IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ブラザー工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-印刷装置 図1
  • 特開-印刷装置 図2
  • 特開-印刷装置 図3
  • 特開-印刷装置 図4
  • 特開-印刷装置 図5
  • 特開-印刷装置 図6
  • 特開-印刷装置 図7
  • 特開-印刷装置 図8
  • 特開-印刷装置 図9
  • 特開-印刷装置 図10
  • 特開-印刷装置 図11
  • 特開-印刷装置 図12
  • 特開-印刷装置 図13
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024002006
(43)【公開日】2024-01-11
(54)【発明の名称】印刷装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/01 20060101AFI20231228BHJP
【FI】
B41J2/01
B41J2/01 129
B41J2/01 123
B41J2/01 451
B41J2/01 401
B41J2/01 213
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022100924
(22)【出願日】2022-06-23
(71)【出願人】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】的場 健司
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 敦
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EB13
2C056EB29
2C056EC07
2C056EC28
2C056EC42
2C056EC72
2C056EE17
2C056EE18
2C056FA10
(57)【要約】
【課題】白抜け部分の発生を抑制することができる印刷装置を提供する。
【解決手段】印刷装置は、被印刷媒体に、紫外線硬化型の印字用インク、下地層を形成する下地層用インク、および保護層を形成する保護層用インクのうち、少なくとも1つのインクを吐出する吐出ヘッドと、被印刷媒体の形状の情報を取得する取得部と、コントローラとを備え、コントローラは、取得部により取得された被印刷媒体の形状の情報に基づき、被印刷媒体において隣り合う一方の被印刷面と他方の被印刷面との境界である稜線を含む稜線存在領域に対して、稜線存在領域以外の領域よりも、単位面積当たりのインクの量を増加させるように吐出ヘッドの吐出動作を制御するインク量増加処理を実行する。
【選択図】図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被印刷媒体に、紫外線硬化型の印字用インク、下地層を形成する下地層用インク、および保護層を形成する保護層用インクのうち、少なくとも1つのインクを吐出する吐出ヘッドと、
前記被印刷媒体の形状の情報を取得する取得部と、
コントローラと、を備え、
前記コントローラは、
前記取得部により取得された前記被印刷媒体の形状の情報に基づき、前記被印刷媒体において隣り合う一方の被印刷面と他方の被印刷面との境界である稜線を含む稜線存在領域に対して、前記稜線存在領域以外の領域よりも、単位面積当たりの前記インクの量を増加させるように前記吐出ヘッドの吐出動作を制御するインク量増加処理を実行する、印刷装置。
【請求項2】
前記コントローラは、前記インク量増加処理において、前記稜線存在領域に対する吐出数を前記稜線存在領域以外の領域に対する吐出数よりも増やすように前記吐出ヘッドの吐出動作を制御する、請求項1に記載の印刷装置。
【請求項3】
前記コントローラは、前記インク量増加処理において、前記稜線存在領域に対して吐出するインク滴のサイズを前記稜線存在領域以外の領域に対して吐出するインク滴のサイズよりも大きくするように前記吐出ヘッドの吐出動作を制御する、請求項1に記載の印刷装置。
【請求項4】
前記コントローラは、前記インク量増加処理において、前記稜線存在領域に対して、前記稜線存在領域以外の領域に対するパスよりも多いパスで吐出動作が行われるように前記吐出ヘッドを制御する、請求項1に記載の印刷装置。
【請求項5】
前記保護層用インクはクリアインクである、請求項1に記載の印刷装置。
【請求項6】
前記下地層用インクはプライマーインク又はホワイトインクである、請求項1に記載の印刷装置。
【請求項7】
前記コントローラは、前記被印刷媒体の材質に基づき、前記吐出ヘッドによる吐出の対象とすべき前記稜線存在領域の大きさを変更すると共に、前記下地層の厚みおよび前記保護層の厚みを変更するように前記吐出ヘッドの吐出動作を制御する、請求項1に記載の印刷装置。
【請求項8】
前記コントローラは、前記一方の被印刷面と前記他方の被印刷面とが成す角度に基づき、前記吐出ヘッドによる吐出の対象とすべき前記稜線存在領域の大きさを変更すると共に、前記下地層の厚みおよび前記保護層の厚みを変更するように前記吐出ヘッドの吐出動作を制御する、請求項1に記載の印刷装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばインクジェットプリンタ等の印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、被印刷媒体の表面に塗布すべきアンダーコート剤を画像形成前に吐出するアンダーコート剤吐出ヘッド部と、被印刷媒体の表面に塗布すべきトップコート剤を画像形成後に吐出するトップコート剤吐出ヘッド部とを備える印刷装置が開示されている。アンダーコート剤はインク吐出部により被印刷媒体に所望の画像を印刷する前に塗布されるものである。アンダーコート剤としては、被印刷媒体に対するインクの定着性を向上させるためのプライマ、素材の色を隠蔽する下地作成のための白色塗料および白色インク等の下地着色用塗料、又は、プライマと下地着色用塗料との混合剤等が用いられる。また、トップコート剤はインク吐出部により被印刷媒体に所望の画像を印刷した後に塗布されるものである。トップコート剤は印刷した画像を保護するために耐水性および耐候性を有する透明の塗膜を形成するために用いられる。
【0003】
上記の印刷装置においては、被印刷媒体の表面における凸部に対して、当該被印刷媒体の表面における凹部に比べて多量のコート剤がコート剤吐出部により吐出される。コート剤吐出部は被印刷媒体における斜面の水平面に対する角度に応じて吐出量を変更してもよいとのことである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001-239660号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、被印刷媒体において隣り合う一方の被印刷面と他方の被印刷面との境界である稜線を含む領域に印刷を行うことがある。しかし、上記従来の技術において稜線を含む領域に印刷を行った場合に、インク滴の着弾位置の位置ずれに起因して当該領域における印刷画像に白抜け部分が出現する問題がある。そのため、印刷結果の品質の問題及び被印刷媒体の上記領域が外部に接触することによるインク剥がれが生じることがあった。
【0006】
そこで、本発明は、白抜け部分の発生を抑制することができる印刷装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る印刷装置は、被印刷媒体に、紫外線硬化型の印字用インク、下地層を形成する下地層用インク、および保護層を形成する保護層用インクのうち、少なくとも1つのインクを吐出する吐出ヘッドと、前記被印刷媒体の形状の情報を取得する取得部と、コントローラと、を備え、前記コントローラは、前記取得部により取得された前記被印刷媒体の形状の情報に基づき、前記被印刷媒体において隣り合う一方の被印刷面と他方の被印刷面との境界である稜線を含む稜線存在領域に対して、前記稜線存在領域以外の領域よりも、単位面積当たりの前記インクの量を増加させるように前記吐出ヘッドの吐出動作を制御するインク量増加処理を実行するものである。
【0008】
本発明に従えば、インク量増加処理において、稜線存在領域に対して稜線存在領域以外の領域よりも単位面積当たりのインクの量が増加される。これにより、インク滴の着弾位置の位置ずれに起因して稜線存在領域における印刷画像に白抜け部分が出現することを抑制又は防止することができる。これによって、印刷結果の品質を向上させることができ、更に被印刷媒体の稜線存在領域が外部に接触した際にインク剥がれを抑制することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、白抜け部分の発生を抑制することができる印刷装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態に係る印刷装置を示す斜視図である。
図2図1の印刷装置における液滴吐出装置を示す平面図である。
図3図1の吐出ヘッドの構成を示す断面図である。
図4図1の光源における発光ダイオードチップを示す図である。
図5図1の印刷装置の構成要素を示すブロック図である。
図6図1の印刷装置の印刷対象である被印刷媒体を示す斜視図である。
図7図6とは異なる方向から見た場合の被印刷媒体を示す斜視図である。
図8】稜線存在領域における下地層と保護層および稜線存在領域以外の領域における下地層と保護層を示す図である。
図9】稜線存在領域におけるインク滴の吐出数および稜線存在領域以外の領域におけるインク滴の吐出数について説明するための図である。
図10】稜線存在領域におけるインク滴のサイズおよび稜線存在領域以外の領域におけるインク滴のサイズについて説明するための図である。
図11図11Aは従来における下地層を構成するインク滴とカラーインクのインク滴との硬化状態を示す図であり、図11Bは本実施形態における下地層を構成するインク滴とカラーインクのインク滴との硬化状態を示す図である。
図12図1の印刷装置の変形例に係る印刷装置の構成を示すブロック図である。
図13図12の印刷装置の変形例に係る印刷装置の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態に係る印刷装置について図面を参照して説明する。以下に説明する印刷装置は本発明の一実施形態に過ぎない。従って、本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で追加、削除および変更が可能である。
【0012】
図1は本発明の一実施形態に係る印刷装置1を示す斜視図である。図1において、相互に直交する方向を、第1方向Ds、第2方向Dfおよび第3方向Dzとする。本実施形態では、例えば、第1方向Dsは後述するキャリッジ3の移動方向であり、第2方向Dfは後述する被印刷媒体W(図6)の搬送方向であり、第3方向Dzは上下方向である。以下の説明では、Dsを移動方向と呼び、Dfを搬送方向と呼び、Dzを上下方向と呼ぶ。
【0013】
図1に示すように、本実施形態の印刷装置1は、筐体2と、操作キー4と、表示部5と、被印刷媒体Wが配置されるプラテン6と、上部カバー7と、吐出ヘッド10および光源40を含む液滴吐出装置1a(図2)と、制御装置20(図5)を含むコントローラユニット19(図5)とを備える。吐出ヘッド10は例えば紫外線硬化型のインク滴を吐出するインクジェットヘッドである。印刷装置1は例えばインクジェットプリンタである。なお、本実施形態において制御装置20がコントローラに相当する。
【0014】
筐体2は箱状に形成されている。筐体2は開口部2aを有する。筐体2には操作キー4が設けられている。また、操作キー4の近傍には表示部5が設けられている。操作キー4はユーザによる操作入力を受け付ける。表示部5は例えばタッチパネルで構成され、所定情報を表示する。表示部5の一部は操作キーとしても機能する。コントローラユニット19は、操作キー4からの入力又は図略の通信インタフェースを介する外部入力に基づき印刷機能を実現すると共に表示部5の表示を制御する。
【0015】
プラテン6は後述の被印刷媒体Wを載置可能に構成されている。プラテン6は所定の厚みを有し、例えば搬送方向Dfを長手方向とする矩形状の板材により構成される。プラテン6は図略のプラテン支持台により、取り外し可能に支持されている。プラテン支持台は搬送モータ33(図5)の駆動により被印刷媒体Wへの印刷を実行する印刷位置と被印刷媒体Wをプラテン6から取り外す着脱位置との間で搬送方向Dfに移動可能に構成される。これにより、プラテン6は被印刷媒体Wの被印刷面を吐出ヘッド10に対して搬送方向Dfに相対移動させる。印刷時にはプラテン6が搬送方向Dfに移動するため、プラテン6上に載置された被印刷媒体Wが搬送方向Dfに沿って搬送される。
【0016】
上部カバー7は、その端部を持ち上げると上方へ回動するように構成されている。これにより、筐体2の内部が露出する。
【0017】
図2に示すように、液滴吐出装置1aは、貯留タンク62、例えば2つの吐出ヘッド10(10A,10B)と2つの光源40(40A,40B)とが搭載されたキャリッジ3、および、一対のガイドレール67を備える。吐出ヘッド10は、移動方向Dsに並設された複数のノズル列NLを有する。なお、2つの吐出ヘッド10と2つの光源40を設けることにしたが、これに限定されるものではなく、1つの吐出ヘッド10と1つの光源40を設けてもよい。
【0018】
キャリッジ3は、移動方向Dsに延在する一対のガイドレール67に支持され、当該ガイドレール67に沿って移動方向Dsに往復動する。これにより、2つの吐出ヘッド10(10A,10B)と2つの光源40(40A,40B)は移動方向Dsに往復動可能になっている。また、吐出ヘッド10はチューブ62aを介して貯留タンク62に接続される。
【0019】
本実施形態において、例えば、吐出ヘッド10Aは、カラーインクと総称されることがあるイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、およびブラック(K)の各色のインク滴を吐出する。以上の4色のインク滴が被印刷媒体Wに吐出されることで当該被印刷媒体Wにカラー画像が印刷される。
【0020】
一方、吐出ヘッド10Bは、例えば、プライマーインクのインク滴、ホワイト(W)のインク滴、およびクリア(Cr)のインク滴を吐出する。下地層を形成する際に、プライマーインク又はホワイトインクが下地層用インクとして用いられる。このような下地層用インクはカラーインクの定着性を高めるために用いられたり、被印刷媒体Wの形状を維持するために用いられる。特に、プライマーインクは粘着性を有することから、カラーインクの定着性をより高めることができる。下地層用インクのインク滴が先に被印刷媒体W上に吐出され、当該下地層用インクのインク滴の上にカラーインクのインク滴が吐出される。また、クリアインクは保護層用インクとして用いられ、印刷部分を保護する保護層を形成する際にそのインク滴が吐出される。
【0021】
貯留タンク62にはインクが貯留されている。貯留タンク62はインクの種類ごとに設けられている。貯留タンク62は、例えば6つ設けられ、ブラック、イエロー、シアン、マゼンタ、ホワイト、およびクリアのインクがそれぞれ貯留される。
【0022】
液滴吐出装置1aはさらにパージ部50およびワイプ部54を備える。パージ部50およびワイプ部54は、キャリッジ3の移動領域に重なるように一対のガイドレール67のうち移動方向Dsの一端側に配置される。
【0023】
パージ部50は、キャップ51、吸引ポンプ52および昇降機構53を有する。吸引ポンプ52はキャップ51に接続されている。昇降機構53は、吸引位置と待機位置との間でキャップ51を昇降する。待機位置では、吐出面NM(図3)はキャップ51から離間する。一方、吸引位置では、吐出面NMがキャップ51に覆われ、密閉空間が形成される。キャップ51が吸引位置にあるときに吸引ポンプ52が駆動されると、上記密閉空間が吸引されて、後述のノズル孔121a(図3)からインクが排出されるパージ処理が行われる。
【0024】
また、ワイプ部54は、2つのワイパー55,56、および移動機構57を有する。2つのワイパー55,56は移動機構57に支持されている。吐出面NMがこれらのワイパー55,56に対向する位置に配置された状態で移動機構57が搬送方向Dfに移動する。これにより、2つのワイパー55,56は搬送方向Dfに移動しつつワイプ動作(つまり吐出面NMの払拭)を行う。
【0025】
次に吐出ヘッド10の詳細構造について説明する。図3に示すように、吐出ヘッド10は貯留タンク62からのインクを用いてインク滴を吐出する複数のノズル121を有する。吐出ヘッド10は流路形成体と容積変更部の積層体を有する。流路形成体には、その内部にインク流路が形成され、その下面である吐出面NMに複数のノズル孔121aが開口している。また、上記の容積変更部は、駆動されてインク流路の容積を変更する。このとき、ノズル孔121aではメニスカスが振動してインクが吐出される。
【0026】
吐出ヘッド10の上述の流路形成体は複数のプレートの積層体であり、容積変更部は振動板155およびアクチュエータ(圧電素子)160を含む。振動板155の上には後述の共通電極161が接続されている。
【0027】
複数のプレートは、下から順に、ノズルプレート146、スペーサプレート147、第1流路プレート148、第2流路プレート149、第3流路プレート150、第4流路プレート151、第5流路プレート152、第6流路プレート153、および第7流路プレート154を含んで積層されている。
【0028】
各プレートには大小種々の孔および溝が形成されている。各プレートが積層された流路形成体の内部では孔および溝が組み合わされて、複数のノズル121、複数の個別流路164およびマニホールド122がインク流路として形成されている。
【0029】
ノズル121はノズルプレート146を積層方向に貫通し形成されている。ノズルプレート146の吐出面NMには、ノズル121の先端である複数のノズル孔121aが搬送方向Dfに複数並んでノズル列NLを形成している。
【0030】
マニホールド122は、吐出圧力が付与される圧力室128に対してインクを供給する。マニホールド122は、搬送方向Dfに延在しており、複数の個別流路164の各一端にそれぞれ接続されている。すなわち、マニホールド122はインクの共通流路として機能する。マニホールド122は、第1流路プレート148~第4流路プレート151を積層方向に貫通した貫通孔および第5流路プレート152の下面から窪んだ窪みが積層方向に重なって形成されている。
【0031】
ノズルプレート146はスペーサプレート147の下方に配置されている。そのスペーサプレート147は例えばステンレス鋼材で形成される。スペーサプレート147は、例えばハーフエッチングによりノズルプレート146側の面からスペーサプレート147の厚み方向に凹むことで、ダンパ部147aを成す薄肉部分とダンパ空間147bとが形成される凹部145を有する。これにより、マニホールド122とノズルプレート146との間に、バッファー空間としてのダンパ空間147bが形成される。
【0032】
マニホールド122には供給ポート122aが連通している。供給ポート122aは例えば筒状に形成され、搬送方向Dfの一端に設けられている。なお、マニホールド122と供給ポート122aとは図略の流路により繋がっている。
【0033】
各個別流路164はマニホールド122にそれぞれ接続されている。個別流路164は、その上流端がマニホールド122に接続され、その下流端がノズル121の基端に接続されている。個別流路164は、第1連通孔125、個別絞り路である供給絞り路126、第2連通孔127、圧力室128、およびディセンダ129で構成されており、これらの構成要素はこの順で配置される。
【0034】
第1連通孔125は、その下端がマニホールド122の上端に接続し、マニホールド122から積層方向の上方に延び、第5流路プレート152における上側部分を積層方向に貫通している。
【0035】
供給絞り路126の上流端は第1連通孔125の上端に接続されている。供給絞り路126は、例えばハーフエッチングにより形成され、第6流路プレート153の下面から窪んだ溝により構成されている。また、第2連通孔127は、その上流端が供給絞り路126の下流端に接続され、供給絞り路126から積層方向の上方に延び、第6流路プレート153を積層方向に貫通して形成されている。
【0036】
圧力室128は、その上流端が第2連通孔127の下流端に接続されている。圧力室128は、第7流路プレート154を積層方向に貫通して形成されている。
【0037】
ディセンダ129は、スペーサプレート147、第1流路プレート148、第2流路プレート149、第3流路プレート150、第4流路プレート151、第5流路プレート152、および第6流路プレート153を積層方向に貫通して形成されている。ディセンダ129は、その上流端が圧力室128の下流端に接続され、下流端がノズル121の基端に接続されている。ノズル121は、例えば積層方向においてディセンダ129に重なり、幅方向においてディセンダ129の中央に配置されている。
【0038】
振動板155は、第7流路プレート154の上に積層されており、圧力室128の上端開口を覆っている。
【0039】
アクチュエータ160は、共通電極161、圧電層162および個別電極163を含み、これらはこの順で配置されている。共通電極161は振動板155の全面を覆っている。圧電層162は共通電極161の全面を覆っている。個別電極163は、圧力室128ごとに設けられ、圧電層162上に配置されている。1つの個別電極163、共通電極161および両電極で挟まれた部分の圧電層162により1つのアクチュエータ160が構成される。
【0040】
個別電極163はドライバICに電気的に接続されている。このドライバICは、制御装置20から制御信号を受けて、駆動信号(電圧信号)を生成し、個別電極163に印加する。これに対して、共通電極161は常にグランド電位に保持されている。このような構成において、圧電層162の活性部は駆動信号に応じて共通電極161および個別電極163と共に面方向に伸縮する。これに応じて、振動板155が協働して変形し、圧力室128の容積を増減する方向に変化する。これにより、インク滴をノズル121から吐出させる吐出圧力が圧力室128に付与される。
【0041】
吐出ヘッド10において、インクは、供給ポート122aを介してマニホールド122に流入すると、当該マニホールド122から第1連通孔125を介して供給絞り路126に流入し、供給絞り路126から第2連通孔127を介して圧力室128に流入する。その後、インクはディセンダ129を流れ、ノズル121に流入する。ここで、アクチュエータ160により圧力室128に吐出圧力が付与されると、インク滴がノズル孔121aから吐出される。
【0042】
図4は光源40における発光ダイオードチップDTを示す図である。図4に示すように、光源40は、支持基板41および当該支持基板41に配置されて紫外線を発光する複数の発光ダイオードチップDTを有する。各発光ダイオードチップDTは、吐出ヘッド10により吐出されたインクを硬化させるための紫外線を照射する。発光ダイオードチップDTは紫外線を発生させる半導体素子である。各発光ダイオードチップDTは、例えば移動方向Dsおよび搬送方向Dfにそれぞれ所定間隔で規則的に配置されている。各発光ダイオードチップDTは例えばマトリクス状に配置されている。
【0043】
次に、本実施形態の印刷装置1の各構成要素についてブロック図を参照しつつ説明する。図5図1の印刷装置1の構成要素を示すブロック図である。
【0044】
図5に示すように、印刷装置1は、上述の構成要素の他、コントローラユニット19、読取装置26、モータドライバIC30,31、ヘッドドライバIC32,35、搬送モータ33、キャリッジモータ34、照射装置ドライバIC36,37、パージドライバIC38、ワイプドライバIC39、および3Dカメラ29を備える。
【0045】
コントローラユニット19は、CPUで構成される制御装置20、記憶部(ROM21、RAM22、EEPROM23、HDD24)、およびASIC25を有する。制御装置20は、上記の各記憶部に接続されていると共に各ドライバIC29,30~32,35~39および表示部5を制御する。
【0046】
制御装置20は、ROM21に記憶された所定の処理プログラムを実行することにより、種々の機能を実行する。制御装置20は、コントローラユニット19に1つのプロセッサとして実装されていてもよいし、互いに協働する複数のプロセッサとして実装されていてもよい。処理プログラムは、コンピュータ読取可能な光磁気ディスク等又はUSBフラッシュメモリ等の記録媒体KBから読取装置26で読み出されてROM21に記憶される。RAM22には、外部から受信した画像データおよび制御装置20の演算結果等が記憶される。EEPROM23にはユーザが入力した各種の初期設定情報が格納されている。HDD24には特定情報などが記憶される。
【0047】
ASIC25には、モータドライバIC30,31と、ヘッドドライバIC32,35と、照射装置ドライバIC36,37と、パージドライバIC38と、ワイプドライバIC39と、3Dカメラ29とが接続される。制御装置20は、ユーザから印刷ジョブを受け付けると、処理プログラムに基づいて処理指令をASIC25へ出力する。ASIC25は、処理指令に基づいて各ドライバIC29,30~32,35~39を駆動する。制御装置20は、モータドライバIC30により搬送モータ33を駆動することでプラテン6を搬送方向Dfに移動させる。制御装置20は、モータドライバIC31によりキャリッジモータ34を駆動することでキャリッジ3を移動方向Dsに移動させる。
【0048】
制御装置20は、外部装置等から取得した画像データを被印刷面にインク滴を吐出するための吐出データに変換する。制御装置20は、変換した吐出データに基づいてヘッドドライバIC32,35により吐出ヘッド10からインク滴を吐出させる。また、制御装置20は、照射装置ドライバIC36,37により光源40A,40Bの各発光ダイオードチップから紫外線を照射させる。制御装置20は、パージドライバIC38によりパージ部50の吸引ポンプ52および昇降機構53を駆動する。制御装置20は、ワイプドライバIC39によりワイプ部54の移動機構57を駆動する。
【0049】
制御装置20は機能的構成として取得部70を有する。3Dカメラは例えばキャリッジ3に設けられて被印刷媒体Wを撮像する。制御装置20の取得部70は、3Dカメラ29により撮像された被印刷媒体Wの形状の情報を受信する。なお、被印刷媒体Wの形状を取得するべく当該被印刷媒体Wを撮像する3Dカメラ29の代わりに、例えば測距センサ等の他の機器を用いてもよい。
【0050】
図6図1の印刷装置1の印刷対象である被印刷媒体Wを示す斜視図であり、図7図6とは異なる方向から見た場合の被印刷媒体Wを示す斜視図である。吐出ヘッド10は、稜線を有する立体物である被印刷媒体Wに対して印刷を行う。なお、図6および図7では、形状の一例として三角錐状に形成された被印刷媒体Wを図示している。
【0051】
図6および図7に示すように、被印刷媒体Wは、当該被印刷媒体Wにおいて隣り合う一方の被印刷面Wh1と他方の被印刷面Wh2とを有する。被印刷面Wh1と被印刷面Wh2との境界が稜線RLとなる。
【0052】
制御装置20は、稜線RLを含む領域である稜線存在領域Rrに対して稜線存在領域Rr以外の領域よりも、単位面積当たりのインクの量を増加させるように吐出ヘッド10の吐出動作を制御する処理(以下、インク量増加処理と呼ぶことがある)を実行する。本実施形態では、制御装置20は吐出ヘッド10Aについてインク量増加処理を実行することができる。これにより、吐出ヘッド10Aによって、稜線存在領域Rr以外の領域よりも単位面積当たりの量が増加されたカラーインクのインク滴が稜線存在領域Rrに対して吐出される。これにより、稜線存在領域Rrにおける印刷部分の厚みを稜線存在領域Rr以外の領域における印刷部分の厚みよりも大きくすることができる。なお、図8ではカラーインクの印刷部分についての図示を省略する。
【0053】
また、制御装置20は吐出ヘッド10Bについてもインク量増加処理を実行することができる。これにより、吐出ヘッド10Bによって、稜線存在領域Rr以外の領域よりも単位面積当たりの量が増加されたプライマーインク又はホワイトインクのインク滴が稜線存在領域Rrに対して吐出される。これにより、図8に示すように、稜線存在領域Rrにおける下地層Lu1の厚みを稜線存在領域Rr以外の領域における下地層Lu2の厚みよりも大きくすることができる。さらに、吐出ヘッド10Bによって、稜線存在領域Rr以外の領域よりも単位面積当たりの量が増加されたクリアインクのインク滴が稜線存在領域Rrに対して吐出される。これにより、図8に示すように、稜線存在領域Rrにおける保護層Lp1の厚みを稜線存在領域Rr以外の領域における保護層Lp2の厚みよりも大きくすることができる。
【0054】
稜線存在領域Rrにおけるカラーインクによる印刷部分についてのインク量増加処理、稜線存在領域Rrにおける下地層Lu1についてのインク量増加処理、および、稜線存在領域Rrにおける保護層Lp1についてのインク量増加処理のうち、少なくとも一つが実行されればよい。
【0055】
図6および図7の被印刷媒体Wは複数の稜線を有するが、吐出ヘッド10により印刷を行う稜線存在領域Rrに含まれる稜線は、吐出ヘッド10が移動方向Dsに往復移動する際に当該吐出ヘッド10の吐出面NMに対向する被印刷面Wh1と被印刷面Wh2とが成す稜線RLのみとする。したがって、三角錐状の被印刷媒体Wにおいて、例えば被印刷面Wh1と他の被印刷面(被印刷面Wh1,Wh2を除く被印刷面)との稜線や、例えば被印刷面Wh2と被印刷媒体Wの軸線方向における一端面との稜線等は稜線存在領域Rrに含まれる稜線RLに該当しない。
【0056】
制御装置20の処理手順は次の通りである。制御装置20は外部から印刷データを受信した後、3Dカメラ29からプラテン6上の被印刷媒体Wの形状に係る情報を取得部70により取得する。制御装置20は印刷データおよび被印刷媒体Wの形状に基づき補正の要否(つまりインク量増加処理の要否)を判別する。この場合、上記の通り定義した稜線RLが被印刷媒体Wに存在する場合に補正が必要であると判別される。そして、制御装置20は後述のインク量増加処理の方法および増加量(稜線存在領域Rrの大きさおよび層の厚み)を決定して印字画像データを作成する。制御装置20は作成した印字画像データに基づき吐出ヘッド10に印刷を実行させる。
【0057】
インク量増加処理の具体的な方法について説明する。図9は稜線存在領域Rrにおけるインク滴Idの吐出数および稜線存在領域Rr以外の領域におけるインク滴Idの吐出数について説明するための図である。また、図10は稜線存在領域Rrにおけるインク滴Idbのサイズおよび稜線存在領域Rr以外の領域におけるインク滴Idのサイズについて説明するための図である。なお、理解を容易にするべく、図9および図10では稜線存在領域Rrを示す線を太く図示している。
【0058】
本実施形態において、稜線RLは、方向D1に幅を有さず当該方向D1に直交する方向D2に延在する直線を含むと共に、図9および図10に示すように方向D1に所定の幅を有して方向D2に延在するものを含む。なお、図9および図10において一方の被印刷面Wh1と他方の被印刷面Wh2とが成す角度をθとする。
【0059】
図9に示すように、制御装置20は、インク量増加処理において稜線存在領域Rrに対する吐出数を稜線存在領域Rr以外の領域に対する吐出数よりも増やすように吐出ヘッド10の吐出動作を制御する。これにより、稜線存在領域Rrに対して稜線存在領域Rr以外の領域よりも単位面積当たりのインクの量を増加させることが可能となる。なお、図9および後記の図10におけるインク滴Idは、カラーインクのインク滴、下地層を形成するプライマーインク又はホワイトインクのインク滴、および保護層を形成するクリアインクのインク滴のうち何れかである。
【0060】
或いは、次のようにしてもよい。図10に示すように、制御装置20は、インク量増加処理において稜線存在領域Rrに対して吐出するインク滴Idbのサイズを稜線存在領域Rr以外の領域に対して吐出するインク滴Idのサイズよりも大きくするように吐出ヘッド10の吐出動作を制御してもよい。これによっても、稜線存在領域Rrに対して稜線存在領域Rr以外の領域よりも単位面積当たりのインクの量を増加させることが可能となる。
【0061】
或いは、制御装置20は、インク量増加処理において稜線存在領域Rrに対して稜線存在領域Rr以外の領域に対するパスよりも多いパスで吐出動作が行われるように吐出ヘッド10を制御してもよい。この場合、吐出ヘッド10は、例えば、稜線存在領域Rr以外の領域に対しては1パスで吐出動作を行い、稜線存在領域Rrに対しては2パスで吐出動作を行う。このことによっても、稜線存在領域Rrに対して稜線存在領域Rr以外の領域よりも単位面積当たりのインクの量を増加させることが可能となる。
【0062】
ここで、上述した稜線存在領域Rrの大きさ(面積)は変更することができる。制御装置20は、被印刷媒体Wの材質に基づき稜線存在領域Rrの面積を変更する。この点、被印刷媒体Wの材質が比較的硬い場合(変形量が比較的少ない場合)には稜線存在領域Rrの面積を比較的小さくし、被印刷媒体Wの材質が比較的軟らかい場合(変形量が比較的多い場合)には稜線存在領域Rrの面積を比較的大きくする。また、被印刷媒体Wにおけるインク滴の定着性が良くない場合には稜線存在領域Rrの面積を比較的大きくする。
【0063】
稜線存在領域Rrの面積の変更方法の具体例としては、例えば、被印刷媒体Wの各材質と材質に対応する各係数(被印刷媒体Wが所定の基準材質から成る場合の係数を1.0としたときの各係数)との対応関係を示すテーブルをROM21又はHDD24等の記憶部に予め記憶させることができる。制御装置20は、被印刷媒体Wの材質に基づき記憶部から上記係数を読み取り、被印刷媒体Wの材質が基準材質である場合の稜線存在領域Rrの面積(基準面積)に当該係数を乗じることでその材質に応じた稜線存在領域Rrの面積を取得することができる。制御装置20は、取得した面積分の稜線存在領域Rrに対して吐出ヘッド10にインク滴を吐出させる。これにより、被印刷媒体Wの材質に応じた面積を有する稜線存在領域Rrに対してインク量増加処理を行うことができる。
【0064】
また、制御装置20は被印刷媒体Wの材質に基づき稜線存在領域Rrにおける下地層Lu1の厚みおよび保護層Lp1の厚みを変更してもよい。この点、被印刷媒体Wの材質が比較的硬い場合には欠けが生じるのを防ぐ観点から稜線存在領域Rrの上記厚みを比較的厚くし、被印刷媒体Wの材質が比較的軟らかい場合には稜線存在領域Rrの上記厚みを比較的薄くする。また、被印刷媒体Wにおけるインク滴の定着性が良くない場合には稜線存在領域Rrの上記厚みを比較的厚くする。
【0065】
制御装置20は、一方の被印刷面Wh1と他方の被印刷面Wh2とが成す角度θに基づき稜線存在領域Rrの面積を変更してもよい。この場合、例えば、各角度θと角度θに対応する各係数(角度θが所定の基準角度である場合の係数を1.0としたときの各係数)との対応関係を示すテーブルをROM21又はHDD24等の記憶部に予め記憶させることができる。制御装置20は、角度θに基づき記憶部から上記係数を読み取り、角度θが基準角度である場合の稜線存在領域Rrの面積(基準面積)に当該係数を乗じることでその角度θに応じた稜線存在領域Rrの面積を取得することができる。制御装置20は、取得した面積分の稜線存在領域Rrに対して吐出ヘッド10にインク滴を吐出させる。これにより、角度θに応じた面積を有する稜線存在領域Rrに対してインク量増加処理を行うことができる。この場合、角度θが小さくなるほど、稜線存在領域Rrの面積を大きくする。
【0066】
制御装置20は、角度θに応じて稜線存在領域Rrにおける下地層Lu1の厚みおよび保護層Lp1の厚みを変更してもよい。この場合、角度θが小さくなるほど、地層Lu1の厚みおよび保護層Lp1の厚みを厚くする。
【0067】
図11Aは従来における下地層を構成するインク滴とカラーインクのインク滴との硬化状態を示す図である。図11Bは本実施形態における下地層を構成するインク滴とカラーインクのインク滴との硬化状態を示す図である。
【0068】
図11Aに示すように、下地層を形成するインク滴Idsが吐出されてから比較的早い段階で紫外線を照射させると、インク滴Idsが平坦な形状になっていない状態で硬化してしまう。そのため、その後に吐出されたカラーインクのインク滴Idとインク滴Idsとの接触面積が小さくなる。その結果、インク滴Idsに対するカラーインクのインク滴Idの定着性が低くなる。また、下地層による被印刷面Wh1,Wh2の被覆率も小さくなることから、当該下地層が見え易くなってしまう。
【0069】
これに対して、本実施形態では、下地層を形成するインク滴Idsが吐出されてから比較的遅い段階で紫外線を照射させる。このことによって、平坦状になった状態でインク滴Idsを硬化(又は半硬化)させることができる。これにより、その後に吐出されたカラーインクのインク滴Idとインク滴Idsとの接触面積が大きくなる。これによって、インク滴Idsに対するカラーインクのインク滴Idの定着性が高くなる。また、下地層による被印刷面Wh1,Wh2の被覆率も大きくなることから、当該下地層が見え難くなる。
【0070】
以上説明したように、印刷装置1によれば、インク量増加処理において、稜線存在領域Rrに対して稜線存在領域Rr以外の領域よりも単位面積当たりのインクの量が増加される。これにより、インク滴の着弾位置の位置ずれに起因して稜線存在領域Rrにおける印刷画像に白抜け部分が出現することを抑制又は防止することができる。これによって、印刷結果の品質を向上させることができ、更に被印刷媒体Wの稜線存在領域Rrが外部に接触した際にインク剥がれを抑制することができる。
【0071】
また、本実施形態では、インク量増加処理において稜線存在領域Rrに対する吐出数が稜線存在領域Rr以外の領域に対する吐出数よりも増加される。これにより、稜線存在領域Rrに対する単位面積当たりのインク量を容易に増加させることができる。
【0072】
また、本実施形態では、インク量増加処理において稜線存在領域Rrに対して吐出するインク滴Idbのサイズが稜線存在領域Rr以外の領域に対して吐出するインク滴Idのサイズよりも大きい。これにより、稜線存在領域Rrに対する単位面積当たりのインク量を容易に増加させることができる。
【0073】
また、本実施形態では、インク量増加処理において、稜線存在領域Rrに対して、稜線存在領域Rr以外の領域に対するパスよりも多いパスで吐出動作が行われる。これにより、稜線存在領域Rrに対する単位面積当たりのインク量を容易に増加させることができる。
【0074】
また、本実施形態では、被印刷媒体Wの材質に基づき稜線存在領域Rrの大きさが変更され、下地層Lu1の厚みおよび保護層Lp1の厚みが変更される。これにより、印刷画像に白抜け部分が出現することを抑制又は防止する観点において、被印刷媒体Wの硬さ(柔らかさ)に応じて下地層Lu1の厚みおよび保護層Lp1の厚みを適切に変更することができる。
【0075】
さらに、本実施形態では、一方の被印刷面Wh1と他方の被印刷面Wh2とが成す角度θに基づき稜線存在領域Rrの大きさが変更され、下地層Lu1の厚みおよび保護層Lp1の厚みが変更される。これにより、印刷画像に白抜け部分が出現することを抑制又は防止する観点において、角度θ(つまり被印刷媒体Wの形状)に応じて下地層Lu1の厚みおよび保護層Lp1の厚みを適切に変更することができる。
【0076】
(他の実施形態)
本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で他の実施形態を採用することが可能である。例えば以下の通りである。
【0077】
上記実施形態では、印刷装置1における制御装置20が印刷データおよび被印刷媒体Wの形状に基づき補正の要否(インク量増加処理の要否)を判別するように構成した。すなわち、補正の要否をプリンタ側で行うように構成した。しかし、これに限られるものではなく、次の通り印刷装置を構成してもよい。図12図1の印刷装置1の変形例に係る印刷装置1Aの構成を示すブロック図である。
【0078】
図12に示すように、印刷装置1Aは、例えばパーソナルコンピュータ等のコンピュータ200およびプリンタ300を含む技術的概念である。プリンタ300は図1の印刷装置1と同じ印刷機能を有する。コンピュータ200は、キーボード等の入力部201と、取得部202と、補正要否判断部203と、補正部204とを含む。取得部202、補正要否判断部203および補正部204はコンピュータ200に備えられたCPUの機能的構成である。また、プリンタ300は制御装置301と吐出ヘッド302とを含む。
【0079】
ユーザはコンピュータ200の入力部201を用いて印刷データと被印刷媒体Wの形状に係る情報を入力する。取得部202は入力された被印刷媒体Wの形状に係る情報を取得する。補正要否判断部203は印刷データおよび被印刷媒体Wの形状に基づき補正の要否を判別する。補正部204はインク量増加処理の方法および増加量(稜線存在領域Rrの面積および層の厚み)を決定して印字画像データを作成しプリンタ300に送信する。この場合、補正部204は印字画像データにおいてカラーレイヤーや保護層レイヤー等のレイヤー追加処理を施す。一方、プリンタ300の制御装置301はコンピュータ200から送信された印字画像データに基づき吐出ヘッド302に印字を実行させる。以上のように、補正後の印字画像データをコンピュータ200側で作成してもよい。
【0080】
また、図12の印刷装置1Aの構成を以下の通り変形してもよい。図13図12の印刷装置1Aの変形例に係る印刷装置1Bの構成を示すブロック図である。
【0081】
図13に示すように、印刷装置1Bは、例えばパーソナルコンピュータ等のコンピュータ200Aおよびプリンタ300Aを含む技術的概念である。プリンタ300Aは図1の印刷装置1と同じ印刷機能を有する。コンピュータ200Aは、入力部201と、取得部202と、補正要否判断部203と、補正指示部205とを含む。取得部202、補正要否判断部203および補正指示部205はコンピュータ200Aに備えられたCPUの機能的構成である。また、プリンタ300Aは、補正部303を有する制御装置301と吐出ヘッド302とを含む。
【0082】
ユーザはコンピュータ200Aの入力部201を用いて印刷データと被印刷媒体Wの形状に係る情報を入力する。取得部202は入力された被印刷媒体Wの形状に係る情報を取得する。補正要否判断部203は印刷データおよび被印刷媒体Wの形状に基づき補正の要否を判別する。補正指示部205はインク量増加処理の方法および増加量(稜線存在領域Rrの面積および層の厚み)を決定し、補正前の印字画像データに補正指示情報を付加したデータをプリンタ300Aに送信する。この場合、補正指示部205は補正指示情報としてインク量増加処理の方法、増加量(稜線存在領域Rrの面積および層の厚み)および吐出波形の設定情報を印字画像データに付加する。一方、プリンタ300Aの制御装置301の補正部303は、コンピュータ200Aから送信されて補正指示情報が付加された印字画像データに基づき補正後の印字画像データを作成し当該印字画像データに基づき吐出ヘッド302に印字を実行させる。以上のように、コンピュータ200側では補正指示情報のみを作成し、プリンタ300A側で当該補正指示情報に基づく補正後の印字画像データを作成してもよい。
【符号の説明】
【0083】
1,1A,1B 印刷装置
10,10A,10B 吐出ヘッド
20 制御装置
70 取得部
Lp1 稜線存在領域における保護層
Lp2 稜線存在領域以外の領域における保護層
Lu1 稜線存在領域における下地層
Lu2 稜線存在領域以外の領域における下地層
RL 稜線
Rr 稜線存在領域
W 被印刷媒体
Wh1,Wh2 被印刷面
θ 一方の被印刷面と他方の被印刷面とが成す角度
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13