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特開2024-20099排水検査システム、排水検査方法及びコンピュータプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024020099
(43)【公開日】2024-02-14
(54)【発明の名称】排水検査システム、排水検査方法及びコンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
   E03C 1/122 20060101AFI20240206BHJP
   G06Q 10/20 20230101ALI20240206BHJP
【FI】
E03C1/122 Z
G06Q10/00 300
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022123009
(22)【出願日】2022-08-01
(71)【出願人】
【識別番号】521350963
【氏名又は名称】株式会社菅原設備
(74)【代理人】
【識別番号】100181582
【弁理士】
【氏名又は名称】和田 直斗
(72)【発明者】
【氏名】菅原 直樹
【テーマコード(参考)】
2D061
5L049
【Fターム(参考)】
2D061AA01
2D061AA02
2D061AA03
2D061AB10
5L049CC15
(57)【要約】      (修正有)
【課題】排水検査の一人作業を実現可能にし、排水検査の作業効率を高めることができる排水検査システム、排水検査方法及びコンピュータプログラムを提供すること。
【解決手段】排水検査システム10は、水回り設備21から排水管24に排出された排水Wの流れを確認する。排水検査システム10は、排水管24の途中に設けられた排水桝25内を撮影可能な位置に配置される第1の端末30と、第1の端末30と通信可能に接続される第2の端末40とを備えている。第1の端末30は、第1の端末30の撮影部により排水桝25内を撮影した第1の映像を第2の端末40に送信する送信部を有する。第2の端末40は、第1の端末30から取得した第1の映像と、第2の端末40の撮影部により水回り設備21から排水管24に排出される排水Wを撮影した第2の映像とを、第2の端末40の表示部に表示する表示制御部を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水回り設備から排水管に排出された排水の流れを確認する排水検査システムであって、
前記排水管の途中に設けられた排水桝内を撮影可能な位置に配置される第1の端末と、
前記第1の端末と通信可能に接続される第2の端末と、を備え、
前記第1の端末は、前記第1の端末の撮影部により前記排水桝内を撮影した第1の映像を前記第2の端末に送信する送信部を有し、
前記第2の端末は、前記第1の端末から取得した前記第1の映像と、前記第2の端末の撮影部により前記水回り設備から前記排水管に排出される排水を撮影した第2の映像とを、前記第2の端末の表示部に表示する表示制御部を有する、
排水検査システム。
【請求項2】
前記第2の端末の前記表示制御部は、前記第1の映像及び前記第2の映像が、それぞれ前記表示部の表示領域における所定の領域に表示されるよう制御する、請求項1に記載の排水検査システム。
【請求項3】
前記第1の端末は、前記排水桝の上部開口を閉塞する端末保持用治具に配置される、請求項1又は2に記載の排水確認システム。
【請求項4】
水回り設備から排水管に排出された排水の流れを確認する排水検査方法であって、
前記排水管の途中に設けられた排水桝内を撮影可能な位置に配置される第1の端末が、前記第1の端末の撮影部により前記排水桝内を撮影した第1の映像を、前記第1の端末と通信可能に接続される第2の端末に送信するステップと、
前記第2の端末が、前記第1の端末から取得した前記第1の映像と、前記第2の端末の撮影部により前記水回り設備から前記排水管に排出される排水を撮影した第2の映像とを、前記第2の端末の表示部に表示するステップと、を有する、
排水検査方法
【請求項5】
水回り設備から排水管に排出された排水の流れを確認する排水検査システムに用いられるコンピュータプログラムであって、
前記排水管の途中に設けられた排水桝内を撮影可能な位置に配置される第1の端末が、前記第1の端末の撮影部により前記排水桝内を撮影した第1の映像を、前記第1の端末と通信可能に接続される第2の端末に送信する機能と、
前記第2の端末が、前記第1の端末から取得した前記第1の映像と、前記第2の端末の撮影部により前記水回り設備から前記排水管に排出される排水を撮影した第2の映像とを、前記第2の端末の表示部に表示する機能と、をコンピュータに実行させる、
コンピュータプログラム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排水検査システム、排水検査方法及びコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、戸建て住宅等の建物に設置される水回り設備(トイレ、風呂、台所等)については、竣工前に排水管の排水状況(排水の流れ等)に不具合がないかを確認する排水検査を行う。一般的な排水検査では、作業者が水回り設備から排水管に排水を流し、別の作業者が排水管の途中に設けられた排水桝内を覗き込み、排水が正常に流れているかを目視で確認している。
【0003】
また、特許文献1には、集合住宅等の排水検査として、電波を発信する試験体を排水管の上流側から投入して下流側で回収し、試験体からの電波を検知する携帯端末が試験体の投入時から回収時までの所要時間に基づいて排水管の詰まりを判定する排水管の通水試験システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第5945625号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の排水検査では、水回り設備から排水管に排水を流し、排水管の途中に設けられた排水桝で排水の流れを確認するという単純作業でありながら、必ず二人の作業者が必要であった。そのため、排水検査のためだけに二人の作業者が現場に行かなければならない等、排水検査の作業効率が非常に悪いという問題があった。また、上記特許文献1の方法を用いても、試験体を排水管の上流側から投入して下流側で回収することから、やはり二人の作業者が必要であり、上記の問題を解決することは困難であった。
【0006】
本発明は、排水検査の一人作業を実現可能にし、排水検査の作業効率を高めることができる排水検査システム、排水検査方法及びコンピュータプログラムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一の態様である排水検査システムは、水回り設備から排水管に排出された排水の流れを確認する。排水検査システムは、排水管の途中に設けられた排水桝内を撮影可能な位置に配置される第1の端末と、第1の端末と通信可能に接続される第2の端末と、を備えている。第1の端末は、第1の端末の撮影部により排水桝内を撮影した第1の映像を第2の端末に送信する送信部を有する。第2の端末は、第1の端末から取得した第1の映像と、第2の端末の撮影部により水回り設備から排水管に排出される排水を撮影した第2の映像とを、第2の端末の表示部に表示する表示制御部を有する。
【0008】
上記排水検査システムにおいて、第2の端末の表示制御部は、第1の映像及び第2の映像が、それぞれ表示部の表示領域における所定の領域に表示されるよう制御するようにしてもよい。
【0009】
また、第1の端末は、排水桝の上部開口を閉塞する端末保持用治具に配置されるようにしてもよい。
【0010】
本発明の他の態様である排水検査方法は、水回り設備から排水管に排出された排水の流れを確認する。排水検査方法は、排水管の途中に設けられた排水桝内を撮影可能な位置に配置される第1の端末が、第1の端末の撮影部により排水桝内を撮影した第1の映像を、第1の端末と通信可能に接続される第2の端末に送信するステップと、第2の端末が、第1の端末から取得した第1の映像と、第2の端末の撮影部により水回り設備から排水管に排出される排水を撮影した第2の映像とを、第2の端末の表示部に表示するステップと、を有する。
【0011】
本発明のさらに他の態様であるコンピュータプログラムは、水回り設備から排水管に排出された排水の流れを確認する排水検査システムに用いられる。コンピュータプログラムは、排水管の途中に設けられた排水桝内を撮影可能な位置に配置される第1の端末が、第1の端末の撮影部により排水桝内を撮影した第1の映像を、第1の端末と通信可能に接続される第2の端末に送信する機能と、第2の端末が、第1の端末から取得した第1の映像と、第2の端末の撮影部により水回り設備から排水管に排出される排水を撮影した第2の映像とを、第2の端末の表示部に表示する機能と、をコンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、排水検査の一人作業を実現可能にし、排水検査の作業効率を高めることができる排水検査システム、排水検査方法及びコンピュータプログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】第1実施形態の排水検査システムにおける、全体構成を示す説明図である。
図2】第1実施形態の排水検査システムにおける、第1の端末が端末保持用治具に保持されている状態を示す説明図である。
図3】第1実施形態の排水検査システムにおける、各構成の機能を示す機能ブロック図である。
図4】第1実施形態の排水検査システムにおける、端末保持用治具を用いた第1の端末の配置手順を示す説明図である。
図5】第1実施形態の排水検査システムにおける、第1の端末の表示部に第1の映像が表示されている状態を示す説明図である。
図6】第1実施形態の排水検査システムにおける、第2の端末の表示部に第1の映像及び第2の映像が表示されている状態を示す説明図である。
図7】第1実施形態の排水検査システムにおける、第2の端末で排水の流れを確認する手順を示す説明図である。
図8】第2実施形態の排水検査システムにおける、端末保持用治具を用いた第1の端末の配置手順を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態を図面と共に説明する。
(第1実施形態)
図1に示すように、本実施形態の排水検査システム10は、作業者Aが、建物20に設置された水回り設備21の排水状況を確認する排水検査に用いられる。
【0015】
作業者Aが排水検査を行う対象となる建物20は、戸建て住宅である。建物20には、複数の水回り設備21が設置されている。水回り設備21としては、例えば、トイレ211、風呂212、台所213等がある。
【0016】
建物20には、水回り設備21への給水を行う給水設備(図示省略)と、水回り設備21からの排水を行う排水設備22とが設けられている。排水設備22は、建物20に設置された水回り設備21からの排水Wを建物20の敷地外の下水道管23まで導くための設備である。
【0017】
排水設備22は、各水回り設備21から下水道管23までの間をつなぐ排水管24と、排水管24の途中に設けられた複数の排水桝とを備えている。排水管24は、複数の配管部材を接続して構成されている。複数の排水桝には、図示を省略したが、各水回り設備21に対応して設けられた排水桝(汚水桝)と、排水管24の最も下流側に設けられた排水桝(最終桝)25とが含まれる。
【0018】
排水検査システム10は、第1の端末30及び第2の端末40を備えている。第1の端末30及び第2の端末40は、排水検査を行う作業者Aが使用する端末機器である。第1の端末30及び第2の端末40としては、スマートフォン、タブレット、パーソナルコンピュータ(PC)等を用いることができる。
【0019】
第1の端末30及び第2の端末40は、作業者Aが排水検査を行う現場で使用するため、作業者Aが持ち運びしやすいスマートフォン等の携帯端末であることが好ましい。本実施形態において、第1の端末30及び第2の端末40は、いずれもスマートフォンである。
【0020】
図2に示すように、第1の端末30は、排水桝25内を撮影可能な位置に配置されている。排水桝25は、桝本体部26と、桝本体部26から上方に立ち上がる円管状の立設部27とを有する。桝本体部26には、上流側の排水管24と、下流側の排水管24とが接続されている。桝本体部26には、排水Wが流入する流入口261と、排水Wが流出する流出口262とが設けられている。
【0021】
排水桝25には、立設部27の上部開口を閉塞するように端末保持用治具50が設けられている。端末保持用治具50は、立設部27の上部開口に着脱可能に構成されている。端末保持用治具50は、円管状の本体管部51と、本体管部51の上端を閉塞するように設けられた円形板状の開閉蓋部52と、本体管部51の下端を閉塞するように設けられた円形板状の底部53とを有する。
【0022】
本体管部51は、立設部27の上端部に挿入して配置されている。開閉蓋部52は、本体管部51の上端凹部に配置され、開閉(着脱)可能に構成されている。開閉蓋部52の中央には、採光用の円形状の窓部521が設けられている。本体管部51及び開閉蓋部52の窓部521以外の部分は、塩化ビニル樹脂で構成されている。開閉蓋部52の窓部521及び底部53は、透明性の塩化ビニル樹脂で構成されている。
【0023】
第1の端末30は、端末保持用治具50内に配置されている。具体的には、第1の端末30は、端末保持用治具50の底部53上に載置されている。第1の端末30は、透明性の底部53を介して、下方に位置する排水桝25内(桝本体部26内)を撮影可能な位置に配置されている。なお、第1の端末30は、排水検査の際に、端末保持用治具50内に配置されていればよい。
【0024】
図3に示すように、排水検査システム10は、第1の端末30及び第2の端末40の他に、サーバ60及びストレージ61を備えている。第1の端末30及び第2の端末40は、インターネットを含むコンピュータネットワーク(以下、単にネットワークNという。)を介してサーバ60及びストレージ61と通信可能に構成されている。
【0025】
第1の端末30は、撮影部31と、表示部32と、送信部33とを備えている。
撮影部31は、排水桝25内を撮影するカメラ(撮像装置)である。具体的には、撮影部31は、排水桝25内を流れる排水Wを撮影する。
【0026】
表示部32は、撮影部31が撮影した映像(以下、第1の映像という。)を表示する。本実施形態では、表示部32は、撮影部31が撮影しているリアルタイムの第1の映像(映像データ)を表示する。表示部32は、液晶、有機EL等で構成された表示装置である。表示部32は、タッチパネルで構成され、操作ボタン等を表示して第1の端末30を操作可能となっている。
【0027】
送信部33は、第2の端末40からの要求に応じて、撮影部31が撮影した第1の映像を第2の端末40に送信する。本実施形態では、送信部33は、撮影部31が撮影しているリアルタイムの第1の映像を第2の端末40に送信する。
【0028】
第2の端末40は、撮影部41と、表示部42と、要求部43と、取得部44と、表示制御部45と、録画部46、加工処理部47とを備えている。
撮影部41は、水回り設備21を撮影するカメラ(撮像装置)である。具体的には、撮影部41は、水回り設備21から排水管24に排出される排水Wを撮影する。
【0029】
表示部42は、撮影部41が撮影した映像(以下、第2の映像という。)を表示する。本実施形態では、表示部42は、撮影部41が撮影しているリアルタイムの第2の映像(映像データ)を表示する。また、表示部42は、第1の端末30から後述する取得部44が取得したリアルタイムの第1の映像も表示する。表示部42は、液晶、有機EL等で構成された表示装置である。表示部42は、タッチパネルで構成され、操作ボタン等を表示して第2の端末40を操作可能となっている。
【0030】
要求部43は、第1の端末30に対して、第1の映像を第2の端末40に送信するよう要求する。
取得部44は、第1の端末30の送信部33によって第1の端末30から第2の端末40に送信された第1の映像を取得する。
【0031】
表示制御部45は、第1の端末30から取得部44が取得した第1の映像と、撮影部41が撮影した第2の映像とを、第2の端末40の表示部42に表示する。また、表示制御部45は、第1の映像及び第2の映像が、それぞれ表示部42の表示画面(表示領域)における所定の領域に表示されるよう制御する。本実施形態では、表示制御部45は、第1の端末30から取得部44が取得したリアルタイムの第1の映像と、撮影部41が撮影しているリアルタイムの第2の映像とを、表示部42の表示画面に上下に並べて表示する。
【0032】
録画部46は、表示部42に表示された第1の映像及び第2の映像を録画する。本実施形態では、録画部64は、第1の映像及び第2の映像を含む、表示部42の表示画面全体を録画する。
【0033】
加工処理部47は、録画部46によって表示部42の表示画面全体が録画された録画データから第1の映像及び第2の映像の部分を切り取る加工処理を行い、第1の映像及び第2の映像が録画された映像データを生成する。
【0034】
サーバ60は、ネットワークNを介して利用することができるクラウドサーバである。サーバ60は、第1の端末30及び第2の端末40を用いて排水検査システム10を利用する利用者(作業者A)の認証処理を行う機能を有する。
【0035】
また、サーバ60は、第1の端末30と第2の端末40との間の接続通信処理の際に、WebRTC(Web Real-Time Communication)技術を用いた、第1の端末30と第2の端末40との間のP2P(Peer to Peer)通信を確立するためのシグナリングサーバとしての機能を有する。
【0036】
ストレージ61は、ネットワークNを介して利用することができるクラウドストレージである。ストレージ61は、第2の端末40から送信された映像データ(第1の映像及び第2の映像の録画データ)を保存する。
【0037】
なお、上述した排水検査システム10の機能構成は、あくまで一例であり、1つの機能を分割したり、複数の機能をまとめて1つの機能として構成したりしてもよい。各機能処理部は、端末やサーバに内蔵されたCPUが、メモリ等の記憶装置に格納されたアプリケーションソフトウェア等を含むコンピュータプログラム(以下、単にプログラムという。)に従って各種処理を実行し、各種機能が実現される。各機能処理部は、その一部についてハードウェアを制御することによって実現されるようにしてもよい。
【0038】
次に、排水検査システム10を用いた排水検査方法について説明する。
作業者Aは、予め、第1の端末30及び第2の端末40について、排水検査システム10にログインした状態にしておく。具体的には、作業者Aは、第1の端末30及び第2の端末40を操作し、利用者ID及びパスワードを入力してサーバ60に送信する。サーバ60は、データベースに保存された利用者識別情報(利用者ID、パスワード)を参照して利用者(作業者A)の認証を行う。これにより、第1の端末30及び第2の端末40が排水検査システム10にログインした状態となる。
【0039】
次いで、図4(A)~(C)に示すように、作業者Aは、第1の端末30を、排水桝25内を撮影可能な位置に配置する。作業者Aは、端末保持用治具50を用いて第1の端末30を配置する。以下にその手順を説明する。
【0040】
図4(A)に示すように、排水桝25の立設部27には、立設部27の上部開口を閉塞するように配置された密閉蓋28が設けられている。密閉蓋28は、円管状の本体管部281と、本体管部281の上端を閉塞するように設けられた円形板状の開閉蓋部282とを有する。
【0041】
本体管部281は、排水桝25の立設部27の上端部に挿入して配置されている。開閉蓋部282は、本体管部281の上端凹部に配置され、開閉(着脱)可能に構成されている。密閉蓋28(本体管部281、開閉蓋部282)は、塩化ビニル樹脂で構成されている。
【0042】
図4(B)に示すように、排水桝25の立設部27から密閉蓋28を取り外す。
図4(C)に示すように、排水桝25の立設部27に、立設部27の上部開口を閉塞するように端末保持用治具50を取り付ける。具体的には、端末保持用治具50の本体管部51を、排水桝25の立設部27の上端部に挿入する。
【0043】
そして、端末保持用治具50の開閉蓋部52を開け、第1の端末30を底部53上に載置する。このとき、作業者Aは、第1の端末30を操作し、撮影部31による撮影が可能な状態(撮影状態)にする。また、第1の端末30の表示部32を上側に、第1の端末30の表示部32とは反対側に設けられた撮影部31を下側にして載置する。これにより、第1の端末30は、透明性の底部53を介して、下方に位置する排水桝25内(桝本体部26内)を撮影可能な位置に配置される。
【0044】
図5に示すように、第1の端末30の表示部32の表示画面には、撮影部31が撮影しているリアルタイムの第1の映像310が表示される。作業者Aは、排水桝25内を撮影できているかどうかを、第1の端末30の表示部32に表示された第1の映像310で確認する。その後、端末保持用治具50の開閉蓋部52を閉じ、第1の端末30の配置を完了する。
【0045】
次いで、作業者Aは、第2の端末40を持って、排水検査の対象となる建物20の水回り設備21(トイレ211)に移動する。そして、作業者Aは、第2の端末40を操作し、撮影部41による撮影が可能な状態(撮影状態)にする。本実施形態では、第2の端末40を撮影状態にすることにより、第1の端末30と第2の端末40との間の接続通信処理が行われる。
【0046】
本実施形態において、第1の端末30と第2の端末40との間の接続通信には、WebRTC技術が用いられる。具体的には、サーバ60をシグナリングサーバとして第1の端末30と第2の端末40との間のP2P通信が確立される。すなわち、サーバ60を介することなく、第1の端末30と第2の端末40との間に継続して通信可能なセキュアな通信経路が確立され、両者の間で直接データ等の送受信が可能となる。
【0047】
そして、第2の端末40は、第1の端末30に対して、第1の映像310を第2の端末40に送信するよう要求する。第1の端末30は、第2の端末40からの要求に応じて、撮影部31が撮影しているリアルタイムの第1の映像310を第2の端末40に送信する。第2の端末40は、第1の端末30から第2の端末40に送信された第1の映像310を取得する。
【0048】
図6に示すように、第2の端末40の表示部42の表示画面には、第1の端末30から取得した第1の映像310と、撮影部41が撮影しているリアルタイムの第2の映像410とが上下に並んで表示される。本実施形態では、表示部42の表示画面における上側部分に第1の映像310が、下側部分に第2の映像410が同じ大きさで表示される。また、表示部42の表示画面の下部には、録画ボタン421が表示される。
【0049】
なお、第1の映像310は、第2の端末40の表示部42の表示画面に表示する領域に合わせて、第1の端末30の撮影部31が撮影している映像(図5参照)における上下部分を除いた中央部分が表示されている。第2の映像410も同様に、第2の端末40の撮影部41が撮影している映像における上下部分を除いた中央部分が表示されている。
【0050】
そして、作業者Aは、第2の端末40の表示部42に表示されている第2の映像410を見ながら、第2の端末40の表示部42とは反対側に設けられた撮影部41により、排水検査の対象となる水回り設備21(トイレ211)を撮影する。
【0051】
次いで、図7(A)に示すように、作業者Aは、第2の端末40の表示部42の表示画面に表示された録画ボタン421をタッチする。これにより、表示部42に表示されている第1の映像310及び第2の映像410の録画が開始される。本実施形態では、第1の映像310及び第2の映像410を含む、表示部42の表示画面全体が録画される。このとき、表示部42の表示画面の上部には、「録画中」の文字422が表示される。
【0052】
そして、作業者Aは、水回り設備21に対して給水を行う(水を流す)と共に、水回り設備21から排水管24に排出される排水Wを撮影する。本実施形態では、トイレ211に水を流している様子を撮影する。作業者Aは、第2の端末40の表示部42に表示されている第2の映像410を見ながら撮影を行う。
【0053】
次いで、図7(B)に示すように、作業者Aは、第2の端末40の表示部42に表示されている第1の映像310を見ながら、水回り設備21(トイレ211)から排水管24に排出された排水Wが、排水管24を介して排水桝25内を流入口261から流出口262に流通する様子を確認する。作業者Aは、排水状況(排水Wの流れ)を確認した後、第2の端末40の表示部42に表示された録画ボタン421をタッチし、録画を終了する。
【0054】
録画を終了した後、作業者Aによって録画データを保存する操作を行うことにより、第1の端末30と第2の端末40との接続通信が自動的に遮断される。すなわち、第1の端末30から第2の端末40への第1の映像310の送信が終了し、第2の端末40の表示部42における第1の映像310及び第2の映像410の表示が終了する。
【0055】
第2の端末40は、作業者Aによる録画データを保存する操作により、表示部42の表示画面全体が録画された録画データから第1の映像310及び第2の映像410の部分を切り取る加工処理を行い、第1の映像310及び第2の映像410が録画された映像データを生成する。
【0056】
第2の端末40は、生成した映像データ(第1の映像310及び第2の映像410の録画データ)をストレージ61に送信する。映像データは、ストレージ61に保存される。これにより、作業者Aは、水回り設備21(トイレ211)の排水状況の確認を終了する。作業者Aは、他の水回り設備21(風呂212、台所213等)についても同様の手順で排水状況を確認する。
【0057】
作業者Aは、排水検査の対象となる全ての水回り設備21について排水状況の確認を終了すると、第2の端末40を持って排水桝25に移動し、排水桝25の立設部27から端末保持用治具50を取り外し、端末保持用治具50から第1の端末30を取り出す。その後、排水桝25の立設部27の上部開口を閉塞するように密閉蓋28を取り付ける。以上により、排水検査システム10を用いた排水検査を終了する。
【0058】
次に、本実施形態の排水検査システム10の作用効果を説明する。
本実施形態の排水検査システム10によれば、第1の端末30(送信部33)は、第1の端末30の撮影部31により撮影した第1の映像310を第2の端末40に送信する。そして、第2の端末40(表示制御部45)は、表示部42において、第1の端末30から取得した第1の映像310と、第2の端末40の撮影部41により撮影した第2の映像410とを表示する。
【0059】
そのため、作業者Aは、第2の端末40の表示部42に表示される第2の映像410で、水回り設備21から排水管24に排出される排水Wを撮影部41で撮影しながら確認すると共に、第2の端末40の表示部42に表示される第1の映像310で、水回り設備21から排水管24に排出された排水Wが、排水管24を介して排水桝25内を流通する様子を確認することができる。これにより、排水検査の一人作業を実現可能にし、排水検査の作業効率を高めることができる。
【0060】
また、第2の端末40(表示制御部45)は、第1の映像310及び第2の映像410が、それぞれ表示部42の表示画面(表示領域)における所定の領域に表示されるよう制御する。そのため、第1の映像310及び第2の映像410を、表示部42の表示画面の適切な位置に精度良く表示することができる。これにより、例えば、本実施形態のように、第1の映像310と第2の映像410とを同じ大きさで上下に並べて表示することで、作業者Aは、第1の映像310及び第2の映像410を同時に見ながらの排水検査作業が容易となる。
【0061】
また、第1の端末30は、排水桝25の上部開口を閉塞する端末保持用治具50に配置される。そのため、第1の端末30を、排水桝25内を撮影可能な位置に容易に配置することができる。また、排水桝25に取り付ける密閉蓋28の代わりに端末保持用治具50を取り付けることで、密閉蓋28を取り外した状態(排水桝25の上部が開口した状態)で排水検査を行わなくてもよい。そのため、安全性を確保した状態で排水検査の一人作業を実現することができる。
【0062】
(第2実施形態)
本実施形態は、図8(A)~(C)に示すように、排水検査システム10において、端末保持用治具50を用いた第1の端末30の配置に関する構成を変更した例である。なお、第1実施形態と同様の構成及び作用効果については説明を省略する。
【0063】
図8(A)に示すように、排水桝25の立設部27には、立設部27の上部開口を閉塞するように密閉蓋28が配置されている。
図8(B)に示すように、密閉蓋28の開閉蓋部282を取り外す。
図8(C)に示すように、端末保持用治具50を密閉蓋28の本体管部281上に載置する。具体的には、端末保持用治具50の本体管部51を、密閉蓋28の本体管部281の上端凹部上に載置する。
【0064】
そして、端末保持用治具50の開閉蓋部52を開け、第1の端末30を底部53上に載置する。これにより、第1の端末30は、透明性の底部53を介して、下方に位置する排水桝25内(桝本体部26内)を撮影可能な位置に配置される。その後、端末保持用治具50の開閉蓋部52を閉じ、第1の端末30の配置を完了する。
【0065】
本実施形態では、排水桝25の立設部27に設けられた密閉蓋28の開閉蓋部282を取り外すだけでよく、密閉蓋28全体を取り外す必要がないため、端末保持用治具50を用いた第1の端末30の配置作業が容易となる。
【0066】
(その他の実施形態)
本発明は、上記実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明を逸脱しない範囲において種々の態様で実施しうることはいうまでもない。
【0067】
(1)上記実施形態では、水回り設備21としてトイレ211、風呂212、台所213を例示したが、水回り設備には、その他にも洗面、洗濯場等、水を使用する場所に設置される設備が含まれる。
【0068】
(2)上記実施形態では、排水検査システム10を用いた排水検査を行う対象となる建物20として戸建て住宅の例を示したが、排水検査システムを用いた排水検査は、例えば、集合住宅等の建物であっても適用することができる。
【0069】
(3)上記実施形態では、第1の端末30により、排水管24の最も下流側に設けられた排水桝(最終桝)25内を撮影して排水Wの流れを確認したが、例えば、各水回り設備に対応して設けられた排水桝(汚水桝)等、他の排水桝内を撮影して排水の流れを確認してもよい。
【0070】
(4)上記実施形態では、第1の端末30は、端末保持用治具50によって保持することにより、排水桝25内を撮影可能な位置に配置されているが、第1の端末は、排水桝内を撮影可能な位置に配置することができれば、どのような方法で保持・配置してもよい。
【0071】
(5)上記実施形態では、第2の端末40の撮影部41により、水回り設備21から排水管24に排出される排水Wを撮影する。ここで、水回り設備から排水管に排出される排水を撮影するとは、正常に排水が行われていることが確認できる程度に、水回り設備からの排水が排水管に排出される様子を撮影すればよい。
【0072】
(6)上記実施形態では、第1の端末30と第2の端末40との間の接続通信にWebRTC技術によるP2P通信を用い、両者の間で直接データ等の送受信を可能としたが、両者の間の接続・通信方法は、従来公知の接続・通信方法等、どのような方法を用いてもよい。また、両者の間のデータ等の送受信に関しても、サーバ等を介して両者の間のデータ等の送受信を行ってもよい。
【0073】
(7)上記実施形態では、第2の端末40の表示部42において、第1の映像310と第2の映像410とを同じ大きさで上下に並べて表示したが、第2の端末の表示部に表示する第1の映像及び第2の映像の大きさ、位置等は適宜変更してもよい。
【0074】
(8)上記実施形態では、第2の端末40において、表示部42の表示画面全体が録画された録画データの加工処理を行い、生成した映像データ(第1の映像310及び第2の映像410の録画データ)をストレージ61に保存したが、例えば、録画データをストレージに保存してからサーバで加工処理を行ってもよい。また、ストレージに保存してから外部API(Application Programming Interface)等を用いて加工処理を行ってもよい。また、第2の端末で外部API等を用いて加工処理を行ったり、第2の端末での録画と同時に外部API等を用いて加工処理を行ったりしてもよい。
【0075】
(9)上記実施形態における1つの構成要素が有する機能を複数の構成要素として分散させたり、複数の構成要素が有する機能を1つの構成要素に統合したりしてもよい。また、上記実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加、置換等してもよい。なお、特許請求の範囲に記載の文言から特定される技術思想に含まれるあらゆる態様が本発明の実施形態である。
【符号の説明】
【0076】
10…排水検査システム、21…水回り設備、24…排水管、25…排水桝、30…第1の端末、31…撮影部、33…送信部、40…第2の端末、41…撮影部、42…表示部、45…表示制御部、310…第1の映像、410…第2の映像、W…排水

図1
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図8