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特開2024-2018枠体、パネル体、及びパネル体の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024002018
(43)【公開日】2024-01-11
(54)【発明の名称】枠体、パネル体、及びパネル体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   E06B 3/58 20060101AFI20231228BHJP
【FI】
E06B3/58 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022100952
(22)【出願日】2022-06-23
(71)【出願人】
【識別番号】000239714
【氏名又は名称】文化シヤッター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100101890
【弁理士】
【氏名又は名称】押野 宏
(74)【代理人】
【識別番号】100098268
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 豊
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 孝文
(74)【代理人】
【識別番号】100166420
【弁理士】
【氏名又は名称】福川 晋矢
(74)【代理人】
【識別番号】100150865
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 司
(72)【発明者】
【氏名】船山 智
【テーマコード(参考)】
2E016
【Fターム(参考)】
2E016AA02
2E016AA04
2E016BA03
2E016CA01
2E016CB01
2E016CC01
2E016DA01
2E016DB02
2E016DC01
2E016DD01
(57)【要約】
【課題】相互に接合される複数の枠部材によって構成される枠体において、枠部材の取り付け向きを間違えてしまう事を低減すること(間違いに気づき易くすること)が可能な枠体の提供。
【解決手段】パネル体に取り付けられるはめ込み部材200を保持するための枠であり、相互に接合される複数の枠部材によって構成され、パネル体に形成された開口部に組み込まれる枠体であって、枠部材11aに、他の枠部材を締結するための締結部材受け部THが形成されており、締結部材受け部THが、枠部材11aにおける、パネル体の厚さ方向の中心から、オフセットした位置に形成されている、枠体。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
パネル体に取り付けられるはめ込み部材を保持するための枠であり、相互に接合される複数の枠部材によって構成され、パネル体に形成された開口部に組み込まれる枠体であって、
前記複数の枠部材の少なくとも一つに、他の枠部材を締結するための締結部材受け部が形成されており、前記締結部材受け部が、前記枠部材における、前記パネル体の厚さ方向の中心から、オフセットした位置に形成されている、枠体。
【請求項2】
前記複数の枠部材に、前記はめ込み部材を受け入れる受入溝が形成されており、
前記枠部材の前記厚さ方向の一方の端部から前記受入溝までの距離と、前記枠部材の前記厚さ方向の他方の端部から前記受入溝までの距離が、異なっている、請求項1に記載の枠体。
【請求項3】
前記複数の枠部材の少なくとも一つの前記受入溝が、前記はめ込み部材が挿入される入口部を有し、
前記入口部より前記はめ込み部材の挿入方向の奥側において、前記厚さ方向が前記入口部よりも大きくなる空間部となっており、
前記入口部の両側となる位置から奥側となる位置であって、前記はめ込み部材が挿入された際に前記はめ込み部材と対向する位置に、前記はめ込み部材と当接するバックアップ材を支持する受け部材が形成されている、請求項2に記載の枠体。
【請求項4】
前記入口部の前記厚さ方向の一方の端部から、一方側の前記受け部材までの距離と、前記入口部の前記厚さ方向の他方の端部から、他方側の前記受け部材までの距離が、同一である、請求項3に記載の枠体。
【請求項5】
前記締結部材受け部が、前記枠部材の前記厚さ方向の端部から前記受入溝までの距離が短い側にオフセットされている、請求項3に記載の枠体。
【請求項6】
前記枠部材が、
前記厚さ方向の両端側に位置する側面部と、
前記開口部に組み込まれた際に、前記開口部の内面側を構成する開口部内面部と、
前記側面部と前記開口部内面部との接合部において形成された、前記厚さ方向の内側に向かって凹んだ段差凹部と、を備えており、
前記枠部材の前記厚さ方向の端部から前記受入溝までの距離が短い側の前記段差凹部の内面側が、前記受け部材として機能する、請求項5に記載の枠体。
【請求項7】
前記相互に接合される複数の枠部材の少なくとも1つにおいて、その接合方向が誤っている場合に、前記枠部材の接合に段差が生じる、請求項1から6の何れかに記載の枠体。
【請求項8】
請求項1から6の何れかに記載の枠体が、前記開口部に組み込まれており、前記開口部に前記はめ込み部材が取り付けられている、パネル体。
【請求項9】
請求項4に記載の枠体が、前記開口部に組み込まれ、前記開口部に前記はめ込み部材が取り付けられており、前記はめ込み部材が前記受入溝の前記厚さ方向の中央に配置されている、パネル体。
【請求項10】
請求項8に記載のパネル体の製造方法であって、
前記締結部材受け部に対する締結によって、前記複数の枠部材を相互に接合して前記枠体を形成するステップと、
接合された前記複数の枠部材が相互に前記厚さ方向にずれていないか確認するステップと、
前記枠体を組み込んだ前記パネル体を形成するステップと、
前記枠体に前記はめ込み部材を取り付けるステップと、
を有する、パネル体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パネル体に取り付けられるはめ込み部材を保持するための枠体、これを備えるパネル体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば扉やパーティション等を構成するパネル体において、小窓や通気口(ガラリ)を設ける場合があり、これらの小窓や通気口を構成するはめ込み部材(ガラスやガラリ部材)をパネル体に取り付けるための枠体が使用されている。
このような枠体(開口部枠体)に関する技術が、特許文献1~3によって開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6966302号公報
【特許文献2】特許第6971120号公報
【特許文献3】特許第6985094号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1~3で開示されている枠体は、枠体の各辺を構成する枠部材がネジ止め等の締結によって相互に接合されているものである(例えば引用文献1の図2、3参照)。
当該ネジ止めをするために、枠部材にはネジ受け部(ビスポケット26N等)が形成されている(例えば引用文献1の図4参照)。特許文献1~3の枠部材では、このネジ受け部が、枠部材の中央部(パネル体の厚さ方向における枠部材の中央)に形成されている。
ここで、ネジ受け部が枠部材の中央部に形成されていると、例えば、上枠部材を左右反対に取り付けても、正しく取り付けた場合と比べて外観上の違いはあまりない(取り付け方向の違いに気づきにくい面がある)。枠部材に取り付け向きの制限がない場合には問題はないが、ガラス溝が中央にない等の理由により、枠部材に取り付け向きの制限がある場合、取り付け方向の間違いに気づかずにそのままパネル体に組み込んでしまうと、不良品を製造してしまうことになる。
【0005】
本発明は、上記の点に鑑み、相互に接合される複数の枠部材によって構成される枠体において、枠部材の取り付け向きを間違えてしまう事を低減すること(間違いに気づき易くすること)が可能な枠体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(構成1)
パネル体に取り付けられるはめ込み部材を保持するための枠であり、相互に接合される複数の枠部材によって構成され、パネル体に形成された開口部に組み込まれる枠体であって、前記複数の枠部材の少なくとも一つに、他の枠部材を締結するための締結部材受け部が形成されており、前記締結部材受け部が、前記枠部材における、前記パネル体の厚さ方向の中心から、オフセットした位置に形成されている、枠体。
【0007】
(構成2)
前記複数の枠部材に、前記はめ込み部材を受け入れる受入溝が形成されており、前記枠部材の前記厚さ方向の一方の端部から前記受入溝までの距離と、前記枠部材の前記厚さ方向の他方の端部から前記受入溝までの距離が、異なっている、構成1に記載の枠体。
【0008】
(構成3)
前記複数の枠部材の少なくとも一つの前記受入溝が、前記はめ込み部材が挿入される入口部を有し、前記入口部より前記はめ込み部材の挿入方向の奥側において、前記厚さ方向が前記入口部よりも大きくなる空間部となっており、前記入口部の両側となる位置から奥側となる位置であって、前記はめ込み部材が挿入された際に前記はめ込み部材と対向する位置に、前記はめ込み部材と当接するバックアップ材を支持する受け部材が形成されている、構成2に記載の枠体。
【0009】
(構成4)
前記入口部の前記厚さ方向の一方の端部から、一方側の前記受け部材までの距離と、前記入口部の前記厚さ方向の他方の端部から、他方側の前記受け部材までの距離が、同一である、構成3に記載の枠体。
【0010】
(構成5)
前記締結部材受け部が、前記枠部材の前記厚さ方向の端部から前記受入溝までの距離が短い側にオフセットされている、構成2から4の何れかに記載の枠体。
【0011】
(構成6)
前記枠部材が、前記厚さ方向の両端側に位置する側面部と、前記開口部に組み込まれた際に、前記開口部の内面側を構成する開口部内面部と、前記側面部と前記開口部内面部との接合部において形成された、前記厚さ方向の内側に向かって凹んだ段差凹部と、を備えており、前記枠部材の前記厚さ方向の端部から前記受入溝までの距離が短い側の前記段差凹部の内面側が、前記受け部材として機能する、構成3から5の何れかに記載の枠体。
【0012】
(構成7)
前記相互に接合される複数の枠部材の少なくとも1つにおいて、その接合方向が誤っている場合に、前記枠部材の接合に段差が生じる、構成1から6の何れかに記載の枠体。
【0013】
(構成8)
構成1から7の何れかに記載の枠体が、前記開口部に組み込まれており、前記開口部に前記はめ込み部材が取り付けられている、パネル体。
【0014】
(構成9)
構成4に記載の枠体が、前記開口部に組み込まれ、前記開口部に前記はめ込み部材が取り付けられており、前記はめ込み部材が前記受入溝の前記厚さ方向の中央に配置されている、パネル体。
【0015】
(構成10)
構成8又は9に記載のパネル体の製造方法であって、前記締結部材受け部に対する締結によって、前記複数の枠部材を相互に接合して前記枠体を形成するステップと、接合された前記複数の枠部材が相互に前記厚さ方向にずれていないか確認するステップと、前記枠体を組み込んだ前記パネル体を形成するステップと、前記枠体に前記はめ込み部材を取り付けるステップと、を有する、パネル体の製造方法。
【発明の効果】
【0016】
本発明の枠体によれば、相互に接合される複数の枠部材によって構成される枠体において、枠部材の取り付け向きを間違えてしまう事を低減すること(間違いに気づき易くすること)が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明に係る実施形態の枠体が使用されたパネル体の一例としてのドアを示す概略図
図2】実施形態の枠体を示す正面図
図3】実施形態の枠体を構成する枠部材(上枠部材、左右枠部材)を示す端面図
図4】実施形態の枠体を構成する枠部材(下枠部材)を示す端面図
図5】実施形態のパネル体の内部構造を示すための垂直断面図
図6】実施形態のパネル体の内部構造を示すための水平断面図
図7】枠部材(上枠部材、左右枠部材)の別の例の端面図
図8】枠部材(下枠部材)の別の例の端面図
図9】実施形態の枠体の組み立てに関する説明図
図10】従来の枠体の組み立てに関する説明図
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。なお、以下の実施形態は、本発明を具体化する際の一形態であって、本発明をその範囲内に限定するものではない。
【0019】
図1は、本発明に係る実施形態の枠体が使用されたパネル体の一例としてのドアを示す概略図であり、図2は本実施形態の枠体(下枠部材に押縁が取り付けられていない状態)を示す正面図である。
本実施形態の枠体1は、パネル体100に取り付けられるガラスやガラリ部材等のはめ込み部材200を保持するための枠であり、相互に接合される複数の枠部材(上枠部材11a、下枠部材12、左枠部材11b、右枠部材11c)によって構成され、パネル体100に形成された開口部101に組み込まれる枠体である。
なお、以下の説明において、パネル体100に組み込まれた際にその厚さ方向なる方向を単に「厚さ方向」という。また、便宜上、枠体1の押縁13が取り付けられる側を「室内側」、その反対側を「室外側」という。なお、「室内側」や「室外側」は、ここでの説明の便宜上のものであり、押縁13が取り付けられる側が室外側となることを除外するものではない(また、本発明に係るパネル体は、そもそも室外、室内の区別がない箇所(室内と室外を隔てる場所ではない個所)にも設けられ得るものである)。
【0020】
枠体1の基本的な構成は特許文献1~3で示される枠体(開口部枠体)と同様であり、パネル体として組まれた際に、正面視(図1)における枠体のフレームの意匠面が細くなるように構成された枠体(例えば、見付1.5mm)である。
図2に示されるように、本実施形態の枠体1は、矩形の枠体であり、上枠部材11a、下枠部材12、左枠部材11b、右枠部材11cが、相互に締結部材であるネジ(タッピングネジ)TSによって接合されたものである。上枠部材11aと下枠部材12に、左枠部材11bと右枠部材11cをネジ止め(締結)するためのタッピングホール(締結部材受け部でありネジ受け部)THが形成されており、上下の枠部材を、左右の枠部材で挟むようにして両サイドからネジ止めする構成である。なお、本実施形態の各枠部材は、アルミ形材によって構成されている。
枠体1は、予め各枠部材を接合して枠体とした(図2の状態とした)上で、パネル体に組み込まれ、ガラス等のはめ込み部材200がはめ込まれる。
なお、枠体1以外のパネル体の各構成や、各枠部材を接合した枠体1を用いてパネル体として組み上げる工程については、特許文献1~3で開示されている内容と同様の概念であるため、ここでの説明を省略若しくは簡略化する。
【0021】
図4は、下枠部材12を示す端面図(断面も同様の形状)である。
下枠部材12は、その基本的な構成として、
厚さ方向(図4における左右方向)の両端側に位置する側面部121a、121bと、
厚さ方向に延びて、側面部121a、121bを接続する接続部123、129と、
はめ込み部材200を受け入れる受入溝125と、
パネル体100の開口部101に組み込まれた際に、開口部101の内面側(厚さ方向の側面)を構成する開口部内面部122(122a、122b)と、
押縁13と側面部121aとの間に形成された段差凹部124a、及び、側面部121bと開口部内面部122bとの接合部において形成された、厚さ方向の内側に向かって凹んだ段差凹部124bと、
接続部123に形成されたタッピングホール(締結部材受け部でありネジ受け部)THと、
接続部123の、タッピングホールTHが形成された面の反対面に形成され、タッピングホールTHの中心位置を示す目印となるV字溝127と、
バックアップ材BM(図5参照)を支持する受け部材126bと、
を備えている。
なお、下枠部材12に対して取り付けられた状態で開口部内面部122aや受入溝125を構成する押縁13は、ガラス等のはめ込み部材200をはめ込む作業の際に枠体1(下枠部材12)に対して取り付けられる部材である。当該押縁13は、特許文献1~3で示される枠体(開口部枠体)において説明されているものと同様の概念であるため、ここでの説明を省略若しくは簡略化する。
【0022】
受入溝125は、はめ込み部材200が挿入される側である入口部1251を有し、入口部1251から内部側に入ると(はめ込み部材200の挿入方向の奥側において)、厚さ方向が入口部1251よりも大きくなる空間部となっている。
受入溝125は厚さ方向にオフセットした位置、即ち、枠部材12の厚さ方向の中央位置と、受入溝125の厚さ方向の中央位置が異なっており、換言すると、厚さ方向の一方の端部から入口部1251までの距離(開口部内面部122aの厚さ方向の長さ)と、厚さ方向の他方の端部から入口部1251までの距離(開口部内面部122bの厚さ方向の長さ)が、異なっている。
このように受入溝125が中心からオフセットしている理由は、異なる厚さのパネル体にそれぞれ対応する枠体において、押縁13の共通化をしていることによる。パネル体の厚さが異なる以上、枠部材としての厚さもこれに対応して変化するが、押縁13が共通化されている(開口部内面部122aの厚さが一定である)ため、その結果、受入溝125が中心からオフセットしているものである。
【0023】
下枠部材12のタッピングホールTHは、図2に示される下側の2本のタッピングネジTSがねじ込まれる締結穴であり、図4に示されるように、下枠部材12の厚さ方向の中心CLから、オフセットした位置に形成されている。
これは、前述した受入溝125が中央からオフセットしていることにより、枠部材の取り付け向きが決まっている場合において、取り付け方向の間違いが起こらないように(間違いに直ぐに気づくように)するための構成である(この構成に基づく作用については後に説明する)。
本実施形態のタッピングホールTHは、開口部内面部122aの側にオフセットしている。即ち、「ネジ受け部(タッピングホール)が、枠部材の厚さ方向の端部から受入溝までの距離が短い側にオフセットされている」ものである。
【0024】
バックアップ材BM(図5参照)を支持する受け部材126bは、入口部1251の室外側の、奥側(図4にける下方)となる位置であって、はめ込み部材200が挿入された際にはめ込み部材200と対向する位置に形成されている。
なお、受け部材126bは、下枠部材12の長手方向に連続的に形成されているものに限られるものではなく、断続的に形成されているものであってもよい(バックアップ材BMを支持し得る構成であればよい)。
【0025】
なお、タッピングホールTHの構成(形成位置が中央からオフセットしている点)、及び、受け部材126b以外の、下枠部材12の基本的な構成は、特許文献1~3で示される枠体(開口部枠体)において説明されているものと同様の概念であるため、ここでのこれ以上の説明を省略する。
【0026】
図3は、枠部材11を示す端面図である。
本実施形態では、上枠部材11a、左枠部材11b、右枠部材11cが、図3で示される端面形状(及び断面形状)を有する枠部材11によって構成される。即ち、共通の部材である枠部材11を、各部材に応じた長さに切断することで、上枠部材11a、左枠部材11b、右枠部材11cが形成される。
枠部材11は、その基本的な構成として、
厚さ方向(図3における左右方向)の両端側に位置する側面部111a、111bと、
厚さ方向に延びて、側面部111a、111bを接続する接続部113と、
はめ込み部材200を受け入れる受入溝115と、
パネル体100の開口部101に組み込まれた際に、開口部101の内面側(厚さ方向の側面)を構成する開口部内面部112(112a、112b)と、
側面部111a、111bと、開口部内面部112a、112bとの接合部において形成された、厚さ方向の内側に向かって凹んだ段差凹部114a、114bと、
接続部113に形成されたタッピングホール(締結部材受け部でありネジ受け部)THと、
接続部113の、タッピングホールTHが形成された面の反対面に形成され、タッピングホールTHの中心位置を示す目印となるV字溝117と、
バックアップ材BM(図5、6参照)を支持する受け部材116a、116bと、
補強部118a、118bと、
を備えている。
【0027】
受入溝115は、はめ込み部材200が挿入される側である入口部1151を有し、入口部1151から内部側に入ると(はめ込み部材200の挿入方向の奥側において)、厚さ方向が入口部1151よりも大きくなる空間部となっている。
受入溝115は厚さ方向にオフセットした位置、即ち、枠部材11の厚さ方向の中央位置と、受入溝115の厚さ方向の中央位置が異なっており、換言すると、厚さ方向の一方の端部から入口部1151までの距離(開口部内面部112aの厚さ方向の長さ)と、厚さ方向の他方の端部から入口部1151までの距離(開口部内面部112bの厚さ方向の長さ)が、異なっている。
受入溝115が中心からオフセットしている理由は、下枠部材12の受入溝125が上記理由によってオフセットしていることに伴い、これに合わせた構成となっている(溝の位置を合わせている)ものである。
【0028】
タッピングホールTHは、枠部材11が上枠部材11aとして使用される場合に、図2に示される上側の2本のタッピングネジTSがねじ込まれる締結穴であり、図3に示されるように、枠部材11(上枠部材11a)の厚さ方向の中心CLから、オフセットした位置に形成されている。
これは、下枠部材12と同様に、枠部材の取り付け向きが決まっている場合において、その取り付け方向の間違いが起こらないように(間違いに直ぐに気づくように)するための構成である(この構成に基づく作用については後に説明する)。
本実施形態のタッピングホールTHは、開口部内面部112aの側にオフセットしている。即ち、「ネジ受け部(タッピングホール)が、枠部材の厚さ方向の端部から受入溝までの距離が短い側にオフセットされている」ものである。
なお、枠部材11が左枠部材11b、右枠部材11cとして使用される場合には、タッピングホールTHは不要な構成であるが、本実施形態では、部品の共通化を図っているものである。
左枠部材11bと右枠部材11cには、タッピングネジTSを挿通して係止するための挿通穴(特に図示せず)が形成される。
【0029】
バックアップ材BM(図5、6参照)を支持する受け部材116a、116bは、入口部1151の両側となる位置から、奥側(図3における下方)となる位置であって、はめ込み部材200が挿入された際にはめ込み部材200と対向する位置に形成されている。
室外側の受け部材116bは、開口部内面部112bから下方側へと突出するリブ状に形成されている。室内側の受け部材116aは、段差凹部114aの内面側によって構成されている。即ち、「厚さ方向の端部から受入溝までの距離が短い側の段差凹部の内面側が、受け部材として機能する」ものである。
また、入口部1151の端部から室内側の受け部材116aまでの距離L1と、入口部1151の端部から室外側の受け部材116bまでの距離L2は、略同一である(図3参照)。即ち、「入口部の厚さ方向の一方の端部から、一方側の受け部材までの距離と、入口部の厚さ方向の他方の端部から、他方側の受け部材までの距離」が、略同一である。
なお、受け部材116bは、枠部材11の長手方向に連続的に形成されているものに限られるものではなく、断続的に形成されているものであってもよい(バックアップ材BMを支持し得る構成であればよい)。
【0030】
補強部118a、118bは、側面部111a、111bと接続部113の接続部分において、断面視において両者が直交する部分をテーパー状に接続してその断面積を増加させているものであり、枠部材11の断面係数を増加させるものである。
【0031】
なお、タッピングホールTHの構成(形成位置が中央からオフセットしている点)、補強部118a、118b、及び、受け部材116b以外の、枠部材11の基本的な構成は、特許文献1~3で示される枠体(開口部枠体)において説明されているものと同様の概念であるため、ここでのこれ以上の説明を省略する。
【0032】
図5は、パネル体100における、図2のA-A線に沿った場所の断面図であり、図6は、図2のB-B線に沿った場所の断面図である(なお、図2は、押縁13が取り付けられてない状態の枠体1のみを示す図であるが、図5、6は、パネル体として構成された状態の断面図である)。
本実施形態のパネル体100は、枠体1(図2の状態の枠体1)を組み込んだパネル体としての組み立てをした後に、はめ込み部材200を、上下の枠部材に対しては倹飩(けんどん)方式、左右の枠部材に対してははめ込み部材200を斜めに挿入することで受入溝115、125にはめ込んでから押縁13を取り付け、バックアップ材BMを受入溝115、125とはめ込み部材200の隙間に挿入することではめ込み部材200を仮固定した上で、シーリング材SMで固定することで、形成される。
当該工程において、受け部材116a、116b、126bが形成されていることにより、はめ込み部材200を仮固定するためのバックアップ材BMが、受入溝115、125内の空間部へと落ち込んでしまうことが防止される。
上記説明した受入溝が中央からオフセットしていることに基づき、特に室外側において空間部が広くなっており、従来の枠体では、この室外側の空間部にバックアップ材BMが落ち込み易くなるが、本実施形態によれば、受け部材116b、126bによって、空間部の室外側へのバックアップ材BMの落ち込みが防止されるものである。
これにより、作業性が大幅に改善され、施工時間を短縮する効果も得られる。
また、図3で示したL1とL2が略同一であり、両サイドで同一サイズのバックアップ材BMではめ込み部材200を仮固定する(位置決めする)ことにより、はめ込み部材200のセンタリング(受入溝115、125内での奥行方向の中央の配置)も容易に行われ、製品の仕上がりが向上され得ると共に、作業性の向上も図られ得る。
なお、押縁13にもバックアップ材BMを支持する受け部材を設けるようにしてもよい。即ち、下枠部材12において、入口部1251の室内側の奥側となる位置であって、はめ込み部材200が挿入された際にはめ込み部材200と対向する位置に、受け部材を設けるようにしてもよい。これにより、下枠部材の室内側(押縁側)においても、バックアップ材BMが支持される。
【0033】
次に、タッピングホールTHが枠部材の厚さ方向の中心CLからオフセットした位置に形成されていることにより、枠部材の取り付け方向の間違いが起こらないように(間違いに直ぐに気づくように)する機能について説明する。
当該説明にあたり、枠部材の他の例(パネル体の厚さの違いに対応して、厚さが異なる枠部材)を図7、8に示す。
図7に示した枠部材11-1、図8に示した下枠部材12-1は、上記説明した枠部材11、下枠部材12が対応するパネル体よりも、厚さの厚いパネル体に対応した枠部材であり、その基本的な構成は、枠部材11、下枠部材12と同様である(同一の構成については同一の符号を使用している)。
前述したように、このような厚さのバリエーションに対応した部材間において、押縁13を共通部品としており、これにより、開口部内面部112a、122aの幅は同一である。枠部材の厚さが厚くなる一方、開口部内面部112a、122aの幅は同一であり、また、受入溝の入口部の幅も同一であるため、開口部内面部112b-1、122b-1の幅が大きくなっている(オフセット量が大きくなっている)。
また、図7の枠部材11-1、図8の下枠部材12-1では、室外側の受け部材116b-1、126b-1が、開口部内面部112b-1、122b-1と接続部113-1、123を接続するように形成されている(橋渡し形状になっている)。これにより枠部材の剛性及び強度が向上するため、枠部材11に比べ、接続部の厚さを薄くでき、また、補強部118a、118bも不要となっている。一方、枠部材11、下枠部材12の、室外側の受け部材116b、126bは、開口部内面部112bから下方側へと突出するリブ状に形成されている(橋渡し形状になっていない)。これは、バックアップ材の一部を保持できる対向部(受け部材)として機能する形状(リブ状部)としての最小限の構造としているものである。このようにすることで、少なくとも必要な剛性と強度を確保しながら、材料の使用量を抑え、材料コストの低減、重量負荷の軽減などが図れるものとなっている。
【0034】
図10は、タッピングホールが枠部材の厚さ方向の中心に形成された従来の枠部材の接続について説明する図である。
図10(a)は、本実施形態の枠部材11と同様の厚さを有する枠部材(左枠部材11b-Pと上枠部材11a-P)の接続において、正しい向きの接続を示す図であり、図10(b)は、誤った方向の接続を示す図である。
同様に、図10(c)は、上記説明した枠部材11-1と同様の厚さを有する枠部材(左枠部材11-1b-Pと上枠部材11-1a-P)の接続において、正しい向きの接続を示す図であり、図10(d)は、誤った方向の接続を示す図である。
図10(a)、(c)に示されるように、正しい向きで接続されている場合、受入溝が正しく形成されている(はめ込み部材を挿入するための幅Wが正しく形成されている)。
一方、図10(b)、(d)の場合、受入溝の幅Wが小さくなってしまっており、はめ込み部材200を正しく配置することができないものとなっている。タッピングホールが枠部材の厚さ方向の中心に形成されていると、図10(b)、(d)に示されるように、枠部材の取り付け方向を間違っていても、外観上の違いとしてはあまりなく(各枠部材が面一に接続される)、取り付け方向の違いを見落としやすい面がある。取り付け方向の間違いに気づかずにそのままパネル体に組み込んでしまうと、不良品を製造してしまうことになる。
【0035】
図9は、本実施形態の枠部材の接続について説明する図である。
図9(a)は、本実施形態の枠部材11(左枠部材11bと上枠部材11a)の接続において、正しい向きの接続を示す図であり、図9(b)は、誤った方向の接続を示す図である。
同様に、図9(c)は、上記説明した枠部材11-1(左枠部材11-1bと上枠部材11-1a)の接続において、正しい向きの接続を示す図であり、図9(d)は、誤った方向の接続を示す図である。
図9(b)、(d)から理解されるように、タッピングホールTHが枠部材の厚さ方向の中心CLからオフセットした位置に形成されていることにより、枠部材を誤った方向に接続すると、枠部材間の接続において段差(ズレ)が生じる。従って、取り付け方向が間違っていることが明瞭にわかるものである。そもそも、組みつけようとして、ネジの穴の位置合わせをした段階で、方向の違い(部品相互のズレ)に気づくことができるため、間違えた方向で組み付けること自体が防止される。
【0036】
上記に基づき、本実施形態のパネル体の製造方法において、
タッピングホール(ネジ受け部)にネジをネジ止めすることによって、複数の枠部材を相互に接合して枠体を形成するステップと、
接合された複数の枠部材が相互に厚さ方向にズレていない(段差がないか)か確認するステップと、
ズレの無い枠体を組み込んだパネル体を形成するステップと、
枠体にはめ込み部材を取り付けるステップと、
を行うことで、不良品を製造してしまうことが低減される。
なお、「接合された複数の枠部材が相互に前記厚さ方向にズレていないか確認」は、上記からも理解されるように一瞥にて判断できるものであり、チェックに手間のかかるようなものではなく、見落としが起きにくいものである(前述のごとく、そもそも、間違えた方向で組み付けること自体が防止される)。
また、仮に見落としが起こったとしても、枠部材の接続にズレのある枠体は、パネル体に組み込むことができないため、パネル体としての不良品を製造してしまうことが有効に防止されるものである。
【0037】
以上のごとく、本実施形態のパネル体100(枠体1)及びその製造方法によれば、枠部材の取り付け向きを間違えてしまう事を低減すること(間違いに気づき易くすること)が可能であり、パネル体としての不良品を製造してしまうことが有効に防止される。
また、本実施形態のパネル体100(枠体1)によれば、受け部材116a、116b、126bが形成されていることにより、はめ込み部材200を仮固定するためのバックアップ材BMが、受入溝115、125内の空間部へと落ち込んでしまうことが防止される。これにより、作業性が大幅に改善され、施工時間を短縮する効果も得られる。
【0038】
また、本実施形態によれば、タッピングホールTHが、押縁13の側(室内側)にオフセットしている、即ち、「ネジ受け部(タッピングホール)が、枠部材の厚さ方向の端部から受入溝までの距離が短い側にオフセットされている」ことにより、左枠部材と右枠部材におけるタッピングネジTSを挿通するための挿通穴の形成が容易であるという作用効果が得られる。
タッピングホールTHを室外側に設けた場合、必然的に、タッピングネジTSを挿通するための挿通穴も室外側に形成する必要があるが、室外側では、受け部材が形成されており(特に図7の116b-1や図8の126b-1)、ここに挿通穴を形成するためにはより大きな加工力が必要になってしまう。また、大きな加工力が加わることにより、部材の変形や破損を生じる恐れもある。
本実施形態によれば、このような問題が低減されるものである。
【0039】
なお、実施形態では、パネル体として組まれた際に、枠体のフレームの意匠面(見付け)が細くなるように構成された枠体を例としているが、本発明をこれに限るものではなく、見付けを太くした枠体としてもよい。
また、実施形態では、4本の枠部材を用いて矩形に構成される枠体を例としているが、本発明をこれに限るものではない(例えば任意の多角形形状や円形などの枠体等であってもよい)。
【0040】
タッピングホール(ネジ受け部)を枠部材の厚さ方向の中心からオフセットした位置に形成することにより、枠部材の取り付け方向の間違いが起こらないようにする機能は、枠材の取り付け方向に制限がある場合に有用なものであるが、枠材の取り付け方向に制限がないものにおいても、ネジ受け部(締結部材受け部)をオフセットした位置に形成するようにしても構わない。
なお、「締結部材受け部を枠部材の厚さ方向の中心からオフセットした位置に形成」とは、締結部材受け部の中心の厚さ方向の位置と、枠部材の厚さ方向の中心が同一でないことを示す。ここで「締結部材受け部の中心」とは、本実施形態のように締結部材1つ(ネジ1本)が配置される場合には、その中心であり、締結部材が複数配置される場合には、それらの中心である(例えば2本のネジが配置される場合には、2本のネジの中間点)。
【0041】
実施形態では、上枠部材と下枠部材を、左右の枠部材で挟むようにして両サイドからネジ止めされる構成を例としているが、本発明をこれに限るものではなく、各枠部材が相互に接合されるものであればよい(例えば、左右の枠部材を上下の枠部材で挟むもの等、各枠部材を接合可能な任意の配置関係としてよく、これらに本発明の概念を適用することができる)。
また、実施形態では、上枠部材11a、左枠部材11b、右枠部材11cが、共通の枠部材11に基づいて形成されるものを例としているが、本発明をこれに限るものではなく、各部材がそれぞれ独立して形成されるものであってもよい。例えば、左右の枠部材についてはタッピングホール(ネジ受け部)が形成されていない枠部材(上枠部材とは構成が異なる枠部材)としてもよい(何れの部材にタッピングホール(ネジ受け部)が必要となるのかは、各枠部材の接合の配置に依存することになる)。
【符号の説明】
【0042】
1...枠体
11a、11b、11c、12...枠部材
111a、111b、121a、121b...側面部
112a、112b、122a、122b...開口部内面部
114a、114b、124a、124b...段差凹部
115、125...受入溝
1251...入口部
116a、116b、126b...受け部材
100...パネル体
101...開口部
200...はめ込み部材
BM...バックアップ材
TH...タッピングホール(締結部材受け部)
TS...ネジ(締結部材)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10