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特開2024-20115点眼補助具を用いるホームモニタリングシステム及び患者サポートシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024020115
(43)【公開日】2024-02-14
(54)【発明の名称】点眼補助具を用いるホームモニタリングシステム及び患者サポートシステム
(51)【国際特許分類】
   A61M 11/00 20060101AFI20240206BHJP
   A61M 35/00 20060101ALI20240206BHJP
【FI】
A61M11/00 K
A61M35/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022179195
(22)【出願日】2022-11-09
(62)【分割の表示】P 2022554277の分割
【原出願日】2022-08-01
(71)【出願人】
【識別番号】521353643
【氏名又は名称】合同会社クオビス
(74)【代理人】
【識別番号】100167818
【弁理士】
【氏名又は名称】蓑和田 登
(72)【発明者】
【氏名】加藤 千比呂
(72)【発明者】
【氏名】原 直子
【テーマコード(参考)】
4C267
【Fターム(参考)】
4C267AA68
4C267CC13
4C267HH08
4C267HH22
(57)【要約】      (修正有)
【課題】患者眼の角膜上に、点眼容器内の薬液を点眼する点眼補助具を用いるホームモニタリングシステム及び患者サポートシステムを提供する。
【解決手段】ホームモニタリングシステムSにおいて、点眼器(点眼補助具)1101は複数の接続手段のうちの一つによりインターネット1109に接続される。点眼器に配置された滴下粒通過センサーや前眼部画像撮影カメラ、Gセンサー、左右眼検出センサーなどから得られたデータ並びにそれらのデータをもとに点眼状態を評価したデータは前記接続手段を介して携帯端末1104やインターネット上のクラウドサービス1105や固定サーバ1110に蓄積され、組み込まれた解析ソフトウェアにより、統計的な処理によるデータの分析や人工知能AIやディープラーニングによるデータ解析や今後の予測、患者のアドヒアランス向上のために効果的なサポート方法を決定し実行することが可能となる。
【選択図】図15
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者眼に点眼容器内の薬液を投与するための点眼補助具を用いるホームモニタリングシステム。
【請求項2】
患者眼に点眼容器内の薬液を投与するための点眼補助具を用いる患者サポートシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、患者眼の角膜上に、点眼容器内の薬液を点眼する点眼補助具を用いるホームモニタリングシステム及び患者サポートシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
多くの眼疾患において、治療の第一選択は薬液を角膜表面へ点眼することによりなされ、定期的に所定量を継続して点眼することが有効な治療につながる。
【0003】
通常の点眼は、薬液が入った点眼容器より患者が上向きの姿勢で一滴の薬液を角膜上に滴下することにより行われる。
【0004】
しかしながら、薬液を確実に一滴だけ角膜上の適正な位置に滴下することは、健常な成人であっても失敗することがあり、高齢者や障害者にとってはさらに難しい作業で負担となっている。また点眼剤は1剤とは限らず3剤、4剤点眼する場合も少なくなく、患者の点眼は煩雑なものとなっている。
【0005】
さらに点眼は患者にとって煩雑な作業であるにもかかわらず、長期間にわたって毎日定時に点眼を継続しなければならないため、途中で点眼を諦めて治療から脱落してしまうと言ったような、患者が治療に積極的に参加する意志(アドヒアランス)が維持できなくなっている事例も多くなっている。
【0006】
このような問題を解決するために点眼作業における滴下位置や滴下量の安定性の課題を解決し、より簡単で確実に点眼を行うための点眼補助装置が開示されている。
【0007】
例えば、特許文献1及び特許文献2に記載の点眼補助具は点眼容器を患者の眼前の所定位置に安定して設置可能で、患者の目に対して斜め上方より点眼できるような構成が開示されている。
【0008】
特許文献3及び特許文献4に記載の点眼補助具は手動ポンプあるいは圧電マイクロポンプにより薬液を水平に吐出することにより、患者の視線が水平の状態で点眼が可能であり、一回の吐出量も一定に保たれる構成が開示されている。
【0009】
特許文献5に記載の滴生成デバイスは薬液を霧状の微小粒子にして水平に吐出することにより、患者の視線が水平の状態で定量点眼可能となる構成が開示されている。
【0010】
特許文献6にはWiFiなどの無線通信機能により、点眼補助具のセンサーなどから得られた点眼データを外部のスマートフォンなどに送り、インターネットを通じて医師や患者本人が点眼履歴などを確認できるモニタリングシステムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2020-81321
【特許文献2】特開2019-118760
【特許文献3】特開2016-202584
【特許文献4】特開2018-196534
【特許文献5】特開2016-154868
【特許文献6】WO2019-176902
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、上記従来技術においては未だ多くの問題がある。例えば、特許文献1及び特許文献2に開示されている構成においては、点眼液は目の上方より落下するため患者は斜め上方を向かねばならず、首への負担はなくならない。さらに点眼量も患者の操作により決まり安定しないという課題がある。
【0013】
特許文献3及び特許文献4に開示されている構成においては、特許文献3の場合は薬液を一旦補助具内の所定の位置に保持したのちに吐出する、また特許文献4の場合は吐出ポンプへ薬液を導入するために点眼容器内にチューブを挿入し、さらに薬液はマイクロポンプへと送られマイクロポンプにより吐出される。そのため何れの構成においても薬液は補助具内の部品に接触して汚染される可能性があり、さらに複数剤の点眼薬を使う場合は点眼容器の交換・セッティングにも時間がかかる作業となる課題がある。
【0014】
特許文献5に開示されている構成においては、薬液は点眼装置内のタンクハウジングに貯蔵しなければならず、通常の点眼容器をそのまま使うことはできない。またタンクハウジングや圧電エジェクターに薬液が接触するため、薬液が汚染される可能性がある。さらに複数剤の点眼薬を使う場合は、それぞれにこの滴生成デバイスが必要となりコストの面でも負担となるなどの課題がある。
【0015】
特許文献6に開示されている構成においては、医師や患者による点眼履歴確認や点眼忘れに対する注意喚起などのモニタリングシステムが開示されているが、患者の点眼継続意識(アドヒアランス)を維持あるいは向上させるような、患者へのサポート手段は開示されておらず、どのように患者をサポートしてアドヒアランスを向上させるかという課題がある。
【0016】
本発明は上記課題に鑑みてなされ、患者の点眼状態を検出及び評価してそのデータを医師と患者が共有し、患者のアドヒアランスを向上させることができる点眼補助具を用いるホームモニタリングシステム及び患者サポートシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記目的を達成するために本発明は、患者眼に点眼容器内の薬液を投与するための点眼補助具を用いるホームモニタリングシステムである。
【0018】
上記目的を達成するために本発明は、患者眼に点眼容器内の薬液を投与するための点眼補助具を用いる患者サポートシステムである。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る点眼補助具を用いるホームモニタリングシステムにおいて点眼補助具は、エアファンと、エアファンより吐出された空気流の空気室となるエアチャンバーと、エアチャンバーと連通された筒形状のエアダクトと、点眼容器が交換可能に装着されると共に水平状態にしたエアダクトの上側壁に点眼容器のノズルを下向きにして固定する点眼容器固定アタッチメントと、点眼容器固定アタッチメントに装着された点眼容器の側面の所定位置を押圧する点眼容器押圧機構と、点眼容器押圧機構の動作を制御するトリガアームと、を備える。エアダクトの上側壁には、点眼容器固定アタッチメントに装着された点眼容器のノズルより滴下された薬液滴下粒をエアダクト内に導入するための薬液導入孔が形成される。この構成により、本発明に係る点眼補助具を利用する患者は点眼容器内の薬液を点眼する際に、視線を上に向ける必要性がなく、横向きの楽な姿勢で適正量の薬液の点眼ができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の実施の形態1に係る点眼補助具を備える点眼器の使用状態を示す斜視図である。
図2】同上点眼器の断面図である。
図3】ファンの風量―静圧特性グラフの一例を示す図である。
図4】点眼容器の一例を示す図である。
図5】(a)同上点眼補助具に備わる点眼容器固定アタッチメントのB-B´線断面図、(b)同上点眼容器固定アタッチメントのA-A´線断面図である。
図6】(a)同上点眼容器固定アタッチメントを外した状態の点眼補助具の側面図、(b)同上点眼容器固定アタッチメントを外した状態の点眼補助具の斜視図である。
図7】(a)同上点眼容器を手動で押圧する押圧機構の一例を示す外観図、(b)同上点眼容器を手動で押圧する押圧機構の一例を示す断面図である。
図8】同上点眼容器を電動で押圧する押圧機構の一例を示す図である。
図9】同上点眼補助具に備わるエアファンの動作を説明するための図である。
図10】(a)乃至(c)同上点眼補助具に備わるエアダクトへの空気の流入を手動でコントロールする流入コントロール弁の一例を示す図である。
図11】(a)及び(b)同上点眼補助具に備わるエアダクトへの空気の流入を電動でコントロールする流入コントロール弁の一例を示す図である。
図12】(a)乃至(c)同上点眼補助具に備わる左右眼検出手段の一例を示す図である。
図13】同上点眼補助具の機能ブロック図である。
図14】本発明の実施の形態1の変形例に係る点眼器の断面図である。
図15】本発明の実施の形態2に係る点眼補助具と接続される外部通信手段及びネットワークシステムの一例を示す構成図である。
図16】外部装置による患者サポートシステムの一例を示す構成図である。
図17】ネットワークシステムを介した患者サポートシステムの一例を示す構成図である。
図18】患者サポートソフトウェアの動作の一例を示すフローチャートである。
図19】点眼指示画面の一例を示す図である。
図20】激励メッセージの表示画面の一例を示す図である。
図21】検査結果とスコア、各種イベントとの関係を表すグラフの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
(実施の形態1)
本発明の実施の形態1に係る点眼補助具について図1乃至図13を参照して説明する。本実施の形態1において、点眼補助具は、眼疾患などの治療のために患者に点眼する点眼薬液の滴下粒を、水平又は水平に対し20度以内の斜め上方に流れる空気流の中に滴下して、その空気流の抗力により点眼薬液の滴下粒を略水平に移動させて患者の眼に送達させるものである。
【0022】
ここでは下記の順序に従って本発明の実施の形態1について説明する。
(1)点眼容器より滴下された点眼薬液を患者眼へ水平方向に送達させる薬液送達手段の基本的な構成
(2)点眼容器固定アタッチメントの構成
(3)点眼容器押圧機構の構成
(4)エアファンによる空気流発生手段の構成と動作
(5)エアダクト内へのエア流入をコントロールする弁の構成と動作
(6)患者の左眼・右眼自動検出
(7)点眼補助具の電気システムの構成(点眼補助具の機能ブロック図)
【0023】
(1)点眼容器より滴下された点眼薬液を患者眼へ水平方向に送達させる薬液送達手段の基本的な構成
最初に、点眼容器より滴下された点眼薬液を患者眼へ水平方向に送達させる薬液送達手段の基本的な構成を図1乃至図3を参照して説明する。なお、本実施の形態1において、点眼補助具100に点眼容器106を装着した状態を点眼器1、点眼器1から点眼容器106を取り外した状態を点眼補助具100と称して説明を行う。
【0024】
図1は、本実施の形態1に係る点眼器1の使用時の斜視図を示し、患者は点眼時には点眼補助具100に備わるグリップ109を左右何れか一方の手で握り、点眼補助具100を略水平状態に保つ。次に、トリガアーム107を指で押下して自らのタイミングで患者眼に点眼容器内の薬液の投与を行う。
【0025】
図2は本実施の形態1に係る点眼器1の断面図であり、空気流の発生から薬液の滴下、そして薬液を空気流による抗力と重力の合成力により移動して、患者の角膜表面に到達させる基本的な構成の一例を示している。
【0026】
図2のエアファン101はモーターにより駆動されるファンであり、その送風口101aより送風された空気流はエアチャンバー102に流入し、エアチャンバー102の流出口102aよりエアダクト104の流入口104aへ流入した空気流はエアダクト104の流入口104aとは反対側の接眼口104dの近傍に配された排気口104bより上方及び側方に排出される。エアチャンバー102とエアダクト104の間には空気流を開閉コントロールするための流入コントロール弁103が配置されている。さらにエアダクト104の流入口104aと排気口104bの間のエアダクト104の上面には点眼容器106より滴下された薬液滴下粒をエアダクト104内に導入するための薬液導入孔104cが形成されている。この薬液導入孔104cに点眼容器固定アタッチメント105を接続して、点眼容器固定アタッチメント105には点眼容器106が点眼容器106の薬液滴下口106aが下側となるように固定され、薬液滴下口106aはエアダクト104の薬液導入孔104c付近となるように配置される。点眼口104dの上部には滴下粒通過センサーを配置してもよく、エアダクト104を水平に移動してきた薬液滴下粒が正常に点眼口104dを通過したかを検出できる。また患者はアイピース110、エアダクト104を通し、ハーフミラー117を介して固視標LED116を見ることにより、患者眼を固視させてもよい。カメラ111が赤外光による撮影の場合はハーフミラー117をコールドミラーとしてもよい。なお、エアファン101はモーターによりファンを回転させる手段に限定されるものではなくその他の送風手段でも良い。
【0027】
エアチャンバー102の体積はプレナムエアチャンバーとして機能させるための十分な容積を確保したエアチャンバー102であり、短時間にエアチャンバー102内の気圧を所定の値まで上昇させることを考慮し、取り扱い上も問題のない体積として5×10-5から40×10-5の範囲でエアファン101の能力を考慮して調整することが好ましい。
【0028】
エアファン101の送風性能は一般的に最大風量と最大静圧により示され送風抵抗がなく風圧が0の時の風量が最大風量であり、送風口が密閉されたような場合に風量が0となった時の空気圧が最大静圧である。エアファン101の特性は図3に示すように横軸を風量、縦軸を静圧に取ったグラフ上に、横軸上にある最大風量ポイント1501から縦軸上にある最大静圧ポイント1502を結ぶ曲線による風量-静圧特性(P-Q特性)として示される。
【0029】
ここで、エアダクト104内の空気流の流速計算に関して説明する。薬液滴下機構により滴下された薬液は重力により下方に加速すると共に、エアダクト104内の空気流により水平方向にも加速する。重力加速度は9.8m/secと一定であるので、薬液が水平方向へ飛ぶには、水平加速度が重力加速度より十分高い加速度であることが必要であり、エアダクト104内の空気流が作用して発生する抗力が薬液の滴下粒を重力加速度より十分高い加速度で水平に加速するように作用する必要がある。このような空気流により加速に必要な抗力を発生させるための空気流の流速は、薬液の滴下粒の直径と滴下粒に対する空気流の流速の相対速度より計算できる滴下粒のレイノルズ数より抵抗係数CDを算出し、抵抗係数CDと加速に必要な効力Fより計算して空気流の流速を求めることが好ましい。
【0030】
流体中の粒子が流体より受ける抗力の扱いは通常三つの領域に分かれている。流体と粒子の相対的速度が非常に小さく粒子径も小さい場合、つまりレイノルズ数が2以下の場合をストークス域として扱い、流体と粒子の相対速度が非常に高く粒子径もレイノルズ数が500から100000の場合をニュートン域として扱い、前記二つの領域の間にあるレイノルズ数が2から500の間をアレン域と呼ぶ。
【0031】
前記三つの領域における粒子が流体より受ける抗力の抵抗係数CDは以下の[数2]~[数4]で表される。
[数2]ストークス域
[数3]アレン域
[数4]ニュートン域
ここで、CD:抵抗係数、Rep:レイノルズ数
【0032】
エアダクト104内を移動する前記薬液の滴下粒が、空気流により受ける抗力F及びレイノルズ数Repは下記[数5]及び[数6]であらわされる。
[数5]
ここで、F:粒子が受ける抗力、CD:抵抗係数、ρ:空気の密度1.2、U:流体と滴下粒の相対速度、Dp:滴下粒の直径
[数6]
ここで、Rep:レイノルズ数、U:流体と滴下粒の相対速度、Dp:滴下粒の直径、ρ:空気の密度1.2、μ:空気の粘性0.000018
【0033】
薬液の滴下粒を十分水平に加速する抗力を計算するには滴下粒を球と仮定した場合の直径と質量を求めなければならない。点眼容器106は点眼薬のメーカーより様々な形状が市販されているが、点眼容器106から滴下される一滴の薬液量は平均して約0.04mlが一般的である。球の体積の公式より逆算すると、その点眼容器106より滴下される一滴の滴下粒の直径は4.24mmとなる。仮に空気流と滴下粒の相対速度を2m/secとすると[数6]よりレイノルズ数は565.3となり、相対速度が2m/sec以上であればCDは[数4]に示されるニュートン域となる。この場合CDは0.44の一定値となるので[数5]より抗力FはF=1.49×10-5Nとなる。
【0034】
薬液の滴下粒を水平方向に飛ばすには、滴下粒を重力加速度9.8m/secより高い加速度で加速させる必要があり、薬液の密度は水とほぼ同じ1000として、滴下粒の体積より質量を4×10-5kgとすると加速度が重力加速度と同じ9.8m/secで加速するとしても抗力Fは3.92×10-4Nとなり、空気流と滴下粒の相対速度が2m/secで得られる1.49×10-5Nよりも大きな抗力が必要となる。従って空気流の流速はさらに高い相対速度が必要であり、レイノルズ数はさらに高くなるので抵抗係数CDはニュートン域で考えればよいこととなる。これ以降は滴下粒が受ける抵抗係数CDは[数4]のニュートン域であるCD=0.44として扱う。
【0035】
例えばエアダクト104の開口高さを14mmとし、点眼容器106の薬液滴下口106aからエアダクト104の接眼口104dまでの水平距離を30mmとして、エアダクト104の角度が水平となるように配置された場合、薬液の滴下粒は上下寸法14mmの半分の7mm落下する間に30mm水平に移動させることで角膜頂点に達する。点眼容器106から薬液を滴下させる際は当然ながら滴下粒の初速は落下方向も水平方向も0m/secであるので、等加速度運動の下記[数7]より移動距離xはx=1/2at(a:加速度、t:時間)となる。水平移動距離が垂直移動距離の30/7倍であるので水平方向の加速度も30/7倍となり、重力加速度が9.8m/secであるので9.8×30/7で水平加速度は42m/sec必要となる。
[数7]等加速度運動の公式
ここで、x:移動距離、v0:初速、a:加速度、t:時間
【0036】
薬液の滴下粒が水平方向に加速度42m/secを得るために必要な空気流による効力は、滴下粒の質量が4×10-5kgとすると1.68×10-3Nとなり、[数5]に代入して空気流の相対流速Uを逆算すると21.2m/secとなり、その時の滴下粒のレイノルズ数は[数6]より5992となる。[数5]のUは相対速度であるので実際のエアダクト内の流速は薬液の滴下粒の速度が上がる分だけ上げる必要があるが、[数7]に初速0m/sec、移動距離30mm、加速度42m/secを代入し時間tを計算すると約0.0378secとなりその時の薬液の滴下粒の水平移動速度vhは1.59m/secとなる。従ってエアダクト104内の空気流の流速は21.2m/secから22.79m/secの範囲で調整されることが好ましい。以上より式をまとめるとエアダクト104内の空気流の流速と薬液の滴下粒の水平相対速度Uは下記[数8]より求めることができる。
[数8]
ここで、U:エアダクト内の空気流の流速と薬液の滴下粒との相対速度、L:点眼容器の滴下口からエアダクト接眼口の中心(角膜)までの水平距離、H:点眼容器の滴下口からエアダクト接眼口の中心(角膜)までの垂直距離(滴下口と接眼口中心の高さの差)、m:薬液滴下粒の質量、ρ:空気の密度、d:薬液滴下粒の直径
【0037】
エアダクト104内の空気流が薬液の滴下粒をエアダクト104の接眼口104dを通して角膜まで移動させるのに必要な流速はエアダクト104の上下寸法と点眼容器106の薬液滴下口106aからエアダクト104の接眼口104dまでの距離により変化する。上下方向の寸法が大きければ大きいほど加速度は小さくてよく、接眼口104dまでの距離が大きいほど加速度は大きくなければならない。点眼補助具100の構成部品としてのエアダクト104の開口高さが10mmから25mm程度で、点眼容器106の薬液滴下口から接眼口104dまでの水平距離は20mmから50mm程度が、点眼容器106のサイズや患者の顔表面形状などから適用可能なサイズであり、点眼容器106の薬液滴下口106aから接眼口104dまでの距離を50mm以上に離すと空気流に求められる必要流速が著しく大きくなるため好ましくない。この寸法構成範囲より薬液の滴下粒を所定の位置に飛ばすのに必要な空気流の流速は12.97m/secから32.42m/secの範囲で調整されればよく、必要な空気流の流速はエアダクト104の内部形状や角度、気温、気圧などの影響も受けるので、10m/secから40m/secの範囲で調整することができる。
【0038】
次に、エアファン101に求められる風量性能に関して説明する。エアファン101により送風された空気流はエアチャンバー102内に流入し、流入コントロール弁103が閉じている場合には、エアの流れが止まりエアチャンバー102内の空気圧が上昇して、一定時間経過後にはエアファン101の最大静圧付近までエアチャンバー102内の気圧は加圧される。トリガアーム107の操作に合わせて流入コントロール弁103が開くとエアチャンバー102内の空気は一気にエアダクト104に流入し空気流の流速は短時間で最大流速まで上昇してから時間経過と共に、エアファン101の送風能力とエアチャンバー102及びエアダクト104内部の空気流の圧力損失Qとのバランスで決まる定常風量に収束する。圧力損失Pは圧力損失係数C及び風量Qにより下記[数9]で示される。
[数9]
ここで、P:圧力損失、C:圧力損失係数、Q:風量
【0039】
エアダクト104を円筒とした場合には開口高さを14mmとすると内径は14mmとなり、流入口104aから排気口104bまでの距離を50mmとして、エアダクト104の空気流圧力損失を計算する。薬液の滴下粒を角膜へ送達するためのエアダクト104内の空気流速は、点眼容器106の薬液滴下口106aから角膜までの水平距離を30mmとすれば21.2m/secから22.79m/secの範囲で調整されることが上述されている。エアチャンバー102は空間が大きいため圧力損失を無視する。エアダクト104内の空気流の平均流速Umを22m/sec、空気の動粘性係数νを1.582×10-5(1気圧、25度C)とすると、エアダクト104のレイノルズ数Repは下記[数10]よりRep=19469となる、レイノルズ数Repが2310以上の場合は乱流域となるので、管摩擦係数μはプラントルの実験式より求められμは約0.025となる。
[数10]
ここで、Rep:レイノルズ数、Um:平均流速、d:管の内径(エアダクトの内径)、ν:動粘性係数
【0040】
エアダクト104の摩擦係数μを0.025、空気の密度γを1.2kg/m、重力加速度gを9.8m/secとすると下記[数11]よりエアダクト104の圧力損失は約103.2Pa(1.032×10-4MPa)となる。
[数11]
ここで、ΔP:圧力損失、μ:管の摩擦係数、l:管の長さ、d:管の径、γ:空気の密度、Um:平均流速、g:重力加速度
【0041】
エアダクト104内の空気の平均流速を22m/secとするにはエアダクト104内に流入する風量が0.203m/min必要である。エアダクト104の圧力損失は103.2Paであるのでエアファン101に求められる性能は風量0.203m/minの時の風圧が103.2Pa以上のエアファン101が必要となる。
【0042】
また本実施の形態1のエアチャンバー102の容積を約7×10-5とすると、エアチャンバー102内の空気圧を0.1秒以内に103.2Pa高めるのに必要な風量は0.085m/sec以上となる必要があるが、エアダクト104内の必要流速を確保するための風量0.203m/minと比べてはるかに小さいので問題はない。
【0043】
本実施の形態1のエアダクト104の適切なサイズを考えると、内径を10mmから25mm、点眼容器106の薬液滴下口106aから角膜までの移動距離を20mmから50mm、エアダクト104の流入口104aから排気口104bまでの距離を40mmから70mmの範囲とするのが、点眼補助具100の操作上あるいは持ちやすさを考慮すると適切なサイズである。この範囲よりエアダクト104の内径が25mm、薬液滴下口106aから角膜までの水平移動距離が20mmである場合に必要なエアダクト104内の平均流速は最も低くなり約12.97m/secとなる。同様に内径が10mm距離50mmの場合の平均流速は最も高くなり約32.4m/secとなる。さらにそれぞれの必要風量を求めると内径25mm角膜までの水平移動距離20mmの場合に0.382m/minとなり、内径10mm角膜までの水平移動距離50mmの場合に0.153m/minとなる。またエアダクト104の流入口104aから排気口104bまでの距離を40mmから70mmより圧力損失を計算すると、距離40mmの場合に内径25mm、滴下粒の水平移動距離20mmとして16.1Pa、距離70mmの場合に内径10mm、滴下粒の水平移動距離50mmとして483Paとなる。
【0044】
以上によりエアファン101に必要な送風能力は、エアダクト104内の平均流速とエアダクト104の空気流に垂直な断面面積より計算される風量と圧力損失以上の送風能力が必要であるが、流入コントロール弁103によりエアファン101の最大静圧付近まで高められたエアチャンバー102内の空気圧により、一時的にエアファン101の送風能力より高い風量が得られるため、エアファン101の風量を下げることが可能である。なお本実施の形態1のエアファン101はシロッコファン(遠心ファン)を用いているが、必要とされる送風能力により軸流ファンとしてもよい。
【0045】
(2)点眼容器固定アタッチメントの構成
次に、点眼容器固定アタッチメントの構成に関して図4乃至図6を参照して説明する。点眼容器固定アタッチメント105は、点眼容器106を点眼容器固定アタッチメント105に取り外し可能の装着し、さらにエアダクト104上部の所定位置に着脱可能に固定される。この点眼容器固定アタッチメント105を用いることで、点眼容器106の薬液滴下口106aがエアダクト104に対して適正な位置に配置され、薬液をエアダクト104内に滴下することができる。
【0046】
点眼容器固定アタッチメント105は点眼容器106の形状や寸法に合わせて複数の種類が用意されてもよいが、点眼容器106の薬液滴下口106aはどの点眼容器106であっても同じ位置に配置されるような構成とする。また点眼容器106に対して適切な位置を押圧するために、押圧点調整アーム108の押圧部108aより作用する力を点眼容器106の適切な位置に作用させるための押圧位置調整機構を有している。
【0047】
図4は一般的な点眼容器106の一例である。眼科施設などで処方される一般的な点眼剤の点眼容器106は点眼薬液を充填する薬液充填容器401と着脱可能なキャップ402とキャップを螺合するためのねじ部403と点眼薬液を滴下する点眼ノズル404を備える。点眼ノズル404の先端には滴下口405があり、薬液充填容器401は円筒形あるいは円筒形の側面にくぼみ(ディンプル)を設けた形状であり、点眼ノズル404はねじ部403の内側に篏合されている。各サイズはメーカーや薬液の種類によって異なり、薬液充填容器401の直径は18mmから24mm、高さは20mmから30mm、ねじ部403の外径は11mmから17mm、高さは13mmから16mm、点眼ノズル404の径は4mmから6mm、高さは9mmから11mm程度である。
【0048】
図5は点眼容器固定アタッチメント105の構成図の一例である。点眼容器固定アタッチメント105は点眼容器挿入胴301(セットプレート305)の内側に点眼容器106の側面及び後面を支持する側面支持ガイド302及び後面支持ガイド303を備え、左右の側面支持ガイド302a、302cはそれぞれ左右の支持ガイド押圧板バネ302b及び302dにより内側に押圧され点眼容器306を側面より固定する。側面支持ガイド302a、302cは点眼容器306の薬液充填容器の直径に合わせて18mmから24mmまで押圧可能となるように支持ガイド押圧板バネ302b及び302dのばね定数とたわみ域を決定する。後面支持ガイドは後面位置調整プランジャ303aにより点眼容器306の薬液充填容器の直径に合わせて調整される。点眼容器固定アタッチメント105は側面支持ガイド302及び後面支持ガイド303によって点眼容器306を固定し一体となる。点眼容器挿入胴301の下部には下部口301aが開口しており点眼容器306のねじ部306a及び点眼ノズル306bが挿入される。下部口301aの口径は点眼容器306のキャップ径より大きく、点眼容器306が点眼容器固定アタッチメント105に装着されたままでもキャップを点眼容器306に装着することができる。
【0049】
図2より点眼容器106は点容器固定アタッチメント105のエアファン101側より押圧点調整アーム108の押圧部108aにより押圧され薬液を滴下するが、点眼容器106の直径や高さにより押圧位置が異なるため、点眼容器106に合わせて押圧部108aの位置を適切な位置とする必要がある。
【0050】
図5よりトリガアーム107と一体となす押圧ロッド107aの押圧ロッド押圧作用点107bは固定されており、点眼容器固定アタッチメント105の押圧位置調整機構304を介することにより点眼容器106のサイズに合わせた適切な位置を押圧することができる。押圧位置調整機構は、点眼容器106の押圧位置の上下位置及び点眼容器106の押圧幅が調整可能な第一押圧手段(309,310,311)と、第一押圧手段(309,310,311)と対向する位置にあって点眼容器106の押圧幅の調整可能な第二押圧手段(303a)と、を備える。図5の例では点眼容器固定アタッチメント105の上部に配置された調整アーム回転軸308を中心に回転する押圧点調整アーム108には押圧プランジャ309がスリット311に挿入されダブルナット310により固定される。ナット後310bは回転しないように止められており、押圧プランジャ309はナット後310bに回し入れ押圧量が適切な位置までねじこむ。押圧プランジャ309の高さ位置を点眼容器306の適切な高さ位置となるようにスリット311に沿って移動させナット前310aを締めて固定する。押圧ロッド107aの押圧作用点107bが押圧点調整アーム108の所定の位置に接触して押圧すると、押圧点調整アーム107に接続された押圧プランジャ309が点眼容器306の所定の位置を押圧する。これにより点眼容器306の形状やサイズが異なっていても押圧位置を適切な位置とすることができ、確実に一定量の薬液を点眼容器306より滴下することができる。
【0051】
図6は点眼容器固定アタッチメント105を取り外した状態を示す。点眼容器固定アタッチメント105には複数の薬剤を点眼する患者に対して簡単に点眼容器固定アタッチメント105を交換して点眼するためのセットプレート305が設けられている。図6(a)に示すように、点眼容器固定アタッチメント300を点眼補助具100のエアダクト104に接続するセットプレート305をエアダクト104のサイドに設けられたアタッチメントセット用のセットガイド312に差し込むだけで点眼容器固定アタッチメント105はエアダクト104の上部に簡単に固定される。このため、別の点眼薬を使う場合は別の点眼薬固定アタッチメント105に点眼容器106をあらかじめ装着しておくことで、簡単に点眼薬の交換が可能となる。このように、点眼容器固定アタッチメント105は、点眼容器106を下向きで装着可能なセットプレート305と、点眼容器106の押圧位置を調整する押圧位置調整機構と、を備える。セットプレート305の内側面には点眼容器106の側面を押圧支持する支持ガイド(側面支持ガイド302及び後面支持ガイド303)が配置され、セットプレート305の下端はエアダクト104の外側壁に形成されたセットガイド312に着脱可能に嵌合され、セットプレート305の下側領域には点眼容器106が装着された状態において点眼容器106のキャップを開閉可能とする開放空間S1が設けられる。
【0052】
さらに点眼容器固定アタッチメント105にはそれぞれ固有のタグやIDを振りつけるためにタグ、RFID等の電子的なチップや、バーコード、QRコード(登録商標)(これらは点眼容器106の種類及び点眼容器固定アタッチメント105の種類の少なくとも一方を識別するための識別子となる)、あるいはアタッチメント105に切り欠きを付けるなどの形状による判別手段を備えることができる。図2の点眼補助具100はこれらのタグやIDを読み取るためのセンサーやRFID読み取りチップ、カメラ等のタグ読み取りセンサー114を備える。これらのタグやIDをこの判別手段を備えていれば点眼補助具100がそれぞれの点眼容器固定アタッチメント105のタグを読み取ることにより、点眼容器固定アタッチメント105のタグと装着した点眼薬の種類があらかじめ登録されていれば、どの点眼薬が点眼されたかを毎回記録することが可能となる。
【0053】
(3)点眼容器押圧機構の構成
次に、点眼容器押圧機構の構成に関して図7及び図8を参照して説明する。点眼容器押圧機構の押圧ロッドの押圧作用点が直接点眼容器を押圧する構成でもよいが、図7及び図8は点眼容器への押圧を点眼容器の形状に合わせて最適化するために押圧ロッドが点眼容器固定アタッチメントの押圧位置調整機構を介して点眼容器を押圧し、点眼薬液をエアダクト内に滴下させるための押圧機構の例を示す。ここで、図7は手動により押圧する一例であり、図8は電動により押圧する点眼容器押圧機構を示す一例である。
【0054】
図7に示す手動機構による点眼容器押圧機構ではトリガアーム107がエアダクト104の上方に配置されるトリガアーム回転軸501を中心に回転し、トリガアーム107は患者あるいは点眼補助者の指により力を加える手動点502が接眼口104d側に引かれることにより点眼薬液が点眼容器106より滴下され、滴下粒がエアダクト104内の空気流による抗力により接眼口104dに向けて略水平移動され、角膜に到達して点眼される。
【0055】
図7の場合、点眼容器押圧機構は、トリガアーム107の回転軸となるトリガアーム回転軸501と、トリガアーム107と連接されてトリガアーム107が引かれるとトリガアーム回転軸501を介して側方から点眼容器106を押圧する方向に作用する押圧ロッド107aと、を備えている。押圧ロッド107aはトリガアーム回転軸501とエアダクト104の間の適切な高さに配置され、トリガアーム107と押圧ロッド107aは一体となり動作する。トリガアーム107が接眼口104d側に引かれると押圧ロッド107aの押圧作用点107bも接眼口側に動く。押圧作用点107bが点眼容器固定アタッチメント105に配置された押圧点調整アーム108の押圧ロッド押圧位置に接触すると、押圧ロッド107aにより接眼口104d側方向に力が作用し、押圧点調整アーム108を介して点眼容器106を押圧する。トリガアーム107の動作範囲は機械的に制限されているため、一体となっている押圧点調整アーム108も制限位置までしか動かず、常に一定の位置まで点眼容器106を押圧してそれ以上は押圧しない。これにより点眼容器106より滴下される薬液も常に一定量となり患者眼に点眼される。押圧ロッド107aが戻ると点眼容器106にかけられた押圧圧力は解放され点眼容器106は元の形状に戻る。点眼容器106は常に下向きに固定されているため点眼容器106内の薬液も点眼容器106の下部及び点眼ノズルに溜まり容器内の空気は点眼容器106の上方に溜まるので、点眼を開始する際には必ず押圧された分の薬液が滴下し常に一定量の薬液(一滴の薬液)が滴下される。
【0056】
図8は電動機構による点眼容器106の押圧機構として、電磁ソレノイド606による押圧ロッド605の駆動を示している。この場合の点眼容器押圧機構は、トリガアーム601と連動して電気駆動により駆動される電磁ソレノイド(電動駆動手段)606と、トリガアーム601が引かれると電磁ソレノイド606を用いて側方から点眼容器609を押圧する方向に作用する押圧ロッド605と、を備えている。電動による押圧ロッド605の駆動は、電動モーターによる構成や、電磁ソレノイド、ボイスコイルモーターなどの電磁アクチュエータによる構成が可能である。電磁アクチュエータの場合は直線運動が可能で押圧ロッド605を直接駆動できるが、モーターによる場合は減速ギアを介し、さらに回転運動を直線運動に変えるためのリンク機構あるいはカム機構などが必要となる。図8では電磁ソレノイド606のシャフトに押圧ロッド605を配置し、押圧ロッド605により前記点眼容器固定アタッチメントの押圧点調整アーム610を直接駆動する例を示している。
【0057】
トリガアーム601はトリガアーム位置センサー602により所定の角度位置が検出される。トリガアーム位置センサー602は反射型のフォトインタラプタであり、トリガアーム601に張り付けられたフォトインタラプタ用反射テープ603を検出できるように配置されており、トリガアーム601の所定の角度位置を検出する構成となっている。トリガアーム601が操作されていない最初の角度位置を「トリガアームスタート位置」とし、トリガアーム601がエアダクト604の接眼口604a側方向に所定の位置まで引かれ、トリガアーム601と一体となった押圧ロッド605により点眼容器押圧機構を介して点眼容器609の押圧が始まる角度位置を「トリガアーム押圧位置」とする。トリガアーム601がトリガアーム押圧位置に達すると電磁ソレノイド606がONとなり押圧ロッド605が押圧を開始する。電磁ソレノイド606のストロークは一定なので押圧量も一定となる。電磁ソレノイド606によって駆動された押圧ロッド605は押圧点調整アーム610を介して点眼容器609を押圧して薬液を滴下させる。押圧ロッド605が動作する動作範囲は一定なので点眼容器609は常に一定の位置まで押圧され、滴下する薬液の量も一定となる。操作者がトリガアーム601を開放するとトリガアーム601はトリガアーム回転軸607に同軸で配置されたトリガアーム戻しばね608によりトリガアームスタート位置まで戻り、トリガアーム位置センサー602によりトリガアームスタート位置に戻ったことが検出されると電磁ソレノイド606をOFFにして点眼容器609の押圧も解放されて点眼容器609は元の形状に戻る。
【0058】
図8では滴下粒通過センサー611が接眼口604a付近の上部に備えられ、点眼容器609より滴下された薬液滴下粒が接眼口604aを正常に通過したかを検出してコントロールユニットにデータを送信する。この滴下粒通過センサー611により押圧機構が適切に動作し、点眼薬液が正常に接眼口604aを通過したかを確認することができる。図8の滴下粒通過センサー611は反射型のフォトインタラプタで構成され薬液滴下粒が通過する際にエアダクト604の下面からの反射光が滴下粒表面の反射や屈折によりセンサーに戻らなくなることで検出する。なお、この滴下粒通過センサー611は透過型のフォトインタラプタや超音波センサーなどでも検出可能であり、エアダクト604の側面に配置することも可能である。
【0059】
(4)エアファンによる空気流発生手段の構成と動作
次に、エアファンによる空気流発生手段の構成と動作に関して図9を参照して説明する。図9に示すエアファン101はコントロールユニット113により駆動及び電圧をコントロールされ、コントロールユニット113にはトリガアーム位置センサー701の信号、あるいはトリガアーム107の操作部に配置された接触センサー703の信号、あるいはエアダクト104の接眼口104d付近に配置した接眼検出接触センサーにより患者眼が点眼補助具100のアイピース110に接眼されたかを検出する信号などにより操作者による点眼操作の開始を認識してエアファン101を動作させる。その後エアファン101はトリガアーム107が元の位置に戻るまで動作を継続し、戻った時点で停止する。トリガアーム107は、ばね力で常に元の位置に戻る構成になっているので、点眼補助具100の操作者がトリガアーム107を開放するとトリガアーム107は開始位置に自動復帰し、トリガアーム位置センサー701により開始位置に復帰したことを検出してエアファン101を停止する。さらに後述の図13は点眼補助具100の電気システム構成の一例であり、エアファン1804はコントロールユニット1801に備わるエアファン制御部1801aによりコントロールされ手動又は自動的に駆動のON/OFF及び駆動電圧をコントロールされる。
【0060】
以上の構成により、エアファン101は点眼時のみ動作することによりエアチャンバー102やエアダクト104に無駄な空気の流入をさせず、駆動電圧のコントロールにより薬液滴下粒を水平に移動せしめるための最適な空気吐出量とすることが可能であり、電力消費を最小限とすると共に、モーターの寿命も延ばす効果がある。また患者の眼がアイピース110に接触した時点又は操作者がトリガアーム107を引き始めた時点でエアファン101は動作開始してエアチャンバー102に空気を送り、操作者がトリガアーム107を引き切り点眼液が点眼容器106から滴下されるまでの時間内にエアチャンバー102内の空気圧を所定の圧力まで上げられるような送風能力をエアファン101は持つ。通常の操作であればこの操作経過時間は0.3秒以上であり、エアチャンバー102内の圧力を適正な圧力まで高めるのに十分な時間を得られる。
【0061】
(5)エアダクト内へのエア流入をコントロールする弁の構成と動作方法
次に、エアダクト内へのエア流入をコントロールする弁の構成と動作方法(弁駆動機構)に関して図10及び図11を参照して説明する。図10及び図11はエアダクト802への空気流入をコントロールする流入コントロール弁の構成を示す図であり、図10は手動機構による流入コントロール弁の構成の一例であり、図11は電動機構による流入コントロール弁の構成の一例である。
【0062】
図10に示す手動機構による流入コントロール弁の構成においては、流入コントロール弁としてスイング式逆止弁801がエアダクト802の流入口802aの直後に配置されて、エアチャンバー803からの空気の流入をコントロールしている。スイング式逆止弁801は回転軸806により連動する回転リセットアーム801a及び回転止めアーム801bがエアダクト802の外側に配置されている。スイング逆止弁801を閉じると回転止めアーム801bに回転ストッパー804の爪部804aがかかり、爪部804aはバネ804bにより上方に押されるため弁が開かないように制動される。スイング式逆止弁801は通常閉じておりエアファンが送風を開始しても空気流はエアチャンバーにとどまり、エアチャンバー内の気圧を上昇させる。回転ストッパー804はトリガアーム805の動きに連係して作動し、トリガアーム805が操作者によりエアダクト802の接眼口802b側に引かれ、点眼容器押圧機構を介して点眼容器を押圧して点眼薬液が滴下される位置までトリガアーム805が移動するとトリガアーム805に付設されたリリースカム805aにより回転ストッパー804の爪部804aが下方向に押され制動解除方向に移動してスイング式逆止弁801は制動が解除され、エアチャンバー803内の高い空気圧により弁が一気に開いてエアダクト内に空気流が流入する。この動作により発生したエアダクト802内の空気流は、高い流速でエアダクト802内を通過し点眼容器より滴下された薬液滴下粒を患者の角膜方向に飛ばす。
【0063】
トリガアーム805にはスイング式逆止弁801を閉じた位置に戻すための弁リセットバー805bが付設されており、この弁リセットバー805bはトリガアームが開始位置に戻る際にスイング式逆止弁801の回転リセットアーム801aをスイング式逆止弁801が閉じる方向に作用する構成となっている。操作者がトリガアーム805を離すとトリガアーム805はバネ力により開始の位置に戻り、弁リセットバー805bがカム801cを押し回転リセットアーム801aを介してスイング式逆止弁801も閉じる位置に復帰させる。回転ストッパー804の爪部804aはスイング式逆止弁801が閉じる動きを妨げないように緩やかなテーパー形状となっており、スイング式逆止弁801が完全に閉じる位置まで復帰すると爪部804aがスイング式逆止弁801の上辺に引っ掛かりスイング式逆止弁801は閉じた状態を維持する。
【0064】
このような手動機構の流入コントロール弁により高速の空気流をエアダクト802内に発生させ薬液の滴下粒を確実に角膜に送達させると共に、点眼操作が終了すると自動的に流入コントロール弁を閉じ、次の点眼操作に向けたリセット動作が完了する。図10の例ではスイング式の逆止弁による例であるが、バタフライ弁、ボール弁、リード弁、ダイヤフラムなどの弁機構を使っても構わない。
【0065】
図11に示す電動機構による流入コントロール弁の構成においては、流入コントロール弁はスイング式逆止弁901となっており、モーター902及びウォームギア903を介してスイング式逆止弁901の回転軸と連結している。スイング式逆止弁901は弁の開閉状態を検出する弁位置センサー904によりスイング式逆止弁901の開閉状態を検出できる。モーター902はコントロールユニット906によりコントロールされ、コントロールユニット906にはスイング式逆止弁901の開閉状態を検出する弁位置センサー904及びトリガアームの位置を検出するトリガアーム位置センサー905が接続されている。スイング式逆止弁901はトリガアーム805がトリガアームスタート位置にあるときには、モーター902をスイング式の逆止弁901が閉じる位置になるまで回転させスイング式逆止弁901を閉じる。トリガアーム805が操作者によりエアダクトの接眼口方向に引かれ、点眼薬液を滴下するトリガアーム押圧位置まで移動するとコントロールユニット906によりモーター902が駆動されスイング式逆止弁901を開く。トリガアーム905が操作者により解放されトリガアームスタート位置まで戻るとコントロールユニット906はモーター902を逆駆動してスイング式逆止弁901を閉じる位置まで回転させ、その位置を維持する。
【0066】
このような電動機構の流入コントロール弁により高速の空気流をエアダクト802内に発生させ薬液の滴下粒を確実に角膜に送達させると共に、点眼操作が終了すると自動的に流入コントロール弁を閉じ、次の点眼操作に向けたリセット動作が完了する。図11の例ではスイング式逆止弁による例であるが、バタフライ弁、ボール弁、リード弁、ダイヤフラムなどの弁機構を使っても構わない
【0067】
(6)患者の左眼・右眼自動検出(左右眼検出手段)
次に、患者の左眼・右眼自動検出に関して図12を参照して説明する。患者に対する点眼は、眼疾患の種類・程度・症状により様々なパターンで行われる。患者によっては複数の点眼薬を点眼したり、左右眼で点眼薬の処方が異なっていたり、点眼回数も様々で、患者はどの種類の点眼薬を何時に何回点眼するのかを管理しなければならないが、日常生活において点眼を忘れたり間違えることはしばしば発生する。従って左右眼のそれぞれにどの種類の点眼薬を何時、点眼したのかを点眼履歴として残すことは点眼を管理する患者や患者の介護人にとって有効な手段である。点眼補助具と携帯端末やパソコン等の外部装置をつなぎ、この点眼履歴を外部装置に残すことで点眼等の治療管理を効果的に行うことが可能となる。従って左右眼のどちらに点眼しているかを自動で検出することは治療の記録を残し管理するうえで極めて重要である。
【0068】
図12は点眼補助具が左右眼どちらの眼に接眼しているかを自動で検出する検出方法(左右眼検出手段)の一例である。左右眼のどちらかを検出する例としてよく用いられる方法は、カメラ撮影による患者の顔あるいは眼の撮影画像を解析して左右のどちらであるかを判別する方法や、顎台に患者の顔を固定する場合には顎台に対する点眼器の位置を検出して判別する方法などがあるが、ポータブル型の点眼器1ではより簡便な判別方法が望ましい。図12の例では患者が点眼器のアイピースに患者眼の眼瞼を接した際に点眼器のどちら側の側面近傍に患者の鼻が位置するかを反射式光学センサー1003で検出して判別する方法を示している。
【0069】
患者眼の眼瞼に点眼器のアイピースを接触させた際に患者の鼻は点眼器を構成する点眼補助具のエアダクト側面からやや下方に位置する。図12では点眼補助具のエアダクト1001の両側面下部にそれぞれ反射式光学センサー左1003a及び反射式光学センサー右1003bが配置されている。これらの反射式光学センサー1003はセンサー付近に鼻が存在する場合に、反射式光学センサー1003より照射された赤外光が患者の鼻表面にて反射あるいは散乱して反射式光学センサー1003に戻ってくる光を受光して鼻の存在を検出する。
【0070】
反射式光学センサー左1003a及び反射式光学センサー右1003bはコントロールユニット1004に接続されており、検出した信号を送信する。コントロールユニット1004はどちらのセンサーからも鼻の検出信号がない場合、あるいはどちらのセンサーからも検出信号が送信されている場合は、点眼補助具は所定の位置にないか操作者の手などで遮られていると判断し、反射式光学センサー左1003aだけから検出信号が送信されている場合は右眼眼瞼がアイピース1002に接していると判別し、反射式光学センサー右1003bだけから検出信号が送信されている場合は左眼眼瞼がアイピース1002に接していると判別する。
【0071】
コントロールユニット1004により判別された左右眼の情報は通信手段によりスマートフォンなどの外部装置に送信され点眼状態の評価や点眼履歴の情報として有効に活用される。また点眼補助具の点眼容器押圧機構や流入コントロール弁が電動の場合は、この左眼・右眼自動検出機能の判別情報により点眼動作をするかしないかを判断して点眼が確実に行われるように動作させることが可能である。
【0072】
以上の左眼・右眼検出システムにより本点眼補助具は簡便に接眼されている眼の左右を検出して点眼補助具の動作を最適化することができ、さらに通信手段により送信された検出情報により、外部装置の患者サポートソフトやインターネット上の患者サポートシステムは点眼状態の評価や点眼履歴の記録を可能とする。本実施の形態1では鼻の検出センサーとして反射式の光学センサーを用いているがセンサーは超音波センサーや静電容量センサー、焦電センサーなどでも構わない。
【0073】
(7)点眼補助具の電気システムの構成(機能ブロック図)
次に、点眼補助具の電気システムの構成(機能ブロック図)に関して図13を参照して説明する。図13は点眼補助具100において電動機構による押圧機構及び流入コントロール弁の場合の電気システム構成の一例を示している。電動による点眼容器押圧機構として電磁ソレノイド1803を用いた構成とし、流入コントロールにはモーター1805による弁駆動を用いた構成としている。
【0074】
点眼補助具100に備わるコントロールユニット1801は、システム全体のコントロール及びエアファン1804、ソレノイド1803、モーター1805の駆動コントロールを成す構成としている。センサーユニット1802はセンサー通信基板1802a、トリガアーム位置センサー1802b、弁位置センサー1802c、接眼センサー1802d、薬液滴下粒通過センサー1802e、接触センサー1802f、左右眼検出センサー1802g、タグ読み取りセンサー1802hを備え、センサー通信基板1802aは各センサーの値をデジタル値に変換してコントロールユニットと通信する構成となっている。
【0075】
すなわち、点眼補助具100は、エアダクト104内の所定の位置にエアダクト104を通過する薬液滴下粒を検出可能な滴下粒通過センサー1802eを配置して薬液が正常に角膜まで到達されたかを検出することができる。またトリガアーム107の位置を検出するトリガアーム位置検出センサー1802bや流入コントロール弁の開閉角度を検出する弁位置センサー1802c、点眼補助具100の傾きや動きを検出するGセンサー、患者の左右眼のどちらに接眼しているかを検出する左右眼検出センサー1802gを配置することで、患者の点眼補助具100の操作が適切になされたか、患者への点眼が適切になされたか、あるいは点眼補助具100の動作に異常はないかなどを評価できる。さらにエアチャンバー102内あるいはエアダクト104の流入口104aの近傍に、患者の眼を撮影できるカメラ1809(撮影手段)を配置すれば、点眼薬が患者の眼に送達されたときの、眼の開瞼状態や位置、さらに角膜に送達された点眼薬液の付着状態などを撮影画像により評価できる。
【0076】
エアダクト104内に配置された薬液滴下粒通過センサー1802eは光学式の透過型あるいは反射型のセンサーや超音波センサーにより検出する。トリガアーム位置検出センサー1802bはトリガアーム107と連動するポテンショメータやエンコーダ、光学式の透過型あるいは反射型のセンサーによる光学的スリットや反射体の検出、磁気センサーなどにより検出する。弁位置センサー1802cは弁と連動するスイッチや、弁の回転軸に連動するポテンショメータやエンコーダ、あるいは開閉状態を直接に透過型又は反射型の光センサーなどにより検出することが好ましい。なお、本電気システムは例えば点眼補助具100が手動による点眼容器押圧機構及び流入コントロール弁の場合など、システムの構成により必要のない当該機能部を省くことができる。
【0077】
さらに、コントロールユニット1801はエアファン制御部1801aを備え、エアダクト104内に点眼容器106から滴下された薬液滴下粒を水平方向に移動させるために必要なエアダクト104内の空気流の薬液滴下粒に対する相対流速を上記(数8)により計算し、且つ得られた当該相対流速に基づいて前記エアダクト104内の流速が10m/sec以上40m/sec以下となるようにエアファン101に送る電圧を制御することができる。
【0078】
また、コントロールユニット1801は前眼部撮影カメラ(撮像手段)1809より送信された画像データを記憶でき、通信ユニット(通信手段)1808を介してWiFiあるいはブルートゥース(登録商標)などの近距離通信によりスマートフォン、パソコン、タブレットPCなどの外部装置とデータ通信をする。通信ユニット1808は、有線/無線ネットワークを介して外部端末に各種の検出データを送信する。なお、カメラ1809はエアチャンバー102内あるいはエアダクト104の流入口104a付近に配置され、エアダクト104を介して眼表面を撮影する。エアダクト104内に配置された開閉弁は流入口104aを遮断するため遮断壁は光が透過する透明な材料として患者の眼を撮影可能とすることが好ましい。
【0079】
このように、本実施の形態1に係る点眼補助具100は外部通信手段を構成することが可能で、通信ユニット1808により外部のスマートフォンやパソコン、タブレットPC、Wi-Fi端末などの外部装置に接続し、点眼補助具100に配置された上述のセンサー1802b~1802hにて検出したデータや点眼状態、評価結果さらにカメラ1809にて撮影した患者眼の画像などを送信する。また送信されたデータや画像はスマートフォンやパソコンを介してインターネット上のサーバやクラウドシステムに送られ、これらのデータを患者や患者の家族や介護人などの支援者、医療機関が共有して閲覧・評価可能であり患者の治療をサポートできるホームモニタリングシステムを実現できる。
【0080】
コントロールユニット1801はセンサーユニット1802や前眼部撮影カメラ1809より送られてきたデータ値や画像データによりシステムをコントロールすると共に外部装置とネットワークシステムによる患者サポートシステムへ点眼補助具100の状態や患者の点眼状態をデータとして送り、その結果、患者の治療サポートに有効なデータや情報を提供できる。
【0081】
以上の説明のように、本実施の形態1に係る発明は患者眼に点眼容器内の薬液を投与するための点眼補助具100であって、エアファン101と、エアファン101より吐出された空気流の空気室となるエアチャンバー102と、エアチャンバー102と連通された筒形状のエアダクト104と、点眼容器106が交換可能に装着されると共に水平状態にしたエアダクト106の上側壁に点眼容器106のノズルを下向きにして固定する点眼容器固定アタッチメント105と、点眼容器固定アタッチメント105に装着された点眼容器106の側面の所定位置を押圧する点眼容器押圧機構108と、点眼容器押圧機構108の動作を制御するトリガアーム107と、を備える。筒形状のエアダクト104の開口の一端側はエアファン101より吐出された空気流がエアチャンバー102を介して流入する流入口104aとなる一方、当該開口の他端側は患者の眼瞼周囲が当接する接眼口104dとなる。エアダクト104の上側壁には、点眼容器固定アタッチメント105に装着された点眼容器106のノズルより滴下された薬液滴下粒をエアダクト106内に導入するための薬液導入孔104cが形成される。
【0082】
この構成により、点眼容器106内の薬液を点眼する際に、点眼補助具100を使用する患者が視線を上に向ける必要性がなく、横向きの楽な姿勢で患者眼に適正量の薬液の点眼ができる。すなわち、患者が点眼補助具100のトリガアーム107を引くという簡単な操作だけで患者が上を向くことなく水平視のまま点眼可能であり、点眼薬液は点眼補助具100の部品と非接触で通過するので点眼薬液が点眼補助具100の部品に汚染されることなく患者眼に送達され、上述の薬液滴下機構により一定量の点眼薬液を確実に滴下できると共に、患者は楽な姿勢で簡単・確実かつ安全に点眼することができる。
【0083】
また、点眼容器固定アタッチメント105は簡単に点眼補助具100へ着脱可能であり複数の点眼薬を点眼する患者にとって煩雑な操作なく点眼薬を交換して点眼することが可能となる。
【0084】
(変形例)
次に、本発明の実施の形態1の変形例に係る点眼補助具に関して図14を参照して説明する。本変形例に係る点眼補助具100は、エアチャンバー102を省略した構成となる。上記の実施の形態1に係る点眼補助具100ではエアチャンバー102を介して空気流をエアダクト104に流入させるとエアダクト104内の空気流が一様にスムーズとなるためエアファン101とエアダクト104の間にエアチャンバー102を配置した。しかしながら、本変形例ではエアファン101の送風口は直接エアダクト104に連結しており、この構成により上記実施の形態1と同様の作用効果を奏することができると共に、装置の更なるコンパクト化、軽量化や低価格化を図ることができる。
【0085】
なお、本発明は、上記実施の形態の構成に限られず、発明の趣旨を変更しない範囲で種々の変形が可能である。例えば図1に示す使用例は一例であって点眼補助具100を高さ調整可能な支柱に固定載置し、水平を保った状態で点眼を行っても良い。また例えば、点眼容器106は薬剤の種類、メーカーなどによってサイズが異なるため、上述のような点眼容器押圧機構や押圧位置調整機構の複雑な機構を用いる代わりに、点眼容器のサイズ毎に異なる専用品としての点眼容器固定アタッチメント105を用いることも考え得る。この場合、点眼容器106が装着される度に、点眼容器固定アタッチメント105の押圧位置の微調整などが必要なく使い勝手が良い。すなわち、専用品の点眼容器固定アタッチメント105にそれぞれサイズの異なる別の点眼容器106を予め装着してキャップを閉めて保管しておけば、複数の点眼薬を使用する患者であっても点眼容器固定アタッチメント105を交換するだけで簡単に点眼薬を交換できる。
【0086】
(実施の形態2)
以下、本発明に係る点眼補助具の実施の形態2に関して図15乃至図21を参照して説明する。本実施の形態2は、上記実施の形態1に記載の点眼補助具100に配置された薬液の滴下粒通過センサーや前眼部画像撮影カメラ、Gセンサー、左右眼検出センサー、接眼センサーなどから点眼状態のデータを検出する検出手段と、得られた検出データをもとに点眼の状態を評価する評価手段と、該検出データ及び評価手段による評価データをスマートフォンやタブレットPC、パソコンなどと通信する通信手段とを用いて、該データを医師と患者が共有して、点眼治療の状態観察をすると共に、点眼治療を継続するように患者に働きかけるホームモニタリングシステム及び患者サポートシステムである。なお、上記実施の形態1と同様の構成には同じ符号を付して、その詳細な説明を省略する。
【0087】
ここでは下記の順序に従って本発明の実施の形態2について説明する。
(8)外部通信手段とネットワークシステムの構成
(9)点眼実施を支援する患者サポートソフトウェアの動作
(10)点眼時以外の患者サポートソフトウェアの機能及び動作
(11)院内端末装置で実行される専用ソフトウェアの動作
(12)支援者携帯端末で実行される専用ソフトウェアの動作
【0088】
(8)外部通信手段とネットワークシステムの構成
図15は患者の治療をサポートするためのホームモニタリングシステムSの全体構成を示している。点眼器1101は複数の接続手段のうちの一つによりインターネット1109に接続される。接続手段としては有線ローカルエリアネットワーク(LAN)に接続されたルーター1102を介する手段、無線LANやブルートゥースなどの近距離無線により無線ルーター1103を介する手段やスマートフォンなどの携帯端末1104などの移動体通信を介する手段などによりインターネット(WAN)に接続される。
【0089】
点眼器1101に配置された滴下粒通過センサーや前眼部画像撮影カメラ、Gセンサー、左右眼検出センサーなどから得られたデータ並びにそれらのデータをもとに点眼状態を評価したデータは前記接続手段を介して携帯端末1104やインターネット上のクラウドサービス1105や固定サーバ1110に蓄積される。これらの点眼状態データは点眼が実施された日時情報、点眼薬情報などと共に蓄積される。
【0090】
点眼が実施された日時情報は点眼器補助具に具備された時計或いは点眼器と接続された携帯端末の時計から取得される。点眼薬情報は前記点眼容器固定アタッチメントに挿入されている点眼薬を点眼器1101が自動で識別するか、もしくはユーザーが携帯端末1104にインストールしたソフトウェアの機能を用いて選択するなどの方法で点眼薬情報を識別し、前記データと共に蓄積される。
【0091】
一方、医師や薬剤師などの医療関係者や家族や介護人などの支援者1108は、インターネット1109に接続されたスマートフォンやパソコン、タブレット端末などの端末装置1007を介して前記クラウドサービス1005や固定サーバ1110に蓄積されたデータを随時閲覧・評価・データ解析ができ、患者の治療をサポートする事が可能となる。
【0092】
さらにクラウドサービス1105や固定サーバ1110には蓄積されたデータを解析するソフトウェアが組み込まれ、統計的な処理によるデータの分析や人工知能AI(Artificial Intelligence)やディープラーニングによるデータ解析や今後の予測、患者のアドヒアランス向上のために効果的なサポート方法を決定し実行することが可能となる。
【0093】
クラウドサービス1105や固定サーバ1110に蓄積されるデータは複数の患者のデータで構成することが可能であり、患者の同意の上で複数の患者データで構成されるビッグデータを利用して前記解析や予測、提案精度の向上に繋げることが可能となる。
【0094】
これらの解析データは医療関係者1108が診断や治療方針の決定のために利用するデータとして端末装置1107で確認する事が可能であり、さらに点眼器1101や患者の携帯端末1104、支援者の端末装置1107などで確認する事が可能である。また、患者のアドヒアランス向上のために解析データを利用して患者携帯端末1104で動作するソフトウェアの動作を変更する事も可能である。
【0095】
図16は外部装置による患者サポートシステムの一例を示す構成図である。
点眼補助具1201は患者がトリガアームを操作する事によりエアファンの駆動と連動して点眼容器の一部を加圧して一滴の薬液を滴下する滴下制御部1201aと、点眼補助具に配置された滴下粒通過センサーや前眼部画像撮影カメラ、Gセンサー、左右眼検出センサーなどから点眼の状態を示すデータを検出する点眼状態検出部1201bと、前記データを解析し点眼の状態を評価する点眼評価部1201cと、携帯端末に前記データや解析結果・評価結果などの送信や、携帯端末からの情報や指示などの受信をするための通信部1201dを備える。この通信部はUSBや有線LANなどの有線接続、ブルートゥースやWiFi、無線LANなど近距離無線接続を可能とするモジュールである。
【0096】
患者携帯端末1202は、CPUなどのプロセッサやメモリを用いて患者携帯端末1202の構成部を制御して各種機能を実現する制御部1202a、RAMなどのメモリであり点眼補助具から受信したデータを蓄積する記憶部1202b、インターネット等の通信網への通信接続や点眼補助具との通信を実現する通信部1202c、液晶パネル又は有機ELディプレイ等の画面表示部1202d、及びタッチパネルなどの操作入力部1202eなどを備える。さらに、患者自身が携帯端末に入力し保存した点眼薬情報・点眼計画や前記点眼補助具から受信し蓄積された点眼実施情報や点眼状況を含む各種データなどに基づいて点眼治療が継続できるよう働きかけるアドヒアランス解析支援部1202fを備える。
【0097】
なお、点眼補助具1201が携帯端末1202との接続を行わない場合でも点眼補助具1201単独で点眼治療の継続を働きかけることができるよう、点眼補助具1201に画面表示部、操作入力部、記憶部、アドヒアランス解析支援部を備えても良い。
【0098】
図17はネットワークシステムを介した患者サポートシステムの一例を示す構成図である。
点眼補助具1301は患者がトリガアームを操作する事によりエアファンの駆動と連動して点眼容器の一部を加圧して一滴の薬液を滴下する滴下制御部1301aと、点眼補助具に配置された滴下粒通過センサーや前眼部画像撮影カメラ、Gセンサー、左右眼検出センサーなどから点眼の状態を示すデータを検出する点眼状態検出部1301bと、前記データを解析し点眼の状態を評価する点眼評価部1301cと、広域ネットワークを介して固定サーバ1303や携帯端末に前記データや解析結果・評価結果などの送信や、広域ネットワークを介して固定サーバ1303や携帯端末からの情報や指示などの受信をするための通信部1301dを備える。この通信部はUSBや有線LANなどの有線接続、ブルートゥースやWiFi、無線LANなど近距離無線接続を可能とするモジュールである。
【0099】
患者携帯端末1302は、CPUなどのプロセッサやメモリを用いて患者携帯端末1302の構成部を制御して各種機能を実現する制御部1302a、RAMなどのメモリであり点眼補助具から受信したデータを蓄積する記憶部1302b、インターネット等の通信網への通信接続や点眼補助具との通信を実現する通信部1302c、液晶パネル又は有機ELディプレイ等の画面表示部1302d、及びタッチパネルなどの操作入力部1302eなどを備える。さらに、患者自身が携帯端末に直接入力して保存するか、あるいは医師や薬剤師がインターネットを介して提供する点眼薬情報・点眼計画・治療計画や、前記点眼補助具から受信し蓄積された点眼実施情報や点眼状況を含む各種データなどに基づいて点眼治療が継続できるよう働きかけるアドヒアランス解析支援部1302fを備える。
【0100】
なお、点眼補助具1301が患者携帯端末1302との接続を行わずインターネットを介して直接固定サーバと接続している場合でも点眼補助具単独で点眼治療の継続を働きかけることができるよう、点眼補助具に画面表示部、操作入力部、記憶部、アドヒアランス解析支援部を備えても良い。
【0101】
図17では患者携帯端末1302が自宅LANを介してインターネットに接続している例を示しているが、介護施設などを含む外出先のLANに接続して患者サポートシステムを利用することも可能である。
【0102】
固定サーバ1303は、点眼補助具1031が送信するセンサーデータや解析結果・評価結果ならびに患者携帯端末での入力や医師・薬剤師の端末で入力された点眼薬情報・点眼計画、さらには点眼補助具から患者携帯端末へ自動的に記録された日々の点眼状態や点眼実施状況などの点眼状況データなどの情報を受け取る通信部1303a、患者携帯端末1032や院内端末装置1304からリクエスト要求を受信した場合にレスポンス情報を返信する制御部1303b、前記送受信部で受け取った各種データを統計的な処理やAI、ディープラーニングなどを用いて解析し疾患の進行などを予測する、あるいは患者のアドヒアランス向上のために効果的なサポート方法を決定し実行などをするアドヒアランス解析支援部1303c、前記送受信部で受け取った各種データや前記アドヒアランス解析支援部1303cでの解析結果、患者(利用契約者)情報(利用契約者ID、パスワード、担当医療機関・医療従事者、生年月日、性別、ヘルスケア情報、来院予定日時、各種検査装置の測定結果など)などを蓄積するデータベースである記憶部1303dなどを備える。図17の例では固定サーバを用いたがクラウドサービスなどを用いても構わない。
【0103】
院内端末装置1304は、医師から入力を受け付けるキーボードなどの操作入力部1304a、専用ソフトウェアをWebブラウザなどで実行するソフトウェア実行部1304b、操作入力部1304aを介して対象患者の点眼状況データやAIなどによる解析結果、点眼計画などの取得を行うリクエスト生成部1304c、固定サーバ1303に記憶されている対象患者のデータの受信や、院内の検査装置で実施した検査結果や医師が作成した点眼計画・治療計画・コメントなどの固定サーバへの送信をする通信部1304d、画面表示部1304e、及び記憶部1304fなどを備える。
【0104】
支援者携帯端末1305は、支援者から患者向けにメッセージ入力などを行うタッチパネルなどの操作入力部1305a、専用ソフトウェアをWebブラウザなどで実行するソフトウェア実行部1305b、操作入力部1305aを介して対象患者の点眼状況データやAIなどによる解析結果、点眼計画などの取得を行うリクエスト生成部1305c、通信部1305d、液晶パネル又は有機ELディプレイ等の画面表示部1305e、及び記憶部1305fなどを備える。
【0105】
(9)点眼実施を支援する患者サポートソフトウェアの動作
図18は点眼実施を支援する患者サポートソフトウェアの動作の一例を示すフローチャートである。患者サポートソフトウェアは患者が点眼治療を継続する事をサポートし、アドヒアランスの維持向上を支援するためのソフトウェアとして機能する。該フローチャートの前処理として、ユーザー(患者又は支援者、医療関係者)は前記患者サポートシステムに使用する患者携帯端末にインターネットなどを介して該患者サポートソフトウェアをインストールする。
【0106】
図17のようにネットワークシステムを介して患者サポートシステムを機能させる場合、ユーザーは固定サーバから利用契約者IDを取得しパスワード設定などを行い、患者携帯端末と固定サーバ双方の記憶部に記録する。また、その他の患者(利用契約者)情報(氏名、生年月日、性別、人種、支援者名、支援者固有ID、担当医療機関・薬局、担当医など)も記録する。支援者固有IDは支援者の携帯端末などに患者サポートソフトウェアをインストールして支援する場合に割り当てられる固有のIDであり、インターネットを介したメッセージのやり取りや、固定サーバにアクセスして患者データの閲覧を行う場合などに利用される。固定サーバ内に記録されるデータは前記利用契約者IDに紐付けられて記録される。また、該患者サポートソフトウェアと点眼補助具とをWiFiなどで接続し該点眼補助具の固有IDを患者携帯端末の記憶部に記録する。
【0107】
S1401では、点眼基本情報の登録を行う。点眼基本情報には点眼薬名称、対象眼(右眼、左眼、両眼)、一日の点眼回数、1回の滴下回数、点眼時間(時間帯)、処方日、担当医師・薬剤師情報などがある。これらの情報を取得する方法としては、薬局で提供されるQRコード(登録商標)を前記患者携帯端末のカメラや点眼補助具のカメラで読み込む方法、前記患者携帯端末のカメラや点眼補助具のカメラ、あるいは点眼容器固定アタッチメントに具備されたカメラもしくはバーコードリーダなどで点眼薬に記載のバーコードを読み込み、インターネットを介して対応する点眼薬の情報を取得する方法、院内端末上で実行される専用ソフトウェアから発行される点眼基本情報を含むQRコード(登録商標)などを前記患者携帯端末のカメラや点眼補助具のカメラで読み込む方法、医師・薬剤師が院内端末上で実行される専用ソフトウェアから直接登録しインターネットで固定サーバに登録する方法、ユーザーが患者サポートソフトウェアの入力機能を用いて直接入力する方法、或いはこれらの方法を組み合わせる方法などがある。
【0108】
さらに、登録した点眼薬の点眼容器を点眼容器固定アタッチメント105に装着して点眼補助具に挿入し、取得された該点眼容器固定アタッチメントの固有タグの情報を該点眼薬の点眼基本情報に関連付けて登録する事ができる。それにより挿入されている点眼薬の種類を自動的に判別することが可能となり、点眼薬の取り違えなどを防ぐ事が可能となる。
【0109】
S1402では、設定した時間になると前記点眼基本情報を基にその日の点眼計画を作成して患者携帯端末の画面に表示して通知する。その際、音声やアラーム音で注意を促してもよい。この画面で一時的、又は恒久的に点眼時間の設定を変更する事ができてもよい。
【0110】
S1403では、点眼時間になったらS1404で患者携帯端末の画面上に点眼を促すメッセージを表示し、音声やアラーム音で通知する。この際、登録された支援者にも自動的にメッセージを送信してもよい。S1405でユーザーによって点眼補助具の電源が入れられ点眼補助具と患者携帯端末の通信が確立すると、点眼支援処理実行ステップS1406に移行する。この間、点眼補助具の電源をONする方法を画面に表示する、あるいは点眼補助具と患者携帯端末との通信が確立するまでの様子をイラストやアニメーション、音声などで表現する事でユーザーに現在の状況を理解しやすくしスムーズな操作を誘導する事も可能である。また、親しみやすさを向上して患者の点眼治療に対するモチベーションを向上させる目的で、該点眼補助具を擬人化や擬生物化したイラストやアニメーション、音声などで表現してもよい。
【0111】
S1406では患者が点眼補助具を用いて正しく効果的な点眼操作を行うための支援を行う。患者携帯端末の画面に点眼すべき点眼薬の情報や対象眼を画像やイラストなどを用いて分かりやすく表示し、該点眼薬補助具に点眼容器固定アタッチメントを挿入するようユーザーに促す。なお、点眼薬の容量や点眼実績から点眼対象の点眼薬の残量が少ない或いは無いと判断した場合、ユーザーに点眼薬の残量を確認させる或いは点眼薬ボトルを新しい物に交換するよう指示することも可能である。同一時間帯に複数の点眼を行う場合には、全ての点眼薬情報を表示してもよい。点眼の順番が決まっている場合などは、これから点眼する点眼薬の表示を色や大きさ、アイコン表示などで他の点眼薬と区別するために強調表示するのが望ましい。ユーザーが点眼容器固定アタッチメントに装着された点眼薬を点眼補助具に挿入すると、RFIDのダグを読み取り点眼基本情報と照合して挿入されている点眼薬を識別し、挿入されている点眼薬の情報を画面に表示する、あるいは挿入されている点眼薬が点眼すべき点眼薬でない場合には警告して正しい点眼薬に取替えるようユーザーに促すことも可能である。なお、点眼容器固定アタッチメントに点眼薬を撮影するためのカメラや識別するためのバーコードリーダが具備されている場合には、該カメラ画像や該バーコードから判断された点眼薬情報を用いて動作を決定することが可能である。
【0112】
患者サポートソフトウェアが点眼対象の点眼薬が点眼補助具に正しくセットされたことを確認すると、点眼補助具を用いた点眼方法を画面上にイラストやアニメーションをなど用いて表示する。特にユーザーが点眼する対象眼(左右眼)を間違えないために、対象眼側に点眼補助具を当てている顔のイラストなどを表示する事で左右眼の取り違えを防ぐようにする事が望ましい。
【0113】
図19は点眼指示画面の一例を示す図である。ここでは同時刻に複数の点眼薬を点眼する場合の例を示している。現在点眼すべき点眼薬1501を点眼薬名や写真などと共に大きく強調して表示し、それ以外の点眼薬の情報1502は小さく目立たないように表示している。また、同時刻に点眼する点眼薬のうち今何個目であるかを1503に表示し、進行状況を把握できるようにしている。正面顔イラスト1504は患者が画面を見たときに患者自身の顔が鏡に映っているような鏡映反転の配置とする事で、見たままを真似して操作する事ができ、左右眼の取り違いを防止できる。正面顔イラスト1504の代わり、又は該正面顔イラストとオーバーラップさせるように、スマートフォンの画面側に搭載されているフロントカメラ1508で患者自身の顔をリアルタイムで撮影している動画を表示してもよい。その際、動画は患者からスマートフォンの画面を見て鏡に映っているような鏡映反転の向き、つまり右眼が画面の右側、左眼が画面の左側に写るように表示する。正面顔イラスト1504や患者顔のリアルタイム動画の点眼対象眼側に矢印などと共に対象眼表示1505を配置し、さらに点眼補助具のイラスト1506を点眼対象眼に当てているように表示することで、患者がどちらの眼に点眼補助具を当てるべきかを一目で分かりやすく示すことができる。メッセージ欄1507には、患者への操作指示や現在の進行状況などを表示する。
【0114】
患者が点眼補助具を接眼すると点眼補助具に具備された左右眼自動検出機能により接眼している眼が左右のどちらであるかを検知できるが、実際に検知した眼と点眼すべき対象眼が一致しない場合には、警告表示や警告音などにより点眼補助具を接眼している眼が間違っていることをユーザーに知らせる、或いは間違っていた場合には点眼補助具での点眼動作を自動的に停止しても良い。点眼補助具を28対象眼に当てて点眼するまでの間は携帯端末の画面の指示を目視で確認する事が難しいため、音声案内による指示誘導を行うとよい。
【0115】
S1407でユーザーが点眼を実施すると、点眼補助具の各種センサーから得られたデータや前眼部画像、及びそれらのデータを解析して得られた点眼状態の評価結果など点眼状態データを患者サポートソフトウェアが受信して解析し、S1408で点眼が成功したか否かを判定する。
【0116】
点眼が成功したか否かの判定方法は限定しないが、点眼補助具に具備された複数のセンサー情報と時系列の複数の前眼部画像を組み合わせて判定する方法が上げられる。例えば、点眼行為が患者により実施された後のある一定期間内に滴下粒通過センサーの反応が無い場合は点眼失敗と判定できる。一方滴下粒通過センサーに反応があった場合でもGセンサーの値から点眼補助具の傾きがある一定上に大きく点眼薬が対象眼まで届かないと判断される場合には点眼失敗と判断できる。滴下粒通過センサーとGセンサーの値から対象眼の位置まで点眼薬が到達したと判断された場合、撮影手段により撮影された複数の時系列前眼部画像(動画)を解析して、点眼薬が角膜や結膜に送達されたかを判断する事ができる。例えば各種画像フィルタなどを用いて前処理を行い瞳孔や虹彩の存在や位置を同定する事により正しく開瞼しているか否かを判定し、開瞼状態で点眼薬が対象眼に送達された場合は点眼成功と判断する事ができる。また、一般的なフィルタリングが輪郭抽出などの画像処理を用いる方法以外にも点眼成功・失敗の画像パターンを学習した人工知能やディープラーニングを用いて点眼の成功失敗を判定する方法を用いてもよい。
【0117】
点眼に成功したと判断した場合にはS1409に移行する。成功しなかった場合にはその旨をユーザーに通知しS1406に戻る。
【0118】
S1409で同時刻に行うべき点眼行為が全て完了した場合にはS1410に移行し、該フローの中で実施した点眼実施情報(点眼実施日時、点眼した点眼薬、点眼状態データ、点眼場所など)を記録する。まだ全ての点眼行為が終了していない場合には、次の点眼薬を点眼するためS1406に戻る。複数の点眼薬を連続で点眼する場合、短時間に連続的に点眼すると点眼薬が眼から流れ出してしまい、点眼薬の効果が十分得られない場合があるため、2剤目以降の点眼支援処理では適切な待ち時間を設定してもよい。また、点眼した点眼薬の効果が発揮されるようにするための眼を閉じて待つ行為を促すために、その方法をイラストやアニメーション、あるいは音声などを用いて患者を誘導してもよい。さらに一剤点眼が完了する毎に点眼補助具から点眼容器固定アタッチメントを抜き取り、キャップを閉めて片付けるまでの行為を促すために、イラストやアニメーション、あるいは音声などを用いて患者を誘導してもよい。
【0119】
S1411では、蓄積された日々の点眼実施情報に基づいて点眼計画通りに点眼が実施できているかなどの点眼状況を評価し、患者の点眼治療に対する意欲やアドヒアランスをスコア化して通知し、そのスコアを上げるためのアドバイスの提供やメッセージの表示、治療を行っている疾患や点眼治療に関する情報の提供などを行い、患者のアドヒアランスの維持向上や治療継続を動機付ける支援処理が実行される。
【0120】
さらに、ネットワークシステムを介した患者サポートシステムの場合、点眼を実施したことを登録した家族や介護人などの支援者に通知することも可能である。通知の方法は、患者サポートソフトウェアの専用アプリを支援者の携帯端末などにインストールしておき、専用アプリに搭載しているメッセージ機能を通じて、患者携帯端末から点眼を実施した旨を自動で通知する方法や、登録したSNSを利用して通知する事も可能である。通知を受け取った支援者はメッセージを返信することが可能である。
【0121】
スコアを上げるための動機付けとなるようにゲーミフィケーションの要素を取り入れても良い。治療継続に結びつくスコアアップの動機付けに繋がる方法であれば、その手法を限定しない。例えば、スコアの点数を動植物などのキャラクターの成長や状態に結びつける事で、正しく点眼治療を続けるとキャラクターが成長したり元気になったり喜んだりするなどのポジティブな変化が見られることが楽しみになり点眼治療を継続する動機付けに繋げる。逆にスコアが下がると植物が枯れて元気が無くなったりするとそのキャラクターが復活するようにスコアを上げるべく点眼治療を再開する動機付けとなる。また、スコアが上がる毎にゲームが進行するよう動作させてもよい。例えば、スコアや点眼継続日数が基準を満たすと、ゲームが次のステージに進む事ができる、あるいはゲームで使用できるアイテムを獲得できるなどの方法でもよい。さらに、ゲームの進行状況や獲得したアイテムの情報などを登録した支援者家族や友人などと共有することを可能にしても良い。また、スコアや貯まったポイントなどを現実世界の商品やサービスと交換できるようにしても良い。なお、実行されたアドヒアランス解析支援処理の内容は記録され、その処理内容とその後の患者の行動変容との関係性などを分析し、さらに効果的な支援処理の方法決定のために活用する事が可能である。
【0122】
S1412では、本日予定されていた全ての点眼が完了したかを自動で判断し、完了した場合は処理を終了し、完了していない場合には次の点眼時間まで待機する。
【0123】
(10)点眼時以外の患者サポートソフトウェアの機能及び動作
アドヒアランス解析支援処理は、図19のような点眼実施時だけでは無く、様々なタイミングで実行され、日常的に患者のアドヒアランス維持向上や治療継続を動機付ける支援を行う。
【0124】
支援方法の一例として励ましのメッセージを提供する方法がある。図20は激励メッセージ表示画面の一例である。画面にはスコア1601、激励のメッセージ1602などを表示する。メッセージの内容はスコアや点眼状況、来院状況などに応じて内容を決定する事が可能であり、できるだけポジティブな表現が望ましい。また文字や音声のメッセージだけでは無く、1603のようにキャラクターがメッセージの内容に合わせた表情で話しかけるような表現にする事で、より親しみやすさを演出することも可能である。またスコアや点眼状況、来院状況、治療開始からの経過期間などに合わせて、1604のようにアドヒアランスを維持向上するために効果的な対象疾患の知識や情報を提供し、患者がボタンなどをタップしてその内容(詳細コンテンツ)を開き確認したらポイントを付与しスコアをアップするよう動作させてもよい。1604の内容は他にも患者自身の点眼履歴や眼圧などの検査結果の推移、治療計画など、患者が自身の病状と疾患の特徴、目標などを理解しアドヒアランスの維持向上や治療継続の動機付けに繋がる内容であればその内容を限定しない。
【0125】
メッセージの通知タイミングは過去のメッセージに対する患者の反応履歴などを基により効果的なタイミングを決定してもよい。例えば1604をタップして内容を確認する確率が一番高い時間や場所を過去の反応履歴から解析してもよい。激励メッセージの内容1602についても過去の反応履歴などから点眼治療に対するポジティブな行動変容に繋がる効果的なメッセージを生成することが可能である。
【0126】
前記詳細コンテンツの確認時以外に、点眼実施時、来院時、薬の受取り時にはポイントが付与されスコアアップするように動作する。ポイントの大きさは重要度や効果に応じて変更してもよい。さらに、アドヒアランスの低下や点眼治療の継続意欲が低下していると判断される場合はスコアを低下させるように動作しても良い。アドヒアランス低下や意欲低下は点眼実施率の低下、点眼時刻が守られない場合、来院が滞る場合などを判断材料にしても良い。
【0127】
来院予約日時が近づいたら、来院予約日時や病院名、担当医などを知らせるメッセージを表示し、来院忘れを防止するよう機能する。来院予約日時の設定は、前回来院時に院内端末上で実行される専用ソフトウェアから発行される診療予約を含むQRコード(登録商標)などを前記患者携帯端末のカメラや点眼補助具のカメラで読み込む方法、医師が院内端末上で実行される専用ソフトウェアから直接登録しインターネットで固定サーバに登録する方法、ユーザーが患者サポートソフトウェアの入力機能を用いて直接入力する方法などがある。
【0128】
点眼薬情報の点眼薬の容量、処方された点眼薬の数、点眼実績から点眼薬が無くなる日を推定し、推定日が近づいても来院予定日が設定されていない場合には、推定日までに来院を促すメッセージを表示しても良い。同時に来院予定日を設定する機能や、来院の予約をインターネット経由で行う機能を動作させてもよい。
【0129】
患者携帯端末の患者サポートソフトウェアでは随時点眼状況、眼圧計や視野検査などの検査結果、スコアの状況、点眼薬の残量、点眼薬情報、来院予約日、対象疾患や点眼薬に関する詳細コンテンツ、過去のメッセージのやり取りなどを閲覧する事が可能である。
【0130】
各種検査結果は点眼状況やスコアの推移、来院や点眼薬の変更などのイベントなどと一緒にグラフや表などで関連性を分かりやすく表示する事が可能である。図21は検査結果とスコア、各種イベントとの関係を表すグラフの一例である。この例では上段から順番に視野検査で得られた視野感度1701、眼圧計で測定した眼圧値1702、患者サポートソフトウェアで得られたスコアの推移1703、来院日や点眼開始、点眼薬変更などのイベント1704を時系列に並べて表示している。視野感度については任意の期間における複数の測定値の近似直線(この例では一点鎖線1705)を各データ値と共に表示する事で、その期間の感度低下度合いを示し、期間毎の感度低下度合いの変化を分かりやすく表示している。眼圧値については設定された目標眼圧をグラフ上に表示(この底では水平の点線1706)し、治療の目標を明確にしている。スコアは棒グラフ1707の高さや色でアドヒアランスや治療継続に対する意欲の高さを表現してもよい。グラフ上のデータをタップすると詳細データを確認する画面に遷移してもよい。
【0131】
この例のグラフより、点眼治療を開始するとある程度眼圧が低下し、視野の進行も点眼前に比べて抑えられているが、目標眼圧に達していない事が分かる。点眼開始から2回目の来院日に点眼薬を変更し、点眼治療を正しく続けていると(高いスコア続いていることから判断できる)目標眼圧に達し次の来院時の検査で視野の進行がさらに抑えられていることが分かる。その後スコアが低下すると眼圧が高くなっている事が分かる。患者はこのグラフを確認することで、点眼治療の効果や目標、継続することの意義を理解する事ができ、さらにアドヒアランスの維持向上や継続治療に対する動機付けとなる。さらに、患者サポートソフトウェアは点眼忘れが続きスコアが低下する、あるいは眼圧などの検査値が悪化した場合には、自動的にアラートを発し患者や支援者に知らせ、改善のためのアドバイスや点眼治療継続の動機付けとなるようなメッセージを配信する事が可能である。さらに院内端末装置でもアラートを発し、担当医師が遠隔で患者を支援する事を可能とする。
【0132】
さらに、患者は随時コメントを記録する事が可能である。コメントには気になる症状や副作用、疾患や点眼薬に関する疑問や質問などが上げられる。これらのコメントは、医師・薬剤師などの医療従事者と共有することにより、次回来院時などに的確なアドバイスを受けるための材料などになり得る。また、患者サポートシステムがコメントの内容を解析し、自動で必要な知識や情報を提供することが可能となる。
【0133】
これらの機能により患者サポートソフトウェアは日常的に患者に寄り添い、点眼治療を継続する事をサポートし、アドヒアランスの維持向上を支援する事が可能となる。
【0134】
(11)院内端末装置で実行される専用ソフトウェアの動作
院内端末装置で実行される専用ソフトウェアは、医師や薬剤師などの医療従事者が患者の来院時のみではなく、日常的に患者に寄り添い患者自身で点眼治療を継続できるよう支援するように動作する。
【0135】
ここで来院時の動作の一例について説明する。患者が来院し問診などの後に、必要な各種検査(屈折検査、視力検査、眼圧測定、視野検査、眼底検査など)が実施され、その後に医師の診察が行われる。診察室において医師が対象患者を指定すると専用ソフトウェアは固定サーバから対象患者の日常の点眼状況やスコアなどを読み出し、各種データを表示することで医師は患者の日常における点眼治療状況を把握する事が可能となる。また、当日の検査結果が固定サーバに記録され、患者携帯端末や支援者携帯端末からも最新の検査結果の閲覧が可能となる。なお、図21と同じように点眼状況はやスコアの推移、来院や点眼薬の変更などのイベントなどと一緒にグラフや表などで関連性を分かりやすく表示する事も可能である。
【0136】
医師は専用ソフトウェアに表示される患者データに基づいて、患者にアドバイスを行う、あるいは必要に応じて点眼薬や点眼計画などを変更する事などが可能である。また、処方する点眼薬の点眼基本情報(点眼薬名称、対象眼(右眼、左眼、両眼)、一日の点眼回数、1回の滴下回数、点眼時間(時間帯)、処方日など)を設定し、固定サーバに記録する事ができる。
【0137】
さらに次回の来院予約を行い固定サーバに記録する。
【0138】
最後に来院ポイントが自動的に付与され、メッセージと共に患者携帯端末に配信される。メッセージは日々の点眼状況や検査結果などに基づいて患者サポートソフトウェアが自動で生成する方法、自動生成された複数のコメントを医師が選択する方法、医師が直接入力する方法などが可能である。前記メッセージは設定した支援者にも自動的に配信する事が可能である。配信メッセージは固定サーバに記録され、患者携帯端末などからいつでも確認する事ができる。
【0139】
前記点眼基本情報は、薬局の端末装置で動作する専用ソフトウェアから設定し、固定サーバに記録することも可能である。また薬局で発行される電子お薬手帳登録用のQRコード(登録商標)を患者携帯端末に搭載のカメラで読み取り、患者サポートソフトウェアを介して固定サーバに記録する事も可能である。薬局の端末装置に専用ソフトウェアが動作し担当薬局として登録されている場合、薬剤師が患者の点眼状況などのデータを閲覧する事ができ、それらに基づいて各種アドバイスなどを行う事も可能である。
【0140】
医師や薬剤師などの医療従事者は、患者が来院した場合のみでは無く、端末装置上で動作する専用ソフトウェアを介して、固定サーバに記録された患者の日々の点眼状況や眼圧などの測定結果を随時確認する事が可能である。さらに、必要に応じて患者携帯端末に医療従事者からメッセージを送ることが可能である。さらに、患者の点眼スコアや眼圧測定値に異常があった場合に専用ソフトウェアが自動的にアラートを発し医師に知らせることが可能である。これらの機能により、医療従事者は患者が来院しない間も患者の点眼治療の状況などを把握し、患者のアドヒアランスの維持向上と治療継続を的確に支援する事が可能となり、また遠隔においても病状の悪化を防ぐために患者を支援する事が可能となる。
【0141】
(12)支援者携帯端末で実行される専用ソフトウェアの動作
支援者の携帯端末で実行される専用ソフトウェアは、家族や介護者などの支援者が患者の点眼治療の継続状況などを日常的把握し、支援者自身も患者の患っている疾患に対する理解を深める事で、患者に寄り添い点眼治療を継続できるよう支援するように動作する。
【0142】
支援者は、端末装置上で動作する専用ソフトウェアを介して、固定サーバに記録された患者の日々の点眼状況や眼圧などの検査結果などを随時確認する事が可能である。さらに、必要に応じて患者と支援者との間でメッセージのやり取りが可能である。
【0143】
さらに患者が日々の点眼を実施したり、来院したりするイベント毎に患者サポートソフトウェアが支援者の携帯端末に配信する通知を受け取ることも可能である。また、対象疾患に関する知識や情報を閲覧する事も可能である。
これらの機能により、支援者は患者の点眼治療の状況などを把握し、患者のアドヒアランスの維持向上と治療継続を的確に支援する事が可能となる。
【0144】
患者サポートシステムは、患者携帯端末などに蓄積されたヘルスケア情報(ウォーキング・ランニングの距離や歩数、消費カロリーなどのアクティビティ情報、睡眠情報、体重・身長・BMIなどの身体測定データ、血圧・心拍数・血糖値など他の機器による測定データなど)などを活用して、前記点眼状況や各種検査結果など共に分析することにより、対象疾患の進行と各種データとの因果関係などを解析し、対象疾患の進行抑制などに効果的な生活習慣の提案やアドヒアランス維持向上並びに点眼治療継続のための動機付けとなるような処理を実行しても良い。また、複数患者の点眼状況や各種検査結果、並びにヘルスケア情報を固定サーバに蓄積してビッグデータを構築し、それらを活用した人工知能やディープラーニングの技術を用いてさらに精度の高い進行抑制手法の解明やアドヒアランスの維持向上、治療継続の動機付けとなる処理を構築し実行しても良い。さらに、血圧値やアクティビティ情報などの患者のヘルスケア情報は、図21のグラフに眼圧・視野などの検査結果やスコア、イベントなどと同時に表示する事も可能であり、患者自身がそのグラフやデータを確認する事で生活習慣の改善に活用してもよい。また、医師が確認する事で有効と思われる生活習慣などに対するアドバイスを行う事も可能となる。
【0145】
患者サポートシステムは、点眼薬のみでは無く血圧改善や血糖値改善などのための他の飲み薬や貼り薬、サプリメントなどの服薬情報(薬の名称、服薬時間、服薬量など)を登録し、服薬忘れを防止するためのメッセージの表示や、服薬履歴を記録して服薬状況を分析し、アドヒアランス維持向上や治療継続の動機付けとなるような患者への働きかけを行う機能を搭載してもよい。また、図21のグラフに点眼薬以外の薬やサプリメントの服薬状況やスコアを同時に表示する事も可能であり、患者自身がグラフやデータを確認する事で、点眼治療と他の飲み薬やサプリメントとの関連性を理解することや、担当医師がこれらのデータを分析して治療方針の決定や患者に対するアドバイスを行うために役立てることができる。
【0146】
以上のように、本実施の形態2は、患者宅内や介護施設に設置された前記点眼器の患者サポートシステムであって、上述の実施の形態1と同様の点眼補助具100に備わる通信手段と通信をする外部装置は登録された患者の点眼日時、点眼予定の通知、点眼行為の追跡及び履歴の記憶、患者の治療計画逸脱に対する注意などの治療サポートと、さらに記憶されたデータや点眼履歴より患者の点眼状況や治療参加に対する意欲の評価を数値化し、外部装置の表示画面や音声により提供することができる。
【0147】
また、点眼補助具100と通信接続された外部装置はインターネット上にある固定サーバやクラウドシステム及び他のインターネット端末と接続し、外部装置に記憶された数値データや画像データをインターネット上の固定サーバやクラウドシステムに保存して解析し、解析結果、点眼治療履歴、点眼状況や患者の治療意欲の評価スコアを外部装置及び他のインターネット端末にて共有し、患者及び医師や介護人などと共に患者の治療成績向上を図る。すなわち、患者の点眼状態を検出及び評価してそのデータを医師と患者が共有し、患者のアドヒアランスを向上させることができる。
【0148】
また、外部装置に搭載されたソフトウェアにより患者に伝える指示や情報として、点眼時刻のお知らせ、点眼忘れの注意喚起、一日の点眼・投薬予定、点眼履歴、受診指示、医療機関での過去のデータや履歴、医療情報などがある。また患者の治療継続の動機づけとして点眼状態、点眼継続性、医療機関のデータ、他の診断装置との連携データなどにより患者の状態や意欲などをスコア化して評価し表示する。さらにスコアを上げるための助言や画像によるインセンティブを表示して患者の治療継続意欲を向上させる。
【0149】
またさらに、外部通信手段によりスマートフォンやパソコン、タブレットPC等の外部装置と接続して患者のデータを共有・分析することにより、患者の状態を医療機関、患者及び患者の支援者が患者の治療継続状況や意志を確認して患者を支援することが可能なホームモニタリングシステムを構築できる。さらに、外部装置に搭載されたソフトウェアにより点眼・投薬など患者の日々の治療行為を支援すると共に、治療継続意欲を向上させるための助言や励ましを患者の治療参加状況に合わせて適切に提供することができる。
【0150】
すなわち、本実施の形態2に係るホームモニタリングシステムでは患者のデータや投薬履歴、薬の種類や情報、医師の指示、受診の予約、AIシステムによる今後の病状トレンドの推測、治療継続意欲向上のための定期的な助言・励ましなどを患者に提供して患者をサポートするサポートシステムを構築することができる。
【0151】
なお、本発明は、上記実施の形態の構成に限られず、発明の趣旨を変更しない範囲で種々の変形が可能である。また、本発明の目的を達成するために、本発明は、ホームモニタリングシステム及び患者サポートシステムに含まれる特徴的な構成手段をステップとする方法としたり、それらの特徴的なステップを含むプログラムとして実現することもできる。そして、そのプログラムは、ROM等に格納しておくだけでなく、USBメモリ等の記録媒体や通信ネットワークを介して流通させることもできる。
【符号の説明】
【0152】
1 点眼器
100 点眼補助具
101 エアファン
102 エアチャンバー
103 流入コントロール弁
104 エアダクト
104a 流入口
104b 排気口
104c 薬液導入孔
104d 接眼口
105 点眼容器固定アタッチメント
106 点眼容器
106a 薬液滴下口
107 トリガアーム
107a,605 押圧ロッド(点眼容器押圧機構)
108 押圧点調整アーム
109 グリップ(操作手段)
302 側面支持ガイド(支持ガイド)
303 後面支持ガイド(支持ガイド)
303a プランジャ(第二押圧手段)
305 セットプレート
309 押圧プランジャ(第一押圧手段)
310 ダブルナット(第一押圧手段)
310a ナット前(第一押圧手段)
310b ナット後(第一押圧手段)
311 スリット(第一押圧手段)
312 セットガイド溝
501 トリガアーム回転軸
606 ソレノイド(電動駆動手段)
801 スプリング逆止弁(流入コントロール弁)
1003 反射式光学センサー(左右眼検出手段)
1801a エアファン制御部(エアファン制御手段)
S1 開放空間
S ホームモニタリングシステム
図1
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