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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024020108
(43)【公開日】2024-02-14
(54)【発明の名称】立体面投影露光装置
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/20 20060101AFI20240206BHJP
   G02B 17/00 20060101ALI20240206BHJP
【FI】
G03F7/20 501
G03F7/20 521
G02B17/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2022130281
(22)【出願日】2022-08-01
(71)【出願人】
【識別番号】598045416
【氏名又は名称】堀内 敏行
(72)【発明者】
【氏名】堀内 敏行
【テーマコード(参考)】
2H087
2H197
【Fターム(参考)】
2H087KA21
2H087LA01
2H087TA04
2H087TA06
2H197AA10
2H197AA41
2H197AA42
2H197BA03
2H197BA11
2H197CA07
2H197CD12
2H197CD15
2H197CD17
2H197CD18
2H197CE10
2H197HA03
2H197HA08
2H197HA10
(57)【要約】
【課題】透過型平面レチクルを原図物体として、透過・遮光パターンを被露光物体の緩い曲面を含む外形面に、一括で投影露光して転写する。
【解決手段】 凹面側を反射面とする2枚の回転放物面鏡を軸合わせして対向させ、各々の鏡面の中央部に開口を設けて各鏡面の焦点が他方の鏡面の開口の中心付近に来るようにし、片方の回転放物面鏡の開口付近に置いた平面レチクルを原図物体とし、コリメート光源により一方向から平行光で照明して該平面レチクル上の透過・遮光パターンの像を他方の回転放物面鏡の開口付近に置いた被露光物体の緩い曲面を含む外形面上に深い焦点深度で投影し、前記緩い曲面を含む外形面上に付した感光性物質を平面レチクル上の透過・遮光パターンと類似した形状に感光させる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
凹面側を反射面とする第1の回転放物面鏡と、凹面側を反射面として同じ反射面形状を持つ第2の回転放物面鏡とを、該凹面側の両反射面が対向するように両回転放物面の軸を重ねて配置し、前記第1の回転放物面鏡の鏡面の中央部と前記第2の回転放物面鏡の鏡面の中央部のそれぞれに開口を設け、第1の回転放物面鏡はその焦点が第2の回転放物面鏡に設けた開口面付近、第2の回転放物面鏡はその焦点が第1の回転放物面鏡に設けた開口面付近となる焦点距離を有し、かつ前記の両焦点が第1の回転放物面鏡および第2の回転放物面鏡の回転面の軸上に存在するようになし、第1の回転放物面鏡の開口面付近に置いた透過型レチクルの透過または遮光パターンを原図物体として、第1の回転放物面鏡の裏面側から、コリメート光源を用いた方向が大略揃った光線により斜め一方向からのみ照明し、該原図物体である透過型レチクルの透過または遮光パターンの像を、第2の回転放物面鏡の開口付近に置いた任意の緩曲面を有する被露光物体の立体表面に形成することにより、該被露光物体の立体表面に付した感光性物質を、該透過型レチクルの透過または遮光パターン形状に大略対応する類似形状に感光させるべく露光することを特徴とする立体面投影露光装置
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透過型平面レチクル上に形成された透過または遮光パターンの形状を、任意の緩曲面を有する被露光物体の外形面に、一括して同時に投影露光して転写する投影露光装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体集積回路やマイクロ電子機械システム(Micro Electro Mechanical Systems: MEMS)の微細パターン形成技術としてリソグラフィ技術が用いられている。
【0003】
リソグラフィ技術は、レジストなどの感光性物質を、塗布、貼り付けなど何らかの方法で付した被露光基板上に、レチクルなど原図基板上のパターンを転写することにより前記感光性物質の一部または全部を露光し、露光後に現像液に浸潤させるウェットプロセスやプラズマ中でガス加工を行うドライプロセスなどの現像プロセスにより、露光時の感光部のみを除去して未感光部を残存させるか、露光時の未感光部のみを除去して感光部を残存させることができ、原図基板上のパターン形状を、前記感光性物質に転写できる技術である。
【0004】
レーザビーム、電子ビーム、イオンビームなどを、前記感光性物質を付した被露光基板上に照射するか、該レーザビーム、電子ビーム、イオンビームなどをピンホール、成形絞りなどによって整形したスポットの投影像を、前記感光性物質を付した被露光基板上に作ることにより、該感光性物質を露光できるようにし、該感光性物質を付した被露光基板に対して前記ビームまたは前記スポット投影像を走査するか、逆に該感光性物質を付した被露光基板を前記ビームまたは前記スポット投影像に対して走査するかしてパターンを描画露光し、前記した現像プロセスにより、前記感光性物質のパターンを前記被露光基板上に形成することもできる。
【0005】
感光性物質を付した被露光基板上に原図基板上のパターンを転写する露光方法には、原図基板と被露光基板とを密着させて露光したり、近接させて露光したりする方法もあるが、原図基板と被露光基板とのあいだにレンズやミラーを用いた投影光学系を置いて、感光性物質を付した被露光基板上に原図基板上のパターンの投影像を作り、該投影像の明暗分布に応じて被露光基板上の感光性物質を感光させる、投影露光リソグラフィ技術が現状における量産用リソグラフィ技術の主流となっている。
【0006】
投影露光リソグラフィにおいては、平面原図基板に照明光を照射し、投影露光光学系を用いて、該平面原図基板上のパターンの光像を被露光基板上に形成した感光性物質上に作り、該感光性物質を平面原図基板上のパターン形状に感光させる。
【0007】
材質、照明の方向、平面原図基板上の遮光パターン部と透過パターン部の透過
【0008】
【0009】
そのため、半導体集積回路やマイクロ電子機械システムを製造するためでき
力大きくするように設計されている。
【0010】
しかし、解像限界付近の微細パターンを投影露光するときの焦点深度は開口
く浅くなる。
【0011】
このような事情から、従来の投影露光装置では、なるべく平坦な平面原図基板上のパターンをなるべく平坦な被露光基板上に形成した感光性物質上に転写するという考え方で作られており、曲面を有する被露光物体の外形面上に投影露光転写する思想はなかった。
【0012】
しなければならず、光軸に対して斜めに進む光線が投影露光光学系を通り抜けられるようにするため、投影露光光学系を構成するレンズやミラー口径も大きくする必要がある。
【0013】
しかし、レンズやミラーの口径を大きくして精度よくパターン像を形成できるようにするためには、面精度を高めるとともに、収差補正のため、面数を増やしたり製造や設計が難しい非球面を使ったりすることが必要となる。また、使用環境の温度、湿度、気圧等も厳密に管理することが必要となる。
【0014】
そのため、投影露光光学系の価格が非常に高くなり、寸法が大きくなり、設備の準備や保守、管理も格段に大変になり、露光装置の価格がとてつもなく高額であった。
【0015】
したがって、投影露光光学系の価格に見合う大きな需要があるニーズ以外にリソグラフィ技術を利用することは、露光装置の価格、設備の規模、保守、管理に必要な技術レベルなど、様々な点からして非常に困難であった。
【0016】
なお、装置価格を度外視したとしても、曲面を有する被露光物体の外形面上にパターンを形成する投影露光装置は市販されていない。
【0017】
このような状況下で、特許文献1には、立体的な凹凸を有する原図物体の外形面上に形成された反射パターンまたは透過パターンの形状を、該反射パターンまたは透過パターンが形成されたのと同じ形状の立体的な凹凸を有する被露光物体の外形面に投影露光転写する立体面投影露光装置が開示されている。
【0018】
この特許文献1に開示された立体面投影露光装置のうち、原図物体の立体外形面上に形成された透過パターンの形状を、原図物体の立体外形面と同じ形状の被露光物体の立体外形面に投影露光転写する立体面投影露光装置の構成を図4に示す。
【0019】
この特許文献1に開示された従来の立体面投影装置は、凹面側の回転放物面を反射面とする回転放物面鏡51と、同じ寸法、形状、反射面を有する回転放物面鏡52とを該回転物面鏡どうしの軸を重ねて対向させた構造を有する。該2枚の回転放物面鏡51と52により囲まれた空間は、全面に回転放物面反射鏡がある構造である。
【0020】
回転放物面鏡51の焦点53が回転放物面鏡2の放物面鏡面の頂点よりやや内側に来るようになし、回転放物面鏡52の焦点54が回転放物面鏡51の放物面鏡面の頂点よりやや内側に来るように構成してある。
【0021】
回転放物面鏡51の中央部には、回転放物面鏡52の焦点54付近に、開口55を設け、回転放物面鏡52の中央部には、回転放物面鏡51の焦点53の位置付近に、開口56を設けてある。
【0022】
回転放物面鏡1の中央部の開口55内にある回転放物面鏡52の焦点54から出て回転放物面鏡52に当たる任意の光線57は、焦点から出た光線なので、回転放物面鏡52で反射後、光軸に平行に進み、回転放物面鏡51に当たる。そして、この光線は回転放物面鏡51の光軸にも平行なので、回転放物52の開口56内にある回転放物面鏡51の焦点53に行く。すなわち、回転放物面鏡52の焦点54と回転放物面鏡51の焦点53とは光学的に共役の位置関係にある。
【0023】
そのため、焦点54付近に小さい原図物体59を置けば、焦点53付近にその立体像が形成される。そして、回転放物面鏡51の開口55の中央に近い部分であれば、原図物体59が立体的で多少大きくても、多少形状や寸法が歪むものの、回転放物面鏡52の開口56内に該立体的原図物体59の立体像ができる。
【0024】
したがって、該立体的原図物体59の立体像が形成される位置に、原図物体59と同じ外形面形状、寸法を有する立体的被露光物体60を該立体像が形成される向きを考慮して置き、原図物体59の外形面上に形成された透過パターンを照明して、該透過パターンの形状を、同じ形状の被露光物体60の外形面に投影してその像を作ることができる。
【0025】
そして、感光性物質を被露光物体60の外形面に付しておけば、投影される原図物体59の外形面上に形成された透過パターンの像62の明暗に対応して該感光性物質が露光され、現像すれば、被露光物体60の立体面に感光性物質のパターンを転写することができる。
【0026】
しかし、上記の特許文献1に開示された立体面投影露光装置の実施例においては、露光光線を透過する物質で原図物体59を薄く作り、上下いずれかの面、または両面に遮光物質により透過パターン73を形成した原図物体59を使用している。ここに大きな問題点がある。
【0027】
そして、被露光物体60を、原図物体59と同じ表面形状、寸法を有する薄い透過被露光物体60とし、被露光物体60の下面または上面に感光性物質を付している。
【0028】
この立体面投影露光装置のもう一つの重要な要改良点は、露光するため原図物体59を照明する光源として、発光光線に発光ダイオード(LED)63をリング状に多数並べたリングライト64を使用して全方位から露光光線を照明している点である。
【0029】
なお、67は被露光物体位置姿勢調整ステージ、69は原図物体位置姿勢調整ステージ、70は基台、71はリング照明光源64を基台70に取り付ける支持台、72は被露光物体位置姿勢調整ステージ67を基台70に取り付ける支持台、75は原図物体保持具、76は被露光物体保持具である。
【0030】
特許文献1に示される技術によれば、任意の緩曲面に付した感光性物質に対し、投影露光により露光フィールド内でパターンを同時に形成できる。
【0031】
したがって、被露光物体の外形面の広い範囲に同時にパターンを転写することができるため、レーザビーム、電子ビーム、イオンビームなどを被露光物に対して相対的に走査したり、該レーザビーム、電子ビーム、イオンビームなどをピンホール、成形絞りなどによって整形したスポットの投影像により被露光物上を少しずつ露光して行ったりする露光技術に比して大幅に露光時間を短縮できる。
【0032】
しかし、この特許文献1に開示された立体面投影装置は、被露光物体の外形面と同じ形状の立体的な凹凸を有する原図物体の外形面上に形成された透過パターンを原図物体パターンとして用いるため、立体的な凹凸を有する被露光物体の外形面に感光性物質を付してパターンを形成するには、まず、同形状同寸法の立体的な凹凸を有する原図物体の外形面上に、原図パターンとする透過パターンを形成することが必要となる。
【0033】
しかし、立体的な凹凸を有する原図物体の外形面上に、原図パターンとする透過パターンを形成することは容易ではない。
【0034】
方法としては、まず、(1)平面透明膜上に遮光膜でパターンを形成したフィルムレチクルを作成し、加熱軟化させて原図物体の外形面と同形状の立体面に押し付けて倣わせ、変形後冷却して剥離し、立体面形状のレチクルを作る方法が考えられる。
【0035】
また、(2)透明原図物体の外形面に遮光膜を付し、その上に感光性物質を付して、レーザビーム、電子ビーム、イオンビームなどを被露光物に対して相対的に走査したり、該レーザビーム、電子ビーム、イオンビームなどをピンホール、成形絞りなどによって整形したスポットの投影像により被露光物上を少しずつ露光したりして透明原図物体の外形面に感光性物質のパターンを作り、該感光性物質のパターンをマスキング材として前記透明原図物体外形面上の遮光膜をエッチングして立体面形状のレチクルを作る方法が考えられる。
【0036】
さらに、(3)透明原図物体の外形面上に感光性物質を付して、レーザビーム、電子ビーム、イオンビームなどを被露光物に対して相対的に走査したり、該レーザビーム、電子ビーム、イオンビームなどをピンホール、成形絞りなどによって整形したスポットの投影像により被露光物上を少しずつ露光したりして透明原図物体の外形面に感光性物質のパターンを作り、該感光性物質のパターンのない部分に金属等の遮光膜を付け、マスキングに用いた感光性物質のパターンを除去するリフトオフ法により遮光膜パターンのみを残して立体面形状のレチクルを作る方法も考えられる。
【0037】
しかし、どの方法も容易ではなく、(1)の方法で立体面形状のレチクルができるのであれば、被露光物体の外形面に感光性物質を付して、それに該立体面形状のレチクルを被せて密着か近接露光を行えばよい、とも思われる。
【0038】
また、(2)や(3)の方法により原図物体外形面上に容易に原図とする透過パターンが容易にできるのであれば、被露光物体の外形面に感光性物質を付して同じ方法で直接パターンを形成すればよいと、と思われる。
【0039】
このような透過原図パターンを有する透過原図物体を製作することの難しさを回避して立体面投影露光を可能とするには、従来技術により容易に製作できる透過・遮光原図パターンを有する原図物体を用いる新たな立体面投影露光技術を案出する必要がある。
【0040】
一方、特許文献1に示された従来の立体面投影露光装置を製作し、10mm角の露光フィールド内一面に200μmのラインアンドスペースパターンを形成した平面フィルムレチクルを原図物体として用い、外径98mmの顕微鏡照明用の白色LEDを光源として全方位から均等に照明して、東京応化工業株式会社製ポジ型レジストOFPR800を約0.3μmの膜厚に塗布した直径100mmのシリコンウエハを被露光物体として投影露光を行った。使用した回転放物面鏡光学系の径は約140mm、高さは約50mmである。
【0041】
その結果、図5に示すように、10mm角の露光フィールドに対し、露光フィールド全域にはパターンができず、中央付近のみにパターンが解像して形成された。また、原図である平面フィルムレチクルの200μmのラインアンドスペースパターン域は10mm角の正方形としたにもかかわらず、感光した露光域の形状は角が丸まった糸巻き状となった。
【0042】
この結果が生じた原因を考えるため、図6に示すように、回転放物面鏡光学系の子午面内で原図物体から出た光線が被露光物体面に進む経路を追跡し、原図物体面で回転放物面鏡中心軸からx隔たった点Pから出た光線が被露光物体面に到達する点P’の回転放物面鏡中心軸からの距離x’を計算し、xとx’との関係を調べた。
【0043】
その結果、x=0に近い回転放物面鏡中心軸付近を除くとx’≠xであり、xの絶対値が大きいほど、x’とxの乖離が大きくなることが分かった。
【0044】
図7に(x’-x)とxとの関係を示す。(x’-x)は光線の経路に依存し、原図物体から出た光線が最初に回転放物面鏡に当たる位置rが回転放物面鏡中心軸から離れるに従って大きくなることが分かった。
【0045】
また、x>0の場合はx’>xであるのに対し、x<0の場合も(x’-x)>0なので、絶対値は|x’| <|x|である。したがって、x>0の領域は露光フィールドが拡大気味に投影されるのに対し、x<0の領域は露光フィールドが縮小気味に投影される。
【0046】
そして、リングライトを構成する全周の左1/4範囲の各LEDからの光により回転放物面鏡光学系の子午面内で中心方向に照明される場合を考えると、x>0となる露光フィールドの右側は糸巻き形状に投影され、x<0となる露光フィールドの左側は樽形形状に投影される。
【0047】
そのため、原図物体である10mm角内の200μmのラインアンドスペースパターン域は、リングライトの全周の左1/4範囲の各LEDからの光により回転放物面鏡光学系の子午面内で中心方向に照明されると、図8に模式的に示すような形状に投影される。
【0048】
そして、リングライトの全周を用いて投影露光する場合は、図8に模式的に示した投影露光形状が、図9に示すように、上下左右方向から重畳し合った露光のされ方になると予測できる。
【0049】
その結果、図10に示したように、10mm角の露光フィールドの中央付近のみにパターンが解像して形成され、感光した露光域の形状は角が丸まった糸巻き状になったと考えられる。
【0050】
糸巻き形状の側の歪量が樽形形状の側の歪量より少し大きいため、リングライト全方位照明による重畳した歪形状はわずか糸巻き状の形状になると考えられる。
【0051】
目指す立体投影露光のニーズにおいては、パターン寸法が大きく、単層だけのパターン形成の用途が多いと想定され、重ね合わせが問題になることはあまりないと考えられることから、多少形状が歪むことはあまり問題にならないと考えている。
【0052】
しかし、図5に示したように、露光フィールドの中央の狭い範囲しかパターンが形成できないのでは、装置の開発意義が小さい。
【特許文献1】特開2021-56479
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0053】
近年、リソグラフィを半導体集積回路やマイクロ電子機械システムよりもはるかに大きい用途に使いたいというニーズが生じている。具体的には、最小パターン寸法が10~数100μmオーダーの流路デバイス、バイオセンサ、マイクロレンズ、コイル、板バネ、ステントなどである。
【0054】
また、パターンを形成したい対象が平面ではなく、円筒面の外面、内面、緩い凸曲面、凹曲面やその組み合わせなど、任意の緩曲面である場合が出て来ている。
【0055】
具体例を挙げれば、アスリート、病人、高齢者などのヘルスモニタリング用に、血圧、脈拍、血流、酸素濃度などを検出するバイオセンサを取り付けるためや動物の生態調査用にGPSセンサを取り付けるために、人間生体の手足、指、胸部などや動物の脚などにピッタリフィットするバイオセンサを製作したいという用途がある。
【0056】
しかし、前述した特許文献1に開示された立体面投影露光装置には以上に説明したように、色々な問題があることが分かった。
【0057】
本発明は、上記に記載した問題点を鑑みて鋭意検討の結果なされたものであり、任意の緩曲面を有する被露光物体に対して、従来から使用されている、平面状のパターン面を有する透過型平面レチクルを原図物体として簡便に立体面投影露光ができるようにするものである。
【課題を解決するための手段】
【0058】
上記目的を達成するため、本発明の立体面投影露光装置は、凹面側を反射面とする第1の回転放物面鏡と、凹面側を反射面として同じ反射面形状を持つ第2の回転放物面鏡とを、該凹面側の両反射面が対向するように両回転放物面の軸を重ねて配置し、前記第1の回転放物面鏡の鏡面の中央部と前記第2の回転放物面鏡の鏡面の中央部のそれぞれに開口を設け、第1の回転放物面鏡はその焦点が第2の回転放物面鏡に設けた開口面付近、第2の回転放物面鏡はその焦点が第1の回転放物面鏡に設けた開口面付近となる焦点距離を有し、かつ前記の両焦点が第1の回転放物面鏡および第2の回転放物面鏡の回転面の軸上に存在するようになし、第1の回転放物面鏡の開口面付近に置いた透過型レチクルの透過または遮光パターンを原図物体として、第1の回転放物面鏡の裏面側から、コリメート光源を用いた方向が大略揃った光線により斜め一方向からのみ照明し、該原図物体である透過型レチクルの透過または遮光パターンの像を、第2の回転放物面鏡の開口付近に置いた任意の緩曲面を有する被露光物体の立体表面に形成することにより、該被露光物体の立体表面に付した感光性物質を、該透過型レチクルの透過または遮光パターン形状に大略対応する類似形状に感光させるべく露光することを特徴とする。
【発明の効果】
【0059】
本発明によれば、平面状のパターン面を有する通常使用されていて容易に入手できる透過型レチクルを原図物体9として、感光性物質を付した立体的な緩い凹凸曲面を有する被露光物体16面上にパターンを一括して同時に投影露光して転写することができる。
【0060】
そのため、短納期、低価格で原図物体9を用意でき、感光性物質を付した緩い曲面を有する被露光物体16面上に、容易に短時間でパターンを転写することができる。
【0061】
原図物体9として用いる透過型平面レチクルをコリメート光源により大略平行な光束で照明するため、該平面レチクル上の各パターンが同じ方向からの光線により照明され、該平面レチクル上の任意の点から出る光線の経路はその任意の点毎にほぼ一義的に決まり、ほぼ同じ経路で進む光線は像面上のほぼ同じ点に到達する。
【0062】
原図物体9として用いる透過型平面レチクルに微細パターンがあれば、コリ
じる。しかし、本発明の対象とするパターンの寸法は数10~数100μmで
【0063】
そのため、原図物体9として用いる平面レチクルをコリメート光源10による大略平行な光線により照明して露光すれば、該平面レチクルを透過して任意の点から出る光線の経路はその任意の点毎に大体同じとなり、パターン寸法が大きいので回折角も小さいため、結像光線の広がりが少なく、焦点深度が非常に深くなる。
【0064】
その結果、緩曲面を有する被露光物体16に付した感光性物質17に、平面レチクルを原図物体9として、パターンを鮮明に転写することができる。
【0065】
原図物体9として通常の平坦面リソグラフィで用いるのと同じ平面レチクルを使用できれば、被露光物体16と同形の曲面を有する原図物体を用意することが不要になるので、非常に容易に立体面投影露光を利用できる。
【0066】
パターン寸法が大きいので、石英基板やガラス基板を用いる高価な平面レチクルのほか、安価で納期も短いフィルムレチクルを使用することもできる。
【0067】
不定形の被露光物体16と同じ不定形で原図パターンを有する原図物体9を準備することが不要であり、原図物体9として単純な透過型平面レチクルを用意するだけで立体投影露光が可能であるため、原図物体9の固定や着脱が容易になり、被露光物体16と同じ不定形の原図物体9を用いる従来の立体面投影露光装置より小型で簡便な装置での立体投影露光が可能となる利点も生ずる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0068】
以下、本発明を実施するための最良の形態を図面に基づいて説明する。
(第1の実施の形態)
図1は本発明の第1の実施形態に係る立体面投影露光装置の断面図である。図1において、該立体面投影露光装置は、凹面側の回転放物面を反射面とする回転放物面鏡1と、同じ寸法、形状、反射面を有する回転放物面鏡2とを該回転物面鏡どうしの軸を重ねて対向させた構造を有する。該2枚の回転放物面鏡1と2により囲まれた空間は、全面に回転放物面反射鏡がある構造である。
【0069】
回転放物面鏡1の焦点3が回転放物面鏡2の放物面鏡面の頂点よりやや内側に来、回転放物面鏡2の焦点4が回転放物面鏡1の放物面鏡面の頂点よりやや内側に来る。なお、図1においては、後述する開口5と開口6を設けてあるので、回転放物面鏡1と回転放物面鏡2の放物面鏡面の頂点は開口5と開口6によって切り取られている。
【0070】
回転放物面鏡1の中央部には、回転放物面鏡2の焦点4付近に、開口5を設け、回転放物面鏡2の中央部には、回転放物面鏡1の焦点3の位置付近に、開口6を設ける。回転放物面鏡1の開口5と回転放物面鏡2の開口6の形状、寸法は任意であり、開口5と開口6は形状、寸法が同じでもよく、異なっていてもよい。
【0071】
図1のように回転放物面鏡1と回転放物面鏡2を組むと、回転放物面鏡1の中央部の開口5内にある回転放物面鏡2の焦点4から出て回転放物面鏡2に当たる任意の光線7は、焦点から出た光線なので、回転放物面鏡2で反射後、光軸に平行に進み、回転放物面鏡1に当たる。そして、この光線は回転放物面鏡1の光軸にも平行なので、回転放物面鏡2の開口6内にある回転放物面鏡1の焦点3に行く。
【0072】
上記に説明した光線7は任意の光線であるため、回転放物面鏡1の中央部の開口5内にある回転放物面鏡2の焦点4から出て回転放物面鏡2に当たる光線はすべて回転放物面鏡2の中央部の開口6内にある回転放物面鏡1の焦点3に行く。すなわち、回転放物面鏡2の焦点4と回転放物面鏡1の焦点3とは光学的に共役の位置関係にある。
【0073】
したがって、回転放物面鏡2の焦点4付近である回転放物面鏡1の開口5の中心付近に原図物体9を置けば、回転放物面鏡1の焦点3付近である回転放物面鏡2の開口6の中心付近にその像ができる。
【0074】
図1において、回転放物面鏡1の中央部の開口5内にある回転放物面鏡2の焦点4から右上方向に出た光線7が回転放物面鏡2の中央部の開口6内にある回転放物面鏡1の焦点3に左上方向に進んで到達することからわかるように、像の向きは鉛直方向には光線の向きが射出光と同じなので正立のままであり、左右方向には光線の向きが射出光と反対なので向きが反転する。図1は左右方向の断面図であるため図だけではわからないが、手前、奥行きについても、像の向きは反転する。
【0075】
本発明の立体面投影露光装置においては、原図物体9として、露光光線の透過率が高いプラスチックフィルム、合成石英、溶融石英、ガラスなどの表面にクロム、酸化クロム、黒色乳剤などの露光光線透過率が低く遮光性を有する被膜で任意の形状、寸法の原図パターンを形成した透過型の平面レチクルを使用する。
【0076】
また、該原図物体9を図1の斜め下方から斜め上方に向けて照明する光源として、特定の一方向に大略平行な光線束を放出するコリメート光源10を用いる。
【0077】
ここで適切なコリメート光源10としては、たとえば、発光ダイオード(LED)の小さいチップを発光源として薄い凸レンズやフレネル凸レンズの焦点位置に配置し、該LEDチップから発散して射出される光線束を前記薄い凸レンズやフレネル凸レンズにより大略平行な光線束とする光源がある。
【0078】
各種レーザから発せられる光線束をレーザビームエキスパンダにより広げた平行光束光源もコリメート光源10として使用できる。
【0079】
また、適切な感光性物質が入手できれば露光波長は任意である。
【0080】
なお、図1においては、コリメート光源10を装置の左下方向に配置しているが、照明光11の方向を一方向に限定しさえすれば、配置する位置、方向は任意である。
【0081】
二つ以上のコリメート光源10を用意しておき、被露光物体の形状、寸法、保持姿勢などに応じて照明方向を使い分ける構成とすれば、なお便利である。
【0082】
また、原図物体9を照明する方向、照明光源の位置により、像の鮮明度や明るさなどの像質が変化するため、該像質をできるだけ良くできるように、コリメート光源10には、その位置と姿勢角を調整する機構を設けた方がよい。
【0083】
図1の実施例では、支持台12の支点軸13のまわりに仰角を調整できるようにし、支持台12のベースをスライダ14Aに載せて、スライドガイド14B上でコリメート光源10を大きく左右に位置調整できるようにしてある。
【0084】
また、スライドガイドを、XYZステージ、鉛直軸まわりの回転ステージなどを適宜組み合わせた位置姿勢調整ステージ15上に載せ、仰角、水平左右位置以外の角度、位置も任意に調整できるようにすればさらに良い。
【0085】
本発明により、照明光の光線束方向を一方向に限定すれば、原図物体9とする平面レチクルを透過した光線はそれぞれに照明方向に相当する限定された方向に進んで回転放物面鏡2の中央部の開口6内にある回転放物面鏡1の焦点3を含む像面上またはその像面前後の空間の像点に収束する。
【0086】
原図物体9とする平面レチクル上のパターンにより回折する光線も、パターン寸法が50~200μmの大寸法であるならば、0.06~0.24°の微小角しか発散しない。
【0087】
そのため、回転放物面鏡1の開口5付近に置いて原図物体9として用いる透過型平面レチクルから出る光線によるパターン像は、回転放物面鏡2の中央部の開口6内にある回転放物面鏡1の焦点3を含む結像面前後の空間に、焦点方向の位置により像寸法や像の水平方向の位置が若干変化するものの、非常に広い焦点方向の範囲で鮮明に形成される。
【0088】
したがって、回転放物面鏡2の開口6付近に任意の緩曲面を有する被露光物体16を配置すれば、該被露光物体16の緩曲面上に、原図物体9として使用した平面レチクルのパターン像をその形状、寸法が多少変化するものの鮮明に形成することができる。
【0089】
そして、感光性物質17を被露光物体16の結像面に付しておけば、投影される原図物体9の平面レチクルに形成された透過・遮光パターン18の像の明暗に対応して該感光性物質17が露光され、現像すれば、被露光物体16の緩曲面を含む立体面に感光部または未感光部に対応する感光性物質17のパターンを形成することができる。
【0090】
なお、19は被露光物体16を載置する被露光物体ステージ、20は原図物体9とする平面レチクル載置する原図物体ステージである。
【0091】
本発明では、コリメート光源10を用いて照明光11の方向を揃えて露光するため、原図物体9として用いる平面レチクルに形成された透過・遮光パターン18の像形成の焦点深度が深くなる。そのため、回転放物面鏡2の焦点4の位置の光軸方向設置可能範囲の許容度が大きくなる。
【0092】
そのため、回転放物面鏡2の焦点4が回転放物面鏡1の開口5の下端より下になるようにすることができ、原図物体9として用いる平面レチクルとして開口5よりも大きい寸法の平面レチクルも使用することができる。
【0093】
また、回転放物面鏡2の焦点4が回転放物面鏡1の開口5の下端より上にある場合でも、少し上の程度であれば、原図物体9として開口5より大きい寸法の平面レチクルを開口5の下に置いて使用しても投影することができる。
【0094】
そのため、回転放物面鏡2の焦点4が回転放物面鏡1の開口5の下端より上に来ている市販品のマジックミラー用の回転放物面鏡セットなども、原図物体9として大きい寸法の平面レチクルを開口5の下に置いて利用でき、低価格に立体面投影露光装置を製作することができる。
【0095】
なお、原図物体9とする平面レチクルのパターン位置と、被露光物体16の被露光面との相対位置を調整するため、被露光物体ステージ19、原図物体ステージ20は、それぞれXYZステージ21、22に取り付けた方がよい。
【0096】
また、被露光物体ステージ19には、被露光物体16の被露光面を露光光線が来る方向に対して調整する回転軸23まわりの回転機構24を設ければさらによい。
【0097】
被露光物体16の被露光面を露光光線が来る方向に対してきちんと調整する回転機構23を設けなくても、スペーサを片側だけ適宜挟んだりすることにより被露光物体16を被露光物体ステージ18に対して傾けることにより露光光線が来る方向に対する被露光物体16の被露光面角度を調整できるような構造にすることも有効である。
【0098】
図4に示した特許文献1の実施例に開示されているように、被露光物体16を薄い露光光線を透過する物質で作った物体とし、透過した被露光物体16の上面側に感光性物質を付してそこに原図物体9の像を形成してもよい。
【0099】
なお、以上の説明においては、原図物体9を下方に置き、下方から照明して上方に置いた被露光物体16を露光するとした。しかし、原図物体9と被露光物体16に対し、回転放物面鏡1と回転放物面鏡2とからなる投影光学系、原図物体9、被露光物体16の相対位置関係が図1に示したように保持されれば、装置全体を任意の向きに設置してもよい。
【0100】
すなわち、たとえば、原図物体9を上方において、上方から照明して下方に置いた被露光物体16を露光するようにしてもよい。
【0101】
また、回転放物面鏡1と回転放物面鏡2とからなる投影光学系の光軸が、鉛直方向ではなく、水平方向や斜め方向になるようにしてもよい。
【0102】
すなわち、たとえば、回転放物面鏡1と回転放物面鏡2を左右に並べ、原図物体9を左方において、左方から照明して右方に置いた被露光物体16を露光するようにしてもよい。
【0103】
図1に示した立体面投影露光装置を実際に製作し、投影露光によりパターンを形成して効果を確かめた結果を次に示す。
【0104】
まず、特許文献1に開示されたのと同条件の外径約150mmの回転放物面鏡1と回転放物面鏡2からなり、回転放物面鏡1と回転放物面鏡2の高さが各約25mmの投影光学系を構成し、開口5と開口6の直径を約43mmとして10mm角内に200μmのラインアンドスペースパターンを有する、平面フィルムレチクルを原図物体9とし、LEDチップから出る波長405nmの光束をフレネルレンズにより平行光として射出するダイナテック株式会社製コリメートLED光源をコリメート光源10として用いて照明し、感光性物質17として東京応化工業株式会社製ポジ型レジストOFPR800を約0.3μmの膜厚に塗布した直径100mmのシリコンウエハを被露光物体16として投影露光を行った。
【0105】
その結果、図2に示すように、原図物体9として用いた平面フィルムレチクルのパターン形状が少し歪んで投影されたものの、被露光物体16として用いたシリコンウエハ上に露光フィールドの中心だけではなく、露光フィールドの全部の範囲に感光性物質17のパターンを実際に投影露光して転写形成することができた。
【0106】
ラインアンドスペースパターンの外側が遮光部となった平面フィルムレチクルを原図物体9として用い、ポジ型レジストを感光性物質17としたため、パターン形成範囲の外側には、未感光のポジ型レジスト膜が残った。
【0107】
次に、上記と同様に外径約150mmの回転放物面鏡1と回転放物面鏡2からなり、回転放物面鏡1と回転放物面鏡2の高さが各約25mmの投影光学系を構成し、開口5と開口6の直径を約43mmとして、線幅200μm、ピッチ2mmの格子パターンフィルムレチクルを外径40mmのステンレスリングに貼り付けた図3(a)に示す原図物体9を用い、凸面に東京応化工業製ポジ型レジストOFPR800を塗布した乳白色のプラスチックスプーンを被露光物体16とし、LEDチップから出る波長405nmの光束をフレネルレンズにより平行光として射出するダイナテック製コリメートLED光源をコリメート光源10として用い、フィルムレチクル原図物体9上の前記線幅200μm、ピッチ2mmの格子パターンの像を被露光物体16のプラスチックスプーンに塗布したレジスト上に作り、レジストを露光した。
【0108】
露光後、現像して得られたレジストパターンを、使用したレチクルパターンと比較して図3(b)に示す。図3(c)は被露光物体16のプラスチックスプーンを横から観察し、曲面の形状を示したものである。
【0109】
図3(b)において被露光物体16のプラスチックスプーンの右側部分にレジストが残っているのは露光光線に少し強度むらがあるためである。また、露光フィールドの形状が原図物体9として用いた平面フィルムレチクルの円形フィールドと異なるのは、放物面鏡2の開口5上に四角形の絞りを置いたためである。いずれも、本発明を妨げるものではない。
【0110】
パターン形状が歪み、寸法も変化してはいるものの、原図物体9が平面レチクル、被露光物体16が湾曲したプラスチックスプーンであるにもかかわらず、プラスチックスプーンの曲面状表面に鮮明なレジストパターンが転写できた。
【0111】
本発明がとくに有用な対象は、ヘルスモニタなどの各種センサの電極パターンや配線パターンなどの大パターン転写への応用である。そのため、重ね合わせなしで一回だけ露光するケースや、他層に重ねて露光するものの、ラフな合わせで良いケースへの適用がほとんどである。
【0112】
そのため、コリメート光源を用いた一方向照明(片側照明)により露光フィールドの形状が歪んでもあまり問題にならず、重ね合わせも各層のパターンが同じように歪めばあまり問題が生じない。
【0113】
また、露光フィールドの形状歪が気になったり、問題になったりする場合には、回転放物面鏡1、2の形状と寸法、被露光物体16の形状と寸法、載置姿勢、照明光線11の照射角度などの投影露光条件を決めれば、露光フィールドの形状や歪分布が計算できるので、平面レチクル製作時にパターンの位置や線幅を補正しておき、投影露光時に所期のパターン寸法、線幅が得られるようにすればよい。
【産業上の利用可能性】
【0114】
本発明を用いれば、立体的なマイクロ部品の表面に一定の模様でレジストパターンを形成することが、安価簡便に高い処理速度でできる。そして、該レジストパターンをマスキング材として被露光物体の表面をエッチングすれば、溝パターン、ドットアレイなどを高精度に製作できる。
【0115】
したがって、半円筒型凹面軸受の油溝、静圧ポケット、空気軸受けのヘリングボーン溝などの量産加工に大いに役立つ。
【0116】
また、内視鏡先端部外側に術具、センサなどを後付けするための半円筒型凹面部品への溝加工、穴加工などにも役立つ。
【0117】
指先や体の一部の曲面に取り付けるため、曲面基板とすることが必要なセンサやバイオ部品を製作するためやその配線パターンや電極パターンなどの加工にも役立つ。
【0118】
また、鋳造や塑性加工で原型を製作した硬貨の表面および/または裏面に感光性物質の膜を形成し、硬貨の曲面をなす模様部分に複雑な微細形状を投影露光し、該投影露光後現像して形成した感光性物質のパターンをマスキング材として硬貨の表面および/または裏面をエッチングすれば、硬貨に模倣が困難な微細形状を刻むことができ、硬貨の偽造防止に大いに役立つ。
【0119】
さらに、中実または中空の円錐面や円錐台面、またはそれらのうちのいずれかが歪んだり一部で凹んだりした被露光物体に、感光性物質の膜を付し、所定の幅のカム溝形状を投影露光し、該投影露光後現像して形成した感光性物質のパターンをマスキング材として、前記中実または中空の円錐面や円錐台面、またはそれらのうちのいずれかが歪んだり一部で凹んだりした被露光物体をエッチングすることにより、円錐面や円錐台面、またはそれらのうちのいずれかが歪んだり一部で凹んだり凸になったりした立体的な面にガイド溝を有する非線形カムを製作することができる。
【図面の簡単な説明】
図1】本発明の第1の実施形態に係る立体面投影露光装置
図2】本発明の第1の実施形態に係る立体面投影露光が、パターンが解像して形成できる領域の拡大に有効であることを示す実験結果の写真
図3】本発明の第1の実施形態に係る立体面投影露光が実際に可能であることを実証した実験結果の写真
図4】特許文献1に開示された従来の立体面投影露光装置の構成図
図5】特許文献1に開示された従来の立体面投影露光装置を用いた場合にパターン形成領域が狭小となることを示す実験結果の写真
図6】子午面内で露光光線を追跡した計算パラメータの説明図
図7】原図パターンの位置xと像位置のずれ(x’-x)との関係の計算結果
図8】一方向から照明して像形成した場合の露光フィールド歪形状の模式図
図9】全方向から照明して像形成した場合の露光フィールド歪の重畳を模した図
図10】特許文献1に開示された従来の立体面投影露光装置を用いた場合の実際の露光フィールドと図9の歪形状の模式図との対応を示した図
【符号の説明】
【0120】
1 回転放物面鏡1
2 回転放物面鏡2
3 回転放物面鏡1の焦点
4 回転放物面鏡2の焦点
5 回転放物面鏡1の開口
6 回転放物面鏡2の開口
7 光線
9 原図物体
10 コリメート光源11
11 照明光
12 支持台
13 支点軸
14A スライダリング
14B スライドガイド
15 位置姿勢調整ステージ
16 被露光物体
17 感光性物質
18 平面レチクルに形成された透過・遮光パターン
19 被露光物体ステージ
20 原図物体ステージ
21 XYZステージ
22 XYZステージ
23 回転軸
24 回転機構
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10