(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024020094
(43)【公開日】2024-02-14
(54)【発明の名称】低用量グルタチオンの肌の明度向上剤としての使用
(51)【国際特許分類】
A23L 33/18 20160101AFI20240206BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20240206BHJP
A61K 8/64 20060101ALI20240206BHJP
A61K 8/9728 20170101ALI20240206BHJP
A23L 33/145 20160101ALI20240206BHJP
【FI】
A23L33/18
A61Q19/00
A61K8/64
A61K8/9728
A23L33/145
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022123001
(22)【出願日】2022-08-01
(71)【出願人】
【識別番号】519127797
【氏名又は名称】三菱商事ライフサイエンス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】打田 慶明
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 敬展
(72)【発明者】
【氏名】浦上 豊志
【テーマコード(参考)】
4B018
4C083
【Fターム(参考)】
4B018LB10
4B018LE01
4B018MD04
4B018MD05
4B018MD10
4B018MD20
4B018MD32
4B018MD35
4B018MD48
4B018MD76
4B018MD81
4B018ME14
4B018MF08
4C083AA031
4C083AA032
4C083AA122
4C083AB172
4C083AC242
4C083AD202
4C083AD262
4C083AD411
4C083AD412
4C083CC02
4C083EE11
4C083FF01
(57)【要約】
【課題】
本発明は、グルタチオンにより、肌の明度を改善することを課題とする。
【解決手段】
本発明者は、グルタチオンを低用量においても、肌明度を改善する方法を見出し、本発明を完成させた。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有効成分としてグルタチオンを含む肌の明度向上用経口剤。
【請求項2】
グルタチオン含量が100mg以下である、請求項1の肌の明度向上用経口剤。
【請求項3】
グルタチオンが酵母エキスに含まれるグルタチオンである請求項1又は2の肌の明度向上用経口剤。
【請求項4】
グルタチオンを100mg/日以下を経口摂取する、肌明度の向上方法。
【請求項5】
グルタチオンが酵母エキスに含まれるグルタチオンである請求項4の肌明度の向上方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、美白・美肌用、肌明度向上に好適に用いられるグルタチオン含有組成物、及び、美白・美肌用、肌明度向上方法に関する。
【背景技術】
【0002】
皮膚の色素沈着、シミ・ソバカスなど発生機序については不明な点もあるが、ホルモンの異常や紫外線の刺激が原因となってメラニン色素が形成され、これが皮膚内に沈着するのが一因と考えられている。チロシナーゼは、チロシンあるいはドーパ等の酸化を触媒する酵素であり、チロシナーゼの活性を阻害することによりメラニン色素の生成を抑えることを利用して、チロシナーゼ活性の阻害剤が、化粧品などの美白剤あるいは食品の褐変防止剤として使用されている。
【0003】
グルタチオンは、システイン、グルタミン酸、グリシンといったアミノ酸からなるトリペプチドであり、肝臓の解毒作用改善薬として知られている。グルタチオンの摂取により、非アルコール性脂肪肝の改善機能が知られており、また、コク味物質としての機能もあり、食品素材、医薬品等に利用されている。
【0004】
また、グルタチオンを経口摂取する場合、一般的に、100mg/日から300mg/日の摂取をすることが多く、非特許文献1では、250mg以上摂取することで、6カ月経過後に血中グルタチオン量が17%増加したとの報告がある。非特許文献2では、500mg/日を4週間摂取し、皮膚のメラニンへの影響を見ている。
【0005】
さらに、グルタチオンでは、他の素材と組み合わせで、肌の状態を改善する方法が報告されている。特許文献1では、α - リポ酸と還元型グルタチオンでチロシナーゼの活性を阻害することが報告されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Richie JP Jr, Nichenametla S, Neidig W, et al. Randomized controlled trial of oral glutathione supplementation on body stores of glutathione. Eur J Nutr. 2015;54(2):251-263.
【非特許文献2】Arjinpathana, Nutthavuth, Glutathione as an oral whitening agent: A randomized, double-blind, placebo-controlled study. Journal of Dermatological Treatment 2012;23(2): 97-102
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、グルタチオンにより、肌の明度を改善することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、グルタチオンを低用量においても、肌明度を改善する方法を見出し、本発明を完成させた。
【0010】
本発明は以下のような発明である。
(1)有効成分としてグルタチオンを含む肌の明度向上用経口剤、
(2)グルタチオン含量が100mg以下である、前記(1)の肌の明度向上用経口剤、
(3)グルタチオンが酵母エキスに含まれるグルタチオンである前記(1)又は(2)の肌の明度向上用経口剤、
(4)グルタチオンを100mg/日以下を経口摂取する、肌明度の向上方法、
(5)グルタチオンが酵母エキスに含まれるグルタチオンである前記(4)の肌明度の向上方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明によると、グルタチオンの摂取量100mg/日以下であっても、肌明度を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の肌明度向上とは、肌の明度が高くなることを示し、一般的には、明るい肌、美白効果、メラニン色素沈着予防、メラニン色素沈着改善などと示される。
【0014】
本発明でいうグルタチオンは、還元型グルタチオン若しくは酸化型グルタチオン又はこれらの混合物をいう。還元型グルタチオンとはγ - L - G l u - L - C y s - G l y の構造を有するトリペプチドを表し、酸化型グルタチオンとは還元型グルタチオン2 分子がS-S 結合により結合したものである。グルタチオンの形態は、グルタチオンが有効成分として含有するものであれば何でもよい。
【0015】
本発明のグルタチオンは、医薬品又は食品として使用できる方法で取得されれば、特に制限はない。通常は、酵母等の微生物(特開昭59-151894)から得る方法、酵素を用いた合成等により製造される方法(特開2020-72)、化学的合成法により製造される方法(Bull.Chem.,Soc.Jpn.,1980年、第53巻、p.2529)などがあり、本発明で使用するグルタチオンに制限はない。また、グルタチオン及び酸化型グルタチオンは、購入もでき、食品、医薬品等として利用できるものであれば、購入したものでも良い。
【0016】
本発明の組成物中のグルタチオン含量は、任意であるが、1日あたりの摂取量を100mg以下とするため、組成物中の含量も100mg以下となることが好ましい。また、本発明の組成物は、例えば錠剤の形状の場合、1錠剤あたりの含量を100mgとしても良いし、例えば、1錠剤あたりの含量を20mgとして、5錠分を本願の組成物としても良い。顆粒や液剤等でも同様に考える。
【0017】
本発明のグルタチオンを含む組成物に使用されるグルタチオンは、精製物、粗精製物、混合物など、グルタチオンを含む形態であれば特に制限はない。混合物としては、酵母エキスのような、グルタチオンを含む抽出物であっても良い。グルタチオンを含有する酵母としては「ハイチオンコーボMG」(三菱商事ライフサイエンス社)、グルタチオンを含有する酵母エキスとしては「ハイチオンエキスYH」(三菱商事ライフサイエンス社)などがある。
【0018】
酵母エキス中などの混合物中のグルタチオン含量の測定方法は、本発明では、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いて行う。測定条件は以下の通りである。
・カラム:マイティシルRP-18GP(関東化学製)4.6mm-150cm
・移動相:5%リン酸水素二アンモニウム(pH3.2にリン酸で調整)
・測定波長:210nm
更にGSH及びGSSGを合わせたトータルのグルタチオンの定量は、Tietzeの方法(「アナリティカル バイオケミストリー」 第27巻、502ページ、1969年)に従って測定する。なお、本発明のグルタチオン含量は、還元型、酸化型を合わせた、トータルグルタチオン含量を意味している。
【0019】
本発明では、グルタチオンは、精製品であっても低用量摂取であれば、効果を有するが、グルタチオン含有酵母エキスであれば、なお良い。酵母エキスは、グルタチオンを高含有する酵母エキスを用いるのが特に好ましい。特に好ましいのは、グルタチオンを8重量%以上含む酵母エキスであり、さらに好ましくは、10重量%以上含む酵母エキスである。特に好ましくは15重量%以上含む酵素エキスである。
【0020】
本発明の組成物は、本発明の効果を阻害ない範囲で、他の物質を添加することができる。添加できるものは、通常のサプリメント、飼料、医薬品に添加される賦形剤、各種ビタミン剤、カルシウム、マグネシウム、鉄、亜鉛などの無機物、乳酸、クエン酸、リンゴ酸などの有機酸、タンパク質、乳酸菌抽出物、ポリフェノール、植物抽出物などの有機物などを適宜添加しても良い。また、一般食品に添加される、酸味料、甘味料、香料、安定化剤なども添加することができる。
【0021】
本発明品を投与する方法は、特に限定されず、経口投与、静脈内、腹膜内もしくは皮下投与等の非経口投与をあげることができる。具体的には、錠剤、散剤、顆粒剤、丸剤、懸濁剤、乳剤、浸剤・煎剤、カプセル剤、シロップ剤、液剤、エリキシル剤、エキス剤、チンキ剤、流エキス剤等の経口剤、又は注射剤、点滴剤、クリーム剤、坐剤等の非経口剤のいずれでもよい。これらの錠剤等の調整方法は、常法を採用でき、本発明での制限はない。
【0022】
本発明の投与量は、低用量において効果を発揮する。ヒトに投与する場合の摂取量および投与回数は、投与形態、被投与者の年齢、体重等により異なるが、成人一日当り、グルタチオンを100mg以下となるよう摂取する。通常は、10mg~100mg、好ましくは20 m g ~ 80mg、特に好ましくは30 m g~50mg となるように一日一回乃至数回摂取する。グルタチオンを含む酵母エキスを用いる場合、酵母エキス中のグルタチオン含量を測定し、本段落の用量になるよう、摂取量を調整する。
【0023】
本発明の組成物は、医薬品だけでなく、機能性食品、栄養補助食品としても摂取可能であり、その場合、前段の摂取量になるよう摂取すればよい。本発明の組成物は、メタボリックシンドロームなどの生活習慣病の改善・予防・治療用組成物として利用することができる。
【0024】
以下に、本願の発明をより詳細に説明する。しかし、本願発明は、以下の説明によって、限定されるものではない。
【実施例0025】
(試験方法)
20歳以上65歳以下の健常成人を対象に、ランダム化プラセボ対照二重盲検並群間比較介入試験にて、試験食品を12週間摂取させることで、肌の明度に与える影響を検証した。
【0026】
(試験食品)
・酵母エキスAは、グルタチオンを含む15重量%含む酵母エキスであり、被験食品A中のグルタチオン含量は、グルタチオン80mgである。
・被験食品Bの酵母エキスA量は被験食品A半量とし、被験食品B中のグルタチオン含量は、グルタチオン40mgである。
・対照食品で使用した酵母エキスBは、グルタチオンを含まない酵母エキスであるため、対照食品中のグルタチオン含量は、0mgである。
(試験期間)
2021年12月から2022年3月
(服用量)
・低用量第1群は、被験食品Aを経口摂取し、1日あたりの各成分の摂取量は、グルタチオン80mgとなる。
・低用量第2群は、被験食品Bを経口摂取し、1日あたりの各成分の摂取量は、グルタチオン40mgとなる。
・プラセボ群は、対照食品を経口摂取し、グルタチオン以外の成分は、試験食1及び2と同様である。
(肌明度測定)
測定は、分光測色計(CM-26d(コニカミノルタジャパン株式会社))を用いて、0、4、8、12週目に、顔の同箇所の明度を経時的に測定した。
【0027】
結果は、
図1及び表1に示す。腕の明度を測定した結果、低用量第1群及び第2群において、摂取開始時と比較し、優位に明度の改善がみられた。さらに低用量群第2群に関しては、プラセボ群に対しても優位に改善し、低用量のグルタチオンでも肌明度が改善した。
【0028】