(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024020156
(43)【公開日】2024-02-14
(54)【発明の名称】NMR磁石システムにおける温度誘発型のシムドリフトの受動的低減
(51)【国際特許分類】
G01N 24/00 20060101AFI20240206BHJP
G01R 33/3875 20060101ALI20240206BHJP
【FI】
G01N24/00 610J
G01N24/00 600D
G01R33/3875
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023118793
(22)【出願日】2023-07-21
(31)【優先権主張番号】10 2022 207 486.6
(32)【優先日】2022-07-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(71)【出願人】
【識別番号】591148048
【氏名又は名称】ブルーカー スウィッツァーランド アー・ゲー
【氏名又は名称原語表記】Bruker Switzerland AG
(74)【代理人】
【識別番号】100125254
【弁理士】
【氏名又は名称】別役 重尚
(74)【代理人】
【識別番号】100118278
【弁理士】
【氏名又は名称】村松 聡
(72)【発明者】
【氏名】マルクス マイヤー
(72)【発明者】
【氏名】ビート グロスニクラウス
(72)【発明者】
【氏名】ピエール‐アラン ブーヴィエ
(72)【発明者】
【氏名】ラファエル カミナダ
(57)【要約】 (修正有)
【課題】装置の内部及び周辺の温度状態が変化しても磁場の均一性がほぼ安定かつ一定に保たれる、NMR装置を提供する。
【解決手段】真空容器8)側のクライオスタットの低温領域に配置された超伝導磁石1を有し、かつ真空容器の外側に配置された複数のシム要素6を含むシムシステム7を有し、この磁石が磁石懸架装置3を介する真空容器との第1の機械的接続箇所11を有し、シムシステムが動作温度における熱膨張係数が5ppm/Kより小さい材料のみが使用されていることを特徴とする。それにより装置の内部及び周辺の温度状態が変化した場合でも磁場の均一性をほぼ安定かつ一定に保つことができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空容器(8)の内側であってクライオスタットの低温領域に配置された超伝導磁石(1)を有し、かつ前記真空容器(8)の外側に配置された複数のシム要素(6)を含むシムシステム(7)を有する、均一な磁場を生成するための磁石コイルシステムを備えるNMR装置であって、
前記超伝導磁石(1)は、磁石懸架装置(3)を介する前記真空容器(8)との第1の機械的接続箇所(11)を有し、前記シムシステム(7)は、位置決め要素(5)を介する前記真空容器(8)との第2の機械的接続箇所(10;12)を有する、NMR装置において、
前記第1の機械的接続箇所(11)から前記第2の機械的接続箇所(10;12)への前記真空容器(8)に沿った経路の少なくとも一部分、及び/又は前記第2の機械的接続箇所(10;12)から前記シムシステム(7)への前記位置決め要素(5)に沿った経路の少なくとも一部分に、動作温度における熱膨張係数が5ppm/Kより小さい材料のみが使用されていることを特徴とする、NMR装置。
【請求項2】
前記第1の機械的接続箇所(11)から前記第2の機械的接続箇所(10;12)への前記真空容器(8)に沿った前記経路部分の長さ、及び/又は前記第2の機械的接続箇所(10;12)から前記シムシステム(7)への前記位置決め要素(5)に沿った前記経路部分の長さはそれぞれ、対応する前記経路の全長の50%を超えることを特徴とする、請求項1に記載のNMR装置。
【請求項3】
前記第1の機械的接続箇所(11)から前記第2の機械的接続箇所(10;12)への前記真空容器(8)に沿った前記経路、及び/又は前記第2の機械的接続箇所(10;12)から前記シムシステム(7)への前記位置決め要素(5)に沿った前記経路のそれぞれにおいて、異なる熱膨張係数を有する複数の材料が部分的に使用され、前記複数の材料の熱膨張が互いに打ち消し合うことを特徴とする、請求項1又は2に記載のNMR装置。
【請求項4】
前記第1の機械的接続箇所(11)から前記第2の機械的接続箇所(10;12)への前記真空容器(8)に沿った前記経路の前記少なくとも一部分に、材料としてインバーが使用されていることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載のNMR装置。
【請求項5】
前記第2の機械的接続箇所(10;12)から前記シムシステム(7)への前記位置決め要素(5)に沿った前記経路の前記少なくとも一部分に、材料としてCFK(=炭素繊維強化プラスチック)が使用されていることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載のNMR装置。
【請求項6】
前記第1の機械的接続箇所(11)と前記第2の機械的接続箇所(10;12)との距離が10cmより小さいことを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項、好ましくは請求項5に記載のNMR装置。
【請求項7】
前記第2の機械的接続箇所(10;12)から前記シムシステム(7)への前記位置決め要素(5)に沿った別の経路の少なくとも一部分に、動作温度における熱伝導率が50W/(mK)より大きい材料、特に銅が使用されていることを特徴とする、請求項1か6のいずれか一項に記載のNMR装置。
【請求項8】
前記シム要素(6)が電気コイルとして、及び/又は強磁性要素として形成されていることを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載のNMR装置。
【請求項9】
前記真空容器(8)が垂直に延びる室温ボアを有し、前記室温ボア内に前記シムシステム(7)が配置されていることと、前記位置決め要素(5)がクランプリングを含み、前記真空容器(8)の前記室温ボアの上端上に位置する前記クランプリングの接触面が前記第2の機械的接続箇所(10)を形成すること、を特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載のNMR装置。
【請求項10】
前記第1の機械的接続箇所(11)から前記第2の機械的接続箇所(10;12)への前記真空容器(8)に沿った前記経路の一部分、及び/又は前記第2の機械的接続箇所(10;12)から前記シムシステム(7)への前記位置決め要素(5)に沿った前記経路の一部分に、当該経路における熱に起因する長さ変化を調整するための調整素子(13)が配置され、好ましくは前記調整素子(13)が加熱素子及び/又は冷却素子及び/又は熱交換器を含むことを特徴とする、請求項1から9のいずれか一項に記載のNMR装置。
【請求項11】
前記調整素子(13)に加えてセンサ素子(14)が同一の経路上に配置され、好ましくは前記センサ素子(14)が温度計、特にPT-100センサ、及び/又は歪ゲージを含むことを特徴とする、請求項10に記載のNMR装置。
【請求項12】
前記センサ素子(14)がレーザを含み、前記レーザを用いて電気光学的距離測定により、特に干渉計測により、観測対象である経路部分の位置変化を検出できることを特徴とする、請求項11に記載のNMR装置。
【請求項13】
少なくとも1つの圧電素子(15)が設けられ、前記圧電素子により観測対象である経路部分の位置変化を補正できることを特徴とする、請求項11又は12に記載のNMR装置。
【請求項14】
前記超伝導磁石(1)は、前記真空容器(8)の内側であって、動作中に液体ヘリウムで満たされる前記クライオスタットのヘリウム容器(2)内に配置され、前記ヘリウム容器(2)は、好ましくは液体窒素で満たされる前記クライオスタットの窒素容器(9)によって半径方向に取り囲まれていることを特徴とする、請求項1から13のいずれか一項に記載のNMR装置。
【請求項15】
前記クライオスタットが、前記超伝導磁石(1)を動作温度まで冷却できる極低温冷却器を含むことを特徴とする、請求項1から14のいずれか一項に記載のNMR装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空容器の内側であってクライオスタットの低温領域に配置された超伝導磁石を有し、かつ真空容器の外側に配置された複数のシム要素を含むシムシステムを有する、均一な磁場を生成するための磁石コイルシステムを備えるNMR装置に関し、超伝導磁石は、磁石懸架装置を介する真空容器との第1の機械的接続箇所を有し、シムシステムは、位置決め要素を介する真空容器との第2の機械的接続箇所を有する。
【0002】
このようなNMR装置は、独国特許発明第10104365号公報(=文献[1])から知られている。
【背景技術】
【0003】
本発明は、大別すると核磁気共鳴(「NMR」)の分野に関し、特に、動作時には常に超伝導となり、NMR磁場の均一性がシムシステムによって更に改善される、冷却NMR磁石システムに関する。
【0004】
NMR分光法は、機器分析において広く使用される高効率な方法であり、これを用いて、例えば炭化水素又は生体無機複合化合物などの検査対象物質において、個々の原子の電子環境や個々の原子と隣接する原子との相互作用を検査することができる。このようにして、例えば、検査対象物質の組成、構造、動態を解明したり、同様に検査対象物質の濃度を算定したりすることができる。
【0005】
NMR測定では、物質は強力で均一な静磁場B0にさらされ、それによって物質内の核スピンが整列する。次に、検査対象物質に高周波電磁パルスが放射される。その際に生成された、同様に高周波の電磁場がNMR分光計で検出される。そして、そこから検査物質の特性に関する情報を取得することができる。
【0006】
高分解能磁気共鳴分光法と磁気共鳴画像法の両方において磁場の均一性に対する要求は非常に高い。均一性の仕様を達成するために、多くの場合、電気クライオシムが使用される。それらのコイルは基本的な磁場プロファイルを生成する。コイルへ適切な電流を供給することにより、試料位置でのNMR磁石の均一性を向上させることができる。
【0007】
例えば独国特許発明第102015225731号公報(=文献[7])に記載されるように、低温強磁性材料(例えば、鉄合金又は鋼合金)も、均一性を向上させるためのシム要素として使用されることがある。磁石がどのように低温シム調整される(kalt geshimmt)のかに関係なく、最後に不均一性が残留し、これを真空容器の外側の磁石ボア内で補正する必要がある。この目的で、いわゆる室温シム(以下、「RTシム」と呼ばれる)が使用される。これらの室温シムは、クライオシムのように、コイル、強磁性材料、又は両者の組み合わせで構成される。「室温シム」という名称から、これらのシムが実験室温度であることが想像されるが、必ずしもそうではなく、シムコイル内で放散される電力により、シムの温度が実験室温度よりわずかに高くなることが多い。それに加えて、NMR実験は、様々な温度の試料物質を用いて実行されることもある。それでも、以下では簡単にするために常に「RTシム」及び「室温」と言うことにする。すなわち、RTシムは必ずしも室温で動作させる必要はない。
【0008】
超伝導NMR磁石は、長い経路を経てRTシムと機械的に接続されている。この経路の一部はクライオスタットの低温領域にあり、別の部分は室温にある。後者の経路部分は周囲温度の変動に追従し、熱膨張することにより長さが変化する。その結果、超伝導磁石とRTシムとの間に相対的な移動が生じる。その場合、これらのRTシムは、磁場の不均一性を打ち消すための理想的な整合がとれなくなり、磁気共鳴画像又は磁気共鳴スペクトルの質が低下する。
【0009】
これらのRTシムがコイル又はコイルシステムを有する場合、それらの電流を調整することで、元の質に戻すことができる。RTシム電流の同様のずれは、これらの電流自体が、例えば電流源が温度依存性であることによりドリフトした場合に観察される可能性がある。したがって、以下では、RTシム電流が周囲温度により「ドリフト」するという言葉を(どちらかというと形式ばらずに)用いることがある。
【0010】
高感度機器は空調された部屋で使用されることが多いが、日中に温度が1℃変動することは珍しくない。多くの用途では、RTシム電流を自動的に調整することができる。これが可能でない場合、測定中に均一性が変動すると問題になる可能性がある。
【0011】
同等の均一性の変動は、例えば磁石ボア内の温度が他の理由で時間の経過とともに変化する場合にも生じる。このような状況は、例えば、NMR測定試料が取り替えられ、新たにシム調整が必要になる場合に生じる。RTシムにより放散される電力は、以前のRTシムの電力とは異なる可能性があり、磁石ボア内に新たな温度状態を引き起こす可能性がある。その場合、温度が新しいレベルに落ち着くまでに一定の時間が必要である。この間、シム電流を繰り返し調整する必要がある。NMR測定試料の温度が変化した場合にも同様の問題が発生する。
【0012】
この問題の自明の解決策は、第1のアプローチとして、周囲温度の増減を可能な限り小さく抑えることであろう。実験室が大規模になるほど、空調システムを十分な精度で運転することがより高コストで難しくなる。
【0013】
第2のより洗練されたアプローチでは、変動する均一性に合わせてシム電流を自動的に調整することができる。但し、これはロック物質が利用可能な場合にのみ可能であり、例えば固体実験ではその限りでない。
【具体的な先行技術】
【0014】
パルス管冷却器で極低温に冷却され、真空容器内のクライオスタットの低温領域に配置される超伝導NMR磁石コイルシステムを備えた高分解能NMR分光計が、欧州特許第0780698号公報(=文献[2])に記載されている。
【0015】
欧州特許出願公開第2015092号公報(=文献[3])は、大気圧の変動によるシムドリフトの問題について言及している。温度が変動したときと同様に、RTシムと超伝導磁石との間には相対的な移動が生じる。この相対的な移動を最小限に抑えるためにブリッジが使用され、これはクライオスタットの外縁に固定されていて圧力変動時に生じるクライオスタット中央領域の動きに追従しない。RTシムシステムはこのブリッジに固定されている。
【0016】
広い温度範囲にわたって温度感度を自動的に補償する定量臨床NMR解析機器が欧州特許出願公開第3686620号公報(=文献[4])に記載されている。
【0017】
刊行物「Acyclic Acids-Advances in Research and Application:2013 Edition:ScholarlyBrief」,Q.Ashton Acton,PhD、ScholarlyEditions,2013、p139(文献[5])も同様に、NMR分析装置の電子機器の温度感度について言及している。それによれば、電子機器の温度調節が改善策となり得る。
【0018】
刊行物「Modern Instrumental Analysis」,Satinder Ahuja、Neil Jespersen,Elsevier、2006、p270(=文献[6])は試料物質の温度感受性について言及している。物質の配置場所の温度を調節することによってこの影響を打ち消すことができる。
【0019】
上述した独国特許発明第102015225731号公報(=文献[7])から、容易にアクセスでき、同様に低温冷却されるNMRシムアセンブリを備えるNMR装置における、ヘリウム冷却超伝導磁石コイルシステムが知られている。このNMR装置は、ヘリウム内側管と放射遮蔽内側管との間に磁場成形器を有し、この磁場成形器は、放射線遮蔽内側管に接触することなく、ヘリウム容器と機械的に堅固に接触している。
【0020】
同様に上述した文献[1]は、本発明に関する汎用NMR装置であって、汎用型のシムシステムを含み、冒頭で定義されたすべての特徴の複合体を備えるNMR装置を開示している。しかしながら、この装置においても、実験室ではよくある範囲内の温度変化による磁場の均一性の変動に関する上記の問題は存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0021】
【特許文献1】独国特許発明第10104365号公報
【特許文献2】独国特許発明第102015225731号公報
【特許文献3】欧州特許第0780698号公報
【特許文献4】欧州特許出願公開第2015092号公報
【特許文献5】欧州特許出願公開第3686620号公報
【非特許文献】
【0022】
【非特許文献1】「Acyclic Acids-Advances in Research and Application:2013 Edition:ScholarlyBrief」,Q.Ashton Acton,PhD、ScholarlyEditions,2013、p139
【非特許文献2】「Modern Instrumental Analysis」,Satinder Ahuja、Neil Jespersen,Elsevier、2006、p270
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
これに対して、本発明は、特に簡単であって容易に入手可能な技術的手段を用いて、かつ可能な限り低コストで、装置の内部及び周辺の温度状態が変化しても磁場の均一性がほぼ安定かつ一定に保たれるように、冒頭で定義された特徴を有するNMR装置を改良するという課題に基づいている。
【課題を解決するための手段】
【0024】
上記課題は、本発明により、磁石懸架装置と真空容器との間の第1の機械的接続箇所からシムシステムのための位置決め要素と真空容器との間の第2の機械的接続箇所までの真空容器に沿った経路の少なくとも一部分、及び/又は第2の機械的接続箇所からシムシステムまでの位置決め要素に沿った経路の少なくとも一部分に、動作温度における熱膨張係数が5ppm/Kより小さい材料のみを使用することによって、驚くほど簡単かつ効果的に解決される。
【0025】
すなわち本発明は、上述の経路において所定の材料を選択することにより、安定した磁場均一性を達成することを提案する。
【0026】
本発明による上述の経路の構成によって、特に、熱膨張係数が小さい材料を選択することによって、温度変動中の、対応する経路部分の膨張変化が最小限に抑えられ、それにより超伝導磁石とシムシステムとの間の相対的な移動が小さく保たれる。その結果、磁場の均一性が安定したまま維持される。
【0027】
鋼やアルミニウムなどの従来の金属材料の熱膨張係数は、室温で約20ppm/Kである。室温が変動したときのシムシステムと超伝導磁石との間の相対的な移動を低減するために、これら2つの部品の接続経路に、熱膨張がはるかに小さい材料を使用できる。
【0028】
炭素強化プラスチック(CFK)は、その繊維に沿った熱膨張係数が1ppm/K未満である。この材料は、例えばシムシステム用の位置決め要素の一部の磁石ボア内において使用することができる。
【0029】
インバーという鋼種では、熱膨張係数が2ppm/K未満である。この鋼は、真空容器に部分的に使用できる。これに対してCFKは、溶接ができないため真空容器の材料としては不向きである。
【0030】
相対的な移動は、超伝導磁石とシムシステムとの間の接続経路の一部分で制御回路により温度を一定に保つことによっても低減することができる。温度又は歪は、いくつかの場所で測定され、必要な場合には加熱が行われる。加熱器のある領域は、人為的に周囲温度よりも暖かく保たれる。これに代えて、TEC素子(熱電冷却器)を用いて冷却することもできる。その場合、TEC素子のある領域は、人為的に周囲温度よりも低温に保たれる。
【0031】
磁石のボア内を、温度調節されたガスを用いて温度を一定に保つこともできる。
【本発明の好ましい実施形態及び発展形態】
【0032】
本発明によるNMR装置の非常に特に好ましい実施形態では、第1の機械的接続箇所から第2の機械的接続箇所への真空容器に沿った上記経路部分の長さ、及び/又は第2の機械的接続箇所からシムシステムへの位置決め要素に沿った上記経路部分の長さはそれぞれ、対応する経路の全長の50%を超えるよう構成されている。
【0033】
シムコイルは、通常、アルミニウム支持体に巻回される。アルミニウムには、その良好な熱伝導率によって、コイル内に放散された熱が良好に排出されるという利点がある。しかし残念ながら、アルミニウムの熱膨張係数は約23ppm/Kと大きい。本発明の実施形態では、シムコイルのアルミニウム支持体から第2の機械的接続箇所までの接続部分のみが、熱膨張係数の小さい材料から作成される。シム要素がコイルではなく、強磁性材料からなる板片である場合には、位置決め要素全体を熱膨張係数の小さい材料で作成することさえ可能である。磁石ボアの外側では、真空容器の半球形キャップ及びその内管への接続フランジも、熱膨張係数の小さい材料で作成されるとは限らない。しかし、このような背景から、熱膨張係数の小さい材料を経路の全長の50%超に使用することは容易である。
【0034】
第1の機械的接続箇所から第2の機械的接続箇所への真空容器に沿った経路、及び/又は第2の機械的接続箇所からシムシステムへの位置決め要素に沿った経路のそれぞれにおいて、異なる熱膨張係数を有する複数の材料が部分的に使用され、これらの材料の熱膨張が互いに打ち消し合う、本発明によるNMR装置の実施形態も特に有利である。
【0035】
その場合、残留するのは格段に低い絶対熱膨張のみであり、本発明により微調整の範囲でこれを最終的に更に最小化することができる。
【0036】
第1の機械的接続箇所から第2の機械的接続箇所への真空容器に沿った経路の少なくとも一部分に、材料としてインバーが使用されている実施形態も好ましい。
【0037】
この場合、超伝導磁石とシムシステムとの間の相対的な移動が低減されて有利である。インバーの熱膨張係数は、典型的には2ppm/K未満である。それに加えて、インバーには溶接できるという利点がある。真空容器は真空気密でなければならず、このことはすべての機械的接続箇所に高い要求を課す。垂直に延びる磁石ボアを有する一般的なクライオスタットの場合、ここで述べている区分は1つ又は複数の懸架タワーにわたって延びることになる。
【0038】
但し、インバーは超伝導磁石の背景磁場によって磁化される。インバーは超伝導磁石の小さな浮遊磁場領域にのみ存在するため、少なくとも積極的に遮蔽されている磁石では、不都合は予想されない。いずれにしても、磁化の力と干渉磁場は小さい。
【0039】
代替的又は追加的に、本発明の別の実施形態では、第2の機械的接続箇所からシムシステムへの位置決め要素に沿った経路の少なくとも一部分に、材料としてCFK(=炭素繊維強化プラスチック)が使用されている。
【0040】
典型的には、CFKの繊維に沿った熱膨張係数は1ppm/K未満である。熱膨張係数が小さいことにより、温度が変動したときの膨張変化が最小限に抑えられ、それにより超伝導磁石とシムシステムとの間の相対的な移動が小さく保たれる。それによって、磁場の均一性が安定したまま維持される。
【0041】
これらの実施形態の好ましい発展形態では、第1の機械的接続箇所と第2の機械的接続箇所との距離が10cmより小さい。
【0042】
有利なことに、CFK、又は類似の材料の熱膨張は、インバーを含むすべての金属の熱膨張より小さい。したがって、シムシステムと第1の機械的接続箇所との間の接続長さの可能な限り大きな部分でそのような材料を使用することが目的にかなっている。実際には、シムシステム用の位置決め要素はCFKでできたフレームを用いて懸架タワーに取り付けることができる。
【0043】
第2の機械的接続箇所からシムシステムへの位置決め要素に沿った別の経路の少なくとも一部分に、動作温度における熱伝導率が50W/(mK)より大きい材料、特に銅が使用される、本発明の実施形態も有利である。
【0044】
すなわち、シム要素に大電流が必要な場合には過熱の危険がある。この問題には、位置決め要素に熱伝導率の良い材料、例えば銅の摺動レールを挿入することにより対処でき、これは位置決め要素の熱膨張に機械的に寄与しないか、わずかに寄与するだけである。アルミニウム又は銅からできた摺動管を位置決め要素と平行して設置することもできる。洗浄ガスの使用も熱の排出に寄与する。
【0045】
本発明によるNMR装置の別の有利な実施形態は、シム要素が電気コイル及び/又は強磁性要素として形成されていることを特徴とする。
【0046】
強磁性要素には、熱を放散することなく磁場の均一化に寄与するという利点がある。これらの強磁性要素は、通常、磁気共鳴画像法用の機器で使用される。電気シムコイルは、その電流が可変であり、したがって均一性の変動に動的に反応できることを特徴とする。高分解能核磁気共鳴にはシムコイルが不可欠である。しかしながら、これらを強磁性要素と組み合わせることもできる。
【0047】
真空容器が垂直に延びる室温ボアを有し、この室温ボア内にシムシステムが配置され、位置決め要素がクランプリングを含み、真空容器の室温ボアの上端上に位置するクランプリングの接触面が第2の機械的接続箇所を形成する、本発明の実施形態も好ましい。
【0048】
垂直クライオスタットでは、真空容器の上部領域に位置する第1の機械的接続箇所と第2の機械的接続箇所との間の機械的接続長さは、第2の機械的接続箇所も真空容器の上部領域に位置することによって最小化される。長さが短ければ、長さが長いときより温度変動時の変化が小さい。
【0049】
本発明によるNMR装置の好ましい種類の実施形態は、第1の機械的接続箇所から第2の機械的接続箇所への真空容器に沿った経路の一部分、及び/又は第2の機械的接続箇所からシムシステムへの位置決め要素に沿った経路の一部分に、当該経路における熱に起因する長さ変化を調整するための調整素子が配置され、好ましくは調整素子が加熱素子及び/又は冷却素子及び/又は熱交換器を含むことを特徴とする。
【0050】
調整素子により、その部分の温度変動を小さく保つことができる。これによって、超伝導磁石とシムシステムとの間の相対的な移動が最小化され、磁場の均一性が安定したまま維持される。
【0051】
この種類の実施形態の好ましい発展形態では、調整素子に加えてセンサ素子が同一の経路上に配置され、好ましくはセンサ素子がサーモメータ、特にPT-100センサ、及び/又は歪ゲージを含む。
【0052】
典型的なセンサ素子として、白金測温抵抗体(典型的にはPT-100)が、室温の範囲で正確な温度測定が可能であるため特に適している。
【0053】
ここでの利点は、膨張をコントロールすることによって超伝導磁石とシムシステムとの間の相対的な移動を低減できる可能性があることである。ここでいう真空容器に沿った経路の一部分は、一般的なクライオスタットでは、1つの懸架タワー若しくはすべての懸架タワーを含む可能性がある。センサ素子は、一定に保たれる必要がある変量を出力し、これは加熱素子若しくは冷却素子の電流を制御することによって実現される。
【0054】
これらの実施形態のさらなる発展形態であって、センサ素子がレーザを含み、このレーザを用いて電気光学的距離測定により、特に干渉計測により、観測対象の経路部分の位置変化を検出できることを特徴とする発展形態も好ましい。
【0055】
温度計及び/又は歪ゲージと同様に、レーザを用いて長さの変化を測定し、これを加熱素子若しくは冷却素子の電流を用いて調整することができる。レーザは、例えば位置決め要素又は懸架タワーの長さ変化を監視することができる。
【0056】
同様に好ましくは、これらのさらなる発展形態において、少なくとも1つの圧電素子が設けられ、これを用いて観測対象の経路部分の膨張変化を補正できるよう構成される。
【0057】
圧電素子は、例えば位置決め要素に組み込むことができる。その長さを電圧の印加により調整し、位置決め要素の全長が時間の経過に対して一定に保たれるようにすることができる。
【0058】
本発明によるNMR装置の別の、特に好ましい種類の実施形態では、超伝導磁石は、真空容器の内側であって、動作中に液体ヘリウムで満たされるクライオスタットのヘリウム容器内に配置され、ヘリウム容器は、好ましくは液体窒素で満たされるクライオスタットの窒素容器によって半径方向に取り囲まれる。
【0059】
実際には、たいていのクライオスタットがこのような形で動作する。垂直磁石の場合、第1の機械的接続箇所は、磁石懸架装置、この場合ヘリウム懸架管を真空容器に接続する1つ又は複数の溶接継ぎ目を含む。
【0060】
クライオスタットが、超伝導磁石をその動作温度まで冷却できる極低温冷却器を含む実施形態も有利であり得る。
【0061】
この場合、有利にも、ヘリウムを再充填する必要がない。したがって、ヘリウムが不足しても問題は生じない。
【0062】
原理的には、真空容器が温度調節されたボックスによって完全に取り囲まれ、好ましくは空調された室内に設置されている、本発明によるNMR装置の実施形態も有利であり得る。空調された部屋は、原理的にすでにそのようなボックスである。しかし、実施例が示すように、断熱ボックスを追加することで温度調節を更に格段に改善することができる。
【0063】
本発明の他の利点は、以下の説明及び図面から明らかになる。同様に、本発明により、上記及び下記の特徴をそれぞれ単独で、又はいくつかを任意に組み合わせて使用することができる。図示及び説明される実施形態は、網羅的な列挙と解されるべきではなく、むしろ本発明を説明するための例示的な性格を有する。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【
図1】位置決め要素がクランプリングを含み、真空容器の室温ボアの上端上に位置するクランプリングの接触面が第2の機械的接続箇所を形成する、本発明によるNMR装置の一実施形態の概略垂直断面図である。
【
図2】
図1と同様のNMR装置の一実施形態の概略垂直断面図であるが、第2の機械的接続箇所からシムシステムへの位置決め要素に沿った経路に機械的アクチュエータが配置されている、本発明によるNMR装置の実施形態の概略垂直断面図である。
【
図3】位置決め要素がフレームを含み、磁石懸架装置の懸架タワーの上端上に位置するフレームの接触面が第2の機械的接続箇所を形成する、本発明によるNMR装置のさらなる実施形態の図である。
【
図4】複数の調整及びセンサ素子の配線図を含む本発明によるNMR装置の部分図である。
【
図5】単一の制御回路のみを備えた複数の調整及びセンサ素子の配線図を示す本発明によるNMR装置の部分図である。
【
図6】懸架タワー及び位置決め要素を一定温度に保つ温度制御流体を用いる、本発明によるNMR装置の実施形態の概略垂直断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0065】
本発明を図面に示し、実施形態の例を参照してより詳細に説明する。
【0066】
一般に、本発明は、均一な磁場を生成するための磁石コイルシステムを備えた改良型NMR装置に関し、このNMR装置は、真空容器8の内側のクライオスタットの低温領域に配置された超伝導磁石1を有する。更に、NMR装置は、真空容器8の外側に配置された複数のシム要素6を含むシムシステム7を備え、これらのシム要素は電気コイル及び/又は強磁性要素として形成することができる。超伝導磁石1はまた、磁石懸架装置3を介する真空容器8との第1の機械的接続箇所11を有し、磁石懸架装置3はそれ自体は懸架タワー4内に配置されている。シムシステム7は、位置決め要素5を介する真空容器8との第2の機械的接続箇所10;12を有する。
【0067】
シムシステム7は、通常、シム要素6の他に、シム要素6の取付け構造も含み、それによりシムシステム7は機能的にだけでなく構造的にもユニットを形成する。この取付け構造は、シム要素6全体を位置決め要素5と機械的に接続することができ、或いはシム要素6への電気的接続の導線として、又はNMRプローブヘッドへの機械的インタフェースとして機能する。位置決め要素5と他の構造部品、例えばシム要素6の取付け構造との概念的な区別は、一方の側である真空容器8への第2の機械的接続箇所10;12と他方の側である少なくとも1つのシム要素6との間の経路にあるすべての構造部品が膨張することによって超伝導磁石1に対するこのシム要素6の位置又は向きに影響を及ぼす場合、これらの構造部品が位置決め要素5と解釈されることによってなされるべきである。
【0068】
超伝導磁石1は、通常、真空容器8の内側の、動作中に液体ヘリウムで満たされるクライオスタットのヘリウム容器2内に配置され、ヘリウム容器2は、好ましくは液体窒素で満たされるクライオスタットの窒素容器9によって半径方向に取り囲まれている。クライオスタットは、超伝導磁石1をその動作温度まで冷却することができる極低温冷却器を含むこともできる。
【0069】
これに対して、本発明は、第1の機械的接続箇所11から第2の機械的接続箇所10;12への真空容器8に沿った経路の少なくとも一部分、及び/又は第2の機械的接続箇所10;12からシムシステム7への位置決め要素5に沿った経路の少なくとも一部分に、動作温度における熱膨張係数が5ppm/Kより小さい材料のみが使用されていることを特徴とする。
【0070】
また、第1の機械的接続箇所11から第2の機械的接続箇所10:12への真空容器8に沿った経路、及び/又は第2の機械的接続箇所10;12からシムシステム7への位置決め要素5に沿った経路に、それぞれの場合において、異なる熱膨張係数を有する複数の材料が部分的に使用され、これらの材料の熱膨張が互いに打ち消し合う場合も有利であり得る。
【0071】
好ましくは、第1の機械的接続箇所11から第2の機械的接続箇所10;12への真空容器8に沿った上記経路部分の長さ、及び/又は第2の機械的接続箇所10;12からシムシステム7への位置決め要素5に沿った上記経路部分の長さはそれぞれ、対応する経路の全長の50%を超える。
【0072】
図1に、磁石ボア内にシム要素6を配置するための、特に有利な2部分からなる機械的構造を示す。機械的構造の上部は、シムシステム7から、クランプリングと真空容器8との間の第2の機械的接続箇所10への接続経路を確立し、定義上、位置決め要素5として用いられる。機械的構造の下部はシムシステム7に属し、シム要素6を下方から磁石ボアに挿入するようシム要素6全体を保持するとともに、NMRプローブヘッドを受け入れ、シム要素6へ電気供給ラインを導く役割を果たす。シム要素6を配置するための機械的構造を2部分から形成することによって、磁石ボア内への取り付けが簡単になる。動作状態において、2つの構造は、例えばねじなどによって機械的に接続されている。これに対して、一体構造であって、すべてのシム要素6の総体としてのシムシステム7が構造部品を持たず、位置決め要素5がシム要素6のホルダーとしても機能し、前述の機能をさらに担うことができる構造も考えられる。
【0073】
図1の位置決め要素5はクランプリングを含み、真空容器8の室温ボアの上端上に位置するクランプリングの接触面が第2の機械的接続箇所10を形成する。
【0074】
図2は、
図1と同様のNMR装置の実施形態を示すが、さらにクランプリング10の下方に機械的アクチュエータ15が配置されている。
【0075】
図2に具体的に示されるように、圧電素子15を位置決め要素5に組み込むことができる。シムシステム7の位置を変化させるべき場合、圧電素子15に相応の電圧を供給することができる。その場合、圧電結晶の長さ変化は印加電圧に比例し、負の電圧も可能である。サンドイッチ方式の圧電スタックの厚さにより、変位可能な範囲を変位要件に適合させることができる。
【0076】
一方、
図3では、シムシステム7用の位置決め要素がフレームを介して懸架タワーに吊り下げられている。このようにして、第1及び第2の機械的接続箇所がほぼ一致し、2つの機械的接続箇所を互いに接続する真空容器に沿った経路が最小化される。特に、複数の接続要素12を小さい熱膨張係数を有する材料から作成することができ、それにより温度が変動したときに著しい膨張が生じない。
【0077】
図4は、複数の調整素子13及びセンサ素子14を有する本発明によるNMR装置の概略垂直断面の部分図において、懸架タワー4上の制御装置の一例(ここでは、タワー当たり3つの制御量と3つの調整素子)を示している。これは、複数の制御回路を用いて、異なる懸架タワー4での部分的な歪変化を小さく保つ方法を示している。このような解決策を用いることにより、歪に対する最大限の制御が得られる。複数の電流源と複数の制御装置が必要であるため、それにかかる手間は、当然、非常に大きくなる。
【0078】
図4の具体的な実施形態の例は、懸架タワー4上に加熱素子として形成された調整素子13とセンサ素子14とが示されている。懸架タワー4の膨張又は温度がセンサ素子14を用いて測定され、ヒータを用いて、測定された膨張変化を打ち消すことができる。
【0079】
図4には、測定された歪の関数としての加熱素子の電流を制御する電子制御ユニット17(ここではPIコントローラの形)も概略的に示されている。PIコントローラは、当然、それ自体制御技術から知られる多様な可能なコントローラの一例にすぎない。制御技術では、更に多くの他のコントローラがあるが、ここではそれらに詳しく言及しない。センサ素子14として、例えば、PT-100温度センサを使用することができる。
【0080】
PT-100センサは、室温範囲で特に感度が高いため、温度測定に適している。これに代えて、他の温度センサ又は歪ゲージを使用することもできる。加熱素子は、たいていの場合、可能な限り広い面積をカバーする蛇行したワイヤを含む。
【0081】
更に、
図4にはそれぞれのセンサ素子14の電流供給が概略的に示されている。
【0082】
懸架タワー4は、センサ素子14及び調整素子13とともに、周囲温度の変動を抑えるために、通常、断熱材(但し、図には特に示されていない)で覆われている。周囲温度の上昇に反応できるようにするため、懸架タワー4の温度は、この例ではヒータによって人為的に周囲温度より若干高く保たれる。加熱素子の代わりに、冷却素子、特にいわゆる熱電冷却器(=TEC)を使用することもできる。この場合、懸架タワー4の温度を、合理的には、周囲温度より低く保つ。
【0083】
図4は複数のPIコントローラを用いる一例を示しているが、複数の加熱素子又は冷却素子を直列に接続することによってその数を減らすことも可能である。また、PT-100センサを直列、並列、又はこれらを組み合わせて接続し、1つの平均温度のみを制御に使用することも可能である。これにより、多くの場合、大したデメリットなしに、必要な電子機器の複雑さと価格を低減できる。
【0084】
このような実施形態を
図5に示す。但し、懸架タワー4の膨張に対する制御は、
図4に示した実施形態の例よりも若干精度が落ちる。しかし、懸架タワー4に熱伝導率の良い材料を使用すれば、懸架タワー4全体の温度勾配を小さくすることができる。周囲温度からの懸架タワー4の良好な断熱と組み合わせることで、歪制御を更に改善することができる。
【0085】
用途に応じて、ここに提示される2つの解決策の間に多くの可能性が存在する。
【0086】
懸架タワー4の配置と同様の配置が位置決め要素5についても可能である。
【0087】
図6は、懸架タワー4及び位置決め要素5に沿って配置される液体回路を備えた実施形態を示す。この実施形態の利点は、複数の部品の温度を安定させるために必要な、制御された加熱素子又は冷却素子が1つだけで済むということである。温度制御流体は大量の熱を輸送できるので、それにより温度調節対象物内の温度勾配を小さく保つことができる。これにより、熱膨張の制御精度が向上する。外部空間に対して断熱することで、温度調節対象物内の温度勾配を更に小さくすることができる。温度制御流体としてガスを使用することもできる。ガスの利点は、これが磁石ボア内で位置決め要素5に沿って自由に移動できることである。
【0088】
文献一覧
特許性の判断において考慮される刊行物:
[1]独国特許発明第10104365号公報≒英国特許第2411238号公報≒米国特許出願公開第2005/0174118号公報
[2]欧州特許第0780698号公報≒米国特許第5,744,959号公報
[3]欧州特許出願公開第2015092号公報
[4]欧州特許出願公開第3686620号公報
[5]Acyclic Acids-Advances in Research and Application:2013 Edition:ScholarlyBrief、Q.Ashton Acton,PhD,ScholarlyEditions,2013,p139
[6]Modern Instrumental Analysis,Satinder Ahuja,Neil Jespersen,Elsevier,2006,p270
[7]独国特許発明第102015225731号公報≒欧州特許第3182147号公報≒米国特許第9,766,312号公報≒≒中国特許第106898452号公報≒特許第6340403号公報
【符号の説明】
【0089】
1 超伝導磁石
2 ヘリウム容器
3 磁石懸架装置
4 懸架タワー
5 シムシステム用の位置決め要素
6 シム要素
7 シムシステム
8 真空容器
9 窒素容器
10 第2の機械的接続箇所
11 第1の機械的接続箇所
12 別の第2の機械的接続箇所
13 調整素子
14 センサ素子
15 機械的アクチュエータ
17 電子制御ユニット
【外国語明細書】