(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024020053
(43)【公開日】2024-02-14
(54)【発明の名称】ゴムシート貼付用ポリエステルフィルム
(51)【国際特許分類】
C08J 7/043 20200101AFI20240206BHJP
B32B 25/08 20060101ALI20240206BHJP
B32B 27/36 20060101ALI20240206BHJP
【FI】
C08J7/043 A CFD
B32B25/08
B32B27/36
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022122932
(22)【出願日】2022-08-01
(71)【出願人】
【識別番号】000122298
【氏名又は名称】王子ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【弁理士】
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100106057
【弁理士】
【氏名又は名称】柳井 則子
(74)【代理人】
【識別番号】100152146
【弁理士】
【氏名又は名称】伏見 俊介
(74)【代理人】
【識別番号】100142309
【弁理士】
【氏名又は名称】君塚 哲也
(72)【発明者】
【氏名】野村 昌史
(72)【発明者】
【氏名】藤木 保武
【テーマコード(参考)】
4F006
4F100
【Fターム(参考)】
4F006AA35
4F006AB05
4F006BA01
4F006CA00
4F100AK27B
4F100AK29B
4F100AK41A
4F100AL01B
4F100AN02B
4F100BA02
4F100BA10A
4F100BA10B
4F100EJ65B
4F100JA07
4F100JJ03
4F100JK06
4F100JL11A
(57)【要約】
【課題】本発明は、ブロッキングが起きにくく、作業性、搬送性に優れるゴムシート貼付用ポリエステルフィルムを提供する。
【解決手段】本発明のゴムシート貼付用ポリエステルフィルムは、ポリエステルフィルムと、ポリエステルフィルムの片面または両面の少なくとも一部に設けられたプライマー層とを有する。プライマー層は少なくともニトリルゴムを含み、ニトリルゴムの割合はプライマー層の固形分の合計に対して50質量%以上である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステルフィルムと、
前記ポリエステルフィルムの片面または両面の少なくとも一部に設けられたプライマー層と、
を有し、
前記プライマー層が、少なくともニトリルゴムを含み、
前記ニトリルゴムの割合が、前記プライマー層の固形分の合計に対して50質量%以上である、ゴムシート貼付用ポリエステルフィルム。
【請求項2】
前記プライマー層が、クロロプレンゴムおよびポリエステル樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種をさらに含む、請求項1に記載のゴムシート貼付用ポリエステルフィルム。
【請求項3】
前記ポリエステルフィルムの前記プライマー層と接する面に、易接着処理が施されている、請求項1または2に記載のゴムシート貼付用ポリエステルフィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴムシート貼付用ポリエステルフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
ゴムシートは弾力性に優れるため、産業上の広い分野でシール材やクッション材等に適用されている。しかし、粘着剤を介してゴムシートを被着体に貼り合わせる場合、ゴム中に含まれる成分により粘着剤の性能が低下することがある。そのため、従来、ゴムシートにはゴム用粘着剤が使用されていた。
加えて、ゴムシートは剛性が低いため、粘着剤等を用いて被着体に貼り合わせても、使用状態によっては、ゴムシートが浮き上がったり、剥がれてしまったりすることがある。特許文献1では、ゴムシートの剛性を高めるために、ゴム層とポリエステルフィルムが強固に接合された積層体が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のポリエステルフィルムは、不飽和炭化水素結合を分子中に有するポリウレタン樹脂接着層を有する。そして、ポリウレタン樹脂接着層の表面に未架橋のゴム層を積層した後に活性エネルギー線を照射することで、架橋処理が施される。この架橋処理では、ゴム層自体の架橋反応、ポリウレタン樹脂接着層とゴム層界面の架橋反応が同時に進行する結果、ゴム層とポリエステルフィルムが強固に接合される。
しかし、ポリエステルフィルム自体、または少なくとも片面に樹脂を塗工したポリエステルフィルムはブロッキングが生じやすい。またゴム層の架橋反応とポリエステルフィルムとの一体化が同時に行われる。よって、特許文献1に記載のポリエステルフィルムは、様々なゴムシートに適用することが困難である。
【0005】
本発明者らは、ポリエステルシートにゴム成分を含むプライマー層を設けた積層シートとゴムシートを接着することで一体化することを考えた。積層シートおよびゴムシートを一体化することで、ゴムシートの剛性は改善される。また、積層シートに用いたポリエステルシートには、様々なゴムシートを貼付することができる。
しかし、実際にゴム成分を含むプライマー層を設けた積層シートを試作すると、ゴム成分を含むプライマー層がタック性を示してしまうことがあった。そのため、シートを重ねたときや、シートを巻き取ったときにシート同士のブロッキングが生じる結果、作業性、搬送性が低下する課題があった。
そこで本発明は、ブロッキングが起きにくく、作業性、搬送性に優れるゴムシート貼付用ポリエステルフィルムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、下記の態様を有する。
[1]ポリエステルフィルムと;前記ポリエステルフィルムの片面または両面の少なくとも一部に設けられたプライマー層と;を有し;前記プライマー層が、少なくともニトリルゴムを含み;前記ニトリルゴムの割合が、前記プライマー層の固形分の合計に対して50質量%以上である、ゴムシート貼付用ポリエステルフィルム。
[2]前記プライマー層が、クロロプレンゴムおよびポリエステル樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種をさらに含む、[1]に記載のゴムシート貼付用ポリエステルフィルム。
[3]前記ポリエステルフィルムの前記プライマー層と接する面に、易接着処理が施されている、[1]または[2]に記載のゴムシート貼付用ポリエステルフィルム。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ブロッキングが起きにくく、作業性、搬送性に優れるゴムシート貼付用ポリエステルフィルムが提供される。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本明細書において、数値範囲を示す「~」は、その前後に記載された数値を下限値および上限値として含むことを意味する。
本明細書に開示の数値範囲の下限値および上限値は任意に組み合わせて新たな数値範囲とすることができる。
【0009】
<ゴムシート貼付用ポリエステルフィルム>
本発明のゴムシート貼付用ポリエステルフィルムは、ポリエステルフィルムと、ポリエステルフィルムの片面または両面の少なくとも一部に設けられたプライマー層と、を有する。本発明のゴムシート貼付用ポリエステルフィルムは、ゴムシートやゴムシートを有する物品と貼り合わせて使用される。ここで言う「ゴムシート」には、エラストマーのシートも含まれる。
【0010】
プライマー層は、ポリエステルフィルムの片面のみに設けられてもよく、両面に設けられてもよい。いずれの場合においても、平面視において少なくとも一部の領域にプライマー層が設けられていればよい。すなわち、ポリエステルフィルムの表面の一部にプライマー層が設けられてもよく、ポリエステルフィルムの全面にプライマー層が設けられてもよい。ゴムシートとの接着性、接着耐久性の点では、ポリエステルフィルムの全面にプライマー層が設けられていることが好ましい。
【0011】
以下、ゴムシート貼付用ポリエステルフィルムの実施形態の一例について説明する。以下の説明はいくつかの実施形態およびその代表例の開示であり、本発明は以下の記載に限定されない。
【0012】
(ポリエステルフィルム)
ポリエステルフィルムは、ポリエステルを含むフィルムであれば特に限定されない。種々のポリエステルフィルムが使用可能である。ポリエステルとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリ乳酸が挙げられる。
ポリエステルは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0013】
ポリエステルフィルムは発明の効果を損なわない範囲内であれば、他のカルボン酸単位および他のアルコール単位を有してもよい。
他のカルボン酸としては、例えば、イソフタル酸、フタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、5-ナトリウムスルホイソフタル酸、シュウ酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ドデカン二酸、ダイマー酸、無水マレイン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、メサコン酸、シクロヘキサンジカルボン酸等のジカルボン酸、4-ヒドロキシ安息香酸、ε-カプロラクトン、乳酸が挙げられる。他のカルボン酸は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
他のアルコールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,3-プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6-ヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ビスフェノールAのエチレンオキシド付加物、ビスフェノールSのエチレンオキシド付加体が挙げられる。他にも、トリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール等の3官能化合物も挙げられる。他のアルコールは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0014】
ポリエステルフィルムは、フィルムの取扱性の向上のために無機微粒子、有機微粒子を含んでもよい。また、ポリエステルフィルムは必要に応じて各種の添加剤を含んでもよい。ポリエステルフィルムの添加剤としては、例えば、ワックス、酸化防止剤、帯電防止剤、可塑剤、結晶核剤、減粘剤、熱安定剤、着色用顔料、着色防止剤、紫外線吸収剤が挙げられる。
添加剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0015】
ポリエステルフィルムは、易接着処理が施されたものでもよく、易接着処理が施されていない未処理のものでもよい。プライマー層との接着性が向上する点では、プライマー層と接する面に易接着処理が施されていることが好ましい。
易接着処理としては、特に限定されるものではないが、例えば、コロナ放電処理、プラズマ処理、アンカーコート形成処理が挙げられる。
【0016】
ポリエステルフィルムは延伸フィルムであってもよく、未延伸フィルムであってもよい。延伸フィルムの場合、ポリエステルフィルムは一軸方向の延伸フィルムであってもよく、二軸方向の延伸フィルムであってもよい。ゴムシート貼付用ポリエステルフィルムの用途に応じて、未延伸フィルム、一軸方向の延伸フィルム、二軸方向の延伸フィルムを適宜使い分けてもよい。
【0017】
ポリエステルフィルムの厚みは、特に限定されない。ポリエステルフィルムの厚みは、ゴムシート貼付用ポリエステルフィルムの用途に応じて適宜変更または設定すればよい。ゴムシート貼付用ポリエステルフィルムを防水設備用途に適用する場合、ポリエステルフィルムの厚みは、9~75μmが好ましく、12~50μmがより好ましく、16~38μmがさらに好ましい。ポリエステルフィルムの厚みが前記数値範囲内の下限値以上であると、剛性が向上しやすい。ポリエステルフィルムの厚みが前記数値範囲内の上限値以下であると、生産性が向上しやすい。
ポリエステルフィルムの厚みは、厚さ測定器具を用いて測定され得る。
【0018】
ポリエステルフィルムとして、市販品を用いてもよい。ポリエステルフィルムの市販品としては、例えば、ユニチカ社製品「エンブレット」、東洋紡社製品「エステルフィルム」、東洋紡社製品「コスモシャイン」、東レ社製品「ルミラー」、三菱ケミカル社製品「ダイアホイル」、SKC社「ポリエステルフィルム」が挙げられる。
【0019】
(プライマー層)
プライマー層は、ポリエステルフィルムの片面または両面に設けられる。プライマー層は、少なくともニトリルゴムを含む。ゴム成分であるニトリルゴムを含むことで、ゴムシートとの良好な接着性を維持しつつ、ブロッキングを低減できる。
【0020】
ニトリルゴムは、典型的には、少なくとも1種のα,β-不飽和ニトリルと少なくとも1種の共役ジエンの共重合体である。
α,β-不飽和ニトリルとしては、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、α-クロロニトリル、α-シアノエチルアクリロニトリルが挙げられる。α,β-不飽和ニトリルは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
共役ジエンとしては、例えば、1,3-ブタジエン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、2-エチル-1,3-ブタジエン、1,3-ペンタジエンが挙げられる。共役ジエンは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
ニトリルゴムは、α,β-不飽和ニトリルおよび共役ジエンと共重合可能な他のモノマー単位をさらに有してもよい。他のモノマーは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0021】
プライマー層は、ニトリルゴム以外の他のゴムをさらに含んでもよい。他のゴムとしては、例えば、クロロプレンゴム、天然ゴム、シリコーンゴム、エチレンプロピレンジエンゴム、アクリルゴム、フッ素ゴムが挙げられる。なかでも、屋外等の環境下でも優れた接着耐久性が得られやすい点で、クロロプレンゴムが好ましい。
他のゴムは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0022】
クロロプレンゴムとしては、市販のクロロプレンゴム系接着剤を用いてもよい。例えば、セメダイン社製品「575F」、三ツ星ベルト社製品「ネオ・ボンドR」、コニシ「耐熱ハケ塗りHG」が挙げられる。
【0023】
プライマー層は、ニトリルゴムおよび他のゴム以外の他の樹脂をさらに含んでもよい。他の樹脂は、ニトリルゴムと併用可能な樹脂であって、タック性の低いものであれば特に限定されない。例えば、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、フェノール樹脂、ポリウレタン樹脂が挙げられる。なかでも、ポリエステルフィルムとの密着性向上の点で、ポリエステル樹脂が好ましい。
他の樹脂は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0024】
他の樹脂として、市販品を用いてもよい。他の樹脂の市販品としては、例えば、東洋モートン社製品「AD-76H5」(ポリエステル樹脂)、東ソー社製品「ニッポラン3228」(ポリエステル系ポリウレタン樹脂)が挙げられる。
【0025】
プライマー層は、ニトリルゴム、他のゴムおよび他の樹脂以外の他の成分を任意成分としてさらに含んでもよい。プライマー層が他の成分を含む場合、他の成分は、本発明の効果を損なわない範囲で配合され得る。
プライマー層の他の成分としては、例えば、顔料、染料、老化防止剤、帯電防止剤、難燃剤等の種々の添加剤が挙げられる。ただし、他の成分はこれらの例示に何ら限定されない。他の成分は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0026】
プライマー層の塗工量は、特に限定されない。ゴムシート貼付用ポリエステルフィルムの用途に応じて適宜変更または設定すればよい。ゴムシート貼付用ポリエステルフィルムを屋外の防水設備用途に適用する場合、プライマー層の塗工量は0.5~4.0g/m2が好ましく、0.5~2.0g/m2がより好ましく、0.8~1.5g/m2がさらに好ましい。プライマー層の塗工量が前記数値範囲内の下限値以上であると、ゴムシートに対する密着性が向上しやすい。プライマー層の塗工量が前記数値範囲内の上限値以下であると、低コスト化において有利である。
プライマー層の塗工量は、乾燥後の塗工量であり、重量測定にて求めることができる。
【0027】
ニトリルゴムの割合は、プライマー層の固形分の合計に対して50質量%以上であり、50~100質量%が好ましく、60~95質量%がより好ましく、70~95質量%がさらに好ましい。ニトリルゴムの割合が前記数値範囲内の下限値以上であると、耐ブロッキング性が向上する。ニトリルゴムの割合が前記数値範囲内の上限値以下であると、ゴムシートに対する接着耐久性が向上しやすい。
ここで、プライマー層の固形分の合計は、ニトリルゴム、他のゴム、他の樹脂および他の成分の合計量であり、以下の説明においても同様である。
【0028】
他のゴムの割合は、プライマー層の固形分の合計に対して0~50質量%が好ましく、5~40質量%がより好ましく、5~30質量%がさらに好ましい。他のゴムの割合が前記数値範囲内の下限値以上であると、ゴムシートに用いられる粘着剤との接着性が優れる。他のゴムの割合が前記数値範囲内の上限値以下であると、プライマー層のブロッキングの発生を抑制しやすい。
【0029】
他の樹脂の割合は、プライマー層の固形分の合計に対して0~20質量%が好ましく、0~10質量%がより好ましく、0~5質量%がさらに好ましい。他の樹脂の割合が前記数値範囲内の下限値以上であると、他の樹脂による特性がプライマー層に発現しやすい。他の樹脂の割合が前記数値範囲内の上限値以下であると、プライマー層のタック性が生じにくい。
【0030】
好ましい一例において、プライマー層はクロロプレンゴムおよびポリエステル樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種をさらに含む。また、さらなる一例において、プライマー層はクロロプレンゴムおよびポリエステル樹脂の両方を含み得る。
【0031】
(製法)
ゴムシート貼付用ポリエステルフィルムの製造方法は、特に限定されない。例えば、少なくともニトリルゴムを含むゴム成分を溶剤に溶かした塗工液をポリエステルフィルムの片面または両面に塗布し、次いで溶剤を除去する方法が挙げられる。
ゴム成分には、ニトリルゴム以外の他のゴム、他の樹脂、他の成分を必要に応じてさらに配合してもよい。
【0032】
溶剤は、ゴム成分を溶解可能であれば特に限定されない。例えば、n-ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール等のアルコール;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル;テトラヒドロフラン、エチレングリコールモノブチルエーテル等のエーテル;が挙げられる。
ただし、溶剤はこれらの例示に限定されない。また、溶剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0033】
塗工液の塗布後の溶媒の除去方法は、特に限定されないが、加熱乾燥が好ましい。加熱により架橋が促進されることで、耐ブロッキング性がさらに向上する。塗工液の塗布後に溶媒を除去することで、ニトリルゴムを含むプライマー層がポリエステルフィルムの片面または両面の少なくとも一部に設けられる。
【0034】
(作用機序)
本発明のゴムシート貼付用ポリエステルフィルは、少なくともニトリルゴムを含むプライマー層を有し、該ニトリルゴムの割合がプライマー層の固形分の合計に対して50質量%以上である。よって、プライマー層においてゴムシートとの良好な接着性を維持しつつ、ブロッキングを低減できる。結果、本発明のゴムシート貼付用ポリエステルフィルムによれば、シートを重ねたときや、シートを巻き取ったときにブロッキングが生じにくくなるため、作業性、搬送性が優れたものとなる。
【0035】
<用途>
本発明のゴムシート貼付用ポリエステルフィルムは、ゴムシートやゴムシートを有する物品と貼り合わせて使用される。ゴムシートについては特に限定しないが、例えば防水シートの場合、JIS A6008で例示されるエチレンプロピレンゴム(EPDM)あるいはブチルゴムを主原料とする加硫ゴムシートを使用できる。
貼り合わせに使用される接着剤としては、ゴム系接着剤が好適に使用され得る。例えば、クロロプレン系ゴム接着剤が挙げられる。その市販品として例えば、ネオ・ボンドR(三ツ星ベルト社製)が挙げられる。
【実施例0036】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の記載に限定されない。
【0037】
<原料>
(ポリエステルフィルム)
・S-25:コロナ処理されたポリエステルフィルム(ユニチカ社製品、厚み25μm)
・V540:易接着処理されたポリエステルフィルム(SKC社製品、厚み23μm)
【0038】
(ゴム成分)
・ゴム1:アクリロニトリル-ブタジエン共重合組成物(Tg=-10℃)
・575F:クロロプレンゴム系接着剤(セメダイン社製品「575F」)
・ネオ・ボンドR:クロロプレンゴム系接着剤(三ツ星ベルト社製品「ネオ・ボンドR」)
【0039】
(他の樹脂)
・AD-76H5:ポリエステル樹脂(東洋モートン社製品「AD-76H5」)
・3228:ポリエステル系ポリウレタン樹脂(東ソー社製品「ニッポラン3228」)の固形分100部に対してコロネートL(東ソー社製品)を固形分で14部添加した混合物。
【0040】
(他の成分)
・ノクラック224:老化防止剤(大内新興化学工業社製品「ノクラック224」)
【0041】
<実施例1>
(プライマー層用塗布液の調製)
固形分として、アクリロニトリル-ブタジエン共重合組成物(Tg=-10℃)をトルエンで固形分濃度10%に希釈した塗工液を調製した。
調製した塗工液をポリエステルフィルムの片面にメイヤーバーを用いて塗布し、100℃で90秒間乾燥させ、塗工量1.0g/m2でプライマー層を設け、実施例1のゴムシート貼付用ポリエステルフィルムを得た。
【0042】
<実施例2~8、比較例1~4>
塗工液の固形分組成を表1に示す通りに変更した以外は、実施例1と同様にして各例のゴムシート貼付用ポリエステルフィルムを得た。
【0043】
【0044】
<耐ブロッキング性の評価>
(剥離粘着力の測定)
各例のゴムシート貼付用ポリエステルフィルムを2枚用意した。これら一対のゴムシート貼付用ポリエステルフィルムを用いて、プライマー層の表面とポリエステルフィルムの表面を貼り合わせ、温度40℃、0.3kgf/cm2で24時間加圧して圧着した。その後、JIS K6854―3に規定されるT形剥離に準じて粘着力を測定した。すなわち、上記条件下で圧着した後に300mm/minの引張速度で、プライマー層の表面とポリエステルフィルムの表面における、剥離粘着力を測定した。
【0045】
(評価基準)
耐ブロッキング性の評価基準は以下の通りである。AおよびBを適合とする。
A:剥離粘着力が3gf/25mm未満である。特に耐ブロッキング性に優れる。
B:剥離粘着力が3gf/25mm以上5gf/25mm未満である。少しブロッキングするが、実用上問題はない。
C:剥離粘着力が5gf/25mm以上10gf/25mm未満である。ブロッキングするため、実用上やや問題がある。
D:剥離粘着力が10gf/25mm以上である。ブロッキングがひどく、実用上問題がある。
【0046】
<接着耐久性の評価>
(接着サンプルの作製)
各例のゴムシート貼付用ポリエステルフィルムのプライマー層の表面に、ゴム系接着剤ネオ・ボンドR(三ツ星ベルト社製)を刷毛を用いて均一に250g/m2で塗布した。その後、60分間で自然乾燥した。
一方、ゴムシートネオ・ルーフィングE(三ツ星ベルト社製)の片面にゴム系接着剤ネオ・ボンドRを刷毛を用いて均一に100g/m2で塗布した。その後、60分間で自然乾燥した。
次いで、ゴムシート貼付用ポリエステルフィルム、ゴムシートにそれぞれ塗布したゴム系接着剤塗布面を互いに合わせて積層し、ハンドローラーで荷重をかけた。室温で2日間養生後、接着ゴムシートを25mm×100mmの寸法で切り出して試験サンプルとした。この試験サンプルは、ポリエステルフィルム、プライマー層、ゴム系接着剤層およびゴムシートがこの順で積層された積層体である。
【0047】
(耐熱試験処理)
上記試験サンプルを80℃で30日間または60日間加熱した。その後、室温で2時間放冷し、耐熱試験処理サンプルを得た。
【0048】
(耐水試験処理)
密閉容器に、上記試験サンプルと蒸留水と入れて、40℃恒温槽に30日間または60日間保存した。その後、容器から取り出し水分を拭き取り室温で2時間放冷し、耐水試験処理サンプルを得た。
【0049】
(接着強度の測定)
上記の耐熱試験処理サンプルまたは耐水試験処理サンプルについて、JIS K6854-3に規定されるT形剥離に準じて接着強度試験を行った。すなわち、200mm/minの引張速度で、プライマー塗工フィルムとゴムシートのT剥離接着強度を測定し、またその剥離位置を調べた。ここで、剥離位置は次のように区分した。
X:ポリエステルフィルムとプライマー層の界面で剥離した。
Y:プライマー層とゴム系接着剤層の界面で剥離した。
Z:ゴム系接着剤層とゴムシートの界面で剥離した。
【0050】
(評価基準)
接着強度の評価基準は以下の通りである。
〇:接着強度が10N/25mm以上である。
△:接着強度が6N/25mm以上10N/25mm未満である。
×:接着強度が6N/25mm未満である。
【0051】
<判定>
各例のゴムシート貼付用ポリエステルフィルムを以下の基準で判定した。判定〇または判定△を実用上問題なく適合とした。
判定〇:耐ブロッキング性評価がAまたはBであり、かつ接着耐久性評価が全て〇である。
判定△:耐ブロッキング性評価がAまたはBであり、かつ、接着耐久性評価に△がありかつ×がない。
判定×:耐ブロッキング性評価がCまたはDであり、または接着耐久性評価に×がある。
【0052】
【0053】
実施例1~8のゴムシート貼付用ポリエステルフィルムはタック性を示さないものであった。この結果から、ブロッキングが起きにくく、作業性、搬送性に優れるゴムシート貼付用ポリエステルフィルムが得られたことを確認できた。また、塗工液にクロロプレンゴムやポリエステル樹脂を配合した実施例2~8では、接着耐久性にも優れる結果を確認できた。