(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024020040
(43)【公開日】2024-02-14
(54)【発明の名称】パラシュート、これを備える安全装置および飛行体
(51)【国際特許分類】
B64D 17/02 20060101AFI20240206BHJP
B64C 39/02 20060101ALI20240206BHJP
B64D 17/72 20060101ALI20240206BHJP
【FI】
B64D17/02
B64C39/02
B64D17/72
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022122905
(22)【出願日】2022-08-01
(71)【出願人】
【識別番号】000004086
【氏名又は名称】日本化薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100127203
【弁理士】
【氏名又は名称】奈良 泰宏
(72)【発明者】
【氏名】芥 研二
(72)【発明者】
【氏名】酒匂 健一
(72)【発明者】
【氏名】久保 大理
(57)【要約】
【課題】厚みが比較的薄い樹脂フィルムを用いながらも、落下時の衝撃に十分耐えうる引張強度を備え、従来よりも軽量かつ落下時の耐衝撃性に優れたパラシュート、これを備える安全装置および飛行体を提供する。
【解決手段】パラシュート100は、展開時に略半球状となる傘体10を備え、前記傘体10は、傘頂部11と傘縁部12とを有し、略三角形状の複数のゴア20を連結して形成されており、前記複数のゴア20のそれぞれは、少なくとも前記傘頂部11側の端部および前記傘縁部12側の端部のうちいずれかが前記傘体10の内側または外側に所定幅で折り返されて両面テープ、片面テープ、または溶着により固定された折り返し部21、22を有し、前記折り返し部21、22の少なくとも一部に、前記傘体10の周方向に沿って補強テープ50が貼合されていることを特徴とするものである。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
展開時に略半球状となる傘体を備え、
前記傘体は、傘頂部と傘縁部とを有し、略三角形状の複数のゴアを連結して形成されており、
前記複数のゴアのそれぞれは、少なくとも前記傘頂部側の端部および前記傘縁部側の端部のうちいずれかが前記傘体の内側または外側に所定幅で折り返されて両面テープ、片面テープ、または溶着により固定された折り返し部を有し、
前記折り返し部の少なくとも一部に、前記傘体の周方向に沿って補強テープが貼合されていることを特徴とするパラシュート。
【請求項2】
前記複数のゴアのうち前記傘体の頂点を中心として互いに対向する少なくとも1対の前記ゴアがポリウレタンフィルムで形成されており、
前記複数のゴアのうち前記ポリウレタンフィルム以外の前記ゴアは、ナイロンフィルムで形成されており、
前記ポリウレタンフィルムの前記ゴアの前記折り返し部の少なくとも一部に、前記傘体の前記周方向に沿って前記補強テープが貼合されていることを特徴とする請求項1に記載のパラシュート。
【請求項3】
前記複数のゴアのそれぞれは、ナイロンフィルムで形成されており、
前記ナイロンフィルムの前記ゴアの前記折り返し部の少なくとも一部に、前記傘体の前記周方向に沿って前記補強テープが貼合されていることを特徴とする請求項1に記載のパラシュート。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載のパラシュートと、
前記パラシュートを収納する収容器と、
前記収容器内に設けられ、前記パラシュートを射出する射出部と、
を備えることを特徴とする安全装置。
【請求項5】
機体と、
前記機体に設けられる請求項4に記載の安全装置と、
前記機体に結合され、前記機体を推進させる1個または複数個の推進機構と、を備えることを特徴とする飛行体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パラシュート、これを備える安全装置および飛行体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、展開時の形状が略半球状の傘体を備えるパラシュートは、飛行体あるいは飛行体から落下される落下物を降下させるために広く使用されている。また、パラシュートは、ドローン(飛行体)の落下事故のリスクを低減するための安全装置としても使用されている。ここで、パラシュートの傘体としては、繊維材料で構成された布状体などが用いられることが一般的であるが、近年では、布状体に比べて軽いフィルム状体を用いることが検討されている。例えば、特許文献1には、ポリオレフィン系フィルムを用いて形成された外層と、繊維を用いて形成された中間層とを備えた高衝撃強度および高引裂強度を有する多層フィルムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1の多層フィルムは、ポリオレフィン系フィルムと繊維とを組み合わせて構成されているので、樹脂フィルムのみで構成された単層フィルムに比べて、厚みが比較的厚くなり、上記多層フィルムを用いてパラシュートを製造した場合、傘体において比較的高強度を有するものとなるが、重量が増加するという問題がある。一方、厚みが比較的薄い単層フィルムを用いて比較的軽量なパラシュートを製造した場合、傘体における引張強度が低下して落下時の衝撃に耐えられずに破損してしまう場合がある。
【0005】
そこで、本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、厚みが比較的薄い樹脂フィルムを用いながらも、落下時の衝撃に十分耐えうる引張強度を備え、従来よりも軽量かつ落下時の耐衝撃性に優れたパラシュート、これを備える安全装置および飛行体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1) 本発明のパラシュートは、展開時に略半球状となる傘体を備え、前記傘体は、傘頂部と傘縁部とを有し、略三角形状の複数のゴアを連結して形成されており、前記複数のゴアのそれぞれは、少なくとも前記傘頂部側の端部および前記傘縁部側の端部のうちいずれかが前記傘体の内側または外側に所定幅で折り返されて両面テープ、片面テープ、または溶着により固定された折り返し部を有し、前記折り返し部の少なくとも一部に、前記傘体の周方向に沿って補強テープが貼合されていることを特徴とするものである。
【0007】
(2) 上記(1)のパラシュートにおいて、前記複数のゴアのうち前記傘体の頂点を中心として互いに対向する少なくとも1対の前記ゴアがポリウレタンフィルムで形成されており、前記複数のゴアのうち前記ポリウレタンフィルム以外の前記ゴアは、ナイロンフィルムで形成されており、前記ポリウレタンフィルムの前記ゴアの前記折り返し部の少なくとも一部に、前記傘体の前記周方向に沿って前記補強テープが貼合されているものであってもよい。
【0008】
(3) 上記(1)のパラシュートにおいて、前記複数のゴアのそれぞれは、ナイロンフィルムで形成されており、前記ナイロンフィルムの前記ゴアの前記折り返し部の少なくとも一部に、前記傘体の前記周方向に沿って前記補強テープが貼合されているものであってもよい。
【0009】
(4) 本発明の安全装置は、上記(1)~(3)のいずれかのパラシュートと、前記パラシュートを収納する収容器と、前記収容器内に設けられ、前記パラシュートを射出する射出部と、を備えるものである。
【0010】
(5) 本発明の飛行体は、機体と、前記機体に設けられる上記(4)の安全装置と、前記機体に結合され、前記機体を推進させる1個または複数個の推進機構と、を備えるものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、厚みが比較的薄い樹脂フィルムを用いながらも、落下時の衝撃に十分耐えうる引張強度を備え、従来よりも軽量かつ落下時の耐衝撃性に優れたパラシュート、これを備える安全装置および飛行体を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施形態に係るパラシュートの展開後の状態を示す斜視図である。
【
図2】
図1のパラシュートの傘体を示す平面図である。
【
図3】
図1のパラシュートの製造工程を説明するための図である。
【
図4】
図1のパラシュートの製造工程を説明するための図である。
【
図5】本発明の実施形態に係る傘縁部へのラインの取り付け方法の一例を示す図である。
【
図6】本発明の実施形態に係る安全装置を示す模式断面図である。
【
図7】
図6の安全装置が適用される飛行体を示す図である。
【
図8】本発明におけるパラシュートの傘体の変形例を示す平面図である。
【
図9】本発明における安全装置の変形例を示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態に係るパラシュートについて、図面を参照しながら説明する。
【0014】
図1に示すように、本実施形態に係るパラシュート100は、傘体10と、複数(本実施形態では12本)のライン30と、1つのブライダルコード31と、を備えている。
【0015】
傘体10は、複数(本実施形態では12枚)のゴア20を後述する接合部14を介して連結してなる略半球状のものであって、頂上部を構成する傘頂部11と、開口部を構成する傘縁部12と、傘頂部11に設けられた通気口13と、を有している。また、各ゴア20それぞれの傘頂部11側の端部および傘縁部12の端部には、後述する上部折り返し部21および下部折り返し部22が設けられている。また、傘体10は、2枚のポリウレタンフィルムのゴア20と10枚のナイロンフィルムのゴア20とを組み合わせて構成されており、2枚のポリウレタンフィルムのゴア20の上部折り返し部21および下部折り返し部22には、後述する補強テープ50が貼合されている。なお、パラシュート100の展開前の傘体10は、折り畳まれた状態で収容器に収納されている。
【0016】
ライン30は、傘体10とブライダルコード31とを連結する索状の連結部材であって、ライン30の一端が後述する傘縁部12の連結部40に取り付けられている。また、ブライダルコード31は、複数のライン30を介して傘体10と飛行体の機体(図示略)などとを連結する索状の連結部材である。
【0017】
次に、
図2を用いて、傘体10の構成の一例について説明する。
図2に示すように、傘体10は、略三角形状の12枚のゴア20A~20Lを備えている。ここで、ゴア20A、20Gの材料としては、ポリウレタンフィルムが用いられる。この2枚のゴア20A、20Gは、傘体10の頂点Pを中心として傘体10の周方向に180度離れた位置に設けられており、互いに対向する1対のゴア20である。また、2枚のゴア20A、20G以外の10枚のゴア20B~20F、20H~20Lの材料としては、ナイロンフィルムが用いられる。すなわち、傘体10は、2枚のポリウレタンフィルムと、10枚のナイロンフィルムとを組み合わせて構成されている。また、各ゴア20A~20Lそれぞれの傘頂部11側の端部および傘縁部12の端部には、後述する上部折り返し部21および下部折り返し部22が設けられている。また、2枚のポリウレタンフィルムのゴア20A、20Gの上部折り返し部21および下部折り返し部22には、後述する補強テープ50が貼合されている。また、隣り合う各ゴア20A~20Lの側辺同士は、後述する接合部14を介して連結されている。また、接合部14における傘縁部12側の端部には、ライン30の一端を取り付けるための連結部40が設けられている。
【0018】
本実施形態に係るポリウレタンフィルムは、エーテル系ポリウレタン樹脂、エステル系ポリウレタン樹脂などのポリウレタン系樹脂を用いて形成されている。また、本実施形態に係るポリウレタンフィルムは、他の樹脂フィルムに比べて優れた柔軟性および伸縮性を有しており、折り畳まれた場合、折り目が付きにくく折り畳まれる前の形状へ復帰しやすいものである。すなわち、ポリウレタンフィルムは、他の樹脂フィルムに比べて優れた形状回復性を有するものである。なお、ポリウレタンフィルムの厚みは、傘体10の軽量性および収容器への収容性の観点から、20μm~80μmであることが好ましい。
【0019】
なお、エーテル系ポリウレタン樹脂は、エーテル結合(-O-)を含むエーテル系ポリオールを用いて生成されたポリウレタン樹脂である。また、エステル系ポリウレタン樹脂は、エステル結合(-COO-)を含むエステル系ポリオールを用いて生成されたポリウレタン樹脂である。本実施形態に係るポリウレタンフィルムとしては、傘体10の保存安定性の観点から、エステル系ポリウレタン樹脂に比べて、水分の影響を受けにくく加水分解を引き起こしにくいエーテル系ポリウレタン樹脂を用いることが好ましい。
【0020】
本実施形態に係るナイロンフィルムは、ポリアミド系樹脂を用いて形成されている。例えば、ポリアミド系樹脂として、ナイロン6、ナイロン12、ナイロン66、ナイロン6とナイロン66との共重合体などが挙げられる。なお、本実施形態に係るナイロンフィルムは、二軸延伸加工されたポリアミド系樹脂を用いてもよい。また、本実施形態に係るナイロンフィルムは、他の樹脂フィルムに比べて、比較的軽量かつ高い機械的強度を有するものである。なお、ナイロンフィルムの厚みは、傘体10の軽量性および収容器への収容性の観点から、10μm~50μmであることが好ましい。
【0021】
次に、
図3および
図4を用いて、傘体10の製造工程について説明する。まず、ポリウレタンフィルムのゴア20A、20Gについては、ポリウレタン系樹脂の生地から
図3(a)に示すような略三角形状のゴア20を2枚切り出す。また、ナイロンフィルムのゴア20B~20F、20H~20Lについては、ポリアミド系樹脂の生地から
図3(a)に示すような略三角形状のゴア20を10枚切り出す。
【0022】
次に、各ゴア20A~20Lそれぞれについて、
図3(a)に示すように、傘頂部11側に位置するゴア20の上端部20aの表面に、傘体10の周方向に沿って両面テープ15を貼り付ける。そして、両面テープ15の離型紙を剥がして粘着剤層を露出させ、
図3(a)の矢印Aに示すように、上端部20aをゴア20の表面側(傘体10の外側)に所定幅(上部折り返し幅L1)で折り返して、両面テープ15の粘着剤層により固定する。すなわち、
図3(b)に示すように、ゴア20の傘頂部11側の端部に上部折り返し部21が形成されることになる。なお、上部折り返し部21の上部折り返し幅L1は、例えば、20mmに設定することができる。また、傘体10の径方向に対応する両面テープ15の縦方向の幅は、上部折り返し幅L1と同じであることが好ましい。また、ポリウレタンフィルムおよびナイロンフィルムを用いて12m
2パラシュート(ゴア数12枚)を製造する場合、各ゴア20A~20Lの上部折り返し幅L1は、10mm~50mmとすることが好ましい。
【0023】
また、各ゴア20A~20Lそれぞれについて、
図3(a)に示すように、傘縁部12側に位置するゴア20の下端部20bの表面に、傘体10の周方向に沿って両面テープ15を貼り付ける。そして、両面テープ15の離型紙を剥がして粘着剤層を露出させ、
図3(a)の矢印Bに示すように、下端部20bをゴア20の表面側(傘体10の外側)に所定幅(下部折り返し幅L2)で折り返して、両面テープ15の粘着剤層により固定する。すなわち、
図3(b)に示すように、ゴア20の傘縁部12側の端部に下部折り返し部22が形成されることになる。なお、下部折り返し部22の下部折り返し幅L2は、例えば、20mmに設定することができる。また、傘体10の径方向に対応する両面テープ15の縦方向の幅は、下部折り返し幅L2と同じであることが好ましい。また、ポリウレタンフィルムおよびナイロンフィルムを用いて12m
2パラシュート(ゴア数12枚)を製造する場合、各ゴア20A~20Lの下部折り返し幅L2は、10mm~50mmとすることが好ましい。
【0024】
次に、各ゴア20A~20Lそれぞれを
図2に示すように配置して、隣り合う各ゴア20A~20Lの側辺同士を、両面テープ15を用いて接合する。例えば、ゴア20Aの左側辺とゴア20Bの右側辺とを接合する場合、まず、ゴア20Aの左側辺の表面に両面テープ15を貼り付ける。そして、両面テープ15の離型紙を剥がして粘着剤層を露出させ、この粘着剤層にゴア20Bの右側辺の裏面を重ねて接着させることで、
図2に示すように接合部14が形成される。また、他の隣り合うゴア20の側辺同士においても、同じ要領で接合部14が形成される。
【0025】
なお、本実施形態に係る両面テープ15としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)基材と、上記PET基材の両面に設けられたゴム系粘着剤層とを有するものが好ましい。また、両面テープ15の厚みは、50μm~400μmであることが好ましい。なお、両面テープ15としては、例えば、日東電工株式会社製のVR-5300Hなどを用いることができる。
【0026】
次に、傘体10の接合部14における傘縁部12側の端部に、ライン30の一端を取り付けるための連結部40を形成する。具体的には、
図4(a)を用いて、ゴア20Aの接合部14(14a、14b)における傘縁部12側の端部に、縦テープ41と横テープ42とを有する連結部40を形成する場合について説明する。まず、2枚の縦テープ41の一端部同士が接合部14における傘縁部12側の端部を挟み込むように、かつ、2枚の縦テープ41の長手方向が傘体10の内側および外側から傘体10の径方向に沿うように、貼り合わせる。このとき、2枚の縦テープ41の他端部は、傘縁部12側の端部から傘体10の径方向外側に張り出すように設けられることになる。次に、2枚の横テープ42を、傘体10の内側および外側から傘体10の周方向に沿って、2枚の縦テープ41の一端部を覆うように、かつ、接合部14における傘縁部12側の端部を挟み込むように貼り合わせることで、連結部40が形成されることになる。また、他のゴア20の接合部14における傘縁部12側の端部においても、同じ要領で連結部40が形成される。
【0027】
なお、本実施形態において、連結部40の縦テープ41としては、例えば、中興化成工業株式会社製のガラスクロステープACH-5001FRなどを用いることができる。また、傘縁部12側の端部から傘体10の径方向外側に張り出した縦テープ41の縦方向(傘体10の径方向)の長さは、例えば、90mmに設定することができる。また、縦テープ41の横方向(傘体10の周方向)の長さは、例えば、19mmに設定することができる。また、本実施形態において、連結部40の横テープ42としては、例えば、スリーエムジャパン株式会社製のポリエステルテープ879などを用いることができる。また、横テープ42の縦方向(傘体10の径方向)の長さは、例えば、50mmに設定することができる。また、横テープ42の横方向(傘体10の周方向)の長さは、例えば、100mmに設定することができる。また、本実施形態では、横テープ42が縦テープ41の一端部を確実に覆うように、横テープ42の上端部が縦テープ41の一端部から所定距離(例えば、10mm)離れて設けられている。
【0028】
次に、ポリウレタンフィルムのゴア20A、20Gの上部折り返し部21および下部折り返し部22に、補強テープ50を貼合する。例えば、ポリウレタンフィルムのゴア20Aについては、
図4(b)に示すように、ゴア20Aの傘頂部11側の端部において、ゴア20Aの左側辺に位置する接合部14aからゴア20Aの右側辺に位置する接合部14bにかけて、傘体10の周方向に沿って上部折り返し部21を完全に覆うとともに、上部折り返し部21の下端部21aとゴア20A本体とが上部折り返し部21の外側から固定されるように、補強テープ50を貼合する。また同様に、ゴア20Aの傘縁部12側の端部においても、下部折り返し部22を完全に覆うとともに、下部折り返し部22の上端部22aとゴア20A本体とが下部折り返し部22の外側から固定されるように、補強テープ50を貼合する。なお、ポリウレタンフィルムのゴア20Gについても、同じ要領で上部折り返し部21および下部折り返し部22に補強テープ50を貼合する。なお、
図4(b)においては、補強テープ50が、傘体10の周方向に沿ってゴア20Aの上部折り返し部21および下部折り返し部22を完全に覆うように貼合された状態を示したが、これに限定されるものではない。本実施形態においては、上部折り返し部21および下部折り返し部22の少なくとも一部とゴア20A(20G)本体とが、補強テープ50により固定されていればよい。例えば、ゴア20Aの傘頂部11側の端部において、上部折り返し部21の下端部21aがゴア20Aの表面から剥がれるのを防止するために、上部折り返し部21の下端部21a付近から下端部21a付近のゴア20Aの表面にかけて、傘体10の周方向に沿って補強テープ50を貼合するだけでもよい。また、例えば、ゴア20Aの傘縁部12側の端部において、下部折り返し部22の上端部22aがゴア20Aの表面から剥がれるのを防止するために、下部折り返し部22の上端部22a付近から上端部22a付近のゴア20Aの表面にかけて、傘体10の周方向に沿って補強テープ50を貼合するだけでもよい。
【0029】
なお、本実施形態に係る補強テープ50としては、PET基材と上記PET基材の片面に設けられたゴム系粘着剤層とを有する片面テープ、または、ポリプロピレン(PP)基材と上記PP基材の片面に設けられたゴム系粘着剤層とを有する片面テープであることが好ましい。また、傘体10の径方向に対応する補強テープ50の縦方向の長さは、例えば、50mmに設定することができる。また、ポリウレタンフィルムおよびナイロンフィルムを用いて12m2パラシュート(ゴア数12枚)を製造する場合、補強テープ50の縦方向の長さは、20mm~100mmであることが好ましい。また、補強テープ50の厚みは、40μm~200μmであることが好ましい。なお、補強テープ50としては、例えば、スリーエムジャパン株式会社製のポリエステルテープ879、ニチバン株式会社製のNo.640-PFなどを用いることができる。
【0030】
このように各ゴア20A~20Lを形成することで、
図2に示したような傘体10を製造することができる。そして、傘縁部12側の端部から傘体10の径方向外側に張り出した各連結部40の縦テープ41に、各ライン30の一端を取り付け、各ライン30の他端をブライダルコード31に連結することで、パラシュート100は完成する。なお、各連結部40の縦テープ41への各ライン30の取り付け方法としては、特に限定されるものではなく、例えば、カウヒッチ(ひばり結び)と呼ばれる結び方を用いてもよいし、溶着、縫い付け、接着剤などを用いてもよい。
【0031】
ここで、
図5(a)、(b)を用いて、連結部40の縦テープ41にライン30をカウヒッチで取り付ける場合について説明する。まず、連結部40の縦テープ41を、横方向(傘体10の周方向)に半分に折り畳んで紐状にして、
図5(a)に示すように、この紐状の縦テープ41の端部に結びこぶ43を形成する。次に、結びこぶ43の近くを保護するために、縦テープ41の端部にガラステープを巻きつける。次に、ライン30の一端に環状部44を形成し、この環状部44を縦テープ41の下側に
図5(a)の右方向から左方向へ通してから、環状部44を
図5(a)の右方向へ折り返す。次に、
図5(a)に示すように、折り返された環状部44を縦テープ41の結びこぶ43よりも上部に配置し、環状部44にライン30の他端を下側から上側に通して、そのまま
図5(a)の右方向に引っ張ることで、
図5(b)に示すように、カウヒッチ部45が形成される。よって、ライン30は、カウヒッチ部45を介して確実に縦テープ41の結びこぶ43に固定されて取り付けられることになる。
【0032】
上記構成のパラシュート100においては、各ゴア20A~20Lそれぞれに上部折り返し部21が設けられ、さらにポリウレタンフィルムのゴア20A、20Gの上部折り返し部21に、補強テープ50が貼合されていることで、傘頂部11の通気口13の縁部が補強され、落下時の衝撃に十分耐えうる引張強度を有することになる。また、各ゴア20A~20Lそれぞれに下部折り返し部22が設けられ、さらにポリウレタンフィルムのゴア20A、20Gの下部折り返し部22に、補強テープ50が貼合されていることで、傘縁部12の開口端部が補強され、落下時の衝撃に十分耐えうる引張強度を有することになる。したがって、従来よりも落下時の耐衝撃性に優れたパラシュート100を提供することができる。また、パラシュート100の傘体10は、比較的軽量かつ厚みが薄いナイロンフィルムと、軟性および伸縮性に優れたポリウレタンフィルムとを組み合わせて構成されているため、パラシュート100の軽量化を図ることができ、パラシュート100の収容器への収容性および開傘性を向上させることができる。
【0033】
また、本発明の実施形態に係るパラシュート100は、飛行体の落下事故などのリスクを低減するための安全装置に適用してもよい。例えば、
図6に示すような安全装置200にパラシュート100を用いることができる。以下、
図6および
図7を参照して、安全装置200およびこれを備える飛行体300について具体的に説明する。
【0034】
図6に示すように、安全装置200は、パラシュート100と、パラシュート100を収容する有底筒状の収容器201と、収容器201内に設けられ、パラシュート100を射出する射出部202と、を備えている。また、射出部202は、点火薬(図示略)を収容するカップ状のケースを有するガス発生器203と、凹部204および当該凹部204と一体的に形成されたピストンヘッド205を有するピストン206とを備えている。また、パラシュート100は、例えば蛇腹状に折り畳まれた状態でピストンヘッド205上に載置されている。なお、パラシュート100は、ライン30およびブライダルコード31(
図1参照)を介して収容器201に接続されており、ライン30およびブライダルコード31は、収容器201内において作動時のピストン206の移動を妨げないように折り畳まれて収納されている。また、収容器201の開口端部は初期状態で蓋部207により閉じられており、パラシュート100の押し出しにより上記開口端部から外れるようになっている。
【0035】
図7は、安全装置200が適用される飛行体300の一例を示す図である。この飛行体300は、機体301と、当該機体301に結合される安全装置200と、機体301に結合され、当該機体301を推進させる1つ以上の推進機構(例えばプロペラ等)302と、機体301の下部に設けられた複数の脚部303とを備えている。また、飛行体300は、加速度センサ等の異常検出部(図示略)を備えている。
【0036】
上記のような構成において、異常検出部により異常が検出された際に、ガス発生器203の点火動作に基づき発生されたガス圧によってピストン206を推進させる。これにより、ピストン206の推進力によってパラシュート100を直接押し出して迅速に展開させることができる。よって、パラシュート100の展開後は、ライン30およびブライダルコード31を介して飛行体300を吊るすことができるようになっている。
【0037】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、具体例を例示したに過ぎず、特に本発明を限定するものではなく、具体的構成などは、適宜設計変更可能である。また、発明の実施の形態に記載された、作用および効果は、本発明から生じる最も好適な作用および効果を列挙したに過ぎず、本発明による作用および効果は、本発明の実施の形態に記載されたものに限定されるものではない。
【0038】
上記実施形態では、傘体における上部折り返し部および下部折り返し部は、傘頂部側の端部および傘縁部側の端部が傘体の外側に所定幅で折り返されて両面テープで固定して形成される場合について説明したが、これに限定されるものではない。例えば、上部折り返し部および下部折り返し部は、傘頂部側の端部および傘縁部側の端部が傘体の内側に所定幅で折り返されて両面テープで固定して形成されていてもよい。なお、本発明に係るパラシュートの傘体においては、少なくとも傘頂部側の端部および傘縁部側の端部のうちいずれかに、傘体の内側または外側に所定幅で折り返されて両面テープで固定された折り返し部が設けられていればよい。また、折り返し部のゴア本体への固定方法は、必ずしも両面テープを用いなくてもよく、例えば、溶着によって折り返し部全体をゴア本体に固定してもよい。また、例えば、片面テープを用いて折り返し部の端をゴア本体に固定してもよい。
【0039】
また、上記実施形態では、傘体の頂点Pを中心として互いに対向する1対のゴアがポリウレタンフィルムである場合について説明したが、これに限定されるものではなく、一変形例として、傘体は、さらに1対以上の対向するポリウレタンフィルムを備えていてもよい。この場合、すべてのポリウレタンフィルムのゴアの上下端部の折り返し部に補強テープが貼合されていることが好ましい。
【0040】
また、上記実施形態において、傘体は、ポリウレタンフィルムのゴアとナイロンフィルムのゴアとを組み合わせて構成されている場合について説明したが、これに限定されるものではない。一変形例として、傘体は、ナイロンフィルムのゴアのみで構成されていてもよい。なお、この場合、すべてのナイロンフィルムのゴアの上下端部の折り返し部に補強テープが貼合されていることが好ましい。例えば、
図8に示すようなパラシュートの傘体の変形例も考えられる。なお、以下の変形例において、上記実施形態と下二桁が同じ番号の符号は、同様のものであるので、説明を省略することがある。また、特に説明しない部分に関しては、上記実施形態と同様であるので、説明および図示を省略することがある。
【0041】
図8に示すように、本変形例に係る傘体410は、略三角形状の12枚のナイロンフィルムのゴア420A~420Lを備えている。また、傘体410は、隣り合う各ゴア420の側辺同士を両面テープ415によって繋ぎ合わせることによって形成されている。また、各ゴア420A~420Lそれぞれの傘頂部411側の端部には、上記実施形態と同様に、両面テープ415を用いて上部折り返し部421が形成されている。また、各ゴア420A~420Lそれぞれの傘縁部412側の端部には、上記実施形態と同様に、両面テープ415を用いて下部折り返し部422が形成されている。そして、各ゴア420A~420Lそれぞれの上部折り返し部421および下部折り返し部422に、補強テープ450が貼合されており、傘頂部411の通気口413の縁部および傘縁部412の開口端部が補強されている。したがって、本変形例に係る傘体410は、落下時の衝撃に十分耐えうる引張強度を有することになる。
【0042】
なお、本変形例に係る補強テープ450としては、PET基材と上記PET基材の片面に設けられたゴム系粘着剤層とを有する片面テープ、または、延伸ポリプロピレン(OPP)基材と上記OPP基材の片面に設けられたゴム系粘着剤層とを有する片面テープであることが好ましい。また、傘体410の径方向に対応する補強テープ450の縦方向の長さは、20mm~100mmであることが好ましい。また、補強テープ450の厚みは、40μm~200μmであることが好ましい。なお、本変形例において、各ゴア420A~420Lの材料として、二軸延伸ナイロンフィルムを用いる場合は、必ずしも各ゴア420A~420Lのすべての上部折り返し部421および下部折り返し部422に補強テープ450が貼合されていなくてもよい。
【0043】
また、上記実施形態および上記変形例においては、補強テープが、傘体の周方向に沿って上部折り返し部および下部折り返し部を完全に覆うとともに、上部折り返し部および下部折り返し部とゴア本体とが上部折り返し部および下部折り返し部の外側から固定されるように、貼合された場合について説明したが、これに限定されるものではない。例えば、上部折り返し部の単なる補強のために、上部折り返し部の少なくとも一部に、傘体の周方向に沿って補強テープが貼合されるだけであってもよい。また、例えば、補強テープは、ゴアの傘頂部側の端部付近を補強するために、上部折り返し部の上端部付近にのみに貼合されていてもよい。また、補強テープは、上部折り返し部により折り返された部分全体を補強するために、上部折り返し部の表面全体のみに貼合されていてもよい。また、補強テープは、上部折り返し部において、必ずしもゴアの左右の接合部間に亘って貼合されていなくてもよく、上部折り返し部の横方向(傘体の周方向)の一部分のみに貼合されていてもよい。これらの上部折り返し部についての変形例は、下部折り返し部についても同様に適用可能である。
【0044】
また、上記実施形態および上記変形例において、傘体は、隣り合う各ゴアの側辺同士を両面テープによって繋ぎ合わせることによって形成されている場合について説明したが、これに限定されるものではない。例えば、傘体は、隣り合う各ゴアの側辺同士を溶着、縫い付け、接着剤などを用いて繋ぎ合わせることによって形成されていてもよい。
【0045】
また、上記実施形態および上記変形例において、上記安全装置200の代わりに、例えば、
図9に示すような安全装置500を適用してもよい。以下、
図9を参照して、安全装置500について具体的に説明する。なお、上記実施形態と下二桁が同じ番号の符号は、同様のものであるので、説明を省略することがある。また、特に説明しない部分に関しては、上記実施形態と同様であるので、説明および図示を省略することがある。
【0046】
図9に示すように、安全装置500は、摺動部材であるピストン部材550と、当該ピストン部材550を収容し、作動時に当該ピストン部材550が外方(
図9では上方向)に突出するための孔部553が設けられたシリンダ554と、ピストン部材550により一方向(
図9では上方向)に押し上げられる押し上げ部材555と、当該押し上げ部材555により支持されつつ押し上げられるパラシュート600と、ピストン部材550をシリンダ554内で移動させる動力源としてのガス発生器(マイクロガスジェネレータ等)503と、ピストン部材550、シリンダ554、押し上げ部材555、パラシュート600、およびガス発生器503を収容する有底円筒状の収容器501と、収容器501の開口端部を閉塞する蓋部507と、を備えている。
【0047】
なお、本実施形態において、ガス発生器503は、シリンダ554の下方の開口端に圧入された状態で、ピストン部材550の後述の本体部551の下方に配置されている。また、シリンダ554の下部は、収容器501の後述の底部501aに固定されている。また、パラシュート600は、例えば、押し上げ部材555の後述の有底筒状部556の外側面を取り巻くように収容されている。なお、図示を省略するが、ライン630およびブライダルコード631は、一端が収容器501または飛行体の機体(上記第1実施形態の飛行体300の機体301と同様のもの)に連結されており、押し上げ部材555の後述の第1支持部557の上に載置されている。
【0048】
ピストン部材550は、シリンダ554の内径とほぼ同じ外径の部分を備える本体部551と、この本体部551に接続され、上方に延びかつ本体部551よりも小径の棒状部552と、を有している。なお、本体部551と棒状部552とは一体型でもよい。棒状部552の上端は、シリンダ554の孔部553を介して押し上げ部材555の後述の有底筒状部556(柱状部材の一例)の底部556aの内面に固定されている。また、シリンダ554内の上部には、ピストン部材550の棒状部552の一部を取り囲むように配置されたストッパー559が設けられている。すなわち、棒状部552は、ストッパー559に挿通された状態で配されている。このことによって、ピストン部材550が上方に移動した際に、本体部551がストッパー559に接触して停止することで、本体部551がシリンダ554内から外方に放出されないようになっている。
【0049】
また、
図9に示すように、押し上げ部材555は、帽子の「ハット」様のハット形状部材であって、シリンダ554の一部、つまり当該シリンダ554のうちガス発生器503が配されている開口端を除く外側の部分を覆うように配置された有底筒状部556(柱状部材の一例)と、当該有底筒状部556の開口縁部にフランジ(鍔状部)として設けられパラシュート600を支持する円盤状の第1支持部557と、当該有底筒状部556の底部556aの外面に設けられ蓋部507を支持する円柱状の第2支持部558と、を有している。このような構成において、第1支持部557の底部は、初期状態で収容器501の底部501aの内面側に当接するように設けられている。なお、第1支持部557と収容器501とは接触していなくてもよい。また、第1支持部557の外周部は、収容器501の内側に接触しないように形成されている。なお、有底筒状部556の底部556aの厚みは、強度を高めるために、有底筒状部556の筒状部556bの厚みよりも厚くしてもよい。
【0050】
収容器501は、底部501aと、筒状の側壁部501bを有した有底筒状の部材である。底部501aには、収容器501内部と外部とを連通する複数の通気孔560が設けられている。各通気孔560は、押し上げ部材555が収容器501内において急速で移動する際には、当該押し上げ部材555と収容器501の底面との間の領域に負圧が生じる。そのため、押し上げ部材555を移動させ難くなる。そこで、上記通気孔560を設けることで、負圧現象を低減することができ、押し上げ部材555をスムーズに移動させることが可能となる。なお、通気孔560の開孔面積をガス発生器503の出力調整とともに適宜調整することで、パラシュート600の射出スピードおよび射出距離を制御することが可能である。
【0051】
蓋部507は、収容器501側に突出するように設けられた突出部507aと、蓋部507の天面の内側に設けられた補強部材507bと、を備えている。また、蓋部507の突出部507aと収容器501の開口端部の側壁部501bとは、ブラッシュクリップピンなどの留め具またはスナップフィット方式などを用いて結合可能となっている。なお、スナップフィット方式の一例として、蓋部507の突出部507aの外面側に設けられた凸部と、収容器501の開口端部の側壁部501bの内面側に設けられた凹部とが係止する係止機構を用いてもよい。また、安全装置500の作動時においては、押し上げ部材555の押し上げにより、蓋部507が収容器501の開口端部から容易に外れるようになっている。
【0052】
以上のような構成において、安全装置500が搭載される飛行体などが落下する際にガス発生器503が作動すると、当該作動により発生するガスの圧力によってピストン部材550がシリンダ554内を上方に推進する。これにより、ピストン部材550の棒状部552に接続された有底筒状部556を有する押し上げ部材555が収容器501内において上方に推進する。これによって、押し上げ部材555が第2支持部558を介して蓋部507を押し上げ、収容器501から蓋部507が取り外される。その後、パラシュート600は、押し上げ部材555の推進力を受けて、収容器501内から外方(
図9紙面の上方向)にスムーズかつ迅速に射出され、展開することができるようになる。
【0053】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に何ら限定されるものではない。
(実施例1)
まず、下記表1に示すゴア材料となりうる各試験フィルム1~3を用いて、サンプル1~3を作成し、各サンプル1~3について引張強度試験を行った。なお、この引張強度試験は、ゴアの上下端部の折り返し部において、
図3の矢印Cに示したような横方向(傘体の周方向)の引張強度を評価するために行ったものである。
【0054】
具体的には、まず、各試験フィルム1~3それぞれを、生地から縦40mm×横200mmの大きさに切り出した。次に、各試験フィルム1~3それぞれについて、縦方向に折り返し幅20mmで折り返して、両面テープで固定した。次に、各試験フィルム1~3それぞれについて、横方向の長さが60mmになるようにフィルムを切断してサンプル1~3を作成した。そして、このサンプル1~3について、小型卓上試験機(製品名:EZ-TEST(株式会社島津製作所))を用いて、下記表2の試験条件で引張強度試験を行った。また、比較例として、サンプル1~3それぞれの母材についても引張強度試験を行った。その結果を下記表3に示す。
【0055】
なお、表3に示す両面テープのテープ幅は、各試験フィルム1~3それぞれの縦方向の上記折り返し幅に対応するものである。また、表3に示す目標値は、12m2パラシュート(ゴア数12枚)の各ゴアにおける、引張強度の目標値である。また、表3に示すTDは、transverse dirrection の略であり、フィルム形成時の溶融樹脂が流れる方向に対して垂直方向の引張強度を示すものである。また、表3に示すAve.の数値は、引張強度の平均値を示すものである。また、表3に示すσの数値は、引張強度の標準偏差を示すものである。
【0056】
【0057】
【0058】
【0059】
表3の結果から、すべての試験フィルム1~3の折り返し部において、母材よりも引張強度が向上していることが確認された。特に、試験フィルム1~3のうち、最も厚みが薄い試験フィルム1の二軸延伸ナイロンフィルムが、最も高い引張強度を有することがわかった。
【0060】
(実施例2)
次に、上記実施形態に係る両面テープおよび補強テープについて引張強度試験を行った。具体的には、サンプル1は、両面テープとして日東電工株式会社製のVR-5300Hについて引張強度試験を行った。また、サンプル2は、補強テープとしてスリーエムジャパン株式会社製のポリエステルテープ879について引張強度試験を行った。また、サンプル3は、補強テープとしてニチバン株式会社製のNo.640-PFについて引張強度試験を行った。なお、この引張強度試験は、実施例1と同様に上記表2の試験条件で行った。その結果を表4に示す。
【0061】
【0062】
表4の結果から、サンプル1は、ゴアの上下端部の折り返し部を固定して形成するための両面テープとして、十分な引張強度を有することが確認された。また、サンプル2、3は、ゴアの上下端部の折り返し部に貼合して補強するための補強テープとして、十分な引張強度を有することが確認された。
【0063】
(実施例3)
次に、実施例1の試験フィルム1~3を用いて、パラシュートA~Cを製造して、各パラシュートA~Cについて落下試験を行った。なお、各パラシュートA~Cは、12m2パラシュート(ゴア数12枚)である。
【0064】
ここで、パラシュートAは、実施例1の試験フィルム1のナイロンフィルム10枚と、実施例1の試験フィルム2のポリウレタンフィルム2枚とを組み合わせて構成されたものである。なお、パラシュートAの傘体は、上記実施形態において
図2に示した傘体と同様に構成されたものであり、傘体の頂点Pを中心として互いに対向する1対のポリウレタンフィルムのゴアの上下端部の折り返し部に、補強テープ(スリーエムジャパン株式会社製のポリエステルテープ879、厚み110μm、テープ幅50mm)が貼合されたものである。また、パラシュートB、Cは、実施例1の試験フィルム3のナイロンフィルム12枚で構成されたものである。なお、パラシュートBの傘体は、上記変形例において
図8に示した傘体と同様に構成されたものであり、すべてのナイロンフィルムのゴアの上下端部の折り返し部に、補強テープ(スリーエムジャパン株式会社製のポリエステルテープ879、厚み110μm、テープ幅50mm)が貼合されたものである。また、パラシュートCの傘体は、すべてのナイロンフィルムのゴアの上下端部の折り返し部に、補強テープが貼合されていないものである。
【0065】
落下試験は、まず、パラシュートA~Cのそれぞれを折り畳んで、クレーンの先端部(地上30mの高さ)に取り付けられた落下試験用収容袋に入れた。そして、パラシュートA~Cのそれぞれについて、25kgの錘を繋いで、地上30mの高さの当該落下試験用収容袋から当該錘の重さを利用して引き出して落下させた。そして、地上に到達したパラシュートA~Cのそれぞれについて、傘体の各ゴアの状態を観察して評価した。
【0066】
【0067】
表5の結果から、パラシュートA、Bの傘体に用いた各ゴアは、落下試験において破損することなく、落下時の衝撃に耐えうる引張強度を有することが確認された。また、パラシュートBに用いた無延伸ナイロンフィルムのゴアと同じ無延伸ナイロンフィルムのゴアのみで構成されたパラシュートCにおいては、補強テープを有していないことで、落下試験において破断することが確認された。したがって、上下端部に折り返し部を有する二軸延伸ナイロンフィルムのゴアと、上下端部に折り返し部を有するポリウレタンフィルムのゴアとを組み合わせて構成されたパラシュートAの場合は、ポリウレタンフィルムのゴアの上下端部の折り返し部に補強テープを貼合することで、落下時において優れた耐衝撃性を有するものとなることがわかった。また、上下端部に折り返し部を有する無延伸ナイロンフィルムのゴアのみで構成されたパラシュートBの場合は、すべての無延伸ナイロンフィルムのゴアの上下端部の折り返し部に補強テープを貼合することで、落下時において優れた耐衝撃性を有するものとなることがわかった。
【符号の説明】
【0068】
10、410 傘体
11、411 傘頂部
12、412 傘縁部
13、413 通気口
14、14a、14b、414 接合部
15、415 両面テープ
20、20A~20L、420、420A~420L ゴア
20a、22a 上端部
20b、21a 下端部
21、421 上部折り返し部
22、422 下部折り返し部
30、630 ライン
31、631 ブライダルコード
40、440 連結部
41 縦テープ
42 横テープ
43 結びこぶ
44 環状部
45 カウヒッチ部
50、450 補強テープ
100、600 パラシュート
200、500 安全装置
201、501 収容器
202 射出部
203、503 ガス発生器
204 凹部
205 ピストンヘッド
206 ピストン
207、507 蓋部
300 飛行体
301 機体
302 推進機構
303 脚部
501a、556a 底部
501b 側壁部
507a 突出部
507b 補強部材
550 ピストン部材
551 本体部
552 棒状部
553 孔部
554 シリンダ
555 押し上げ部材
556 有底筒状部
556b 筒状部
557 第1支持部
558 第2支持部
559 ストッパー
560 通気孔
L1 上部折り返し幅
L2 下部折り返し幅