(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024020155
(43)【公開日】2024-02-14
(54)【発明の名称】正極およびこれを用いる電池
(51)【国際特許分類】
H01M 4/13 20100101AFI20240206BHJP
H01M 4/62 20060101ALI20240206BHJP
H01M 50/46 20210101ALI20240206BHJP
H01M 50/449 20210101ALI20240206BHJP
H01M 50/434 20210101ALI20240206BHJP
H01M 10/052 20100101ALI20240206BHJP
H01M 10/0566 20100101ALI20240206BHJP
【FI】
H01M4/13
H01M4/62 Z
H01M50/46
H01M50/449
H01M50/434
H01M10/052
H01M10/0566
【審査請求】有
【請求項の数】13
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023118792
(22)【出願日】2023-07-21
(31)【優先権主張番号】63/391,537
(32)【優先日】2022-07-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】111145823
(32)【優先日】2022-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(71)【出願人】
【識別番号】390023582
【氏名又は名称】財團法人工業技術研究院
【氏名又は名称原語表記】INDUSTRIAL TECHNOLOGY RESEARCH INSTITUTE
【住所又は居所原語表記】No.195,Sec.4,ChungHsingRd.,Chutung,Hsinchu,Taiwan 31040
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】謝登存
(72)【発明者】
【氏名】林裕涵
(72)【発明者】
【氏名】蘇静怡
(57)【要約】 (修正有)
【課題】電池の安全性を高めることができる正極およびこれを用いる電池を提供する。
【解決手段】正極および前記正極を用いる電池が提供される。正極は正極活性層および第1の層を含み、第1の層は正極活性層上に配置される。第1の層はリチウム鉄リン含有酸化物および第1のバインダーを含む。第1の層と正極活性層との電気抵抗比は100以上である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極であって、
正極活性層と、
前記正極活性層上に配置された第1の層と、
を含み、
前記第1の層がリチウム鉄リン含有酸化物および第1のバインダーを含み、前記第1の層と前記正極活性層との電気抵抗比が100以上である、正極。
【請求項2】
前記リチウム鉄リン含有酸化物が、リチウム鉄マンガンリン酸塩、リチウム鉄リン酸塩、またはこれらの組み合わせである、請求項1に記載の正極。
【請求項3】
前記第1のバインダーと前記リチウム鉄リン含有酸化物との重量比が1:99から5:95である、請求項1に記載の正極。
【請求項4】
前記第1の層が第1の無機粉末をさらに含み、前記第1の無機粉末と前記リチウム鉄リン含有酸化物との重量比が0.1:99.9から1:99である、請求項1に記載の正極。
【請求項5】
前記第1の無機粉末が、導電性粉末、第1の金属酸化物、またはこれらの組み合わせである、請求項4に記載の正極。
【請求項6】
前記導電性粉末が、金属、前記金属の合金、導電性カーボンブラック、導電性グラファイト、フルオロカーボン、還元グラフェン、窒素ドープグラファイト、窒素ドープグラフェン、カーボンファイバー、カーボンナノチューブ、またはこれらの組み合わせであり、前記金属が、ジルコニウム、クロム、モリブデン、タングステン、マンガン、鉄、オスミウム、コバルト、ニッケル、パラジウム、白金、銅、銀、金、亜鉛、インジウム、スズ、鉛、またはアルミニウムである、請求項5に記載の正極。
【請求項7】
前記第1の金属酸化物が、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化ケイ素、酸化スズ、またはこれらの組み合わせである、請求項5に記載の正極。
【請求項8】
前記第1の層上に配置された第2の層をさらに含み、
前記第2の層は第2の無機粉末を含み、前記第2の無機粉末は、第2の金属酸化物、安定化リチウム金属粒子、またはこれらの組み合わせである、請求項1に記載の正極。
【請求項9】
前記第2の金属酸化物が、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化ケイ素、酸化スズ、またはこれらの組み合わせである、請求項8に記載の正極。
【請求項10】
前記第2の層が第2のバインダーをさらに含み、前記第2のバインダーと前記第2の無機粉末との重量比が0.1:99.9から10:90である、請求項8に記載の正極。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか1項に記載の正極である正極と、
セパレータと、
前記セパレータを介して前記正極と分離されている負極と、
を含む電池。
【請求項12】
前記正極と前記負極との間に配置された液体電解質をさらに含む請求項11に記載の電池。
【請求項13】
前記セパレータ上に配置され、かつ前記セパレータと前記正極との間に配置された金属酸化物層をさらに含む請求項11に記載の電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は正極およびこれを用いる電池に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン二次電池は主流の商用製品であり、それらは現在、軽量、低体積、およびより安全になるよう、ならびにより高いエネルギー容量およびより長いサイクル寿命を持つように開発されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第9196901B2号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
内部短絡は、リチウム電池の安全性に深刻に影響する現象である。内部短絡が起こると、短絡箇所の抵抗がゼロに近づいて、電池中に含まれるエネルギーが大電流の形で流れると共に、膨大な熱エネルギーが即座に放出されるようになる。このことは、漏液、電池の膨れ、発熱、発煙、燃焼、または爆発を含む一連の安全性の問題を引き起こし、その使用可能性を大幅に制限してしまう。
【0005】
短絡の原因には、例えば針状のリチウムデンドライトの成長または電池への圧迫のような電池内の内部応力状態の変化が含まれ、それは電池内部の正極と負極との導通を引き起こす。電池内の短絡時における連鎖反応の発生を軽減(つまり、エネルギー放出の期間を延長)することができれば、電池の安全性を高めることができる。
【0006】
よって、上述の問題を解決するために、新規な電池電極の材料およびアセンブリ設計が求められる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示は正極を提供する。正極は正極活性層および第1の層を含み、第1の層は正極活性層上に配置される。第1の層はリチウム鉄リン含有酸化物(lithium-iron-phosphorus-containing oxide)および第1のバインダーを含んでいてよく、第1の層と正極活性層との電気抵抗比は100以上である。
【0008】
本開示のいくつかの実施形態によれば、本開示は正極を提供する。正極は、正極活性層、第1の層、および第2の層を含み、第1の層は正極活性層上に配置されていてよく、第2の層は第1の層上に配置されていてよい。第1の層はリチウム鉄リン含有酸化物および第1のバインダーを含み、第2の層は安定化リチウム金属粒子を含む。
【0009】
本開示の実施形態によれば、本開示は電池も提供する。電池は、本開示の正極、セパレータ、および負極を含み、負極はセパレータを介して正極と分離されている。
【発明の効果】
【0010】
本開示は、正極(例えばリチウム電池の正極)およびこれを用いる電池(例えばリチウム電池)を提供する。本開示の実施形態によれば、本開示の正極は、正極活性層および第1の層(リチウム鉄リン含有酸化物を含む)を含み、第1の層は比較的高い抵抗および熱安定性を示す。本開示の第1の層は、正極活性層と共に用いるのに適し、フェールセーフ層として機能し得る。第1の層と正極活性層との特定の抵抗比によって、電池が過充電されたとき、当該正極を含むリチウム電池内で内部短絡が発生する時間が延長され得る。また、当該正極を含むリチウム電池が内部短絡を起こしたとき、電池エネルギーの放出は減速し得る(つまり、エネルギー放出レートが低下する)ため、使用時におけるリチウム電池の安全性が高まる。
添付の図面を参照にして、以下の詳細な説明および例を読むことにより、本発明をより十分に理解することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本開示の実施形態による電池の正極の断面図である。
【
図2】本開示の別の実施形態による電池の正極の断面図である。
【
図3】本開示のまた別の実施形態による電池の正極の断面図である。
【
図4】本開示の実施形態による正極を含む電池の概略図である。
【
図5】本開示の別の実施形態による正極を含む電池の概略図である。
【
図6】本開示のまた別の実施形態による正極を含む電池の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本開示の正極およびこれを用いる電池が以下の記載で詳細に説明される。以下の詳細な記載では、説明の目的で、本開示が十分理解されるように多数の特定の詳細と実施形態が示される。以下の詳細な記載において記載される特定の要素および構成は、本開示を明確に説明するために示されるものである、しかしながら、ここに示される例示的な実施形態は、単に説明の目的のために用いられるに過ぎず、本発明概念はそれらの例示的な実施形態に限定されることなく様々な形式で具体化可能であるという点は、明らかであろう。加えて、本開示を明確に説明するため、それぞれ異なる実施形態の図面では、類似および/または対応する要素を示すのに類似および/または対応する数字を用いることがある。しかしながら、それぞれ異なる実施形態の図面における類似および/または対応する数字の使用は、異なる実施形態間の何らの相関関係をも示唆しない。本明細書において使用されるとき、数量的な用語における用語「約」は、当業者にとって一般的かつ合理的である量だけプラスまたはマイナスすることを指す。
【0013】
本開示の図面における要素または装置が、当業者には既知である任意の形式または構成で存在し得るという点について、留意されなければならない。加えて、「別の層を覆う層」、「層が別の層の上側に配置される」、「層が別の層上に配置される」、および「層が別の層の上方に配置される」という表現は、他の層に直接接触する層に言及する場合があり、それらはまた、他の層と直接接触しない層であって、他の層との間に1つまたはそれ以上の中間層が存在する層に言及する場合もある。
【0014】
また、構成要素を修飾するための、本開示における順序を表す用語、例えば「第1」、「第2」、「第3」等の使用は、それ自体で、1つのクレームの構成要素の他に対する何らの優先度、優先順位、順番、またはそれが形成される時間的順序も示唆するものではなく、単に、特定の名称を持つ1つのクレームの構成要素を、同じ名称を持つ別の構成要素と区別する標識として用いられて(順序を示す用語の使用がなければ)、クレームの構成要素どうしを区別するに過ぎない。
【0015】
描かれている図は概略に過ぎず、非限定的なものである。説明の目的で、図における構成要素のうちいくつかのサイズ、形状または厚さは誇張されており、縮尺で描かれていないことがある。寸法および相対寸法は、本開示を実施するための実際の位置に対応していない。本開示は、特定の実施形態について、かつ特定の図に関して説明されるが、本開示がこれに限定されることはない。
【0016】
本開示の実施形態によれば、本開示の正極は正極活性層および複合層を含み、複合層は比較的高い抵抗および熱安定性を示す。複合層は正極活性層と共に用いるのに適しており、かつフェールセーフ層として機能する。複合層は第1の層(リチウム鉄リン含有酸化物を含む)および第2の層(安定化リチウム金属粒子(SLMP)を含む)を含むため、リチウム電池(本開示の正極を含む)の安全性が高まると共に、容量維持率が低下しないという前提の下、リチウム電池の放電比容量(discharging specific capacity)が高まり得る。
【0017】
本開示の実施形態によれば、本開示は、電池の正極(例えば、リチウム電池の正極)として機能し得る正極を提供する。本開示の実施形態によれば、
図1に示されるように、本開示の正極10は正極活性層12および第1の層14(例えばフェールセーフ層)を含んでいてよく、第1の層14は正極活性層12上に配置されてよい。本開示の実施形態によれば、正極活性層12は正極活物質を含み、第1の層14はリチウム鉄リン含有酸化物(例えば、リチウム鉄マンガンリン酸塩(lithium iron manganese phosphate,LMFP)、リチウム鉄リン(LFP)またはこれらの組み合わせ)を含む。また、リチウム鉄リン含有酸化物は、ニッケル、コバルト、ネオジム、プラセオジム、エルビウム、イットリウム、バナジウム、モリブデンまたはこれらの組み合わせがさらにドープされていてよい。電池が短絡したときに、電池における内部短絡の発生する時間を延長し、かつ電池エネルギーの放出を減速させるという目的を達成するため、第1の層と正極活性層の電気抵抗比は100以上にすることができる。例えば、第1の層と正極活性層の電気抵抗比は100から1×10
8である。例えば、第1の層と正極活性層の電気抵抗比は100から1×10
6(例えば、3×10
2、1×10
3、6×10
4、または7×10
5)である。第1の層と正極活性層の電気抵抗比が低すぎると、電池の安全性が強化され得ない。第1の層と正極活性層の電気抵抗比が高すぎると、第1の層の抵抗がより高くなるために、電池の性能が大幅に低下する。本開示の第1の層および正極活性層の抵抗は、四探針抵抗計(DU-5211 Ohm Meter、DELTA UNITED INSTRUMENT CO. LTDから市販されている)を用いて測定する。その方法は次のステップを含む。サンプルを四探針抵抗計中に置いた。圧力0.07MPa下で探針をサンプルの表面に接触させた。接触後、四探針抵抗計により抵抗(ohms)を測定する前に、システムを3秒静置した。
【0018】
本開示の実施形態によれば、正極活性層12の厚さは限定されず、当該分野において通常の知識を有する者が任意に変更することができる。例えば、正極活性層12の厚さは約50μmから200μm(例えば約70μm、100μm、150μmまたは180μm)であってよい。本開示の実施形態によれば、第1の層14の厚さは限定されず、当該分野において通常の知識を有する者が任意に変更することができる。例えば、第1の層14の厚さは約1μmから50μm(例えば約2μm、5μm、10μm、20μm、30μmまたは40μm)であってよい。
【0019】
本開示の実施形態によれば、正極活物質は、硫黄、有機硫化物、硫黄・炭素複合体(sulfur-carbon composite)、金属含有酸化リチウム、 金属含有硫化リチウム、金属含有セレン化リチウム、金属含有テルル化リチウム、金属含有ケイ化リチウム、金属含有ホウ化リチウム、またはこれらの組み合わせであってよく、当該金属は、アルミニウム、バナジウム、チタン、クロム、銅、モリブデン、ニオブ、鉄、ニッケル、コバルトおよびマンガンからなる群より選ばれる。本開示の実施形態によれば、正極活物質は、リチウムコバルト酸化物、リチウムニッケル酸化物、リチウムマンガン酸化物、リチウムコバルトマンガン酸化物、リチウムニッケルコバルト酸化物、リチウムニッケルマンガン酸化物、リチウムニッケルマンガンコバルト酸化物、リチウムクロムマンガン酸化物、リチウムニッケルバナジウム酸化物、リチウムマンガンニッケル酸化物、リチウムコバルトバナジウム酸化物、リチウムニッケルコバルトアルミニウム酸化物またはこれらの組み合わせであってよい。本開示の実施形態によれば、リチウムニッケルマンガンコバルト酸化物は化学構造LiNixCoyMnzO2を有していてよく、式中0<x<1、0<y<1、0<z<1、かつx+y+z=1である。本開示の実施形態によれば、リチウムニッケルコバルトアルミニウム酸化物は化学構造LiNi0.80Co0.15Al0.05O2を有していてよい。本開示の実施形態によれば、リチウムコバルト酸化物は化学構造LiCoO2を有していてよい。
【0020】
本開示の実施形態によれば、正極活性層12はバインダーをさらに含んでいてよく、バインダーには、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、スチレン・ブタジエンコポリマー、フッ素ゴム、ポリウレタン、ポリビニルピロリドン、ポリ(エチルアクリレート),ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリブタジエン、ポリアクリル酸(PAA)、またはこれらの組み合わせが含まれ得る。本開示の実施形態によれば、正極活性層12中、正極活物質およびバインダーの総重量に対し、正極活物質の重量百分率は約90wt%から99.9wt%(例えば、91wt%、92wt%、93wt%、94wt%、95wt%、96wt%、97wt%、98wt%または99wt%)であってよく、バインダーの重量百分率は約0.1wt%から10wt%(例えば1wt%、2wt%、3wt%、4wt%、5wt%、6wt%、7wt%、8wt%または9wt%)であってよい。本開示の実施形態によれば、正極活性層12中、バインダーと正極活物質との重量比は0.1:99.9から10:90(例えば1:99、2:98、3:97、4:96、5:95、6:94、7:93、8:92または9:91)であってよい。本開示の実施形態によれば、正極活性層12はバインダーおよび正極活物質からなるものであってよい。
【0021】
本開示の実施形態によれば、正極活性層12は導電性添加剤をさらに含んでいてよく、導電性添加剤は導電性カーボンブラック、導電性グラファイト、フルオロカーボン、還元グラフェン、窒素ドープグラファイト、窒素ドープグラフェン、カーボンファイバー、カーボンナノチューブまたはこれらの組み合わせであってよい。本開示の実施形態によれば、正極活性層12中、正極活物質、バインダーおよび導電性添加剤の総重量に対し、正極活物質の重量百分率は約90wt%から99.8wt%(例えば91wt%、92wt%、93wt%、94wt%、95wt%、96wt%、97wt%、98wt%または99wt%)であってよく、バインダーの重量百分率は約0.1wt%から6wt%(例えば1wt%、2wt%、3wt%、4wt%、5wt%または5.5wt%)であってよく、導電性添加剤の重量百分率は約0.1wt%から6wt%(例えば1wt%、2wt%、3wt%、4wt%、5wt%または5.5wt%)であってよい。本開示の実施形態によれば、正極活性層12中、バインダーと正極活物質との重量比は1:99から5:95(例えば1.5:98.5、2:98、3:97、4:96または4.5:95.5)であってよく、導電性添加剤と正極活物質との重量比は1:99から5:95(例えば1.5:98.5、2:98、3:97、4:96または4.5:95.5)であってよい。本開示の実施形態によれば、正極活性層12はバインダー、導電性添加剤および正極活物質からなるものであってよい。
【0022】
本開示の実施形態によれば、リチウム鉄リン含有酸化物はリチウム鉄マンガンリン酸塩であってよい。リチウム鉄マンガンリン酸塩の化学構造はLiMnxFe1-xPO4であってよく、式中0≦x<1であり、例えばxは0.51、0.52、0.53、0.55、0.60、0.65、0.70、0.75、0.80、0.85、0.90、0.95、0.97、0.98または0.99であってよい。本開示の実施形態によれば、リチウム鉄リン含有酸化物の粒径は限定されず、当該分野において通常の知識を有する者が任意で変更することができ、1nmから100μm、例えば10nm、50nm、100nm、500nm、1μm、10μm、50μmまたは80μmであってよい。
【0023】
本開示の実施形態によれば、第1の層14は第1のバインダーをさらに含んでいてよく、第1のバインダーにはポリビニルアルコール(PVA)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、スチレン・ブタジエンコポリマー、フッ素ゴム、ポリウレタン、ポリビニルピロリドン、ポリ(エチルアクリレート)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリブタジエン、ポリアクリル酸(PAA)、またはこれらの組み合わせが含まれ得る。本開示の実施形態によれば、第1の層14中、リチウム鉄リン含有酸化物および第1のバインダーの総重量に対し、リチウム鉄リン含有酸化物の重量百分率は約90wt%から99.9wt%(例えば91wt%、92wt%、93wt%、94wt%、95wt%、96wt%、97wt%、98wt%または99wt%)であってよく、第1のバインダーの重量百分率は約0.1wt%から10wt%(例えば1wt%、2wt%、3wt%、4wt%、5wt%、6wt%、7wt%、8wt%または9wt%)であってよい。本開示の実施形態によれば、第1の層14中、第1のバインダーとリチウム鉄リン含有酸化物との重量比は1:99から5:95(例えば1.5:98.5、2:98、3:97、4:96または4.5:95.5)であってよい。本開示の実施形態によれば、第1の層14は第1のバインダーおよびリチウム鉄リン含有酸化物からなるものであってよい。
【0024】
本開示の実施形態によれば、第1の層14は無機粉末をさらに含んでいてよく、無機粉末は導電性粉末、金属酸化物、またはこれらの組み合わせであってよい。本開示の実施形態によれば、導電性粉末は金属、その金属の合金、導電性カーボンブラック、導電性グラファイト、フルオロカーボン、還元グラフェン、窒素ドープグラファイト、窒素ドープグラフェン、カーボンファイバー、カーボンナノチューブ、またはこれらの組み合わせであってよく、このうち金属はジルコニウム、クロム、モリブデン、タングステン、マンガン、鉄、オスミウム、コバルト、ニッケル、パラジウム、白金、銅、銀、金、亜鉛、インジウム、スズ、鉛またはアルミニウムであってよい。本開示の実施形態によれば、金属酸化物は酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化ケイ素、酸化スズ、またはこれらの組み合わせであってよい。本開示の実施形態によれば、無機粉末の粒径は限定されず、当該分野において通常の知識を有する者が任意で変更することができ、1nmから100μm、例えば10nm、50nm、100nm、500nm、1μm、10μm、50μmまたは80μmであってよい。本開示の実施形態によれば、第1の層14中、リチウム鉄リン含有酸化物、第1のバインダーおよび無機粉末の総重量に対し、リチウム鉄リン含有酸化物の重量百分率は約90wt%から99.8wt%(例えば91wt%、92wt%、93wt%、94wt%、95wt%、96wt%、97wt%、98wt%または99wt%)であってよく、第1のバインダーの重量百分率は約0.1wt%から6wt%(例えば1wt%、2wt%、3wt%、4wt%、5wt%または6wt%)であってよく、無機粉末の重量百分率は約0.1wt%から4wt%(例えば0.1wt%、0.2wt%、0.3wt%、0.4wt%、0.5wt%、0.6wt%、0.7wt%、0.8wt%、1wt%、2wt%または3wt%)であってよい。本開示の実施形態によれば、第1の層14中、第1のバインダーとリチウム鉄リン含有酸化物との重量比は1:99から5:95(例えば1.5:98.5、2:98、3:97、4:96または4.5:95.5)であってよく、無機粉末とリチウム鉄リン含有酸化物の重量比は0.1:99.9から1:99(例えば0.2:99.8、0.5:99.5または0.8:99.2)であってよい。本開示の実施形態によれば、第1の層14は第1のバインダー、無機粉末およびリチウム鉄リン含有酸化物からなるものであってよい。
【0025】
本開示の実施形態によれば、
図2に示されるように、本開示の正極10は正極活性層12、第1の層14、および正極集電層16を含んでいてよく、正極活性層12は正極集電層16上に配置されてよく、第1の層14は正極活性層12上に配置されてよい。
【0026】
本開示の実施形態によれば、
図2に示される正極10を作製する方法は次のステップを含んでいてよい。先ず、正極活性層の成分(例えば、正極活物質、導電性添加剤およびバインダー)を溶媒(例えば1-メチル-2-ピロリドン(NMP)、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)、ピロリドン、N-ドデシルピロリドン、γ-ブチロラクトンまたはこれらの組み合わせ)中に分散させ、正極活性層スラリーを得る。その正極活性層スラリーの固形分は約30wt%から80wt%であり得る。次いで、正極集電層16を準備する。次いで、塗布プロセスにより正極スラリーのコーティングを正極集電層16上に形成する。次いで、そのコーティングに(温度90℃から180℃で)乾燥プロセスを行い、正極活性層12を得る。次いで、第1の層の成分(例えば、リチウム鉄リン含有酸化物、無機粉末および第1のバインダー)を溶媒中に分散させ、第1のスラリーを得る。次いで、塗布プロセスにより第1のスラリーのコーティングを正極活性層12上に形成する。次いで、そのコーティングに(温度約90℃から180℃で)乾燥プロセスを行い、第1の層14を得る。塗布プロセスは、スクリーン印刷、スピンコーティング、バーコーティング、ブレードコーティング、ローラーコーティング、溶媒キャスティングまたはディップコーティングであってよい。
【0027】
正極集電層16の厚さは限定されず、当該分野において通常の知識を有する者が任意に変更することができる。例えば、正極集電層16の厚さは約5μmから200μm(例えば、約10μm、30μm、50μm、60μm、70μm、80μm、90μm、100μmまたは150μm)であってよい。
【0028】
本開示の実施形態によれば、正極集電層16は、導電性カーボン基板、金属箔または多孔質構造を有する金属材料、例えばカーボンクロス、カーボンフェルト、カーボンペーパー、銅箔、ニッケル箔、アルミニウム箔、ニッケルメッシュ、銅メッシュ、モリブデンメッシュ、ニッケルフォーム、銅フォームまたはモリブデンフォームであってよい。本開示の実施形態によれば、多孔質構造を有する金属材料の気孔率は約10%から99.9%(例えば20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%または90%)であってよい。
【0029】
本開示の実施形態によれば、
図3に示されるように、本開示の正極10は、正極活性層12、第1の層14、正極集電層16、および第2の層18を含んでいてよく、正極活性層12は正極集電層16上に配置されてよく、第1の層14は正極活性層12上に配置されてよく、第2の層18は第1の層14上に配置されてよい。
【0030】
本開示の実施形態によれば、第2の層18の厚さは限定されず、当該分野において通常の知識を有する者が任意に変更することができる。例えば、第2の層18の厚さは約10nmから1μm(例えば約20nm、30nm、50nm、80nm、100nm、200nm、300nm、500nm、600nm、800nmまたは900nm)であってよい。
【0031】
本開示の実施形態によれば、第2の層18は無機粉末を含み、無機粉末は、金属酸化物、安定化リチウム金属粒子、またはこれらの組み合わせであってよい。本開示の実施形態によれば、金属酸化物は酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化ケイ素、酸化スズ、またはこれらの組み合わせであってよい。本開示の実施形態によれば、安定化リチウム金属粒子は実質的にコアシェル構造を有し、コアと、コアを包み込むシェルとを含む。コアはリチウム金属またはリチウム金属合金を含んでいてよい。シェルはリチウム塩を含み、コアを取り囲んで包み込む。シェルは密閉式であってよく、これにより水または空気(酸素を含む)がコアと接触して反応してしまうことが防がれるまたは実質的に抑制される。本開示の実施形態によれば、コアは元素イオン(elemental lithium)を含む。本開示の実施形態によれば、コアはリチウム合金を含んでいてよく、リチウム合金は、リチウムと、アルミニウム、ケイ素、ゲルマニウム、スズ、鉛、およびビスマスからなる群より選ばれる少なくとも1つの元素とを含む。シェルはリチウム塩を含み、リチウム塩にはリチウム錯体、例えばLiPF6、LiBF4、LiClO4、LiAsF6、LiF3SO3、Li2CO3またはこれらの組み合わせが含まれ得る。安定化リチウム金属粒子は、空気、酸素、または水にさらされたときに、実質的に非反応性または不燃性を示すものである。安定化リチウム金属粒子は、次の条件:例えば、周囲環境、空気、酸素、または高温の水蒸気にさらされるという条件の下で化学的不活性を示し得る。前記高温は50℃、100℃、150℃、または200℃より高い温度であり得る。本開示の実施形態によれば、無機粉末の粒径は限定されず、当該分野において通常の知識を有する者が任意に変更することができる。無機粉末の粒径は1nmから1μm、例えば5nm、10nm、20nm、30nm、50nm、80nm、100nm、200nm、300nm、500nm、600nm、800nmまたは900nmであってよい。
【0032】
本開示の実施形態によれば、第2の層18は第2のバインダーをさらに含んでいてよく、第2のバインダーには、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、スチレン・ブタジエンコポリマー、フッ素ゴム、ポリウレタン、ポリビニルピロリドン、ポリ(エチルアクリレート)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリブタジエン、ポリアクリル酸(PAA)、またはこれらの組み合わせが含まれ得る。本開示の実施形態によれば、第2の層18中、無機粉末および第2のバインダーの総重量に対し、無機粉末の重量百分率は約90wt%から99.9wt%(例えば91wt%、92wt%、93wt%、94wt%、95wt%、96wt%、97wt%、98wt%または99wt%)であってよく、第2のバインダーの重量百分率は約0.1wt%から10wt%(例えば1wt%、2wt%、3wt%、4wt%、5wt%、6wt%、7wt%、8wt%または9wt%)であってよい。本開示の実施形態によれば、第2の層18中、第2のバインダーと無機粉末との重量比は、0.1:99.9から10:90(例えば1:99、2:98、3:97、4:96、5:95、6:94、7:93、8:92または9:91)であってよい。本開示の実施形態によれば、第2の層18は第2のバインダーおよび無機粉末からなるものであってよい。
【0033】
本開示の実施形態によれば、
図3に示されるように、本開示の正極10は正極集電層16、正極活性層12、第1の層14、および第2の層18をこの順で含み、第1の層14はリチウム鉄リン含有酸化物(例えばリチウム鉄マンガンリン酸塩(LMFP))を含み、第2の層は安定化リチウム金属粒子(SLMP)を含む。本開示の実施形態によれば、第1の層14および第2の層18を含む積層は、フェールセーフ層として機能し得る。本開示の実施形態によれば、第1の層14は第1のバインダーおよびリチウム鉄リン含有酸化物を含んでいてよい。本開示の実施形態によれば、第1の層14は第1のバインダー、無機粉末、およびリチウム鉄リン含有酸化物を含んでいてよい。本開示の実施形態によれば、第1の層14は第1のバインダーおよびリチウム鉄リン含有酸化物からなるものであってよい。本開示の実施形態によれば、第1の層14は第1のバインダー、無機粉末およびリチウム鉄リン含有酸化物からなるものであってよい。本開示の実施形態によれば、第2の層18は第2のバインダーおよび安定化リチウム金属粒子を含んでいてよい。本開示の実施形態によれば、第2の層18は第2のバインダーおよび安定化リチウム金属粒子からなるものであってよい。本開示の実施形態によれば、第2の層18中、安定化リチウム金属粒子および第2のバインダーの総重量に対し、安定化リチウム金属粒子の重量百分率は約90wt%から99.9wt%(例えば91wt%、92wt%、93wt%、94wt%、95wt%、96wt%、97wt%、98wt%または99wt%)であってよく、第2のバインダーの重量百分率は約0.1wt%から10wt%(例えば1wt%、2wt%、3wt%、4wt%、5wt%、6wt%、7wt%、8wt%または9wt%)えあってよい。本開示の実施形態によれば、第2の層18中、第2のバインダーと安定化リチウム金属粒子との重量比は0.1:99.9から10:90(例えば1:99、2:98、3:97、4:96、5:95、6:94、7:93、8:92または9:91)であってよい。
【0034】
本開示の実施形態によれば、
図3に示される正極10を作製する方法は、次のステップを含んでいてよい。先ず、正極活性層の成分(例えば、正極活物質、導電性添加剤およびバインダー)を溶媒(例えば1-メチル-2-ピロリドン(NMP)、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)、ピロリドン、N-ドデシルピロリドン、γ-ブチロラクトンまたはこれらの組み合わせ)中に分散させ、正極活性層スラリーを得る。その正極活性層スラリーの固形分は30wt%から80wt%であり得る。次いで、正極集電層16を準備する。次いで、塗布プロセスにより正極活性層スラリーのコーティングを正極集電層16上に形成する。次いで、そのコーティングに(温度約90℃から180℃で)乾燥プロセスを行い、正極活性層12を得る。次いで、第1の層の成分(例えば、リチウム鉄リン含有酸化物および第1のバインダー)を溶媒中に分散させ、第1のスラリーを得る。次いで、塗布プロセスにより第1のスラリーを正極活性層12上に形成する。次いで、そのコーティングに(温度約90℃から180℃で)乾燥プロセスを行い、第1の層14を得る。次いで、第2の層の成分(例えば、安定化リチウム金属粒子)を第1の層14上に配置して粉末層を形成する。次いで、その粉末層に圧力を印加して、第2の層18を得る。圧力を印加する方法はカレンダープロセスまたは圧延プロセスであってよい。いくつかの実施形態において、第2の層18を形成する方法は、第1の層14の形成後に、次のステップを含んでいてよい。第2の層の成分(例えば、安定化リチウム金属粒子および第2のバインダー)を溶媒中に分散させ、第2のスラリーを得る。次いで、塗布プロセスにより第2のスラリーを第1の層14上に形成する。そのコーティングに(温度約90℃から180℃で)乾燥プロセスを行い、第2の層18を得る。塗布プロセスはスクリーン印刷、スピンコーティング、バーコーティング、ブレードコーティング、ローラーコーティング、溶媒キャスティングまたはディップコーティングであってよい。
【0035】
本開示の実施形態によれば、
図4に示されるように、本開示は電池100、例えばリチウム電池、リチウムイオン電池またはリチウム金属電池も提供する。電池100は、
図2に示される正極10、セパレータ20、および負極30を含む。負極30は正極10とセパレータ20を介して分離されている。本開示の実施形態によれば、正極10はセパレータ20と直接接触していてよい、および/または負極30はセパレータ20と直接接触していてよい。本開示の実施形態によれば、正極10はセパレータ20と特定の距離だけ離間していてよい、および/または負極30はセパレータ20と特定の距離だけ離間していてよい。本開示の実施形態によれば、電池100は液体電解質40をさらに含んでいてよく、液体電解質40は正極10と負極30との間に配置される。つまり、正極10、セパレータ20および負極30が積層された構造を液体電解質40中に浸漬させる(即ち、電池100が液体電解質で満たされる)。本開示のいくつかの実施形態によれば、本開示の正極活性層12はセパレータ20と正極集電層16との間に配置されてよく、本開示の第1の層14はセパレータ20と正極活性層12との間に配置されてよく、本開示の第1の層14はセパレータ20に直接接触していてよい。本開示の実施形態によれば、本開示の電池100は正極10、セパレータ20、負極30、および液体電解質40からなるものであってよい。本開示の実施形態によれば、
図5に示されるように、電池100は、
図3に示される正極10、セパレータ20、負極30、および液体電解質40を含んでいてよい。
【0036】
本開示の実施形態によれば、セパレータ20は絶縁材料、例えばポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリアミド、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリ(フッ化ビニリデン)、ポリアニリン、ポリイミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリスチレン(PS)、セルロース、またはこれらの組み合わせを含んでいてよい。例えば、セパレータ20はPE/PP/PE多層複合構造であってよい。本開示の実施形態によれば、セパレータは多孔質構造を有していてよい。つまり、セパレータの気孔は、セパレータ全体にわたり均一に分布されている。
【0037】
本開示の実施形態によれば、液体電解質40は溶媒およびリチウム塩(またはリチウム含有化合物)を含んでいてよい。本開示の実施形態によれば、溶媒中のリチウム塩の濃度は約0.8Mから1.6M、例えば約0.9M、1.0M、1.1M、1.2M、1.3M、1.4M、または1.5Mであってよい。本開示の実施形態によれば、溶媒は、有機溶媒、例えばエステル系溶媒、ケトン系溶媒、カーボネート系溶媒、エーテル系溶媒、アルカン系溶媒、アミド系溶媒、またはこれらの組み合わせであってよい。本開示の実施形態によれば、溶媒は、1,2-ジエトキシエタン、1,2-ジメトキシエタン、1,2-ジブトキシエタン、テトラヒドロフラン(THF)、2-メチルテトラヒドロフラン、ジメチルアセトアミド(DMAc)、1-メチル-2-ピロリドン(NMP)、酢酸メチル、酢酸エチル、酪酸メチル、酪酸エチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、酢酸プロピル(PA)、γ-ブチロラクトン(GBL)、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジメチルカーボネート(DMC)、ビニレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ジプロピルカーボネート、フルオロエチレンカーボネート、1、3-プロパンスルトン、またはこれらの組み合わせであってよい。本開示の実施形態によれば、リチウム塩は、ヘキサフルオロりん酸リチウム(LiPF6)、過塩素酸リチウム(lithium perchlorate)(LiClO4)、ビス(フルオロスルホニル)イミドリチウム(LiN(SO2F)2)(LiFSI)、リチウムジフルオロ(オキサラト)ボレート(LiBF2(C2O4))(LiDFOB)、リチウムテトラフルオロボレート(LiBF4)、リチウムトリフルオロメタンスルホナート(LiSO3CF3)、ビス(トリフルオロメタン)スルホンイミドリチウム(LiN(SO2CF3)2)(LiTFSI)、リチウムビスパーフルオロエタンエタンスルホンイミド(LiN(SO2CF2CF3)2)、ヘキサフルオロヒ酸リチウム(LiAsF6)、リチウムヘキサフルオロアンチモネート(LiSbF6)、リチウムテトラクロロアルミネート(LiAlCl4)、リチウムテトラクロロガラート(lithium tetrachlorogallate(LiGaCl4))、リチウムニトレート(LiNO3)、トリス(トリフルオロメタンスルホニル)メチルリチウム(LiC(SO2CF3)3)、チオシアン酸リチウム水和物(LiSCN)、LiO3SCF2CF3、LiC6F5SO3、LiO2CCF3、リチウムフルオロスルホナート(LiSO3F)、リチウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート(LiB(C6H5)4)、リチウムビス(オキサラト)ボレート(LiB(C2O4)2)(LiBOB)、またはこれらの組み合わせであってよい。
【0038】
本開示の実施形態によれば、負極30は負極集電層32、および負極集電層32上に配置された負極活性層34を含んでいてよく、負極活性層34は負極活物質を含む。いくつかの実施形態において、負極活性層34はバインダーをさらに含んでいてよい。バインダーには、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、スチレン・ブタジエンコポリマー、フッ素ゴム、ポリウレタン、ポリビニルピロリドン、ポリ(エチルアクリレート)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリブタジエン、ポリアクリル酸(PAA),またはこれらの組み合わせが含まれ得る。本開示の実施形態によれば、負極30は負極集電層32および負極活性層34からなるものであってよい。加えて、本開示の実施形態によれば、負極30は負極集電層32からなるものであってよい。
【0039】
本開示の実施形態によれば、負極活性層34中、負極活物質およびバインダーの総重量に対し、負極活物質の重量百分率は約90wt%から99.9wt%(例えば91wt%、92wt%、93wt%、94wt%、95wt%、96wt%、97wt%、98wt%または99wt%)であってよく、バインダーの重量百分率は約0.1wt%から10wt%(例えば1wt%、2wt%、3wt%、4wt%、5wt%、6wt%、7wt%、8wt%または9wt%)であってよい。本開示の実施形態によれば、負極活性層34中、バインダーと負極活物質との重量比は0.1:99.9から10:90(例えば1:99、2:98、3:97、4:96、5:95、6:94、7:93、8:92または9:91)であってよい。本開示の実施形態によれば、負極活性層34はバインダーおよび負極活物質からなるものであってよい。本開示の実施形態によれば、負極集電層32は導電性カーボン基板、金属箔、または多孔質構造を有する金属材料、例えばカーボンクロス、カーボンフェルト、カーボンペーパー、銅箔、ニッケル箔、アルミニウム箔、ニッケルメッシュ、銅メッシュ、モリブデンメッシュ、ニッケルフォーム、銅フォームまたはモリブデンフォームであってよい。本開示の実施形態によれば、多孔質構造を有する金属材料の気孔率は約10%から99.9%(例えば20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%または90%)であってよい。
【0040】
本開示のいくつかの実施形態によれば、本開示の負極活性層34はセパレータ20と負極集電層32との間に配置されてよい。本開示の実施形態によれば、負極活物質には、カーボン材料、リチウム、遷移金属酸化物、リチウム含有化合物、ケイ素含有材料、またはこれらの組み合わせが含まれる。本開示の実施形態によれば、カーボン材料には、準安定相球状カーボン(metastable phase spherical carbon, MCMB)、気相成長炭素繊維(VGCF)、カーボンナノチューブ(CNT)、コークス、カーボンブラック、グラファイト、グラフェン、アセチレンブラック、カーボンファイバー、またはこれらの組み合わせが含まれ得る。本開示の実施形態によれば、リチウム含有化合物には、LiAl、LiMg、LiZn、Li3Bi、Li3Cd、Li3Sb、Li4Si、Li4.4Pb、Li4.4Sn、LiC6、Li3FeN2、Li2.6Co0.4N、またはLi2.6Cu0.4Nが含まれ得る。本開示の実施形態によれば、ケイ素含有材料には、炭素修飾(carbon-modified)酸化ケイ素、炭化ケイ素または純ケイ素材料が含まれ得る。本開示の実施形態によれば、遷移金属酸化物にはLi4Ti5O12またはTiNb2Oが含まれ得る。
【0041】
本開示の実施形態によれば、
図6に示されるように、本開示の電池100が
図2に示される正極を含むとき、電池100はセパレータ20上に配置された金属酸化物層22をさらに含んでいてよく、金属酸化物層22はセパレータ20と正極10との間に配置される。金属酸化物層22および本開示の正極10の組み合わせによって、電池が過充電されたときに、正極を含むリチウム電池内で内部短絡が発生する時間が延長され得る。また、正極を含むリチウム電池は、内部短絡を生じたときに、電池エネルギーの放出が減速され得る(つまり、エネルギー放出レートを低下させる)ため、使用時におけるリチウム電池の安全性が高まる。
【0042】
本開示の実施形態によれば、金属酸化物層22は、金属酸化物粉末、例えば、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化ケイ素、酸化スズ、またはこれらの組み合わせを含んでいてよい。本開示の実施形態によれば、金属酸化物粉末の粒径は限定されず、当該分野において通常の知識を有する者が任意に変更することができる。金属酸化物粉末の粒径は1nmから5μm、例えば10nm、50nm、100nm、500nm、1μmまたは3μmであってよい。本開示の実施形態によれば、金属酸化物層22はバインダーをさらに含んでいてよく、バインダーには、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、スチレン・ブタジエンコポリマー、フッ素ゴム、ポリウレタン、ポリビニルピロリドン、ポリ(エチルアクリレート)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリブタジエン、ポリアクリル酸(PAA)、またはこれらの組み合わせが含まれ得る。本開示の実施形態によれば、金属酸化物層22中、金属酸化物粉末およびバインダーの総重量に対し、金属酸化物粉末の重量百分率は約90wt%から99.9wt%(例えば91wt%、92wt%、93wt%、94wt%、95wt%、96wt%、97wt%、98wt%または99wt%)であってよく、バインダーの重量百分率は約0.1wt%から10wt%(例えば1wt%、2wt%、3wt%、4wt%、5wt%、6wt%、7wt%、8wt%または9wt%)であってよい。本開示の実施形態によれば、金属酸化物層22中、バインダーと金属酸化物粉末との重量比は0.1:99.9から10:90(例えば1:99、2:98、3:97、4:96、5:95、6:94、7:93、8:92または9:91)であってよい。本開示の実施形態によれば、金属酸化物層22はバインダーおよび金属酸化物粉末からなるものであってよい。
【0043】
本開示の実施形態によれば、金属酸化物層22の厚さは限定されず、当該分野において通常の知識を有する者が任意に変更することができる。例えば、金属酸化物層22の厚さは約1μmから10μm(例えば約2μm、3μm、4μm、5μm、6μmまたは8μm)であってよい。
【0044】
以下に、当該分野において通常の知識を有する者が容易に理解できるよう、添付の図面を参照にして、例示的な実施形態を詳細に説明する。本発明概念は、ここに示される例示的な実施形態に限定されることなく、様々な形式で具体化され得る。明瞭にするため、周知の部分についての説明は省かれ、かつ全体を通して類似する参照数字は類似する構成要素を示すものとする。
【実施例0045】
実施例1
リチウムニッケルマンガンコバルト酸化物(化学構造LiNi0.6Mn0.2Co0.2O2を有する)(取引番号NMC622でNingbo Ronbay New Energy Technology Co.,Ltd. から市販されている)96重量部、導電性カーボンブラック(取引番号Super-PでTimcalから市販されている)2重量部、およびポリフッ化ビニリデン(PVDF)バインダー(取引番号PVDF-5130、Solvayから市販されている)2重量部を1-メチル-2-ピロリドン(NMP)中に均一に分散させ、正極活性層スラリーを得た。次いで、その正極活性層スラリーをアルミニウム箔(正極集電層となる)(An Chuan Enterprise Co.,Ltd.から市販されている、厚さ12μm)上に塗布した。乾燥後、正極活性層を得た(正極集電層上に配置)(厚さ約65μm、面積重量(area weight)約19mg/cm2)。得られた正極活性層の抵抗を、四探針抵抗計を用いて測定したところ、正極活性層の抵抗は約0.008Ωであった。
【0046】
次いで、リチウム鉄マンガンリン酸塩(LMFP)(取引番号GEでHCM CO.,LTD. から市販されている)97重量部、導電性カーボンブラック(取引番号Super-PでTimcalから市販されている)0.1重量部、およびポリフッ化ビニリデン(PVDF)バインダー(取引番号PVDF-5130、Solvayから市販されている)2.9重量部を1-メチル-2-ピロリドン(NMP)中に均一に分散させ、リチウム鉄マンガンリン酸塩スラリーを得た。次いで、そのリチウム鉄マンガンリン酸塩スラリーを正極活性層上に塗布した。乾燥後、第1の層を得た(正極活性層上に配置)(厚さ約18μm、面積重量(area weight)約4mg/cm2)。正極集電層、正極活性層、および第1の層の積層を正極とした。得られた第1の層の抵抗を、四探針抵抗計を用いて測定したところ、第1の層の抵抗は約480Ωであった。測定後、第1の層と正極活性層との電気抵抗比は約6×104であった。
【0047】
次いで、銅箔(取引番号BFR-FでChang Chun Groupから市販されている)(負極となる)およびポリエチレン(PE)セパレータ(取引番号N9620でAsahi Kaseiから市販されている)(厚さ約16μm)を準備した。次いで、負極、セパレータおよび正極を順番に配置し(正極の第1の層をセパレータに向けた)、アルミニウム箔セル(サイズ5mm(厚さ)×60mm(幅)×80mm(長さ))内に封止してから、液体電解質をそのアルミニウム箔セル中に注入して電池を得た。液体電解質はLiPF6および溶媒を含むものとし、溶媒はエチレンカーボネート(EC)およびジエチルカーボネート(DEC)とし、ECとDECとの体積比は1:1、LiPF6の濃度は1.1Mとした。
【0048】
次いで、その電池を1Cの充電レートで充電して過充電とし、電池が19Vまで充電されたときの現象を記録した。その結果は表1に示されている。
【0049】
比較例1
実施例1の正極集電層および正極活性層の積層を準備した。
【0050】
次いで、銅箔(取引番号BFR-FでChang Chun Groupから市販されている)(負極となる)およびポリエチレン(PE)セパレータ(取引番号N9620でAsahi Kaseiから市販されている)(厚さ約16μm)を準備した。次いで、負極、セパレータおよび正極を順番に配置し(正極の第1の層をセパレータに向けた)、アルミニウム箔セル(サイズ5mm(厚さ)×60mm(幅)×80mm(長さ)))内に封止してから、液体電解質をそのアルミニウム箔セル中に注入して電池を得た。液体電解質はLiPF6および溶媒を含むものとし、溶媒はエチレンカーボネート(EC)およびジエチルカーボネート(DEC)とし、ECとDECとの体積比は1:1、LiPF6の濃度は1.1Mとした。
【0051】
次いで、その電池を1Cの充電レートで充電して過充電にし、電池が19Vまで充電されたときの現象を記録した。その結果は表1に示されている。
【0052】
【0053】
表1に示されるように、比較例1の電池と比較して、電池(つまり、実施例1の電池)が本開示の正極(正極活性層上に配置されたリチウム鉄マンガンリン酸塩を有する)を用いている場合、電池を19Vまで充電するのにかかる時間が延長され、電池を19Vまで充電した後に続けて充電しているときも電池は19Vに維持され得るため、電池の爆発が防がれる。
【0054】
実施例2
実施例1の正極、銅箔(取引番号BFR-F、 Chang Chun Groupから市販されている)(負極となる)および酸化アルミニウム層(BenQから市販されている。厚さ約18μm、このうち酸化アルミニウム層の厚さは2μm)を有するセパレータを準備した。
【0055】
次いで、負極、酸化アルミニウム層を有するセパレータ、および正極を順番に配置し(正極の第1の層を酸化アルミニウム層に向けた)、アルミニウム箔セル(サイズ5mm(厚さ)×60mm(幅)×80mm(長さ))内に封止してから、液体電解質をそのアルミニウム箔セル中に注入して電池を得た。液体電解質はLiPF6および溶媒を含むものとし、溶媒はエチレンカーボネート(EC)およびジエチルカーボネート(DEC)とし、ECとDECとの体積比は1:1、LiPF6の濃度は1.1Mとした。
【0056】
次いで、その電池を1Cの充電レートで充電して過充電にし、電池が19Vまで充電されたときの現象を記録した。その結果は表2に示されている。
【0057】
比較例2
実施例1の正極集電層および正極活性層の積層を準備した。銅箔(取引番号BFR-F、Chang Chun Groupから市販されている)(負極となる)および実施例2の酸化アルミニウム層を有するセパレータを準備した。
【0058】
次いで、負極、酸化アルミニウム層を有するセパレータ、および正極を順番に配置し(正極の第1の層を酸化アルミニウム層に向けた)、アルミニウム箔セル(サイズ5mm(厚さ)×60mm(幅)×80mm(長さ))内に封止してから、液体電解質をそのアルミニウム箔セル中に注入して電池を得た。液体電解質はLiPF6および溶媒を含むものとし、溶媒はエチレンカーボネート(EC)およびジエチルカーボネート(DEC)とし、ECとDECとの体積比は1:1、LiPF6の濃度は1.1Mとした。
【0059】
次いで、その電池を1Cの充電レートで充電して過充電にし、電池が19Vまで充電されたときの現象を記録した。その結果は表2に示されている。
【0060】
【0061】
表2に示されるように、比較例2の電池と比較して、電池(つまり、実施例2の電池)が本開示の正極(正極活性層上に配置されたリチウム鉄マンガンリン酸塩を有する)を用いている場合、電池を19Vまで充電するのにかかる時間が延長され、電池を19Vまで充電した後に続けて充電しているときも電池は19Vに維持され得るため、電池の爆発が防がれる。
【0062】
実施例3
リチウムニッケルマンガンコバルト酸化物(化学構造LiNi0.83~0.85Mn0.4~0.5Co0.11~0.12O2を有する)(取引番号NMC811でNingbo Ronbay New Energy Technology Co.,Ltd.から市販されている)96重量部、導電性カーボンブラック(取引番号Super-PでTimcalから市販されている)2重量部、およびポリフッ化ビニリデン(PVDF)バインダー(取引番号PVDF-5130、Solvayから市販されている)2重量部を1-メチル-2-ピロリドン(NMP)中に均一に分散させ、正極活性層スラリーを得た。次いで、その正極活性層スラリーをアルミニウム箔(正極集電層となる)(An Chuan Enterprise Co.,Ltd.から市販されている。厚さ12μm)上に塗布した。乾燥後、正極活性層を得た(正極集電層上に配置)(厚さ約85μm、面積重量(area weight)約19mg/cm2)。得られた正極活性層の抵抗を、四探針抵抗計を用いて測定したところ、正極活性層の抵抗は約0.009Ωであった。
【0063】
次いで、リチウム鉄マンガンリン酸塩(LMFP)(取引番号GEでHCM CO.,LTD. から市販されている)97重量部、導電性カーボンブラック(取引番号Super-PでTimcalから市販されている)0.1重量部、およびポリフッ化ビニリデン(PVDF)バインダー (取引番号PVDF-5130、 Solvayから市販されている)2.9重量部を1-メチル-2-ピロリドン(NMP)中に均一に分散させ、リチウム鉄マンガンリン酸塩スラリーを得た。次いで、そのリチウム鉄マンガンリン酸塩スラリーを正極活性層上に塗布した。乾燥後、第1の層を得た(正極活性層上に配置)(厚さ約18μm、面積重量(area weight)約4mg/cm2)。正極集電層、正極活性層、および第1の層の積層を正極とした。得られた第1の層の抵抗を、四探針抵抗計を用いて測定したところ、第1の層の抵抗は約90Ωであった。測定後、第1の層と正極活性層との電気抵抗比は約1×104であった。
【0064】
次いで、銅箔(取引番号BFR-F、Chang Chun Groupから市販されている)(負極となる)および酸化アルミニウム層を有するセパレータ(BenQから市販されている。厚さ約18μm、酸化アルミニウム層の厚さは2μm)を準備した。
【0065】
次いで、負極、酸化アルミニウム層を有するセパレータ、および正極を順番に配置し(正極の第1の層を酸化アルミニウム層に向けた)、アルミニウム箔セル(サイズ5mm(厚さ)×60mm(幅)×80mm(長さ))内に封止してから、液体電解質(取引番号NDFX2でHopax Chemicals Manufacturing Co Ltd.から市販されている)をそのアルミニウム箔セル中に注入して電池を得た。
【0066】
次いで、その電池を1Cの充電レートで充電して過充電にし、電池が6Vまで充電されたときの現象を記録した。その結果は表3に示されている。
【0067】
比較例3
実施例3の正極集電層および正極活性層の積層を準備した。銅箔(取引番号BER-F、Chang Chun Groupから市販されている)(負極となる)および実施例3の酸化アルミニウム層を有するセパレータを準備した。
【0068】
次いで、負極、酸化アルミニウム層を有するセパレータ、および正極を順番に配置し(正極の第1の層を酸化アルミニウム層に向けた)、アルミニウム箔セル(サイズ5mm(厚さ)×60mm(幅)×80mm(長さ))内に封止してから、液体電解質(取引番号NDFX2でHopax Chemicals Manufacturing Co Ltd.から市販されている)をそのアルミニウム箔セル中に注入して電池を得た。
【0069】
次いで、その電池を1Cの充電レートで充電して過充電にし、電池が6Vまで充電されたときの現象を記録した。その結果は表3に示されている。
【0070】
実施例4
リチウムニッケルマンガンコバルト酸化物(化学構造LiNi0.83~0.85Mn0.4~0.5Co0.11~0.12O2を有する)(取引番号NMC811でNingbo Ronbay New Energy Technology Co.,Ltd.から市販されている)96重量部、導電性カーボンブラック(取引番号 Super-PでTimcalから市販されている)2重量部、およびポリフッ化ビニリデン(PVDF)バインダー(取引番号PVDF-5130、Solvayから市販されている)2重量部を1-メチル-2-ピロリドン(NMP)中に均一に分散させ、正極活性層スラリーを得た。次いで、その正極活性層スラリーをアルミニウム箔(正極集電層となる)(An Chuan Enterprise Co.,Ltd.から市販されている。厚さ12μm)上に塗布した。乾燥後、正極活性層を得た(正極集電層上に配置)(厚さ約85μm、面積重量(area weight)約19mg/cm2)。
【0071】
次いで、リチウム鉄マンガンリン酸塩(LMFP)(取引番号GEで HCM CO.,LTD. から市販されている)97重量部およびポリフッ化ビニリデン(PVDF)バインダー(取引番号PVDF-5130、Solvayから市販されている)3重量部を1-メチル-2-ピロリドン(NMP)中に均一に分散させ、リチウム鉄マンガンリン酸塩スラリーを得た。次いで、そのリチウム鉄マンガンリン酸塩スラリーを正極活性層上に塗布した。乾燥後、第1の層を得た(正極活性層上に配置)(厚さ18μm、面積重量(area weight)約4mg/cm2)
【0072】
安定化リチウム金属粒子(取引番号SLMPでLiventから市販されている)10mgを第1の層に均一に分散させた。次いで、100gfの圧力を印加して、安定化リチウム金属粒子を第1の層に付着させ、第2の層(第1の層上に配置)(面積重量(area weight)約0.2mg/cm2)を形成した。正極集電層、 正極活性層、第1の層、および第2の層の積層は正極となる。
【0073】
銅箔(取引番号BFR-F、Chang Chun Groupから市販されている)(負極となる)および酸化アルミニウム層を有するセパレータ(BenQから市販されている)(厚さ約18μm、酸化アルミニウム層の厚さは2μm)を準備した。
【0074】
次いで、負極、酸化アルミニウム層を有するセパレータ、および正極を順番に配置し(正極の第1の層を酸化アルミニウム層に向けた)、アルミニウム箔セル(サイズ5mm(厚さ)×60mm(幅)×80mm(長さ))内に封止してから、液体電解質(取引番号NDFX2でHopax Chemicals Manufacturing Co Ltd.から市販されている、)をそのアルミニウム箔セル中に注入して電池を得た。
【0075】
次いで、その電池を1Cの充電レートで充電して過充電にし、電池が6Vまで充電されたときの現象を記録した。その結果は表3に示されている。
【0076】
【0077】
表3に示されるように、比較例3の電池と比較して、電池(つまり、実施例3の電池)が本開示の正極(正極活性層上に配置されたリチウム鉄マンガンリン酸塩層を有する)を用いている場合、電池を6Vまで充電するのにかかる時間が延長され、電池を6Vまで充電した後に続けて充電しているときも電池は6Vで維持され得るため、電池の爆発が防がれる。また、電池(つまり、実施例4の電池)が本開示の正極(正極活性層上に配置されたリチウム鉄マンガンリン酸塩層および安定化リチウム金属粒子層を有する)を用いている場合、電池を6Vまで充電するのにかかる時間が延長され、電池を6Vまで充電した後に続けて充電しているときも電池は6Vに維持され得るため、電池の爆発が防がれる。
【0078】
比較例4
実施例3の正極集電層および正極活性層の積層を準備した。
【0079】
安定化リチウム金属粒子(取引番号SLMPでLivent から市販されている)10mgを正極活性層上に均一に分散させた。次いで、100gfの圧力を印加して、安定化リチウム金属粒子を正極活性層に付着させ、安定化リチウム金属粒子層(正極活性層上に配置)(面積重量(area weight)約0.2mg/cm2)を形成した。正極集電層、正極活性層、および安定化リチウム金属粒子層の積層は正極となる。
【0080】
銅箔(取引番号BFR-F、Chang Chun Groupから市販されている)(負極とする)および実施例3の酸化アルミニウム層を有するセパレータを準備した。
【0081】
次いで、負極、酸化アルミニウム層を有するセパレータ、および正極を順番に配置し(正極の安定化リチウム金属粒子層を酸化アルミニウム層に向けた)、アルミニウム箔セル(サイズ5mm(厚さ)×60mm(幅)×80mm(長さ))内に封止してから、液体電解質(取引番号NDFX2でHopax Chemicals Manufacturing Co Ltd.から市販されている)をそのアルミニウム箔セル中に注入して電池を得た。
【0082】
実施例3および4ならびに比較例3および4の電池の初回充電/放電サイクルにおける放電比容量を、0.1C/0.1C(4.5Vから3V)の充電レートおよび放電レートで測定した。結果は表4に示されるとおりである。
【0083】
【0084】
表4に示されるように、本開示の正極(正極活性層上に配置されたリチウム鉄マンガンリン酸塩層を有する)を用いた電池(つまり、実施例3の電池)は十分な放電比容量を示している。さらに、比較例3の電池と比べてみると、比較例4の電池は、安定化リチウム金属粒子層が正極活性層と直接接触するとき、より低い放電比容量を示している。比較例4の電池に比して、実施例4の電池は本開示の正極(正極活性層上に配置されたリチウム鉄マンガンリン酸塩層および安定化リチウム金属粒子層を有する)を用いているため、実施例4の電池は放電比容量が高まっている。
【0085】
実施例5
リチウムニッケルマンガンコバルト酸化物(化学構造LiNi0.6Mn0.2Co0.2O2を有する)(取引番号NMC622でNingbo Ronbay New Energy Technology Co.,Ltd.から市販されている)96重量部、導電性カーボンブラック(取引番号 Super-PでTimcalから市販されている)2重量部、およびポリフッ化ビニリデン(PVDF)バインダー(取引番号PVDF-5130、Solvayから市販されている)2重量部を1-メチル-2-ピロリドン(NMP)中に均一に分散させ、正極活性層スラリーを得た。次いで、その正極活性層スラリーをアルミニウム箔(正極集電層となる)(An Chuan Enterprise Co.,Ltd.から市販されている。厚さ12μm)上に塗布した。乾燥後、正極活性層を得た(正極集電層上に配置)(厚さ約65μm、面積重量(area weight)約19mg/cm2)。得られた正極活性層の抵抗を、四探針抵抗計を用いて測定したところ、正極活性層の抵抗は約0.008Ωであった。
【0086】
次いで、リチウム鉄マンガンリン酸塩(LMFP)(取引番号GEでHCM CO.,LTD. から市販されている)97重量部およびポリフッ化ビニリデン(PVDF)バインダー(取引番号PVDF-5130、Solvayから市販されている)3重量部を1-メチル-2-ピロリドン(NMP)中に均一に分散させ、リチウム鉄マンガンリン酸塩スラリーを得た。次いで、そのリチウム鉄マンガンリン酸塩スラリーを正極活性層上に塗布した。乾燥後、第1の層を得た(正極活性層上に配置)(厚さ約18μm、面積重量(area weight)約2mg/cm2)。正極集電層、正極活性層、および第1の層の積層を正極とした。得られた第1の層の抵抗を、四探針抵抗計を用いて測定したところ、第1の層の抵抗は約313Ωであった。測定後、第1の層と正極活性層との電気抵抗比は約3.9×104であった。
【0087】
次いで、銅箔(取引番号BFR-FでChang Chun Groupから市販されている)(負極となる)およびポリエチレン(PE)セパレータ(取引番号 N9620でAsahi Kaseiから市販されている)(厚さ約16μm)を準備した。次いで、負極、酸化アルミニウム層を有するセパレータ、および正極を順番に配置し(正極の第1の層をセパレータに向けた)、アルミニウム箔セル(サイズ5mm(厚さ)×60mm(幅)×80mm(長さ))内に封止してから、液体電解質をそのアルミニウム箔セル中に注入して電池を得た。液体電解質はLiPF6および溶媒を含むものとし、溶媒はエチレンカーボネート(EC)およびジエチルカーボネート(DEC)とし、ECとDECとの体積比は1:1、LiPF6の濃度は1.1Mとした。
【0088】
次いで、その電池を1Cの充電レートで充電して過充電にし、電池が19Vまで充電されたときの現象を記録した。その結果は表5に示されている。
【0089】
実施例6
リチウムニッケルマンガンコバルト酸化物(化学構造LiNi0.6Mn0.2Co0.2O2を有する)(取引番号NMC622でNingbo Ronbay New Energy Technology Co.,Ltd.から市販されている)96重量部、導電性カーボンブラック(取引番号Super-PでTimcalから市販されている)2重量部、およびポリフッ化ビニリデン(PVDF)バインダー(取引番号PVDF-5130、Solvayから市販されている)2重量部を1-メチル-2-ピロリドン(NMP)中に均一に分散させ、正極活性層スラリーを得た。次いで、その正極活性層スラリーをアルミニウム箔(正極集電層となる)(An Chuan Enterprise Co.,Ltd.から市販されている。厚さ12μm)上に塗布した。乾燥後、正極活性層を得た(正極集電層上に配置)(厚さ約65μm、面積重量(area weight)約19mg/cm2)。得られた正極活性層の抵抗を、四探針抵抗計を用いて測定したところ、正極活性層の抵抗は約0.008Ωであった。
【0090】
次いで、リチウム鉄マンガンリン酸塩(LMFP)(取引番号GEでHCM CO.,LTD. から市販されている)96.5重量部、VGFC 0.5重量部、およびポリフッ化ビニリデン(PVDF)バインダー(取引番号PVDF-5130、Solvayから市販されている)3重量部を1-メチル-2-ピロリドン(NMP)中に均一に分散させ、リチウム鉄マンガンリン酸塩スラリーを得た。次いで、そのリチウム鉄マンガンリン酸塩スラリーを正極活性層上に塗布した。乾燥後、第1の層を得た(正極活性層上に配置)(厚さ約18μm、面積重量(area weight)約2mg/cm2)。正極集電層、正極活性層、および第1の層の積層を正極とした。得られた第1の層の抵抗を、四探針抵抗計を用いて測定したところ、第1の層の抵抗は約92Ωであった。測定後、第1の層と正極活性層との電気抵抗比は約1.1×104であった。
【0091】
次いで、銅箔(取引番号BFR-FでChang Chun Groupから市販されている)(負極となる)およびポリエチレン(PE)セパレータ(取引番号N9620でAsahi Kaseiから市販されている)(厚さ約16μm)を準備した。次いで、負極、酸化アルミニウム層を有するセパレータ、および正極を順番に配置し(正極の第1の層をセパレータに向けた)、アルミニウム箔セル(サイズ5mm(厚さ)×60mm(幅)×80mm(長さ))内に封止してから、液体電解質をそのアルミニウム箔セル中に注入して電池を得た。液体電解質はLiPF6および溶媒を含むものとし、溶媒はエチレンカーボネート(EC)およびジエチルカーボネート(DEC)とし、ECとDECとの体積比は1:1、LiPF6の濃度は1.1Mとした。
【0092】
次いで、その電池を1Cの充電レートで充電して過充電にし、電池が19Vまで充電されたときの現象を記録した。その結果は表5に示されている。
【0093】
比較例5
リチウムニッケルマンガンコバルト酸化物(化学構造LiNi0.6Mn0.2Co0.2O2を有する)(取引番号NMC622でNingbo Ronbay New Energy Technology Co.,Ltd.から市販されている)96重量部、導電性カーボンブラック(取引番号Super-PでTimcalから市販されている)2重量部、およびポリフッ化ビニリデン(PVDF)バインダー(取引番号PVDF-5130、Solvayから市販されている)2重量部を1-メチル-2-ピロリドン(NMP)中に均一に分散させ、正極活性層スラリーを得た。次いで、その正極活性層スラリーをアルミニウム箔(正極集電層となる)(An Chuan Enterprise Co.,Ltd.から市販されている、厚さ12μm)上に塗布した。乾燥後、正極活性層を得た(正極集電層上に配置)(厚さ約65μm、面積重量(area weight)約19mg/cm2)。得られた正極活性層の抵抗を、四探針抵抗計を用いて測定したところ、正極活性層の抵抗は約0.008Ωであった。
【0094】
次いで、リチウム鉄マンガンリン酸塩(LMFP)(取引番号GEでHCM CO.,LTD. から市販されている)96.5重量部、VGCF 0.5重量部、カーボンナノチューブ(取引番号CNTでBeijing Cnano Technologyから市販されている)0.1重量部、およびポリフッ化ビニリデン(PVDF)バインダー(取引番号PVDF-5130、Solvayから市販されている)2.9重量部を1-メチル-2-ピロリドン(NMP)中に均一に分散させ、リチウム鉄マンガンリン酸塩スラリーを得た。次いで、そのリチウム鉄マンガンリン酸塩スラリーを正極活性層上に塗布した。乾燥後、第1の層を得た(正極活性層上に配置)(厚さ約10μm、面積重量(area weight)約2mg/cm2)。正極集電層、正極活性層、および第1の層の積層を正極とした。得られた第1の層の抵抗を、四探針抵抗計を用いて測定したところ、第1の層の抵抗は約0.0196Ωであった。測定後、第1の層と正極活性層との電気抵抗比は約2.5であった。
【0095】
次いで、銅箔(取引番号BFR-FでChang Chun Groupから市販されている)(負極となる)およびポリエチレン(PE)セパレータ(取引番号N9620でAsahi Kaseiから市販されている)(厚さ約16μm)を準備した。次いで、負極、酸化アルミニウム層を有するセパレータ、および正極を順番に配置し(正極の第1の層をセパレータに向けた)、アルミニウム箔セル(サイズ5mm(厚さ)×60mm(幅)×80mm(長さ))内に封止してから、液体電解質をそのアルミニウム箔セル中に注入して電池を得た。液体電解質はLiPF6および溶媒を含むものとし、溶媒はエチレンカーボネート(EC)およびジエチルカーボネート(DEC)とし、ECとDECとの体積比は1:1、LiPF6の濃度は1.1Mとした。
【0096】
次いで、その電池を1Cの充電レートで充電して過充電にし、電池が19Vまで充電されたときの現象を記録した。その結果は表5に示されている。
【0097】
【0098】
表5に示されるように、比較例5の電池と比較して、電池(つまり、実施例5~6の電池)が本開示の正極(正極活性層上に配置されたリチウム鉄マンガンリン酸塩層を有する)を用いている場合、電池を19Vまで充電するのにかかる時間が延長され、電池を19Vまで充電した後に続けて充電しているときも電池は19Vに維持され得るため、電池の爆発が防がれる。
【0099】
実施例7
SiO/C(酸化ケイ素および炭素の混合物)(取引名KYX-2でKaijin New Energy Technology Co.,Ltd.から市販されている)96.3重量部、導電性カーボンブラック(取引番号Super-PでTimcalから市販されている)0.3重量部、スチレンブタジエンゴム(SBR)(JSRから市販されている)1.5重量部、カルボキシメチルセルロース(CMC)(取引番号CMC-2200、Daicel Chemical industriesから市販されている)1.3重量部、およびカーボンナノチューブ(取引番号TUBALL(登録商標)、OCSiAlから市販されている)0.6重量部を混合してから、脱イオン水中に均一に分散させ、負極活性層スラリーを得た。次いで、その負極活性層スラリーを銅箔(取引番号BFR-FでChang Chun Groupから市販されている)(厚さ約12μm)上に塗布した。乾燥後、負極を得た。
【0100】
実施例3の正極および酸化アルミニウム層を有するセパレータを準備した。
【0101】
次いで、負極、酸化アルミニウム層を有するセパレータ、および正極を順番に配置し(正極の第1の層を酸化アルミニウム層に向けた)、アルミニウム箔セル(サイズ5mm(厚さ)×60mm(幅)×80mm(長さ))内に封止してから、液体電解質(取引番号LD88でFormosa Plastics Corporationから市販されている)をそのアルミニウム箔セル中に注入して電池を得た。
【0102】
実施例8
実施例7の負極、実施例4の正極、および実施例3の酸化アルミニウム層を有するセパレータを準備した。
【0103】
次いで、負極、酸化アルミニウム層を有するセパレータ、および正極を順番に配置し(正極の第2の層を酸化アルミニウム層に向けた)、アルミニウム箔セル(サイズ5mm(厚さ)×60mm(幅)×80mm(長さ))内に封止してから、液体電解質(取引番号LD88でFormosa Plastics Corporationから市販されている)をそのアルミニウム箔セル中に注入して電池を得た。
【0104】
実施例7および8の電池の初回サイクルの充電/放電における放電比容量を、0.1C/0.1C(4.2Vから2.8V)の充電レートおよび放電レートで測定した。結果は表6に示されるとおりである。
【0105】
【0106】
表6に示されるように、電池(つまり、実施例8の電池)は、本開示の正極(正極活性層上に配置されたリチウム鉄マンガンリン酸塩層および安定化リチウム金属粒子層を有する)を用いているため、放電比容量が高まっている。
【0107】
次いで、実施例7および8の電池の容量維持率を測定した。その結果は表7に示されている。容量維持率は、0.1C/0.1Cの充電レートおよび放電レート、25℃で、初回サイクルの充電/放電における放電比容量、および50サイクル目の充電/放電における放電比容量を測定することにより測った。
【0108】
【0109】
表6および7に示されるように、本開示の正極を用いた電池は、容量維持率が低下しないという前提の下、放電比容量が高まっている。
【0110】
実施例9
リチウムニッケルマンガンコバルト酸化物(化学構造LiNi0.6Mn0.2Co0.2O2を有する)(取引番号NMC622でNingbo Ronbay New Energy Technology Co.,Ltd.から市販されている)96重量部、導電性カーボンブラック(取引番号Super-PでTimcalから市販されている)2重量部、およびポリフッ化ビニリデン(PVDF)バインダー(取引番号PVDF-5130、Solvayから市販されている)2重量部を1-メチル-2-ピロリドン(NMP)中に均一に分散させ、正極活性層スラリーを得た。次いで、その正極活性層スラリーをアルミニウム箔(正極集電層となる)(An Chuan Enterprise Co.,Ltd.から市販されている、厚さ12μm)上に塗布した。乾燥後、正極活性層を得た(正極集電層上に配置)(厚さ約65μm、面積重量(area weight)約19mg/cm2)。得られた正極活性層の抵抗を、四探針抵抗計を用いて測定したところ、正極活性層の抵抗は約0.008Ωであった。
【0111】
次いで、リチウム鉄マンガンリン酸塩(LMFP)(取引番号GEでHCM CO.,LTD. から市販されている)96.5重量部、VGCF 0.5重量部、カーボンナノチューブ(取引番号CNTでBeijing Cnano Technologyから市販されている)0.07重量部、およびポリフッ化ビニリデン(PVDF)バインダー(取引番号PVDF-5130、Solvayから市販されている)2.93重量部を1-メチル-2-ピロリドン(NMP)中に均一に分散させ、リチウム鉄マンガンリン酸塩スラリーを得た。次いで、そのリチウム鉄マンガンリン酸塩スラリーを正極活性層上に塗布した。乾燥後、第1の層を得た(正極活性層上に配置)(厚さ約18μm、面積重量(area weight)約2mg/cm2)。正極集電層、正極活性層、および第1の層の積層を正極とした。得られた第1の層の抵抗を、四探針抵抗計を用いて測定したところ、第1の層の抵抗は約2.418Ωであった。測定後、第1の層と正極活性層との電気抵抗比は約302であった。
【0112】
次いで、銅箔(取引番号BFR-FでChang Chun Groupから市販されている)(負極となる)およびポリエチレン(PE)セパレータ(取引番号N9620でAsahi Kaseiから市販されている)(厚さ約16μm)を準備した。次いで、負極、酸化アルミニウム層を有するセパレータ、および正極を順番に配置し(正極の第1の層をセパレータに向けた)、アルミニウム箔セル(サイズ5mm(厚さ)×60mm(幅)×80mm(長さ))内に封止してから、液体電解質をそのアルミニウム箔セル中に注入して電池を得た。液体電解質はLiPF6および溶媒を含むものとし、溶媒はエチレンカーボネート(EC)およびジエチルカーボネート(DEC)とし、ECとDECとの体積比は1:1、LiPF6の濃度は1.1Mとした。
【0113】
次いで、その電池を1Cの充電レートで充電して過充電にし、電池が19Vまで充電されたときの現象を記録した。その結果は表8に示されている。
【0114】
実施例10
リチウムニッケルマンガンコバルト酸化物(化学構造LiNi0.6Mn0.2Co0.2O2を有する)(取引番号NMC622でNingbo Ronbay New Energy Technology Co.,Ltd.から市販されている)96重量部、導電性カーボンブラック(取引番号Super-PでTimcalから市販されている)2重量部、およびポリフッ化ビニリデン(PVDF)バインダー(取引番号PVDF-5130、Solvayから市販されている)2重量部を1-メチル-2-ピロリドン(NMP)中に均一に分散させ、正極活性層スラリーを得た。次いで、その正極活性層スラリーをアルミニウム箔(正極集電層となる)(An Chuan Enterprise Co.,Ltd.から市販されている。厚さ12μm)上に塗布した。乾燥後、正極活性層を得た(正極集電層上に配置)(厚さ約65μm、面積重量(area weight)約19mg/cm2)。得られた正極活性層の抵抗を、四探針抵抗計を用いて測定したところ、正極活性層の抵抗は約0.008Ωであった。
【0115】
次いで、リチウム鉄マンガンリン酸塩(LMFP)(取引番号GEでHCM CO.,LTD. から市販されている)96重量部、およびポリフッ化ビニリデン(PVDF)バインダー(取引番号PVDF-5130、Solvayから市販されている)4重量部を1-メチル-2-ピロリドン(NMP)中に均一に分散させ、リチウム鉄マンガンリン酸塩スラリーを得た。次いで、そのリチウム鉄マンガンリン酸塩スラリーを正極活性層上に塗布した。乾燥後、第1の層を得た(正極活性層上に配置)(厚さ約18μm、面積重量(area weight)約2mg/cm2)。正極集電層、正極活性層、および第1の層の積層を正極とした。得られた第1の層の抵抗を、四探針抵抗計を用いて測定したところ、第1の層の抵抗は約5750Ωであった。測定後、第1の層と正極活性層との電気抵抗比は約7.2×105であった。
【0116】
次いで、銅箔(取引番号BFR-FでChang Chun Groupから市販されている)(負極となる)およびポリエチレン(PE)セパレータ(取引番号N9620でAsahi Kaseiから市販されている)(厚さ約16μm)を準備した。次いで、負極、酸化アルミニウム層を有するセパレータ、および正極を順番に配置し(正極の第1の層をセパレータに向けた)、アルミニウム箔セル(サイズ5mm(厚さ)×60mm(幅)×80mm(長さ))内に封止してから、液体電解質をそのアルミニウム箔セル中に注入して電池を得た。液体電解質はLiPF6および溶媒を含むものとし、溶媒はエチレンカーボネート(EC)およびジエチルカーボネート(DEC)とし、ECとDECとの体積比は1:1、LiPF6の濃度は1.1Mとした。
【0117】
次いで、その電池を1Cの充電レートで充電して過充電にし、電池が19Vまで充電されたときの現象を記録した。その結果は表8に示されている。
【0118】
【0119】
したがって、本開示の正極の特定の組成および構造により、当該正極を含むリチウム電池内で内部短絡が発生する時間が延長され得る。加えて、当該正極を含むリチウム電池が内部短絡を起こしたとき、電池エネルギーの放出は減速し得る(つまり、エネルギー放出レートが低下する)ため、使用時におけるリチウム電池の安全性が高まる。また、本開示の正極(特定の組成および構造を有する)を用いたリチウム電池は、容量維持率が低下しないという前提の下、放電比容量が高まる。
【0120】
本発明を例の方式で、好ましい実施形態により説明したが、本発明が開示された実施形態に限定されないということが理解されなければならない。むしろ、(当業者には明らかであろう)各種の変更および類似する構成をカバーすることが意図されている。故に、添付のクレームの範囲は、かかる各種の変更および類似する構成を全て包含するよう、最も広い解釈が与えられなければならない。