(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024020176
(43)【公開日】2024-02-14
(54)【発明の名称】デスロラタジンを含有する医薬組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 9/16 20060101AFI20240206BHJP
A61K 31/4545 20060101ALI20240206BHJP
A61P 37/08 20060101ALI20240206BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20240206BHJP
A61P 11/02 20060101ALI20240206BHJP
A61K 9/20 20060101ALI20240206BHJP
A61K 47/02 20060101ALI20240206BHJP
A61K 47/34 20170101ALI20240206BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20240206BHJP
A61K 47/38 20060101ALI20240206BHJP
A61K 47/36 20060101ALI20240206BHJP
【FI】
A61K9/16
A61K31/4545
A61P37/08
A61P17/00
A61P11/02
A61K9/20
A61K47/02
A61K47/34
A61K47/26
A61K47/38
A61K47/36
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023124667
(22)【出願日】2023-07-31
(31)【優先権主張番号】P 2022122948
(32)【優先日】2022-08-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】591040753
【氏名又は名称】東和薬品株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】弁理士法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三鴨 睦
(72)【発明者】
【氏名】大田 綾香
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA31
4C076AA37
4C076BB01
4C076CC15
4C076CC18
4C076DD26A
4C076DD29B
4C076DD29H
4C076DD41C
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4C076EE48
4C076FF37
4C076GG01
4C086AA01
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4C086BC27
4C086MA02
4C086MA05
4C086MA35
4C086MA52
4C086NA03
4C086ZA34
4C086ZA89
4C086ZB13
(57)【要約】
【課題】剤形を問わず、良好な光安定性を有するデスロラタジン含有医薬組成物を提供すること。
【解決手段】デスロラタジンまたはその薬学的に許容される塩を含む核粒子を、遮光剤を含有する被覆層で被覆した薬物含有粒子を含む医薬組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
デスロラタジンまたはその薬学的に許容される塩を含む核粒子を、遮光剤を含有する被覆層で被覆した薬物含有粒子を含む医薬組成物。
【請求項2】
前記遮光剤が、酸化チタン、三二酸化鉄、および黄色三二酸化鉄からなる群より選択される少なくとも1つを含む、請求項1記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記遮光剤を含有する被覆層が、さらに、アミノアルキルメタクリレートコポリマーE、ポリビニルアルコール、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒプロメロース、ポリビニルアルコール・アクリル酸・メタクリル酸メチル共重合体、エチルセルロース、アンモニオアルキルメタクリレートコポリマー、およびタルクからなる群より選択される少なくとも1つのコーティング剤を含有する、請求項1または2記載の医薬組成物。
【請求項4】
前記核粒子が、さらに、D-マンニトール、乳糖水和物、結晶セルロース、およびリン酸水素カルシウム水和物からなる群より選択される少なくとも1つの賦形剤を含有する、請求項1または2記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記核粒子が、さらに、ポリビニルアルコール、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒプロメロースおよびポリビニルアルコール・アクリル酸・メタクリル酸メチル共重合体からなる群より選択される少なくとも1つの結合剤を含有する、請求項1または2記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記核粒子が、さらに、部分アルファー化デンプン、アルファー化デンプン、デンプングリコール酸ナトリウム、クロスカルメロースナトリウム、コーンスターチ、軽質無水ケイ酸および低置換度ヒドロキシプロピルセルロースからなる群より選択される少なくとも1つの崩壊剤を含有する、請求項1または2記載の医薬組成物。
【請求項7】
請求項1または2記載の医薬組成物を含有する口腔内崩壊錠。
【請求項8】
デスロラタジンまたはその薬学的に許容される塩を含む核粒子を、遮光剤を含有する層で被覆し、薬物含有粒子を得る工程、および
前記薬物含有粒子を圧縮成形する工程を含む、医薬製剤の製造方法。
【請求項9】
デスロラタジンまたはその薬学的に許容される塩を含む核粒子を、遮光剤を含有する層で被覆する、デスロラタジンまたはその薬学的に許容される塩の光安定化方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デスロラタジンを含有する医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
デスロラタジン(一般名)は、下記式:
【化1】
で表され、化学名が8-Chloro-11-(piperidin-4-ylidene)-6,11-dihydro-5H-benzo[5,6]cyclohepta[1,2-b]pyridineと記されるH1受容体拮抗薬であり、特にアレルギー性疾患の治療に有用である。
【0003】
特許文献1には、デスロラタジンを含有する薬学的組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の薬学的組成物は、保存時の変色や分解を抑制する観点から、二塩基性リン酸カルシウム水和物等の塩基性塩を約50重量%含有し、かつステアリン酸等の酸性賦形剤を実質的に含有しないため、製剤設計の面で制約が大きい。また、デスロラタジンは光によって分解することが知られているが、光安定性についての詳細な知見は少ないことが現状である。
【0006】
本発明は、剤形を問わず、良好な光安定性を有するデスロラタジン含有医薬組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
鋭意検討の結果、デスロラタジンまたはその薬学的に許容される塩を含む核粒子を、遮光剤を含有する層で被覆した薬物含有粒子を用いて医薬組成物を調製することにより、得られた製剤の光安定性が改善されることが見出された。
【0008】
すなわち、本発明は、
〔1〕デスロラタジンまたはその薬学的に許容される塩を含む核粒子を、遮光剤を含有する被覆層で被覆した薬物含有粒子を含む医薬組成物、
〔2〕前記遮光剤が、酸化チタン、三二酸化鉄、および黄色三二酸化鉄からなる群より選択される少なくとも1つを含む、前記〔1〕記載の医薬組成物、
〔3〕前記遮光剤を含有する被覆層が、さらに、アミノアルキルメタクリレートコポリマーE、ポリビニルアルコール、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒプロメロース、ポリビニルアルコール・アクリル酸・メタクリル酸メチル共重合体、エチルセルロース、アンモニオアルキルメタクリレートコポリマー、およびタルクからなる群より選択される少なくとも1つのコーティング剤を含有する、前記〔1〕または〔2〕記載の医薬組成物、
〔4〕前記核粒子が、さらに、D-マンニトール、乳糖水和物、結晶セルロース、およびリン酸水素カルシウム水和物からなる群より選択される少なくとも1つの賦形剤を含有する、前記〔1〕~〔3〕のいずれかに記載の医薬組成物、
〔5〕前記核粒子が、さらに、ポリビニルアルコール、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒプロメロースおよびポリビニルアルコール・アクリル酸・メタクリル酸メチル共重合体からなる群より選択される少なくとも1つの結合剤を含有する、前記〔1〕~〔4〕のいずれかに記載の医薬組成物、
〔6〕前記核粒子が、さらに、部分アルファー化デンプン、アルファー化デンプン、デンプングリコール酸ナトリウム、クロスカルメロースナトリウム、コーンスターチ、軽質無水ケイ酸および低置換度ヒドロキシプロピルセルロースからなる群より選択される少なくとも1つの崩壊剤を含有する、前記〔1〕~〔5〕のいずれかに記載の医薬組成物、
〔7〕前記〔1〕~〔6〕のいずれかに記載の医薬組成物を含有する口腔内崩壊錠、
〔8〕デスロラタジンまたはその薬学的に許容される塩を含む核粒子を、遮光剤を含有する層で被覆し、薬物含有粒子を得る工程、および前記薬物含有粒子を圧縮成形する工程を含む、医薬製剤の製造方法、
〔9〕デスロラタジンまたはその薬学的に許容される塩を含む核粒子を、遮光剤を含有する層で被覆する、デスロラタジンまたはその薬学的に許容される塩の光安定化方法、に関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、剤形を問わず、良好な光安定性を有するデスロラタジン含有医薬組成物が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本実施形態に係る医薬組成物は、デスロラタジンまたはその薬学的に許容される塩を含む核粒子を、遮光剤を含有する層で被覆した薬物含有粒子を含むことを特徴とする。
【0011】
本発明の一実施形態に係る薬物含有粒子の作製手順を含む医薬組成物の作製手順について、以下に詳細に説明する。但し、以下の記載は本発明を説明するための例示であり、本発明の技術的範囲をこの記載範囲にのみ限定する趣旨ではない。なお、本明細書において、「~」を用いて数値範囲を示す場合、その両端の数値を含むものとする。
【0012】
<薬物含有粒子およびその製造方法>
本実施形態に係る核粒子は、薬効成分であるデスロラタジンまたはその薬学的に許容される塩の粉末、該薬効成分を含有する組成物、ならびにそれらの造粒物のいずれであってもよい。
【0013】
核粒子は、例えば、常法により、薬効成分に、薬学的に許容される添加剤を混合して造粒することにより製造される。薬学的に許容される添加剤としては、特に制限されず、例えば、賦形剤、崩壊剤、結合剤、滑沢剤、甘味剤、香料、溶解補助剤等を同様に使用することができる。なかでも、賦形剤、崩壊剤、結合剤、および滑沢剤からなる群より選択される少なくとも1つが好適に使用され、賦形剤、崩壊剤、および結合剤からなる群より選択される少なくとも1つが特に好適に使用される。
【0014】
デスロラタジンまたはその薬学的に許容される塩の、体積基準測定における累積50%粒子径(d50)は、溶出性(特にpH6.0~7.0付近の中性領域の液性での溶出性)の観点から、3~30μmが好ましく、7~20μmが好ましく、11~13μmがさらに好ましい。なお、d50は、レーザー回折・散乱法を用いて測定される。
【0015】
賦形剤は特に制限されないが、例えば、D-マンニトール、乳糖水和物、結晶セルロース、およびリン酸水素カルシウム水和物等が挙げられる。これらの賦形剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0016】
薬物含有粒子中の賦形剤の含有量は、特に制限されないが、30重量%以上が好ましく、40重量%以上がより好ましく、50重量%以上がさらに好ましい。また、該含有量は、90重量%以下が好ましく、85重量%以下がより好ましく、80重量%以下がさらに好ましい。
【0017】
崩壊剤は特に制限されないが、例えば、部分アルファー化デンプン、アルファー化デンプン、デンプングリコール酸ナトリウム、クロスカルメロースナトリウム、コーンスターチ、軽質無水ケイ酸および低置換度ヒドロキシプロピルセルロース等が挙げられる。これらの崩壊剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0018】
薬物含有粒子中の崩壊剤の含有量は、特に制限されないが、1重量%以上が好ましく、3重量%以上がより好ましく、5重量%以上がさらに好ましい。また、該含有量は、40重量%以下が好ましく、30重量%以下がより好ましく、20重量%以下がさらに好ましい。
【0019】
結合剤は特に制限されないが、例えば、ポリビニルアルコール、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒプロメロースおよびポリビニルアルコール・アクリル酸・メタクリル酸メチル共重合体等が挙げられる。これらの結合剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0020】
薬物含有粒子中の結合剤の含有量は、特に制限されないが、0.1重量%以上が好ましく、0.5重量%以上がより好ましく、1.0重量%以上がさらに好ましい。また、該含有量は、10重量%以下が好ましく、7.0重量%以下がより好ましく、4.0重量%以下がさらに好ましい。
【0021】
滑沢剤は、特に限定されないが、タルク、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、ショ糖脂肪酸エステル、ステアリルアルコール等が挙げられる。特にステアリン酸マグネシウムが好ましい。
【0022】
甘味剤は、特に限定されないが、アスパルテーム、サッカリン、スクラロース等が挙げられる。
【0023】
香料は、特に限定されないが、ペパーミント、l-メントール等が挙げられる。
【0024】
溶解補助剤は、特に限定されないが、ポリソルベート、マクロゴール等が挙げられる。
【0025】
核粒子の製造方法は、特に制限されないが、例えば、下記の方法で製造することができる。精製水に結合剤を溶解して造粒液を調製し、薬効成分、賦形剤および崩壊剤を湿式高せん断造粒機に投入し混合後、前記造粒液を加えて造粒する。得られた粒子を解砕し、流動層造粒乾燥機を用いて乾燥後、整粒して核粒子を得る。
【0026】
(薬物含有粒子)
本実施形態に係る薬物含有粒子は、核粒子もしくは後記する遮蔽層で核粒子を被覆した粒子を、遮光剤を含有する被覆層で被覆することにより製造される。
【0027】
遮光剤は特に制限されないが、例えば、酸化チタン、三二酸化鉄、黄色三二酸化鉄等が挙げられる。これらの遮光剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0028】
被覆層中の遮光剤の含有量は、特に制限されないが、10重量%以上が好ましく、20重量%以上がより好ましく、30重量%以上がさらに好ましい。また、該含有量は、70重量%以下が好ましく、60重量%以下がより好ましく、50重量%以下がさらに好ましい。
【0029】
遮光剤を含有する被覆層は、遮光剤以外のコーティング剤を含有していてもよい。前記コーティング剤としては特に制限されないが、例えば、アミノアルキルメタクリレートコポリマーE、アンモニオアルキルメタクリレートコポリマー、アクリレート/メタクリレートコポリマー、メタクリル酸/メタクリレートコポリマー、ポリビニルアルコール/アクリル酸/メタクリレートコポリマー等のメタクリレートポリマー(メタクリレート(メタクリル酸エステル)をモノマー成分として含むポリマー);ヒドロキシプロピルセルロース、ヒプロメロース、エチルセルロース等のセルロース系コーティング剤;ポリビニルアルコール、タルク等が挙げられる。なかでも、有効成分の苦みを抑制する観点から、アミノアルキルメタクリレートコポリマーEが好ましい。これらのコーティング剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0030】
被覆層中のコーティング剤の含有量は、特に制限されないが、30重量%以上が好ましく、40重量%以上がより好ましく、50重量%以上がさらに好ましい。また、該含有量は、90重量%以下が好ましく、80重量%以下がより好ましく、70重量%以下がさらに好ましい。
【0031】
被覆層を構成する遮光剤およびコーティング剤は、核粒子を構成する成分と一部が重複していてもよい。
【0032】
本実施形態に係る薬物含有粒子は、遮光剤を含有する被覆層と接触しないよう、薬物含有粒子と遮光剤を含有する被覆層との間に遮蔽層を設けてもよい。この場合、薬物含有粒子は、核粒子を遮蔽層で被覆した粒子を、さらに遮光剤を含有する被覆層で被覆することにより製造される。
【0033】
また、遮蔽層を構成する成分は、特に制限されないが、例えば、ポリビニルアルコール、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒプロメロース、ポリビニルアルコール・アクリル酸・メタクリル酸メチル共重合体、およびタルク等から1または2以上が選択される。また、核粒子および遮光剤を含有する被覆層を構成する成分と、遮蔽層を構成する成分の一部が重複していてもよい。
【0034】
薬物含有粒子の製造方法は、特に制限されないが、例えば、下記の方法で製造することができる。溶媒にコーティング剤を溶解した溶解液に、遮光剤を精製水に分散させた分散液を分散してコーティング液を調製する。そして、得られた核粒子または核粒子を遮蔽層で被覆した粒子を流動層造粒乾燥機に投入し混合後、前記コーティング液を噴霧し、乾燥後、整粒して薬物含有粒子を得る。なお、安定性試験における溶出遅延を抑制するために、遮光剤を含有する被覆層で被覆した粒子に、公知の方法でさらに前記の賦形剤や糖アルコール等を被覆して薬物含有粒子としてもよい。特に、前記糖アルコールとしてD-マンニトールが好ましい。
【0035】
<デスロラタジン含有製剤およびその製造方法>
本実施形態に係る医薬組成物は、例えば、錠剤、細粒剤、顆粒剤、散剤、カプセル剤、丸剤、ドライシロップ剤等の形態(医薬製剤)に製剤化できるが、これらに限定されない。錠剤としては、特に制限されないが、例えば、口腔内崩壊錠、口中錠(トローチ)、口腔錠(バッカル錠、舌下錠)、溶解錠、植込錠等が挙げられ、特に口腔内崩壊錠として好適に使用できる。
【0036】
本実施形態に係るデスロラタジン含有医薬組成物の水分含量は特に制限されないが、例えば、3質量%以下であることが好ましく、2質量%以下であることがより好ましい。当該水分含量の下限は特に制限されず、0質量%でもよいが、当該水分含量は、例えば、0.2質量%以上とすることができる。なお、当該水分含量は、例えばカールフィッシャー法により測定することができる。
【0037】
錠剤の製造方法としては、前記の薬物含有粒子に、打錠に際して使用可能な添加剤を所望によりさらに加えて混合したのち、常法により圧縮成型する方法であればよく、慣用の方法を利用できる。
【0038】
口腔内崩壊錠の製造方法としては、特に制限されないが、前記の薬物含有粒子と後記の崩壊性粒子に、打錠に際して使用可能な添加剤を所望によりさらに加えて混合したのち、常法により圧縮成型する方法等が挙げられる。
【0039】
本実施形態に係る錠剤は、遮光剤を含有する被覆層を薬物含有粒子に含まれる粒子上に設けているため、医薬組成物を圧縮成形して得られた素錠を遮光層等で被覆する必要がない。そのため、錠剤の製造時の被覆工程で割れ欠けが生じたり、口腔内での崩壊性が遅延したりすることを防止することができる。
【0040】
「崩壊性粒子」は、十分に高い硬度の錠剤へと打錠された場合にも、水の存在下に急速に崩壊するという特徴を備えた粒子を意味する。かかる崩壊性粒子が、水と接触したとき速やかに水を導き入れることで、崩壊性粒子および薬物含有粒子等を含有する錠剤の一体性が急速に失われる(錠剤が崩壊する)ものと考えられる。
【0041】
崩壊性粒子は、賦形剤および崩壊剤を含むことが好ましい。崩壊性粒子に含まれる賦形剤および崩壊剤は特に制限されないが、例えば、前記薬物含有粒子の製造に用いられる、賦形剤および崩壊剤が挙げられる。また、薬物含有粒子を構成する成分と、崩壊性粒子を構成する成分の一部が重複していてもよい。
【0042】
崩壊性粒子中の賦形剤の含有量は特に制限されないが、30重量%以上が好ましく、40重量%以上がより好ましく、50重量%以上がさらに好ましい。また、該含有量は、85重量%以下が好ましく、80重量%以下がより好ましく、75重量%以下がさらに好ましい。
【0043】
崩壊性粒子中の崩壊剤の含有量は特に制限されないが、10重量%以上が好ましく、15重量%以上がより好ましく、20重量%以上がさらに好ましい。また、該含有量は、40重量%以下が好ましく、35重量%以下がより好ましく、30重量%以下がさらに好ましい。
【0044】
崩壊性粒子は、無機添加剤を含有することが好ましい。無機添加剤としては、親水性かつ非水溶性の無機添加剤が好ましい態様として挙げられる。かかる無機添加剤の導水効果により造粒粒子中で水の浸透性を向上させ、水と接触したときに造粒粒子を直ちに崩壊させると考えられる。無機添加剤としては、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、リン酸水素カルシウム、無水リン酸水素カルシウム、無水リン酸水素カルシウム造粒物、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、ケイ酸アルミン酸マグネシウム、ハイドロタルサイト、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、軽質無水ケイ酸、二酸化ケイ素、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミナマグネシウム、乾燥水酸化アルミニウムゲル、およびタルクが挙げられ、これらのうち1種以上を含むことが好ましく;軽質無水ケイ酸、無水リン酸水素カルシウム、およびメタケイ酸アルミン酸マグネシウムからなる群より選ばれる1種以上がより好ましく;軽質無水ケイ酸がさらに好ましい。
【0045】
崩壊性粒子中の無機添加剤の含有量は特に制限されないが、0.1重量%以上が好ましく、0.3重量%以上がより好ましく、0.5重量%以上がさらに好ましく、0.7重量%以上が特に好ましい。また、該含有量は、5.0重量%以下が好ましく、3.0重量%以下がより好ましく、1.5重量%以下がさらに好ましい。
【0046】
崩壊性粒子は、本発明の効果を阻害しない範囲で、前記成分以外の成分(その他の成分)を含んでいてもよい。その他の成分としては、特に限定されず、例えば、結合剤、滑沢剤、甘味剤、香料、コーティング剤、着色剤、溶解補助剤、薬効成分等が挙げられる。
【0047】
崩壊性粒子の製造方法は、特に制限されないが、例えば、D-マンニトール等の賦形剤と軽質無水ケイ酸等の無機添加剤とを含む混合物の流動層に、崩壊剤を含む分散液を噴霧し乾燥して造粒することで製造することができる。
【0048】
崩壊性粒子として、特許第5674666号公報、特許第6230539号公報、特許第6496085号公報等に記載の公知の崩壊性粒子を使用してもよい。
【0049】
打錠に際して使用可能な添加剤としては、特に制限されず、例えば、前記薬物含有粒子および崩壊性粒子の製造に用いられる、賦形剤、崩壊剤、無機添加剤、結合剤、滑沢剤、甘味剤、香料、コーティング剤、着色剤、溶解補助剤等を同様に使用することができる。なかでも、滑沢剤、無機添加剤、甘味剤、コーティング剤、および着色剤からなる群より選択される少なくとも1つを含むことが好ましく、滑沢剤を含むことがより好ましく、滑沢剤としてステアリン酸マグネシウムを含むことがさらに好ましい。
【0050】
医薬組成物中の賦形剤の含有量は特に制限されないが、30重量%以上が好ましく、40重量%以上がより好ましく、50重量%以上がさらに好ましい。また、該含有量は、85重量%以下が好ましく、80重量%以下がより好ましく、75重量%以下がさらに好ましい。
【0051】
医薬組成物中の崩壊剤の含有量は特に制限されないが、5重量%以上が好ましく、10重量%以上がより好ましく、15重量%以上がさらに好ましい。また、該含有量は、40重量%以下が好ましく、35重量%以下がより好ましく、30重量%以下がさらに好ましい。
【0052】
医薬組成物中の結合剤の含有量は特に制限されないが、0.1重量%以上が好ましく、0.2重量%以上がより好ましく、0.3重量%以上がさらに好ましい。また、該含有量は、10重量%以下が好ましく、5.0重量%以下がより好ましく、2.0重量%以下がさらに好ましい。
【0053】
医薬組成物中の滑沢剤の含有量は特に制限されないが、0.1重量%以上が好ましく、0.3重量%以上がより好ましく、0.5重量%以上がさらに好ましい。また、該含有量は、10重量%以下が好ましく、7.0重量%以下がより好ましく、3.0重量%以下がさらに好ましい。
【0054】
医薬組成物中の無機添加剤の含有量は特に制限されないが、0.1重量%以上が好ましく、0.3重量%以上がより好ましく、0.5重量%以上がさらに好ましく、0.7重量%以上が特に好ましい。また、該含有量は、5.0重量%以下が好ましく、3.0重量%以下がより好ましく、1.5重量%以下がさらに好ましい。
【0055】
医薬組成物中の金属リン酸塩および金属リン酸水素塩(これらの水和物を含む)の合計含有量は、40.0重量%未満が好ましく、20.0重量%未満がより好ましく、10.0重量%未満がさらに好ましく、5.0重量%未満がさらに好ましく、3.0重量%未満がさらに好ましく、1.0重量%未満が特に好ましい。また、金属リン酸塩および金属リン酸水素塩(これらの水和物を含む)を含有しない医薬組成物としてもよい。本実施形態に係る医薬組成物は、金属リン酸塩および金属リン酸水素塩(これらの水和物を含む)の合計含有量を前記の範囲としても、良好な光安定性を発揮する。
【0056】
医薬組成物中の結晶セルロースの含有量は、錠剤の崩壊速度を担保する観点から、20.0重量%未満が好ましく、15.0重量%未満がより好ましく、10.0重量%未満がさらに好ましく、5.0重量%未満がさらに好ましく、3.0重量%未満がさらに好ましく、1.0重量%未満がさらに好ましく、0.1重量%未満が特に好ましい。また、結晶セルロースを含有しない医薬組成物としてもよい。
【0057】
医薬組成物中の薬物含有粒子の割合は、5~90重量%が好ましく、10~80重量%がより好ましく、20~70重量%がさらに好ましく、30~60重量%が特に好ましい。
【0058】
医薬組成物を口腔内崩壊錠に用いる場合の、医薬組成物中の崩壊性粒子の割合は、20~90重量%が好ましく、40~85重量%がより好ましく、60~80重量%がさらに好ましい。
【0059】
圧縮成型は、直接打錠法によるのが好ましく、その際の打錠圧は、錠剤の大きさにより異なるが、通常2~20kN、好ましくは3~16kN、より好ましくは4~12kNである。
【0060】
口腔内崩壊錠の直径は大きすぎると飲み込みづらく、小さすぎると手でつかみにくく取り扱いづらい。本実施形態に係る口腔内崩壊錠の錠剤径は、例えば3~20mm、好ましくは6~12mmである。
【0061】
本実施形態に係る口腔内崩壊錠の実用硬度は、直径4~6mmでは、好ましくは20N以上、より好ましくは25N以上、さらに好ましくは30N以上である。直径6~9mmでは、好ましくは40N以上、より好ましくは45N以上、さらに好ましくは50N以上である。直径9~11mmでは、好ましくは50N以上、より好ましくは60N以上、さらに好ましくは70N以上である。直径11~15mmでは、好ましくは70N以上、より好ましくは85N以上、さらに好ましくは100N以上である。直径15mm以上では、好ましくは100N以上、より好ましくは125N以上、さらに好ましくは150N以上である。前記の実用硬度を超える錠剤は、製造中や輸送中に破損することがない。なお、本実施形態において、口腔内崩壊錠の硬度は、錠剤硬度計(TBH-425、ERWEKA社製)を用い、その冶具により錠剤の横方向から挟んで徐々に加圧して錠剤が割れた時点の負荷(N)により求められる。
【0062】
錠剤硬度は高いほど破損のリスクが減少するが、崩壊時間とは相反する関係にあり、口腔内崩壊錠の崩壊時間が30秒を超えない範囲に設定することが好ましい。本実施形態に係る口腔内崩壊錠の崩壊時間は、30秒以下が好ましく、27秒以下がより好ましく、25秒以下がさらに好ましい。なお、本実施形態において、口腔内崩壊錠の崩壊時間は、日本薬局方に準拠した方法により測定することができる。
【0063】
本実施形態に係る錠剤が収容されるPTP包装の素材としては、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニリデン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリスチレンまたはポリカーボネート等の樹脂や、アルミニウム等の金属が挙げられる。これらの素材は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。組み合わせの例としては、例えば、ポリ塩化ビニルとポリ塩化ビニリデンとを積層することや、ポリ塩化ビニルとポリクロロトリフルオロエチレンとを積層すること等が挙げられる。上記の樹脂を公知の方法で成形した樹脂シートの、成形したポケットに錠剤を入れ、アルミニウム箔を用いて蓋をすることで、PTP包装することができる。また、光安定性を向上する観点から、特定の光の波長を遮断できる素材を用いたPTP包装を使用してもよい。素材の光線透過率の90%吸収波長としては、例えば、390nm、480nm、550nm、560nm、600nmが挙げられる。また、素材の色としては、例えば、クリア(透明色)、パーシモン、オレンジ、レッド、イエローが挙げられる。
【0064】
PTP包装は、さらにアルミピローや光の特定の波長を遮断できる素材を用いた包装袋によって包装されていてもよい。このアルミピローや光の特定の波長を遮断できる素材を用いた包装袋には、さらに乾燥剤が収容されていてもよい。乾燥剤としては、例えば、塩化カルシウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、シリカゲル、ゼオライト等が挙げられる。
【0065】
以下の構造式で示される不純物Aが、後記する光安定性試験において増加することが確認された。
【化2】
【0066】
光安定性試験においては、上記の不純物Aの増加に注目して、デスロラタジンを含有する医薬組成物の光安定性を評価した。本実施形態に係る医薬組成物は、上記の不純物の増加を顕著に抑制することができる。
【実施例0067】
本発明を実施例に基づいて説明するが、本発明は、実施例にのみ限定されるものではない。
【0068】
<硬度測定>
錠剤硬度計(ERWEKA社製、TBH425)を用い、その冶具により錠剤の横方向から挟んで徐々に加圧して錠剤が割れた時点の負荷(N)を測定した。
【0069】
<崩壊試験>
崩壊試験器(日本薬局方準拠)を用いた。ガラス容器に37℃の水900mLを入れ、錠剤を入れたバスケット(底部が網状)を容器の水中で上下運動させ、錠剤が崩れきるまでの時間(崩壊時間)を測定した。
【0070】
以下、実施例および比較例において用いる各種薬品を示す。
デスロラタジン(d50=12μm)
ポリビニルアルコール(部分けん化物):ゴーセノール(登録商標)EG-05P
アミノアルキルメタクリレートコポリマーE:オイドラギット(登録商標)E100
【0071】
<核粒子の製造>
精製水にポリビニルアルコール(部分けん化物)を溶解して造粒液を調製した。デスロラタジン、D-マンニトールおよび部分アルファー化デンプンを湿式高せん断造粒機に投入し混合後、前記造粒液を加えて造粒した。得られた粒子を解砕し、流動層造粒乾燥機を用いて乾燥後、整粒して核粒子を得た。各成分の仕込量を表1に示す。
【表1】
【0072】
<薬物含有粒子の製造>
表2および表2-2の仕込量に従い、精製水にポリビニルアルコール(部分けん化物)を溶解した溶解液に99.5%エタノールを混和後、タルクを分散してコーティング液を調製した。核粒子を流動層造粒乾燥機に投入し混合後、コーティング液を噴霧し、乾燥後整粒し、核粒子を遮蔽層で被覆した粒子を得た(実施例5)。次に、表2の仕込量に従い、99.5%エタノールにアミノアルキルメタクリレートコポリマーEを溶解した溶解液に、酸化チタンおよび三二酸化鉄を精製水に分散させた分散液およびタルクを分散してコーティング液を調製した。上記で得られた核粒子または核粒子を遮蔽層で被覆した粒子を流動層造粒乾燥機に投入し混合後、コーティング液を噴霧し、乾燥後、整粒して薬物含有粒子を得た。なお、比較例1の薬物含有粒子は、核粒子に前記コーティング液を噴霧せず、遮光剤を含有する被覆層を形成していない。また、実施例6の薬物含有粒子は、遮光剤を含有する被覆層で被覆した粒子を流動層造粒乾燥機に投入し混合後、精製水にD-マンニトールを溶解した液を噴霧し、乾燥後、整粒することにより、さらにD-マンニトールを被覆して薬物含有粒子とした。
【0073】
<崩壊性粒子の製造>
D-マンニトール、エチルセルロースおよび軽質無水ケイ酸を流動層造粒機へ投入し、トウモロコシデンプン、部分アルファー化デンプンおよび三二酸化鉄を精製水に分散させた分散液を噴霧し、乾燥後、整粒して崩壊性粒子を得た。
【0074】
<錠剤の製造>
得られた薬物含有粒子と崩壊性粒子に、スクラロース、およびステアリン酸マグネシウムを混合し、表2および表2-2の仕込量に従い打末を調製し、錠剤質量が112mgとなる様、打錠圧6kNで打錠を行ない、比較例1および実施例1~6の錠剤(直径6.5mm)を得た。打錠は、ロータリー打錠機((株)菊水製作所製、VELA)を用いて行った。なお、実施例の錠剤の硬度は37~73N、崩壊時間は12~15秒であった。
【表2】
【表3-1】
【0075】
<保存安定性試験>
得られた各錠剤を、無包装のまま光安定性試験装置(ナガノサイエンス(株)製のLTL-200A5-15WD)に入れ、光源にD65ランプを用いて総照度が120万lux・hrとなるよう照射した。錠剤を一定量の抽出溶媒(メタノール/水混液(9:1))に懸濁後、メンブレンフィルターでろ過して得た試料溶液を、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いて、表3または表3-2の分析条件により、実施例1~6の各錠剤中の不純物Aの生成量を測定した。なお、不純物Aの生成量は、測定したピークの面積値をもとにして計算した。結果を表4に示す。
【0076】