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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024020054
(43)【公開日】2024-02-14
(54)【発明の名称】有機物分解材とその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C09K 17/42 20060101AFI20240206BHJP
   C05F 11/00 20060101ALI20240206BHJP
   B09B 3/40 20220101ALI20240206BHJP
   B09B 3/70 20220101ALI20240206BHJP
   B09B 3/60 20220101ALI20240206BHJP
   B09B 3/20 20220101ALI20240206BHJP
   B01D 53/84 20060101ALN20240206BHJP
   C02F 3/10 20230101ALN20240206BHJP
【FI】
C09K17/42 H
C05F11/00 ZAB
B09B3/40
B09B3/70
B09B3/60
B09B3/20
B01D53/84
C02F3/10 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022122933
(22)【出願日】2022-08-01
(71)【出願人】
【識別番号】302060926
【氏名又は名称】株式会社フジタ
(74)【代理人】
【識別番号】110000408
【氏名又は名称】弁理士法人高橋・林アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】正木 祥太
(72)【発明者】
【氏名】村上 陽一郎
(72)【発明者】
【氏名】久保田 洋
(72)【発明者】
【氏名】倉澤 響
(72)【発明者】
【氏名】袋 昭太
【テーマコード(参考)】
4D002
4D003
4D004
4H026
4H061
【Fターム(参考)】
4D002AA22
4D002AA33
4D002AA40
4D002BA17
4D002DA41
4D003AA01
4D003EA06
4D003EA19
4D003EA25
4D003EA38
4D004AA04
4D004AA12
4D004AA31
4D004BA04
4D004CA14
4D004CA18
4D004CA26
4D004CA34
4D004CA37
4D004CA47
4D004CC01
4D004CC03
4D004CC07
4D004CC11
4D004DA03
4D004DA06
4D004DA08
4D004DA09
4D004DA20
4H026AA01
4H026AA08
4H026AA10
4H026AB03
4H061CC04
4H061CC41
4H061CC47
4H061DD14
4H061EE16
4H061EE61
4H061EE66
4H061GG41
4H061GG45
4H061GG48
4H061LL02
4H061LL22
(57)【要約】
【課題】有機物を分解する能力に優れた有機物分解材とその製造方法を提供すること。
【解決手段】有機物分解材は、炭酸カルシウム含むバイオマス由来の多孔質炭化物と、微生物と、を含む有機分解材である。有機物分解材は、鉄粉またはバインダをさらに含んでもよい。有機物分解材の製造方法では、バイオマスを炭化して多孔質炭化物を調整し、多孔質炭化物を二酸化炭素含有ガスと接触させて多孔質炭化物を炭酸化し、炭酸化された多孔質炭化物に微生物を添加する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バイオマスを炭化して多孔質炭化物を調製し、
前記多孔質炭化物を二酸化炭素含有ガスと接触させて、前記多孔質炭化物を炭酸化し、
炭酸化された前記多孔質炭化物に微生物を添加する、有機物分解材の製造方法。
【請求項2】
バイオマスを炭化して多孔質炭化物を調製し、
前記多孔質炭化物に微生物を添加し、
前記微生物が添加された前記多孔質炭化物を二酸化炭素含有ガスと接触させて、前記多孔質炭化物を炭酸化する、有機物分解材の製造方法。
【請求項3】
前記二酸化炭素含有ガスは、相対湿度20%以上95%以下の水を含み、
前記炭酸化は、15℃以上35℃の以下の温度範囲で行われる、請求項1または請求項2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記多孔質炭化物を炭酸化する際の前記多孔質炭化物の含水率は、10重量%以上40重量%以下である、請求項1または請求項2に記載の製造方法。
【請求項5】
前記微生物の前記添加は、炭酸化された前記多孔質炭化物と堆肥を混合する、炭酸化された前記多孔質炭化物を微生物粉末と混合する、または、炭酸化された前記多孔質炭化物を、微生物を含む培養液に浸漬することで行われる、請求項1に記載の製造方法。
【請求項6】
炭酸化された前記多孔質炭化物と鉄粉を混合することをさらに含む、請求項1または請求項2に記載の製造方法。
【請求項7】
炭酸カルシウム含む、バイオマス由来の多孔質炭化物、および
微生物を含む、有機物分解材。
【請求項8】
鉄粉またはバインダをさらに含む、請求項7に記載の有機物分解材。
【請求項9】
前記多孔質炭化物のpHは、8以上10以下である請求項7または請求項8に記載の有機物分解材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態の一つは、有機物分解材とその製造方法に関する。例えば、各種水域、土壌、または排ガスなどに含有される有機物を分解可能な有機物分解材とその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
河川や湖沼、海などの各種水域、土壌、あるいは排ガスに含まれる有機物を分解および/または吸着可能な材料として、微生物を含む多孔質材料が知られている。例えば特許文献1、2には、炭素を基本骨格として有する多孔質材料に有機物を分解可能な微生物が組み込まれた材料が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010-253401号公報
【特許文献2】特開2007-014202号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の実施形態の一つは、水中、土壌中、または排ガス中の有機物を分解する能力に優れた有機物分解材とその製造方法を提供することを課題の一つとする。
【0005】
本発明の実施形態の一つは、上記有機物分解材が介在する二酸化炭素貯留システムを提供することを課題の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の実施形態の一つは、有機物分解材である。有機物分解材は、炭酸カルシウム含むバイオマス由来の多孔質炭化物と、微生物と、を含む。
【0007】
本発明の実施形態の一つは、炭酸カルシウム含むバイオマス由来の多孔質炭化物と、微生物と、を含む有機分解材である。多孔質炭化物のpHは、8乃至10の範囲でもよい。
【0008】
本発明の実施形態の一つは、有機物分解材の製造方法である。この製造方法では、バイオマスを炭化して多孔質炭化物を調整し、多孔質炭化物を二酸化炭素含有ガスと接触させて多孔質炭化物を炭酸化し、炭酸化された多孔質炭化物に微生物を添加する。
【0009】
本発明の実施形態の一つは、有機物分解材の製造方法である。この製造方法では、バイオマスを炭化して調整し、多孔質炭化物に微生物を添加し、微生物が添加された多孔質炭化物を二酸化炭素含有ガスと接触させて多孔質炭化物を炭酸化する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施形態の一つに係る有機物分解材の製造方法を示すフローチャート。
図2】本発明の実施形態の一つに係る有機物分解材の製造方法を示すフローチャート。
図3】本発明の実施形態の一つ係る有機物分解材を介した二酸化炭素貯留システムを示す概念図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の各実施形態について、図面などを参照しつつ説明する。ただし、本発明は、その要旨を逸脱しない範囲において様々な態様で実施することができ、以下に例示する実施形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。
【0012】
本明細書では、「リン」という用語は、リン単体のみならず、リンを含む化合物も含む。したがって、リンはリン酸も含む。ここで、「リン酸」という用語は、狭義のリン酸、すなわち、HPOの化学式で表される化合物を意味するだけでなく、リン酸(HPO)のほか、種々のリン酸塩、リン酸一水素塩、リン酸二水素塩を示す用語として用いられる。したがって、例えばリン酸鉄は、特記しない限り、リン酸鉄のみならず、リン酸一水素鉄、リン酸二水素鉄を意味する。また、リン酸塩に含まれる金属の価数にも制約はなく、例えばリン酸鉄の鉄イオンも2価でも3価でもよい。
【0013】
<実施形態1>
以下、本発明の実施形態の一つに係る有機物分解材とその製造方法、および土壌や水、排ガス中に含まれる有機物の有機物分解材による分解方法について述べる。
【0014】
1.有機物分解材の構成
有機物分解材は、多孔質炭化物、および微生物を含む。有機物分解材はさらに、添加剤を含んでもよい。添加剤としては、微生物活性化資材が挙げられる。有機物分解材は粉末状でもよく、あるいはペレット形状などに成形されていてもよい。有機物分解材をペレット形状などに成形する場合は、バインダをさらに添加すればよい。若しくは、バインダを添加せずに、別の方法により、有機物分解材を成形してもよい。
【0015】
(1)多孔質炭化物
多孔質炭化物は、有機物を低酸素濃度の条件下で加熱・炭化することで製造される炭化物である。有機物としては、バイオマスが例示される。バイオマスとは有機物の一種である、生体由来の物質とその代謝物を指す。例えば木に由来する材料がバイオマスとして挙げられる。具体的には、板状や柱状の木材、間伐材、剪定廃材、建築廃木材、粉末状のおがくず、パーティクルボートなどの木材が挙げられる。木の種類に制約はなく、スギやヒノキ、竹でもよい。あるいは籾殻、バガス、トウモロコシの軸や葉などの農業廃棄物、藁や麦わら、乾草などの農業副産物もバイオマスの一例として挙げられる。あるいは麻や亜麻、綿、サイザル麻、アバカ、ヤシ毛などの繊維の原料となる植物が挙げられる。あるいは海藻などの藻類でもよい。あるいは、食品残渣や、飼料作物から得られるサイレージなどが挙げられる。後述するように、バイオマスを多孔質炭化物の原料として用いることで、大気中の二酸化炭素を貯留するためのシステムを構築することができる。
【0016】
多孔質炭化物の大きさ及び形状は特に限定されないが、多孔質炭化物の平均粒径は1μm以上50mm以下または1μm以上1mm以下であってもよい。この範囲に平均粒径を有することで、後述する混合工程において、多孔質炭化物を添加剤と均一に混合することができる。
【0017】
多孔質炭化物の内部に形成されるマイクロメートルオーダーサイズの細孔に起因し、多孔質炭化物は大きな比表面積を有する。具体的には、多孔質炭化物の比表面積は、100m/g以上900m/g以下であり、100m/g以上800m/g以下、または150m/g以上400m/g以下であってもよい。比表面積は、水銀圧入法、BJH法、またはHK法に例示されるガス吸着法などを用いて測定される。
【0018】
バイオマスに由来する多孔質炭化物には、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の酸化物などの無機化合物が含まれ、特にカルシウムの酸化物、塩化物、水酸化物、硫酸塩、または硝酸塩など(以下、カルシウム化合物という)が比較的高い含有率で含まれる。後述するように、有機物分解材の製造において多孔質炭化物は二酸化炭素を用いて処理される(炭酸化)。そのため、これらのカルシウム化合物が二酸化炭素と反応して炭酸カルシウムまたは炭酸水素カルシウムを生成する。このため、有機物分解材には比較的高濃度で炭酸カルシウムまたは炭酸水素カルシウムが含まれる。カルシウムの濃度は、有機物分解材に対して誘導結合プラズマ発光分光分析(ICP-OES)または誘導結合プラズマ質量分析法(ICP-MS)を適用することで測定することができる。ICP-OESでは、アルゴンプラズマを発光光源として使用し、霧状にした溶液試料をプラズマに導入することで金属固有のスペクトルを分光し、測定波長および発光強度から金属イオンを定量することができる。ICP-MSは、アルゴンプラズマをイオン源として用い、試料に含まれる元素をイオン化し、イオンを質量電荷比に基づいて分離し検出する方法である。検出されたイオンの質量電荷比から元素を特定することができるとともに、検出されたイオンをカウントすることにより、金属イオンを定量することができる。定量された金属イオンの含有量から各化合物の含有量を計算によって求めればよい。
【0019】
(2)微生物
微生物は有機物の分解に寄与し、好気性微生物でも嫌気性微生物でもよい。好気性微生物としては、シュードモナス属菌、アンモニア酸化菌、亜硝酸酸化菌などが挙げられる。嫌気性微生物としては、硝酸塩還元菌、鉄還元菌、硫酸塩還元菌、酸生成菌、酢酸生成菌、メタン生成古細菌などが挙げられる。微生物は、多孔質炭化物に存在する大量の細孔をすみかとして生息する。
【0020】
バイオマスを炭化して得られる多孔質炭化物はアルカリ性を示し、例えばpHは10から13程度である。しかしながら、アルカリ性を示す多孔質炭化物は、微生物にとって好ましい生育環境とは言えず、あまりにアルカリ性が強い環境では、微生物は失活してしまう。したがって、バイオマス由来の多孔質炭化物と微生物を用いた有機物分解材において、分解能力に優れた有機物分解材の製造は困難であった。そこで本発明は、有機物分解材の製造過程において多孔質炭化物を炭酸化する。炭酸化することで、アルカリ性の環境の原因となるアルカリ金属やアルカリ土類金属の塩(例えば水酸化カルシウム)を炭酸塩にし、その結果、多孔質炭化物のpHを7から10程度の弱アルカリ性の環境へ変化させる。すなわち、炭酸化された多孔質炭化物は、微生物の生育や増殖に適した環境を与えることができる。このため、微生物が活性の高い状態を維持することができ、本発明は、微生物がもたらす高い有機物分解能を長期にわたって維持することができる有機物分解材を提供できる。
【0021】
多孔質炭化物に微生物を添加する前に、多孔質炭化物を炭酸化する場合は、弱アルカリ性の環境となった多孔質炭化物に微生物が添加されるため、微生物にとっては生育や増殖に適した環境となり、微生物がもたらす高い有機物分解能を存分に発揮できる有機物分解材を提供できる。
【0022】
多孔質炭化物と微生物を混合してから炭酸化する場合は、多孔質炭化物のアルカリ性環境または炭酸化処理に伴う熱や雰囲気の変化により、微生物が損傷する場合がある。そのため、微生物の損傷に伴う生菌数の減少量を見越して、多孔質炭化物に減少した生菌数を補う量の微生物を添加する、または、炭酸化処理の後に、さらに微生物を添加することで、微生物による分解能力の高い有機物分解材を提供できる。
【0023】
詳しい製造方法は、実施形態2及び3で言及する。
【0024】
(3)微生物活性化資材
微生物活性化資材としては、栄養剤、リンの吸着や微生物の生育に寄与する鉄、還元剤、または電子受容体などが挙げられる。
(3-1)栄養剤
栄養剤は微生物の栄養として働き、窒素化合物、リン化合物、カリウム化合物、ナトリウム化合物、タンパク質、ペプトン、ビタミン、ミネラル(Fe、Mn、Zn、Mgなど)、糖類、有機酸、リン酸鉄などが例示される。これらは、微生物の成長に必須な元素または要素を含む。窒素化合物、リン化合物、カリウム化合物、およびナトリウム化合物としては、塩化ナトリウム、塩化カリウム、リン酸水素ナトリウム、リン酸水素カリウム、塩化アンモニウム、硝酸アンモニウム、リン酸鉄などが挙げられる。これらの栄養剤の供給源の一例として、堆肥、食物の発酵残渣、酵母エキスなどが挙げられる。堆肥としては、牛や豚、鳥などの家畜から採取された糞におがくずやもみ殻、ワラ、ウッドチップなどの植物性副資材を混合して発酵させたものが例示される。ビタミンの供給源としてはエキス類が挙げられ、肉抽出液を濃縮した肉エキス、植物エキス、または酵母エキスが例示される。
【0025】
(3-2)鉄
有機物分解材は、有機物の分解と同時に水中のリンの除去に用いる場合、鉄(0価の鉄)を含有することでより効果的にリンの吸着が可能となる。この場合、鉄はリン酸鉄として多孔質炭化物に吸着される。なお、鉄は嫌気性微生物のための電子受容体である鉄イオンの供給源としても機能し、嫌気性微生物による有機物の分解を促進する。したがって、有機物分解材は、鉄イオンの供給源としてリン酸鉄を含んでもよい。リン酸鉄は、微生物の担体としても機能するので、有機物分解材により効率よく微生物を含有させることができる。
【0026】
鉄は0価の鉄の粉末、すなわち鉄粉として有機分解材中に存在してもよい。鉄粉には微量の他の元素が含まれていてもよい。他の元素としては、炭素や酸素、硫黄、リン、マンガン、ケイ素、バナジウム、銅、チタンなどが挙げられる。したがって、鉄粉の純度は、80.0%以上99.9%以下または95.0%以上99.0%以下でもよい。鉄粉の鉄の一部は、酸化されて酸化鉄や水酸化鉄として存在してもよい。酸化鉄は、少なくとも一部はマグネタイト(Fe)として存在する。酸化鉄の他の一部は、ウスタイト(FeO)、またはヘマタイト若しくはマグヘマイト(Fe)として存在してもよい。水酸化鉄に含まれる鉄の価数も1価でも2価でもよく、あるいは2価と3価の原子価が混合した混合原子価でもよい。
【0027】
鉄粉の形状に制約はなく、例えば平均円形度が50以上100以下の鉄粉を用いることができる。ここで平均円形度とは、粉体に含まれる各粉体粒子の形状を表すパラメータの一つであり、粉体を顕微鏡観察して得られる画像を解析し、複数の粉体粒子について円形度を求め、それを平均した値である。円形度としては、例えば顕微鏡像中の各粉体粒子の投影面の周囲長で投影面の面積と等しい面積の円の周囲長を除した値を用いることができる。あるいは、投影面を内接する円の面積で投影面の面積を除した値を円形度として採用してもよい。鉄粉の粒径にも制約はなく、例えば鉄粉中の90質量%の鉄粉粒子の粒径が20μm以上600μm以下、または20μm以上250μm以下である鉄粉を用いればよい。
【0028】
(3-3)還元剤
還元剤は、微生物、特に嫌気性微生物の生育や増殖のために多孔質炭化物の表面や細孔内の酸化還元電位を適切に保持するために用いられる。還元剤としては、例えば硫化ナトリウム、チオグリコール酸ナトリウム、システイン、システイン塩酸塩、アスコルビン酸などが挙げられる。還元剤は、微生物として嫌気性微生物を用いる場合には、多孔質炭化物の表面や細孔内の酸化還元電位が100mVから-400mVの範囲となるように添加すればよい。一方、微生物として好気性微生物を用いる場合には、酸化還元電位は250mVから400mVの範囲で調整される。後者の場合には、必ずしも還元剤は添加する必要はなく、大気と接触できる環境に有機物分解材を保持し、酸素を還元剤として機能させればよい。
【0029】
(3-4)電子受容体
電子受容体は、微生物、特に嫌気性微生物を用いる場合、微生物の呼吸を維持するための物質として機能する。例えば、鉄、アルミニウム、若しくはすずなどの金属の酸化物、硝酸塩、または硫酸塩などが電子受容体として例示され、これらの硝酸イオン、鉄イオン、硫酸イオンなどが電子受容体として機能する。
【0030】
(4)バインダ
任意の構成の一つであるバインダは、後述する有機物分解材の製造時に多孔質炭化物を微生物活性化資材と効率よく混合して一体化させるとともに、得られる混合物を造粒して種々の形状に成形することで取り扱いの容易な有機物分解材を提供するために用いることができる。バインダの種類に制約はないが、有機系バインダおよび/または無機系バインダを用いることができる。有機系バインダとしては、例えば糖蜜、廃糖蜜、澱粉、デキストリン、コーンスターチ、米糠などの多糖類、ポリビニルアルコール、酢酸ビニルとエチレンの共重合体若しくはそのケン化体、パルプ廃液、リグニンスルホン酸塩などの有機酸、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、フェノール樹脂、およびタールピッチなどから選択される一つまたは複数が挙げられる。中でも糖蜜は安価で有害成分が少なく、固形成分が多いため、糖蜜を用いることで有機物分解材の成形が容易となる。また、有機系バインダは微生物の生育・増殖のための栄養としても用いることができる。有機系バインダとして、おがくずも挙げられる。無機系バインダとしては、例えばセメント、高炉スラグ微粉末、フライアッシュ、石膏(硫酸カルシウム)、石膏を加熱・脱水して得られる焼石膏、ケイ酸ナトリウムなどが例示される。
【0031】
2.組成比
上述した有機物分解材の多孔質炭化物、微生物、添加物の組成比は適宜調整することができる。例えば、有機物分解材がバインダを含む場合、有機物分解材中の多孔質炭化物の含有率は、20質量%以上80質量%以下、40質量%以上80質量%以下、または60質量%以上80質量%以下の範囲で調整すればよく、バインダの含有率も5質量%以上50質量%以下、5質量%以上30質量%以下、または5質量%以上20質量%以下でもよい。有機物分解材が鉄粉を含む場合には、有機物分解材中の鉄粉の含有率は5質量%以上35質量%以下、5質量%以上25質量%以下、または5質量%以上20質量%以下の範囲で調整すればよい。これらの組成は、製造工程における仕込み比によって調整される。
【0032】
<実施形態2>
本実施形態では、実施形態1で述べた有機物分解材の製造方法について説明する。実施形態1で述べた構成と同様または類似する構成については、説明を割愛することがある。
【0033】
1.多孔質炭化物の調製
有機物分解材の製造方法の一例を図1のフローチャートに示す。まず、バイオマスを出発原料として用い、バイオマスを炭化して多孔質炭化物を調製する。具体的には、内燃式または外熱式の炭化炉を用い、窒素ガス若しくはアルゴンガスなどの不活性ガス雰囲気下、無酸素雰囲気下、低酸素雰囲気下、還元雰囲気下、または減圧雰囲気下において、バイオマスを加熱することによって多孔質炭化物を調製することができる。多孔質炭化物の調製における加熱温度は、400℃以上1200℃以下、500℃以上1100℃以下、600℃以上1000℃以下、または600℃以上900℃以下とすればよい。加熱時間は10分以上10日以下、または10分以上5時間以下とすればよい。
【0034】
バイオマスの炭化によって乾留ガスが発生するとともに、バイオマスの構造に起因する細孔と、乾留ガスの脱離によって形成される細孔が複雑に混ざり合った、様々な形状と大きさを有する細孔が形成された多孔質炭化物が生成される。乾留ガスには主に水素、一酸化炭素、メタンやプロパン、ブタンなどに代表されるアルカンなどの可燃性、または還元力を有するガスが含まれる。乾留ガスは高温(700℃から1300℃)の状態で取り出されるため、その熱エネルギーや可燃性などをエネルギー源として発電や温水の供給などに利用してもよい。
【0035】
2.炭酸化
引き続き、多孔質炭化物を炭酸化する。具体的には、多孔質炭化物を二酸化炭素含有ガスと接触させる。二酸化炭素含有ガスには、二酸化炭素とともに他のガスが含まれてもよい。他のガスとしては、空気、窒素、酸素、アルゴンなどの希ガス、または水(水蒸気)などが挙げられる。二酸化炭素含有ガス中の二酸化炭素の濃度は適宜調製すればよく、1体積%以上100体積%以下、1体積%以上50体積%以下、または1体積%以上20体積%以下の範囲から適宜設定すればよい。
【0036】
二酸化炭素含有ガスの供給源の一例としては、二酸化炭素を含むガスのボンベやタンクなどが挙げられる。あるいは、二酸化炭素を大量に排出する施設(化学プラント、ゴミ焼却施設、火力発電所、その他各種工場など)からの排出ガス、または排出ガスに対して脱塵、脱硫、脱硝などを行うことで得られる精製された二酸化炭素を利用してもよい。あるいは、アミン法を用いて排出ガスから分離・回収された二酸化炭素を用いてもよい。二酸化炭素を大量に排出する施設が有機物分解材の製造現場に近い場合、これらの施設が二酸化炭素を含むガスの供給源として機能するので、二酸化炭素を運搬するためのコストが削減され、運搬に伴う二酸化炭素の二次的な排出が防止される。
【0037】
多孔質炭化物中に含まれるアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩の効率の良い炭酸化を行うため、二酸化炭素含有ガス若しくは多孔質炭化物のいずれか一方には水(水蒸気)が含まれていることが好ましい。または、二酸化炭素含有ガス及び多孔質炭化物の両方に水(水蒸気)が含まれていても良い。多孔質炭化物中の含水率は、例えば10重量%以上40重量%以下である。あるいは、二酸化炭素含有ガスの相対湿度を20%以上95%以下、または50%以上90%以下に設定すればよい。
【0038】
炭酸化の際に水(水蒸気)が存在すると、多孔質炭化物に含まれる酸化物が酸化カルシウムの場合、酸化カルシウムは水と反応して速やかに水酸化カルシウムへ変化するので、室温または室温近辺の温度(例えば、15℃以上35℃以下)でも炭酸化が進行する。また、細孔内に存在する溶液中の水酸化カルシウムまたは塩化カルシウムなどのカルシウムイオンと二酸化炭素との反応も可能となるため、固体状態の塩と二酸化炭素との反応とは異なり、炭酸化が温和な条件で速やかに進行し、その結果、炭酸化に要するエネルギーを低減することができる。
【0039】
炭酸化することで、例えば1質量%以上10質量%以下または1質量%以上5質量%以下の含有率で炭酸カルシウムが含まれる多孔質炭化物を得ることができる。また、炭酸カルシウムに由来するピークを多孔質炭化物のX線回折(XRD)スペクトルに観測することもできる。
【0040】
多孔質炭化物を炭酸化することで、炭酸化前は微生物の生育環境として適さないpH10~pH13であったところ、炭酸化後は、微生物の生育環境として適したpH7~pH10、またはpH7以上pH10未満となる。
【0041】
3.微生物の添加
炭酸化された多孔質炭化物への微生物の添加は、種々の方法で行うことができる。ここで、多孔質炭化物への微生物の添加とは、微生物の活性状態(不活性または活性)に依らず、単に多孔質炭化物へ加えることを指す。微生物が活性化の状態で多孔質炭化物へ添加する場合は、多孔質炭化物へ微生物を担持するとの表現もあり得る。
【0042】
一つの方法では、粉末状の微生物を炭酸化された多孔質炭化物と混合すればよい。この方法により、多孔質炭化物および多孔質炭化物に添加された好気性または嫌気性微生物を含む有機物分解材を得ることができる。
【0043】
他の方法では、バイオリアクターと呼ばれる容器に微生物と水を含む培養液を用意し、その中に炭酸化された多孔質炭化物を浸漬すればよい。この方法では、微生物は、粉末として直接供給されたり、または例えばおがくずや焼却灰、活性炭などの担体に担持された状態でバイオリアクターに供給されたりする。この時、好気性微生物の生育・増殖を促進する栄養として、有機化合物を培養液に添加してもよい。
【0044】
あるいは、後述する添加剤やバインダの添加の際に好気性および/または嫌気性微生物を添加してもよい。具体的には、多孔質炭化物とバインダおよび/または添加剤を混合し、この混合物に好気性および/または嫌気性微生物を添加してもよい。この場合、混合時に水を添加してもよい。水を添加することで、粉塵の発生を防止することができるとともに、均一な混合ができる。また、微生物または微生物が担持された担体に替わり、微生物源として牛などの家畜の糞を用いてもよい。
【0045】
4.添加剤の添加
本有機物分解材の製造方法では、上述した添加剤が添加される。添加剤の添加は、図1に示すように、炭化物の調製後、任意のタイミングで行うことができる。例えば、炭酸化の前に添加剤を添加してもよく、炭酸化の後に添加してもよい。また、微生物の添加前に添加剤を添加してもよく、添加後に添加剤を添加してもよい。
【0046】
5.バインダの添加と造粒
任意の工程として、バインダを添加し、造粒機を用いて有機物分解材を一定の形状に成形(造粒)してもよい。造粒のための造粒機としては、圧縮型造粒機、押出型造粒機、ロール型造粒機、ブレード型造粒機、溶融型造粒機、または噴霧型造粒機などが例示される。造粒のタイミングも任意に決定すればよく、図1に示すように、炭化物の調製後、炭酸化の前、微生物の添加前、あるいは微生物の添加後に行ってもよい。例えば、多孔質炭化物とバインダを混合して得られる混合物を造粒し、成形された混合物をバイオリアクター内の好気性微生物を含む培養液に浸漬することで微生物を添加してもよい。なお、造粒はバインダの存在下で行われるため、バインダの添加は造粒前に行われる。
【0047】
造粒を行うことで、任意の形状を有する有機物分解材を製造することができる。有機物分解材の形状に制約はなく、球状、楕円球、または円柱、楕円柱若しくは多角柱(ペレット形状)などの形状でもよい。ペレット形状の場合、例えばペレットの長さが1mm以上20mm以下、3mm以上15mm以下、6mm以上12mm以下となるように造粒される。断面形状が円形の場合、ペレットの直径に対する高さ(厚さ)の比は、0.5以上5.0以下とすればよい。以上の工程により、形状の揃った有機物分解材を製造することができる。
【0048】
あるいは、多孔質炭化物、バインダ、および鉄粉を混合して得られる混合物を造粒し、成形された混合物をリンを含む水に浸漬してもよい。この工程により、水中のリンがリン酸鉄として混合物に取り込まれる。その後、好気性または嫌気性微生物を含む培養液に上記混合物を浸漬することで、微生物を担持することができる。
【0049】
図1には示されていないが、乾燥工程を任意の工程として設けてもよい。乾燥温度と時間も、有機物分解材の量や含まれる水の量に応じて適宜選択される。ただし、微生物が含まれているため、乾燥温度は例えば15℃以上40℃以上、15℃以上35℃以下、または15℃以上30℃以下の範囲から選択される。乾燥時間も1分以上1週間以下、1時間以上3日以下、または3時間以上1日以下の範囲から適宜選択される。
【0050】
<実施形態3>
本実施形態では、実施形態1で述べた有機物分解材の他の製造方法について説明する。実施形態1、2で述べた構成と同様または類似する構成については、説明を割愛することがある。
【0051】
本実施形態に係る有機物分解材の製造方法のフローチャートを図2に示す。図2から理解されるように、本実施形態に係る有機物分解材の他の製造方法と実施形態2で述べた製造方法と異なる点の一つは、前者では炭酸化が微生物の添加後に行われる点である。
【0052】
上述したように、炭酸化前の多孔質炭化物はアルカリ性を示す。このため、炭酸化前に添加された微生物の一部は失活することがある。また、炭酸化において生じる熱によっても微生物の一部が失活することがある。したがって、本実施形態では、炭酸化後に微生物を再度添加してもよい。あるいは、実施形態2と比較し、微生物の添加量を増大させてもよい。
【0053】
<実施形態4>
本実施形態では、有機物分解材を用いる有機物の分について述べる。実施形態1から3で述べた構成と同様または類似する構成については、説明を割愛することがある。
【0054】
上述したように、本発明の実施形態の一つに係る有機物分解材の製造工程において、多孔質炭化物の炭酸化が行われる。このため、多孔質炭化物の表面や細孔内は弱アルカリ性の環境を維持することができる。このような弱アルカリ性の環境は有機物の分解に寄与する微生物の生育や増殖に適しており、このため、本有機物分解材は、土壌や水、排ガス中に含まれる有機物を分解する能力を長期間にわたって保持することができ、土壌や水域、排ガスの浄化に有効な浄化材として機能する。
【0055】
1.土壌の浄化
ガソリンや灯油、軽油、重油などの油成分、動物の死骸、食物の残渣、木材や綿などの天然植物資材などに由来する種々の有機物によって汚染された土壌に本有機物分解材を利用することで、有機物を分解することができる。有機物分解材は、直接汚染土壌に散布してもよく、あるいは掘削した汚染土壌に本有機物分解材を散布または混合してもよい。有機物分解材に含まれる多孔質炭化物は比較的脆いため、土壌の浄化過程中、物理的に、または水の浸透などによって容易に崩壊し、その結果、微生物が速やかに土壌内に拡散する。また、油成分などの液体の有機物は多孔質炭化物によって吸着されるため、土壌に拡散した微生物が有機物を分解可能なレベルまで土壌中の有機物を低減することも可能である。このため、高効率で土壌を浄化することができる。
【0056】
好気性微生物を用いる場合には、電子供与体である酸素を補給するため、適宜ランドファーミングを行う、あるいは定常的に空気を土壌へ供給する。微生物として嫌気性微生物を用いる場合には、上述した酸素以外の電子受容体(例えば鉄や鉄塩)を含む有機物分解材を用いることで、嫌気性微生物による浄化が可能である。また、電子受容体として酸素は必要としないため、土壌の定期的な切り替えし(ランドファーミング)を行わなくても土壌中の汚染物質を分解することができる。このことは、土壌の浄化のためのコスト低減に寄与する。
【0057】
2.水の浄化
本有機物分解材は、多孔質炭化物の表面や細孔中に担持された好気性微生物および/または嫌気性微生物が含まれるため、河川や湖、海などの各種水域、浄水池などの水の浄化に用いることで、生活排水などに含まれる有機物を分解することが可能である。水の浄化は、バッチ式でもよく、連続式でもよい。水の浄化は、本有機物分解材を浄化対象である汚染水に接触させることで行えばよい。なお、水中での崩壊によって有機物分解材が水域へ流出することを防ぐため、水は透過するものの崩壊後の多孔質炭化物が透過しない材料(例えば、メッシュ状の金属板、生地など)で作製される容器や袋に有機物分解材を充填し、水域の水と接触させればよい。鉄および/または酸化鉄が有機物分解材に含まれる場合には、酸化鉄とリン酸の反応によって水に対する溶解度が小さいリン酸鉄が生成し、これが多孔質炭化物の表面や細孔内に吸着するため、各種水域のリン(例えば、リン酸塩など)も同時に除去することが可能である。
【0058】
活性炭などの多孔質炭化物を基本的な構成として有する吸着材を用いて水を処理すると、浄化後の水(処理水)のpHが増大することが多い。これは、多孔質炭化物に含まれるカルシウムなどのアルカリ土類金属の酸化物が水と反応して水酸化物を与えるためと考えられる。しかしながら、上述したように、本有機物分解材の製造工程において多孔質炭化物は二酸化炭素による炭酸化を受け、その結果、アルカリ土類金属は弱アルカリ性の炭酸塩および/または炭酸水素塩(例えば炭酸カルシウム)として存在する。このため、処理水のpHの増大を効果的に抑制することができ、本有機物分解材を水質改善に用いることで、処理水のpH調整が不要となり、処理水を直接河川などに放流することができる。
【0059】
3.排ガスの浄化
本有機物分解材は、多孔質炭化物だけでなく、その表面や細孔中に担持された微生物が含まれている。このため、多孔質炭化物に存在する大量の細孔によって種々の有機物を吸着できる。さらに、排ガス中に存在するトルエンやキシレン、酢酸エチル、メタノールなどの揮発性有機物だけでなく、パーフルオロオクタン酸やパーフルオロオクタンスルホン酸などのフッ素を含有する有機化合物の分解が可能である。排ガスの浄化も、処理対象の空気を本有機物分解材に接触させることで行えばよい。なお、排ガスの浄化では、有機物分解材は定常的に酸素と接触するため、微生物としては好気性微生物を用いることが好ましい。
【0060】
4.二酸化炭素の貯留システム
実施形態2から4で説明した有機物分解材の製造とこれを用いる有機物の分解により、二酸化炭素の貯留システムを構築することができる。具体的には、本発明の実施形態の一つに係る有機物分解材の製造では、バイオマスを炭化して得られる多孔質炭化物が原料の一つとなる。この時、バイオマスの炭化によって得られる乾留ガスをエネルギー源として用いることで、発電や温水の製造などを行うことができる(図3、(1))。
【0061】
得られる多孔質炭化物は二酸化炭素を含むガスによって処理される(図3、(2))。その結果、多孔質炭化物に含まれるアルカリ金属若しくはアルカリ土類金属の酸化物または塩、典型的には酸化カルシウムまたは水酸化カルシウムが二酸化炭素と反応し、炭酸カルシウムを含む炭酸化された多孔質炭化物が得られる。炭酸化は、例えば700℃以上の高温ではなく、15℃以上35℃以下の温和な条件下で行うことができるため、低コストで炭酸化を行うことができる。炭酸化された多孔質炭化物には微生物が添加される。また、成形のためのバインダと、微生物の生育を促進するための堆肥、還元剤、または電子受容体などの微生物活性化資材とを添加することができる(図3、(3))。
【0062】
得られる有機物分解材は、汚染された土壌のみならず、各種水域の水、排ガス中に含まれる有機物の分解にも供することができる(図3、(4))。浄化された土壌は植物の生育に寄与する。すなわち、植物による光合成によって大気中の二酸化炭素が固定され、食料だけでなく、木材などの材料が提供される(図3、(5))。食料や材料の残渣は再びバイオマスとして利用することができる。
【0063】
このように、本発明の実施形態を適用することで、バイオマスからの多孔質炭化物の生成(1)とその炭酸化(2)、有機物分解材の製造(3)、土壌や水、排ガスの浄化(4)、浄化された土壌による植物の生長とバイオマスの再生(5)を含む一連のサイクルが確立される。このサイクルにおいては、植物が固定化した大気中の二酸化炭素は、有機物分解材を構成する多孔質炭化物として利用されるとともに、炭素という形で地中に貯留される。さらに、炭酸化においても、二酸化炭素の一部が炭酸カルシウムなどの金属塩として固定される。したがって、このサイクルは大気中の二酸化炭素を地中に還元して貯留するシステムであり、大気中の二酸化炭素の削減に寄与するものである。
【0064】
本発明の実施形態として上述した各実施形態は、相互に矛盾しない限りにおいて、適宜組み合わせて実施することができる。各実施形態を基にして、当業者が適宜構成要素の追加、削除もしくは設計変更を行ったものも、本発明の要旨を備えている限り、本発明の範囲に含まれる。
【0065】
上述した各実施形態によりもたらされる作用効果とは異なる他の作用効果であっても、本明細書の記載から明らかなもの、または、当業者において容易に予測し得るものについては、当然に本発明によりもたらされるものと理解される。
図1
図2
図3