(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024020118
(43)【公開日】2024-02-14
(54)【発明の名称】波力発電装置
(51)【国際特許分類】
F03B 13/20 20060101AFI20240206BHJP
【FI】
F03B13/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022198680
(22)【出願日】2022-12-13
(31)【優先権主張番号】P 2022122691
(32)【優先日】2022-08-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2022122692
(32)【優先日】2022-08-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】596007577
【氏名又は名称】株式会社アントレックス
(71)【出願人】
【識別番号】593111738
【氏名又は名称】艫居 隆三
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】艫居 隆三
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 覚
【テーマコード(参考)】
3H074
【Fターム(参考)】
3H074AA02
3H074AA12
3H074BB09
3H074BB15
3H074CC03
(57)【要約】
【課題】海の岸から離れた領域に簡単に設置可能な波力発電装置を提供する。
【解決手段】海100の所定領域101に浮かべられた第1浮遊体15と、第1浮遊体に対して上下方向に相対移動可能な第2浮遊体85と、を備え、第2浮遊体が、上面が開放された内筒86Aを備え、第1浮遊体が、内筒に対して上下方向に相対移動可能であり上面に開口部28が形成された外筒25Aと、外筒と一緒に上下動し且つ開口部を介して外筒の内部へ延びる支持部材30と、支持部材によって支持され且つ第1浮遊体と第2浮遊体の上下方向の相対移動に連動して回転する複数のプーリ、及び、少なくとも2つのプーリに掛けまわされ且つプーリの回転に連動して回転する動力伝達ベルトを有する、内筒の内部に位置する動力伝達装置35と、を備え、プーリの回転に連動して発電機が発電する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
海の所定領域に浮かべられ、前記所定領域において上下動する第1浮遊体と、
前記第1浮遊体に対して上下方向に相対移動可能に前記所定領域に浮かべられた第2浮遊体と、
前記第1浮遊体と前記第2浮遊体の上下方向の相対移動に連動して発電する発電機と、
を備え、
前記第2浮遊体が、上面が開放された内筒を備え、
前記第1浮遊体が、
前記内筒の外側に位置し、前記内筒に対して上下方向に相対移動可能であり、上面に開口部が形成された外筒と、
前記外筒と一緒に上下動し、且つ、前記開口部を介して前記外筒の上方から前記外筒の内部へ延びる支持部材と、
前記支持部材によって支持され且つ前記第1浮遊体と前記第2浮遊体の上下方向の相対移動に連動して回転する複数のプーリ、及び、少なくとも2つの前記プーリに掛けまわされ且つ前記プーリの回転に連動して回転する環状の動力伝達ベルトを有する、前記内筒の内部に位置する動力伝達装置と、
を備え、
前記発電機が、前記プーリの回転力を利用して発電する波力発電装置。
【請求項2】
前記第1浮遊体が、前記所定領域の平均水面と一緒に上下動し、且つ、前記所定領域の底から離れた位置に位置する錘を備え、
前記第2浮遊体が、前記所定領域の水面と一緒に上下動する請求項1記載の波力発電装置。
【請求項3】
前記第1浮遊体が、
前記所定領域に浮かぶ浮遊物と、
前記錘と、
前記浮遊物と前記錘とを接続し可撓性を有する連結部材と、
を備え、
前記連結部材が緊張状態にあるときの前記第1浮遊体の重心が前記錘の一部に位置する請求項2に記載の波力発電装置。
【請求項4】
前記プーリ及び前記動力伝達ベルトが同一平面上に位置する請求項1又は請求項2に記載の波力発電装置。
【請求項5】
前記動力伝達ベルトが、上下方向に延びる一対の上下方向延長部を備え、
前記外筒の前記上面に、前記開口部を覆う蓋部材が設けられ、
前記蓋部材に、一対の前記上下方向延長部がそれぞれ貫通する2つの貫通孔が設けられた請求項1又は請求項2に記載の波力発電装置。
【請求項6】
前記蓋部材が弾性材料によって構成され、
前記貫通孔の内周面が前記上下方向延長部に接触する請求項5に記載の波力発電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば海の波を利用して発電する波力発電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、アンカーを利用して海底に設置された支持部と、支持部に支持され波の力により上下動する可動部と、可動部の動きに連動して発電する発電機と、を有する波力発電装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1の波力発電装置は、アンカーを利用して支持部を海底に設置する。そのため波力発電装置の設置作業が容易ではない。
【0005】
本発明は、海の岸から離れた領域に簡単に設置可能な波力発電装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の波力発電装置は、海の所定領域に浮かべられ、前記所定領域において上下動する第1浮遊体と、前記第1浮遊体に対して上下方向に相対移動可能に前記所定領域に浮かべられた第2浮遊体と、前記第1浮遊体と前記第2浮遊体の上下方向の相対移動に連動して発電する発電機と、を備え、前記第2浮遊体が、上面が開放された内筒を備え、前記第1浮遊体が、前記内筒の外側に位置し、前記内筒に対して上下方向に相対移動可能であり、上面に開口部が形成された外筒と、前記外筒と一緒に上下動し、且つ、前記開口部を介して前記外筒の上方から前記外筒の内部へ延びる支持部材と、前記支持部材によって支持され且つ前記第1浮遊体と前記第2浮遊体の上下方向の相対移動に連動して回転する複数のプーリ、及び、少なくとも2つの前記プーリに掛けまわされ且つ前記プーリの回転に連動して回転する環状の動力伝達ベルトを有する、前記内筒の内部に位置する動力伝達装置と、を備え、前記発電機が、前記プーリの回転力を利用して発電する。
【0007】
第1浮遊体と第2浮遊体は、波の力により上下方向に相対移動する。さらに第1浮遊体と第2浮遊体の上下方向の相対移動に連動して発電機が発電する。
【0008】
請求項1に記載の波力発電装置は、アンカーを利用して海底に設置されない。そのため請求項1に記載の波力発電装置は、アンカーを利用して海底に設置される場合と比べて、海の岸から離れた領域に設置するのが簡単である。
【0009】
請求項2に記載の波力発電装置は、請求項1において、前記第1浮遊体が、前記所定領域の平均水面と一緒に上下動し、且つ、前記所定領域の底から離れた位置に位置する錘を備え、前記第2浮遊体が、前記所定領域の水面と一緒に上下動する。
【0010】
なお「平均水面」とは、所定領域に含まれる全ての波の高さの平均値を通る仮想面のことである。また「第1浮遊体が所定領域の平均水面と一緒に上下動する」とは、第1浮遊体が所定領域の平均水面と完全に一緒に上下動すること、及び、第1浮遊体が所定領域の平均水面と実質的に一緒に上下動すること、の両方の意味を含む。同様に、「第2浮遊体が所定領域の水面と一緒に上下動する」とは、第2浮遊体が所定領域の水面と完全に一緒に上下動すること、及び、第2浮遊体が所定領域の水面と実質的に一緒に上下動すること、の両方の意味を含む。
【0011】
請求項3に記載の波力発電装置は、請求項2において、前記第1浮遊体が、前記所定領域に浮かぶ浮遊物と、前記錘と、前記浮遊物と前記錘とを接続し可撓性を有する連結部材と、を備え、前記連結部材が緊張状態にあるときの前記第1浮遊体の重心が前記錘の一部に位置する。
【0012】
請求項4に記載の波力発電装置は、請求項1又は請求項2において、前記プーリ及び前記動力伝達ベルトが同一平面上に位置する。
【0013】
請求項5に記載の波力発電装置は、請求項1又は請求項2において、前記動力伝達ベルトが、上下方向に延びる一対の上下方向延長部を備え、前記外筒の前記上面に、前記開口部を覆う蓋部材が設けられ、前記蓋部材に、一対の前記上下方向延長部がそれぞれ貫通する2つの貫通孔が設けられた。
【0014】
請求項6に記載の波力発電装置は、請求項5において、前記蓋部材が弾性材料によって構成され、前記貫通孔の内周面が前記上下方向延長部に接触する。
【発明の効果】
【0015】
本発明の波力発電装置は、海の岸から離れた領域に簡単に設置可能である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】実施形態に係る波力発電装置の正面図である。
【
図2】波力発電装置の連結部材及び錘を省略して示す斜視図である。
【
図3】波によって内筒が外筒に対して上方へ相対移動したときの
図2の3-3矢線に沿う模式的な断面図である。
【
図8】第2部材の本体部の後部、第1環状ベルトの一部、及び固定部材の斜視図である。
【
図9】第2部材の本体部の後部、第1環状ベルトの一部、及び固定部材の分解斜視図である。
【
図10】第1部材及び第2部材が初期位置に位置するときの第1プーリ、第2プーリ、第1環状ベルト、第2環状ベルト及び固定部材の模式的な側面図である。
【
図11】波によって第2部材が第1部材に対して初期位置から上方へ相対移動したときの
図10と同様の側面図である。
【
図12】波によって第2部材が第1部材に対して初期位置から下方へ相対移動したときの
図10と同様の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、実施形態に係る波力発電装置10について添付図面を参照しながら説明する。なお、以下の説明では、図中に適宜示された矢印FRを前方とし、矢印UPを上方とし、矢印LHを左方とする。
【0018】
図1及び
図2に示されるように波力発電装置10は、第1浮遊体15、第2浮遊体85、第1回転軸90、第2回転軸91、第1発電機(発電機)92及び第2発電機(発電機)93を備える。
【0019】
第1浮遊体15は、固定部材(浮遊物)17、フロート22、外筒25A、25B、支持部材30、軸受33、動力伝達装置35の一部、連結部材97及び錘98を備える。この動力伝達装置35の一部とは、動力伝達装置35の特定部材以外の部材である。特定部材とは、後述する第1環状ベルト57A、第2環状ベルト57B、及び第2部材72である。
【0020】
固定部材17は、左右方向に沿って延びる長方形の枠体18と、前後方向に沿って延びる2本の棒状部材19と、を備える。各棒状部材19の一部が枠体18の中間部の下面に固定されている。
【0021】
固定部材17には複数のフロート22が固定されている。各フロート22は中空体であり、各フロート22の内部空間は空気によって満たされている。
【0022】
枠体18の内側には2つの外筒25A、25Bが設けられている。外筒25A、25Bは、上部26と、上部26の外周部から下方に延びる筒状部27と、を備える。上部26は円形であり、筒状部27は上部26の中心軸を中心とする円筒形状である。さらに上部26の中心部には開口部28が設けられている。筒状部27の外周面の一部が枠体18の内面に固定されている。
【0023】
略U字形をなす支持部材30は、略水平な第1構成部31と、第1構成部31の両端から下方に延びる一対の第2構成部32と、第1構成部31から下方に延びる前後一対の支持部34と、を備える。各第2構成部32の下端部が枠体18の上面に固定され且つ各第2構成部32の下部が筒状部27の外周面に固定されている。第1構成部31は上部26より上方に位置する。左右の第1構成部31の上面には、互いに同軸をなす軸受33がそれぞれ固定されている。
【0024】
図3に示されたように、左右の内筒86Aの内部空間に動力伝達装置35がそれぞれ
図5、
図6に示された向きで設けられている。
【0025】
図4~
図9に示されたように動力伝達装置35は、第1部材36、第1回転軸48A、48B、ワンウェイギヤ49A、49B、第1プーリ(プーリ)50A、50B、第2回転軸52A、52B、軸受け53A、53B、第2プーリ(プーリ)54A、54B、第1環状ベルト57A、第2環状ベルト57B、カバー板59、第3プーリ62A、第3プーリ62B、第4プーリ66、第5プーリ66X、第3環状ベルト70、及び第2部材72を備える。
【0026】
第1部材36は、基部37、支柱部40、及びギヤ支持部材44を備える。
【0027】
円盤状の基部37の中心部に、基部37を上下方向に貫通する案内孔39が形成されている。
図7に示されたように案内孔39の断面形状は略長方形である。即ち、案内孔39の断面形状は非円形である。
【0028】
基部37の上面には、上下方向に延びる一対の支柱部40の下端部が固定されている。支柱部40の上端部は、当該上端部より下方に位置する部位より前後寸法が大きい支持部41によって構成されている。さらに前後の支持部41の上面には支持溝43が形成されている。
【0029】
図5及び
図6に示されたように、ギヤ支持部材44は、被支持部45、下方延長部46、及びスペーサ47を有する。被支持部45の正面形状は略三角形であり、下方延長部46の正面形状は略長方形である。下方延長部46は被支持部45の下端から下方に延びている。下方延長部46の前後寸法は、被支持部45の下端部の前後寸法より小さい。被支持部45の下端部の前後両端部が、前後の支持溝43にそれぞれ挿入されている。さらに固定手段(図示省略)によって、被支持部45の下端部の前後両端部が、前後の支持部41に固定されている。下方延長部46は前後の支柱部40の間に位置している。さらに
図5に示されたように、下方延長部46の左側面には直方体形状のスペーサ47の右側面が固定されている。
【0030】
図5に示されたように、被支持部45を前後一対の第1回転軸48A、48Bが左右方向に貫通しており、下方延長部46の下端部を前後一対の第2回転軸52A、52Bが左右方向に貫通している。第1回転軸48A、48Bは被支持部45に対して、自身の軸線回りに回転可能である。第2回転軸52A、52Bは下方延長部46に固定されている。さらに後側の第2回転軸52Aは後側の第1回転軸48Aの直下に位置し、前側の第2回転軸52Bは前側の第1回転軸48Bの直下に位置する。
【0031】
図5に示されたように、第1回転軸48A、48Bの左側部にはワンウェイギヤ49A、49Bを介して第1プーリ50A、50Bがそれぞれ回転可能に支持されている。第1プーリ50A、50Bの外周面全周には溝51A、51Bが形成されており、溝51A、51Bの底面には多数の歯部(図示省略)が周方向に並べて設けられている。
図5及び
図10~
図12に示されたように波力発電装置10を左側から見たときに、後側のワンウェイギヤ49Aは、第1プーリ50Aが第1回転軸48Aに対して時計方向(正方向)(第1回転方向)Dcwに相対回転するのを規制し、第1プーリ50Aが第1回転軸48Aに対して反時計方向(逆方向)Dccに相対回転するのを許容する。即ち、第1プーリ50Aが時計方向Dcwに回転するとき、第1回転軸48Aは第1プーリ50Aと一緒に時計方向Dcwに回転する。また、前側のワンウェイギヤ49Bは、第1プーリ50Bが第1回転軸48Bに対して時計方向(正方向)(第2回転方向)Dcwに相対回転するのを規制し、第1プーリ50Bが第1回転軸48Bに対して反時計方向(逆方向)Dccに相対回転するのを許容する。即ち、第1プーリ50Bが時計方向Dcwに回転するとき、第1回転軸48Bは第1プーリ50Bと一緒に時計方向Dcwに回転する。
【0032】
図5に示されたように、第2回転軸52A、52Bの左側部には軸受け53A、53Bを介して第2プーリ54A、54Bがそれぞれ回転可能に支持されている。そのため、波力発電装置10を左側から見たときに、第2プーリ54Aは第2回転軸52Aに対して時計方向及び反時計方向に回転可能であり、第2プーリ54Bは第2回転軸52Bに対して時計方向及び反時計方向に回転可能である。第2プーリ54A、54Bの外周面全周には溝55A、55Bが形成されており、溝55A、55Bの底面には多数の歯部56A、56Bが周方向に並べて設けられている。
【0033】
第1プーリ50A及び第2プーリ54Aにはゴム製の第1環状ベルト57Aが掛け回されており、第1プーリ50B及び第2プーリ54Bにはゴム製の第2環状ベルト57Bが掛け回されている。第1環状ベルト57A及び第2環状ベルト57Bの内周面全体には、多数の溝58が等間隔で形成されている。第1環状ベルト57Aの上端部の溝58に第1プーリ50Aの上記歯部が噛み合っており、第1環状ベルト57Aの下端部の溝58に第2プーリ54Aの歯部56Aが噛み合っている。同様に、第2環状ベルト57Bの上端部の溝58に第1プーリ50Bの上記歯部が噛み合っており、第2環状ベルト57Bの下端部の溝58に第2プーリ54Bの歯部56Bが噛み合っている。第1環状ベルト57A及び第2環状ベルト57Bは常に緊張状態にある。即ち、第1環状ベルト57A及び第2環状ベルト57Bは常に自由状態から延びた状態にある。さらに
図10~
図12に示されたように、第1環状ベルト57Aの後部57A-1及び前部57A-2は実質的に上下方向と平行な直線形状である。同様に、第2環状ベルト57Bの前部57B-1及び後部57B-2は実質的に上下方向と平行な直線形状である。さらに第1プーリ50A、50B、第2プーリ54A、54B、第1環状ベルト57A及び第2環状ベルト57Bは、左右方向に対して直交する一つの仮想平面であり且つギヤ支持部材44の左側に位置する第1平面(図示省略)上に位置する。
【0034】
図5に示されたカバー板59の正面形状は略長方形である。カバー板59の寸法は、前後の支持部41の間隔より小さく、カバー板59の上下寸法は第1回転軸48Aと第2回転軸52Aとの間の上下方向距離と略同一である。カバー板59の四隅には軸受孔60が形成されている。上側の前後の軸受孔60に第1回転軸48A、48Bがそれぞれ挿入され、下側の前後の軸受孔60に第2回転軸52A、52Bがそれぞれ挿入されている。さらにスペーサ47の左側面にカバー板59の右側面の中央部が固定されている。スペーサ47の左側面は、第1プーリ50A、50Bの右側面及び第2プーリ54A、54Bの右側面より左側に位置する。そのためカバー板59の右側面は第1プーリ50A、50Bの左側面及び第2プーリ54A、54Bの左側面から左側に離れる。
【0035】
図5及び
図6に示されたように、被支持部45の右側面の上部には右方に向かって延びる回転支持軸61が設けられている。
【0036】
図5及び
図6に示されたように、第1回転軸48A、48Bの右側部には第3プーリ62A、62Bがそれぞれ設けられている。第3プーリ62A、62Bの中心部には中心孔63A、63Bが設けられている。第3プーリ62A、62Bの外周面全周には溝64A、64Bが形成されており、溝64A、64Bの底面には多数の歯部65A、65Bが周方向に並べて設けられている。第3プーリ62Aの中心孔63Aに第1回転軸48Aの右側部が挿入され且つ第3プーリ62Aが第1回転軸48Aに固定されている。同様に、第3プーリ62Bの中心孔63Bに第1回転軸48Bの右側部が挿入され且つ第3プーリ62Bが第1回転軸48Bに固定されている。
【0037】
図6に示されたように、回転支持軸61には第4プーリ66が支持されている。第4プーリ66の中心部には中心孔67(
図5参照)が設けられている。第4プーリ66の外周面全周には溝68が形成されており、溝68の底面には多数の歯部69が周方向に並べて設けられている。第4プーリ66の中心孔67に回転支持軸61が挿入され且つ第4プーリ66が回転支持軸61に固定されている。
【0038】
さらに
図5及び
図6に示されたように、回転支持軸61の右端部には、第4プーリ66の右側に位置し且つ第4プーリ66と同軸をなす第5プーリ66Xの中心部が固定されている。第5プーリ66Xの外周面全周には溝71Xが設けられている。
【0039】
第3プーリ62A、62B及び第4プーリ66にはゴム製の第3環状ベルト70が掛け回されている。第3環状ベルト70の内周面全体には、多数の溝71が等間隔で形成されている。第3環状ベルト70の溝71に、第3プーリ62Aの歯部65A、第3プーリ62Bの歯部65B、及び第4プーリ66の歯部69がそれぞれ噛み合っている。第3環状ベルト70は常に緊張状態にある。さらに第3プーリ62A、62B、第4プーリ66及び第3環状ベルト70は、左右方向に対して直交する一つの仮想平面であり且つギヤ支持部材44の右側に位置する第2平面(図示省略)上に位置する。
【0040】
図5に示されたように、第2部材72は、本体部73、固定部材75A、75B、ナット80及びボルト81を備える。
【0041】
本体部73は、底部が閉塞され且つ上面のみが開放された筒状体である。本体部73の上下方向に直交する断面で切断した断面形状は、案内孔39と略同一である。より詳細には、本体部73の断面形状は案内孔39の断面形状より僅かに小さい。即ち、本体部73の断面形状は非円形形状である。
【0042】
図4に示されたように、本体部73の上部は、第1部材36の基部37の下方から案内孔39を上方に貫通している。即ち、
図5に示されたように、下方延長部46の一部、第2プーリ54A、54B、並びに、第1環状ベルト57A及び第2環状ベルト57Bの一部が、常に本体部73の内部空間に位置する。案内孔39及び本体部73の断面形状は共に非円形形状である。そのため、案内孔39と本体部73は両者の軸線方向(上下方向)(直線方向)を中心とする周方向に相対回転不能である。一方、案内孔39と本体部73は両者の軸線方向に沿って相対移動可能である。
【0043】
さらに
図5、
図6、
図8及び
図9に示されたように、固定部材75A、75B及びボルト81によって、第1環状ベルト57Aのみ57A-1及び第2環状ベルト57Bの前部57B-1が本体部73に固定されている。
【0044】
図9に示されたように本体部73の後部74Aの上部には左右一対の貫通孔74A1が形成されている。固定部材75Aは、第1支持板76A、第2支持板78A、及びナット80を有する。第1支持板76A及び第2支持板78Aは共に略直方体状の板材である。第1支持板76Aには左右一対の貫通孔77が形成され、第2支持板78Aには左右一対の取付孔79が形成されている。貫通孔77の断面形状は円形であり、取付孔79の断面形状は六角形である。各取付孔79には断面形状が六角形のナット80が埋め込まれている。即ち、第2支持板78Aにナット80が固定されている。各貫通孔74A1と各貫通孔77が互いに同軸をなすように、第1支持板76Aの後面が後部74Aの内面(前面)に接触しており、後部74Aの外側(後方)から貫通孔74A1に挿入されたボルト81が第1支持板76Aの貫通孔77を前方に貫通する。さらに第1支持板76Aと、第1支持板76Aの前方に位置する第2支持板78Aとによって第1環状ベルト57Aの後部57A-1の一部が挟まれる。さらに第1支持板76Aと第2支持板78Aによって後部57A-1が強固に挟まれた状態で、各ボルト81がナット80に螺合され、且つ、各ボルト81の頭部82が後部74Aの外面(後面)に圧接する。即ち、固定部材75Aによって後部57A-1の一部が後部74Aに固定されている。
【0045】
図6~
図8に示されたように、第1支持板76B、第2支持板78B、ナット80(
図6~
図8において図示省略)及び一対のボルト81を有する固定部材75Bが、本体部73の前部74Bの上端部に固定されている。即ち、固定部材75Bによって前部57B-1の一部が前部74Bに固定されている。
【0046】
図3に示されたように、第2部材72の底面が内筒86Aの内部空間の底面に固定されている。さらに支持部材30の各支持部34の下端部が被支持部45に固定されている。
【0047】
さらに
図1に示されたように、固定部材17には、複数本の連結部材97の上端部がそれぞれ固定され、各連結部材97の下端部に錘98が固定されている。連結部材97は紐やワイヤーのような可撓性を有する材料により構成されている。各連結部材97が直線状態(緊張状態)にあるときの固定部材17と錘98との間の上下方向は距離DL(
図1参照)である。小型の波力発電装置10が海100で使用される場合、距離DLは例えば1m~5mに設定され、大型の波力発電装置10が海100で使用される場合、距離DLは例えば3m~20mに設定される。また小型の波力発電装置10に設けられる錘98の質量は、例えば3kg~50kgであり、大型の波力発電装置10に設けられる錘98の質量は、例えば100kg~500kgである。各連結部材97が直線状態(緊張状態)にあるときの第1浮遊体15全体の重心は錘98の一部に位置する。また、第1浮遊体15全体の比重は、海水の比重より小さい第1比重である。
【0048】
波力発電装置10は左右一対の第2浮遊体85を備える。
図3に示されるように、左側の第2浮遊体85は、動力伝達装置35の特定部材、内筒86A、ピストンリング89を備える。同様に、右側の第2浮遊体85は、動力伝達装置35の特定部材、内筒86B及びピストンリング89を備える。内筒86A、86Bは、底部87と、底部87の外周部から上方に延びる筒状部88と、を備える。底部87は円形であり、筒状部88は底部87の中心軸を中心とする円筒形状である。筒状部88の外径は筒状部27の内径より小さい。
【0049】
図3に示されるように、内筒86A、86Bは対応する外筒25A、25Bの下端開口から外筒25A、25Bの内部に挿入されている。なお、図示は省略されているが、外筒25Aと内筒86Aとの間には、内筒86Aの上端が外筒25Aの下端より下方へ移動するのを規制し、且つ、内筒86Aの上端が外筒25Aの上部26に接触するのを規制するストッパ機構が設けられている。外筒25Bと内筒86Bとの間にも同様のストッパ機構が設けられている。
【0050】
さらに筒状部27の内周面と筒状部88の外周面との間には環状のクリアランスが形成されており、筒状部88の外周面に固定された複数のピストンリング89が筒状部27の内周面とスライド可能に接触している。そのため、内筒86A、86Bは対応する外筒25A、25Bに対して上下方向に相対移動可能である。さらにピストンリング89によって、外筒25A、25Bの下端と内筒86A、86Bの筒状部88との間から上記クリアランスに進入した海水が、内筒86A、86Bの上縁部を乗り越えて、外筒25A、25B及び内筒86A、86Bの内部空間に進入することが防止されている。
【0051】
第2浮遊体85の比重は、海水の比重より小さく且つ第1比重より小さい第2比重である。
【0052】
図2に示されたように、左側の支持部材30に設けられた軸受33によって左右方向に延びる第1回転軸90が回転可能に支持され、右側の支持部材30に設けられた軸受33によって左右方向に延びる第2回転軸91が回転可能に支持されている。第1回転軸90及び第2回転軸91は互いに同軸をなす。さらに第1回転軸90と第2回転軸91の対向する端部同士が、回転接続機能(図示省略)によって相対回転可能に接続されている。さらに図示は省略されているが、第1回転軸90の左端部及び第2回転軸91の右端部には、それぞれプーリが設けられている。
【0053】
これらのプーリには、
図1~
図3に記載された環状ベルト(動力伝達ベルト)95が掛けまわされている。ゴム製である環状ベルト95の内面には多数のV字溝が、環状ベルト95の延長方向に並べて形成されている。左側の環状ベルト95の一部のV字溝が第1回転軸90のプーリと噛み合っており、右側の環状ベルト95の一部のV字溝が第2回転軸91のプーリと噛み合っている。さらに
図5及び
図6に示されたように、左右の環状ベルト95が対応する第5プーリ66Xに掛けまわされ、環状ベルト95のV字溝が対応する第5プーリ66Xの溝71Xと噛み合っている。左右の環状ベルト95は常に緊張状態となる。さらに左右の環状ベルト95は、共に実質的に上下方向に延びる一対の上下方向延長部95A、95Bを有する。
【0054】
さらに固定部材17に固定され且つ固定部材17から上方に延びる発電機支持部材(図示省略)によって、
図1及び
図2に示された第1発電機92及び第2発電機93が支持されている。さらに第1回転軸90が第1発電機92を回転可能に貫通し、第2回転軸91が第2発電機93を回転可能に貫通している。波力発電装置10を左側から見たときに、第1回転軸90が時計方向B1(
図2参照)に回転するとき、第1発電機92は第1回転軸90の回転力を利用して発電する。第2回転軸91が時計方向B1に回転するとき、第2発電機93は第2回転軸91の回転力を利用して発電する。なお、第1回転軸90が反時計方向に回転するとき第1発電機92は発電せず、第2回転軸91が反時計方向に回転するとき第2発電機93は発電しない。
【0055】
次に、実施形態の作用及び効果を説明する。
【0056】
例えば波力発電装置10は、
図1に示されるように海100の岸(図示省略)から遠く離れた所定領域101に設置される。上述のように第1浮遊体15の比重は海水の比重より小さい第1比重である。そのため波力発電装置10を所定領域101に設置すると、第1浮遊体15は所定領域101に対して浮かぶ。より詳細には、各フロート22が発生する浮力によって、固定部材17、フロート22、外筒25A、25B、支持部材30、及び動力伝達装置35の上記一部が所定領域101に対して浮かぶ。一方、錘98は海100の底100Bより上方の海中に位置し、各連結部材97が緊張状態(直線状態)になる。重心を含み且つ重量が大きい錘98が水面102より下方の流体(海水)の影響を受ける。錘98の周囲の流体(海水)の動きは、波103(水面102)の動きより小さくなり易い。そして海100の底100Bから上方に離れ且つ動きが小さい流体の影響を受ける錘98が、緊張状態にある連結部材97を介して固定部材17に力を及ぼすため、固定部材17及び外筒25A、25Bは実質的に平均水面102Aと一緒に上下動する。この錘98の働きにより、平均水面102Aと錘98の下面との間の上下方向の距離Dpが、波103の高さに拘わらず略一定に維持される。本明細書において「平均水面」とは、その領域(所定領域101)に含まれる全ての波103の高さの平均値を通る仮想面のことである。
【0057】
また、第2浮遊体85の比重は海水の比重より小さい第2比重である。そのため第2浮遊体85も所定領域101に対して浮かぶ。第2浮遊体85は水面102と一緒に上下動する。
【0058】
ここで
図1に示されるように、所定領域101に所定の大きさの波103が発生している場合を想定する。このとき外筒25A、25B及び第1部材36は平均水面102Aと一緒に上下動する一方で、内筒86A、86B及び第2部材72は水面102と一緒に移動する。そのため、波103の影響により、対をなす外筒25A、25B及び内筒86A、86Bが上下方向に相対移動する。なお外筒25A、25Bは平均水面102Aと一緒に上下動し且つ固定部材17によって連結されているので、外筒25A、25Bはほぼ同じ態様で上下動する。一方、内筒86Aと内筒86Bは、所定の時刻においてほぼ同じ動きをする場合がある。例えば、内筒86Aと内筒86Bが同時に同じ速さで上昇する場合がある。また、内筒86Aと内筒86Bが所定の時刻において全く異なる動きをする場合がある。例えば、内筒86Aが上昇する一方で、内筒86Bが下降する場合がある。
【0059】
なお、外筒25A、25Bが平均水面102Aと一緒に上下動するとは、外筒25A、25Bが平均水面102Aと完全に一緒に上下動すること、及び、外筒25A、25Bが平均水面102Aと実質的に一緒に上下動すること、の両方の意味を含む。同様に、内筒86A、86Bが水面102と一緒に上下動するとは、内筒86A、86Bが水面102と完全に一緒に上下動すること、及び、内筒86A、86Bが水面102と実質的に一緒に上下動すること、の両方の意味を含む。
【0060】
図10に示されたように、後部57A-1の上下方向の中心部に固定部材75Aが位置し且つ前部57B-1の上下方向の中心部に固定部材75Bが位置するときの第1部材36と第2部材72の相対位置を初期位置と定義する。ここで、第1部材36と第2部材72が初期位置にある場合に、波103の影響により、内筒86A、86B及び第2部材72が外筒25A、25B及び第1部材36に対して上方に相対移動した場合を想定する。これにより固定部材75Aが第1プーリ50Aに接近し且つ固定部材75Bが第1プーリ50Bに接近する。第1部材36の第2部材72に対する相対位置が
図11に示された位置になったときに、上記ストッパ機構の働きにより、内筒86A、86B及び第2部材72は外筒25A、25B及び第1部材36に対して、これ以上は上方に相対移動できなくなる。
【0061】
さらに、このように第2部材72が第1部材36に対して上方に相対移動するとき、第1環状ベルト57Aが
図10、11の矢印DA1方向に移動し且つ第2環状ベルト57Bが矢印DB1方向に移動する。そのため第1プーリ50Aが時計方向Dcwに回転し且つ第1プーリ50Bが反時計方向Dccに回転する。そのためワンウェイギヤ49Aの働きにより、第1回転軸48Aが第1プーリ50Aと一緒に時計方向Dcwに回転する。その一方で、ワンウェイギヤ49Bの働きにより、第1プーリ50Bの反時計方向Dccへの回転力は第1回転軸48Bに伝達されない。そのため第1回転軸48Aに固定された第3プーリ62Aが時計方向Dcw(
図6参照)に回転する。そのため第3プーリ62Aに掛けまわされている第3環状ベルト70が矢印D-1方向に移動する。そのため、第3環状ベルト70と連係している第4プーリ66及び第3プーリ62Bが時計方向Dcwに回転する。そのため左側の動力伝達装置35の第5プーリ66Xが第4プーリ66と一緒に時計方向Dcwに回転する。そのため左右の環状ベルト95が
図3の時計方向B1に回転するので、第1回転軸90及び第2回転軸91が時計方向B1に回転する。従って、第1発電機92及び第2発電機93が発電する。
【0062】
次に、第1部材36と第2部材72が初期位置にある場合に、波103の影響により、内筒86A、86B及び第2部材72が外筒25A、25B及び第1部材36に対して下方に相対移動した場合を想定する。これにより固定部材75Aが第2プーリ54Aに接近し且つ固定部材75Bが第2プーリ54Bに接近する。第1部材36の第2部材72に対する相対位置が
図12に示された位置になったときに、固定部材75A(第1支持板76A及び第2支持板78A)が第2プーリ54Aの上端に接触し且つ固定部材75B(第1支持板76B及び第2支持板78B)が第2プーリ54Bの上端に接触する。そのため、内筒86A、86B及び第2部材72は外筒25A、25B及び第1部材36に対して、これ以上は下方に相対移動できなくなる。
【0063】
さらに第2部材72が第1部材36に対して下方に相対移動するとき、第1環状ベルト57Aが
図10、
図12の矢印DA2方向に移動し且つ第2環状ベルト57Bが矢印DB2方向に移動する。そのため第1プーリ50Aが反時計方向Dccに回転し且つ第1プーリ50Bが時計方向Dcwに回転する。そのためワンウェイギヤ49Bの働きにより、第1回転軸48Bが第1プーリ50Bと一緒に時計方向Dcwに回転する。その一方で、ワンウェイギヤ49Aの働きにより、第1プーリ50Aの反時計方向Dccへの回転力は第1回転軸48Aに伝達されない。そのため第1回転軸48Bに固定された第3プーリ62Bが時計方向Dcw(
図6参照)に回転する。そのため第3プーリ62Bに掛けまわされている第3環状ベルト70が矢印D-1方向に移動する。そのため、第3環状ベルト70と連係している第4プーリ66及び第3プーリ62Aが時計方向Dcwに回転する。そのため右側の動力伝達装置35の第5プーリ66Xが第4プーリ66と一緒に時計方向Dcwに回転する。そのため左右の環状ベルト95が
図3の時計方向B1に回転するので、第1発電機92及び第2発電機93が発電する。
【0064】
このように本実施形態では、波103の影響により、内筒86A、86Bが外筒25A、25Bに対して上方と下方のいずれに相対移動する場合も、第1発電機92及び発電機93が発電する。さらに、外筒25A、25Bは平均水面102Aと一緒に上下動する一方で、内筒86A、86Bは水面102と一緒に上下動する。そのため、波103が大きい場合も小さい場合も、波103の力によって外筒25A、25B及び第1部材36と内筒86A、86B及び第2部材72を確実に上下方向に相対移動させられる。従って、第1発電機92及び第2発電機93は、波103の力を利用して効率よく発電可能である。
【0065】
さらに波力発電装置10は、アンカーを利用して海100の底100Bに設置されない。そのためアンカーを利用して底100Bに設置される波力発電装置と比べて、本実施形態の波力発電装置10は海100の岸から離れた所定領域101に設置するのが簡単である。
【0066】
さらに第1浮遊体15が外筒25A、25Bより下方に位置し且つ底100Bから上方に離れた位置に位置する錘98を備え、連結部材97が緊張状態にあるときに第1浮遊体15全体の重心が錘98の一部に位置する。従って、第1浮遊体15が錘98を備えない場合と比べて、第1浮遊体15全体の重心をより下方に位置させることが可能になる。即ち、第1浮遊体15の重心の周辺の部位が海水から受ける力を、錘98を備えない場合よりも小さくできる。そのため、錘98を備えない場合と比べて、本実施形態の外筒25A、25Bは平均水面102Aと一緒に上下動し易い。
【0067】
さらに波力発電装置10が外筒25A、25Bを連結する枠体18を備える。そのため、枠体18を具備しない場合と比べて、外筒25A、25Bの軸線は鉛直方向と平行になり易い。即ち、枠体18を具備しない場合と比べて、外筒25A、25B及び内筒86A、86Bは波103の力によって効率よく上下方向に相対移動できる。従って、枠体18を具備しない場合と比べて、波力発電装置10は効率よく発電できる。
【0068】
さらに連結部材97が可撓性を有する。そのため連結部材97を金属棒によって構成した場合に比べて、非使用状態にある波力発電装置10の全長を小さくできる。例えば、波力発電装置10を所定領域101へ運ぶための船(図示省略)の甲板上に置かれた波力発電装置10の連結部材97を折り畳むことにより、波力発電装置10の全長を、連結部材97を金属棒によって構成した場合と比べて小さくできる。
【0069】
例えば、支持部材30を省略し、筒状部27の径方向に延びる少なくとも一つの支持部材94A(
図3参照)の外側端部を筒状部27の内周面に固定し、支持部材94Aの内側端部を第1部材36に固定してもよい。この場合、筒状部88に、支持部材94Aと同数の上下方向に長い貫通孔(長孔)94Bが形成され、各支持部材94Aが対応する貫通孔94Bを、上下方向に相対移動可能に貫通する。このような構造の波力発電装置も、波103の力によって、外筒25A、25Bと内筒86A、86Bを上下方向に相対移動させることが可能である。しかしながらこの場合は、外筒25A、25Bの下端と内筒86A、86Bの筒状部88との間から上記クリアランスに進入した海水が、これらの貫通孔94Bを通って内筒86A、86Bの内部空間に進入し易い。即ち、海水が動力伝達装置35に付着し易い。動力伝達装置35の一部の構成部材は金属によって構成される可能性がある。そのため海水が動力伝達装置35の金属製の各構成部材に付着すると、これらの構成部材が錆びてしまい動力伝達装置35の動作が不円滑になる。
【0070】
これに対して本実施形態では、外筒25A、25B及び内筒86A、86Bの内部空間に位置する動力伝達装置35が支持部材30によって上方から支持されている。換言すると、内筒86A、86Bの筒状部88に貫通孔を設けることなく、動力伝達装置35を外筒25A、25B及び内筒86A、86Bの内部空間に位置させている。そのため、本実施形態の波力発電装置10の外筒25A、25Bの下端と内筒86A、86Bの筒状部88との間から上記クリアランスに海水が進入しても、この海水が動力伝達装置35に付着するおそれは小さい。
【0071】
以上、本発明を実施形態に基づいて説明したが、本発明はその要旨を逸脱しない範囲内において、適宜設計変更可能である。
【0072】
支持部材30の形状が、実施形態の形状と異なっていてもよい。即ち、支持部材30は、外筒25A、25Bの開口部28を貫通し且つ第1部材36を支持できる形状であれば、いかなる形状であってもよい。
【0073】
被支持部45に設けられるプーリの数は4つでなくてもよい。例えば、被支持部45に6個のプーリを設けて、第1環状ベルト57A及び第2環状ベルト57Bを3個のプーリにそれぞれ掛けまわしてもよい。
【0074】
第1部材36に第1環状ベルト57A及び第2環状ベルト57Bの一部が固定され、第2部材72に第1プーリ50A、50B、第2プーリ54A、54B、第3プーリ62A、第3プーリ62B、第4プーリ66及び第5プーリ66Xが設けられてもよい。
【0075】
可撓性を具備しない部材により連結部材97を構成してもよい。例えば、金属棒を連結部材97として利用してもよい。
【0076】
枠体18に3つ以上の外筒25A、25Bを固定し、各外筒25A、25Bの内周側に内筒86A、86Bを位置させてもよい。
【0077】
動力伝達装置35は、プーリ及びベルトを備えていれば、上記のものとは別の構造であってもよい。
【0078】
ワンウェイギヤ49A、49Bの代わりに、ワンウェイクラッチ又はワンウェイベアリングを用いてもよい。
【0079】
図3に仮想線で示した蓋部材96を上部26の上面に設けて、蓋部材96によって開口部28を覆ってもよい。さらに蓋部材96には、環状ベルト95の上下方向延長部95A、95Bがそれぞれスライド可能に貫通する2つの貫通孔96A及び各支持部34が貫通する一対の貫通孔(図示省略)が設けられている。この変形例によれば、海水が、上部26の上方から開口部28を介して外筒25A、25B及び内筒86A、86Bの内部空間に進入するおそれがより小さくなる。なお、上下方向延長部95A、95B及び各支持部34が貫通する一つの貫通孔を蓋部材96に設けることも可能である。しかしこの場合の貫通孔は大型になり易い。これに対して上下方向延長部95A用の貫通孔96A、上下方向延長部95B用の貫通孔96A、及び支持部34用の一対の貫通孔が互いに別個の場合は、これら各貫通孔をそれぞれ小型にできる。そのため、このようにすることにより、一つの大型の貫通孔を形成する場合に比べて、海水が開口部28を介して外筒25A、25B及び内筒86A、86Bの内部空間に進入するおそれをより小さくできる。
【0080】
さらに、この蓋部材96が弾性材料によって構成されてもよい。弾性材料の一例はゴム材である。さらにこの場合、蓋部材96に設けられた貫通孔96Aの内周面が上下方向延長部95A、95Bに接触し、蓋部材96に設けられた貫通孔の内周面が支持部34に接触してもよい。この変形例によれば、海水が開口部28を介して外筒25A、25B及び内筒86A、86Bの内部空間に進入するおそれがより小さくなる。
【符号の説明】
【0081】
10 波力発電装置
15 第1浮遊体
17 固定部材(浮遊物)
25A 25B 外筒
28 開口部
30 支持部材
35 動力伝達装置
50A 第1プーリ(プーリ)
50B 第1プーリ(プーリ)
54A 第2プーリ(プーリ)
54B 第2プーリ(プーリ)
85 第2浮遊体
86A、86B 内筒
92 第1発電機(発電機)
93 第2発電機(発電機)
95 環状ベルト(動力伝達ベルト)
95A 95B 上下方向延長部
97 連結部材
98 錘
100 海
101 所定領域
102A 平均水面