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特開2024-20057異常特定装置、異常特定方法、およびプログラム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024020057
(43)【公開日】2024-02-14
(54)【発明の名称】異常特定装置、異常特定方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   E05F 15/41 20150101AFI20240206BHJP
   E05F 15/632 20150101ALI20240206BHJP
   E05F 15/70 20150101ALI20240206BHJP
【FI】
E05F15/41
E05F15/632
E05F15/70
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022122940
(22)【出願日】2022-08-01
(71)【出願人】
【識別番号】503405689
【氏名又は名称】ナブテスコ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100140718
【弁理士】
【氏名又は名称】仁内 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100145481
【弁理士】
【氏名又は名称】平野 昌邦
(74)【代理人】
【識別番号】100211122
【弁理士】
【氏名又は名称】白石 卓也
(72)【発明者】
【氏名】木上 昭吾
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 京子
(72)【発明者】
【氏名】小木曽 敬紀
(72)【発明者】
【氏名】田邉 和男
【テーマコード(参考)】
2E052
【Fターム(参考)】
2E052AA02
2E052CA06
2E052DA02
2E052DB02
2E052EA15
2E052GA05
2E052GA08
2E052GA09
2E052GB11
(57)【要約】
【課題】故障原因を特定する処理の負荷を軽減する。
【解決手段】本発明の一態様は、鉄道車両の乗降口を開閉するドア装置の開閉移動中に発生する振動を示す振動情報を取得する振動取得部と、取得された前記振動情報により示される振動と振動基準値とを比較することで前記ドア装置の異常を判定する判定部と、前記ドア装置の動作が開始されてから前記判定部により異常と判定される特定時点までの経過時間または前記ドア装置の開閉量を示す移動情報を取得する移動取得部と、前記ドア装置を構成する複数の構成要素の内、前記特定時点における前記ドア装置の動作に関連する構成要素を、前記移動情報を用いて特定する特定部と、を備える、異常特定装置である。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄道車両の乗降口を開閉するドア装置の開閉移動中に発生する振動を示す振動情報を取得する振動取得部と、
取得された前記振動情報により示される振動と振動基準値とを比較することで前記ドア装置の異常を判定する判定部と、
前記ドア装置の動作が開始されてから前記判定部により異常と判定される特定時点までの経過時間または前記ドア装置の開閉量を示す移動情報を取得する移動取得部と、
前記ドア装置を構成する複数の構成要素の内、前記特定時点における前記ドア装置の動作に関連する構成要素を、前記移動情報を用いて特定する特定部と、
を備える、異常特定装置。
【請求項2】
前記複数の構成要素は、ドアリーフに動力供給して開閉移動させるモータと、閉移動時に前記ドアリーフが全閉位置に到達した後に前記モータから動力供給を受けて前記ドアリーフを施錠する施錠部と、を含み、
前記振動取得部は、前記モータが駆動しているときの前記ドア装置の振動を示す振動情報を取得し、
前記特定部は、閉移動時に取得した前記移動情報により示される経過時間または移動量が、前記ドアリーフが開動作を開始してから前記全閉位置で停止するまでの経過時間または移動量以上の値を示す場合、前記ドア装置の動作に関連する構成要素として前記施錠部を特定する、請求項1に記載の異常特定装置。
【請求項3】
前記複数の構成要素は、ドアリーフに動力供給して開閉移動させるモータと、開移動を開始する前に前記モータから動力供給を受けて前記ドアリーフを解錠する施錠部と、を含み、
前記振動取得部は、前記モータが駆動しているときの前記ドア装置の振動を示す振動情報を取得し、
前記特定部は、開移動時に取得した前記移動情報により示される経過時間または移動量が、前記施錠部における解錠が行われてから前記ドアリーフの開移動が開始するまでの経過時間または移動量以下の値を示す場合、前記ドア装置の動作に関連する構成要素として前記施錠部を特定する、請求項1に記載の異常特定装置。
【請求項4】
前記複数の構成要素は、ドアリーフに固定された戸車と、前記戸車が接触しながら転動するガイドレールとを含み、
前記特定部は、前記ドアリーフが一定速度で開移動する期間内の前記特定時点における前記移動情報から算出されるドア位置と、前記ドアリーフが一定速度で閉移動する期間内の前記特定時点における前記移動情報から算出される前記ドア位置とが一致する場合、前記ドア装置の動作に関連する構成要素として前記ガイドレールを特定する、請求項1に記載の異常特定装置。
【請求項5】
前記複数の構成要素は、ドアリーフを開閉移動させる駆動力を発生するモータを含み、
前記モータに供給される電流値を示す電流値情報を取得する電流値取得部を備え、
前記判定部は、更に、取得された前記電流値情報により示される電流値と電流基準値とを比較することで前記ドア装置の異常を判定し、
前記特定部は、前記振動情報により異常が判定されず、且つ、前記電流値情報により異常が判定された場合、前記ドア装置の動作に関連する構成要素として前記モータを特定する、請求項1に記載の異常特定装置。
【請求項6】
前記ドア装置は、ドアリーフの開閉移動させる駆動力を発生するモータを備え、
前記ドア装置の開閉移動中に発生する音圧を示す音圧情報を取得する音圧取得部を備え、
前記特定部は、前記振動情報により異常が判定されずに、前記開閉移動を開始してから停止するまでの期間において前記音圧が音圧基準値を超えている場合、前記ドア装置の動作に関連する構成要素として前記モータを特定する、請求項1に記載の異常特定装置。
【請求項7】
前記ドア装置は、前記複数の構成要素として、ピストンが圧力室内を移動するように配置されたシリンダ部と、前記圧力室に空気を供給または排気することで前記ピストンを移動させる弁と、前記ピストンの移動力を前記ドア装置に伝達する伝達部とを備え、
前記特定部は、前記判定部が異常と判定したタイミングにおける前記ドア装置の動作に関連する構成要素を、前記移動情報を用いて特定する、請求項1に記載の異常特定装置。
【請求項8】
前記ドア装置の傾斜を示す傾斜情報を取得する傾斜取得部を備え、
前記判定部は、更に、取得された前記傾斜情報により示される傾斜と傾斜基準値とを比較し、前記振動情報および前記傾斜情報が共に異常を示す場合、前記ドア装置は異常ではないと判定する、請求項1に記載の異常特定装置。
【請求項9】
前記複数の構成要素の内のドアリーフの傾斜を示す傾斜情報を取得する傾斜取得部を備え、
前記判定部は、前記振動情報により示される振動から前記傾斜情報が示す傾斜により発生する振動を除外し、前記傾斜情報が示す傾斜により発生する振動が除外された振動と振動基準値とを比較することで前記ドア装置の異常を判定する、請求項1に記載の異常特定装置。
【請求項10】
鉄道車両の乗降口を開閉するドア装置の開閉移動中に発生する振動を示す振動情報、および前記ドア装置の動作が開始されてからの経過時間または前記ドア装置の開閉量を示す移動情報を取得し、
前記振動情報により示される振動と振動基準値とを比較することで前記ドア装置の異常を判定し、
前記ドア装置の動作が開始されてから前記異常と判定される特定時点までの経過時間または前記ドア装置の開閉量を用いて、前記ドア装置を構成する複数の構成要素の内、特定時点における前記ドア装置の動作に関連する構成要素を特定する、
異常特定方法。
【請求項11】
鉄道車両の乗降口を開閉するドアを開閉制御するドア装置のコンピュータに、
前記ドア装置に開閉指令を出力する手順と、
前記ドア装置の開閉移動中に発生する振動を示す振動情報、および前記ドア装置の動作が開始されてからの経過時間または前記ドア装置の開閉量を示す移動情報を取得する手順と、
前記振動情報により示される振動と振動基準値とを比較することで前記ドア装置の異常を判定する手順と、
前記ドア装置の動作が開始されてから前記異常と判定される特定時点までの経過時間または前記ドア装置の開閉量を用いて、前記ドア装置を構成する複数の構成要素の内、特定時点における前記ドア装置の動作に関連する構成要素を特定する手順と、
を実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、異常特定装置、異常特定方法、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
センサ信号を用いてドアの動作を監視するドアコントローラが、例えば、特許文献1に記載されている。特許文献1のドアコントローラは、時間領域で取得した3軸加速度センサの信号をフーリエ変換により周波数領域の信号に変換し、各周波数における信号の振幅を分析し、ドアの故障原因を特定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第11028630号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1のドアコントローラは、故障原因を特定するために時間領域で取得したセンサ信号を周波数領域の信号に変換する必要があるので、処理負荷が高くなる。
【0005】
上記事情に鑑み、本発明は、故障原因を特定する処理の負荷を軽減することができる異常特定装置、異常特定方法、およびプログラムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、鉄道車両の乗降口を開閉するドア装置の開閉移動中に発生する振動を示す振動情報を取得する振動取得部と、取得された前記振動情報により示される振動と振動基準値とを比較することで前記ドア装置の異常を判定する判定部と、前記ドア装置の動作が開始されてから前記判定部により異常と判定される特定時点までの経過時間または前記ドア装置の開閉量を示す移動情報を取得する移動取得部と、前記ドア装置を構成する複数の構成要素の内、前記特定時点における前記ドア装置の動作に関連する構成要素を、前記移動情報を用いて特定する特定部と、を備える、異常特定装置である。
【0007】
本発明の一態様は、鉄道車両の乗降口を開閉するドア装置の開閉移動中に発生する振動を示す振動情報、および前記ドア装置の動作が開始されてからの経過時間または前記ドア装置の開閉量を示す移動情報を取得し、前記振動情報により示される振動と振動基準値とを比較することで前記ドア装置の異常を判定し、前記ドア装置の動作が開始されてから前記異常と判定される特定時点までの経過時間または前記ドア装置の開閉量を用いて、前記ドア装置を構成する複数の構成要素の内、特定時点における前記ドア装置の動作に関連する構成要素を特定する、異常特定方法である。
【0008】
本発明の一態様は、鉄道車両の乗降口を開閉するドアを開閉制御するドア装置のコンピュータに、前記ドア装置に開閉指令を出力する手順と、前記ドア装置の開閉移動中に発生する振動を示す振動情報、および前記ドア装置の動作が開始されてからの経過時間または前記ドア装置の開閉量を示す移動情報を取得する手順と、前記振動情報により示される振動と振動基準値とを比較することで前記ドア装置の異常を判定する手順と、前記ドア装置の動作が開始されてから前記異常と判定される特定時点までの経過時間または前記ドア装置の開閉量を用いて、前記ドア装置を構成する複数の構成要素の内、特定時点における前記ドア装置の動作に関連する構成要素を特定する手順と、を実行させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一態様によれば、故障原因を特定する処理の負荷を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】異常特定装置を内蔵した電気式ドア装置(鉄道用ドア装置、自動ドア装置)の外観図である。
図2】モータの周辺の構造をより具体的に示す図である。
図3】電気式ドア装置の制御系の概略構成を示すブロック図である。
図4】異常特定装置の機能的な構成の一例を示すブロック図である。
図5】ドア開閉制御部における処理手順の一例を示すフローチャートである。
図6】ドアが全閉位置から全開位置まで移動する間における、ドアの移動位置(ストローク)、振動、音圧、および電流値と、時間との関係を示した図である。
図7】施錠部に動作不良が発生している場合における、ドアの移動位置(ストローク)、振動、音圧、および電流値と、時間との関係を示した図である。
図8】施錠部に動作不良が発生している場合における、ドアの移動位置(ストローク)、振動、音圧、および電流値と、時間との関係を示した図である。
図9】ガイドレールの異常が発生している場合における、ドアの移動位置(ストローク)、振動、音圧、および電流値と、時間との関係を示した図である。
図10】モータの異常が発生している場合における、ドアの移動位置(ストローク)、振動、音圧、および電流値と、時間との関係を示した図である。
図11】モータの異常が発生している場合における、ドアの移動位置(ストローク)、振動、音圧、および電流値と、時間との関係を示した図である。
図12】戸車の異常が発生している場合における、ドアの移動位置(ストローク)、振動、音圧、および電流値と、時間との関係を示した図である。
図13】特定部における処理手順の一例を示すフローチャートである。
図14】閉状態における空圧式ドア装置の一例を示す概略図である。
図15】開状態における空圧式ドア装置の一例を示す概略図である。
図16】シリンダ部の一例を示す断面図である。
図17】空圧式ドア装置の制御系の概略構成を示すブロック図である。
図18】異常特定装置の機能的な構成の一例を示すブロック図である。
図19】経過時間に対する、ドアリーフの移動位置(ストローク)[mm]とシリンダ部0への供給空気圧力[Pa]と戸車の振動情報の一例を示す図である。
図20】戸車に異常がある場合における、経過時間に対する、ドアリーフの移動位置(ストローク)[mm]とシリンダ部への供給空気圧力[Pa]と戸車6の振動情報の一例を示す図である。
図21】経過時間に対する、ドアリーフの移動位置(ストローク)[mm]とシリンダ部への供給空気圧力[Pa]と引分機構の振動情報の一例を示す図である。
図22】引分機構に異常がある場合における、経過時間に対する、ドアリーフの移動位置(ストローク)[mm]とシリンダ部への供給空気圧力[Pa]と引分機構の振動情報の一例を示す図である。
図23】経過時間に対する、ドアリーフの移動位置(ストローク)[mm]とシリンダ部への供給空気圧力[Pa]とシリンダ部の振動情報の一例を示す図である。
図24】シリンダ部に異常がある場合における、経過時間に対する、ドアリーフの移動位置(ストローク)[mm]とシリンダ部への供給空気圧力[Pa]とシリンダ部の振動情報の一例を示す図である。
図25】経過時間に対する、ドアリーフの移動位置(ストローク)[mm]とシリンダ部への供給空気圧力[Pa]と切換弁部(第1の電磁弁および/または第2の電磁弁)の振動情報の一例を示す図である。
図26】切換弁部に異常がある場合における、経過時間に対する、ドアリーフの移動位置(ストローク)[mm]とシリンダ部への供給空気圧力[Pa]と切換弁部の振動情報の一例を示す図である。
図27】経過時間に対する、ドアリーフの移動位置(ストローク)[mm]とシリンダ部への供給空気圧力[Pa]と排気消音器の振動情報の一例を示す図である。
図28】排気消音器に異常がある場合における、経過時間に対する、ドアリーフの移動位置(ストローク)[mm]とシリンダ部への供給空気圧力[Pa]と排気消音器の振動情報の一例を示す図である。
図29】傾斜が発生する一例を示す図である。
図30】傾斜が発生する他の一例を示す図である。
図31】ドアリーフに傾斜が発生していない状態を示す側面図である。
図32】ドアリーフに人による外力が加えられた状態を示す側面図である。
図33】車体が傾いているときのドアリーフの状態を示す側面図である。
図34】異常特定装置の機能的な構成の一例を示すブロック図である。
図35】異常特定装置を含むドア開閉制御部における処理手順の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0012】
図1は、異常特定装置を内蔵した電気式ドア装置(鉄道用ドア装置、自動ドア装置)2の外観図である。電気式ドア装置2は、例えば鉄道車両に搭載される。図1において、例えば、X方向は左右方向であり、Y方向は上下方向であり、X方向とY方向とは直交している。
【0013】
電気式ドア装置2は、引き戸である一対のドアリーフ3R、3Lを備えている。ドアリーフ3R、3Lの上方(+Y方向側)には、ガイドレール4と、右側のドアリーフ3Rを支持する戸吊装置5Rと、左側のドアリーフ3Lを支持する戸吊装置5Lとが配置されている。戸吊装置5Rとドアリーフ3Rは、ガイドレール4に沿って一体に移動自在とされている。また、戸吊装置5Lとドアリーフ3Lは、ガイドレール4に沿って一体に移動自在とされている。各ドアリーフ3R、3Lの戸先には、軟質の合成ゴム材料で形成された戸先ゴム7が取り付けられている。
【0014】
戸吊装置5R、5Lの内部には、破線で示すように、複数の戸車6が設けられている。各戸車6は、ガイドレール4の上面または下面に接触しながら転動する。
【0015】
ガイドレール4の上方には、ガイドレール4の延びる方向に沿って右用ラックギア8Rと左用ラックギア8Lが設けられている。右用ラックギア8Rには、右側連結ブラケット9Rが連結されており、右用ラックギア8Rが左右(X方向)に移動すると、その移動に伴って右側連結ブラケット9Rが左右に移動する。同様に、左用ラックギア8Lには、左側連結ブラケット9Lが連結されており、左用ラックギア8Lが左右に移動すると、その移動に伴って左側連結ブラケット9Lが左右に移動する。右側連結ブラケット9Rには戸吊装置5Rが連結されており、右側連結ブラケット9Rの左右の移動に合わせて戸吊装置5Rとドアリーフ3Rが一体に左右に移動する。また、左側連結ブラケット9Lには戸吊装置5Lが連結されており、左側連結ブラケット9Lの左右の移動に合わせて戸吊装置5Lとドアリーフ3Lが一体に左右に移動する。
【0016】
右用ラックギア8Rと左用ラックギア8Lは、ピニオンギア10に噛み合っており、ピニオンギア10の回転運動を直線運動に変換する作用を行う。ピニオンギア10は、モータ11の駆動力で回転する。
【0017】
戸吊装置5R、5Lの上方にはロックピン22R、22Lが固定される。ロックピン22R、22Lは、鉛直方向の上向きに延びている。ロックピン22R、22Lは、ドアリーフ3R、3Lと一体で移動可能である。電気式ドア装置2が全閉位置に位置するとき、ロックピン22R、22Lは施錠部20により拘束される。これにより、電気式ドア装置2の左右方向の移動がロックされる。
【0018】
施錠部20は、鉛直方向においてドアリーフ3R、3Lとピニオンギア10との間に配置されている。施錠部20は、電気式ドア装置2が全閉位置に位置するときにドアリーフ3R、3Lが開方向へ移動することを制限するロック機構として機能する。施錠部20は、電気式ドア装置2の全閉位置においてロックピン22R、22Lと係り合って施錠する施錠位置と、ロックピン22R、22Lと係り合わない解錠位置との間で移動可能である。施錠部20は、ロックピン22R、22Lそれぞれと係り合うための一対の回転部材(不図示)を備える。施錠部20の回転部材のそれぞれは、戻しバネ(不図示)の弾性力により付勢されている。施錠部20は、モータ11の出力により作動して施錠位置に移動すると、ロックピン22R、22Lが回転部材に押し込まれることで係り合う。施錠部20は、モータ11の出力により作動して解錠位置に移動すると、ロックピン22R、22Lが回転部材から解放され、ロックピン22R、22Lと回転部材とが係り合いが解除される。
【0019】
電気式ドア装置2は、さらに、振動センサ部30を備える。振動センサ部30は、電気式ドア装置2における振動を検出し、振動を示す振動情報を生成し、振動情報を制御器15に供給する。なお、振動センサ部30は、制御器15付近に設けられているが、これに限定されず、電気式ドア装置2の振動を検出することができる位置であれば任意の位置に設けられてよい。
【0020】
図2は、モータ11の周辺の構造をより具体的に示す図である。電気式ドア装置2は、モータ11の回転軸12に取り付けられたサンギア13と、サンギア13の周囲に配置されてサンギア13と噛み合う複数の遊星ギア14と、複数の遊星ギア14の外側に配置されて複数の遊星ギア14と噛み合うアウタギアであるピニオンギア10とが設けられている。
【0021】
モータ11が回転すると、モータ11の回転力は、ピニオンギア10を介してラックギア8R、8Lに伝達される。ラックギア8R、8Lがモータ11の回転に応じて左右に移動すると、右側連結ブラケット9Rおよび左側連結ブラケット9Lを介して一対のドアリーフ3R、3Lはガイドレール4に沿って左右に移動する。以下、一対のドアリーフ3R、3Lの一方または両方を単にドアと称する場合がある。
【0022】
つまり、ドア(ドアリーフ3R、3L)は、図示の左右方向に移動可能である。鉄道車両の乗降口は、ドアの左右方向の移動によって開閉される。すなわち、鉄道車両の乗降口は、ドアが閉方向(戸先同士が接触する方向)に移動することによって閉じられる。閉方向の移動動作(閉動作)として、ドアは、戸先ゴム7同士が互いに接触し、接触した状態で戸先ゴム7同士がある程度まで収縮してから、停止するようになっている。鉄道車両の乗降口は、ドアが開方向(戸先同士が離れる方向)に移動することにとって開かれる。開方向の移動動作(開動作)として、ドアは、戸先ゴム7も含むドアの全体が車体に形成された戸袋(非図示)に収納されてから、停止するようになっている。
【0023】
なお、電気式ドア装置2の開閉方式は、必ずしも上述したラックアンドピニオン方式である必要はなく、上記以外の任意の方式(例えば、ベルト式、スクリュー式、リニアモータ式など)でもよい。
【0024】
図3は、電気式ドア装置2の制御系の概略構成を示すブロック図である。電気式ドア装置2の制御系は、例えば、図3に示すように、制御器15と、電源部16と、モータモニタ部17と、振動センサ部30を備えている。
【0025】
電源部16は、架線から供給される交流電圧を直流電圧に変換する電源装置を内蔵する。制御器15は、ドア開閉制御部18と、指令部19と、送信部29とを有する。指令部19は、ドア開閉制御部18に対して、ドアを開閉させるための開閉指令(指令信号)を出力する。ドア開閉制御部18は、駆動指令に基づいて、ドアの開閉を制御する。また、指令部19は、PWM制御部22にどのような駆動指令が出力されているのかを異常特定装置1が把握可能な情報(例えば、駆動指令であってもよい)を異常特定装置1に出力してもよい。
【0026】
送信部29は、外部(非図示の管理装置や保守作業員が所持する携帯端末等)に情報を送信する。例えば、送信部29は、異常特定装置1によって特定された構成要素を示す情報を外部に送信(報知)する。送信部29は、異常特定装置1によって異常が判定されたことを示すアラートを出力してよい。
【0027】
ドア開閉制御部18は、例えば、電源電圧検出部21と、PWM制御部22と、モータ駆動部23と、ホール信号検出器24と、速度検出部25と、異常特定装置1とを備えている。
【0028】
電源電圧検出部21は、電源部16から出力される直流電圧の電圧レベルを検出する。PWM制御部22は、電源電圧検出部21で検出された直流電圧の電圧レベルと、指令部19からの駆動指令とに基づいて、モータ11を駆動するためのPWM信号を生成する。より詳細には、PWM制御部22は、駆動指令に応じた基準電圧指令パターンと、電源電圧検出部21で検出された直流信号の電圧レベルとに基づいて、モータ11に供給される電圧のデューティ比を制御するためのPWM信号を生成する。
【0029】
モータ駆動部23は、モータ11を駆動させる。より詳細には、モータ駆動部23は、PWM信号に基づいて、モータ11を駆動するトランジスタのオンまたはオフを制御する。例えば、モータ11が三相モータである場合、モータ駆動部23は、U相、V相及びW相の各トランジスタをオンまたはオフさせるためのゲート信号を生成する。
【0030】
モータ11の回転軸12の近傍にはホール素子26が取り付けられており、ホール素子26によってモータ11の回転数が検出される。また、モータ11の近傍には、モータモニタ部17が設けられている。モータモニタ部17は、上述したホール素子26の他に、モータ電流(モータ11に流れる電流値)を検出するためのモータ電流検出器27を有する。モータ電流検出器27は、モータ電流を示す情報を異常特定装置1に供給する。
【0031】
ホール信号検出器24は、ホール素子26の検出信号に基づいて、モータ11の回転数を検出する。モータ駆動部23は、ホール信号検出器24で検出されたモータ11の回転数に基づいて、モータ11を駆動する各トランジスタのオンまたはオフの制御タイミングを帰還制御することができる。速度検出部25は、ホール信号検出器24にて検出された信号からドアの移動速度を検出する。速度検出部25は、検出した移動速度を示す情報を異常特定装置1に供給する。
【0032】
振動センサ部30は、鉄道車両の乗降口を開閉する電気式ドア装置2の開閉移動中に発生する振動を示す振動情報を生成する。振動センサ部30は、生成した振動情報を異常特定装置1に供給する。振動センサ部30は、電気式ドア装置2における振動を検出することができる位置に設けられていればよい。振動センサ部30は、振動を検出するセンサに加え、電気式ドア装置2の開閉移動中に発生する振動として音圧を検出する音圧センサを備えてよい。振動センサ部30は、電気式ドア装置2の開閉移動中に発生する振動と、電気式ドア装置2の開閉移動中に発生する音圧との双方を検出してよい。
【0033】
異常特定装置1は、鉄道車両の乗降口を開閉する電気式ドア装置2の開閉移動中に発生する振動を示す振動情報を取得し、取得された振動情報により示される振動と振動基準値とを比較することで電気式ドア装置2の異常を判定し、ドア装置の動作が開始されてから異常と判定される特定時点までの経過時間または電気式ドア装置2の開閉量を示す移動情報を取得し、電気式ドア装置2を構成する複数の構成要素の内、特定時点における電気式ドア装置2の動作に関連する構成要素を、移動情報を用いて特定する。
【0034】
図4は、異常特定装置1の機能的な構成の一例を示すブロック図である。異常特定装置1は、例えば、振動取得部40と、判定部42と、移動取得部44と、特定部46と、電流値取得部48と、速度値取得部50と、振動基準値データ記憶部52と、異常データ記憶部54と、を備える。振動取得部40、判定部42、移動取得部44、特定部46、電流値取得部48、および速度値取得部50といった各部は、例えばドア開閉制御部18に搭載されたCPU(Central Processing Unit)等のコンピュータがプログラムメモリに格納されたプログラムを実行することにより実現される。振動基準値データ記憶部52、および異常データ記憶部54は、例えばRAM、ROM、SSD、ハードディスク等の各種の記憶装置により実現される。
【0035】
振動取得部40は、電気式ドア装置2の開閉移動中に発生する振動を示す振動情報を取得する。判定部42は、振動取得部40により取得された振動情報により示される振動と振動基準値とを比較することで電気式ドア装置2の異常を判定する。振動基準値は、振動基準値データ記憶部52に記憶された振動基準値データにより示される。振動基準値データ記憶部52は、振動基準値を示す振動基準値データを記憶する。
【0036】
電流値取得部48は、モータ電流検出器27から電流値を取得する。判定部42は、モータ電流検出器27から取得した電流値と振動基準値データ記憶部52に記憶された電流基準値とを比較することで電気式ドア装置2の異常を判定してよい。
【0037】
速度値取得部50は、速度検出部25から速度値を取得する。移動取得部44は、速度値取得部50からの速度値に基づいて開動作によるドアの移動位置を検出する。移動取得部44は、電気式ドア装置2の動作が開始されてから判定部42により異常と判定される特定時点までの経過時間または電気式ドア装置2の開閉量を示す移動情報を取得する。
【0038】
特定部46は、電気式ドア装置2を構成する複数の構成要素の内、特定時点における電気式ドア装置2の動作に関連する構成要素を、移動情報を用いて特定する。電気式ドア装置2を構成する複数の構成要素は、上述した電気式ドア装置2に含まれる各部を含み、例えば、ガイドレール4、戸車6、モータ11、および施錠部20であるが、これに限定されない。特定部46は、例えば振動情報と、特定時点または移動位置と、特定した構成要素とを対応付けた異常データを異常データ記憶部54に記憶する。特定部46は、異常データを処理結果として、不図示の管理装置または保守作業員が所持する携帯端末等の外部装置に送信してよい。
【0039】
図5は、ドア開閉制御部18における処理手順の一例を示すフローチャートである。ドア開閉制御部18は、指令部19から開閉指令を入力する(ステップS100)。次にドア開閉制御部18は、モータ駆動部23によりモータ11を駆動させることで電気式ドア装置2の動作を開閉開始させる(ステップS102)。次に異常特定装置1は、振動センサ部30から取得した振動情報、および速度検出部25により検出した速度値から移動位置(移動情報)を収集する(ステップS104)。次に異常特定装置1の判定部42は、振動情報により示される振動と振動基準値とを比較することで電気式ドア装置2の異常があるか否かを判定する(ステップS106)。判定部42は、電気式ドア装置2の異常があると判定しない場合(ステップS106:NO)、本フローチャートの処理を終了する。判定部42は、電気式ドア装置2の異常があると判定した場合(ステップS106:YES)、特定部46により異常を判定した特定時間の移動情報を用いて電気式ドア装置2の構成要素を特定する(ステップS108)。次に特定部46は、異常データを異常データ記憶部54に記録する(ステップS110)。
【0040】
図6は、ドアが全閉位置(P0)から全開位置(P3)まで移動する間における、ドアの移動位置(ストローク)、振動、音圧、および電流値と、時間との関係を示した図である。図6の横軸は、時間であり、縦軸はドア位置である。位置P0は、全閉位置である。位置P3は、全開位置である。なお、図6は、説明の便宜上、ドア位置と、振動情報と、音圧情報と、電流値を含むが、縦軸は位置情報を表し、振動情報と、音圧情報と、電流値との大小関係を表すものではない。図7から図12も同様である。
【0041】
位置P0~位置P1、および時刻t0~t1の範囲は、開動作におけるドアの移動速度が徐々に加速して一定となる加速域である。位置P1~位置P2、および時刻t1~t2の範囲は、開動作におけるドアの移動速度が一定の高速となる高速域である。位置P2~位置P3、および時刻t2~t3の範囲は、開動作におけるドアの移動速度が徐々に減速して停止する減速域である。時刻t3~t4の範囲は、ドアが全開で停止している期間である。位置P3~位置P2、および時刻t4~t5の範囲は、閉動作におけるドアの移動速度が徐々に加速して一定となる加速域である。位置P2~位置P1、および時刻t5~t6の範囲は、閉動作におけるドアの移動速度が一定の高速となる高速域である。位置P1~位置P0、および時刻t6~t7の範囲は、閉動作におけるドアの移動速度が徐々に減速して停止する減速域である。加速域、高速域、減速域は、開閉指令に基づくものである。電気式ドア装置2に異常が無い場合、振動、音圧、および電流値は、ドアの位置の変化および時刻の変化に対して図4に示すように変化する。なお、図6から図12には、開動作時の時間に対するドア位置の動作量と閉動作時の時間に対するドア位置の動作量とは対称となっているが、これに限定されず、開動作時の時間に対するドア位置の動作量と閉動作時の時間に対するドア位置の動作量とは非対称になっていてよい。例えば、開動作時において高速域が開始するドア位置と閉動作時において高速域が終了するドア位置とは異なっていてよく、開動作時において減速域が開始するドア位置と閉動作時において加速域が終了するドア位置とは異なっていてよい。
【0042】
図7は、施錠部20に動作不良が発生している場合における、ドアの移動位置(ストローク)、振動、音圧、および電流値と、時間との関係を示した図である。施錠部20の動作不良とは、例えば、回転部分などの可動部分における動作の負荷が増大し、その滑らかな動きが妨げられた状態となることが挙げられる。例えば、動作不良の原因としては、施錠部20における錆の発生、埃や油分の付着等が挙げられる。ドアリーフ3R、3Lが開き始めて施錠部20からロックピン22R、22Lが外れることにより本来(正常)であれば振動が大きくなるが(図6を参照)、図7中のAのように、施錠部20の動作不良が発生している場合には振動が小さくなる。したがって、異常特定装置1は、振動取得部40によりモータ11が駆動しているときの電気式ドア装置2の振動を示す振動情報を取得し、特定部46により、開移動時(加速域)に取得した移動情報により示される経過時間または移動量が、施錠部20における解錠が行われてからドアリーフ3R、3Lの開移動が開始するまでの経過時間または移動量以下の値を示す場合、電気式ドア装置2の動作に関連する構成要素として施錠部20を特定することができる。施錠部20における解錠が行われてからドアリーフ3R、3Lの開移動が開始するまでの経過時間または移動量以下の経過時間または移動量とは、例えば加速域に含まれる経過時間または移動量である。
【0043】
施錠部20の動作不良が発生している場合には、図7中のBに示すように、施錠部20とロックピン22R、22Lとの摩擦により音圧が高くなる。したがって、異常特定装置1は、振動取得部40によりモータ11が駆動しているときの電気式ドア装置2の音圧を示す振動情報を取得し、特定部46により、開移動時に取得した移動情報により示される経過時間または移動量が、施錠部20における解錠が行われてからドアリーフ3R、3Lの開移動が開始するまでの経過時間または移動量以下の値を示す場合、電気式ドア装置2の動作に関連する構成要素として施錠部20を特定することができる。
【0044】
図8は、施錠部20に動作不良が発生している場合における、ドアの移動位置(ストローク)、振動、音圧、および電流値と、時間との関係を示した図である。ドアリーフ3R、3Lが減速域の施錠位置に移動すると本来であればロックピン22R、22Lが施錠部20に係り合うために異常振動が発生しないが(図6を参照)、施錠部20の動作不良が発生している場合には図8中のCのように施錠位置で異常振動が発生する。したがって、異常特定装置1は、振動取得部40によりモータ11が駆動しているときの電気式ドア装置2の振動を示す振動情報を取得し、特定部46により閉移動時に取得した移動情報により示される経過時間または移動量が、ドアリーフ3R、3Lが開動作を開始してから全閉位置で停止するまでの経過時間または移動量以上の値を示す場合、電気式ドア装置2の動作に関連する構成要素として施錠部20を特定することができる。ドアリーフ3R、3Lが開動作を開始してから全閉位置で停止するまでの経過時間または移動量以上の経過時間または移動量とは、例えば減速域に含まれる経過時間または移動量である。
【0045】
施錠部20の動作不良が発生している場合には、図8中のDに示すように、施錠部20とロックピン22R、22Lとの摩擦により音圧が高くなる。したがって、異常特定装置1は、振動取得部40によりモータ11が駆動しているときの電気式ドア装置2の音圧を示す振動情報を取得し、特定部46により、閉移動時に取得した移動情報により示される経過時間または移動量が、ドアリーフ3R、3Lが開動作を開始してから全閉位置で停止するまでの経過時間または移動量以上の値を示す場合、電気式ドア装置2の動作に関連する構成要素として施錠部20を特定することができる。
【0046】
図9は、ガイドレール4の異常が発生している場合における、ドアの移動位置(ストローク)、振動、音圧、および電流値と、時間との関係を示した図である。高速域でドアリーフ3R、3Lを移動させているときには本来であれば振動は小さくなるが(図6を参照)、ガイドレール4に異常がある場合には、図8中のEおよびE’のように、ガイドレール4の異常箇所において一時的に振動が大きくなる。したがって、異常特定装置1は、ガイドレール4の異常箇所において一時的に振動が大きくなる時点を、特定時点として判定することができる。異常特定装置1は、ドアリーフ3R、3Lが一定速度で開移動する期間(高速域)内の特定時点における移動情報から算出されるドア位置と、ドアリーフ3R、3Lが一定速度で閉移動する期間(高速域)内の特定時点における移動情報から算出されるドア位置とが一致する場合、電気式ドア装置2の動作に関連する構成要素としてガイドレール4を特定する。
【0047】
高速域でドアリーフ3R、3Lを移動させているときには本来であれば音圧は小さくなるが(図6を参照)、ガイドレール4に異常が発生している場合には、図9中のFおよびF’に示すように一時的に音圧が高くなる。したがって、異常特定装置1は、ガイドレール4の異常箇所において一時的に音圧が大きくなる時点を、特定時点として判定することができる。異常特定装置1は、ドアリーフ3R、3Lが一定速度で開移動する期間(高速域)内の特定時点における移動情報から算出されるドア位置と、ドアリーフ3R、3Lが一定速度で閉移動する期間(高速域)内の特定時点における移動情報から算出されるドア位置とが一致する場合、電気式ドア装置2の動作に関連する構成要素としてガイドレール4を特定する。
【0048】
図10は、モータ11の異常が発生している場合における、ドアの移動位置(ストローク)、振動、音圧、および電流値と、時間との関係を示した図である。モータ11に異常がある場合、図6に示した電流値と比較して、図10中のGに示すように、全域においてモータ11に供給される電流値が増加する。また、モータ11に異常がある場合、図6に示した振動情報と図10に示した振動情報との比較によって異常は判定されない。したがって、判定部42は、モータ電流検出器27から供給された電流値と電流基準値とを比較することで電気式ドア装置2の異常を判定し、特定部46は、振動情報により異常が判定されず、且つ、電流値により異常が判定された場合、電気式ドア装置2の動作に関連する構成要素としてモータ11を特定する。電流基準値は、例えば、図6における電流値である。具体的に、電流基準値はモータ11に異常が無い図6における高速域における電流振幅値に設定し、判定部42は、モータ電流検出器27から供給された高速域における電流振幅値と図6における高速域における電流振幅値とを比較することで異常を判定することができる。なお、判定部42は、モータ電流検出器27から供給された電流値と電流基準値とを比較することで電気式ドア装置2の異常を判定し、特定部46は、振動情報により異常が判定されず、且つ、電流値により異常が判定された場合、異常の原因として車体とドアリーフ3R、3Lとの擦れを特定してよい。
【0049】
図11は、モータ11の異常が発生している場合における、ドアの移動位置(ストローク)、振動、音圧、および電流値と、時間との関係を示した図である。モータ11に異常がある場合、図6に示した電流値と比較して、図11中のHに示すように、全域において音圧が高くなる。したがって、判定部42は、振動センサ部30から供給された音圧と音圧基準値とを比較することで電気式ドア装置2の異常を判定し、特定部46は、振動情報により異常が判定されず、音圧により異常が判定された場合、電気式ドア装置2の動作に関連する構成要素としてモータ11を特定する。音圧基準値は、例えば、図6における高速域における音圧を設定してよい。判定部42は、振動センサ部30から供給された高速域における音圧と音圧基準値とを比較することで異常を判定することができる。判定部42は、開動作時の高速域に取得した音圧と音圧基準値とを比較した結果、および閉動作時の高速域に取得した音圧と音圧基準値とを比較した結果との少なくとも一方に基づいて異常を判定してよい。なお、判定部42は、振動センサ部30から供給された音圧と音圧基準値とを比較することで電気式ドア装置2の異常を判定し、特定部46は、音圧により異常が判定された場合、異常の原因としてドアリーフ3R、3Lと車体との擦れを特定してよい。
【0050】
図12は、戸車6の異常が発生している場合における、ドアの移動位置(ストローク)、振動、音圧、および電流値と、時間との関係を示した図である。戸車6に異常がある場合、図6に示した電流値と比較して、図12中のIに示すように、全域において一定間隔ごとに異常振動が発生する。したがって、判定部42は、振動センサ部30から供給された音圧の変化と音圧基準値とを比較することで電気式ドア装置2の異常を判定し、特定部46は、音圧により異常が判定された場合、電気式ドア装置2の動作に関連する構成要素として戸車6を特定する。音圧基準値は、例えば、図6における高速域における音圧の変化を設定してよい。判定部42は、振動センサ部30から供給された高速域における音圧の変化と音圧基準値とを比較することで異常を判定することができる。
【0051】
図13は、特定部46における処理手順の一例を示すフローチャートである。特定部46は、上述したステップS106において判定部42により異常が判定された後に本フローチャートの処理を開始する。特定部46は、判定部42により異常と判定される特定時点までの経過時間または電気式ドア装置2の開閉量を示す移動情報により、特定時点が開動作の加速域であるか否かを判定する(ステップS120)。特定部46は、特定時点が開動作の加速域である場合(ステップS120:YES)、施錠部20を特定する(ステップS122)。特定部46は、移動情報により、特定時点が閉動作の減速域であるか否かを判定する(ステップS124)。特定部46は、特定時点が開動作の加速域である場合(ステップS124:YES)、施錠部20を特定する(ステップS126)。
【0052】
特定部46は、移動情報により、特定時点が開動作および閉動作の高速域であるか否かを判定する(ステップS128)。特定部46は、特定時点が開動作および閉動作の高速域である場合(ステップS128:YES)、開動作中の特定時点における移動情報から算出されるドア位置と、閉動作中の特定時点における移動情報から算出されるドア位置とが一致するか否かを判定する(ステップS130)。特定部46は、ドア位置が一致する場合(ステップS130:YES)、ガイドレール4を特定する(ステップS126)。
【0053】
特定部46は、振動情報に異常が無いと判定され、電気式ドア装置2が動作する全域で電流値または音圧に異常が有ると判定されたか否かを判定した場合(ステップS134:YES)、モータ11を特定する(ステップS136)。特定部46は、電気式ドア装置2が動作する全域において一定間隔で異常振動が発生すると判定された場合(ステップS138:YES)、戸車6を特定する(ステップS140)。
【0054】
以上説明したように、第1の実施の形態の異常特定装置1によれば、鉄道車両の乗降口を開閉する電気式ドア装置2(ドア装置)の開閉移動中に発生する振動を示す振動情報を取得する振動取得部40と、取得された振動情報により示される振動と振動基準値とを比較することで電気式ドア装置2の異常を判定する判定部42と、電気式ドア装置2の動作が開始されてから判定部42により異常と判定される特定時点までの経過時間または電気式ドア装置2の開閉量を示す移動情報を取得する移動取得部44と、電気式ドア装置2を構成する複数の構成要素の内、特定時点における電気式ドア装置2の動作に関連する構成要素を、移動情報を用いて特定する特定部46と、を備える、異常特定装置を実現することができる。第1の実施の形態の異常特定装置1によれば、鉄道車両の乗降口を開閉する電気式ドア装置2の開閉移動中に発生する振動を示す振動情報、および電気式ドア装置2の動作が開始されてからの経過時間または電気式ドア装置2の開閉量を示す移動情報を取得し(例えばステップS104)、振動情報により示される振動と振動基準値とを比較することで電気式ドア装置2の異常を判定し(例えばステップS106)、電気式ドア装置2の動作が開始されてから異常と判定される特定時点までの経過時間または電気式ドア装置2の開閉量を用いて、電気式ドア装置2を構成する複数の構成要素の内、特定時点における電気式ドア装置2の動作に関連する構成要素を特定する(例えばステップS108)、異常特定方法を実現することができる。第1の実施の形態の異常特定装置1によれば、鉄道車両の乗降口を開閉するドアを開閉制御する電気式ドア装置2のコンピュータ(例えばドア開閉制御部18)に、電気式ドア装置2に開閉指令を出力する手順(例えばステップS100)と、電気式ドア装置2の開閉移動中に発生する振動を示す振動情報、および電気式ドア装置2の動作が開始されてからの経過時間または電気式ドア装置2の開閉量を示す移動情報を取得する手順(例えばステップS102)と、振動情報により示される振動と振動基準値とを比較することで電気式ドア装置2の異常を判定する手順(例えばステップS106)と、電気式ドア装置2の動作が開始されてから異常と判定される特定時点までの経過時間または電気式ドア装置2の開閉量を用いて、電気式ドア装置2を構成する複数の構成要素の内、特定時点における電気式ドア装置2の動作に関連する構成要素を特定する手順(例えばステップS108)と、を実行させるためのプログラムを実現することができる。異常特定装置1によれば、時間領域で取得した振動を周波数領域への変換を行う必要なく、電気式ドア装置2を構成する複数の構成要素の内のいずれの構成要素が電気式ドア装置2の異常の原因であるかを特定することができる。この結果、異常特定装置1によれば、故障原因を特定する処理の負荷を軽減することができる。
【0055】
第1の実施形態の異常特定装置1によれば、複数の構成要素が、ドアリーフ3R、3Lに動力供給して開閉移動させるモータ11と、閉移動時にドアリーフ3R、3Lが全閉位置に到達した後にモータ11から動力供給を受けてドアリーフ3R、3Lを施錠する施錠部20と、を含み、振動取得部40により、モータ11が駆動しているときの電気式ドア装置2の振動を示す振動情報を取得し、特定部46により、閉移動時に取得した移動情報により示される経過時間または移動量が、ドアリーフ3R、3Lが開動作を開始してから全閉位置で停止するまでの経過時間または移動量以上の値を示す場合、電気式ドア装置2の動作に関連する構成要素として施錠部20を特定する、異常特定装置を実現することができる。この異常特定装置1によれば、故障原因として施錠部20を特定するための処理の負荷を軽減することができる。
【0056】
第1の実施形態の異常特定装置1によれば、複数の構成要素が、ドアリーフ3R、3Lに動力供給して開閉移動させるモータ11と、開移動を開始する前にモータ11から動力供給を受けてドアリーフ3R、3Lを解錠する施錠部20と、を含み、振動取得部40により、モータ11が駆動しているときの電気式ドア装置2の振動を示す振動情報を取得し、特定部46により、開移動時に取得した移動情報により示される経過時間または移動量が、施錠部20における解錠が行われてからドアリーフ3R、3Lの開移動が開始するまでの経過時間または移動量以下の値を示す場合、電気式ドア装置2の動作に関連する構成要素として施錠部20を特定する、異常特定装置を実現することができる。この異常特定装置1によれば、故障原因として施錠部20を特定するための処理の負荷を軽減することができる。
【0057】
第1の実施形態の異常特定装置1によれば、複数の構成要素が、ドアリーフ3R、3Lに固定された戸車6と、戸車6が接触しながら転動するガイドレール4とを含み、特定部46により、ドアリーフ3R、3Lが一定速度で開移動する期間内の特定時点における移動情報から算出されるドア位置と、ドアリーフ3R、3Lが一定速度で閉移動する期間内の特定時点における移動情報から算出されるドア位置とが一致する場合、電気式ドア装置2の動作に関連する構成要素としてガイドレール4を特定する、異常特定装置を実現することができる。この異常特定装置1によれば、故障原因としてガイドレール4を特定するための処理の負荷を軽減することができる。
【0058】
第1の実施形態の異常特定装置1によれば、電気式ドア装置2が、複数の構成要素として、ドアリーフ3R、3Lを開閉移動させる駆動力を発生するモータ11を備え、モータ11に供給される電流値を示す電流値情報を取得する電流値取得部48を備え、判定部42により、更に、取得された電流値情報により示される電流値と電流基準値とを比較することで電気式ドア装置2の異常を判定し、特定部46により、振動情報により異常が判定されず、且つ、電流値情報により異常が判定された場合、電気式ドア装置2の動作に関連する構成要素としてモータ11を特定する、異常特定装置を実現することができる。この異常特定装置1によれば、故障原因としてモータ11を特定するための処理の負荷を軽減することができる。
【0059】
第1の実施形態の異常特定装置1によれば、電気式ドア装置2が、ドアリーフ3R、3Lの開閉移動させる駆動力を発生するモータ11を備え、電気式ドア装置2の開閉移動中に発生する音圧を示す音圧情報を取得する音圧取得部(振動取得部40)を備え、特定部46により、振動情報により異常が判定されずに、開閉移動を開始してから停止するまでの期間において音圧が音圧基準値を超えている場合、電気式ドア装置2の動作に関連する構成要素としてモータ11を特定する、異常特定装置を実現することができる。この異常特定装置1によれば、故障原因としてモータ11を特定するための処理の負荷を軽減することができる。
【0060】
以下、第2の実施の形態について説明する。第2の実施の形態におけるドア装置は、空圧式ドア装置2Aであり、第2の実施の形態の異常特定装置1Aは、空圧式ドア装置2Aに備えられる。なお、上述した第1の実施の形態と同じ機能を持つ箇所については同一符号を付することで説明を省略し、第1の実施形態と異なる点を中心に説明する。
【0061】
図14は、閉状態における空圧式ドア装置2Aの一例を示す概略図である。図15は、開状態における空圧式ドア装置2Aの一例を示す概略図である。図16は、シリンダ部の一例を示す断面図である。空圧式ドア装置2Aは、例えば、連結金具102と、上ラック104と、連結金具106と、下ラック108と、シリンダ部110と、クッションシリンダ112と、ピストン114と、ピストン軸115と、閉クッション絞り116と、開クッション絞り118と、閉速度絞り120と、逆止弁122,124とを備える。連結金具102は、扉連結板5a(ドアハンガー)を介して戸吊装置5に接続される。連結金具102には、上ラック104およびピストン軸115が接続される。連結金具106は、扉連結板5aを介して戸吊装置5に接続される。連結金具106には、下ラック108が接続される。シリンダ部110は、ピストン114が、クッションシリンダ112内に形成された圧力室内を左右方向(X方向)に移動するように配置している。ピストン114は、ピストン軸115と接続され、クッションシリンダ112に内蔵される。ピストン軸115は、連結金具102を介して上ラック104に接続される。
【0062】
空圧式ドア装置2Aは、さらに、例えば、引分機構130と、ピニオン132と、ドアスイッチ134と、スイッチ押棒136とを備える。ピニオン132は、上ラック104および下ラック108から駆動力が伝達される。
【0063】
空圧式ドア装置2Aは、さらに、例えば、チリコシ140と、切換弁部150と、手動押ボタン160とを備える。切換弁部(切替弁)150は、例えば第1の弁152および第2の弁154を備える。チリコシ140と第2の弁154とは空気通路142aを介して接続され、第2の電磁弁154とシリンダ部110とは空気通路142bを介して接続される。シリンダ部110と第1の弁152とは空気通路142cを介して接続され、第1の弁152と空気消音器144は空気通路142dを介して接続される。
【0064】
図14に示すように空気通路142bからシリンダ部110に空気が供給されることでピストン114が右側に移動されると、上ラック104は右側に移動し、ピニオン132を右回転させる。ピニオン132が右回転されると下ラック108は左側に移動する。これにより空圧式ドア装置2Aは、ドアリーフ3R、3Lを閉方向に駆動させる。図15に示すように空気通路142cからシリンダ部110に空気が供給されることでピストン114が左側に移動されると、上ラック104は左側に移動し、ピニオン132を左回転させる。ピニオン132が左回転されると下ラック108は右側に移動する。これにより空圧式ドア装置2Aは、ドアリーフ3R、3Lを開方向に駆動させる。
【0065】
図14に示す空圧式ドア装置2Aの閉状態について説明する。空圧式ドア装置2Aの閉状態において、第1の弁152および第2の弁154は消磁されている。消磁状態において空気源(不図示)からの圧力空気は、チリコシ140、空気通路142a、第2の弁154、空気通路142b、空気通路142fの順で通って、逆止弁124,開クッション絞り118および開速度絞り121を経由し、シリンダ部110内の左側圧力室に供給される。右側圧力室は、空気通路142e、空気通路142c、第1の弁152、空気通路142d、排気消音器144の順で大気につながる。以上により、ピストン114は右側に押付けられ、ピストン軸115の先端に連結された連結金具102を介してドアリーフ3Rを閉位置に移動させる。連結金具102により上ラック104が連結されているため、ピストン114の動きはピニオン132を介して下ラック108に伝えられ、連結金具106を介してドアリーフ3R、3Lを閉位置に移動させる。
【0066】
図15に示す空圧式ドア装置2Aの開状態について説明する。開指令が発生すると第1の弁152および第2の弁154は励磁される。第1の弁152および第2の弁154が励磁されると、圧力空気はチリコシ140、空気通路142a、第1の弁152、空気通路142c、空気通路142eを介して逆止弁122、閉クッション絞り116、および閉速度絞り120を経由し、シリンダ部110内の右側圧力室に供給される。左側圧力室内の圧力空気は、開クッション絞り118および開速度絞り121から、空気通路142f、空気通路142b、第2の弁154、空気通路142d、および排気消音器144を経由して大気に排出される。これによりピストン114は左方向に移動を始め、ピストン軸115、および上ラック104の移動によりドアリーフ3Lは左方向に開く。これと同時に、下ラック108はピニオン132により右方向に移動し、下ラック108に直結されたドアリーフ3Rは右方向に開く。なお、空圧式ドア装置2Aは、開速度絞り121を制御することにより、シリンダ部110から排出される空気量を調整してドアリーフ3R、3Lの開速度を調整することができる。
【0067】
図16はクッション作用の説明図である。ピストン114が移動し、クッションシリンダ112の左端部がシリンダ部110の左端に当たると、クッションシリンダ112内の圧力室と開速度絞り121との間が遮断され、排気通路は開クッション絞り118のみになる。そのため、シリンダ部110の左側圧力室の圧力空気の排出量が減り、ドアリーフ3R、3Lの移動慣性力によりクッションシリンダ112内の圧力が一時的に高くなるためクッション作用が発生し、その後、ドアリーフ3R、3Lの速度が減じられて左方向へ移動し、開動作が完了する。クッション作用後におけるドアリーフ3R、3Lの開速度は、開クッション絞り118により調整することができる。
【0068】
開状態のドアリーフ3R、3Lを閉動作させるときに閉指令が発生する。空圧式ドア装置2Aは、閉指令により第1の弁152および第2の弁154を消磁させる。第1の弁152および第2の弁154を消磁させると、圧力空気は、チリコシ140、空気通路142a、第2の弁154、空気通路142b、空気通路142fの順で通って、逆止弁124、開クッション絞り118および開速度絞り121を経由し、シリンダ部110内の左側圧力室に供給される。圧力空気がシリンダ部110の左側圧力室に供給されると同時に、右側圧力室の圧力空気が大気に排出される。これによりピストン114は右方向に移動し、ドアリーフ3R、3Lは閉方向に移動する。ピストン114が移動してクッションシリンダ112の右端部がシリンダ部110の右端に当たると、クッション作用が発生し、その後、ドアリーフ3R、3Lは速度が減じられて右方向に移動し、閉動作が完了する。なお、空圧式ドア装置2Aは、閉速度絞り120を制御することにより、シリンダ部110から排出される空気量を調整してドアリーフ3R、3Lの閉速度を調整することができる。
【0069】
空圧式ドア装置2Aの点検時、調整時、または停電時において、手動押ボタン160の操作にしたがってドアリーフ3R、3Lを開閉することができる。ドアリーフ3R、3Lを開ける場合に手動押ボタン160が押し込まれると第1の弁152および第2の弁154内のプランジャが押し込まれ、第1の弁152および第2の弁154を励磁させた時と同じ状態となり、ドアリーフ3R、3Lは開く。手動押ボタン160を押し続けている間、ドアリーフ3R、3Lは開位置を保つ。手動押ボタン160を離すと、戻しバネで手動押ボタン160が復帰するためドアリーフ3R、3Lは閉じる。
【0070】
図17は、空圧式ドア装置2Aの制御系の概略構成を示すブロック図である。空圧式ドア装置2Aの制御系は、例えば、図17に示すように、制御器15Aと、電源部16Aと、切換弁部150と、振動センサ部30Aを備えている。
【0071】
電源部16Aは、架線から供給される交流電圧を直流電圧に変換する電源装置を内蔵する。制御器15Aは、ドア開閉制御部18Aと、指令部19Aと、送信部29Aとを有する。指令部19Aは、ドア開閉制御部18Aに対して、ドアを開閉させるための開閉指令(指令信号)を出力する。ドア開閉制御部18Aは、開閉指令に基づいて、ドアの開閉を制御する。
【0072】
送信部29Aは、外部(非図示の管理装置や保守作業員が所持する携帯端末等)に情報を送信する。例えば、送信部29Aは、異常特定装置1Aによって特定された構成要素を示す情報を外部に送信(報知)する。送信部29Aは、異常特定装置1Aによって異常が判定されたことを示すアラートを出力してよい。
【0073】
ドア開閉制御部18Aは、例えば、電磁弁制御部150Aと、異常特定装置1Aとを備えている。電磁弁制御部150Aは、電源部16Aから供給される電源電圧を、電磁弁制御部150Aの第1の弁152よび第1の弁152に供給することを制御する。これにより電磁弁制御部150Aは、第1の弁152および第2の弁154を励磁および消磁する。
【0074】
振動センサ部30Aは、鉄道車両の乗降口を開閉する空圧式ドア装置2Aの開閉移動中に発生する振動を示す振動情報を生成する。振動センサ部30Aは、例えば引分機構130付近に設置されるが、これに限定されない。振動センサ部30Aは、生成した振動情報を異常特定装置1Aに供給する。振動センサ部30Aは、空圧式ドア装置2Aにおける振動を検出することができる位置に設けられていればよい。振動センサ部30Aは、振動を検出するセンサに加え、空圧式ドア装置2Aの開閉移動中に発生する振動として音圧を検出する音圧センサを備えてよい。振動センサ部30Aは、空圧式ドア装置2Aの開閉移動中に発生する振動と、空圧式ドア装置2Aの開閉移動中に発生する音圧との双方を検出してよい。
【0075】
異常特定装置1は、空圧式ドア装置2Aの開閉移動中に発生する振動を示す振動情報を取得し、取得された振動情報により示される振動と振動基準値とを比較することで空圧式ドア装置2Aの異常を判定し、空圧式ドア装置2Aの動作が開始されてから異常と判定される特定時点までの経過時間または空圧式ドア装置2Aの開閉量を示す移動情報を取得し、空圧式ドア装置2Aを構成する複数の構成要素の内、特定時点における空圧式ドア装置2Aの動作に関連する構成要素を、移動情報を用いて特定する。
【0076】
図18は、異常特定装置1Aの機能的な構成の一例を示すブロック図である。異常特定装置1Aは、例えば、振動取得部40Aと、タイミング検出部40Bと、判定部42Aと、移動取得部44Aと、特定部46Aと、振動基準値データ記憶部52Aと、異常データ記憶部54Aと、を備える。振動取得部40A、タイミング検出部40B、判定部42A、移動取得部44A、および特定部46Aといった各部は、例えばドア開閉制御部18Aに搭載されたCPU等のコンピュータがプログラムメモリに格納されたプログラムを実行することにより実現される。振動基準値データ記憶部52A、および異常データ記憶部54Aは、例えばRAM、ROM、SSD、ハードディスク等の各種の記憶装置により実現される。
【0077】
振動取得部40Aは、空圧式ドア装置2Aの開閉移動中に発生する振動を示す振動情報を取得する。タイミング検出部40Bは、指令部19Aから出力された開閉指令を検出したことに応じてドアリーフ3R、3Lの動作タイミングを検出する。判定部42Aは、振動取得部40Aにより取得された振動情報により示される振動と振動基準値とを比較することで空圧式ドア装置2Aの異常を判定する。振動基準値は、振動基準値データ記憶部52Aに記憶された振動基準値データにより示される。振動基準値データ記憶部52Aは、振動基準値を示す振動基準値データを記憶する。
【0078】
移動取得部44Aは、空圧式ドア装置2Aの動作が開始されてから判定部42Aにより異常と判定される特定時点までの経過時間を示す移動情報を取得する。移動取得部44Aは、タイミング検出部40Bにより検出されたドアリーフ3R、3Lの動作タイミングから計時した時間を、経過時間として取得する。移動取得部44Aは、経過時間と、経過時間に対応したドアリーフ3R、3Lの速度からドア位置を計算してよい。
【0079】
特定部46Aは、空圧式ドア装置2Aを構成する複数の構成要素の内、特定時点における空圧式ドア装置2Aの動作に関連する構成要素を、移動情報を用いて特定する。空圧式ドア装置2Aを構成する複数の構成要素は、上述した空圧式ドア装置2Aに含まれる各部を含み、例えば、戸車6、引分機構130、シリンダ部110、切換弁部150、および排気消音器144であるが、これに限定されない。特定部46Aは、例えば振動情報と、特定時点または移動位置と、特定した構成要素とを対応付けた異常データを異常データ記憶部54Aに記憶する。特定部46Aは、異常データを処理結果として、不図示の管理装置または保守作業員が所持する携帯端末等の外部装置に送信してよい。
【0080】
空圧式ドア装置2Aのドア開閉制御部18Aは、第1の実施形態における図5に示したフローチャートにしたがって処理を行う。まず、ドア開閉制御部18Aは、指令部19Aから開閉指令を入力する(ステップS100)。次にドア開閉制御部18Aは、シリンダ部110に空気を供給および排気させることでドアリーフ3R、3Lの動作を開閉開始させる(ステップS102)。次に異常特定装置1Aは、振動センサ部30Aから取得した振動情報、および開閉指令を入力した時刻からの経過時間(移動情報)を収集する。次に異常特定装置1Aの判定部42Aは、振動情報により示される振動と振動基準値とを比較することで空圧式ドア装置2Aの異常があるか否かを判定する(ステップS106)。判定部42Aは、空圧式ドア装置2Aの異常があると判定しない場合(ステップS106:NO)、本フローチャートの処理を終了する。判定部42Aは、空圧式ドア装置2Aの異常があると判定した場合(ステップS106:YES)、特定部46Aにより異常を判定した特定時間の移動情報を用いて空圧式ドア装置2Aの構成要素を特定する(ステップS108)。次に特定部46Aは、異常データを異常データ記憶部54Aに記録する(ステップS110)。
【0081】
図19は、経過時間に対する、ドアリーフ3R、3Lの移動位置(ストローク)[mm]とシリンダ部110への供給空気圧力[Pa]と戸車6の振動情報の一例を示す図である。図20は、戸車6に異常がある場合における、経過時間に対する、ドアリーフ3R、3Lの移動位置(ストローク)[mm]とシリンダ部110への供給空気圧力[Pa]と戸車6の振動情報の一例を示す図である。図19および図20において横軸は経過時間であり、縦軸はドア位置および振動の大きさを表すドアがP0は全閉位置であり、P10は全開位置である。空圧式ドア装置2Aは、時刻t0から時刻t10の範囲において開動作を行い、時刻t10から時刻t11において停止し、時刻t11から時刻t12において閉動作を行う。シリンダ部110への供給空気圧力は全閉から全開までにおいて一定値(レベルA)である。なお、図19および図20は、説明の便宜上、シリンダ部110の供給空気圧力(レベルA)と振動情報(レベルB)とを、図中右側の縦軸で表しているが、図中右側の縦軸は振動情報を表し、供給空気圧力(レベルA)と振動情報(レベルB)との大小関係を表すものではない。図21から図28も同様である。
【0082】
戸車6に異常がない場合、図19に示すように、戸車6の動作により検出される振動はレベルBを中心に変動する。戸車6に異常がある場合、図20に示すように戸車6の動作により検出される振動はレベルBを中心に変動するが、振動振幅は図19に示した振動振幅よりも大きくなる。判定部42Aは、レベルBを中心とした振動振幅が、戸車6に異常が無い場合の振動振幅(振動基準値)を超えた場合に、異常を判定する。特定部46Aは、開動作および閉動作が行われている経過時間(t0~t10,t11~t12)において、判定部42AがレベルBを中心とした振動振幅の異常を判定している場合、異常と判定したタイミングにおける空圧式ドア装置2Aの動作に関連する構成要素として戸車6を特定することができる。
【0083】
図21は、経過時間に対する、ドアリーフ3R、3Lの移動位置(ストローク)[mm]とシリンダ部110への供給空気圧力[Pa]と引分機構130の振動情報の一例を示す図である。図22は、引分機構130に異常がある場合における、経過時間に対する、ドアリーフ3R、3Lの移動位置(ストローク)[mm]とシリンダ部110への供給空気圧力[Pa]と引分機構130の振動情報の一例を示す図である。引分機構130に異常がない場合、図21に示すように、引分機構130の動作により検出される振動はレベルCを中心に変動する。引分機構130に異常がある場合、図22に示すように引分機構130の動作により検出される振動はレベルCを中心に変動するが、振動振幅は図21に示した振動振幅よりも大きくなる。判定部42Aは、レベルCを中心とした振動振幅が、引分機構130に異常が無い場合の振動振幅(振動基準値)を超えた場合に、異常を判定する。特定部46Aは、開動作および閉動作が行われている経過時間(t0~t10,t11~t12)において、判定部42AがレベルCを中心とした振動振幅の異常を判定している場合、異常と判定したタイミングにおける空圧式ドア装置2Aの動作に関連する構成要素として引分機構130を特定することができる。
【0084】
図23は、経過時間に対する、ドアリーフ3R、3Lの移動位置(ストローク)[mm]とシリンダ部110への供給空気圧力[Pa]とシリンダ部110の振動情報の一例を示す図である。図24は、シリンダ部110に異常がある場合における、経過時間に対する、ドアリーフ3R、3Lの移動位置(ストローク)[mm]とシリンダ部110への供給空気圧力[Pa]とシリンダ部110の振動情報の一例を示す図である。シリンダ部110に異常がない場合、図23に示すように、シリンダ部110の動作により検出される振動はレベルDを中心に変動する。シリンダ部110に異常がある場合、図24に示すようにシリンダ部110の動作により検出される振動はレベルDを中心に変動するが、振動振幅は図23に示した振動振幅よりも大きくなる。判定部42Aは、レベルDを中心とした振動振幅が、シリンダ部110に異常が無い場合の振動振幅(振動基準値)を超えた場合に、異常を判定する。特定部46Aは、開動作および閉動作が行われている経過時間(t0~t10,t11~t12)において、判定部42AがレベルDを中心とした振動振幅の異常を判定している場合、異常と判定したタイミングにおける空圧式ドア装置2Aの動作に関連する構成要素としてシリンダ部110を特定することができる。
【0085】
図25は、経過時間に対する、ドアリーフ3R、3Lの移動位置(ストローク)[mm]とシリンダ部110への供給空気圧力[Pa]と切換弁部150(第1の弁152および/または第2の弁154)の振動情報の一例を示す図である。図26は、切換弁部150に異常がある場合における、経過時間に対する、ドアリーフ3R、3Lの移動位置(ストローク)[mm]とシリンダ部110への供給空気圧力[Pa]と切換弁部150の振動情報の一例を示す図である。切換弁部150に異常がない場合、図25に示すように、切換弁部150の動作により検出される振動はレベルEを中心に変動する。切換弁部150に異常がある場合、図26に示すように切換弁部150の動作により検出される振動はレベルEを中心に変動するが、振動振幅は図25に示した振動振幅よりも大きくなる。判定部42Aは、レベルEを中心とした振動振幅が、切換弁部150に異常が無い場合の振動振幅(振動基準値)を超えた場合に、異常を判定する。特定部46Aは、開動作および閉動作が行われている経過時間(t0~t10,t11~t12)において、判定部42AがレベルEを中心とした振動振幅の異常を判定している場合、異常と判定したタイミングにおける空圧式ドア装置2Aの動作に関連する構成要素として切換弁部150を特定することができる。
【0086】
図27は、経過時間に対する、ドアリーフ3R、3Lの移動位置(ストローク)[mm]とシリンダ部110への供給空気圧力[Pa]と排気消音器144の振動情報の一例を示す図である。図28は、排気消音器144に異常がある場合における、経過時間に対する、ドアリーフ3R、3Lの移動位置(ストローク)[mm]とシリンダ部110への供給空気圧力[Pa]と排気消音器144の振動情報の一例を示す図である。排気消音器144に異常がない場合、図27に示すように、排気消音器144の動作により検出される振動はレベルFを中心に変動する。排気消音器144に異常がある場合、図28に示すように排気消音器144の動作により検出される振動はレベルFを中心に変動するが、振動振幅は図27に示した振動振幅よりも大きくなる。判定部42Aは、レベルFを中心とした振動振幅が、排気消音器144に異常が無い場合の振動振幅(振動基準値)を超えた場合に、異常を判定する。特定部46Aは、開動作および閉動作が行われている経過時間(t0~t10,t11~t12)において、判定部42AがレベルFを中心とした振動振幅の異常を判定している場合、異常と判定したタイミングにおける空圧式ドア装置2Aの動作に関連する構成要素として排気消音器144を特定することができる。
【0087】
以上説明したように、第2の実施形態の異常特定装置1Aによれば、空圧式ドア装置2Aは、複数の構成要素として、ピストン114が圧力室内を移動するように配置されたシリンダ部110と、圧力室に空気を供給または排気することでピストン114を移動させる弁(切換弁部150、第1の弁152、第2の弁154)と、ピストン114の移動力を空圧式ドア装置2Aに伝達する伝達部(引分機構130、上ラック104、下ラック108)とを備え、特定部46Aにより、判定部42Aが異常と判定したタイミングにおける空圧式ドア装置2Aの動作に関連する構成要素を、移動情報を用いて特定する、異常特定装置を実現することができる。異常特定装置1Aによれば、時間領域で取得した振動を周波数領域への変換を行う必要なく、空圧式ドア装置2Aを構成する複数の構成要素の内のいずれの構成要素が空圧式ドア装置2Aの異常の原因であるかを特定することができる。この結果、異常特定装置1Aによれば、故障原因を特定する処理の負荷を軽減することができる。
【0088】
異常特定装置1Aによれば、図19および図20を参照して説明したように、空圧式ドア装置2Aは、複数の構成要素として戸車6を備え、特定部46Aにより、異常と判定したタイミングにおける空圧式ドア装置2Aの動作に関連する構成要素としての戸車6を、移動情報(例えば経過時間t10~t10,t11~t12)を用いて特定することができる。
【0089】
異常特定装置1Aによれば、図21および図22を参照して説明したように、空圧式ドア装置2Aは、複数の構成要素として引分機構130を備え、特定部46Aにより、異常と判定したタイミングにおける空圧式ドア装置2Aの動作に関連する構成要素としての引分機構130を、移動情報(例えば経過時間t10~t10,t11~t12)を用いて特定することができる。
【0090】
異常特定装置1Aによれば、図23および図24を参照して説明したように、空圧式ドア装置2Aは、複数の構成要素としてシリンダ部110を備え、特定部46Aにより、異常と判定したタイミングにおける空圧式ドア装置2Aの動作に関連する構成要素としてのシリンダ部110を、移動情報(例えば経過時間t10~t10,t11~t12)を用いて特定することができる。
【0091】
異常特定装置1Aによれば、図25および図26を参照して説明したように、空圧式ドア装置2Aは、複数の構成要素として第1の弁152および第2の弁154引分機構130を備え、特定部46Aにより、異常と判定したタイミングにおける空圧式ドア装置2Aの動作に関連する構成要素としての第1の弁152および第2の弁154を、移動情報(例えば経過時間t10~t10,t11~t12)を用いて特定することができる。
【0092】
異常特定装置1Aによれば、図27および図28を参照して説明したように、空圧式ドア装置2Aは、複数の構成要素として排気消音器144を備え、特定部46Aにより、異常と判定したタイミングにおける空圧式ドア装置2Aの動作に関連する構成要素としての排気消音器144を、移動情報(例えば経過時間t10~t10,t11~t12)を用いて特定することができる。
【0093】
以下、第3の実施の形態について説明する。第3の実施の形態における異常特定装置は、ドア装置の傾斜を示す傾斜情報を取得する傾斜取得部を備え、傾斜情報により示される傾斜と傾斜基準値とを比較し、振動情報および傾斜情報が共に異常を示す場合、ドア装置は異常ではないと判定する点で、上述した第1の実施形態および第2の実施形態とは相違する。以下、相違点を中心に説明する。なお、上述した第1の実施形態および第2の実施形態と同じ機能を持つ箇所については同一符号を付することで説明を省略し、第1の実施形態と異なる点を中心に説明する。第3の実施形態は電気式ドア装置2および空圧式ドア装置2Aの双方に適用可能であるが、第3の実施形態は電気式ドア装置2に適用した場合について説明する。
【0094】
図29は、傾斜が発生する一例を示す図であり、図30は、傾斜が発生する他の一例を示す図である。例えば図29に示すように、満員列車において人がドアリーフ3R、3Lの厚さ方向に加圧した場合、電気式ドア装置2のドアリーフ3R、3Lにおいて傾斜が発生する。また、図30に示すようにカーブ路で停車することによって車両が傾いている場合、電気式ドア装置2のドアリーフ3R、3Lにおいて傾斜が発生する。
【0095】
図31は、ドアリーフ3R、3Lに傾斜が発生していない状態を示す側面図である。図32は、ドアリーフ3R、3Lに人による外力が加えられた状態を示す側面図である。図33は、車体が傾いているときのドアリーフ3R、3Lの状態を示す側面図である。ドアリーフ3R、3Lは、戸吊装置5に含まれるドアハンガー5aにより支持されている。ガイドレール4の上面には、電気式ドア装置2の傾斜を示す傾斜情報を生成する傾斜センサ部60が設けられる。ガイドレール4の上方には、モータ11等を収容したドアオペレータ2aが設けられる。ドアオペレータ2aは、例えば、ドアリーフ3R、3Lに傾斜が発生していない状態において+Y方向に対して傾斜して設けられる。
【0096】
ドアリーフ3R、3Lに傾斜が発生していない状態において、ドアリーフ3R、3Lは、図31に示すように、鉛直方向(Y方向)に沿って支持される。ドアリーフ3R、3Lに人による外力が加えられた状態において、ドアリーフ3R、3Lは、図32に示すように、-Z側から+Z側に加圧されることによって、戸吊装置5に対して+Z側にローリングする。車体が傾いている状態において、図33に示すように、ドアオペレータ2a、戸吊装置5、ドアハンガー5a、およびガイドレール4は傾斜し、ドアリーフ3R、3Lには、ドアリーフ3R、3Lの自重により戸吊装置5に対して-Z側にローリングする。
【0097】
図34は、異常特定装置1Bの機能的な構成の一例を示すブロック図である。異常特定装置1Bは、例えば、振動取得部40と、傾斜取得部62と、車両位置取得部64と、判定部42Bと、移動取得部44Bと、特定部46Bと、電流値取得部48と、速度値取得部50と、振動基準値データ記憶部52と、異常データ記憶部54と、を備える。振動取得部40、傾斜取得部62、車両位置取得部64、判定部42B、移動取得部44B、特定部46B、電流値取得部48、および速度値取得部50といった各部は、例えばドア開閉制御部18に搭載されたCPU(Central Processing Unit)等のコンピュータがプログラムメモリに格納されたプログラムを実行することにより実現される。振動基準値データ記憶部52、および異常データ記憶部54は、例えばRAM、ROM、SSD、ハードディスク等の各種の記憶装置により実現される。
【0098】
振動取得部40は、電気式ドア装置2の開閉移動中に発生する振動を示す振動情報を取得する。傾斜取得部62は、傾斜センサ部60から傾斜情報を取得する。車両位置取得部64は、車両位置情報を取得する。車両位置情報は、電気式ドア装置2を搭載した鉄道車両の位置を示す情報であり、例えば、緯度および経度により鉄道車両の位置を特定するための情報である。車両位置情報は、例えば鉄道車両に搭載されたGPS(Global Positioning System)装置により導出される。
【0099】
判定部42Bは、振動取得部40により取得された振動情報により示される振動と振動基準値とを比較することで電気式ドア装置2の異常を判定する。振動基準値は、振動基準値データ記憶部52に記憶された振動基準値データにより示される。振動基準値データ記憶部52は、振動基準値を示す振動基準値データを記憶する。電流値取得部48は、モータ電流検出器27から電流値を取得する。判定部42Bは、モータ電流検出器27から取得した電流値と振動基準値データ記憶部52に記憶された電流基準値とを比較することで電気式ドア装置2の異常を判定してよい。
【0100】
判定部42Bは、更に、傾斜取得部62により取得された傾斜情報により示される傾斜と傾斜基準値とを比較し、振動情報および傾斜情報が共に異常を示す場合、電気式ドア装置2は異常ではないと判定する。傾斜基準値は、振動基準値データ記憶部52Bに記憶された傾斜基準値データが示す傾斜の基準値である。
【0101】
判定部42Bは、車両位置取得部64により取得された車両位置に対応した傾斜情報を取得してよい。車両位置に対応した傾斜情報は、例えば、振動基準値データ記憶部52Bに記憶されている。判定部42Bは、車両位置に対応した傾斜情報により示される傾斜と傾斜基準値とを比較し、振動情報および傾斜情報が共に異常を示す場合、電気式ドア装置2は異常ではないと判定する。
【0102】
電流値取得部48は、モータ電流検出器27から電流値を取得する。速度値取得部50は、速度検出部25から速度値を取得する。移動取得部44Bは、速度値取得部50からの速度値に基づいて開動作によるドアの移動位置を検出する。移動取得部44Bは、電気式ドア装置2の動作が開始されてから判定部42Bにより異常と判定される特定時点までの経過時間または電気式ドア装置2の開閉量を示す移動情報を取得する。
【0103】
特定部46Bは、電気式ドア装置2を構成する複数の構成要素の内、特定時点における電気式ドア装置2の動作に関連する構成要素を、移動情報を用いて特定する。特定部46Bは、例えば振動情報と、特定時点または移動位置と、特定した構成要素とを対応付けた異常データを異常データ記憶部54に記憶する。特定部46Bは、異常データを処理結果として、不図示の管理装置または保守作業員が所持する携帯端末等の外部装置に送信してよい。
【0104】
図35は、異常特定装置1Bを含むドア開閉制御部18における処理手順の一例を示すフローチャートである。ドア開閉制御部18は、指令部19から開閉指令を入力する(ステップS200)。次に異常特定装置1Bは、車両位置情報を取得する(ステップS202)。次にドア開閉制御部18は、モータ駆動部23によりモータ11を駆動させることで電気式ドア装置2の動作を開閉開始させる(ステップS204)。次に異常特定装置1Bは、傾斜センサ部60から取得した傾斜情報、車両位置情報に対応した傾斜情報、振動センサ部30から取得した振動情報、および速度検出部25により検出した速度値から移動位置(移動情報)を収集する(ステップS206)。次に判定部42Bは、振動情報により示される振動と振動基準値とを比較することで電気式ドア装置2の異常があるか否かを判定する(ステップS208)。判定部42Bは、電気式ドア装置2の異常があると判定しない場合(ステップS208:NO)、本フローチャートの処理を終了する。
【0105】
判定部42Bは、電気式ドア装置2の異常があると判定した場合(ステップS208:YES)、傾斜情報により鉄道車両の傾斜が検出されたか否かを判定する(ステップS210)。判定部42Bは、傾斜センサ部60から取得した傾斜情報により示された傾斜が所定の傾斜を超えている場合、鉄道車両の傾斜を検出する。判定部42Bは、鉄道車両の傾斜を検出しない場合(ステップS210:NO)、特定部46Bにより異常を判定した特定時間の移動情報を用いて電気式ドア装置2の構成要素を特定する(ステップS212)。次に特定部46Bは、異常データを異常データ記憶部54に記録する(ステップS214)。
【0106】
判定部42Bは、鉄道車両の傾斜を検出した場合(ステップS210:YES)、車両位置情基づく傾斜により鉄道車両の傾斜が発生していたか否かを判定する(ステップS216)。判定部42Bは、傾斜センサ部60から取得した傾斜情報により示された傾斜と振動基準値データ記憶部52Bから車両位置に基づく傾斜とが一致するまたは所定範囲の誤差内である場合、車両位置により傾斜が発生していたと判定する。判定部42Bは、車両位置により傾斜が発生していたと判定した場合(ステップS216:YES)、電気式ドア装置2の異常でないと判定し、振動異常および車両の傾きの異常を記録する(ステップS218)。
【0107】
判定部42Bは、車両位置により傾斜が発生していないと判定した場合(ステップS216:NO)、鉄道車両の傾斜の検出回数が閾値以上であるか否かを判定する(ステップS220)。例えば満員電車によりドアリーフ3R、3Lが加圧される場合には、閾値を超える傾斜が検出されることがあるためである。判定部42Bは、鉄道車両の傾斜の検出回数が閾値以上である場合(ステップS220:YES)、電気式ドア装置2の異常でないと判定し、振動異常および加圧による傾斜の異常を記録する(ステップS222)。鉄道車両の傾斜の検出回数が閾値以上ではない場合(ステップS220:NO)、特定部46Bは、異常を判定した特定時間の移動情報を用いて電気式ドア装置2の構成要素を特定し(ステップS212)、異常データを異常データ記憶部54に記録する(ステップS214)。
【0108】
ステップS208の変形例として、判定部42Bは、振動情報により示される振動から、傾斜センサ部60から取得した傾斜情報により示された傾斜により発生する振動を除外し、傾斜情報が示す傾斜により発生する振動が除外された振動と振動基準値とを比較することで電気式ドア装置2の異常を判定してよい。傾斜により発生する振動を示す情報は、例えば、予め傾斜毎にサンプリングした振動情報を振動基準値データ記憶部52Bに記憶しておき、判定部42Bは、ステップS206において収集した傾斜に対応した振動情報を振動基準値データ記憶部52Bから取得する。
【0109】
以上説明したように、第3の実施形態の異常特定装置1Bによれば、電気式ドア装置2または空圧式ドア装置2Aの傾斜を示す傾斜情報を取得する傾斜取得部62を備え、判定部42Bにより、更に、取得された傾斜情報により示される傾斜と傾斜基準値とを比較し、振動情報および傾斜情報が共に異常を示す場合、電気式ドア装置2または空圧式ドア装置2Aは異常ではないと判定する、異常特定装置を実現することができる。異常特定装置1Bによれば、電気式ドア装置2または空圧式ドア装置2Aの傾斜による振動が発生しても、誤って電気式ドア装置2または空圧式ドア装置2Aの異常な構成要素を特定することを回避することができる。
【0110】
また、異常特定装置1Bによれば、複数の構成要素の内のドアリーフ3R、3Lの傾斜を示す傾斜情報を取得する傾斜取得部62を備え、判定部42Bにより、振動情報により示される振動から傾斜情報が示す傾斜により発生する振動を除外し、傾斜情報が示す傾斜により発生する振動が除外された振動と振動基準値とを比較することで電気式ドア装置2または空圧式ドア装置2Aの異常を判定する、異常特定装置を実現することができる。この異常特定装置1Bによれば、異常の判定精度を高くすることができる。
【0111】
以上、この発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【0112】
例えば、本明細書で開示した実施形態のうち、複数の機能が分散して設けられているものは、当該複数の機能の一部または全部を集約して設けても良く、逆に複数の機能が集約して設けられているものを、当該複数の機能の一部または全部が分散するように設けることができる。機能が集約されているか分散されているかにかかわらず、発明の目的を達成できるように構成されていればよい。
【0113】
以上に示した実施形態に係る装置(例えば、異常特定装置1、異常特定装置1A、異常特定装置1B、電気式ドア装置2、空圧式ドア装置2A)の機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記憶媒体に記憶して、この記憶媒体に記憶されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより、処理を行ってもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、オペレーティングシステム(OS:Operating System)あるいは周辺機器等のハードウェアを含むものであってもよい。また、「コンピュータ読み取り可能な記憶媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ等の書き込み可能な不揮発性メモリ、DVD(Digital Versatile Disc)等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。
【0114】
さらに、「コンピュータ読み取り可能な記憶媒体」とは、インターネット等のネットワークあるいは電話回線等の通信回線を介してプログラムが送信された場合の情報処理装置やクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリ(例えばDRAM(Dynamic Random Access Memory))のように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。また、上記のプログラムは、このプログラムを記憶装置等に格納したコンピュータシステムから、伝送媒体を介して、あるいは、伝送媒体中の伝送波により他のコンピュータシステムに伝送されてもよい。ここで、プログラムを伝送する「伝送媒体」は、インターネット等のネットワーク(通信網)あるいは電話回線等の通信回線(通信線)のように情報を伝送する機能を有する媒体のことをいう。また、上記のプログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよい。さらに、上記のプログラムは、前述した機能をコンピュータシステムに既に記憶されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であってもよい。
【符号の説明】
【0115】
1、1A、1B 異常特定装置
2 電気式ドア装置(鉄道用ドア装置、自動ドア装置)
2A 空圧式ドア装置
3R、3L ドアリーフ
4 ガイドレール
5、5L、5R 戸吊装置
6 戸車
7 戸先ゴム
8L 左用ラックギア
8R 右用ラックギア
9L 左側連結ブラケット
9R 右側連結ブラケット
10 ピニオンギア
11 モータ
12 回転軸
13 サンギア
14 遊星ギア
15、15A 制御器
16、16A 電源部
17 モータモニタ部
18、18A ドア開閉制御部
19、19A 指令部
20 施錠部
21 電源電圧検出部
22 PWM制御部
22R、22L
23 モータ駆動部
24 ホール信号検出器
25 速度検出部
26 ホール素子
27 モータ電流検出器
29、29A 送信部
30、30A 振動センサ部
40 振動取得部
40A 振動取得部
40B タイミング検出部
42、42A、42B 判定部
44、44A、44B 移動取得部
46、46A、46B 特定部
48 電流値取得部
50 速度値取得部
52、52A、52B 振動基準値データ記憶部
54、54A 異常データ記憶部
60 傾斜センサ部
62 傾斜取得部
64 車両位置取得部
102、106 連結金具
104 上ラック
108 下ラック
110 シリンダ部
112 クッションシリンダ
114 ピストン
115 ピストン軸
122、124 逆止弁
130 引分機構
132 ピニオン
134 ドアスイッチ
136 スイッチ押棒
140 チリコシ
142a~142f 空気通路
144 排気消音器
150 切換弁部(切替弁)
150A 電磁弁制御部
152 第1の電磁弁
154 第2の電磁弁
160 手動押ボタン
図1
図2
図3
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