(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024020163
(43)【公開日】2024-02-14
(54)【発明の名称】バイオマス含有樹脂組成物及びバイオマス含有樹脂組成物の製造方法
(51)【国際特許分類】
C08L 101/00 20060101AFI20240206BHJP
C08L 23/26 20060101ALI20240206BHJP
C08L 3/02 20060101ALI20240206BHJP
C08L 1/02 20060101ALI20240206BHJP
C08K 5/31 20060101ALI20240206BHJP
C08J 3/20 20060101ALI20240206BHJP
【FI】
C08L101/00 ZAB
C08L23/26
C08L3/02
C08L1/02
C08K5/31
C08J3/20 CEP
C08J3/20 CES
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023121504
(22)【出願日】2023-07-26
(31)【優先権主張番号】P 2022122685
(32)【優先日】2022-08-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002288
【氏名又は名称】三洋化成工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】喜多 藍
(72)【発明者】
【氏名】松本 誠
【テーマコード(参考)】
4F070
4J002
【Fターム(参考)】
4F070AA03
4F070AA13
4F070AA15
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(57)【要約】 (修正有)
【課題】低臭気で、樹脂組成物の製造時や成形加工時に高温加熱した場合も臭気の発生が少なく、かつ成形品に優れた機械的強度を与えるバイオマス含有樹脂組成物を提供することを目的とする。
【解決手段】グアニジノ基含有化合物(A)、酸変性ポリオレフィン(B)、熱可塑性樹脂(C)及びバイオマス材料(D)を含有するバイオマス含有樹脂組成物であり、前記バイオマス材料(D)100重量部に対する前記グアニジノ基含有化合物(A)の含有量が0.1~20重量部であり、前記熱可塑性樹脂(C)と前記バイオマス材料(D)の合計重量100重量部に対する前記酸変性ポリオレフィン(B)の含有量が0.1~15重量部であるバイオマス含有樹脂組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
グアニジノ基含有化合物(A)、酸変性ポリオレフィン(B)、熱可塑性樹脂(C)及びバイオマス材料(D)を含有するバイオマス含有樹脂組成物であり、
前記バイオマス材料(D)100重量部に対する前記グアニジノ基含有化合物(A)の含有量が0.1~20重量部であり、前記熱可塑性樹脂(C)と前記バイオマス材料(D)の合計重量100重量部に対する前記酸変性ポリオレフィン(B)の含有量が0.1~15重量部であるバイオマス含有樹脂組成物。
【請求項2】
前記バイオマス材料(D)が、デンプン系材料(D1)、セルロース系材料(D2)、動物性繊維(D3)、卵殻及び貝殻からなる群より選ばれる1種以上である請求項1に記載のバイオマス含有樹脂組成物。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のバイオマス含有樹脂組成物を成形してなる成形品。
【請求項4】
グアニジノ基含有化合物(A)、酸変性ポリオレフィン(B)、熱可塑性樹脂(C)及びバイオマス材料(D)を含有するバイオマス含有樹脂組成物の製造方法であり、
前記バイオマス材料(D)100重量部に対する前記グアニジノ基含有化合物(A)の含有量が0.1~20重量部であり、前記熱可塑性樹脂(C)と前記バイオマス材料(D)の合計重量100重量部に対する前記酸変性ポリオレフィン(B)の含有量が0.1~15重量部であり、
前記グアニジノ基含有化合物(A)、前記酸変性ポリオレフィン(B)、前記熱可塑性樹脂(C)及び前記バイオマス材料(D)を、酸変性ポリオレフィン(B)の融点と熱可塑性樹脂(C)の融点のうち高い方の温度(Tm)より5~100℃高い温度に加熱して混合する工程を有する樹脂組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はバイオマス含有樹脂組成物及びバイオマス含有樹脂組成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、カーボンニュートラルの観点等からバイオマス材料の活用が注目されており、種々の用途での活用が検討されている。従来プラスチック製品が使用されてきた用途においても、熱可塑性樹脂にバイオマス材料(木質材料、デンプン系材料及び卵殻等)を配合して成形加工したさまざまな製品の開発が進んでいる。しかしながら、ポリプロピレン等の熱可塑性樹脂を成形加工する際の加工温度は、例えば170~230℃と高温であり、バイオマス材料を含んでいる熱可塑性樹脂の成形加工時にバイオマス材料から特有の臭気が発生し、作業環境を著しく悪化させたり、成形品に臭気が残るなどの問題がある。
バイオマス含有樹脂の臭気低減方法として、例えば特許文献1には、ポリプロピレン樹脂と木粉を混合した複合樹脂材料に対して尿素系化合物(ヒドラジド化合物)、又はその金属結合体からなるアルデヒド用消臭剤を添加し、混合、攪拌した後、押出成形機によりシート状に押し出したことを特徴とするプレス成型用材料が開示されている。しかしながら、特許文献1に記載の材料に含まれるアルデヒド用消臭剤はヒドラジド化合物であるため、添加量が多い場合や、バイオマス含有樹脂の成形条件によっては高温加熱により熱分解されて、それ自身から悪臭を発生させることがあるという問題や、バイオマス材料の種類や配合比及び臭気物質の種類によっては、臭気低減効果が不足するという問題があった。
また、特許文献2には、樹脂成分と卵殻粉末とを50:50~10:90の重量比で含み、前記卵殻粉末の臭い成分である硫化水素を除去する消臭成分として活性炭、シリカゲル及びゼオライトのうち少なくとも一つを含む卵殻粉末樹脂組成物が開示されている。しかしながら、特許文献2に記載の樹脂組成物に含まれる消臭成分は活性炭、シリカゲル及びゼオライト等の多孔質物質であり、臭い成分を物理吸着することにより消臭している。このため、臭い成分の再リリースの問題や、十分な消臭効果を得られる量の多孔質物質を添加すると樹脂物性(機械的強度等)に影響をおよぼすことがあるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007-314705号公報
【特許文献2】特開2022-24250号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、低臭気で、樹脂組成物の製造時や成形加工時に高温加熱した場合も臭気の発生が少なく、かつ成形品に優れた機械的強度を与えるバイオマス含有樹脂組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、本発明に到達した。即ち本発明は、グアニジノ基含有化合物(A)、酸変性ポリオレフィン(B)、熱可塑性樹脂(C)及びバイオマス材料(D)を含有するバイオマス含有樹脂組成物であり、前記バイオマス材料(D)100重量部に対する前記グアニジノ基含有化合物(A)の含有量が0.1~20重量部であり、前記熱可塑性樹脂(C)と前記バイオマス材料(D)の合計重量100重量部に対する前記酸変性ポリオレフィン(B)の含有量が0.1~15重量部であるバイオマス含有樹脂組成物;前記グアニジノ基含有化合物(A)、前記酸変性ポリオレフィン(B)、前記熱可塑性樹脂(C)及び前記バイオマス材料(D)を、酸変性ポリオレフィン(B)の融点と熱可塑性樹脂(C)の融点のうち高い方の温度(Tm)より5~100℃高い温度に加熱して混合する工程を有する該バイオマス含有樹脂組成物の製造方法である。
【発明の効果】
【0006】
本発明のバイオマス含有樹脂組成物は、以下の効果を奏する。
(1)低臭気であり、該樹脂組成物の製造時や成形加工時に高温加熱(例えば140~230℃)した場合も臭気の発生が少ない。
(2)該樹脂組成物の成形品は、機械的強度(破断強度、曲げ弾性等)に優れる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
<バイオマス含有樹脂組成物>
本発明のバイオマス含有樹脂組成物は、グアニジノ基含有化合物(A)、酸変性ポリオレフィン(B)、熱可塑性樹脂(C)及びバイオマス材料(D)を必須成分として含有する。
【0008】
<グアニジノ基含有化合物(A)>
本発明におけるグアニジノ基含有化合物(A)は、分子中に少なくとも1つのグアニジノ基を有する化合物であれば特に限定されないが、例えば、グアニジン、アルキル(炭素数1~20)グアニジン(N-メチル又はエチルグアニジン、1,3-ジメチル又はジエチルグアニジン等)、芳香族グアニジン(フェニルグアニジン、ジフェニルグアニジン、ジ-o-トリルグアニジン等)、ビグアニド化合物(ビグアニド、N-メチルビグアニド、N-ベンゾイルビグアニド、N-フェニルビグアニド、シアノビグアニド等)、アミノグアニジン類(アミノグアニジン、ジアミノグアニジン、トリアミノグアニジン等)、グアニジノ基を有するアミノ酸誘導体(アルギニン等)、その他のグアニジン誘導体(ジシアノグアニジン、グアニル尿素、グアニルチオ尿素、シアノグアニル尿素、シアノグアニルチオ尿素等)及びこれらの塩(塩酸塩、炭酸塩、硝酸塩、リン酸塩、硫酸塩、スルファミン酸塩、グルタミン酸塩、ナトリウム塩及びカリウム塩等)が挙げられる。
グアニジノ基含有化合物(A)は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0009】
これらのグアニジノ基含有化合物(A)のうち、臭気低減能及び取り扱いの容易さの観点からは、グアニジン、アルギニン、グアニジンの塩{スルファミン酸グアニジン(グアニジンのスルファミン酸塩)、グアニジン塩酸塩、炭酸グアニジン(グアニジン炭酸塩)}、シアノグアニジン、アミノグアニジン類及びアミノグアニジン類の塩(アミノグアニジン塩酸塩、アミノグアニジン炭酸塩)が好ましく、更に好ましくはアミノグアニジン類及びアミノグアニジン類の塩(アミノグアニジン塩酸塩)である。
なお、アミノグアニジン類及びその塩は、メイラード反応(アミノ化合物と糖の反応で、アルデヒド化合物や複素環式化合物などの臭気物質を発生させる)を阻害するため、後述するバイオマス材料(D)がグルコース単位を含有する(デンプン系材料(D1)を含有する)場合に、特に優れた臭気低減効果を発揮する。
【0010】
<酸変性ポリオレフィン(B)>
本発明における酸変性ポリオレフィン(B)としては、カルボン酸(無水物)基を有しないポリオレフィン(e)[分子中に炭素-炭素二重結合を有しないポリオレフィン(e1)及び分子中に炭素-炭素二重結合を有するポリオレフィン(e2)等]を、後述の不飽和カルボン酸(無水物)(x)で変性したもの等が挙げられる。
なお、本発明において、「カルボン酸(無水物)基を有しない」とは「カルボキシル基又は、酸無水物構造を持たない」を意味する。
【0011】
分子中に炭素-炭素二重結合を有しないポリオレフィン(e1)を構成するオレフィンとしては、炭素数2~30のアルケン等が挙げられる。
炭素数2~30のアルケンとしては、エチレン、プロピレン、1-ブテン、2-ブテン、イソブテン、1-ヘキセン、1-デセン及び1-ドデセン等が挙げられる。
【0012】
分子中に炭素-炭素二重結合を有しないポリオレフィン(e1)としては、エチレン単位含有(共)重合体[高、中又は低密度ポリエチレン、及び、エチレンと炭素数4~30の不飽和単量体(1-ブテン、2-ブテン及び1-ヘキセン等)との共重合体等]、プロピレン単位含有(共)重合体[ポリプロピレン、及び、プロピレンと炭素数4~30の不飽和単量体(1-ブテン、2-ブテン、1-ヘキセン及び1,4-ヘキサジエン等)との共重合体等]、エチレン単位とプロピレン単位とを含有する共重合体[プロピレン/エチレン共重合体、プロピレン/エチレン/1-ブテン共重合体、プロピレン/エチレン/1-アルケン(炭素数5~20のもの)共重合体、及び、エチレン/プロピレン/1,4-ヘキサジエン共重合体等]及びポリブテン(ポリ-1-ブテン及びポリ-2-ブテン等)等が挙げられる。
なお、本発明において「(共)重合体」とは、単量体の単独重合体又は共重合体を意味
する。
また、「プロピレン/エチレン共重合体」とは、「/」の前後の「プロピレン」と「エチレン」とが共重合したものであることを示し、その他の「/」を含む共重合体についても同様に、「/」の前後の単量体が共重合したものであることを意味する。
【0013】
分子中に炭素-炭素二重結合を有しないポリオレフィン(e1)は、上記の炭素数2~30のアルケンを、公知の方法で(共)重合することにより得ることができる。
また、タフマーXM-5070[三井化学(株)製]、タフマーXM-5080[三井化学(株)製]、VESTOPLAST750[Evonik社製]及びバーシファイ3000[ダウケミカル(株)製]等として、市場から入手することができる。
【0014】
分子中に炭素-炭素二重結合を有するポリオレフィン(e2)は、分子末端に炭素-炭素二重結合を有することが好ましい。
また、ポリオレフィン(e2)が有する炭素-炭素二重結合の数は、後述の不飽和カルボン酸(無水物)(x)との共重合性及び付加反応性の観点から、好ましくは炭素1,000個当たり0.1~20個であり、更に好ましくは0.3~18個であり、特に好ましくは0.5~15個である。
なお、炭素-炭素二重結合の数は、ポリオレフィン(e2)の1H-NMR(核磁気共鳴)分光法のスペクトルから得られる二重結合由来のピーク(4.6~4.8ppm)の積分値から、算出することができる。
【0015】
分子中に炭素-炭素二重結合を有するポリオレフィン(e2)は、下記の重合法及び熱減成法等の公知の製造方法等で製造することができる。
【0016】
重合法としては、ジエン等をモノマーとして使用して重合体を製造し、骨格中に不飽和基を残存させる方法が挙げられる。
【0017】
熱減成法としては、上記ポリオレフィン(e1)を窒素通気下で、有機過酸化物不存在下、300℃以上450℃以下の温度で0.5~10時間、連続的又は非連続的に熱減成する方法(熱減成法1);及び有機過酸化物存在下、180℃以上300℃未満の温度で0.5~10時間、連続的又は非連続的に熱減成する方法(熱減成法2)等が挙げられる。
(熱減成法1)及び(熱減成法2)いずれの場合も工業的観点から好ましいのは連続的に熱減成する方法である。
これらの(熱減成法1)及び(熱減成法2)のうち好ましいのは、分子末端の炭素-炭素二重結合数のより多いものが得やすい(熱減成法1)の方法である。
【0018】
上記不飽和カルボン酸(無水物)(x)としては、不飽和モノカルボン酸、不飽和ジカルボン酸、それらの塩(アルカリ金属塩等)及び不飽和ジカルボン酸無水物等が挙げられる。
不飽和モノカルボン酸としては、炭素数(以下、Cと略記することがある)3~24の鎖状脂肪族不飽和モノカルボン酸(アクリル酸及びメタクリル酸等)、C7~24の脂環式不飽和モノカルボン酸(シクロヘキセンカルボン酸、シクロヘプテンカルボン酸、ビシクロヘプテンカルボン酸及びメチルテトラへキセンカルボン酸等)及びC7~24の芳香族不飽和モノカルボン酸(4-ビニル安息香酸等)等が挙げられる。
不飽和ジカルボン酸としては、C4~24の鎖状脂肪族不飽和ジカルボン酸(マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸及びメサコン酸等)、C8~24の脂環式不飽和ジカルボン酸(シクロへキセンジカルボン酸、シクロヘプテンジカルボン酸、ビシクロヘプテンジカルボン酸及びメチルテトラヒドロフタル酸等)及びC8~24の芳香族不飽和ジカルボン酸(4,4’-スチルベンジカルボン酸等)等が挙げられる。
不飽和ジカルボン酸無水物としては、無水マレイン酸、無水イタコン酸及び無水シトラコン酸等が挙げられる。
これらの不飽和カルボン酸(無水物)(x)のうち、ポリオレフィン(e)との反応性及びグアニジノ基含有化合物(A)及び後述するバイオマス材料(D)の樹脂組成物中での分散性の観点から好ましいのは、不飽和ジカルボン酸無水物、更に好ましいのは無水マレイン酸である。
【0019】
カルボン酸(無水物)基を有しないポリオレフィン(e)を上記不飽和カルボン酸(無水物)(x)で変性して酸変性ポリオレフィン(B)を得る方法としては、ポリオレフィン(e)と不飽和カルボン酸(無水物)(x)とを、ラジカル開始剤の存在下又はラジカル開始剤不存在下で、必要により適当な有機溶媒[例えばC3~18の炭化水素(ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ドデカン、ベンゼン、トルエン、キシレン等)、C3~18のハロゲン化炭化水素(ジ-、トリ-、又はテトラクロロエタン、ジクロロブタン等)、C3~18のケトン(アセトン、メチルエチルケトン、ジ-t-ブチルケトン等)、C3~18のエーテル(エチル-n-プロピルエーテル、ジ-n-ブチルエーテル、ジ-t-ブチルエーテル、ジオキサン等)]を加えて反応させる方法等が挙げられる。
【0020】
酸変性ポリオレフィン(B)としては市販品を用いることもでき、例えば、ユーメックス1010[三洋化成工業(株)製]、ユーメックス1001[三洋化成工業(株)製]及びモディック-APP908[三菱化学(株)製]として、市場から入手することができる。
【0021】
酸変性ポリオレフィン(B)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
酸変性ポリオレフィン(B)は、グアニジノ基含有化合物(A)および後述するバイオマス材料(D)の樹脂組成物中での分散性等の観点から、JIS K0070に準拠して測定される酸価が10~200(mgKOH/g)であることが好ましい。
【0022】
<熱可塑性樹脂(C)>
本発明における熱可塑性樹脂(C)としては、加熱溶融することができる樹脂であれば特に限定されないが、例えば、ポリオレフィン樹脂(C1)、ポリアセタール樹脂(C2)、ポリエステル樹脂(C3)、熱可塑性の生分解性プラスチック(C4)、ポリアミド樹脂[例えばナイロン66、ナイロン69、ナイロン612、ナイロン6、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン46、ナイロン6/66、ナイロン6/12]、ポリカーボネート樹脂[例えばポリカーボネート(PC)、ポリカーボネート/ABSアロイ樹脂]、エチレン/酢酸ビニル共重合樹脂(EVA)、アクリル樹脂[例えばポリメタクリル酸メチル(PMMA)]及びポリスチレン樹脂(PS)が挙げられる。
【0023】
ポリオレフィン樹脂(C1)としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン及びポリイソブチレン等の1位に二重結合をもつα-オレフィンの重合で得られる結晶性を有する高分子である。また、リサイクルポリオレフィンもポリオレフィン樹脂(C1)として用いることができる。リサイクルポリオレフィンとは、バージン品のペレットから成形品を成形する工程で生じる廃棄物や不良品のようなプレコンシューマ品や、成形品として市場流通し、消費された後の、容器包装リサイクルプラスチックのような廃棄プラスチックとして回収されるポリオレフィンの総称である。
【0024】
ポリアセタール樹脂(C2)としては、公知のもの、オキシメチレンと、必要によりオキシエチレンとを単位構造として含む重合体が挙げられる。
ポリアセタール樹脂(C2)の市販品としては、例えば、デルリン[登録商標、デュポン社製]及びジュラコン[登録商標、ポリプラスチックス(株)製]が挙げられる。
【0025】
ポリエステル樹脂(C3)としては、公知のもの、ポリカルボン酸及び多価アルコールを構成単量体とする樹脂が挙げられる。
具体例としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンアジペート、ポリブチレンアジペート、ポリエチレンナフタレート及びポリブチレンナフタレートが挙げられる。
【0026】
熱可塑性の生分解性プラスチック(C4)としては、特に限定されないが、具体例としてポリ乳酸(PLA)、ポリブチレンサクシネート(PBS)、ポリブチレンサクシネートアジペート(PBSA)、ポリブチレンサクシネートカーボネート(PEC)、ポリエチレンテレフタレート/サクシネート(PETS)、ポリブチレンアジペート/テレフタレート(PBAT)、ポリエチレンサクシネート(PES)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリグリコール酸(PGA)、ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)、ポリヒドロキシブチレート(PHB)及び酢酸セルロース(CA)が挙げられる。
【0027】
熱可塑性樹脂(C)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
上記の熱可塑性樹脂(C)のうち、成形品の機械的強度の観点からはポリエチレン及びポリプロピレンが好ましいが、最終成形物の特性に合わせて適宜選択できる
【0028】
<バイオマス材料(D)>
本発明におけるバイオマス材料(D)としては、バイオマス[生物由来の再生可能な有機性資源(ただし化石資源を除く)]由来の材料であり、デンプン系材料(D1)、セルロース系材料(D2)、動物繊維(D3)、卵殻、貝殻及び甲殻類の外骨格等が含まれる。
【0029】
デンプン系材料(D1)としては、穀類{米、米ぬか、小麦粉、トウモロコシ等及びこれらから抽出したデンプン(ライススターチ、コーンスターチ、小麦粉デンプン等)}、イモ類{ジャガイモ、サツマイモ、キャッサバ及びこれらから抽出したデンプン(馬鈴薯デンプン、サツマイモデンプン、タピオカデンプン等)}、豆類(緑豆、小豆及びこれらから抽出したデンプン)、加工デンプン(酸処理デンプン、酢酸デンプン、酸化デンプン、リン酸化デンプン、リン酸架橋デンプン、ヒドロキシプロピルデンプン及びαデンプン等)等が挙げられる。
【0030】
セルロース系材料(D2)としては、木質材料(木材チップ、木材削りくず、おがくず、木粉及びパルプ等)、竹、ヘンプ、フラックス、綿、ケナフ、サトウキビ(バガス)、もみ殻、藁、小麦ふすま、豆殻、菜種油かす、トウモロコシ繊維及びその他の植物繊維等が挙げられる。
【0031】
動物繊維(D3)としては、絹、羊毛、山羊毛等が挙げられる。
【0032】
バイオマス材料(D)は、粉砕し粉末化したもの(粉末状)や、解砕又は解繊したもの(繊維状)を使用してもよい。バイオマス材料(D)が加熱により溶融及び糊化しないもの[例えばセルロース系材料(D2)、卵殻、貝殻及び甲殻類の外骨格]である場合、粉末状又は繊維状にして使用することが好ましい。また、加熱により溶融又は糊化するもの[例えばデンプン系材料(D1)]であれば、粉砕等をせずそのままの状態で(例えば、精米を米粒のまま)使用することも好ましい。デンプン系材料(D1)は、分散性を向上させる目的で、必要により、所定時間水に浸漬・水切りを行ってから使用してもよい。
【0033】
バイオマス材料(D)が粉末状の場合、その体積平均粒子径は、樹脂組成物の成形品の機械的物性等の観点から好ましくは0.01μm~3mm、さらに好ましくは0.1μm~1mm、とくに好ましくは1μm~500μmである。体積平均粒子径はレーザー回折散乱法により求められ、測定装置としては、粒度分布測定器[商品名「マイクロトラックMT3000II 粒度分析計」、日機装(株)製]等が挙げられる。
バイオマス材料(D)が繊維状の場合、その繊維径は樹脂組成物の成形性及び成形品の機械的強度の観点から、好ましくは0.1μm~1mm、さらに好ましくは1~500μmである。また、(E)の繊維長は成形品の機械的強度および成形性の観点から、好ましくは1μm~10mm、さらに好ましくは10μm~1mmである。該繊維径、繊維長は、電子顕微鏡の画像を画像解析することにより求められる。
【0034】
バイオマス材料(D)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0035】
本発明のバイオマス含有樹脂組成物において、上記熱可塑性樹脂(C)と上記バイオマス材料(D)は、予め熱可塑性樹脂(C)とバイオマス材料(D)とを複合化した材料{例えば、熱可塑性樹脂(C)とバイオマス材料(D)とを溶融混練してペレット化したもの}であるバイオマス複合材料(E)として含有してもよい。
バイオマス複合材料(E)としては市販品を用いることもでき、市販品としては、米含有ポリプロピレン樹脂[例えば、製品名「SRP70」シリーズ、(株)バイオポリ上越製]、米ぬか含有ポリエチレン樹脂[例えば、製品名「NEOPLA RB」シリーズ、(株)白石バイオマス製]、デンプン含有ポリプロピレン樹脂[例えば、製品名「NEOPLA S」シリーズ、(株)白石バイオマス製]、木質材料含有ポリプロピレン樹脂[例えば、製品名「JWP」シリーズ、(株)バイオポリ上越製、及び、製品名「NEOPLA W」シリーズ、(株)白石バイオマス製]、貝殻含有ポリプロピレン樹脂[例えば、製品名「シェルストーン」、(株)バイオポリ上越製]等が挙げられる。
【0036】
本発明のバイオマス含有樹脂組成物において、バイオマス材料(D)100重量部に対するグアニジノ基含有化合物(A)の含有量は0.1~20重量部であり、好ましくは0.1~10重量部であり、更に好ましくは0.5~5重量部である。上記バイオマス材料(D)100重量部に対する上記グアニジノ基含有化合物(A)の含有量が0.1重量部未満であると臭気低減能が悪化する傾向があり、20重量部を超えると成形品の機械的物性が悪化する傾向がある。
また本発明のバイオマス含有樹脂組成物において、熱可塑性樹脂(C)とバイオマス材料(D)の合計重量100重量部に対する酸変性ポリオレフィン(B)の含有量は0.1~15重量部であり、好ましくは0.5~10重量部であり、更に好ましくは1~5重量部である。上記熱可塑性樹脂(C)と上記バイオマス材料(D)の合計重量100重量部に対する上記酸変性ポリオレフィン(B)の含有量が0.1重量部未満であると臭気低減能が悪化する傾向があり、15重量部を超えると成形品の機械的物性が悪化する傾向がある。
【0037】
本発明のバイオマス含有樹脂組成物におけるグアニジノ基含有化合物(A)の含有量は、臭気低減能および成形品の機械的強度及び耐着色性の観点から、バイオマス含有樹脂組成物の重量に基づいて0.1~10重量%であることが好ましく、0.5~5重量%であることが更に好ましい。
酸変性ポリオレフィン(B)の含有量は、臭気低減能および成形品の機械的強度の観点から、バイオマス含有樹脂組成物の重量に基づいて0.1~15重量%であることが好ましく、1~5重量%であることが更に好ましい。
熱可塑性樹脂(C)の含有量は、成形品の機械的強度等の観点から、バイオマス含有樹脂組成物の重量に基づいて20~89.8重量%であることが好ましく、40~70重量%であることが更に好ましい。
バイオマス材料(D)の含有量は、成形品の機械的強度等の観点から、バイオマス含有樹脂組成物の重量に基づいて10~80重量%であることが好ましく、30~60重量%であることが更に好ましい。
【0038】
本発明のバイオマス含有樹脂組成物は、グアニジノ基含有化合物(A)をバイオマス材料(D)に対して特定の重量比率で含有するため、樹脂組成物の製造時や成形加工時に高温加熱(例えば140~230℃)した場合にバイオマス材料(D)が焦げて発生する焦げ臭(臭気物質:アルデヒド化合物、複素環式芳香族化合物等)や、熱可塑性樹脂(C)及びバイオマス材料(D)から揮発した化合物(臭気物質:アルデヒド化合物等)を化学吸着し、臭気を低減することが可能である。
また本発明のバイオマス含有樹脂組成物は、酸変性ポリオレフィン(B)を熱可塑性樹脂(C)とバイオマス材料(D)の合計に対して特定の重量比率で含有する。酸変性ポリオレフィン(B)は、熱可塑性樹脂(C)との親和性及びバイオマス材料(D)との親和性を併せもつため、バイオマス材料(D)の熱可塑性樹脂(C)中での分散性を向上させ、樹脂組成物中にバイオマス材料(D)がより均一に分散されるものと推察される。したがって、バイオマス材料(D)の分散性及び樹脂組成物の均一性が向上するため、本発明のバイオマス含有樹脂組成物はバイオマス材料の配合比率を高めることが可能であり、またバイオマス材料の配合比率が高い場合においても樹脂組成物の成形品の機械的強度の低下が起こりにくく、成形品に優れた機械的強度を与えることができるものと推察される。酸変性ポリオレフィン(B)は、更に、グアニジノ基含有化合物(A)との親和性も有するため、樹脂組成物中でのグアニジノ基含有化合物(A)の分散性が良好となり、臭気低減効率が向上するものと推察される。
【0039】
本発明のバイオマス含有樹脂組成物は、必要に応じて、更に消臭剤(F)を含有していてもよい。消臭剤(F)としては、公知のもの、多孔質材料(活性炭、シリカゲル、ゼオライト等)、ヒドラジド化合物(アジピン酸ジヒドラジド等)、光触媒(酸化チタン等)及び金属石鹸(ステアリン酸亜鉛及びリシノール酸亜鉛等の長鎖脂肪酸金属塩)等が挙げられる。
臭気低減能及び成形品の機械的強度の観点から、バイオマス含有樹脂組成物における消臭剤(F)の含有量は、バイオマス含有樹脂組成物の重量に基づいて0~5重量%であることが好ましい。
【0040】
本発明のバイオマス含有樹脂組成物は、必要に応じて、発明の効果を阻害しない範囲でその他の添加剤を含有していてもよい。その他の添加剤としては、耐熱安定剤、酸化防止剤、耐候安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、スリップ剤、抗ブロッキング剤、防曇剤、中和剤、金属不活性剤、界面活性剤、相溶化剤、着色剤、抗菌・防黴剤、難燃剤、可塑剤、分散剤、充填剤、導電剤、防腐剤、芳香剤、防虫剤等が挙げられる。
【0041】
<バイオマス含有樹脂組成物の製造方法>
本発明は、グアニジノ基含有化合物(A)、酸変性ポリオレフィン(B)、熱可塑性樹脂(C)及びバイオマス材料(D)を含有するバイオマス含有樹脂組成物の製造方法であり、前記バイオマス材料(D)100重量部に対する前記グアニジノ基含有化合物(A)の含有量が0.1~20重量部であり、前記熱可塑性樹脂(C)と前記バイオマス材料(D)の合計重量100重量部に対する前記酸変性ポリオレフィン(B)の含有量が0.1~15重量部であり、前記グアニジノ基含有化合物(A)、前記酸変性ポリオレフィン(B)、前記熱可塑性樹脂(C)及び前記バイオマス材料(D)を、酸変性ポリオレフィン(B)の融点と熱可塑性樹脂(C)の融点のうち高い方の温度(Tm)より5~100℃高い温度に加熱して混合する工程を有する樹脂組成物の製造方法である。
上記グアニジノ基含有化合物(A)、酸変性ポリオレフィン(B)、熱可塑性樹脂(C)及びバイオマス材料(D)を混合する工程を上記温度範囲で行うことにより、臭気低減能と成形品の機械的強度及び耐着色性が良好となる。上記工程における温度は前記Tmより5~80℃高い温度であることが更に好ましく、前記Tmより5~70℃高い温度であることが特に好ましい。
【0042】
臭気低減能と成形品の機械的強度及び耐着色性の観点からは、上記バイオマス材料(D)100重量部に対する上記グアニジノ基含有化合物(A)の含有量は0.1~10重量部であることが好ましく、0.5~5重量部であることが更に好ましい。また上記熱可塑性樹脂(C)と上記バイオマス材料(D)の合計重量100重量部に対する上記酸変性ポリオレフィン(B)の含有量は0.5~10重量部であることが好ましく、1~5重量部であることが更に好ましい。
【0043】
本発明の製造方法は、上記グアニジノ基含有化合物(A)、上記酸変性ポリオレフィン(B)、上記熱可塑性樹脂(C)及び上記バイオマス材料(D)を、前記Tmより5~100℃高い温度に加熱して混合する工程を有する。
上記グアニジノ基含有化合物(A)、上記酸変性ポリオレフィン(B)、上記熱可塑性樹脂(C)及び上記バイオマス材料(D)を前記Tmより5~100℃高い温度に加熱して混合する工程を有する製造方法としては、各成分を一括で投入し加熱して混合する方法に限られず、グアニジノ基含有化合物(A)、酸変性ポリオレフィン(B)、熱可塑性樹脂(C)及びバイオマス材料(D)のすべてが同時に前記Tmより5~100℃高い温度に加熱され混合される工程を有していればよい。例えば、下記(1)~(3)のような製造方法が含まれる。
(1)グアニジノ基含有化合物(A)、酸変性ポリオレフィン(B)、熱可塑性樹脂(C)及びバイオマス材料(D)を、混練押出機等に一括で投入し、所定温度に加熱して混合する方法
(2)あらかじめ酸変性ポリオレフィン(B)、熱可塑性樹脂(C)及びバイオマス材料(D)を混合したマスターバッチ樹脂組成物を作成しておき、該マスターバッチ樹脂組成物と(A)とを所定温度に加熱して混合する方法
(3)熱可塑性樹脂(C)とバイオマス材料(D)とを複合化させた材料であるバイオマス複合樹脂(E)と、グアニジノ基含有化合物(A)及び酸変性ポリオレフィン(B)とを所定温度に加熱して混合する方法
なお、バイオマス含有樹脂組成物がグアニジノ基含有化合物(A)、酸変性ポリオレフィン(B)、熱可塑性樹脂(C)及びバイオマス材料(D)に加えて、必要に応じて使用する任意成分[上記消臭剤(F)及びその他の添加剤等]を含有する場合、任意のタイミングで投入して混合することができるが、分散性の観点からは上記グアニジノ基含有化合物(A)、酸変性ポリオレフィン(B)、熱可塑性樹脂(C)及びバイオマス材料(D)を混合する工程時、又は該工程に先だって投入することが好ましい。
【0044】
バイオマス材料(D)がデンプン系材料(D1)を含有する場合、組成物中でのデンプン系材料(D1)の分散性を向上させる目的で、デンプン系材料(D1)と熱可塑性樹脂(C)とを混合する工程[たとえば上記(1)の方法におけるグアニジノ基含有化合物(A)、酸変性ポリオレフィン(B)、熱可塑性樹脂(C)及びバイオマス材料(D)を、混練押出機等に一括で投入し、所定温度に加熱しながら混合する工程や、上記(2)における酸変性ポリオレフィン(B)、熱可塑性樹脂(C)及びバイオマス材料(D)を混合し、マスターバッチ樹脂組成物を作成する工程]に先だって、デンプン系材料(D1)内部に水を浸透させる前処理を行うことも好ましい。デンプン系材料(D1)内部に水を浸透させる前処理の方法は、特に限定されないが、たとえばデンプン系材料(D1)をデンプン系材料(D1)の全体が浸かる分量の水に含侵して数分~数日程度静置する方法が挙げられる。デンプン系材料(D1)内部に水を浸透させる前処理を行った後、必要により余分な(内部に浸透していない)水分を除去してから、上記デンプン系材料(D1)と熱可塑性樹脂(C)とを混合する工程を行ってもよく、余分な水分を除去せずデンプン系材料(D1)とともに混合してもよい。(余分な水分は、加熱下で混合するうちに蒸発する。)
また、デンプン系材料(D1)内部に水を浸透させる前処理を行うかわりに、上記デンプン系材料(D1)と熱可塑性樹脂(C)とを混合する工程時に水を加えることにより、デンプン系材料(D1)内部に水を浸透させてもよい。
【0045】
<成形品>
本発明の成形品は、上記バイオマス含有樹脂組成物を成形してなる。
成形方法としては、押出成形、射出成形、圧縮成形、カレンダ成形、スラッシュ成形、回転成形、ブロー成形、発泡成形、フィルム成形(キャスト法、テンター法、インフレーション法等)等が挙げられ、目的に応じて任意の方法で成形できる。
成形温度は、熱可塑性樹脂(C)及びバイオマス材料(D)の性質等及び混練の負荷等を考慮して適宜設定できるが、例えば140~230℃の範囲である。
【0046】
本発明のバイオマス含有樹脂組成物を各種成形法で成形してなる成形品は、バイオマス材料を含有するにも関わらず低臭気であり、かつ機械的強度(破断強度、曲げ弾性等)に優れるため、ハウジング製品[家電・OA機器、ゲーム機器及び事務機器用等]、プラスチック容器材[食品用トレー、食器類、クリーンルームで使用されるトレー(ICトレー等)、その他容器等]、各種緩衝材、被覆材(包材用フィルム、保護フィルム等)、床材用シート、人工芝、マット、テープ基材(半導体製造プロセス用等)、並びに各種成形品(自動車部品等)用材料として幅広く用いることができ、極めて有用である。
【0047】
本明細書には以下の事項が開示されている。
【0048】
本開示(1)は、グアニジノ基含有化合物(A)、酸変性ポリオレフィン(B)、熱可塑性樹脂(C)及びバイオマス材料(D)を含有するバイオマス含有樹脂組成物であり、前記バイオマス材料(D)100重量部に対する前記グアニジノ基含有化合物(A)の含有量が0.1~20重量部であり、前記熱可塑性樹脂(C)と前記バイオマス材料(D)の合計重量100重量部に対する前記酸変性ポリオレフィン(B)の含有量が0.1~15重量部であるバイオマス含有樹脂組成物である。
【0049】
本開示(2)は、前記バイオマス材料(D)が、デンプン系材料(D1)、セルロース系材料(D2)、動物性繊維(D3)、卵殻及び貝殻からなる群より選ばれる1種以上である、本開示(1)に記載のバイオマス含有樹脂組成物である。
【0050】
本開示(3)は、本開示(1)又は(2)に記載のバイオマス含有樹脂組成物を成形してなる成形品である。
【0051】
本開示(4)は、グアニジノ基含有化合物(A)、酸変性ポリオレフィン(B)、熱可塑性樹脂(C)及びバイオマス材料(D)を含有するバイオマス含有樹脂組成物の製造方法であり、前記バイオマス材料(D)100重量部に対する前記グアニジノ基含有化合物(A)の含有量が0.1~20重量部であり、前記熱可塑性樹脂(C)と前記バイオマス材料(D)の合計重量100重量部に対する前記酸変性ポリオレフィン(B)の含有量が0.1~15重量部であり、前記グアニジノ基含有化合物(A)、前記酸変性ポリオレフィン(B)、前記熱可塑性樹脂(C)及び前記バイオマス材料(D)を、酸変性ポリオレフィン(B)の融点と熱可塑性樹脂(C)の融点のうち高い方の温度(Tm)より5~100℃高い温度に加熱して混合する工程を有する樹脂組成物の製造方法である。
【実施例0052】
以下実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0053】
実施例および比較例に使用した原料の組成、記号等は次の通りである。
<グアニジノ基含有化合物(A)>
(A-1):アミノグアニジン塩酸塩 [東京化成工業(株)製]
(A-2):重炭酸アミノグアニジン(アミノグアニジン炭酸塩) [東京化成工業(株)製]
(A-3):スルファミン酸グアニジン [東京化成工業(株)製]
(A-4):炭酸グアニジン[東京化成工業(株)製]
(A-5):シアノグアニジン [東京化成工業(株)製]
<酸変性ポリオレフィン(B)>
(B-1):ユーメックス1001 [酸価:26mgKOH/g、融点142℃、三洋化成工業(株)製]
(B-2):ユーメックス1010 [酸価:52mgKOH/g、融点135℃、三洋化成工業(株)製]
<熱可塑性樹脂(C)>
(C-1):ポリプロピレン[製品名「プライムポリプロJ105G」、融点168℃、(株)プライムポリマー製]
(C-2):低密度ポリエチレン[製品名「UBEポリエチレンF222」、融点110℃、宇部丸善ポリエチレン(株)製]
<バイオマス材料(D)>
(D-1):精米[3分づき米]
(D-2):小麦粉[粒度100メッシュ]
(D-3):木粉[平均200μmスギ木粉]
(D-4):卵殻[製品名「GT-26」、平均粒径30μm、(株)グリーンテクノ21製]
<バイオマス複合樹脂(E)>
(E-1):米ぬか70%、ポリプロピレン30%複合樹脂[製品名「SRP70-3F」、(株)バイオポリ上越製]
(E-2):木屑51%、ポリプロピレン49%複合樹脂[製品名「JWP-W51G」、(株)バイオポリ上越製]
<消臭剤(F)>
(F-1):アジピン酸ジヒドラジド[大塚化学(株)製]
(F-2):合成ゼオライト[モレキュラーシーブ 13X、ユニオン昭和(株)製、粉末、平均粒子径10μm、陽イオン種:ナトリウム、シリカ/アルミナ比2.5、細孔径10Å、結晶型X型]
(F-3):合成ゼオライト[HS-320、富士フィルム和光純薬(株)製、粉末、平均粒子径6μm、陽イオン種:水素、シリカ/アルミナ比5.5、細孔径9Å、結晶型Y型]
【0054】
実施例1[バイオマス含有樹脂組成物(X-1)の製造]
(D-1)50.0重量部を約3倍量(体積)のイオン交換水に24時間浸漬した後、遠心分離機にて50rpmで10分脱水した。(A-1)1.0重量部と(B-1)2.0重量部と(C-1)50.0重量部と脱水後の(D-1)50.0重量部とをディスポカップに入れて予備混合(撹拌羽根で軽く撹拌、以下の予備混合も同様)した後、190℃に温調したラボプラストミルに投入し、190℃に加熱下、60rpmで10分間混合することにより、バイオマス含有樹脂組成物(X-1)を得た。
【0055】
実施例2[バイオマス含有樹脂組成物(X-2)の製造]
(D-1)80.0重量部を約3倍量(体積)のイオン交換水に24時間浸漬した後、遠心分離機にて50rpmで10分脱水した。脱水後の(D-1)と(B-2)10.0重量部と(C-1)20.0重量部とをディスポカップに入れて予備混合した後、190℃に温調したラボプラストミルに投入し、190℃に加熱下、60rpmで10分間混合してマスターバッチ樹脂組成物を得た。卓上粉砕機で粒子径5mm以下に粉砕したマスターバッチ組成物と(A-2)0.1重量部とをディスポカップに入れて予備混合した後、190℃に温調したラボプラストミルに投入し、190℃に加熱下、60rpmで10分間混合することにより、バイオマス含有樹脂組成物(X-2)を得た。
【0056】
実施例3[バイオマス含有樹脂組成物(X-3)の製造]
(D-1)60.0重量部を約3倍量(体積)のイオン交換水に24時間浸漬した後、遠心分離機にて50rpmで10分脱水した。脱水後の(D-1)と(A-3)3.0重量部と(B-1)1.0重量部と(C-1)40.0重量部と(F-1)0.5重量部とをディスポカップに入れて予備混合した後、190℃に温調したラボプラストミルに投入し、190℃に加熱下、60rpmで10分間混合することにより、バイオマス含有樹脂組成物(X-3)を得た。
【0057】
実施例4[バイオマス含有樹脂組成物(X-4)の製造]
(D-1)50.0重量部を約3倍量(体積)のイオン交換水に24時間浸漬した後、遠心分離機にて50rpmで10分脱水した。脱水後の(D-1)と(A-4)5.0重量部と(B-1)3.0重量部と(C-1)50.0重量部とをディスポカップに入れて予備混合した後、190℃に温調したラボプラストミルに投入し、190℃に加熱下、60rpmで10分間混合することにより、バイオマス含有樹脂組成物(X-4)を得た。
【0058】
実施例5[バイオマス含有樹脂組成物(X-5)の製造]
(D-1)70.0重量部を約3倍量(体積)のイオン交換水に24時間浸漬した後、遠心分離機にて50rpmで10分脱水した。脱水後の(D-1)と(B-2)4.0重量部と(C-1)30.0重量部とをディスポカップに入れて予備混合した後、190℃に温調したラボプラストミルに投入し、190℃に加熱下、60rpmで10分間混合してマスターバッチ樹脂組成物を得た。卓上粉砕機で粒子径5mm以下に粉砕したマスターバッチ組成物と(A-5)7.0重量部をディスポカップに入れて予備混合した後、190℃に温調したラボプラストミルに投入し、190℃に加熱下、60rpmで10分間混合することにより、バイオマス含有樹脂組成物(X-5)を得た。
【0059】
実施例6[バイオマス含有樹脂組成物(X-6)の製造]
(D-2)70.0重量部とイオン交換水35.0重量部をディスポカップに入れて撹拌棒でかき混ぜ、(D-2)を含有するペーストを得た。このディスポカップに(A-2)5.0重量部と(B-2)15.0重量部と(C-1)30.0重量部を加えて予備混合した後、180℃に温調したラボプラストミルに投入し、180℃に加熱下、60rpmで10分間混合することにより、バイオマス含有樹脂組成物(X-6)を得た。
【0060】
実施例7[バイオマス含有樹脂組成物(X-7)の製造]
(D-2)40.0重量部とイオン交換水20.0重量部をディスポカップに入れて撹拌棒でかき混ぜ、(D-2)を含有するペーストを得た。このディスポカップに(B-1)2.0重量部と(C-1)60.0重量部を加えて予備混合した後、180℃に温調したラボプラストミルに投入し、180℃に加熱下、60rpmで10分間混合し、マスターバッチ樹脂組成物を得た。卓上粉砕機で粒子径5mm以下に粉砕したマスターバッチ組成物と(A-1)8.0重量部をディスポカップに入れて予備混合した後、180℃に温調したラボプラストミルに投入し、180℃に加熱下、60rpmで10分間混合することにより、バイオマス含有樹脂組成物(X-7)を得た。
【0061】
実施例8[バイオマス含有樹脂組成物(X-8)の製造]
(A-4)6.0重量部と(B-2)10.0重量部と(C-1)40.0重量部と(D-2)60.0重量部とをディスポカップに入れて予備混合した後、180℃に温調したラボプラストミルに投入し、180℃に加熱下、60rpmで10分間混合することにより、バイオマス含有樹脂組成物(X-8)を得た。
【0062】
実施例9[バイオマス含有樹脂組成物(X-9)の製造]
(D-1)70重量部を約3倍量(体積)のイオン交換水に24時間浸漬した後、遠心分離機にて50rpmで10分脱水した。脱水後の(D-1)と(A-1)5.0重量部と(B-2)6.0重量部と(C-2)30.0重量部とをディスポカップに入れて予備混合した後、160℃に温調したラボプラストミルに投入し、160℃に加熱下、60rpmで10分間混合することにより、バイオマス含有樹脂組成物(X-9)を得た。
【0063】
実施例10[バイオマス含有樹脂組成物(X-10)の製造]
(D-1)40.0重量部を約3倍量(体積)のイオン交換水に24時間浸漬した後、遠心分離機にて50rpmで10分脱水した。脱水後の(D-1)と(A-2)2.0重量部と(B-1)0.1重量部と(C-2)60.0重量部と(F-1)0.5重量部とをディスポカップに入れて予備混合した後、160℃に温調したラボプラストミルに投入し、160℃に加熱下、60rpmで10分間混合することにより、バイオマス含有樹脂組成物(X-10)を得た。
【0064】
実施例11[バイオマス含有樹脂組成物(X-11)の製造]
(D-1)50.0重量部を約3倍量(体積)のイオン交換水に24時間浸漬した後、遠心分離機にて50rpmで10分脱水した。脱水後の(D-1)と(B-2)8.0重量部と(C-2)50.0重量部とをディスポカップに入れて予備混合した後、160℃に温調したラボプラストミルに投入し、160℃に加熱下、60rpmで10分間混合してマスターバッチ樹脂組成物を得た。卓上粉砕機で粒子径5mm以下に粉砕したマスターバッチ組成物と(A-5)0.5重量部をディスポカップに入れて予備混合した後、160℃に温調したラボプラストミルに投入し、160℃に加熱下、60rpmで10分間混合することにより、バイオマス含有樹脂組成物(X-11)を得た。
【0065】
実施例12[バイオマス含有樹脂組成物(X-12)の製造]
(D-2)50.0重量部とイオン交換水25.0重量部をディスポカップに入れて撹拌棒でかき混ぜ、(D-2)を含有するペーストを得た。このディスポカップに(A-1)0.2重量部と(B-1)3.0重量部と(C-2)50.0重量部を加えて予備混合した後、160℃に温調したラボプラストミルに投入し、160℃に加熱下、60rpmで10分間混合することにより、バイオマス含有樹脂組成物(X-12)を得た。
【0066】
実施例13[バイオマス含有樹脂組成物(X-13)の製造]
(D-2)60.0重量部とイオン交換水30.0重量部をディスポカップに入れて撹拌棒でかき混ぜ、(D-2)を含有するペーストを得た。このディスポカップに(A-3)10.0重量部と(B-2)0.5重量部と(C-2)40.0重量部を加えて予備混合した後、160℃に温調したラボプラストミルに投入し、160℃に加熱下、60rpmで10分間混合することにより、バイオマス含有樹脂組成物(X-13)を得た。
【0067】
実施例14[バイオマス含有樹脂組成物(X-14)の製造]
(B-1)4.0重量部と(C-2)60.0重量部と(D-2)40.0重量部とをディスポカップに入れて予備混合した後、160℃に温調したラボプラストミルに投入し、160℃に加熱下、60rpmで10分間混合し、マスターバッチ樹脂組成物を得た。卓上粉砕機で粒子径5mm以下に粉砕したマスターバッチ組成物と(A-5)3.0重量部をディスポカップに入れて予備混合した後、160℃に温調したラボプラストミルに投入し、160℃に加熱下、60rpmで10分間混合することにより、バイオマス含有樹脂組成物(X-14)を得た。
【0068】
実施例15[バイオマス含有樹脂組成物(X-15)の製造]
(A-1)2.0重量部と(B-1)2.0重量部と(E-1)100.0重量部とをディスポカップに入れて予備混合した後、180℃に温調したラボプラストミルに投入し、180℃に加熱下、60rpmで10分間混合することにより、バイオマス含有樹脂組成物(X-15)を得た。
【0069】
実施例16[バイオマス含有樹脂組成物(X-16)の製造]
(D-1)60.0重量部を約3倍量(体積)のイオン交換水に24時間浸漬した後、遠心分離機にて50rpmで10分脱水した。(A-1)0.5重量部と(B-1)5.0重量部と(C-1)40.0重量部と脱水後の(D-1)60.0重量部と(F-2)1.0重量部とをディスポカップに入れて予備混合(撹拌羽根で軽く撹拌、以下の予備混合も同様)した後、190℃に温調したラボプラストミルに投入し、190℃に加熱下、60rpmで10分間混合することにより、バイオマス含有樹脂組成物(X-16)を得た。
【0070】
実施例17[バイオマス含有樹脂組成物(X-17)の製造]
(D-2)40.0重量部とイオン交換水20.0重量部をディスポカップに入れて撹拌棒でかき混ぜ、(D-2)を含有するペーストを得た。このディスポカップに(A-2)1.0重量部と(B-2)3.0重量部と(C-2)60.0重量部と(F-3)0.5重量部を加えて予備混合した後、160℃に温調したラボプラストミルに投入し、160℃に加熱下、60rpmで10分間混合することにより、バイオマス含有樹脂組成物(X-17)を得た。
【0071】
実施例18[バイオマス含有樹脂組成物(X-18)の製造]
(A-1)1.0重量部と(B-1)3.0重量部と(C-1)30.0重量部と(D-3)70.0重量部とをディスポカップに入れて予備混合した後、180℃に温調したラボプラストミルに投入し、180℃に加熱下、60rpmで10分間混合することにより、バイオマス含有樹脂組成物(X-18)を得た。
【0072】
実施例19[バイオマス含有樹脂組成物(X-19)の製造]
(A-3)0.3重量部と(B-1)2.0重量部と(C-1)50.0重量部と(D-3)50.0重量部とをディスポカップに入れて予備混合した後、180℃に温調したラボプラストミルに投入し、180℃に加熱下、60rpmで10分間混合することにより、バイオマス含有樹脂組成物(X-19)を得た。
【0073】
実施例20[バイオマス含有樹脂組成物(X-20)の製造]
(A-1)3.0重量部と(B-2)1.0重量部と(C-1)40.0重量部と(D-3)60.0重量部と(F-1)0.5重量部とをディスポカップに入れて予備混合した後、180℃に温調したラボプラストミルに投入し、180℃に加熱下、60rpmで10分間混合することにより、バイオマス含有樹脂組成物(X-20)を得た。
【0074】
実施例21[バイオマス含有樹脂組成物(X-21)の製造]
(B-2)5.0重量部と(C-1)30.0重量部と(D-3)70.0重量部とをディスポカップに入れて予備混合した後、180℃に温調したラボプラストミルに投入し、180℃に加熱下、60rpmで10分間混合し、マスターバッチ樹脂組成物を得た。卓上粉砕機で粒子径5mm以下に粉砕したマスターバッチ組成物と(A-4)10.0重量部をディスポカップに入れて予備混合した後、180℃に温調したラボプラストミルに投入し、180℃に加熱下、60rpmで10分間混合することにより、バイオマス含有樹脂組成物(X-21)を得た。
【0075】
実施例22[バイオマス含有樹脂組成物(X-22)の製造]
(A-2)10.0重量部と(B-2)5.0重量部と(C-2)50.0重量部と(D-3)50.0重量部とをディスポカップに入れて予備混合した後、160℃に温調したラボプラストミルに投入し、160℃に加熱下、60rpmで10分間混合することにより、バイオマス含有樹脂組成物(X-22)を得た。
【0076】
実施例23[バイオマス含有樹脂組成物(X-23)の製造]
(B-1)15.0重量部と(C-2)30.0重量部と(D-3)70.0重量部とをディスポカップに入れて予備混合した後、160℃に温調したラボプラストミルに投入し、160℃に加熱下、60rpmで10分間混合し、マスターバッチ樹脂組成物を得た。卓上粉砕機で粒子径5mm以下に粉砕したマスターバッチ組成物と(A-4)8.0重量部をディスポカップに入れて予備混合した後、160℃に温調したラボプラストミルに投入し、160℃に加熱下、60rpmで10分間混合することにより、バイオマス含有樹脂組成物(X-23)を得た。
【0077】
実施例24[バイオマス含有樹脂組成物(X-24)の製造]
(B-2)1.0重量部と(C-2)40.0重量部と(D-3)60.0重量部とをディスポカップに入れて予備混合した後、160℃に温調したラボプラストミルに投入し、160℃に加熱下、60rpmで10分間混合し、マスターバッチ樹脂組成物を得た。卓上粉砕機で粒子径5mm以下に粉砕したマスターバッチ組成物と(A-5)3.0重量部をディスポカップに入れて予備混合した後、160℃に温調したラボプラストミルに投入し、160℃に加熱下、60rpmで10分間混合することにより、バイオマス含有樹脂組成物(X-24)を得た。
【0078】
実施例25[バイオマス含有樹脂組成物(X-25)の製造]
(A-1)2.0重量部と(B-1)3.0重量部と(C-1)40.0重量部と(D-4)60.0重量部とをディスポカップに入れて予備混合した後、200℃に温調したラボプラストミルに投入し、200℃に加熱下、60rpmで10分間混合することにより、バイオマス含有樹脂組成物(X-25)を得た。
【0079】
実施例26[バイオマス含有樹脂組成物(X-26)の製造]
(A-3)0.05重量部と(B-2)10.0重量部と(C-1)50.0重量部と(D-4)50.0重量部とをディスポカップに入れて予備混合した後、200℃に温調したラボプラストミルに投入し、200℃に加熱下、60rpmで10分間混合することにより、バイオマス含有樹脂組成物(X-26)を得た。
【0080】
実施例27[バイオマス含有樹脂組成物(X-27)の製造]
(B-2)15.0重量部と(C-1)70.0重量部と(D-4)30.0重量部とをディスポカップに入れて予備混合した後、200℃に温調したラボプラストミルに投入し、200℃に加熱下、60rpmで10分間混合し、マスターバッチ樹脂組成物を得た。卓上粉砕機で粒子径5mm以下に粉砕したマスターバッチ組成物と(A-5)5.0重量部をディスポカップに入れて予備混合した後、200℃に温調したラボプラストミルに投入し、200℃に加熱下、60rpmで10分間混合することにより、バイオマス含有樹脂組成物(X-27
)を得た。
【0081】
実施例28[バイオマス含有樹脂組成物(X-28)の製造]
(A-2)0.5重量部と(B-1)2.0重量部と(C-2)30.0重量部と(D-4)70.0重量部とをディスポカップに入れて予備混合した後、180℃に温調したラボプラストミルに投入し、180℃に加熱下、60rpmで10分間混合することにより、バイオマス含有樹脂組成物(X-28)を得た。
【0082】
実施例29[バイオマス含有樹脂組成物(X-29)の製造]
(B-2)0.1重量部と(C-2)60.0重量部と(D-4)40.0重量部とをディスポカップに入れて予備混合した後、180℃に温調したラボプラストミルに投入し、180℃に加熱下、60rpmで10分間混合し、マスターバッチ樹脂組成物を得た。卓上粉砕機で粒子径5mm以下に粉砕したマスターバッチ組成物と(A-1)4.0重量部をディスポカップに入れて予備混合した後、180℃に温調したラボプラストミルに投入し、180℃に加熱下、60rpmで10分間混合することにより、バイオマス含有樹脂組成物(X-29)を得た。
【0083】
実施例30[バイオマス含有樹脂組成物(X-30)の製造]
(B-1)3.0重量部と(C-2)40.0重量部と(D-4)60.0重量部とをディスポカップに入れて予備混合した後、180℃に温調したラボプラストミルに投入し、180℃に加熱下、60rpmで10分間混合し、マスターバッチ樹脂組成物を得た。卓上粉砕機で粒子径5mm以下に粉砕したマスターバッチ組成物と(A-4)5.0重量部をディスポカップに入れて予備混合した後、180℃に温調したラボプラストミルに投入し、180℃に加熱下、60rpmで10分間混合することにより、バイオマス含有樹脂組成物(X-30)を得た。
【0084】
実施例31[バイオマス含有樹脂組成物(X-31)の製造]
(A-3)3.0重量部と(B-2)4.0重量部と(E-2)100.0重量部とをディスポカップに入れて予備混合した後、180℃に温調したラボプラストミルに投入し、180℃に加熱下、60rpmで10分間混合することにより、バイオマス含有樹脂組成物(X-31)を得た。
【0085】
実施例32[バイオマス含有樹脂組成物(X-32)の製造]
(A-2)1.0重量部と(B-1)5.0重量部と(C-1)50.0重量部と(D-3)50.0重量部と(F-2)0.5重量部とをディスポカップに入れて予備混合した後、180℃に温調したラボプラストミルに投入し、180℃に加熱下、60rpmで10分間混合することにより、バイオマス含有樹脂組成物(X-32)を得た。
【0086】
実施例33[バイオマス含有樹脂組成物(X-33)の製造]
(B-2)4.0重量部と(C-2)50.0重量部と(D-4)50.0重量部とをディスポカップに入れて予備混合した後、180℃に温調したラボプラストミルに投入し、180℃に加熱下、60rpmで10分間混合し、マスターバッチ樹脂組成物を得た。卓上粉砕機で粒子径5mm以下に粉砕したマスターバッチ組成物と(A-1)0.5重量部と(F-3)1.0重量部をディスポカップに入れて予備混合した後、180℃に温調したラボプラストミルに投入し、180℃に加熱下、60rpmで10分間混合することにより、バイオマス含有樹脂組成物(X-33)を得た。
【0087】
比較例1[比較の樹脂組成物(X’-1)の製造]
(D-1)70.0重量部を約3倍量(体積)のイオン交換水に24時間浸漬した後、遠心分離機にて50rpmで10分脱水した。脱水後の(D-1)と(B-1)2.0重量部と(C-1)30.0重量部とをディスポカップに入れて予備混合した後、190℃に温調したラボプラストミルに投入し、190℃に加熱下、60rpmで10分間混合することにより比較の樹脂組成物(X’-1)を得た。
【0088】
比較例2[比較の樹脂組成物(X’-2)の製造]
(D-2)50.0重量部とイオン交換水25.0重量部をディスポカップに入れて撹拌棒でかき混ぜ、(D-2)を含有するペーストを得た。このディスポカップに(B-1)3.0重量部と(C-2)50.0重量部を加えて予備混合した後、160℃に温調したラボプラストミルに投入し、160℃に加熱下、60rpmで10分間混合することにより、比較の樹脂組成物(X’-2)を得た。
【0089】
比較例3[比較の樹脂組成物(X’-3)の製造]
(A-3)2.0重量部と(C-1)30.0重量部と(D-2)70.0重量部とをディスポカップに入れて予備混合した後、190℃に温調したラボプラストミルに投入し、190℃に加熱下、60rpmで10分間混合することにより、比較の樹脂組成物(X’-3)を得た。
【0090】
比較例4[比較の樹脂組成物(X’-4)の製造]
(D-1)40.0重量部を約3倍量(体積)のイオン交換水に24時間浸漬した後、遠心分離機にて50rpmで10分脱水した。脱水後の(D-1)と(A-2)3.0重量部と(C-2)60.0重量部とをディスポカップに入れて予備混合した後、160℃に温調したラボプラストミルに投入し、160℃に加熱下、60rpmで10分間混合することにより比較の樹脂組成物(X’-4)を得た。
【0091】
比較例5[比較の樹脂組成物(X’-5)の製造]
(B-2)0.03重量部と(C-2)40.0重量部と(D-2)60.0重量部とをディスポカップに入れて予備混合した後、160℃に温調したラボプラストミルに投入し、160℃に加熱下、60rpmで10分間混合することにより、比較の樹脂組成物(X’-5)を得た。
【0092】
比較例6[比較の樹脂組成物(X’-6)の製造]
(D-1)70.0重量部を約3倍量(体積)のイオン交換水に24時間浸漬した後、遠心分離機にて50rpmで10分脱水した。脱水後の(D-1)と(B-1)2.0重量部と(C-1)30.0重量部とをディスポカップに入れて予備混合した後、190℃に温調したラボプラストミルに投入し、190℃に加熱下、60rpmで10分間混合してマスターバッチ樹脂組成物を得た。卓上粉砕機で粒子径5mm以下に粉砕したマスターバッチ組成物と(A-1)0.03重量部をディスポカップに入れて予備混合した後、190℃に温調したラボプラストミルに投入し、190℃に加熱下、60rpmで10分間混合することにより、比較の樹脂組成物(X’-6)を得た。
【0093】
比較例7[比較の樹脂組成物(X’-7)の製造]
(B-2)3.0重量部と(C-2)40.0重量部と(D-3)60.0重量部とをディスポカップに入れて予備混合した後、160℃に温調したラボプラストミルに投入し、160℃に加熱下、60rpmで10分間混合することにより、比較の樹脂組成物(X’-7)を得た。
【0094】
比較例8[比較の樹脂組成物(X’-8)の製造]
(B-1)2.0重量部と(C-1)30.0重量部と(D-4)70.0重量部とをディスポカップに入れて予備混合した後、200℃に温調したラボプラストミルに投入し、200℃に加熱下、60rpmで10分間混合することにより、比較の樹脂組成物(X’-8)を得た。
【0095】
比較例9[比較の樹脂組成物(X’-9)の製造]
(A-1)5.0重量部と(C-1)50.0重量部と(D-3)50.0重量部とをディスポカップに入れて予備混合した後、180℃に温調したラボプラストミルに投入し、180℃に加熱下、60rpmで10分間混合することにより、比較の樹脂組成物(X’-9)を得た。
【0096】
比較例10[比較の樹脂組成物(X’-10)の製造]
(A-4)3.0重量部と(C-2)60.0重量部と(D-4)40.0重量部とをディスポカップに入れて予備混合した後、180℃に温調したラボプラストミルに投入し、180℃に加熱下、60rpmで10分間混合することにより、比較の樹脂組成物(X’-10)を得た。
【0097】
比較例11[比較の樹脂組成物(X’-11)の製造]
(B-1)2.0重量部と(C-1)50.0重量部と(D-4)50.0重量部とをディスポカップに入れて予備混合した後、200℃に温調したラボプラストミルに投入し、200℃に加熱下、60rpmで10分間混合し、マスターバッチ樹脂組成物を得た。卓上粉砕機で粒子径5mm以下に粉砕したマスターバッチ組成物と(A-1)0.03重量部をディスポカップに入れて予備混合した後、200℃に温調したラボプラストミルに投入し、200℃に加熱下、60rpmで10分間混合することにより、比較の樹脂組成物(X’-11)を得た。
【0098】
比較例12[比較の樹脂組成物(X’-12)の製造]
(A-1)3.0重量部と(B-2)0.05重量部と(C-2)40.0重量部と(D-3)60.0重量部とをディスポカップに入れて予備混合した後、160℃に温調したラボプラストミルに投入し、160℃に加熱下、60rpmで10分間混合することにより、比較の樹脂組成物(X’-12)を得た。
【0099】
比較例13[比較の樹脂組成物(X’-13)]
(B-1)2.0重量部と(C-1)30.0重量部と(D-3)70.0重量部と(F-1)5.0重量部とをディスポカップに入れて予備混合した後、180℃に温調したラボプラストミルに投入し、180℃に加熱下、60rpmで10分間混合することにより、比較の樹脂組成物(X’-13)を得た。
【0100】
比較例14及び15[比較の樹脂組成物(X’-14)及び(X’-15)]
ポリプロピレン(C-1)をそのまま比較の樹脂組成物(X’-14)として用いた。低密度ポリエチレン(C-2)をそのまま比較の樹脂組成物(X’-15)として用いた。
【0101】
実施例1~33で得られたバイオマス含有樹脂組成物及び比較例1~15で得られた比較の樹脂組成物について、下記の方法で評価を行った結果を表1及び表2に示す。
【0102】
【0103】
【0104】
(1)臭気の評価(官能試験)
各樹脂組成物を、加圧成型機を用いて成形温度180℃で厚さ10mmの板状にプレス成型した。得られた板を、100mm×100mm×10mmに切り出すことにより試験片を得た。試験片を、内容積2Lのガラス製デシケーターに入れ、蓋をして40℃で24時間静置した。その後蓋を少し開けてにおいをかぎ、次の5段階で臭気強度を評価した。
臭気強度0:無臭
臭気強度1:やっと感知できるにおい(検知閾値)
臭気強度2:何の臭気かわかるにおい(認知閾値)
臭気強度3:らくに感知できるにおい
臭気強度4:強いにおい
【0105】
(2)臭気の評価(高温加熱時の臭気物質発生量の測定)
各樹脂組成物を、小型冷凍粉砕機を用いて液体窒素下予備冷却時間10分、粉砕時間20分で凍結粉砕した後、熱分解ガスクロマトグラフィー(TD-GC/MS)により臭気化合物の定量を行った。
バイオマス材料(D-1)を含有する実施例及び比較例については比較例1、バイオマス材料(D-2)を含有する実施例及び比較例については比較例2、バイオマス材料(D-3)を含有する実施例及び比較例では比較例7、バイオマス材料(D-4)を含有する実施例及び比較例では比較例8のTD-GC/MS測定で検出された各臭気成分の面積をサンプリング重量で割ったサンプル1mgあたりの面積を100として、各樹脂組成物の測定で検出された臭気成分量を比較した。
なお、樹脂組成物が含有するバイオマス材料(D)がデンプン系材料{(D-1)、(D-2)}の場合、主に発生する臭気化合物はアセトアルデヒド、フルフラール、ピラジン及びヒドロキシアセトンであり、バイオマス材料(D)がセルロース系材料{(D-3)}の場合、主に発生する臭気化合物はアセトアルデヒド、ヒドロキシアセトン及びヘキサン酸であり、バイオマス材料(D)が卵殻{(D-4)}の場合、主に発生する臭気化合物は2-メチルプロパナール及び3-メチルブタナールである。サンプル1mgあたりの面積が300/mgの場合、検出下限外(表に「-」と記載)とした。
<TD-GC/MS測定条件>
GC条件
・装置:GCMS-TQ8040[(株)島津製作所製]
・カラム:ZB-WAX(長さ:30m、内径:0.25mm、膜厚:0.25μm)
・入口圧力:100kPa
・スプリット比:10
・温度プログラム:40℃×5分保持後、230℃まで昇温、230℃×10分保持、昇温速度:10℃/分
MS条件
・イオン化モード:EI
・検出モード:Scan(m/z=33~300)
・検出器電圧(相対):0kV
・チューニング電圧:1.09kV
【0106】
(3)成形品の引張破壊応力(MPa)
各樹脂組成物を、加圧成型機を用いて成形温度180℃で厚さ4mmの板状にプレス成型した。得られた板からダンベル1A形試験片を切り出し、試験片とした。
JIS K7161に準じ、試験速度1mm/minで引張破断応力(MPa)を測定した。
【0107】
(4)成形品の曲げ弾性率(MPa)
各樹脂組成物を、加圧成型機を用いて成形温度180℃で厚さ4mmの板状にプレス成型した。得られた板を80mm×10mmに切り出して試験片とした。
JIS K7171に準じ、試験速度2mm/min、支点間距離64mmの条件で曲げ弾性率(MPa)を測定した。
【0108】
(5)黄色度測定
各樹脂組成物を、加圧成型機を用いて成形温度180℃で厚さ4mmの板状にプレス成型することにより試験片を得た。プラスチックの光学的特性試験方法:JIS K7105に準じて測定を行った。測定光源を標準光C(色温度:6774K)として色差計で測定した3刺激値X,Y,Zから下記式(1)によって黄色度(YI)を算出した。下記式(2)に示すように、各樹脂組成物が含有する熱可塑性樹脂(C)単独の黄色度(YI0)との差である黄変度ΔYIを算出し、下記基準により評価した。
なお、バイオマス材料(D)の黄色度が元々高い場合は樹脂の着色度が正しく測定できないため、黄色度は実施例1~17及び比較例1~6についてのみ評価した。
YI=100(1.28X―1.06Z)/Y ・・・(1)
ΔYI=YI-YI0 ・・・(2)
<評価基準>
◎:ΔYIが10未満
〇:ΔYIが10以上20未満
△:ΔYIが20以上30未満
×:ΔYIが30以上
【0109】
表1及び表2の結果から、本発明のバイオマス含有樹脂組成物は、比較の樹脂組成物(X’-1)~(X’-13)に比べ臭気が低減されており、かつ機械的強度に優れる(比較例14又は15の機械的強度と比べて低下の少ない)成形品を得ることができることが分かる。更に、得られる成形品は耐着色性にも優れることが分かる。
一方、表1において、グアニジノ基含有化合物(A)を含有しないか含有量が不足している比較例1、2、5及び6の樹脂組成物は臭気が多く、着色が大きかった。酸変性ポリオレフィン(B)を含有しない比較例3及び4の樹脂組成物は臭気低減効果と耐着色性が若干劣り、成形品の機械的強度が大きく低下した。表2において、グアニジノ基含有化合物(A)を含有しないか含有量が不足している比較例7、8、11及び13の樹脂組成物は臭気が多かった。酸変性ポリオレフィン(B)を含有しないか含有量が不足している比較例9,10及び12の樹脂組成物は臭気低減効果が若干劣り、成形品の機械的強度が大きく低下した。
本発明のバイオマス含有樹脂組成物は、バイオマス材料を含有するにも関わらず低臭気であり、樹脂組成物の製造時や成形加工時に高温加熱した場合も臭気の発生が少ない。また、各種成形法で成形してなる成形品は、機械的強度(破断強度、曲げ弾性等)に優れるため、ハウジング製品[家電・OA機器、ゲーム機器及び事務機器用等]、プラスチック容器材[食品用トレー、食器類、クリーンルームで使用されるトレー(ICトレー等)、その他容器等]、各種緩衝材、被覆材(包材用フィルム、保護フィルム等)、床材用シート、人工芝、マット、テープ基材(半導体製造プロセス用等)、並びに各種成形品(自動車部品等)用材料として幅広く用いることができ、極めて有用である。