(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024020068
(43)【公開日】2024-02-14
(54)【発明の名称】ベーンポンプ
(51)【国際特許分類】
F04C 2/344 20060101AFI20240206BHJP
【FI】
F04C2/344 331C
F04C2/344 331A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022122955
(22)【出願日】2022-08-01
(71)【出願人】
【識別番号】000000929
【氏名又は名称】カヤバ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】弁理士法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐野 碧
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 一成
(72)【発明者】
【氏名】清水 朋佳
【テーマコード(参考)】
3H040
【Fターム(参考)】
3H040AA03
3H040BB04
3H040CC09
3H040DD03
3H040DD07
3H040DD11
(57)【要約】
【課題】ベーンポンプの作動効率を向上させる。
【解決手段】ベーンポンプ200は、複数のベーン103と、カムリング4と、ロータ2の一方の側面が摺接する摺接面30aを有するサイドプレート130と、摺接面30aに開口する吸込ポート31と、摺接面30aに開口する吐出ポート32と、ベーン103に作用する磁場を発生させる第一磁石40と、を備え、ベーン103は、磁性体で形成されまたは第二磁石41を有し、ロータ2の回転により生じる遠心力と、第一磁石40と反発する反発力または第一磁石40と引き付け合う吸引力と、によって内周カム面4aに押圧され、反発力または吸引力は、吸込ポート31が設けられポンプ室6の容積が拡張する吸込領域50、吐出ポート32が設けられポンプ室6の容積が収縮する吐出領域51、及び吸込領域50と吐出領域51の間の遷移領域52において、吸込領域50、遷移領域52、及び吐出領域51の順で小さい。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転駆動されるロータと、
前記ロータの外周面に開口する複数のスリットと、
前記スリットに摺動自在に収装される複数のベーンと、
前記ロータの回転に伴って前記ベーンの先端部が摺接する内周カム面を有するカムリングと、
前記ロータ、前記カムリング、及び一対の隣り合う前記ベーンによって区画されるポンプ室と、
前記ロータの一方の側面が摺接する摺接面を有するサイド部材と、
前記摺接面に開口し前記ポンプ室に作動流体を導く吸込ポートと、
前記摺接面に開口し前記ポンプ室から吐出される作動流体を導く吐出ポートと、
前記ベーンに作用する磁場を発生させる第一磁石と、を備え、
前記ベーンは、磁性体で形成されまたは第二磁石を有し、前記ロータの回転により生じる遠心力と、前記第一磁石と反発する反発力または前記第一磁石と引き付け合う吸引力と、によって前記内周カム面に押圧され、
前記反発力または前記吸引力は、前記吸込ポートが設けられ前記ポンプ室の容積が拡張する吸込領域、前記吐出ポートが設けられ前記ポンプ室の容積が収縮する吐出領域、及び前記吸込領域と前記吐出領域の間の遷移領域において、前記吸込領域、前記遷移領域、及び前記吐出領域の順で小さいことを特徴とするベーンポンプ。
【請求項2】
請求項1に記載のベーンポンプであって、
前記第一磁石は、前記カムリングに設けられ前記ベーンとの間で前記吸引力を生じるとともに、前記吐出領域及び前記遷移領域に複数設けられ、
前記吐出領域に設けられる前記第一磁石と前記ベーンとの間で生じる吸引力は、前記遷移領域に設けられる前記第一磁石と前記ベーンとの間で生じる吸引力よりも大きいことを特徴とするベーンポンプ。
【請求項3】
請求項1に記載のベーンポンプであって、
前記ベーンは、前記第二磁石を有し、
前記第一磁石は、円弧状に形成されて前記サイド部材に設けられ前記第二磁石との間で前記反発力を生じるとともに、前記吐出領域及び前記遷移領域に対応して設けられ、
前記吐出領域に対応して設けられる前記第一磁石と前記第二磁石との間で生じる反発力は、前記遷移領域に対応して設けられる前記第一磁石と前記第二磁石との間で生じる反発力よりも大きいことを特徴とするベーンポンプ。
【請求項4】
回転駆動されるロータと、
前記ロータの外周面に開口する複数のスリットと、
前記スリットに摺動自在に収装される複数のベーンと、
前記ロータの回転に伴って前記ベーンの先端部が摺接する内周カム面を有するカムリングと、
前記ロータ、前記カムリング、及び一対の隣り合う前記ベーンによって区画されるポンプ室と、
前記ロータの一方の側面が摺接する摺接面を有するサイド部材と、
前記摺接面に開口し前記ポンプ室に作動流体を導く吸込ポートと、
前記摺接面に開口し前記ポンプ室から吐出される作動流体を導く吐出ポートと、
前記スリット内において前記ベーンの基端部によって区画され、前記吐出ポートを通じて作動流体が導かれる背圧室と、
前記ベーンに作用する磁場を発生させる第一磁石と、を備え、
前記ベーンは、磁性体で形成されまたは第二磁石を有し、前記ロータの回転により生じる遠心力と、前記背圧室内の作動流体の圧力と、によって前記内周カム面に押圧され、
前記第一磁石は、前記ベーンと前記内周カム面との間で生じる摩擦力が、前記ベーンと反発する反発力または前記ベーンと引き付け合う吸引力により小さくなるように設けられ、
前記反発力または前記吸引力は、前記吸込ポートが設けられ前記ポンプ室の容積が拡張する吸込領域、前記吐出ポートが設けられ前記ポンプ室の容積が収縮する吐出領域、及び前記吸込領域と前記吐出領域の間の遷移領域において、前記吸込領域、前記遷移領域、及び前記吐出領域の順で大きいことを特徴とするベーンポンプ。
【請求項5】
請求項4に記載のベーンポンプであって、
前記ベーンは、前記第二磁石を有し、
前記第一磁石は、前記カムリングに設けられ前記第二磁石との間で前記反発力を生じるとともに、前記吸込領域及び前記遷移領域に設けられ、
前記吸込領域に設けられる前記第一磁石と前記第二磁石との間で生じる反発力は、前記遷移領域に設けられる前記第一磁石と前記第二磁石との間で生じる反発力よりも大きいことを特徴とするベーンポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベーンポンプに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、駆動軸に連結されたロータと、ロータに対して径方向に往復動自在に設けられる複数のベーンと、ロータの回転に伴ってベーンの先端が摺接する内周面を有するカムリングと、ロータとカムリングと一対の隣り合うベーンとによって区画されるポンプ室と、ポンプ室に作動流体を導く吸込ポートと、ポンプ室から吐出される作動流体を導く吐出ポートと、を有するベーンポンプが開示されている。ロータには、ベーンが摺動自在に挿入されるスリットが形成され、スリットにはベーンの基端部により背圧室が区画される。ロータ及びカムリングの一側面には、サイドプレートが当接して配置され、サイドプレートに設けられる背圧通路及び円弧溝を通じて背圧室に高圧の作動油が導かれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のようなベーンポンプでは、背圧室に導かれる作動油の圧力により、ベーンがカムリングの内周面に向けて押圧される。一方で、ベーンには、ポンプ室内の作動油の圧力により、カムリングの内周面から離れる向きにも力が作用する。
【0005】
ここで、ロータの回転に伴ってポンプ室の容積が収縮する吐出領域では、ポンプ室内の作動油の圧力が高いため、ベーンにカムリングの内周面から離れる向きに作用する力が大きい。そのため、大きい力でベーンをカムリングの内周面に向けて押圧し摺接させることが求められる。これに対して、ロータの回転に伴ってポンプ室の容積が拡張する吸込領域では、ポンプ室内の作動油の圧力が低いため、ベーンにカムリングの内周面から離れる向きに作用する力が小さい。そのため、大きい力でベーンをカムリングの内周面に向けて押圧する必要がない。
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載のようなベーンポンプでは、吐出領域及び吸込領域を含む全ての背圧室に同じ圧力の作動油が導かれ、ベーンをカムリングの内周面に向けて押圧している。そのため、ベーンをカムリングの内周面に向けて押圧する大きな押圧力が不要な吸込領域においても、吐出領域と同等の押圧力でベーンをカムリングの内周面に向けて押圧している。よって、ベーンとカムリングの内周面との摺接面で生じる摩擦力が大きく、ベーンポンプの作動効率が低下するおそれがある。
【0007】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、ベーンポンプの作動効率を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、回転駆動されるロータと、ロータの外周面に開口する複数のスリットと、スリットに摺動自在に収装される複数のベーンと、ロータの回転に伴ってベーンの先端部が摺接する内周カム面を有するカムリングと、ロータ、カムリング、及び一対の隣り合うベーンによって区画されるポンプ室と、ロータの一方の側面が摺接する摺接面を有するサイド部材と、摺接面に開口しポンプ室に作動流体を導く吸込ポートと、摺接面に開口しポンプ室から吐出される作動流体を導く吐出ポートと、ベーンに作用する磁場を発生させる第一磁石と、を備え、ベーンは、磁性体で形成されまたは第二磁石を有し、ロータの回転により生じる遠心力と、第一磁石と反発する反発力または第一磁石と引き付け合う吸引力と、によって内周カム面に押圧され、反発力または吸引力は、吸込ポートが設けられポンプ室の容積が拡張する吸込領域、吐出ポートが設けられポンプ室の容積が収縮する吐出領域、及び吸込領域と吐出領域の間の遷移領域において、吸込領域、遷移領域、及び吐出領域の順で小さいことを特徴とする。
【0009】
この発明では、ロータの回転により生じる遠心力と、ベーンと第一磁石との間で生じる反発力または吸引力により、ベーンが内周カム面に押圧される。また、反発力または吸引力は、吸込領域、遷移領域、及び吐出領域の順で小さい。よって、ポンプ室内の作動流体の圧力が低くベーンをカムリングの内周面に向けて大きな力で押圧することが不要な吸込領域においては、ベーンが内周カム面に小さい力で押圧されるため、ベーンと内周カム面とを摺接させつつ内周カム面で生じる摩擦力を小さくすることができる。一方で、ポンプ室内の作動流体の圧力が高くベーンをカムリングの内周面に向けて大きな力で押圧することが求められる吐出領域においては、ベーンを内周カム面に大きい力で押圧して摺接させることができる。また、ポンプ室内の作動流体の圧力が吸込領域よりも高く吐出領域よりも低い遷移領域においては、吸込領域よりも大きく吐出領域よりも小さい力でベーンが内周カム面に押圧される。そのため、ベーンと内周カム面とを摺接させつつ内周カム面で生じる摩擦力を小さくすることができる。このように、ベーンと第一磁石との間で生じる反発力または吸引力を調整することにより、ベーンと内周カム面とを摺接させつつ内周カム面で生じる摩擦力を小さくすることができる。
【0010】
また、本発明は、第一磁石は、カムリングに設けられベーンとの間で吸引力を生じるとともに、吐出領域及び遷移領域に複数設けられ、吐出領域に設けられる第一磁石とベーンとの間で生じる吸引力は、遷移領域に設けられる第一磁石とベーンとの間で生じる吸引力よりも大きいことを特徴とする。
【0011】
また、本発明は、ベーンは、第二磁石を有し、第一磁石は、円弧状に形成されてサイド部材に設けられ第二磁石との間で反発力を生じるとともに、吐出領域及び遷移領域に対応して設けられ、吐出領域に対応して設けられる第一磁石と第二磁石との間で生じる反発力は、遷移領域に対応して設けられる第一磁石と第二磁石との間で生じる反発力よりも大きいことを特徴とする。
【0012】
これらの発明では、ベーンがロータの回転により生じる遠心力と、第一磁石との間で生じる反発力または吸引力と、によって内周カム面に押圧される構成において、吸込領域、遷移領域、及び吐出領域の順でベーンが内周カム面に押圧される押圧力を小さくすることができる。
【0013】
また、本発明は、回転駆動されるロータと、ロータの外周面に開口する複数のスリットと、スリットに摺動自在に収装される複数のベーンと、ロータの回転に伴ってベーンの先端部が摺接する内周カム面を有するカムリングと、ロータ、カムリング、及び一対の隣り合うベーンによって区画されるポンプ室と、ロータの一方の側面が摺接する摺接面を有するサイド部材と、摺接面に開口しポンプ室に作動流体を導く吸込ポートと、摺接面に開口しポンプ室から吐出される作動流体を導く吐出ポートと、スリット内においてベーンの基端部によって区画され、吐出ポートを通じて作動流体が導かれる背圧室と、ベーンに作用する磁場を発生させる第一磁石と、を備え、ベーンは、磁性体で形成されまたは第二磁石を有し、ロータの回転により生じる遠心力と、背圧室内の作動流体の圧力と、によって内周カム面に押圧され、第一磁石は、ベーンと内周カム面との間で生じる摩擦力が、ベーンと反発する反発力またはベーンと引き付け合う吸引力により小さくなるように設けられ、反発力または吸引力は、吸込ポートが設けられポンプ室の容積が拡張する吸込領域、吐出ポートが設けられポンプ室の容積が収縮する吐出領域、及び吸込領域と吐出領域の間の遷移領域において、吸込領域、遷移領域、及び吐出領域の順で大きいことを特徴とする。
【0014】
この発明では、ベーンと第一磁石との間で生じる反発力または吸引力により、ベーンには内周カム面から離れる向きに力が作用し、ベーンと内周カム面との摺接面で生じる摩擦力が小さくなる。また、反発力または吸引力は、吸込領域、遷移領域、及び吐出領域の順で大きい。よって、ポンプ室内の作動流体の圧力が低くベーンをカムリングの内周面に向けて大きな力で押圧することが不要な吸込領域においては、ベーンが内周カム面に小さい力で押圧されるため、ベーンと内周カム面とを摺接させつつ内周カム面で生じる摩擦力を小さくすることができる。一方で、ポンプ室内の作動流体の圧力が高くベーンをカムリングの内周面に向けて大きな力で押圧することが求められる吐出領域においては、ベーンを内周カム面に大きい力で押圧して摺接させることができる。また、ポンプ室内の作動流体の圧力が吸込領域よりも高く吐出領域よりも低い遷移領域においては、吸込領域よりも大きく吐出領域よりも小さい力でベーンが内周カム面に押圧される。そのため、ベーンと内周カム面とを摺接させつつ内周カム面で生じる摩擦力を小さくすることができる。このように、ベーンと第一磁石との間で生じる反発力または吸引力を調整することにより、ベーンと内周カム面とを摺接させつつ内周カム面で生じる摩擦力を小さくすることができる。
【0015】
また、本発明は、ベーンは、第二磁石を有し、第一磁石は、カムリングに設けられ第二磁石との間で反発力を生じるとともに、吸込領域及び遷移領域に設けられ、吸込領域に設けられる第一磁石と第二磁石との間で生じる反発力は、遷移領域に設けられる第一磁石と第二磁石との間で生じる反発力よりも大きいことを特徴とする。
【0016】
この発明では、ベーンがロータの回転により生じる遠心力と、背圧室内の作動流体の圧力と、によって内周カム面に押圧されつつ、第一磁石によりベーンに内周カム面から離れる向きに力が作用する構成において、吸込領域、遷移領域、及び吐出領域の順でベーンが内周カム面に押圧される押圧力を小さくすることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、ベーンポンプの作動効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の第1実施形態に係るベーンポンプの断面図である。
【
図2】本発明の第1実施形態に係るベーンポンプのロータ、カムリング、及びサイドプレートの平面図である。
【
図3】本発明の第1実施形態に係るベーンポンプにおけるロータ側から見たサイドプレートの平面図である。
【
図4】第1実施形態の第1変形例に係るベーンポンプにおける磁石の配置を示す拡大断面図であり、
図2のIV-IV線に沿った断面で示す。
【
図5】第1実施形態の第2変形例に係るベーンポンプにおける磁石の配置を示すサイドプレートの平面図であり、
図3に対応して示す。
【
図6】第1実施形態の第2変形例に係るベーンポンプの吸込領域、吐出領域、及び遷移領域における磁石とベーンとが引き付け合う吸引力を示す平面図である。
【
図7】本発明の第2実施形態に係るベーンポンプのロータ、カムリング、及びサイドプレートの平面図である。
【
図8】本発明の第2実施形態に係るベーンポンプにおけるロータ側から見たサイドプレートの平面図である。
【
図9】第2実施形態の第2変形例に係るベーンポンプの吸込領域、吐出領域、及び遷移領域における磁石とベーンとが引き付け合う吸引力を示す平面図である。
【
図10】第2実施形態の第2変形例に係るベーンポンプにおける磁石の配置を示すサイドプレートの平面図であり、
図8に対応して示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
【0020】
<第1実施形態>
図1及び
図2を参照して、本発明の第1実施形態に係るベーンポンプ100について説明する。ベーンポンプ100は、車両や産業機械に搭載される流体圧機器、例えば、パワーステアリング装置や無段変速機等の流体圧供給源として用いられる。本実施形態では、作動油を作動流体とする固定容量型のベーンポンプ100について説明する。なお、ベーンポンプ100は、可変容量型のベーンポンプであってもよい。
【0021】
ベーンポンプ100は、駆動シャフト1の端部にエンジンや電動モータ等の駆動源(図示省略)の動力が伝達され、駆動シャフト1に連結されたロータ2が回転するものである。ロータ2は、
図2において時計回りに回転する。
【0022】
ベーンポンプ100は、回転駆動されるロータ2と、ロータ2の外周面に開口する複数のスリット2aと、ロータ2に対して径方向に往復動自在に設けられた複数のベーン3と、ロータ2を収容すると共にロータ2の回転に伴ってベーン3の先端部3aが摺接する内周カム面4aを有するカムリング4と、ロータ2及びカムリング4を収容するハウジング5と、を備える。ロータ2、カムリング4、及び一対の隣り合うベーン3によって、複数のポンプ室6が区画される。
【0023】
ロータ2は環状部材であり、駆動シャフト1の先端部にスプライン結合によって連結される。ロータ2には、外周面に開口するスリット2aが放射状に形成される。
【0024】
ベーン3は、矩形平板状に形成される。ベーン3は、スリット2aに摺動自在に収装され、スリット2aから突出する方向の端部である先端部3aと、先端部3aとは反対側の端部である基端部3bと、を有する。スリット2a内には、ベーン3の基端部3bによって背圧室2bが区画される。ベーン3は、ロータ2の回転により生じる遠心力と、後述するように背圧室2bに導かれる作動油の圧力と、によりスリット2aから突出する方向に力が作用し、内周カム面4aに押圧される。
【0025】
カムリング4は、内周カム面4aが略楕円形状をした環状部材である。カムリング4は、ロータ2の回転に伴ってポンプ室6の容積が拡張する二つの吸込領域50と、ロータ2の回転に伴ってポンプ室6の容積が収縮する二つの吐出領域51と、を有する。つまり、ロータ2が一回転する間に、ベーン3は二往復しポンプ室6は拡張と収縮を二回繰り返す。また、吸込領域50と吐出領域51の間には、遷移領域52が設けられる。以下では、説明の便宜上、ポンプ室6が吸込領域50から吐出領域51へと遷移する領域を第一遷移領域52a、ポンプ室6が吐出領域51から吸込領域50へと遷移する領域を第二遷移領域52bとも称する。吸込領域50、吐出領域51、及び遷移領域52は、内周カム面4aの形状によって規定される。また、カムリング4には、後述する位置決めピン10が挿通するピン孔4bが設けられる。
【0026】
ロータ2及びカムリング4の一方の側面(
図1における下方の面)には、サイドプレート30が接触して設けられる。サイドプレート30は円板状部材である。サイドプレート30は、ロータ2の一方の側面が摺接する摺接面30aを有する。
【0027】
ロータ2、カムリング4、及びサイドプレート30は、ハウジング5に凹状に形成されたポンプ収容部5aに収容される。ポンプ収容部5aは、ポンプカバー7によって封止される。ポンプカバー7は、カムリング4の他側面に接触して設けられる。サイドプレート30とポンプカバー7は、ロータ2及びカムリング4の両側面を挟んだ状態で配置され、ポンプ室6を密閉する。サイドプレート30及びポンプカバー7は、カムリング4の一方の側面に接触して設けられるサイド部材として機能する。
【0028】
ポンプ収容部5aの底面5bには、吐出ポート32を通じてポンプ室6から吐出される作動油が導かれる高圧室16が環状に形成される。高圧室16は、底面5bに配置されるサイドプレート30によって区画される。高圧室16は、ハウジング5の外面に開口して形成される吐出通路(図示省略)に連通する。
【0029】
ポンプカバー7におけるロータ2が摺接する摺接面7aには、ポンプ室6に作動油を導く二つの吸込ポート(図示省略)と、ポンプ室6の作動油を吐出する二つの吐出ポート9とが形成される。吸込ポートは、カムリング4の二つの吸込領域50に対応して形成され、吐出ポート9は、カムリング4の二つの吐出領域51に対応して形成される。さらに、ポンプカバー7には、吸込ポートを通じてタンクの作動油をポンプ室6へと導く吸込通路(図示省略)が形成される。
【0030】
また、
図2に示すように、カムリング4には、タンクの作動油をポンプ室6へと導くための切り欠き部4cが、ポンプカバー7の吸込ポートに対応して設けられる。言い換えれば、切り欠き部4cは、二つの吸込領域50に設けられる。切り欠き部4cは、カムリング4の外周面から内周カム面4aにわたって設けられる。また、切り欠き部4cは、サイドプレート30の後述する吸込ポート31と軸方向に重なるように設けられる。
【0031】
カムリング4には、第一磁石40が設けられる。第一磁石40は、吸込領域50及び遷移領域52に設けられる。吸込領域50に設けられる第一磁石40は、言い換えれば、切り欠き部4cに設けられる。第一磁石40は、例えば、ネオジム等の永久磁石である。本実施形態では、第一磁石40は、カムリング4を軸方向に貫通して、吸込領域50及び第一遷移領域52aに二つずつ設けられ、第二遷移領域52bに一つ設けられる。なお、第一磁石40は、吸込領域50及び遷移領域52に少なくとも一つずつ設けられていればよい。第一磁石40は、遷移領域52での磁力が吸込領域50での磁力よりも小さくなるように設けられる。具体的には、遷移領域52に設けられる第一磁石40cと吸込領域50に設けられる第一磁石40aは、カムリング4の径方向におけるベーン3の先端部3aとの間の距離(言い換えれば、内周カム面4aとの間の距離)が同じであり、大きさのみが異なる。第一磁石40cは、第一磁石40aよりも小さく、同じ材料で形成される。つまり、第一磁石40cは、第一磁石40aよりも発生する磁力が弱い。なお、遷移領域52に設けられる第一磁石40cが吸込領域50に設けられる第一磁石40aよりも発生する磁力が弱い構成であれば、両者が違う材料で形成されてもよく、両者が同じ大きさで形成されてもよい。
【0032】
本実施形態では、ベーン3は、第二磁石41を有する。第二磁石41は、例えば、ベーン3の先端部3a側に埋め込まれてベーン3と一体に形成される。なお、ベーン3は、第二磁石41がベーン3の基端部3b側や中央に埋め込まれてもよく、第二磁石41のみで構成されてもよい。第二磁石41は、例えば、ネオジム等の永久磁石であり、ベーン3の先端部3a側が第一磁石40と反発するように設けられる。具体的には、第二磁石41は、ベーン3の先端部3a側の極(S極又はN極)が、第一磁石40における内周カム面4a側の極(S極又はN極)と同じになるように設けられる。言い換えれば、ベーン3は、第二磁石41が第一磁石40と反発することにより、先端部3a側が第一磁石40と反発する。カムリング4は、第一磁石40が発生する磁場に影響を受けないように、かつ、第一磁石40が発生する磁場を遮断しないように、例えば非磁性体で形成される。ベーンポンプ100の作動時における第一磁石40の作用については後述する。
【0033】
図3は、カムリング4側から見たサイドプレート30の正面図である。
図2,
図3に示すように、サイドプレート30には、ポンプ室6に作動油を導く二つの吸込ポート31と、ポンプ室6の作動油を吐出する二つの吐出ポート32と、が形成される。吸込ポート31は、カムリング4の二つの吸込領域50に対応して設けられる。吸込ポート31は、サイドプレート30におけるロータ2が摺接する摺接面30aに開口して溝状に形成される。吸込ポート31は、ポンプ収容部5aの内周面に形成された通路(図示省略)を通じてポンプカバー7の吸込ポートと連通する。したがって、吸込通路からの作動油は、ポンプカバー7の吸込ポート及びカムリング4の切り欠き部4cを通じて
図1におけるカムリング4の
図1中上側からポンプ室6に導かれるとともに、サイドプレート30の吸込ポート31を通じてカムリング4の
図1中下側からポンプ室6に導かれる。吐出ポート32は、カムリング4の吐出領域51に対応して設けられる。吐出ポート32は、摺接面30aに開口し、サイドプレート30を軸方向に貫通して円弧状に形成される。吐出ポート32は、ポンプ室6の作動油を高圧室16へ吐出する。
【0034】
サイドプレート30には、ロータ2の周方向に互いに間隔を空けて設けられる複数の導圧孔33が設けられる。本実施形態では、導圧孔33は、二つの吸込領域50及び二つの吐出領域51のそれぞれに対応して一つずつ設けられ、合計で四つ設けられる。導圧孔33は、サイドプレート30を貫通して設けられ高圧室16と背圧室2bとを連通する。導圧孔33は、ロータ2の回転に伴い、背圧室2bと重なり連通する。これにより、吐出ポート32からの高圧の作動油は、高圧室16及び導圧孔33を通じて背圧室2bに導かれる。つまり、背圧室2bには、吐出ポート32を通じて作動油が導かれる。本実施形態では、四つの導圧孔33が全て高圧室16と連通するため、複数の背圧室2bには全て同じ圧力の作動油が導かれる。
【0035】
サイドプレート30には、駆動シャフト1が挿通する貫通孔35と、位置決めピン10がそれぞれ挿通する二つのピン孔36と、が設けられる。貫通孔35は、サイドプレート30の中央に設けられる。二つのピン孔36は、カムリング4の二つのピン孔4bと軸方向に重なるように設けられる。ピン孔4b及びピン孔36に位置決めピン10が挿入されることにより、カムリング4、サイドプレート30、及びポンプカバー7の相対回転が規制される。これにより、カムリング4に対するポンプカバー7の吸込ポート8及び吐出ポート9の位置決めと、カムリング4に対するサイドプレート30の吸込ポート31及び吐出ポート32の位置決めと、が行われる。
【0036】
なお、本明細書では、吸込領域50、吐出領域51、第一遷移領域52a、及び第二遷移領域52bは、サイドプレート30の吸込ポート31または吐出ポート32との位置関係により定義される。具体的には、吸込領域50は、ロータ2の回転方向における、吸込ポート31の始端から終端までの領域である。吐出領域51は、ロータ2の回転方向における、吐出ポート32の始端から終端までの領域である。第一遷移領域52aは、ロータ2の回転方向における、吸込ポート31の終端から吐出ポート32の始端までの領域である。第二遷移領域52bは、ロータ2の回転方向における、吐出ポート32の終端から吸込ポート31の始端までの領域である。
【0037】
動力源の駆動により駆動シャフト1が回転すると、駆動シャフト1に連結されたロータ2が回転する。この際、ベーン3には、ロータ2の回転により生じる遠心力と、背圧室2b内の作動油の圧力と、が作用する。これにより、ベーン3の先端部3aが内周カム面4aを摺接する。ロータ2の回転に伴い、カムリング4内の各ポンプ室6は、ポンプカバー7の吸込ポート及びサイドプレート30の吸込ポート31を通じて作動油を吸込み、ポンプカバー7の吐出ポート9及びサイドプレート30の吐出ポート32を通じて作動油を高圧室16に吐出する。高圧室16の作動油は、吐出通路を通じて流体圧機器へ供給される。このように、カムリング4内の各ポンプ室6は、ロータ2の回転に伴う拡縮によって作動油を給排する。
【0038】
ここで、ベーンポンプ100では、ベーン3には、ポンプ室6内の作動油の圧力により、カムリング4の内周カム面4aから離れる向きにも力(以下では、「離間力」とも称する。)が作用する。吐出領域51では、ポンプ室6内の作動油の圧力が高いため、ベーン3に作用する離間力が大きい。そのため、ベーン3が内周カム面4aから離間しないように、大きい力でベーン3を内周カム面4aに向けて押圧し摺接させることが求められる。これに対して、吸込領域50では、ポンプ室6内の作動油の圧力が低いため、ベーン3に作用する離間力が小さい。また、遷移領域52では、ポンプ室6内の作動油の圧力が吸込領域50よりも高く吐出領域51よりも低いため、ベーン3に作用する離間力は、吸込領域50より大きいものの吐出領域51よりは小さい。そのため、吸込領域50及び遷移領域52においては、大きい力でベーン3を内周カム面4aに向けて押圧する必要がない。よって、仮に吸込領域50及び第一遷移領域52aにおいても、吐出領域51と同等の押圧力でベーン3を内周カム面4aに向けて押圧すると、必要以上の力でベーン3を内周カム面4aに押し付けることになる。結果として、ベーン3と内周カム面4aとの間で生じる摩擦力により、ベーンポンプ100の作動効率が低下するおそれがある。
【0039】
そこで、本実施形態のベーンポンプ100では、ベーン3(第二磁石41)と第一磁石40との間で生じる反発力を調整することにより、ベーン3と内周カム面4aとを摺接させつつ、吸込領域50及び遷移領域52においてベーン3と内周カム面4aとの間で生じる摩擦力を小さくしている。
【0040】
次に、ベーンポンプ100の作動時における第一磁石40の作用について説明する。
【0041】
本実施形態では、上記のように、ベーン3は、一体に設けられた第二磁石41により先端部3aが第一磁石40と反発するように設けられる(以下では、ベーン3に設けられる第二磁石41と、第一磁石40と、が反発することを、単に「ベーン3と第一磁石40とが反発する」とも称する。)。そのため、ベーン3の先端部3aと第一磁石40との間で生じる反発力により、ベーン3には、
図2の矢印で示すように、内周カム面4aから離れる向きに力が作用する。これにより、ベーン3の先端部3aと内周カム面4aとの摺接面で生じる摩擦力が小さくなる。本実施形態では、第一磁石40は、吸込領域50及び遷移領域52に設けられ、遷移領域52での磁力が吸込領域50での磁力よりも小さくなるように設けられる。よって、ベーン3と吸込領域50に設けられる第一磁石40aとが反発する反発力は、ベーン3と遷移領域52に設けられる第一磁石40cとが反発する反発力よりも大きい。第一磁石40は吐出領域51には設けられないため、ベーン3と第一磁石40とが反発する反発力は、吸込領域50、第一遷移領域52a、吐出領域51の順で大きい。吐出領域51では、ベーン3と第一磁石40とが反発する反発力はほとんど生じない。言い換えれば、ベーン3の先端部3aと内周カム面4aとの摺接面で生じる摩擦力は、吸込領域50、第一遷移領域52a、吐出領域51の順で小さい。
【0042】
このように、第一磁石40が吸込領域50に設けられるとともに、ベーン3と一体に第二磁石41が設けられることにより、ポンプ室6内の作動油の圧力が低くベーン3をカムリング4の内周カム面4aに向けて大きな力で押圧することが不要な吸込領域50においては、ベーン3が内周カム面4aに小さい力で押圧される。そのため、ベーン3と内周カム面4aとを摺接させつつ内周カム面4aで生じる摩擦力を小さくすることができる。一方で、ポンプ室6内の作動油の圧力が高くベーン3をカムリング4の内周カム面4aに向けて大きな力で押圧することが求められる吐出領域51においては、ベーン3を内周カム面4aに大きい力で押圧して摺接させることができる。また、ポンプ室6内の作動油の圧力が吸込領域50よりも高く吐出領域51よりも低い遷移領域52においては、吸込領域50よりも大きく吐出領域51よりも小さい力でベーン3が内周カム面4aに押圧される。そのため、ベーン3と内周カム面4aとを摺接させつつ内周カム面4aで生じる摩擦力を小さくすることができる。このように、ベーン3と第一磁石40との間で生じる反発力を調整することにより、ベーン3と内周カム面4aとを摺接させつつ内周カム面4aで生じる摩擦力を小さくすることができる。
【0043】
以上の第1実施形態によれば、以下に示す作用効果を奏する。
【0044】
ベーンポンプ100では、ベーン3の先端部3aと第一磁石40との間で生じる反発力は、吸込領域50、遷移領域52、及び吐出領域51の順で大きい。よって、吸込領域50においては、ベーン3が内周カム面4aに小さい力で押圧されるため、ベーン3と内周カム面4aとを摺接させつつ内周カム面4aで生じる摩擦力を小さくすることができる。一方で、吐出領域51においては、ベーン3を内周カム面4aに大きい力で押圧して摺接させることができる。また、遷移領域52においては、吸込領域50よりも大きく吐出領域51よりも小さい力でベーン3が内周カム面4aに押圧されるため、ベーン3と内周カム面4aとを摺接させつつ内周カム面4aで生じる摩擦力を小さくすることができる。このように、ベーン3と第一磁石40との間で生じる反発力を調整することにより、ベーン3と内周カム面4aとを摺接させつつ内周カム面4aで生じる摩擦力を小さくすることができる。
【0045】
以下に、第1実施形態の変形例について説明する。以下のような変形例も本発明の範囲内であり、以下の変形例と上記実施形態の各構成とを組み合わせたり、以下の変形例同士を組み合わせたりすることも可能である。
【0046】
<変形例1>
上記の第1実施形態では、第一磁石40は、吸込領域50及び第一遷移領域52aにおいてカムリング4を軸方向に貫通して二つ設けられ、第二遷移領域52bにおいて一つ設けられる。しかしながら、ベーン3と第一磁石40とが反発する反発力が吸込領域50、第一遷移領域52a、吐出領域51の順で大きい構成であれば、第一磁石40の数や設けられる場所は上記に限らない。
【0047】
例えば、第一磁石40が、カムリング4の径方向に延びて設けられてもよい。また、
図4は、
図2におけるIV-IV線に沿ったカムリング4の断面図である。
図4の(a)に示すように、第一磁石40が、吸込領域50において上下方向の両端部のみに設けられてもよい。さらに、
図4の(b)に示すように、第一磁石40が、吸込領域50の上方向の端部と下方向の端部とで互い違いに設けられてもよい。また、
図4の(c)に示すように、第一磁石40が、ロータ2の周方向に沿ってカムリング4に設けられてもよい。
図4の(c)では、第一磁石40は、カムリング4の厚さ方向の中央に設けられる。
図4の(b)や(c)の構成では、第一磁石40がロータ2の周方向に連続して設けられるため、第一磁石40が発生させる磁力がより均一となる。
【0048】
また、上記の第1実施形態では、遷移領域52に設けられる第一磁石40cと吸込領域50に設けられる第一磁石40aは、カムリング4の径方向におけるベーン3の先端部3aとの間の距離が同じであり、第一磁石40cの方が小さい。これに限らず、第一磁石40cと第一磁石40aが同じ大きさで形成され、第一磁石40cの方がカムリング4の径方向におけるベーン3の先端部3aとの間の距離が大きい構成であってもよい。言い換えれば、遷移領域52に設けられる第一磁石40cを内周カム面4aから離すことにより、遷移領域52での磁力が吸込領域50での磁力よりも小さくなるようにしてもよい。この構成であっても、ベーン3と第一磁石40とが反発する反発力を、吸込領域50、遷移領域52、吐出領域51の順で大きくすることができ、ベーン3と内周カム面4aとを摺接させつつ内周カム面4aで生じる摩擦力を小さくすることができる。
【0049】
また、第一磁石40は、カムリング4における吸込領域50のみに設けられてもよい。ベーン3と第一磁石40の間で生じる反発力は、ベーン3が第一磁石40に近い程大きい。そのため、この構成であっても、ベーン3と第一磁石40の間で生じる反発力は、吸込領域50、遷移領域52、吐出領域51の順で大きい。よって、ベーン3と内周カム面4aとを摺接させつつ内周カム面4aで生じる摩擦力を小さくすることができる。
【0050】
<変形例2>
上記の第1実施形態では、ベーン3と、カムリング4に設けられる第一磁石40と、が反発して内周カム面4aで生じる摩擦力を小さくする。これに代えて、
図5に示すように、サイドプレート30に第一磁石40を設け、ベーン3の基端部3bと、サイドプレート30に設けられる第一磁石40と、が引き付け合う吸引力により、内周カム面4aで生じる摩擦力を小さくしてもよい。
【0051】
具体的には、第一磁石40は、吸込領域50及び遷移領域52(第一遷移領域52a)に対応して、導圧孔33と吸込ポート31の間に設けられる。遷移領域52における第一磁石40は、吸込領域50における第一磁石40よりも、カムリング4の径方向におけるベーン3の先端部3aとの間の距離(言い換えれば、内周カム面4aとの間の距離)が大きい。この形態では、第二磁石41は、例えば、ベーン3の基端部3b側に埋め込まれてベーン3と一体に形成される。第二磁石41は、基端部3b側の極(S極又はN極)が、第一磁石40の外側の極(S極又はN極)と異なるように設けられる。これにより、ベーン3には、第一磁石40と第二磁石41の間で生じる吸引力により、
図6の矢印で示すように、内周カム面4aから離れる向きに力が作用し、上記第1実施形態と同様に、ベーン3の先端部3aと内周カム面4aとの摺接面で生じる摩擦力が小さくなる。また、ベーン3と第一磁石40との間で生じる吸引力は、ベーン3(第二磁石41)が第一磁石40に近い程大きい。よって、ベーン3と第一磁石40の間で生じる吸引力は、ベーン3が第一磁石40に近い吸込領域50、遷移領域52、吐出領域51の順で大きい。よって、上記第1実施形態と同様に、吸込領域50においてはベーン3が内周カム面4aに小さい力で押圧され、吐出領域51においてはベーン3が内周カム面4aに大きい力で押圧され、遷移領域52においては吸込領域50よりも大きく吐出領域51よりも小さい力でベーン3が内周カム面4aに押圧される。そのため、ベーン3と内周カム面4aとを摺接させつつ内周カム面4aで生じる摩擦力を小さくすることができる。
【0052】
なお、ベーン3は、第二磁石41を有さずに、磁性体で形成されてもよい。この場合であっても、ベーン3には、基端部3bと第一磁石40とが引き付け合う吸引力が作用する。これにより、内周カム面4aで生じる摩擦力を小さくすることができる。
【0053】
以上のように、ベーン3は、磁性体で形成されまたは第二磁石41を有する構成であればよい。また、第一磁石40は、ベーン3と内周カム面4aとの間で生じる摩擦力が、ベーン3と反発する反発力またはベーン3と引き付け合う吸引力により小さくなるように設けられればよい。また、反発力または吸引力は、吸込領域50、遷移領域52、及び吐出領域51の順で大きい構成であればよい。
【0054】
<第2実施形態>
次に、
図7,
図8を参照して、本発明の第2実施形態について、説明する。以下では、上記第1実施形態と異なる点を中心に説明し、上記第1実施形態と同一の構成には同一の符号を付して説明を省略する。
【0055】
上記第1実施形態のベーンポンプ100では、ベーン3は、ロータ2の回転により生じる遠心力と、背圧室2b内の作動油の圧力と、によって内周カム面4aに押圧され、内周カム面4aを摺接する。これに対し、第2実施形態のベーンポンプ200では、ベーン3は、ロータ2の回転により生じる遠心力と、ベーン103と第一磁石40とが引き付け合う吸引力と、によって内周カム面4aに押圧される。
【0056】
具体的には、ベーンポンプ200では、
図7,
図8に示すように、背圧室2bと連通する導圧孔がサイドプレート130に設けられない。つまり、背圧室2bには、高圧室16から高圧の作動油が導かれない。よって、本第2実施形態では、高圧室16及び導圧孔33を通じて背圧室2bに導かれる作動油の圧力によりベーン3を内周カム面4aに押圧する力は、発生しない。
【0057】
また、ベーンポンプ200では、ベーン3に作用する磁場を発生させる第一磁石40が、カムリング4における吸込領域50、吐出領域51、及び遷移領域52に複数設けられる。第一磁石40はカムリング4を軸方向に貫通してそれぞれ設けられる。さらに、ベーン103には、第二磁石41がベーン3の先端部103a側に埋め込まれてベーン103と一体に形成される。なお、ベーン103は、第1実施形態と同様に、第二磁石41がベーン103の基端部103b側や中央に埋め込まれてもよく、第二磁石41のみで構成されてもよい。第二磁石41は、ベーン103の先端部103aが第一磁石40と引き付け合うように設けられる。具体的には、第二磁石41は、ベーン103の先端部103a側の極(S極又はN極)が、第一磁石40における内周カム面4a側の極(S極又はN極)と異なるように設けられる。このため、ベーン103には、第一磁石40と第二磁石41との間で生じる吸引力により、
図7の矢印で示すように、内周カム面4aに近づく向きに力が作用する。よって、ベーンポンプ200では、ロータ2の回転により生じる遠心力と、ベーン103と第一磁石40との間で生じる吸引力により、ベーン103が内周カム面4aに押圧される。
【0058】
また、第一磁石40は、遷移領域52での磁力が吐出領域51での磁力よりも小さくなり、吸込領域53での磁力が遷移領域52での磁力よりも小さくなるように設けられる。具体的には、吸込領域50に設けられる第一磁石40a、吐出領域51に設けられる第一磁石40b、及び遷移領域52に設けられる第一磁石40cは、同じ材料で形成され、第一磁石40b、第一磁石40c、第一磁石40aの順で大きい。よって、ベーン3と第一磁石40の間で生じる吸引力は、吸込領域50、遷移領域52、及び吐出領域51の順で小さい。つまり、ベーン3をカムリング4の内周カム面4aに向けて押圧する押圧力は、吸込領域50、遷移領域52、及び吐出領域51の順で小さい。
【0059】
このように、上記第1実施形態と同様に、ベーン103をカムリング4の内周カム面4aに向けて大きな力で押圧することが不要な吸込領域50においては、ベーン103が内周カム面4aに小さい力で押圧される。そのため、ベーン103と内周カム面4aとを摺接させつつ内周カム面4aで生じる摩擦力を小さくすることができる。一方で、ポンプ室6内の作動油の圧力が高くベーン103をカムリング4の内周カム面4aに向けて大きな力で押圧することが求められる吐出領域51においては、ベーン103を内周カム面4aに大きい力で押圧して摺接させることができる。また、ポンプ室6内の作動油の圧力が吸込領域50よりも高く吐出領域51よりも低い遷移領域52においては、吸込領域50よりも大きく吐出領域51よりも小さい力でベーン3が内周カム面4aに押圧される。そのため、ベーン103と内周カム面4aとを摺接させつつ内周カム面4aで生じる摩擦力を小さくすることができる。このように、ベーン103と第一磁石40との間で生じる吸引力を調整することにより、ベーン3と内周カム面4aとを摺接させつつ内周カム面4aで生じる摩擦力を小さくすることができる。
【0060】
また、吸込領域50に第一磁石40b,40cよりも小さい第一磁石40aを設けることで、吸込領域50において、ベーン3と内周カム面4aとが離れてしまうことが防止される。なお、吸込領域50に第一磁石40aが設けられなくてもよい。
【0061】
以上の第2実施形態によれば、以下に示す作用効果を奏する。
【0062】
ベーンポンプ200では、ロータ2の回転により生じる遠心力と、ベーン103と第一磁石40との間で生じる吸引力により、ベーン103が内周カム面4aに押圧される。また、ベーン103と第一磁石40との間で生じる吸引力は、吸込領域50、遷移領域52、及び吐出領域51の順で小さい。よって、吸込領域50においては、ベーン103が内周カム面4aに小さい力で押圧されるため、ベーン103と内周カム面4aとを摺接させつつ内周カム面4aで生じる摩擦力を小さくすることができる。一方で、吐出領域51においては、ベーン103を内周カム面4aに大きい力で押圧して摺接させることができる。また、遷移領域52においては、吸込領域50よりも大きく吐出領域51よりも小さい力でベーン103が内周カム面4aに押圧されるため、ベーン103と内周カム面4aとを摺接させつつ内周カム面4aで生じる摩擦力を小さくすることができる。このように、ベーン103と第一磁石40との間で生じる吸引力を調整することにより、ベーン103と内周カム面4aとを摺接させつつ内周カム面4aで生じる摩擦力を小さくすることができる。
【0063】
以下に、第2実施形態の変形例について説明する。以下のような変形例も本発明の範囲内であり、以下の変形例と上記実施形態の各構成とを組み合わせたり、以下の変形例同士を組み合わせたりすることも可能である。
【0064】
<変形例1>
上記の第2実施形態では、第一磁石40は、カムリング4を軸方向に貫通するとともに、吸込領域50、吐出領域51、及び遷移領域52にそれぞれ設けられる。しかしながら、ベーン3と第一磁石40の間で生じる吸引力が吸込領域50、遷移領域52、吐出領域51の順で小さい構成であれば、第一磁石40の数や設けられる場所は上記に限らない。
【0065】
例えば、第1実施形態の変形例1で示したように、第一磁石40が設けられてもよい。具体的には、第一磁石40は、カムリング4の径方向に延びて設けられてもよく、カムリング4において上下方向の両端部のみに設けられてもよく(
図4の(a))、カムリング4の上方向の端部と下方向の端部とで互い違いに設けられてもよく(
図4の(b))、ロータ2の周方向に沿ってカムリング4に設けられてもよい(
図4の(c))。
【0066】
また、第一磁石40は、カムリング4における吐出領域51のみに設けられてもよい。ベーン103と第一磁石40の間で生じる吸引力は、ベーン103が第一磁石40に近い程大きい。そのため、この構成であっても、ベーン3と第一磁石40の間で生じる吸引力は、吸込領域50、遷移領域52、吐出領域51の順で小さい。よって、ベーン3と内周カム面4aとを摺接させつつ内周カム面4aで生じる摩擦力を小さくすることができる。
【0067】
<変形例2>
上記の第2実施形態では、カムリング4に第一磁石40が設けられ、ベーン3は、ロータ2の回転により生じる遠心力と、先端部103aと第一磁石40とが引き付け合う吸引力と、によって内周カム面4aに押圧される。これに代えて、サイドプレート30に第一磁石40が円弧状に設けられ、ベーン103は、基端部103bと第一磁石40の間で生じる反発力と、ロータ2の回転により生じる遠心力と、によって内周カム面4aに押圧される構成であってもよい。
【0068】
具体的には、第一磁石40は、
図9,
図10に示すように、貫通孔35と吐出ポート32の間にロータ2の周方向に沿って設けられる。また、第一磁石40は、吐出領域51及び遷移領域52に対応して、吐出領域51及び遷移領域52にわたって設けられる。この形態では、第二磁石41は、例えば、ベーン103の基端部103b側に埋め込まれてベーン103と一体に形成される。第二磁石41は、基端部3b側の極(S極又はN極)が、第一磁石40の外側の極(S極又はN極)と同じになるように設けられる。これにより、ベーン3には、
図9の矢印で示すように、内周カム面4aに近づく向きに力が作用する。また、第一磁石40は、遷移領域52では貫通孔35に近い位置に設けられ、吐出領域51では貫通孔35から遠い位置に設けられる。言い換えれば、第一磁石40は、遷移領域52ではベーン103から離れて設けられ、吐出領域51ではベーン103の近くに設けられる。これにより、ベーン103と第一磁石40の間で生じる反発力は、ベーン3が第一磁石40に近い吐出領域51、遷移領域52、吸込領域50の順で大きい。つまり、ベーン103をカムリング4の内周カム面4aに向けて押圧する押圧力は、吸込領域50、遷移領域52、吐出領域51の順で小さい。よって、上記第2実施形態と同様に、吸込領域50においてはベーン103が内周カム面4aに小さい力で押圧され、吐出領域51においてはベーン103が内周カム面4aに大きい力で押圧され、第一遷移領域52aにおいては吸込領域50よりも大きく吐出領域51よりも小さい力でベーン103が内周カム面4aに押圧される。そのため、ベーン103と内周カム面4aとを摺接させつつ内周カム面4aで生じる摩擦力を小さくすることができる。
【0069】
<変形例3>
上記の第2実施形態では、ベーン103は、第二磁石41を有し、先端部103aが第一磁石40と引き付け合うように設けられる。これに限らず、ベーン103は、磁性体で形成されてもよい。この場合であっても、ベーン103には、先端部103aと第一磁石40とが引き付け合う吸引力が作用する。これにより、上記の第2実施形態と同様の効果を奏する。
【0070】
以上のように、ベーン103は、磁性体で形成されまたは第二磁石41を有する構成であればよい。また、第一磁石40は、ベーン103と反発する反発力またはベーン103と引き付け合う吸引力によりベーン3を内周カム面4aに押圧するように設けられればよい。また、反発力または吸引力は、吸込領域50、遷移領域52、及び吐出領域51の順で小さい構成であればよい。
【0071】
以下、本発明の実施形態の構成、作用、及び効果をまとめて説明する。
【0072】
ベーンポンプ200は、回転駆動されるロータ2と、ロータ2の外周面に開口する複数のスリット2aと、スリット2aに摺動自在に収装される複数のベーン103と、ロータ2の回転に伴ってベーン103の先端部103aが摺接する内周カム面4aを有するカムリング4と、ロータ2、カムリング4、及び一対の隣り合うベーン103によって区画されるポンプ室6と、ロータ2の一方の側面が摺接する摺接面30aを有するサイド部材としてのサイドプレート130と、摺接面30aに開口しポンプ室6に作動流体を導く吸込ポート31と、摺接面30aに開口しポンプ室6から吐出される作動流体を導く吐出ポート32と、ベーン103に作用する磁場を発生させる第一磁石40と、を備え、ベーン103は、磁性体で形成されまたは第二磁石41を有し、ロータ2の回転により生じる遠心力と、第一磁石40と反発する反発力または第一磁石40と引き付け合う吸引力と、によって内周カム面4aに押圧され、反発力または吸引力は、吸込ポート31が設けられポンプ室6の容積が拡張する吸込領域50、吐出ポート32が設けられポンプ室6の容積が収縮する吐出領域51、及び吸込領域50と吐出領域51の間の遷移領域52において、吸込領域50、遷移領域52、及び吐出領域51の順で小さい。
【0073】
この構成では、ロータ2の回転により生じる遠心力と、ベーン103と第一磁石40との間で生じる反発力または吸引力により、ベーン103が内周カム面4aに押圧される。また、反発力または吸引力は、吸込領域50、遷移領域52、及び吐出領域51の順で小さい。よって、ポンプ室6内の作動流体の圧力が低くベーン103をカムリング4の内周面に向けて大きな力で押圧することが不要な吸込領域50においては、ベーン103が内周カム面4aに小さい力で押圧されるため、ベーン103と内周カム面4aとを摺接させつつ内周カム面4aで生じる摩擦力を小さくすることができる。一方で、ポンプ室6内の作動流体の圧力が高くベーン103をカムリング4の内周面に向けて大きな力で押圧することが求められる吐出領域51においては、ベーン103を内周カム面4aに大きい力で押圧して摺接させることができる。また、ポンプ室6内の作動流体の圧力が吸込領域50よりも高く吐出領域51よりも低い遷移領域52においては、吸込領域50よりも大きく吐出領域51よりも小さい力でベーン103が内周カム面4aに押圧される。そのため、ベーン103と内周カム面4aとを摺接させつつ内周カム面4aで生じる摩擦力を小さくすることができる。このように、ベーン103と第一磁石40との間で生じる反発力または吸引力を調整することにより、ベーン103と内周カム面4aとを摺接させつつ内周カム面4aで生じる摩擦力を小さくすることができる。
【0074】
また、第一磁石40は、カムリング4に設けられベーン103との間で吸引力を生じるとともに、吐出領域51及び遷移領域52に複数設けられ、吐出領域51に設けられる第一磁石40bとベーン103との間で生じる吸引力は、遷移領域52に設けられる第一磁石40cとベーン103との間で生じる吸引力よりも大きい。
【0075】
また、ベーン103は、第二磁石41を有し、第一磁石40は、円弧状に形成されてサイドプレート130に設けられベーン103との間で反発力を生じるとともに、吐出領域51及び遷移領域52に対応して設けられ、吐出領域51に対応して設けられる第一磁石40bと第二磁石41との間で生じる反発力は、遷移領域52に対応して設けられる第一磁石40cと第二磁石41との間で生じる反発力よりも大きい。
【0076】
これらの構成では、ベーン103がロータ2の回転により生じる遠心力と、第一磁石40との間で生じる反発力または吸引力と、によって内周カム面4aに押圧される構成において、吸込領域50、遷移領域52、及び吐出領域51の順でベーン103が内周カム面4aに押圧される押圧力を小さくすることができる。
【0077】
また、ベーンポンプ100は、回転駆動されるロータ2と、ロータ2の外周面に開口する複数のスリット2aと、スリット2aに摺動自在に収装される複数のベーン3と、ロータ2の回転に伴ってベーン3の先端部3aが摺接する内周カム面4aを有するカムリング4と、ロータ2、カムリング4、及び一対の隣り合うベーン3によって区画されるポンプ室6と、ロータ2の一方の側面が摺接する摺接面30aを有するサイド部材としてのサイドプレート30と、摺接面30aに開口しポンプ室6に作動流体を導く吸込ポート31と、摺接面30aに開口しポンプ室6から吐出される作動流体を導く吐出ポート32と、スリット2a内においてベーン3の基端部3bによって区画され、吐出ポート32を通じて作動流体が導かれる背圧室2bと、ベーン3に作用する磁場を発生させる第一磁石40と、を備え、ベーン3は、磁性体で形成され第二磁石41を有し、ロータ2の回転により生じる遠心力と、背圧室2b内の作動流体の圧力と、によって内周カム面4aに押圧され、第一磁石40は、ベーン3と内周カム面4aとの間で生じる摩擦力が、ベーン3と反発する反発力またはベーン3と引き付け合う吸引力により小さくなるように設けられ、反発力または吸引力は、吸込ポート31が設けられポンプ室6の容積が拡張する吸込領域50、吐出ポート32が設けられポンプ室6の容積が収縮する吐出領域51、及び吸込領域50と吐出領域51の間の遷移領域52において、吸込領域50、遷移領域52、及び吐出領域51の順で大きい。
【0078】
この構成では、ベーン3と第一磁石40との間で生じる反発力または吸引力により、ベーン3には内周カム面4aから離れる向きに力が作用し、ベーン3と内周カム面4aとの摺接面で生じる摩擦力が小さくなる。また、反発力または吸引力は、吸込領域50、遷移領域52、及び吐出領域51の順で大きい。よって、ポンプ室6内の作動流体の圧力が低くベーン3をカムリング4の内周面に向けて大きな力で押圧することが不要な吸込領域50においては、ベーン3が内周カム面4aに小さい力で押圧されるため、ベーン3と内周カム面4aとを摺接させつつ内周カム面4aで生じる摩擦力を小さくすることができる。一方で、ポンプ室6内の作動流体の圧力が高くベーン3をカムリング4の内周面に向けて大きな力で押圧することが求められる吐出領域51においては、ベーン3を内周カム面4aに大きい力で押圧して摺接させることができる。また、ポンプ室6内の作動流体の圧力が吸込領域50よりも高く吐出領域51よりも低い遷移領域52においては、吸込領域50よりも大きく吐出領域51よりも小さい力でベーン3が内周カム面4aに押圧される。そのため、ベーン3と内周カム面4aとを摺接させつつ内周カム面4aで生じる摩擦力を小さくすることができる。このように、ベーン3と第一磁石40との間で生じる反発力または吸引力を調整することにより、ベーン3と内周カム面4aとを摺接させつつ内周カム面4aで生じる摩擦力を小さくすることができる。
【0079】
また、ベーン3は、第二磁石41を有し、第一磁石40は、カムリング4に設けられ第二磁石41との間で反発力を生じるとともに、吸込領域50及び遷移領域52に設けられ、吸込領域50に設けられる第一磁石40aと第二磁石41との間で生じる反発力は、遷移領域52に設けられる第一磁石40cと第二磁石41との間で生じる反発力よりも大きい。
【0080】
この構成では、ベーン3がロータ2の回転により生じる遠心力と、背圧室2b内の作動流体の圧力と、によって内周カム面4aに押圧されつつ、第一磁石40によりベーン3に内周カム面4aから離れる向きに力が作用する構成において、吸込領域50、遷移領域52、及び吐出領域51の順でベーン3が内周カム面4aに押圧される押圧力を小さくすることができる。
【0081】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【0082】
なお、上記実施形態の変形例では、サイドプレート30,130に第一磁石40が設けられる形態について説明したが、ポンプカバー7や、ポンプカバー7とロータ2の間に設けられる別のサイドプレートに第一磁石40が設けられてもよい。
【符号の説明】
【0083】
2・・・ロータ、2a・・・スリット、2b・・・背圧室、3,103・・・ベーン、3a,103a・・・先端部、3b,103b・・・基端部、4・・・カムリング、4a・・・内周カム面、30,130・・・サイドプレート(サイド部材)、30a・・・摺接面、31・・・吸込ポート、32・・・吐出ポート、40,40a,40b,40c・・・第一磁石、41・・・第二磁石、50・・・吸込領域、51・・・吐出領域、52a・・・第一遷移領域(遷移領域)、52b・・・第二遷移領域(遷移領域)、100,200・・・ベーンポンプ