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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024020164
(43)【公開日】2024-02-14
(54)【発明の名称】構造化光を用いた色測定
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/01 20060101AFI20240206BHJP
   A61C 19/04 20060101ALI20240206BHJP
   G01N 21/27 20060101ALI20240206BHJP
   G01J 3/46 20060101ALN20240206BHJP
【FI】
G01N21/01 D
A61C19/04 J
G01N21/27 A
G01J3/46 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023122068
(22)【出願日】2023-07-26
(31)【優先権主張番号】22187237.7
(32)【優先日】2022-07-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】596032878
【氏名又は名称】イボクラール ビバデント アクチェンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100064012
【弁理士】
【氏名又は名称】浜田 治雄
(72)【発明者】
【氏名】ラインハルト,ヨナス
(72)【発明者】
【氏名】ニードリヒ,クリスティアン
(57)【要約】      (修正有)
【課題】できるだけ少ない光源で、空間分解された正確な色決定を行うこと。
【解決手段】空間分解色決定のための方法であって、第1の波長の光を有する第1の構造化光パターンを歯科対象物に投影する(S101)ことと、反射されたまたは送られた第1の構造化光パターンに基づいて、第1の空間分解光学パラメータセットを検出する(S102)ことと、第2の波長の光を有する第2の構造化光パターンを歯科対象物に投影する(S103)ことと、反射されたまたは送られた第2の構造化光パターンに基づいて、第2の空間分解光学パラメータセットを検出する(S104)ことと、第1および第2の空間分解光学パラメータセットに基づいて、第3の波長の光で第3の空間分解光学パラメータセットを計算する(S105)ことの各工程を含む方法。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
空間分解色決定のための方法であって、以下の工程、
第1の波長の光を有する第1の構造化光パターン(101-1)を歯科対象物(103)に投影する(S101)ことと、
反射されたまたは送られた第1の構造化光パターン(101-1)に基づいて設定された第1の空間分解光学パラメータを検出する(S102)ことと、
第2の波長の光を有する第2の構造化光パターン(101-2)を歯科対象物(103)に投影する(S103)ことと、
反射されたまたは送られた第2の構造化光パターン(101-2)に基づいて設定された第2の空間分解光学パラメータを検出する(S104)ことと、
第1および第2の空間分解光学パラメータセットに基づいて、第3の波長の光における第3の空間分解光学パラメータセットを計算する(S105)こと
とを含む方法。
【請求項2】
第3の空間分解光学パラメータセットは、第1および第2の空間分解光学パラメータセットから外挿される請求項1に記載の方法。
【請求項3】
第3の空間分解光学パラメータセットは、第1および第2の空間分解光学パラメータセットの間で内挿される請求項1または請求項2に記載の方法。
【請求項4】
第3のパラメータセットは、第1および第2の空間分解光学パラメータセットに基づく適合プロセスによって決定される請求項1~3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
所定のスペクトルコースが、第3の空間分解光学パラメータセットを得るために、第1および第2の空間分解光学パラメータセットにマッチングされる請求項1~4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
所定のスペクトルコースが、光の波長に応じた反射率、吸収係数および/または散乱係数のコースである請求項1~5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
第1および/または第2の空間分解光学パラメータセットが、歯科対象物(103)の表面の位置にそれぞれ1つまたはそれ以上の光学パラメータを割り当てる請求項1~6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
第1の構造化光パターン(101-1)が第1の光源(105-1)を用いて生成され、第2の構造化光パターン(101-2)が第2の光源(105-2)を用いて生成される請求項1~7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
方法が口腔内スキャナによって実行される請求項1~8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
空間分解色決定のための色決定システム(100)であって、
第1の波長の光の第1の構造化光パターン(101-1)を歯科対象物(103)に投影するための第1の投影装置(107)と、
反射されたまたは送られた第1の構造化光パターン(101-1)に基づいて設定された第1の空間分解光学パラメータを検出する(S102)ための第1の検出装置(109)と、
第2の波長の光の第2の構造化光パターン(101-2)を歯科対象物(103)に投影する(S103)ための第2の投影装置(107)と、
反射されたまたは送られた第2の構造化光パターン(101-2)に基づいて設定された第2の空間分解光学パラメータを検出する(S104)ための第2の検出装置(109)と、
第1および第2の空間分解光学パラメータセットに基づいて、第3の波長の光における第3の空間分解光学パラメータセットを計算する(S105)ための計算装置(111)と
を備えるシステム。
【請求項11】
色決定システム(100)は、第1および第2の空間分解光学パラメータセットから第3の空間分解光学パラメータセットを外挿するように、および/または第1および第2の空間分解光学パラメータセットの間で第3の空間分解光学パラメータセットを内挿するように構成されている請求項10に記載の色決定システム(100)。
【請求項12】
色決定システム(100)は、第3の空間分解光学パラメータセットを得るために、第1および第2の空間分解光学パラメータセットに所定のスペクトルコースを調整するように構成されている請求項10または請求項11に記載の色決定システム(100)。
【請求項13】
色決定システム(100)は、第1の構造化光パターン(101-1)を生成するための第1の光源(105-1)と、第2の構造化光パターン(101-1)を生成するための第2の光源(105-1)とを備える請求項10~12のいずれかに記載の色決定システム(100)。
【請求項14】
請求項10~13のいずれかに記載の色決定システム(100)を備えた口腔内スキャナ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空間分解色決定のための方法および空間分解色決定のための色決定システムに関する。
【背景技術】
【0002】
口腔内スキャナを用いて歯の色測定を実現しようとする場合、一方では、口腔内スキャナ内の設置空間が限られており、例えば赤色用、緑色用、および青色用の少数の光源しかハウジング内に配置できないという問題がある。将来の光源がより強力でより小さくなっても、これは変わらない。光源の数が少ないほど、口腔内スキャナ内の必要な設置スペースは小さくなる。しかし、他方では、最も正確な色決定は、多くの波長で色測定値を得るために、それぞれが異なる光の波長を有する、できるだけ多くの光源を必要とする。
【0003】
例えば、分光放射計は、放出された光の異なる波長および振幅を測定する分光計である。しかしながら、この測定は、サンプル領域にわたって空間分解されず、装置に入る光全体に対して空間分解される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、本発明の技術的目的は、できるだけ少ない光源で、空間分解された正確な色決定を行うことである。
【0005】
この技術的目的は、独立請求項に記載の主題によって解決される。技術的に有利な実施形態は、従属請求項、明細書、および図面の主題である。
【0006】
第1の態様によれば、技術的目的は、空間分解色決定のための方法によって解決され、この方法は、第1の波長の光を有する第1の構造化光パターンを歯科対象物に投影することと、反射されたまたは送られた第1の構造化光パターンに基づいて第1の空間分解光学パラメータセットを検出することと、第2の波長の光を有する第2の構造化光パターンを歯科対象物に投影することと、反射されたまたは送られた第2の構造化光パターンに基づいて第2の空間分解光学パラメータセットを検出することと、第1および第2の空間分解光学パラメータセットに基づいて第3の波長の光における第3の空間分解光学パラメータセットを計算することの各工程を含む。本方法は、光の追加の波長における追加の構造化光パターンに基づいて実行されてもよく、第3の空間分解光学パラメータセットを決定する際の精度をさらに改善する。パラメータセットは、表面上の異なる位置における歯科対象物の光学特性を記述する1つ以上のパラメータを含んでもよい。
【0007】
本方法では、空間分解光学パラメータセットは、光の任意の波長で取得することができるというさらなる技術的利点を達成する。このようにして、完全な色スペクトルが、歯科対象物の表面上の各位置について計算され得る。空間分解光学パラメータセットを計算することによって、この光の波長での測定を省くことができるので、光源の数を減らすことができる。それにもかかわらず、空間分解色値は、高い精度で決定されることができる。
【0008】
本方法の技術的に有利な実施形態では、第3の空間分解光学パラメータセットは、第1および第2の空間分解光学パラメータセットから外挿される。これは、例えば、第3の空間分解光学パラメータセットが、簡単な方法で、かつ、少ない計算労力で決定され得るという技術的利点を達成する。これは、第3の空間分解光学パラメータセットが、第1および第2の光の波長の間隔の外側の小さい波長間隔で計算される場合に特に有利である。
【0009】
本方法の別の技術的に有利な実施形態では、第3の空間分解光学パラメータセットは、第1の空間分解光学パラメータセットと第2の空間分解光学パラメータセットとの間で内挿される。これは、例えば、第3の空間分解光学パラメータセットが、簡単な方法で、かつ、少ない計算労力で決定され得るという技術的利点を達成する。これは、光の第1の波長と第2の波長との間の間隔が小さい場合に特に有利である。
【0010】
本方法の技術的に有利な別の実施形態では、第3のパラメータセットは、第1および第2の空間分解光学パラメータセットに基づいて、適合プロセスによって決定される。適合プロセスによって、歯科対象物に対して予想される光の波長に依存する光学パラメータの一般的な関数関係が、第1および第2の波長の光における測定された光学パラメータに基づいて適合される。これにより、例えば、色値を高い精度で決定できるという技術的利点が達成される。
【0011】
本方法の別の技術的に有利な実施形態では、所定のスペクトルコースが、第3の空間分解光学パラメータセットを得るために、第1および/または第2の空間分解光学パラメータセットに適合される。例えば、第3の空間分解光学パラメータセットは、第1の空間分解光学パラメータセットおよび/または第2の空間分解光学パラメータセットに基づいて所定のスペクトルコースをシフトすることによって得ることができる。これにより、例えば、経験的に測定されたコースに基づいて歯科対象物の色値を決定し、調整することができるという技術的利点が達成される。
【0012】
本方法のさらに技術的に有利な実施形態では、所定のスペクトルコースは、光の波長に応じた反射率、吸収係数および/または散乱係数のコースである。これにより、例えば、特に適切な光学パラメータが色決定に使用されるという技術的利点が達成される。
【0013】
本方法の別の技術的に有利な実施形態では、第1および/または第2の空間分解光学パラメータセットは、歯科対象物の表面の位置にそれぞれ1つまたはそれ以上の光学パラメータを割り当てる。表面の位置における光学パラメータは、光が歯科対象物に少し浸透するパラメータも含む。これにより、例えば、第1および第2の波長の光における表面の各位置の光学パラメータを知ることができるという技術的利点が達成される。
【0014】
本方法の別の技術的に有利な実施形態では、第1の構造化光パターンは第1の光源で生成され、第2の構造化光パターンは第2の光源で生成される。光源は、発光ダイオードまたはレーザダイオードによって形成することができる。光源の帯域幅が狭いほど、それぞれの光の波長における光学パラメータをより正確に決定することができる。これにより、例えば、光学パラメータの正確な空間分解決定が達成されるという技術的利点が得られる。
【0015】
本方法の技術的に有利な別の実施形態では、本方法は口腔内スキャナによって実施される。これにより、例えば、歯の空間分解色値が高精度で決定することができるという技術的利点が達成される。
【0016】
第2の態様によれば、技術的目的は、空間分解色決定のための色決定システムであって、第1の波長の光を有する第1の構造化光パターンを歯科対象物に投影するための第1の投影装置、反射されたまたは送られた第1の構造化光パターンに基づいて第1の空間分解光学パラメータセットを検出するための第1の検出装置、第2の波長の光の第2の構造化光パターンを歯科対象物に投影するための第2の投影装置、反射されたまたは送られた第2の構造化光パターンに基づいて第2の空間分解光学パラメータセットを検出するための第2の検出装置、第1および第2の空間分解光学パラメータセットに基づいて第3の波長の光で第3の空間分解光学パラメータセットを計算するための計算装置を備える色決定システムによって解決される。第1および第2の投影装置は、単一の投影システム内に実装されてもよい。第1および第2の検出装置は、単一の検出システム内に実装されてもよい。色決定システムは、第1の態様による方法と同様の技術的利点を達成する。
【0017】
色決定システムの技術的に有利な実施形態では、色決定システムは、第1の空間分解光学パラメータセットおよび第2の空間分解光学パラメータセットから第3の空間分解光学パラメータセットを外挿するように、および/または、第1の空間分解光学パラメータセットと第2の空間分解光学パラメータセットとの間で第3の空間分解光学パラメータセットを内挿するように構成される。これにより、例えば、線形関係により、第3のパラメータセットを簡単かつ高速に決定できるという技術的利点も達成される。
【0018】
色決定システムの別の技術的に有利な実施形態では、色決定システムは、第3の空間分解光学パラメータセットを得るために、所定のスペクトルコースを第1および第2の空間分解光学パラメータセットに適合させるように構成されている。これにより、例えば、経験的に測定されたコースに基づいて歯科物体の色値を決定し、適合させることができるという技術的利点も達成される。
【0019】
色決定システムの別の技術的に有利な実施形態では、色決定システムは、第1の構造化光パターンを生成するための第1の光源と、第2の構造化光パターンを生成するための第2の光源とを備える。これにより、例えば、正確な空間分解色決定が達成されるという技術的利点も達成される。
【0020】
第3の態様によれば、技術的目的は、第2の態様による色決定システムを備えた口腔内スキャナによって解決される。これにより、歯のような口腔内の色値が空間分解されて正確に決定され得るという技術的利点が達成される。
【0021】
本発明の例示的な実施形態を図面に示し、以下でより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】歯科対象物の空間分解色決定のための色決定システムの概略図を示す。
図2】空間分解色決定のための方法のブロック図を示す。
図3】2つの測定値に基づく吸収係数の一般的なコースの補正の原理を示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1は、歯科用物体103の空間分解色決定を行う色決定システム100の概略図である。この色決定システム100は、空間周波数が異なり、光の波長が異なる構造化光パターン101-1、101-2を歯科対象物103に投影可能な構造化光投影装置としての投影装置107を含む。この投影装置107は、例えば、マイクロLCDディスプレイ、デジタルミラーデバイス(DMD)および適切な光学機器を含む。
【0024】
例えば、投影装置107は、空間周波数、すなわちストライプの距離が異なる構造化光パターン101-1を第1の波長の光で歯科対象物103に投影する。続いて、投影装置107は、第2の波長の光で異なる空間周波数を有する構造化光パターン101-1を歯科対象物103に投影する。この場合、第1の波長の光と第2の波長の光は異なる。
【0025】
例えば、構造化光パターン101-1、101-2を投影するために、色決定システム100は、それぞれの波長の光を有する2つの光源105-1、105-2を備えることができる。例えば、光源105-1および105-2は、所望の波長の光を有する光を放出するのに適した発光ダイオードまたはレーザダイオードによって形成されてもよい。一般に、さらなる波長の光を有するさらなる構造化光パターンを使用することもできる。
【0026】
これらの構造化光パターン101-1、101-2から、1つには、歯科対象物103の空間形状を決定することができる。この目的のために、歯科対象物103から反射されたまたは送られた構造化光パターン101-1および101-2は、CCDチップを有する電子カメラによって形成され得る検出装置109によって検出される。反射されたまたは送られた構造化光パターン101-1および101-2の検出画像は、適切なアルゴリズムによって評価され、反射されたまたは送られた構造化光パターンのコースから歯科対象物103の空間形状を計算することができる。この目的のために、入射と出射の間の角度で三角測量が実行される。
【0027】
このアルゴリズムはデジタルプロセッサ111上で実行される。歯科対象物103の空間形状について得られたデータは、デジタルメモリに保存することができる。
【0028】
一方、それぞれの構造化光パターン101-1、101-2の光に使用される光の波長において、歯科対象物103の表面の各位置で光学パラメータを決定することもできる。このことから、その波長の光における歯科対象物103の表面の各位置の光学特性を示す空間分解光学パラメータセットを得ることができる。
【0029】
送られたおよび反射された強度の振幅および位相変位の定量的かつ空間的に分解された測定によって、反射率、実効散乱係数および吸収係数のような、放射伝達理論を解くことによって、光の伝搬に関連するモデルベースの量を決定することができる。
【0030】
一般に、構造化光を用いた色測定の考え方は、材料の光学特性を空間分解して、すなわち照明された材料の表面にわたって計算され得るという事実に基づいている。この場合、ストライプパターンが材料に投影され、放出された光がカメラで測定される。その後、例えば放射伝達方程式を解くことに基づくモデル計算によって、材料の光学パラメータを計算することができる。
【0031】
例えば、光学パラメータは、歯科対象物103のある位置では、歯科対象物103の別の位置よりも高い。この光学パラメータは、例えば、構造化光パターン101-1および101-2の反射されたまたは送られたストライプの強度から、空間分解された方法で決定することができる。次に、光学パラメータセットは、例えば、空間分解された反射率、吸収係数および/または散乱係数を含む。
【0032】
第1の波長の光における第1の空間分解光学パラメータセットおよび第2の波長の光における第2の空間分解光学パラメータセットが既知である場合、第3の波長の光に対する第3の空間分解パラメータセットは、これらから計算することができる。この場合、さらなる光源105による測定を省略することができる。これにより、色決定
システム100内の光源105の数を減らすことができる。
【0033】
さらに、光源105の数を制限するために、測定される材料が既知である場合、すなわち例えば天然歯である場合、使用される光の波長を巧みに選択することができる。例えば、450nmおよび600nmの光の波長を有する2つの構造化光パターン101-1および101-2をまず使用して、450nmおよび600nmにおける空間分解されたパラメータセットのそれぞれの点間の第1の勾配を決定することができる。次に、光の波長が520nmと650nmのさらに2つの構造化光パターンを用いて、反射率曲線の特徴的な最小値を測定することができる。この場合、それぞれの構造化光パターン101を投影するために4つの光源105が使用される。
【0034】
適切な波長の光を有する光源105の正確な選択は、様々な方法で行うことができる。例えば、多数の修復材料または歯科材料の光学的特性を調べて、波長スペクトルの違いが予想される特徴的な光の波長を見つけることができる。次に、構造化光パターン101-1および101-2を、その見つかった波長の光で投影する。特徴的な光の波長は、検査された各修復材料または歯科材料についてデータベースに保存することができる。そして、使用する光源105の選択は、データベースと合理的なサポート点波長に基づいて行うことができる。
【0035】
また、できるだけ多くの人の生体内で反射スペクトルとして測定された光学データを評価し、特徴的な光の波長を見つけることができる。人が住んでいる地域によって、反射スペクトルの特徴的な光の波長、つまり平均的な歯の色は異なる。この場合、光源105の光の波長をそれぞれの地域に合わせることができる。
【0036】
このようにして、空間分解された光学パラメータセットから歯科対象物103の表面上の各位置について可能な限り連続的なスペクトルを計算するのに十分なスペクトル分解能、すなわち構造化光投影に使用される色についてのスペクトル点の数を有するので、空間分解された精密な色測定を達成することができる。次に、表面上の各位置に対するこの連続スペクトルをL*a*b*値に変換することができる。L*a*b*色空間(CIELAB、CIEL*a*b*、Lab色)は、すべての知覚可能な色を記述する。これは、明度値L*が色平面(a*、b*)に垂直な3次元色空間を使用する。
【0037】
まず、反射スペクトルからX、Y、Z値を計算し、そこから次に、L*a*b*を計算する。
【0038】
【数1】
ストライプパターン101-1および101-2をそれぞれ特定の光波長で使用すると、正確にこの波長の光について空間分解された光学パラメータセットが得られる。他の波長の光で十分に多くの計算を行うと、可視スペクトル全体にわたってさらに空間分解光学パラメータセットを得ることができる。こうして、それぞれの場所について、光学パラメータの特定の連続的なコースを得ることができる。
【0039】
このようにして、反射スペクトルが測定されたときにL*a*b*色値が得られ、白色(理想散乱体)および黒色(最小反射率)基準との直接比較においてさらに補正される。吸収係数と散乱係数が既知である場合、反射スペクトルを最初に算出し、次いで、それからL*a*b*色値を生成することは、絶対的に必要ではない。
【0040】
図2は、空間分解色決定方法のブロック図を示す。工程S101において、第1の波長の光を有する1つまたはそれ以上の第1の構造化光パターン101-1が歯科対象物103に投影される。ここで、構造化光パターン101-1の光の波長が変化しない限り、構造化光パターン101-1の異なるおよび変化する空間周波数を使用してもよい。歯科対象物103によって反射された第1の構造化光パターン101-1から、歯科対象物103の空間形状を決定することができる。この目的のために、アルゴリズムが、反射されたまたは送られた構造化光パターン101-1におけるストライプのコースを評価する。
【0041】
しかしながら、3次元形状は、浸透深度を最小限に抑えるために、可能な限り短い波長(青色光)で決定することもできる。さらに、例えば、非周期的なパターンを使用して、ストライプマッピングをより良好に行うことができる。
【0042】
工程S102において、歯科対象物103から反射されたまたは送られた第1の構造化光パターン101-1に基づいて、第1の空間分解光学パラメータセットがさらに決定される。第1の空間分解光学パラメータセットは、例えば、第1の波長の光における反射率、吸収係数、および/または散乱係数の空間分解値からなる。したがって、構造化光法は、歯科対象物103の空間形状を決定するだけでなく、第1の波長の光における歯科対象物103の表面上の光学パラメータの分布も決定する。歯科対象物103の表面上の各位置に少なくとも1つの光学パラメータを割り当てることができる。それぞれの位置に対するこれらの光学パラメータの全体は、第1の空間分解された光学パラメータセットに含まれる。
【0043】
工程S103において、1つまたはそれ以上の第2の構造化光パターン101-2も、第2の波長の光を用いて歯科対象物103に投影される。ここで、ストライプパターン101-2の光の波長が変化しない限り、構造化光パターン101-2の異なるおよび変化する空間周波数を使用することもできる。この場合、測定は、第1の波長の光とは異なる波長の光で行われる。歯科用物体103から反射されたまたは送られた第2の構造化光パターン101-2から、歯科対象物103の空間形状も決定することができる。
【0044】
工程S104において、歯科対象物103から反射されたまたは送られた第2の構造化光パターン101-2に基づいて、第2の空間分解光学パラメータセットが決定される。この空間分解光学パラメータセットから、第2の波長の光における歯科対象物103の表面上の光学特性のさらなる分布が得られる。第2の空間分解光学パラメータセットは、例えば、第1の空間分解光学パラメータセットに対応するように、第2の波長の光における反射率、吸収係数、および/または散乱係数の空間分解値を含む。それぞれの位置に対するこれらの光学パラメータの全体は、第2の空間分解光学パラメータセットに含まれる。
【0045】
工程S105において、第1および第2の空間分解光学パラメータセットに基づいて、第3の波長の光における第3の空間分解光学パラメータセットが計算される。第3の空間分解光学パラメータセットは、第3の波長の光で測定されたかのような光学パラメータを示す。しかし、これは計算されるので、この目的のための光源105の使用を省略することができる。第3の空間分解光学パラメータセットの計算方法は、計算装置111によって実行される。
【0046】
これは、例えば、波長範囲内において、第1の空間分解光学パラメータセットと第2の空間分解光学パラメータセットとの間で、第3の波長の光について内挿または外挿することにより、簡単な方法で行うことができる。例えば、内挿または外挿することにより、各波長値について対応する光学特性を計算することが可能である。内挿または外挿は、歯科対象物103の表面上の任意の位置に対して行うことができる。したがって、歯科対象物103の表面上の各位置について連続スペクトルを得ることができる。
【0047】
例えば、光の波長λ1における位置x1,y1,およびz1での吸収係数αx1,y1,z1,λ1と、光の波長λ2における同じ位置x1,y1,およびz1での吸収係数αx1,y1,z1λ2の一般的なコースは、位置x1,y1,およびz1における光の波長の関数として決定することができる。
【0048】
最も単純な場合、これは2つの測定された吸収係数αx1,y1,z1,λ1とαx1,y1,z1,λ2の間を内挿するか、または2つの測定された吸収係数αx1,y1,z1,λ1とαx1,y1,z1,λ2を外挿することを含む。これにより、位置x1,y1,およびz1における光の波長の関数としての一般的な線形関係αx1,y1,z1(λ)が確立される。
【0049】
この手順を歯科用物体103の表面上の全ての位置x,y,zについて行えば、第1および第2の空間分解光学パラメータセットから、所望の第3の波長の光それぞれにおける第3の空間分解光学パラメータセットが得られる。そして、この波長の光の光源105を省くことができ、それに応じて設置スペースが縮小される。
【0050】
図3は、光波長λ1におけるx1、y1、およびz1の位置での吸収係数αx1、y1、z1、λ1と、光波長λ2における同じ位置x1、y1、およびz1での吸収係数αx1、y1、z1、λ2の2つの測定値に基づいて、吸収係数の一般的なコースを補正する原理を示している。この方法により、歯科対象物103の表面の対応する位置について行った場合と同様に、任意の第3の光波長λ3において設定された第3の空間分解光学パラメータを得ることができる。
【0051】
この目的のために、吸収係数αgen(λ)の一般的な一般コースを、例えば、測定された2つの吸収係数αx1,y1,z1,λ1およびαx1,y1,z1,λ2に対して、例えば、測定された吸収係数αx1,y1,z1,λ1およびαx1,y1,z1,λ2から差を差し引くことによって、または適合プロセスによって適合される、歯に対して規定することができる。適合プロセスは、光学パラメータと光の波長との間の予想される関数関係に基づくことができる。適合プロセスにより、測定された吸収係数αx1,y1,z1,λ1およびαx1,y1,z1,λ2が適合関数にできるだけ近くなるように、関数関係の適合パラメータが変更される。
【0052】
例えば、所定のコースはまた、類似の歯科対象物103の以前に測定された経験的スペクトルに基づいてもよいし、歯科対象物103の表面の全ての位置において類似の形態でそのクラスの歯科対象物103について観察された主要な機能的コースに基づいてもよい。
【0053】
吸収係数αgen(λ)の一般的な経過から、任意の他の光の波長λ3における任意の吸収係数αx1,y1,z1,λ3を計算することができる。この目的のために、例えば、吸収係数αgen(λ)の一般的なコースは、補正されたコースαcorr(λ)が得られるように、以前に測定された2つの吸収係数αx1,y1,z1,λ1およびαx1,y1,z1,λ2に調整される。例えば、吸収係数αgen(λ)の一般的なコースは、2つの測定された吸収係数αx1,y1,z1,λ1およびαx1,y1,z1,λ2に基づいて、シフト、シアー、圧縮、回転、または他の方法で補正することができる。
【0054】
したがって、第1および第2の空間分解光学パラメータセットから、任意の数の第3の空間分解光学パラメータセットを任意の光の波長λ3において計算することができる。このようにして、歯の表面上の各点x,y,およびzについて、吸収係数αの完全な準連続スペクトルコースが得られ、表面上の各点について完全なスペクトル情報を得ることができる。この方法は、吸収係数αだけでなく、他の光学パラメータに対しても有効である。原理的には、光学パラメータのおおよそのコースが予め判っている対象物であれば、この方法により正確な色測定が可能になる。
【0055】
さらに、構造化光パターンの異なる空間周波数を使用する場合、歯科対象物103の異なる深度からの光学情報を得ることができる。この情報を用いて、反射率、吸収係数および/または散乱係数の決定をさらに改善することができる。
【0056】
この方法では、色特性の点測定が行われるだけでなく、例えば10×10mmの領域内の多数の点について、2次元の色測定が行われる。つまり、これらの各点の光学パラメータは、どの波長の光でも計算できる。このようにして、表面の各点について完全で連続的なカラースペクトルが得られ、その光学パラメータを任意の小さなスペクトル分解能で求めることができる。不完全な反射スペクトルの使用は必要ない。
【0057】
歯科用物体103としての歯の場合、エナメル質の半透明性は、吸収と散乱という固有の光学特性の1つの現れでしかないため、自動的に共同決定される。エナメル質の吸収と散乱の特性は、異なる空間周波数での深度分解測定に隠されている。そのため、半透明性とも呼ばれる透明性は、本質的に共に知られている。L*a*b*値に加え、半透明性も自然な歯科補綴物を実現するために使用することができる。
【0058】
もう1つの技術的な利点は、この方法では角度に依存した測定が可能なことである。人間の歯と歯肉では環境が異なるため、角度によって色の測定値が変化する。これを歯科対象物103の3次元データと組み合わせることで、空間データと色データの各対ごとに角度を決定することができる。このことから、歯の正確なデジタル空間画像が、色測定と関連して得られる。歯科対象物103の3次元トポグラフィを測定することにより、計算をさらに改善することができる。
【0059】
空間分解色決定の方法では、歯の光学的パラメータを口腔内で決定することができるだけでなく、ベニア、クラウン、ブリッジ、インレーまたはオンレーなどの歯科修復物の光学的パラメータを口腔外で決定することもできる。修復物や材料の認識は、データベースからの値との比較によっても行うことができる。
【0060】
空間分解色決定方法は、口腔内スキャナの交換可能なアタッチメントで行うことができる。光およびストライプパターンの生成は、口腔内スキャナの交換可能なアタッチメント内で行うこともできる。ストライプパターンの生成は、口腔内スキャナのアタッチメント内でマイクロLCDディスプレイを用いて行うことができる。反射されたまたは送られた構造化光パターンの画像のキャプチャは、口腔内スキャナのメインハウジング内のカメラチップによって行うことができる。
【0061】
本発明の個々の実施形態に関連して説明し示した全ての特徴は、それらの有益な効果を同時に実現するために、本発明の主題において異なる組み合わせで提供されてもよい。
【0062】
全ての方法工程は、それぞれの方法工程を実行するのに適した装置によって実施することができる。主題の特徴によって実行されるすべての機能は、方法の方法工程であり得る。
【0063】
本発明の保護範囲は特許請求の範囲によって与えられ、本明細書で説明され、または図面に示された特徴によって限定されるものではない。
【符号の説明】
【0064】
100 色決定システム
101 構造化光パターン
103 歯科対象物
105 光源
107 投影装置
109 検出装置
111 計算装置
図1
図2
図3
【外国語明細書】