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特開2024-20132プレナムを介してフィルム冷却孔に結合した前縁冷却通路を有するタービン翼形部並びに関連方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024020132
(43)【公開日】2024-02-14
(54)【発明の名称】プレナムを介してフィルム冷却孔に結合した前縁冷却通路を有するタービン翼形部並びに関連方法
(51)【国際特許分類】
   F01D 9/02 20060101AFI20240206BHJP
   F01D 5/18 20060101ALI20240206BHJP
   F02C 7/18 20060101ALI20240206BHJP
   F01D 25/12 20060101ALI20240206BHJP
【FI】
F01D9/02 102
F01D5/18
F02C7/18 A
F01D25/12 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023085203
(22)【出願日】2023-05-24
(31)【優先権主張番号】17/816,574
(32)【優先日】2022-08-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】515322297
【氏名又は名称】ゼネラル エレクトリック テクノロジー ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】General Electric Technology GmbH
【住所又は居所原語表記】Brown Boveri Strasse 8, 5400 Baden, Switzerland
(74)【代理人】
【識別番号】100105588
【弁理士】
【氏名又は名称】小倉 博
(72)【発明者】
【氏名】レイシー、ベンジャミン ポール
(72)【発明者】
【氏名】セザル、イブラヒム
(72)【発明者】
【氏名】ヴァンタッセル、ブラッド ウィルソン
【テーマコード(参考)】
3G202
【Fターム(参考)】
3G202CA06
3G202CB01
3G202GA08
3G202GB01
3G202JJ03
3G202JJ17
(57)【要約】
【課題】翼形部前縁の冷却回路を提供する。
【解決手段】翼形部の本体の壁内の冷却回路180は、a)前縁周辺で負圧側から正圧側に向かって正圧側壁内に画成された第1のプレナム186まで延在する1以上の第1の冷却通路200と、第1のプレナムと流体連通し正圧側壁を貫通する複数の第1のフィルム冷却孔214とを含み、第1の冷却剤源210からの第1の冷却剤220が1以上の第1の冷却通路及び第1のプレナムを流れて複数の第1のフィルム冷却孔から出る冷却サブ回路182と、b)前縁周辺で正圧側から負圧側に向かって負圧側壁内に画成された第2のプレナム188まで延在する1以上の第2の冷却通路202と、第2のプレナムと流体連通し負圧側壁を貫通する複数の第2のフィルム冷却孔234とを含み、第2の冷却剤源230からの第2の冷却剤240が1以上の第2の冷却通路及び第2のプレナムを流れて複数の第2のフィルム冷却孔から出る冷却サブ回路184との少なくとも一方を含む。
【選択図】図5C
【特許請求の範囲】
【請求項1】
タービン翼形部(152,162)であって、当該タービン翼形部(152,162)が、
正圧側(154,168)、負圧側(156,170)及び正圧側(154,168)と負圧側(156,170)の間に延在する前縁(158,172)を画成する壁(150,166)を含む本体(148,164)と、
前記本体(148,164)の壁(150,166)の内部の冷却回路(180)と
を備えており、前記冷却回路(180)が、
a)前記本体(148,164)の壁(150,166)の内部で前縁(158,172)周辺で負圧側(156,170)から正圧側(154,168)に向かって正圧側(154,168)の壁(150,166)内に画成された第1のプレナム(186)まで延在する1以上の第1の冷却通路(200)と、第1のプレナム(186)と流体連通しかつ正圧側(154,168)で壁(150,166)を貫通する複数の第1のフィルム冷却孔(214)とを含む負圧側乃至正圧側冷却サブ回路(182)であって、第1の冷却剤源(210)からの第1の冷却剤(220)が1以上の第1の冷却通路(200)及び第1のプレナム(186)を流れて複数の第1のフィルム冷却孔(214)を通って出る、負圧側乃至正圧側冷却サブ回路(182)、及び
b)前記本体(148,164)の壁(150,166)の内部で前縁(158,172)周辺で正圧側(154,168)から負圧側(156,170)に向かって負圧側(156,170)の壁(150,166)内に画成された第2のプレナム(188)まで延在する1以上の第2の冷却通路(202)と、第2のプレナム(188)と流体連通しかつ負圧側(156,170)で壁(150,166)を貫通する複数の第2のフィルム冷却孔(234)とを含む正圧側乃至負圧側冷却サブ回路(184)であって、第2の冷却剤源(230)からの第2の冷却剤(240)が1以上の第2の冷却通路(202)及び第2のプレナム(188)を流れて複数の第2のフィルム冷却孔(234)を通って出る、正圧側乃至負圧側冷却サブ回路(184)
の少なくとも一方を含んでいる、タービン翼形部(152,162)。
【請求項2】
前記冷却回路(180)が正圧側乃至負圧側冷却サブ回路(184)及び負圧側乃至正圧側冷却サブ回路(182)の両方を含んでいる、請求項1に記載のタービン翼形部(152,162)。
【請求項3】
1以上の第1の冷却通路(200)が複数の第1の冷却通路(200)を含んでおり、1以上の第2の冷却通路(202)が複数の第2の冷却通路(202)を含んでおり、複数の第1の冷却通路(200)が複数の第2の冷却通路(202)と翼形部の前縁(158,172)に沿って半径方向に交互に配置されている、請求項2に記載のタービン翼形部(152,162)。
【請求項4】
a)複数の第1のフィルム冷却孔(214)が、1以上の第1の冷却通路(200)よりも断面積の小さい部分を含んでいて、第1のプレナム(186)及び1以上の第1の冷却通路(200)に背圧を生じること、及び
b)複数の第2のフィルム冷却孔(234)が、1以上の第2の冷却通路(202)よりも断面積の小さい部分を含んでいて、第2のプレナム(188)及び1以上の第2の冷却通路(202)に背圧を生じること
の少なくとも一方を含んでいる、請求項1に記載のタービン翼形部(152,162)。
【請求項5】
1以上の第1の冷却通路(200)及び1以上の第2の冷却通路(202)が各々0.1mm以下の平均断面積を有する、請求項1に記載のタービン翼形部(152,162)。
【請求項6】
第1の冷却剤源(210)及び第2の冷却剤源(230)が、本体(148,164)内で分離壁(250)によって流体分離されている、請求項1に記載のタービン翼形部(152,162)。
【請求項7】
a)複数の第1のフィルム冷却孔(214)の少なくとも1つが、本体(148,164)内で1以上の第1の冷却通路(200)とは異なる半径方向位置にあり、かつ
b)複数の第2のフィルム冷却孔(234)の少なくとも1つが、本体(148,164)内で1以上の第2の冷却通路(202)とは異なる半径方向位置にある、請求項1に記載のタービン翼形部(152,162)。
【請求項8】
a)複数の第1のフィルム冷却孔(214)が、1以上の第1の冷却通路(200)の数とは異なる数の冷却孔を含んでおり、
b)複数の第2のフィルム冷却孔(234)が、1以上の第2の冷却通路(202)の数とは異なる数の冷却孔を含んでいる、請求項1に記載のタービン翼形部(152,162)。
【請求項9】
第1のプレナム(186)及び第2のプレナム(188)の少なくとも一方が、一貫していない断面積を有する、請求項1に記載のタービン翼形部(152,162)。
【請求項10】
本体(148,164)が、その半径方向内側端(176)で半径方向内側プラットフォーム(130)に結合し、その半径方向外側端(178)で半径方向外側プラットフォーム(128)に結合して、タービンノズル(126)を形成している、請求項1に記載のタービン翼形部(152,162)。
【請求項11】
タービンノズル(126)であって、当該タービンノズル(126)が、
正圧側(154,168)、負圧側(156,170)及び正圧側(154,168)と負圧側(156,170)の間に延在する前縁(158,172)を画成する壁(150,166)を含む翼形部本体(148,164)と、
翼形部本体(148,164)にその半径方向内側端(176)で結合した半径方向内側プラットフォーム(130)と、
翼形部本体(148,164)にその半径方向外側端(178)で結合した半径方向外側プラットフォーム(128)と、
翼形部本体(148,164)の壁(150,166)の内部の冷却回路(180)と
を備えており、冷却回路(180)が、
a)本体(148,164)の壁(150,166)の内部で前縁(158,172)周辺で負圧側(156,170)から正圧側(154,168)に向かって正圧側(154,168)の壁(150,166)内に画成された第1のプレナム(186)まで延在する1以上の第1の冷却通路(200)と、第1のプレナム(186)と流体連通しかつ正圧側(154,168)で壁(150,166)を貫通する複数の第1のフィルム冷却孔(214)とを含む負圧側乃至正圧側冷却サブ回路(182)であって、第1の冷却剤源(210)からの第1の冷却剤(220)が1以上の第1の冷却通路(200)及び第1のプレナム(186)を流れて複数の第1のフィルム冷却孔(214)を通って出る、負圧側乃至正圧側冷却サブ回路(182)、及び
b)本体(148,164)の壁(150,166)の内部で前縁(158,172)周辺で正圧側(154,168)から負圧側(156,170)に向かって負圧側(156,170)の壁(150,166)内に画成された第2のプレナム(188)まで延在する1以上の第2の冷却通路(202)と、第2のプレナム(188)と流体連通しかつ負圧側(156,170)で壁(150,166)を貫通する複数の第2のフィルム冷却孔(234)とを含む正圧側乃至負圧側冷却サブ回路(184)であって、第2の冷却剤源(230)からの第2の冷却剤(240)が1以上の第2の冷却通路(202)及び第2のプレナム(188)を流れて複数の第2のフィルム冷却孔(234)を通って出る、正圧側乃至負圧側冷却サブ回路(184)
の少なくとも一方を含んでいる、タービンノズル(126)。
【請求項12】
冷却回路(180)が正圧側乃至負圧側冷却サブ回路(184)及び負圧側乃至正圧側冷却サブ回路(182)の両方を含んでおり、
1以上の第1の冷却通路(200)が複数の第1の冷却通路(200)を含んでおり、
1以上の第2の冷却通路(202)が複数の第2の冷却通路(202)を含んでおり、
複数の第1の冷却通路(200)が複数の第2の冷却通路(202)と翼形部の前縁(158,172)に沿って半径方向に交互に配置されている、請求項11に記載のタービンノズル(126)。
【請求項13】
a)複数の第1のフィルム冷却孔(214)が、1以上の第1の冷却通路(200)よりも断面積の小さい部分を含んでいて、第1のプレナム(186)及び1以上の第1の冷却通路(200)に背圧を生じること、及びb)複数の第2のフィルム冷却孔(234)が、1以上の第2の冷却通路(202)よりも断面積の小さい部分を含んでいて、第2のプレナム(188)及び1以上の第2の冷却通路(202)に背圧を生じることの少なくとも一方を含んでいる、請求項11に記載のタービンノズル(126)。
【請求項14】
第1の冷却剤源(210)及び第2の冷却剤源(230)が本体(148,164)内で分離壁(250)によって流体分離されている、請求項11に記載のタービンノズル(126)。
【請求項15】
a)複数の第1のフィルム冷却孔(214)の1以上は、翼形部本体(148,164)内で1以上の第1の冷却通路(200)とは異なる半径方向位置にあり、b)複数の第2のフィルム冷却孔(234)の1以上は、翼形部本体(148,164)内で1以上の第2の冷却通路(202)とは異なる半径方向位置にある、請求項11に記載のタービンノズル(126)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に、ターボ機械に関し、さらに具体的には、前縁の周辺の冷却剤をプレナム及び次いでフィルム冷却孔と連通させる前縁の冷却通路に関する。翼形部を含むタービンノズル並びに翼形部を冷却する関連方法も提供する。
【背景技術】
【0002】
タービン翼形部の前縁は、通例、翼形部の前縁の一群の外側に向けられた冷却孔で冷却される。冷却孔は、冷却通路を介して翼形部の本体内の冷却剤源に流体結合される。冷却孔の位置は、前縁の効果的な冷却に必要な冷却剤の量に影響する。改善された冷却剤供給システムによって冷却剤の量を削減できれば、ガスタービンの効率及び出力に好影響を与える。
【発明の概要】
【0003】
以下に挙げるすべての態様、具体例及び特徴は、技術的に可能な方法で組合せることができる。
【0004】
本開示の一態様は、正圧側、負圧側及び正圧側と負圧側の間に延在する前縁を画成する壁を含む本体と、本体の壁の内部の冷却回路とを備えるタービン翼形部であって、冷却回路が、a)本体の壁の内部で前縁周辺で負圧側から正圧側に向かって正圧側の壁内に画成された第1のプレナムまで延在する1以上の第1の冷却通路と、第1のプレナムと流体連通しかつ正圧側で壁を貫通する複数の第1のフィルム冷却孔とを含む負圧側乃至正圧側冷却サブ回路であって、第1の冷却剤源からの第1の冷却剤が1以上の第1の冷却通路及び第1のプレナムを流れて複数の第1のフィルム冷却孔を通って出る、負圧側乃至正圧側冷却サブ回路、及びb)本体の壁の内部で前縁周辺で正圧側から負圧側に向かって負圧側の壁内に画成された第2のプレナムまで延在する1以上の第2の冷却通路と、第2のプレナムと流体連通しかつ負圧側で壁を貫通する複数の第2のフィルム冷却孔とを含む正圧側乃至負圧側冷却サブ回路であって、第2の冷却剤源からの第2の冷却剤が1以上の第2の冷却通路及び第2のプレナムを流れて複数の第2のフィルム冷却孔を通って出る、正圧側乃至負圧側冷却サブ回路の少なくとも一方を含む、タービン翼形部を提供する。
【0005】
本開示の別の態様は、上述の態様のいずれかを包含し、冷却回路が正圧側乃至負圧側冷却サブ回路及び負圧側乃至正圧側冷却サブ回路の両方を含んでいる。
【0006】
本開示の別の態様は、上述の態様のいずれかを包含し、1以上の第1の冷却通路が複数の第1の冷却通路を含んでおり、1以上の第2の冷却通路が複数の第2の冷却通路を含んでおり、複数の第1の冷却通路が複数の第2の冷却通路と翼形部の前縁に沿って半径方向に交互に配置されている。
【0007】
本開示の別の態様は、上述の態様のいずれかを包含し、a)複数の第1のフィルム冷却孔が、1以上の第1の冷却通路よりも断面積の小さい部分を含んでいて、第1のプレナム及び1以上の第1の冷却通路に背圧を生じること、及びb)複数の第2のフィルム冷却孔が、1以上の第2の冷却通路よりも断面積の小さい部分を含んでいて、第2のプレナム及び1以上の第2の冷却通路に背圧を生じることの少なくとも一方を含んでいる。
【0008】
本開示の別の態様は、上述の態様のいずれかを包含し、1以上の第1の冷却通路及び1以上の第2の冷却通路が各々0.1mm以下の平均断面積を有する。
【0009】
本開示の別の態様は、上述の態様のいずれかを包含し、第1の冷却剤源及び第2の冷却剤源が、本体内で分離壁によって流体分離されている。
【0010】
本開示の別の態様は、上述の態様のいずれかを包含し、a)複数の第1のフィルム冷却孔の1以上は、本体内で1以上の第1の冷却通路とは異なる半径方向位置にあり、b)複数の第2のフィルム冷却孔の1以上は、本体内で1以上の第2の冷却通路とは異なる半径方向位置にある。
【0011】
本開示の別の態様は、上述の態様のいずれかを包含し、a)複数の第1のフィルム冷却孔は、1以上の第1の冷却通路の数とは異なる数の冷却孔を含んでおり、b)複数の第2のフィルム冷却孔は、1以上の第2の冷却通路の数とは異なる数の冷却孔を含んでいる。
【0012】
本開示の別の態様は、上述の態様のいずれかを包含し、第1のプレナム及び第2のプレナムの少なくとも一方は、一貫していない断面積を有する。
【0013】
本開示の別の態様は、上述の態様のいずれかを包含し、本体は、その半径方向内側端で半径方向内側プラットフォームに結合し、その半径方向外側端で半径方向外側プラットフォームに結合して、タービンノズルを形成している。
【0014】
本開示の別の態様は、正圧側、負圧側及び正圧側と負圧側の間に延在する前縁を画成する壁を含む翼形部本体と、翼形部本体にその半径方向内側端で結合した半径方向内側プラットフォームと、翼形部本体にその半径方向外側端で結合した半径方向外側プラットフォームと、翼形部本体の壁の内部の冷却回路とを備えるタービンノズルであって、冷却回路が、a)本体の壁の内部で前縁周辺で負圧側から正圧側に向かって正圧側の壁内に画成された第1のプレナムまで延在する1以上の第1の冷却通路と、第1のプレナムと流体連通しかつ正圧側で壁を貫通する複数の第1のフィルム冷却孔とを含む負圧側乃至正圧側冷却サブ回路であって、第1の冷却剤源からの第1の冷却剤が1以上の第1の冷却通路及び第1のプレナムを流れて複数の第1のフィルム冷却孔を通って出る、負圧側乃至正圧側冷却サブ回路、及びb)本体の壁の内部で前縁周辺で正圧側から負圧側に向かって負圧側の壁内に画成された第2のプレナムまで延在する1以上の第2の冷却通路と、第2のプレナムと流体連通しかつ負圧側で壁を貫通する複数の第2のフィルム冷却孔とを含む正圧側乃至負圧側冷却サブ回路であって、第2の冷却剤源からの第2の冷却剤が1以上の第2の冷却通路及び第2のプレナムを流れて複数の第2のフィルム冷却孔を通って出る、正圧側乃至負圧側冷却サブ回路の少なくとも一方を含む、タービンノズルを提供する。
【0015】
本開示の別の態様は、上述の態様のいずれかを包含し、冷却回路が正圧側乃至負圧側冷却サブ回路及び負圧側乃至正圧側冷却サブ回路の両方を含んでおり、1以上の第1の冷却通路が複数の第1の冷却通路を含んでおり、1以上の第2の冷却通路が複数の第2の冷却通路を含んでおり、複数の第1の冷却通路が複数の第2の冷却通路と翼形部の前縁に沿って半径方向に交互に配置されている。
【0016】
本開示の別の態様は、上述の態様のいずれかを包含し、a)複数の第1のフィルム冷却孔が、1以上の第1の冷却通路よりも断面積の小さい部分を含んでいて、第1のプレナム及び1以上の第1の冷却通路に背圧を生じること、及びb)複数の第2のフィルム冷却孔が、1以上の第2の冷却通路よりも断面積の小さい部分を含んでいて、第2のプレナム及び1以上の第2の冷却通路に背圧を生じることの少なくとも一方を含んでいる。
【0017】
本開示の別の態様は、上述の態様のいずれかを包含し、第1の冷却剤源及び第2の冷却剤源が本体内で分離壁によって流体分離されている。
【0018】
本開示の別の態様は、上述の態様のいずれかを包含し、a)複数の第1のフィルム冷却孔の1以上は、翼形部本体内で1以上の第1の冷却通路とは異なる半径方向位置にあり、b)複数の第2のフィルム冷却孔の1以上は、翼形部本体内で1以上の第2の冷却通路とは異なる半径方向位置にある。
【0019】
本開示の別の態様は、上述の態様のいずれかを包含し、a)複数の第1のフィルム冷却孔は、1以上の第1の冷却通路の数とは異なる数の冷却孔を含んでおり、b)複数の第2のフィルム冷却孔は、1以上の第2の冷却通路の数とは異なる数の冷却孔を含んでいる。
【0020】
本開示の別の態様は、上述の態様のいずれかを包含し、第1のプレナム及び第2のプレナムの少なくとも一方は、一貫していない断面積を有する。
【0021】
本開示の一態様は、タービン翼形部を冷却する方法を包含し、本方法は、正圧側、負圧側及び正圧側と負圧側の間に延在する前縁を画成する壁を含む本体を含むタービン翼形部において、a)1以上の第1の冷却通路の内部で、第1の冷却剤を負圧側の第1の冷却剤源から前縁を巡って第1のプレナムに、次いで正圧側の壁を通して複数の第1のフィルム冷却孔に流すこと、及びb)1以上の第2の冷却通路の内部で、第2の冷却剤を第2の冷却剤源から正圧側から前縁を巡って第2のプレナムに、次いで負圧側の壁を通って複数の第2のフィルム冷却孔に流すことの少なくとも一方を実施することを含む。
【0022】
本開示の別の態様は、上述の態様のいずれかを包含し、実施が、a)及びb)の両方を実施することを含んでおり、1以上の第1の冷却通路が複数の第1の冷却通路を含んでおり、1以上の第2の冷却通路が複数の第2の冷却通路を含んでおり、複数の第1の冷却通路が複数の第2の冷却通路と翼形部の前縁に沿って半径方向に交互に配置されている。
【0023】
本開示の別の態様は、上述の態様のいずれかを包含し、a)1以上の第1のフィルム冷却孔に1以上の第1の冷却通路よりも断面積の小さい部分を設けることによって、第1のプレナム及び1以上の第1の冷却通路、及びb)1以上の第2のフィルム冷却孔に1以上の第2の冷却通路よりも断面積の小さい部分を設けることによって、第2のプレナム及び1以上の第2の冷却通路、の少なくとも一方に背圧を生じさせることをさらに含んでいる。
【0024】
この発明の概要の欄に記載した態様も含めて、本開示に記載した2以上の態様を組合せて、本明細書に具体的に記載されていない実施態様としてもよい。
【0025】
1以上の実施態様の詳細を、添付の図面及び以下の説明に記載する。その他の特徴、目的及び利点は、発明の詳細な説明、図面並びに特許請求の範囲から明らかになろう。
【図面の簡単な説明】
【0026】
本開示の上記その他の特徴については、本開示の様々な実施形態について記載する添付図面と併せて以下の詳細な説明を参照することによって理解を深めることができよう。
図1】ガスタービンシステムの形態の例示的なターボ機械の簡略化した断面図。
図2図1のガスタービンシステムで使用し得る例示的なタービンセクションの断面図。
図3】本開示の実施形態を用いることができるタイプのタービン動翼の側方斜視図。
図4】本開示の実施形態を用いることができるタイプのタービンノズルの側方斜視図。
図5A】本開示の実施形態を用いることができるタイプで第1の冷却サブ回路を含むタービンノズルの前方斜視図。
図5B】本開示の実施形態を用いることができるタイプで第2の冷却サブ回路を含むタービンノズルの前方斜視図。
図5C】本開示の実施形態を用いることができるタイプで第1及び第2の冷却サブ回路に両方を含むタービンノズルの前方斜視図。
図6】本開示の実施形態に係る図5A及び図5Cのタービン翼形部の第1の冷却通路を通るA-A矢視断面図。
図7】本開示の実施形態に係る図5B及び図5Cのタービン翼形部の第2の冷却通路を通るB-B矢視断面図。
図8】本開示の他の実施形態に係る図5A及び図5Cののタービン翼形部の第1の冷却通路を通るA-A矢視断面図。
図9】本開示の他の実施形態に係る図5B及び図5Cのタービン翼形部の第2の冷却通路を通るB-B矢視断面図。
図10】本開示の他の実施形態に係る冷却通路、プレナム及びフィルム冷却孔の拡大概略断面図。
図11】本開示の他の実施形態に係る図5A及び図5Cのタービン翼形部の第1の冷却通路を通るC-C矢視断面図。
図12】本開示の他の実施形態に係る、プレナムによってそれぞれ複数のフィルム冷却孔に結合した第1及び第2の冷却通路を含むタービン翼形部の概略正面図。
図13】本開示の実施形態に係る、タービン翼形部の本体における例示的なフィルム冷却孔の側面図。
図14】本開示の他の実施形態に係る図5A及び図5Cののタービン翼形部の第1の冷却通路を通るA-A矢視断面図。
図15】本開示の他の実施形態に係る図5B及び図5Cのタービン翼形部の第2の冷却通路を通るB-B矢視断面図。
図16】本開示の他の実施形態に係る、プレナムによってそれぞれ複数のフィルム冷却孔に結合した第1及び第2の冷却通路を含むタービン翼形部の概略正面図。
図17】本開示の他の実施形態に係る、プレナムによって複数のフィルム冷却孔に結合した第1及び第2の冷却通路を含むタービン翼形部の概略正面図。
図18】本開示の他の実施形態に係る、プレナムによって複数のフィルム冷却孔に結合した第1及び第2の冷却通路を含むタービン翼形部の概略正面図。
【0027】
なお、本開示の図面は必ずしも縮尺通りではない。図面は、本開示の典型的な態様を例示するものにすぎず、本開示の技術的範囲を限定するものではない。図面において、同様の符号は複数の図面間で同様の構成要素を表す。
【発明を実施するための形態】
【0028】
まず、本開示の主題を明確に説明するため、ターボ機械内の関連する機械部品について言及及び説明する際に、用語を選択する必要がある。できるだけ、当技術分野で一般的な用語を、その通常の意味と一致するように用いる。別途記載されていない限り、かかる用語は、本願の文脈及び添付の特許請求の範囲に則して広義に解釈すべきである。ある部品について幾つかの異なる又は重複する用語を用いて言及されることが多々あることは当業者には明らかであろう。本明細書において、単一の部材として記載したものであっても、別の文脈では複数の部品からなるものとして記載することもある。或いは、本明細書のある箇所で複数の部品を含むものとして記載したものであっても、別の箇所では単一の部材として記載することもある。
【0029】
さらに、本明細書では幾つかの記述的用語を繰返し用いるが、本欄の冒頭でこれらの用語を定義しておくと有用であろう。これらの用語及びその定義は、別途明記しない限り、以下の通りである。本明細書で用いる「下流」及び「上流」という用語は、流体の流れ(例えばタービンエンジンを通る作動流体の流れ、或いは燃焼器を通る空気又はタービンの部品系の1つを通る冷却剤の流れなど)に関する方向を示す用語である。「下流」という用語は流体が流れていく方向に対応し、「上流」という用語は流れと反対の方向(すなわち、流れて来る方向)をいう。「前方」及び「後方」という用語は、それ以上は特定されない方向をいい、「前方」はエンジンの前方又は圧縮機端を示し、「後方」はターボ機械の後方セクションを示す。
【0030】
中心軸に対して異なる半径方向位置に配置された部品について説明する必要が多々ある。「半径方向」という用語は、軸に垂直な運動又は位置をいう。例えば、第1の部品が第2の部品よりも軸に近い場合、本明細書では第1の部品は第2の部品の「半径方向内側」又は「中心軸近位側」と記載される。一方、第1の部品が第2の部品よりも軸から遠く位置する場合、本明細書では第1の部品は第2の部品の「半径方向外側」又は「中心軸遠位側」と記載される。「軸方向」という用語は、軸(例えばタービンの軸)に平行な運動又は位置をいう。最後に、「周方向」という用語は、軸を中心とした運動又は位置をいう。自明であろうが、かかる用語は、タービンの中心軸に対して適用される。
【0031】
さらに、本明細書では、以下に記載する通り、幾つかの記述的用語を繰返し用いる。「第1の」、「第2の」及び「第3の」という用語は、ある部品を他の部品と区別するために互換的に用いられ、個々の部品の位置又は重要性を示すものではない。
【0032】
本明細書で用いる用語は、特定の実施形態を説明するためのものにすぎず、開示内容を限定するものではない。本明細書において、単数形で記載したものであっても、前後関係から別途明らかでない限り、複数の場合も含めて意味する。本明細書において、「備える」及び/又は「含む」という用語は、記載した特徴、整数、ステップ、操作、構成要素及び/又は部品が存在することを示し、他の1以上の特徴、整数、ステップ、操作、構成要素、部品及び/又はこれらの群の存在又は追加を除外するものではない。「任意」又は「適宜」という用語は、その用語に続いて記載された事象又は状況が起きても起きなくてもよいこと或いはその用語に続いて記載された部品又は構成要素が存在しても存在しなくてもよいことを意味しており、かかる記載はその事象又は状況が起こる場合と起こらない場合並びにその部品又は構成要素が存在する場合と存在しない場合とを包含する。
【0033】
ある構成要素又は層が別の構成要素又は層「の上」、「に係合」、「に接続」又は「に結合」しているという場合、その別の構成要素又は層の上に直接位置していても、その別の構成要素又は層に直接係合、接続又は結合していてもよいし、或いは介在する構成要素又は層が存在していてもよい。対照的に、ある構成要素が別の構成要素又は層「の直接上」、「に直接係合」、「に直接接続」又は「に直接結合」しているという場合、介在する構成要素又は層は存在しない。構成要素間の関係について説明するために用いられる他の用語(例えば、「~の間」と「直接~の間」、「隣接」と「直接隣接」など)も同様に解釈される。本明細書で用いる「及び/又は」という用語は、記載されたものの1以上のあらゆるすべての組合せを包含する。
【0034】
上述の通り、本開示は、正圧側、負圧側及び正圧側と負圧側の間に延在する前縁を画成する壁を含む本体を含むタービン翼形部を提供する。本体の壁の内部の冷却回路は、本体の壁の内部で前縁周辺で負圧側から正圧側に向かって正圧側の壁内に画成された第1のプレナムまで延在する1以上の第1の冷却通路を含む負圧側乃至正圧側(SS-to-PS)冷却サブ回路を含むことができる。SS-to-PS冷却サブ回路は、第1のプレナムと流体連通し、かつ正圧側で壁を貫通する複数の第1のフィルム冷却孔も含むことができる。第1の冷却剤源からの第1の冷却剤は第1の冷却通路を流れて第1のプレナムに入り、複数の第1のフィルム冷却孔を通って出る。
【0035】
SS-to-PS冷却サブ回路に代えて或いはそれに加えて、本体の壁の内部で前縁周辺で正圧側から負圧側に向かって負圧側の壁内に画成された第2のプレナムまで延在する1以上の第2の冷却通路を含む正圧側乃至負圧側(PS-to-SS)冷却サブ回路を含むことができる。PS-to-SS冷却サブ回路は、第2のプレナムと流体連通し、かつ負圧側で壁を貫通する複数の第2のフィルム冷却孔も含むことができる。第2の冷却剤源からの第2の冷却剤は1以上の第2の冷却通路を流れて第2のプレナムに入り、複数の第2のフィルム冷却孔を通って出る。翼形部を含むタービンノズル並びに翼形部を冷却するための関連方法も提供する。
【0036】
冷却剤を(おそらくは両方向に)連通する冷却通路は、比較的長い冷却通路に沿って吸収する熱量が増すので、前縁の冷却に要する冷却剤の量を低減する。さらに、冷却通路は翼形部の前縁周辺に冷却剤を流すので、優れたフィルム被覆域をもたらして前縁からさらに下流側まで冷却を達成する成形フィルム冷却から冷却剤を排出することができる。プレナムは、冷却通路とフィルム冷却孔との流体結合をもたらして、前縁に開口ができたときの作動流体の取込みを防止する。
【0037】
図1は、例示的な産業機械の概略図を示しており、そのタービン翼形部は、本本開示の教示内容に則した冷却回路を含むことができる。本例では、機械は燃焼又はガスタービンシステムの形態のターボ機械100を含んでいる。ターボ機械100は、圧縮機102及び燃焼器104を含む。燃焼器104は、燃焼領域106及び燃料ノズルアセンブリ108を含んでいる。ターボ機械100は、タービン110(すなわち「膨張タービン」)及び共通の圧縮機/タービンシャフト112(ロータ112とも呼ばれる)も含んでいる。
【0038】
一実施形態では、ターボ機械100は、General Electric社(米国サウスカロライナ州グリーンビル)から市販の7HA.03エンジンである。本開示は、いかなる特定のGTシステムに限定されるものではなく、例えば、General Electric社の他のHA、F、B、LM、GT、TM及びEクラスエンジンモデル、並びに他社のエンジンモデルを含始めとする、他のエンジンに関しても実施し得る。本開示は、いかなる特定のタービン又はターボ機械に限定されるものではなく、例えば、蒸気タービン、ジェットエンジン、圧縮機、ターボファンなどにおけるタービン翼形部にも適用し得る。
【0039】
運転中、圧縮機102を通って空気が流れ、燃焼器104に圧縮空気が供給される。具体的には、圧縮空気は、燃焼器104に内蔵された燃料ノズルアセンブリ108に供給される。アセンブリ108は燃焼領域106と流体連通している。燃料ノズルアセンブリ108は燃料源(図示せず)とも流体連通しており、燃料及び空気を燃焼領域106に導く。燃焼器104は燃料を点火して燃焼させ、燃焼生成物のガス流を生じさせる。燃焼器104はタービンアセンブリ110と流体連通しており、タービンアセンブリ110でガス流の熱エネルギーが機械的な回転エネルギーへと変換される。タービンアセンブリ110は、ロータ112に回転可能に結合してロータ112を駆動するタービン111を含んでいる。圧縮機102もロータ112に回転可能に結合している。例示的な実施形態では、複数の燃焼器104及び燃料ノズルアセンブリ108が存在する。
【0040】
図2は、図1のガスタービンシステムで使用し得るターボ機械100(図1)の例示的なタービンアセンブリ110の断面図を示す。タービンアセンブリ110のタービン111は、ターボ機械100の静止ケーシング122に結合したノズル120の列又は段を含んでおり、軸方向にブレード124の列又は段に隣接している。ノズル126(静翼としても知られる)は、半径方向外側プラットフォーム128及び半径方向内側プラットフォーム130によってタービンアセンブリ110内に保持し得る。タービンアセンブリ110内のブレード124の各段は、ロータ112に結合してロータと共に回転する動翼132を含んでいる。動翼132は、ロータ112に結合した半径方向内側プラットフォーム134(動翼の根元)と、半径方向外側先端136(動翼の先端)とを含むことができる。シュラウド138は、ノズル126及び動翼132の隣接する段を分離し得る。例えばガスタービンにおける燃焼ガスを始めとする作動流体140は、高温ガス経路(以下、「HGP」)と呼ばれるものに沿ってタービン111を通過する。HGPは、高温に暴露されるタービン111の任意の領域とすることができる。例えばタービン111において、ノズル126及び動翼132はすべて、本開示の教示内容による恩恵を受け得るタービン部品の具体例である。
【0041】
図3図4は、本開示の教示内容を使用し得る翼形部を含む例示的なタービン部品の側方斜視図を示す。
【0042】
図3は、本開示の実施形態を用いることができるタイプのタービン動翼132の側方斜視図を示す。タービン動翼132は根元142を含んでおり、動翼132は根元142によってロータ112(図2)に取り付けられる。根元142は、ロータ112(図2)のロータホイール146(図2)の外周上の対応ダブテールスロットに装着されるように構成されたダブテール144を含むことができる。自明であろうが、翼形部152は、作動流体の流れを受け止めて、ロータホイール146を回転させる動翼132の能動部品である。
【0043】
図から分かるように、動翼132の翼形部152は、正圧側154、負圧側156、正圧側154と負圧側156の間に延在する前縁158及び後縁160を画成する壁150を含む本体148を含む。さらに具体的には、正圧側154は凹面状の正圧側(PS)壁を含んでおり、負圧側156は、周方向又は横方向に反対側の凸面状の負圧側(SS)壁を含んでおり、軸方向に対向する前縁158と後縁160の間に延在している。側面154及び156も、プラットフォーム134から半径方向外側先端136まで半径方向に延在している。先端136は、現在公知の又は将来開発される任意の先端シュラウド(図示せず)を含んでいてもよい。本明細書でさらに具体的に説明する本開示の実施形態に係る通路200,202をそれぞれ含むサブ回路182,184を含む冷却回路180は、例えば、動翼132の翼形部152内、さらに具体的には、その前縁158内で使用することができる。
【0044】
図4は、本開示の実施形態を用いることができるタイプの静止ノズル126の側方斜視図を示す。静止ノズル126は半径方向外側プラットフォーム128を含んでおり、静止ノズル126は半径方向外側プラットフォーム128によってターボ機械の静止ケーシング122(図2)に取り付けられる。外側プラットフォーム128は、ケーシング内の対応マウントに取り付けるための現在公知の又は将来開発される任意の取付構成を含むことができる。静止ノズル126は、隣接タービン動翼132(図2)及び(翼形部)プラットフォーム134(図2)との間に配置される半径方向内側プラットフォーム130をさらに含むことができる。プラットフォーム128,130は、タービンアセンブリ110(図2)を通るHGP(図2)の中心軸遠位側及び中心軸近位側境界のそれぞれの部分を画成する。
【0045】
自明であろうが、翼形部162は、作動流体の流れを受け止めて、その流れをタービン動翼132(図3)に向けて導く静止ノズル126の能動部品である。図から分かるように、静止ノズル126の翼形部162は、正圧側168、負圧側170、正圧側168と負圧側170の間に延在する前縁172及び後縁174を画成する壁166を含む本体164を含んでいる。さらに具体的には、正圧側168は凹面状の正圧側(PS)外壁を含んでおり、負圧側170は、周方向又は横方向に反対側の凸面状の負圧側(SS)外壁を含んでおり、軸方向に対向する前縁172と後縁174の間に延在している。正圧側168及び負圧側170も、プラットフォーム128からプラットフォーム130まで半径方向に延在している。翼形部162の本体164は、その半径方向内側端176で半径方向内側プラットフォーム130に結合し、かつその半径方向外側端178で半径方向外側のプラットフォーム128に結合して、タービンノズル126を形成する。本明細書でさらに具体的に説明する本開示の実施形態に係る通路200,202をそれぞれ含むサブ回路182,184を含む冷却回路180は、例えば、静止ノズル126の翼形部162内、さらに具体的には、その前縁172内で使用することができる。
【0046】
翼形部152,162の前縁158,172は、それぞれ、翼形部の最も前方の縁として同定され、各翼形部の正圧側と負圧側の間で湾曲がそこでピークとなる。
【0047】
図5A図5Cは、タービン翼形部162及び様々な実施形態の冷却回路180を含むノズル126の例示的な翼形部の前方斜視図を示す。冷却回路180は、負圧側乃至正圧側冷却サブ回路182(図5A及び図5C、以下「SS-to-PSサブ回路182」と略す)、正圧側乃至負圧側冷却サブ回路184(図5B及び図5C、以下「PS-to-SSサブ回路184」と略す)又はその両方(図5C)を含むことができる。図6は、図5A及び図5Cのタービン翼形部162のSS-to-PSサブ回路182及びその冷却通路200を通るA-A矢視断面図を示し、図7は、図5B及び図5Cのタービン翼形部162のPS-to-SSサブ回路184及びその冷却通路202を通るB-B矢視断面図を示す。
【0048】
図3図7を参照すると、上述の通り、本開示の実施形態は、タービン動翼132(図2及び図3)又は静止ノズル126(図4図5C)にそれぞれ用いられるようなタービン翼形部152(図3)又はタービン翼形部162(図4図5C)を含むことができる。タービン翼形部152,162は、それらの部材に冷却剤を送ってそれらの部材を冷却するための冷却剤供給チャンバ190を含むことができる(例えば図6図7参照)。翼形部152,162内の冷却剤供給チャンバ190は、本開示の実施形態に係る冷却サブ回路182,184及び冷却通路200,202のための冷却剤源210,230(図6図9)として使用し得る。
【0049】
説明の便宜上、図6図9の冷却サブ回路182,184及び冷却通路200,202の断面図は、ノズル126の翼形部162に適した内部冷却剤供給チャンバ190と共に示してある。ただし、図6図9の断面図には、動翼132の翼形部152に関する符号も含まれている。自明であろうが、動翼132の翼形部152のための冷却剤供給チャンバ190(図3)は、例えばそれらの個々の冷却要件に応じて、ノズル126(図4図5C)について図示したものとは、例えば数、形状、位置及び/又は配置が異なっていてもよい。また、冷却剤供給チャンバ190(図6図9)は、主に翼形部152,162内で半径方向に延在するものとして図示してあるが、それらは、翼形部152,162の本体148,164内で任意の方向に延在し得る。いずれにせよ、本開示の教示内容は、冷却サブ回路182,184及びそれに付随する冷却通路200,202のための冷却剤源210,230として機能する任意の冷却剤供給チャンバ190を内部に有する任意のタービン翼形部152,162に適用し得る。
【0050】
図3を参照すると、動翼132用のタービン翼形部152は、正圧側154、負圧側156及び正圧側154と負圧側156の間に延在する前縁158を画成する壁150を含む本体148を含んでいる。図4及び図5A図5Cに示すように、ノズル126用のタービン翼形部162は、正圧側168、負圧側170及び正圧側168と負圧側170の間に延在する前縁172を画成する壁166を含む翼形部本体164を含んでいる。
【0051】
図5A図5Cの例示的なノズル実施形態に示すように、本体164の内壁166の冷却回路180は、SS-to-PSサブ回路182及びPS-to-SSサブ回路184の少なくとも一方を含むことができる。図5Aは、冷却通路200を含むSS-to-PSサブ回路182だけを含んでおり、図5Bは、冷却通路202を含むPS-to-SSサブ回路184だけを含んでおり、図5Cは、本開示の実施形態に係る冷却通路200,202をそれぞれ有するSS-to-PSサブ回路182及びPS-to-SSサブ回路184の両方を含んでいる。図5A図5Cに示したものと同じ選択肢及び配置を、タービン動翼132(図3)にも採用できる。
【0052】
図5A図5C及び図6に示すように、タービン翼形部152,162は、本体148,164の壁150,166内部で負圧側156,170から前縁158,172周辺で正圧側154,168の壁150,166内に画成された第1のプレナム186まで延在する1以上の第1の冷却通路200を含むSS-to-PSサブ回路182を含むことができる。SS-to-PSサブ回路182は、第1のプレナム186と流体連通し、正圧側154,168の壁150,166を貫通する複数の第1のフィルム冷却孔214も含むことができる。第1のフィルム冷却孔214は、図6の所定の位置に示してあるが、「正圧側」154,168で壁150,166を貫通する第1のフィルム冷却孔214は、前縁158,172(よどみ線)の後方の正圧側154,168に沿った後縁160,174(図3及び図4)までの任意の位置にあってもよい。
【0053】
壁150,166は断面図では単一構造として示してあるが、壁150,166は任意の数の層(例えば内層、中間層及び/又は外層)を含むことができる。通路200,202は、壁150,166のどの層にあってもよい。第1の冷却剤源210は、翼形部152,162の前縁158,172内部の冷却剤供給チャンバ190Aその他の冷却剤供給チャンバ190の一部とすることができる。いずれにせよ、第1の冷却剤源210からの第1の冷却剤220(矢印)は、第1の冷却通路200及び第1のプレナム186を流れ、複数の第1のフィルム冷却孔214を通って出る。第1の冷却剤源210は、第1の冷却剤220を、前縁158,172に対して負圧側156,170から導き出すことができる。そこで、第1の冷却通路200では、第1の冷却剤220は負圧側156,170から正圧側154,168にしか流れない。第1の冷却剤220は、空気のような、冷却剤供給チャンバ190Aで用いられる任意の冷却剤とすることができる。第1の冷却通路200は、その負圧側端部225近傍の第1の冷却剤源210(すなわち、前縁158,172の負圧側)と流体結合し得る。第1の冷却通路200は湾曲しており、前縁158,172の輪郭に略従って前縁158,172の周りを通っているが、前縁の輪郭から若干ずれていてもよい。
【0054】
SS-to-PSサブ回路182において、第1のプレナム186は、本体148,164内で半径方向に延在し、第1の冷却通路200を複数の第1のフィルム冷却孔214とまとめて接続する。サブ回路182内の第1の冷却剤220の圧力は通例比較的高く、例えば翼形部152,162の表面上の作動流体140よりも高い。こうして、前縁158,172に沿ったどこかで偶発的に穴222(図6の点線)が開口して、第1の冷却通路200の1以上が露出したとしても、第1の冷却剤220は穴222から出る。さらに、第1の冷却剤220の流れは、作動流体140の(例えば冷却通路200及び/又は第1の冷却剤源210への)取込みを防ぐのに十分な圧力を有する。こうして、冷却剤が穴222に供給されたとしても、第1の冷却剤220は正圧側154,168に流れ続ける。すなわち、穴222の影響を受けない第1の冷却通路200は、正圧側154,168に第1の冷却剤220を供給し続ける。
【0055】
ただし、図17及び図18に示すように、作動流体140の取込みが懸念されるほど第1の冷却剤220の圧力が十分に低い場合、他の実施形態では、複数の第1のフィルム冷却孔214の1以上は、第1のプレナム186及び第1の冷却通路200に背圧を生じさせるため、第1の冷却通路200の各々よりも断面積の小さい1以上の部分223を含んでいてもよい。部分223は、その下流側よりもその上流側で高い圧力を生じさせるための、フィルム冷却孔214の断面積を減少させる任意の構造(例えば第1のプレナム186の下流の入口通路又は構造)を含んでいてもよい。こうして、第1の冷却剤220の圧力を高めて、前縁158,172に沿ったどこかで偶発的に穴222(図6の点線)が開口して、第1の冷却通路200の1以上が露出したとしても、作動流体140が第1の冷却通路200に取り込まれないようにすることができる。上述の通り、第1の冷却剤220は、穴222を通って出るが、冷却通路200を通って正圧側154,168に流れ続ける。すなわち、第1の冷却剤220の流れは、例えば冷却通路200及び/又は第1の冷却剤源210への作動流体140の取込みを防止するのに十分な背圧を有する。穴222の影響を受けない第1の冷却通路200は、正圧側154,168に第1の冷却剤220を供給し続ける。図17は、部分223を含む第1のフィルム冷却孔214だけを示す。
【0056】
図5B図5C及び図7に示すように、タービン翼形部152,162は、本体148,164の壁150,166内部で正圧側154,168から前縁158,172周辺で負圧側156,170の壁150,166内に画成された第2のプレナム188まで延在する1以上の第2の冷却通路202を含むPS-to-SSサブ回路184を含むことができる。PS-to-SSサブ回路184は、第2のプレナム188と流体連通し、負圧側156,170の壁150,166を貫通する複数の第2のフィルム冷却孔234も含むことができる。第2のフィルム冷却孔234は、図7の所定の位置に示してあるが、「負圧側」156,170で壁150,166を貫通する第2のフィルム冷却孔234は、前縁158,172(よどみ線)の後方の負圧側156,170に沿った後縁160,174(図3及び図4)までの任意の位置にあったもよい。
【0057】
第2の冷却剤源230は、翼形部152,162の前縁158,172内部の冷却剤供給チャンバ190Aその他の冷却剤供給チャンバ190の一部とすることができる。いずれにせよ、第2の冷却剤源230からの第2の冷却剤240(矢印)は、第2の冷却通路202及び第2のプレナム188を流れ、複数の第2のフィルム冷却孔234を通って出る。第2の冷却剤源230は、第2の冷却剤240を、前縁158,172に対して正圧側154,168から導き出すことができる。そこで、第2の冷却通路202では、第2の冷却剤240は正圧側154,168から負圧側156,170にしか流れない。第2の冷却剤240は、空気のような、冷却剤供給チャンバ190Aで用いられる任意の冷却剤とすることができる。第2の冷却通路202は、その正圧側端部246近傍の第2の冷却剤源230に流体結合し得る。第2の冷却通路202は湾曲しており、前縁158,172の輪郭に略従って前縁158,172の周りを通っているが、前縁の輪郭から若干すれていてもよい。
【0058】
PS-to-SSサブ回路184において、第2のプレナム188は、本体148,164内で半径方向に延在し、第2の冷却通路202を複数の第2のフィルム冷却孔234とまとめて接続する。サブ回路184内の第2の冷却剤240の圧力は比較的低く、例えば翼形部152,162の表面上の作動流体140の圧力以下である。状況によって、前縁158,172に沿ったどこかで偶発的に穴224(図7の点線)が開口して、第2の冷却通路202の1以上が露出される場合、第2の冷却剤240の圧力は、作動流体140の取込みを防止するのに十分高くしてもよい。
【0059】
ただし、作動流体140の取込みが懸念されるほど第2の冷却剤240の圧力が十分に低い場合、他の実施形態では、複数の第2のフィルム冷却孔234の1以上は、第2のプレナム188及び第2の冷却通路202に背圧を生じさせるため、第2の冷却通路202よりも断面積の小さい部分226を含んでいてもよい。部分226は、その下流側よりもその上流側で高い圧力を生じさせるための、フィルム冷却孔234の断面積を減少させる任意の構造(例えば第2のプレナム188の下流の入口通路又は構造)を含んでいてもよい。こうして、第2の冷却剤240の圧力を高めて、前縁158,172に沿ったどこかで偶発的に穴224(図7の点線)が開口して、第2の冷却通路202の1以上が露出したとしても、作動流体140が第2の冷却通路202に取り込まれないようにすることができる。そのような場合、第2の冷却剤240は、穴224を通って出るが、冷却通路202を通って正圧側154,168に流れ続ける。すなわち、第2の冷却剤240の流れは、例えば冷却通路202及び/又は第2の冷却剤源230への作動流体140の取込みを防止するのに十分な背圧を有する。穴224の影響を受けない第2の冷却通路202は、負圧側156,170に第2の冷却剤240を供給し続ける。図7は部分226を含む第2のフィルム冷却孔234だけを示しているが、図18は、断面積の小さい部分223,226を有する第1のフィルム冷却孔214及び第2のフィルム冷却孔234の両方を示す。
【0060】
図5Cに示すように、他の実施形態では、冷却回路180は、両方のサブ回路182,184を含むことができる。この実施形態では、第2の冷却通路202は、タービン翼形部152,162において第1の冷却通路200から半径方向に離間して配置される、すなわち、それらは翼形部152,162の同じ半径方向の位置にはない。どのような間隔を用いてもよく、異なる冷却通路200,202のあらゆる配置を用いることができる。図5Cに示す例では、第1の冷却通路200は、第2の冷却通路202と翼形部152(及び162)の前縁158,172に沿って半径方向に交互に配置されている。
【0061】
図3図5Cに示すように、任意の数の冷却通路200,202を翼形部152,162に使用し得る。すなわち、第1の冷却通路200は1又は複数の第1の冷却通路200を含んでいてもよく、第2の冷却通路202は1又は複数の第2の冷却通路202を含んでいてもよい。2以上の第1の冷却通路200を使用する場合又は2以上の第2の冷却通路202を使用する場合、それらは、翼形部152,162の少なくとも一部に沿って半径方向に離間して配置してもよく、所望の冷却効果を達成するため様々なパターンで配置し得る。上述の通り、各冷却通路200,202について2以上が設けられて、それらを一緒に使用する場合、それらは、翼形部152,162の少なくとも一部に沿って半径方向に離間してもよく、所望の冷却効果を達成するために様々なパターンで配置することができる。一例では、複数の第1の冷却通路200は、翼形部152,162の前縁158,172に沿って半径方向に複数の第2の冷却通路202と交互に配置してもよい。冷却通路200,202の他のパターン、例えば、限定されるものではないが、2以上の第1及び第2の冷却通路200,202の群を交互に配置してもよい。
【0062】
特定の実施形態では、第1の冷却通路200及び第2の冷却通路202は、比較的断面的に小さいが長い通路である「マイクロチャネル」とみなすことができる。ある実施形態では、各冷却通路200,202は、0.1mm以下の平均断面積を有し得る。他の平均断面積も可能である。
【0063】
図6及び図7では、第1の冷却剤源210及び第2の冷却剤源230は、本体148,164内部の単一の冷却剤供給チャンバ190Aである。上述の通り、1以上の冷却剤供給チャンバ190は、特定の翼形部の翼形部冷却要件に応じて様々な形態を取り得る。図8は、本開示の他の実施形態に係る図5A及び図5Cのタービン翼形部152,162の冷却通路200を通るA-A矢視断面図を示す。図9は、本開示の他の実施形態に係る図5B及び図5Cのタービン翼形部152,162の冷却通路202を通るB-B矢視断面図を示す。これら他の実施形態では、2以上の冷却剤供給チャンバ190B,190Cは、内部分離壁250で分離されていてもよい。第1の冷却剤源210はそれ自身の冷却剤供給チャンバ190Bであってもよいし、第2の冷却剤源230はそれ自体の冷却剤供給チャンバ190Cとは異なる冷却剤供給チャンバ190Bであってもよい。この例では、第1の冷却剤源210は、前縁158,172に対して負圧側156,170だけに画成され、第2の冷却剤源230は、前縁158,172に対して正圧側154,168だけに画成される。冷却剤源210,230を供給する冷却剤供給チャンバ190は、図に示してはいないが、本開示の技術的範囲に属する多種多様な他の形態を取り得る。
【0064】
図10は、本開示の他の実施形態に係る冷却通路、プレナム及びフィルム冷却孔の拡大概略断面図を示す。冷却通路200,202及び/又はフィルム冷却孔214,234の断面積は、熱伝達の調節及び/又は通路を通る圧力/流れの制御のため、それらの長さに沿って変化し得る。例えば、冷却通路200,202及びフィルム冷却孔214,234(壁150,166内でのそれらの出口の上流側)は、異なる断面積を有し得る。ある非限定的な例では、冷却通路200,202はそれらの長さに沿って直径D1を有し、フィルム冷却孔214,234は直径D2(壁150,166内でのそれらの出口の上流側)を有し、D1>D2である。別の例では、1以上の冷却通路200,202は、その一部(例えばプレナム186,188の上流側)に、流量制御のための調量領域をもたらすべく、小さな断面積(ネックダウン)を有する不連続部分228を含んでいてもよい。冷却通路200,202の断面積についてはその他の変更も可能である。特に、前述の通り、背圧は、a)1以上の第1のフィルム冷却孔214に1以上の第1の冷却通路200の各々よりも断面積の小さい部分223(例えば図13図17及び図18参照)を設けることによって、第1のプレナム186及び1以上の第1の冷却通路200、及びb)1以上の第2のフィルム冷却孔234に1以上の第2の冷却通路202の各々よりも断面積の小さい部分226(例えば図13参照)を設けることによって、第2のプレナム188及び1以上の第2の冷却通路202、の少なくとも一方に生じさせることができる。
【0065】
図11は、図5A図5CのC-C矢視断面図を示す。翼形部152,162の半径方向位置に冷却通路200,202が設けられていない箇所では、従来の冷却システムを用いることができる。例えば、図11に示すように、円形「シャワーヘッド」又は半径方向冷却通路204の配置を用いることができる。冷却通路204は、冷却通路200,202と任意の配置(例えば交互、特定の通路群など)で用いることができる。
【0066】
図5A図5Cでは、各フィルム冷却孔214,234は対応する冷却通路200,202を含んでいる。ただし、この配置はすべての場合に必要とされるわけではない。図12は、本開示の他の実施形態に係る冷却通路200,202を含む翼形部152,162の概略正面図を示す。図12において、第1のフィルム冷却孔214A~C及び第2のフィルム冷却孔234A~Cの1以上は、対応する第1の冷却通路200及び第2の冷却通路202とは異なる数のフィルム冷却孔214又は234を含んでいる。すなわち、複数の第1のフィルム冷却孔214A~Cは、第1の冷却通路200の数とは異なる数の冷却孔214を含んでおり、複数の第2のフィルム冷却孔234A~Cは、第2の冷却通路202の数とは異なる数の冷却孔234を含んでいる。どのような配置も本開示の技術的範囲に属する。
【0067】
図に示す例では、複数の第1のフィルム冷却孔214A~C(図示3個)に、各々の単一の第1の冷却通路200から第1の冷却剤220を供給してもよい。例えば、第1のフィルム冷却孔214A~Cは、第1の冷却通路200に結合したプレナム186を共有する。他の非限定的な例では、2つの第1の冷却通路200で、5つのフィルム冷却孔214に結合したプレナム186に供給してもよいし、或いは3つの第1の冷却通路200で、2つのフィルム冷却孔214に結合したプレナム186に供給してもよい。同様に、複数の第2のフィルム冷却孔234A~C(図には3つを示す)に、それぞれの第2の冷却通路202から第2の冷却剤240を供給してもよい。例えば、第2のフィルム冷却孔234A~Cは、単一の第2の冷却通路202に結合したプレナム188を共有する。他の非限定的な例では、2つの第2の冷却通路202で、5つのフィルム冷却孔234に結合したプレナム188に供給してもよいし、或いは3つの第2の冷却通路202で、2つのフィルム冷却孔234に結合したプレナム188に供給してもよい。任意の数の冷却通路200,202及びフィルム冷却孔214,234は、十分な冷却剤の流れ及び圧力が存在する限り、それぞれプレナム186,188を共有し得る。上述の通り、1以上の第2のフィルム冷却孔234は、プレナム188及び/又は第2の冷却通路202と比較して断面積の減少した部分226を含んでいてもよい。
【0068】
図12は、第1のフィルム冷却孔の1以上(例えば214A,214C)が、第1の冷却通路200の1以上とは本体148,164内の異なる半径方向位置にあってもよいことも示している。それに代えて或いは加えて、複数の第2のフィルム冷却孔の1以上(例えば234A又は234C)は、第2の冷却通路202の1以上とは本体148,164内の異なる半径方向位置にあってもよい。様々な配置が可能である。
【0069】
図13は、翼形部152,162の本体148,164内での例示的なフィルム冷却孔214,234の側面図を示す。第1及び第2のフィルム冷却孔214,234は、現在公知の又は将来開発される任意の拡散開口の形態をとり得る。すなわち、フィルム冷却孔214,234は、単純な円形の「シャワーヘッド」孔ではなく、扇形又は発散開口を含んでおり、翼形部152,162の正圧側154,168及び負圧側156,170に沿って冷却膜を形成するのに役立つ。断面積の小さい部分226も図13に示してある。冷却フィルムは、正圧及び負圧側に沿って翼形部152,162の外面を冷却するために後方に流れる。
【0070】
図14は、本開示の他の実施形態に係る図5A及び図5Cの第1の冷却通路200を通るA-A矢視断面図を示し、図15は、図5B及び図5Cの第2の冷却通路202を通るB-B矢視断面図を示す。これらの実施形態では、第1及び第2のフィルム冷却孔214,234は、それぞれ負圧側156,170又は正圧側154,168に垂直であり、断面は略円形であってもよい。これに関して、それらは「シャワーヘッド」孔であり、図13のように側面で扇形又は発散孔ではない。いずれにせよ、冷却フィルムは正圧及び負圧側に沿って翼形部の外面を冷却するために後方に流れる。かかる実施形態では、第1及び第2のフィルム冷却孔214,234は、プレナム186,188の非存在下で、それぞれ第1及び第2の冷却通路200,202に直接結合する。
【0071】
図16は、他の実施形態の概略部分断面図を示す。この実施形態では、第1のプレナム186及び第2のプレナム188の少なくとも一方は、一貫していない断面積を有し得る。図に示す非限定的な例では、両方のプレナム186,188は、中点からその外端までの断面積が小さくなるように収束する。プレナム186,188は、様々な因子がある中でも、特に、例えば所望の冷却剤流量、体積又は背圧を達成するため所望の方法で断面積を変化させてもよい。
【0072】
図17及び図18は、他の実施形態の概略部分断面図を示す。図17及び図18は、冷却通路200,202が対応する冷却孔214,234のいずれとも整列していないサブ回路182,184を示す。上述の通り、図7は、より小さい断面積部226を含む1以上の第2のフィルム冷却孔234単独を示し、図17は、背圧を生じるために内部に小さい断面部223を含む第1のフィルム冷却孔214単独を示し、図18は、部分223を含む第1のフィルム冷却孔214及び第2のフィルム冷却孔234の両方を示し、より小さな断面積を有する226。
【0073】
本願で用いる冷却通路200,202は、その中を通過する冷却剤220,240からの熱の伝達を増大させるため、現在公知の又は将来開発される任意のタービュレータその他の熱伝達促進手段(図示せず)を含んでいてもよい。
【0074】
翼形部152,162は、鋳造又は積層造形などの任意の製造技術を用いて形成し得る。翼形部152,162を鋳造する場合、冷却通路200,202は、湾曲した通路を形成するための現在公知の又は将来開発される任意の方法(例えば逐次穴あけ加工、放電加工など)によって形成し得る。
【0075】
次に、本開示の実施形態に係るタービン翼形部、特にその前縁を冷却する方法について説明する。この方法は、正圧側154,168、負圧側156,170及び正圧側154,168と負圧側156,170の間に(略半径方向に)延在する前縁158,172を含む壁150,166を含む本体148,164を含むタービン翼形部152,162で行われる。この方法の実施形態は、第1の冷却通路200の内部で、第1の冷却剤220を負圧側156,170の第1の冷却剤源210から前縁158,172を巡って第1のプレナム186に、次いで正圧側154,168の壁150,166を通して複数の第1のフィルム冷却孔214に流すことを含むことができる。それに代えて或いは加えて、この方法は、第2の冷却通路202の内部で、第2の冷却剤240を正圧側154,168の第2の冷却剤源230から前縁158,172を巡って第2のプレナム188に、次いで負圧側156,170の壁150,166を通して第2のフィルム冷却孔234に流すことを含むことができる。
【0076】
前述の通り、複数の第1の冷却通路200及び複数の第2の冷却通路202を一緒に設けてもよい。この場合、この方法は、第1の冷却水源210から第1の冷却剤220を第1の冷却通路200の各々において負圧側156,170から正圧側154,168に流すことと、第2の冷却水源230から第2の冷却剤240を第2の冷却通路202の各々において正圧側154,168から負圧側156,170に流すことを含むことができる。複数の第1の冷却通路200は、複数の第2の冷却通路202と例えば翼形部152,162の前縁158,172に沿って半径方向に交互に配置してもよい。前述の通り、他のパターンも可能である。
【0077】
ある実施形態では、第1及び第2の冷却通路200,202は各々0.1mm以下の平均断面積を有し得る。冷却通路200,202の断面積は、熱伝達の調節及び/又は通路を通る圧力/流れの制御のため、それらの長さに沿って変化し得る。例えば、1以上の冷却通路200,202及び/又はフィルム冷却孔214,234は、流量制御のための調量領域をもたらすべくに、孔214,234のそれぞれの出口の上流に、小さな断面積(ネックダウン)を含んでいてもよい。
特に、背圧は、a)1以上の第1のフィルム冷却孔214に1以上の第1の冷却通路200の各々よりも断面積の小さい部分223(図17及び図18)を設けることによって、第1のプレナム186及び1以上の第1の冷却通路200、及びb)1以上の第2のフィルム冷却孔234に1以上の第2の冷却通路202の各々よりも断面積の小さい部分226(例えば図7図9図10図12図13及び図18参照)を設けることによって、第2のプレナム188及び1以上の第2の冷却通路202、の少なくとも一方に生じさせることができる。前述の通り、第1の冷却剤源210及び第2の冷却剤源230は、本体148,164内部の単一の冷却剤供給チャンバ190A(図6及び図7)であってもよいし、複数の冷却剤供給チャンバ190であってもよい。
【0078】
本開示の実施形態は、タービン翼形部の前縁で、前縁を取り囲む比較的小さな冷却通路(例えば、0.1mm以下の平均断面積を有するマイクロチャネル)を提供する。冷却通路には冷却剤(翼形部内部から冷却空気など)が供給され、前縁の冷却通路を流れる。次いで、冷却剤はフィルム冷却孔から排出され、前縁の下流の翼形部をさらに冷却する。各冷却サブ回路並びに関連する冷却通路は、比較的長い冷却通路に沿って冷却剤が吸収する熱量が(シャワーヘッド開口と比較して)増すので、前縁の冷却に必要な冷却剤の量を低減し、ターボ機械の効率及び出力を高める。両方のサブ回路が設けられている場合、冷却剤が比較的長い冷却通路に沿って流れて吸収する熱量が増すので、冷却剤を反対方向に流す冷却通路は、前縁の冷却に必要な冷却剤の量をさらに減らすことができる。
【0079】
さらに、冷却通路は翼形部の前縁の周りで冷却剤を流すので、円形「シャワーヘッド」冷却孔と比較して、優れたフィルム被覆域をもたらして前縁からさらに下流側まで冷却する成形フィルム冷却から冷却剤を排出することができる。フィルム冷却孔の数も減らすことができ、ボンドコーティング及び遮熱コーティングなどの翼形部のコーティングクリーンアップを簡素化できる。プレナムは、冷却通路とフィルム冷却孔の間に流体結合をもたらして、前縁に開口ができたときの作動流体の取込みを防止する。
【0080】
本明細書及び特許請求の範囲で用いる近似表現は、数量の修飾語であって、その数量が関係する基本機能に変化をもたらさない許容範囲内で変動し得る数量を表すために適用される。したがって、「約」、「略」及び「実質的に」のような用語で修飾された値はその厳密な数値に限定されない。場合によっては、近似表現は、その値を測定する機器の精度に対応する。本明細書及び特許請求の範囲において、数値限定の範囲は互いに結合及び/又は交換可能であり、かかる範囲は、前後関係等から別途明らかでない限り、その範囲に含まれるあらゆる部分範囲を特定しかつ包含する。範囲の特定の値に用いられる「約」は、上下限に適用され、その値を測定する機器の精度に依存する場合を除いて、記載された数値の±10%を示すことがある。
【0081】
以下の特許請求の範囲において機能的記載によって特定された構成要素の対応する構造、材料、行為及び均等物は、特許請求の範囲に具体的に記載された他の構成要素と組合せて機能を発揮するあらゆる構造、材料又は行為を包含する。本開示の記載は、例示及び説明を目的としたものであり、網羅的なものでもなければ、開示された形態に限定するものでもない。本開示の技術的範囲及び技術的思想から逸脱せずに、数多くの修正及び変形が当業者には明らかであろう。本開示の実施形態は、本開示の原理及び実用的用途の説明として最も適しかつ当業者が様々な実施形態に関する開示内容及び特定の用途に適した様々な修正について理解できるように、選択して記載したものである。
【符号の説明】
【0082】
112 ロータ
126 タービンノズル
128 半径方向外側プラットフォーム
130 半径方向内側プラットフォーム
132 タービン動翼
134 半径方向内側プラットフォーム
140 作動流体
142 動翼の根元
146 ロータホイール
148,164 翼形部の本体
150,166 翼形部本体の壁
152,162 タービン翼形部
154,168 正圧側
156,170 負圧側
158,172 前縁
160,174 後縁
180 冷却回路
182 負圧側乃至正圧側冷却サブ回路
184 正圧側乃至負圧側冷却サブ回路
186 第1のプレナム
188 第2のプレナム
200 第1の冷却通路
202 第2の冷却通路
210 第1の冷却剤源
214 第1のフィルム冷却孔
220 第1の冷却剤
230 第2の冷却剤源
234 第2のフィルム冷却孔
240 第2の冷却剤
250 分離壁
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
【外国語明細書】