(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024020076
(43)【公開日】2024-02-14
(54)【発明の名称】冷却器
(51)【国際特許分類】
F28F 25/08 20060101AFI20240206BHJP
F24F 1/0007 20190101ALI20240206BHJP
F24F 5/00 20060101ALI20240206BHJP
【FI】
F28F25/08 E
F24F1/0007 331
F24F5/00 Z
F28F25/08 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022122970
(22)【出願日】2022-08-01
(71)【出願人】
【識別番号】510075387
【氏名又は名称】活水プラント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076473
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100188765
【弁理士】
【氏名又は名称】赤座 泰輔
(74)【代理人】
【識別番号】100112900
【弁理士】
【氏名又は名称】江間 路子
(74)【代理人】
【識別番号】100163164
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 敏之
(72)【発明者】
【氏名】飯田 克己
(72)【発明者】
【氏名】飯田 祐史
(72)【発明者】
【氏名】鷹取 倫之
【テーマコード(参考)】
3L050
3L054
【Fターム(参考)】
3L050BB04
3L054BA05
(57)【要約】
【課題】冷却性能が向上された冷却器を提供すること。
【解決手段】冷却器200は、複数の板状樹脂成形体40が配設されて冷却接触部4が形成され、冷却接触部4に水を噴射することによって、水が気化して気化熱によって冷却される。板状樹脂成形体40は、複数の樹脂網素線42Bを管状の網体に成形して平坦状にした扁平網管41を、並列させた板状のものであり、板状樹脂成形体40を構成する樹脂網素線42Bが光触媒としての酸化チタン45を含有する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の板状樹脂成形体が配設されて冷却接触部が形成され、該冷却接触部に水を噴射することによって冷却する冷却器であって、
該板状樹脂成形体は、複数の樹脂網素線を管状の網体に成形して平坦状にした扁平網管を、並列させた板状のものであり、
該樹脂網素線が光触媒を含有する、ことを特徴とする冷却器。
【請求項2】
前記樹脂網素線が金属殺菌剤を含有することを特徴とする請求項1に記載の冷却器。
【請求項3】
複数の板状樹脂成形体が配設されて冷却接触部が形成され、該冷却接触部に水を噴射することによって冷却する冷却器であって、
該板状樹脂成形体は、複数の樹脂網素線を管状の網体に成形して平坦状にした扁平網管を、並列させた板状のものであり、
少なくとも該扁平網管の外側表面に、光触媒を含有する合成樹脂組成物が付着している、ことを特徴とする冷却器。
【請求項4】
前記樹脂網素線が疎水性樹脂から形成され、
前記扁平網管の表面に、前記合成樹脂組成物が付着していない部分がある、ことを特徴とする請求項3に記載の冷却器。
【請求項5】
前記合成樹脂組成物が金属殺菌剤を含有することを特徴とする請求項3又は4に記載の冷却器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水の気化熱を利用した冷却器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、水の気化熱(蒸発熱)を利用した冷却器が知られている。特許文献1の冷却器は、蛇行管の蛇行面に水透過性のシートを添着させ、水透過性のシートに散布水を散布し、散布水の気化の潜熱により、蛇行管内を循環する流下水を冷却させている。また、特許文献2の冷却器は、垂直に配設された扁平網管に、温水を接触させ、扁平網管と温水に送風機を用いて通風させることにより、温水を冷却して冷却水にしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005-351610号公報
【特許文献2】特公平6-58199号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献に記載の従来の冷却器には、冷却性能を向上させたいという要望がある。本明細書の技術が解決しようとする課題は、上述の点に鑑みてなされたものであり、冷却性能が向上された冷却器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書の実施形態に係る冷却器は、複数の板状樹脂成形体が配設されて冷却接触部が形成され、該冷却接触部に水を噴射することによって冷却する冷却器であって、
該板状樹脂成形体は、複数の樹脂網素線を管状の網体に成形して平坦状にした扁平網管を、並列させた板状のものであり、
該樹脂網素線が光触媒を含有する、ことを特徴とする。
【0006】
本明細書の実施形態に係る冷却器によれば、水が冷却接触部に噴射されて気化することにより、気化熱によって冷却接触部が冷却される。冷却接触部に噴射された水は、樹脂網素線に含有される光触媒の親水性を高める効果により、樹脂網素線の表面になじみ、広く覆う。このため、噴射された水は、樹脂網素線への接触面積を大きくすることができ、冷却器の冷却性能を向上させることができる。
【0007】
また、上記冷却器において、前記樹脂網素線が金属殺菌剤を含有する構成とすることができる。
【0008】
これによれば、金属殺菌剤の殺菌能力により、冷却器内を殺菌することができる。
【0009】
ここで、本明細書の実施形態に係る冷却器は、複数の板状樹脂成形体が配設されて冷却接触部が形成され、該冷却接触部に水を噴射することによって冷却する冷却器であって、
該板状樹脂成形体は、複数の樹脂網素線を管状の網体に成形して平坦状にした扁平網管を、並列させた板状のものであり、
少なくとも該扁平網管の外側表面に、光触媒を含有する合成樹脂組成物が付着している、ことを特徴とする。
【0010】
本明細書の実施形態に係る冷却器によれば、水が冷却接触部に噴射されて気化することにより、気化熱によって冷却接触部を冷却する。冷却接触部に噴射された水は、合成樹脂組成物に含有される光触媒の親水性を高める効果により、合成樹脂組成物が付着した樹脂網素線の表面になじみ、広く覆う。このため、噴射された水は、樹脂網素線への接触面積を大きくすることができ、冷却器の冷却性能を向上させることができる。
【0011】
また、上記冷却器において、前記樹脂網素線が疎水性樹脂から形成され、
前記扁平網管の表面に、前記合成樹脂組成物が付着していない部分がある、構成とすることができる。
【0012】
これによれば、樹脂網素線の合成樹脂組成物が付着している部分は、親水性を示して水が馴染み、合成樹脂組成物が付着していない部分は、疎水性を示して水は弾かれる。光触媒は合成樹脂組成物の合成樹脂を分解する能力をも有し、扁平網管の表面に付着した合成樹脂組成物は、長期的に劣化消滅する。合成樹脂組成物が劣化消滅した際に、水の状態の差(馴染むか弾かれるか)がなくなり、扁平網管に付着した水は全て弾かれるため、合成樹脂組成物の劣化消滅を容易に判断することができる。
【0013】
また、上記冷却器において、前記合成樹脂組成物が金属殺菌剤を含有する構成とすることができる。
【0014】
これによれば、金属殺菌剤の殺菌能力により、冷却器内を殺菌することができる。
【発明の効果】
【0015】
本明細書の実施形態に係る冷却器によれば、冷却器の冷却性能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】第一実施形態の冷却器の全体の概念図である。
【
図2】第二実施形態の冷却器の全体の概念図である。
【
図3】第三実施形態の冷却器の全体の概念図である。
【
図4】実施形態の冷却器に用いられる冷却接触部の斜視図である。
【
図5】同冷却接触部を形成する板状樹脂成形体の正面図である。
【
図6】同板状樹脂成形体を形成する扁平網管の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(第一実施形態)
以下、本明細書の第一実施形態の冷却器100を図面に基づいて説明する。本明細書および特許請求の範囲における各用語の意味は次の通りである。「質量部」(配合単位における)は、特に断らない限り、揮発分を除いた「不揮発分の質量部」を意味する。また、「親水性」は、水の接触角が20°以下であるものとする。
【0018】
図1に示すように、第一実施形態の冷却器100は、表面に散布された水が気化することによって冷却される冷却接触部4と、冷却接触部4に水を散布するとともに滴り落ちた水を循環させる循環水路5と、冷却された冷却接触部4の周囲の冷風CWを送風する送風機3と、冷却接触部4などを覆う容器2とを備える。冷却接触部4は、表面に散布された水が気化することによって冷却される樹脂網素線42が集積した扁平網管41を集積させて形成させたものである。冷却器100は、送風機3によって、冷却接触部4の周囲の冷やされた冷風CWを、冷却すべき場所に送風する。冷却すべき場所として、その一部が開放されている、家畜を飼養する畜舎、販売施設の市場、などがあり、これらは雑菌の混入を防ぐ必要があるため、冷却器100には殺菌機能が備えられているものとすることができる。
【0019】
本明細書において、冷却器100の向きは、
図1に示すように、上下は設置された状態での上下とし、前後は空気吹出口22側を前とし、左右は冷却器100を前から見た際の左右とし、図示で使用する、Fは前、Bは後、Uは上、Dは下、Lは左、Rは右を示す。また、左右方向を幅(WI)、前後方向を深さ(DE)、上下方向を高さ(HI)と表現することがあり、冷却器100の内部を基準に、内側又は外側と表現することがある。
【0020】
図1に示すように、第一実施形態の冷却器100は、冷却接触部4を構成する樹脂網素線42が集積した扁平網管41は、その表面に、光触媒として酸化チタン45を含有する合成樹脂組成物47を付着させたものを使用している。扁平網管41の表面に光触媒の酸化チタン45が付着しているため、水は、光触媒の親水性を高める効果により、冷却接触部を形成する網管の表面を薄く広く覆い、水の単位質量あたりの網管への接触面積を大きくすることができ、冷却器100の冷却性能を向上させることができる。
【0021】
扁平網管41は、
図6に示すように、複数の樹脂網素線42を円筒状に網体を成形したものを半径方向に対向する2つの軸方向の線の付近を互いに間隔をおいて接着させて扁平としたものである。樹脂網素線42は、カーボンブラックで着色された疎水性(親油性)樹脂のポリエチレンから構成される。扁平網管41の短手方向の長さは50~200mmであり、長手方向の長さは冷却接触部4の高さに合わせて例えば1000~2000mmとすることができる。
【0022】
複数の扁平網管41は、独立して揺動可能に左右に並列させ、上端と必要に応じて下端をそれぞれ連結紐40aで連結させて、板状樹脂成形体40とした。冷却接触部4は、複数の板状樹脂成形体40を前後に並列させて、支持枠48に吊下げて構成される。それぞれの扁平網管41は、独立して揺動し、ひらひらと動くため、扁平網管41に噴射された水と空気との接触効率が良好なものとなり、冷却効率に優れるものとなる。
【0023】
扁平網管41の少なくとも外側表面には、一部分41aを除いて、合成樹脂組成物47が付着している。合成樹脂組成物47は、合成樹脂に、酸化チタン45及び必要に応じて金属殺菌剤46としての銀が含有される。扁平網管41は、疎水性樹脂のポリエチレンの樹脂網素線42から形成されているため、水が接触しても弾かれ、水はその表面を十分に覆うことができず、水の単位質量あたりの扁平網管41への接触面積が小さい。このため、扁平網管41の表面に、光触媒の酸化チタン45を含有する合成樹脂組成物47が付着させて、表面の水の接触角を下げて、水の単位質量あたりの扁平網管41への接触面積を大きくし、扁平網管41(冷却器100)の冷却性能を向上させている。
【0024】
合成樹脂は、合成樹脂組成物47を扁平網管41に密着させるとともに、合成樹脂組成物47に含有される酸化チタン45及び銀を保持するバインダーとして作用するものである。合成樹脂には、比較的親水性のアクリル樹脂、ウレタン樹脂、酢酸ビニル樹脂などを使用することができる。これらは、市販品を使用することができる。これにより、扁平網管41を形成するポリエチレンより水の接触角を下げることができる。しかし、これら樹脂でも水の接触角が高く、水が接触してもその表面を十分に覆うことができないため、合成樹脂組成物47には、水の接触角を下げる光触媒の酸化チタン45を含有させている。
【0025】
酸化チタン45は、光触媒として作用するものであり、扁平網管41の表面の水の接触角を下げるとともに、扁平網管41の表面に付着した雑菌を含めた有機物を分解するものである。酸化チタン45は、光触媒効果を発揮する比表面積が約30~100m2/gの結晶型がアナタースの市販品を使用することができる。合成樹脂組成物47は、酸化チタンを含有することにより、扁平網管41の表面の水の接触角を下げて、水の単位質量あたりの扁平網管41への接触面積を大きくし、扁平網管41(冷却器100)の冷却性能を向上させる。また、酸化チタン45が扁平網管41の表面に付着した雑菌を含めた有機物を分解するため、冷却器100から送風される冷風CWは、雑菌が減少されたものであるため、送風される先の家畜を飼養する畜舎や販売施設の市場などの衛生を守ることができる。
【0026】
光触媒としての酸化チタン45は、合成樹脂組成物47を構成する合成樹脂100質量部に対して、20~200質量部含有させることができる。合成樹脂組成物47が付着した樹脂網素線42の光触媒の特性(親水性及び有機物分解性)を好適に発揮することができるためである。酸化チタン45の含有量が合成樹脂100質量部に対して20質量部未満である場合には、樹脂網素線42に十分な光触媒の特性を付与することができないおそれがある。一方、200質量部を超えると、酸化チタン45が過剰な量となり、不経済となるおそれがある。より好ましくは、ポリエチレン100質量部に対する酸化チタン45の含有量は、50~150質量部であり、さらに好ましくは、80~120質量部である。
【0027】
金属殺菌剤46は、殺菌性を有する金属を使用することができ、金属殺菌剤46として、銀、銅などを使用することができる。酸化チタン45の雑菌の分解性に加え、金属殺菌剤46の殺菌性によって、冷却器100から送風される冷風CWは、雑菌がより減少されるため、送風される先の家畜を飼養する畜舎、販売施設の市場の衛生をより守ることができる。
【0028】
金属殺菌剤46は、合成樹脂組成物47を構成する合成樹脂100質量部に対して、20~200質量部含有させることができる。合成樹脂組成物47が付着した樹脂網素線42の殺菌性を好適に発揮することができるためである。金属殺菌剤46の含有量が合成樹脂100質量部に対して20質量部未満である場合には、樹脂網素線42Bに十分な殺菌性を付与することができないおそれがある。一方、200質量部を超えると、金属殺菌剤46が過剰な量となり、不経済となるおそれがある。より好ましくは、ポリエチレン100質量部に対する金属殺菌剤46の含有量は、50~150質量部であり、さらに好ましくは、80~120質量部である。
【0029】
合成樹脂組成物47の扁平網管41(樹脂網素線42)に対する塗布量は、扁平網管41の100質量部に対して5~50質量部とすることができる。好適に扁平網管41に光触媒の特性と必要により金属殺菌剤46の効果を付与することができるためである。合成樹脂組成物47の塗布量が扁平網管41の100質量部に対して5質量部未満である場合には、扁平網管41に付着する光触媒(金属殺菌剤46)が少なく、これらの効果が十分に発揮することができないおそれがある。一方、50質量部を超えると、光触媒(金属殺菌剤46)が過剰な量となり、不経済となるおそれがある。より好ましくは、扁平網管41の100質量部に対する合成樹脂組成物47の塗布量は、7~30質量部であり、さらに好ましくは、10~20質量部である。
【0030】
合成樹脂組成物47は、一部分41aを除いて、扁平網管41の表面に付着している。扁平網管41の一部分41aは、合成樹脂組成物47が付着していないため、疎水性樹脂のポリエチレンが露呈している。このため、扁平網管41は、一部分41aを除いた部分では酸化チタン45の親水性により表面の水が馴染むが、一部分41aではポリエチレンの疎水性により表面の水が弾かれ、差が生じるものとなる。光触媒の酸化チタン45は、有機物を分解するため、酸化チタン45を保持するバインダーとしての合成樹脂をも分解する。つまり、合成樹脂組成物47は、経時的に分解され、消滅するものである。合成樹脂組成物47が付着している部分は、親水性を示して水が馴染み、合成樹脂組成物47が付着していない部分は、疎水性を示して水は弾かれる。合成樹脂組成物47が長期的に劣化消滅した際に、水の状態の差(馴染むか弾かれるか)がなくなり、扁平網管41に付着した水は全て弾かれるため、合成樹脂組成物47の劣化消滅を容易に判断することができる。なお、合成樹脂組成物47が劣化消滅した際には、再度、合成樹脂組成物47を塗布することにより、その機能(親水性など)を回復させることができる。
【0031】
循環水路5は、
図1に示すように、冷却接触部4から滴り落ちる水を回収する水槽51、水を循環させる配管52、水を循環させる動力源の循環ポンプ53、配管52中の水を殺菌する殺菌回路54、及び、水を冷却接触部4に散布する散水機56、から構成される。
【0032】
水槽51は、循環水路5中に水を張り巡らせる水を蓄えるとともに、冷却接触部4から滴り落ちる水を回収する槽である。水槽51は、常に一定量の水が蓄えることができるように水位調整器58が設けられ、浮き玉58aが沈むことにより水道管58bから注水されて一定量の水が蓄えられる。また、水槽51には、水槽51内の水に菌が繁殖するのを防ぐため、殺菌剤を投入する薬剤投入機62が設けられている。殺菌剤には、塩素(次亜塩素酸)などを使用することができる。
【0033】
殺菌回路54は、配管52中の水に対して殺菌を施す水路であり、循環水路5から水を引き込んで戻すように、循環水路5に並列に設けられ、電磁弁54aの切り替えによって、任意に水を殺菌回路54に通すことができるように構成される。殺菌回路54には、水に対して殺菌を施す紫外線殺菌灯55が備えられ、殺菌剤による殺菌に加え、菌の繁殖を抑制している。
【0034】
散水機56は、冷却接触部4に上から水を散布する配管であり、前後方向の配管の前後に等間隔に複数の噴射ノズル56aを備えた散水機56を左右に複数本並べた。
【0035】
容器2は、冷却接触部4を覆い外部から遮断する鋼板製の容器であり、外側の表面には遮熱塗料が塗装されている。冷却器100は、多くの場合、屋外に設置されるため、太陽光の輻射熱による温度上昇を遮熱塗料が抑制する。また、容器2内には、紫外線殺菌灯61と送風機3が備えられている。
【0036】
紫外線殺菌灯61は、容器2内の殺菌を行なうとともに、光触媒の酸化チタン45の光触媒性能を活性化させるものである。光触媒性能が活性化した酸化チタン45は、親水性により表面の水を冷却接触部4(樹脂網素線42)に馴染ませて冷却効率を上げ、有機物分解性により雑菌を分解する。送風機3は、水の気化熱によって、冷やされた冷却接触部4の周囲の冷風CWを、冷却すべき場所に送風する。
【0037】
水槽51に貯められた水は、循環水路5内を循環して散水機56の噴射ノズル56aから冷却接触部4に噴射される。水は、循環水路5を循環する際に、水に含まれる殺菌剤と殺菌回路54の紫外線殺菌灯55の照射を受けることにより、水に含まれる雑菌が死滅される。
【0038】
冷却接触部4に噴射された水は、冷却接触部4を構成する疎水性のポリエチレンからなる樹脂網素線42に接触する。冷却接触部4を覆う容器2内には、紫外線殺菌灯61により、紫外線が発せられている。ポリエチレンからなる樹脂網素線42の表面には、光触媒の酸化チタン45を含有する合成樹脂組成物が付着しているため、光触媒の酸化チタン45の親水性を高める効果により、噴射された水は、樹脂網素線42の表面に馴染み、広い面積を覆う。広い面積を覆った水は、徐々に蒸発し、蒸発する際の気化熱によって冷却接触部4を冷却する。冷却接触部4を構成するそれぞれの扁平網管41は、独立して揺動し、ひらひらと動くため、水と空気との接触効率が良好なものとなり、効率よく冷却接触部4が冷却される。また、光触媒の酸化チタン45は、有機物を分解するため、水に残存する菌などを消滅させる。
【0039】
冷却された冷却接触部4は、周りの空気を冷やして、冷風CWを作り出す。冷風CWは、冷却器100の容器2に設けられた送風機3によって、家畜を飼養する畜舎、販売施設の市場などに送風される。
【0040】
(第二実施形態)
図2に示すように、第二実施形態の冷却器200は、冷却接触部4を構成する樹脂網素線42Bに、光触媒として酸化チタン45と必要に応じて金属殺菌剤46としての銀を含有させている。樹脂網素線42Bが合成樹脂組成物を介さずに光触媒と金属殺菌剤46を含有している点が第一実施形態に係る冷却器100と異なる。その他は、第一実施形態に係る冷却器100と同じであるため、対応する要素については第一実施形態と同じ符号を用い、その説明は省略する(以下の実施形態においても同じ。)。
【0041】
樹脂網素線42Bは、疎水性樹脂のポリエチレンに、光触媒として酸化チタン45、金属殺菌剤46としての銀及び着色剤としてのカーボンブラックを含有させたものである。扁平網管41Bは、第一実施形態の扁平網管41同様、
図6に示すように、複数の樹脂網素線42を円筒状に網体を成形したものを半径方向に対向する2つの軸方向の線の付近を互いに間隔をおいて接着させて扁平としたものである。
【0042】
光触媒は、樹脂網素線42Bを構成するポリエチレン100質量部に対して、1~100質量部含有させることができる。樹脂網素線42Bの親水性を好適に発揮することができるためである。光触媒の含有量がポリエチレン100質量部に対して1質量部未満である場合には、樹脂網素線42Bに十分な親水性を付与することができないおそれがある。一方、100質量部を超えると、大半の光触媒が樹脂網素線42B中に埋没してしまい、光触媒の効果を十分に発揮することができないおそれがある。より好ましくは、ポリエチレン100質量部に対する光触媒の含有量は、2~50質量部であり、さらに好ましくは、5~20質量部である。
【0043】
金属殺菌剤46は、樹脂網素線42Bを構成するポリエチレン100質量部に対して、1~100質量部含有させることができる。樹脂網素線42Bの殺菌性を好適に発揮することができるためである。金属殺菌剤46の含有量がポリエチレン100質量部に対して1質量部未満である場合には、樹脂網素線42Bに十分な殺菌性を付与することができないおそれがある。一方、100質量部を超えると、大半の金属殺菌剤46が樹脂網素線42B中に埋没してしまい、殺菌性の効果を十分に発揮することができないおそれがある。より好ましくは、ポリエチレン100質量部に対する金属殺菌剤46の含有量は、2~50質量部であり、さらに好ましくは、5~20質量部である。
【0044】
カーボンブラックは、樹脂網素線42Bを構成するポリエチレン100質量部に対して、0.1~1質量部含有させることができる。樹脂網素線42Bを好適に着色することができるためである。
【実施例0045】
(実施例1)
実施例1は、第一実施形態の冷却器100であり、以下の形態のものを使用した。
【0046】
冷却器
容器2 WI1300mm×DE1750mm×HI2000mm
冷却接触部4 WI1000mm×DE1000mm×HI1300mm 板状樹脂成形体40を前後に10枚配置
板状樹脂成形体40 WI1000mm×HI1300mm 扁平網管41を左右に10本配置
扁平網管41 WI78mm×HI1300mm
水槽51 WI1000mm×DE1000mm×HI350mm 容量:300L
循環ポンプ53 口径:25A(25mm) 動力:250W 能力:65L/min 全揚程:10mH
送風機3 羽根径:735mm 動力:1500W 風量:309m3/min
紫外線殺菌灯55 UVランプ:48W
紫外線殺菌灯61 UVランプ:48W×2台
薬剤投入機62 塩素(次亜塩素酸)
扁平網管41詳細 扁平網管41は、24本の樹脂網素線42を外周156mmの円筒上の軸方向(縦方向)に等間隔(6.5mmごと)に縦線43として配置し、上から下に向けて時計回りに螺旋状に円周から俯角60°で樹脂網素線42を円筒上の螺旋方向(斜め方向)に縦方向20mm間隔で斜線44として配置したものを、半径方向に対向する2つの軸方向の線を互いに間隔を開けて接着させて扁平体とした。樹脂網素線42は、太さ1mmのカーボンブラックで着色されたポリエチレン。扁平網管41の表面には、一部分41aを除いて、合成樹脂組成物47が付着している。合成樹脂組成物47は、扁平網管41の100質量部に対して15質量部塗布。合成樹脂組成物47は、合成樹脂100質量部に、酸化チタン45を100質量部、銀を100質量部含有。
【0047】
実施例1の冷却器100では、外気温(冷却器周辺の気温)26.5℃に対し、冷却器を運転した際の空気吹出口22の冷風CWの温度は19.5℃であり、冷風CWの吐出風量は300m3/minであった。また、冷風CWは、菌類が含まれていないものであった。実施例1の冷却器100は、1日当たり12時間の運転で、約1年後に、合成樹脂組成物47が付着している部分と付着していない部分の水の状態(馴染むか弾かれるか)の差がなくなり、合成樹脂組成物47が消滅していることが確認できた。冷却器100は、冷却接触部4(樹脂網素線42)に合成樹脂組成物47を塗布することにより、その機能(親水性及び殺菌性)を回復させることができた。
【0048】
(実施例2)
実施例2は、第二実施形態の冷却器200であり、冷却接触部4を構成する樹脂網素線42Bに、光触媒として酸化チタン45と金属殺菌剤46としての銀を含有させたものを使用した。その他は、実施例1の冷却器100と同じであり、扁平網管41Bの作成方法は、実施例1の扁平網管41の作成方法と同じである。
【0049】
樹脂網素線42Bは、光触媒、金属殺菌剤46及びカーボンブラックを含有する太さ1mmのポリエチレンから構成される。具体的には、樹脂網素線42Bは、ポリエチレン100質量部に、酸化チタン45を15質量部、銀を15質量部、カーボンブラックを0.5質量部含有させたものを使用した。
【0050】
実施例2の冷却器200では、外気温(冷却器周辺の気温)26.0℃に対し、冷却器を運転した際の空気吹出口22の冷風CWの温度は20.0℃であり、冷風CWの吐出風量は300m3/minであった。また、冷風CWは、菌類が含まれていないものであった。
【0051】
(実施例3)
実施例1の冷却器100は、冷却された冷風CWを水平方向の前方に吐出するものとしたが、実施例3は、
図3に示すように、冷風CWを上方に吐出する冷却器300とした。その他は、実施例1の冷却器100と同じである。
【0052】
実施例3の冷却器300では、外気温(冷却器周辺の気温)26.9℃に対し、冷却器を運転した際の空気吹出口22の冷風CWの温度は21.5℃であり、冷風CWの吐出風量は300m3/minであった。また、冷風CWは、菌類が含まれていないものであった。実施例3の冷却器300は、1日当たり12時間の運転で、約1年後に、合成樹脂組成物47が付着している部分と付着していない部分の水の状態(馴染むか弾かれるか)の差がなくなり、合成樹脂組成物47を塗布することにより、その機能(親水性)を回復させることができた。