(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024002017
(43)【公開日】2024-01-11
(54)【発明の名称】印刷方法、印刷装置、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
B41J 2/01 20060101AFI20231228BHJP
【FI】
B41J2/01 205
B41J2/01 213
B41J2/01 207
B41J2/01 401
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022100951
(22)【出願日】2022-06-23
(71)【出願人】
【識別番号】000137823
【氏名又は名称】株式会社ミマキエンジニアリング
(74)【代理人】
【識別番号】100166545
【弁理士】
【氏名又は名称】折坂 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100142653
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 直樹
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼木 聡志
(72)【発明者】
【氏名】小林 幸成
(72)【発明者】
【氏名】飽田 俊介
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EA08
2C056EB40
2C056EC11
2C056EC12
2C056EC31
2C056EC34
2C056EC74
2C056EC79
2C056ED05
2C056FA10
2C056HA44
(57)【要約】
【課題】不良ノズルの影響を適切に低減する。
【解決手段】印刷装置10を用いて印刷を行う印刷方法であって、印刷条件を設定する条件設定段階と、印刷条件に対する確認を行う条件確認段階と、印刷実行段階とを備え、印刷装置10は、1以上の整数値で設定される設定パス数に基づき、主走査動作を実行し、かつ、媒体の少なくとも一部に対して行われる主走査動作の回数を設定パス数よりも大きくするパス変調動作を実行可能であり、条件設定段階において、パス変調度を設定し、条件確認段階は、不良ノズル確認段階と、ノズルリカバリが可能であるか否かを確認するリカバリ確認段階と、ノズルリカバリが不可能な場合に新たな印刷条件を探索する段階であり、パス変調度を変化させることでノズルリカバリが可能になる印刷条件を探索する条件探索段階とを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷装置を用いて印刷を行う印刷方法であって、
印刷すべき画像を示す印刷データを取得するデータ取得段階と、
前記印刷装置で実行する印刷の条件である印刷条件を設定する条件設定段階と、
前記条件設定段階で設定された前記印刷条件に対する確認を行う条件確認段階と、
前記印刷データに基づく印刷の動作を前記印刷装置に実行させる印刷実行段階と
を備え、
前記印刷装置は、複数のノズルが並ぶノズル列を有するインクジェットヘッドを備え、印刷対象の媒体に対して相対的に所定の主走査方向へ移動しつつインクを吐出する主走査動作と、前記主走査方向と直交する副走査方向へ前記媒体に対して相対的に移動する副走査動作とを前記インクジェットヘッドに行わせることで、前記媒体に対する印刷を行い、1以上の整数値で設定される数である設定パス数に基づき、前記主走査動作を実行し、かつ、前記媒体の少なくとも一部に対して行われる前記主走査動作の回数を前記設定パス数よりも大きくするパス変調動作を実行可能であり、
前記条件設定段階において、前記印刷条件として、少なくとも、前記パス変調動作において前記媒体の少なくとも一部に対して行われる前記主走査動作の回数を変化させる変調の度合いを示すパス変調度を設定し、
前記条件確認段階は、
吐出特性が不良の前記ノズルである不良ノズルが前記インクジェットヘッドの前記ノズル列に存在しているか否かを確認する不良ノズル確認段階と、
前記不良ノズルが存在する場合に前記不良ノズルとは異なる前記ノズルを用いるノズルリカバリが可能であるか否かを確認するリカバリ確認段階と、
前記不良ノズルが存在し、かつ、前記ノズルリカバリが不可能な場合に新しい前記印刷条件である新たな印刷条件を探索する段階であり、前記パス変調度を変化させることで前記ノズルリカバリが可能になる前記印刷条件を探索する条件探索段階と
を備えることを特徴とする印刷方法。
【請求項2】
前記パス変調動作において、前記媒体の位置と対向する位置を前記インクジェットヘッドが通過する前記主走査動作の回数の平均値について、前記パス変調度に基づき、前記設定パス数以上で、前記設定パス数の2倍以下の範囲で変化させることを特徴とする請求項1に記載の印刷方法。
【請求項3】
前記パス変調度は、前記媒体の全体に対して前記設定パス数の前記主走査動作を行う場合に100%に対応する値になり、前記媒体の全体に対して前記設定パス数の2倍の前記主走査動作を行う場合に50%に対応する値になるパラメータであり、
前記条件探索段階において、前記100%に対応する値で2%以下になる刻み幅で前記パス変調度を変化させて、前記ノズルリカバリが可能になる前記印刷条件を探索することを特徴とする請求項1に記載の印刷方法。
【請求項4】
前記条件探索段階において、前記100%に対応する値以下であり、かつ、前記50%に対応する値以上の範囲で、前記パス変調度を変化させることを特徴とする請求項3に記載の印刷方法。
【請求項5】
前記条件設定段階において、1回の前記副走査動作で前記媒体に対して相対的に前記インクジェットヘッドを移動させる移動量である副走査移動量について、前記パス変調度に応じて設定し、
前記条件探索段階において、前記パス変調度を変化させることで、前記パス変調度に対応する前記副走査移動量を変化させて、前記ノズルリカバリが可能になる前記印刷条件を探索することを特徴とする請求項1に記載の印刷方法。
【請求項6】
前記条件探索段階において、前記ノズルリカバリが可能になる前記新たな印刷条件が見つかった場合、
前記新たな印刷条件を用いて印刷を実行するか、
前記新たな印刷条件を用いずに、前記ノズルリカバリを行わずに印刷を実行するか
のいずれかをユーザに選択させ、
前記印刷実行段階において、前記条件探索段階で受け付ける前記ユーザの選択に基づき、前記印刷データに基づく印刷の動作を前記印刷装置に実行させることを特徴とする請求項1に記載の印刷方法。
【請求項7】
前記条件探索段階において、前記ノズルリカバリが可能になる前記新たな印刷条件が見つかった場合、前記新たな印刷条件について、予め登録されている登録条件に合致しているか否かを更に判断し、合致している場合、前記新たな印刷条件を用いて印刷を実行するか否かの選択を前記ユーザに行わせることなく、
前記印刷実行段階において、前記新たな印刷条件を用いて、前記印刷データに基づく印刷の動作を前記印刷装置に実行させることを特徴とする請求項6に記載の印刷方法。
【請求項8】
前記条件探索段階において、前記新たな印刷条件について、印刷を中止すべき条件として登録されている印刷中止条件に合致しているか否かを判断し、合致している場合、印刷の動作を中止することを特徴とする請求項1に記載の印刷方法。
【請求項9】
前記条件探索段階において、前記設定パス数と、前記主走査動作において前記媒体に対して相対的に前記インクジェットヘッドを移動させる速度である主走査速度とを更に変化させて、前記ノズルリカバリが可能になる前記印刷条件を探索することを特徴とする請求項1に記載の印刷方法。
【請求項10】
所定の条件下で、前記条件探索段階において、ユーザに対し、前記主走査動作において前記媒体に対して相対的に前記インクジェットヘッドを移動させる速度である主走査速度の変更を促すことを特徴とする請求項1に記載の印刷方法。
【請求項11】
所定の条件下で、ユーザに対し、前記設定パス数の変更を促すことを特徴とする請求項1に記載の印刷方法。
【請求項12】
印刷を行う印刷装置であって、
複数のノズルが並ぶノズル列を有するインクジェットヘッドと、
印刷対象の媒体に対して相対的に所定の主走査方向へ移動しつつインクを吐出する主走査動作を前記インクジェットヘッドに行わせる主走査駆動部と、
前記主走査方向と直交する副走査方向へ前記媒体に対して相対的に移動する副走査動作を前記インクジェットヘッドに行わせる副走査駆動部と、
前記インクジェットヘッド、前記主走査駆動部、及び前記副走査駆動部の動作を制御する制御部と
を備え、
前記主走査動作と、前記副走査動作とを前記インクジェットヘッドに行わせることで、前記媒体に対する印刷を行い、1以上の整数値で設定される数である設定パス数に基づき、前記主走査動作を実行し、かつ、前記媒体の少なくとも一部に対して行われる前記主走査動作の回数を前記設定パス数よりも大きくするパス変調動作を実行可能であり、
前記制御部は、
印刷すべき画像を示す印刷データを取得するデータ取得処理と、
前記印刷装置で実行する印刷の条件である印刷条件を設定する条件設定処理と、
前記条件設定処理で設定された前記印刷条件に対する確認を行う条件確認処理と、
前記印刷データに基づく印刷の動作を前記印刷装置に実行させる印刷実行処理と
を実行し、
前記条件設定処理において、前記印刷条件として、少なくとも、前記パス変調動作において前記媒体の少なくとも一部に対して行われる前記主走査動作の回数を変化させる変調の度合いを示すパス変調度を設定し、
前記条件確認処理において、前記制御部は、
吐出特性が不良の前記ノズルである不良ノズルが前記インクジェットヘッドの前記ノズル列に存在しているか否かを確認する不良ノズル確認処理と、
前記不良ノズルが存在する場合に前記不良ノズルとは異なる前記ノズルを用いるノズルリカバリが可能であるか否かを確認するリカバリ確認処理と、
前記不良ノズルが存在し、かつ、前記ノズルリカバリが不可能な場合に新たな前記印刷条件を探索する処理であり、前記パス変調度を変化させることで前記ノズルリカバリが可能になる前記印刷条件を探索する条件探索処理と
を実行することを特徴とする印刷装置。
【請求項13】
印刷を行う印刷装置の動作を制御するプログラムであって、
印刷すべき画像を示す印刷データを取得するデータ取得処理と、
前記印刷装置で実行する印刷の条件である印刷条件を設定する条件設定処理と、
前記条件設定処理で設定された前記印刷条件に対する確認を行う条件確認処理と、
前記印刷データに基づく印刷の動作を前記印刷装置に実行させる印刷実行処理と
を前記印刷装置に行わせ、
前記印刷装置は、複数のノズルが並ぶノズル列を有するインクジェットヘッドを備え、印刷対象の媒体に対して相対的に所定の主走査方向へ移動しつつインクを吐出する主走査動作と、前記主走査方向と直交する副走査方向へ前記媒体に対して相対的に移動する副走査動作とを前記インクジェットヘッドに行わせることで、前記媒体に対する印刷を行い、1以上の整数値で設定される数である設定パス数に基づき、前記主走査動作を実行し、かつ、前記媒体の少なくとも一部に対して行われる前記主走査動作の回数を前記設定パス数よりも大きくするパス変調動作を実行可能であり、
前記条件設定処理において、前記印刷条件として、少なくとも、前記パス変調動作において前記媒体の少なくとも一部に対して行われる前記主走査動作の回数を変化させる変調の度合いを示すパス変調度を設定し、
前記条件確認処理において、
吐出特性が不良の前記ノズルである不良ノズルが前記インクジェットヘッドの前記ノズル列に存在しているか否かを確認する不良ノズル確認処理と、
前記不良ノズルが存在する場合に前記不良ノズルとは異なる前記ノズルを用いるノズルリカバリが可能であるか否かを確認するリカバリ確認処理と、
前記不良ノズルが存在し、かつ、前記ノズルリカバリが不可能な場合に新たな前記印刷条件を探索する処理であり、前記パス変調度を変化させることで前記ノズルリカバリが可能になる前記印刷条件を探索する条件探索処理と
を前記印刷装置に行わせることを特徴とするプログラム。
【請求項14】
印刷装置を用いて印刷を行う印刷方法であって、
印刷すべき画像を示す印刷データを取得するデータ取得段階と、
前記印刷装置で実行する印刷の条件である印刷条件を設定する条件設定段階と、
前記条件設定段階で設定された前記印刷条件に対する確認を行う条件確認段階と、
前記印刷データに基づく印刷の動作を前記印刷装置に実行させる印刷実行段階と
を備え、
前記印刷装置は、複数のノズルが並ぶノズル列を有するインクジェットヘッドを備え、印刷対象の媒体に対して相対的に所定の主走査方向へ移動しつつインクを吐出する主走査動作と、前記主走査方向と直交する副走査方向へ前記媒体に対して相対的に移動する副走査動作とを前記インクジェットヘッドに行わせることで、前記媒体に対する印刷を行い、
前記条件確認段階は、
吐出特性が不良の前記ノズルである不良ノズルが前記インクジェットヘッドの前記ノズル列に存在しているか否かを確認する不良ノズル確認段階と、
前記不良ノズルが存在する場合に前記不良ノズルとは異なる前記ノズルを用いるノズルリカバリが可能であるか否かを確認するリカバリ確認段階と、
前記不良ノズルが存在し、かつ、前記ノズルリカバリが不可能な場合に新たな前記印刷条件を探索する段階であり、1回の前記副走査動作で前記媒体に対して相対的に前記インクジェットヘッドを移動させる移動量である副走査移動量を変化させることで前記ノズルリカバリが可能になる前記印刷条件を探索する条件探索段階と
を備えることを特徴とする印刷方法。
【請求項15】
前記印刷装置は、1以上の整数値で設定される数である設定パス数に基づき、前記主走査動作を実行し、
前記副走査方向における前記ノズル列の幅であるノズル列長を前記設定パス数で除した値をパス幅と定義した場合、
前記条件探索段階において、前記パス幅の0.5倍以上、1倍以下の範囲で、前記副走査移動量を変化させることを特徴とする請求項14に記載の印刷方法。
【請求項16】
印刷を行う印刷装置であって、
複数のノズルが並ぶノズル列を有するインクジェットヘッドと、
印刷対象の媒体に対して相対的に所定の主走査方向へ移動しつつインクを吐出する主走査動作を前記インクジェットヘッドに行わせる主走査駆動部と、
前記主走査方向と直交する副走査方向へ前記媒体に対して相対的に移動する副走査動作を前記インクジェットヘッドに行わせる副走査駆動部と、
前記インクジェットヘッド、前記主走査駆動部、及び前記副走査駆動部の動作を制御する制御部と
を備え、
前記主走査動作と、前記副走査動作とを前記インクジェットヘッドに行わせることで、前記媒体に対する印刷を行い、
前記制御部は、
印刷すべき画像を示す印刷データを取得するデータ取得処理と、
前記印刷装置で実行する印刷の条件である印刷条件を設定する条件設定処理と、
前記条件設定処理で設定された前記印刷条件に対する確認を行う条件確認処理と、
前記印刷データに基づく印刷の動作を前記印刷装置に実行させる印刷実行処理と
を実行し、
前記条件確認処理において、前記制御部は、
吐出特性が不良の前記ノズルである不良ノズルが前記インクジェットヘッドの前記ノズル列に存在しているか否かを確認する不良ノズル確認処理と、
前記不良ノズルが存在する場合に前記不良ノズルとは異なる前記ノズルを用いるノズルリカバリが可能であるか否かを確認するリカバリ確認処理と、
前記不良ノズルが存在し、かつ、前記ノズルリカバリが不可能な場合に新たな前記印刷条件を探索する処理であり、1回の前記副走査動作で前記媒体に対して相対的に前記インクジェットヘッドを移動させる移動量である副走査移動量を変化させることで前記ノズルリカバリが可能になる前記印刷条件を探索する条件探索処理と
を実行することを特徴とする印刷装置。
【請求項17】
印刷を行う印刷装置の動作を制御するプログラムであって、
印刷すべき画像を示す印刷データを取得するデータ取得処理と、
前記印刷装置で実行する印刷の条件である印刷条件を設定する条件設定処理と、
前記条件設定処理で設定された前記印刷条件に対する確認を行う条件確認処理と、
前記印刷データに基づく印刷の動作を前記印刷装置に実行させる印刷実行処理と
を前記印刷装置に行わせ、
前記印刷装置は、複数のノズルが並ぶノズル列を有するインクジェットヘッドを備え、印刷対象の媒体に対して相対的に所定の主走査方向へ移動しつつインクを吐出する主走査動作と、前記主走査方向と直交する副走査方向へ前記媒体に対して相対的に移動する副走査動作とを前記インクジェットヘッドに行わせることで、前記媒体に対する印刷を行い、
前記条件確認処理において、
吐出特性が不良の前記ノズルである不良ノズルが前記インクジェットヘッドの前記ノズル列に存在しているか否かを確認する不良ノズル確認処理と、
前記不良ノズルが存在する場合に前記不良ノズルとは異なる前記ノズルを用いるノズルリカバリが可能であるか否かを確認するリカバリ確認処理と、
前記不良ノズルが存在し、かつ、前記ノズルリカバリが不可能な場合に新たな前記印刷条件を探索する処理であり、1回の前記副走査動作で前記媒体に対して相対的に前記インクジェットヘッドを移動させる移動量である副走査移動量を変化させることで前記ノズルリカバリが可能になる前記印刷条件を探索する条件探索処理と
を前記印刷装置に行わせることを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷方法、印刷装置、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、インクジェット方針で印刷を行う印刷装置であるインクジェットプリンタが広く用いられている。また、インクジェットプリンタのインクジェットヘッドに不良ノズルが存在している場合に関し、不良ノズルの影響を低減させるための方法が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
不良ノズルの影響を低減させるためには、例えば、本来は不要ノズルでインクを吐出すべきであったインクの吐出位置に対して、他のノズル(以下、代替ノズル)で代わりにインクを吐出する。しかし、この場合、例えば代替ノズルも不良ノズルであると、不良ノズルの影響を適切に低減できなくなり、所望の品質での印刷を行えなくなる場合がある。そのため、従来、不良ノズルの影響をより適切に低減することが望まれていた。そこで、本発明は、上記の課題を解決できる印刷方法、印刷装置、及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
不良ノズルの代わりに代替ノズルでインクを吐出する方法(以下、ノズルリカバリという)では、例えば、印刷の解像度やパス数等の印刷条件(プリント条件)に応じて、代替ノズルとして使用可能なノズルが変化する。そのため、所定の印刷条件において代替ノズルも不良ノズルになっていたとしても、印刷条件を変更すれば、正常なノズルを代替ノズルとして選択できる可能性がある。しかし、印刷の解像度やパス数等の印刷条件を変更した場合、印刷の品質や印刷速度が大きく変化することが考えられる。
【0006】
より具体的に、印刷の解像度は、印刷の品質への影響が極めて大きな印刷の条件である。そのため、印刷の解像度を変更した場合、印刷の品質が大きく変化することになる。また、例えば、印刷の品質が低下しないように印刷の解像度を高めることで、印刷速度が大幅に低下すること等も考えられる。更に、印刷の解像度を変更する場合、印刷装置へ供給する印刷データ(ジョブ)の作り直しが必要になること等も考えられる。そして、この場合、印刷物を生産する工程において、大きな手戻りが発生することになる。また、印刷の条件において、パス数としては、通常、印刷装置の構成に応じて予め用意されている複数種類の整数値から選ばれる値が用いられる。そのため、パス数を変更した場合、通常、印刷の品質が不連続に大きく変化することになる。そのため、パス数を変更する場合についても、代替ノズルを変更するために生じる印刷の品質の変化が過度に大きくなると考えることができる。また、この場合、印刷の品質の低下を防止するためにパス数を大きくすることで、印刷速度が大幅に低下すること等も考えられる。
【0007】
また、不良ノズルの影響を抑えるためには、例えば、印刷装置において印刷に使用するインクジェットヘッドを選択する機能を使用して、不良ノズルが存在するインクジェットヘッド以外のインクジェットヘッドのみで印刷を行うこと等も考えられる。しかし、この場合、使用するインクジェットヘッドの数が少なくなることで、印刷速度が大幅に低下することが考えられる。また、印刷装置の構成によっては、例えば、印刷データの作り直しが必要になること等も考えられる。また、不良ノズルへの対策としては、例えば、不良ノズルが存在しているインクジェットヘッドを交換すること等も考えられる。しかし、この場合、ヘッド交換のための作業が発生することや、印刷装置のメーカによるサービス対応待ちで生産が一時停止すること等が考えられる。
【0008】
これに対し、本願の発明者は、例えばミマキエンジニアリング社製の印刷装置で用いられているMAPS(Mimaki Advanced Pass System)機能のようなパス変調動作の特性を利用することで、より適切に不良ノズルの影響を低減し得ることを見出した。この場合、パス変調動作については、例えば、1以上の整数値で設定されるパス数(設定パス数)に基づいて主走査動作(スキャン)を行い、かつ、印刷対象の媒体(メディア)の少なくとも一部に対して行われる主走査動作の回数を設定パス数よりも大きくする動作等と考えることができる。この場合、例えば、設定パス数や解像度を変更することなく、代替ノズルとして用いるノズルを変更することが可能になる。また、これにより、例えば、当初の印刷条件で代替ノズルになるノズルが不良ノズルの場合等にも、印刷の品質の大きな変化や印刷速度の大幅な低下を適切に防止しつつ、ノズルリカバリが可能になる新たな印刷条件を用いて、不良ノズルの影響を適切に低減することができる。
【0009】
また、本願の発明者は、更なる鋭意研究により、このような効果を得るために必要な特徴を見出し、本発明に至った。上記の課題を解決するために、本発明は、印刷装置を用いて印刷を行う印刷方法であって、印刷すべき画像を示す印刷データを取得するデータ取得段階と、前記印刷装置で実行する印刷の条件である印刷条件を設定する条件設定段階と、前記条件設定段階で設定された前記印刷条件に対する確認を行う条件確認段階と、前記印刷データに基づく印刷の動作を前記印刷装置に実行させる印刷実行段階とを備え、前記印刷装置は、複数のノズルが並ぶノズル列を有するインクジェットヘッドを備え、印刷対象の媒体に対して相対的に所定の主走査方向へ移動しつつインクを吐出する主走査動作と、前記主走査方向と直交する副走査方向へ前記媒体に対して相対的に移動する副走査動作とを前記インクジェットヘッドに行わせることで、前記媒体に対する印刷を行い、1以上の整数値で設定される数である設定パス数に基づき、前記主走査動作を実行し、かつ、前記媒体の少なくとも一部に対して行われる前記主走査動作の回数を前記設定パス数よりも大きくするパス変調動作を実行可能であり、前記条件設定段階において、前記印刷条件として、少なくとも、前記パス変調動作において前記媒体の少なくとも一部に対して行われる前記主走査動作の回数を変化させる変調の度合いを示すパス変調度を設定し、前記条件確認段階は、吐出特性が不良の前記ノズルである不良ノズルが前記インクジェットヘッドの前記ノズル列に存在しているか否かを確認する不良ノズル確認段階と、前記不良ノズルが存在する場合に前記不良ノズルとは異なる前記ノズルを用いるノズルリカバリが可能であるか否かを確認するリカバリ確認段階と、前記不良ノズルが存在し、かつ、前記ノズルリカバリが不可能な場合に新しい前記印刷条件である新たな印刷条件を探索する段階であり、前記パス変調度を変化させることで前記ノズルリカバリが可能になる前記印刷条件を探索する条件探索段階とを備える。
【0010】
このように構成した場合、例えば、条件探索段階においてパス変調度を変化させることで、不良ノズルの代替ノズルとして使用可能なノズルを適切に変化させることができる。また、これにより、例えば、条件設定段階で設定される当初の印刷条件ではノズルリカバリができない場合であっても、ノズルリカバリが可能になる新たな印刷条件を適切に探索することができる。更に、この場合、パス変調度の変更を行うことで、例えば、ノズルリカバリが可能になる新たな印刷条件として、設定パス数や印刷の解像度を変化させない条件を用いることが可能になる。また、これにより、例えば、印刷の品質の大きな変化や印刷速度の大幅な低下を適切に防止しつつ、不良ノズルの影響を適切に低減することができる。条件探索段階において、パス変調度については、例えば、印刷の品質が向上する方向へ変化させることが好ましい。このように構成すれば、例えば、ユーザが所望する印刷の品質を保持しつつ、新たな印刷の条件を適切に探索することができる。また、ユーザが求める条件等に応じて、パス変調度の変化の方向については、例えば、印刷速度が低下する方向にすること等も考えられる。
【0011】
この構成において、媒体の位置(各位置)に対して行う主走査動作の回数については、例えば、媒体の位置と対向する位置をインクジェットヘッドが通過する主走査動作の回数等と考えることができる。また、パス変調動作において、パス変調度を変化させた場合、媒体において、例えば、設定パス数よりも多くの回数の主走査動作が行われる領域が変化する。そして、この場合、例えば、主走査動作の回数の平均値が変化すると考えることもできる。そのため、パス変調度については、例えば、主走査動作の回数の平均値に対応付けられるパラメータ等と考えることもできる。また、この場合、主走査動作の回数の平均値については、例えば、整数値で指定される設定パス数と、パス変調度とに基づき、小数単位で変化すると考えることができる。また、この場合、パス変調動作において、例えば、主走査動作の回数の平均値について、パス変調度に基づき、設定パス数以上で、設定パス数の2倍以下の範囲で変化させることが考えられる。このように構成すれば、例えば、パス変調動作を適切に行うことができる。また、このような範囲でパス変調度を変更することで、例えば、ノズルリカバリが可能になる新たな印刷条件を適切に探索することができる。
【0012】
また、この構成において、パス変調度は、例えば、媒体の全体に対して設定パス数の主走査動作を行う場合に100%に対応する値になり、媒体の全体に対して設定パス数の2倍の主走査動作を行う場合に50%に対応する値になるパラメータである。この場合、条件探索段階では、例えば、100%に対応する値で2%以下になる刻み幅でパス変調度を変化させて、ノズルリカバリが可能になる印刷条件を探索する。このように構成すれば、例えば、印刷の品質や印刷速度を急激に変化させない刻み幅で、パス変調度を適切に変化させることができる。パス変調度を変化させる刻み幅は、例えば0.5~2%程度であってよい。また、この刻み幅については、例えば、1%程度にすることが好ましい。また、条件探索段階では、パス変調度について、例えば、上記の100%に対応する値以下であり、かつ、50%に対応する値以上の範囲で変化させることが考えられる。このように構成すれば、例えば、パス変調動作の条件を適切に変化させることができる。また、これにより、例えば、ノズルリカバリが可能になる新たな印刷条件を適切に探索することができる。
【0013】
また、この構成において、条件設定段階では、例えば、パス変調度に応じて副走査移動量を設定する。この場合、副走査移動量については、例えば、1回の副走査動作で媒体に対して相対的にインクジェットヘッドを移動させる移動量等と考えることができる。また、この場合、条件探索段階では、例えば、パス変調度を変化させることで、パス変調度に対応する副走査移動量を変化させて、ノズルリカバリが可能になる印刷条件を探索する。このように構成すれば、例えば、ノズルリカバリが可能になる新たな印刷条件を適切に探索することができる。
【0014】
また、条件探索段階において、ノズルリカバリが可能になる新たな印刷条件が見つかった場合、例えば、新たな印刷条件を採用するか否かについて、ユーザに選択させてもよい。この場合、例えば、新たな印刷条件を用いて印刷を実行するか、新たな印刷条件を用いずに、ノズルリカバリを行わずに印刷を実行するかのいずれかをユーザに選択させることが考えられる。また、印刷実行段階では、例えば、条件探索段階で受け付けるユーザの選択に基づき、印刷データに基づく印刷の動作を印刷装置に実行させる。このように構成すれば、例えば、ユーザの希望に合わせた印刷条件での印刷の動作を適切に実行することができる。
【0015】
また、この場合、例えば所定の条件下で、ユーザによる選択を省略して、自動的に新たな印刷条件を採用すること等も考えられる。より具体的に、例えば、条件探索段階において、ノズルリカバリが可能になる新たな印刷条件が見つかった場合、新たな印刷条件について、予め登録されている登録条件に合致しているか否かを更に判断する。そして、合致している場合には、新たな印刷条件を用いて印刷を実行するか否かの選択をユーザに行わせることなく、印刷実行段階において、新たな印刷条件を用いて、印刷データに基づく印刷の動作を印刷装置に実行させる。このように構成すれば、例えば、新たな印刷条件での印刷の動作をより効率的に実行することができる。また、このような自動的な印刷の動作の継続を行うか否かについては、例えば、印刷装置に対して設定する動作モードに応じて切り替えてもよい。この場合、例えば、所定の動作モードである場合に、上記のようにして、自動的に新たな印刷条件を採用する。また、印刷装置の構成等によっては、例えば所定の動作モードにおいて、常にユーザによる選択を省略して、自動的に新たな印刷条件を採用してもよい。
【0016】
また、印刷に求められる品質や印刷の目的等によっては、印刷条件の変更によって生じる印刷の品質の変化や印刷速度の低下について、より厳しい基準での判断が必要になる場合もある。また、その結果、ノズルリカバリが可能になる新たな印刷条件が見つかった場合でも、新たな印刷条件を採用しないで、印刷の動作を中止(キャンセル)することが望ましい場合もある。そのため、条件探索段階では、新たな印刷条件について、例えば、印刷を中止すべき条件として登録されている印刷中止条件に合致しているか否かを判断してもよい。そして、合致している場合には、例えば、印刷の動作を中止することが考えられる。このように構成すれば、例えば、所定の条件下で印刷の動作を適切に中止することができる。印刷中止条件としては、例えば、ユーザが求める印刷の品質や印刷速度等に応じて、印刷の品質が所定の許容範囲よりも変化することや、印刷時間が所定の割合よりも増加すること等に対応する条件を登録しておくことが考えられる。
【0017】
また、印刷の目的等によっては、条件探索段階において、パス変調度以外の条件も更に変化させて、新たな印刷条件を検索してもよい。より具体的に、条件探索段階では、例えば、設定パス数及び主走査速度を更に変化させて、ノズルリカバリが可能になる印刷条件を探索することが考えられる。この場合、主走査速度については、例えば、主走査動作において媒体に対して相対的にインクジェットヘッドを移動させる速度(スキャンスピード)等と考えることができる。このように構成すれば、例えば、ノズルリカバリが可能になる印刷条件について、より多くの条件の中から探索することができる。また、これにより、例えば、印刷の目的等に応じて、より好ましい新たな印刷条件を適切に探索することができる。この場合、新たな印刷条件として、例えば、印刷速度の低下を最も少なくして印刷を継続できる条件等を探索すること等が考えられる。
【0018】
また、設定パス数や主走査速度の変更については、自動的に変更するのではなく、例えばダイアログ表示等により、ユーザに変更を促すこと等も考えられる。この場合、所定の条件下で、例えば、条件探索段階において、ユーザに対し、設定パス数の変更を促すことが考えられる。また、同様に、所定の条件下で、例えば、条件探索段階において、ユーザに対し、主走査速度の変更を促すことが考えられる。このように構成した場合も、例えば、必要に応じて、ノズルリカバリが可能になる印刷条件について、より多くの条件の中から探索することが可能になる。また、この場合、所定の条件として、例えば、新たな条件が見つからないことや、新たな条件での印刷速度の低下が大きいこと等に対応する条件を用いることが考えられる。
【0019】
また、本発明の特徴については、例えば、副走査移動量に着目して考えることもできる。この場合、条件探索段階では、例えば、副走査移動量を変化させることで、ノズルリカバリが可能になる印刷条件を探索する。このように構成した場合も、例えば、ノズルリカバリが可能になる新たな印刷条件を適切に探索することができる。また、この場合も、印刷装置は、例えば、1以上の整数値で設定される設定パス数に基づき、主走査動作を実行する。また、副走査方向におけるノズル列の幅であるノズル列長を設定パス数で除した値をパス幅と定義した場合、条件探索段階では、例えば、パス幅の0.5倍以上、1倍以下の範囲で、副走査移動量を変化させる。このように構成すれば、例えば、ノズルリカバリが可能になる新たな印刷条件をより適切に探索することができる。また、これにより、例えば、不良ノズルの影響を適切に低減することができる。また、本発明の構成として、例えば、上記に対応する印刷装置やプログラムの構成を考えることもできる。この場合も、例えば、上記と同様の効果を得ることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、例えば、不良ノズルの影響を適切に低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の一実施形態に係る印刷方法を実行する印刷装置10について説明をする図である。
図1(a)は、印刷装置10の要部の構成の一例を示す。
図1(b)は、印刷装置10におけるヘッド部12の構成の一例を示す。
図1(c)は、印刷装置10における制御部22の機能的な構成の一例を示す。
【
図2】設定パス数を1にする場合の印刷の動作の例を示す図である。
図2(a)は、設定パス数を1とし、MAPS速度を100%とする場合の印刷の動作の例を示す。
図2(b)は、設定パス数を1とし、MAPS速度を75%とする場合の印刷の動作の例を示す。
【
図3】設定パス数を2にする場合の印刷の動作の例を示す図である。
図3(a)は、設定パス数を2とし、MAPS速度を100%とする場合の印刷の動作の例を示す。
図3(b)は、設定パス数を2とし、MAPS速度を75%とする場合の印刷の動作の例を示す。
【
図4】設定パス数を2にする場合の印刷の動作の例を示す図である。
図4(a)は、設定パス数を2とし、MAPS速度を66%とする場合の印刷の動作の例を示す。
図4(b)は、設定パス数を2とし、MAPS速度を100%とする場合の印刷の動作の変形例を示す。
【
図5】設定パス数を4とし、MAPS速度を100%とする場合の印刷の動作の例を示す図である。
【
図6】印刷装置10を用いて行う印刷の動作の一例を示すフローチャートである。
【
図7】ステップS106で行う詳細な動作の一例を示すフローチャートである。
【
図8】ステップS106の動作の中でユーザに表示する情報の一例を示す図である。
図8(a)、(b)は、ユーザに選択を求めるダイアログの一例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明に係る実施形態を、図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る印刷方法を実行する印刷装置10について説明をする図である。
図1(a)は、印刷装置10の要部の構成の一例を示す。
図1(b)は、印刷装置10におけるヘッド部12の構成の一例を示す。
図1(c)は、印刷装置10における制御部22の機能的な構成の一例を示す。以下に説明をする点を除き、印刷装置10は、公知の印刷装置と同一又は同様の特徴を有してよい。また、印刷装置10は、図示した構成以外に、公知の印刷装置と同一又は同様の構成を更に備えてもよい。例えば、印刷装置10は、印刷対象の媒体(メディア)50に対してインクを定着するための定着手段等を更に備えてよい。定着手段としては、印刷装置10において使用するインクの種類に応じて、例えば、ヒータや紫外線光源等を用いることが考えられる。
【0023】
本例において、印刷装置10は、媒体50に対してインクジェット方式でカラー印刷を行うインクジェットプリンタであり、ヘッド部12、プラテン14、主走査駆動部16、副走査駆動部18、入出力部20、及び制御部22を備える。ヘッド部12は、媒体50に対してインクを吐出するインクジェットヘッド102を有する部分である。また、本例において、ヘッド部12は、
図1(b)において符号102y~kを付して区別して示すように、複数のインクジェットヘッド102y~kを有する。この場合、インクジェットヘッド102yは、イエロー色(Y色)のインクを吐出する。インクジェットヘッド102mは、マゼンタ色(M色)のインクを吐出する。インクジェットヘッド102cは、シアン色(C色)のインクを吐出する。インクジェットヘッド102kは、ブラック色(K色)のインクを吐出する。
【0024】
また、本例において、複数のインクジェットヘッド102y~kは、印刷装置10において設定される所定の副走査方向(図中のX方向)における位置を揃えて、副走査方向と直交する主走査方向(図中のY方向)へ並べて配置される。また、以下においては、説明の便宜上、インクジェットヘッド102y~kを区別する必要がない特徴について、単に、インクジェットヘッド102の特徴として、説明をする。例えば、本例において、インクジェットヘッド102は、複数のノズルが並ぶノズル列を有する。また、ノズル列において、複数のノズルは、副走査方向における位置を互いにずらして並ぶ。この場合、ノズル列について、例えば、副走査方向と平行なノズル列方向へ複数のノズルが並ぶ列等と考えることができる。また、インクジェットヘッド102y~kの並べ方については、上記と異ならせてもよい。例えば、一部のインクジェットヘッド102について、他のインクジェットヘッド102と副走査方向における位置を異ならせてもよい。
【0025】
プラテン14は、ヘッド部12と対向する位置に媒体50を保持する台状部材である。主走査駆動部16は、ヘッド部12におけるインクジェットヘッド102に主走査動作(スキャン)を行わせる駆動部である。主走査動作については、例えば、媒体50に対して相対的に主走査方向へ移動しつつインクを吐出する動作等と考えることができる。また、副走査駆動部18は、ヘッド部12におけるインクジェットヘッド102に副走査動作を行わせる駆動部である。副走査動作については、例えば、媒体50に対して相対的に副走査方向へ移動する動作等と考えることができる。本例において、副走査駆動部18は、主走査動作の合間にインクジェットヘッド102に副走査動作を行わせることで、媒体50においてヘッド部12と対向する領域を変化させる。また、これにより、例えば、媒体50において次の回の主走査動作でインクジェットヘッド102からインクが吐出される範囲を変化させる。また、この場合、副走査駆動部18は、印刷条件(プリント条件)に応じて設定される副走査移動量に基づき、インクジェットヘッド102に副走査動作を行わせる。副走査移動量については、例えば、1回の副走査動作で媒体50に対して相対的にインクジェットヘッド102を移動させる移動量等と考えることができる。また、より具体的に、副走査駆動部18は、例えば、副走査方向と平行な搬送方向へ媒体50を搬送することで、インクジェットヘッド102に副走査動作を行わせる。この場合、副走査動作について、例えば、ヘッド部12に対して媒体50を送る送り動作に対応する動作等と考えることもできる。また、副走査移動量について、例えば、媒体50の送り量(フィード量)に対応する移動量等と考えることができる。
【0026】
また、上記の説明等から理解できるように、印刷装置10は、インクジェットヘッド102に主走査動作及び副走査動作を行わせることで、媒体50に対する印刷を行う。この場合、印刷装置10は、例えば、1以上の整数値で設定される数である設定パス数に基づき、主走査動作を実行する。また、本例において、印刷装置10は、更に、例えばユーザが設定する動作モード等に応じて、MAPS(Mimaki Advanced Pass System)機能を用いた印刷の動作を実行可能である。MAPS機能については、後に更に詳しく説明をする。
【0027】
入出力部20は、印刷装置10に対するデータや情報の入出力等を行うインターフェース部である。本例において、入出力部20は、例えば、印刷すべき画像を示す印刷データ(ジョブ)の入力を受け付ける。この場合、入出力部20は、例えば、印刷データを生成したコンピュータ等から、印刷データを受け取る。また、入出力部20は、例えば、印刷装置10のユーザに対し、情報の表示や、指示の受け付け等を行う。より具体的に、入出力部20は、例えば、印刷条件等に関してユーザに選択を求める表示や、各種の通知等をユーザに対して行う。また、入出力部20は、例えば、印刷装置10の動作モードの設定、印刷条件の設定、ユーザに求めた選択に対する回答等をユーザから受け付ける。入出力部20は、例えば、印刷装置10の動作を制御するコンピュータ(例えば、制御用のPC等)を介して、データや情報の入出力を行ってもよい。また、この場合、このコンピュータについて、入出力部20の少なくとも一部を構成すると考えることもできる。
【0028】
制御部22は、例えば印刷装置10のCPUを含む部分であり、入出力部20を介して受け取る印刷データやユーザの指示に基づき、印刷装置10の各部の動作を制御する。また、本例において、制御部22は、ファームウェア等のプログラムに従って動作することで、機能的に、例えば
図1(c)に示すように、印刷制御処理部202、不良ノズル確認処理部204、リカバリ確認処理部206、条件探索処理部208、及び入出力処理部210等として機能する。この場合、印刷制御処理部202については、例えば、主走査動作及び副走査動作に関する制御を行う処理部等と考えることができる。また、本例において、印刷制御処理部202は、例えば、ユーザの指示に基づいて設定する印刷条件及び印刷データに基づいてインクジェットヘッド102に主走査動作及び副走査動作を行わせることで、印刷装置10による印刷の動作を制御する。
【0029】
また、本例において、ヘッド部12におけるいずれかのインクジェットヘッド102に不良ノズルが存在する場合、制御部22は、必要に応じて、不良ノズル確認処理部204、リカバリ確認処理部206、及び条件探索処理部208としての動作により、不良ノズルの影響を低減するためのノズルリカバリの処理や、印刷条件の調整等を行う。この場合、不良ノズルについては、例えば、吐出特性が不良のノズル等と考えることができる。吐出特性が不良であることについては、例えば、吐出特性が所定の正常範囲から外れていること等と考えることができる。不良ノズルとしては、例えば、詰まり等でインクを吐出できなくなった不吐出のノズル等を考えることができる。本例において、制御部22は、例えば、インクジェットヘッド102やノズルに対するクリーニング等の所定のメンテナンスを行っても正常にならない(復旧できない)ノズルについて、不良ノズルとして登録する。また、ノズルリカバリについては、例えば、不良ノズルが存在する場合にその不良ノズルとは異なるノズル(以下、代替ノズルという)を用いる処理等と考えることができる。この場合、代替ノズルについては、例えば、不良ノズルの代わりに用いる他のノズル等と考えることができる。また、より具体的に、ノズルリカバリについては、例えば、不良ノズルでの本来の吐出位置に対して代替ノズルでインクを吐出する処理等と考えることができる。この場合、不良ノズルでの本来の吐出位置については、例えば、その不良ノズルが正常なノズルであったらインクを吐出するはずであった吐出位置等と考えることができる。また、この場合、不良ノズルの位置を予め登録しておき、不良ノズルが本来の吐出位置へインクを吐出するはずであった回の主走査動作とは異なる回の主走査動作において、代替ノズルで代わりにインクを吐出することが考えられる。このように構成すれば、例えば、不良ノズルの影響を適切に低減することができる。
【0030】
また、不良ノズル確認処理部204については、例えば、インクジェットヘッド102における不良ノズルの有無や不良ノズルの位置を確認する処理部等と考えることができる。リカバリ確認処理部206については、例えば、不良ノズル確認処理部204で確認した不良ノズルに対するノズルリカバリが可能であるか否かを確認する処理部等と考えることができる。条件探索処理部208については、例えば、ノズルリカバリが不可能な場合に新たな印刷条件を探索する処理部等と考えることができる。また、不良ノズル確認処理部204、リカバリ確認処理部206、及び条件探索処理部208は、例えば、ユーザの指示等に応じてノズルリカバリを有効にする設定がされている場合に、これらの処理を行う。
【0031】
また、この場合、例えば、不良ノズルが存在することが不良ノズル確認処理部204で確認され、かつ、不良ノズルに対するノズルリカバリが可能であることがリカバリ確認処理部206で確認されると、リカバリ確認処理部206は、印刷制御処理部202に、ノズルリカバリを行った印刷の動作の制御を行わせる。これに対し、不良ノズルが存在するが、ノズルリカバリが不可能である場合、リカバリ確認処理部206は、ノズルリカバリが可能になる新たな印刷条件を条件探索処理部208に探索させる。より具体的に、本例において、ノズルリカバリでは、上記のように、不良ノズルの代わりに代替ノズルを使用する。そして、この場合、代替ノズルについては、印刷条件等に応じて決まる所定の位置のノズルを用いることが必要になる。そのため、例えば代替ノズルの位置にあるノズルも不良ノズルになっている場合、ノズルリカバリを行うことができなくなる。そして、本例において、条件探索処理部208は、例えばこのような場合に、新たな印刷条件を探索する。条件探索処理部208において新たな印刷条件を探索する動作については、後に更に詳しく説明をする。
【0032】
条件探索処理部208が新たな印刷条件を探索した場合、入出力処理部210は、その探索の結果に関し、ユーザに確認させて、指示を受け付ける。新たな印刷条件の探索に関連してユーザに確認させる事項や、ユーザから受け付ける指示等についても、後に更に詳しく説明をする。本例によれば、例えば、制御部22により、印刷装置10の動作を適切に制御することができる。また、これにより、例えば、媒体50に対する印刷の動作を適切に実行することができる。
【0033】
続いて、印刷装置10において用いるMAPS機能等について、更に詳しく説明をする。本例において、MAPS機能を用いた印刷の動作は、パス変調動作の一例である。この場合、パス変調動作については、例えば、媒体50の少なくとも一部に対して行われる主走査動作の回数を設定パス数よりも大きくする動作等と考えることができる。また、上記においても説明をしたように、本例において、設定パス数は、1以上の整数値で設定される数である。設定パス数については、例えば、MAPS機能において基準となる整数値でのパス数等を考えることができる。
【0034】
また、より具体的に、主走査動作及び副走査動作を行う構成の印刷装置(シリアル方式の印刷装置)で印刷を行う場合、印刷条件としては、例えば、解像度及びパス数等を設定することが考えられる。そして、この場合、パス数については、例えば、媒体50の同じ位置に対して行う主走査動作の回数に対応する設定値等と考えることができる。この場合、同じ位置に対して行う主走査動作の回数については、例えば、その位置と対向する位置をインクジェットヘッド102が通過する主走査動作の回数等と考えることができる。そして、パス数としては、通常、上記の設定パス数のように、整数値での設定がされる。これに対し、MAPS機能では、上記において説明をしたパス変調動作のように、媒体50の少なくとも一部に対して行われる主走査動作の回数を設定パス数よりも大きくする。また、この場合において、主走査動作の回数を多くする領域の副走査方向における幅や、その領域に対して行う主走査動作の回数を変化させることで、主走査動作の回数の平均値について、非整数値も含めて変化させる。この場合、主走査動作の回数の平均値については、例えば、媒体50の位置と対向する位置をインクジェットヘッド102が通過する主走査動作の回数の平均値等と考えることができる。また、主走査動作の回数の平均値について、例えば、副走査方向における位置毎の主走査動作の回数に対する平均値等と考えることもできる。
【0035】
また、本例のMAPS機能では、印刷装置10において、設定パス数以外に、MAPS速度を設定値として用いる。この場合、MAPS速度は、パス変調度の一例である。パス変調度については、例えば、パス変調動作において媒体50の少なくとも一部に対して行われる主走査動作の回数を変化させる変調の度合いを示すパラメータ等と考えることができる。また、本例において、印刷装置10は、副走査動作における副走査移動量について、MAPS速度に応じて設定する。この場合、MAPS速度に応じて副走査移動量が変化することで、例えば、媒体50において、設定パス数よりも多くの回数の主走査動作が行われる領域が変化する。更には、その結果として、主走査動作の回数の平均値も変化する。そのため、MAPS速度については、例えば、主走査動作の回数の平均値に対応付けられるパラメータ等と考えることもできる。また、本例において、主走査動作の回数の平均値は、設定パス数及びMAPS速度に基づき、小数単位で変化する。
【0036】
また、より具体的に、本例において、MAPS速度としては、50%以上、100%以下の範囲の値を設定する。この場合、100%のMAPS速度は、媒体50の全体に対して設定パス数の主走査動作を行う場合に対応する値である。50%のMAPS速度は、媒体50の全体に対して設定パス数の2倍の主走査動作を行う場合に対応する値である。また、この場合、100%のMAPS速度について、例えば、主走査動作の回数の平均値が設定パス数と等しくなるMAPS速度と考えることもできる。50%のMAPS速度について、例えば、主走査動作の回数の平均値が設定パス数の2倍と等しくなるMAPS速度と考えることもできる。また、上記においても説明をしたように、本例において、MAPS速度は、パス変調度の一例である。この場合、100%のMAPS速度について、例えば、100%のパス変調度に対応する値等と考えることができる。50%のMAPS速度について、例えば、50%のパス変調度に対応する値等と考えることができる。また、MAPS速度が50%よりも大きく、100%よりも小さい場合、主走査動作の回数の平均値について、設定パス数よりも大きく、かつ、設定パス数の2倍よりも小さな値になると考えることができる。この場合、主走査動作の回数の平均値について、例えば、MAPS速度に応じて、設定パス数以上で、設定パス数の2倍以下の範囲で変化させると考えることができる。
【0037】
また、以下においては、設定パス数及びMAPS速度に応じて決まる主走査動作の回数の平均値について、半端パス数という。半端パス数については、例えば、設定パス数及びMAPS速度に基づいて小数値で算出される実効的なパス数等と考えることもできる。また、上記のように、本例において、副走査移動量は、MAPS速度に応じて変化する。そのため、半端パス数について、例えば、副走査移動量と関連付けて考えることもできる。この場合、半端パス数について、例えば、インクジェットヘッド102におけるノズル列長を副走査移動量で除した値になると考えることができる。ノズル列長については、例えば、副走査方向におけるノズル列の幅等と考えることができる。また、ノズル列長について、例えば、一つの色のインクを吐出するインクジェットヘッド102のノズル列においてノズルが並ぶ範囲の副走査方向における幅等と考えることもできる。また、この点に関し、一つの色のインクを吐出するインクジェットヘッド102のノズル列としては、例えば、スタガ配置で並ぶ複数のインクジェットヘッドにより構成される仮想的なノズル列を用いることも考えられる。この場合、仮想的なノズル列については、例えば、複数のインクジェットヘッドのノズル列を仮想的に一つにつなげたノズル列等と考えることができる。そして、このような場合、ノズル列長について、例えば、このような仮想的なノズル列のノズル列長と考えることができる。
【0038】
ここで、MAPS速度と副走査移動量との関係について、本例において、副走査移動量は、MAPS速度が100%で最大になる。そして、MAPS速度を小さくすると、副走査移動量も小さくなり、MAPS速度が50%で、副走査移動量は、最小になる。そして、この場合、MAPS速度を小さくすると、副走査移動量が小さくなることで、印刷速度も低下する。そのため、MAPS速度については、例えば、印刷速度に対応付けられるパラメータ等と考えることもできる。また、MAPS機能を用いて印刷を行う場合、MAPS速度の調整によって、設定パス数のみから決まる副走査移動量よりも副走査移動量を小さくすることで、例えば、パスの境界を目立ちにくくすることができる。この場合、設定パス数のみから決まる副走査移動量については、例えば、ノズル列長を設定パス数で除した距離に対応する移動量等と考えることができる。また、この場合、このような距離よりも副走査移動量を小さくすることで、例えば、パスの端を拡散(分散)させて、上記のように、パスの境界を目立ちにくくすることができる。
【0039】
より具体的に、本例において、制御部22(印刷制御処理部202)は、インクジェットヘッド102のノズル列における複数のノズルについて、副走査方向へ順番に並ぶ設定パス数分のパス範囲に分けて管理する。この場合、パス範囲について、例えば、媒体50の位置に対して行う複数回の主走査動作のうちの1回分の主走査動作に対応付けられる範囲等を考えることができる。また、ノズル列長を設定パス数で除した値をパス幅と定義した場合、パス範囲について、例えば、ノズル列におけるパス幅分の範囲等と考えることができる。また、この場合、主走査動作と副走査動作とを繰り返すことで、媒体50における同じ位置と対向する位置を各パス範囲が通過する。また、これにより、印刷装置10は、媒体の同じ位置に対して、複数回の主走査動作を行う。そして、この場合、一つのパス範囲にあるノズルからインクが吐出される領域について、上記のパスに対応すると考えることができる。また、このような領域の境界について、パスの境界と考えることができる。
【0040】
また、MAPS機能においては、主走査動作においてインクを吐出する吐出位置を決定するために用いるマスクとして、設定パス数及びMAPS速度に応じて選択されるマスクを用いる。この場合、マスクにおいて、設定パス数よりも多くの回数が行われる領域に対応する部分では、吐出位置を選択する比率(マスクの濃度)が小さくなる。また、この場合、MAPS速度の設定に応じて副走査移動量が小さくなると、パスの境界を含む範囲において、例えば、設定パス数よりも多くの回数が行われる領域が広くなる。また、その結果、例えば、パスの端が拡散したような状態となり、パスの境界が目立ちにくくなる。そのため、MAPS機能を用いることで、例えば、パスの境界が過度に目立つバンディングや色ムラの発生を軽減して、高い品質での印刷を行うことが可能になる。
【0041】
また、より具体的に、本例においては、MAPS機能を用いて、例えば、
図2~5に示すように印刷を行うことが考えられる。
図2~5は、MAP機能を用いて実行する印刷の動作を簡略化して示す図である。
図2~5においては、図示の便宜上、16個のノズルが並ぶ一つのインクジェットヘッド102(
図1参照)を用いて、印刷の動作の例を示している。また、各回の主走査動作でインクを吐出する吐出位置の選択の仕方について、図中に網掛け模様で示すように、マスク濃度を100%、50%、25%、0%等の離散的な値とし、図示しやすい状態で選択を行う場合の単純化した例を示している。実際の印刷装置10(
図1参照)において、インクジェットヘッド102は、より多くのノズルを有してよい。また、マスクとしては、例えば公知のMAPS機能と同一又は同様に、より複雑なマスクを用いてよい。この場合、例えば、濃度がグラデーション状に変化するマスク等を好適に用いることができる。また、マスクについて、複数種類のマスクの中からユーザに選択させること等も考えられる。
【0042】
また、
図2~5のうち、
図2は、設定パス数を1(1Pass)にする場合の印刷の動作の例を示す。
図2(a)は、設定パス数を1とし、MAPS速度を100%とする場合の印刷の動作の例を示す。この場合、印刷装置10は、媒体の全ての位置に対し、1回の主走査動作のみを行う。そのため、各回の主走査動作でインクを吐出する吐出位置の選択の仕方は、全ての吐出位置を選択する100%の選択になる。この場合、吐出位置の選択の仕方については、例えば、いわゆるベタ印字を行う場合の選択の仕方等と考えることができる。そのため、ベタ印字以外の印刷を行う場合には、例えば、ベタ印字でインクを吐出する吐出位置のうち、印刷する画像に応じて選択される吐出位置に対して、インクを吐出すると考えることができる。また、本例において、副走査移動量は、ノズル列長を設定パス数で除した値であるパス幅にMAPS速度の比率を乗じた距離になる。そして、図示した構成で設定パス数が1の場合のパス幅は、ノズル16個分の副走査方向における幅になる。そのため、設定パス数を1とし、MAPS速度を100%とする場合、副走査移動量は、16個のノズル分の副走査方向における幅と等しくなる。
【0043】
また、
図2(b)は、設定パス数を1とし、MAPS速度を75%とする場合の印刷の動作の例を示す。この場合、印刷装置10は、媒体の一部に対して1回の主走査動作のみを行い、他の部分に対して、2回の主走査動作を行う。より具体的に、図中において、左側のパターンは、連続して行う2回の主走査動作における1回目の主走査動作でインクを吐出する吐出位置の例を簡略化して示している。また、右側のパターンは、2回目の主走査動作でインクを吐出する吐出位置の例を簡略化して示している。また、この場合、インクジェットヘッド102において並ぶ16個のノズルのうち、副走査方向における一端側の4個のノズルと、他端側の4個のノズルについて、各回の主走査動作でインクを吐出する吐出位置の選択の仕方を、100%の場合の半分の吐出位置を選択する50%の選択にする。また、それ以外の中央部の8個のノズルについては、吐出位置の選択の仕方を、100%の選択にする。この場合、副走査移動量は、パス幅の75%に相当する12個のノズル分の副走査方向における幅になる。また、半端パス数は、1.33(1.33Pass)になる。また、その結果、印刷装置10は、100%の選択とするノズルでインクを吐出する位置に対し、例えば図中に示すように、1回の主走査動作(1scan)で100%の吐出を行う。また、この場合、50%の選択とするノズルでインクを吐出する吐出位置については、2回の主走査動作での吐出位置の選択の仕方を補完関係にすることで、1回目の主走査動作でインクを吐出しない吐出位置に対して、2回目の主走査動作でインクを吐出する。また、これにより、印刷装置10は、50%の選択とするノズルでインクを吐出する位置に対し、例えば図中に示すように、2回の主走査動作(2scan)で100%の吐出を行う。
【0044】
また、
図3、4は、設定パス数を2(2Pass)にする場合の印刷の動作の例を示す。
図3(a)は、設定パス数を2とし、MAPS速度を100%とする場合の印刷の動作の例を示す。この場合、各回の主走査動作でインクを吐出する吐出位置の選択の仕方は、全てのノズルに対し、50%の選択にする。また、図示した構成において、設定パス数が2である場合、パス幅は、ノズル8個分の副走査方向における幅になる。そのため、設定パス数を2とし、MAPS速度を100%とする場合、副走査移動量は、パス幅の100%に相当する8個のノズル分の副走査方向における幅と等しくなる。また、これにより、印刷装置10は、媒体の全ての位置に対し、2回の主走査動作を行う。そして、2回の主走査動作(2scan)によって、100%の吐出を行う。また、この場合、半端パス数は、2(2Pass)になる。
【0045】
図3(b)は、設定パス数を2とし、MAPS速度を75%とする場合の印刷の動作の例を示す。この場合、各回の主走査動作でインクを吐出する吐出位置の選択の仕方に関し、インクジェットヘッド102において並ぶ16個のノズルのうち、副走査方向における一端側の4個のノズルと、他端側の4個のノズルについて、100%の場合の1/4の吐出位置を選択する25%の選択にする。また、それ以外の中央部の8個のノズルについては、吐出位置の選択の仕方を、50%の選択にする。また、設定パス数を2とし、MAPS速度を75%とする場合、副走査移動量は、パス幅の75%に相当する6個のノズル分の副走査方向における幅と等しくなる。この場合、図中に示すように、印刷装置10は、媒体50の一部に対して、2回の主走査動作(2scan)によって、100%の吐出を行う。また、媒体50の他の部分に対しては、3回の主走査動作(3scan)によって、100%の吐出を行う。また、この場合、半端パス数は、2.66(2.66Pass)になる。
【0046】
図4(a)は、設定パス数を2とし、MAPS速度を66%とする場合の印刷の動作の例を示す。この場合、各回の主走査動作でインクを吐出する吐出位置の選択の仕方に関し、MAPS速度の設定値によって生じる端数分を調整するために、インクジェットヘッド102において並ぶ16個のノズルのうち、一番端にある一つのノズル(図中で数字16を付して示すノズル)を使用しない設定とする。そして、その上で、吐出位置の選択の仕方に関し、残りの15個のノズルのうち、副走査方向における一端側の5個のノズルと、他端側の5個のノズルについて、25%の選択にする。また、それ以外の中央部の5個のノズルについては、吐出位置の選択の仕方を、50%の選択にする。また、設定パス数を2とし、MAPS速度を66%とする場合、副走査移動量は、パス幅の66%に相当する5個のノズル分の副走査方向における幅と等しくなる。この場合、5個のノズル分の副走査方向における幅がパス幅の66%に相当することについては、例えば、適切に副走査動作が行える条件の中でノズルの個数(整数値)に応じて変化する幅がパス幅の66%に最も近くなること等と考えることができる。また、この場合、図中に示すように、印刷装置10は、媒体50の全ての位置に対して、3回の主走査動作(3scan)によって、100%の吐出を行う。また、半端パス数は、3(3Pass)になる。
【0047】
また、上記においても説明をしたように、主走査動作においてインクを吐出する吐出位置を決定するために用いるマスクについては、例えば、複数種類のマスクの中からユーザに選択させること等も考えられる。そして、この場合、設定パス数及びMAPS速度が同じでも、インクの吐出の仕方が変化することになる。例えば、設定パス数を2とし、MAPS速度を100%とする場合において、
図4(b)に示すように印刷の動作を行うこと等も考えられる。
図4(b)は、設定パス数を2とし、MAPS速度を100%とする場合の印刷の動作の変形例を示す。この場合、各回の主走査動作でインクを吐出する吐出位置の選択の仕方に関し、インクジェットヘッド102において並ぶ16個のノズルのうち、副走査方向における一端側の2個のノズルと、他端側の2個のノズルについて、インクを吐出させない0%の選択にする。また、一端側及び他端側において、端から3~6番目のノズルについて、吐出位置の選択の仕方を、50%の選択にする。更に、それ以外の中央部の4個のノズルについて、吐出位置の選択の仕方を、100%の選択にする。また、この場合も、設定パス数を2とし、MAPS速度を100%とするため、副走査移動量は、パス幅の100%に相当する8個のノズル分の副走査方向における幅と等しくなる。そして、図中に示すように、この場合も、印刷装置10は、媒体50の全ての位置に対し、2回の主走査動作(2scan)によって、100%の吐出を行う。また、半端パス数は、2(2Pass)になる。
【0048】
また、MAPS機能を用いた印刷の動作については、設定パス数がより大きい場合にも、上記と同一又は同様に行うことができる。例えば、設定パス数を4とする場合、
図5に示すように印刷の動作を行うことができる。
図5は、設定パス数を4(4Pass)とし、MAPS速度を100%とする場合の印刷の動作の例を示す。この場合、各回の主走査動作でインクを吐出する吐出位置の選択の仕方に関し、インクジェットヘッド102において並ぶ16個のノズルの全てについて、25%の選択にする。また、設定パス数を4とする場合、パス幅は、ノズル4個分の副走査方向における幅になる。そのため、設定パス数を4とし、MAPS速度を100%とする場合、副走査移動量は、パス幅の100%に相当する4個のノズル分の副走査方向における幅と等しくなる。そして、この場合、印刷装置10は、媒体50の全ての位置に対し、4回の主走査動作(4scan)によって、100%の吐出を行う。また、半端パス数は、4(4Pass)になる。
【0049】
続いて、本例において印刷装置10を用いて行う印刷の動作について、フローチャートを用いて、更に詳しく説明をする。
図6は、印刷装置10を用いて行う印刷の動作の一例を示すフローチャートである。本例において、印刷装置10は、例えば印刷装置10の動作を制御するコンピュータから印刷開始の指示を受け付けることで、印刷の動作を開始する(S102)。また、印刷の動作を開始した後、印刷装置10は、予め設定された印刷準備の動作を行う(S104)。本例において、ステップS104の動作は、データ取得段階及び条件設定段階の動作の一例である。また、ステップS104の動作で実行する処理については、例えば、データ取得処理及び条件設定処理の一例と考えることができる。ステップS104において、印刷装置10は、例えば、印刷すべき画像を示す印刷データを取得して、印刷データに基づき、印刷装置10で実行する印刷の条件である印刷条件の設定を行う。この場合、印刷データについては、例えば、印刷のジョブデータ等と考えることができる。印刷データとしては、例えば、予めユーザによって指定された印刷の解像度に合わせてRIP処理を行うことで生成されたデータを取得することが考えられる。また、後に更に詳しく説明をするように、本例において、印刷装置10は、必要に応じて、印刷条件の調整を行う。そのため、ステップS104で設定する印刷条件については、例えば、印刷条件の初期値等と考えることができる。
【0050】
また、ステップS104において、印刷装置10は、印刷条件として、例えば、印刷の解像度、設定パス数、MAPS速度、及び主走査速度(スキャンスピード)等を設定する。この場合、主走査速度については、例えば、主走査動作において媒体に対して相対的にインクジェットヘッドを移動させる速度等と考えることができる。また、主走査速度の設定としては、例えば、予め設定された複数種類の速度の中からいずれかを選択する設定を行うことが考えられる。より具体的に、この場合、例えば、標準の主走査速度である標準速と、標準速よりも早くインクジェットヘッドを移動させる高速とのいずれかを選択する設定を行うことが考えられる。また、上記においても説明をしたように、本例においては、設定パス数及びMAPS速度に応じて、副走査移動量が決定される。そのため、ステップS104での動作について、例えば、MAPS速度等に応じて副走査移動量を設定していると考えることもできる。また、ステップS104において、印刷装置10は、印刷条件の少なくとも一部の設定について、例えば、印刷データが含む情報に基づいて行う。印刷装置10は、印刷条件の少なくとも一部の設定について、例えば、印刷データと共に印刷装置10の外部から受け取る情報に基づいて行ってもよい。印刷装置10は、印刷条件の少なくとも一部の設定について、例えば、印刷装置10に対するユーザの手動操作に基づいて行ってもよい。
【0051】
また、ステップS104での動作に続いて、印刷装置10は、ステップS104で設定された印刷条件について、確認し、必要に応じて、印刷条件の調整を行う(S106)。本例において、ステップS106の動作は、条件確認段階の動作の一例である。また、ステップS106の動作で実行する処理については、例えば、条件確認処理の一例と考えることができる。また、ステップS106で印刷条件の確認等を行った後、印刷装置10は、印刷データ及び印刷条件に基づき、印刷の動作を実行する(S108)。本例において、ステップS108の動作は、印刷実行段階の動作の一例である。また、ステップS108の動作で実行する処理については、例えば、印刷実行処理の一例と考えることができる。本例によれば、例えば、印刷データに基づく印刷の動作を適切に実行することができる。また、この場合において、ステップS106での動作により、例えば、必要に応じて、印刷条件を適切に調整することができる。
【0052】
続いて、ステップS106で行う動作について、更に詳しく説明をする。本例において、ステップS106で行う動作の少なくとも一部は、所定の動作モードが設定されている場合に行う動作であってよい。この場合、例えば、ノズルリカバリを有効にする動作モードが設定されている場合に、印刷条件の調整等を行うことが考えられる。また、本例において、印刷条件の調整等を行う場合、ステップS106では、例えば、ステップS104で設定される印刷条件で不良ノズルに対するノズルリカバリが可能であるか否かを確認する。そして、確認の結果、ノズルリカバリが不可能になる不良ノズルが存在した場合、MAPS速度を下げることで印刷条件を調整して、ノズルリカバリが可能になる印刷条件を探索する。更に、上記の確認や探索の結果に基づき、例えば、印刷条件を変更するか否か等について、ユーザに選択を行わせる。また、より具体的に、ステップS106では、例えば、
図7、8に示すように、印刷条件の確認及び調整を行うことが考えられる。
【0053】
図7は、ステップS106で行う詳細な動作の一例を示すフローチャートである。
図8は、ステップS106の動作の中でユーザに表示する情報の一例を示す。
図8(a)、(b)は、情報を示しつつユーザに選択を求めるダイアログの一例を示す。以下において説明する動作については、例えば、印刷装置10においてノズルリカバリを実行する設定がされている状態(ノズルリカバリが有効の状態)で実行する動作の一例等と考えることができる。また、本例でのステップS106の動作において、印刷装置10は、例えば不良ノズル確認処理部204及びリカバリ確認処理部206として制御部22が行う処理により、不良ノズルの有無の確認と、不良ノズルに対するノズルリカバリが可能であるか否かの確認を行う(S202)。この場合、不良ノズルの有無の確認については、例えば、ヘッド部12におけるいずれかのインクジェットヘッド102のノズル列に不良ノズルが存在しているか否かを確認すること等と考えることができる。また、本例において、ステップS202の動作は、不良ノズル確認段階及びリカバリ確認段階の動作の一例である。また、ステップS202の動作で実行する処理については、例えば、不良ノズル確認処理及びリカバリ確認処理の一例と考えることができる。また、ステップS202において、印刷装置10は、
図6を用いて説明をした動作のステップS104で設定した印刷条件に基づき、予め登録されている不良ノズルに対するノズルリカバリが可能であるか否かの確認を行う。
【0054】
また、ステップS202で不良ノズルの有無やノズルリカバリの可否を確認した後、印刷装置10は、例えばリカバリ確認処理部206として制御部22が行う処理により、ノズルリカバリが不可能な不良ノズルが存在しているか否かに応じて、その後の処理を異ならせる(S204)。より具体的に、不良ノズルが存在しない場合、又は、不良ノズルが存在していても全ての不良ノズルに対してノズルリカバリが可能である場合(S204、No)、印刷条件の調整を行うことなく、ステップS108へ進み、印刷の動作を実行する。この場合、必要に応じてノズルリカバリを行いつつ、
図6のステップS104で設定した印刷条件に基づき、印刷の動作を実行する。これに対し、不良ノズルが存在しており、少なくとも一つの不良ノズルに対してノズルリカバリが不可能である場合(S204、Yes)、ステップS206以降の動作へ進み、ノズルリカバリが可能になる新たな印刷条件の探索を行う。本例において、ステップS206以降の動作で行う動作は、条件探索段階の動作の一例である。また、ステップS206以降の動作で実行する処理については、例えば、条件探索処理の一例と考えることができる。条件探索段階については、例えば、不良ノズルが存在し、かつ、ノズルリカバリが不可能な場合に新しい印刷条件(新たな印刷条件)を探索する段階等と考えることができる。
【0055】
また、ステップS206以降の動作において、印刷装置10は、例えば条件探索処理部208として制御部22が行う処理により、MAPS速度を変化させることで印刷条件を調整して、ノズルリカバリが可能になる印刷条件を探索する。この場合、印刷装置10は、例えば、ステップS104で設定した印刷条件の中からMAPS速度を取得し(S206)、取得したMAPS速度に対し、所定の刻み幅での値の変更を行う(S208)。また、本例において、印刷装置10は、1%の刻み幅で値が小さくなる方向へMAPS速度を変化させて、ノズルリカバリが可能になる印刷条件を探索する。この場合、1%の刻み幅については、例えば、100%のMAPS速度の1/100に対応する刻み幅等と考えることができる。ステップS208でMAPS速度を変更する刻み幅は、1%以外であってもよい。この場合、例えば2%以下(例えば、0.5~2%程度)の刻み幅でMAPS速度を変更することが好ましい。このように構成すれば、例えば、印刷条件を大きく変化させることなく、印刷条件の調整を適切に行うことができる。
【0056】
また、上記においても説明をしたように、本例において、MAPS速度としては、50%以上、100%以下の範囲の値を用いる。そのため、ステップS208でMAPS速度を変更した後には、変更後のMAPS速度が適正であるか否かについての判断を行う(S210)。より具体的に、本例において、印刷装置10は、変更後のMAPS速度について、50%未満になっているか否かの判断を行う。そして、変更後のMAPS速度が50%未満になっている場合(S210、Yes)、ノズルリカバリが可能になる新たな印刷条件が見つからず、ノズルリカバリが不可能になったことをユーザに通知して、その後の動作に関するユーザの選択を受け付ける(S212)。この場合、印刷装置10は、例えば、印刷装置10の動作を制御するコンピュータのモニタにダイアログを表示することで、このコンピュータを介して、ユーザへの通知と、ユーザからの指示の受け付けとを行う。また、より具体的に、ステップS212において、印刷装置10は、例えば
図8(a)に示すダイアログをユーザに対して表示することで、ノズルリカバリが可能になる新たな印刷条件が見つからなかったことをユーザへ通知する。また、その後の動作に関して、印刷の動作を中止するプリントキャンセル、又は、印刷を続行するプリント続行のいずれかをユーザに選択させる。そして、プリントキャンセルが選択された場合、印刷装置10は、ステップS108に進まずに、印刷の動作を中止する。また、プリント続行が選択された場合、印刷条件を変更せずに、ステップS104で設定した印刷条件をそのまま使用する設定で、ステップS108へ進み、印刷の動作を実行する。
【0057】
また、本例において、MAPS速度の変更のみではノズルリカバリが可能になる新たな印刷条件が見つからない場合であっても、設定パス数や主走査速度を変更すれば、ノズルリカバリが可能になる場合もある。より具体的に、設定パス数を変更した場合、MAPS速度が100%の場合の副走査移動量が変化することで、ノズルリカバリが可能になる条件が変化する。また、主走査速度が変化した場合、1回の主走査動作で一つのノズルからインクを吐出できる吐出位置の密度が変わることで、ノズルリカバリが可能になる場合がある。例えば、元の印刷条件での主走査速度が高速になっている場合において、主走査速度を標準速に変更することで、ノズルリカバリが可能になる場合がある。そのため、本例においては、例えば
図8(a)に示すダイアログの表示を行うことになる所定の条件の下で、設定パス数を増やした印刷データに対応するパス数を増やしたJOBの作成を提案することで、ユーザに対し、設定パス数の変更を促している。また、同じく所定の条件の下で、主走査速度(スキャンスピード)について、高速設定から標準設定への変更を提案することで、主走査速度の変更を促している。また、この場合、ノズルリカバリが可能になる新たな印刷条件が見つからないことについて、所定の条件の一例と考えることができる。また、設定パス数や主走査速度の変更については、他の所定の条件の下で、ユーザに促してもよい。例えば、ノズルリカバリが可能になる新たな印刷条件が見つかった場合に、新たな印刷条件による印刷速度の低下が所定の基準よりも大きい場合等に、設定パス数や主走査速度の変更をユーザに促してもよい。
【0058】
また、ステップS210において、変更後のMAPS速度が50%未満になっていなかった場合(S210、No)、印刷装置10は、変更後のMAPS速度を用いた印刷条件に関し、ステップS202での動作と同一又は同様にして、不良ノズルに対するノズルリカバリが可能であるか否かの確認を行う(S214)。また、ステップS214での動作に続いて、印刷装置10は、ステップS204での動作と同一又は同様にして、全ての不良ノズルに対してノズルリカバリが可能であるか否かを確認する(S216)。この場合、ステップS214及びS216では、例えば、条件探索処理部208として制御部22が行う処理の中で、不良ノズル確認処理部204及びリカバリ確認処理部206としての処理を更に行うことで、上記の処理を行うことが考えられる。また、ステップS216において、少なくとも一つの不良ノズルに対してノズルリカバリが不可能であると判断した場合(S216、No)、再度ステップS208へ進み、以降の動作を繰り返す。また、これにより、例えば、MAPS速度を更に変更して、新たな印刷条件の探索を行う。
【0059】
また、ステップS216において、変更後のMAPS速度を用いることで全ての不良ノズルに対してノズルリカバリが可能であると判断した場合(S216、Yes)、ノズルリカバリが可能になる新たな印刷条件が見つかり、ノズルリカバリが可能になったことをユーザに通知して、その後の動作に関するユーザの選択を受け付ける(S218)。この場合も、印刷装置10は、例えば、印刷装置10の動作を制御するコンピュータのモニタにダイアログを表示することで、このコンピュータを介して、ユーザへの通知と、ユーザからの指示の受け付けとを行う。また、より具体的に、ステップS218において、印刷装置10は、例えば
図8(b)に示すダイアログをユーザに対して表示することで、ノズルリカバリが可能になる新たな印刷条件が見つかったことをユーザへ通知する。また、新たな印刷条件でのMAPS速度に対応する印刷速度を表示しつつ、その後の動作に関して、印刷の動作を中止するプリントキャンセル、元の設定値での印刷(プリント)の続行、新たな設定値を適用しての印刷の続行のいずれかをユーザに選択させる。この場合、元の設定値での印刷の続行については、例えば、ステップS104で設定された印刷条件でのMAPS速度を用いて印刷を行うこと等と考えることができる。新たな設定値を適用しての印刷の続行については、例えば、ステップS106で変更されたMAPS速度を用いて印刷を行うこと等と考えることができる。
【0060】
そして、プリントキャンセルが選択された場合、印刷装置10は、ステップS108に進まずに、印刷の動作を中止する。また、元の設定値での印刷の続行が選択された場合、印刷条件を変更せずに、ステップS104で設定した印刷条件をそのまま使用する設定で、ステップS108へ進み、印刷の動作を実行する。また、これにより、少なくとも一部の不良ノズルに対してノズルリカバリを行わずに、印刷の動作を実行する。また、新たな設定値を適用しての印刷の続行が選択された場合、変更後のMAPS速度を採用して、全ての不良ノズルに対してノズルリカバリを行う設定で、ステップS108へ進み、印刷の動作を実行する。このようなダイアログを表示することで、例えば、ノズルリカバリが可能になる新たな印刷条件が見つかった場合において、新たな印刷条件を用いて印刷を実行するか、新たな印刷条件を用いずに、ノズルリカバリを行わずに印刷を実行するかのいずれかをユーザに選択させることができる。そのため、本例によれば、例えば、新たな印刷条件を探索する動作の中で受け付けるユーザの選択に基づき、印刷データに基づく印刷の動作をより適切に印刷装置10に実行させることができる。
【0061】
尚、ノズルリカバリを行って高い品質での印刷を行うことを考えた場合、例えば、新たな印刷条件を採用するか否かをユーザに選択させることなく、自動的に新たな印刷条件を採用すればよいようにも考えられる。また、印刷を行う目的等によっては、自動的に新たな印刷条件を採用することが好ましい場合もある。しかし、MAPS速度を小さく変更した場合、MAPS速度の変更量に応じて、印刷速度が低下することになる。また、その結果、印刷が完了するまでの時間が増大し、ユーザが希望するタイミングまでに印刷を終えることができなくなる場合がある。また、MAPS速度の変更量が大きい場合、印刷の品質が高まる方向であっても、印刷の品質に変化が生じることで、ユーザが希望する品質での印刷が行えなくなる場合がある。これに対し、本例によれば、上記のようなダイアログを表示することで、例えば、新たな印刷条件を採用するか否かについて、ユーザに適切に選択させることができる。また、これにより、例えば、ユーザの希望に合わせた印刷条件での印刷の動作をより適切に実行することができる。
【0062】
続いて、上記において説明をした構成に関し、補足説明等を行う。上記においても説明をしたように、本例においては、MAPS機能におけるMAPS速度を変化させることで、パス間で使用するノズルを変化させることができる。また、これにより、例えば、不良ノズルの代替ノズルとして使用可能なノズルを適切に変化させることができる。そのため、本例によれば、例えば、当初の印刷条件ではノズルリカバリができない場合であっても、ノズルリカバリが可能になる新たな印刷条件を適切に探索することができる。更に、この場合、MAPS速度の変更を行うことで、例えば、ノズルリカバリが可能になる新たな印刷条件として、設定パス数や印刷の解像度を変化させない条件を用いることが可能になる。そのため、本例によれば、例えば、印刷の品質の大きな変化や印刷速度の大幅な低下を適切に防止しつつ、不良ノズルの影響を適切に低減することができる。また、この場合において、例えば、印刷データ(ジョブ)の作り直しやインクジェットヘッドの交換等を行うことなく、ノズルリカバリを適切に行うことができる。また、これにより、例えば、作業の手戻りや生産の一時停止等を適切に防止して、効率的に印刷物を生産することができる。
【0063】
また、本例においてノズルリカバリが可能になる印刷条件を探索することについては、例えば、副走査移動量に着目して考えることもできる。この場合、新たな印刷条件を探す動作について、例えば、副走査移動量を変化させることで、ノズルリカバリが可能になる印刷条件を探索していると考えることができる。また、より具体的に、この場合、新たな印刷条件を探す動作について、例えば、MAPS速度を変化させることで、MAPS速度に対応する副走査移動量を変化させて、ノズルリカバリが可能になる印刷条件を探索していると考えることができる。また、この場合、上記においても説明をしたように、MAPS速度については、100%以下であり、かつ、50%以上の範囲で変化させる。そして、この場合、副走査移動量について、例えば、パス幅の0.5倍以上、1倍以下の範囲で変化させることになる。このように構成すれば、例えば、ノズルリカバリが可能になる新たな印刷条件を適切に探索することができる。
【0064】
また、上記のように、本例において、新たな印刷条件を探す動作では、MAPS速度を下げる方向へ、MAPS速度を変化させる。この場合、MAPS速度について、例えば、印刷の品質が向上する方向へ変化させると考えることができる。このように構成すれば、例えば、ユーザが所望する印刷の品質を保持しつつ、新たな印刷の条件を適切に探索することができる。また、ユーザが求める印刷の品質や印刷時間等によっては、印刷の品質が低下する可能性のある方向であるMAPS速度を上げる方向へMAPS速度を変化させて、新たな印刷条件を探索してもよい。例えば、50%未満へMAPS速度を変化させてもノズルリカバリが可能にならない場合や、MAP速度を小さくする方向ではMAPS速度の変化量が大きくなりすぎる場合等において、MAPS速度を上げて、ノズルリカバリが可能になる新たな印刷条件を探索すること等が考えられる。
【0065】
また、上記においても説明をしたように、本例において、新たな印刷条件が見つかった場合、印刷装置10は、新たな印刷条件を採用するか否かについて、ユーザに選択を行わせる。これに対し、印刷の動作の変形例においては、例えば所定の条件下で、ユーザによる選択を省略して、自動的に新たな印刷条件を採用すること等も考えられる。より具体的に、例えば、新たな印刷の条件を探索する動作において、ノズルリカバリが可能になる新たな印刷条件が見つかった場合、印刷装置10において、新たな印刷条件について、予め登録されている登録条件に合致しているか否かを更に判断することが考えられる。そして、合致している場合には、例えば、新たな印刷条件を用いて印刷を実行するか否かの選択をユーザに行わせることなく、印刷装置10において、新たな印刷条件を用いて、印刷データに基づく印刷の動作を実行してもよい。このように構成すれば、例えば、新たな印刷条件での印刷の動作をより効率的に実行することができる。また、このような自動的な印刷の動作の継続を行うか否かについては、例えば、印刷装置10に対して設定する動作モードに応じて切り替えてもよい。この場合、例えば、所定の動作モードである場合に、上記のようにして、自動的に新たな印刷条件を採用する。また、印刷装置10の構成等によっては、例えば所定の動作モードにおいて、常にユーザによる選択を省略して、自動的に新たな印刷条件を採用してもよい。
【0066】
また、印刷に求められる品質や印刷の目的等によっては、印刷条件の変更によって生じる印刷の品質の変化や印刷速度の低下について、より厳しい基準での判断が必要になる場合もある。また、その結果、ノズルリカバリが可能になる新たな印刷条件が見つかった場合でも、新たな印刷条件を採用しないで、印刷の動作を中止(キャンセル)することが望ましい場合もある。この点に関し、本例においては、例えば
図8(b)に示すダイアログの表示に対してプリントキャンセルをユーザが選択することで、印刷の動作を中止することができる。また、印刷の動作の変形例では、例えば、所定の条件に基づき、自動的に、印刷の動作を中止してもよい。この場合、新たな印刷の条件を探索する動作において、印刷装置10は、新たな印刷条件について、例えば、印刷を中止すべき条件として登録されている印刷中止条件に合致しているか否かを判断する。そして、合致している場合には、例えば、ユーザの意思確認を行わず、自動的に、印刷の動作を中止する。このように構成すれば、例えば、所定の条件下で印刷の動作を適切に中止することができる。印刷中止条件としては、例えば、ユーザが求める印刷の品質や印刷速度等に応じて、印刷の品質が所定の許容範囲よりも変化することや、印刷時間が所定の割合よりも増加すること等に対応する条件を登録しておくことが考えられる。
【0067】
また、上記においても説明をしたように、本例において、ノズルリカバリが可能になる新たな印刷条件が見つからない場合、印刷装置10は、例えば
図8(a)に示すダイアログの表示により、設定パス数又は主走査速度の変更をユーザに促す。これに対し、印刷の目的等によっては、新たな印刷の条件を探索する動作の中で、自動的に、MAPS速度以外の条件を更に変化させてもよい。また、この場合、例えば、設定パス数及び主走査速度の両方又はいずれかを更に変化させて、ノズルリカバリが可能になる新たな印刷条件を探索することが考えられる。このように構成すれば、例えば、ノズルリカバリが可能になる印刷条件について、より多くの条件の中から探索することができる。また、これにより、例えば、印刷の目的等に応じて、より好ましい新たな印刷条件を適切に探索することができる。この場合、新たな印刷条件として、例えば、印刷速度の低下を最も少なくして印刷を継続できる条件等を探索すること等が考えられる。このように構成すれば、例えば、より適切な新たな印刷条件をユーザに提示することができる。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明は、例えば印刷方法に好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0069】
10・・・印刷装置、102・・・インクジェットヘッド、12・・・ヘッド部、14・・・プラテン、16・・・主走査駆動部、18・・・副走査駆動部、20・・・入出力部、202・・・印刷制御処理部、204・・・不良ノズル確認処理部、206・・・リカバリ確認処理部、208・・・条件探索処理部、210・・・入出力処理部、22・・・制御部、50・・・媒体