(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024020087
(43)【公開日】2024-02-14
(54)【発明の名称】磁気測定方法、および、浮体装置の磁気測定システム
(51)【国際特許分類】
G01C 17/38 20060101AFI20240206BHJP
F03D 7/04 20060101ALI20240206BHJP
F03D 13/25 20160101ALI20240206BHJP
G01C 17/28 20060101ALI20240206BHJP
B63B 35/00 20200101ALI20240206BHJP
【FI】
G01C17/38 S
F03D7/04 L
F03D13/25
G01C17/28
G01C17/38 J
B63B35/00 T
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022122992
(22)【出願日】2022-08-01
(71)【出願人】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100104433
【弁理士】
【氏名又は名称】宮園 博一
(74)【代理人】
【識別番号】100202728
【弁理士】
【氏名又は名称】三森 智裕
(72)【発明者】
【氏名】西村 直喜
【テーマコード(参考)】
3H178
【Fターム(参考)】
3H178AA03
3H178AA26
3H178AA43
3H178BB31
3H178BB41
3H178BB90
3H178DD52Z
3H178EE02
3H178EE15
3H178EE23
(57)【要約】
【課題】水上に設置される浮体装置において方位を精度よく取得することが可能な磁気測定方法、および、浮体装置の磁気測定システムを提供することである。
【解決手段】この磁気測定方法は、水上に設置された浮体装置101が発する装置本体磁気を予め測定するステップ401と、水上の設置位置において係留された状態の浮体装置101に配置されている磁気センサ51および52によって、地磁気成分を含む外部磁気を測定するステップ402と、外部磁気から装置本体磁気の成分が取り除かれることによって抽出された地磁気成分を取得するステップ403と、を備える。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水上に設置された浮体装置が発する装置本体磁気を予め測定するステップと、
水上の設置位置において係留された状態の前記浮体装置に配置されている装置本体側磁気センサによって、地磁気成分を含む外部磁気を測定するステップと、
前記外部磁気から前記装置本体磁気の成分が取り除かれることによって抽出された前記地磁気成分を取得するステップと、を備える、磁気測定方法。
【請求項2】
前記装置本体磁気を予め測定するステップは、風により回転するロータと、前記ロータの回転により発電する発電機を内部に収容するナセルとを含む前記浮体装置としての風力発電装置が発する前記装置本体磁気を予め測定するステップを含み、
前記地磁気成分を取得するステップは、前記外部磁気から前記ロータと前記ナセルとを含む前記風力発電装置が発する前記装置本体磁気の成分が取り除かれることによって抽出された前記地磁気成分を取得するステップを含む、請求項1に記載の磁気測定方法。
【請求項3】
前記装置本体磁気を予め測定するステップは、前記浮体装置の下方の水中に配置された複数の外部側磁気センサによって、前記浮体装置が発する前記装置本体磁気を予め測定するステップを含む、請求項1または2に記載の磁気測定方法。
【請求項4】
前記装置本体磁気を予め測定するステップは、前記設置位置よりも水深の浅い測定位置の下方の水底に配置された前記複数の外部側磁気センサによって、前記測定位置に設置された状態の前記浮体装置が発する前記装置本体磁気を予め測定するステップを含む、請求項3に記載の磁気測定方法。
【請求項5】
前記装置本体磁気を予め測定するステップは、前記設置位置の下方の水中に配置された前記複数の外部側磁気センサによって、前記設置位置に設置された状態の前記浮体装置が発する前記装置本体磁気を予め測定するステップを含む、請求項3に記載の磁気測定方法。
【請求項6】
前記装置本体磁気を予め測定するステップは、前記浮体装置の永久磁気成分と誘導磁気成分とを含む前記装置本体磁気を予め測定するステップを含み、
前記地磁気成分を取得するステップは、前記外部磁気から前記浮体装置の前記永久磁気成分と前記誘導磁気成分とが取り除かれることによって抽出された前記地磁気成分を取得するステップを含む、請求項1または2に記載の磁気測定方法。
【請求項7】
前記装置本体磁気を予め測定するステップは、水上に設置される前記浮体装置を少なくとも南北方向と東西方向との互いに直交する2方向の各々に向けて設置した状態で前記永久磁気成分と前記誘導磁気成分とを測定することによって、前記装置本体磁気を予め測定するステップを含む、請求項6に記載の磁気測定方法。
【請求項8】
前記地磁気成分を取得するステップは、測定された前記外部磁気から、予め測定された前記装置本体磁気の成分を差分する処理を実行することによって、抽出された前記地磁気成分を取得するステップを含む、請求項1または2に記載の磁気測定方法。
【請求項9】
予め測定された前記装置本体磁気に基づいて、前記装置本体磁気を打ち消す消磁磁気を発生させるように前記浮体装置に設けられた消磁用コイルに通電させるステップをさらに備え、
前記外部磁気を測定するステップは、前記消磁用コイルからの前記消磁磁気によって前記装置本体磁気の成分が打ち消された状態の前記外部磁気を測定するステップを含み、
前記地磁気成分を取得するステップは、前記装置本体磁気の成分が打ち消された状態において測定された前記外部磁気に基づいて、抽出された前記地磁気成分を取得するステップを含む、請求項1または2に記載の磁気測定方法。
【請求項10】
前記外部磁気を測定するステップは、複数の前記装置本体側磁気センサによって、前記外部磁気を測定するステップを含む、請求項1または2に記載の磁気測定方法。
【請求項11】
前記外部磁気を測定するステップは、前記装置本体側磁気センサによって互いに直交する三軸方向の磁気を計測することによって、前記外部磁気を測定するステップを含む、請求項1または2に記載の磁気測定方法。
【請求項12】
水上に設置された浮体装置が発する装置本体磁気を予め測定する外部側磁気センサと、
水上の設置位置において係留された状態の前記浮体装置に配置され、地磁気成分を含む外部磁気を測定する装置本体側磁気センサと、
前記装置本体側磁気センサにより測定された前記外部磁気から前記外部側磁気センサにより予め測定された前記装置本体磁気の成分が取り除かれることによって抽出された前記地磁気成分を取得する制御部と、を備える、浮体装置の磁気測定システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気測定方法、および、浮体装置の磁気測定システムに関し、特に、水上に設置される浮体装置の磁気測定方法、および、浮体装置の磁気測定システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、洋上(水上)に設置される浮体装置としての風力発電装置が知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
上記特許文献1に記載の風力発電装置は、海面に浮かぶスパー型浮体構造である。具体的には、この風力発電装置は、基礎部とタワーとを備える。タワーは、洋上に浮かぶ基礎部の上部に設置されている。また、タワーの上部には、ナセルが設置されている。そして、ナセルには風によって回転する3枚のブレードを備えるロータが設置されている。そして、ナセルの内部には、ロータの回転により電力を発生させる発電機が設置されている。また、基礎部は、係留策をアンカーによって海底に固定することによって、流されないように係留されている。また、上記特許文献1に記載の風力発電装置は、海上に浮かべられた状態で、ナセルに設置された風向計によって海上の風向きの変化を検出するとともに、風向計による風向きの検出値に基づいて基礎部に対するタワーの回転角度を制御する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、上記特許文献1には記載されていないが、上記特許文献1に記載の風力発電装置のように、海面(水面)に浮かべられた状態で設置される装置(浮体装置)では、方位を取得して装置の姿勢を制御するために、地磁気を測定する場合がある。しかしながら、上記特許文献1の風力発電装置のような浮体装置は、一般的に、磁性体である鉄鋼材料などによって構成されている。そのため、装置自体の発する磁気に起因して、地磁気を正確に測定することができず、地磁気から方位を精度よく取得することが困難であるという問題点がある。
【0006】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、水上に設置される浮体装置において方位を精度よく取得することが可能な磁気測定方法、および、浮体装置の磁気測定システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、この発明の第1の局面における磁気測定方法は、水上に設置された浮体装置が発する装置本体磁気を予め測定するステップと、水上の設置位置において係留された状態の浮体装置に配置されている装置本体側磁気センサによって、地磁気成分を含む外部磁気を測定するステップと、外部磁気から装置本体磁気の成分が取り除かれることによって抽出された地磁気成分を取得するステップと、を備える。
【0008】
この発明の第2の局面における浮体装置の磁気測定システムは、水上に設置された浮体装置が発する装置本体磁気を予め測定する外部側磁気センサと、水上の設置位置において係留された状態の浮体装置に配置され、地磁気成分を含む外部磁気を測定する装置本体側磁気センサと、装置本体側磁気センサにより測定された外部磁気から外部側磁気センサにより予め測定された装置本体磁気の成分が取り除かれることによって抽出された地磁気成分を取得する制御部と、を備える。
【発明の効果】
【0009】
上記第1の局面における磁気測定方法、および、上記第2の局面における浮体装置の磁気測定システムでは、水上に設置された浮体装置が発する装置本体磁気を予め測定する。そして、外部磁気から装置本体磁気の成分が取り除かれることによって抽出された地磁気成分を取得する。これにより、予め測定された装置本体磁気の成分が外部磁気から取り除かれることによって地磁気成分が抽出されるため、地磁気を正確に測定することができる。その結果、水上に設置される浮体装置において方位を精度よく取得することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の第1実施形態による洋上風力発電システムの全体構成を示したブロック図である。
【
図2】設置位置に設置された状態の浮体装置を示した模式図である。
【
図3】磁気センサによって測定される外部磁気を説明するための図である。
【
図4】測定位置における浮体装置および測定システムを説明するための図である。
【
図5】第1実施形態による磁気測定方法を説明するための図(フローチャート)である。
【
図6】第2実施形態による洋上風力発電システムの全体構成を示したブロック図である。
【
図7】消磁用コイルによる消磁を説明するための図である。
【
図8】第2実施形態による磁気測定方法を説明するための図(フローチャート)である。
【
図9】第3実施形態による洋上風力発電システムの全体構成を示したブロック図である。
【
図10】第3実施形態による測定システムを説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を具体化した実施形態を図面に基づいて説明する。
【0012】
[第1実施形態]
(洋上風力発電システムの全体構成)
図1~
図4を参照して、本発明の第1実施形態による洋上風力発電システム100について説明する。
【0013】
図1に示すように、第1実施形態による洋上風力発電システム100は、浮体装置101と、測定システム102とを備える。なお、測定システム102は、特許請求の範囲における「浮体装置の磁気測定システム」の一例である。
【0014】
図1および
図2に示すように、浮体装置101は、洋上(水上)の設置位置において浮かべられた状態で係留されている。そして、浮体装置101は、風により発電する風力発電装置である。そして、測定システム102は、地磁気を測定することによって浮体装置101の方位を取得する。
【0015】
浮体装置101は、プラットフォーム10、タワー20、ナセル30、および、ロータ40を備える。また、測定システム102は、磁気センサ51、磁気センサ52、および、制御装置60を備える。磁気センサ51、磁気センサ52、および、制御装置60は、浮体装置101に配置されている。なお、磁気センサ51および52は、特許請求の範囲における「装置本体側磁気センサ」の一例である。また、制御装置60は、特許請求の範囲における「制御部」の一例である。
【0016】
プラットフォーム10は、洋上の設置位置において係留される。具体的には、プラットフォーム10は、洋上に浮かべられるとともに係留策11により海底に係留された状態で設置位置に設置される。また、プラットフォーム10は、鉄鋼などの金属材料により構成されている。そして、プラットフォーム10には、タワー20が設置されている。
【0017】
タワー20は、上部にナセル30およびロータ40が設置されている支柱である。ロータ40は、風により回転する。具体的には、ロータ40は、3つのブレードを有している。このブレードが風を受けることによって、ロータ40が回転する。また、ナセル30は、内部に発電機31が収容されている。発電機31は、ロータ40に接続されており、ロータ40の回転により発電する。発電機31により発電された電力は図示しない海底ケーブルを介して送電される。
【0018】
また、ナセル30には、風向計32と駆動機構33とが設けられている。風向計32は、風向きを検出するとともに、検出された風向きを示す信号を制御装置60に出力する。そして、駆動機構33は、制御装置60による制御によって、ロータ40のブレードが風により効率よく回転するようにナセル30の向きを変更する。駆動機構33は、たとえば、モータを含み、ナセル30全体を回転させることによって、風向きに対するロータ40の向きを変更させる。
【0019】
磁気センサ51および52は、プラットフォーム10に配置されている。磁気センサ51および52は、地磁気成分を含む外部磁気を測定する。具体的には、磁気センサ51および52は、浮体装置101から発せられる装置本体磁気と、浮体装置101の周囲の地磁気成分とを含む外部磁気を測定する。また、磁気センサ51および52は、互いに直交する三軸方向の磁気(磁界)を計測する。また、磁気センサ51および52は、測定された外部磁気を示す信号を測定値として制御装置60に送信する。たとえば、磁気センサ51および52は、フラックスゲート型の磁気センサ(磁力計)である。
【0020】
ここで、
図3に示すように、磁気センサ51および52により測定される外部磁気は、地磁気成分と永久磁気成分と誘導磁気成分とを含む。地磁気成分は、地磁気の成分を表す。永久磁気成分および誘導磁気成分は、浮体装置101が発する装置本体磁気の成分である。具体的には、永久磁気成分は、浮体装置101が永久磁石として有している磁気の成分を示す。また、誘導磁気成分は、地磁気によって浮体装置101に誘導される磁気の成分を示す。磁気センサ51および52によって測定される外部磁気は、上記の地磁気成分、永久磁気成分、および、誘導磁気成分が合成された磁気(磁気モーメント)として測定される。
【0021】
制御装置60は、たとえば、プラットフォーム10に配置されている。また、制御装置60は、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、および、HDD(Hard Disk Drive)などの記憶装置を含むコンピュータである。また、制御装置60は、磁気センサ51および52により測定された外部磁気を示す信号(測定値)を取得する。
【0022】
また、第1実施形態では、制御装置60は、磁気センサ51および52により測定された外部磁気から、予め測定された装置本体磁気の成分(永久磁気成分および誘導磁気成分)を差分する処理を実行することによって、抽出された地磁気成分を取得する。なお、地磁気成分の取得方法(磁気測定方法)の詳細は後述する。
【0023】
また、制御装置60は、浮体装置101の各部の動作を制御する。たとえば、制御装置60は、風向計32により検出された風向きと、抽出された地磁気成分に基づいて取得された方位とに基づいて、駆動機構33の動作を制御するように構成されている。
【0024】
また、
図1および
図4に示すように、測定システム102は、複数の磁気センサ70と、補償用磁気センサ71と、制御装置80とを備える。測定システム102は、複数の磁気センサ70と、補償用磁気センサ71と、制御装置80とによって、設置位置とは異なる測定位置において、浮体装置101の装置本体磁気を予め測定する。すなわち、複数の磁気センサ70と、補償用磁気センサ71と、制御装置80とは、浮体装置101と別個に配置されている。なお、複数の磁気センサ70は、特許請求の範囲における「複数の外部側磁気センサ」の一例である。
【0025】
複数の磁気センサ70は、浮体装置101が発する装置本体磁気を測定する。また、第1実施形態では、複数の磁気センサ70は、測定位置に設置された状態の浮体装置101の下方の水中に配置されている。具体的には、複数の磁気センサ70は、測定位置の下方の水底(海底)に配置されている。ここで言う測定位置は、浮体装置101が発電を行うために設置される設置位置とは異なる位置である。洋上風力発電システム100では、風力発電を行う浮体装置101は、比較的水深の深い設置位置に配置される。そして、第1実施形態では、浮体装置101は、設置位置よりも水深の浅い水上(海面上)の測定位置において、予め装置本体磁気が測定される。たとえば、浮体装置101は、船舶などに曳航されて測定位置から設置位置に移動される。
【0026】
また、磁気センサ70は、たとえば、互いに直交する三軸方向の磁気(磁界)を測定するフラックスゲート型の磁気センサ(磁力計)である。また、複数の磁気センサ70は、所定の間隔ごとに並べて配置されている。そして、複数の磁気センサ70は、制御装置80と有線接続されている。測定位置の下方の水底に配置されている複数の磁気センサ70は、水上の測定位置に配置された状態の浮体装置101が発する装置本体磁気を測定することにより、測定された装置本体磁気を含む信号(測定値)を制御装置80に対して出力する。詳細には、複数の磁気センサ70は、地磁気成分と装置本体磁気の成分とが含まれる磁気(磁界)を測定するとともに、測定された磁気を示す信号を測定値として制御装置80に対して出力する。
【0027】
そして、補償用磁気センサ71は、測定位置に配置されている浮体装置101から十分に離間した位置に配置される。補償用磁気センサ71は、たとえば、複数の磁気センサ70と同様に、三軸方向の磁気(磁界)を測定するフラックスゲート型の磁気センサ(磁力計)である。補償用磁気センサ71は、浮体装置101が発する装置本体磁気を測定する場合に地磁気成分のみを測定する地磁気補償用のために配置されている。すなわち、補償用磁気センサ71は、浮体装置101が発する装置本体磁気を含まず、地磁気成分を含む磁気(磁界)を測定する。そして、補償用磁気センサ71は、複数の磁気センサ70と同様に、制御装置80と有線接続されており、測定された磁気を示す信号を測定値として制御装置80に対して出力する。
【0028】
制御装置80は、浮体装置101とは別個に海上または陸上に設置されているコンピュータである。また、制御装置80は、CPU、RAM、ROM、および、HDDなどの記憶装置を含む。また、制御装置80は、複数の磁気センサ70および補償用磁気センサ71と有線接続されており、複数の磁気センサ70および補償用磁気センサ71からの出力(測定値)を取得する。そして、制御装置80は、取得された複数の磁気センサ70および補償用磁気センサ71からの出力に基づいて、浮体装置101の永久磁気成分と誘導磁気成分との各々を算出する。
【0029】
具体的には、第1実施形態では、水上に設置されている浮体装置101を南北方向と東西方向との互いに直交する2方向の各々に向けて設置した状態で、永久磁気成分と誘導磁気成分とが測定される。たとえば、南北方向における永久磁気成分と誘導磁気成分とが測定される場合には、制御装置80は、複数の磁気センサ70および補償用磁気センサ71から、浮体装置101を北向きに係留した状態と南向きに係留した状態との2回分の測定値を取得する。そして、南北方向における浮体装置101の永久磁気成分をHp、誘導磁気成分をHiとすると、北向き係留での測定値Hnorth、および、南向き係留での測定値Hsouthは、以下の式(1)および式(2)で表される。
北向き係留での測定値Hnorth=Hp+Hi ・・・(1)
南向き係留での測定値Hsouth=Hp-Hi ・・・(2)
なお、北向き係留での測定値Hnorthおよび南向き係留での測定値Hsouthは、複数の磁気センサ70の各々からの出力と補償用磁気センサ71からの出力との差分の値である。すなわち、北向き係留での測定値Hnorthおよび南向き係留での測定値Hsouthは、地磁気成分を除いた浮体装置101が発する装置本体磁気の値を表している。
【0030】
そして、式(1)および(2)に基づいて、南北方向における永久磁気成分H
pと誘導磁気成分H
iは、以下の式(3)および式(4)のように表される。
【数1】
東西方向においても同様にして、東向きと西向きとの各々において測定を行うことによって浮体装置101の永久磁気成分および誘導磁気成分が算出される。たとえば、制御装置80は、複数の磁気センサ70と測定位置に設置された状態の浮体装置101との位置関係を記憶しており、複数の磁気センサ70の各々からの測定値と、記憶している位置関係とに基づいて、式(3)および式(4)から、浮体装置101の永久磁気成分および誘導磁気成分を取得する。南北方向および東西方向の各々における永久磁気成分と誘導磁気成分とを測定することによって、水平面内における2次元のベクトル量(磁気モーメント)として浮体装置101が発する装置本体磁気の永久磁気成分と誘導磁気成分とが取得される。
【0031】
そして、制御装置80は、算出された浮体装置101の永久磁気成分と誘導磁気成分との各々を制御装置80の記憶装置に記憶させる。そして、制御装置80は、算出された永久磁気成分と誘導磁気成分とを示す信号を浮体装置101に配置されている制御装置60に出力する。制御装置80からの制御装置60への出力は、有線接続であってもよいし、無線接続であってもよい。また、フラッシュメモリ、光ディスクなどの不揮発性メモリを介して、予め測定された浮体装置101の装置本体磁気(永久磁気成分および誘導磁気成分)を制御装置60に記憶させるように構成してもよい。制御装置60は、制御装置80から取得された装置本体磁気を制御装置60の記憶装置に記憶させる。
【0032】
(第1実施形態による磁気測定方法)
次に、
図5を参照して、第1実施形態による磁気測定方法(地磁気成分の取得方法)について説明する。なお、ステップ401~ステップ403における制御処理は、制御装置60および80(コンピュータ)によりプログラムが実行されることにより行われる。
【0033】
まず、ステップ401において、水上に設置された浮体装置101が発する装置本体磁気が予め測定される。具体的には、水上の測定位置に設置された状態の浮体装置101が発する装置本体磁気(永久磁気成分および誘導磁気成分)が、測定位置の下方の海底に配置された複数の磁気センサ70によって予め測定される。そして、複数の磁気センサ70および補償用磁気センサ71からの測定値に基づいて、浮体装置101の装置本体磁気(永久磁気成分および誘導磁気成分)が算出される。
【0034】
次に、ステップ402において、水上の設置位置において係留された状態の浮体装置101に配置されている磁気センサ51および52により互いに直交する三軸方向の磁気が計測されることによって、地磁気成分を含む外部磁気が測定される。具体的には、地磁気成分と装置本体磁気(永久磁気成分および誘導磁気成分)を含む外部磁気が測定される。
【0035】
次に、ステップ403において、外部磁気から装置本体磁気の成分(永久磁気成分および誘導磁気成分)が取り除かれることによって抽出された地磁気成分が取得される。具体的には、磁気センサ51および52により測定された外部磁気の測定値から、予め測定された装置本体磁気の成分(永久磁気成分および誘導磁気成分)の値を差分する処理が実行されることによって、地磁気成分が抽出される。そして、抽出された地磁気成分に基づいて、方位が取得される。
【0036】
たとえば、制御装置60は、磁気センサ51および52の各々からの測定値の平均値を算出することによって外部磁気を取得する。そして、制御装置60は、制御装置60の記憶装置に記憶している予め測定された装置本体磁気を、取得された外部磁気から減算することによって、地磁気成分を抽出するように構成されている。
【0037】
(第1実施形態の効果)
第1実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0038】
第1実施形態の磁気測定方法では、上記のように、水上に設置された浮体装置101が発する装置本体磁気を予め測定する。そして、外部磁気から装置本体磁気の成分が取り除かれることによって抽出された地磁気成分を取得する。これにより、予め測定された装置本体磁気の成分が外部磁気から取り除かれることによって地磁気成分が抽出されるため、地磁気を正確に測定することができる。その結果、水上に設置される浮体装置101において方位を精度よく取得することができる。
【0039】
また、上記第1実施形態では、以下のように構成したことによって、更なる効果が得られる。
【0040】
すなわち、第1実施形態では、上記のように、装置本体磁気を予め測定するステップ401は、風により回転するロータ40と、ロータ40の回転により発電する発電機31を内部に収容するナセル30とを含む浮体装置101としての風力発電装置が発する装置本体磁気を予め測定する。そして、地磁気成分を取得するステップ403は、外部磁気からロータ40とナセル30とを含む風力発電装置が発する装置本体磁気の成分が取り除かれることによって抽出された地磁気成分を取得する。このように構成すれば、浮体装置101が浮体式の風力発電装置である場合に、外部磁気から予め測定された風力発電装置の装置本体磁気の成分が取り除かれることによって抽出された地磁気成分を取得することができる。その結果、水上に設置される風力発電装置である浮体装置101において方位を精度よく取得することができる。
【0041】
また、第1実施形態では、上記のように、装置本体磁気を予め測定するステップ401は、浮体装置101の下方の水中に配置された複数の磁気センサ70(複数の外部側磁気センサ)によって、浮体装置101が発する装置本体磁気を予め測定する。このように構成すれば、水中に配置された複数の磁気センサ70によって浮体装置101が発する装置本体磁気を予め測定することができるので、1つの磁気センサ70によって浮体装置101が発する装置本体磁気を測定する場合に比べて、磁気センサ70の個体差や外部のノイズなどによる影響を抑制して装置本体磁気をより精度よく測定することができる。また、装置本体磁気を測定するための複数の磁気センサ70が水中に配置されているため、複数の磁気センサ70が水上または陸上の建築物(構造物)に配置されている場合と異なり、建築物に含まれる鉄筋などの磁性体が装置本体磁気の測定に影響を及ぼすことを抑制することができる。そのため、装置本体磁気をより一層精度よく測定することができる。
【0042】
また、第1実施形態では、上記のように、装置本体磁気を予め測定するステップ401は、設置位置よりも水深の浅い測定位置の下方の水底に配置された複数の磁気センサ70(複数の外部側磁気センサ)によって、測定位置に設置された状態の浮体装置101が発する装置本体磁気を予め測定する。このように構成すれば、予め装置本体磁気を測定するための複数の磁気センサ70が水底に配置されているため、複数の磁気センサ70を水底ではなく水中に浮遊した状態で配置する場合に比べて、配置された複数の磁気センサ70の揺動(移動)を抑制することができる。そのため、複数の磁気センサ70をより正確な位置に配置することができる。また、比較的水深の深い設置位置に浮体装置101が設置される場合にも、予め装置本体磁気を測定する測定位置の水深は比較的浅いので、水底に複数の磁気センサ70を容易に配置することができる。これらの結果、設置位置よりも水深の浅い測定位置の下方の水底に複数の磁気センサ70を配置することによって、複数の磁気センサ70をより正確な位置に容易に配置することができる。
【0043】
また、第1実施形態では、上記のように、装置本体磁気を予め測定するステップ401は、浮体装置101の永久磁気成分と誘導磁気成分とを含む装置本体磁気を予め測定する。そして、地磁気成分を取得するステップ403は、外部磁気から浮体装置101の永久磁気成分と誘導磁気成分とが取り除かれることによって抽出された地磁気成分を取得する。このように構成すれば、浮体装置101から発せられる永久磁気成分と誘導磁気成分との両方を外部磁気から取り除くことができるので、浮体装置101の永久磁気成分と誘導磁気成分とのいずれか一方のみを取り除く場合に比べて、地磁気成分をより精度よく抽出することができる。その結果、水上に設置される浮体装置101において方位をより精度よく取得することができる。
【0044】
また、第1実施形態では、上記のように、装置本体磁気を予め測定するステップ401は、水上に設置される浮体装置101を少なくとも南北方向と東西方向との互いに直交する2方向の各々に向けて設置した状態で永久磁気成分と誘導磁気成分とを測定することによって、装置本体磁気を予め測定する。このように構成すれば、東西方向と南北方向との互いに直交する2方向を含む平面(水平面)における2次元の永久磁気成分と誘導磁気成分とを測定することができる。そのため、浮体装置101が発する装置本体磁気(磁気モーメント)が、東西方向と南北方向との互いに直交する2方向を含む平面内において偏りを有する場合にも、装置本体磁気を正確に測定することができる。その結果、浮体装置101における装置本体磁気が、東西方向と南北方向との互いに直交する2方向を含む平面内において偏りを有する場合にも、装置本体磁気を取り除くことによって方位を精度よく測定することができる。
【0045】
また、第1実施形態では、上記のように、地磁気成分を取得するステップ403は、測定された外部磁気から、予め測定された装置本体磁気の成分を差分する処理を実行することによって、抽出された地磁気成分を取得する。このように構成すれば、予め測定された装置本体磁気の成分を差分する処理を実行することによって容易に地磁気成分を抽出することができるので、外部磁気における装置本体磁気の成分を打ち消すための磁場を生成する構成を設けることなく、演算処理によって地磁気成分を容易に抽出することができる。そのため、方位を精度よく、かつ、容易に取得することができる。
【0046】
また、第1実施形態では、上記のように、外部磁気を測定するステップ402は、複数(2つ)の磁気センサ51および52(装置本体側磁気センサ)によって、外部磁気を測定する。このように構成すれば、磁気センサ51および52の各々によって取得された外部磁気の測定結果(測定値)に基づいて、磁気センサ51および52の個体差や外部のノイズなどによる影響を抑制して外部磁気をより精度よく測定することができる。
【0047】
また、第1実施形態では、上記のように、外部磁気を測定するステップ402は、磁気センサ51および52(装置本体側磁気センサ)によって互いに直交する三軸方向の磁気を計測することによって、外部磁気を測定する。このように構成すれば、磁気センサ51および52によって三軸方向の磁気を測定することができるので、外部磁気の水平方向の成分のみならず、鉛直方向の成分をも測定することができる。そのため、外部磁気をより正確に測定することができる。
【0048】
(第1実施形態による測定システムの効果)
第1実施形態の測定システム102(浮体装置の磁気測定システム)では、以下のような効果を得ることができる。
【0049】
第1実施形態の測定システム102(浮体装置の磁気測定システム)では、上記のように、水上に設置された浮体装置101が発する装置本体磁気を予め測定する。そして、外部磁気から装置本体磁気の成分が取り除かれることによって抽出された地磁気成分を取得する。これにより、予め測定された装置本体磁気の成分が外部磁気から取り除かれることによって地磁気成分が抽出されるため、地磁気を正確に測定することができる。その結果、水上に設置される浮体装置101において方位を精度よく取得することが可能な測定システム102(浮体装置の磁気測定システム)を提供することができる。
【0050】
[第2実施形態]
図6および
図7を参照して、第2実施形態について説明する。この第2実施形態は、外部磁気から予め測定された装置本体磁気の成分を差分する処理を実行するように構成した第1実施形態と異なり、消磁用コイル290からの消磁磁気によって装置本体磁気の成分が打ち消された状態の外部磁気を測定するように構成されている。なお、図中において、上記第1実施形態と同様の構成の部分には、同一の符号を付している。
【0051】
図6に示すように、本発明の第2実施形態による洋上風力発電システム200は、浮体装置101と、測定システム202とを備える。浮体装置101の構成は、第1実施形態と同様である。なお、測定システム202は、特許請求の範囲における「浮体装置の磁気測定システム」の一例である。
【0052】
浮体装置101は、第1実施形態と同様に、浮体式の風力発電装置である。そして、第2実施形態では、測定システム202は、制御装置260と、消磁用コイル290とを備える。制御装置260は、第1実施形態の制御装置60と同様に、浮体装置101に配置されたコンピュータである。また、制御装置260は、第1実施形態による制御装置60と同様に、測定位置において複数の磁気センサ70により予め測定された浮体装置101が発する装置本体磁気を記憶している。なお、磁気センサ70による測定位置における浮体装置101の装置本体磁気の測定は、第1実施形態と同様である。また、制御装置260は、特許請求の範囲における「制御部」の一例である。
【0053】
また、
図7に示すように、第2実施形態では、消磁用コイル290は、浮体装置101が発する装置本体磁気を打ち消す消磁磁気を発生させるように構成されている。制御装置260は、消磁用コイル290に通電される電流を制御する。詳細には、制御装置260は、予め測定された装置本体磁気に基づいて、装置本体磁気を打ち消すように、消磁用コイル290に通電される電流の大きさを制御するように構成されている。消磁用コイル290は、通電される電流により誘導される誘導磁気である消磁磁気によって装置本体磁気を打ち消すように消磁する。
【0054】
なお、消磁用コイル290は、浮体装置101に複数設けられていてもよい。また、消磁用コイル290が生成する消磁磁気の方向を制御可能なように、複数の消磁用コイル290を互いに異なる向きになるように配置してもよい。また、消磁用コイル290は、装置本体磁気のうちの永久磁気成分のみを打ち消すように構成されていてもよいし、永久磁気成分および誘導磁気成分の両方を打ち消すように構成されていてもよい。
【0055】
そして、第2実施形態では、浮体装置101に設けられた磁気センサ51および52は、消磁用コイル290からの消磁磁気により装置本体磁気の成分が打ち消された状態の外部磁気を測定する。そして、制御装置260は、装置本体磁気の成分が打ち消された状態の外部磁気の測定値を取得する。すなわち、第2実施形態では、制御装置260は、装置本体磁気の成分が打ち消された状態において磁気センサ51および52により測定された外部磁気に基づいて、抽出された地磁気成分を取得する。
【0056】
なお、第2実施形態による洋上風力発電システム200のその他の構成は、上記第1実施形態と同様である。
【0057】
(第2実施形態による磁気測定方法)
次に、
図8を参照して、第2実施形態による磁気測定方法(地磁気成分の抽出方法)について説明する。なお、ステップ401、および、ステップ502~ステップ504における制御処理は、制御装置260および80(コンピュータ)によりプログラムが実行されることにより行われる。
【0058】
まず、ステップ401において、第1実施形態と同様に、浮体装置101が発する装置本体磁気が予め測定される。
【0059】
次に、ステップ502において、予め測定された装置本体磁気に基づいて、装置本体磁気を打ち消す消磁磁気を発生させるように浮体装置101に設けられた消磁用コイル290が通電される。
【0060】
次に、ステップ503において、消磁用コイル290からの消磁磁気によって装置本体磁気の成分が打ち消された状態の外部磁気が測定される。すなわち、装置本体磁気の成分が打ち消されることによって、地磁気成分が抽出された状態の外部磁気が測定される。
【0061】
次に、ステップ504において、装置本体磁気の成分が打ち消された状態において測定された外部磁気に基づいて、抽出された地磁気成分が取得される。すなわち、磁気センサ51および52によって測定された外部磁気が、そのまま抽出された地磁気成分として取得される。
【0062】
(第2実施形態の効果)
第2実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0063】
第2実施形態による磁気測定方法は、上記のように、予め測定された装置本体磁気に基づいて、装置本体磁気を打ち消す消磁磁気を発生させるように浮体装置101に設けられた消磁用コイル290に通電させるステップ502を備える。そして、外部磁気を測定するステップ503は、消磁用コイル290からの消磁磁気によって装置本体磁気の成分が打ち消された状態の外部磁気を測定する。そして、地磁気成分を取得するステップ504は、装置本体磁気の成分が打ち消された状態において測定された外部磁気に基づいて、抽出された地磁気成分を取得する。このように構成すれば、消磁用コイル290に通電することによって外部磁気に含まれる装置本体磁気の成分を打ち消すことができるので、測定された外部磁気から装置本体磁気の成分を取り除くための演算処理を行うことなく、地磁気成分を抽出することができる。その結果、方位を取得するために制御装置260(制御部)の処理負担が増大することを抑制することができる。
【0064】
なお、第2実施形態のその他の効果は、上記第1実施形態と同様である。
【0065】
[第3実施形態]
図9および
図10を参照して、第3実施形態について説明する。この第3実施形態は、設置位置とは異なる測定位置の海底(水底)に配置された複数の磁気センサ70によって予め装置本体磁気を測定するように構成した第1実施形態と異なり、設置位置に設置された浮体装置101に対して、設置位置の下方の水中に配置された複数の磁気センサ370によって予め装置本体磁気が測定されるように構成されている。なお、図中において、上記第1実施形態と同様の構成の部分には、同一の符号を付している。
【0066】
図9に示すように、本発明の第3実施形態による洋上風力発電システム300は、浮体装置101と、測定システム302とを備える。浮体装置101の構成は、第1実施形態と同様である。なお、測定システム302は、特許請求の範囲における「浮体装置の磁気測定システム」の一例である。
【0067】
第3実施形態では、測定システム302は、測定装置370aと、制御装置380とを備える。測定装置370aには、複数(たとえば、4つ)の磁気センサ370が設けられている。なお、複数の磁気センサ370は、特許請求の範囲における「複数の外部側磁気センサ」の一例である。
【0068】
図10に示すように、第3実施形態では、設置位置に設置された状態の浮体装置101に対して予め装置本体磁気の測定が行われる。すなわち、風力発電を行う設置位置に設置された状態の浮体装置101が発する装置本体磁気が、複数の磁気センサ370により予め測定される。
【0069】
複数の磁気センサ370は、たとえば、水中を移動可能に構成されている測定装置370aに配置されている。複数の磁気センサ370は、第1実施形態の磁気センサ70と同様に、制御装置380と通信可能に構成されている。なお、測定装置370aに配置される磁気センサ370は、1つであってもよい。
【0070】
制御装置380は、たとえば、設置位置の近傍に配置されている船舶などに搭載されている。制御装置380は、第1実施形態の制御装置80と同様に、コンピュータである。そして、制御装置380は、複数の磁気センサ370から出力される測定値を取得するとともに、取得された測定値に基づいて浮体装置101の装置本体磁気を算出する。
【0071】
ここで、第3実施形態では、制御装置380は、測定装置370aの位置を変更する制御を実行する。制御装置380は、浮体装置101の下方の水中の所定の位置に測定装置370aを移動させることによって、浮体装置101の下方の複数の配置位置において磁気センサ370による測定を行う。そして、制御装置380は、浮体装置101の下方の水中の複数の配置位置の各々において、配置された磁気センサ370からの測定値を取得するとともに、測定された複数の配置位置の各々に対応する複数の測定値に基づいて、第1実施形態と同様の制御処理によって、装置本体磁気を算出するように構成されている。なお、磁気センサ370による複数の配置位置の各々における測定は、第1実施形態の磁気センサ70による測定と同様に、浮体装置101を南北方向と東西方向との各々に向けて設置した状態で行われる。また、制御装置380は、測定装置370a(磁気センサ370)を、浮体装置101から十分離間した位置に移動させることによって、磁気センサ370からの測定値を、地磁気補償用の測定値として取得する。
【0072】
そして、制御装置380は、浮体装置101に配置されている制御装置60と通信可能に構成されている。制御装置380は、算出された装置本体磁気を制御装置60に対して出力する。制御装置60は、制御装置380から取得された装置本体磁気と、磁気センサ51および52を用いて測定された外部磁気とに基づいて、第1実施形態と同様に、外部磁気から装置本体磁気を減算することによって地磁気成分を抽出する演算処理を実行して方位を取得する。
【0073】
なお、第3実施形態による洋上風力発電システム300のその他の構成は、上記第1実施形態と同様である。
【0074】
(第3実施形態の効果)
第3実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0075】
第3実施形態では、上記のように、装置本体磁気を予め測定するステップ401は、設置位置の下方の水中に配置された複数の磁気センサ370(複数の外部側磁気センサ)によって、設置位置に設置された状態の浮体装置101が発する装置本体磁気を予め測定する。このように構成すれば、予め装置本体磁気を測定するための設備を別個に設けることなく、設置位置に設置された状態の浮体装置101を測定することによって装置本体磁気を取得することができる。そのため、システムの構成が複雑化することを抑制することができる。
【0076】
なお、第3実施形態のその他の効果は、上記第1および第2実施形態と同様である。
【0077】
[変形例]
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更(変形例)が含まれる。
【0078】
たとえば、上記第1~第3実施形態では、浮体装置101は、浮体式の風力発電装置である例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、浮体装置は、浮体式の太陽光発電装置であってもよい。また、浮体装置は、石油またはガスなどの浮体式洋上生産設備であってもよい。
【0079】
また、上記第1~第3実施形態では、複数の磁気センサ70、370(外部側磁気センサ)を用いることによって予め装置本体磁気を測定する例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、1つの外部側磁気センサによって装置本体磁気を測定するようにしてもよい。
【0080】
また、上記第1および第2実施形態では、複数の磁気センサ70(複数の外部側磁気センサ)が海底(水底)に配置されている例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、外部側磁気センサを、水中に浮かんだ状態で配置するようにしてもよい。また、外部側磁気センサを水面に浮かべて配置するようにしてもよい。また、外部側磁気センサを、陸上または空中に配置するようにしてもよい。
【0081】
また、上記第1~第3実施形態では、浮体装置101が発する装置本体磁気は、永久磁気成分と誘導磁気成分とを含む例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、装置本体磁気は、永久磁気成分と誘導磁気成分とのいずれか一方のみを含んでいてもよい。
【0082】
また、上記第1~第3実施形態では、南北方向と東西方向との互いに直交する2つの方向における永久磁気成分と誘導磁気成分とを測定する例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、南北方向および東西方向に加えて、3つ以上の方向における永久磁気成分と誘導磁気成分とを測定するようにしてもよい。
【0083】
また、上記第1~第3実施形態では、浮体装置101に2つの磁気センサ51および52(装置本体側磁気センサ)が設けられている例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、装置本体側磁気センサは、1つでもよいし、3つ以上でもよい。
【0084】
また、上記第1~第3実施形態では、磁気センサ51および52(装置本体側磁気センサ)が、互いに直交する三軸方向の磁気を測定するように構成されている例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、装置本体側磁気センサは、互いに直交する2軸の磁気を測定するように構成されていてもよい。
【0085】
また、上記第1~第3実施形態では、風力発電装置としての浮体装置101が、プラットフォーム10およびタワー20を備える例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、浮体装置は、円柱型の浮体形式であるスパー型の風力発電装置であってもよい。
【0086】
また、上記第1~第3実施形態では、浮体装置101が洋上(海上)に浮かべられるように構成されている例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、浮体装置は、湖などの水上に浮かべられるように構成されていてもよい。
【0087】
また、上記第1~第3実施形態では、浮体装置101の駆動機構33の制御と、方位の測定の制御とが共通の制御装置60、260(制御部)によって実行される例を示したが、本発明は、これに限られない。たとえば、浮体装置の駆動機構などの各部の動作の制御と、方位の測定とを、別個の制御装置(制御部)によって実行するように構成してもよい。
【0088】
また、上記第3実施形態では、磁気センサ370(外部側磁気センサ)を用いて設置位置に配置された状態の浮体装置101の装置本体磁気を予め測定するとともに、磁気センサ51および52を用いて測定された外部磁気から予め測定された装置本体磁気を減算する処理を実行することによって、抽出された地磁気成分を取得する例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、設置位置に配置された状態の浮体装置が発する装置本体磁気を、設置位置の下方の水中に配置された外部側磁気センサを用いて測定するととともに、予め測定された装置本体磁気に基づいて、装置本体磁気を打ち消す消磁磁気を発生させることによって外部磁気から装置本体磁気の成分を打ち消すように構成してもよい。
【0089】
[態様]
上記した例示的な実施形態は、以下の態様の具体例であることが当業者により理解される。
【0090】
(項目1)
水上に設置された浮体装置が発する装置本体磁気を予め測定するステップと、
水上の設置位置において係留された状態の前記浮体装置に配置されている装置本体側磁気センサによって、地磁気成分を含む外部磁気を測定するステップと、
前記外部磁気から前記装置本体磁気の成分が取り除かれることによって抽出された前記地磁気成分を取得するステップと、を備える、磁気測定方法。
【0091】
(項目2)
前記装置本体磁気を予め測定するステップは、風により回転するロータと、前記ロータの回転により発電する発電機を内部に収容するナセルとを含む前記浮体装置としての風力発電装置が発する前記装置本体磁気を予め測定するステップを含み、
前記地磁気成分を取得するステップは、前記外部磁気から前記ロータと前記ナセルとを含む前記風力発電装置が発する前記装置本体磁気の成分が取り除かれることによって抽出された前記地磁気成分を取得するステップを含む、項目1に記載の磁気測定方法。
【0092】
(項目3)
前記装置本体磁気を予め測定するステップは、前記浮体装置の下方の水中に配置された複数の外部側磁気センサによって、前記浮体装置が発する前記装置本体磁気を予め測定するステップを含む、項目1または2に記載の磁気測定方法。
【0093】
(項目4)
前記装置本体磁気を予め測定するステップは、前記設置位置よりも水深の浅い測定位置の下方の水底に配置された前記複数の外部側磁気センサによって、前記測定位置に設置された状態の前記浮体装置が発する前記装置本体磁気を予め測定するステップを含む、項目3に記載の磁気測定方法。
【0094】
(項目5)
前記装置本体磁気を予め測定するステップは、前記設置位置の下方の水中に配置された前記複数の外部側磁気センサによって、前記設置位置に設置された状態の前記浮体装置が発する前記装置本体磁気を予め測定するステップを含む、項目3に記載の磁気測定方法。
【0095】
(項目6)
前記装置本体磁気を予め測定するステップは、前記浮体装置の永久磁気成分と誘導磁気成分とを含む前記装置本体磁気を予め測定するステップを含み、
前記地磁気成分を取得するステップは、前記外部磁気から前記浮体装置の前記永久磁気成分と前記誘導磁気成分とが取り除かれることによって抽出された前記地磁気成分を取得するステップを含む、項目1~5のいずれか1項に記載の磁気測定方法。
【0096】
(項目7)
前記装置本体磁気を予め測定するステップは、水上に設置される前記浮体装置を少なくとも南北方向と東西方向との互いに直交する2方向の各々に向けて設置した状態で前記永久磁気成分と前記誘導磁気成分とを測定することによって、前記装置本体磁気を予め測定するステップを含む、項目6に記載の磁気測定方法。
【0097】
(項目8)
前記地磁気成分を取得するステップは、測定された前記外部磁気から、予め測定された前記装置本体磁気の成分を差分する処理を実行することによって、抽出された前記地磁気成分を取得するステップを含む、項目1~7のいずれか1項に記載の磁気測定方法。
【0098】
(項目9)
予め測定された前記装置本体磁気に基づいて、前記装置本体磁気を打ち消す消磁磁気を発生させるように前記浮体装置に設けられた消磁用コイルに通電させるステップをさらに備え、
前記外部磁気を測定するステップは、前記消磁用コイルからの前記消磁磁気によって前記装置本体磁気の成分が打ち消された状態の前記外部磁気を測定するステップを含み、
前記地磁気成分を取得するステップは、前記装置本体磁気の成分が打ち消された状態において測定された前記外部磁気に基づいて、抽出された前記地磁気成分を取得するステップを含む、項目1~7のいずれか1項に記載の磁気測定方法。
【0099】
(項目10)
前記外部磁気を測定するステップは、複数の前記装置本体側磁気センサによって、前記外部磁気を測定するステップを含む、項目1~9のいずれか1項に記載の磁気測定方法。
【0100】
(項目11)
前記外部磁気を測定するステップは、前記装置本体側磁気センサによって互いに直交する三軸方向の磁気を計測することによって、前記外部磁気を測定するステップを含む、項目1~10のいずれか1項に記載の磁気測定方法。
【0101】
(項目12)
水上に設置された浮体装置が発する装置本体磁気を予め測定する外部側磁気センサと、
水上の設置位置において係留された状態の前記浮体装置に配置され、地磁気成分を含む外部磁気を測定する装置本体側磁気センサと、
前記装置本体側磁気センサにより測定された前記外部磁気から前記外部側磁気センサにより予め測定された前記装置本体磁気の成分が取り除かれることによって抽出された前記地磁気成分を取得する制御部と、を備える、浮体装置の磁気測定システム。
【符号の説明】
【0102】
30 ナセル
31 発電機
40 ロータ
51、52 磁気センサ(装置本体側磁気センサ)
60、260 制御装置(制御部)
70、370 磁気センサ(外部側磁気センサ)
101 浮体装置
102、202、302 測定システム(浮体装置の磁気測定システム)
290 消磁用コイル