。即ち、単純な位置追跡ではなく、特定の状況が発生した位置を検出することが可能になる。
【0243】
特に、認知症を患っている被介助者は、トイレ以外の場所で排泄を行ってしまう場合がある。その点、
図20A~
図21Cに示す通信タグ470を用いることによって、不適切な排泄の有無や、不適切な排泄が行われる場所の情報を取得することが可能になる。なお、被介助者が排泄をしてしまう場所がある程度特定されている場合、当該場所にリーダ481が設けられてもよい。なお本実施形態の手法では、通常の通信タグ(例えば常時通信が可能な通信タグ)と、
図20A~
図21Cに示す通信タグ470が併用されてもよい。このようにすれば、通常のタグにより継続的に位置を追跡しつつ、通信タグ470により便いじり等が発生したタイミングや場所を検出することが可能になる。
【0244】
さらにリーダ481での読取り結果を蓄積することによって、被介助者が衣類に触れる理由を推定することも可能である。例えばベッド610付近のリーダ481によって通信タグ470が読み取られる回数が多い場合、突発的な肌の違和感であると考えられる。この場合、保湿剤の処方や、購入のレコメンドが行われてもよい。また、予想外の場所(トイレ以外の場所、被介助者に特有の場所であってもよい)に配置されたリーダ481によって通信タグ470が読み取られる回数が多い場合、不適切な排泄を行っている可能性があり、例えば認知症に起因する不穏行動と推定できる。
【0245】
なお、
図20A~
図21Cではクリップ部CL1、CL2により固定される通信タグ470を例示したが、通信タグ470の態様はこれに限定されない。例えばクリップ部CL1、CL2に変えて伸縮性のあるストレッチベルトが用いられてもよい。この場合、被介助者は当該ストレッチベルトを胴回りに装着することによって、通信タグ470を装着する。この場合も、ストレッチベルトが正常に締められていれば通信タグ470が折りたたまれて通信不能状態となり、衣類に手を入れることでストレッチベルトが伸びれば、通信タグ470が開くことで通信可能状態となる。
【0246】
例えばサーバシステム100は、モーション判定機器410や周辺機器500からの情報、及び、リーダ481からの情報に基づいて、被介助者の介助において注意すべき場所に関する情報を取得、提示してもよい。
【0247】
図22は、注意すべき場所を提示する画面の例である。ここでの画像は、例えば介護施設等のマップMP上に、注意すべき場所を表すオブジェクトOB12が重畳表示された画像であってもよい。オブジェクトOB12は、例えばマップの他の領域に比べて視認性が高い態様で表示される。注意すべき場所は、上述したように、モーション判定機器410が転倒リスクを検出した場所であってもよいし、周辺機器500がロックされた位置であってもよいし、周辺機器500の移動先であってもよい。また注意すべき場所は、
図20A~
図21Cに対応する通信タグ470が読み取られた場所等、被介助者が排泄を行ってしまう場所であってもよい。
図22に示す画面を介助者に提示することによって、介助者は、被介助者が当該場所にいるか否かに応じてリスクの高低を推定できる。結果として、介助者は、場所に応じて被介助者への対応を切り替えることが可能になるため、当該被介助者の介助をスムーズに実行できる。なお、
図22では1つの画面を示したが、注意すべき場所を表すオブジェクトOB12は、時間帯に応じて切り替えられてもよい。ここでの時間帯は、朝、昼、夕方、夜、深夜等の区分であってもよいし、より細かい時間帯であってもよい。このようにすれば、例えば夕方にこの場所でのリスクが高いといった情報を提示できる。結果として、介護施設等における人員の配置の適正化に寄与することが可能になる。例えば上記の例であれば、夕方の時間帯、リスクが高い場所周辺に配置する人員を増やす等の対応を促すことが可能になる。
【0248】
図15~
図17Bに示したように、食事アプリケーションAP2は、被介助者が摂取した食べ物の種類や量、食事の実行タイミングを検出できる。また通信タグ470を用いることによって、上述したように排泄のタイミング、場所、排泄物の重量等を検出できる。つまり本実施形態の情報処理システム10は、食事から排泄までの一貫した流れをモニタリングできるため、より適切な介助を介助者に行わせることが可能になる。例えばサーバシステム100は、食事量と排泄量を比較することによって、排泄の有無や、排泄量を予測してもよい。またサーバシステム100は、食事の実行タイミングと排泄タイミングの履歴に基づいて、次の排泄タイミングを推定してもよい。またサーバシステム100は、排泄タイミングを過ぎているにもかかわらず排泄が発生しない場合には、便秘薬の処方依頼等の対応を介助者に促してもよい。
【0249】
3.3 不穏行動の観点に基づく連携
図23は、被介助者の不穏行動の観点に基づく、ポジショニングアプリケーションAP1と、他のアプリケーションや装置との連携処理を説明する図である。
図23に示すように、被介助者の不穏行動に関するリスクを抑制するために、不穏アプリケーションAP3と、ポジショニングアプリケーションAP1と、周辺機器500等が連携してもよい。不穏アプリケーションAP3については上述したとおり、被介助者の不穏行動を検出するソフトウェアであり、サーバシステム100で動作してもよいし、端末装置200や管理端末装置300等の他の機器で動作してもよい。そしてポジショニングアプリケーションAP1は、不穏アプリケーションAP3が被介助者の不穏行動を検出した場合に、被介助者の周辺に位置する物の配置をサポートする処理を実行してもよい。
【0250】
なおここでの不穏行動とは、狭義には認知症の周辺症状に含まれるものであってもよい。例えば周辺症状は、不穏行動やせん妄を含む。せん妄とは、精神機能の障害であって、注意力および思考力の低下を伴う。また周辺症状は、精神症状や行動症状を含むものであり、BPSD(Behavioral and Psychological Symptom of Dementia)とも呼ばれる。ただし、本実施形態の不穏行動は平常状態と異なる行動を広く含み、認知症要因の行動に限定されるものではない。
【0251】
不穏行動の要因の1つとして、被介助者の周辺環境に起因する環境要因が考えられる。例えば、被介助者の周辺環境は、被介助者の周辺に配置される物の状態を含む。より具体的には、被介助者の居室における家具、家電製品、装飾品、小物等の位置は、周辺環境を決定する要素である。例えば認知症を患っている被介助者にとって、周辺の物の配置が変化することが大きなストレスとなる場合があり、当該変化が不穏行動の要因となり得る。
【0252】
しかし、どのような物の配置が不穏行動の抑制に適しているかは被介助者に応じて異なるため、介助者が担当の被介助者毎に物の配置を覚えることは負担が大きい。その点、不穏行動の検出をトリガーとしてポジショニングアプリケーションAP1において物の配置をサポートする処理を実行することによって、対象の被介助者に適した物の配置を、介助者に適切に実行させることが可能になる。
【0253】
利用者に装着したセンサから取得した生体情報に基づいて、不穏リスクを評価するシステムは、例えば「生体情報処理システム、生体情報処理方法、及び生体情報処理プログラム記憶媒体」という2018年10月5日に出願されたPCT/JP2018/037384号(国際公開第2019/073927号)に記載されている。この特許出願は、その全体が本願明細書において参照により援用されている。
【0254】
例えば本実施形態では、不穏アプリケーションAP3は、加速度センサ411や検出装置430と接続されており、加速度センサ411が出力する加速度値や、検出装置430が出力する生体情報に基づいて、不穏行動を検出する。また、不穏行動の検出処理に、ベッドサイドセンサ420や座面センサ440等、他のセンシングデバイス400に含まれるセンサが用いられてもよい。
【0255】
不穏行動が検出された場合、ポジショニングアプリケーションAP1は、物の配置をサポートする処理として、周辺機器500の現在位置と、周辺機器500の基準位置とを比較する処理を行ってもよい。ここでの基準位置とは、ポジショニングアプリケーションAP1の教師データにおける周辺機器500の位置を表す。本実施形態の周辺機器500は、ポジショニングアプリケーションAP1において、周辺機器500の現在位置が基準位置と異なると判定された場合に、基準位置に移動(自走)してもよい。
【0256】
このようにすれば、周辺機器500を被介助者に適した位置に自動的に調整できるため、不穏行動を抑制するための介助者の負担を軽減できる。なおポジショニングアプリケーションAP1は、教師データとして周辺機器500の具体的な位置を特定する情報を保持し、当該情報を周辺機器500に送信してもよい。例えば、教師データは、所定の座標空間における座標値であってもよいし、角度や高さを特定する数値であってもよい。あるいは、教師データは画像情報であり、ポジショニングアプリケーションAP1は、教師データにおける周辺機器500の画像上の位置と、実際に撮像された撮像画像における周辺機器500の画像上の位置とに基づいて、周辺機器500を基準位置に移動させる制御を行ってもよい。この際、周辺機器500が位置を変更した後に再度ポジショニングアプリケーションAP1が周辺機器500の位置を判定し、再調整用の制御信号を送信する等のフィードバック制御が実行されてもよい。
【0257】
また不穏アプリケーションAP3によって不穏行動が検出された場合、被介助者は平常状態とは異なる状態にあるため、転倒や物への衝突が発生しやすい可能性がある。よって不穏行動が検出された場合、被介助者の周辺に配置される周辺装置500は可動部をロックする制御を行ってもよい。このようにすれば、不穏行動を行っている被介助者の安全を確保することが可能になる。例えば、不穏行動が検出された場合、まず周辺機器500のロックを優先し、当該不穏行動が収まったと判定された場合に、上述した基準位置への移動が行われてもよい。
【0258】
なお上述したように、ポジショニングアプリケーションAP1が、ベッド610や車椅子630の設定情報を記憶しており、当該設定情報に基づいてベッド610の高さやボトム角度、車椅子630の背もたれの角度を調整する機能を有してもよい。よってポジショニングアプリケーションAP1は、不穏アプリケーションAP3との連携において当該機能をオンにすることによって、ベッド610や車椅子630を被介助者に適した状態に制御してもよい。
【0259】
また
図23に示すように、不穏アプリケーションAP3の処理結果は、サーバシステム100に送信されてもよい。このようにすれば、被介助者の不穏行動のログデータをサーバシステム100に蓄積することが可能になる。例えばサーバシステム100は、不穏行動の発生履歴を時系列的に記憶することによって、認知症の進行度合いを判定してもよいし、上述した周辺機器500の制御等で不穏行動の頻度が減少したか否かを判定してもよい。
【0260】
3.4 具体的な動作フロー例
次に
図24及び
図25を用いて、情報処理システム10の具体的な処理の流れについて説明する。なお、
図24及び
図25は連携処理の一部を例示する図であり、図示されない処理が実行されてもよい。また
図24及び
図25において所与のアプリケーション又は機器が、他のアプリケーション又は機器と通信を行う場合、当該通信は直接行われてもよいし、サーバシステム100等の他の機器を介して行われてもよく、通信態様は種々の変形実施が可能である。
【0261】
図24は、上述した褥瘡及び転倒の観点に基づく連携処理を説明する図である。この処理が開始されると、まずステップS101において、食事アプリケーションAP2は
図16A、
図16Bを用いて上述した画面に基づいて、食前の画像を受け付ける。同様にステップS102において、食事アプリケーションAP2は
図16A、
図16Bを用いて上述した画面に基づいて、食後の画像を受け付ける。
【0262】
ステップS103において、食事アプリケーションAP2は、食前の画像と食後の画像の比較処理に基づいて、食事量の不足及び栄養不足を判定する。具体的には、
図17A、
図17Bを用いて上述したように、食事アプリケーションAP2は、オブジェクト検出処理、円形領域の設定処理、画素値の分布を求める処理、食前と食後で分布を比較する処理等を行う。
【0263】
食事アプリケーションAP2が、食事量の不足または栄養不足を検出した場合に、以下のステップS104~S112の処理が実行される。まずステップS104において、食事アプリケーションAP2は、ポジショニングアプリケーションAP1に連携処理を実行させるための情報を出力する。ここでの情報は、例えば非アクティブであるポジショニングアプリケーションAP1をアクティブにする制御信号であってもよいし、ポジショニングアプリケーションAP1の動作モードの変更を指示する制御信号であってもよい。動作モードの変更とは、例えば使用する機能の追加である。なお動作モードの変更(機能の追加等)である場合、ポジショニングアプリケーションAP1が動作するトリガーは別に設けられてもよい。例えばここでのトリガーは、ベッド610に人が居ることや、車椅子630に人が座ったこと等が検出されることであってもよい。この場合、当該トリガーを受信した場合に、ステップS105以降の処理が実行される。
【0264】
ポジショニングアプリケーションAP1は、ステップS104の処理を起点とする連携処理を開始する。例えば、ステップS105において、ポジショニングアプリケーションAP1はアクティブな状態に移行し、教師データを選択する処理を行う。上述したように、教師データは介助者の選択操作に基づいて選択されてもよいし、被介助者の属性等に基づいて自動的に選択されてもよい。
【0265】
ステップS106において、ポジショニングアプリケーションAP1は、教師データに基づく処理を実行する。例えばポジショニングアプリケーションAP1は、教師データである画像情報に透過処理を施した上で、撮像画像に重畳表示する。ただしステップS106において、ポジションのOK/NGを判定する処理が実行されてもよい。
【0266】
またステップS107において、ポジショニングアプリケーションAP1は、モーション判定機器410に連携処理を実行させるための情報を出力する。ここでの情報は、例えば非アクティブであるモーション判定機器410をアクティブにする制御信号であってもよい。またモーション判定機器410が複数の処理を実行可能である場合、非アクティブであった処理をアクティブにする制御信号が出力されてもよい。
【0267】
ステップS108において、モーション判定機器410は、当該モーション判定機器410に含まれるセンサ出力に基づいて、被介助者の動きを検出する処理を行う。
【0268】
ステップS108の処理において特定の動きが検出された場合、ステップS109においてモーション判定機器410は、ポジショニングアプリケーションAP1に対して動作の変更を指示する情報を出力する。ここでの特定の動きは、例えばベッド610における寝返りの頻度が低下することや、特定部位への圧力の集中等である。
【0269】
ステップS110において、ポジショニングアプリケーションAP1は、モーション判定機器410の処理結果に基づく連携処理を実行する。具体的には、ポジショニングアプリケーションAP1は、ステップS109の情報を受信する前とは異なる動作モードで動作する。例えばステップS110において、ポジショニングアプリケーションAP1は、教師データを変更する処理を行う。あるいはステップS109より前にはOK/NGの判定を行っていなかったポジショニングアプリケーションAP1が、ステップS110以降はOK/NG判定を行うように動作モードが変更されてもよい。
【0270】
またステップS108の処理において被介助者の転倒リスクが検出された場合、ステップS111において、モーション判定機器410は、周辺機器500に動作指示を出力してもよい。ここでの動作指示は、ロックまたは移動(自走)の指示である。
【0271】
ステップS112において、周辺機器500は、モーション判定機器410での処理結果に基づいて、可動部のロック、または所定位置への移動を行う。
【0272】
以上の処理により、食事に起因して褥瘡リスクが高くなった場合に、ポジショニングアプリケーションAP1を用いて当該褥瘡リスクを低減することが可能になる。またポジショニングアプリケーションAP1と、モーション判定機器410や周辺機器500を連携させることによって、転倒リスクにも適切に対応することが可能になる。
【0273】
図25は、上述した不穏行動の観点に基づく連携処理を説明する図である。この処理が開始されると、まずステップS201において、不穏アプリケーションAP3は被介助者をセンシングしたセンサ情報を取得する。例えば
図23に示したように、不穏アプリケーションAP3は、加速度センサ411や検出装置430の出力を取得してもよい。
【0274】
ステップS202において、不穏アプリケーションAP3は、被介助者に不穏行動が発生しているか否かを判定する。具体的な処理は、上述したように公知の手法を広く適用可能である。
【0275】
不穏アプリケーションAP3が不穏行動を検出したと判定した場合に、以下のステップS203~S207の処理が実行される。まずステップS203において、不穏アプリケーションAP3は、ポジショニングアプリケーションAP1に連携処理を実行させるための情報を出力する。ここでの情報は、例えば非アクティブであるポジショニングアプリケーションAP1をアクティブにする制御信号であってもよいし、ポジショニングアプリケーションAP1の動作モードの変更を指示する制御信号であってもよい。
【0276】
ポジショニングアプリケーションAP1は、ステップS203の処理を起点とする連携処理を開始する。具体的には、ステップS204において、教師データを選択する処理を行う。ステップS205において、ポジショニングアプリケーションAP1は、教師データに基づく処理を実行する。上述したように、ここでの処理は、被介助者の生活環境に配置される物の位置が、基準位置に近いか否かの判定処理を含んでもよい。
【0277】
ステップS205の処理において物の位置が基準位置に比べて所定以上異なる場合、ステップS206においてポジショニングアプリケーションAP1は、周辺機器500に対して動作を指示する情報を出力する。ここでの動作指示は、基準位置への移動の指示であってもよい。
【0278】
ステップS207において、周辺機器500は、ポジショニングアプリケーションAP1での処理結果に基づいて、移動を行う連携処理を実行する。具体的には周辺機器500は、ポジショニングアプリケーションAP1の教師データに基づいて決定される基準位置への移動(自走)を行う。
【0279】
以上の処理により、不穏行動が検出された場合に、環境要因を解消するような制御を自動的に実行することが可能になる。
【0280】
なお、上記のように本実施形態について詳細に説明したが、本実施形態の新規事項および効果から実体的に逸脱しない多くの変形が可能であることは当業者には容易に理解できるであろう。従って、このような変形例はすべて本開示の範囲に含まれるものとする。例えば、明細書又は図面において、少なくとも一度、より広義または同義な異なる用語と共に記載された用語は、明細書又は図面のいかなる箇所においても、その異なる用語に置き換えることができる。また本実施形態及び変形例の全ての組み合わせも、本開示の範囲に含まれる。また情報処理システム、端末装置、サーバシステム、センシングデバイス等の構成及び動作等も、本実施形態で説明したものに限定されず、種々の変形実施が可能である。
【符号の説明】
【0281】
10…情報処理システム、100…サーバシステム、110…処理部、120…記憶部、130…通信部、200,200-1,200-2…端末装置、210…処理部、220…記憶部、230…通信部、240…表示部、250…操作部、260…撮像部、300…管理端末装置、400…センシングデバイス、410…モーション判定機器、411…加速度センサ、413…手元スイッチ、420…ベッドサイドセンサ、430…検出装置、440…座面センサ、441…クッション、442…制御ボックス、460…嚥下ムセ検出装置、461…スロートマイク、462…端末装置、470…通信タグ、481…リーダ、483…計量器付きゴミ箱、500…周辺機器、530…テーブル、531…操作レバー、532…固定部材、532a~532c…面、533…基板ボックス、534…ソレノイド、540…歩行器、541a…横脚パイプ、541b…縦脚パイプ、541c…基部枠部材、542…筐体、543,544…フック部、545…モータ、546…ワイヤ、547…ブレーキ、610…ベッド、620…マットレス、630…車椅子、AP1…ポジショニングアプリケーション、AP2…食事アプリケーション、AP3…不穏アプリケーション、Ca11~Ca14,Ca21~Ca24…キャスター、CL1,CL2…クリップ部、DP…ディスプレイ、OB1~OB12…オブジェクト、PA1…第1タグ部、PA2…第2タグ部、PA3…第3タグ部、R1~R3…矩形領域、C1,C2…円形状、RE1~RE3…領域、Se1~Se4…圧力センサ