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特開2024-20148コンピュータ断層撮影のためのシステム及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024020148
(43)【公開日】2024-02-14
(54)【発明の名称】コンピュータ断層撮影のためのシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 6/42 20240101AFI20240206BHJP
   A61B 6/03 20060101ALI20240206BHJP
【FI】
A61B6/42 530Q
A61B6/03 560B
A61B6/42 530Z
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023110486
(22)【出願日】2023-07-05
(31)【優先権主張番号】17/815,186
(32)【優先日】2022-07-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】319011672
【氏名又は名称】ジーイー・プレシジョン・ヘルスケア・エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100105588
【弁理士】
【氏名又は名称】小倉 博
(74)【代理人】
【識別番号】100129779
【弁理士】
【氏名又は名称】黒川 俊久
(74)【代理人】
【識別番号】100151286
【弁理士】
【氏名又は名称】澤木 亮一
(72)【発明者】
【氏名】チャファ・ファン
(72)【発明者】
【氏名】チャンリョン・キム
(72)【発明者】
【氏名】ミン・ヤン
(72)【発明者】
【氏名】スコット・ディ・スラヴィック
(72)【発明者】
【氏名】チャン・シー
(72)【発明者】
【氏名】ニコラス・アール・コンクル
(57)【要約】      (修正有)
【課題】コンピュータ断層撮影(CT)画像の品質を向上させるためのシステム及び方法を提供する。
【解決手段】一実施形態では、コンピュータ断層撮影(CT)検出器システムは、入射X線に対して光子計数型(PC)センサの層の下に配置されたエネルギー積分型検出器(EID)の層であって、前記PCセンサの数が前記EID検出器の数より多い、エネルギー積分型検出器(EID)の層と、EIDデータを用いてPCデータを補正し、画像の複数のペアにより訓練された深層学習畳み込みニューラルネットワーク(CNN)を用いて、EIDデータ及びPCデータから再構成された画像をノイズ除去し、前記再構成された画像の解像度を高めるように構成された画像処理ユニットとを含み、画像の各ペアは、PCセンサの層からの第1の信号から再構成された目標画像と、EID検出器の層からの第2の信号から再構成された入力画像とを含む。
【選択図】図5A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピュータ断層撮影(CT)検出器システムであって、
入射X線に対して光子計数型(PC)センサの層に対向する側に配置されたエネルギー積分型検出器(EID)の層であって、前記PCセンサの数が前記EID検出器の数より多い、エネルギー積分型検出器(EID)の層
を含むCT検出器システム。
【請求項2】
EIDデータを用いてPCデータを補正し、画像の複数のペアにより訓練された深層学習畳み込みニューラルネットワーク(CNN)を用いて、EIDデータ及びPCデータから再構成された画像をノイズ除去し、前記再構成された画像の解像度を高めるように構成された画像処理ユニットを更に含み、画像の各ペアは、PCセンサの層からの第1の信号から再構成された目標画像と、EID検出器の層からの第2の信号から再構成された入力画像とを含み、前記EIDデータ及び前記PCデータは、同じ患者の線経路から同時に取得される、請求項1記載のCT検出器システム。
【請求項3】
前記PCデータ及び前記EIDデータの両方のデータは、スペクトル情報及び非スペクトル情報を生成するために使用される、請求項2に記載のCT検出器システム。
【請求項4】
前記画像は、PCデータからではなく、EIDデータから再構成される、請求項2に記載のCT検出器システム。
【請求項5】
複数のPCセンサの各PCセンサの間の境界は、複数のEID検出器の各EID検出器の間の境界に対して整列していない、請求項1に記載のCT検出器システム。
【請求項6】
入射X線に対して前記EID検出器の層の反対側に配置された読出し電子回路部を更に備え、前記複数のPCセンサの各PCセンサからの信号は、前記EID検出器の間に配線されるワイヤボンドを通じて前記読出し電子回路部に伝送される、請求項1に記載のCT検出器システム。
【請求項7】
読出し電子回路部の第1のセットと読出し電子回路部の第2のセットとを更に備え、前記複数のEID検出器の各EID検出器からの信号が読出し電子回路部の第1のセットに伝送され、前記複数のPCセンサの各PCセンサからの信号が読出し電子回路部の第2のセットに伝送される、請求項1に記載のCT検出器システム。
【請求項8】
読出し電子回路部の第1のセット及び読出し電子回路部の第2のセットは、入射X線に対して前記EID検出器の層の反対側に配置され、前記複数のPCセンサの各PCセンサからの信号は、前記EID検出器の層の周りに配線された1以上のフレキシブルケーブルを通じて読出し電子回路部の第2のセットに伝送される、請求項7に記載のCT検出器システム。
【請求項9】
読出し電子回路部の第1のセットは、入射X線に対して前記EID検出器の層の反対側に配置され、読出し電子回路部の第2のセットは、前記PCセンサの層の一方の横に配置される、請求項7に記載のCT検出器システム。
【請求項10】
前記PCセンサの層のPCセンサは、2次元のPCセンサアレイの形式に配置され、各PCセンサアレイは、読出し電子回路部の第2のセットのうちの一つの読出し電子回路部と複数の回路とを含むプリント回路基板に取り付けられた半導体材料を含み、前記複数の回路の各回路は、前記PCセンサアレイのPCセンサを前記読出し電子回路部に電気的に結合する、請求項9に記載のCT検出器システム。
【請求項11】
前記画像処理ユニットは、PCデータのエネルギースペクトルと、入射X線に対して前記PCセンサの層の反対側に配置されたEID検出器で検出された入射フラックスレートとの両方に基づいて、PCセンサの層のPCセンサで検出された光子カウント値に適用されるパイルアップ補正を調節することによって、EIDデータを用いてPCデータを補正するように構成されている、請求項2に記載のCT検出器システム。
【請求項12】
コンピュータ断層撮影(CT)イメージングシステムのための方法であって、
前記CTイメージングシステムのCT検出器のPCセンサ層から受け取った光子計数(PC)データに基づいて第1の画像を再構成すること、
前記CT検出器のEID検出器アレイから受け取ったエネルギー積分(EI)データに基づいて第2の画像を再構成すること、
前記第1の画像をグランドトゥルースデータとして用いて、前記第2の画像の解像度が高くなるように、畳み込みニューラルネットワーク(CNN)を訓練すること、
前記第1の画像と前記第2の画像とを結合して、融合画像を生成すること、
前記融合画像を訓練済みCNNに入力して出力画像を生成することであって、前記出力画像は前記融合画像よりも高い解像度及び低いノイズを有する、出力画像を生成すること、及び
前記出力画像を前記CTイメージングシステムの表示装置に表示すること
を含む、方法。
【請求項13】
前記PCセンサの層からの第1の信号から再構成された目標画像と前記EID検出器の層からの第2の信号から再構成された入力画像とを含む画像の複数のペアで訓練された深層学習CNNを用いてEIDデータ及びPCデータから再構成された画像の解像度を高くすることは、
前記目標画像及び前記入力画像から融合画像を作成すること、
加重平均法、ガイド付きノイズ低減法、及び深層学習ノイズ低減法のうちの少なくとも1つを用いて、前記融合画像のノイズを除去すること、
前記ノイズが除去された融合画像を前記訓練済みCNNに入力して出力画像を生成することであって、前記出力画像は前記ノイズが除去された融合画像よりも高い解像度を有する、出力画像を生成すること
を更に含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記EID検出器アレイは、入射X線に対して前記PCセンサ層の反対側に配置される、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記PCセンサ層のPCセンサの間の境界は、前記EID検出器アレイのEID検出器の間の境界に対して整列していない、請求項14に記載の方法(700)。
【請求項16】
前記第1の画像と前記第2の画像を結合して前記融合画像を生成することは、前記第1の画像を第1のパラメータで重み付けし、前記第2の画像を第2のパラメータで重み付けすることを更に含む、請求項12に記載の方法。
【請求項17】
前記第1のパラメータ及び前記第2のパラメータは、前記融合画像のノイズの量を最小化すること、及び前記融合画像の解像度を最大化することのうちの一方を実行するように選択される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
加重平均法、ガイド付きノイズ低減法、及び深層学習ノイズ低減法のうちの少なくとも一つを使用して、前記融合画像のノイズを除去することを更に含む、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記PCセンサ層から受け取った前記PCデータに基づいて前記第1の画像を再構成することは、前記PCデータの光子カウント値に対してパイルアップ補正を実行することを更に含み、前記パイルアップ補正は、前記EID検出器アレイから受け取った前記EIDデータに基づいて実行される、請求項12に記載の方法。
【請求項20】
コンピュータ断層撮影(CT)検出器であって、
前記CT検出器の第1の層に配置された第1の数の光子計数型(PC)センサ、
前記検出器の第2の層に配置された第2の数のエネルギー積分型検出器(EID)であって、前記第2の層は入射X線に対して前記第1の層の反対側に存在し、前記第2の数は前記第1の数より小さい、第2の数のエネルギー積分型検出器(EID)、及び
前記第1の数のPCセンサ及び前記第2の数のEID検出器に電子的に結合された1つ以上の読出し電子回路部であって、前記1つ以上の読出し電子回路部は、前記入射X線に対して前記第2の層の反対側に配置され、前記1つ以上の読出し電子回路部は、前記第2の数のEID検出器の複数のキャスト反射体に対して複数の経路に沿うように配線された複数の回路を通じて、又は前記第2の数のEID検出器の周りのフレキシブルケーブルを通じて、前記第1の数のPCセンサから信号を受け取る、1つ以上の読出し電子回路部
を含む、CT検出器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示される対象の実施形態は、医用イメージングに関し、より詳細には、コンピュータ断層イメージングシステムを用いて再構成される画像の品質を向上させることに関する。
【背景技術】
【0002】
コンピュータ断層撮影(CT)イメージングシステムでは、陰極により発生した電子ビームがX線管内のターゲットに向けられる。電子がターゲットに衝突して生成されたX線のファンビーム又はコーンビームは、被検体(患者など)に向けられる。X線は、物体によって減衰した後、放射線検出器のアレイに衝突し、画像が生成される。
【0003】
CT画像の品質は、光子計数型CT(PCCT)を使用することによって向上させることができる。PCCTは、放射線検出器が光子計数型検出器であり、光子を計数してスペクトル情報を得ている。PCCTは直接変換型検出器を用いており、従来の間接変換型検出器を使用したエネルギー積分型検出器(EID)CTシステムよりも様々な利点がある。しかし、PCCTシステムでは、光子計数検出器の性能が限られているため、高入力カウントレートで光子のパイルアップが発生することがあり、高いX線フラックスレートにおいて画質が低下する。このパイルアップの影響を低減するために、小さい検出器画素を導入することが考えられる。しかし、検出器画素のサイズを小さくすると、使用するチャンネル数が増加し、消費電力とデータサイズの両方が増加する恐れがある。画素が小さくなると、画素間が近くなるのでチャンネル間のチャージシェアリングが多くなり、検出器モジュール間のギャップは、検出器画素サイズと同程度になることがある。更に、性能の低い画素が多くなる恐れがある。
【発明の概要】
【0004】
本開示は、入射X線に対して、光子計数型(PC)センサの層の反対側に配置されたエネルギー積分型検出器(EID)の層を含み、PCセンサの数がEID検出器の数を超えるCT検出器システムによって、上記の特定された複数の問題点のうちの1つ以上の問題点に少なくとも部分的に対処する。CT検出器システムは、EIDデータを用いてPCデータを補正し、画像の複数のペアで訓練された深層学習畳み込みニューラルネットワーク(CNN)を用いてEIDデータ及びPCデータから再構成された画像をノイズ除去し、画像の解像度を向上するように構成された画像処理ユニットを更に含むことができる。画像の各ペアは、PCセンサの層からの第1の信号から再構成された目標画像と、EID検出器の層からの第2の信号から再構成された入力画像とを含んでおり、EIDデータ及びPCデータは、同じ患者X線経路から同時に取得されたEIDデータ及びPCデータに得られている。EID検出器の層(例えば、2次元のEID検出器アレイ)とPCセンサの層(例えば、2次元のPCセンサアレイ)とを含む多層CT検出器を使用することにより、PC検出器とEID検出器の両方の利点を活用して、様々な臨床CTアプリケーションに対してどちらか一方の検出器タイプだけで実現される画質よりも高画質を実現することができる。PCセンサの層をEID検出器の層とX線源との間に配置することにより、従来のPCCT検出器システムと比較して、PCセンサのサイズを小さくすることができ、これにより、パイルアップの影響を低減し、PCデータ又はEIDデータのいずれか一方のみのデータから再構成された画像よりも、PCデータとEIDデータとの両方から再構成された画像の分解能を高め、ノイズ量を減少させることができる。
【0005】
更に、サイズが異なり、したがって、完全には整列しないPCセンサとEID検出器を含むことによって、PCセンサ間のギャップをEID検出器によって補償することができる。つまり、ギャップに入射してしまいPCセンサアレイでカウントされない光子は、そのギャップの下に配置されたEID検出器で検出することができ、入射X線の全ての光子をPCセンサ又はEID検出器のいずれかによって検出することができる。その結果、PCデータとEIDデータとの両方から再構成された画像は、PCデータ及びEIDデータのうちの一方のデータのみを使用する場合と比較して、解像度が向上し、ノイズ量が減少する。更に、この配置によって、現在実装されている傾斜した構成に頼ってしまうことを少なくすることができる。傾斜したエッジによって、各検出器素子の形状は長方形からずれてしまう。非対称形状では、検出器素子の幾何学的中心は信号重付け中心と異なるため、検出器素子の適切な幾何学的位置を割り当てることが難しく、隣接する検出器モジュールの対応する部分を揃えることが困難である。更に、パイルアップの問題はEID検出器を用いて回避され、センサの応答は入射X線束に対して線形であるため、EIDデータを使用してPCセンサデータのパイルアップ補正を行うことができ、その結果、パイルアップ補正を更に正確に行い、高分解能を実現することができる。
【0006】
提案する多層CT検出器の更なる利点は、PCセンサに使用されるシリコンチップのコストを削減できることである。シリコンは、優れたスペクトル応答を有することが実証されており、PCセンサの候補として優れている。しかし、PCセンサに使用されるシリコンの深さは、確実に良好な線量効率が得られ、パイルアップ量を確実に補正できるようにするため、他の半導体材料よりも深くしなければならない場合がある。しかし、CT検出器を透過するX線光子の一部はPCセンサを通過してEID検出器に入射することができ、EIDデータを用いてパイルアップを更に正確に補正することができるため、シリコンの深さを浅くして、CT検出器のコストとデータサイズを削減する(セグメント及びチャンネルを少なくする)ことができる。また、CT検出器の消費電力や熱放散も低減することができる。
【0007】
更に、光子カウント値に基づいて画像を再構成する場合とは対照的に、高速スループットが望まれ、従来のCT画像が望まれる場合、EIDデータを単独で使用して従来のkVp画像を生成することができる。EIDデータの投影はPCセンサ層によって十分にフィルタリングされているため、より狭いエネルギースペクトルが期待でき、EIDデータの投影のみから画像を再構成した場合、線質を硬化させる性能を向上させることができる。
【0008】
本記載の上記の利点及び他の利点並びに特徴は、以下の発明を実施するための形態から単独で、又は添付図面と組み合わせて、容易に明らかになる。上記の概要は、発明を実施するための形態で更に説明される概念の選択を簡略化した形で導入するために提供されることを理解されたい。上記の概要は、請求される対象の重要な又は本質的な特徴を特定することを意図するものではなく、請求される対象の範囲は、特許請求の範囲によって一意的に画定される。更に、請求される対象は、上記の欠点又は本開示の他の部分で記載された欠点を解決する実施態様に限定されることはない。
【図面の簡単な説明】
【0009】
本開示の様々な態様は、以下の発明を実施するための形態を読み、図面を参照することにより、更に理解することができる。
図1】本開示の1つ以上の実施形態によるイメージングシステムの図を示す。
図2】本開示の1つ以上の実施形態による例示的なイメージングシステムのブロック概略図である。
図3】本開示の1つ以上の実施形態によるPCCTシステムの例示的な検出器アレイの概略図である。
図4】本開示の1つ以上の実施形態による多層CT検出器に向かうX線を示す。
図5A】本開示の1つ以上の実施形態による第1の観点の多層CT検出器の概略図である。
図5B】本開示の1つ以上の実施形態による第2の視点の多層CT検出器の模式図である。
図6A】本開示の1つ以上の実施形態による多層CT検出器の2次元のPCセンサアレイの構成要素の概略図である。
図6B】本開示の1つ以上の実施形態による、多層CT検出器の複数の2次元PCセンサアレイと、下層のEID検出器層の複数のEID検出器との位置合わせを示す概略図である。
図6C】本開示の1つ以上の実施形態による、図6BのPCセンサアレイ及びEID検出器の構成を別の方向から示した概略図である。
図6D】本開示の1つ以上の実施形態による、多層CT検出器のPCセンサアレイ及びEID検出器の第1の代替構成を示す概略図である。
図6E】本開示の1つ以上の実施形態による、多層CT検出器のPCセンサアレイ及びEID検出器の第2の代替構成を示す概略図である。
図7】本開示の1つ以上の実施形態による、PCデータ及びEIDデータから再構成された画像の解像度を高めるための例示的な方法を示すフローチャートである。
【0010】
図面は、記載されたシステム及び方法の特定の態様を示すものである。以下の発明を実施するための形態とともに、図面は、本明細書に記載された構造、方法、及び原理を示し、説明するものである。図面において、構成要素の大きさは、明確にするために誇張されるか、又は変更されることがある。周知の構造、材料、又は動作は、記載された構成要素、システム、及び方法の態様を不明瞭にすることを避けるために、詳細に図示又は説明されていない。
【発明を実施するための形態】
【0011】
発明を実施するための形態及び本明細書に開示された対象の実施形態は、光子計数型コンピュータ断層撮影(PCCT)システムによって取得される画像の品質を向上させるための方法及びシステムに関する。一般に、コンピュータ断層撮影(CT)イメージングシステムでは、X線源は、物体(患者など)に向けて扇形ビーム又は円錐形ビームを放出する。一般に、CTシステムでは、X線源及び検出器アレイは、ガントリにおいて撮影面内で患者の周囲を回転し、画像は、異なるビュー角度における複数のビューの投影データから生成される。例えば、X線源の1回転で、CTシステムにより1000ビューを生成することができる。ビームは、患者によって減衰した後、放射線検出器のアレイに衝突する。X線検出器又は検出器アレイは、通常、検出器で受け取ったX線ビームをコリメートするコリメータと、コリメータに隣接して配置されX線を光エネルギーに変換するシンチレータと、隣接するシンチレータから光エネルギーを受け取り、受け取った光エネルギーから電気信号を生成するフォトダイオードとを含む。検出器アレイで受け取られた減衰ビーム放射の強度は、典型的には、患者によるX線ビームの減衰量に依存する。検出器アレイの各検出器素子は、各検出器素子によって受け取られた減衰ビームを示す個別の電気信号を生成する。電気信号は、データ処理システムに伝送され解析される。データ処理システムは、電気信号を処理して画像を生成する。
【0012】
このような従来のCTイメージングシステムは、放射線エネルギーを電流信号に変換する検出器を利用し、この電流信号は或る時間にわたって積分され、測定され、最終的にデジタル化される。しかしながら、このような検出器の欠点は、検出される光子の数及び/又は光子のエネルギーに関するデータ又はフィードバックを提供することができないことである。すなわち、シンチレータによって放出される光は、衝突したX線の数とX線のエネルギーレベルとの両方の関数である。フォトダイオードは、シンチレーションからのエネルギーレベル及び光子数を弁別することができない。例えば、2つのシンチレータが同等の強度で照射されると、その結果、それぞれのフォトダイオードに同等の出力が与えられる。しかし、同等の光出力が生成されるにもかかわらず、各シンチレータが受け取るX線の数は異なり、更に、X線の強度が異なる場合がある。
【0013】
対照的に、PCCT検出器は、高い空間分解能を有するように、光子計数を行うこと及び/又はエネルギー弁別フィードバックを提供することができる。PCCT検出器は、X線計数モード、各X線イベントのエネルギー測定モード、又はその両方のモードで動作することができる。ハイブリッド型光子計数エネルギー弁別検出器を構成する場合、複数の材料を使用することができるが、半導体が1つの好ましい材料であることが示されている。このような使用に対して典型的な材料として、テルル化亜鉛カドミウム(CZT)、テルル化カドミウム(CdTe)及びシリコン(Si)があり、これらの材料は費用対効果の高い生産性能を有することができる。他の重い半導体、臭化タリウム(TlBr)、ヨウ化水銀(HgI)などは、それらが効果的に大量に生産できる場合に使用することができる。
【0014】
PCCT検出器は、X線光子計数だけでなく、エネルギー測定又はタギングもサポートしており、解剖学的な詳細と組織の特性情報との両方を取得することをサポートする。この点で、エネルギー弁別情報又はデータは、線質硬化などの影響を軽減するために使用することができる。更に、これらの検出器は、組織弁別データの取得をサポートするので、疾患又は他の病態を示す診断情報を提供する。PCCT検出器は、ヨウ素及びカルシウム(及び他の高原子番号の材料)のコントラストを増強する最適なエネルギー重み付け技術を使用することにより、被検体に注入される材料(造影剤及び/又は他の特殊材料など)を検出する、被検体に注入される材料を測定する、及び被検体に注入される材料の特徴を明らかにするために使用することもできる。造影剤は、例えば、視覚的に見やすくするために血流に注入されるヨウ素を含むことができる。
【0015】
しかし、直接変換型半導体検出器の欠点は、このタイプの検出器が従来のCTシステムで一般的なX線光子束においてカウントできないことである。また、検出器とX線エネルギー源又はX線管との間に被写体の厚さの薄い部分がある場合、検出器の位置で飽和が発生することがある。飽和領域は、検出器のファンアークに投影される被検体の幅の近傍又は外側において、被検体の厚さの薄い部分の経路に対応する。多くの場合、被検体は、X線束の減衰の影響と、減衰後の検出器に対する入射強度の影響に関して言うと、概ね円形又は楕円形である。この場合、飽和領域は、ファンアークの両端にある2つの離れた領域を表す。典型的なではないが希有でもない他の例では、飽和は、検出器の他の箇所の3つ以上の離れた領域で発生する。
【0016】
パイルアップは、検出器における放射線源のフラックスが非常に高く、2つ以上のX線光子によって1つの画素に時間的に十分に接近した電荷パケットが付与され、それらの信号が互いに干渉する可能性が無視できない場合にPCT検出器で生じる現象である。パイルアップ現象は、一般的に2つの種類があり、この2種類の現象は少し異なる影響を与える。第1の種類では、2つ以上のイベントは十分な時間で分離されているので、2つ以上のイベントは別個のイベントとして認識されるが、信号が重なり合い、後から到達するX線又は両方のX線のエネルギー測定の精度が低下する。この種類のパイルアップは、結果として、システムのエネルギー分解能を低下させる。第2の種類のパイルアップでは、2つ以上のイベントが時間的に十分に接近して到達するため、システムは2つ以上のイベントを別個のイベントとして分離することができない。この場合、2つ以上のイベントはそれらのイベントのエネルギーを合計したエネルギーを持つ1つのイベントとして認識され、イベントはスペクトル上で高いエネルギーの方にシフトする。また、パイルアップによって、高いX線フラックスにおけるカウント値がかなり減少し、その結果、検出器の量子効率(DQE)が低下する。
【0017】
このパイルアップによって、直接変換型センサにおいて比較的低いX線フラックスレベルで検出器飽和が発生する場合がある。このレベルを超えると、検出器の応答が予測できなくなり、線量利用率が低下して画像情報が欠損し、その結果、X線投影画像及びCT画像にノイズ及びアーチファクトが発生する。特に、光子計数の直接変換型検出器は、各X線光子イベントに関連する固有の電荷収集時間(すなわち、電荷ドリフト時間)により飽和する。各画素のX線光子吸収率がこの電荷収集時間の逆数のオーダである場合、パルスパイルアップにより飽和が発生する。
【0018】
PCTシステムは、通常、データ収集システム(DAS)の読出し部の一部である比較器によって決定される1つ以上のエネルギービンを有する。1ビンシステムの場合、典型的には、比較器の1つのエネルギー閾値は、誤ったノイズカウントがほとんど無い又は全く無いように十分に高いエネルギー値であるが、読出しプロセスにおける信号X線の損失がほとんどないように十分に低いエネルギー値に設定される。このようなシステムは、説明されるように、複数のエネルギーイベントのパイルアップによる統計誤差及び偏りの影響を受ける。
【0019】
多くのエネルギービンを有するシステムは、読出しDASの複数の比較器を用いて形成することができる。各比較器は、エネルギーの設定レベルを超える光子に対してトリガするように設定することができ、その結果、対応するX線エネルギーレベルを超える光子数がレジスタに蓄積される。ビンのカウント値は重み付けされて加算され、イメージングシステムに適した特定の情報内容を有するシステム出力を形成することができる。しかしながら、1ビンシステムと同様に、マルチビンシステムは、パイルアップによる劣化を受け、その結果、DQEが低下する。ビンのカウント値の平均パイルアップを補正することはできるが、統計的精度は失われる。信号対雑音比(SNR)を使用して、システム出力に対する加重和を評価することができる。
【0020】
一部の実施形態では、PCCT検出器のセンサは、センサアレイ内に複数のセンサセグメントとして構成することができ、センサセグメントは、入射X線の方向に向けられる。センサセグメントを使用して、検出器におけるパイルアップ挙動を防止する又は考慮する。センサアレイに電気的に結合されアナログ/デジタル(A/D)変換及び読出しのための特定用途向け集積回路(ASIC)のチャンネルを節約するために、セグメントの数を最小限にすることができる。しかし、パイルアップがセンサセグメント内で発生する恐れがある。
【0021】
本明細書で開示するように、PC検出器とEID検出器との両方を含むことにより、PCCTシステムのパイルアップ動作やその他の欠点を最小限に抑えながら、直接変換形検出器の利点を得ることができる。具体的には、本明細書には、PCセンサアレイの下の層にEID検出器アレイが配置された多層検出器構造が開示されている。PCセンサアレイ及び/又はEID検出器アレイのための読出し電子回路部は、EID検出器アレイの下に配置してもよいし、PCセンサアレイの横に配置してもよい。本開示では、下とは、入射X線に対する構成要素の位置を表し、これは、図4図6Eにおいて、X線が垂直に下降しながらCT検出器の構成要素に入射するように示されている。したがって、PCセンサアレイの下又は下方のEID検出器アレイの位置は、PCセンサアレイの入射X線に対して反対側にEID検出器アレイを配置することを表しており、EID検出器アレイの下又は下方の読出し電子回路部の位置は、EID検出器アレイの入射X線(及びPCセンサアレイ)に対して反対側に読出し電子回路部を配置することを表している。
【0022】
X線経路上の光子のカウント値の測定は、PCセンサアレイとEID検出器アレイの両方を使用して行われ、EIDデータとPCデータは患者の同じX線経路から同時に取得される。EID検出器アレイが十分な信号を確実に得ることができるように、PCセンサアレイは、X線ビームのすべての光子を取り込まないように構成することができる。言い換えれば、PC検出器の阻止能は、PC検出器におけるパイルアップを低減することが期待される厚さによって最適化することができる。例えば、阻止能は、40%とすることができる(例えば、X線ビームの光子の40%がPCセンサアレイで検出され、X線の光子の60%がPCセンサアレイを通過してEID検出器アレイで検出される)。PCセンサアレイを通過したX線光子は、PCセンサアレイの下に配置されたEID検出器アレイに取り込まれる。PCセンサとEID検出器との両方を使用して、非スペクトル情報だけでなく、スペクトル情報を生成することができる。
【0023】
開示された検出器構造の少なくとも1つの利点は、PC検出器におけるパイルアップ動作を低減することに加えて、以下により詳細に説明するように、EIDデータを使用してPCデータにおけるパイルアップ動作を修正できることである。このように、両方の種類の検出器からの利点を活用して、様々な臨床CT用途に対して画質を向上させることができる。
【0024】
本技術に従って造影スキャンを実行するために使用することができるPCCTシステムの一例が、図1及び図2に示されている。図3は、PCCTシステムの例示的なCT検出器アレイを示し、X線源によって被検体に向けられたX線の光子は、PCCT検出器アレイのPCCT検出器によって計数される。検出器は、図4に示すように、PCセンサ層とEID検出器層とを含む多層CT検出器とすることができる。例示的な多層CT検出器の2つの斜視図が図5A及び図5Bに示されており、PCセンサ層及びEID検出器層用の読出し電子回路部は、EID検出器層の下に配置される。多層CT検出器の代替構成では、第1の読出し電子回路部は、PCセンサ層の光子を計数するように使用され、図6Aに示されるように、PCセンサアレイの横に配置することができる。複数のPCセンサアレイは、図6Bに示されるように、EID検出器層の複数のEID検出器の上に重ねることができる。第2の読出し電子回路部は、EID検出器層に入射するX線ビームのエネルギーを測定するために使用され、図6Cに示されるように、EID検出器層の下に配置することができる。PCセンサアレイは、複数のシリコンチップに複数のPCセンサを含むことができ、各PCセンサは、図6Dに示すように、PCセンサアレイの横に配置された第1の読出し電子回路部に電子的に結合することができる。別の代替構成では、第1の読出し電子回路部は、EID検出器層の下に配置することができ、複数のPCセンサは、図6Eに示されるように、EID検出器層の周りに配線された1つ以上のフレキシブルケーブルを経由して第1の読出し電子回路部に電子的に結合される。PCデータとEIDデータとの両方のデータから再構成された画像の解像度は、図7に記載の方法の1つ以上のステップに従うことによって向上させることができる。
【0025】
図1図6Eは、様々な要素の相対的な位置関係に関する例示的な構成を示す。要素が、互いに直接的に接触している、又は直接的に結合しているように図示されている場合、これらの要素は、少なくとも1つの実施例では、それぞれ、直接的に接触している要素又は直接的に結合している要素と言うことができる。同様に、互いに連続する又は隣接するように示された要素は、少なくとも一実施例では、それぞれ、互いに連続する要素又は互いに隣接する要素と言うことができる。一例として、互いに面を共有している要素は、面共有している要素と言うことができる。別の例として、互いに離れて配置された要素が、要素と要素との間にスペースが存在するが他の要素が存在しない場合、少なくとも一例において、互いに離れている要素と言うことができる。また、別の例として、互いに上下、互いに反対側、又は互いに左右に示される要素は、互いに、上下の要素、反対側の要素、又は左右の要素と言うことができる。更に、図に示すように、少なくとも1つの例では、最上部の要素又は要素の最上点は、要素の「上部」と呼ぶことができ、最下部の要素又は要素の最下点は、要素の「下部」と言うことができる。本明細書では、上部/底部、上側/下側、上/下は、図の垂直軸に対する相対的なものを表しており、図の要素の互いの位置を説明するために使用される。このように、他の要素の上に示される要素は、一例では、他の要素の上に垂直に配置される。更に別の例として、図に示された要素の形状は、それらの形状(例えば、円形、直線、平面、曲線、丸みのある、面取りされた、角度が付けられた、など)を有するものと言うことができる。更に、互いに交差するように示された要素は、少なくとも一例では、交差する要素又は互いに交差する要素と呼ぶことができる。更に、別の要素内に示された要素、又は別の要素の外側に示された要素は、一例では、別の要素内に示されている又は別の要素の外側に示されている要素と呼ぶことができる。
【0026】
図1は、光子計数型検出器を用いてCTイメージングを行うように構成された例示的なPCCTシステム100を示す。特に、PCCTシステム100は、患者などの被検体112、無生物、製造された1つ以上の部品、及び/又は異物(体内に存在するインプラント、ステント、及び/又は造影剤など)を撮像するように構成されている。一実施形態では、PCCTシステム100はガントリ102を含み、このガントリは、テーブル114に横たわる被検体112の撮影に使用されるX線放射ビーム106(図2参照)を放射する少なくとも1つのX線源104を更に含むことができる。具体的には、X線源104は、X線源104に対してガントリ102の反対側に配置された検出器アレイ108に向かってX線放射ビーム106を出力するように構成されている。図1には単一のX線源104のみが示されているが、或る例示的な実施形態では、複数のX線源及び複数の検出器を使用して、複数のX線放射ビームを出力し、患者に対応する異なるエネルギーレベルの投影データを取得してもよい。一部の実施形態では、X線源104は、ピークキロボルト(kVp)高速スイッチングよってデュアルエネルギーのジェムストーンスペクトルイメージング(GSI)を実行することができる。本明細書に記載された実施形態では、採用されるX線検出器は、互いに異なるエネルギーのX線光子を区別することができる光子計数型検出器である。
【0027】
特定の例示的な実施形態では、PCCTシステム100は、反復画像再構成法又は解析的画像再構成法を用いて被検体112のターゲットボリュームの画像を再構成する画像処理ユニット110を更に含む。例えば、画像プロセッサユニット110は、フィルタ補正逆投影法(FBP)などの解析的画像再構成手法を使用して、患者のターゲットボリュームの画像を再構成することができる。別の例として、画像処理ユニット110は、ASIR(advanced statistical iterative reconstruction、CG(conjugate gradient)、MLEM(maximum likelihood expectation maximization)、MBIR(model-based iterative reconstruction)などの反復画像再構成手法を使用して、被検体112のターゲットボリュームの画像を再構成してもよい。本明細書で更に説明するように、一部の例では、画像処理ユニット110は、反復画像再構成手法に加えて、解析的画像再構成手法(FBPなど)も使用することができる。
【0028】
一部のCTイメージングシステムの構成では、X線源は、デカルト座標系のX-Y-Z面内でコリメートされ一般に「撮影面」と呼ばれるコーン状のX線放射ビームを照射する。X線放射ビームは、撮影される物体(患者又は被検体など)を通過する。X線放射ビームは、物体によって減衰した後、検出器素子のアレイに衝突する。検出器アレイで受信された減衰したX線放射ビームの強度は、物体によるX線放射ビームの減衰に依存する。アレイの各検出器素子は、検出器位置におけるX線ビーム減衰の測定値である個別の電気信号を生成する。すべての検出器素子からの減衰測定値を個別に取得して透過プロファイルを作成する。
【0029】
一部のCTシステムでは、X線源とX線検出器アレイは、X線ビームが物体と交差する角度が絶えず変化するように、ガントリによって、撮影されるべき物体の周囲を撮影面内で回転する。あるガントリ角度においてX線検出器アレイから得られたX線放射減衰測定値のグループ(例えば投影データ)は「ビュー」と呼ばれる。物体の「スキャン」は、X線源及び検出器が1回転する間に、異なるガントリ角又はビュー角において作成されたビューのセットを含む
【0030】
図2は、図1のPCCTシステム100と同様の例示的なイメージングシステム200を示す。本開示の態様に従って、イメージングシステム200は、被検体204(例えば、図1の被検体112)を撮影するように構成される。一実施形態では、イメージングシステム200は、検出器アレイ108(図1参照)を含んでいる。検出器アレイ108は、被検体204(患者など)を通過するX線放射ビーム106(図2参照)を感知して対応する投影データを取得する複数の検出器素子202を更に含んでいる。一部の実施形態では、検出器アレイ108は、セル又は検出器素子202の複数の列を含むマルチスライス構成で製作され、検出器素子202の1つ以上の追加の列を並列に配置して投影データを取得することができる。
【0031】
特定の例示的な実施形態では、イメージングシステム200は、被検体204の周りの異なる角度位置を移動して、所望の投影データを取得するように構成されている。従って、ガントリ102とガントリ102に搭載された構成要素は、例えば異なるエネルギーレベルで投影データを取得するために、回転中心206の周りを回転するように構成することができる。あるいは、被検体204に対する投影角度が時間の関数として変化する実施形態では、搭載された構成要素は、円弧に沿うのではなく、一般的な曲線に沿って移動するように構成してもよい。
【0032】
X線源104及び検出器アレイ108が回転すると、検出器アレイ108は、減衰したX線ビームのデータを収集する。検出器アレイ108によって収集されたデータは、前処理及びキャリブレーションされ、スキャンされた被検体204の減衰係数の線積分が表されるようにデータが調整される。処理されたデータは、一般に投影と呼ばれる。一部の例では、検出器アレイ108の個々の検出器又は検出器素子202としては、個々の光子の相互作用を1つ以上のエネルギービンに記録する光子計数型検出器とすることができる。
【0033】
取得された投影データのセットは、基準物質弁別(BMD)に使用することができる。BMDの間、測定された投影は、物質密度投影のセットに変換される。物質密度投影は再構成され、骨、軟組織などの各基準物質の物質密度マップのペア若しくは物質密度画像のペア又は物質密度マップのセット若しくは物質密度画像のセット、及び/又は造影マップを形成することができる。これらの密度マップ又は密度画像は、順に関連付けられ、撮影ボリュームの基準物質(例えば、骨、軟組織、及び/又は造影剤)の3Dボリュメトリック画像を形成することができる。
【0034】
再構成されると、イメージングシステム200によって生成された基準物質画像は、2つの基準物質の密度で表される被検体204の内部特徴を明らかにする。密度画像を表示して、これらの特徴を示すことができる。医学的事象(医学的状態など)の診断、より一般的には医療事象の診断に対する従来のアプローチでは、放射線科医又は医師は、密度画像のハードコピー又は表示された密度画像を検討して、関心のある特徴部分を識別すると考えられる。このような特徴部分としては、病変、特定の解剖学的構造又は臓器のサイズ及び形状、並びに個々の専門家の技能及び知識に基づいて画像の中から識別可能であると考えられる他の特徴部分がある。
【0035】
一実施形態では、イメージングシステム200は、構成要素の動き(ガントリ102の回転及びX線源104の動作など)を制御する制御機構208を含んでいる。特定の実施形態では、制御機構208は、X線源104に電力及びタイミング信号を供給するように構成されたX線コントローラ210を更に含む。更に、制御機構208は、撮影要件に基づいてガントリ102の回転速度及び/又は位置を制御するように構成されるガントリモータコントローラ212を含んでいる。
【0036】
特定の実施形態では、制御機構208は、検出器素子202から受け取ったアナログデータをサンプリングし、アナログデータを、次の処理のためデジタル信号に変換するように構成されたデータ収集システム(DAS)214を更に含む。DAS214は、本明細書で更に説明されるように、検出器素子202のサブセットからのアナログデータをいわゆるマクロ検出器に選択的に集約するように更に構成することができる。DAS214によってサンプリングされデジタル化されたデータは、コンピュータ又はコンピューティング装置216に伝送される。少なくとも1つの実施例において、コンピューティング装置216は、画像処理ユニット110と同一又は類似であってよいことに留意されたい。一実施例では、コンピューティング装置216は、データを記憶装置又は大容量記憶装置218に記憶する。記憶装置218は、任意の種類の非一時的メモリとすることができ、例えば、ハードディスクドライブ、フロッピーディスクドライブ、コンパクトディスク読取り/書込み(CD-R/W)ドライブ、デジタルバーサタイルディスク(DVD)ドライブ、フラッシュドライブ、及び/又はソリッドステートストレージドライブとすることができる。
【0037】
更に、コンピューティング装置216は、DAS214、X線コントローラ210、及びガントリモータコントローラ212のうちの1つ以上に命令及びパラメータを提供して、システム動作(データ取得及び/又はデータ処理など)を制御する。特定の例示的な実施形態では、コンピューティング装置216は、オペレータ入力に基づいてシステム動作を制御する。コンピューティング装置216は、例えば、コンピューティング装置216に動作可能に結合されたオペレータコンソール220によって、コマンド及び/又は走査パラメータを含むオペレータ入力を受け付ける。オペレータコンソール220は、オペレータがコマンド及び/又は走査パラメータを指定できるように、キーボード(図示せず)又はタッチスクリーンを含むことができる。
【0038】
図2は1つのオペレータコンソール220が図示されているが、例えば、システムパラメータを入力する又は出力する、検査をリクエストする、データをグラフ化する、及び/又は画像の閲覧するために、2つ以上のオペレータコンソールがイメージングシステム200に結合されてもよい。更に、特定の実施形態では、イメージングシステム200は、配置可能な1つ以上の有線ネットワーク及び/又は無線ネットワーク(インターネット及び/又は仮想プライベートネットワーク、無線電話ネットワーク、無線ローカルエリアネットワーク、有線ローカルエリアネットワーク、無線広域ネットワーク、有線広域ネットワークなど)を通じて、複数のディスプレイ、プリンタ、ワークステーション、及び/又は施設若しくは病院内に又は全く異なる場所にローカルに若しくは遠隔に配置されている同様の装置に結合することができる。
【0039】
一実施形態では、例えば、イメージングシステム200は、画像保存通信システム(PACS)224を含んでいる又はPACS224に結合されている。例示的な実施形態では、PACS224は、放射線科情報システム、病院情報システムなどの遠隔システムに更に結合され、及び/又は内部又は外部のネットワーク(図示せず)に結合されて、別の場所にいるオペレータが命令及びパラメータを供給する及び/又は画像データへのアクセスを獲得できるようにする。
【0040】
コンピューティング装置216は、オペレータが供給した及び/又はシステムが定義した命令及びパラメータを使用して、テーブルモータコントローラ226を動作させ、その結果、電動テーブルとすることができるテーブル114を制御することができる。具体的には、テーブルモータコントローラ226は、テーブル114を動かして、ガントリ102に被検体204を適切にポジショニングし、被検体204のターゲットボリュームに対応する投影データを取得することができる。
【0041】
前述したように、DAS214は、検出器素子202によって取得された投影データをサンプリングし、デジタル化する。その後、画像再構成器230が、サンプリングされデジタル化されたX線データを用いて高速再構成を実行する。図2は画像再構成器230を独立した実体として例示しているが、特定の例示的な実施形態では、画像再構成器230はコンピューティング装置216の一部を形成していてもよい。あるいは、画像再構成器230はイメージングシステム200に存在していなくてもよく、代わりに、コンピューティング装置216が画像再構成器230の1つ以上の機能を実行してもよい。更に、画像再構成器230は、ローカルに又は遠隔に配置されていてもよく、有線ネットワーク又は無線ネットワークを用いてイメージングシステム200に動作可能に接続されていてもよい。特に、1つの例示的な実施形態では、「クラウド」ネットワーククラスタ内のコンピューティングリソースを画像再構成器230のために使用してもよい。
【0042】
一実施形態では、画像再構成器230は、再構成された画像を記憶装置218に記憶する。あるいは、画像再構成器230は、診断及び評価のために有用な患者情報を生成するために、再構成された画像をコンピューティング装置216に送信してもよい。或る実施形態では、コンピューティング装置216は、再構成された画像及び/又は患者情報を、コンピューティング装置216及び/又は画像再構成器230に通信可能に結合されたディスプレイ又はディスプレイ装置232に送信してもよい。一部の例示的な実施形態では、再構成された画像は、コンピューティング装置216又は画像再構成器230から、短期保存又は長期保存のために記憶装置218に送信されてもよい。
【0043】
ここで図3を参照すると、CT検出器アレイ300が示されており、これは図2の検出器アレイ108の非限定的な例である。検出器アレイ300はレール304を含んでおり、レール304の間には、コリメートブレード又はプレート306が配置されている。プレート306はX線302をコリメートするように配置されており、X線302がコリメートされた後、そのビームはプレート306の間に配置された検出器アレイ300の複数の検出器308に衝突する。一例として、検出器アレイ300は57個の検出器308を含むことができ、各検出器308は64x16の画素素子のアレイサイズを有する。その結果、検出器アレイ300は64行912列(16x57個の検出器)を有することになり、ガントリ回転(例えば、図1のガントリ102)ごとに64スライスのデータを同時に収集することができる。
【0044】
以下により詳細に説明するように、各CT検出器308は多層CT検出器とすることができる。多層CT検出器は、放射線エネルギーを、エネルギー弁別データ又は光子カウント値データを含む電気信号に直接変換するように構成されたPCセンサアレイと、放射線エネルギーを、隣接して配置されたシンチレータから光エネルギーを受け取るフォトダイオードによって、電気信号に間接変換するように構成されたEID検出器アレイとの両方を含む。
【0045】
図4は、提案された多層CT検出器構造400を示し、多層CT検出器構造400は、X線406に対して、最上層に配置されたPCセンサアレイ402と、最下層(例えば、PCセンサアレイ402の下)に配置されたEID検出器アレイ404とを含む。PCセンサアレイ402は、第1の数MのPCセンサを含む2次元センサアレイであり、EID検出器アレイ404は、第2の数NのEID検出器を含む2次元センサアレイであり、MはNより大きくすることができる。MがNより大きいことによって、PCセンサは第1の大きさ(例えば、長さ及び幅)、EID検出器は第2の大きさとすることができ、第2の大きさは第1の大きさとは異なっている。例えば、第1の数MのPCセンサのうちのPCセンサ414が、第1の長さ422及び第1の幅424を有することができる。第2の数NのEID検出器のうちのEID検出器416が、第2の長さ432及び第2の幅434を有することができ、第2の長さ432及び第2の幅434は、第1の長さ422及び第1の幅424より大きい。
【0046】
各PCセンサと各EID検出器との大きさが違うことによって、再構成画像を更に高品質にすることができる。M=Nの場合、MとNの両方に対して使用される各センサの長さと幅は同じである。PCセンサとEID検出器の両方のサイズが小さい場合、EID検出器は大きな線量効率の問題が生じる恐れがある。PCセンサとEID検出器の両方のサイズが大きい場合、PCセンサは深刻なパイルアップの問題がある。M>Nでは、良好なパイルアップ補正、高い空間分解能、良好な線量効率を同時に実現することが可能である。
【0047】
PCセンサ414は、第1の高さ420を有することができ、EID検出器416は、第2の高さ430を有することができる。一部の実施形態では、第1の高さ420は、第2の高さ430よりも大きい。第1の高さ420は、PCセンサアレイ402における入射光子の所望の減衰率又は阻止能によって決めることができる。例えば、X線ビーム406がPCセンサアレイ402のPCセンサに入射すると、X線ビーム406の光子の第1の部分がPCセンサによって検出され、X線ビーム406の光子の第2の部分がPCセンサを通過して、EID検出器アレイ404のうちの、当該PCセンサの下に配置されたEID検出器によって検出される。PCセンサの高さが増加するにつれて、第1の部分に含まれる光子の割合が増加し(例えば、PCセンサで検出される光子が多くなる)、PCセンサの高さが減少するにつれて、第1の部分で検出される光子の割合が減少する。したがって、PCセンサの高さ(例えば、第1の高さ420)は、PCセンサアレイ402の所望の減衰率又は阻止能を実現するように選択することができる。
【0048】
所望の減衰率は、PCセンサアレイ402において予想されるパイルアップ挙動に基づくものである。例えば、より多くの光子がPCセンサアレイ402で減衰するにつれて、PCセンサアレイ402の各PCセンサにおいて予想されるパイルアップ挙動は増加する。したがって、第1の高さ420は、予想されるパイルアップ挙動が所望の閾値以下に維持されるように選択されるが、パイルアップ挙動が閾値より大きい場合にはパイルアップ挙動が正確には補正できない恐れがある。更に、半導体材料は異なる減衰率を有する場合があるので、第1の高さ420は、PCセンサアレイ402において使用される半導体材料に基づいて選択される場合がある。例えば、所望の減衰率を実現しようとしたときに、半導体材料がシリコンである場合、第1の高さ420は、半導体材料がCZT又はCdTeである場合よりも大きくすることができる。EID検出器の高さは、PCセンサを通過したX線の大部分(例えば、95%以上)を捕獲するために、DQEを最大にするように選択することができる。例えば、パイルアップが低減されるようにPC検出器の厚さを薄くした場合、通過したX線の大部分が捕獲されるようにEID検出器を厚くすることができる。
【0049】
EID検出器よりも小さいPCセンサを有する追加の利点は、一部のX線ビームが各PCセンサ414の間の境界からPCセンサアレイ402に入射した場合に、X線ビームの光子がどのPCセンサ414によっても検出されないことである。例えば、PCセンサアレイ402のPCセンサ間の境界440は、EID検出器アレイ404のEID検出器の間の境界442の真上に位置し、したがって、X線ビームは、境界440を経由してPCセンサアレイ402を検出されずに通過し、境界442を経由してEID検出器アレイ404を検出されずに通過することができる。しかしながら、各PCセンサ414のサイズが各EID検出器416のサイズと同じであるM=N構成(この構成では、例えば、境界が一列に並ぶ)とは対照的に、図4に示すM>N構成では、各PCセンサ414間の複数の境界のうちの一部の境界からPCセンサアレイ402に入射するX線ビームの光子は、境界の下に配置されたEID検出器416によって検出することができる。例えば、PCセンサアレイ402のPCセンサ間の境界444を通過するX線ビームは、下にあるEID検出器416によって検出することができる。その結果、PCセンサアレイ402とEID検出器アレイ404の両方をカウントされない状態で通過する光子の数が減少するので、DQEが高くなり、より高品質な再構成画像を得ることができる。更に、一部の実施形態では、PCセンサアレイ402の各PCセンサ414間の境界が、EID検出器アレイ404の各EID検出器間の境界の真上に配置されないように、PCセンサアレイ402及びEID検出器アレイ404の位置合わせにオフセットを設けてもよい。言い換えれば、PCセンサがオーバーラップするように構成することによって、PCセンサアレイ402とEID検出器404の両方を通過するX線ビームの数を更に減少させることができる。
【0050】
更に、X線ビームがPCセンサ414間の境界を通過することによって(又は不良画素によって)PCセンサアレイ402が信号を測定しない場合、EID検出器アレイ404からの対応する測定値を使用して、PCセンサアレイ402における欠損データの回復を助けることができる。同様に、X線ビームがEID検出器416間の境界を通過することによって、EID検出器アレイ404が信号を測定しない場合、PCセンサアレイ402のうち、当該境界の上に配置されたPCセンサ414からの対応する測定値を使用して、EID検出器アレイ404における欠損データの回復を助けることができる。
【0051】
ここで図5Aを参照すると、PCCTシステムの多層CT検出器500の部分図が示されている。多層CT検出器500は、図3の検出器308の非限定的な実施形態とすることができる。多層CT検出器500の複数の列は、上述のように、投影データを取得するための検出器アレイ(例えば、検出器アレイ108)を形成するように並列構成で配置することができる。
【0052】
多層CT検出器500は、PCセンサアレイ502、EID検出器アレイ515、及びプリント回路基板(PCB)516を含む。図5Aに示す実施形態では、PCセンサアレイ502、EID検出器アレイ515、及びPCB516は、入射X線ビーム501の方向(矢印507で示す)に対して縦に配置される。EID検出器アレイ515はPCセンサアレイ502の下に配置され、PCB516はEID検出器アレイ515の下に配置される。他の実施形態では、PCセンサアレイ502、EID検出器アレイ515、及びPCB516は、以下でより詳細に説明するように、互いに異なる構成で配置することができる。
【0053】
多層CT検出器500の列が並列構成で配置されて検出器アレイを形成する場合、PCセンサアレイ502及びEID検出器アレイ515の列は、図4を参照して説明したPCセンサアレイ402及びEID検出器アレイ404と同様の2次元センサアレイを形成することができる。
【0054】
PCセンサアレイ502及びEID検出器アレイ515は、両方とも、PCB516に取り付けられた特定用途向け集積回路(ASIC)512に電子的に結合することができる。以下により詳細に説明するように、ASIC512は、PCセンサアレイ502のセンサで検出された光子カウント値を計算し、EID検出器アレイ515の積分電荷をデジタル化することができる。PCセンサアレイ502は、複数のビア513に沿ってEID検出器アレイ515の画素間の反射体材料内を走る複数のワイヤボンド514を通じてASIC512に結合することができる。EID検出器アレイ515は、複数のワイヤボンド519を通じてASIC512に電子的に結合することができる。更に、PCB516は、検出器500の読出し電子回路部の接続部518を含むことができ、読出し電子回路部は、PCセンサアレイ502によって検出された光子の数を計算し、EID検出器アレイ515の電荷信号をデジタル化するために使用することもできる。読出し電子回路部は、PCB516に外付けすることができる(例えば、組立及び試験中に使用するため)。読出し電子回路部は、PCCTシステムのDAS(例えば、DAS214)の一部を形成する。
【0055】
PCセンサアレイ502は、PCセンサアレイ502のエッジ511に衝突する光子をカウントするように構成することができる。様々な実施形態において、PCセンサアレイ502は、半導体材料(シリコンなど)で作られたチップに埋め込むことができる。チップの幅は、PCセンサアレイ502のエッジ511において、1画素とすることができる。複数のセンサ(例えば、図4のセンサ414など)は、チップの表面に沿って埋め込まれ、チップの長さ方向に延在することができる。各センサは、エッジ511の1つの画素509に対応する。各センサは、1つ以上のセンサセグメント505を含むことができ、これらのセンサセグメントは、各画素509の下に延在するカラム503に埋め込まれ、入射X線ビーム501の方向507(例えば、図5Aの垂直方向)に向けられている。各カラム503の各センサセグメント505は、PCセンサアレイ502の表面にわたって、エッジ511の画素509に対応する約1画素の幅を有することができる。各カラム503の各センサセグメント505は、画素509においてエッジ511に衝突する入射X線ビーム501の光子の数をカウントすることができる。
【0056】
言い換えれば、各カラム503は、カラム503において方向507に縦に重ねられた複数のセグメント505を含むことができる。例えば、(垂直方向に示された)各カラム503は、第1の垂直位置504の第1のセグメント、第2の垂直位置506の第2のセグメントなどを含むことができる。図5Aに示された実施形態では、各カラム503は、2つのセグメント505を含んでいる。他の実施形態では、各カラム503は、2個、3個、4個、又は異なる個数のセグメント505を含むことができる。カラム503における各セグメント505の大きさは同じであってもよいし、カラム503の各セグメント505の大きさは異なってもよい。例えば、カラム503の第1のセグメント505は、パイルアップを低減するために、カラム503の第2のセグメント505より小さくすることができる。
【0057】
各セグメント505は、PCB516に搭載されたASIC512に電気的に結合することができる。様々な実施形態において、PCセンサアレイ502の各セグメント505は、PCCTセンサトレース508を通じてPCセンサアレイ502のセンサボンドパッド510に電気的に結合することができる。センサボンドパッド510は、ワイヤボンド514を通じてASIC512に電気的に結合することができ、このワイヤボンド514は、EID検出器アレイ515を貫通してビア513に沿ってPCB516に到達することができる。
【0058】
各セグメント505は、X線ビーム501の入射光子の数を検出することができる。X線ビーム501が画素509においてPCセンサアレイ502に衝突すると、X線ビーム501は、対応するカラム503の重ねられた複数のセグメント505を通過することができる。X線ビーム501がカラム503の重ねられた各セグメント505を通過するとき、X線ビーム501に含まれる光子の数が、関連するセグメント505で検出することができる。
【0059】
例えば、例示的なX線ビーム501は、カラム503の第1の垂直位置504の第1のセグメント505に入射することがあり、第1のセグメント505は、例示的なX線ビーム501の第1の数の光子を検出することができる。光子の第1の数は、例示的なX線ビーム501の全ての光子数より少なく、全光子のうちの第2の数の光子は、検出されずに第1のセグメント505を通過することができる。例示的なX線ビーム501のうちの、第1のセグメント505を通過する(検出されない)第2の数の光子は、カラム503の第2の垂直位置506の第2のセグメント505に入射することができる。第2のセグメント505は、例示的なX線ビーム501の第3の数の光子を検出することができる。光子の第3の数は、光子の第2の数よりも少なくてもよく、第4の数の光子は、検出されずに第2のセグメント505を通過することがある。
【0060】
カラム503の垂直方向に重ねられた各セグメント505で検出される光子の数は、異なっていてもよい。例示的なX線ビーム501の光子の第1の部分は、第1のセグメント505によって検出することができ、例示的なX線ビーム501の光子の第2の部分は、第2のセグメント505によって検出することができ、追加のセグメントについても同様である。例えば、例示的なX線ビーム501の多くの光子は第1のセグメント505で検出され、例示的なX線ビーム501において、第1のセグメント505で検出される光子よりも少ない光子が第2のセグメント505で検出され、例示的なX線ビーム501の更に少ない光子が第3のセグメント505で検出される。更に、例示的なX線ビーム501の一部の光子は、カラム503におけるどのセグメント505でも検出されないことがある。
【0061】
X線ビーム501がPCセンサアレイ502を通過する場合、X線ビーム501はPCセンサアレイ502の半導体材料によって様々な度合いで減衰する。光子が第1のセグメント505及び第2のセグメント505で検出されると、それに応じて、X線ビーム501のエネルギーの量が減少する。X線ビーム501が第1のセグメント50又は第2のセグメント505で検出されない光子が存在する場合(追加のセグメント505でも検出されない場合)、X線ビーム501に残る光子は、PCセンサアレイ502の下に配置されたEID検出器アレイ515で検出することができる。具体的には、X線ビーム501に残るエネルギーは、EID検出器アレイ515のうちの、第1のセグメント505及び第2のセグメント505の下に配置されたEID検出器530によって検出することができる。
【0062】
各EID検出器530は、X線を光エネルギーに変換するシンチレータ532と、シンチレータ532の下に配置され、光エネルギーを電気信号に変換するフォトダイオード534とを含むことができる。電気信号は、フォトダイオード534のボンドパッド521から、ワイヤボンド519を経由してASIC512に伝送することができる。各EID検出器530の各シンチレータ532は、1つ以上の隣接するEID検出器530の1つ以上の隣接するシンチレータ532からキャスト反射体536によって分離され、これにより、対応するシンチレータ532において放出された光エネルギーが1つ以上の隣接するシンチレータ532に混じってしまうことを防止できる。図5Aでは、EID検出器530は、各セグメント505と同じ幅(例えば、1ピクセル)を有するように示されているが、他の実施形態では、EID検出器530は、図4を参照しながら説明したように、PCセンサアレイ502のセンサよりも幅広であってもよいことを理解されたい。
【0063】
EID検出器530をセグメント505の下に配置することによって、X線ビーム501の全光子を多層CT検出器500によって検出することができる。X線ビーム501の光子の第1の部分がPCセンサアレイ502で検出され、X線ビーム501の光子の第2の部分がシンチレータ532で検出される。EID検出器530は第1のセグメント505及び第2のセグメント505の下に配置されるので、PCセンサアレイ502の高さ(例えば、及び/又は第1のセグメント505の高さ及び第2のセグメント505の高さ)は、所望の量のX線束がPCセンサアレイ502によって光子として検出されるように構成することができ、ここで所望の量のX線束は、パイルアップ動作について正確に補正できる光子の数である。したがって、PCセンサアレイ502の高さを、得られる再構成画像の品質に影響を与えることなく低くすることができ、これにより、必要とされる半導体材料が少なくなるため、多層CT検出器500のコストを低減することができる。例えば、半導体材料がシリコンである場合、更に小型で更に安価なチップを使用することができる。
【0064】
光子がセグメント505に衝突すると、アナログ電気信号が生成され、アナログ電気信号は、センサトレース508及びセンサボンドパッド510を通じてASIC512に伝送される。アナログ電気信号は、光子のエネルギー量に比例する。ASIC512は、光子ヒットの発生をカウンタでカウントすることによって、アナログ電気信号をデジタル信号に変換することができる。更に、ASICは、電気信号の量を1つ以上の予め決められた閾値と比較することにより、光子によって付与されたエネルギーを識別することができる。具体的には、ASIC512は、複数の比較器を含むことができ、複数の比較器の各比較器は、アナログ信号が比較器に関連する信号レベル閾値を超えたときに、対応するデジタルカウンタを1だけインクリメントさせるためのトリガ信号を出力する。複数の比較器の各比較器は、信号レベル閾値が異なっていてもよい。例えば、ASIC512は、第1の信号レベル閾値を有する第1の比較器、第2の信号レベル閾値を有する第2の比較器であって、第2の信号レベル閾値は第1の信号レベル閾値より高い第2の比較器、第3の信号レベル閾値を有する第3の比較器であって、第3の信号レベル閾値は第2の信号レベル閾値より高い第3の比較器など、光子のスペクトルの最大エネルギーレベルまでの比較器を含むことができる。閾値のペアの差は、エネルギー範囲又はエネルギービンを画定する。したがって、エネルギーが各ビン内に入る光子の数は、ASIC(又は読出し電子回路部)によって記録することができる。これらの光子のカウント値は、画像再構成に使用されるように、ASICによって接続部524を通じてPCBに伝送することができる。あるいは、ASICは、数値のカウント情報に対して追加の動作(所与のカラム内のビンからの個々の光子カウント値を合計するなど)を最初に実行して、光子の全カウント値を生成してもよい。
【0065】
各カラム503に複数のセグメントを含むことの利点は、より正確にパイルアップ挙動を説明できるということである。X線は、半導体材料がどのようにセグメントに分割されるかに関係なく、半導体材料(例えば、シリコン)の深さによって吸収される。各セグメント505は、セグメントに吸収されるX線から信号を生成することができる独立した感知素子として機能する。その結果、各セグメント505は、半導体材料の、当該セグメント505に関連する領域内で吸収されたX線をカウントし、他のX線は吸収されずにセグメント505を通過する。各セグメント505は、ASICの各セグメント独自の計数チャンネル回路に接続されているので、X線のカウント値の合計が複数のチャンネルに分散される。それにより、各チャンネルは、容易に吸収率に追いつくことができる。
【0066】
PCセンサアレイ502の各センサをセグメントに分割することにより、光子のパイルアップの影響を低減することができるが、パイルアップは依然として発生し、光子カウント値を不正確にする恐れがある。しかしながら、PCセンサアレイ502の下にEID検出器アレイ515を配置することにより、パイルアップ補正の効率が最大化され、PCセンサデータ及びEID検出器データを用いて再構成される画像の品質が最大化されるように、PCセンサアレイ502のサイズ及びEID検出器515のサイズを有利に選択することができる。多層CT検出器500の利点は、全ての電子回路部が両方の検出器の下にあり、信号損失が限定され、小さい検出器素子を並べて大型検出器を作ることができ、これにより、大型検出器の素子を別の場所(例えば、CT検出器の横)に配線するよりも小型の設計が可能になる。
【0067】
また、EID検出器アレイ515をPCセンサアレイ502の下に配置すると、有利なことに、PCセンサの下に配置されたEID検出器からのデータによって、PCセンサの光子カウント値に適用されるパイルアップ補正を行うことができる。具体的には、PCセンサの下に配置されたEID検出器で検出された入射フラックスを使用して、パイルアップ補正を調整することができる。EID検出器の応答は、検出されたX線の全エネルギーに対して線形である。X線のスペクトルは患者やPC検出器を通過した後に変化するため、パイルアップ較正の際にはPCとEIDの両方を使用することができる。X線フラックスが低い場合、PCとEIDの両方のデータは、入射X線に対して線形応答を示す。PCデータは、すべてのエネルギービン(エネルギースペクトル)に対して線形であると考えることができる。X線フラックスが高い場合、PCデータはパイルアップにより線形応答から外れることはあるが、EIDデータは線形を維持する。PCデータのエネルギースペクトルとEIDの入射フラックスレートデータの両方を使用し、パイルアップモデル式を使用してパイルアップ較正ベクトルを計算することができる。EIDデータはX線フラックスに依存しない線形であるため、EIDデータによってパイルアップの較正の品質が向上する。パイルアップ較正ベクトルを患者データに適用してパイルアップ補正が行われる。
【0068】
図5Bは、図5Aの多層CT検出器500の側面透視図550を示す。側面透視図550には、2次元EID検出器アレイ551の上に配置された複数のPCセンサアレイが示されている。複数のPCセンサアレイの各PCセンサアレイは、図5Aの非限定的な例のPCセンサアレイ502とすることができ、EID検出器アレイ551は、図5Aの非限定的な例のEID検出器アレイ515とすることができる。複数のPCセンサアレイは、第1のPCセンサアレイ552、第2のPCセンサアレイ554、第3のPCセンサアレイ556、及び第4のPCセンサアレイ558を含む。EID検出器アレイ515は、複数のEID検出器(第1のEID検出器560及び第2のEID検出器562など)を含む。第1のEID検出器560は、キャスト反射体564(例えば、図5Aのキャスト反射体536)によって第2のEID検出器562から分離することができる。側面透視図550は、多層CT検出器500の一部分であって、本開示の範囲から逸脱することなく追加のPCセンサアレイ及び/又はEID検出器を含むことができる部分を含んでもよいことを理解されたい。
【0069】
図5Bは、多層CT検出器500の異なる構成要素の相対的な厚さを示す。図5Bにおいて、複数のEID検出器の各EID検出器は、複数のPCセンサアレイの各PCセンサアレイとは異なる長さ、幅、及び/又は厚さを有することができる。例えば、第1のPCセンサアレイ552、第2のPCセンサアレイ554、第3のPCセンサアレイ556、及び第4のPCセンサアレイ558の厚さ570は、第1のEID検出器560及び第2のEID検出器562の厚さ572より薄くすることができる。厚さ570が厚さ572よりも薄いので、複数のPCセンサアレイを、EID検出器アレイ551の様々な複数のEID検出器と位置合わせすることができる。例えば、第1のPCセンサアレイ552及び第2のPCセンサアレイ554は、第1のEID検出器560の上に配置することができ、第3のPCセンサアレイ556及び第4のPCセンサアレイ558は、第2のEID検出器562の上に配置することができる。その結果、第1のPCセンサアレイ552のPCセンサに入射する入射X線ビーム580は、第1のPCセンサアレイ552内で部分的に減衰し、弱められたX線ビーム580(例えば、エネルギーが低下したX線ビーム)が第1のPCセンサアレイ552を通過して第1のEID検出器560で検出することができる。同様に、第2のPCセンサアレイ554のPCセンサに入射する入射X線ビーム582は、第2のPCセンサアレイ554内で部分的に減衰し、弱められたX線ビーム582が第2のPCセンサアレイ554を通過して第1のEID検出器560で検出することができる。対照的に、第3のPCセンサアレイ556のPCセンサに入射する入射X線ビーム584は、第3のPCセンサアレイ556内で部分的に減衰し、弱められたX線ビーム584は第3のPCセンサアレイ556を通過して第2のEID検出器562で検出され、第4のPCセンサアレイ558のPCセンサに入射する入射X線ビーム586は第4のPCセンサアレイ558内で部分的に減衰し、弱められたX線ビーム586は第4のPCセンサアレイ558を通過して第2のEID検出器562で検出することができる。
【0070】
図示されている実施形態では、第1のPCセンサアレイ552、第2のPCセンサアレイ554、第3のPCセンサアレイ556、及び第4のPCセンサアレイ558の各々は、対応するワイヤボンド522を通じて(例えば、キャスト反射体564の経路又はビアを通るワイヤボンドを通じて)ASIC512に電気的に結合されている。第1のEID検出器560及び第2のEID検出器562の各々も、対応するワイヤボンド519を通じて、ASIC512に電気的に結合されている。他の実施形態では、1つ以上の追加のASIC512をPCB516に搭載することができ、この場合、PCセンサアレイの一部及び/又はEID検出器アレイの一部を、1つ以上の追加のASIC512に電子的に結合することができる。
【0071】
この構成の1つの利点は、PCセンサの間又はPCセンサアレイの間を進むX線を、PCセンサアレイの下に配置されたEID検出器で検出できることである。例えば、X線ビーム590は、第1のPCセンサアレイ552と第2のセンサアレイ554との間から多層CT検出器500に入射し、X線ビーム590が第1のPCセンサアレイ552及び第2のセンサアレイ554のいずれのセンサアレイでも検出されないことがある。しかし、X線ビーム590は、第1のPCセンサアレイ552及び第2のセンサアレイ554の下に配置されたEID検出器560に入射して検出することができる。このように、EID検出器560及び562はPCセンサアレイ552、554、556、及び558に部分的に重なるので、多層CT検出器500のPCセンサ層を検出されずに通過するX線ビームは、多層CT検出器500のEID検出器アレイで検出され、高品質の再構成画像を得ることができる。
【0072】
図5A及び図5Bの構成の第2の利点は、電子回路部(例えば、PCB516、ASIC512など)をEID検出器アレイの下に配置することによって、PCセンサアレイ、EID検出器、及び他の要素間の回路及び電子接続部の長さが短くなり、他の構成よりも信号損失が少なく、また材料コストが削減された小型のCT検出器が得られることである。EID検出器アレイの下に電子回路部を配置することで、有利なことに、小さい検出器素子を並べてコスト効率の良い方法で大きい検出器を作成することができる。
【0073】
図5A及び図5Bは、PCセンサアレイの下に配置されたEID検出器アレイを含むCT検出器の様々な利点を示し、PCB516、ASIC512、及び他の読出し電子回路部を含む電子回路部が、EID検出器アレイ及びPCセンサアレイの下に垂直配列で配置される。対照的に、図6A図6B図6C図6D、及び図6Eは、PCセンサアレイの下に配置されたEID検出器アレイを含む多層CT検出器の代替構成を示しており、電子回路部の一部がEID検出器アレイの下に配置されていない。
【0074】
図6Aは、CT検出器に含まれるPCセンサアレイの代替構成600を示しており、この代替構成600では、入射X線ビームの光子をカウントする及び光子のエネルギーを測定するために使用されるASICを含む電子回路部が、センサアレイの一方の横に配置されている。代替構成600では、PCセンサアレイ606は、シリコンチップ602をフレキシブルPCB又はセラミックPCB604に取り付けることによって形成される。ASIC616は、PCB604において、シリコンチップ602の一方の横に取り付けられる。シリコンチップ602は、複数のPCセンサ610に分割することができ、各PCセンサ610は、図5Aを参照して上述したように、1つ以上のセンサセグメントを含むことができる。各PCセンサ610は、ソルダーポイント612を含むことができ、ソルダーポイントによって、PCセンサ610は、PCB604に埋め込まれた対応する回路614であって、PCセンサ610をASIC616に電子的に接続する回路614に結合することができる。透視図608は、PCセンサアレイ606の上部を示し、PCセンサアレイ606の前面622のシリコンチップ602は、PCセンサアレイ606の背面620のPCB604に取り付けられている。図5A及び図5Bに示されたCT検出器とは対照的に、図示されたASIC616は、PCセンサアレイ606の下方(例えば、EID検出器アレイの下方)ではなく、PCセンサアレイ606の一方の横に配置されている。
【0075】
図6Bは、複数のPCセンサアレイを含むCT検出器の第1の透視図650を示し、複数のPCセンサアレイの各PCセンサアレイは、図6Aの非限定的な例のPCセンサアレイ606とすることができる。複数のPCセンサアレイは、第1のPCセンサアレイ651、第2のPCセンサアレイ652、第3のPCセンサアレイ653、第4のPCセンサアレイ654、第5のPCセンサアレイ655、及び第6のPCセンサアレイ656を含み、これらのセンサアレイは、図4を参照して上述したように、個々のPCセンサの2次元アレイを作成するために並列構成で配置されている。第1の透視図650は、複数のPCセンサアレイとEID検出器アレイ659の複数のEID検出器との位置合わせを説明する図であり、第1のPCセンサアレイ651、第2のPCセンサアレイ652、及び第3のPCセンサアレイ653は、第1のEID検出器列657のEID検出器の上に配置することができ、第4のPCセンサ654、第5のPCセンサ655、及び第6のPCセンサ656は第2のEID検出器列658のEID検出器の上に配置することができる。したがって、第1のPCセンサアレイ651に含まれるPCセンサ(例えば、PCセンサ610)の第1の部分660は、第1のEID検出器列657の第1のEID検出器663の上に配置することができ、第1のPCセンサアレイ651に含まれるPCセンサの第2の部分661は、第1のEID検出器列657の第2のEID検出器664の上に配置することができ、第1のPCセンサアレイ651に含まれるPCセンサの第3の部分662は、第1のEID検出器列657の第3のEID検出器665の上に配置することができる。同様に、第2のPCセンサアレイ652及び第3のPCセンサアレイ653に含まれるPCセンサの第1の部分660は、第1のEID検出器663の上に配置することができ、第2のPCセンサアレイ652及び第3のPCセンサアレイ653に含まれるPCセンサの第2の部分661は、第2のEID検出器664の上に配置することができ、第2のPCセンサアレイ652及び第3のPCセンサアレイ653に含まれるPCセンサの第3の部分662は、第3のEID検出器665の上に配置することができる。
【0076】
図6Cは、図6BのCT検出器の第2の透視図670を示し、第2の透視図670は、下向きのX線ビーム601に対しPCセンサアレイの下に位置合わせされたEID検出器の側面図を示す。図6Cは、PCセンサアレイ606(PCセンサアレイ651、652、653、654、655、及び656など)を示し、PCセンサアレイ606は、EID検出器アレイ677の第1のEID検出器672、第2のEID検出器673、及び第3のEID検出器674の上に配置されている。例えば、第1のEID検出器672は図6BのEID検出器663に対応し、第2のEID検出器673はEID検出器664に対応し、第3のEID検出器674はEID検出器665に対応する。CT検出器のフォトダイオード層675は、複数のフォトダイオード(例えば、図5Aのフォトダイオード534)を含むことができ、複数のフォトダイオードは、第1のEID検出器672、第2のEID検出器673、及び第3のEID検出器674で検出された光子を、CT検出器の第2のASIC676に送ることができる電気信号に変換する。
【0077】
例えば、X線ビーム601は、PCセンサアレイ606のPCセンサ671に入射する。X線ビーム601の全ての光子数の一部が、PCセンサ671で検出することができる。検出された部分の光子は、ASIC616でカウントすることができる。X線ビーム601に、検出されていない光子が含まれていると、X線ビーム601はPCセンサ671を通過してEID検出器672に入射することができる。しかし、光子の一部がPCセンサ671で検出されている結果、X線ビームフラックス601の、EID検出器672に入射する部分が低減する。EID検出器672は、X線ビーム601のエネルギーを光に変換することができ、この光によって、フォトダイオード層675のフォトダイオードが電流を生成することができる。電流は、フォトダイオード層675の下に配置することができるCT検出器の第2のASIC676に送ることができる。フォトダイオードによって検出されたフラックスが減少したX線ビーム601と、PCセンサ671で検出された一部の光子の光子カウント値の両方を使用して、画像を再構成することができる。
【0078】
PCセンサ671とEID検出器672の両方のデータに基づいて画像を再構成することにより、画像の解像度は、PCCT検出器によって再構成された画像と同じくらい高く(例えば、EID検出器のみによって実現できる解像度よりも高く)することができ、画像のノイズレベルは、PCCT検出器によって再構成された画像のノイズレベルよりも低くすることができる。解像度は高いのは、本明細書に記載された要因の中でも、PCセンサ671が、EID検出器層の無いPCCT検出器のPCセンサよりも小さく、EID検出器672からのデータが、PCセンサ671からの光子カウント値に適用されるパイルアップ補正を支援するために使用されるからである。
【0079】
スペクトル情報を推定する場合には、PCセンサ671からの複数のエネルギービンのPCデータを使用することができる。しかし、EID検出器672からのEIDデータを使用することもできる。EIDデータは、ワイドビンの独立した応答として扱うことができる。システム応答モデリング及び/又はファントム較正を通じて、PCデータと同様にEIDデータも物質弁別プロセスの一部として使用することができる。
【0080】
更に、EIDデータ自体を使用して、PCデータを使用せずに従来のkVp画像を生成することもできる。これは、高速スループットが望まれ、従来のCT画像が望まれる場合に、臨床的に有利になることがある。EID投影はPCセンサによってフィルタリングされるので、狭いエネルギースペクトルを期待することができ、その結果、EID投影のみから画像を再構成した場合に線形硬化性能を改善することができる。EIDデータから生成される画像のノイズを低減するために、PCセンサからの光子カウント値をEIDデータと組み合わせて、従来のkVp画像を生成することができる。PCセンサからの光子カウント値をEIDデータと組み合わせることには、PCセンサデータ及びEIDデータにエネルギーの重み付けを割り当てることを含むことができる。
【0081】
図6Dは、図6CのCT検出器の代替構成680を示し、PCセンサアレイ681は、PCセンサアレイ681の横に配置されたASIC616を含む単一のPCB688に取り付けられた複数のシリコンチップ602を含む。例えば、PCセンサアレイ681は、複数のセンサ610を含む第1のシリコンチップ682と、複数のセンサ610を含む第2のシリコンチップ684と、複数のセンサ610を含む第3のシリコンチップ686とを含み、第1のシリコンチップ682、第2のシリコンチップ684、及び第3のシリコンチップ686の各センサ610は、ASIC616に電子的に結合されている。一部の実施形態では、1つ以上の追加のASIC616がPCB688に含まれていてもよい。第1のシリコンチップ682、第2のシリコンチップ684、及び第3のシリコンチップ686の各センサ610は、上述のように、EID検出器アレイ689のEID検出器の上に配置することができる。
【0082】
図6Eは、図6Cに示す構成と同様の構成のCT検出器690を示すが、PCセンサアレイ691に、異なる半導体材料(例えば、シリコン以外の材料)が使用されている。例えば、異なる半導体材料は、テルル化亜鉛カドミウム(CZT)であってもよいし、テルル化カドミウム(CdTe)であってもよいし、異なる種類の半導体材料であってもよい。図6AのPCセンサアレイ606と同様に、PCセンサアレイ691は、複数のPCセンサ(例えば、センサセグメント)694を含み、各PCセンサ694は、複数のPCセンサ694で検出された光子をカウントするよう構成されたASIC696に電子的に結合される。異なる半導体材料の密度は、シリコンの密度より大きくてもよく、各PCセンサ694は、(下向きのX線ビーム601に対して)シリコンチップ602の高さ(例えば、10mm~50mm)よりも低い高さ(例えば、1~3mm)を有することができる。
【0083】
図6A図6Dとは異なり、ASIC696は、EID検出器アレイ697(例えば、EID検出器アレイ677)の下に配置されており、EID検出器アレイ697は、上述のように、フォトダイオード層699の上に配置された複数のEID検出器698を含んでいる。PCセンサアレイ691は、1つ以上のフレキシブルケーブル693を通じてASIC696に電子的に結合することができ、これにより、ASIC696をフォトダイオード層699の下に配置することができる。ASIC696をEID検出器アレイ697の下に配置することによって、PCセンサアレイ691とEID検出器アレイ697との間の材料の量を最小にすることができる。PCセンサアレイ691とEID検出器アレイ697との間の材料はX線を吸収するので、PCセンサアレイ691とEID検出器アレイ697との間の材料の量を最小にすることによってCT検出器690の効率が増加し、より高品質の再構成画像を得ることができる。第2のASIC695は、フォトダイオード層699の下に配置することができ、第2のASIC695を使用して、PCセンサアレイ691を通過してEID検出器アレイ697のEID検出器698に入射するX線ビームの検出されるエネルギーの量を測定することができる。したがって、CT検出器690によって検出されたX線に基づいて再構成された各画像は、PCセンサアレイ691で検出されてASIC696でカウントされた光子カウント値と、EID検出器アレイ697で測定されてASIC695で積分されたX線ビームエネルギーとを用いて再構成することができる。
【0084】
次に図7を参照すると、フローチャートが示されている。フローチャートには、多層CT検出器のPCセンサアレイ(例えば、PCセンサアレイ402)のPCセンサから受け取ったPCデータと、多層CT検出器のEID検出器アレイ(例えば、EID検出器アレイ404)のEID検出器から受け取ったEIDデータとを使用して、CTシステムの多層CT検出器(例えば、多層CT検出器500)に入射するX線から再構成される画像の解像度を高める例示的方法700が図示されている。上記のように、PCデータとEIDデータの両方に基づいて画像を再構成することにより、より多くのX線光子を検出することができ、EIDデータを使用してPCデータのパイルアップ補正を支援することができ、その結果、PCセンサ又はEID検出器のみから再構成された画像よりも高解像度でノイズの少ない画像を得ることができる。更に、以下に説明するように、訓練済みの畳込みニューラルネットワークを使用して解像度を更に高くするために、方法700を使用することができる。方法700は、非一時的メモリに命令として記憶され、CTイメージングシステムのコンピューティング装置(図2のイメージングシステム200のコンピューティング装置216など)の1つ以上のプロセッサによって実行することができる。
【0085】
方法700は702から始まる。方法700は、多層CT検出器を使用して被検体の走査を開始することを含む。多層CT検出器は、図4を参照して上述したように、EID検出器の第2の層の上に重ねられたPCセンサの第1の層を含むことができる。一部の実施形態では、多層CT検出器は、図5A及び5Bの多層CT検出器500又は図6Eの多層CT検出器690の非限定的な例とすることができ、多層CT検出器の読出し電子回路部は、入射X線の方向に対してEID検出器の第2の層の下に配置される。他の実施形態では、多層CT検出器は、図6A図6Dを参照して説明した多層CT検出器の非限定的な例とすることができ、PCセンサの第1の層の各PCセンサアレイで光子をカウントするように構成された第1の読出し電子回路部が、PCセンサアレイの一方の横に配置され、EID検出器の第2の層のEID検出器に入射するX線ビームのエネルギーを測定するように構成された第2の読出し電子回路部が、EID検出器の第2の層の下に配置される。
【0086】
704において、方法700は、PCデータとEIDデータの両方のデータを使用してPCデータをパイルアップ補正した後に、多層CT検出器のPCセンサの第1の層から受け取った信号に基づいて画像Iの第1のセットを再構成することを含む。信号は、PCセンサの第1の層の複数のPCセンサアレイ(図6AのPCセンサアレイ606など)から、ASIC(例えば、ASIC512又はASIC616)などの対応する読出し電子回路部に伝送することができる。
【0087】
706において、方法700は、多層CT検出器のEID検出器の第2の層から同時に受け取った信号に基づいて画像Iの第2のセット(例えば、この画像は同じX線ビームのセットから生成される)を再構成することを含む。信号は、EID検出器の第2の層の複数のEID検出器(図6BのEID検出器663、664、及び665など)から、EID検出器に対応する読出し電子回路部(例えば、図6CのASIC512又はASIC676)に伝送することができる。PCセンサの第1のサイズはEID検出器の第2のサイズよりも小さいので、画像Iは、画像Iよりも低い解像度を有することができる。IとIの両方とも入射X線信号の一部を使用しているので、I及びIはノイズが多い恐れがある。
【0088】
708において、方法700は、低解像度画像Iを高解像度画像Iにマッピングするように深層学習CNNを訓練することを含む。深層学習CNNの訓練の前に、入力画像ペア(I,I)が生成される。画像Iは入力画像であり、画像Iはグランドトゥルース画像である。CNNの訓練中、CNNに入力された各入力画像Iに対して、CNNの様々な層の重みがバックプロパゲーションを用いた勾配降下プロセスによって調整され、CNNの出力と関連画像ペアの対応するグランドトゥルース画像Iとの間の計算された差分を最小化する。CNNを訓練した後、新しい再構成画像が訓練済みCNNに入力されると、訓練済みCNNは、新しい再構成画像の解像度が高くなった高解像度の画像を出力することができる。
【0089】
710において、方法700は、各画像ペア(I,I)から融合画像Iを作成することを含む。様々な実施形態では、融合画像Iは、画像I及びIの重み付けされた組み合わせとすることができる。ここで、I=aI+bIである。Iのノイズの量を最小化するように、Iの解像度を最大にするように、又は目標とする解像度と目標とするノイズレベルを実現するように、パラメータa及びbを調整することができる。この融合ステップが行われると、融合画像Iは、IとIの両方よりも低いノイズ量を有し、Iよりも高い解像度であるがIよりも低い解像度を有する。目標のノイズレベルは、一般的に使用されている方法で実現することができる。例えば、水ファントムをスキャンし、画像IとIを再構成することができる。水ファントムの画像は均一であるため、IとIのノイズレベル及び融合画像I=aI+bIを測定することができる。出力画像のノイズレベルを最小にするため、又は或るノイズレベルにするために、a及びbの適切な値を求め、出力された融合画像I=aI+bIのノイズは、最小ノイズ又は或るレベルのノイズである。画像Iの解像度と画像Iの解像度との間の特定の解像度を得るために、タングステンワイヤを用いた解像度ファントムをスキャンし、画像Iと画像Iを再構成し、所与のa及びbに対して融合画像Iの解像度を測定することができる。a及びbの適切な値を求めることにより、Iの目標解像度を実現することができる。
【0090】
712において、方法700は、融合画像Iをノイズ除去して、ノイズが除去された融合画像Ifdを生成することを含む。融合画像Iは、従来の加重平均法、又はガイド付きノイズ低減法若しくは深層学習ノイズ低減法でノイズ除去され、ノイズ除去された画像Ifdを生成することができる。加重平均ノイズ除去法では、画素(i,j)の出力値は以下の式で計算される。ここで、wは近傍画素の重みであり、Nは近傍サイズを定義するために用いられる。通常、wは、加重平均法では、Iから計算される。この重みは、様々な方法(例えば、バイラテラルフィルタリング法又は非局所平均法)を用いて計算することができる。
【数1】

ガイド付きノイズ除去では、ガイド画像から重みを計算することができる。例えばI画像は、I及びIよりも低ノイズであるので、ガイド画像として使用することができる。重みは、様々な方法(例えば、バイラテラルフィルタリング法又は非局所平均法)を使用して、Iから計算することができる。深層学習のノイズ除去を使用することもできる。低ノイズ又はノイズのないCT画像パッチのセットをグランドトゥルース画像として用意することができ、CTノイズパッチのセットを用意することができる。グランドトゥルースCT画像パッチ及びCTノイズパッチは、深層学習ニューラルネットワークの入力として使用される。対応するグランドトゥルース画像は、深層学習ニューラルネットワークの出力として使用してもよい。訓練プロセス中、ニューラルネットワークは、ネットワーク出力画像とグラウンドトゥルース画像パッチとの間の差分を最小化するようにネットワーク重みを最適化することができる。ネットワークを訓練すると、ネットワーク重みのセットが取得される。ノイズ除去プロセスでは、スキャンからのCT画像がネットワークに入力され、ノイズ除去されたCT出力画像が生成される。
【0091】
714において、方法700は、ノイズ除去された融合画像Ifdを訓練済み深層学習CNNに入力して、ノイズ除去された融合画像Ifdよりも高い解像度を有する推論出力画像Ioutputを生成することを含む。Ifdは、ステップ712の結果、ノイズの量が減少しているため、推論フェーズの間において、ノイズは、訓練済みCNNで増加しすぎるということはない。ノイズ除去された融合画像Ifdを訓練済み深層学習CNNに供給することによって、得られる出力画像Ioutputは、光子計数型CTシステムで得られるであろう解像度と同程度の高解像度を有するが、低ノイズとすることができる。
【0092】
716において、方法700は、CTシステムの表示装置に出力画像を表示することを含む。そして、方法700は終了する。
【0093】
別の実施形態では、画像ペア(I,I)の各画像I及びIは、深層学習CNNが訓練される前に、(例えば、ステップ712の従来の加重平均法、ガイド付きノイズ低減法、又は深層学習ノイズ低減法によって)ノイズ除去することができる。次に、CNNは、ノイズ除去された画像ペア(I2d,I1d)のセットで訓練することができる。画像I2dは入力画像であり、画像I1dはグランドトゥルース画像である。ノイズ除去された画像ペア(I2d,I1d)でCNNを訓練した結果、元の画像ペア(I,I)とは対照的に、その後の(例えば、PCデータ及びEIDデータに基づく新しい再構成画像を用いた)推論フェーズの間、訓練済みCNNは、高解像度でノイズの増加の少ない画像を出力することができる。次いで、訓練済みCNNによって出力された画像は、ステップ710で説明したように融合することができる。パラメータa及びbは、得られる融合画像の解像度が更に増加し、ノイズが更に減少するように、調整することができる。
【0094】
このように、第1のPCセンサ層と第2のEID検出器層とを含む多層CT検出器構成は、CTスキャンデータから画像を再構成する新しい手法であって、PC検出器とEID検出器の両方の利点を活用する手法を提供して、スペクトルタスク及び非スペクトルタスクを含む様々な臨床CT用途に対して高画質を実現する。この2つの技術を組み合わせることにより、高品質の再構成画像を生成するためのさまざまな課題を克服することができる。第2のEID検出器層を第1のPCセンサ層の下に配置し、第2のEID検出器層の下に読出し電子回路部を配置することにより、データサイズを縮小し、熱及び電力の管理を改善することができる。第1のPCセンサ層の下に配置された第2のEID検出器層を含むことにより、PCセンサ層のPCセンサの高さを低くすることができ、PCセンサ層で使用されるシリコンチップのサイズ及びコストを低減することができる。一部の実施形態では、第1の読出し電子回路部(例えば、光子計数型センサ用の電子回路部)をPCセンサアレイの横に配置し、第2の読出し電子回路部(例えば、EIDデータ用の電子回路部)をEID検出器層の下に配置することによって、多層CT検出器のコストを更に低減することができる。
【0095】
第2のEID検出器層は、PCセンサ層を通過した入射X線のエネルギーレベルを検出することができるため、PCセンサ層は、EID検出器よりも小さなサイズのPCセンサを含むことができ、その結果、得られる画像の解像度を高めることができる。EIDデータは、PCセンサデータに適用されるパイルアップ補正の精度を高めるために使用することもでき、解像度を向上し低ノイズを実現することができる。PCセンサよりも大きいEID検出器を有する他の利点は、隣接するPCセンサの境界間のギャップを通過するX線が、下にあるEID検出器によって検出され、その結果、多層CT検出器によって検出されるX線の数及び光子全体の量を増加できることである。高速処理が望まれる場合、EID検出器データは、PCセンサデータを使用せずに画像を再構成するために使用することができる。ここで、EID検出器データは、X線ビームを硬化させることができるPCセンサ層のフィルタリング効果により、単層EID検出器よりも正確である可能性がある。
【0096】
多層CT検出器の様々な利点の結果として、EID検出器よりも解像度が高く、PCCT検出器と同等の解像度を有し、PCCT検出器よりもノイズの少ない画像を再構成することができる。更に、EID検出器データからの入力画像とPCセンサデータからの目標画像とを含む画像ペアを用いて訓練させたCNNを用いて、ノイズの量を増やすことなくPCセンサデータとEID検出器データによって生成される画像の解像度を更に向上させる方法が提供される。PCセンサとEIDセンサの両方を1つのシステムに搭載し、同じ物体を同時に測定することで、イメージチェーンでの補正が可能になり、高空間分解能と低ノイズの画像を生成し、CTシステムの通常の臨床ニーズを支援しながら、多くの高度な臨床用途を提供することができる。
【0097】
PCセンサの第1の層とPCセンサの下に配置されたEID検出器の第2の層とを含む多層CT検出器の技術的効果は、EID検出器よりも解像度が高く、PCCT検出器と同等の解像度を有し、PCCT検出器よりもノイズの少ない画像を再構成できることである。
【0098】
本開示は、コンピュータ断層撮影(CT)検出器システムのサポートを提供する。CT検出器システムは、入射X線に対して光子計数型(PC)センサの層に対向する側に配置されたエネルギー積分型検出器(EID)の層であって、前記PCセンサの数が前記EID検出器の数より多い、エネルギー積分型検出器(EID)の層を含む。システムの第1の実施例では、システムは、EIDデータを用いてPCデータを補正し、画像の複数のペアにより訓練された深層学習畳み込みニューラルネットワーク(CNN)を用いて、EIDデータ及びPCデータから再構成された画像をノイズ除去し、前記再構成された画像の解像度を高めるように構成された画像処理ユニットを更に含み、画像の各ペアは、PCセンサの層からの第1の信号から再構成された目標画像と、EID検出器の層からの第2の信号から再構成された入力画像とを含み、前記EIDデータ及び前記PCデータは、同じ患者の線経路から同時に取得される。本システムの第2の実施例では、第2の実施例は、任意選択で第1の実施例を含み、前記PCデータ及び前記EIDデータの両方のデータは、スペクトル情報及び非スペクトル情報を生成するために使用される。本システムの第3の実施例では、第3の実施例は、任意選択で第1又は第2の実施例を含み、前記画像は、PCデータからではなく、EIDデータから再構成される。本システムの第4の実施例では、第4の実施例は、任意選択で第1~第3の実施例のうちの1つ以上の実施例又は各実施例を含み、複数のPCセンサの各PCセンサの間の境界は、複数のEID検出器の各EID検出器の間の境界に対して整列していない。本システムの第5の実施例では、第5の実施例は、任意選択で第1~第4の実施例のうちの1つ以上の実施例又は各実施例を含み、入射X線に対して前記EID検出器の層の反対側に配置された読出し電子回路部を更に備え、前記複数のPCセンサの各PCセンサからの信号は、前記EID検出器の間に配線されるワイヤボンドを通じて前記読出し電子回路部に伝送される。本システムの第6の実施例では、第6の実施例は、任意選択で第1~第5の実施例のうちの1つ以上の実施例又は各実施例を含み、読出し電子回路部の第1のセットと読出し電子回路部の第2のセットとを更に備え、前記複数のEID検出器の各EID検出器からの信号が読出し電子回路部の第1のセットに伝送され、前記複数のPCセンサの各PCセンサからの信号が読出し電子回路部の第2のセットに伝送される。本システムの第7の実施例では、第7の実施例は、任意選択で第1~第6の実施例のうちの1つ以上の実施例又は各実施例を含み、読出し電子回路部の第1のセット及び読出し電子回路部の第2のセットは、入射X線に対して前記EID検出器の層の反対側に配置され、前記複数のPCセンサの各PCセンサからの信号は、前記EID検出器の層の周りに配線された1以上のフレキシブルケーブルを通じて読出し電子回路部の第2のセットに伝送される。本システムの第8の実施例では、第8の実施例は、任意選択で第1~第7の実施例のうちの1つ以上の実施例又は各実施例を含み、読出し電子回路部の第1のセットは、入射X線に対して前記EID検出器の層の反対側に配置され、読出し電子回路部の第2のセットは、前記PCセンサの層の一方の横に配置される。本システムの第9の実施例では、第9の実施例は、任意選択で第1~第8の実施例のうちの1つ以上の実施例又は各実施例を含み、前記PCセンサの層のPCセンサは、2次元のPCセンサアレイの形式に配置され、各PCセンサアレイは、読出し電子回路部の第2のセットのうちの一つの読出し電子回路部と複数の回路とを含むプリント回路基板に取り付けられた半導体材料を含み、前記複数の回路の各回路は、前記PCセンサアレイのPCセンサを前記読出し電子回路部に電気的に結合する。本システムの第10の実施例では、第10の実施例は、任意選択で第1~第9の実施例のうちの1つ以上の実施例又は各実施例を含み、前記画像処理ユニットは、PCデータのエネルギースペクトルと、入射X線に対して前記PCセンサの層の反対側に配置されたEID検出器で検出された入射フラックスレートとの両方に基づいて、PCセンサの層のPCセンサで検出された光子カウント値に適用されるパイルアップ補正を調節することによって、EIDデータを用いてPCデータを補正するように構成されている。本システムの第11の実施例では、第11の実施例は、任意選択で第1~第10の実施例のうちの1つ以上の実施例又は各実施例を含み、前記PCセンサの層からの第1の信号から再構成された目標画像と前記EID検出器の層からの第2の信号から再構成された入力画像とを含む画像の複数のペアで訓練された深層学習CNNを用いてEIDデータ及びPCデータから再構成された画像の解像度を高くすることは、前記目標画像及び前記入力画像から融合画像を作成すること、加重平均法、ガイド付きノイズ低減法、及び深層学習ノイズ低減法のうちの少なくとも1つを用いて、前記融合画像のノイズを除去すること、
前記ノイズが除去された融合画像を前記訓練済みCNNに入力して出力画像を生成することであって、前記出力画像は前記ノイズが除去された融合画像よりも高い解像度を有する、出力画像を生成することを更に含む。
【0099】
本開示は、コンピュータ断層撮影(CT)システムのための方法のサポートも提供する。本方法は、前記CTシステムのCT検出器のPCセンサ層から受け取った光子計数(PC)データに基づいて第1の画像を再構成すること、前記CT検出器のEID検出器アレイから受け取ったエネルギー積分(EI)データに基づいて第2の画像を再構成すること、前記第1の画像をグランドトゥルースデータとして用いて、前記第2の画像の解像度が高くなるように、畳み込みニューラルネットワーク(CNN)を訓練すること、前記第1の画像と前記第2の画像とを結合して、融合画像を生成すること、前記融合画像を訓練済みCNNに入力して出力画像を生成することであって、前記出力画像は前記融合画像よりも高い解像度及び低いノイズを有する、出力画像を生成すること、及び前記出力画像を前記CTシステムの表示装置に表示することを含む。本方法の第1の実施例では、前記EID検出器アレイは、入射X線に対して前記PCセンサ層の反対側に配置される。本方法の第2の実施例では、第2の実施例は、任意選択で第1の実施例を含み、前記PCセンサ層のPCセンサの間の境界は、前記EID検出器アレイのEID検出器の間の境界に対して整列していない。本方法の第3の実施例では、第3の実施例は、任意選択で第1又は第2の実施例を含み、前記第1の画像と前記第2の画像を結合して前記融合画像を生成することは、前記第1の画像を第1のパラメータで重み付けし、前記第2の画像を第2のパラメータで重み付けすることを更に含む。本方法の第4の実施例では、第4の実施例は、任意選択で第1~第3の実施例のうちの1つ以上の実施例又は各実施例を含み、前記第1のパラメータ及び前記第2のパラメータは、前記融合画像のノイズの量を最小化すること、及び前記融合画像の解像度を最大化することのうちの一方を実行するように選択される。本方法の第5の実施例では、第5の実施例は、任意選択で第1~第4の実施例のうちの1つ以上の実施例又は各実施例を含み、本方法は、加重平均法、ガイド付きノイズ低減法、及び深層学習ノイズ低減法のうちの少なくとも一つを使用して、前記融合画像のノイズを除去することを更に含む。本方法の第6の実施例では、第6の実施例は、任意選択で第1~第5の実施例のうちの1つ以上の実施例又は各実施例を含み、本方法は、前記PCセンサ層から受け取った前記PCデータに基づいて前記第1の画像を再構成することは、前記PCデータの光子カウント値に対してパイルアップ補正を実行することを更に含み、前記パイルアップ補正は、前記EID検出器アレイから受け取った前記EIDデータに基づいて実行される。
【0100】
本開示は、コンピュータ断層撮影(CT)検出器のためのサポートも提供する。CT検出器は、前記CT検出器の第1の層に配置された第1の数の光子計数型(PC)センサ、前記検出器の第2の層に配置された第2の数のエネルギー積分型検出器(EID)であって、前記第2の層は入射X線に対して前記第1の層の反対側に存在し、前記第2の数は前記第1の数より小さい、第2の数のエネルギー積分型検出器(EID)、及び前記第1の数のPCセンサ及び前記第2の数のEID検出器に電子的に結合された1つ以上の読出し電子回路部であって、前記1つ以上の読出し電子回路部は、前記入射X線に対して前記第2の層の反対側に配置され、前記1つ以上の読出し電子回路部は、前記第2の数のEID検出器の複数のキャスト反射体に対して複数の経路に沿うように配線された複数の回路を通じて、又は前記第2の数のEID検出器の周りのフレキシブルケーブルを通じて、前記第1の数のPCセンサから信号を受け取る、1つ以上の読出し電子回路部を含む。
【0101】
本開示の様々な実施形態の要素を導入する場合、冠詞「1つの(a)」、「1つの(an)」、及び「この(the)」は、その要素が1つ以上存在することを意味することが意図される。用語「第1」、「第2」などは、順序、量、又は重要性を示すものではなく、ある要素を他の要素から区別するために使用されるものである。用語「含む」、「備える」、「有する」は、包括的であることを意図しており、列挙された要素以外の追加の要素が存在してもよいことを意味する。本明細書において、用語「に接続される」、「に結合される」などが使用される場合、1つの対象(例えば、材料、要素、構造、部材等)は、1つの対象が他の対象に直接に接続又は結合されているかどうか、又は1つの対象と他の対象との間に1つ以上の介在物が存在しているかどうかにかかわらず、他の対象に接続する又は結合することができる。加えて、本開示の「1つの実施形態」又は「実施形態」に言及することは、言及された特徴も組み込んだ追加の実施形態の存在を排除するように解釈されることを意図するものではないことが理解されるべきである。
【0102】
先に示された変更に加えて、本記載の趣旨及び範囲を逸脱することなく、当業者によって多くの他の変更構造及び代替構造が考えられ、特許請求の範囲は、このような変更及び構造を含むことが意図される。したがって、上記の情報は、現在最も実用的で好ましい態様であると考えられるものに関して特に詳細に記載されているが、当業者にとって、本明細書に記載された原則及び概念から逸脱することなく、形態、機能、操作方法、及び使用方法(これらに限定されることはない)などについて、多くの変更が可能であることは明らかである。また、本明細書において、実施例及び実施形態は、あらゆる点において単なる例示であることを意味しており、いかなる方法においても限定的に解釈されるべきではない
【符号の説明】
【0103】
230 画像再構成器
300 検出器アレイ
400 多層検出器構造
402、502 PCセンサアレイ
404、515、697 EID検出器アレイ
406、601 X線ビーム
414、694 PCセンサ
416、663、664、665 EID検出器
440、442 境界
501 入射X線ビーム
514 ワイヤボンド
518 接続部
602 シリコンチップ
610 センサ
614 回路
616、676、695、696 ASIC
693 フレキシブルケーブル
700 方法

図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6A
図6B
図6C
図6D
図6E
図7
【手続補正書】
【提出日】2023-11-24
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピュータ断層撮影(CT)検出器システム(300、400)であって、
入射X線(406)に対して光子計数型(PC)センサ(402)の層に対向する側に配置されたエネルギー積分型検出器(EID)(404)の層であって、前記PCセンサの数が前記EID検出器の数より多い、エネルギー積分型検出器(EID)(404)の層
を含むCT検出器システム(300、400)。
【請求項2】
EIDデータを用いてPCデータを補正し、画像の複数のペアにより訓練された深層学習畳み込みニューラルネットワーク(CNN)を用いて、EIDデータ及びPCデータから再構成された画像をノイズ除去し、前記再構成された画像の解像度を高めるように構成された画像処理ユニット(230)を更に含み、画像の各ペアは、PCセンサの層(402)からの第1の信号から再構成された目標画像と、EID検出器の層(404)からの第2の信号から再構成された入力画像とを含み、前記EIDデータ及び前記PCデータは、同じ患者の線経路から同時に取得される、請求項1記載のCT検出器システム(300,400)。
【請求項3】
前記PCデータ及び前記EIDデータの両方のデータは、スペクトル情報及び非スペクトル情報を生成するために使用される、請求項2に記載のCT検出器システム(300、400)。
【請求項4】
前記画像は、PCデータからではなく、EIDデータから再構成される、請求項2に記載のCT検出器システム(300、400)。
【請求項5】
複数のPCセンサの各PCセンサ(414)の間の境界(440)は、複数のEID検出器の各EID検出器(416)の間の境界(442)に対して整列していない、請求項1に記載のCT検出器システム(300、400)。
【請求項6】
入射X線(501)に対して前記EID検出器(515)の層の反対側に配置された読出し電子回路部(518)を更に備え、前記複数のPCセンサの各PCセンサ(502)からの信号は、前記EID検出器(515)の間に配線されるワイヤボンド(514)を通じて前記読出し電子回路部(518)に伝送される、請求項1に記載のCT検出器システム(300,400)。
【請求項7】
読出し電子回路部(676)の第1のセットと読出し電子回路部(616)の第2のセットとを更に備え、前記複数のEID検出器の各EID検出器(663、664、665)からの信号が読出し電子回路部(676)の第1のセットに伝送され、前記複数のPCセンサの各PCセンサ(610)からの信号が読出し電子回路部(616)の第2のセットに伝送される、請求項1に記載のCT検出器システム(300、400)。
【請求項8】
読出し電子回路部(695)の第1のセット及び読出し電子回路部(696)の第2のセットは、入射X線(601)に対して前記EID検出器の層(697)の反対側に配置され、前記複数のPCセンサの各PCセンサ(694)からの信号は、前記EID検出器の層(697)の周りに配線された1以上のフレキシブルケーブル(693)を通じて読出し電子回路部(696)の第2のセットに伝送される、請求項7に記載のCT検出器システム(300、400)。
【請求項9】
読出し電子回路部(676)の第1のセットは、入射X線に対して前記EID検出器の層の反対側に配置され、読出し電子回路部(616)の第2のセットは、前記PCセンサの層の一方の横に配置される、請求項7に記載のCT検出器システム(300、400)。
【請求項10】
前記PCセンサの層のPCセンサ(610)は、2次元のPCセンサアレイの形式に配置され、各PCセンサアレイ(651、652、653、654、655.656)は、読出し電子回路部(616)の第2のセットのうちの一つの読出し電子回路部と複数の回路(614)とを含むプリント回路基板(PCB)に取り付けられた半導体材料(602)を含み、前記複数の回路(614)の各回路(614)は、前記PCセンサアレイ(651、652、653、654、655、656)のPCセンサ(610)を前記読出し電子回路部(616)に電気的に結合する、請求項9に記載のCT検出器システム(300、400)。
【請求項11】
前記画像処理ユニット(230)は、PCデータのエネルギースペクトルと、入射X線(501)に対して前記PCセンサの層の反対側に配置されたEID検出器(663、664、665)で検出された入射フラックスレートとの両方に基づいて、PCセンサ(651、652、653、654、655、656)の層のPCセンサ(616)で検出された光子カウント値に適用されるパイルアップ補正を調節することによって、EIDデータを用いてPCデータを補正するように構成されている、請求項2に記載のCT検出器システム(300、400)。
【請求項12】
コンピュータ断層撮影(CT)イメージングシステムのための方法(700)であって、
前記CTイメージングシステムのCT検出器のPCセンサ層から受け取った光子計数(PC)データに基づいて第1の画像を再構成すること(704)、
前記CT検出器のEID検出器アレイから受け取ったエネルギー積分(EI)データに基づいて第2の画像を再構成すること(706)、
前記第1の画像をグランドトゥルースデータとして用いて、前記第2の画像の解像度が高くなるように、畳み込みニューラルネットワーク(CNN)を訓練すること(708)、
前記第1の画像と前記第2の画像とを結合して、融合画像を生成すること(710)、
前記融合画像を訓練済みCNNに入力して出力画像を生成すること(714)であって、前記出力画像は前記融合画像よりも高い解像度及び低いノイズを有する、出力画像を生成すること(714)、及び
前記出力画像を前記CTイメージングシステムの表示装置に表示すること(716)
を含む、方法(700)。
【請求項13】
前記PCセンサの層からの第1の信号から再構成された目標画像と前記EID検出器の層からの第2の信号から再構成された入力画像とを含む画像の複数のペアで訓練された深層学習CNNを用いてEIDデータ及びPCデータから再構成された画像の解像度を高くすることは、
前記目標画像及び前記入力画像から融合画像を作成すること(710)、
加重平均法、ガイド付きノイズ低減法、及び深層学習ノイズ低減法のうちの少なくとも1つを用いて、前記融合画像のノイズを除去すること(712)、
前記ノイズが除去された融合画像を前記訓練済みCNNに入力して出力画像を生成すること(714)であって、前記出力画像は前記ノイズが除去された融合画像よりも高い解像度を有する、出力画像を生成すること(714)
を更に含む、請求項12に記載の方法(700)。
【請求項14】
前記EID検出器アレイは、入射X線に対して前記PCセンサ層の反対側に配置される、請求項12に記載の方法(700)。
【請求項15】
前記PCセンサ層のPCセンサの間の境界は、前記EID検出器アレイのEID検出器の間の境界に対して整列していない、請求項14に記載の方法(700)。
【外国語明細書】